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【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 避難所【クロスSS】

1 追い出された名無しさん :2010/12/29(水) 15:56:47 ID:xU68qfbE0
【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 避難所【クロスSS】

ゲッターロボ等、基本的に石川賢作品と他作品のクロススレです

●保管庫
ゲッタークロスオーバーSS倉庫
ttp://wikiwiki.jp/gettercross/

2 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:49:03 ID:ZPH5xLVw0
中華の大地で激突する中華陸軍混成部隊と日本軍RA部隊。
機甲部隊の基地をかけた重要な戦局が、今、最大の盛り上がりを見せようとしていた。
それこそがこの物語の重要な見せ場の一つなのである。
しかし、ここで物語は一変する。浅間山の裾野に移らなければならない。


----


古来より浅間山は活火山として知られている。「あさま」は火山を示す古語である。
多くの火山と同じように信仰の対象となっており、浅間神社が鎮座している。
標高は2568m、円錐形。元は3つの火山であり、噴火と崩壊を繰り返して今の形になった。
現在は比較的平穏な活動をしているが、いつまた噴火するか分からない物騒な山である。

浅間山の裾野、天工自然の森の中。そこに人工の建物が一つあった。

3 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:50:04 ID:ZPH5xLVw0
「博士!首相から電話ですが……」

「そうか……。後に……いや、通してくれ」

ここは早乙女研究所。日本国は浅間山に建てられたゲッター線研究施設である。
政府の援助を受けているとはいえ、首相直々に電話する場所では無い。
しかしそれも昔の話で、ここ最近は首相からの電話が頻繁にかかってくるようになった。

「……はい、こちら早乙女」
『やあ早乙女博士。調子はどうだね?』
「おかげさまで。今日は何の用件で?」

所長の早乙女博士は口ではそう言ったものの、実際はどんな用件か分かっていた。
最近かかってくる電話はほとんどが同じ用件についての電話だったからだ。

『ハハハ、君はとぼけるのがうまいねぇ。例のロボットについてだ』

そうしてその予想は当たった。

早乙女研究所では、ゲッター線研究の集大成として、
ゲッター線を動力にしたロボットを開発している。
元は宇宙開発用なのだが、パトロンである政府は戦闘用に改修することを要請している。

『一体あれはいつ出撃できるようになるのだね?』

「はあ、やはり、変形合体する巨大人型ロボットというコンセプト自体が
 非常に難しいものでして、しかも戦闘用となると……」

『博士、もう一度言うよ。君はとぼけるのがうまいねぇ』
『あれが完成してることはもう分かってるんだ』
『博士、もう一度聞くよ。一体あれはいつ出撃できるようになるのだね?』

博士は図星を突かれた。
"例のロボット"というヤツは、実は既に改修を終えていたのだ。

『まあ、君があれを戦場に出したくない気持ちも分かるよ』
『でもね、こっちにもどうしようもない事情があるんだ』

「……事情?」
『なに?』
「そののっぴきならない事情とは一体?」
「聞けば、企業も独自に新兵器を開発したらしいじゃないですか、TM400とか言う……」
「ならば例のロボットが出る必要はないのでは?」

首相は溜息をついた。

『君は何も分かってないようだ』
『RA企業も一枚岩ではないんだよ』
『TM400が活躍するのは、私に援助をしてる人達にとって良い話ではないんだ』

「それだったら、早乙女研究所で開発したロボットは不適切なのでは?」
「その"援助をしてる人達"が開発したRAでないと……」

首相はまた溜息をついた。

4 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:50:40 ID:ZPH5xLVw0


『RA企業内部の対立は大雑把に二つに分けられる。技術系と政治系だ』
『つまり、技術系主導で作られたのがTM400』
『政治系主導で作られたのが例のロボット』
『そういう図式になってるんだよ』
「それはまた回りくどいですね」
『はは。そういうわけでな、例のロボットには早く出てもらわないと困るんだよ』
『例のロボットが活躍すれば、早乙女研究所の技術力も評価されるだろう』
『君にとっても、悪い話ではないと思うがね』

早乙女博士はそこで少し考え込んだ。
例のロボットは、博士の人生を賭した研究の集大成である。
戦争などに使わず、宇宙開発のために、人類のために使いたい。

「……」
『まだ自分の考えにこだわりを持ってるのか?』
「……」
『出さないならばこちらにも考えがあるぞ。最悪、研究所はお取り潰しだ』
「……パイロットが」
『ん?』
「……パイロットが。操縦者がいないのです」
『何を言ってるんだ。苦し紛れの言い訳はよしたまえ』
『パイロットなら空軍から適当に見繕ってくればいいだろう』
「勿論自衛隊のみならず幅広く探しました」
「しかし現在パイロットに相応しい人物は見つかっておりません」
「ゲットマシンの最高速度はマッハ0.8。確かに、戦闘機よりは大分低い」
「しかし合体時の機動及びそれに伴う衝撃は無視しがたいものです」
「さらに合体するためには戦闘機の衝突を行える度胸も必要です」
「例のロボットの操縦者は、強靭な肉体と強い意志を持つ者でなくてはなりません」
『……つまり、パイロットの養成が必要だと?』
「はい。それには専門的な内容を時間をかけて訓練しなければなりません」
『なるほど。しばらく戦場には出られない、か。考えたな』
「いえ、事実です」
『ふふ。事実か。そうだな、事実だ』
『分かった、口車に乗ってやろう。例のロボットの出撃はもうしばらく待ってやる』
「……! ありがとうございます!」
『では、よろしく頼むよ』

そうして電話は切れた。

5 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:52:33 ID:ZPH5xLVw0



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今から半年ほど前にこのようなやりとりがあった。
今とは、つまり中国で機甲部隊基地防衛戦が行われている時のことである。

そして今、早乙女博士は荒れていた。

パイロットの条件が厳しいことを利用して
例のロボットの出撃を延ばしたのだが、それの限界が近いからである。
日を追うごとに多くなる首相からの電話がそれを物語っていた。

また、パイロットの養成が上手くいってないのも原因だった。
自分の息子――早乙女達人――も参加するパイロット訓練は、
芳しい結果を出しておらず、未だ条件に合う人物を生み出せていない。

博士は「どうせなら一番いいパイロットを乗せたい」と思うようになっていた。
これも一種の親心であろうか。

「どうでしょうか博士、この男は」

傍らの黒服が博士に話しかける。
彼らがいる部屋は暗く、映写機が壁に映す映像だけが唯一の光源だった。

映像は一人の男についてのもの。
マウンドに立つその男は、大きく振りかぶり、白球を投げる。
それは打者にバットを降らせる隙も無いほどのスピードでミットに突き刺さった。

映像が切り替わった。
その男は今度はボックスに立ち、バットを構えている。
そして投げられた白球を芯に捉え、打ち返した。
だがその打球は運悪くレフトの目前に飛んでしまった。
打球はワンバウンドしてレフトのグラブへ。
レフトは投げようと一塁を見たが、しかしそこに男はいなかった。
なんと男は既に二塁近くにいた。正に疾風のごとき速さである。

6 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:53:16 ID:ZPH5xLVw0


「この通り、非常に優れた運動能力を持っています。また、学力も引けをとりません」
「鍛えればかなり使えるようになるはずです」
「これが彼の詳細な調査書です。さっそく連れて来ましょうか?」

「うむ……」

「では、すぐに」

「いや、待て。すまんが、また別の候補を探してくれ」

「……またですか、博士。これでもう300人を超えましたよ!」
「そもそも、一般人の中からスカウトしようってのが無謀なんじゃないですか?」
「餅は餅屋と言うじゃないですか。軍人の訓練に集中した方がいいのでは?」

「いや、いる。きっといる。訓練では到達できない、根本から造りが違う者が……」
「とにかく探すんじゃ! 強い意志と体力を持った者でなければこの仕事は務まらん!」

「……とにかく手を尽くします」
「我々政府の機関としても、この仕事には全力をそそいでいます」

博士と黒服は過去何度も交わされたやり取りを終え、部屋から出た。
博士はその足で研究所内の溶鉱炉へと向かった。

7 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:53:54 ID:ZPH5xLVw0


溶鉱炉内は熱気が充満し、プールに湛えられた熔鉄はボコボコと泡を噴き出す。
灼熱の空気と赤熱の液体で満たされたこの空間は、地獄の釜そのものだ。
事実、そこには"鬼"がいた。
燃える鋼鉄のように赤い"鬼"が、プールの真上に鎖で吊るされていた。
より正確に言えば"鬼の上半身"だ。腕や腹から下は無く、肩と胸と頭部だけがあった。
側頭部から二本の太い角を伸ばし、亀の甲羅のような顔をした鬼。
その黄色い目が、早乙女博士を見下ろしているように感じられるのは、
果たして気のせいだろうか。

早乙女博士は"鬼"を見上げ、ポツリと呟いた。

「戦争さえ無かったらなぁ」

夕陽が浅間山麓を照らす。全てが赤く染まる。
森も山肌も研究所も、全て等しく、あの"鬼"のように赤く。
しかしその一方で、暗い闇が首をもたげ始めていた。

太陽は今、沈もうとしていた。

8 日本製「先行者」開発プロジェクト :2010/12/29(水) 22:56:42 ID:ZPH5xLVw0
以上です。

スレ立てお疲れ様です、早速使わせてもらいました

9 追い出された名無しさん :2011/01/01(土) 03:44:34 ID:lko0iOQc0
――風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部

初春「白井さん、これが今月問題を起こした人のリストです」

黒子「ありがとうございますですの」パラパラ

黒子「……ハァ」

黒子「最近はとみに増加傾向にありますのね……」

初春「なんか、転入生がいっぱい来たみたいですからねー」

黒子「能力を得た人は、その力を試してみたくなりますからね」

黒子「実際、このリストの8割が転入生……」

黒子「全く、力に溺れるとは情けない方々ですわ」

初春「あはは、でもしょうがないですよー、超能力はみんなの夢ですから」

黒子「そうですわね……」パラパラ

黒子「虚空切断、極道兵器、超越人類……、なんか物騒な能力名ばかりですわ」

初春「あ! でも、これなんか可愛いですよ! 動物天国ですって!」

黒子「メルヘンですわねー。なになに、読み方は……」

黒子「……ヘルリベンジャー?」

初春「……白井さん、読む所間違えたんですよね? そうと言ってください」



つづく?

10 追い出された名無しさん :2011/01/01(土) 03:46:01 ID:lko0iOQc0
「とある魔術の禁書目録」とのクロス予定
俺原作も超電磁砲も一巻しか持ってないけどね(^q^)
息抜き的な感じだからVIPっぽい書き方になります

11 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:10:55 ID:lko0iOQc0
将造「親父の奴、こんなけったいな場所に押し込めやがって」

将造「何が学園都市じゃ! みんな纏めて新世代岩鬼組に取り込んだる!」

将造「じゃ、見回りに行くかの。シマを守るのはドンの務めじゃ」

のっしのっし

将造「いつも思うが、この街はキレイすぎるのう」

将造「風紀委員だの清掃ロボだの、胸糞悪い管理をしおって」

将造「人間の欲望はもっと前面に出さにゃならん! あんたもそう思うだろ!?」グイッ

一般人「ヒィッ!? は、はいぃ!!」

将造「お? 何じゃあいつら。誰に断って集会開いとるんじゃ」

不良A「ようようねーちゃん、ちょっと付き合ってくれよ」

女「いや、離して!」

不良B「いーじゃねーか、ちょっとだけ! ホントにちょっとだけだから!」

不良C「お前のチンポは小さすぎてちょっとしか入らんけどな」

不良B「てめー!」

不良DEFGHI「ギャハハハハハハハハハ」

12 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:11:30 ID:lko0iOQc0
将造「おうおうおう!」

不良G「あん? なんだテメェは?」

将造「ふん!」バキッ

不良G「へぶっ!!」

不良H「ああ!? 何するんだテメー!」

将造「わしはこの辺りをしきっとる岩鬼将造じゃ!!」

将造「わしに断りもせずに集会開くたぁ、良い度胸じゃのう!」

将造「みんな纏めてぶっ飛ばしたる!!」

不良C「岩鬼……将造……? おい、みんな、こいつのこと知ってるか?」

不良BDEI「いや、知らねーな」「俺も」「俺も」「知らんっす」

不良A「だ、そうだ。お呼びじゃねーンだよテメーは!」メラメラ

不良A「これが俺の発火能力(パイロキネシス)だ……」メラメラ

不良A「レベルは3相当、ビビるのも仕方ない」メラメラ

不良A「とっとと消えねーと、火傷じゃすまねーぜ?」メラメラ

不良B「出た! キメ台詞出た! これでかつる!!」

不良I「さすがっす! いいなー憧れちゃうなー!」

13 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:12:06 ID:lko0iOQc0
将造「おう、タバコの火をつけるのに便利そうじゃのう」

将造「よし! 貴様はわしの舎弟にしちゃる!」

不良A「っざけたこと言ってんじゃねー!!」ゴウッ

将造「んなもん効くか! わしは不死身じゃあ!!」バキッ

不良A「ひでぶ!!」

不良F「な……なんて奴だ! 炎を突っ切って殴りやがった……!」

不良A「……」ピクピク

将造「この野郎! 服が焦げちまったじゃねえか!」

将造「どう落とし前つけてくれるんじゃ!?」

不良E「ひえっ……」

警備員「そこまでだ貴様ら!」ギャリリリリ

警備員「通報を受けて参上した! 大人しくお縄につけ!」バタン バタン タタタッ

不良C「げえっ警備員(アンチスキル)!! 逃げるぞお前ら!!」ダッ

不良達「うわー!」ダダダダダ

警備員「待てー!」

14 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:13:01 ID:lko0iOQc0
将造「何じゃ! 邪魔するんじゃねえ!」

警備員「大人しくしろ! 貴様も捕縛する!」

将造「うるせえ!」バキッ

警備員「ぐおっ!」

将造「何者か知らねえが、この岩鬼将造の喧嘩を邪魔しようってのか!」

将造「上等じゃい! 全員ぶん殴っちゃる!!」

警備員「抵抗はやめろ! 抵抗を続けるなら発砲も持さない!」

将造「おうよ! かかってこいやあああああ!!」

将造「わしを誰だとおもっとる!! わしは史上最強の極道やどおおおおおおお!!!」



――File 01 "極道兵器"岩鬼将造――

15 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:14:17 ID:lko0iOQc0




将造「……」パチ

将造「……なんじゃここは」

医者「気がついたかね?」

将造「医者? ……そうか、あの妙なヤツらに砂にされたんか」

将造「……うおお! 思い出したら腹立ってきた! 今から殴りこみじゃあ!!」ガチャッ

将造「ぬお!? 体が動かん!!」ガチャッガチャッ

医者「不本意だけど、拘束させてもらったよ? 処置中にもかなり暴れたからね?」

医者「そもそも、火傷に打撲、手足も撃たれて、君はかなりの大怪我なんだよ?」

医者「しばらくは寝ていることをオススメするよ?」

将造「けったクソわりぃ! 寝てられるか!」ガチャガチャ

将造「これを外せや! 外さんとぶん殴るぞ!!」ガッチャガッチャ

医者「……動けないのにどうやってだね?」

16 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:15:01 ID:lko0iOQc0


医者「全く、転校早々こんな問題起こすなんて、随分と血気盛んだね?」

将造「当然じゃあ! ここで新世代の岩鬼組を興して、親父を見返してやるんじゃあ!」

医者「事件を起こしたのは昼間だけど、学校はどうしたんだい?」

将造「学校? あんなところ行ってて強くなれるか!」

医者「君ねえ、ちゃんと能力開発受けないと超能力者(レベル5)になれないよ?」

将造「そんなの受けないでもわしは最強じゃ」

医者「……そうかい? では、どんな能力を持ってるんだい?」

将造「極道兵器(デストラクト)じゃ!!」

医者「ほう、固有名詞を持ってるとは珍しいね? 分類は? 発火能力かい?」

将造「なんか分からんが、とにかく強いんじゃ!!」

医者「……そ、そう? レベルはいくつだい?」

将造「分からん! 10ぐらいじゃ」

医者「……いやいや、レベルは5までだからね?」

17 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:16:07 ID:lko0iOQc0


医者「まあ、今日はこれくらいにしておこうか? 体を休めなきゃね?」

将造「……なんじゃその注射器は。おい! 何する気じゃ!」

医者「はい、暴れないで? 行くよ?」プスッ

将造「つう! 何するんじゃ!」

医者「大丈夫、ただの睡眠薬だよ?」

将造「この……が……ま……」

将造「……」グーグー



石川キャラ能力ファイル
名前:岩鬼将造
能力名:極道兵器(デストラクト)
レベル:1
能力効果:自分がやりたいことをやるために現実を改変する。
     自分は不死身だと思ったら本当に不死身になるし、
     怪我が邪魔だと思ったらあっという間に治癒する。

     レベルが低いため、今は全然大したことできない。
     上記の例はあくまでも可能性の話である。

     レベルが上がるかどうかは使用者本人の努力次第。
     素質はあるようだが……?

