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【イベントB】欲望渦巻く魔都・異能都市【その9】
1
:
名も無き異能都市住民
:2014/09/08(月) 21:21:41 ID:9nrcReK60
<<ルールとか>>
・ここは、各スレでなんらかのイベント・クエスト・戦闘が発生した場合に使います。
・雑談も可能ですが、日常の範囲で済むかどうかは各自で判断してください。
・クエストスレはA・B・Cの3つがあります。開いている場所ならどこでも使って構いません。
・逆に、使用中の場合は混乱の元になりますので、同じクエストスレで2つのクエストを進行させることはやめてください。
・クエストで使われている場所を、クエスト以外のスレで使うことは『構いません』。
時間軸が異なる・平行世界である、など解釈は自由です。
・またクエストスレと他のなりきりスレに、同時に現れることは『構いません』。
ただしそれによって起こり得る弊害は自力でなんとかしてください。
・GM役をあらかじめ決めておくとスムースにことが運ぶかもしれません。
・識別をしやすくするために、トリップをつけると幸せになれるかも。
前スレ
【イベントB】折れた翼と恋の異能都市【第八話】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12841/1302460867/
314
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/22(火) 01:23:13 ID:NugK2bM60
>>313
「……………うう…
最近落ち着いてた……気がしたんですけど……」
足音の主は、どこかつらそうな声を出しながら歩いている…
路地の向こうから見えてきたのは…以前であったことのある少女だろう。
「…ふぅ…
はぁ…」
壁を背にして裏路地へと入り込む。
「ん……あれ?」
と、目線がそこにいた男性、裕太と重なった。
//どうも入らせていただきます。
//とりあえず今日の夜辺りに返します。
315
:
2:『血に濡れた涙』
:2016/03/22(火) 22:39:04 ID:p1won6CY0
>>314
「…お前…確か何時か見たな。
……こんなとこで何してる、治安維持が走り回ってる。
あんまりいると、捕まるぞ」
警告というよりもそれは脅しのような物だ。
ここから居なくならなければ場合によっては使う、と。
人質にすると宣言するような、眼。
316
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/22(火) 22:57:41 ID:NugK2bM60
>>315
「…ん……
あなたは…」
彼女はどこか気分が悪そうだ。
あの時にちょっと似ている…?
「…気が付いたらこんなところに…
またどこかから飛ばされたのかもしれないです…」
と言ってふぅ、と座り込んだ。
「なんだか、妙なところに来てしまったみたいで…
私も、そうしたいところなんですけど…
ふぅ、ちょっと体調が…」
317
:
2:『血に濡れた涙』
:2016/03/22(火) 23:09:47 ID:p1won6CY0
>>316
「……能力の使い過ぎか。
あんたも逃げてるのか?」
取り敢えずとして栄養ドリンクを投げ渡す。
足音が聞こえてきた、不味いな。
飛ばされてきたとしたら厄介なことだ、躍起になってる相手に荷物は抱えてられない。
血を流す左をチラと見て。
…流し過ぎだな、抱えて走るとなれば20分が限度だろう。
それでも逃げきれまい、なにより――。
奴がこのタイミングを逃す筈が無い。
318
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/22(火) 23:25:26 ID:NugK2bM60
>>317
「う…いえ、逃げてる…わけじゃないんですけどねー…
なんでだか、こう体調が悪いというか……」
ため息を付きながら、投げ渡されたドリンクを
「…ん、ありがとうございます。」
嬉しそうな顔で飲み始めた。
少しは気分が良くなっただろうか…
「よくはわかりませんが…
どうやらここはちょっとまずい状態みたいですね…」
と言ってあたりを見る
「…まさか、例のあれが…」
と言って心配そうにあたりを見る。ペルソナ抜きとかそういうのだろうか?
319
:
2:『血に濡れた涙』
:2016/03/22(火) 23:44:30 ID:p1won6CY0
>>318
ゆっくりと迫る影の形は俺には見覚えがあった。
これは――奴じゃない、だが……敵だ。
「おい、立てるか。
本命じゃないが……別のヤバいのが来た」
血を流す左から血液で長剣を作る。
輸血パックは後6つ、緊急用の代替血液は2つ。
十分といえば十分だが、守りながらは辛いか。
最悪、ペルソナを使うことも考えよう。
320
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/23(水) 00:02:06 ID:NugK2bM60
>>319
「……ん、敵が来た…んですか?」
振り返って、彼の向いた方向を見る。
何かが居るようだ…
「…ひとまず、
逃げられそうになさそうですね……
ココは……」
そう言って両手にエネルギーを込める
「戦うしかないですね…」
321
:
2:『血に濡れた涙』
:2016/03/23(水) 00:12:43 ID:p1won6CY0
>>320
現れたのは180cm程の骸骨のような兵士――。
こいつらは見覚えがある、まさか……。
「アンサングウォーリアだと…!?
厄介なのが出てきたな、狙いは…防人だってのか」
狙う理由は分からないが……捕まえさせる訳にはいかない。
長剣を一閃するが、切られた部位は即座に再生した。
どうやら本気でアンサングの尖兵らしい。
「気をつけろ!こいつらはちょっとやそっとじゃ倒れやしねえぞ!」
5体のアンサングウォーリアは剣を握り、ゆっくりと迫ってきていた。
322
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/23(水) 00:28:19 ID:NugK2bM60
>>321
「私が思ってたのとちょっと違います…ね…」
死神的なものが来ると思っていた鶫にとっては
その屈強そうな兵士は予想外である。
「…再生能力…
こういうのは大抵は
コアみたいなものがあるものですけど…」
そう言って両手のエネルギーを、持っていたオモチャの鉄砲に込める。
「……ひとまず一発!」
エネルギーを込めた弾丸を、兵士の頭部に向けて発射する。
人間で効きそうな部位を当ててみるしかないだろうということだ。
323
:
2:『血に濡れた涙』
:2016/03/24(木) 22:17:29 ID:p1won6CY0
>>322
「確か、一撃で高エネルギーをぶつけりゃ死ぬんだっけか
…相性最悪だな、クソが」
加速をかけてウォーリアを一体ずつ殴りつける。
硬いウォーリアは怯むが大したダメージはない。
しかし、弾丸を受けたウォーリアは一瞬では砂になる。
それを見た裕太は素早く戦術を変更。
「だったら・・・撃てる隙を作るか」
周囲に血を撒きながら、じりじりと距離を置く。
324
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/24(木) 22:22:50 ID:NugK2bM60
>>323
「ふう……頼みますよ。
素人なもんで、狙いは少々甘めなもので…」
一点への強烈な一撃…
これは鶫の得意とするところであった。
それならば自分の力を送り込んだ鉄砲の弾で撃破できる…!
「……次はこっちを!」
僅かな隙を見つければ、
鶫はすぐにそのウォーリアの一匹に一発弾丸を撃ちこむ。
接近してくるものが現れなければこのまま行けそうだが……
325
:
2:『血に濡れた涙』
:2016/03/24(木) 22:29:26 ID:p1won6CY0
>>324
接近する敵を器用に撒いた血を用いたトラップで止めていく。
こいつらは幸い知能は低い。大した敵にはならない。
…だが余りに弱すぎる。
「…まさか足止めか…?」
何度切っても再生する敵をきりながら。
周囲を伺う。何かがおかしいと感じて。
326
:
防人鶫
◆My6NsjkSfM
:2016/03/24(木) 22:39:44 ID:NugK2bM60
>>325
「ふぅ、思ったよりもこいつらは…
大したことのない相手ですねぇ!
馬鹿正直に…突っ込むだけなんて!」
少しばかり鶫にも余裕が生まれてきた。
接近してくる相手から順々に撃破していく。
鶫の攻撃で敵は動かなくなるのだ。
「どうか…しましたか?
