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【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 避難所【クロスSS】

1追い出された名無しさん:2010/12/29(水) 15:56:47 ID:xU68qfbE0
【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 避難所【クロスSS】

ゲッターロボ等、基本的に石川賢作品と他作品のクロススレです

●保管庫
ゲッタークロスオーバーSS倉庫
ttp://wikiwiki.jp/gettercross/

85ゲッターロボ0080 第二話7/13:2011/10/10(月) 23:29:56 ID:aBCXeFeY0
「そういえば……」

と、そこでバーニィは、武蔵が口にした奇妙な一言を思い出した。

「ムサシさんはさっき、ゲッター線を戦争に使う事に驚いていたようですが、
 ムサシさんのゲッター3は、戦闘用の兵器ではないのですか?」

「ん……?」

バーニィの問いかけに対して武蔵がらしからぬ曖昧なつぶやきで応じる。
彼の言葉を借りるならば、ゲッターの備える変形機構は、宇宙開発の目的で生み出されたものだったのかもしれない。
だが、搭載した斧や大型ミサイルまで、自衛のための装備と言い切るのは明らかに無理がある。
間違いなくゲッターロボは、開発の途中で戦闘用へと転換させられた兵器であるハズなのだ。

「ムサシさんは、ゲッターロボは元の世界で、一体何と戦っていたんですか」

「ああ、そいつはよ……」

と、しばしの間、武蔵はあれこれと考え込んでいるようだったが、
やがて大きく息をついて、ゆっくりと頭を振るった。

「いや、今はやめておこう。
 今、詳しい説明をしたところで、かえってお前を混乱させるだけかもしれねぇ」

「はあ」

「さて、明日はまた市街地に入る。
 今日のところはこのくらいにして休むとしようぜ」

言いながら武蔵が立ち上がり、ゆっくりとコックピットに背を向ける。
バーニィが手元の時計を確認する、夜間は交代で見張りにあたるのが、ここ数日の決め事になっていた。

「明日、か……」

バーニィが地平の先に見える文明の跡を見つめる。
一切の光が灯らぬ瓦礫の跡に、ちくりと胸がざわめく。
それが単なる郷愁であるのかまでは、その時の彼には分らなかった。





86ゲッターロボ0080 第二話8/13:2011/10/10(月) 23:34:06 ID:aBCXeFeY0
瓦礫と砂埃にまみれた街並みに、鉄塊とキャタピラの足音が響く。
モニターごしに見つめる文明の名残を、興味深げに武蔵が覗き込む。

「こいつはまた、何か偉く場違いなところに来ちまったな」

「…………」

誰にともない武蔵の呟きに、バーニィは応じない。
だが胸中に抱いた感想は、彼とまったく同じものであった。

歴史の重厚さを感じさせる建造物と、区画化された近代的な通りが融合した。
近世ヨーロッパの一角のようなモダンな町並みは、
確かにこれまでのような、怪獣決戦の後のビル群のような無残さとは無縁のものであった。
とは言え、この街が単なる懐古主義の産物ではない事は、放置された無人のエレカや、
そこかしこに散見する設備の跡からも分る。
惨劇と破壊にまみえる前までは、さぞかし住み易い街だったのではあるまいか。

例によってスクラップ同然に放置されたロボットを見つけ、ゆっくりと武蔵が近寄る。
腰部で分断された白色の機体は、ゲッター3よりも一回り小さい。
頭部に当たる部分は大きな半透明ゴーグルで覆われ、無言で武蔵を見つめていた。

「こいつはゲッター……、では無いみたいだな。
 バーニィ、サイズ的にはお前さんのザクと釣り合うみたいだが」

「……RGM−79G ジム・コマンド。
 連邦が使っていた、量産型のモビルスーツです」

「やっぱり、お前さんたちの世界の兵器だったか、しかし、するってぇと……」

「……くっ! どうして、どうしてコイツが、こんな所にッ!?」

「――ッ!? バーニィ、どうした!?」

突然にスラスターをふかし、バーニィの駆るザク改が、瓦礫の街並みに消える。
慌てた武蔵が手にしたMSを打ち棄てるが、大型のキャタピラでザク改のホバー走行を追うのは困難であった。
一方のバーニィは、初めから目的地が見えているかのように迷いない動きで交差点を抜けていく。

「くそッ!? バーニィ、一体何が……」

バーニィの行方を追う内に、いつしか武蔵は、閑静な住宅街へと辿り着いていた。
常ならば子供たちの笑顔に満ち溢れていたであろうその場所も、
現在はやはり、暴力の無残さを強調するだけの破壊の跡であった。

「バーニィ!」

仲良く産業廃棄物と化した二つの住居、その前にバーニィはいた。
胸部のコックピットを開け、呆然と瓦礫の山を覗くその瞳は、遠目にもどこか虚ろであった。

87ゲッターロボ0080 第二話9/13:2011/10/10(月) 23:36:14 ID:aBCXeFeY0
「どうしたってんだ、バーニィ、何があった」

「……ここなんです、ムサシさん」

「何?」

震えるバーニィの口調に、武蔵が怪訝な瞳を向ける。
やがて感情の昂りと共に、バーニィがはちきれんばかりの声を上げた。

「ここはリボーコロニー……、俺のいた、俺の守ろうとした街なんだ!」

「何だと!?」

「くぅッ!」

声にならない叫びを上げ、行き場のない拳をシートに叩きつける。

「これは、一体何だって言うんだ。
 何があった、核は……やはり核は落ちたって言うのか?」

「おい、バーニィ……」

「結局、間に合わなかったって事なのか? 俺、は……」

「しっかりしろッ! バーニィ!!」

「――!?」

横合いからの怒声に、我に返ったバーニィが辺りを見渡す。
動揺が晴れるのを待って、武蔵が言葉を紡ぐ。

「落ち着いて考えるんだ。
 お前の言うコロニーって奴は宇宙に浮かんでいるって話だったろ?
 だったらこれまで歩んできた世界と地続きであるハズが無ぇ」

「あ……」

「今さら言う事でもないがよ、この世界はまともじゃねぇ。
 これが夢か幻なのかは分らんが、きっとお前のいたコロニーは、こことは違う場所に存在しているはずだ。
 まずは落ち着いて、この街を探って見るんだ」

「……はい」

「……たく、それにしても」

と、武蔵が改めてその奇異な世界を見渡す。

88ゲッターロボ0080 第二話10/13:2011/10/10(月) 23:38:36 ID:aBCXeFeY0
「この街はまるで分らねぇ。
 転がっているのがジムとやらの残骸ばっかってのはどう言うわけだ?
 なんでゲッターが一機も存在しないんだ」

「……そんなに不思議な事ですか?
 例えば、格段に性能の高いゲッターが街を壊滅させて、
 目当てのパーツが無い事に気付いて、この場を去った、とか」

「……それだったら、街は巻き添えで跡片もなく崩壊しているハズだ、
 確かに周囲の損害は酷いが……、なんて言うか、
 これはもっと、執拗な襲撃者に狙われて全滅した感じだな」

「そう……なんですかね?」

戦場のベテランである武蔵特有のカンがあるのだろう。
今一つ状況を掴めないバーニィは、曖昧に返答をする。

「一体、この街の人間を襲ったヤツは……」

と、そこまで呟いた瞬間、武蔵の背筋がゾクリと凍りついた。
無造作に道端に打ち捨てられたジムの一機と『目が逢った』為であった。
これは比喩表現ではない。
そもそも頭部がゴーグルで覆われたジムには、ザクのモノアイのような【瞳】に当たる部分が無いのだ。
だが、その時武蔵は、半透明のゴーグルの奥で、真っ黄色の眼球がうじゃうじゃと膨れ上がり、
一斉にゲッター3に対し敵意を剥いたのを見た。

「〜〜〜〜ッ!? バーニィ、今すぐそいつから離れろッ!!」

「へ……、う、うわアァァ――ッ!?」

武蔵の叫びに対し、しかしバーニィは間に合わない。
直後、スクラップのようなジムコマンドの腕から、大鎌のような刃がジャキリと生え揃い、
ザク改の右脚を膝先から一直線に薙いだ。
鋼鉄の案山子と化したザクが、バランスを失いドカリと大地を揺らす。

「こなクソオォォオォォッ!!」

すかさず武蔵が機首を返し、異形のMSへ機銃の掃射を浴びせる。
キシュアァアアァァと言う機械らしからぬ凶声が轟き、
鋼鉄のそこかしこからドス黒い臓物が溢れ出る。

89!ninja:2011/10/10(月) 23:39:59 ID:41wiR2Ew0
支援

90ゲッターロボ0080 第二話11/13:2011/10/10(月) 23:41:17 ID:aBCXeFeY0
「む、武蔵さん!? コイツは一体……?」

「インベーダー……、ゲッター線を喰らって進化を繰り返す怪物
 俺達のいた世界をメチャクチャにしやがったクソ野郎だッ!」

「な、何だって!」


『キ シ ュ ア ア ア ァ ァ ア ア ァ ァ ァ !!』


武蔵の言葉を合図にしたかのように、怪物の産声が大気を震わし。
連邦製MSの皮を被った異形の群れが一斉に立ち上がる。

「アイツらの狙いは俺だ!
 バーニィ、お前は機体を捨てて今すぐこの場を離れろ」

「だ、だけど……」

「立ち上がれもしないポンコツで何ができる!?
 いいからとっとと行け」

「……くっ!」

頭を一つ振るい、バーニィがアスファルトへと飛び出す。
ここで戦況を把握できない程の素人ではない。
武蔵が全力を発揮するために今のバーニィできる事は、
全力でこの場を離れる事のみであった。

己の無力さを呪いつつ、手近に転がっている洒落たオープンカーへと身を躍らせる。
シートを染める真っ赤な血が誰のものであったか、考えたくもなかった。

「ムサシさん、必ず戻ります!」

悲痛な叫びを一つ残し、バーニィを乗せたエレカが砂ぼこりと共に消える。
新兵の考え無しの言霊に、へっ、と武蔵が笑みをこぼす。

ズンズンと大地を揺らし、異形の群れが遠巻きに武蔵を包囲する。
腕を、あるいは半身を失った鋼鉄の巨人がいびつに蠢く様は、
どこかこの世界のゲッター達を彷彿とさせた。

「……ケッ、地獄まで追ってくるとはご苦労なこったな。
 化け物ども、この巴武蔵をそうそう何度も殺れると思うなよッ!」





91ゲッターロボ0080 第二話12/13:2011/10/10(月) 23:43:29 ID:aBCXeFeY0
『バーニィ、嘘が下手だな……』

(ぐっ……)

不意にトラウマが沸き上がり、バーニィの胸中を締め上げる。
ささいな動揺から侵したミスで、頼れる先達を犠牲にしてしまった忌まわしい記憶。
苦い思いを噛みしめ、アクセルを全速で踏みしめる。

「俺はやっぱり、あの時の新兵のままなのか……?」

捨てきれぬ重荷を抱きながら、しかしそのハンドリングに迷いは無い。
隊長の言葉が思い起こさせたのは、辛いトラウマばかりでは無い。
それは反撃の糸口と呼ぶにはあまりに儚い、一縷の望みのような閃きではあったが、
寄るべきものの無い今のバーニィにとっては、十分な動機となって彼の衝動を突き動かした。

「――! 来やがったか」

ズンズンと大地を揺さぶり、四足のドス黒い異形が後背より迫る。
先ほどと同じ、旋風のような刃の一閃。
大きくハンドルを切ってテールを滑らせ、礫の嵐に耐えながら正門をくぐる。
急ブレーキで乱暴に車を止め、慣性のままに建物の中へと転がり込む。

それはスレート葺きの小さな町工場。
逃げ場の無いうらぶれた廃工場に飛び込んだ獲物を追い、奇声を上げてインベーダーが迫る。
巨大ロボにも匹敵する巨体で建物に取り付き、巨大な両の鉤爪をわきわきと動かすと、
蛙の腹でも割くかのように、屋根を観音開きに引っ剥がす。

「――ギャッ」

中を覗きこんだ刹那、不意に化け物の矯正が止まった。
そこにあったのは、大型のバズーカを仰向けに抱え込んだ、青一色のMS――。

92ゲッターロボ0080 第二話13/13:2011/10/10(月) 23:45:45 ID:aBCXeFeY0
「オオッ!」


―― ドワォ!! ――


不埒な乱入者の来訪は、強烈な火薬で以って報われた。
ドテッ腹を真っ赤にブチ抜かれ、仰向けにブッ飛んだ異形が大地にのたうつ。
ドゥ、と言う音と共に工場の壁が崩れ、鋼鉄の青鬼がその全容を露わにする。

MS−18E ケンプファー。
全長17.7m 重量43.5t 推力159,000kg

装備は197mm口径ショットガン1本、ジャイアントバズⅡが2門。
更に2基のシュツルムファウストと、白兵戦用に最新式のビームサーベルを2本帯同する。

強襲戦特化と言う目的の元に開発されたジオン最後期のMSは
装甲の脆弱さと引き換えに高い機動力を有し、前述の大げさなまでの火力と合わせ、
【闘士】の名に恥じぬ攻撃力を誇る。
本来ならばルビコン作戦の切り札として、新型ガンダムとの戦いに用いられるはずの機体であった。

「このォッ!!」

怒声と共にショットガンを浴びせ、異形の腹に開いた風穴を打ち破る。
すかさずポンプアップし、痙攣する頭部に一発、千切れとんだ肉片に更に一発。
蠢くミンチを巨大な脚ですり潰し、そこでようやくバーニィは大きく息を付いた。

『バーニィ、アイツを倒せる?』

「……ああ、もちろんだ、楽勝だよ、アル」

不意に脳裏に響いた声に小さく応えると、バーニィは強襲機特有の前傾姿勢を取り。
武蔵の待つ戦場へと踵を返した。

93ゲッターロボ0080:2011/10/10(月) 23:49:42 ID:aBCXeFeY0
以上、投下終了です。
バーニィの扱いに関しては、
①最後までザクで戦う。
②フォッカー辺りも呼んで即席ゲッターチームを作る。
③ゲッターヅダを拾う。
などのパターンも考えていたのですが、結局一番分かりやすい乗換に落ち着きました。
短編で考えているので、あと2、3話で終了の予定です。

94ゲッターロボ0080:2011/10/30(日) 10:31:19 ID:L4yA9L8s0
第三話、投下します。

95ゲッターロボ0080 第三話1/13:2011/10/30(日) 10:33:43 ID:L4yA9L8s0
「この、化物どもがッ!」

咆哮と共に、強大な鋼の豪腕が、さながら鎖付きのハンマーのように唸りを上げ、
正面の機械人形を力任せに薙ぎ払う。
圧倒的な質量を前に、チタンセラミックの複合装甲がいとも容易く両断され、
中空で破裂し、どす黒い肉の花を咲かせる。

だが、ゲッター線に巣食い、周囲の物質を取り込んでは独自の進化を繰り返す、
【インベーダー】たる異形の生物にとって、金属の外装は仮の宿に過ぎない。
依るべき定型を失って尚、肉片はしぶとくのたうちながらゲッター3にまとわりつき、
その動きを絡め取らんと律動する。

同時に、後背のメタルビーストが、肘先より同化した90mmマシンガンを乱射する。
至近で打ち放たれた火箭が炸裂し、ゲッターの強固な装甲を容赦なく穿つ。

「ぐぁ、っの野郎ッ!!」

目一杯にペダルを踏み締めながら、足元の肉塊をすり潰し、遠心力のついた左腕を強引に振り回す。
物言わぬジムコマンドの頭部がマシンガンごと宙に舞い、鼠花火のように銃弾の軌跡を描く。

「ハァ……、ハァ……」

大きく呼吸を整え、武蔵が周囲の状況を見渡す。
足元の肉片は真っ黒な汚泥のようにてらてらとキャタピラを捉え、
四方を取り囲んだ連邦製のメタルビースト達は、あたかも武蔵の疲労を推し量るかのように、
じりじりと包囲の輪を縮めつつあった。

「チッ!」

じわりと蘇る苦い記憶に、武蔵が短く舌打ちする。
このゲッターがもしも3人乗りであったならば、小回りの聞かないキャタピラは諦め
即座に変形に移るべき場面であった。
だが、周囲を銃口で囲まれた状況で、マシンの自動制御を頼りに変形を敢行するのは無謀に過ぎる。
徐々にであるが、均衡は数に任せた異形の群れへと傾きつつあった。

『シュアアアァアァァッ!!』
「ぐっ!?」

仇敵の逡巡を察知したか、突如として足元の泥中より鉤爪がすらりと伸び、
ゲッターの両肩を抑えに掛る、合わせて左翼の一体が、ビームサーベル片手に一足飛びで迫る。

『ショギュアァ……』
「!?」

―― ドワォ!! ――

異形の絶頂とも言うべき咆哮は、突然の爆発音の前に遮られた。
予期せぬ後背よりの砲撃を受けたインベーダーが、火ダルマとなって大地をのたうつ。

反射的に武蔵が上空を仰ぎ見る。
スラスターを勇ましくふかし上空より迫るは、
いかつい胸甲と一本角のようなレーダーが映える鋼鉄の青鬼。
遠目にも数多の火器を搭載したそのロボットは、武蔵にとっては初見であったものの、
スラスター用に裾の広くとった脚部や、何より特徴的な真紅の単眼が意味する事は明白であった。

「アレもザクの仲間……、だとしたら乗っているのはバーニィか」





96ゲッターロボ0080 第三話2/13:2011/10/30(日) 10:35:37 ID:L4yA9L8s0
―――――――――― 第三話・『虹の果てには?』 ――――――――――



「このォ、ムサシさんから離れろ!」

―― ドゥ!! ――

上空よりショットガンを構え、2度、3度と打ち放ちながら降下する。
散弾の雨が広範囲に降り注ぎ、差しものインベーダーも、水が引いたように
にゅるりとその場を引き上げる。

「バ、バカ野郎! 何てぇ事しやがる!?」

「どうせゲッターの装甲に、散弾なんか通用しないでしょう?
 ムサシさん、とりあえずこの場は急いで変形を」

そう一言交わすと、ケンプファーは腰だめの形でホバー走行に移り、
メタルビースト達の間を器用に抜けていく。
元より知性より本能、とりわけ凶暴性の高いインベーダーである。
たちどころにゲッター3の囲みを解いて、小癪な乱入者を追って一目散に走り出した。

「バーニィ、変形までの時間を稼ごうってのか……だが!」

にゅるり、と再び足元のスライムがうねり、定型をとってケンプファーを追撃しようとする。
その生え揃った両足を、ぐわっとゲッター3の武骨な指が鷲掴みする。

『ギャギャ!?』

「へへ、けどよ、テメエにだけはキッチリお返しさせてもらうぜ。
 どうりゃあァッ!! 大・雪・山 おろしいイィィイイィ―――ッ!!」

蛇腹のような大型アームを全身に巻きつけ、捻りを加えながら上空に投げ放つ。
巻き上がる両腕が竜巻となり、成形したばかりの怪物を千々の肉片に引き裂いていく。

「オープゥン、ゲーット!!」

ドス黒いミンチを弾き飛ばし、三台のゲットマシンが上空へと舞い上がる。
ベアー号からの誘導で三台が直線状に並び、後背より突き上げる形でドッキングする。
機体より余剰エネルギーが稲光となって迸り、増殖するチップが直ちに両腕の骨格を形成する。
ベアー号より逞しい脚がズドンと生え、全身が徐々に人型を成していく。

「チェーンジ! ゲ……」

―― カッ ――

97ゲッターロボ0080 第三話3/13:2011/10/30(日) 10:37:44 ID:L4yA9L8s0
変形が成功し、深紅の巨体が誕生したかに見えた刹那、一条の閃光が天空を駆けた。
高熱の光がゲッターの脇を走り抜け、連結が未熟だった左腕が肘先より熔断し、ズシャリと大地に沈む。

「なッ!? ゲッタービームだと!?」

ウェイトバランスを失ったゲッター1を突き上げるかのように、尚も追撃の光が放たれる。
それは、ただのゲッタービームでは無かった。
先の左腕を吹き飛ばした一撃とは異なり、光は短く、絶え間無く、
あたかもビームのマシンガンのように光群を成して武蔵に迫る。

「ぐうっ、ゲッターウィング!」

咄嗟に帯電するマントを全身に巻き付け、避けようが無い光の群れを必死に弾く。
だが、機体を間断無く襲う衝撃までは捌きようもなく。
失速したゲッターは、勢いのままに地表へと叩き付けられた。

「かはッ! コイツは一体……」

頭を一つ振い、痙攣する機体を起こして、立ち込める粉塵の先を睨みつける。
漆黒の影が埃の先にゆらりと現れ、両眼がおぞましい金色の輝きを放つ。
一陣の風が砂塵のヴェールを取り払い、武蔵の眼前に現れたのは、
かの規格化された連邦製のMSを思わせる巨体であった。

ジムコマンドとの外見上な違いは、『顔』に備えたマスクにカメラアイ。
ヘルメット型の頭部には、中世の鎧武者の角飾りのような、V字のアンテナを有する。
だが、頭部の構造以上に武蔵を驚かせたのは、その体格である。
悠然と大地を揺らすその骨格は、武蔵の知る量産機より一回り大きく、
遠目にもゲッターに迫るほどの威容を誇る。

外装は、ブ厚く鈍い灰色の装甲板で全身を覆われ、さながら重騎士のように逞しい。
更にその左腕部には、緑色に輝く照準を備えたいかつい砲身、
……先のゲッター1を襲ったものであろう、ゲッター線の照射装置が取り付けられた。

「俺の、俺の知らないゲッターだと?
 もしや、こいつがバーニィの言っていた【ガンダム】なのか?」

未だ見えぬ敵の正体を推し量りながら、肩口より引き抜いたトマホークを構える。
並みのMSを凌ぐ体格、強力に過ぎるゲッター線の兵器、
何より、歴戦のパイロットである武蔵すらも怯ませる、圧倒的威圧感。
新たな敵は、外見こそMSの延長上の存在ではあったものの、
どうしても武蔵には、眼前の怪物が、バーニィの駆るザクと釣り合うものとは思えなかった。

「あるいは、あるいはコイツが、この世界に地獄を生み出しやがった元凶なのか……?」





98ゲッターロボ0080 第三話4/13:2011/10/30(日) 10:39:40 ID:L4yA9L8s0
(……ムサシさん、まだか?)