     行使するには自分の可能性を信じる強い心が必要。

18 追い出された名無しさん :2011/01/02(日) 02:17:00 ID:lko0iOQc0
以上です

もっと気軽に書ける能力バトルを目指してたはずなのだが…

19 追い出された名無しさん :2011/01/18(火) 20:48:13 ID:LBdWWl2.0
【スカルキラージャキオー】
特にスカルは絡みません

20 追い出された名無しさん :2011/01/18(火) 20:48:58 ID:LBdWWl2.0
すみません、誤爆しました

21 追い出された名無しさん :2011/01/23(日) 20:54:32 ID:LlGqR2MQ0
本スレのザンボットネタに対してのレス。

あれか、発掘を支援してたのが神大造(ハヤト父)だったりするのか。
で、ザンボットのピンチにゲッターが駆けつけてくると。胸熱だな。

22 追い出された名無しさん :2011/01/29(土) 02:28:01 ID:hWTb6IBAO
ACE3のコーラリアンとインベーダーの設定を逆にした
チェンゲXエウレカってのを考えてるけど、なかなか妄想の域を出ない

23 追い出された名無しさん :2011/05/20(金) 15:02:55 ID:Ml54qru60
畜生! 規制のせいでインフィニット邪鬼王さんを支援することもできん!!

24 追い出された名無しさん :2011/05/25(水) 21:10:42 ID:83BRYZVk0
魔法少女まどか☆マギカにてQBの言う宇宙消滅の危機とはエンペラーかラ=グースの仕業
そう妄想したことがある

25 追い出された名無しさん :2011/05/26(木) 14:08:18 ID:dmjUl8MoO
>>23
何であえてゲッターロボじゃなくて、邪鬼王とクロスさせようと思ったんだろうね

面白い組み合わせではあるけど

26 追い出された名無しさん :2011/05/26(木) 18:27:51 ID:Ml54qru60
>>25
ゲッターよりは学校関係の絡みがしやすいからじゃなかろうか?

27 追い出された名無しさん :2011/05/28(土) 00:03:34 ID:DlqfxzII0
エヴァの人に乙も出来ねえ!
規制の野郎!何か恨みであんのか?

>>26
ISのSSにありがちな「クロス先の機体のIS化」にしなかったのは作者GJと思ってる。
ガンダムで言うなら「○○ガンダム風IS」とか

他所のゲッターロボ×ISを見てきたけど、正直・・・だったし邪鬼王の作者には期待してる。

28 追い出された名無しさん :2011/05/29(日) 23:19:17 ID:bDPS6poU0
>>27
IS化ものって、なぜか機体がISになって、なぜか男の主人公も使える。
ってのになるんだよな

29 追い出された名無しさん :2011/06/13(月) 12:44:10 ID:BiuiPEU60
本当に今更だけどゲッター線の目的って何なんだろう
どこぞの生命体を進化させるのが趣味?ボランティア?

30 追い出された名無しさん :2011/06/16(木) 21:54:49 ID:wcg1aaCo0
昔は真説魔獣と絡めて考えてた――が、
號ラストのニュアンスから考えると「進化していく過程」自体が目的なんじゃね?
それが何処に行き着くかさえもゲッター線は可能性として内包してるんだろう

號時代のゲッター線から、アーク時代の絶滅戦争ヒャッハー人類が生まれるのも、進化を加速させる手段とかで

31 追い出された名無しさん :2011/07/02(土) 21:10:45 ID:w6vgGCCE0
ドラえもん(あやうし!ライオン仮面)とのクロスを投下します。
原作のテンポの良さが地の文で出せなかったので、台本形式にした事をお許しください

32 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜① :2011/07/02(土) 21:13:13 ID:w6vgGCCE0
くらやみ団  「わははは、ヒョットコ仮面! もはや、のがれることはできんぞ。」

ヒョットコ仮面「 ギ ニ ャ ー ッ !!」

・くらやみ団の光線じゅうが火をふいた!
 ヒョットコ仮面大ピンチ! そしてライオン仮面たちのあんぴは…?

―少年ザンネン 3月号に続く―


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

フニャコ「ば、ばかもん! なんだこのいいかげんな展開は!?」

ドラ  「なんだも何も、来月のあんたが描いたんでしょ?」

フニャコ「むむむ、来月のわしめ
     無責任な引きのばしばかりしおって」

のび太 「ねえ先生、そろそろ来月号の丸写しはやめて、自分で展開を考えたら?」

フニャコ「だ、だが……、いまさらわしにどうしろと言うんだね!?
     ノイローゼで連載が続けられず、やむなく君たちに丸写しをたのんでからはや半年、
     その間も来月のわしは、その場しのぎの設定をえんえんとふやし続け
     気づいたらライオン仮面の親せきは10人をこえていたと言うのに
     話はいっこうに進んでおらん!
     こんな破たん寸前のシナリオから、いったいわしに何が描けると言うんだ!?」

のび・ドラ「…………」

フニャコ「あ、ああ〜、おしまいだぁ〜、わしはもう破めつだぁ〜〜」

のび太 「……ドラえもん、なんとかならないの?」

ドラ  「うーん……、未来デパートでもらった試きょう品でも使ってみる?」

33 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜② :2011/07/02(土) 21:14:56 ID:w6vgGCCE0
ドラ  「 ゲ ッ タ ー 線 照 射 装 置 〜 !! 」


               ―― ドワー ――


のび太 「ドラえもん、この光はなんなの?」

ドラ  「このライトの先端からは、生物の進化をうながすと言われる宇宙線が照射されているんだ。
     短い時間にしぼって人体にあびせてやれば、
     アイディアを思いつく助けになるんじゃないかしら?」

フニャコ「バカバカしい、そんな漫画みたいな事が……
     いや、待てよ……、そうか、それであの時オカメは……
     ムホホ! そうか、そうだったのか……!
     空間と時間とわしの関係も、あの時オシシが死んだ理由も……今なら全て描ける!!」

ドラ  「さっそく効いてきたみたい」

フニャコ「まずは…… 血じゃ、血がほしいッ!
     地獄界の記憶が宿るライオン一族の血が……!
     この半年でこさえた脇役どもの血を原稿にしぼり出せ〜〜!!」

のび太 「すごい……、さっきまでの先生とは別人みたい」

ドラ  「先生、ゲッター線の研究は22世紀でも進んでないんだ。
     あんまり無茶な使い方をしないでよ」

フニャコ「フハハ、マンガマンガ! マンガはもっと自由な発想で描かないとッ!!」

ドラ  「……大丈夫かな?」





34 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜③ :2011/07/02(土) 21:16:15 ID:w6vgGCCE0
ライオン「オカメ仮面ッ!? 生きていたのか?」

オカメ 「敵が来ます」

ライオン「何だとッ!?」

オカメ 「くらやみ団との長かった死闘も、オシシ達の尊い犠牲も……
     全ては今日のためのプロローグ」

ライオン「なんだ……この光、このパワーは、そんな……!!」

オカメ 「今の私達には、全て理解できるほどの時間は残されていません。
     けれど、今の私達にできる事……それは……!」

         ―― ドワォ!!――

くらやみ団「ウオオ! その姿は……
      貴様らライオン一族は、すでに新たな進化に入っていたというのか!?」

??? 「 グ エ エ エ エ エ ェ ェ エ ェ ェ ー ッ!! 」

・これこそが究きょくの進化の形!! 真(チェンジ)!! オシシ仮面復活!?

――少年ザンネン 4月号へ続く――

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


ドラ 「……うーん、のび太くん、どう思う?」

のび太「確かに、おもしろい事はおもしろいんだけど……」

ドラ 「もう一度、先生の様子を見にいってみようか?」





35 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜④ :2011/07/02(土) 21:17:11 ID:w6vgGCCE0
のび太「わっ!? ドラえもん、先生の家がッ!?」

ドラ 「たてものが、跡かたも無くとろけきっている……
    まちがいない、ゲッター線照射障害だッ!!」

のび太「あそこにだれか倒れているよ」



編集者「うっ、うう……、チャンポン編集部ですぅ〜〜」

のび太「いったい何があったの?」

編集者「先生が、突然地下のシェルターにこもられて、原稿の催そくにいったら、光が……」

ドラ 「この場は危険だ、すぐに離れたほうがいい」

編集者「し、しかし、このまま手ぶらで帰ったりしたら、編集長に殺され……」

のび太「先生は僕たちで説得するから」

ドラ 「いそごう、このままゲッター汚染が進んだら、未来の化学力でも手がつけられなくなる」





36 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜⑤ :2011/07/02(土) 21:19:11 ID:w6vgGCCE0
フニャコ「……やあ、そろそろ来るころだと思っていたよ、のび太くん」

のび太 「フニャコフニャ夫先生……」

フニャコ「フフ、この地下室で原稿を描くようになってから、妙にカンが冴えよるわい
     何しろこの部屋のゲッター線は、通常の15倍はあるからな」

ドラ  「先生、あんたは漫画の描きすぎで、頭がおかしくなってしまったんだ
     今すぐこの部屋をでて、まっとうな漫画家生活に戻るんだ!」

フニャコ「ドラえもん、そしてのび太くん、今こそ真実を話そう……
     オ シ シ 仮 面 は 実 在 す る !!」

のび・ドラ「 な、 な ん だ っ て ェ ―――ッ!!」

フニャコ「わし自信、つい最近まで、ライオン仮面は自身のオリジナル作品だと思っていた……。
     だが気づいたのだ、わしはこの宇宙に満ちた大いなる電波の一部を受信し、
     はるか未来で起こる戦いの一部を、原稿にトレースしていたにすぎなかったのだ!!」

のび太 「…………」

ドラ  「……先生、あなたは疲れているんだ、今すぐ僕たちと病院へいこう!」

フニャコ「分からないのか、わしがこんな妄想じみた話をした理由を?
     敵はもう、すぐそこまで迫っておるのだぞ!?」


         ―― ドワォ!!――


のび太 「な、何が起こったんだ」

フニャコ「くらやみ団だ、わしの存在を探知して、地球ごとふっとばしに来たんじゃ。
     過去のわしの連載を地上から抹さつする事で、24世紀での戦いを有利に進めようとしているのだ!!」

ドラ  「そ、そんなムチャな!?
     そんな横ぼう、タイムパトロールが許すはずが……」


フニャコ「ヤツらがやってきたのは22世紀よりもさらに先の未来
     おそらく24世紀以降のタイムパトロールは、ヤツらによって滅ぼされておるんだろう」

のび太 「そ、そんな」

フニャコ「力を貸してくれ、ふたりとも
     24世紀の科学力が相手では、秘密道具の力では太刀打ちできまい」

37 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜⑥ :2011/07/02(土) 21:21:08 ID:w6vgGCCE0
ドラ  「じゃ、じゃあどうすればいいんだ!?」

フニャコ「ドラえもん【本物クレヨン】を持ってきているね?
     科学力の足りない分は、わしの想像力でカバーする!」


         ―― サラ サラ サラ サラ ――


のび太 「す、すごい、あんなむずかしい構図を一発で……」

フニャコ「ヤツらの艦隊を倒す兵器を描くには時間がかかる。
     そこで、ふたりはまずこの機体をつかって、なんとか時間をかせいでくれ」

ドラ  「ま、まさかそれって、真ゲッタ……」

フニャコ「できた! 名づけて【 建 設 巨 神 イ エ オ ン 】だッ!!」

のび・ドラ「…………」

フニャコ「……どうした? 敵はもう目と鼻の先まで迫ってきておるのだぞ!?」

のび太 「……ドラえもん」

ドラ  「……いこう、のび太くん
     きっと、今の僕たちがすべてを理解するには、時間がかかりすぎてしまうんだ」





38 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜⑦ :2011/07/02(土) 21:22:18 ID:w6vgGCCE0
くらやみ団A「地球上に展開した敵巨神の攻撃により、戦力の15パーセントが壊滅!!」
くらやみ団B「構わん、質量差で敵を押し潰せェ〜〜!」
くらやみ団C「自爆せよ!地球ごとフニャコフニャ夫を爆殺するのだァ〜〜」


ドラ 「ええい! ミサイルいっせい発射だ」
のび太「ダメだ、もう皿ビスが残ってないよ!」
ドラ 「あきらめるなのび太くん! まだトンカチとノコギリがあるッ!!」


???『もう十分だ、下がれ、ドラえもん、のび太くん』


ドラ 「――!?」
のび太「その声は……?」


くらやみ団A「ウオオオ!!」
くらやみ団B「これで宇宙は救われるぞォ〜〜!!」



フニャコ「――また、全てがひとつになる……」


         ―― カッ――


くらやみ団A「何ッ!!」
くらやみ団B「バ、バカな!? この光はッ」
くらやみ団C「ヤツらはもう新たな進化を始めていたと言うのか〜!?」


         ―― ズワオ! ――





39 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜⑧ :2011/07/02(土) 21:23:57 ID:w6vgGCCE0
のび太「あんなに強力だった艦隊が一げきで……」

ドラ 「本当に実在したんだ……【オシシエンペラー】」

???『すべては未来の可能性の物語……』

のび・ドラ「 ! ? 」

???『ドラえもん、のび太くん
    君たちは、本来いるべき時代に還るんだ。
    ここから先の戦いは、僕ひとりで十分だ……』

のび太「その声、やっぱりオシシに乗っているのは……!」

???『オシシに乗った瞬間、全てが分かったんだ……
    宇宙の始まりと終わり、そして、僕がこの世界に生まれた理由が……」

ドラ 「そんな!? 待つんだ、待ってくれ!」

???『ふたりとも、短いあいだだったけれども楽しかった……
    次はまた、はるかな未来の戦いで逢おう!!』



のび・ドラ「 キ レ イ な ジ ャ イ ア ァ ァ ァ ン !! 」



キレイなジャイアン「チェンジ・オシシエンペラー!!」



【 グ エ エ エ エ エ ェ ェ エ ェ ェ ー ッ !! 】



―― 宇宙を震撼させるその声(ボイス)は、まさしくオシシ仮面のものだった……。





40 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜⑨ :2011/07/02(土) 21:25:26 ID:w6vgGCCE0
のび・ドラ「 ハッ!? 」

フニャコ「ど、どうしたのかね、ふたりとも?
     さっきから黙りこくってたと思ったら、急に落ち着きがなくなって?」

のび太 (……どういうこと? とろけたハズの家が直ってる。
     それに、フニャコ先生もマトモに見えるよ?)

ドラ  (タイムスリップだ、キレイなジャイアンが僕たちを
     『ゲッター線照射装置を使う前の時間』まで戻してくれたんだ)

フニャコ「ところでドラえもんくん、さっき君が貸してくれたこのライト
     いったいどうやって使うんだい?」

のび・ドラ「 !? 」

フニャコ「見たところこれがスイッチのようだが、わしに向ければいいのかな?」

のび太 「ダ、ダメだ、先生!? そのスイッチを押しちゃ……!」

ドラ  「アワワッ! く、空気砲ッ!?」


         ―― ドワォ!!――


フニャコ「グエ――ッ!?」

のび太 「バ、バカ! あんな至近きょりで、空気砲を人にむけるヤツがあるか!?」

ドラ  「し、しかたないだろ、あわててたんだよ!」



編集者「先生!? 何事ですか!
    原稿は無事ですか! 開けてください、先生! 先生!」


のび太「た、たいへんだ! なんとか原稿をしあげないと!
    でも、先生は完全に気絶して……」

ドラ 「そ、そうだ、こんな時こそ、未来デパートの試きょう品を使おう!」



ドラ 「 ダ イ ナ ミ ッ ク ペ ン シ ル 〜 !!」





41 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜⑩ :2011/07/02(土) 21:27:34 ID:w6vgGCCE0
最終話 希望を胸に すべてを終わらせる時…! ライオン仮面最終巻は、発売未定です。 フニャコフニャ夫

ライオン仮面「チクショオオオオ!くらえくらやみ団!新必殺怪傑獅子斬!」
くらやみ団A「さあ来いライオォォン! 囲みからは実はカンタンにのがれられるぞーッ!」
(ザン)
くらやみ団A「グアアアア!こ このザ・ナナシと呼ばれるくらやみ団の戦闘員が…こんな小僧に…バ…バカなアアアアアア」
(ドドドドド)
くらやみ団A「グエーッ」
くらやみ団B「Aがやられたようだな…」
くらやみ団C「フフフ…奴は戦闘員の中でも最弱…」
くらやみ団D「ライオンごときに負けるとはくらやみ団の面汚しよ…」
ライオン仮面「くらええええ!」
(ズサ)
3人    「グエーッ」
ライオン仮面「やった…ついに戦闘員を倒したぞ…これで首領のいる秘密基地の扉が開かれる!!」
オカメ仮面 「よく来たなライオン仮面…待っていたぞ…」
(ギイイイイイイ)
ライオン仮面「オ…オカメがくらやみ団のボスだったのか…!感じる…首領のパワーを…」
オカメ仮面 「ライオン仮面よ…戦う前に一つ言っておくことがある
       お前は私を倒しても『くらやみ団』からは逃れられないと思っているようだが…別にカンタンに逃げられる」
ライオン仮面「な 何だって!?」
オカメ仮面 「そしてお前の弟のオシシはやせてきたので最寄りの町へ解放しておいた あとは私を倒すだけだなクックック…」
(ゴゴゴゴ)
ライオン仮面「フ…上等だ…オレも一つ言っておくことがある
       このオレの巻き添えになった女の子がいたような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!」
オカメ仮面 「そうか」
ライオン仮面「ウオオオいくぞオオオ!」
オカメ仮面 「さあ来いライオン仮面!」
ライオン仮面の勇気が世界を救うと信じて…! ご愛読ありがとうございました!