この調子ならなんとかなりそうですが…」
と、なにか不安を感じているらしい裕太に声をかける。
少なくともここは袋小路ではない。
敵がある程度来なくなれば逃げの一手も可能では有るはず…
と、鶫は考えていた。
327
:
ルファス
:2016/03/25(金) 00:09:43 ID:/eXCKXlo0
>>288
ふと視界が歪み、気が付けば注文した通りの倉庫区画に立っている、自分の力に価値を感じていない訳ではないが、こういうとき本当に魔術というやつは便利だと少し羨ましく思ってしまう。
「……ああ、有ったぞ、あの車だ」
転移された場所から建物数件分距離をおいたところに、一般的な乗用車が一台無造作に止められている。
青年は懐からキーを取り出すと、クローン二人より先行し、周囲の様子を窺いながら車へと移動を始めるだろう。
/放置しすぎて他の方のロールが始まってしまった……本当にごめんなさい。
328
:
名も無き異能都市住民
:2016/03/26(土) 18:55:56 ID:ZxYW2hTc0
>>327
クローンたちはルファスに続き、周囲を警戒しながらも車に乗り込む。
幸い、周到な用意によって監視の目はこの車には届いていないようだ。
しかし、千夜にこれから喧嘩を売るにも等しいのだから
警戒はいくらしてもしたりない。特に、相手はあの偏執狂の権化ともいうべき
都市警備部門主任なのだから。
「で、これからどうするの?
まずはあなたのアジトへでもいくのかしら。」
リーダー格のクローンが、声をかける。
329
:
ルファス
:2016/04/07(木) 03:11:37 ID:4sbqgDdY0
>>328
これから争う相手を考えれば警戒は幾らしても足りない状況だろう、当然それを怠るような真似はしない。
だが――実のところルファスはこの状況をそこまで絶望的に捉えてはいなかった。
理由は単純明快、この案件は恐らく一般の社員や警備員に触れさせる事が出来ないものだからだ。
想像だが動いているのは本人とクローン研究所(仮)の人間、もし存在するなら信用のおける私兵がそれに加わる程度だろう。
「ああ、問題が起きなければそうするつもりだ、依頼人のパパラッチと合流したい、マスコミ関係者なら事を大袈裟にしていく知恵も俺なんかより遥かにあるだろう」
「異論ややりたいことが有るなら遠慮なく言ってくれ、受け入れてやれるかは別問題だが検討はする」
330
:
名も無き異能都市住民
:2016/04/12(火) 23:42:21 ID:v8UDs3jk0
>>329
「分かったわ。とりあえずはあなたに従いましょう。
この件については、ただ逃げ回っていた私たちよりも外部のあなた達のほうが
情報を多く持っているだろうしね。」
『ふーん、私はまー、銃を撃つ機会があればなんでもいいなァ。』
護衛として突いてきたNo47なる個体が、指を銃の形にしてバァン、とつぶやく。
クローンたちは、ルファスに従うようだ。移動すれば問題なくヘンリーの隠れ家に戻れるだろう。
今の所、千夜……小百合側の動きは見えないがいつまでつづくことか。
331
:
ルファス
:2016/05/05(木) 22:24:01 ID:4sbqgDdY0
>>330
「了解、それじゃあ一旦は此方に合わせて貰うことにしよう……取り敢えずは合流だ」
「それと、ドンパチやるのは俺にとっても日常だからあまり強く言えんが、銃は撃たないで済むのが一番だ、大体面倒な事にしかならないぞ?」
暴力反対、なんて言う気は無いが、会話で決着が付くならそれが大体の場合最良だ、時には力で威圧する事も必要だが、間違いなく今の自分達は違うだろう。
そんな会話をしながらも車は走る、何の問題も無ければ、一度車を乗り換える以外特筆するような事はなく、ルファスの事務所に付くだろう。
332
:
名も無き異能都市住民
:2016/05/18(水) 20:26:39 ID:v8UDs3jk0
>>331
ううん、もうしわけない。
ちょっとロールを凍結してしまっていいだろうか。
なにやら気力が……。ごめんなさい。
333
:
焔リンネ
:2019/03/02(土) 21:04:20 ID:ciGK1LWQ0
―――――埠頭
いつもと同じだと思ってた。
焔リンネという存在は都市で生きるには余りにもか弱い存在だった。
不意の不幸に対抗するだけの力を持ち合わせて居ない少女が、嵐のような暴力に見合われたことは一度や二度ではない。
それでも、彼女自信が持っていた絶望の源が、ただそれだけのことと受け流せるまでに感じさせていた。
今日も、同じだと、思っていたのに。
その槍で突かれることには何の感情も抱かなかった。
幾度となく繰り返された、死と蘇生をもう一度経験するだけ。
この後、この人の狙いが何であろうとも、私自身がどうなろうと、次の日には同じベッドの上で、目覚めるだけ。
「なんなんですか、アナタ……っ」
身体中の血が抜けていく最中でも冷静さを保てるだけに死を受けいれたリンネが意識を裂いたのは相手のことだった。
いつもの、暴漢や強盗まがいの人間とは明らかに違っていた。
頭から布を被り、身体の殆ども覆われているが、一目見て筋肉量には貧しいと解るほどの細身で。
一歩、一歩と迫ってくる足音が重い。人の脚や、革の靴じゃない、夜空に響く冷たい音。
暗がりの中でも気づく、黄金の輝きを放っていた、大凡戦闘用には見えない豪奢さを誇る槍。
違う、いつもと違う、何かが。
身体が寒気を覚える。不思議と不安を覚える。何にも怯える必要は無いのに。
恐怖の感情が止まらない。いつもと同じ、大丈夫。何度も思い返しても、焦りは消えない。
胸元から溢れて溺れ落ちていく血を掬い上げる。この、身体から出て行った熱はどこで取り戻されるのだろう。
もしかしたら、このまま、蘇らないとしたら――――――
334
:
アーリル
:2019/03/02(土) 21:23:13 ID:ORmT3UkU0
>>333
なぜ、この場に赴いたのか、自分でも分からなかった。
虫の知らせ、或いはなんとなく海を見たくなった。理由はどうでも良い。
が―――
彼女が……彼女が……
アイリスが大事にしようとしていた少女が槍に貫かれていた光景だった。
埠頭に来たのは偶々だが、この場に居合わせのは少女…アーリルにとっては幸運と言えた。――件の少女が貫かれている点を除けば、だが。
『リンネ…』
「リンネ……さん!?」
まずい。この状況は不味い。少女の僅かな“騎士としての経験”が警鐘を鳴らす。
即座に自身の得物である槍を取り出し、手にする。この場に不似合いな、布を被る人物に向けて槍を向けて。
すでに血も出している。そして、彼女がアイ■■をこの世にもう一度呼び戻せる可能性を持つ“人”
「少し、耐えてください!リンネさん!私はアーリル!■■リス兄様の血筋の者です!
