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◇月光裏街 =Moon Light Under the City= PartⅠ◇(

47 ◆YQUUXN652Q:2011/02/05(土) 02:48:21
>>43名無し様
(pl:支援有難うございます。励みになります。)

>>44エリス
(黒髪に触れる按撫の手が心地良い。最期にそれを受けたのはいつ頃だったか―と暢気に懐旧の情に駆られた。緩慢に滑っていく手の平の感触は酷く丁寧で、柔らかい。抱き締めた体は肉付きが薄く、どこまでも細かった。病的なまでに青白い肌は一見低体温な印象を植え付けるが、服越しに伝わる温もりは無償に安堵を与えてくれている。彼女にも赤が通っているのだと思うと、喜びの半面、漠然とした不安が生じた。規則的なリズムを刻む鼓動の音に生を実感し、心底落ち着く。まるで揺り籠の中の赤子でもなった心境だ。彼女の背に回した手で冴やかに浮き出た肩甲骨に触れる。肩甲骨は天使の羽の名残と一般に形容されるが、ヒトには些か高貴な名称であるように思えた。こうした、神話や逸話を織り交ぜた話は遥か昔より枚挙に遑がない。何の興趣もない話だと脳裏から一蹴していたが、予期せぬ例外との遭遇に自分の過信を恥じた。最も、その存在自体は天使というより「 」に近いのだが。――そっと抱擁の腕を解く。温もりの余韻に浸る間も空けず、使い古された黒色の外套を脱いだ。この気温の割に、彼女は薄着だ。冬の寒気に体温を奪われないように、外套を広げて彼女の肩にかける。薄く微笑んで、着衣を促す。彼女曰く“甘えん坊”な彼は本音とほんの少しの揶揄を加えて、そこで漸く口を開いた。人情の機微を穿った言葉や、琴線に触れる言葉なんて更々声に乗せるつもりはない。身近な会話―例えば空や建物、木、食べ物の話が出来ればそれでいいと彼は思うのだ。ベンチに腰掛ける彼女の隣に座ろうと空いたスペースに視線を下ろした所で、ああ、と思い出したように頓狂な声を上げた。先客の目線に合わせようと、象牙色の石畳に膝を抱える形でしゃがみ込む。彼が人語で礼を述べたところで徒労に帰すことは明白だろうから―代わりに、彼女の隣に凛然と佇む黒猫の頭を緩慢な手つきで撫でた。)
…たまにはいいじゃない、自分は君の前でしか甘えないんだから。君と違って、ね?
それよりエリス…また痩せた?駄目でしょ、ちゃんと食べなきゃ――先に言っておくけど、「林檎を食べた」とか「一昨日食べた」だなんて言い訳は受け付けないからね


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