42 真!!フニャコフニャ夫〜のび太とオシシ最後の日〜 :2011/07/02(土) 21:29:21 ID:w6vgGCCE0
以上、投下終了です。
いろんな意味で避難所があって良かったです。

43 追い出された名無しさん :2011/07/02(土) 22:21:16 ID:CcR5W.0w0
投稿乙です!色々とカオスすぎるw

44 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:46:10 ID:Y.6HAxV60
先人の偉業を無駄にしないぜ

45 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:47:20 ID:Y.6HAxV60
第5話 恐怖の転校生?

「つまり、この邪鬼王というロボットは自律可動型のロボットというわけかね?」
暗い部屋であった。
大きさは一般的な学校の教室ほどかそれよりやや大き目か。
それほどの大きさの室内に口の字で長机が並べられ、それぞれの席にスーツ姿の初老の男性達が座っている。
照明はつけられず、室内を照らすのは壁に設置された巨大なモニターの明かりのみ。
そのモニターには一夏の駆る白式より抽出した、島本研究所を襲撃した巨大ロボットとの戦闘記録および映像が映し出されている。
何の知識もなくその映像を見れば、高度なCGを駆使した映像作品ともとれるだろう。
実際、この部屋にいる人間の殆どはそうであってほしいと思っていた。
それほどまでに、モニターに映されている映像は重大な内容であったのだ。
「少なくとも、島本博士はそう言われています」
手元に大量の資料を置いた男が答える。
服装から見るに軍人のようだが、その表情は目の前に突きつけられた現実の為か、威厳の欠片も見られない。
「そして、その制御は事実上、島本家の人間が必要ということかね?」
「それも島本博士の言葉から察するに…」
「非常識な…」
そう言って男は白髪が大半を占める頭に手を当て苦い表情を浮かべる。
それにつられるように周囲でため息が広がり、室内は重苦しい空気に包まれた。

「正体不明の巨大ロボットに、ISを破壊することの出来る自律可動型の巨大ロボットか…」
白髪の男は目の前に置かれた資料に目をやる。
それは各国から送られてきた、今回の一連の騒動における詳細なデータを要求する旨が記載された用紙である。
付け加えるならば、邪鬼王およびS.O.Cの技術提供を要求する内容も記載されている。
「ISの発表から現在に至るまで、日本がどれほど肩身の狭い思いをして来た事か」

篠ノ乃束が開発したISを世に知らしめる事となった白騎士事件は、当然全世界をも混乱に至らしめるものであった。
結果、そのISの発祥の地である日本は、諸外国からの非難の雨に晒されることとなる。
混乱の責任を負うため、日本はIS技術の全世界への提供を余儀なくされ、IS技術およびIS操縦者育成のための機関―
『IS学園』の設立、運営までを全て自国で負担しなければならなくなった。
資金面での問題もさる事ながら、IS技術を狙った諸外国のスパイ活動も日常茶飯事となっていた。

46 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:48:08 ID:Y.6HAxV60
「やっと世界からの信用が取り戻されようとしていた時に、日本の科学者というのはどこまで非常識なのか」
白髪の男はよりいっそう深いため息をついて肩を落とす。
「しかし、事はISの時より深刻です。
何せ、開発者である島本博士が邪鬼王お呼びS.O.Cの技術提供を拒むばかりか、邪鬼王の引渡しにも応じない状況なのですから」

島本研究所での巨大ロボット事件から数時間後、周辺区画は政府の手により世間からは完全に隔離された。
そこで巨大機動兵器「邪鬼王」の引渡しの作業に取り掛かるものの、事は難航を極めていた。
本来ならば、このような事態に対して国は一定の強制力というものがあるのだが、今回はその強制力も意味を成さないものであったからだ。
何故ならば、肝心の邪鬼王がISと同じく既存の兵器を遥かに凌駕する性能を持っていたこと。
そして、その邪鬼王は正体不明の機体ではあるが、『ISを破壊してのけた』という実績が持つからである。
これではいかにこちらが強制力を行使しようとも、対する側の抵抗は計り知れないものである。
人的被害、周辺地域への被害を考慮するとそれはどのような事があっても避けたいものであった。
当の島本博士も引渡しには一切応じず、
「貴様らでは邪鬼王は扱えん!!!」
の一点張りである。

交渉は数日続けられるも平行線を辿り、政府側もある種諦めの雰囲気すら漂わせていた。
「どうにかならんものかね。
あの邪鬼王とかいう兵器の存在は諸外国にも知れ渡っておる
偵察機と思われる所属不明の船や飛行機が領空・領海で確認された回数は先月の二十倍にもなっているのだぞ?」
「しかしながら、島本研究所での事件の際に偶然居合わせた織斑一夏の操縦するIS−
『白式』からの戦闘データを見る限り、邪鬼王を強制的に拘束・破壊することは不可能でないにしろ
こちらへの被害も相当なものになると考えられます」
「確かに、ここは島本博士の心変わりを待つしかないのかもしれません」
「それを世界各国の利権に飢えた者達にも理解してもらえと?」
白髪の男の言葉により、先ほどから発言していた男達の言葉は詰まり、再びため息交じりの沈黙が室内を包み込んだ。

47 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:48:42 ID:Y.6HAxV60
「ひとつだけ、手が無いこともありません」
ふと、部屋の隅から女性の声が聞こえた。
整った顔立ち、凛とした目つき、黒いスーツに身を包んだそれが、より一層その人物の風格を高めている。
女性の名は織斑千冬。
島本研究所での事件に居合わせた織斑一夏の実姉であり、IS学園の教員でもある。
彼女の突然の発言に、今まで下ばかりを向いていた男達の視線は跳ね上がる。
「どのような手があるのかね?」
「ベストではなく、ベターな選択ではありますが…」
「構わん。聞かせてくれたまえ」
ISの開発した篠ノ之束博士の友人にして、ISの開発に操縦者として関っていた人物。
その後も、IS運用協定締結から全世界へのIS技術および操縦法の指南役を務めた彼女である。
今の現状を打開する案のひとつやふたつ、考えてくれるに違いない。
男達は期待に満ちた目で千冬の発言を待った。
「…邪鬼王をIS学園で保護すると言うのは」
「なっ!」
「なんと…」
「正気かね!」
千冬の発言に耳を疑った男達の戸惑いの声が広がった。
正体不明の巨大ロボットをよりにもよってIS学園で保護・管理しようというのだから当然である。
そんな周囲の反応を他所に、千冬は自身の持ち出した案について話し出した。
「各人の思惑通り、この件については日本だけではなく、世界各国を巻き込んだ事件となっています。
そして各国から送られてくる偵察部隊。
邪鬼王とS.O.Cの技術提供が期待できないとなると、何らかの強硬手段を用いる国が出始めるのも時間の問題かと」
男達は黙って千冬の話を聞いていた。
彼女ほどの人間が、何の見通しもなく先ほどの発言をするわけはない。
彼女なりに現状を打開する策があるのだろうと皆がそう確信していた。
「技術提供・共有が出来ない、未知のメカニズムを有した大型機動兵器。
それが民間の研究所で管理されてあることで、各国への不安もより強いものになっています。
ならば、いっそのこと―
邪鬼王の力に対する抑止力と監視の意味も含めて、世界中のISの技術の集大成であるIS学園で保護するのが妥当かと―」
そこまで言い終わったところで、千冬は一度周囲の男達を見渡し反応をまった。
「つまり、邪鬼王を事実上IS学園の制御下に置かれていると各国にアピールしようというのだね?」
白髪の男が、その沈んだ表情を変えぬまま、千冬の言葉を簡略化して問いかけた。
「簡単に言えばそうなります。
先ずは邪鬼王の制御・管理が誰によってなされているのか明確にすることで、不安要素のひとつである
『未知の兵器による他国への武力的介入』の可能性を否定する。
また、IS学園の所有物になれば、原則どの国も手出しは出来ない。
そして、邪鬼王にはIS運用協定は意味を成さず、技術提供の義務は発生しません」
「しかし、それはかなり強引ではないのかね」
千冬の言葉をさえぎって、末席の男が立ち上がり口を挟んだ。
それはここにいる誰もが感じていた事であろうが、それに対して千冬も同じなのかやや表情を濁らせた。
「ですから、『ベスト』ではなく『ベター』だと先に申したはずです」
そういって、先ほど発言した男にその鋭いまなざしを向けた。
男はその気迫に満ちた眼光に気負いされ、無言で席に着く。
「先ほど言われましたとおり、この件にはいろいろと問題が残ります。
しかし、現状を打開ならずとも好転させるきっかけにはなるのではないかと考えますが…」
それだけいうと千冬は口を閉じて周囲の反応を待った。

48 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:51:20 ID:Y.6HAxV60
数秒ほどの沈黙。
周囲の様子を伺うもの。
目を瞑りひたすら考えるもの。
邪鬼王の映るモニターをただ見つめるもの。
各人がそれぞれの思惑を頭の中でめぐらせていた。
「邪鬼王…。
IS学園で管理させることを島本博士は承諾するのかね?」
白髪の男はゆっくりと重い口を空けた。
「島本博士も現状のままを維持できるとは考えていないはずです。
拘束、技術提供ではなく、あくまで鬼邪王および島本家の人間の『安全の確保・保護』を名目に説得できればあるいは…」
「…君に任せよう」
「了解しました」
白髪の男は半ば諦めたような口ぶりでそうつぶやく。

邪鬼王をIS学園で保護。
この案が可決されたことで周囲から不安の声が上がったが、誰も直接反対しようとはしなかった。
白髪の男はモニターに映る邪鬼王および島本博士に目線を動かしふうっとため息を着いた。
「どう転ぶにせよ、時代の流れは今、日本国にあるということか…」

49 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:52:25 ID:Y.6HAxV60











(背景に徹しなければ…!)
ISスーツに身を包んだ彼女達は体育すわりのまま、微動たりしなかった。
唯一呼吸による胸郭の動きと瞬きが外見から見て取れる彼女達の活動であるが、それはまさに「固まっている」という表現がぴったりの光景であった。
齢十五になる乙女達が、周囲の人間とおしゃべりもせずにそうなる訳はひとつしかない。

そう、『恐怖』だ。

彼女達が何故『恐怖』する必要があるのか。
確かに、鬼教官と恐れられる織斑千冬が彼女達の前で腕組をして立っている。
しかし、私語はしないにしろ、皆が全員固まるほど恐怖を感じる理由まではなかった。

では、何故か。

その原因は、千冬の後方に居座る巨大な影にあった。
巨大な爪、牙、尻尾。
銀光沢がより一層重量感を増す装甲。
そして、全長十数メートルほどの大きさのそれ。

つまり、邪鬼王が生徒達を見下ろす形で『お座り』をしていたのだ。
リラックスしているのか、その巨大な尻尾を空中でフルフルと揺らしている。
邪鬼王にとっては、目の前にいる女子生徒たちは始めて見る人間ばかりである。
それぞれの顔を覚えるため、左目の巨大なレンズで一人一人をじっくりと観察していた。

しかし、それらの行動は邪鬼王の事を何も知らない人間にとっては、並ばれた料理の品定めをしているようにか見えなかった。
しかも相手はエイリアン顔負けのグロテスクな機械の化け物である。
彼女達はそれぞれが目立つ行動をしないように、そして生命の危機という恐怖感により否応無しに固まってしまっているのだ。
蛇に睨まれた蛙の気持ちが理解できる日が来ようとは、夢にも思わなかったはずである。
「ここの学校って真面目な奴等ばっかりなんだなぁ」
そんな異様な光景の中で、一人のんきなことをつぶやく人間が一人。
齢十六になる少年の名は『島本瞬』
邪鬼王を造った島本博士の息子であり、事実上、世界中でただ一人、邪鬼王を完全に制御できるとされる存在である。
少女達が皆ISスーツに身を包んでいるのに対し、瞬は上半身をタンクトップ一枚。
下半身は軍服にブーツと、歳さえ相応なら軍人ともとれる身なりであった。
「真面目かどうかはさておき、一般的な感性を持ち合わせているだけのようだが」
瞬の言葉に対し、やや皮肉を交えて千冬が答えた。
「相変わらず難しい言葉使うけど、何が言いたいのか全然分かんねぇよ」
「お前のその正直な物言いは褒めるとこなのかも知れんな」
千冬はやれやれとため息をついて苦笑いを浮かべる。
その様子をやはり理解できないのか、瞬は首を傾げて不思議そうに少女達を見渡していた。

50 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:54:21 ID:Y.6HAxV60
「キュィン!!」

ビクッ!!!!!!!!!!!!!

少女達を観察していた邪鬼王が不意に声を上げて建物のほうを向いた。
それはいきなりの挙動であったため、先ほどまで身を固めていた少女達は皆、体をさらに硬直させた。
「ついに食べられるのかと思った」
「これがこの世で最後に聞く声なんだと確信した」
「目の前が真っ白になった」
後の彼女達は、この時の出来事をこう語ったという。

邪鬼王が向いた先の建物からは、二人の人間が走ってこちらに向かっている光景が見えた。
少女達のワンピースともレオタードとも取れるISスーツとは対照的に、彼らのISスーツはスキューバーダイビング時に纏う全身水着のようなものであった。

「遅い!」
遅れて現れた事で千冬の一喝を受けたのは、『織斑一夏』と『シャルロット・デュノア』である。
本来ならばISを扱う事が出来るのは女性だけのため、当然IS学園も女性向けの施設が大半を占める。
それにより、男性向けの施設が極端に少ないため、男の身でありながらISを使用できる二人は、女子更衣室とは離れた場所で更衣を済ませなければならなかった。

「こっちはそれなりに急いだつもりなんだがなぁ」
第二グラウンドへ何とか無事に到着―とはいかなかった。
そう、鬼が目の前で手を組んで待っている。
しかもその鬼の後ろには、さらに巨大な鬼がこちらの様子を伺っている。
その名も「邪鬼王」
邪悪な鬼の王様である。
もっと別の名前をつける気は無かったのだろうか。
ジャキオーって響きはいいのかもしれないけど、せめて漢字とかはもう少し考えても良かったような・・・
「くだらんことを考えている暇があったらとっとと列に並べ」

ばしーんっ!

本日二度目となる頭部への容赦ない一撃。
その痛みに悶絶しながらも、何とか一組の列の端に座る。
「ずいぶんとゆっくりでしたわね」
何の因果か、隣にいたのはセシリアだった。
若干不機嫌そうな目をしているのは俺達が遅れたからだろうか?
「スーツを着るだけで、どうしてこんなに時間がかかるのかしら?
こちらはテーブルに並べられた料理のような気持ちでお待ちしていたというのに」
どんな気持ちかはさておき、セシリアの機嫌の悪さはどうも遅れたことだけではなさそうだ。
「ええ、ええ。
一夏さんはさぞかし女性と縁の多いようですから?
そうでないと二月続けて女性にはたかれしませんよね」
ここにきて嫌味を言われた。
改めて転校生に叩かれたことを思い出すと、頬がずきずきと痛み出してくる。
「なに? アンタまたなんかやったの?」
声はすれど姿は見えず― 手練れの忍だろうか?
「後ろにいるわよ、バカ!」
はいはい。後ろは二組の列だもんな、っていうか鈴かよ。
まあ、鈴以外の二組の女子は俺にバカとかバカとバカとか言ってこないが。
「こちらの一夏さん、今日来た転校生の女子にはたかれましたの」
「はあ!? 一夏、アンタなんでそうバカなのよ!?」
「―安心しろ。 バカは私の目の前にも二名居る」

ギギギギッ…

っと軋むブリキの音で首を動かすセシリアと鈴。
視線の先にはもちのろんで鬼が待ち構えていた。

51 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:55:48 ID:Y.6HAxV60
「では、今日から格闘及び射撃含む実践訓練を開始する」
「はい!」
「キュィン!」

ビクッ!!!!!!!

