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【15周年記念】ジョジョの奇妙な問題集【自由参加企画】
136
:
名無しのスタンド使い
:2024/02/26(月) 22:46:56 ID:C/G9WmoM0
個人的に好きなキャラ小室社長3度目の出番です
【課題名】
>>64
人類最後の極楽浄土
【使用オリスタ】
No.4507 グラビティ・オブ・ラヴ
【解答】
小室光之助は悲しんだ。何故なら、道に置かれていたトラバサミのせいでつい先日納車したベンツのタイヤがパンクし、人気の無い山奥に1人取り残されてしまったからだ。
道に生える苔やよく分からない植物に隠れたトラバサミは新品のように鋭く、しっかり手入れがされている事を物語っていた。
「クソ、携帯も繋がらん……この辺りには我が社の通信衛星を打ち上げたばかりだと言うのに……」
彼の言う通信衛星は確かにこの地域の上空を飛行していたが、鬱蒼と繁る木々と地形が電波を遮っている事は光之助の知る所では無かった。
しかし、彼はこの状況に絶望していた訳ではない。
新品同様のトラバサミが置いてあるならば、近くに手入れを行う人が住んでいる可能性が高いという事だ。幸いにも道はまだ続いている、これに添って歩けば人里に辿り着けるだろう。
そう気持ちを切り替えた光之助は購入して1週間も経っていないベンツに別れを告げ、悲しみを胸に歩き始めた。
道の先が、自分の求める場所に繋がっている事を祈りながら。
◆
「ハァ……ゼェ………何だ、この村は?」
暫く歩き続けた光之助が目にしたのは、やけに暗く寂れた村であった。
周囲には金網がバリケードのように張り巡らされ、畑と思われる場所には大麻らしき植物が青々と繁っている。それでいて往来には人っ子1人見えず、仮に『院就(いんしゅう)村』と書かれた看板が無かったならば村だとは分からなかっただろう。
とはいえ他に行く宛も無い光之助、取り敢えずは近くの民家に声を掛けようと金網の隙間を潜り抜けたその時──────
カーン!カーン!カーン!カーン!
突如として鐘の音が鳴り響き、それに呼応するように防護服を纏った大勢の人間達がゾロゾロと光之助の前に現れる。
「あぁ、突然お邪魔して申し訳ありません。実はこの先で私の車が故障してしまい、皆さんの助けを「死ねぇ、ゾンビ!!」………は?」ズドォン!
返事の代わりに飛んできた1発の銃弾が光之助の頬を掠めた。
見回せば彼等は手に手に槍や棍棒を握っており、幾らかの村人は猟銃を此方に向けている。
彼等が喚き散らす戯言から「連中は外界での出来事を詳しくは知らないらしい」と悟った光之助が踵を返して駆け出すのと、武器を握った村人達が光之助へと飛びかかったのはほぼ同時であった。
間一髪で攻撃を避けた光之助だが、状況は依然として悪いままである。
1人の光之助に対して追跡者は多数、しかも何人かは飛び道具を持っているのだ。
「くっ……『グラビティ・オブ・ラヴ』!!」
ドガガガガガガガガガ…………
何故かスタンドに地面を殴らせつつ、全力で走り続けていた光之助だが、幾ら彼とて地の利と人数の両方で自身を大きく上回る相手から逃げ回る事は不可能であった。
「ハァ、ハァ……追い詰めたぞ、糞ゾンビ!!」
「地の利は俺達の方にあるんだよ、馬鹿ゾンビがぁ!」
地面に倒れ込んで荒い息をつく光之助を取り囲み、狂気の表情を浮かべながら勝ち誇る村人達。
しかし、勝利に酔いしれる彼等は吊り上げられた光之助の口角にも、そして自分達目掛けて真っ直ぐに墜ちて来る人工衛星の姿にも気が付く事が出来なかった。
◆
「ふむ………やはりこれ程『巨大』な物体を『遠距離』から引き寄せるにはかなりの時間とエネルギーを要するな。」
可能ではあったがね……と、死屍累々と横たわる村人達と巨大なクレーターの前に立ちながら1人呟く光之助。
命の危険に晒され、おまけにベンツと通信衛星までオシャカになったにも関わらず、彼は上機嫌であった。
何しろこの『院就(いんしゅう)村』こそ光之助がわざわざベンツを運転してまで探していた土地だったのである。
「情報漏洩の心配も無く、使い捨てられる『材料』共も大勢居る………
私の野望……『究極生命体の作成』……その為に必要な実験場として、これ程うってつけの村が存在したとはな………!」
──────彼が高笑いしながら村を去った数日後、とある大企業が『院就(いんしゅう)村』という辺境の村を土地ごと買い上げ、村内に建設された『小室生命研究所』なる施設に全ての村人が「雇用」された事実が世間に公表された。
このニュースは地域活性化に貢献する取り組みとして話題となり、インタビューの場で代表取締役──────小室光之助氏はこう語ったという。
「私は村に直接赴き、住民達との交流を経て『運命』を感じたのです!
彼等は私が持つ壮大な願いの礎となってくれる事でしょう!」
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