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囚われの姫騎士

45名無しのごんべへ:2020/04/20(月) 11:40:01 ID:YXF8Mz3s0
「ッあぐ…ぎっ、いぃッ、あッ!? いッ……!!」

 玉座の間、横たわるタリアの口から悲鳴が漏れる。
 供物に見立てられ、最低限の装飾品を身に纏う肌身を下卑た魔族達の視線が舐めまわす。

「は、はひっ、…ぁ、ふぅっ」

 ふと、陣痛の波が収まり、苦し気に息を整える彼女を狡猾な笑みを浮かべて眺めていたザルディスが声を掛けた。

「タリア様、一つお伝えしなければならないことがあります」

(この期に及んでなに? まさか、姉さまが?)

 動くのも億劫そうにせめて視線だけでも、と睨み付けるタリア。
 それを受けてザルディスは益々笑みを深める。

「おぉ! 気丈にも振る舞わんとするタリア様、だがしかしお伝えしましょう。胎に双子を抱えたタリア様、あなたはその子供の顔を見ることが出来ずに死ぬ運命(さだめ)にあるのです」
「っぇ……?」

 呆然とするタリア。
 その表情を待っていたとザルディスの口から笑いが漏れる。

「人間は脆いのです。体格の違う異種族である魔族を正産期まで育て産み落とすことが果たして出来るでしょうか? 否、出来ないのです」
「本来であれば、母体の保護機能をもってして最低限生存できる機能が発達した段階で、あなたは出産しなければいけなかった。しかし、偶然にもあなたは今日まで産気付く事無く、今日を迎えました。ええ、『偶然』にも」

「ザルディスッ!!」

 我を忘れるかのような怒りがタリアを飲み込む。
 その様な偶然があるものか。陰で糸を引いていたに違いない。その確信が彼女にはあった。
 タリアの怒号などそよ風と言わんばかりに受け止めたザルディスはなお、狡猾さを隠すことなく続ける。

「本来であれば、あなた達姉妹が私の前で苦しみ抜き、あなたは出産を終えることなくリリシア様の前で死ぬ。心の折れたリリシア様に私は言うのです。『一つだけ助かる方法がありますよ』と」
「タリア様、折角なのであなたに選ばせてあげましょう。人の身で苦痛に呑まれて死ぬか。我が魔族の秘術で、『半分だけ魔族となって生き延びるのか』」

 まぁ、まだ時間があるようなのでゆっくりと考えるといいですよ。
 ザルディスの残した選択。タリアは自身の命が燃え尽きる前に選ばなければならなかった。


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