「邪鬼王、お前に飛び道具は付いてねぇよ」
一組と二組の合同実習なので人数はいつもの倍。
出てくる返事も妙に気合が入ったものだが、同時に返事(?)をした邪鬼王の声で皆萎縮してしまった。
「その前に紹介しなければならないが…。 島本、任せるぞ」
千冬はそう言って邪鬼王の横に立つ瞬に自己紹介を命じる。
瞬は言われるがままに生徒達の前に歩み出し、それに着いていくようにして邪鬼王も腰を上げて一歩、また一歩と生徒達に近づいてくる。
巨大な体を進ませる毎に地面に振動が伝わり、それがまた生徒達の恐怖を一層と増す要因となった。
「俺は島本瞬!邪鬼王の世話係だ!」
元気な声でヨロシクと続けた瞬につられて、生徒達はオドオドしながら返事をする。
「そしてここで世話になることになった邪鬼王だ!
ジャッキ!挨拶だ!」
「ギャオォォォォォォォォォォオオンッ!!!」
「「「ヒィ!!!!!!」」」
挨拶を促された邪鬼王は、その巨大な体を震わせ、口を全開にして雄叫びを上げた。
雄たけびはIS学園内を震わし、近くで聞いていた者には空気振動すら伝わるほどであった。
そんな雄叫びを目の前でされた生徒たちはたまったものではなく、それぞれ悲鳴を上げて屈みこんだり、隣の生徒と抱き合ったりして恐怖していた。
その中でも雄たけびに耳を塞いでいたりはするものの、平然と立ち尽くす生徒も居た。
「そりゃはじめてみたらそうなるよなぁ…」
平然としていた生徒の一人である一夏はそう呟いた。
目の前に居る邪鬼王とは、これが初めての対面ではない。
島本研究所での巨大ロボット事件の際に一緒に戦った戦友のようなものである。
あの事件以降は会うことも叶わなかったが、邪鬼王の姿を見る限り元気にしていた事は見て取れた。
「あの時は戦闘で傷を負ってたけど、完全に直ってるみたいだな」
「一夏さん、あの邪鬼王と言う巨大なロボットの事を随分お慕いになられているようですが」
出席簿にて頭部を強打されて、涙目になりながら頭を押さえるセシリアが声をかけてきた。
「前に話しただろ? 邪鬼王は俺にとって戦友みたいなもんだ」
「…そうですの」
邪鬼王を見ながら笑顔でそう答える一夏の横顔を見ながら、若干不機嫌そうに呟いた。
セシリアとしては一夏にとっての『特別な存在』と言うのが気に食わなかった様子であるが、例によって一夏はその事にまったく気付いていなかった。

「お前ら静かにしろ!!」
邪鬼王の雄叫びにより狼狽した生徒達が一向に収まる様子を見せないため、業を煮やした千冬が一喝する。
恐怖による恐怖の上塗り。
強引な手段ではあったが、それにより生徒達はどうにか落ち着きを取り戻した。
それでもまだ邪鬼王への恐怖感が殺がれたわけではなく、目の前の化け物の挙動一つ一つに全身系を集中させながら瞬の言葉を待った。
「…よし。 島本、続けろ」
「へ? もう終わりだけど?」

バシンッ!

「痛ってぇ!!!」
「自己紹介ぐらいまともにやってみせろ!」

52 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:56:35 ID:Y.6HAxV60
千冬の一撃を受けた瞬は叩かれた頭を二、三回撫でながら目の前の生徒達の方を向いた。
生徒達の目線がこちらに集中している事に今更ながら気付き、若干しりごみする形で千冬の方に向き直る。
「自己紹介っつっても、俺達だってなんでここに連れてこられたか今一分かんねぇし」
珍しく弱気な姿勢を見せて千冬に助け舟を求めた。
額に手を当てて本日何度目かのため息をついた千冬は、瞬を後ろに下げて生徒達の前に立った。
「先ほど本人達から紹介があったが、目の前にいる巨大なロボットが邪鬼王、そしてその世話を担当する事になった島本瞬だ。
お前達にとっては衝撃的であろうが、これより邪鬼王はIS学園で管理することになった。
まあ、戸惑うのも無理は無いが、人生はいつでも戸惑いの連続だ。 すぐに慣れろ」
いつもどおりの強引な物言いに、生徒達は明らかに困惑した表情を浮かべる。
生徒達の憧れを一身に受ける千冬の言葉であるため、それを認めざるを得ないが、事は目の前の巨大ロボットである。
これからの学園生活を、このグロテスクで凶暴そうなロボットともにすごさなければならない。
生徒達の中では立ちくらみをする者も現れ、その表情は絶望の淵に叩き落とされたようなものであった。
「せっ、先生!」
不意に生徒の一人が手を上げる。
「なんだ?」
「そっその邪鬼王ってロボット…
人を、その、たっ食べたりとか、しないですよね…?」
手を上げた生徒は邪鬼王の様子を伺いながら震えた声で千冬に問いかける。
その目はさながら助けを求めるような悲壮感すら漂っていた。
本来ならばロボットが人を食べるなんて発想など出てこないはずだが、邪鬼王にいたっては凶悪な爪牙を供えた立派な口がついている。
そして吠える。
十人に聞けば十人が答えるだろう。
コイツは何かを捕食できる―と。
「島本 どうなんだ?」
千冬は瞬のほうを向いて生徒達の問いの答えを促す。
「少なくとも、俺は見たこと無いなぁ」
瞬の口からすばらしい言葉が返ってきた。
人を食べたところを見たわけではないが、それは否定にはならない。
つまり、人を食べる可能性もあるということだ。
「そう、ですか…」
質問をした生徒は力なくそう答える。

「あの、その邪鬼王のエネルギー供給はどうされているんですか!」
次は違う生徒が手を上げて質問する。
相手はロボットである。無機物が有機物を摂取してエネルギーに変えることは正直考えにくい。
ならば有機物=人間を捕食することも無いのではないかという一筋の希望から出た質問であった。
「邪鬼王は機械ならだいたい何でも食べるぜ?」
「食べる…」
「そう、食べる」
「それはその、口からエネルギー物質を取り込む形の…」
「そう、俺らと同じ」
「…そうですか」
質問した生徒は先ほどの生徒と同じく、力なくそう答える。
『機械なら』という言葉通り、生き物を食べる事はないのかもしれない。
しかし―
((((やっぱりあの口で捕食するんだ))))
この場に居る生徒達は皆同じ事を考えていた。

53 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:57:29 ID:Y.6HAxV60
「先生、よろしいでしょうか?」
先ほどの生徒達とは打って変わって、落ち着き払った声で質問をしたのは『篠ノ之箒』であった。
「なんだ篠ノ之?」
「邪鬼王をIS学園で管理する事は分かりました。
ですが、ISとはまったく規格の違うこの巨大なロボットを、具体的にどう管理されるのでしょうか?」
当然の疑問である。
ここはISの研究および、IS操縦者の育成を担う施設だ。
その施設で、ISとは違う技術体系で作られているのであろう邪鬼王を管理する。
邪鬼王の研究とその技術をISへ流用させる事が目的だというのならば納得も出来るが、何もそれはIS学園でなくても良いのではないか。
ならば、わざわざIS学園で邪鬼王を管理する必要がどこにあるのだろうか。
この場に居るもの全員、いや、邪鬼王がIS学園で管理されるに至った経緯を知らない人間は皆そう思っているだろう。
「具体的に、か。 そうだな」
千冬は一度邪鬼王を見て、次に不安そうにしている生徒達のほうを向き直る。
そして、まるで子どもがいたずらを思いついたかような笑みを浮かべた。
「どうだ。 ISの実践訓練として邪鬼王と戦ってみるというのは?」
「「「な!?」」」
千冬の発言に一同驚愕する。
ただでさえISの稼動経験が乏しい自分達に、あの巨大なロボットと戦えというのだ。
突然の提案に生徒達はこれ以上ないほどうろたえだしてしまう。
千冬としては半ば冗談のつもりであったが、予想以上にざわめきが大きくなったため、流石に鬱陶しくなってきた。
「冗談だ馬鹿者共…。
ISの操縦すらまともに出来ないお前達に相手が務まるものか」
「教官! …いえ、先生!」
うろたえる生徒の中で、鋭さを持った声が発せられる。
声の主は―
「どうしたラウラ」
「邪鬼王のスペックデータをお聞きしてもよろしいでしょうか」
小柄な体に反して、その真紅の眼からは強靭な意志が伝わってくる。
「聞いてどうする?」
「私なら戦えます」
「・・・そうか」
ラウラの事を以前から知っている身としては、何故そのような答えが返ってくるのかだいたいの見当が付いていた。
「ISがお前にとってどのような意味を持つかは知らんが。
仮にここで邪鬼王を倒せたとしても、邪鬼王がISを破壊したという事実は消えんぞ」
「…!」
考えを見透かされてか、ラウラはそれ以上言葉を発する事はなかった。
「邪鬼王がISを破壊した?」
「え? ISはISじゃないと倒せないんじゃなかったの?」
「じゃあ、邪鬼王って世界で一番強い兵器って事?」
千冬の何気ない一言は、せっかく静まった生徒達のざわめきを再び再燃させてしまう。
「あー。 いちいち騒ぐな。 授業が一向に進まん」
「でも先生! ISがISじゃない兵器に破壊されるなんて世界的な大ニュースじゃないですか!」
生徒の一人が一際大きな声で言う。
それが邪鬼王がこのIS学園で管理される事になった一番の理由であったのだが、千冬はあえてそれを言おうとはしなかった。
「邪鬼王やその技術に関する詳細な情報は機密事項のため教えてやれん。
邪鬼王がISを破壊した経緯、およびその状況を知りたければ、そこに居る機密もろくに守れぬ馬鹿な男にでも聞くがいい」
「ゔッ! 痛いところを」
突然矛先を向けられたのは一夏である。
邪鬼王は現在でも世間一般的に公表された存在ではない。
どちらにしろ後々には一般人にもその存在を知らせる情報が届いてしまうだろうが、現時点では機密事項的な存在である。
そんな邪鬼王の存在を一夏は、あろう事か箒、鈴音、セシリアの三名に話してしまっているのである。
「あれは無理やり吐かされただけなのに…」

54 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:58:06 ID:Y.6HAxV60
島本研究所での事件の後―
俺は一時的に政府によって軟禁状態となっていた。
それまでの間は当然IS学園には行けてないことになる。
身柄が解放されて晴れて自由のみとなった俺に待ち構えていたのは、クラスメイトからの執拗なまでの尋問だった。
流石に機密事項の為、誰彼構わず話してしまったわけではないのだが、こと、箒、鈴、セシリアに至っては常軌を逸するほどの脅しをかけてきた。
それはそれはひどいもので
「どうも腕が鈍ったのか、私の真剣が偶然一夏の頭に向けて飛んでいかなければ良いが」
「最近スターライトmkⅡの照準が甘いようでして…。 いつも一夏さんのほうを向いてますわ」
「一夏って毎日三食酢豚食べてくれるって約束してくれたわよね?」
と、こちらの生命を脅かすまでになっていた。
この為、俺は自分の身の安全を守るために情報を漏洩させてしまったのだ。
まさに、命には代えられないってやつだ。

どか!

「なんとなく考えていること分かるわよ!」
脅しで無理やり情報を引き出してきた張本人のうちの一人が後ろから足蹴をかけてきた。
先生ー! せんせーい!

「千冬さん。あんたの弟の周りって元気な奴ばかりだな」
「ふん。 活気溢れる十代女子にも手を焼かされる。 それとだ島本」
「あん?」

バシンッ!

「ぁ痛ってぇぇっっ!!!」
「ここでは先生と呼べと言ったはずだ」

「凰! オルコット! 前に出ろ!」
急に名前を呼ばれた二人はビクッと体を引きつらせて、声の聞こえたほう向く。
その先には鋭い目線でこちらを睨む鬼が一人立つ。
「な、何故わたくしまで!?」
先ほどから騒いでいた鈴音ならともかく、自身が呼び出される理由はないはず。
しかし相手は理屈を通り越した理不尽の塊である。
これはもう諦めるしかない。
名前を呼ばれなかった男、織斑一夏は自身の姉の性分を熟知した上でセシリアの不運を見届けていた。
「これから戦闘の実演を行ってもらう。
専用機持ちはすぐに始められるだろう?
だから黙って前に出ろ」
有無を言わせぬ言葉に気負いされ、二人の専用機持ちは渋々と前に出た。
「少しはやる気を出せ。
―アイツにいいところを見せられるぞ?」
千冬は未だにやる気を見せない二人に対し、耳元でボソッと呟く。
その言葉を聞いた二人は先ほどまでの機嫌が嘘のようにやる気をみなぎらせた。
「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」
「千冬さん… あいつ等あんたの弟に『ほの字』なんスか?」
「見てのとおりだ。 あと島本」
「へ?」

ドゴッ!!!

「ぐぇっ!」

55 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:58:47 ID:Y.6HAxV60
千冬の左手から放たれた強烈な貫き手が、瞬の水月に深々と突き刺さった。
完全なる不意打ちの前には鍛えられた肉体も意味をなさず、付きつれられた痛みに対し、ただただもがき苦しむのみであった。
「お前、さっきまでのそこまで痛みを感じていなかったろぅ?」
依然足元で悶絶する瞬を冷たい瞳で見下ろしていた。
「ここでは先生と言え。 …次は無いぞ?」
「はっ、はひ…」
激痛に支配された肉体に苦しむ瞬の目に映ったのは、紛れも無く鬼そのものであった。

「…っと言うわけでだ。 早速実演にうつるか」
千冬は何事も無かったかのように顔を上げ、前に出した代表候補生二人のほうへ向き直る。
先ほどまでの光景を間近で見守っていた二人は、一瞬体をビクつかせる。
「そっ、それで、相手はどちらに?
わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」
「ふふん。 こっちの台詞。 返り討ちよ」
二人はお互いに牽制し合い、視線が触れ合う中で火花を散らしす。
「慌てるな馬鹿ども。 対戦相手は―」

キィィィィン…

千冬の言葉を遮るように、遠くから空気を咲くような音が聞こえてくる。
それはだんだんと大きくなり、何かがこちらに近づいてきている事を知らせるものであった。
「ああああーっ! どっ、どいてください〜っ!」
「え? なに、俺?」
誰かの声が聞こえその方向を向いた一夏の目の前には、ISを展開させてこちらに突進してくる山田先生の姿が映っていた。

「って、うわ!?」
「キュィンッ!!!」

ドカーンッ!

真耶の駆るISの突撃に巻き込まれた一夏は、寸でのところでIS【白式】を展開させて身を守るも、その衝撃を全て相殺する事は叶わなかった。
激しい衝突音を響かせ、数メートルを吹っ飛ばされて地面に激突する―ことはなかった。
「ッ? 白式の展開はギリギリ間に合ったけど、衝撃が少ない?」

むにゅ。

「ん?」
なんだろう、この手のひらに感じる感触は。
地面ってこんなに柔らかかったっけ?