子女に対する加虐行為、騎士として見逃せません!」
何を使えと言うのか。
このアーリルという名乗る少女の力であろう炎が突如埠頭に現れる。
身長145cmの小さな体と真紅の槍が白い布の者に立ち塞がろうとしている。
「――――お覚悟を」
アーリルが槍を握った時点で、この場を支配する空気が変わる。
威圧感に。一瞬で凍てつくような、そんな冷たいプレッシャー
335
:
焔リンネ
:2019/03/02(土) 22:05:04 ID:ciGK1LWQ0
>>334
怖い。怖い。怖い。
身体から血が抜けていく感覚。段々と死が迫ってくるのを感じる。
いつもなら怖くないはずなのに、何度だって経験してきたはずなのに。
暗黒の奥底に叩き込まれたかのよう、目は見えているが、何にも光を感じない。
今まで覚えていたようなものは何でもなかった。これが、絶望なのだと初めて知った。
この感触をずっと求めてたはずなのに、直面してみればこんなにも苦しいものだったなんて。
遠くで誰かの声が聞こえる。強く叫んでいる。
誰の声だっていい。何を叫んでいようが関係は無い。私が死んだとしても、誰にも……。
介入者の放つ空気が、矛先を変える。
リンネに刺さった槍を引き抜きアーリルへと向けられる。
黄金の槍の中腹にまでべったりと、赤い、しかし黒く濁った血液が混ざっていた。
アーリルに対して、見下ろす巨躯。2mを越すだろう背丈。顔は布地によって隠されていて伺えない。
黄金の槍を握る閉める華奢な掠れた包帯に巻かれ、そこからは何かが零れ落ちている。それ以外は布を巻いたような外套によってハッキリとしない。
「未だ、足りないのか……?」
一つ、小さな呟きが夜風に澄んだ音として渡る。
その途端、足元が大きく揺らぐ。埠頭の舗装された筈のコンクリート片が崩されている。黄金の輝きを放つ砂の粒に変えられていく。
謎の人物から広がっていく砂地がゆがみ、3つの鴉を形取り、アーリルへと迷うことなく向かって行く。
336
:
アーリル
:2019/03/02(土) 22:28:23 ID:ORmT3UkU0
>>335
スカートにカーディガンの姿の少女は首から下が真紅の炎に包まれる。
その後に現れたのは、違う姿だった。
一見する限り、ふくらはぎまで届きそうな軍服に見えるだろうか。
軍服とはいっても、ファッション性も有しているようにも見られる。
白を基調に、黒、或いは金といった色彩に彩られたそれはシンプルな形状。
首には赤いリボンタイ。首から肩にかけて様々な文様が刻まれたマント。
前身頃は左バスト部分まであり、縁は黒、黒の上から金の装飾が。
ウエストには革のベルト。軍服の間から見える足には縁に金で彩りが添えられた黒いスカート。そして黒のストッキング。
足の動きを阻害しないよう、かつ美しさも強調するためか、腰から下の軍服はヒラヒラと柔らかな動きを見せる。
腰から上が軍服のようで、腰から下はマーメイドドレスといった具合だ。そして、白い紐が通る黒いブーツ。
装着した者に美しさを添えるもの。そして多くの貴重な品を使用し強化されたそれは礼装ともバトルドレスともいえるものだ。
花の髪飾りが、揺れた。
「リンネさん。少しの間我慢できそうですか?我慢出来そうに無ければ、私の炎の力をお使い下さい!
貴方なら――大丈夫なはずです!」
少女――アーリルの体から熱波が吹き荒れる。
リンネを除いてコンクリートやコンテナをを融かす。その少女の出力、見た目に似合わない。
吹き荒れる炎はリンネに集まる。リンネに熱<力>を与えようとしているのか。
リンネに力を使っている分だけ、この白い布の人物に使うほどの余力はあまり残していない。
「(交わせば面倒。潰せば数が増えて結局一緒。)」
「リンネさん……!生を諦めるな!貴方には未来があります!その未来は貴方だけのものではないのです!」
アーリルは、この、黄金の槍を持つ偉丈夫に心当たりなんてないし、生き死には関知する気も無い。
だが、リンネをこれ以上虐めるのなら……兄様が大事にしようとしていた少女を虐めるというのなら。
「リンネさんは殺させなんてしない。彼女は兄様…■イリ■兄様が大事に思っている人です。
貴方がどなたが存じ上げませんが……邪魔なんてさせませんよ…!」
――我が魔槍を振るう時
燃えさかる劫火が槍を灼く。白布の人物が放ったカラスを撃ち落とそうと
虫を払うかのごとく、簡単に振るわれた。
337
:
焔リンネ
:2019/03/02(土) 23:15:39 ID:ciGK1LWQ0
>>336
何故、名前を知っているのか。
さっきの叫びを思い起こしながらゆっくりと飲み下していく。
久々に聞いた名前に、少しだけ活力を覚えた。
「だったら、放っておいて……ください。私のことは、知っているはず、です」
声が震えている。記録から知る限りでも、こんなにも怯えることは無かったはず。
アーリルの差し出した炎を受け取る。彼女がこんなにも恐れることは無かったはず。
「未来。そう、未来が……」
項垂れたまま力無く、口にした彼女の希望。
明日、どのように死のうとも、今よりも怖い瞬間なんか訪れ無い筈。歪だが、それが確実な希望だった。
だが、幾ら目を閉じていても先は見言えない。絶望を現すように、闇が広がるだけ。瞼の裏がこんなに暗いだなんて、知らなかった。
「どうして、どうして、どう、して……!!」
白い布の人物の足から砂地は絶えず拡大していく。
鴉を砂の粒に戻そうとも、幾らでも弾はある状態だ。
気付けば、リンネとかの者の周囲は既に変化を終えてアーリルの足元にも及ぼうとしていた。
「なんだっていい……キミで、試させてもらう」
不確かな足場の上を駆けるには早い。歩幅もあるが、それ以上に馴れている。
駆けつけてくるその脚が、僅かに布地から漏れた。黄金の鉤爪だ。
同時に、足元からさらに2体。新たなカラスが飛び立つ。そして、血に濡れた黄金を突き出してくる。
338
:
アーリル
:2019/03/02(土) 23:44:10 ID:ORmT3UkU0
>>337
「もちろん貴方のことは知っています!アイ■ス兄様の記録<記憶>からも知っています。
貴方の気持ちは私には分かりません。今、抱えている気持ちも、何もかも。そんなの話してくれないと分からないじゃないですか!
察しろ?そんなおバカな言い訳は聞きません…よ!」
アーリルは足を一踏み。
するとどうだろうか。炎は更に燃え上がり、埠頭は炎上する。
炎上する業火は焦熱の地獄への舞台装置の一つに過ぎない。
燃えさかるそれはリンネに吸われていくことは分かる。それでも出力は衰えない。
「私に分かることは少ないです。リンネさんの力と、この状況。そして、貴方の命が危機に瀕していること程度です。
生きるだとか、死ぬだとか……。死んでも蘇るから大丈夫だとか……!そんなものは関係無いんです!!
――貴方は気付いていますか?貴方の体は治っても、心は泣いているんです。傷ついているんです!今だってそうじゃないですか!
諦めていない。だからもっと、もっと!もっと!!自分に素直になって下さい!」
アーリルはアリスと出会ってから、少し素直になった。
それがきっかけで、少し感情的になることも多い。
「貴方を死なせたら…兄様を前にして、どんな顔をすれば良いのですか!擦り切れた心は……誰にも治せないんです。
だから傷を瘡蓋にする強さを……!!貴方の側には…。」
――私“たち”がいます。……吸血鬼になってくれればもっと良いんですけどね?
足場は砂に変わろうとしている。それはもう目前まで迫っており。
正直、足場なんてどうしようにも無い。
だったら……
339
:
アーリル
:2019/03/03(日) 00:30:29 ID:ORmT3UkU0
撤退できるだけの状況を作り上げればいい!