バーニィが機体を反転させ、武蔵のいた場所を仰ぎ見る。
あの場を離れてから既に10分、だが、未だ武蔵からのリアクションは無い。
高速戦闘を常道とするゲッターロボにとって、考えられる事態では無かった。

『キシャアアアァアァァ!!』

「くっ、このォ」

迫りくるインベーダーを前に冷静に腰を落としバズーカを構える。
直後、轟音と共に異形の頭部がオレンジ色に爆ぜる。
色めきだつ化物共に向き直り、無用の長物と化した空筒を投げ捨てる。
いかに走る火薬庫たるケンプファーとは言え多勢に無勢、
しかも相手はゲッターチームですら苦戦を覚悟するインベーダーの群れである。
手元の弾薬は、既に尽きた。

(あるいは、ムサシさんの方こそ新手に苦戦しているのかもしれない。
 ……この場は自分で切り抜けるしかない、か)

短い逡巡を挟み、腰元のビームサーベルを抜き放つ。
MS戦における白兵戦の花形。
ビーム兵器実用化に後れをとったジオン公国において、限られたMSにしか持ち得ぬその近接兵器が
ことケンプファーと言う機体においては危うい両刃の刃でしかたり得ない事実を、バーニィは先刻承知している。

携帯に向いた近接武器の存在は、強襲用と言う機体のコンセプトを損なわず、
また、燃費の面でも実弾兵器を中心に構成されたケンプファーの重荷にはならない。
一見すれば、装備と機体の相性は非常に高いようにすら思える。
だがそれは、パイロットの心理を顧みぬ、技術者の欺瞞に過ぎない。

いかに高い機動力を有するとは言え、17mを超える巨大兵器に、マタドールの優雅さを求める事は出来ない。
ケンプファーはあくまで、奇襲攻撃に用いられるべきMSなのだ。
敵が訳も分からぬ内に火力で圧倒し、目的が叶わぬ時は即座に撤退する。
乗り手に求められるのは、勇気よりもむしろ割り切りの早さであると言えよう。
火力が突きたその時、尚も手元に残る僅かばかりの抵抗の余地は、却ってパイロットの寿命を縮める事となる。

99ゲッターロボ0080 第三話5/13:2011/10/30(日) 10:40:50 ID:L4yA9L8s0
「けれども今は、こいつで何とかするしかないよな……」

額に浮かぶ汗を拭い、ゆらりと左方に機体を滑らす。
下手に包囲されれば、機動力以外の優位を持たぬケンプファーはその場で死ぬ。
強行に打って出るタイミングを計りながら、じわり、じわりと間合いを縮める。

――と。

「……? なんだ」

不意に目の前の玩具に興味を失ったかのように、異形の群れが一体、また一体と飛び去っていく。
最後の一体が視界より消え去り、バーニィが大きく息を吐く。

「助かった、のか?
 けど、一体何が起こったって言うんだ……?」

異形達が消えた先をじっと睨みつける。
やがてバーニィは、彼方の空に薄ぼんやりと、緑色の輝きが灯るのを見た。
どくりと心臓が跳ねる。
その輝きは、この世界に来てから毎日のように目にしたもの。
――ゲッター炉心の輝きである。

「あれは、ムサシさんの居た……!」





100ゲッターロボ0080 第三話6/13:2011/10/30(日) 10:42:55 ID:L4yA9L8s0
「ムサシさん!?」

凄絶なる緑一面の世界を前に、バーニィが声を振り絞る。
周囲の急速な気温の上昇に、コックピット内でアラームが悲鳴を上げる。
いや、上昇じているのは沸き立つ大気ばかりではない。

緑の光の中心に向う異形の群れが、あるいは膨張して内側より爆ぜ、あるいは翼を灼かれて大地に堕ちる。
大気に満ちた高純度のゲッター線を喰らいきれず、組織が崩壊を始めているのだ。
それは、さながら炎に自ら飛び込む羽虫の姿。

「ムサシさん、どこだ、返事をしてくれ!」

「……来るんじゃねぇ、バーニィ」

「――! ムサシさんッ!?」

濃密な緑色の大気に揺らめく二つの機影。
胸元の炉心を煌かせ、沸き立つ破壊の中心に武蔵はいた。

「あの機体……、まさか〝出来損ない″!?」

『 グ ア ア ァ ア ァ ァ ア ァ ァ ァ !!』

おぞましいばかりの咆哮と同時に、出来損ないのマスクがガギャンと外れ、寧猛なる牙が露わとなる。
既に両腕を失ったゲッターを荒々しく大地に叩きつけ、さながら野獣の如く首筋に齧り付く。

「ム、ムサシさん!」

「動くんじゃねぇ、黙ってそこで見ていろ!
 よく目に焼き付けておけ、ゲッターの恐ろしさをよ」

「ムサシさん、一体……?」

慮外の言葉に躊躇う内にも、緑の光は濃霧のように世界を覆い尽くしていく。
コックピット内は既にサウナのように沸き立ち、大粒の汗がこぼれ落ちる。
果たして中心地は、どれ程の惨状になっている事であろうか?

「……少しづつだがよ、俺にはカラクリが分かってきたぜ、バーニィ」

「…………」

「たった一基、ただ一つだけの炉心であっても、
 一たびフル回転させれば、周囲を丸ごと吹っ飛ばす力を秘めている。
 こんな力を、もしも人類同士の争いに使っちまったら、世界はどうなる?」

「……ムサシ、さん」

「その答えがこの世界だ!
 この世界のゲッター共も、インベーダーも、この出来損ないも、
 そして、おそらくは俺自身も……
 全てがゲッター線に取り込まれていく」

通信機からノイズ混じりに届く武蔵の言葉。
全身を包む熱気とは裏腹に、バーニィの心臓がブルリと凍りつく。
武蔵の言わんとしている事、彼のしようとしている事。
状況は、この期に訪れるであろう残酷な未来を如実に示していた。

101ゲッターロボ0080 第三話7/13:2011/10/30(日) 10:44:51 ID:L4yA9L8s0
「バーニィ、お前は生きろ!
 生き延びて元いた世界の奴らに、ゲッター線の真実を伝えるんだ。
 家族を、友人を、恋人を……、お前の故郷を救え、バーニィ!」

「ムサシさん、でも、それじゃあ……」

「……いいんだ、バーニィ」

ポツリ、と武蔵が自嘲を漏らす。
炉心が臨界状態へと加速し、白色の輝きが空間に溢れす。
ノイズ混じりの武蔵の独白が、静寂の中で奇妙に響く。

「へっ、おかしな話だがよぅ……懐かしいんだ。
 なんか……前にも、こんな……」

「ム――」


―― カッ ――


刹那、地上より音が消え去り、閃光が、視界を完全なる白色に染め上げる。
絶望的な光景が、数瞬の内に物理的な衝撃となり、装甲ごしにバーニィを襲う。
轟音と叩き付けんばかりの烈風、瓦礫の渦が視界を塞ぎ、ケンプファーの巨体を容赦無く叩きつける。

「ム、ムサシさああぁぁぁんッ!?」

圧倒的な暴力の嵐の中
巨大な鋼鉄人形を四つん這いに倒し、叩きつける瓦礫に必死で耐えながらバーニィが叫ぶ。
それは大時化の中、こぼれ落ちた船員を呼ぶがごとき淡い抵抗。
やがて嵐は過ぎゆき、惨劇が若者の中で理解へと変わり始める。
もうもうと視界を塞ぐ黒煙、間を置いて地面を叩く瓦礫の音、僅かに跳ねた火の音まで届く。
ぞっとする程の静寂。

「……一体、なんだってんだよ、ムサシさん」

故郷を救え。
武蔵の口にした問い掛けの意味を求め、知らずと恨み事が口を突く。

だが、いかに思考の濁流が脳内をドロドロに呑み込もうとも、
バーニィの霊感は、一つの答えを導きだしつつあった。

鋼鉄の肉体を奪い合う阿修羅の坩堝、未知なるエネルギーを糧とする宇宙の怪物。
醜悪なる悪鬼すら一撃で葬り去る、炉心の煌き。

この世界を形作る地獄の因子は、全てがあの、忌まわしきゲッター線へと繋がっている。
いや、あるいはあの日、自分と〝でき損ない″が対峙したあの瞬間から、
自分のいた世界もまた、この地獄の一部に連なりつつあるのではないのか?

102ゲッターロボ0080 第三話8/13:2011/10/30(日) 10:47:07 ID:L4yA9L8s0
「バカな……、仮にそれが真実だったとして、俺に何が出来るって言うんだ?
 こんな廃墟に、唯一人とり残された俺に、一体……」


―― ガシャン ――


静寂を打ち破る金属音に、バーニィがハッと顔を上げる。
辺りに動く物は見えない。
バランスの崩れた瓦礫の山が、間を置いて崩れただけなのか?

(……いや)

胸中に湧いた希望的観測を捨て去り、立ち込める黒煙の先をはっしと睨みつける。
知っている。
現在の状況が、かつての同胞の戦闘と酷似している事。
おぞましいばかりの悪寒が最悪の事態を直感させる。
考えたくも無かった、あの攻撃の爆心地で、尚も耐えられる怪物の存在など……。


『 オ オ オ オ オ オ ォ ォ オ ォ ォ ォ ン !! 』


わずかばかりの希望を打ち破り、生まれたての悪夢が咆哮を上げる。
崩れ落ちる外装の下から現れたのは、まさに悪鬼と形容するしかない異形のガンダムであった。
全身に負った傷を、却って誇らんばかりに輝く真紅の装甲。
砕け散ったマスクの中からは寧猛たる肉食獣の牙。
両眼は烈火の如く赤一色に輝き、獲物の姿を探し求めるようだ。
両腕の鋭いブレードは、MSよりもむしろゲッター系統機のそれを思わせる。
そして傷ついた胸元からは、ゲッター炉心の証明たる薄緑色の輝きが零れる。

こみ上げる嫌悪感に、バーニィが口許を抑える。
記憶にある新型のガンダムは、敵機と言う偏見を加えても尚美しく。
調和のとれた青と白のデザインは、ある種の芸術性すら感じさせる物であった。

だが、眼前の赤い悪魔は、あの優雅さの欠片すら持ち合わせてはいない。
おぞましいほどに艶めかしい、全身の律動すら感じさせるような異形の怪物。
こんなものが、ゲッターの力を得た兵器の行きつく姿であると言うのか……?

「……一体」

どくりと心臓がうねり、バーニィの内側からドス黒いものが噴き出す。
憎悪と嫌悪、怒り、そして恐怖。
ドロドロにブレンドされた負の感情が、思考のわだかまりを押し流す。
理性は脆くも消し飛び、思考と行動はシンプルに、単調なまでの凶行へと一本化される。

「お前は一体、何だってんだよぉッ!!」

絶叫と共に腰部のビームサーベルを引き抜き、一直線に駆け抜ける。
余りにも愚直で、惨めな突撃。
自棄を起した羽虫を嘲笑うかのように、悪鬼がガパリと口を広げる。

103ゲッターロボ0080 第三話9/13:2011/10/30(日) 10:49:32 ID:L4yA9L8s0
「―!」

不意に光が網膜に突き刺さり、バーニィが反射的に操縦桿を倒す。
直後、異形の口中より放たれた一条のビームがケンプファーの脇を舐めるように通過し、
サーベルを右腕ごと飴細工のように捻じり切る。
破壊の輝きは大地を走り、ドゥッとばかりに後方のビルディングまでを打ち破る。

「ハァッ、ハァッ、ハァ……!」

急制動でもんどりうって倒れ込んだ機体を起こし、コックピットの中を見渡す。
すぐにバーニィは、自らの命を救った輝きの正体に気付いた。
前方のモニター脇に吊るされたスキット。
酒好きの機体の持ち主が備えておいた銀色の容器が光を反射し、バーニィの網膜を襲ったのだ。

「何を……、何をやってるんだ、俺は」

沸き立つ衝動を振るい落し、眼前の悪鬼の姿を再び観察する。
予想された追撃は無い。
よくよく見ると、対手もまた機体を大きく痙攣させているようであった。

「あの爆発をモロに受けたんだ、タダで済むハズが無いか……なら!」

かろうじて体勢を立て直し、ケンプファーがその身を翻す。
片腕のウェイトを失ったバランスの悪さから、機体が前傾に大きくよろめく。
直後、悪鬼の放った第二射が、その背面を舐めるように通過していく。

「ぐぅっ! だ、だがツイてる」

ビームの行方など追いもせず、バーニィが一目散に遁走する。
敵機の位置をレーダーで確認しつつ、ビル群を盾に機体を隠して突き進む。

「どうした、追って来ないのか?
 それならこっちは、このまま逃げ去るだけだぞ」

バーニィの機内での呟きが聞こえたものか。
悪鬼はしばしの間、呆然と中空を見上げていたが、その後、独特な咆哮で大気を震わし
その背に巨大な蝙蝠のような翼をばさりと広げた。

「ぐっ!」

直後、レーダー上の赤い点が、驚異的な勢いで動き始めた。
紅点は一直線にケンプファーを抜き去り、巨体が影を成して上空を通過する。
一拍遅れの衝撃波がケンプファーを吹き飛ばす。

「くそっ、なんて化物だ……」

力無く転がった獲物を一舐めし、大きく機体を旋回させた悪鬼が乱暴に着地する。
衝撃で、ズン、と大地が一つ揺れる。
そこは、連邦軍の基地にほの近い、大型の駐車場。
奇しくも、以前の世界において、〝できそこない″とケンプファーが雌雄を決した舞台であった。

104ゲッターロボ0080 第三話10/13:2011/10/30(日) 10:51:33 ID:L4yA9L8s0
「……いいぜ、こいよ〝できそこない″戦いの仕方を教えてやる」

口中で低く呟き、バーニィが最後の兵装となる、二本目のビームサーベルを抜き放つ。
異形の怪物であっても、諧謔精神というものを理解するのであろうか。
敵機もまたビームは使わず、肩部より得物を引き抜く。
ブゥウゥンと言う起動音と共に化物の両手にビームが走り、巨大な光の大斧が現出する。

『 オ オ オ オ オ オ ォ ォ オ ォ ォ ォ ン !! 』

くだらぬ茶番に幕を下ろすべく、怪物が風を巻いて一直線にケンプファーに迫る。
それを見たバーニィは悠然と、手元のサーベルを投げ捨てる。

「かかった!」

足元に転がっていたトレーラの荷台に腕を突っ込み、一気に引き抜く。
ズラリと転がったのは、数珠繋ぎとなった13基の大型機雷。

「おおッ!」

最後の奥の手を投げ縄の要領で振り回し、対手目がけて投げ放つ。
吸着型機雷が、怪物の腕に、首に、脚に、そして胸元の炉心へと絡み付き、
ピピッという電子音が運命の刻を告げる。

直後、ドゥという轟音を上げ機雷が連鎖的に起爆する。
爆発はドミノでも倒すかのように小気味よく異形を襲い、やがて最後の一撃が
緑色の輝き放つ胸甲を打ち砕く。
たちまちに閃光が広がり、緑色の煌きが溢れだす。

「やったのか……、でも、これじゃぁ」

今度は夢でも幻でもない。
眩いばかりの閃光の中、バーニィは大破した〝できそこない″が塵に還るまでの姿を、
スロー・モーションの映像のように、はっきりとその目に焼き付けた。
そしてやがて、輝きはケンプファーのコックピットをも焼き尽くす……。

「すまない、アル、約束は守れそうにない……」





105ゲッターロボ0080 第三話11/13:2011/10/30(日) 10:53:39 ID:L4yA9L8s0
――夢を見ていた。

大地を埋め尽くすMSの群れが、天へと昇っていく夢だ。
いずれもが正規の姿形ではなく、腕を、脚を、あるいは顔を、異形のパーツに組み替えている。
だが、その異形の兵器達の【表情】は奇妙に澄んだものであるように、バーニィには思えた。

不意に天空より落ちた雷鳴が、先頭の一機を焼き払う。
機体は音一つ上げず、蚊トンボのように尾を引いて堕ちて行く。
だが、周りの機体達は振り向きもせず、ただ天空の一点のみを見つめて飛んでいく。

矢継ぎ早に降り注ぐ落雷が、次々に異形のMS達を灼いていく。
それでも彼らは振り向きもしない。
ただ、バーニィのみが、堕ちて行く名も無き兵器の悲しみを想像している。

叫びたいが声が出ない。
手を伸ばしたいが、指一本動かせない。
目を逸らす事も出来ない。

何一つ状況も掴めないままに、大地に堕ちていく同胞を見つめるしかない、悲しい夢だった。

(……?)