ギシギシ…

「お?」

56 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:59:22 ID:Y.6HAxV60
周りでは何かの機械…音?
はて、俺は校庭に居たはずだが…。
そして手に残るでプリンのような感覚
「あ、あのう、織斑くん…ひゃんっ!」
プリンが喋った! しかも震えた声で!
―って待てい。そんな訳あるか。
おそるおそる俺は自分の手の先に視線をやる。
「そ、その、ですね。 困ります…よりにもよってこんな場所で…。
確かに…吊り橋効果は男女の仲を急接近させるといいますが、急接近どころか天国まで一直線と言うか…」
山田先生であった。
プリンの正体は山田先生であった。
プリンはプリンでもムチプリンである。
ああ、そうか。 本物のおっぱいってこんなに柔らかいのか。
漫画に出てくるおっぱいはゴム鞠みたいに硬そうなやつばっかだったしな
ってそうじゃない。
いつものサイズが合ってないような服ではわからなかったのだが、たわわな胸の膨らみがその美しい曲線を隠すことなく現している。
さらに問題なのは俺達の距離と体勢だ。
さっき一緒になって吹っ飛ばされた結果、どうやら狭い場所に入り込み俺が山田先生を押し倒しているような状態になっているのだ。
しかも俺の手はしっかりと山田先生に乳房に触れていて、いまだに鷲摑みの状態である。
話さないといけないのはわかっているが、急な出来事でどうにも体が動かない。
それに山田先生も、恥じらい交じりに恐怖を合わせたような表情をしているからますます固まってしまう。
そういえばここは何処なんだろう?
俺は動かせる限りの視線であたりを見渡す。
外―は見えるけど、なんだこの刺刺しい牙みたいな物体は?
それにさっきからあたりに響く機械音。
足元も地面じゃなくて冷たい鉄の板みたいだ。
「―ハッ!!!」
そうだ!思い出した!
山田先生がぶつかってくる瞬間―アイツが飛んできたんだ。
見た目はまるで怪獣のような巨大ロボット。
名を―。
「邪鬼王ー! 一夏達は大丈夫かー?」
狭い空間の外からは島本先輩の声が聞こえる。
そして山田先生のこの怯え様と、牙のような物体。
ここは―
「もしかして、邪鬼王の口の中?」
「み、みなまで言わないでください〜!」
今にも泣き出しそうな山田先生ではあったが、正直、こちらとしても衝撃の事態だ。
俺の置かれた状況はこうである。
邪鬼王の口の中でISを展開して山田先生に覆いかぶさり胸を鷲摑みにしている。
なんともシュールな光景である。
どうやら地面への落下の衝撃がなかったのは、吹っ飛んだ俺達を邪鬼王が驚異的なスピードで先回りし、その口で受け止めてくれたからのようだ。
島本研究所でも、その巨体で無人ISのビームを避けている光景を見てきているが、邪鬼王の運動性能はまさに圧巻だ。
「って、感心している場合じゃないな」
だが、そのシュールな光景にあって俺の置かれた状況はかなりまずいものであった。

ビーッ! ビーッ!

「ゲッ!」

57 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 00:59:56 ID:Y.6HAxV60
白式のモニターがロックオンされたことを告げるアラームを鳴らす。
邪鬼王の口の外を見るとそこには蒼穹の狙撃手ことセシリア・オルコットの姿があった。
その手にはしっかりとスターライトmk-Ⅱを構えており、その照準はこちらに向けられている。

バシュンッ!

スターライトmk-Ⅱから光が光を放った瞬間、俺の視界は急に悪くなった。
まるで高速で移動するかのような、いや、実際に移動しているのであろうこの振動。
俺達が今まで居た場所をレーザー光が貫いた。
どうやら邪鬼王が避けてくれたようだ。
「ホホホホホ…。残念です。
外してしまいましたわ…」
顔は笑っているが、その額にははっきりと血管が浮き出ているのが見て分かる。

ガシュンッ!

不意に近くで何かが組み合わさる音が聞こえた。
あれ? 今のって確かアレだろ?
鈴のIS『甲龍』の武器『双天牙月』を連結した音だよな?
アレって最初は二個に分かれてるんだよ。 
それを組み合わせて両刃状態にするんだ、お前達とは動きが違うって感じに。
その状態だと投擲も可能なんだ。
そうそう、あんな感じで大リーグボールを放つみたいに振りかぶって…。
「って!うおぉぉ!?」
鈴の放ったダブルトマホークブーメラン…じゃなくて『双天牙月』が迷うことなく俺の首めがけて飛んできた。
…まずい。この距離はさすがに邪鬼王もかわせないかも!
「はっ!」

ドンッ!ドンッ!

短く二発、火薬中の音が響いた。
放たれた弾丸は的確にダブル…じゃない『双天牙月』の両端を叩き、その軌道を変える。
薬莢の跳ねる音が響き、俺はピンチを救ってくれた射手に視線を向けた。
それはなんと山田先生だった。
両手でしっかりと五十一口径アサルトライフル『レッドバレット』をマウントしている。
アメリカのクラウス社製実弾銃器で(以下略…
それよりも驚かされたのは山田先生の姿であった。
邪鬼王の口の中という限定された狭い空間で、倒れた姿勢のまま上体だけをわずかに起こしての射撃。
そしてあの命中精度だ。
雰囲気も、いつものバタバタした子犬のようなものとはまったく違い、落ち着き払っている。
とてもではないが、入学試験の時に勝手に壁に突っ込んで動かなくなった人と同一人物とは思えない。
…っと思ったが、額から汗をだらだら流している辺り、今でもまだ邪鬼王の口の中という恐怖は薄れていないみたいだ。
それはそうだ。
邪鬼王を知らない山田先生からしたら、今現在の自分の命は邪鬼王の手の中。
いや、口の中?
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんなくだらないことを考えている俺をよそに、セシリアと鈴はもちろんの事、他の女子も唖然としながら山田先生を見つめていた。
「山田先生はああ見えて元代表候補生だからな。
今の状況下であのくらいの射撃は造作もない」
「む、昔の話は置いておいて、助けていただけないでしょうか〜!?」
ぱっと雰囲気がいつもの山田先生に戻る。
小刻みに震える躯体を駆使し、肩部武装コンテナに銃を預ける。
「島本、そろそろ降りてもらわんと話が進まん」
「へぃへぃ」
強烈な一撃をその身に受けた瞬は、この短時間で既にそのダメージを克服しつつある様子だった。
その年齢でその肉体の強度は評価に値する。
千冬は横目で瞬を見ながらそう考えていた。
「邪鬼王−! そっと降ろしてやれ!」
「キュィン…」

58 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 01:01:01 ID:Y.6HAxV60
瞬の呼びかけに反応して邪鬼王が反応する。
発声の際に声帯を用いる必要が無いのか、いや、そもそも機械が発声を行う事こそ可笑しな事であるのだが、邪鬼王は口を微動たりさせずに声を発していた。
それも口腔内にいる人間に気を遣ってか、発声の音量もかなり抑えられたものであった。
(ただの機械…という言葉では片付けられん存在か…)
現時点で、邪鬼王の『気遣い』に気づいているものは、千冬以外存在しなかった。
邪鬼王はその姿勢を前へ前へと傾け、ちょうど顔を地面に接する地点でその動作を止める。
それに合わせ、山田先生は抜けそうな腰を激励しながらなんとか土の大地を踏むに至った。
続く形で一夏も後を追い、同じく土の大地を踏む。
「ありがとな邪鬼王!」
「クォオン!」
自身の身を守ってくれた存在に対し、一夏は素直に感謝の意を示す。
しかし、山田先生に至ってはそういった心の余裕は未だ取り戻していない様子であり、ヘナヘナと腰を抜かして座り込んでいた。
「さて小娘ども、いつまで惚けている。
さっさとはじめるぞ」
「え? あの、二対一で…?」
「流石にそれは…」
「安心しろ。 今のお前たちならすぐに負ける」
山田先生の力量は先ほどの射撃の精度を見れは一目瞭然であるが、代表候補生である自分たち二人を同時に相手に出来るというのは疑うべきところであった。
そんな二人の思惑を察してか、千冬は不適な笑みを浮かべてそう述べる。
『負ける』
その言葉が気に障ったのか、セシリアと鈴の両名はその瞳に闘志をたぎらせる。
セシリアに至っては入学試験で一度勝っている相手のいうのがポイントであったようだ。
「…あのー」
やる気になった二人の様子を見ていた山田先生が弱弱しい声で割り込んだ。
「何かご不満でも?」
不意な問いかけに即座に応じる千冬。
その目に別段怒りを込めたつもりはないのだが、生まれ持った鋭い眼力は他者を萎縮されるに十分な効力を持つ。
「いっいえっ! 決して不満があるわけではないのですが!」
「ではどうされました?」
「それは、その…」
「?」
地に腰を預けたまま立ち上がろうとしない山田先生の姿を訝しげに眺める。
当の本人はそれ以降の言葉を躊躇ってなかなか用件を述べようとはしない。
「他に何か不都合でも?」
「その、腰が…」
「腰が?」
「抜けて立てません」
「…」

59 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 01:01:48 ID:Y.6HAxV60
ベタであった。
これ以上無いくらい。
別に何が悪いわけでもない。
邪鬼王のその凶悪な容姿も。
邪鬼王の口にはまり込む形になった状況も。
邪鬼王への恐怖で腰を抜かしてしまった山田先生も。
ただただ、なんとも言えぬベタな展開だけが場の空気を気まずいものとした。
「…」
額に手を当てて千冬は考える。どうしたものかと。
ここは本来、代表候補生であろうと所詮はひよっ子であることを自覚させる場面であったはずだが、自覚させる人物がこれでは。
「まあいいでしょう」
千冬はそれだけ言って邪鬼王のほうを見る。
見られた邪鬼王はただ
「キュィン?」
と首を傾げて反応するのみであったが、それだけで良かった。
「山田先生、腰は抜けてますが両手は使えますね?」
「へ? っはい! 何とか」
それだけで十分である。
千冬は先ほどから想定していたものを変更し、それ以上に効果を示せるものを提案した。
「邪鬼王の頭に乗って二人と演習を行って下さい」
「へ…」
山田先生は固まる。
千冬の提案を耳で聞き、口の動きを読み、頭で理解するも、理解したところで脳がフリーズした。
「マジかよ千冬さん!」
「千冬姉それはさすがに山田先生が可愛そうじゃ…」

ドスッ!
バチンッ!

二人の男子の発言は、それぞれに対応した制裁の方法でかき消された。
足元で悶絶する二名をよそに、いまだフリーズしたままの山田先生に歩みより他の人間に聞こえないようにつぶやく。
「懸念されている事はもっともでしょうが、何より教師の威厳を示すのにこれとないチャンスかと」
それだけである。
それだけの内容であったが、山田先生のやる気を引き出すには十分だったのであろう。
「やっやります!」
いまだ立ち直れぬ自身の腰を引きずりながら、その目に闘志をみなぎらせて邪鬼王に近寄る。
「っと言うわけだ。邪鬼王、頼めるか?」
命令というわけではない、命令ならば瞬以外の言葉を受け付けないだろう。
しかし、千冬が邪鬼王に発した内容はそうではない。
邪鬼王の意思を最優先した依頼であり、邪鬼王はそれを断ることが出来る。
「キュィン!!」
しかし、それはなかった。

60 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 01:02:39 ID:Y.6HAxV60
嬉々として― と言うには難しいが、邪鬼王は拒否を示す反応をしなかった。
「頼むぞ」
自身の要求に応えてくれた機械仕掛けの獣に感謝を意を示して、再びその相手となるセシリア・鈴の両名の方を向く。
「という訳で、山田先生の足は邪鬼王が請け負うことになった。
不満は無いな?」
「不満はありませんが…」
「まぁ、その…やれって言われれば…」
二人ともが苦い顔をしている。
「心配するな。邪鬼王はあくまで足の代わりだ。
攻撃面は全て山田先生が請け負う」
懸念はそれだけではなかったのだが、提案した相手が相手だけに、二人はそれ以上口を出すことなく装備の確認を簡潔に済ませた。
一方の山田先生は邪鬼王の頭に何とか座る形で乗ることに成功して準備を済ませる。
「でははじめ!」
号令と同時にセシリアと鈴が飛翔する。
それを目で一度確認してから山田先生も臨戦態勢をとる。
「そちらにハンデがあろうとも手加減はしませんわ!」
「さっきのは本気じゃなかったしね!」
「いっ行きます!」
「ギャォオオオン!!!」
「ヒィッ!」
最後の邪鬼王の叫びに恐怖しながらも、その目を鋭く冷静なものへと変えた山田先生。
自身の意思で移動できず、自身は飛行できずというハンデを背負ってもまだ、焦る事無く相手を観察した。
「ハンデ…になればいいのだがな」
その様子を見ていた千冬は誰に言うでもなく呟いた。

61 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 01:08:50 ID:Y.6HAxV60






どうしてそこに石が落ちているの?
それに意味はあるの?
はじめからそこにないといけなかったの?
それは決められていたことなの?







それなら―
邪鬼王?
あなたは―


何故生み出されたの?




続く

62 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 04:41:56 ID:OptwsNMI0
>>61
乙。
邪鬼王は進化すればグロさが薄れていくんだけどねぇ……
しばらくは恐怖の対象かね。

63 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 12:26:17 ID:gMG4Mur6O
乙。
待ってたぜ!

64 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 18:17:30 ID:fdfV05cY0
感想は本スレでやっ他方がいいんじゃね?
今のところ投稿できなかった時のためのスレで
感想は忍法帖によって邪魔されないだろうし。
本スレに投稿できるものは本スレでやった方がいいんじゃね?

65 追い出された名無しさん :2011/07/05(火) 18:58:06 ID:Ml54qru60
規制で感想も書けない人はいいんじゃね?

インフィニット邪鬼王さんGJでした!

66 追い出された名無しさん :2011/09/18(日) 14:22:43 ID:bDjKQTsk0
SS投下します。
「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」とのクロスです。

67 ゲッターロボ0080 第一話1/10 :2011/09/18(日) 14:24:26 ID:bDjKQTsk0
アル、いいかい? よく聞いてくれ。
 この包みの中には、俺の証言を収めたテープや、証拠の品が入っている。
 このコロニーが、核ミサイルの目標になった訳を知る限り喋った。

 もし、俺が死んだら、これを警察に届けてくれ。
 大人が本当だと信じてくれたら、このコロニーは救われると思う――』


― ブォン ―


独特の唸りを上げるヒートホークが一閃、中空で光刃と交錯する。
視界が白色に染まり、直後、パンと言う破裂音を生じ、
あたかも反発しあう磁石のように、20メートル近い二つの巨体がたたらを踏む。

「くっ!」

力強く操縦桿を握り直し、巨人が大地に踏み止まる。
ジオンMSの特徴的なモノアイがすぐさま律動し、【敵】の姿を追い求める。
果たして正面、モニターにはサーベル片手に佇立する、白い悪魔の姿が映し出された。


『――本当は直接、俺が警察に自首しようかとも思ったんだが、
 何というか……、そうするのは、逃げるみたいに思えて……
 ここで戦うのをやめると、自分が自分で無くなるような――』


スラスターを勢い良くふかし、一直線に敵機の胸元に飛び込む。
片や最終調整中とは言え、この戦争の局面すら塗り替えると囁かれた【白い悪魔】の後継機。
片や放置されたジャンクパーツを用い、場当たり的な改修を施しただけの量産機。
両者の差を埋める唯一のアドバンテージは、奇襲の成功による対手の動揺のみである。
強引であろうと無謀であろうと、ここで敵に時間を与える訳にはいかなかった。

巨体が激しくもつれあい、荒れた斜面を豪快に滑り落ちて行く。
ぷつり、と、張り詰めた糸の切れる音。
間を置かず閃光、衝撃、爆音がコックピットを包み込む。
相打ち覚悟で仕掛けたハンド・グレネード、その黒煙が、二つの機影をすっぽりと覆い隠す。


『――連邦が憎いとか、隊長達の仇を討ちたいとか、言うんじゃないんだ……。
 うまく言えないけれども、アイツと、ガンダムと戦ってみたくなったんだ。
 俺が兵士だからなのか、理由は自分でもよく分からない――』


ビデオ・レターに託した言葉に嘘は無い。
例えそれが、全ての真実では無いとしてもだ。

千切れかけた左腕を打ち捨て、煙の中に消えた機影を追う。
時が経てば、こちらの戦力がザク一機のみである事はたちまち露見する事であろう。
いや、そもそもここであの出来損ないに逃げられたならば、作戦を立て直す時間は、もはや無い。

敵の行方を捜す内、いつしか機体は森を抜け、連邦の基地の前まで辿り着いていた。
開けた視界の中央で、基地を守るように立ち塞がる標的を捉える。
モニターに映る悠然とした姿からは、先の爆発のダメージを窺う事は出来ない。

張り詰めた静寂の中、まるで自分のものとは思えない荒い吐息のみが、コックピットに響き渡る。
血の色に染まった視界の先で、白い悪魔が光刃を構える。
嘘か真か、ジオンのザクを100機以上葬ったと言うガンダムの象徴・ビームサーベル。

68 ゲッターロボ0080 第一話2/10 :2011/09/18(日) 14:26:27 ID:bDjKQTsk0
これまでの戦闘で、対手は右手首から先を失っている。
恐らくはバランスを崩すような大振りはしてこない。
構えた刃先を、おそらくは一直線に突き込んでくるであろう。
真っ直ぐに突きだされたビームサーベルと、大きく弧を描いて打ち下ろすヒートホーク。
どちらが先に相手に届くかは明白である。

だがここで、回避と言う選択肢は無い。
両機の運動性の違い、互いの得物の特性、そして機体の損傷の度合い。
もしここで一歩でも引いてしまったならば、手にした刃は永久に相手に届かないであろう事を、
状況は如実に語っていた。


――死。


『――アル、俺は多分死ぬだろうな。
 その事で連邦軍の兵士や、ガンダムのパイロットを恨んだりしないでくれ。
 彼らだって俺と同じで、自分がやるべきだと思った事をやっているだけなんだ。
 無理かもしれないけど、他人を恨んだり、自分の事を責めたりしないでくれ。

 これが俺の、最後の頼みだ――』


我ながら、良く臆面も無く言ったものだ、と思う。
覚悟はしていたつもりだった、が、実際に刃を突き付けられたこの状況でも、
果たしてあの聖人君子のような、同じ台詞を吐けるであろうか?