アーリルはつま先に槍を乗せ、槍を蹴り上げる。
空中に浮いた槍を追いかけるようにアーリルの体も空中へと。
「――――――flash Crimson」
赤き閃光の名を冠する、アーリルの必殺技といえるそれは白布の者に一直線に向かう。
突き出すほどに近くにいる以上、足場や互いのリーチの違いの関係もあり有効な攻撃方法でもあった。
このまま状況が緊迫した状態では、いずれ自身は海に墜ちる。
それまで自身の炎の力を使い、リンネに力を与え続ければ、リンネの力で動いてくれれば……素早く撤退出来る準備は出来ている。
340
:
焔リンネ
:2019/03/03(日) 01:29:22 ID:ciGK1LWQ0
>>338
燃え盛る炎が暖かった。
熱い、とか、そういう物の方が正しいのかもしれないけれど、真っ先に感じられるのは温もりだった。
焦熱の中で思い出されていく、かつて手を差し伸べてくれた人の名前、姿、心強さ。
がむしゃらな想いが、情熱的な掛け声が、炎の温もりが、あの時投げかけられた優しさ、重なる。
涙が零れ落ちていくのを抑えられない。
「だって、私には、どうせ」
出来ることなら、会いたくなかった。
「だって、私は」
あの優しさが、怖くなった。
「だって――――」
振り抜いた槍からすぐさま手を離して勢いを槍に持っていかれることを防ぐ。
宙に放り出された黄金は瞬く間に砂に返って、風に流れ地面に落ちてしまえば跡形もなく消える。
そうして身軽になった身体を翻し、頭上から降り注ぐ赤い閃きを見据える。
足元から砂がせり上がり鳥脚の者を護るように覆い隠していったが、アーリルの放った槍は容易くその防御癖を貫き通す。
相手としても、直撃を避けるための防御だったようで、その為に身を翻らせ砂の上で体勢を取り戻す姿が見えた。
その動きで布は大きくはためいて、衝撃で砂地を滑っていく身体にブレーキを掛ける、真っ赤なグローブを填めた左手が見えた。
「――――その、手」
リンネが小さく呟きを漏らした。
鳥脚の者が見せた左手の赤は、少女の右手に填められているものと同じだ、見間違える筈がない。
「教えてください、あなた、誰なんですか。
教えてください。そして、私についてのことも」
少女の身体から灰色の炎が一気に噴き上がる。
彼女の身体を焼き尽くし、胸の穴を修復する。安定しない足元を、一歩ずつ確かに踏みしめながら。
「私、死にたくないです」
灰の炎がリンネ自身を燃やしながらの背中で大きくなっていく。
「ただ一つ、確かなのはこの命―――――」
やがて巨大な腕が彼女の傍へ。そして、身体が組み上がり最後に出来上がったのは犬の頭。
燃え盛る灰の巨人がリンネの右肩へ寄せた頭にそっと手を上げて優しく撫でる。
「――――そう、あなたの名前、アヌビスって言うんですね」
鳥脚の者は纏っていた布をただし、体勢を整える。
右側に砂の山がせり上がってくると右手を差し込み、新たな黄金を引き抜いた。
それは、一度目とは違う、不可思議に宙に浮いた先端を持ち、翼にも似た意匠の刃を持った槍。
「Arize!!<目覚めよ!!>」
透き通るような声が耳に届く。
するとたちまち、砂の山がいくつも立ち上りそれぞれが人を模っていく。
軽装の鎧を身に付けた、黄金の剣を携えた彼らはさながら砂の兵士といったところか。
数は全てで5つ。アーリルに向けて2、リンネに向けて2、護身用に1といった配分。
341
:
アーリル
:2019/03/03(日) 01:51:27 ID:ORmT3UkU0
>>340
「戻れ。」
アーリルの一言。そして左腕を掲げれば、魔槍は不可思議な軌道で赤い閃光を引きアーリルの手元に戻ってくる。
魔槍を再び携えたアーリルに迫る砂の兵に目を向ける。
アーリルは速度と攻撃力が高いが紙装甲というタイプだ。
だから速度では簡単に負ける気はしないし、槍裁きも手前味噌ではあるが『まぁまぁ』だとは思っている。
だから、砂など気にかけずに。
アーリルの姿がブレる。
何も妨害されなければ、一瞬ののち、砂の兵の横につき、眉間目掛け槍を突き出すだろう。
アーリルの力で埠頭は業火の熱量と温度は際限なく上昇していく。
その場にいるだけで、灼熱の地獄に墜ちていく。死を連想させる焦熱地獄へ。
あるものすべてを灰燼へと返す炎。
「(焦熱へと進め。地獄の焦熱の先はすべてが死する破滅の世界!進められるものなら掛かってこい!)」
砂漠と化した埠頭に彩を添える炎。その様は正しく太陽が照らす熱砂蠢く砂漠。
その中の蟻地獄。今にも落ちていく可能性を秘めるそこにはリンネの命が掛かっており。
アーリルにとって、炎は生まれたころより親しんできたもの。故にどれだけ高温になろうにも何も感じないどころか心地よい。
この、あらゆるものを溶かし焦がしていく炎は身近なもので『あって当たり前』なもの。
だが、この白布の人物はどうか。やせ細っているのは見て取れるが、見るからに砂の世界の住人!
そして布。疑似的な昼の砂漠近くまで気温が上昇している中では、この白布の人物にとっては『庭先』といったところか。
「明日を知るのは、今日を生きた貴方だけなんです!――明日の貴方は昨日を知らないのです。
だから生きて!諦めないで!貴方はもう……孤独じゃない!一人じゃない!」
――だから……私を。私たちを頼ってください。
私の力を吸ってでも。私の力なら“幾らでも吸ってもらって構わない”
アーリルの力から、僅かに流れ込んでくるのはアイリスの気持ちのほんの一かけら。
砂漠の中の一粒の砂。それでもリンネを心配する気持ちが含まれている。
何故ならアーリルはアイリスの血と力を持っているからで。
アイリスが望んでいたのは、アイリス自身がリンネの後ろ盾になることだった。
だから吸血鬼にならなかったのは残念ではある。吸血鬼になれたのなら、心も、肉体も護れる。
それだけの力がアイリスにはあったし、それ以外にも様々な力があるのがアイリスだ。
それだけに残念だった。
そして、目に映るグローブ。
そう、アイリスの記憶<記録>を参照するならば、必ず目につくグローブだ。
それが、左右。
そもそもグローブや手袋といったものは、手に嵌めるもの。即ち二つで1つ。
じゃあこの白布の人物は一体――?
それにリンネの傍にいる犬頭の灰の巨人はいったい……
342
:
焔リンネ
:2019/03/03(日) 02:28:14 ID:ciGK1LWQ0
>>341
アーリルに迫る人型が頭を撃ち抜かれゆっくりと倒れ伏しながら砂の粒に戻っていく。
だが、向けられた兵士はもう一人。砂の塊ならではの、捨て身の剣技で迫ってくる。
リンネに迫る砂の兵士は犬頭の剛腕が容易くかき消す。
真っすぐに放たれた拳が上体全てを弾き飛ばし、形を保てなくなった人型は脆く崩れ去る。
もう一方が黄金を突き刺そうとしても左腕で払いのけられ消滅する。
「ふう。熱いですね……だけど、今は立ち止まっている場合じゃない」
砂の兵が崩れ去っただけ高く盛られた砂山を蹴散らしながら進む。
明確な足取り、強い意志で鳥脚の者へと向かい、距離を詰めていく。
まだ二人の距離は少しある。しかし、この余りにも巨大な灰の巨人の腕ならば、届く。
「アヌビスさん!」
彼女の声に呼応して間髪入れず、右の拳が振り下ろされる。
同じタイミングで、黄金の柄を砂地に差し込めば地面から巨大な砂の腕が突き上がり、即座に粉砕され砂が舞い上がる。
砂塵が晴れた後には……誰もいなかった。
拳に相対するのが目的ではなく、大きなものを砕けさせて目くらましにするのが目的だったのだろう。
後に残るのは二人の少女と、犬頭の巨だけ。
343
:
アーリル
:2019/03/03(日) 02:34:07 ID:ORmT3UkU0
>>342
アイリスの優しさがリンネを責めていたのだろうか。
アーリルには分からなかった。
「まだまだ行きますよ!耐えてくださいねリンネさん……?」
アーリルがいるだけで。その場で力を使う意思を出すだけで際限なく熱くなる。
気温はどんどん上昇していく。既に日中の砂漠の気温をたやすく凌駕している中で、更に上昇していく。
リンネの気持ちも知らず、気温は上昇し、さらにアーリルの力に還元されていく。
この場に限れば、熱砂の上で見下ろしながら嗤う疑似的な太陽。人の形をした太陽。
この力を一点へ向けるとどのようになるのだろうか。
このままアーリルを放置すればするほど気温は上昇し、焦熱の地獄へと堕ちていく。
全てを灰燼に帰す死の世界。この間も気温は上昇し続けている。
埠頭そのものが危なくなるまではもう少し時間がある、というところだろうか。
「(でも、大丈夫。)」
アーリルの力に晒され続けても、リンネなら大丈夫だ、とアーリルは思っていた。