どれほどの時が流れたのであろうか。
柔らかな光を感じ、ゆっくりと後背に視線を向ける。
最後に大地より昇って来たのは、一機のガンダムであった。

他の異形達とは明らかに異なる、白と青のトリコロールカラー。
奇妙なのは白のアンテナを頭部では無く、口元に髭のように備えている事。
その姿はかつての愛機、ザクの表情をどこか思わせる。

降り注ぐ雷鳴を恐れもせず、ガンダムが悠然と翼を広げる。
それはさながらオーロラの輝きのような、虹色に輝く巨大な蝶の羽。
立ち昇る姿はゆっくりと大きくなり、バーニィの視界を埋め尽くし、そして……。





106ゲッターロボ0080 第三話12/13:2011/10/30(日) 10:55:39 ID:L4yA9L8s0
「うわぁッ!?」

バーニィは見た!
機体のすぐ脇を通り過ぎて行く、巨大なガンダムの横顔。
それは夢でも幻でも無い、ガンダムはバーニィの存在を意に介さず、
天空目がけて一直線に駆け上ってく。
背中に広げた蝶の羽から、きらきらと輝く燐光が大地に降り注ぐ。

『おう、気が付いたか、ちっこいの』

コックピット内に響くハリのある声に、バーニィが反射的にモノアイを動かす。
モニターに映ったのは、年季の入ったマントを羽織った、寄せ集めのゲッターの姿であった。
同時に現在の状況に気付く。
どうやらバーニィは大破したケンプファーの中、このゲッターに抱えられる形で飛んでいたらしい。
そんなバーニィの様子を気にも留めず、ゲッターのパイロットが舌打ちする。

『ケッ、今度こそ決着を付けてやろうと思ったんだがな。
 あのヒゲ野郎が出てきたって言うんなら、花を持たせてやらぁ。
 ちっこいの、脱出するぜ』

「脱出って……、ちょ、ちょっと待ってくれ!?
 あれは、あのガンダムは一体何なんだ?
 アイツは一体、何をしようとしてるって言うんだよ?」

『……あいつはよ、この世界を完全に埋め戻しちまうつもりなのさ』

「世界を、埋め戻す……?」

ゲッターのパイロットに促され、バーニィが大地を見下ろす。
降り注ぐ光の粒がビルディングに、瓦礫の山に、MSの残骸にと纏わり付き、
砕け散っては砂へと還していく。

『ああやって地上一面に燐紛をバラまいて、文明の全てを砂に変えちまうつもりなんだ。
 ゲッター線に取り込まれた人類が、宇宙の全てを滅ぼしちまう前にな』

「文明を埋め戻すって、そんな……!」

今のバーニィには、男の言葉の全てを理解する事はできない。
だが、不意に胸中を襲った絶望感が言葉となって口を突いた。

「だったら、だったらコイツは現実の光景だって言うのか?
 ゲッター線と人類が出会っちまったら、遅かれ早かれ、
 最後はこの世界に行き尽くしかないって、そう言う事なのか?」

『あん? フザけんじゃねぇ! 人間がそんな捨てたモンかよッ!?』

男の突然の剣幕に、バーニィがハッと息を呑む。

107ゲッターロボ0080 第三話13/13:2011/10/30(日) 10:59:29 ID:L4yA9L8s0
『ムサシの奴は、ゲッター線のヤバさをお前に伝えて死んだんだ。
 だったら、お前が諦めさえしなきゃ、ムサシも人類もゲッターには屈してねぇて事だろうが?
 このクソったれな世界がイヤだってんなら、テメェの世界ぐらいテメェで救って見せろッ!』

「ムサシさんが……」

『……チッ、ガラにも無ェ事を、もういい、とっととズラかるぞ。
 これ以上は、お前の機体が持たねぇ』

そう言い終わるか否かの内に、ケンプファーを抱えたゲッターの周囲が、
金色のエナジーに包まれ始める。
奇妙な高揚感が、コックピットごしにバーニィの胸を突く。

「ま、待ってくれ!? あんた、話はまだ……」

『舌噛むぞ、黙ってろ。
 いくぜェ、ゲッタアァアァァー、シャアァイィィン……!』


――刹那、二つの機影が文字通り光りの矢と化して天空を駆け昇る。


強烈な衝撃と閃光の中、一つの【壁】を超えた感覚がバーニィを貫く。
溢れかえる輝きの世界で、様々な光景がバーニィを通り過ぎて行く。

宇宙を覆うゲッターの戦艦、光の翼、月の輝き、ぶつかり合う鋼の拳、鬼、そして神。
インベーダーと月面戦争、相打つ二機のガンダム、惑星を押し返すMS達の輝き。

世界は思う間もなくとめどなく流転を繰り返し、思考が追い付かない。
やがてその中で、一際輝き放つ世界がバーニィの前に現れる。

『熱い血潮も、涙も流さねぇ冷血野郎のトカゲどもッ!
 テメェらなんぞに、この地球は渡さん!』

「――! ムサシさんッ!?」

バーニィが叫ぶ。
ゲッター線がオーバーヒートを起した爆発寸前の機体の中、そこに武蔵はいた。
二人の視線がちらりと交差する。
不敵な笑みを浮かべたその瞳は、バーニィに先を促すように見えた。
こちらの存在に気が付いたのか、あるいはただの偶然か。

『貴様らの祖先を絶滅させたエネルギーの源だ、もう一度滅びやがれえぇぇ――ッ!!』

「ムサシさあぁぁん!」

バーニィの叫びはもはや届かない。
戦いの結末を見届ける術も無く、刻が再び加速し、世界が再び白色に包まれる。
閃光が視界を覆い尽くし、バーニィの周囲からノイズが消え去り、そして……!


――そして宇宙世紀0082。


バーナード・ワイズマンは、再びその世界で瞳を開けた。

108ゲッターロボ0080:2011/10/30(日) 11:02:37 ID:L4yA9L8s0
以上、投下終了です。
バーニィが無事UCに帰れたので、次回で終了の予定です。
チェーンマインを持ち上げた結果、アレックスの扱いが酷くなってしまいましたが
第二話と第三話の間に武蔵に倒されていたスカーレット隊よりはマシだと思ってください。

109ゲッターロボ0080:2011/11/26(土) 00:57:02 ID:0/fO4gJU0
最終話、投下します。

110ゲッターロボ0080 最終話1/13:2011/11/26(土) 00:59:28 ID:0/fO4gJU0
季節は巡る。

――宇宙世紀0082年、12月24日。

バーナード=ワイズマンはあの日のように、ただ一人、森林公園の一角に佇んでいた。
早朝らしいひんやりと澄んだ空気が、バーニィの頬を撫ぜる。
とはいえ暦の上ほどの寒さは無い。
宇宙に浮かぶ巨大な試験管【スペースコロニー】たるサイド6は、
回転運動による疑似重力とミラーを用いた採光により、設計段階より住民が住みやすい環境を想定している。

だがそれでも、吹き抜ける風の中に季節の移り変わりを感じるような気がするのは。
移民より80年以上もの時が流れてなお、人類が地球の重力に心を惹かれ続けている証しなのだろうか……?

人気のない早朝の森林を散策しながら、サングラス越しに土手の方向を顧みる。
あるいはそこに、ザクの整備をする自分と少年の姿があるのではないかと妄想したのだ。
そこが無人の窪地である事を確認し、安堵の息を吐く。

よくよく見れば、不時着の際に削り取られた大地の傷跡も、今やすっかり苔蒸し始めていた。
おそらく来年の今頃には、少年と歩んだ戦いの記憶と共に、すっかりこのコロニーから消え失せてしまう事であろう。

ついと歩みを変え、木立の中へと分け入る。
三年前と変わらぬ数少ない光景の一つが、そこにはあった。

盛土の上に、手頃な太めの枝で組んだ木製の十字架。
それはかつて、【ルビコン作戦】失敗の際、この地に逃げ込んだバーニィが作ったものであった。

背広のポケットより、煙草の箱を取り出して封を切る。
「何か欲しい物はあるか?」と問われ、わざわざ銘柄まで指定してやった時の連邦士官の顔を思い出し、思わず苦笑する。
一本抜き出し、ライターを探して内ポケットをまさぐってみたが、そこでやや考え直し、
結局、火は点けないまま墓前へと添えた。

「――隊長、報告が遅くなりました。
 〝出来損ない″は、俺が破壊した……、とまでは言いませんが、
 自分でも、できる限りの事はやったつもりです」

短い黙祷の後、念願の『報告』を終え、ほうっと息を吐く。
最後の夜に、虚偽を見抜かれた時の重荷が、幾分か軽くなったような気がした。

「――けれどもその後、一週間もしない内にジオンは負けちまって……、
 結局、俺たちやってきた事は、一体何だったんでしょうね」

今や、一年戦争の名で呼ばれるようになったかつての戦争。
叩き上げの軍人であった上官たちの戦いを思い、思わず眉間に皺を寄せる。

かつて、連邦の新型MSの奪取を目標に、サイクロプス隊がルビコン作戦を決行に移したのが、三年前の12月19日。
一年戦争全体の分水線となったソロモン要塞の陥落が、五日後の12月24日。
バーニィが【クリスマス作戦】と称し、コロニー内の連邦軍基地に再攻撃を仕掛けたのが、更に半日後の25日。
この時には、既に新型ガンダムの破壊など、戦略的には何ら意味を持っていなかった、と言う事になる。

ジオン公国の独立宣言を気に加速した刻の流れは、確かに異常なものであったが、
それでもあるいは、対局がもっと早くに伝達されていれば、と思わずにはいられない。
当時一介の新兵だった自分とは違い、叩き上げの軍人であった彼らには、もっとふさわしい戦場があった筈である。
少なくとも、無謀な作戦に捨て駒のように使われ、名前も公表できないまま、人知れず死んで行くような憂き目には……。

111ゲッターロボ0080 最終話2/13:2011/11/26(土) 01:01:23 ID:0/fO4gJU0
(……いや)

頭を一つ振るい、個人への侮辱を取り払う。
相手はあのシュタイナーと、百戦錬磨のサイクロプス隊なのだ。
作戦の無謀さも、自分たちが囮として使われていた事も、今のバーニィが知りえる程度の情報は承知していた事であろう。
全てを知っていて、その上で彼らは戦う道を選んだのだ。
成功の目が無い事を知りながら、それでもこのコロニーに戻ってきてしまったバーニィのように。

あれからバーニィは時おり考える。
もしあの時、全てを捨てて逃げ出していたら、自分はどうなっていたのだろうか、と。
あの時のバーニィは無力な新兵で、作戦が失敗した以上、当時の彼には出来る事など無かった。
客観的に見て、あの場面での彼の逃亡を責める事が出来る人間などいる筈がない。
ただ一人、彼の事を英雄だと信じていた少年を除けばだが……。

結局は、自身の心との折り合いの問題なのだ、とバーニィは思う。
もし、あのままコロニーを見捨てていたならば、少なくともその後の彼は、二度と心の底から笑う事は出来なかっただろう。
隊長も、ガルシアも、ミーシャも、きっと同じだったのではないか?
それぞれが、やるべきだと思った事を貫き、そして敗れた。
ならば、それ以上の詮索は無用であろう。
少なくともバーニィは、自分の行いを後悔していないのだから。
たとえ事敗れ、連邦軍の捕虜となり、今日には人知れずコロニーを去る身であったとしても、だ……。





112ゲッターロボ0080 最終話3/13:2011/11/26(土) 01:03:47 ID:0/fO4gJU0
「地球へ……ですか?」

――3日前。

宙ぶらりんになっていた己の処遇を聞かされ、呆然と顔を上げたバーニィに対し、
スチュアートと名乗ったベレー帽の連邦軍佐官は短い頷きで応じた。

「三日後、12月24日の特別便で、君にはこのサイド6を離れ、地球に降りてもらう。
 行き先はオーストラリア東部のトリントン基地だ。
 当面の間はそこで、新任のテストパイロット達にまぎれて生活してもらう事になる。
 準備、と言っても、大した手荷物はないだろうが、当日の午前中にはここを発てるよう用意を進めておいてくれ」

「…………」

「どうかしたかね? 何か質問があるなら聞くが?」

「あ、ああ、その……」

晴天の霹靂とも言うべき人生初の地球行き。
突然の提案に混乱する思考を整理し、やや、緊張した面持ちで、バーニィが本心を切り出す。

「三年前にこの基地を攻撃した時、俺は連邦の制服を着ていました、ですから……」

「――軍事裁判にかけられるとでも思っていたのかね?
 連邦はそこまでヒマではないよ、伍長。
 工作員と言っても、君は当時まだ徴用されたばかりに新兵で、部隊に編成されたのも
 作戦行動のわずか一週間ばかり前の事だったとの調べもついている、それに……」

と、スチュアートはそこで一旦言葉を区切り、やや複雑に顔をしかめ、続きを口にした。

「――それに、マスコミに提出されたテープの証言からも、
 君が連邦に害意を以ってザクを動かしたわけではない事も理解している。
 これ以上君をこの基地に拘束しておく理由は、既に無いのだよ」

「……あ」

その表情を見て、ようやくバーニィにも事態の推移が呑み込めてきた。
これまでの自分が、処遇未定のまま今日まで拘留されてきた理由も含めて。





113ゲッターロボ0080 最終話4/13:2011/11/26(土) 01:05:53 ID:0/fO4gJU0
――半年前。

宇宙世紀の暦の中で、実に二年ぶりに瞳を開けたバーナード=ワイズマンを待ち受けていたのは、
メディカル・センター内の一角を使ってのリハビリの日々であった。

後から聞いたところによると、かつての〝出来損ない"との戦いの最中、壊れたザクのコックピットから投げ出されたバーニィは、
頭部を打った衝撃で昏睡状態に陥り、そのままこの施設に運び込まれたのだと言う。

バーニィ付きの看護婦達の証言は、彼自身の記憶にある【クリスマス作戦】の顛末とは明らかに異なるものであったが、
どちらの言葉が正しいものであるかは、二年もの寝たきり生活で衰弱しきっていたバーニィ自身の肉体が、如実に物語っていた。

とにかく、バーニィは当面の間、まっとうな日常生活を行えるよう、肉体の回復に勤めねばならなくなった。
幸い体には大きな怪我は無く、鈍っていた筋肉の復活と共に、バーニィの行動範囲も徐々に広いものとなっていった。

ひとつ奇妙だったのは、予期していた連邦政府の取調べが無かったことである。
さすがに外出の許可こそ得られなかったものの、バーニィの周囲にはこれといった監視の目も無く、
この半年の間、彼はそれなりに快適なリハビリ生活を送ることが出来た。

自分がサイド6の住人達から【リボーの英雄】と呼ばれている事も、その内に耳にした。
クリスマス作戦が失敗した時のためにと、少年に託しておいたもう一つの保険。
ルビコン作戦の実態をバーニィ自ら証言したテープは、その後一体どうした事か、マスコミの手に渡ってメディアに公表されたらしい。

当時の中立協定を無視し、コロニー内で新型MSの調整を行っていた連邦軍と、
その新兵器を、核ミサイルでコロニー諸共焼き払おうとしていたジオン軍。
凄惨な一年戦争の争いの最中、ただ一人コロニーを守るために命がけの作戦に望んだ、名も無きジオン兵の証言は、
泥沼に咲いた一輪のヒューマニズムの花として賞賛され、その意識の回復も見込めぬ内から、
多くの助命嘆願署名が連邦政府に宛てて送りつけられたのだと言う。

(無論、コロニー内でのモビルスーツ戦の危険性を説き「核ミサイルを止めたいのなら初めから自首するべきだった」
 と言う主旨の正論も散見されたのだが、普段おおっぴらに連邦政府を批判できない当て擦りからか、
 バーニィを英雄視する風潮を止めるほどの力とはなり得なかった)

バーニィと少年の戦いはいつの間にか、当の本人が眠りこけている間に映画にまでなってしまったらしい。
『一流のドキュメンタリーを三流のハッピーエンドに貶めた駄作』などと酷評されたゴシップ誌を見るに至っては、
さすがにバーニィも苦笑せざるを得なかった。





114ゲッターロボ0080 最終話5/13:2011/11/26(土) 01:08:14 ID:0/fO4gJU0
(そう言う事か……)

ようやく全ての事情が繋がり、バーニィがひとり頷く。
目の前のベレー帽が言った、連邦はヒマでは無い、と言う言葉は、そのままの意味であったらしい。
もとより相手は、既に反抗の意志を持たないただの新兵である。
無駄な裁判や不必要な拘留で世論の評判を下げるような真似をする意味は無い。
バーニィにとっては元々はコロニーを守るために残したテープに、皮肉にも自分自身が救われた形と言える。
だが、それならば何故ここに来て、地球への移送なのであろうか?

「――戦争終結から間もなく三年、既に多くの捕虜達が帰国の途に着いている」

そんなバーニィの疑問の表情を察したのか、スチュアートが再び言葉を紡ぐ。

「日常生活を遅れるまでに肉体が回復した以上、我々にもこれ以上、君をここに留める理由は無い。
 本来なら君は、今日で釈放、と言う手はずになるべきなのだが……」

「?」

と、そこでスチュアートは再び一つため息をつき、憐れみ混じりにバーニィを見た。

「……ツイていなかったな伍長、君は少し名前を売り過ぎた」

それからベレー帽が口にしたのは、地球圏周辺を取り巻く勢力状況であった。

ジオンの降伏による一年戦争の終結より三年。
ジオン残党の多くが解体、ないしアクシズ方面へと落ち延びたことで、現在は一定の平和を得てはいるが、
それでも尚、一部の軍閥はゲリラ化して地球圏に留まり、抵抗を続けているのだと言う。

「無論、それらの活動に旧来の勢いは無いのだが、それだけにヤツらも必死だ。
 今後は利用できるものはなんでも利用してくるだろう。」

「……はぁ」
 
「――例えば、ジオン公国にとって不倶戴天の敵である、ガンダムタイプのMSを破壊した【英雄】が参戦したならば
 ヤツらにとっては格好のプロパガンダになるだろうな」

「――! ちょ、ちょっと待ってくださいよッ!
 俺があの時、出来損な……、ガンダムの新型とやり合えたのは偶然に過ぎませんし、
 それに俺は、今更になって戦争に加担するつもりは……」

「ジオンの残党に与するつもりはない、かね?
 だが伍長、残念ながらこの場合、君の意志や能力は問題ではないのだ。
 ヤツらからしてみれば、君の身柄と腕の良いパイロット、それにザクが一機さえ確保できれば、
 十分に【リボーの英雄】を演出することが出来るのだからな」

「…………」

「一たび連中の行動が活発化し始めたならば、このコロニーのセキュリティでは心許ない。
 理不尽な話ではあるが、今回の移送は君の命を守るためでもあるのだ。
 あくまでこの一件は、状況が落ち着くまでの仮の処遇だ。
 連邦の制服を再び着るのは窮屈かも知れんが、何とか承知しておいてくれ……」





115ゲッターロボ0080 最終話6/13:2011/11/26(土) 01:10:36 ID:0/fO4gJU0
「……シドニーは今頃、雪で真っ白、か」

空の果てにあるであろう母なる大地を見据え、バーニィが一人呟く。

想像する。

白塗りの連邦カラーのザクを駆り、新型ガンダムの当て馬を勤める【リボーの英雄】の姿。
わずかばかりの時間とはいえ、サイクロプス隊の一員であった自分。
彼らの生き様の証人である自分は、一体どこに誇りの置き場を作り、戦いに臨むべきなのか……?