鼓動が高鳴り、指先が震える。
ともすれば総身を押し潰さんとする恐怖、ゆえに祈る。
使命を全うできるように、最後まで、勇敢な兵士でいられるように、と。

立ち込める緊張の中、不意に彼方より、少年の声を聞いたような気がした。
自身をこの世に留めようとする、臆病さゆえの幻聴であろうか……。

「うおおォッ!!」

未練の全てを振り払い、駆ける。
踏みしめた大地の固さ、真っ直ぐに突き出された左手、ミノフスキー粒子の煌めき。

『――もし、運良く生き延びて、戦争が終わったらさ……。
 必ず、このコロニーに帰ってくるよ。
 会いに来る、約束だ。

 これでお別れだ、じゃあなアル、元気で暮らせよ。
 クリスにもよろしくな――』

衝撃がモニターを突き抜け、高熱と白色の輝きが全てを奪い去る刹那、彼は見た。
火花を散らす大斧の一撃が、対手の首筋を刈り取る様を。

それが現実の光景なのか、あるいは自身の都合の良い妄想なのかまでは、ついに彼には分からなかった……。





69 ゲッターロボ0080 第一話3/10 :2011/09/18(日) 14:28:03 ID:bDjKQTsk0
―――――――――― 第一話・『ポケットの中の戦争』 ――――――――――





――バーナード・ワイズマンが再び目覚めたのは、地上から蒸発したはずのシートの上であった。

「……うっ」

網膜の底にまで焼き付いた閃光。
全身をオーブンに放り込まれたような錯覚にうなされ、夢中で手を伸ばす。
ガチャリ、という音と共に、掌に収まった何かを、精一杯に握り締める。
それが、生死を共にした愛機の操縦桿である事に気付いたのは、更に数刻が過ぎた後だった。

「ここ、は……」

断末魔の余韻に痺れる体に鞭打ち、ゆっくりと辺りを見回す。
押し並ぶ計器類、真っ黒なオブジェと化したモニター、淀んだ空気に満ちた閉塞感。

MS−06FZ、最終生産型ザクⅡ・通称【ザク改】
彼の周囲を圧迫していたのは、馴染みとなった量産機のコックピットの中であった。

「これは一体、こいつはもう壊されたハズじゃ……?」

兵士の性か、先の死闘の欠片も見出せぬ室内に戸惑いつつも、
若者の指先が、半ば無意識的にスイッチを弾く。
ブゥゥン、と言う唸り声を響かせ、モニターに簡素化されたザクの標本が映る。
各駆動系はオール・グリーン。
武装はヒートホークが1丁にハンドグレネードが12発。

「……アルと修理した時のままじゃないか。
 どう言う事だ? 俺は、夢でも見ていたと言うのか?」

まとわりつくような不快な空気、汗ばむ額を拭いながら、
ゆっくりと機体の半身を起し、モニターを頭部のモノアイに切り替える。
そして……、

「…………」

そして眼下には、地獄があった。

70 ゲッターロボ0080 第一話4/10 :2011/09/18(日) 14:29:29 ID:bDjKQTsk0
黄昏と暗雲の入り混じった、血のようにドス黒い空。
巨大な赤子が疳癪でも起こしたかのように、踏み荒らされ倒壊したビル群。
溢れ出たオイルで赤々と燃える河川、オブジェのように捻れ突き立つ兵器の山……。

『――クリスマスの夜までにガンダムを破壊できない時は、グラナダの艦隊がやってくる。
 核を使って、コロニーごと吹き飛ばす作戦だ――』

真っ白になった脳内に、いつかのエージェントの言葉がよぎる。
いつから自分は意識が無かった?
あるいは核攻撃の予定が早まり、その巻き添えで気を失っていたのではないのか?

ぶんぶんと頭を振るい、不安の影を一身に振り払う。
こんなにもあっさりと、最悪の結末を迎えてしまった事、
何より、あの時感じた焼けるような痛み、溢れ出た血の熱さ、踏みしめた大地の固さが、
全て、自身の都合の良い妄想だったなどとは考えたくも無かった。

「……そうさ。
 これだけハデにコロニーが破壊されて、この機体だけが無事だったなんて考えられない。
 それに、こいつがあのザクだと言うのならば、手元にグレネードが残っているハズがない」

悪い予感を思考の隅へと追いやり、
動作の一つ一つを確かめるように、ゆっくりと、機体を立ち上がらせる。

「とにかく、街に行ってみよう。
 もし生存者がいれば、状況が分かるかも知れない」

見かけの理性で己をごまかしながら、瓦礫の跡へと歩を進める。
心中に湧く根本的な疑問から目を背け……。

――もしこの機体が、少年と直したザクでは無いと言うのなら、
――目の前の廃墟が、サイド6では無いと言うのなら、

――この世界は、一体何だと言うのか?





71 ゲッターロボ0080 第一話5/10 :2011/09/18(日) 14:32:15 ID:bDjKQTsk0
鋼鉄の灼ける匂いを画面越しに感じながら、廃墟の街を進む。
原型も分からぬほどに打ち砕かれたストリート。
そこかしこに放置された年代の違う兵器の名残は、その破壊が核ミサイルの一撃では無く、
長期間の戦闘によって刻まれた爪痕である事を示唆していた。

ならばおそらくは、この町は、彼の守ろうとしたサイド6では無いのだろう。
最悪の予想を免れたバーニィではあったが、吉兆を素直に喜べる心境では無い。

通常のMSの規格を遥かに上回る、巨大な腕部の残骸。
機械も肉片もまぜこぜになり赤黒いオイルで染まった運河。
学び屋らしきコンクリートからに突き出した螺旋――これはドリルか?

黙示録の1ページを描いたような街並みを、愛機と歩く。
凄惨な世界の中で、ザクが手元に残っていた事だけは僥倖と言えた。
馴染みのシートに座り、モニター越しに見下ろしている分には、地獄に直に触れ合わずに済む。

「ぐっ、おおーい! 誰かいないのか!?」

見えざる圧迫感を振り払うように、生存者を求め、声を張り上げる。
もっともこの場合は、助けを求めていると言った方が正解か。

「おー……ッ!」

不意に悪寒が電気のように駆け抜け、再び上げかけた呼びかけが喉元で止まる。
眼前のビルディングの影より、金属的な響きを耳にしたためである。
天の助け、とは思えなかった。
擦れ合う金属の不協和音はさながら断末魔の悲鳴の如く、おぞましさを伴ってバーニィの耳へと届く。
心臓が早鐘のように高鳴り、喉元がヒリヒリと乾く。
ごくりと喉を鳴らし、意を決し、ゆっくりと建物の影を覗き込む。

――想像以上の地獄が、そこにはあった!

胸元を引き裂かれ、声にならない金属音を上げながら、じたばたと足掻く痩せぎすのロボ。
そんな懸命の抵抗を気にも留めず馬乗りになり、子豚の解体でもするかのように、
金属の臓器を引きずり出す肥満体形のロボ。

これが人間同士であったならば、さながら伝奇小説の一場面にでも描かれそうな凄惨な光景……。
いや、ビルディングにも匹敵するサイズの異形が生々しくのたうつ様は、
より筆舌にし難い嫌悪感を伴い、バーニィの胸元を突いた。

「チッ、思った通り、ロクなパーツを持っちゃいねぇ……」

樽型が吐き捨てるように呟き、尚もカエルのようにピクピクと痙攣する痩せぎすの頭部に剛腕を振り下ろす。
ズン、と言う衝撃が大地を揺らし、ドス黒いオイルが脳漿のように壁面に飛び散る。
静寂が、周囲の空間を包む。

「――で、テメェは一体なんなんだ?」

「ぐっ……!」

ゆらりと巨体が振り向き、ザクの眼前に巌のような影を成す。
身に迫るような威圧感に、思わず一歩後ずさる。

――デカい。
20メートル近いはずのザク改の巨体が、相手の腰部にすら届かない。
まるで大人と子供である。
唐突に、60メートル級の決戦用MA建造の噂が酒の席で語られていたのを思い出す。
あの時は下らない四方山話と笑い合ったものだったが、今なら分かる。
その発想は正しい、こんな物が量産化された暁には、その威容だけで連邦を圧倒できる事だろう。

72 ゲッターロボ0080 第一話6/10 :2011/09/18(日) 14:34:51 ID:bDjKQTsk0
「ア、アンタは一体、ここで何を……」

「あん、何寝ぼけた事言ってんだ?
 どうせそんなチンケなナリじゃ、テメェの中身も知れてるがよぅ」

そう言いながら、樽型は両椀のクローをわきわきとうねらせ……

「食後の腹ごなしだ、テメェもミンチにしてやるぜェ!!」

そして次の瞬間、風を巻いて猛然とバーニィ目がけて突進してきた。

「う、うわあァ――ッ!」

バーニィが戦慄する。
MSに倍するサイズのロボが、よもや全力疾走で突っ込んでくるなど、完全に想定外の状況であった。
ここで下手に対抗しようものなら、たちまちに轢き殺されてしまう事であろう。

白兵戦は不可能である。
咄嗟に手元のグレネードを前方に転がしながら、機体を仰向けに倒す。

――ドワォ!!

爆風が間欠泉のように土塊を巻き上げ、痛烈な余波がザク改を襲う。
すかさず背面のスラスターをふかし、爆風に吹っ飛ばされる形で大きく飛びのく。
至近距離でのグレネードの使用は無謀であったが、装甲へのダメージと引き換えに距離を得る事は出来た。
例えこの爆発が通用しなかったとしても、あの巨体である。
前面の路盤さえ砕いてしまえば、この場からの離脱は容易いものと思われ――

「クソッタレエェェェッ!」

――甘かった。
爆煙を突っ切ったマニュピュレーターが手品のように一直線に伸び、ザクの右肩をガシリと捕える。

「死ねやああああああ」

「ぐ、う、うわああァ――ッ!?」

強大な腕力に引っ張られるままに、深緑の巨体が宙を舞い、バーニィの視界が一回転する。
その余りの豪腕に、肩口のシールドがバキャリと音を立ててひっぺがされる。
不幸中の幸いであった。
スッポ抜けたザクのボディは壁面に叩きつけられること無く、ズシャリと地面に落下した。

「フン、手間掛けさせやがる」

「うう……」

脳震盪を起しかけた体に活を入れ、必死に機体を立て直し、手にした戦斧に高熱を注ぎ込む。
必死に牙を剥きだした獲物を前に、ふへらと、樽型が笑いをこぼす。

「おいおい、なんだその可愛いナイフは? それでトマホークのつもりか?」

ヘラヘラと笑いながら、樽型が手の内のシールドをめきめきと弄ぶ。
チタン・セラミックの複合装甲がいとも容易くねじ曲がり、鉄ダンゴと化してズシリと落下する。

「…………」

嘲笑には応じない。
無謀であっても悲壮であっても、退却を封じられたザク改には、他に抵抗の余地が無いのだ。

73 ゲッターロボ0080 第一話7/10 :2011/09/18(日) 14:37:13 ID:bDjKQTsk0
ズンッと、樽型が最後の一線を踏み越える。

「うおおおッ」

その先を取って、ヒートホークを振りかぶったザクが吶喊する。

そして――。

『ゲッタアァ――ッ パァ――ンチッ!!』

「うぎょあァァッ!?」

無謀なる特攻は、文字通りの横槍で阻まれた。
突如として横合いのビルディングを突き破って飛び出してきた巨大な拳が、
樽型のニヤついた横っ面を張り倒し、瓦礫の彼方までブっ飛ばす様を、バーニィはモニターの眼前で捉えた。

「なっ!?」

驚いている暇は無かった。
たままちコンクリートをズワッとばかりに突き破り、
これまた非常に巨大な戦車が、ザクの正面に飛び出してきたのだ。

――戦車なのにパンチと言うのもおかしな話だが、見たままを語るしかない。

バーニィの目の前に現れたのは、やはり既存のMSを上回る赤白黄色の巨体。
蛇腹のような構造の逞しい両椀を備え、両肩に大型のミサイルを背負ったキャタピラ式のロボットであった。

「な、なんなんだコイツは!?
 まさかこれが、噂のモビルタンクって言うやつか……?」

『おうっ、動けるか? ちっこいの』

「えっ? あ、はい!」

威勢の良い声の響かせながら、キュラキュラとタンクが背を向ける。
一般にキャタピラは巨大な兵器に向かないと言うものの、
眼前のヘラクレスは不整地路盤はおろか、あらゆる障害を踏み越えていきそうな威圧感があった。

『よし、イマイチ状況が掴めないが、この場は手を貸すぜ。
 俺があのデカブツを抑えてる間に、お前はこの場を離れるんだ』

「で、でも、あなたは……」

『いいから行きな、意気込みはともかく、そのナリでゲッターロボと戦おうってのは無謀すぎるぜ』

「ゲッタ……? わ、わかりました!」

頼りがいのある声に促されるままに、ヒョコヒョコと戦場を離れる。
程なく、瓦礫の山を勢いよく吹き飛ばし、樽型が何事も無かったかのように顔を上げる。

「随分とカッコつけてくれるじゃないか、ええ、骨董品風情が。
 上等だ、先にテメェからスクラップにしてやるぜ!」

『……たくっ、インベーダー野郎の次は出来損ないのゲッターか。
 いいぜ、来いよ、本当のゲッターチームの戦い方を見せてやる!』





74 ゲッターロボ0080 第一話8/10 :2011/09/18(日) 14:39:25 ID:bDjKQTsk0
――戦いのゴングが、彼方より鳴り響く。

ぶつかり合う衝撃が一撃ごとに大地を揺らし、爆音が遠く離れたバーニィの下にまで轟く。
おそらくはこれがタンク乗りの言うところの【ゲッター】の戦いなのだ。
ビリビリと操縦桿ごしに伝わる振動が、若者の心臓をじりじりと焦がす。

「くそ、こんな世界で、一体俺はどうすりゃいいんだ……?」

ぐるりと辺りを見回す、そこは彼の知らない世界。
MSの力が、彼の常識がまるで通用しない世界。

一体何ができるものか?
周囲には、彼の駆るザクよりも遥かに強大な、兵どもが夢の跡。
彼方を見上げれば、摩天楼の上にシュールに突き立つ常識外れなサイズの斧――。

「…………」

不意に脳裏をよぎった煌きを、ぶんぶんと頭を振るって打ち消そうとする。

「……何を考えているんだ、出来るわけがないじゃないか、そんな……」

この世界で彼に、力無きMSに出来る事などない。
無謀な勇者きどりの行動は、自身の死を早めるのみならず、
あの親切なタンク乗りの身すら、危うく巻き添えにする可能性があるだろう。
ここはあの男の言うとおり、素直に逃げる事こそ最善なのだ。
バーニィ自身、頭ではその事は分かっている。

だが……

『バーニィ、アイツを倒せる?』

胸元がじくりと疼く。
唐突に、胸中に溢れ続けている焦燥感の正体に気付く。

かつてサイド6で対峙した、あのガンダムだ。
死ぬ気で戦場に舞い戻り、必死で作戦を立て、己が命を賭して刃を重ねた。
だが、生き様を賭けたはずの戦いの、その決着は付かなかった。
あるいは勝敗に気付いていないのは自分だけで、本当はここはもう、地獄の一丁目なのかもしれないが。

ともあれあの時、不完全燃焼に終わったままの闘争心がじりじりと沸き立ち
尚もその身を焦がし続けていたのだ。

「――アル、俺は……」





75 ゲッターロボ0080 第一話9/10 :2011/09/18(日) 14:42:24 ID:bDjKQTsk0
「このォクズ鉄が、手間取らせんじゃねぇ!」

『オオッ』

巨大な腕が絡み合い、ブースターが大地を軋ませ、ギリギリと金属が擦れ逢う。
さながら互いの手足を喰らわんとする、鋼鉄の蛸同士のレスリング。
上になった樽型が片腕を振り解き、不自然な姿勢のままでそこかしこを殴り付ける。
タンクが頭突きを浴びせ返し、再びその手にまとわりつく。
強大な力の均衡はしかし、地力で勝る樽型に傾きつつあった。

「コイツで終わりだ、潰れちまえやァ!!」

『ちィッこのデカブツ!』

樽型が背に負ったミサイルを引き抜き、両手で高々と振り上げる。
そうはさせじと、タンクが両腕を絡めそれを抑える。

「このォ、往生際が……」

こつん、と、空から落ちた礫の一つが、ミサイルの表面を叩く。
思わず闘争を中断し、二つの巨体が天を仰ぐ、刹那――。

――ズワォ!!