リンネも炎の使い手だ。『ほんのちょっと』熱くなったところで問題はないだろう。
埠頭そのものを使用不可にするくらい、アーリルにとっては不足はないし、護るべき対象であるリンネが
自力で動けるようになった以上、こちらに天秤は傾いていると実感している。
でも…相手がいなくなった。
「…あれ?せっかく体が温まってきたところですのに……。」
アーリルの槍すらも燃え始めた。その熱すらもアーリルに還っていく。
炎を携えた槍を横薙ぎするとどうだろうか。暖かな日中の気温に落ちていく。
でも、なんだか消化不良。
「…えーと、とりあえず、初めまして、でしょうか。リンネさん。」
344
:
焔リンネ
:2019/03/03(日) 02:51:41 ID:ciGK1LWQ0
>>343
「き、消えた……?」
リンネは戦闘に関して全くの初心者である。
暴威に晒されたことは幾度となくあっても一度たりとも抗ったことなんか無かったのだから。
大気中に散らばった砂の粒から目を慣らす方法を知らず、消えたことに気がついたのは完全に視界が晴れてからだった。
消えてしまってはしょうがない、と溜息を一つ吐くと炎の巨人も消え去った。
「熱い……」
かの者が消えても埠頭の一帯は砂漠のままで。
焦熱が収まっていく中でもその余波は暫く残り、さらには照りかえしによってここだけが異様な熱さを誇っていた。
居てもたってもいられなくなり、ブレザーを脱ぎ降ろす。汗で張り付いた前髪を掻き上げたところで、声に身体を向けた。
「……はじめまして。えっと……アーリルさん」
名乗りを思い出しながらぽつりと返す。
リンネには面識はないが、彼女は『色々と』、知っているのだろう。
「私は、大丈夫なはずだったのに……いや、大丈夫じゃなかったかもしれない。
不思議と、怖かったんです……救ってくれて、ありがとうございます。
あの人には逃げられてしまったけど、私には……希望が出来た」
感謝の言葉が綴られるが、俯きがちな視線なまま。
345
:
アーリル
:2019/03/03(日) 03:05:18 ID:ORmT3UkU0
>>344
アーリルにとっては、砂漠の気温が気持ちいいくらいだった。
砂漠と化した埠頭、そこに広がる光景に消化不良からくる不満が目に見えていた。術者がいなくとも、効果が残っている以上
離れるべきだと思っていたが。
アーリルの首から下が業火に包まれれば、服装が変わっていた。
こげ茶のローファーに黒いタイツ。
黒いプリーツスカートにカーディガンから覗くのは白いシャツ。
「この状況です。槍の携帯をお許しください。
一刻も早くこの場を離れるべきだとは思いますが、まあいいでしょう。」
槍に火を灯し、照明の代わりとする。
するとアーリルの全体像が見えてくるはずだ。
「私は騎士でもあります。騎士が護るべき人を守るのは当然です。
しかし、あの力は本当でしたのね。いえ、疑っていたのではないのです。信じられなかった…
いや、『奇跡』を見たと言えばいいでしょうか。」
リンネとは正反対でアーリルは実に堂々としたものだった。そして笑みを返す。
騎士として胸を張れる行為をできたし、『希望』の命を救えたのだから、何も恥ずべき行為をしていないのだから。
その所作すべてにアイリス以上に自信が溢れていた。
346
:
焔リンネ
:2019/03/03(日) 03:22:27 ID:ciGK1LWQ0
>>345
リンネはいつも通り、制服姿だった。
何処に居て、何をしているときにも、この恰好をしている。
会話に花を咲かせる友達も居らず、遊びに興じるほどの余裕も無く。
ひたすらに孤独であった少女には、彼女にとっての必要最低限の生活しかしていなかったのだ。
つまり、私服が無い。
やはり、アーリルは力のことも知っている。
アイリスからは、色々聞かされているのだろうと、推測できた。
「この力なんか、持っていてもいいことは無いです。
誰かを護れるあなたが持っていれば話は別でしょうが、私なんかが……」
やはり、うつむきがちの視線は、アーリルを拒んでいるように感じられるだろう。
それが真実であると裏付けるように、
「あの、今日は……ありがとうございました、本当に。
私は、もう帰ります……あなたも、帰り道には、気を付けて」
と、早々に話を切り上げてアーリルの前から去ろうとする。
347
:
アーリル
:2019/03/03(日) 03:36:32 ID:ORmT3UkU0
>>346
「そのままで結構ですので、一つだけお伝えしなければならないことがあります。
私の所為でアイリス兄様はタナトスのお迎えが来ました。」
―嗚呼、どうして。
――顔を見ないのか。
「つまり、兄様はもういないのです。もう、一生。どれだけ望んでも私は兄様に会えません。
この世界に残したのは、一掴みの髪だけです。この髪が兄様がいた証でもあるのです。」
アーリルの頬に涙が零れた。
愛してくれた兄はもう二度と会えない、話はできない。
どこからか手にした瓶の中身。それはアイリスの髪だった。
リンネの知る、あの姿は小さな瓶の中に収まってしまうのだ。
「――だから貴方に助けてほしかった……。
あなたの力なら、兄様をこの世に戻せる可能性がある、と私は考えたのです。」
348
:
焔リンネ
:2019/03/03(日) 03:50:59 ID:ciGK1LWQ0
>>347
余りにも予想外な展開に、振り返って、歩み始めようとした脚が止まる。
思わずもう一度半回転して、アーリルに向かい合う。あの儚げな雰囲気を思い返す。
アイリスが簡単に死ぬとは思えなかった、何かが、あったのだろう。
「私には、
私には…。
私には……」
未だに、リンネの朱の瞳が向けられることは無かったが、その頬に涙が伝っているのは明らかだった。
死んだことが悲しいんじゃない。戻せることが嬉しいんじゃない。
「私には、あのひとに合う資格なんて、ありません……っ」
349
:
アーリル
:2019/03/03(日) 04:10:00 ID:ORmT3UkU0
>>348
「私と兄様は、貴方方の言う、いとこの関係に相当します。
私は幼少のころ、死の淵に立っていたらしいのですが、兄様と大お婆様から『血と力』即ち命を頂戴して
今、この場に立っております。私の死は血を絶やすことに繋がるのです。ですので、生かされました。」
アーリルは俯いき、瓶を撫でた。
それでも、アイリスとアスカリオテが出来なかったこと、しなかったこと。
幼いころ、アイリスに撫でてもらったように。
「そして、私には兄様と大婆様の記憶を記録として受け継いでいます。
ですので貴方の名前も力も知っていたのです。」
リンネの様子を見ようにも、目がぼやける。
涙が止まらないのだ。一度堰を切った涙の堤防は止まらない。
何せ、希望の星は墜ちたのだから。
「なぜ兄様だったのか。なぜ大婆様だったのか。それは私には分かりません。
ですが、兄様は髪を遺し、大婆様はお持ちの武器とこのカーディガンを遺して下さいました。」
アイリスは、初めから分かっていた。
だからリンネに、自分の未来を見るなと伝えたのだ。
死ぬ自分に未来なんてない。それが分かっていたからだ。
眷属にすれば、少しでも心の拠り所ができる可能性も考えていたのだ。
でも、アーリルの希望は、今、この瞬間。リンネの言葉により希望は消え去った。
「……そう、ですか。会いたくなければ避ければいいじゃないですか。お礼はするでしょうが、それ以降は無理に会うこともないでしょう。
お互い他人の振りをすればいいですもの。簡単なことですわ。」
アーリルは涙を浮かべたまま、歩き始める。
帰り道なんて気にしなくてもいい。それより、この髪の方がアーリルにとって大事なものなのだから。
リンネとすれ違う時、呟いた。
「……兄様、ごめんなさい。会いたいよぉ…兄様……。」
350
:
名も無き異能都市住民
:2019/03/03(日) 04:23:46 ID:ORmT3UkU0
>>349
に追加
「…リンネさん。会う資格だとか、は私には分かりません。
理由をお教えくださいませんか?このままでは、私は我慢できそうにありません。」
ごめんなさい、とつぶやいた後、背中越しにリンネに言葉を投げた
351
:
焔リンネ
:2019/03/03(日) 04:40:30 ID:ciGK1LWQ0
>>349
アーリルの反応でハッとした。
自分は今、何をしでかそうとしていたのか。
この可能性を経ってしまうことが意味することを。
違う。
気付けばすれ違ったばかりの肩に手を伸ばし、縋りつく。
違う、違う。
多くの人にとって死は永遠だったのだ。それが、たとえ、如何に強くて高潔なものだとしても。
「だって、ダメだったんですよ、私!