更に今、バーニィの胸中を締め付ける課題がある。
それはともすれば、彼自身の小さなプライドの問題よりも、ずっと切実で深刻なものだ。


『お前の故郷を救え、バーニィ』


耳を澄ませば、今でも残響のように聞こえる、遥かな異世界で出会った戦友の声……。
夢ではない、幻でもない、何一つ証拠は無くとも、バーニィ自身がはっきりと身に滲みて覚えているのだ。
体を灼いたビームサーベルの痛み。
血と金属とオイルで満ちた、むせ返るような戦場の匂い。
おぞましいばかりの鋼の巨体より感じ取った死の気配。
臨界寸前の奇妙な静寂の中で聞いた、武蔵の息使い。

与えられた現実の中、全てをなあなあで済ませるわけにはいかない。
何故ならば、バーニィはかつて一度死に、そして【彼】の助けを借りて、再びこの世界に帰って来たのだから。

あれ以来、バーニィはそれとなく周りの人間に、中破した〝出来損ない"の顛末を尋ね回っていたが、
いずれも良い回答は得られずにいた。
本当に行方を知らないのか、あるいは知っていても、ジオンの虜囚である彼に真相を聞かせてくれるはずも無い。

(三年前、俺が破壊し損ねたガンダムの新型炉心、
 アイツは一体、どこに消えちまったって言うんだ……?)

あの時はただ、核を止めるのに精一杯で、想像する事すら出来なかった『本当の敵』。
それはただ炉心を探し出し、人知れず破壊してしまえば済むと言う問題ではない。
80年前より人類の住処となって久しき宇宙、その世界には、見えざるゲッター線の輝きが溢れているのだから……。

改めて思う。
自分に何が出来るのかと。

バーニィは科学者ではない。
ゲッター線の開発を統御できる役職の人間でもなければ、
プロジェクトに携わる事のできるテストパイロットでもない。
それどころか、今日には見知らぬ異国の地で、大きく行動を制限されながら生きねばならぬ虜囚であった。

(――それでも今は諦めず、自分に出来ることを、一つ一つ探していくしかない。
 あの時、死んだハズの自分が、今、再びこの世界に居る事に理由があるとしたら、
 それはきっと、アイツを止める為なのだから……)

116ゲッターロボ0080 最終話7/13:2011/11/26(土) 01:12:49 ID:0/fO4gJU0
ゆっくりと瞼をあけ、背筋を伸ばして十字架に向き直り、静かに敬礼する。
迷うべき事は既に無い。

「もう一度、必ずここに戻ってきます。
 その時はもっと、ちゃんとした手土産を持って……。
 どれ程の時間が掛かるかは分かりませんが、必ず」

顔を上げて踵を返し、振り返る事無くその場を立ち去る。
最後に口にした言葉を繰り返しながら。

(アル、お前との約束を叶えるのは、当分先の事になりそうだ。
 けれども約束は守る。
 今はまだポケットの中にしまっておくしかない、俺の中の戦争を終わらせたなら、その時は……)

不意に頭上より響いてきたクラクションの音に、バーニィが思考を中断させる。
連邦からの出迎えか、それにしては時間が早いし、そもそも正確な場所を知っているとは思えない。
訝しげにサングラスを外し、土手の高みを見上げる。

逆光の中、バーニィの瞳に飛び込んできたのは、見覚えのある洒落た一台のエレカ。
柔らかな赤の豊かな髪の女性が、じっ、とバーニィを見つめている。

「ああ……」

思わず感嘆がこぼれる。
友愛と、恋慕と、痛ましさと、言葉にならない想いが交じり合い、じんわりとした温もりがバーニィを満たす。

何故だか唐突にバーニィは、外出許可を求めた際のベレー帽の微妙な表情を思い出した。
「サンタクロースってガラかよ」と、一人口中で嘯く。

「バーニィ!」

助手席より飛び出してきたはちきれんばかりの叫びが、束の間の思考を打ち破る。
記憶にあるよりも遥かに背の伸びた、黒髪の痩せ型の少年。
震える両足で大地に立ち、不安げにこちらを見下ろしている。
バーニィの次の言葉を待っているのだ。

ゆっくりと、気付かれぬように深呼吸する。
心の動揺を悟られぬよう、静かに、偶然散策中に出会ったかのような何気無さを装いながら。
三年の重みを感じさせない軽やかさで。

「……やあ、おはよう。
 何だよ、少し見ない間に大きくなったな、アル」

陽光が、やんわりと三人の上へ降り注ぐ。
遥かシドニーの銀世界まで塗り替えんばかりの温もりが、
やがて少年の、凍りついた三年の月日をゆっくりと溶かし……。



「お帰りなさい、バーニィ」





117ゲッターロボ0080 最終話8/13:2011/11/26(土) 01:15:31 ID:0/fO4gJU0
―― オーストラリア大陸・トリントン基地 ――

鮮やかな夕焼けの中、一台の軍用ジープが、演習後の軽やかさを以って荒野を駆け抜けていく。
地平線が見える、とまではさすがに言い過ぎだが、大陸の演習場にふさわしいダイナミックな風景。
もっとも、これほどに広大な敷地を軍用に確保できたのは、連邦に潤沢な予算があるからではない。
一年戦争時、悪名高いコロニー落としにより、豪州はシドニー以下主要都市に壊滅的な被害を受け、その人口が激減していたのだ。
連邦の基地設営は、その事を逆手に取った新型兵器のテスト運用を目的とした物であり、
今日もまた、若者達の目指す格納庫の前に、一機のペガサス級戦艦が降り立った所であった。

「……ったく、コウ、お前といると本当に退屈しないね。
 焦らなくったって、新型は逃げやしないだろうに」

「だってさ、噂が本当だったら一番に見てみたいだろ」

コウと呼ばれた黒髪の青年が、無邪気な子供のように快活に応じる。
MS乗りに憧れて士官の道を目指し、実際にパイロットとして非凡な才能を見せる若者であったが、
性格的にはあるいは、一介のメカニックでも目指していた方が向いていたのかもしれない。

「そんな事よりキース、噂の方は当てになるのか?
 あのペガサス級が積んで来たのが、ガンダムタイプの新型だって……?」

「ん、ああ……」

コウに促され、助手席のキースが眼鏡を抑えて呟く。

「まあ、五分五分ってとこだろうが、割と信憑性はあるんじゃないか?
 何せ今回の艦には、サイド6からの技術者が多数乗り込んでるって話だったし……」

「サイド6?」

「何だよ、コウ、忘れちまったのかよ?
 ほれ、例のルビコン作戦ってヤツだよ」

「あ……」

言われてコウも思い出す、それは仕官学校時代の一コマ、
宿舎のロビーで見た、とあるジオン兵の証言を取り扱ったニュースであった。

118ゲッターロボ0080 最終話9/13:2011/11/26(土) 01:17:34 ID:0/fO4gJU0
――自分がジオン軍の特務部隊に所属している事。
――先日のサイド6における一連の戦闘は、連邦軍の新型MS奪取を目指した【ルビコン作戦】の一環であった事。
――ルビコン作戦には続きがあり、24日までに作戦が遂行できなかったときは、ジオンの母艦が核攻撃を敢行する手筈になっている事。

一切の感情が抜け落ちてしまったかのように、淡々と事実のみを伝えた、ある意味つまらないメッセージは
それゆえにコウに深いショックをもたらした。
なぜならばそのメッセージを残した後、自分と大して年の変わらぬその兵士は、
現地改修したザク一機のみを駆り、ただ一人、決死の戦いを挑んだのだから。

「このテープを託した少年は、行きがかり上作戦行動に利用された被害者です」そう締め括った最後の言葉のみが
終始淡白であった自供の中で、唯一切実なものであった。
敵であるジオン兵の中にも言いヤツはいる、そんな当たり前の事実を、コウはその日、骨の髄に至るまで、深く刻みこまれたものだった……。

「……一体、どんなヤツなんだろうな」

「ん〜? まあ、いくら秘密兵器って言っても、三年も前の型落ち品だからな。
 あるいはウチに配備されてるジムの方が、よっぽど強かったりしてな」

「え?、ああ、いや…… ま、いいか」





119ゲッターロボ0080 最終話10/13:2011/11/26(土) 01:20:33 ID:0/fO4gJU0
「これが、新型の……」

「へぇ、ガンダムタイプって言っても、トリコロールカラーじゃ無いんだな」

ハンガー前
で言葉を失ったコウに代わり、キースが安直な感想を述べる。
目的の地で二人を待ち受けていたのは、鮮やかなブルーに染まった鋼の巨体であった。

慣れ親しんだGM達よりも一回り大きい青のボディ。
既存のカタログに存在しないその機体が、果たしてあのガンダムの系統機と呼べるものかまでは判別がつかない。
確かに両眼のカメラアイや、口許を覆うマスクには、資料で見たガンダムの面影がある。
だが頭部のアンテナは有名なV字では無く、槍の穂のように鋭利な三又。
さらに、曲面を押し出した肩部や胸甲の盛り上がりは、見る者に鋼鉄の筋肉を想起させ、
既存の連邦製MSにはない強烈な個性を放っていた。
そんな中、両椀に収納された小型のガトリング砲のみが、元の機体の名残を残す唯一の兵装であったのだが、
サイド6での戦いの真相を知らない二人は、当然その事には気付かない。

「こらァ! そこの二人」

「!? やばっ」

背後からの怒声に、おそるおそるキースが振り返る。
彼方より両肩をいからせずんずんと迫るのは、まるでパースでも間違えたのではないかと言う大柄の、
ツナギ姿の褐色の乙女であった。

「その機体は調整中、正式な公開は明日の午後からよ。
 それと何、これからこのモーラさんを、素敵なディナーに誘ってくれるとでも言うのかしら?」

「ああ、いやぁ、そうしたいのは山々なんですが、僕たちも勤務の途中ですので……、
 ほれ、コウ、そろそろ行こうぜ」

「ちょ、ちょっと待てって! あの、モーラさん」

「……? なにさ」

訝しげな瞳を向けるモーラの前で、何やらぶつぶつと呟いていたコウが、意を決したように顔を上げる。

「この機体、胸部のスペースがやけに大きいように見えるけど、
 もしかしてコイツには、何か特別なエンジンでも積んでいるのか?」

「へ……?」

「やっぱり」

おもわずぱちくりと目を丸くさせたモーラを横目に、キースが口笛を鳴らす。

120ゲッターロボ0080 最終話11/13:2011/11/26(土) 01:22:41 ID:0/fO4gJU0
「参ったわね……、確かにこの機体に積んでるのは普通の核エンジンじゃないわ。
 アナハイム社でも研究中の試作機、プラズマ・ボムズの一号炉心を搭載しているのよ」

「プラズマ……?」

「ええ、あたしは学者じゃないから理屈は説明できないけど、
 カタログ上の出力は同型の核融合炉の一割増し。
 さらに核爆発の心配が無い事から、コロニー内での運用にも期待されている優れ物よ。
 まっ、実際の性能は、テストしてみてからのお楽しみってところね」

「へえ、そんな凄い物を積んでるのか」

「ええ、けれどもコイツはあくまでパートナー、
 本命はあくまで向こうの二号機よ。
 もっとも今はまだ炉心を収めてない〝出来損ない″だけどね……」

モーラのややうんざりとした口調に疑念を覚えつつも、視線の先を二人が追い掛ける。
これから整備に入る所なのであろうか、後背の機体を包み込んでいたシートがタイミング良く取り払われ……。

「うッ!」

そして、思わずコウは小さな呻きを零した。
彼の眼前に現れたのは、ディープブルーの外装に包まれた一号機とは対称的な、
血で染め上げたかのように鮮やかでおぞましい、深紅のガンダムであった。





121ゲッターロボ0080 最終話12/13:2011/11/26(土) 01:25:26 ID:0/fO4gJU0
――同時刻。

トリントン基地内の施設の一角では、厳重なセキュリティの施された鉄扉が押し開かる様を臨む、
三人の男女の姿があった。

「……ここを開けるのも、実に二年半ぶりかね、シナプス艦長?」

「心境的には漸く……、と言うよりも、とうとう、と言った感じですな、准将」

温厚そうな初老の男、トリントン基地司令・ホーキンズ=マーネリの問い掛けに、
シナプスと呼ばれた痩せ型の艦長帽が感慨深げに応じる。
一方、傍らの水色のスーツの女性はただ無言で、開きつつある扉の先を、ただ憂い気にじっと睨み据えていた。

「パープルトンさん、民間人の方がここに入るのは、あなたが初めての事ですよ」

「…………」

准将の世間話に対しても、ニナ=パープルトンは無言であった。
それは彼女の性格の問題でも無ければ、無論、初めての栄誉に感動して言葉が出ないわけでもない。
この時の彼女は、扉の先に待ち受ける存在を知るあまり、周囲の言葉に対応するゆとりを失っていたのだ。

ほどなく、ガコン、と言う音と共に扉は開ききり、
2メートル程の高さの透明な試験体が、三人の前に姿を現した。
一見するとガラス製の大型タンクのようなその代物には、大小さまざまな計器が取り付けられ、
久方ぶりに外気に触れる機会を喜ぶかのように、柔らかな緑色の燐光を内部で煌かせていた。

「この光……、准将、炉心は起動しているのですか!?」

「いや、アルビオンより運び込まれたあの日以来、一切手を付けてはおらんよ。
 ただ、技術者達の分析によれば、炉心に残存するエネルギーが反応して、
 時折このような輝きを放つのだそうだ。
 今日のように、宇宙線の観測値の高い夜には特にね」

「下手に破棄や解体も出来ないと言う訳ですか。
 それにしても、随分と物々しく蓋をしたものだ……」

「……あれからもう、三年近くも経っていると言うのに……」

科学の常識を通じぬ遺物の輝きを前に、ニナが俯きがちにか細い肩を震わす。
未知なるゲッター線への畏れを隠しきれない技術者の姿を、ホーキンズが横目で見やる。

「パープルトンさん、やはりあなたは今回の試験には反対ですか?」

「……三年前、リボーコロニー内での戦闘の折、
 この炉心はあわや暴走直前にまで陥り、一時的にですが、膨大な量のゲッター線が大気に放出されました。
 幸いその時は事無きを得ましたが、一たび誤ればリボー……いえ、
 サイド6という名称自体が、この宇宙より消滅していてもおかしくない程の事件だったのです」

端正な顔立ちを深刻に歪め、ニナがきっ、と顔を上げる。

「お願いします。
 マーネリ准将、今回のプロジェクトの中止、もう一度だけご再考下い。
 こんな事を言うのは技術者として失格かもしれませんが、
 私には、この炉心を制御する自信が無いのです」

本音を切り出し、淡い紅を差した口許が、わずかに震える。
元々彼女は、アナハイム社のエリート達の中でも指折りのシステムエンジニアであり、
それだけに仕事に対する思い入れも人一倍強い。
今回のように、与えられた仕事に対し降伏宣言をするなど、本来の彼女からは考えられる姿では無かった。

122ゲッターロボ0080 最終話13/13:2011/11/26(土) 01:28:15 ID:0/fO4gJU0
だが、彼女の仕事への情熱はあくまでも、自らの生み出したMSが秩序の構築に貢献する事を前提としている。
一たび暴走すれば核以上の悲劇を生みだしかねない新エネルギーの研究も、
そのテストとして、未来あるパイロット達をモルモットのように扱う事も、
彼女の矜持からは到底耐えられるものでは無かったのだ。

――長い沈黙。

小さな溜息を一つ付き、准将が訥々と口を開く。

「――個人的な見解を言えば、私もこの炉心を軍事運用するのには反対ですよ」

「准将! でしたら――」

「……ですがね、パープルトンさん、
 残念ながら人類はもう、こいつから逃れる事はできんのですよ」

と、そこで事態を静観していたシナプスが、
あくまで視線を炉心に向けたまま、二人の会話に割って入った。

「三年前、リボーで起きた一件はメディアを通じ世界中に流れ、
 今や一介の民間人ですら、あのコロニーで連邦が何らかの研究をしていた事を知っている。
 いずれは誰かが背後にあるゲッター線の存在に気付き、実用化に向けて動き出す事でしょう……。
 パープルトンさん、あなたはその先鞭を、
 軍内のタカ派連中や、宇宙にいるジオンの残党のような輩に執らせて良いと思いますか?」

「それは……」

「未知のエネルギーを取り扱う危険性は、十分に承知しているつもりです。
 ですが、なればこそ研究は、我々の手で進めなければならんのですよ。
 それがどのような性質を持ち、どうすれば制御する事が出来るのか?
 邪な者が、最悪の暴走事故を引き起こす前に……。
 言うなればこのプロジュクトは、真実を知った我々にとっての義務なのです」

「義務……」

シナプスの言葉を、口許で小さく反芻する。
ニナは軍属では無く、ゆえに本来ならば、シナプスの言葉を強制される所以は無い。
だが、この場合のシナプスの言う『義務』とは、そんな俗っぽい意味では無い。
例えるなら、たまたま決壊寸前の堤防を発見してしまった者のように、
あるいは明日、コロニーに核ミサイルが落ちる事を知った兵士のように、
良識ある人間が、悲劇的結末を回避するために負わねばならぬ行動について言及しているのだ。
それはもはや立場や役割、ましてや能力の問題ですら無かった。

覚悟を決めたニナが、こくりと頷いたのを横目に、シナプスは軍帽を目深にかぶり直すと、
心底申し訳無さそうに呟いた。

「たとえその為に、あなたが心血を注いだガンダム達全てを、犠牲にする事となったとしても……」 

ニナの背筋がぞくりと泡立つ。
シナプスの言葉に感応したものか、炉心はいつしか輝きを増し、静寂に満ちた室内を彩り始めていた。
もう一度、新たな肉体を得るその時を歓喜するかのように。

あたかもそれは、宇宙を駆ける生命の煌きのように幻想的で、
これから始まるであろう戦慄の夜には、まるで似つかわしくない光景だった……。

123ゲッターロボ0080:2011/11/26(土) 01:33:05 ID:0/fO4gJU0
以上、投下終了です。
うん、すまない、完結なんだ。
繋げるか繋げ無いかは最後まで悩んだが、ケンイシカワとのクロスである事を重視したと思って欲しい。
次回作があるならば、頭の悪いオリヴァー・マイがゲッターヅダの性能評価をする話とかも書いてみたい。
ではでは。

124追い出された名無しさん:2011/12/26(月) 22:22:58 ID:50ty2rdw0
乙です!

