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【15周年記念】ジョジョの奇妙な問題集【自由参加企画】

13名無しのスタンド使い:2023/11/28(火) 21:30:54 ID:DqvvoycU0
 そんな事よりも高校生は日が暮れる前に森を脱出するべく……まずは自分の右足に挟み込む憎たらしいトラバサミを解除する。
 幸いトラバサミは難なく外せたが、両足がトラバサミに潰されてしまった高校生は、最早歩くことすらままならず、這いつくばりながら移動する事しかできない。依然として危機的状況は継続している。

「……いやいやいやいや……まさかね?まさかだよね?せっかく森の中のババ・ソーヤー(亜種)みたいなサイコ野郎を倒したのにさぁ!遭難&失血死エンドはないよね……いやいやいやいや!クソ、冗談じゃないぞ!畜生!」

 森を脱出するうえで、最大の障害は取り除けたまでは良かったが、ここまで積み重ねてきたダメージが満身創痍な高校生の肉体に重くのしかかる。口では軽口を叩いているが、時間だけが無情に過ぎて辺りは赤橙に染まりかけてきた。

「……絶対に帰るんだ。絶対に生きて帰る!絶対に生きて帰って、ここに戻って、迎えに来るんだ……!家に帰るんだ……!」

 高校生はうわ言のように自分を鼓舞する言葉を呟き続ける。もう喋り続けていないと意識が飛びそうになっていた。その時―――

「そっちじゃないよ、こっちこっち」

 どこからともなく聞き覚えのある声がした。
声のした方を見れば……明らかに声の主とは程遠い、大柄な体型をした壮年の男性が立ち尽くしている。

 いや誰?高校生は見知らぬ男の出現に困惑するが……その屈強な体格だけなら見覚えがあったかもしれない。そして、彼の背後に隠れていた見覚えのある少女は、ひょっこりと顔を出してイタズラそうな笑みを浮かべていた。彼女たちは道を開けるように二手に分かれると同じ方向を指差す。
 その先には血塗れの高校生を発見して、慌てて駆け寄ってくる人物がいた。

「じゃあね。ありがとっ」

 それだけ言うと彼女と大男の幽霊は夕焼けの光と共に消えてしまう。高校生が死にかけだったから見えたのかもしれないが、或いは……彼の言葉は意図せずして、この地で無念の最期を遂げて、眠りについていた人々の魂を呼び覚ましたのかもしれない。
 生死の境目で奇跡的な再会を果たした高校生は、感傷に浸る間も無く、喧しい友人の声と共に現実に引き戻される。

「おーい!!一体何があった!?ボロボロじゃねーか!新手のスタンド使いにでも攻撃されたのか!?」
「……まぁ、そんなところだね。ご覧の通りかなりヤバかったけど奇跡的に何とかなった。ところでどうして君がここに?」
「こっちのトラブルが早めに解決できたからだよ。手伝おうと思って連絡しても電話が繋がらないから心配になって来てやったんだぜ。そしたら何か森の中で怪我している人がいるから助けてやってくれって……時々すれ違った人たちに教えてもらってここまで来たんだ。いやぁマジ感謝だな」
「……そうか、そうだったのか……本当にお節介焼きのお人好しは敵わないね。ありがとう本当に助かったよ」
「何だか妙に素直じゃねーか気持ち悪いな」
「こっちは死にかけなんだ。無理言うな」
「あぁ〜悪い悪い、もう少ししたら電波も繋がるところに出るから救急車呼んでやるからな。持ちこたえろよ!しょうがね〜からおんぶしてやる!ほらおんぶ!」

 血塗れの格好で背負われるのは申し訳ないと高校生は遠慮するが、青年は「終わらねーから早くしろ」と、わざとらしく急かしながら言いくるめる。
高校生も言い返す余力もなく、大人しく背負われる事にした。

 こうして底知れぬ邪悪が潜んでいた森は、一人の若者の奮闘により静寂を取り戻した。森の中に取り残されていた者たちはそれぞれの帰路、向かうべき場所にようやく歩み始める。物言わぬ家族の帰りを迎え入れる者たちは、きっと深い悲しみに打ちのめされることだろう。その痛みをどうやって癒せばいいかなんて誰にも分からない。幻想や呪いに囚われたまま、前に進めなくなる者もいるだろう。しかし、時は何も語らぬまま進み続け、世界は新しい明日を迎え続けるように、残された者たちは否でも応でも生き続ける。どのような選択をするかは人それぞれだが―――去ってしまった者たちに報いられるように、若者たちは己の意思で歩み続ける事を選択する。


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