と、摩天楼の頂部で爆発が巻き起こる。
ズズ、と緩やかに崩れ始めた瓦礫に交じり、一際大きな物体が落ちてくる。
両刃の大斧、夕日を浴びて輝く金属の刃は、あたかも磁石に吸い寄せられるかのように、
重力に逆らい両機の上部目がけて軌道を変える。
その柄にすがるように取り付いているのは、モノアイを煌かせる緑色の蛸頭――。

「あ、アイツ……ぐっ!?」
『へへっ、あの野郎、やってくれるじゃねえか!』

一瞬早く我に返ったタンクが車体を跳ね上げ、樽型を振り落とす。
すかさずキャタピラの生えたサンビストのような鮮やかな動きで後背に回り込み、対手をアームでからめ捕る。

「は、離しやがれ!?」
『チビスケェ、獲物はここだァ、ミサイルには当てんなよォ!!』


「うおおおおォォ――ッ!!」


裂帛の気合を込め、スラスターの出力を上げる。
柄の長さだけで機体の5倍はあろうかと言うこの鉄塊を、振り被る事などもちろん叶わない。
ただ一撃、高度をそのまま速度に変え、相手に叩きつけるのみだ。
ジオン量産機の傑作が、勢いのままに一条の弾丸と化し――。

「やめ――」

――ドワォ!!

と、悲鳴を上げる樽型の脳天を、唐竹割りに断ち切った……。





76 ゲッターロボ0080 第一話10/10 :2011/09/18(日) 14:44:25 ID:bDjKQTsk0
「オゥ、生きてるか、ちっこいの?」

「…………」

再び気が付いた時、バーニィのザクはタンクの腕に、幼子のように抱えあげられていた。
恐らくは、地面に叩きつけられる前に受け止めてくれたのだろう。
そうでなければ、自分も愛機も、無事では済まなかったハズである。

「……ミーシャ?」

タンクの左肩に胡坐を書いた男の姿に、バーニィは咄嗟に、かつての同僚を思い出した。
だが、視界が鮮明になるにつれ、過ちに気付く。
遠目に見たタンクのパイロットは恰幅の良い体型こそ似ていたものの、東洋人らしい黒髪であり、
逆境に隠れていた顔立ちも、彼の知るパイロットより、遥かに若いハリがあった。

強いて思い違いをした原因を探るならば、男の纏う空気であろう。
使い込んだ深緑のツナギに、自信に満ち溢れた鋭い眼光、口許に浮かべた不敵な笑み。
男の全身から発する叩き上げの軍人らしい強かさが、
かつてバーニィが所属していた特務隊の兵士達を思い起こさせるのだ。

「しかし、最初に見たときから危なっかしい奴だと思っていたが、こりゃ竜馬以上だな。
 こんな機体で、あのデカブツに特攻を仕掛けようなんざ……」

「……ザクです」

「なに?」

ギリギリと悲鳴を上げるハッチを押し上げ、男と顔を突き合わせる。
オイルと血風の入り混じったむせるような空気が鼻を突く。

「MS−06FZ、最終生産型ザクⅡ・通称【ザク改】、こいつの名前です。
 ナリは小さいですが、扱い易い良い機体ですよ」

「……ああ、そうだな、いいロボットだよ、コイツは」

「あの……、俺は、バーナード・ワイズマンと言います。
 えっと、うまく言えないんですが……」

と、しどろもどろに口を開いたバーニィの前に、男が左手をかざす。

「分かってるよ、いきなりこんなワケの分からねぇ世界に放り出されて、途方に暮れてるんだろ?
 ……実は俺も同じクチよ」

「へ……?」

ポカンと口を開けたバーニィの前で、ふへっ、と男が苦笑を漏らす。

「俺は巴武蔵、このゲッター3のパイロットだ。
 しばらくは共同戦線と行くか、よろしく頼むぜ、バーニィ」

77 ゲッターロボ0080 :2011/09/18(日) 14:51:27 ID:bDjKQTsk0
以上、投下終了です。

構想の段階では、殺しても死ななそうなのに何故か死んじまった野郎どもが集まって
地獄編からの脱出を目指す「スーパー二階級特進大戦」にする予定だったのですが、
そんな魅力的な多重クロスが完結するはず無いので、キャラクターをバーニィとチェンゲ武蔵に絞りました。
読み返してみたらザク改が原作よりも頑丈になっていましたが、バーニィの愛とでも思ってください

78 ゲッターロボ0080 第二話 :2011/10/10(月) 23:13:12 ID:aBCXeFeY0
投下します

79 ゲッターロボ0080 第二話1/13 :2011/10/10(月) 23:15:42 ID:aBCXeFeY0
その単語を最初に耳にしたのは、いつの事だったろうか?
おぼろげな記憶の糸をゆっくりと辿る。

薄暗い工場に響くインパクトの回転音。
ほの暗い年季の入ったガレージに、工業用オイルと松ヤニの匂い。
それはまるで作戦行動中とは思えない、平穏なる戦場での、日常の1コマだったはずだ……。



「新型の炉心……?
 それがあの〝できそこない″に積み込まれた、連邦の秘密兵器の正体なんですか?」

「ああ、何でもそいつが実用化にこぎつけた日にゃ
 修理いらずの補給いらずで戦い続ける、バケモノみたいなMSが誕生するって話だぜ」

手元のバンダナをくるくると弄びながら、浅黒い肌の男が軽口で問いに応じる。
サイクロプス隊にとっては貴重な新兵をからかうのが趣味のような男である。
バーニィは訝しげに眉を吊り上げると、ちらりと隊長の方へと視線を向けた。

「――技術屋からの受け売りだから、真偽の程は分からんがな」

そう言いながら、口ひげを蓄えた壮年の男が、定価分が丸々残った煙草を灰皿で押し潰す。
火の点いていない煙草を咥えるのは、この男にとって一種のゲンかつぎのようなものらしい。

「連邦の開発した炉心は、最近発見された新種の宇宙線を動力源としているそうだ。
 従来の核融合炉より膨大なパワーを引き出せるのみではなく、
 エネルギーの応用次第では、金属の原子構造に反応して、素材の変形や分裂を促す事もあるらしい。
 もし連邦が、新炉心の実用化に成功したと言うのなら、
 ガルシアの言葉もあながち冗談とは言えんだろうな」

「そんなものが、あの『ガンダム』に……」

剽悍なる隊長の言質を受け、バーニィが声のトーンを落とす。
ふっ、と、それまで同僚たちのやり取りを聞き流していた恰幅の良い中年が体を起こす。

「ようはそいつが動き出す前に、俺達で抑えちまえばいいってだけの話だよ。
 なあに、考えようによっちゃ好都合さ。
 帰りのバスを探す手間が省けるんだからな」

「おいおい? 大の男が四人して、コックピットにすし詰めですかい?
 俺ァそいつは勘弁願いたいねェ」

くっく、と、切迫した状況も顧みずに、場慣れした工作員たちが不敵に笑う。
物騒な笑い話に瓢々と華を咲かせられるのも、規律に疎い叩き上げ部隊ならではの光景なのであろう。
口ひげの隊長が重い腰を上げ、不良中年たちに仕事をうながす。

「ともあれ、情報の真贋を詮索するのは我々の仕事ではない。
 さて、休憩は終わりだ、早いとこ俺達の方のできそこないを組み上げるとしようか」





80 ゲッターロボ0080 第二話2/13 :2011/10/10(月) 23:17:11 ID:aBCXeFeY0
―――――――――― 第二話・『河を渡って木立を抜けて』 ――――――――――



「ゲッタァァァ ミサァーイルッ!」

瓦礫の街に咆哮が轟き、2門の大型ミサイルが外道の群れ目がけ、橙い炎を吹き上げる。
閃光と爆音、一拍遅れた逆風がメインストリートを吹き荒れる。
立ち込める爆煙の中、真紅の機影がドゥッとばかりに粉塵を巻き上げ中空へと舞い上がる。

「クソッ! バーニィ、一匹抜けたぞ、気を付けろ!」
「ハ、ハイッ!」

友軍の警告を受け、バーニィの駆るザク改が、ホバー走行で街路を抜ける。
出来る事なら推進剤を大きく失うような動作は避けたい状況であったが、そんな事を言える場合でも無い。
ゲッター炉心をフル回転させた怪物達の挙動がMS乗りの常識を遥かに凌ぐものである事を、
バーニィは既に身に染みる程に味あわされていた。

「赤いのは1号機タイプ。
 空戦に長け、火力は3タイプ中でもピカイチ、だったか?
 ……一体どうしろってんだよ、そんなの」

短く舌打ちをして操縦桿を引き、背の高いビル群へと機体を滑らす。
彼我の出力が違い過ぎるのだ。
真っ直ぐに飛ばしても逃げ切れる脚は無く、ひとたび遮蔽物の無い場所で追いつかれたなら、
たちどころに焼き払われるであろう事は明白であった。

「オラァッ! ダブルトマホォーク!!」

そんな小賢しい悪足掻きを嘲笑うかのように、死角より放たれた両刃のブーメランが
まるで生き物のように自在にうねり、風切り音を上げてザクを猛追する。

「う、うわァーッ!?」

刃はかろうじて機体の脇をすり抜け、正面のビルディングを直撃する。
倒壊する建屋がモノアイの視界を塞ぎ、降り注ぐ瓦礫の嵐が集音性を鈍らせる。

「くうっ、アイツ、なんてカンしてやがるんだ!?」

「ヒャッハーッ いいかげんチョロチョロしてんじゃねェ―――ッ!!」

狂気を孕んだ輝きが頭部より放たれ、
一条の光線となって大地を走る。
巨大な熱量がザクの背中を舐め、飴細工のようにコンクリートを溶断し、刹那、大地が火柱を吹いて陥没する。

「う、嘘だろ、こん……くぅッ!」

高熱がガスタンクに引火し、ドワオズワオと誘爆を引き起こす。
視界がオレンジに染まり、衝撃と爆音が思考を奪う。
閃光に翻弄され、訳も分からぬまま、ザクは袋小路へと転がりこむ。
対手が抵抗の意思を失ったのを見てとり、真紅の巨体が大地を踏みしめる。

81 ゲッターロボ0080 第二話3/13 :2011/10/10(月) 23:18:49 ID:aBCXeFeY0
「ケッ、ポンコツめ、ザマァないな」
「…………」

もう一対の戦斧を担ぎ、赤鬼が吐き捨てる、ザクは応じない。

「なんだ、もう鬼ごっこは終わりか? もっと楽しませてくれや」
「…………」

ずんずんと大地を揺るがし、赤鬼が迫る、ザクは応じない。

「……チッ! もういい、死んじまえ」

業を煮やした赤鬼が戦斧を振りかぶる、ザクは……。

「――!? コイツ……」
「うおおおおおォォ――ッ!」

赤鬼がもぬけの空のコックピットに気付いたのと、
横合いに転がっていたゲッターの残骸が火を噴いたのは、ほぼ同時であった。

「グヌッ、そのゲッター、生きてやがったのか!?」
「いくらゲッターでも、銃くらいは俺にだって使えるさ!」

赤鬼の動揺を見逃さず、腕部の大型ガトリング砲を一気呵成に叩きつける。
思わず倒れ込んだ残骸の中で、プツリ、と言う音が響き、直後……。

――ドワォ!!――

と、爆煙が赤鬼の背面を焼き払う。

「ぐぅっ、ボケがッ!? グレネード程度でオレ様がたお……」

「ゲッタアァ―ドリルッ!!」

赤鬼の強がりは最後まで続かなかった。
突如として股ぐらから生えた巨大なドリルが、巨体を一息に脳天まで貫き、一瞬で全てを砕き散らしたのだ。
鋼鉄のミンチと化した赤鬼を前に、大きく一つ息をつき、バーニィがうそぶく。

「もちろん、これで倒せるなんて思ってやしないよ。
 こっちは時間さえ稼げれば十分さ」

程なく、掘り抜いた岩盤より上半身を起こし、特徴的なイカ頭がにょきりと顔を出した。
ふっ、とバーニィが思わず苦笑いを浮かべる。

「へっへ、遅くなったな、バーニィ。
 マッハで駆け付けたんだが、なにせ道が混んでたもんでな」

「……勘弁してくださいよ、ムサシさん。
 そこらのゲッターロボなんかと違って、ここいらじゃザクはすごく貴重なんだからさ」





82 ゲッターロボ0080 第二話4/13 :2011/10/10(月) 23:20:55 ID:aBCXeFeY0
常軌を逸した修羅の世界にも、夜の帳は下りるものらしい。
文明の崩壊した暗闇の中、ハイウェイに灯る焚火の色だけが、人の住処であった。

「見直したぜバーニィ、最初に見た時はとっぽいボウヤだと思ってたが。
 お前さん、妙にケンカ慣れしてやがるじゃねえか?」

「そんな、買被りですよ。
 昼間はたまたま敵が誘いに乗ってくれただけで、
 それだってムサシさんが来てくれなかったらどうしょうも無いところでした」

携帯食を片手に齧りながら、バーニィが羨望の眼差しを向ける。
この世界に来てからの数日間で、彼はMSとゲッターロボの間にある、致命的なまでの戦力差を痛感していた。
共同戦線とは言うものの、いかに創意を凝らしたところで、バーニィとザクは足手纏いにしかなりえないのだ。
ムサシにかける負担の大きさを思えば、彼の世辞を素直に喜ぶ気にはなれなかった。

だが、武蔵はそうは思わない。
どれほど強力なロボットを乗りこなせる奴でも、弱い奴は弱いのだ。
なまじ強力な機体を操るがゆえに、より強い敵が相手では当然のように死んでしまう。
そう言ったロボット乗り達を、武蔵はかつての戦争で度々目にしていた。
バーニィの持つしぶとさ、強かさは、そう言う意味では得難い資質であった。
後は己の長所を自覚し、意識的に振る舞えるようになれば、きっと良い軍人になれるはずである。

それだけに惜しい。
武蔵が一つ溜息をついて、正面の緑色の機体へと視線を移す。

MS−06FZ、最終生産型ザクⅡ。
統合整備計画が賜物と謳われた量産機の傑作は、異界での数日における戦闘の果てにくたびれ果て、
今や周囲のスクラップ達と見比べても遜色がない程、背景の一部へと同化していた。

もとより、MSとゲッター系統機の間には大人と子供ほどの開きがある。
体格的な意味でも性能的な意味でもだ。
いかに武蔵の援護があったとはいえ、今日までバーニィが五体満足で生き延びてきた事は、
それだけでも彼のパイロットとしての非凡さを示していると言えよう。

だがそれだけに、機体の方は既に限界が近い。
ゲッター線の庇護を受けぬデリケートな人型精密機械が、
十分なメンテナンスもせずに戦いを重ねる事自体がそもそも無謀なのだ。
ましてザク改は高い機動力と引き換えに、旧来機の燃費の良さを失っている。
まともに戦闘をこなすことが出来るのは、果たしてあと何度であろうか……。

「なぁバーニィ、そろそろそいつに見切りを付けて、イーグル号に移ってみる気は無いか?」

「……いえ、気持ちは嬉しいですが」

しばしの沈黙の後に、バーニィが静かに首を振るう。
武蔵の申し出を拒んだのは、MS乗りの矜持だのと言った男らしい理由からでは無い。
元よりただの新兵に過ぎない自分には、そんな選り好みをしている余裕は無いとすら考えていた。
それでもバーニィが答えを保留したのは、乗替えによって生じる、武蔵への負荷を慮った為であった。

83 ゲッターロボ0080 第二話5/13 :2011/10/10(月) 23:23:16 ID:aBCXeFeY0
ゲッター系統機最大の特徴である3台の変形合体。
機体をいくつかのコアに分割して運用するシステムの存在自体はバーニィも聞いた事があったが、
ゲッター線の庇護を受けたロボットの奔放さは、彼の常識を瞬く間に覆すものであった。

コアとなる戦闘機の合体パターンを変える事で、機体に帯びたゲッター線の変化を促し、
必要なパーツを精製、増殖、再構成し、文字通り別のロボットへと『変形』する。
アクの強い三種の形態を使い分けられる万能性こそが、ゲッターロボの強みであると言える。

だがそれはあくまで、常人なら内臓が喉元まで飛び出すような超高速戦闘の最中に、
眼を閉じていて平然とも合体を敢行できるような、怪物クラスの乗り手が三人いれば、の話である。
パイロットが武蔵一人しかいない現状では、変形合体に移るパターンは限定され、
ゲッターロボの構造上の弱点である、変形途中の無防備な状態を狙われる危険性も増す。
更にそこに、機体の自動操縦にすら耐えられない素人が乗り込んだならば、戦闘力の大幅な低下は免れないだろう。