こちらも、ネタですが投下します

125ツーと一緒(原題『マヤーと一緒):2011/12/26(月) 22:27:08 ID:50ty2rdw0
ツーと一緒     (原題『マヤーと一緒(新装版あずまんが大王三年生『NOVEMBER SPECIAL』)』)



隼人「・・・」
キーワード検索:ゲッターロボ
隼人「・・・ほぅ」
キーワード検索:ゲッター2

弁慶「隼人ー、何やってんだ?あ、コンピューターしてるのは分かるぞ。
  あぁ、てことはコンピューターしてんだな。今のは取り消しといてくれ」
元気「何言ってんですか」
弁慶「ん?」

グシャァァァ

弁慶「ああ、ゲッターが・・・」
元気「試作型のゲッターだよ。
   合体失敗?確かゲッター乗りの主な死因の一つが合体の失敗なんだよね」
隼人「・・・こいつは・・・」
元気「どうしたんですか?」
隼人「ゲッター2の兄弟機な気がする」
元気・弁慶「え?」

元気「いつの事故ですか?」
隼人「ゲッターGの修理が終わった翌日だ」
弁慶「昨日喰ったイカにしか見えねぇ・・・もしかしたら昨日喰ったイカがゲッター2なのかもしれないけど」
元気「それ大問題ですよ」
弁慶「かわいそうになぁ・・・別の形態ならいいけど・・・よくないけど・・・」
   武蔵先輩だったら・・・仕方ないけど・・・
隼人「・・・・・・」

隼人「おや? このあたりのゲッター指数が低い」
元気「うん、真ゲッターが来てからちょっとおかしいんだ」
隼人「そうか、以前この辺りにはシブすぎるゲッターがいたんだ。
   一度調べてみたかったんだが・・・」

126ツーと一緒(原題『マヤーと一緒):2011/12/26(月) 22:30:13 ID:50ty2rdw0

元気「隼人さーん!昨日持ち出した新型ゲッターの設計図だよ」
竜馬「あ?」
隼人「・・・ほぅ」
竜馬「なんだこのかわいく無さは。なんだお前、ゲッター作るのか?」
隼人「いや、博士がゲッター炉心を貸してくれないから・・・」プラズマ動力だけだ
竜馬「ああ、じゃあ仕方ねぇな」

竜馬「まぁいいじゃねぇか!作ってもどうせその時にゃ今より平和になってるだろうさ!」
隼人「このゲッターを造って、パイロットが見つかったら、
   組織を作ってゲッター線を使うゲッターを造ろうと思う」
竜馬「でも隼人、この間も回路ショートさせたからなぁ。
   人を乗せる段階になっても全然合体成功しなくて、
   有能な自衛官達が部屋の隅で脅えて震えてる・・・なんてことにならねぇといいんだけど」
隼人「・・・・・・」

隼人「それは有り得る・・・だがそいつはきっと優秀な・・・」
元気「プラス思考!プラス思考だよリョウさん!
   マイナスイメージを持たせちゃ余計危険だよ!!もっと犠牲者が増えちゃうよ!!!」
竜馬「しまった!!今のはウソ!ウソでしたー!!」

弁慶「そっかー、隼人がゲッター造りたいのかー。造ったら乗りに行くな」
隼人「何故だか知らんが三号機になら乗せてもいい」
弁慶「まぁ大丈夫!大丈夫だから!根拠はねぇけど!俺もきっと大丈夫だから!アバヨ!!」明日は実験だ!
隼人「・・・あれが三号機乗りの思考か・・・」俺は長生きしそうな気がする



翌日、ゲッタードラゴン暴走

更に数日後

127ツーと一緒(原題『マヤーと一緒):2011/12/26(月) 22:33:09 ID:50ty2rdw0

元気「・・・あ。廃棄されたプロトゲッターだ。沢山あるなぁ」


ガシャ

ギシャッ

ガシャンッ

隼人・元気「・・・」

元気「誰も乗ってないのに動いてる!?」
隼人「・・・・・・」

キシャァーッ

隼人「・・・アーク」
元気「アーク!?」
隼人「なんだかよくわからないが―――博士が厳重に封印していた奴だ」研究用に俺が封印を解いた
元気「ええ!?」
隼人「俺が強引に解析しようとすると必ず噛み付いて来るんだ」
元気「強引にやっちゃ駄目だよ!だからゲッター線に嫌われてるんじゃないの!?」

元気「あーっっ!!ゲッター線には人間を蕩けさせる力があって!
   ゴロツキたちが自分を選ばれた者とか言い出したりして!!!
   女の人達が冒頭から凄くひどいことされて!!」
隼人「元気は俺が解析し放題の間に逃げて・・・」
元気「まだ懲りてないの!?」

グワァァァァァアアアアア!!!!!!!!!

元気「わーっ!!」


ザッ…


隼人「!」
元気「!?」

隼人「ゲッター2!?」

128ツーと一緒(原題『マヤーと一緒』):2011/12/26(月) 22:40:53 ID:50ty2rdw0

ギャァァァウウウウ!!!!!!!!!

元気「凄い!先輩風を吹かせて追い払った!!」
隼人「・・・ゲッター2・・・」

ガクン

隼人「無人だと!?」
元気「またゲッター線が暴走したのかもしれないよ! 最近お父さんが引きこもってる部屋が近いからそこに!!」

博士「やぁ元気・・・久しぶりだな。近いうちにスバラしいものが見えるぞ」
元気「あ、うんそれは楽しみだよ! それよりこの現象は!?」
博士「なに・・・単なる試運転だ。これは第一段階の一歩に過ぎぬ」
隼人「え?」

博士「それよりあれは特に変わった現象だな。まるで隼人を守」
隼人「新機能です」
博士「・・・」
隼人「俺が付け加えた新機能です」
博士「・・・そうか、新機能か。そうなのか、元気?」
元気「はい、しんきのうです」
博士「そうか、なら持っていけ。大事にな」
隼人「・・・失礼します」

元気「どうやって動いたんだろうね。操作記録が誤作動を起こしたのかな」
隼人「・・・」
元気「それとも、弟(兄)分がいなくなって、隼人さんを捜しにきたのかな」

隼人「俺がこいつの乗り手になる。
   何十年経った後でも戦えるよう、育ててやる」

隼人「・・・そしていずれ、炉心搭載型の兄弟も造ってやる」
元気「まだ全然懲りてないの!?」

元気「でも、置いておく場所が・・・」元々殆ど蕩けてたから・・・
隼人「・・・」
元気「そうだ、研究所廻りの山に空洞を掘ればいいんだ」

元気「試作ゲッターのパワーに限界を感じたら持って行ってください」
隼人「法律とかいいのか」
元気「何を今更」
隼人「・・・そうだ、俺はやはりこいつが・・・」
元気「ゲッター2も、これからずっと戦っていくのかなぁ?」
隼人「・・・ゲッター2、共にゲッター線地獄の果てまで行こう」
元気「隼人さんも!?」


終わり

129追い出された名無しさん:2011/12/26(月) 22:47:22 ID:50ty2rdw0
本来は飛焔の妄想だった・・・


どうしてこうなった

130降臨 1/14:2012/01/01(日) 23:20:17 ID:clnv6oXc0
竜馬「ゲッターで隕石を迎撃しろ、だぁ?」
早乙女「そうだ」
今回早乙女博士が出した命令は今までには無い物だった
隼人「そりゃ一体どういうことだ」
ミチル「どうもこうもないわよ、観測された結果隕石がこの研究所目がけて降ってくることが分かったのよ」
弁慶「で、そいつを俺達に?」
早乙女博士が頷く
隼人「その隕石はどれくらいの規模なんだ?」
弁慶「そうだぜ、いくらゲッターでもでかすぎりゃ手に負えん」
早乙女「心配するな、ゲッターで十分迎撃出来る程度の大きさだ」
竜馬「へっ鬼の相手ばっかでちっとばかし退屈してたところだ、やってやろうじゃねえか!」
早乙女「迎撃に失敗すればお前たちはおろかこの研究所全てが吹き飛ぶ」
ミチル「頼んだわよ三人とも」

131降臨 2/14:2012/01/01(日) 23:21:12 ID:clnv6oXc0
三機のゲットマシンが勢い良く出撃する、そのまま上空を目指し―――
竜馬「チェェェンジゲッタァァァアゥワンッ!ゲッタァーウィーングッ!!」
合体を果たしたゲッターロボはその赤い翼で更に更に空高く昇っていった
やがてゲッター1の遥か上空に光る物体が現れた、それは徐々に大きさを増して向かって来た
隼人「竜馬!」
竜馬「来やがったか、いくぞっ!!」
隼弁「おうっ!!」
三人「ゲッタァァァァアビィィィイイムッ!!!」
ゲッターロボの腹部から放たれたゲッタービームは寸分違わず隕石へと向かい炸裂する
その一撃で大爆発を起こした隕石は巨大な火の玉と化した
竜馬「意外とあっけねえな、退屈凌ぎにもなりゃしねえ」
弁慶「ん?おい何だありゃ!」
ゲッタービームにより吹き飛んだ隕石、その異変に弁慶が気付いた
その炎が徐々に爆発の中心へと集まり”何か”の姿を創り始めている、そして―――

132降臨 3/14:2012/01/01(日) 23:22:07 ID:clnv6oXc0
竜馬「なんだありゃ…」
隼人「竜…か?」
弁慶「おいおい…」
呆気にとられる三人の前にそれは姿を現した

全身を隙間なく覆う黄金の鱗、二股に伸びた尾、その身体を支えるに相応しい太い二本の脚、空を覆うような巨大な翼、ゲッターロボの二倍はあるであろう巨躯
そして最も目を引く長くしなやかな三本の首、その先には卑しい鬼とは一線を画す金細工のような角を持った竜の顔の異形
それはまさに怪獣と呼ぶべき存在だった

133降臨 4/14:2012/01/01(日) 23:22:46 ID:clnv6oXc0
コロロロッキリリリッ!!
その怪獣は一声鳴くと中央の首の口を開きいきなりゲッター1めがけ光線を放った
竜馬「くっ!オープンゲェット!」
隼人「奴さんはどうやら友好的じゃないらしいな!」
弁慶「うぉぉおっ!?」
三機に分かれ今までゲッターロボがいた空間を稲妻状の光線が走る
間一髪回避に成功した三機のゲットマシンは地上へと急ぎ体勢を立て直そうとした
だが怪獣も翼を羽ばたかせ、その巨体に見合わぬ速度で追撃する

ゲッターチームが遭遇した相手は地上の早乙女研究所でも確認されていた
ミチル「あんなのが…あんな怪物が宇宙にはいるっていうの…?」
早乙女「やはり人類の脅威は鬼だけではなかったか…」

134降臨 5/14:2012/01/01(日) 23:24:01 ID:clnv6oXc0
竜馬「チェェンジゲッタァーワンッ!」
一足先に地上へ戻り合体したゲッターロボは追って来る脅威を見上げる
竜馬「トマホークブーメランッ!!」
先手必勝とばかりにゲッター1の肩から巨大な戦斧を引き抜き、怪獣へと投げつけた
だが大振りな軌道のトマホークは難なく怪獣にかわされ、更に先程と同じ光線で粉々に砕かれてしまう
隼人「あの光線に当たればただでは済まんな…!チェンジゲッタァーツウッ!!」
ならばとばかりにゲッター2へと変形し、その勢いのままドリルを構え敵へ突っ込む
隼人「ドリルストームッ!」
ドリルの高速回転によって生み出される竜巻で動きを止めそのまま貫こうという算段だ、だが
隼人「なにっ!」
怪獣は翼を大きくはためかせ突風を生み出し竜巻を相殺してしまう
弁慶「あんなナリなら水の中じゃ動きにくいはずだ、湖へ放り込んでやる!チェンジゲッタァスリィ!!」
ゲッター3へ変形すると同時に両腕を長く伸ばし怪獣の脚をしっかりと掴んだ
怪獣は身を捩り外そうとするがゲッター3のパワーにはなかなか打ち勝てない
ゲッター3は怪獣を離さず浅間山の斜面を勢い良く降りていく
怪獣もその翼を広げ逆らおうとするが、麓近くまで来た時
弁慶「大雪山おろしぃいいい!!」
その力に任せゲッター3は怪獣を回しながら思い切り湖の中へ抛り込んだ
さらにゲッター自身も湖の中へ飛び込み追いかける
水底はもうもうと泥が舞い上がっているが相手は金色の巨体、すぐさま発見し攻撃を仕掛けた

135降臨 6/14:2012/01/01(日) 23:25:23 ID:clnv6oXc0
弁慶「ミサイルストームッ!」
発射されたミサイルが怪獣へ集中する、その全てが炸裂するかに見えたが
弁慶「なにっ!」
隼人「バリヤーだと!?」
怪獣はエネルギーの障壁、バリヤーとでも呼ぶべき光り輝く壁を自身の前に作り出しミサイルを全て凌いでしまった
さらに悪いことに怪獣は翼を使い空中に負けず劣らずの速度でゲッターへ向かい
真正面から光線を吐いた
光線の直撃を食らったゲッター3は水中から空中へと巻き上げられ、その装甲を爆発が襲う
三人「ぐううっ!!!」
頑丈なゲッター3故その被害はまだ軽い方だった
しかし、爆発で陸へ吹っ飛ばされ未だ体勢を立て直せていないゲッターロボを、水中から飛び出した怪獣が全体重をかけて踏み付ける
弁慶「こなくそぉっ!」
怪獣の脚の下で軋みをあげていたゲッター3だが渾身の力で押し返し、出来た隙間を逃さずオープンゲットで脱出する
それと同時に下にあった物が無くなった怪獣は踏み付けの勢いによって脚を地面にめり込ませた

136降臨 7/14:2012/01/01(日) 23:26:29 ID:clnv6oXc0
竜馬「チェェェンジゲッタァーゥワンッ!」
その機を逃さずゲッター1に変形すると引き抜いたトマホークを未だ抜けない脚に叩きつけようとする
が、怪獣は自分の足元に光線を放ち爆発を起こして空へと脱出しながらゲッターの目を眩ませた
竜馬「煙幕だと!知恵のある真似するじゃねえか」
弁慶「あの光線は一体何なんだぁ?」
隼人「おそらく反重力で物をとらえ爆散させる重力に作用する光線、言わば引力光線か、来るぞっ!」
土煙を切り裂き隼人の言うところの引力光線が飛んでくる
ゲッター1は空中へと飛び上がりそれを避けると、真正面にいた怪獣と対峙する

137降臨 8/14:2012/01/01(日) 23:27:24 ID:clnv6oXc0
先に動いたのはゲッターロボだった
竜馬「うぉおりゃぁあっ!!」
いくつもの敵を切り裂いたそのトマホークを構えるとゲッター1は一気に突っ込んでいく
怪獣も動き出しゲッターへと飛び、双方あわやぶつかるかという瞬間
互いに身を捻り相手に一撃を加えつつすれ違った
ゲッタートマホークは確かに敵の身体を捉えた、だがその斬撃は厚く堅い鱗に阻まれ僅かな傷しかつけられず
逆に怪獣がその翼のカギ爪から放った薄赤色の光線を浴びてしまい大地へと落下した
落下の衝撃によって先程とは比べ物にならない土煙が舞い上がる地上へ怪獣はここぞとばかりに三つの首から引力光線を吐きまくる
引力光線の雨がやみ晴れてゆくのを待って土煙の中から飛び出したゲッター1は、一瞬の油断を突いて一気に怪獣に組みついた
力任せに首をへし折ろうとするがその長い首はしなやかに動かすために強靭な筋肉に包まれている
折れぬどころか逆にゲッター1が巻きつかれ三本の首で締め上げられてしまった
さらに各々の頭でゲッターに喰らいつき鋭く尖った牙で装甲を破るとそこから電撃を流し込んでいく
ゲッターの各部から小規模な爆発が連続して起こる、これによりゲッターは今度こそ力尽き地上に落ちていった

138降臨 9/14:2012/01/01(日) 23:29:13 ID:clnv6oXc0
竜馬「ぐうっ、なんとかならねえのか!」
隼人「あの翼が厄介だな、あれがある限り奴の動きは止められん」
弁慶「でもバリヤーで攻撃が防がれるぞ!!」
隼人「いくらバリヤーでも防げないものもあるはず、現にトマホークは奴の身体に傷を付けた」
弁慶「俺たちの中ででかい質量兵器というと…」
隼人「ゲッター2のドリルとゲッター1のトマホークだな、後はいかにそれを当てるかだ」
竜馬「任せときな!しっかりとあの隕石野郎にお返ししてやる!弁慶、おめえも頼んだぞ」
弁慶「おおう!やってやらぁ!!」
怪獣は眼下に力尽きた敵をどの様に仕留めようと考えているのか攻撃の手を休めていた
だが再び立ちあがったゲッター1の姿を認めると身構えた
竜馬「ダブルッ・トマホォオオクッ・ブゥゥメランッ!!」
ゲッター1は両肩から一本ずつ戦斧を引き抜くと時間差をつけて怪獣に投げつけた
一本目はやはり難なくかわされる、だが一本目に隠れ同じ軌道で飛んできた二本目は予想外だったらしく
さらに避けようと身を捩ったが回転によって破壊力の上がったトマホークによって片方の尾が切断された

139降臨 10/14:2012/01/01(日) 23:30:10 ID:clnv6oXc0
斬られた尾が落下していく
それによって怪獣の怒りに火がついたのか今までよりも速い引力光線の一筋が尾を切断したトマホークを粉砕する
仕留め損ねたトマホークに首の一本を向けつつも再びゲッターの方へ怪獣が注意を向けると、そこにはすでに変形を終えたゲッター3がいた
弁慶「ミサイルストォオオムッ!!」
先程のようにゲッター3はミサイルの嵐を浴びせた、怪獣も同じくバリヤーでそれを防いでいく、しかしゲッター3は撃ち続けるのをやめなかった

140降臨 11/14:2012/01/01(日) 23:31:12 ID:clnv6oXc0
その時、怪獣は己に接近する物を発見し迎撃しようとした…が今はミサイルの攻撃を受けている
それを防ぐためにバリヤーを展開しているため攻撃に移れず、また避けようとバリヤーを解くとミサイルの追撃を受けてしまう
絶対に動けない状況、そこへ戻ってきたトマホークは容赦なく怪獣の翼に深い傷を残した
ミサイルの嵐も着実にバリヤーにダメージを与えているらしく、その表面には全体に亀裂が走っていた
ミサイルを撃つのをやめたゲッター3はゲッター2へと変形し
隼人「ドリルアタックッ!」
その左腕の巨大なドリルを空中で体勢を崩した怪獣の翼のめがけ撃ち出す
怪獣はバリヤーと翼の光線でそれを落とそうと試みる
バリヤーにドリルが衝突した、雨霰と浴びせられる光線もその勢いは殺せず
ガラスを砕くようににバリヤーを破り怪獣の翼に大穴を開けながら貫いていった

141降臨 12/14:2012/01/01(日) 23:32:22 ID:clnv6oXc0
尾の片方は千切れ、両の翼はボロボロ、鱗もところどころ剥がれ満身創痍といった姿だった
それでも怪獣は敵を倒そうと最後の攻撃を仕掛けようと、三つの口にエネルギーを溜め、翼を一層大きく広げる
竜馬「チェェェェエンジゲッタァァアッゥワン!」
もう一度ゲッター1へと変形しこちらもゲッタービームの準備をする
ゲッタービームを、引力光線を両者は一気に相手へ放つ
薄赤いビームと黄色い光線が真正面から激突した
互いに押し押されと一進一退の状況が続く
執念か、怪獣は三本の引力光線を束ねると一つの渦にして威力を上げた光線をゲッタービームにぶつけた
その威力により一気に押されるゲッタービーム
あと少しでゲッターロボが光線に飲み込まれる

142降臨 13/14:2012/01/01(日) 23:34:07 ID:clnv6oXc0
隼人も弁慶も、早乙女研究所の者もそう思った、だが
竜馬「三対三なら数は同じだ、負けるんじゃねえ!!」
竜馬が吼えた、それによってゲッターチームが気合を入れる、三つの心が一つになる
三人「うおおおおおおおおおおおおぉぉっ!!」
ゲッタービームの出力が爆発的に上がり、相手の光線を逆に飲み込んでいく
金の輝きを纏い渦を巻いたゲッタービームは怪獣へ真っ直ぐに伸びていき、大爆発を引き起こした
その爆発は怪獣を鱗一枚残さず消し去っていく、爆炎から三方向に飛んだ稲妻は断末魔だったのだろうか

隼人「博士、結局あれは何だったんだ」
早乙女「宇宙にはまだまだ未知の脅威がいるということだ、もしかしたら鬼の次の敵はああいう存在なのかもしれん」

しかし早乙女博士の予想に反し、地球に怪獣は二度と出現することはなかった

だが

斬り落とされたはずの怪獣の尾は独りでに動き、静かに浅間山の地下深くへ、ゲッター線の坩堝へと潜っていった…

143降臨 14/14:2012/01/01(日) 23:35:52 ID:clnv6oXc0
遥か未来、そこにはゲッターに抗う為、たった一人ゲッターロボを駆り戦い続ける竜馬の姿があった

そしてその前にそれは再び姿を現す
開かれた地獄の釜に飲み込まれたことが彼を変えたのだろうか
かつて黄金の輝きを持った鱗は金と黒の混ざった分厚い表皮へ、脚は四つに増えその身体をさら巨大にし
角は捻じれ伸び、赤い眼へ変わったその顔はゲッターへの憎悪を剥き出しにした禍々しさを持っていた
もはや面影は三本の首くらいしか残っていない、だが竜馬はその怪獣をかつて戦った相手だと確信していた
グルルゥッ…
怪獣は低い唸り声をあげ一度己を滅ぼした相手、ゲッターロボを睨み据える
だが竜馬も負けじと吼える
竜馬「ここまで追って来るほど骨のある奴がいるたぁな、いいぜ、何度でも相手になってやる!!」
ゲッターロボは肩から戦斧を引き抜き、怪獣は口内にエネルギーを溜め込む

二頭の”竜”が今ここに、再び激突した



144追い出された名無しさん:2012/01/01(日) 23:39:37 ID:clnv6oXc0
初めて投下してみました
新ゲッターロボとギドラの対決を書いてみようと思ったけど
SSを書くのは難しい事だと改めて思った

文体、キャラなど問題点は多々あれど
一番の失敗は行と行の間を空けなかった事です・・・

145<削除>:<削除>
<削除>

146追い出された名無しさん:2012/01/18(水) 18:09:48 ID:trgz/ZkE0
鯖落ちてる?

