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小さい水泳部キャプテン-後編-

20ポロ:2011/04/12(火) 18:20:05
『写真Ⅰ』

拓也を呼んでから3日後。
退院の手続きを済ませた神谷明己仁は、右手に紙袋を持って病院の屋上に向かっていた。
紙袋の中には、彼が大好きな本が10冊程度、ブックカバーをしている状態で入っている。

明己仁は2ヶ月の入院生活中、よく屋上にあるベンチに座って読書をしていた。
入院当初の屋上はまだ寒かったが、4月に入ると次第に暖かくなり、読書をするのは気持ちよかった。
退院当日である今日、最後の別れというほどのことではないが、明己仁は何となく屋上に来たくなっていた。

(いつ行っても屋上は人がいないからなあ。それもまたいいんだよな)

そんなことを思いながら屋上に着いた明己仁であった。
すると彼の目線の先に、白いベンチに座っている一人の少年が目に入ってきた。

(お?珍しい…)

青のチェックのパジャマを着た少年は、ベンチに座りながら右手に持った一枚の写真を見ている。
隣には松葉杖が置いてあり、足を怪我したために入院していることが一目で分かる。
松葉杖を使っているのにわざわざ屋上に来るなんて変わった奴もいるものだな思った明己仁は、
足元に本の入った紙袋を置き、少年の隣に座って話しかけた。

「足、怪我しているのか?」
「………」
「あ、俺は別に怪しい奴じゃないからな。今日この病院を退院する神谷明己仁っていうんだ。君は?」
「………」

少年は返事をせず、ずっと手元にある写真を見ている。
明己仁はその写真を覗き込んだ。
写真はおそらく運動会に撮られたものだろう。運動場をバックに、
今ここにいる少年と、もう一人、彼の友達だと思われる少年が、肩で腕を組んでいる。
二人の男が仲良さそうに密着している写真。こういう写真に明己仁は弱かった。

「とりゃ!」
「…!」

明己仁は少年から写真を奪い取った。


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