あのひとがどんなに優しくして、あったかくしてくれて、気遣ってくれても!
初めは言われた通り労わろうとしました、でも、ダメだったんですよ、やっぱり……。
一人が怖くて、本当に死ねたらいいな、なんて思っちゃって、気付いたら、元に戻ってしまってた。
でも、何度やっても、なにをやっても、やっぱりダメで。
目を覚ます度に、私はみじめだって、あのひとに叱られるって思ったら、それが怖くって。
だから、できれば会いたくなかった。あのひとにも、あなたにも。でも……このまま死んでいてほしいなんて思ってません……会いたいです。私も」
これを離したら、死んでも死にきれない。
蘇ったとしても、生きる価値を失ってしまう。真の意味で。
352
:
アーリル
:2019/03/03(日) 05:15:44 ID:ORmT3UkU0
>>351
リンネの手でも、アーリルの歩みは簡単に止まった。
小さな体。それでもはっきりと、小さな震えは伝わるだろう。
涙が一筋、零れた。
星がまた、瞬いたからだ。
「兄様はおそらく怒らないでしょう。そうか、と笑みを浮かべて何がいけなかったのか、まず考えるでしょう。
かつて死にたがった貴方は、死にたくないとはっきりと口にしました。」
そして、アーリルの雰囲気が唐突に変わる。
リンネのいうあの人――アイリスの持つ、雰囲気に。
『君は変わったよ、リンネ。ああ、もちろんいい方向にね。
君が昨日を向くのではなく、明日を向いたこと。それが僕にとって最高の報せさ。』
金髪の蒼い瞳。ポロシャツにヴィンテージジーンズ。
いつか会った姿のアイリスだったか。そんな姿を幻視させるほど、アーリルの口調や纏う雰囲気はアイリスだった。
『君が未来を視た。つまり、この子が此処にくると分かっていた。だがこの状況までは分からなかったのだろうね。
寂しかったんだね。気付いてやれなくて申し訳ない。
君はね、もう一人じゃない。一人だから怖いけれど、二人なら恐怖は薄くなる。三人、四人だったらどうなのだろうね。
だから、顔を上げてごらん、リンネ。今日は星が綺麗だ。』
言葉はアイリスのもので。アーリルの体を使って、アイリスが話していると錯覚させるほどリアルなものだった。
「死を望む貴方は、今日死亡しました。今生きているのは、生を望む貴方です。
――お願いします。兄様を救ってください。」
瓶から髪を取り出し、リンネに差し出した。
男性とは思えないほど、サラサラでつややかな髪。そして潤沢な魔力を含むアイリスの髪。
これでダメなら、もうあきらめる。腹を括ったと思わせる強い瞳だった。
353
:
焔リンネ
:2019/03/04(月) 01:12:11 ID:ciGK1LWQ0
>>352
「アイリス……さん……?」
嘗ての言葉が思い返される。
アイリス自身の未来には、もう触れない方が良い。そう忠告されたことだ。
その言いつけだけは守ってきた。あの言葉の意味が今になって解る。
あのひとは、何れ、近いうちに死を迎えることに気付いていた。
命のレールの終着点まで程ないことを、きっと、あらかじめ知っていた。
そうだ。今日は何故、未来を見なかったのだろう。
正確には、埠頭に足を運んでいる自分までは見た。だから、ここに来ていた。
それより先のことは見ていない。しかし、ここでアーリルの頼みに乗らないはずはないと言い切れる。
「私、やります。それを、ください」
この炎の力を使った。それも、命を取り戻すようなことをしたら。きっと、怒るのだろう。
それでもいい。怒られても良いから、会いたい。
魔力のことはわからない。それでも、髪の一束だけでも訴えかけてくるものは伝わってくる。それだけに、あのひとは大きな存在だったのだろう。
灰の炎が溢れ出てくる。手を覆って、髪まで渡って。このあとは、どうなるか。
354
:
アーリル/アイリス
:2019/03/04(月) 19:05:05 ID:ORmT3UkU0
>>353
灰の炎はアイリスの髪を媒介にすると、埠頭を覆うほどの熱波がまず巻き起こった。
巻き上がる砂にアーリルは思わず手で顔を覆うが熱くない。
不思議そうに炎を眺めるが、未だアイリスの姿は見えず。
その後、都合3度熱波が巻き起こった後、熱波はアイリスの髪に収束する。
収束した熱波は灰色の火柱へと変わると、その勢いは次第に落ちていく。その時間はどれほどだっただろうか。
――――そして
―――――――――アイリスはこの世に蘇る。
アイリスの髪を媒介にし、アイリスが蘇る。
アイリスを構成するパーツが順番に形作られていく。
最初に現れたのは、艶やかな金色の髪。
色白の肌に、鮮血の様な瞳。縦に伸びた楕円形の黒い瞳孔。顎は細く。唇は薄い桃色で。
胸元を大きく盛り上げるバストラインを隠すのは、薄く仕上げられた花の装飾。背中が大きく開いた至極色のホルターネックのドレス。
首には宝石があしらわれたチョーカーがあって。
二の腕から手の甲まで伸びるのは、グローブ(手袋)と言うべきなのだろうか。
両手の中指で止め、手の甲、肘、二の腕をしっかりと隠している。またそれらも細かな装飾が施されており。
マーメイドドレスを思わせる様な、裾の長いドレスは通常のものより長く。
ただ、このドレスの変わったところは右足の太ももの半ばまで入ったスリットだろうか。
歩くだけで裾が大きく靡き、美しい姿を見せる。黒いヒールが、砂地に深いキスをした。
しかし、アイリスの体はぐらりと傾く。
砂という足場に取られたという理由もあるが、それよりも……ただ弱っていた。ただただ弱っていた。
リンネでも見てわかるほどに弱りきっていた。
長い休息の間に、体を動かさなかった代償であり、力を完全に取り戻せていない証左でもあった。
「兄様!兄様……?」
アーリルは兄様?に飛びつき体を支える。手に持っていた槍はいつの間にか倉庫にしまわれており。
兄様と呟くアーリルは、見た目通りの少女の姿だった。
そこには先ほどまでの朱槍を携えた力強い姿は無かった。
『アル、リンネ……。久しぶりというべきかな
元気だったかな、と確認するのは野暮か。』
「アル、僕さ。君の兄の僕はここにいる。しかし…随分と大きくなったね。もう、抱っこはしなくてもいいかな。」
顔すらも隠すほど伸びた、伸びっぱなしの髪を掴み、ふむ、これはどうするか、と頷いてみせる。
『ありがとう、リンネ。此処にこうして、再び立つとは思ってもいなかったよ。』
今の気分はどうだい?
そんな風にアイリスは戯けて笑ってみせた。
355
:
焔リンネ
:2019/03/04(月) 20:30:47 ID:ciGK1LWQ0
>>354
「……!!」
熱くは無い。急激に勢いを増す炎に驚いただけ。
余りにも怖くて、人に対して力を使ったことは無かったが、吸血鬼となればなおさらだ。
何が起きるのかわからない。だが、手ごたえは感じる。
少しして、さらに強いエネルギーの波が、手のひらに、中の髪束に押し寄せてくる。
確実に前に進んでいる。ぐっ、とより強く握りしめる。力を使えばいいだけなのに、自然と身体にも力が籠るのを感じた。
「アイ、リス……さん?」
炎に包まれていた時のシルエットから、少しの違和感は覚えていた。
直接目にして、それが間違いではないと知ったが……そんなことは些細な事だった。
いつの間にか槍を捨て、温かい笑みを浮かべてアーリルが抱き付いていくきょうだいのじゃれ合いを見て。
リンネ自身も、姿こそ違えど立ち居振る舞いに懐かしさを覚えていた。間違いなく、彼だ。
「はい。えっと、あの……」
今度はリンネの番とアイリスに微笑みかけられて、思わず言葉が詰まる。
もう一度会えたら、なんて考えていなかった。
もう一度投げかけられた、微笑みを前にしてどうしていいのかわからない。
頬を伝う涙を止めることも、それを頼むこともできなくて。
孤独な少女のほんの少しの想いで、故にとても大きな思い出が蘇り、感情の波が押し寄せる。
気付いた時には、アーリルと同じように、抱き付いていた。
「会いたかった、です」
356
:
名も無き異能都市住民
:2019/03/04(月) 21:00:46 ID:ORmT3UkU0
>>355
『(大丈夫、僕の目でもリンネもアルを壊さないはずだ。)』
リンネがアイリスに飛び込んで来ると、アイリスはリンネの頭を優しく撫でる。
白磁の肌に細くしなやかな指が優しくリンネの頭に添えられる。それは慈しむ様に。
『良い子だ、リンネ。よく頑張った。寂しかっただろう?