147追い出された名無しさん:2012/01/26(木) 04:12:21 ID:gBIf.2Cc0
投下します。
俺の屍を越えてゆけ(リメイク版)とのクロスです。

148剣の行方は? 1/9:2012/01/26(木) 04:15:02 ID:gBIf.2Cc0
【○×年 一月】

本日、かねてより刀鍛治の剣福殿に依頼していた業物が当家に届き、それを嫡男へと託した。
刀身には一族の悲願である、朱点打倒の祈願を込め『童子斬丸』の銘を刻んである。
ようやく立ち上がれるようになった幼子に初めて与えるのが玩具では無く、
鬼を斬るための得物であるなど、並の親であるならばさぞ眉を顰める事であろう。
だが、惜しむらくは我らの一族には、人並みの幸福を享受する時間が無い。
今はただこの一振りが、倅の未来を切り開く一助にならん事を願うのみである。



【○×年 十二月】

先代の法要を終え、久方振りに双翼院への出陣を行う。
四代目当主として初めて指揮を執り、院内にて六体の鬼を斬るも、
それ以上のめぼしい戦果を挙げる事は叶わなかった。
「この剣には、携えし者の魂が宿る」と、亡父が事ある毎に語っていたことを、今更のように思い出す。
今はまだ、剣は何も応えてはくれない。
一人の武芸者として、そして一族の当主として、
先代の名に恥じぬように、精進を積み重ねていかねばなるまい。



【×△年 八月】

会心の一撃!
今日の朱点童子打倒選考会において、当家は抜群の働きを挙げ、陛下より格別の恩情を頂戴した。
勝負の明暗を分けたのは、我が童子斬丸の一太刀であった。
だが、一方で都に上れば、中傷の類も度々耳にする。
曰く「当家の剣士の上げる戦果の数々は、先達の磨き続けた宝刀の加護があればこそ」云々云々。
まったくもって洒落臭い!
先代の加護が俺を支えていると言うのならば、その力で鬼どもを斬りまくって、
やがては俺の剣名で以って、この刀の銘を天下に轟かせてくれようではないか。



【×○年 二月】

亡き兄様の形見分けの折、一族の神刀、童子斬丸を拝領した。
代々当家の嫡男に引き継がれてきたこの一振りが、傍流の私に託されたのは、
兄様の戦死により、直系に剣士の血が途絶えてしまった事に依る。
いざ手にした憧れの剣は、兄様が嬉々として語っていた印象よりも、遥かに重く、禍々しい。
刀身を震わす亡者の嘆きが、平時でもこの身を苛まんばかりである。
イツ花が言うには、この剣は敗走のおり、鬼の大将の呪いを浴びてしまったのだと言う。
剣に再び輝きを取り戻すには、彼の怨敵を倒し、その仇を雪がねばならないのだ、と。
一族の皆が、呪われしこの身を気遣うが、しかし今の私には、この痛みこそが救いなのだ。
刀より響く怨霊の声は、兄様の怒りであり執念だ。
死して尚、あの人はこの剣と共に戦っている
この剣が傍らにある限り、私はまだ、あの人と共に戦えるのだ。
私もいずれは、この剣の贄となる、そして、その時は。

149剣の行方は? 2/9:2012/01/26(木) 04:16:42 ID:gBIf.2Cc0
【△×年 九月】

親王鎮魂墓最深部にて、七ツ髪を打倒。
これにより、残す髪はあと三匹となる。
神刀継承の折、イツ花が素っ頓狂な声を上げた理由も、今宵、身を以って知った。
輝く刀身より燃え上がる紅蓮の炎は、先代が仇敵『赤猫お夏』を討ち果たし、
一族の仇を雪いだ折に、新たな加護を得たものだと言う。
先代ばかりではない、剣に宿る輝き、胸を焦がさんばかりの高揚感は、
当家歴代の剣士達が研鑽を積み重ねてきた証だ。
携えた剣が、困難なる道程をいつだって照らし出してくれる。
この家に生まれてきて本当に良かったと、僕は心の底から言える。
この素晴らしい人達と共に戦えた誇りを、僕の生涯忘れまい。



【△○年 三月】

本日、一族の者達が黄泉坂に旅立つのを見送る。
この大事の時に役目を果たせぬ我が身が恨めしいが、胸中に不思議と不安は無い。
今朝方見た、子供たちの自信に満ちた表情がありありと瞼の裏に蘇る。
若い力は永劫の呪いの連鎖の果てに、ようやく雄飛の時を迎えようとしている。
彼らならばきっと、朱点童子打倒の宿願を果たし、今生の無間地獄に終止符を打つ事が出来るであろう。

ただ、今一つだけ、気になる事がある。
歴代当主によって代々継承されてきた御神刀・童子斬丸の事だ。
まっすぐに刀身を見つめる少年の、あの奇妙に煌いた瞳が、頭の隅にこびりついて離れないのだ。
それが今は亡き先代、大叔父の瞳の色にそっくりであった事を、今更のように思い出す。
そのように考えると、ぽつりぽつりと疑念も沸いてくる。
例えば、刃に宿る多様な神通力もそうだ。
イツ花は加護などと言葉を濁していたが、恐らくはそんなに生易しいものでは無い。
あれは間違い無く、斬り捨てた鬼の力を、刀自体が取り込んでいるのだ。
のみならずあの剣は、所有者の力量までを取り込んで、一層に輝きを増していく。
それはあたかも、神々との禁忌を繰り返しながら血の濃さを増していく、我が一族の縮図のようですらある。

もし、今一度この身が動くならば、剣を生み出した剣福殿に問い質す事も出来ようが、
我ながら、気付くのが一手遅かったようだ。
一族が無事に朱点を討ち果たしたならば、この身を苛む呪いからも開放されるのだと言うが、
残念ながら、全ての真相を探るのは、次の世代への課題となりそうだ。





150剣の行方は? 3/9:2012/01/26(木) 04:17:59 ID:gBIf.2Cc0
「この日が訪れる時を心待ちにしておりました、……殿
 やはり血は争えませぬな、こうしていると、あの御方に剣の依頼をされた時の光景が
 ありありと蘇るかのようでございます」

「私の来訪を……?
 それならば、私の用件も分かっておられるのであろうな、剣福殿」

「……その前に、まずは一度、
 童子斬丸を検めさせては頂けませぬか?

 ……おお! 何という凄まじい輝き。
 よくぞ、よくぞこれほどまでに研鑽なされた。
 これほどの輝きあらば、失われし御神器の代わりに、存分にお役目が果たせまする」

「……? 剣福殿。
 一体何の話をしておられるのだ?」

「いやはや、失礼致しました。
 あなた様が知りたいのは、この剣の由来でございましょう?
 それならばまずは、この剣の生まれし場所にご案内仕ろう」





151剣の行方は? 4/9:2012/01/26(木) 04:19:32 ID:gBIf.2Cc0
「全く知らなかった。
 都にほど近い山中に、まさかこのような遺跡が眠っていようとは」

「遺跡ではございませぬ。
 これはかつて、古の民が作り出した戦船の名残でございます」

「船? 海はおろか、湖も沢すらも無いこの山の中に?」

「水の上を行く船ではありませぬ。
 この船はかつて、星々の大河の間を往くために建造された代物なのです」

「まさか」

「私の言葉が嘘かどうかは、この扉の向こうに行けば分かりまする」



「……! こ、これは、何と面妖な……!?」

「落ち着きなされ。
 これなるは実体ではなく、遥かな空の果てで繰り広げられている戦いの一部を写した
 立体映像に過ぎませぬ」

「映像? それは例えばそれは神々の使う幻術や、遠見の術の類、と言う事か?」

「根源的な原理としては同じです。
 ただし我が一族の技術はは神々の奇跡ではなく、
 船に用いた唐繰りの働きを動力としております」

「我が一族?」

「さ、どうぞこちらへ……
 あなた様の知りたがっていた剣の秘密は、この通路の先にございます」

152剣の行方は? 5/9:2012/01/26(木) 04:20:55 ID:gBIf.2Cc0
「このまやかしは、今なお空の上で続く戦いの一部と、
 確かそう仰られたな、剣福殿。
 見たところ、片方の神々だけが一方的に打ち破られているようだが……」

「その、敗れていく勢力の方が、我々の同胞です」

「何故だ? なにゆえ彼らはこのように勝ち目の無い戦いを……?
 いや、彼らにこれほどの出血を強いる【敵】とは、一体何者なのだ」

「分かりませぬ。
 ただ一つだけ言えるのは、星々の間を飛び回れるほどの実力を持った神々が集まって尚
 その正体を掴めぬほどに彼奴等は強い、と言う事のみです」

「…………」

「例えば、幼子が力任せに積み木を崩す行為に理由を見出せぬように、
 奴らもまた確たる理由も無く、単なる衝動のままに、
 天地の全てを無に帰そうとしているのやもしれませぬ。
 いや……、あるいはそう言った存在こそが、本来の意味での【神】なのかもしれませぬな」

「愚かな事を……」

「そう、愚かな事です。
 ゆえに我らは一命を賭し、何一つ勝機の見えぬ戦に身を投じているのです……

 ……余談が過ぎましたな。
 さて、ようやく着きました。
 その剣の起源は、この扉の奥に封じておりまする」





153剣の行方は? 6/9:2012/01/26(木) 04:23:10 ID:gBIf.2Cc0
「これは……、鉄の神体か!?
 鎮魂墓に封じられていた土偶器に似ているようだが
 しかしこれは、なんと雄大な」

「これがかつての戦いで、私の用いていた兵器です。
 神々の奇跡ではなく、大気に満ちた【ゲッター線】を動力源としています。
 尤も現在では既に大破し、まともに動かすことも適いませぬが」

「げっ、たぁ……?」

「天空より降り注ぐ、ある種の意志を持った光の事です。
 少量浴びても、直接的な害はありませぬが、
 生命の根源に働きかけ、様々に成長を促す効果があると考えられております。
 例えばそれは、妖術や神通力の類として発露したり
 あるいは寧猛な爪や牙、角と言った形に顕れて、様々な異形を生み出したり……」

「……随分とまわりくどい言い方をする。
 つまり、お主の言を借りるならば、
 八百万の神々も魑魅魍魎も、太古の昔に降り注いだ光を起源にしているという事か?」

「あくまで可能性としての話でございます。
 けれども、鬼共の多くや彼の神々が、
 その身に並外れたゲッター線の輝きを宿しているのは事実です。
 そして、神と人の混血であるあなた様の一族の体内にも……」

「……我らの中に?」

「その事に気が付いた時、私の中で一つの妙案が生まれました。
 大破した神体や船の代わりに、この京の都に溢れるゲッター線の力を用い、
 新たな兵器を生み出す事は出来ないだろうか、と。

 手始めに私は神体の持つ大斧を鋳潰し、より純度の高いゲッター鋼を精製しました。
 膨大な鉄塊を惜しみなくつぎ込み、残ったのは人の手に収まる程度の欠片のみでしたが、
 私はそれがゲッター線と共鳴し、やがては神域に至る強度を得る事に期待したのです」

「それがこの刀の前身と言う事か」

「ええ、けれどもそれだけではまだ不十分でした。
 大気に満ちたゲッター線を収集するのみでは、望みの強度を得る前に、私の寿命が先に尽きてしまう。
 もっとより直接的に、膨大な光を吸収する方法が必要でした。
 そこで私はナノマシン……目に見えぬほどに微細な唐繰りを施し、金属に二つの特性を付与しました。
 一つは金属に触れた生物のゲッター線を吸収する装置。
 今一つは、ゲッター線を浴びた生物の血液を解析し、より攻撃的な因子を取り込んで進化する能力です。

 あとは金属を武器の形に変え、鬼退治を生業とする者に提供するだけ……。
 問題は、誰にこの剣を鍛える役を与えるかでしたが、最適な候補もすぐに見つかりました。
 短い生涯をひたすら闘争に明け暮れる一族。
 神々との交配を繰り返し、代を重ねる度にゲッターの因子を高め続ける一族……」

154剣の行方は? 7/9:2012/01/26(木) 04:24:21 ID:gBIf.2Cc0
「……ッ!?
 剣福! お主、我ら一族の呪いを利用したのだな。
 ただひたすら、最強の兵器を生み出す事のみを目的に!」

「左様、なれど誤解なされるな。
 私はただ都合の良い流れに乗ったまでの事。
 童子斬丸はあなた方一族に十分な貢献をしてくれたはず、
 彼の神々があなた方に施した運命の過酷さに比べれば、随分と割りの良い取引ではありませぬか」

「貴様ッ!」

「あくまで私が許せぬと申すのならば構いませぬ。
 我が身を如何様にでもなさいませ。
 あなた様の一族にその刃を託した時から、いつかこのような日が来る事を覚悟しておりました。
 神々をも凌ぐほどの強大な力を得たあなた様にならば造作も無いはず。
 ……なれど、私を始末する前に一つ、やらねばならない事があるのではないですか?」

「……この刀の、処分、か」





155剣の行方は? 8/9:2012/01/26(木) 04:26:03 ID:gBIf.2Cc0
「全ての戦いを終えたあなた様が、私の許を訪れるであろう事は明白でした。
 今や天下無双の剣士となったあなた様の鍛えた剣は、錆びる事も朽ちる事も無く、
 圧し折る事も鋳潰す事も叶わない」

「そして、人の手に過ぎたるその威力は、地上の何処に封じようと……、仮に天界に持ち込もうとも
 いずれは誰かが禁を破り、都にいら去る災いを持ち込む事になる」

「災厄を退ける方法はただ一つ、
 その剣の力を必要としている異世界に、跳ばしてしまうことのみです。
 さ、後はその台座の前に」

「この船を、もう一度天空へと飛ばすのか?」

「いえ、この船には、もはやそれほどの力は残っておりませぬ。
 ですがただ一度のみ、その台座に納めた物体を異世界に転送できるようにしてあります。
 名残は尽きぬでしょうが、後はあなた様のお気持ち次第です」

「……これで、剣とも今生の別れか」

「お気持ちはお察しいたします……、ですが、その剣をこちらの世界に留め置けぬ事は、
 理解しておられるはずでしょう。
 その剣を手離した時、それでようやく、あなた様は全ての呪いから解き放たれ
 人並みの幸福を得られるのでございます」

「……幸福、か」

「……?、如何なされた?」

「やはり私には出来ぬ相談だよ、剣福。
 君は信じぬかもしれないが、剣に宿るは【げったぁ】の光ばかりではない。
 我が一族の剣士達の喜びも、痛みも、苦しみも、全ての想いが煌き
 この刀身を輝かせているのだ。
 彼ら一族を切り捨てねば得られぬ幸福など、私には必要ない」

「……殿、なれど……」

「なれどこの剣を、こちらの世界に留め置く事は出来ぬ。
 ならば是非も無し、とるべき道は一つのみだよ
 剣福殿、貴殿の言う戦場に、剣もろとも私を飛ばして貰おうか」

「……! それだけはなりませぬ。
 この船で飛ばされるは、ただ片道のみ。
 その先は未来永劫、修羅の世界が待ち受けるのみです。
 ようやく全ての呪いから解き放たれたあなた様が、何ゆえ今、茨の道を求められる!」

「剣がざわめいておるのだよ、剣福。
 ただひたすら復讐のみに費やされた我らの生涯。
 この闘争の果てに、我らが屍を踏み越え続けた意味があると言うのならば、
 是が非でも、私はそれを見定めたいのだ。
 なぜならそれが、一族の中でも剣士として生を受けた者の運命であり、特権だからだ」





156剣の行方は? 9/9:2012/01/26(木) 04:27:16 ID:gBIf.2Cc0
――時は1037年三の月。

京の都を騒がせし鬼の総大将・朱点童子は、ついに勇者の一族によって打倒され、
日ノ本に平和がもたらされた。

長きに渡る戦いに終止符を打ち、短命の呪いから解放された戦士たちは、
その身に宿る強大なる力を自ずから封じた後、めいめいに各地へと散った。

――ある者は都に留まり、武人としての本懐を全うし、

――ある者は仏門に帰依し、生涯を行脚の旅の中で費やし、

――ある者は市井の一員として、ささやかなる生涯を終えた、

……ただ一人、家宝の神刀を携えた赤髪の青年がいずこへと消えたのか、その行方を知る者はいない。

157剣の行方は?:2012/01/26(木) 04:34:26 ID:gBIf.2Cc0
以上、投下終了です。
一応、特注剣のシステムをざっくり説明すると。

・購入した剣士一人の専用装備となる。
・レベルアップ時、使用者の攻撃力(体の火)に応じて性能が上昇する。
・持ち主が死んだ場合、一族の剣士に継承される。
・継承時、先代の倒したボスによって、特殊効果が付加される事がある。
・先代がボスに敗れていた場合、呪いが付加される事がある。
・最高まで鍛えるとチート。

と言う、余りにケンイシカワなシステムだったため、ノリで書いてみました。

158追い出された名無しさん:2012/01/27(金) 04:41:34 ID:F5aARE0w0

なんて卑しい俺屍なんだ

159追い出された名無しさん:2012/01/27(金) 14:50:39 ID:xzJNYxic0
職殺。の非ずの村を思い出した

切ないな・・・

160追い出された名無しさん:2012/06/04(月) 01:08:50 ID:D/f9JxGg0
ゲッター1はピンチに陥っていた
メカザウルスのカマによって両腕を切り落とされトマホークが振るえず
もう一つの必殺技であるゲッタービームも分厚い装甲に阻まれる
さらにダメージで内部に異常が出たのかオープンゲットして形態を切り替えることも出来ないのだ
「グワハハハハ!ゲッターロボ敗れたり!」
「くそっ!こうなりゃこうだ!」
何を思ったのか竜馬はゲッター1の腕が無いのにトマホークを射出したのだ!
「血迷ったかゲッターロボ!今トドメを刺してやる!!」
メカザウルスは牙の並んだ口を開け、熱線を吐いてゲッターロボを焼き尽くそうと構えた
だが!ゲッターロボは片足を後ろに引き
「そこだぁーっ!ゲッターシュートッ!!」
先程頭上高く打ち上げたゲッタートマホーク、それが落ちてくるタイミングを見計らい
メカザウルスの開いた大きな口へ蹴り込んだ!!
「グエ〜ッ!!」
エネルギーの充填している所へトマホークをぶち込まれメカザウルスは自爆してしまったのだ
かくして今日もゲッターチームにより平和は守られた

161追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:31:58 ID:ua/8RxNc0
なんとなく投下してみる

