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囚われの姫騎士

38舒龍:2020/02/22(土) 16:17:48 ID:y.jflAgI0
 リリシアが空間移動魔法を覚えようと決意したあの日から早くも一年の月日が過ぎ去っていた。
魔王ザルディスの侵攻を受け、占領されてしまった祖国。
以前魔物が蔓延り、犯罪や殺戮が多発する殺伐としたこの国は、もはや国の体裁を為していなかった。
カルディア国王や多くの民は無事に、隣国へと逃げたのだろう。未だ捕まったという話は聞いていなかった。
もっとも、城の中に幽閉された姉妹に得られる情報は限りなく少ない。
「ふぅ……。この距離が精一杯ね……」
 大きく深い息を吐き、ソファへ倒れ込むように体を預けるリリシア。
この一年間極秘の修行の成果は、城の中の移動に限定されていた。
一度空間移動を成功させると、不可視のゲートが生成される。ゲート間の移動は難なく行えるぐらいになっている。
しかし、魔王ザルディスの子を身籠ったお腹は大きくて重い。
その様子はまるで、産み月を迎えた妊婦のようだった。
 ぐったりとソファに座った姉の様子を心配そうに見守る妹のタリア。
自然とそうなるのか、大きく膨れ上がったお腹を撫で擦る。
一年前、オークの子を2胎身籠ったお腹は通常の産み月と見紛うほどだったが、
この一年間の間に週数回のペースでオークの精を受けていたせいか、かなり大きくなっている。
それはまるで大ぶりのスイカが丸ごと入っているようで、下から抱えるようにしないとポロッと落っこちてしまいそうなほどだった。
「お姉様……。少し休憩されてはいかがですか?」
 タリアが心配そうに眉根を寄せる。
「大丈夫よ……。それより、城の外へ移動できるようにならないと。いつこの子が生まれるとも限らないわ」
 リリシアは、妹を心配させまいと空元気で微笑む。
通常人同士の子ならば、一年以上も身籠っている事などありえない。
姉妹を診察したリザードマン医師のレプティーより、「早くて1年。遅くとも、ここ10年といったところ」と診断されているのを知らない。


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