だけど、これからはアルもいる。僕もいる。だからもう……怖くなんて、ないさ。
それから――――ごめんね、リンネ。僕は君に心の拠所を用意するつもりだったが、
僕が君の心を締め付けてしまったのかもしれないね…。』
リンネの頭を、優しく撫でた。
だから、今度は、下を向くのでは無く、少しだけ上を見てみよう。
すぐに出来るはずはないさ。だから少しずつで、いいさ。君のペース、でね。
「アヌビスさん?もいるので大丈夫です!」
リンネの違和感は些細なものだった。男の子か女の子か。伸びっぱなしの髪が少し鬱陶しい。
アイリスの希望としては、男の子でいたかったようだが、そういう訳には行かなかったようだ。
さすがに股間までは確認していないが、胸元を押し上げる胸部装甲は中々にご立派であった。
リンネよりも僅かに大きい88cm。両手で持ち上げて離してみると、ぷるんと震えた。
アイリスのこの姿は、遺髪が原因であった。
アイリスの家では、髪には魔力をため込むもので、ある程度伸びてしまえば、切ってしまう。
魔力がたまった髪を、特殊な力を持つもの、礼装として加工する際の素材とする。
だから男女問わず、長髪であることも求められるものだが、アイリスの場合は切った髪が“女性の時の髪”だった為。
女性に“戻って”固定されてしまったのだろう。
「えーっと、兄様、では無く姉様…?」
『アルもよく頑張ったね。見違えたよ。ずいぶんと可愛くなった。』
自然とアーリルを撫でる手も優しくなっており。
しかし、笑みを崩さずにいるアイリスの頭には別のことを考えており。
買い物をすると金銭を支払う。
なら、僕の命は……何を支払うのか。
対価はリンネの死か?それとも僕自身の命か。或いは……
こればかりはリンネに聞いてみなければならない。そして、僕たちのこともリンネに教えるべきだろう。
――これから少し忙しくなるか
357
:
焔リンネ
:2019/03/04(月) 22:17:06 ID:ciGK1LWQ0
>>356
「……ごめんなさい。
あなたに言われたことが、守れなくて。
一人が怖くって、今もこうして、あなたを戻してしまった。
覚悟を決めて、消えた筈のあなたに。会いたいと、思ってしまったから。
いえ、あなたのやさしさは嬉しかった。それだけに、弱い自分が、許せなかった」
考えて、思考をまとめるまでもなく、次々に溢れてくる。
あの温もりにもう一度触れられた喜びが、嬉しくて、ただ、嬉しくて。
「はい。この子は……ずっと、私を見ていてくれたんです。
この子も、私がこうやって、目覚めるのを待っていてくれていた。ごめんなさい……気付くのが遅れて」
リンネの背から灰の炎が噴き出して、大きな犬の頭を模る。
鼻先をちょこんと乗せたその姿、身体が作られていない今だけを見れば、相応にに愛らしい。
ぴんと立った耳を後ろから倒すように撫でてやる。
「私は、今日、生まれ変わりました。
あなたたちのお蔭で……ありがとう」
358
:
アーリル/アイリス
:2019/03/04(月) 22:43:46 ID:ORmT3UkU0
>>357
アーリルは何も語らなかった。いや、語れなかった。
彼女は、少し前の自分と同じだったんだ。
弱い自分。自分も兄の蘇生を望んだ。守ってくれる人がいて欲しい。
では、何がきっかけだったか。それはアイリスの視線から語られる記憶。
「…私だって同じです、リンネさん。
私も、兄s…姉様を求めました。守って欲しかったんです。一人は…寂しかった…。」
アーリルの場合は、自分の所為で、兄を殺した。自分が生きる為、兄が死んだ。
だから、アイリスに対する負い目は相応に重かった。
『約束…か。リンネ、一人は寂しい、といった感覚は捨ててはいけないよ。
もっと周りに頼ったら良いんだよ。一人で出来ることなんて、たかが知れてるのだから。
僕なんて、周りにたくさん頼ってきたよ。それこそ、迷惑なくらいにね。』
考えてみなよ。この都市の住人なんて厄介事なんて大歓迎な人ばかりさ、なんて笑みを浮かべた。
アイリスはリンネことを心配していた。何処かの悪いやつに攫われていないか。何処かの組織に捕まっていないのか。
体が生き返ること無く、土の中に入っていないか。はたまた殺人鬼に狙われていないか。好事家に売られていないか等など。
それはもう、本当に心配した。
この都市には可笑しな性質を持つ者が多く、戦う力を持たないリンネには抵抗出来ないのは明白だった。
『ただ、この子の容態が急に悪化してね。その前に伝えることが出来たら良かったんだけど…。
とにかく、改めてただいま、でいいかな、リンネ。それから、君も。』
ぎゅっとアイリスの腰に腕を回し、強く抱きつくアーリルの頭を撫でて。
花の髪飾りを見て、自身が残してしまった“痼り”を嫌でも意識してしまった。
本来なら、自身が感じるものでは無い、痼り。自分の行動には、胸を張れると思っていたのに。
『(蘇生を予測していながらも残される側の気持ちを考えていなかった、か。つくづく馬鹿だね、僕は。)』
ただ、アーリルが蘇生に走るのは想像していた。が、これほど早いとは思ってもいなかった。
「……姉様、お会いしとう、ございました…リルは大変嬉しく、思います。
また城に来て下さい。今はルゥ…私の妹もいるのです。是非お会いになって下さい。」
『とはいってもね、僕たちはやりたい様にした。それが結果的に良い結果につながった。
それだけだよ、リンネ。君が元気で本当に、良かったよ。』
アーリルの涙は止まらない。留まることを知らない涙は、溢れ続ける。
アーリルにとって、アイリスは自身の為に命をくれた人。そして優しく包んでくれた人。
アーリルはリンネに対して、僅かな嫌悪感を持っていた。俯いてばっかりの子。だけど姉様になっちゃった人を慕う人。今は嫌悪感は無い。
前を向き始めたのだから!そんな子は『応援』しなくっちゃ!