162追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:32:32 ID:ua/8RxNc0
 宇宙、それはほぼ地球を制覇している人類が次に開拓する新天地である空間。
 宇宙、それは限りなく広く、限りない速さで広がり続ける空間。
 宇宙、それは灼熱と極寒の真空の厳しい空間。
 ――――しかし、その空間は人類だけのものではなかった。


 あるものが宇宙から海に向かって落ちていた。
 それは百メーターを超える鈍色の巨大なモノ。
 楕円型で卵のような形をしているが、卵とは違って完全な無機物である。
 その速度は音速をはるかに超え、空気摩擦で燃えて赤い火球と化していた。


 それを鋼の三体の巨人が眺めていた。
 黒い巨人は寸胴で腕と脚は太く、一昔前のブリキの玩具を連想させる。
 だが、大きさは三十メーターを超える巨体を誇り、最強の兵器『スーパーロボット』である。
 残りの二体は色は青く、体も細めであるが同じ最強の兵器である。 
 その肩に女性が立っていた。三機のスーパーロボットに一人づつで計三人でいずれも20前後の若く美しい女性。
まるでそれはファンタージー物語出てくる妖精のようである、妖精のように美しいが彼らも『IS』という同じく最強の兵器を纏っている。
 どこか武者を連想させる姿の三機は『打鉄』という名のIS、量産型ながらなかなかの性能を誇っている機体である。
 彼女たちもまた巨人と同じように火球を睨むように眺めていた。
 巨人の操縦者も肩に乗っている女性達もそろってオペレーターの声に耳を傾けていた。

『到達まで――――』

 無線から消えてくる女性はどこののど飴をなめているのかを尋ねたいぐらい聞き取り奇麗なやすい声をしていた。
 着かぬ間の戦いがないときの基地では皆のアイドル的な存在であるが、今その声は緊張感にあふれていた。

『5――4――3――2――1――到達します!』

 高速で海にそれは落下、空気との摩擦による熱によって水蒸気爆発が生じ、半径数理にわたる爆風と衝撃波が暴れまわり、大波を生じさせる。

163追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:33:08 ID:ua/8RxNc0
だが、百メーターを超える物体の落下にしては被害少なすぎる。
 は落下する直前で減速したからだである。もちろん、奇跡という偶然で減速したのではない、これの確かな『意思』で減速したのだ。

『タイプは蟲(バグ)タイプ……数は大型一、中型九、小型三十』

 卵形のそれは花弁のように開きそこからワラワラと異形のモノが現れる。
 生理的な悪寒を感じさせられるそのグロテスクな姿の異形は『蟲』と呼ばれている。
 その呼称の通りに地球上の生物である虫に似ている。
 だが、彼らは宇宙――――いや、別次元からの生命体である。
 証拠に大きいのは六十メーター、中型で三十メーター、小型で三メーターの大きさである。
 だが、確かに大きいのはダンゴムシ、中型はクワガタムシなどの甲虫、小型は雀蜂に似ていた。

「蟲か……蜂が1000匹とかじゃなくてよかったぜ。一気に吹き飛ばすぜ」

 黒い巨人は身の丈もあるマシンガン、というよりもガトリングを構えて敵に向ける。
 ガトリングと巨人がリンクし最新のFCSが大量の敵をロックオン――――引鉄に力が入れられる。

「たっぷりと歓迎を喰らえ!」

 ガトリングがラッパのような低温の騒音とガ共にガスバーナーのように断続的に火を噴く。
 数匹の小型種の数センチ前で弾丸が爆発を引き起こすものの、多くの蟲は散開し、射線から逃れるようとする。
 すると、弾丸が向きを変えて後を追う。
 弾丸というには語弊があった、これは一発一発がミサイルであった。
 そのミサイルは敵を逃すまいと、敵の生体反応をどこまでも追う。
 二機の青い巨人も肩からミサイルと手に持っていたバズーカやロケットランチャーで負けずに砲撃。
 三機のISも、何もない空間からさまざまな火器を造りだし援護する。

『小型種十、中型種三を撃破。中型二体のダメージは中、大型種には目立ったダメージは見られません』
「さすがジジイだな。思ったより減ったか……ゲッター1から各機へ。とっと行くぜ!」

 鋼の巨人たちは持っていたガトリングとバズーカ、ロケットランチャーを捨て、P-90を巨大化させたサブマシンガンに持ち替え目標に向かって飛び立ち、左右に青い巨人が後を追うように並ぶ。 
 肩乗っているISは、三機の巨人が動くと同時にこれまた妖精のように飛び立ち三角の陣形を組む。
 数秒で音速の世界に突入し、対する蟲も同じく音速の世界に突入する。

164追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:33:43 ID:ua/8RxNc0
 
 蜂を数匹引き連れたクワガタが人類では発音も表現もできそうもない咆哮を上げ巨人と相対する。
巨人達はサブマシンガンを放つ、偶然小型種は運動性で勝るために偶然一匹あたり撃破した程度。
中型種にはかなりの数が当たったが、すでに半分死んでいる二匹が楯になるように弾丸の雨を受けて、被害を最小限に抑えようとした。
中破していた二匹は完全に沈黙、他の六匹中二匹にダメージを少々与えた程度。弾幕強引に突破したクワガタが大顎で青い巨人の胴体に喰らいつこうとする。
青い巨人はサブマシンガンを投げ捨て大顎を掴む。
蟲の大顎の力と青い巨人の力はほぼ互角に拮抗し両者の動きが止まる。
そのクワガタについてきていた蜂の一匹が巨人の腰に張り付く、鋭い針を刺すと、針を切り離し巨人から離脱、すると、タイミングを見計らったのように針が爆発する。
巨人がグラつき、膝を付くがなんとかクワガタと拮抗し続ける。
他にも数匹の蜂が動きを止めた巨人に群がる。
この数の爆弾を受けたら青い巨人は耐えきれたとしても、目の前のクワガタに到底戦えるわけがない。
だが、青い巨人のパイロットはにやりと笑う。

『今だ撃てぇ!』

 青い巨人に一直線に向かっていた蜂達が全部撃墜される。
 打鉄が手に持っていたライフルから白煙が上がっていた。 
 蜂は運動性が高く、狙いづらい相手だが巨人に気を取られて直線的な軌道を取ったためになんとか撃ち落とせたのだ。
 打鉄は武器を野太刀に持ち替えて、蜂が巨人に対してそうしたように動きを止めているクワガタに攻撃を試みる。

『タアァァ!!』

 クワガタの大顎を斬りかかる、このクワガタの皮膚は鋼鉄をはるかに凌ぐ頑丈さを誇り、大顎もかなりの高度を誇っている。
 そのために、斬り落とすことには至らなかったがヒビが少し入る。
――――それで十分。
 巨人とクワガタの力は凄まじく、一秒間ですら千メガジュールを超えるエネルギーがぶつかっているのだ。
 ヒビはコンマ秒の一瞬の世界で駆け廻り、大顎を一週しするとそこから大顎が折れる。
 同時に巨人は掴んだままの折れた大顎をクワガタの腹を刺す、顎と顎の中間に拳を振り下ろす。

165追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:34:13 ID:ua/8RxNc0
『チェエーンナァックルゥ!!』

 殴った拳から先が飛び出し、 ロケットエンジンにより推進するそれは硬い皮膚を突き破り体内を進みちょうど反対側から飛び出て拳に繋がっている鎖がクワガタが縦半分に裂く。
 
『危ないところでしたね』
『すまんな、今度酒でもおごるぜ』
『安酒はやめてくださいね』
『みんな、クワガタは腹が弱いぞ』
『あっ、逃げた』



 青い方のもう片方はクワガタ二匹と相対していた。こちらはうまく距離をとれているようで、一方的に攻撃していた。
サブマシンガンの弾丸が内一匹のクワガタ硬い皮膚を貫き停止させる。
だが、もう一匹のあふれる活力は未だに健在で背中が盛り上がり寄生虫のような生体ミサイルが巨人に向かって発射される。
 青い巨人は拝むように手を合わせると、掌の間から電流が走る。
 巨人の膨大なエネルギーが体中を巡り、掌の間に集中する。
 強烈な磁場が発生し、それは生体ミサイルを巻き込み巨人の目前で爆発させる。
 また、蜂はまるで電子レンジに入れられた卵のように爆ぜる。

『プラズマァァサンダァァー!!』

 超高エネルギーが巨人の掌から放たれ、光の矢と化したそれはクワガタを瞬時に消し炭にする。

『結構危なかったな――――ッ!?』

 真下の海から最後のクワガタが現れ巨人胴体を大顎で挟み、海中へと引き摺り込もうとする。
ミシミシと嫌な音が挟まれている胴体から響き、機内に煩い位に警告音が響く。

『あっぶねえな! おいっ』

 その通信と同時に轟音と鎖付の拳が飛んでくる。
 どうやらうまい具合にクワガタの腹部を貫通し、その生命を奪い去った。

166追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:34:49 ID:ua/8RxNc0

『ヘッヘ! スコアはこれで互角だな』
『余裕あるなお前……中佐は?』
『ほら』


「トマホークブーメラン」

 大ムカデの頭に巨大な投げ斧が突き刺さる。
 この大ムカデはお供のクワガタに負けない強度の皮膚を持っていて、サイズから言ってこちらの方が厚い。
そのため、斧は頭部に突き刺さる程度で止まり、大きさに見合った生命力を保有している大ムカデには大したダメージにはなっていない。

「一秒でいい、トマホークが刺さった場所の動きを止めろ」
『了解ッ!』

 二機は全火力で足止めをする。
 戦車も圧倒する火力、だがそれでも大ムカデに碌なダメージを負わせることはできない。

「よくやった!」

――――だが、足止めには成功。

「ゲッターキック!」

 音速をはるかに凌駕した黒い巨人が黒い矢のように足先から突っ込む。
 二百トンを超える大質量と重力によりマッハ四を超える速度、TNT火薬にすると数トン分を超える運動エネルギー。
実に広島型原子爆弾の三十分一のエネルギーそれが巨人の足先という狭い面積に凝縮される。
足先に斧が当たり、斧がそのまま楔の役割になり、硬い皮膚を粉砕。
大ムカデは体をくねらせ、黒い巨人の進行コースから体を離させて被害を最小限に抑える。
頭を粉砕されたのに、強靭な生命力で暴れ続ける。
だが、思考力が完全になくなっている暴れ方で出鱈目な方向にあがいている。

 ――――止め。

167追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:35:19 ID:ua/8RxNc0
 黒い巨人は大の字に体を広げる。
 全エネルギーを叩き込む巨人の最大最強の必殺技

「ゲッタービーム!!」

 先ほどの攻撃で剥き出しになった部分に赤色の熱線が照射される。
 数万度のそれは内部から大ムカデを有毒な煙に蒸発、消滅させる。

『打鉄二機が援護しているとはいえ、化物だな。さすが十年選手というべきか……』

 彼ら五人は呆れているのか、関心しているのか、あるいは両方なのか、分からない顔で上司の活躍を見守る。
 ほどなく、大ムカデは完全に停止し、中型種すら存在しないために残った蜂を難なく殲滅で戦闘は終了した。

「よっし、帰還だ」
『あの……流中佐』
「あん?」
『義弟さんが――――』

 伝えられたことは信じられない内容であった。
 最近会っていないから、近況は知らなかったがあまりにもな内容、
 意外で済まされるようなというレベルではない。

「はあっ!?」

 その叫びはロボットの外まで響き、月が浮かぶ青空へと吸い込まれていった。
 空に浮かんでいた月は昼だから朧であった、ある一部を除いて。
 その部分は昼の白い月には対照的に真っ黒の円。今見えている部分のちょうど裏側にももう一つ同じものが存在している。十年前に突如として発生したそれは『ゾーン』と呼ばれている。
この蟲達はあそこから現れて、裏側からは別種の化物が発生している。
 何故発生したのかは誰にも分かってはいない、そしてあの向こうはどうなっているのかどういう原理で存在しているのかもわかってはいない。
分かっていることは二種の化物は敵対関係であり月はその戦場、偶にどちらかの種類の化物が地球に襲来しているということだけである。蟲かゲルかの化物と彼らは戦っている。

168追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:35:50 ID:ua/8RxNc0


 空を駆ける四つの影があった。
 その四つの影は音の三倍近い速度で覇者のように空を縦横無尽に駆けていた。
 その四つはアメリカ軍の精鋭が操る超兵器である。
 四機とも黒く三角形に近い形をしていて、昔に作られたF-117やB-2と言われたステルス機に似ていた。
 勿論、これらもステルス機である。が、F-117やB-2ではない。
 そして、これらは戦闘機でも、爆撃機ではない。
 四機は徐々に減速し、高度もそれに比例するように下がっていた。
 
「はぁ……」
 
 先端が開き鋼の頭が現れる。
 翼が二つに分かれて折れ、鋼の拳と鋼の脚が現れる。
 そして、地上に鋼の兵が降り立つ。
 鋼の兵――――その名は『ステルバー』

 アメリカの代表的な超兵器の一つである。
 少年が生まれる数年前発案された宇宙開発用作業用重機を造る計画で生まれた『スーパーロボット』に分類される。
 音速を軽く超える飛行モードと人型のバトルモードの二つの形態に変形でき。
 また、『空飛ぶ火薬庫』とも言われるほどに弾薬を搭載でき、ハリネズミのように体中から全方向に攻撃でき、バトルモードになることで接近戦に対応できるようになり、さらに戦闘能力が跳ね上がる。
 ステルス性とその機動性で敵の懐に潜り込んでその火力で一掃するというコンセプトの兵器である。
 輸出用でステルス機能がなく、一部の性能が落としているモンキーモデルが世界中で活躍している。 
 日本にも国産のスーパーロボットがあるとはいえそれが配備されている。

「どうせなら……こっちの方がよかったな」

 愚痴を呪いのようにこぼしながら液晶テレビ画面を少年は眺めていた。
 そんな彼の隣に同情の色に染まっている少年がいた。
 落ち込んでいる少年は背は一七〇で中ぐらいであり、髪も黒でどこにでもいそうな地味な印象である。
 対して隣の少年は少し背が高く大人びているように見え、バンダナを巻いた茶髪に近い赤い髪で派手な印象与えていた。

「でもお前はお前ですげぇじゃねんじゃね? ISが――――」

169追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:37:03 ID:ua/8RxNc0
「……言うな。お前は……そっちの道にいけていいな」

 ISとは『インフィニット・ストラトス』の略称である。
 これも、宇宙開発計画から生まれた兵器である。
 先ほどのスーパーロボットと違い、パワードスーツに分類され、小型である。
 小型であれど、小回りと運動性、運用性などで戦闘能力はスーパーロボットに決して劣らない。
 ――――だが使えるものには限られている。
 その点が黒髪の少年の悩みである。

「だって、俺は男だぞ。……なのに…………ISって……」

 ISは女性にしか使えない兵器である。
 開発者が変わり者で何を考えているのかが分からないことで有名な人間で、しかも失踪してしまった。
 ISの最重要部分であるコアが現在では完全なブラックボックスであるためにどうすることもできないのである。
 公表されてからすぐは「女尊男碑」の世の中になるのではという意見もあったが、
結局スーパーロボットの出現や敵の出現によって通常戦力すらも欲しいような状況になってしまったためにそのようなことはならなかった。

 とまあ、世間一般では常識を変え得た女性専用超兵器と位置づけである。

 だが、この黒髪の少年は唯一の例外なのだ。
 女性にしか使えない兵器を男のこの少年が使えるという前代未聞のことが起きてしまったのだ。
 ブラックボックスが多いこの兵器を解明するために少年はIS学園と言われるIS操縦者や開発者の育成学校に通うことになったのだ。

「俺は……ダイナミックに行きたかった……」

 赤毛の少年が通うことになるところはIS学園のようにロボットを操ったり、開発したりする者の育成校である。
 その学校は軍学校に分類されているために学費が掛からず、むしろ給料がもらえ、重機やロボット操縦をはじめとした多くの資格を習得できるため、就職率がいい。
 さらに、万年人手不足の今現在ではある程度の学力があれば入れる。
 少年は本当のところは中学校を卒業したら就職し家を出ることも考えていた。さすがにそれは義兄と姉に怒られて止められたが。
 「家を出たい」それは、家が気に入らないという思春期特有のわがままな理由ではない。

170追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:37:47 ID:ua/8RxNc0
彼には両親も親戚もいなく、優位いつの家族である姉夫婦に養ってもらうという負い目を感じていたからだ。
 彼女達は少年を追い出すようなことはしていないし、少年との仲は彼が思う以上に良好ともいえる。
 仕事が忙しいのかなかなか家にいないが、いつかは子供ができる。
 だから、少年は彼らには負担をかけたくなかった、故に彼はすぐに食っていけるようになる進路を希望した。
 それに、義兄の影響でスーパーロボットに憧れていていたのもある。
 何度か義兄の元に行ったときにシュミレーターで操縦したときの痺れる快感に近い感覚を味わった。
 「仮想でこれならば本物はどうなのか?」ということを何度か思ったこともある。
 だが、彼がこれから歩むことを強制させられた道はそれとはあまりにも離れた道。

 IS学園の就職率はいい、学費も特別な存在となった彼は払う必要はない。
 しかし、IS学園はISが女性しか使えないので女性の通う学校…………つまり、女子校。
 乙女の花園に行くことになる年頃の少年。
 間違いなく珍獣扱いであろう。もっとも、『ISを使える男』として現段階でも十分珍獣扱いされている。
 そして、憧れのスーパーロボットに乗ることはおそらくできないであろう。
 入学を断れば、世界中から実験材料としてなにされるか分からない。
 なまじ義兄の仕事の関係でマッドサイエンティストを見たことあるためにどうなるのかが簡単に想像できてしまう。
 頭を抱えながら渡された必読の電話帳並みの厚さの資料と睨んでいたが、頭の中では「ああ、電話帳と間違えそうだな」と別のことを考えて全く集中していなかった。
 この少年こと、織斑一夏はある意味では英雄と言われた家族を超える有名人となっていた。



 
 赤毛の少年、五反田 弾はそんな一夏の親友なのか悪友なのという関係者である。
 めでたく彼が通う通称ダイナミックという名のパイロット育成校はIS学園のスーパーロボット版で一夏が行きたかったことである。
 弾はそこに通う以上パイロットの卵、または整備士、開発者の卵である。
 もっとも、弾は死ぬのは怖いし家族が心配するから後方で整備士か作業用に操る仕事を希望している。 

 宇宙からの敵、蟲とバクテリアとよく似たゲル状生命体達通称『侵略者(インベーダー)』と人類との戦争は十年を超えている。
十年を超える戦争は決して珍しいものではなく、長さだけで言えばかつての米ソ間の冷戦は四十年を超えている。

171追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:38:59 ID:ua/8RxNc0
しかし、人類は防戦一方。
これは敵の本拠基地が宇宙であるために攻め込むことができないからである。
 運よく二つの化物たちが潰し合っているために地球に攻めこむ敵戦力は少なく、ISとスーパーロボット達の活躍で最小限の被害で持ちこたえている原状。
戦況は膠着状態で人類が月に大規模戦力で込めるようになるまで続くと考えられている。
それは多分、彼らの子供世代という説、孫世代という説、五世代先という説もある。

 ともあれ、弾と一夏はいつかはその化物たちと戦うかそのサポートに回ることになる。
 そして彼はロボットに乗っている。
 残念ながらスーパーはつかないロボット『ビィート』
 アメリカの偵察用に十年以上昔から作られた全長八メートルの小型ロボット。
 パーツを換装することでさまざまな状況に対応できる汎用性から出る実用性。
 世界各国の共通小型汎用ロボットと認定されているためにちょっとした都会レベルならば工事現場で見かけるほど浸透している。
 そして、大抵のロボットはこの操縦システムをベースとしているためにこれを操縦できれば大体の機体を操縦できる。
 スーパーロボットもその例外ではないので訓練用に数十機がある。 



 そんな彼の前には泣いていることを隠そうともせず泣いている少女がいた。
 彼にはその少女が誰なのか朦朧とている意識の中で思い出す。
 
「――蘭」 

 彼の一つ下の妹で彼同様の派手な赤毛は長髪でいまどきの女の子らしくおしゃれをしている。
 男勝りだが優等生で生徒会長で、親友に恋する乙女である。
 「一夏に見られたら、笑われるぞ」っと冗談を弾は言おうとした。
 いつもならば、ボコボコにされるのだが、彼は声を出すことができなかった。
 妹の手に大量の血で濡れていた。「怪我しているのか」と考えたが妹の手には傷一つない。 
 その血が誰のものか気付くのかに時間はかからなかった。

 五反田弾、自身の血であった。

 数十分前のことをぼんやりと思い出そうとしていた。
 たしか、一年生全体でビィートを用いた訓練をしていて……。

172追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:39:48 ID:ua/8RxNc0
模擬戦をしていたような、途中で何かが乱入して生きたような?
 たしか……黒いIS?
 なんでこちら側に腕を向けているんだ?
 ……どうも、この先が思い出せない。
 上体も首も動かせないために自分がどうなっているか分からないが相当な怪我をしていることはぼんやり自覚していた。
 ここはどうやら病院でドラマやアニメなどでよくある手術室に運び込まれている途中であるようだ。
 「ウチ金はらえるか?」「保険降りるかな?」「学校側が負担してくれるのか?」と心の中でぼやく。

 妹がナンパしたくなるぐらいかわいらしい看護師に抱かれ、弾の手から離れる。
 証明がやけに明るい……手術室であるらしい。
 看護師も医者も青い顔をしている。
 そんな者達の後ろから小柄な老人が満面の笑みで歩み寄っていた。

「うひゃひゃ! ここまでグチャグチャならば、方法は一つしかないのう。」

 老人の隣には助手らしき人物が道具を運んでいたが、だが、その道具はスパナや鋸、ハンマーなどの手術には使いそうもない道具。
 老人はその道具の山からチェーンソーを取り出し、エンジンを作動させる。

「チミィイ、命が惜しくないか? 生きたいか? それともあの世に逝きたい? 話せそうにもないのう。
 YESならば瞬きを三回、NOならば瞬きを四回。 それが合図じゃあ」

 弾は、目で生きたいと思っているが目の前の光景に強張っていた。
 ――――だが、生きたい。
 瞬きを三回し、弾はそのまま意識を闇の向こうに手放す。

「ならば――――わしの芸術、科学の礎となってもらおうかのう」




「うわああああ!……夢か」

 あまりの悪夢にベットを砕かんばかりの勢いでから飛び出す……。
 覚めた目で周りを見ると清潔な白で統一された質素な部屋。

173追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:41:05 ID:ua/8RxNc0
 だれもがイメージするだろう典型的な病室であった。
 いやな予感がした彼は、腕と脚を確かめることを試みる。
 ファントムペインなどと言われる、失ったはずの部分から感覚を感じる現象があるが。
 右手のある部分、左手のある部分、左足、右足のある部分毛布が盛り上がり、自分の意思で動いている。

「よかった、五体満足か……」

 右手を見つめるとエジプトのミイラ(完全な漫画のイメージだが)のように包帯に巻かれているものの確かに存在する。
 左手もちゃんとあり、右手と左手でひとりジャンケンして、ちゃんと動くことを確かめる
 次に足はどうなのかと上体を起こそうとベットの柵を軽く掴んだ。
 メキョとアルミ缶が潰れるような音が静かな病室に響いた。
 潰れた缶のようになってる掴んでいた円柱状の柵を彼は凝視し、突然の出来事で顔が困惑に染まる。

「なんだこれ?」
「ヒョッヒョッヒョッ。思ったより早く起きたのう」

 悪夢で見た怪しい老人がドアを開け現れていた。

「えっと……? じいちゃんは?」
「わしか、わしはお前さんの命の恩人じゃよ。最初は戸惑うと思うがのう」
「リハビリがつらいってこと?」
「う〜ん、惜しい。五反田弾君――――サイボーグ二号」
「へえっ!?」

 潰れた柵で腕の包帯が破れ。
 そこから、メタリックな光沢で輝く五反田弾の新たな腕が覗いていた。

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 病院中にその声は木霊し、その声で大急ぎで駆け付けたナースに弾は叱られた。

174追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:41:57 ID:ua/8RxNc0



 昔、二人の兄弟がいた。
 二人の生家の敷島家は当時は裕福な家であり、何不自由なく育った。
 二人は紛れもない天才であり変人でもあった。

 兄は車にひかれた犬を拾い解体して、脳、眼球、内臓、筋肉、骨の一本一本をまで分解した。
 弟は父が趣味で保有している刀や猟銃を解体して中身を調べて、分解する前よりも精密に組みなおした。

「僕は最強の生命を造りたい」
「僕は最強の兵器を造りたい」

 兄は生物学、特に遺伝子を中心に学びクローニング技術の第一人者となった。
 弟は機械工学、特に兵器開発でその道で知らないものはいない存在になった。

 だが、彼らの目的は名声を得ることではない、「最強」を作り出すことである。
 時々、彼らは論議を交わし合い、互いを磨き合い、さらに先、さらに強い存在を作り出していた。
 ――――サイボーグ、それもその一環で生まれたものである。

 無機物と有機物の融合。
 兵器と人間の融合。 

「っで、この体はあんた達の産物なのか」
「いい体じゃろ?」
「確かに命は危なかっただろうけど……」

 弾は包帯のほどけた銀色の腕を見る。
 先ほど潰したベットの柵を見てぞっとする。 
 夢かと思って頬をつねろうと思ったがパンを千切る様に取れそうなのでやめた。

「パンチ力は二トン、キック力は八トン、ジャンプ力は十メーターを超える体が不服か?」
「オーバースペック過ぎんだよ」

 潰れたベットの柵を雑草に用に毟り、握ったままのそれを親指の力だけでへし折る。
 その行動を興味深そうに老人は眺め続けている。

175追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:42:42 ID:ua/8RxNc0

「安心しろ、根性で制御できる」
「無茶言うな!!」

 弾が怒りで床に柵だったものを叩き投げる。
 深々と床に刺さり込み、人の力では抜き取ることは不可能なくらい深く刺さっていた。

「冗談じゃあ、制御コードを設定すれば抑えられる」つまらなそうな顔で老人は続ける「その設定のために来たんじゃあ」
「よかった……俺は……どのくらい…………」

 弾の口は震えで止まってしまった。歯と歯がまるで雪山の遭難者のようにガチガチぶつかり合う。
 春には季節外れのその震えは不安から来るものであった。
 事実を知ることの恐怖である。

「どのくらい……? 人工物が埋まっているかと聞きたいのか?」老人は顎を摩りながら続ける「大体八割かのう」
「八割!?」
「残っているのは……一部神経と脳の九割」
「脳も!?」
「おっと、一応生殖機能は残ってあるぞ」

 思い出したかのように付け加える。

「ここに運び込まれた時生きているのも不思議なぐらいじゃったからかのう」敷島はどこか遠くを見つめる「あの男みたいな悪運じゃのう」
「あの男?」
「以前改造したやつで、極道じゃったか。どこ行ったのやら」

 弾は他にも自分に似たような境遇の人物がいたことを知ったがそれはどうでもいいことであることを知った。
 気になっているもう一つの点もあった。

「ああ、サイボーグ手術代は六億な」
「ろっ、六億!?」

 その気になっていた点は、まるで昨日の晩飯を答えるかのような気軽さで思い出したかのようにあっさり切り出された。
 六億その百分の一でさえ、食堂の彼の実家に簡単に払えるわけがないし。
 ましてやただの学生の自分には無理な金額だ。

「まあ、モルモッ……もといいデーターを取らせてもらえばチャラにしてやるぞ」
 老人はニヤリと顔を歪ませる
「なんせサイボーグなんてめったに作れるものではないからのう」
「ハハハ…………」

 弾の頭の中は真っ白になった。
 早い話が目の前のマッドサイエンティストの体現者の人体実験に付き合わされるのだ。
 六十億の体になった彼にもう平穏は訪れないのだろうか?

「とりあえず、エントラッセンじゃあ、おめでとう弾君」

176追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:43:39 ID:ua/8RxNc0
ほぼ同時刻の遠い国の酒場、値段も酒も料理の味も並みであるが、基地が近いだけに訪れる客は多い。
 今、この店で飲んでいる客の一人にドイツ人がいる。
 ドイツ人と言えば、勤勉、誠実などの真面目なイメージを思い浮かぶものは多い。
 ところが、この男ヒム・シャトナーはそのイメージとは無縁の人間である。
 「イタリア人なのではないか?」と言われるほどに女性がいれば声をかけ、手を出し、そちらの意味でもエースの戦績がある男である。
 ドイツ人らしいところは今手に持っているビールがドイツ産であることぐらいである。
 もっとも、隣にいる流竜馬は日本人であるが、不真面目というほどにないにしても規律を重視せず、粗暴な部類に入る男である。
 面白いことにこの二人はエースパイロットである。
 戦争初期はスーパーロボットが少なかったころ各国から集められて結成されたエースを集めた部隊があった。
 彼らはそれに選ばれ。その時からの付き合いであるのだが友人と言えば友人だが悪友の部類にはいる。
 もちろん、部隊のメンバー同士は手紙や電話で時々であっても交流は続いている。

「日本に帰るって? そりゃあいいな」
「あくまで仕事だがな。……三か月ぶりか」
「IS学園か?」
「バカ。俺がISについて何か教えることができると思うか? まあ、場所は近いけどな」
「じゃあ、日本の地理に詳しくはねえけど、ち、……嫁さんの実家に近いんじゃないのか?」
「あいつか……三か月ぶりになるな」

 妻の弟、つまり竜馬の義弟が今とんでもないことになっているのは知っている。
 義弟は竜馬の影響かロボット、特にスーパーロボットに乗りたがっていた。
 これは何度か一人にするのは可哀そうだからということで早乙女研究所に預けていたことが関係している。
 年の近い早乙女博士の子供がいたためにできた処置であったが。
 そこはロボットの聖地と言われる場所、全く影響されないわけがなかった。
 竜馬得意の空手を教えてくれと頼みに来たり、自主トレに付き合うことも何度もあった。
 さすがに年を重ねるにつれて、戦場に行きたいとかいうことは言わなかったが、ロボット乗りの育成校が第一目標であった。
 多分、整備か作業などの方面でロボットを操る進路を行くだろうと竜馬は思っていた。

 なのだが、先日のニュースで彼がとんでもない事態に陥っていた。
 妻の職場に行くということは分かったのでいったん一息をついたものの女子校であることを聞いて別の意味で気が気でなくなっていた。

「あいつやっていけるんだろうか」
「IS学園ね……流石に十八未満は守備範囲外だな」
「お前、それしかねえのかよ」

 幸いにもと言うべきか、IS学園は彼が出向する先に近いところにある。
 皮肉のことに義弟が行きたがっていた学校である。
 さらに皮肉なことに竜馬を呼んだのは早乙女研究所現所長である。
 またまた、皮肉は続き義弟と同年代の少年少女の面倒を見る仕事である。
 極めつけに新型ゲッターの開発関連でもある。

177追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:44:45 ID:ua/8RxNc0



 そのセシリア・オルコットは憤慨していた。
 目の前の男がクラス代表に推薦されたからだ。
 セシリア・オルコットはイギリスから代表候補生に選ばれた存在である。
 生まれも名門貴族で高貴な生まれたが、だからといって地位でそれを勝ち取ったわけではない。
 生まれ持った才能等もあったが努力による部分が大きいことは誰にも否定はできない。
 努力のきっかけは彼女の両親が残した遺産を守るためである。
 彼女の今は亡き母親は会社を経営して成功し続けていた。
 ――――だが、父は婿養子のためか卑屈にもそんな母親の顔を窺うような軟弱男であった。
 彼女が父に抱く思いは「情けない」の一つしかなかった。
 だが、彼女にとって一番知っている男性が父であったために、先入観に偏見が混じってしまっているにしても、
全ての男が腑抜ではないということは一応は頭にはある。
 現在、インベーダーからIS使いと共に地球を守っているロボット兵器を操る者は大半が体力の面で男性である。
 その男達は彼女に負けないくらい、またはそれ以上に切磋琢磨をしたはずである。
 今日、もしかしたらこの瞬間ですらも過酷な任務に命を削っているかもしれない。
 だから、そういう男達を認めざるえない。

――――だから、「ISが動かせる」という点だけの男がクラスの代表になることは許せなかった

178追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 00:46:57 ID:ua/8RxNc0

 そういうわけで一夏はセシリアと模擬戦という決闘を行うことになった。
 決闘まで数日後に控えている一夏だが、彼とセシリアのISについての知識、技能差は大きい。
 それをどうにかするために彼は特訓をしていた。

「一夏、やるな! だが、甘い」

 ――――パン。
 奇麗な一本の音が道場に響く。
きれいに箒の竹刀が一夏の面が叩く。

 一夏は再会した幼馴染の箒と道場で剣道していた。
 姉がIS開発者である箒に協力を求めたところ「実力を見る」ということで剣道をすることになった。
 確かに、ISの動きは操縦者に左右されるために生身の戦闘の技能が高ければ高いほど強いともいえる。
 一夏は一応ロボット乗りを目指していたために体力付を怠らず、バイト(お手伝いレベルだが)の合間に部活動生以上の運動はしている上に、
義兄のトレーニングに付き合ったりしていた。
 バイトの合間だったために部活動に所属はできなかったが、体力には飛びぬけてというほどにないにして、もある程度の自信があった。
 それが功をなしたのか目の前の箒に善戦していた。
 目の前の箒は全国制覇したこともある腕利きの剣士である。

「一夏……お前、体力はあるが剣の腕が鈍っているな。中学では剣から離れて陸上部か球技でもやっていたのか?」

 体力が付いても、剣道や柔道などの戦うための技能は磨かなかった。
 まず、藍越に入学することから考えており、中途半端でヘタな偏りは避けたほうがいいと考えていた。
 本当は超実戦思考空手の使い手で且つロボットパイロットである義兄から教えてもらいたかったが彼は多忙のため、
なかなか家にいないから中途半端に偏りかねない。
 姉もロボットのりではないがかなりの腕利きである、のだが同様の理由で無理。
 とりあえずは基礎体力を上げて戦闘の技術はそこで身に着けようと思っていた。
 なのだから、まさかいきなり模擬戦をする羽目になるとは思っていなかった。
 一応は性別差からくる、腕力、体格差で箒を吹き飛ばすことはできるのだが、箒の技がそれをさせなかった。
さらに、ISでは筋力が反映されにくいのでそれで勝っていても意味がない。


「――だから、どんどん来い、箒!」
「行くぞ! 一夏ぁ」




彼らの戦いこれからだ!!

        未完

本作は今亡き某所に投稿しようとしたゲッターとISのごちゃまぜSSです。
コンセプトとは私がためらわない程度の改変で実はこれでもギリギリなチキンハートです。
IS、ゲッターロボと共にいろいろ設定を変えています。
このまま書いたままにするのは無駄なことをした気になるのこっそり投下させてもらいました。
もちろん、続きはもう書くことはありません。

179追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 20:54:17 ID:sHpB6GYc0
GJ!
続き無いのかもったいない……

180追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 22:07:29 ID:r5nJu7JM0
乙ぅー!   

それにしても規制の嵐で本スレに全然書き込めないのが辛い……

181追い出された名無しさん:2012/08/01(水) 23:00:26 ID:q1i0MiUE0
どうも作者です。
感想ありがとうございます。
某所の三月の規制で投下のタイミングを逃し、そのまま放置していたので。
もう続きを書くのが…………って状況でしって。

一応この後にゴウが出てきて
竜馬・境遇が変わっているされている
一夏・スペックが少し変わっている。
弾・機械的な魔改造
ゴウ・ナマモノ的な改造。

という感じの四人の主人公で書こうと思ったんですが、難しすぎると断念

他のキャラはゲッターは
隼人・やっぱり偉くなっている、あるキャラのある部分に驚く
武蔵、弁慶・チェンゲ第一部の設定。
元気・チェンゲ版なので女、でもおもに面倒見ていたのが弁慶たちなので性格が……
    一夏と昔からの友人だが好みが境遇のせいで偏っているために恋的なものは全くない。
敷島・チェンゲ版も漫画版も好きなので二人とも出しました。
    ちなみにサイボーグ一号は極道なあのかた

ISのヒロインは箒と鈴は変化なし、セシリアはすでに書かれている通り
シャル・母親の負担を軽くするために手先の器用さでパイロット育成校に特待生として入学しているため男装設定なし。
ラウラ・千冬の特訓で克服する前にロボのパイロットをさせられたために能力が原作より低いし、性格が少し卑屈(逆補正改造)
     敷島兄に作られた設定でゴウは彼女を作った時のデータが利用されている。
生徒会関連:そこまで考えていませんでした。
山田・隼人の自分(の胸部)を見る熱い眼差しを意識しているのかしていないのか?

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184奴らに墓標はいらない。:2013/03/15(金) 04:38:50 ID:shK785nE0
 悪魔がホルンを吹き鳴らす時刻、街に立ち並んだ巨大なビル群は、峻厳とした山々の峰のように如く天高く聳え立っている。

 チクタクと静かに回る秒針の音──時計の針が午前一時を差す。路地裏にたむろするギルドの売人どもから、月のアガリをせしめるバイケン。
 バイケンは売人にロド麻薬を売らせ、売人はバイケンに売った麻薬の金の二割を上納金としておさめるのが、ここでの取り決めだ。

 闇金、賭博、売春宿、殺し──この街での非合法なビジネスは、全てバイケンの息がかかっている。
 悪党のバイケン、それがこの男の通り名だ。口に咥えた葉巻が、グレーの煙をゆらゆらと立ち上らせる。

 バイケンは海賊ギルドの中堅幹部で醜い痘痕面をしていた。
 魔女のように伸びた鷲鼻は痘痕だらけで、右目には眼帯が巻かれている。
 おまけにせむしで、到底女受けするような色男とは呼べない。
 右目の眼帯はかつて一匹狼の海賊に奪われた。海賊の名はコブラ、宇宙最高の賞金首と呼ばれた男だ。

 もっとも、数年ほど前にぷつりと消息を絶ち、今ではもう死んでいるだろうというのが、もっぱらの噂だった。
 だが、バイケンはそんな噂話なぞ信じてはいなかった。

 そうだとも、奴はどこかで生きているはずだ。あいつはそんなヤワなタマじゃない。 
 奴は地獄の住民だ。悪魔を友にし、死神と連れ歩く、それがあの男だ。
 バイケンの胸裏にはいつまでもコブラとサイコガンのシルエットが付きまとっていた。

 ぼんやりとした薄明かり、外灯の回りでは、季節外れの蛾が飛び回っていた。
 今月に入ってから、ロド麻薬の仕入れ値があがるという。そんな話が近頃のバイケンを悩ませていた。

 ロド麻薬は金になる。買った奴はやがて廃人になる。売人は新しい客を捕まえて、ロド麻薬を売りつける。
 売った金はバイケンの懐へと転がり込む。仕入れ値があがれば、その分値段をつり上げなければならない。
 麻薬の売値をあげれば、客との揉め事が置きかねない。その事が今夜のバイケンを不機嫌にしているようだった。


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