『ところで、今の日付はいつかな?』
359
:
焔リンネ
:2019/03/06(水) 03:25:08 ID:ciGK1LWQ0
>>358
「私は、ずっと、一人で。
頼り方なんて、わからない、ですけど……」
あの時は、必死だった。
一人で抱え込んでいたのを、初めて独りにしてくれなかったのがあのひとだ。
泣きじゃくって、縋りついて、必死だった。助けてほしいって願った。
「あなたたちなら、こうやって、今みたいに。
自分をだしていけるような気がします。だから、すこしだけ、頼れるかもしれません」
テレビのニュースや、クラスメイトが話している雑談が耳に入ってきたりして、取り入れる情報は、どれも不可思議なことばかりだ。
力に関していえば自分もそれらに負けないと思うが、逆に話には上がらないようにしないといけないとは念を押されている。
大事なのは、誰もかれもが得意を抱えているということなのかもしれない。だからこそ、お互いがお互いを知らなければいけないということかもしれない。
そんなことに今更気づいて、ふと、笑みがこぼれる。
「だから……おかえりなさい」
だったら、もう少し、他人を知ってみるのもいいのかな。なんて。
リンネがアーリルに対して苦手意識を持っていたのは、アイリスの面影を感じていたからだ。
事情を知っているならば、尚更。その後の愚行が、彼の想いをどれだけ裏切ったことか。罪悪感に苛まれていた。
だが、それを今一度許してくれるなら、こんどこそ。
「……今日、ですか?」
きょうだいから姉妹となった二人のやり取りが微笑ましい。
アーリルの慕う姿は、血の定めなんか関係ない、普通の姉妹のように映る。
そんな中で、夫コ聞こえた問いかけにぽつりと返し、ブレザーのポケットを探る。
生徒手帳だ。巻末にはカレンダーが付いていたはず。「ここです」と日付を指して見せた。
360
:
名も無き異能都市住民
:2019/03/06(水) 18:46:24 ID:ORmT3UkU0
>>359
『それほど時間が経っていたのか。』
アイリスは、自分が命を捧げてから経った時を聞いた。
時間の差異はあればあるだけ情報の取得が手間になる。今までの都市の出来事。大小の差はあれど、大凡変わりないものだろう。
毎日が事件、事故。それからアーリルが持つ情報の確認や城の確認。考えば時間が足りない。
まあいい。それは追々。
アイリスはリンネの愚行については行動も含めて、何も言うつもりはなかった。
リンネにとっては約束でも、アイリスにとっては警告だったからだ。意図して重く伝えたところはあったが…
『なら、今日は誕生日と記念日にしないかな。彼――で良いのかな。それとも彼女か。
僕にはわからないけれど誕生日にしてさ。それから、今日は君が前を向き始めた記念日。』
「アヌビスさんです。姉様。」
『アヌビス、の誕生日だね。』
リンネに懐く様子を見る限り、雌雄どちらとも見えてきた。リンネに甘える様子を見れば尚更だ。
『僕たちにはもちろん頼ってくれて構わない。ある程度の力にもなれるつもりだしそれなりにネットワークもあるからね。
助けて。ただ、一言で良いんだよ、リンネ。どうだい?簡単だろう?』
恋の悩みは僕たちには難しいと思うけれど、と、箒の様な髪のまま、アイリスは笑った。
『君が少しでも他人に興味を持とうとするのは嬉しく思う。今までは君は自分の殻に閉じこもってきた。
でも、他人を少し知ろうとしているんだからね。大丈夫、怖くなんてないよ。勇気を出して話しかけてご覧。
君は一歩を踏み出す勇気をもう持っているはずだ。』
アル、髪を頼むよ。と言えば、アーリルはアイリスの髪を後ろにまとめ上げる。
僅かに髪を緩めているのは少しでもオシャレ感を出すためか。赤い目が露わになった。
『ああ、そうだ。リンネ。未来視を極力使用しない様にする気はあるかな?
未来なんて、知らないから楽しいし、楽しみでもある。未来を知ってしまうと、きっと楽しくない。
このように考える方が前向きになると、僕は思うよ。それに、君もこんなところに来ないだろうし、ね。』
アイリスは未来視を持っていないのでわからない。
勿論、未来を知るメリットは計り知れない。だが、未来がわからないからこそ、今日を過ごし、明日の楽しみができるのではないか。
アイリスもアーリルも未来視を持たない。だから、今日を過ごすし、何かが起きれば自分にできることをする。
人というのはそういうものではないだろうか。
アイリスは■を見て、そう思えた。それが人だから。
――ただいま、リンネ。ずいぶんと待たせてしまったけれど、僕は此処にいるさ。
361
:
焔リンネ
:2019/03/07(木) 22:14:18 ID:ciGK1LWQ0
>>360
「誕生日……。よかったですね、アヌビスさん」
所詮、炎の塊であるそれは感情を表現するそれを持たない。
しかし、リンネとは通い合うことが出来るようで、撫でる手に穏やかさが、頬には明るさが出ていた。
「それから、私にも。
簡単……。まだ、誰かに助けを求めるのは、難しいかもしれませんけど。
アイリスさんとアーリルさんにだったら、お願いできるかもしれません」
リンネは物心ついてから孤独。そのせいか内向的で、外に対しても自ら壁を作ってばかり。
人と離すことなんて、学内のちょっとしたやりとりや買い物の途中の事務的なことが殆ど。
そんな少女が、はにかみながら出した結論。少なくとも、恋の相談はまだできそうにない。
「……はい。頑張ってみます。もっと、色々な人と……」
知らない人と話すのは、まだちょっと想像が付かないでいる。
自分から話しかけたことなんかも、ほとんどないから、どうやって話すのが良いんだろうか、とか考える。
そして気づく。今既に、昨日までの自分では考えもしなかったことを心配している。そして、それが少し楽しみにも感じているということに。
「未来を……視ないようにする?」
未来視を持たない者達が、未来視をよく理解できないように。
未来視を持ち活かしてきたリンネには、それに頼らないようにするというのは想像が付かない。
どうすればいいのか、判断に迷ったときは未来に従うことすらあった。今日の様に。
当たり前のように用いてきた力に頼らないとするのは難しい。
「それも、頑張ってみようと思います」
ただ、アイリスが言うなら、やってみようかな。と思っていた。
362
:
名も無き異能都市住民
:2019/03/07(木) 22:44:18 ID:ORmT3UkU0
>>361
『すぐになんて出来ることじゃないけれど、一回できたんだ。
次からは簡単なんだ。何も、難しいことは無い。』
アイリスは笑みを浮かべて、目の前のリンネの心の成長に感心していた。
リンネは内向的な子、と想像するのは難しくない。
だから、自分の心は良く分かっているはずだ。だが、それは分厚く、固い殻であるとも言える。
『自分の芯』がブレないという意味では素晴らしいことだが、多少内向きに向かいすぎているとも思える。
何か、自分の殻を打ち破るきっかけがあれば良い。
殻にヒビを入れてしまえば、後はリンネは自分で殻を破るなんて簡単だろう。
そのきっかけが、今回の件で。アーリルは偶々出くわしただけで。本当の意味で頑張ったのはリンネ自身だ。
「はい!私にお任せあれっ、です!」
アーリルは笑顔で私も少し戦えるんですよと言い、頼りない力こぶを作る仕草。
アイリスはその仕草に笑みを浮かべて。
『きっかけなんて、何でも良いんだよ。席替えの時に隣になった子に話しかけたりしてね。
本当に、本当に些細なきっかけなんだ。大丈夫、君になら出来る。リンネ。』
「姉様、そろそろ戻りましょう。お体にさわります。」
『そう、しようか。リンネ。決めるのは君だ。だから君が決めるんだよ。何かあれば、僕たちでも相談に乗れるからね。
あまり、気負わずに、ね。』
僕たちはそろそろ行くよ。帰りには気をつけて、と笑みを浮かべ、アイリスはアーリルに転移を促す。
するとどうだろうか。二人の体は火の粉へと変わっていき。
火の粉に変わる前にアイリスとアーリルの手が振られていた。
363
:
焔リンネ
:2019/03/31(日) 20:21:02 ID:ciGK1LWQ0
>>362
「……はい」
背中を押してくれる言葉が、温かい。
思い出す限り、孤独だったリンネに差し伸べられた初めての手。
何処かで、誰かに。自分からも手を差し伸べられるだろうか、まだ、自信は無い。
けれども。応援してくれる二人の為に、自分自身の為にも、頑張ってみようかな。そう思える。
去って行く二人を見つめる。
火に移り変わり風に消えていく最中で、別れを示すサインに気付いて。
ふふ。と思いもせずに吐息を漏らしながら見送った。
後に残るのは日差しと砂。周りにはだれも居ない。
今この瞬間だけを見れば、いつもと同じ独りに見えるかもしれない。
ただ、少女の顔はどことなく明るく、踵を返す足取りは軽かった。
何処かへ向かい、何をしようか。想像を働かせることへ、僅かながらの楽しみを見出しながら、進んでいく。
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