「それにしても、同じ人型の兵器で、これほどまでに性能が違うなんて……
 武蔵さん、ゲッターって言うのは一体何なんですか?」

「ああ、俺ァ科学者じゃ無いから、細かい話は出来ないがな」

と、やや瞳に複雑な色を浮かべながら、武蔵が訥々と言葉を紡ぐ。

「ゲッターロボの名前の由来は、動力源として用いている宇宙線から採ったものだ。
 もっとも、ゲッター線の正体自体は未だ解明されていない部分も多いがな。
 分かっている事と言えば、微かな量でも膨大なエネルギーを引き出せる事
 金属の分裂、増殖を促し、コントロール次第では、機体の修復、変形を可能とする事くらいだな」

「くらいって……、それだけでも並のMSから見れば十分に怪物ですがね」

「まぁな、とはいえゲッターロボは、初めから戦闘用に開発された兵器だったわけじゃねぇ。
 本当ならコイツは武装を持たない、宇宙開発用の機体になるはずだったんだとよ。
 大気圏外に満ちたゲッター線を取り込み、修理いらずの補給いらずで活動する次世代ロボットとしてな」

「……修理いらずの、補給いらず……?」

「ん、何か気になる事でもあったか?」

不意に嚢中を巡るデジャヴ。
思わず会話を止め、バーニィが記憶の引き出しを探りにかかる。
おぼろげな記憶の行く先は、町工場での日常へとたどり着く。

「そうだ……、確かにあの時、何でこんな大事なことを……」

「バーニィ、一体どうしたってんだ?」

「思い出したんですよ、ムサシさん。
 俺たちの世界にも、ゲッターロボがあった事を……
 厳密にいえば、ゲッター線の炉心を搭載した、新型のMSですが」

「何だと!? するってえと、お前さんの世界では
 そこのザクみたいな兵器をゲッター線で動かしていたって言うのか?」

「動かそうとしていた、と言うのが正解ですね。
 そいつは連邦……、敵方の勢力のMSだったんで、詳細は分かりませんが。
 俺の所属する部隊は、そいつの奪取を目指して作戦行動を進めていたんです」

「ゲッター線の兵器を、人類の戦争に、か……」

84 ゲッターロボ0080 第二話6/13 :2011/10/10(月) 23:27:15 ID:aBCXeFeY0
二人の異郷を結び出すバーニィの言葉に、武蔵が思わず声のトーンを落とす。
過去にはゲッター3のパイロットとして、未知なる怪物との戦いを生き抜いてきた男である。
並大抵の地獄など屁とも思わぬ自負を持つ彼であったが、果たして、
ゲッターロボが戦うべき【敵】のいない世界が、楽園と呼べるものであるのかどうか。
目の前の新兵が体験してきた戦争の光景に、思いを馳せずにはいられなかった。

「しかし、このゲッターロボの地獄にゲッター線、か。
 何かしら、因縁じみたものを感じるな」

「…………」

「……? どうした、バーニィ?」

思索にふけるあまり、バーニィの様子の変化を見落としていた事に気がついた。
眼前の若者は心なしか先ほどより顔色が良くないように見える。
抱えた両腕を、時折ぶるりと震わしすらする。
体調が悪いのかと懸念したが、そこでバーニィが、訥々と言葉を紡ぎ始めた。

「――あの時の事、俺はこの世界に来てからは、
 ずっと夢だったと思いこもうとしていました。
 けれども、今、はっきりと実感を持って思い出したんです……」

モニターを満たすビームサーベルの輝き、灼けた金属の、焦げ付いた肉の匂い。
骨の髄まで焼き尽くさん程の、絶対的な熱、熱、熱――。
記憶とともに心臓が高鳴り、体がカッと熱くなる。
噴き出た額の汗を震える手で拭う、肉体の反射をごまかす事は、既に不可能であった。

「ムサシさんは、冗談と笑うかもしれません。
 けれども俺は、確かにあの時、あの出来損ない……新型のガンダムと戦って
 そして、そこで……」

「……いや、信じるぜ、バーニィ。
 初めに出会ったとき『俺も同じようなもんだ』と、言ったよな。
 お前がただの迷子だったなら、俺も自分の思い違いて事にしておけたんだがなぁ……」

「ムサシさん、まさか……!」

きょとんと目を丸くしたバーニィの前で、武蔵が頭を搔いて溜息をつく。

「だがよバーニィ、だからと言って、ここを地獄と割り切っちまうのはまだ早ぇ。
 俺達はまだ、この世界の事を知らなすぎる。
 あきらめずに調査を続ければ、元の世界に戻れる術も見つかるかも知れん、だろ?」

「はあ……」

思いもよらぬ真実と、あっけらかんとした武蔵の言葉に、バーニィが返答の術を失う。
とにかく何を言おうにも、自らの置かれた状況が不明に過ぎた。
あのゲッターロボの怪物達を前になおも彼が平然としていられるのは、
彼が少なくともバーニィよりも、ゲッター線と言うもの存在を理解しているからなのであろうか。

85 ゲッターロボ0080 第二話7/13 :2011/10/10(月) 23:29:56 ID:aBCXeFeY0
「そういえば……」

と、そこでバーニィは、武蔵が口にした奇妙な一言を思い出した。

「ムサシさんはさっき、ゲッター線を戦争に使う事に驚いていたようですが、
 ムサシさんのゲッター3は、戦闘用の兵器ではないのですか?」

「ん……?」

バーニィの問いかけに対して武蔵がらしからぬ曖昧なつぶやきで応じる。
彼の言葉を借りるならば、ゲッターの備える変形機構は、宇宙開発の目的で生み出されたものだったのかもしれない。
だが、搭載した斧や大型ミサイルまで、自衛のための装備と言い切るのは明らかに無理がある。
間違いなくゲッターロボは、開発の途中で戦闘用へと転換させられた兵器であるハズなのだ。

「ムサシさんは、ゲッターロボは元の世界で、一体何と戦っていたんですか」

「ああ、そいつはよ……」

と、しばしの間、武蔵はあれこれと考え込んでいるようだったが、
やがて大きく息をついて、ゆっくりと頭を振るった。

「いや、今はやめておこう。
 今、詳しい説明をしたところで、かえってお前を混乱させるだけかもしれねぇ」

「はあ」

「さて、明日はまた市街地に入る。
 今日のところはこのくらいにして休むとしようぜ」

言いながら武蔵が立ち上がり、ゆっくりとコックピットに背を向ける。
バーニィが手元の時計を確認する、夜間は交代で見張りにあたるのが、ここ数日の決め事になっていた。

「明日、か……」

バーニィが地平の先に見える文明の跡を見つめる。
一切の光が灯らぬ瓦礫の跡に、ちくりと胸がざわめく。
それが単なる郷愁であるのかまでは、その時の彼には分らなかった。





86 ゲッターロボ0080 第二話8/13 :2011/10/10(月) 23:34:06 ID:aBCXeFeY0
瓦礫と砂埃にまみれた街並みに、鉄塊とキャタピラの足音が響く。
モニターごしに見つめる文明の名残を、興味深げに武蔵が覗き込む。

「こいつはまた、何か偉く場違いなところに来ちまったな」

「…………」

誰にともない武蔵の呟きに、バーニィは応じない。
だが胸中に抱いた感想は、彼とまったく同じものであった。

歴史の重厚さを感じさせる建造物と、区画化された近代的な通りが融合した。
近世ヨーロッパの一角のようなモダンな町並みは、
確かにこれまでのような、怪獣決戦の後のビル群のような無残さとは無縁のものであった。
とは言え、この街が単なる懐古主義の産物ではない事は、放置された無人のエレカや、
そこかしこに散見する設備の跡からも分る。
惨劇と破壊にまみえる前までは、さぞかし住み易い街だったのではあるまいか。

例によってスクラップ同然に放置されたロボットを見つけ、ゆっくりと武蔵が近寄る。
腰部で分断された白色の機体は、ゲッター3よりも一回り小さい。
頭部に当たる部分は大きな半透明ゴーグルで覆われ、無言で武蔵を見つめていた。

「こいつはゲッター……、では無いみたいだな。
 バーニィ、サイズ的にはお前さんのザクと釣り合うみたいだが」

「……RGM−79G ジム・コマンド。
 連邦が使っていた、量産型のモビルスーツです」

「やっぱり、お前さんたちの世界の兵器だったか、しかし、するってぇと……」

「……くっ! どうして、どうしてコイツが、こんな所にッ!?」

「――ッ!? バーニィ、どうした!?」

突然にスラスターをふかし、バーニィの駆るザク改が、瓦礫の街並みに消える。
慌てた武蔵が手にしたMSを打ち棄てるが、大型のキャタピラでザク改のホバー走行を追うのは困難であった。
一方のバーニィは、初めから目的地が見えているかのように迷いない動きで交差点を抜けていく。

「くそッ!? バーニィ、一体何が……」

バーニィの行方を追う内に、いつしか武蔵は、閑静な住宅街へと辿り着いていた。
常ならば子供たちの笑顔に満ち溢れていたであろうその場所も、
現在はやはり、暴力の無残さを強調するだけの破壊の跡であった。

「バーニィ!」

仲良く産業廃棄物と化した二つの住居、その前にバーニィはいた。
胸部のコックピットを開け、呆然と瓦礫の山を覗くその瞳は、遠目にもどこか虚ろであった。

87 ゲッターロボ0080 第二話9/13 :2011/10/10(月) 23:36:14 ID:aBCXeFeY0
「どうしたってんだ、バーニィ、何があった」

「……ここなんです、ムサシさん」

「何?」

震えるバーニィの口調に、武蔵が怪訝な瞳を向ける。
やがて感情の昂りと共に、バーニィがはちきれんばかりの声を上げた。

「ここはリボーコロニー……、俺のいた、俺の守ろうとした街なんだ!」

「何だと!?」

「くぅッ!」

声にならない叫びを上げ、行き場のない拳をシートに叩きつける。

「これは、一体何だって言うんだ。
 何があった、核は……やはり核は落ちたって言うのか?」

「おい、バーニィ……」

「結局、間に合わなかったって事なのか? 俺、は……」

「しっかりしろッ! バーニィ!!」

「――!?」

横合いからの怒声に、我に返ったバーニィが辺りを見渡す。
動揺が晴れるのを待って、武蔵が言葉を紡ぐ。

「落ち着いて考えるんだ。
 お前の言うコロニーって奴は宇宙に浮かんでいるって話だったろ?
 だったらこれまで歩んできた世界と地続きであるハズが無ぇ」

「あ……」

「今さら言う事でもないがよ、この世界はまともじゃねぇ。
 これが夢か幻なのかは分らんが、きっとお前のいたコロニーは、こことは違う場所に存在しているはずだ。
 まずは落ち着いて、この街を探って見るんだ」

「……はい」

「……たく、それにしても」

と、武蔵が改めてその奇異な世界を見渡す。

88 ゲッターロボ0080 第二話10/13 :2011/10/10(月) 23:38:36 ID:aBCXeFeY0
「この街はまるで分らねぇ。
 転がっているのがジムとやらの残骸ばっかってのはどう言うわけだ?
 なんでゲッターが一機も存在しないんだ」

「……そんなに不思議な事ですか?
 例えば、格段に性能の高いゲッターが街を壊滅させて、
 目当てのパーツが無い事に気付いて、この場を去った、とか」

「……それだったら、街は巻き添えで跡片もなく崩壊しているハズだ、
 確かに周囲の損害は酷いが……、なんて言うか、
 これはもっと、執拗な襲撃者に狙われて全滅した感じだな」

「そう……なんですかね?」

戦場のベテランである武蔵特有のカンがあるのだろう。
今一つ状況を掴めないバーニィは、曖昧に返答をする。

「一体、この街の人間を襲ったヤツは……」

と、そこまで呟いた瞬間、武蔵の背筋がゾクリと凍りついた。
無造作に道端に打ち捨てられたジムの一機と『目が逢った』為であった。
これは比喩表現ではない。
そもそも頭部がゴーグルで覆われたジムには、ザクのモノアイのような【瞳】に当たる部分が無いのだ。
だが、その時武蔵は、半透明のゴーグルの奥で、真っ黄色の眼球がうじゃうじゃと膨れ上がり、
一斉にゲッター3に対し敵意を剥いたのを見た。

「〜〜〜〜ッ!? バーニィ、今すぐそいつから離れろッ!!」

「へ……、う、うわアァァ――ッ!?」

武蔵の叫びに対し、しかしバーニィは間に合わない。
直後、スクラップのようなジムコマンドの腕から、大鎌のような刃がジャキリと生え揃い、
ザク改の右脚を膝先から一直線に薙いだ。
鋼鉄の案山子と化したザクが、バランスを失いドカリと大地を揺らす。

「こなクソオォォオォォッ!!」

すかさず武蔵が機首を返し、異形のMSへ機銃の掃射を浴びせる。
キシュアァアアァァと言う機械らしからぬ凶声が轟き、
鋼鉄のそこかしこからドス黒い臓物が溢れ出る。

89 !ninja :2011/10/10(月) 23:39:59 ID:41wiR2Ew0
支援

90 ゲッターロボ0080 第二話11/13 :2011/10/10(月) 23:41:17 ID:aBCXeFeY0
「む、武蔵さん!? コイツは一体……?」

「インベーダー……、ゲッター線を喰らって進化を繰り返す怪物
 俺達のいた世界をメチャクチャにしやがったクソ野郎だッ!」

「な、何だって!」


『キ シ ュ ア ア ア ァ ァ ア ア ァ ァ ァ !!』


武蔵の言葉を合図にしたかのように、怪物の産声が大気を震わし。
連邦製MSの皮を被った異形の群れが一斉に立ち上がる。

「アイツらの狙いは俺だ!
 バーニィ、お前は機体を捨てて今すぐこの場を離れろ」

「だ、だけど……」

「立ち上がれもしないポンコツで何ができる!?
 いいからとっとと行け」

「……くっ!」

頭を一つ振るい、バーニィがアスファルトへと飛び出す。
ここで戦況を把握できない程の素人ではない。
武蔵が全力を発揮するために今のバーニィできる事は、
全力でこの場を離れる事のみであった。

己の無力さを呪いつつ、手近に転がっている洒落たオープンカーへと身を躍らせる。
シートを染める真っ赤な血が誰のものであったか、考えたくもなかった。

「ムサシさん、必ず戻ります!」

悲痛な叫びを一つ残し、バーニィを乗せたエレカが砂ぼこりと共に消える。
新兵の考え無しの言霊に、へっ、と武蔵が笑みをこぼす。

ズンズンと大地を揺らし、異形の群れが遠巻きに武蔵を包囲する。
腕を、あるいは半身を失った鋼鉄の巨人がいびつに蠢く様は、
どこかこの世界のゲッター達を彷彿とさせた。

「……ケッ、地獄まで追ってくるとはご苦労なこったな。
 化け物ども、この巴武蔵をそうそう何度も殺れると思うなよッ!」





91 ゲッターロボ0080 第二話12/13 :2011/10/10(月) 23:43:29 ID:aBCXeFeY0
『バーニィ、嘘が下手だな……』

(ぐっ……)

不意にトラウマが沸き上がり、バーニィの胸中を締め上げる。
ささいな動揺から侵したミスで、頼れる先達を犠牲にしてしまった忌まわしい記憶。
苦い思いを噛みしめ、アクセルを全速で踏みしめる。

「俺はやっぱり、あの時の新兵のままなのか……?」

捨てきれぬ重荷を抱きながら、しかしそのハンドリングに迷いは無い。
隊長の言葉が思い起こさせたのは、辛いトラウマばかりでは無い。
それは反撃の糸口と呼ぶにはあまりに儚い、一縷の望みのような閃きではあったが、
寄るべきものの無い今のバーニィにとっては、十分な動機となって彼の衝動を突き動かした。

「――! 来やがったか」

ズンズンと大地を揺さぶり、四足のドス黒い異形が後背より迫る。
先ほどと同じ、旋風のような刃の一閃。
大きくハンドルを切ってテールを滑らせ、礫の嵐に耐えながら正門をくぐる。
急ブレーキで乱暴に車を止め、慣性のままに建物の中へと転がり込む。

それはスレート葺きの小さな町工場。
逃げ場の無いうらぶれた廃工場に飛び込んだ獲物を追い、奇声を上げてインベーダーが迫る。
巨大ロボにも匹敵する巨体で建物に取り付き、巨大な両の鉤爪をわきわきと動かすと、
蛙の腹でも割くかのように、屋根を観音開きに引っ剥がす。

「――ギャッ」

中を覗きこんだ刹那、不意に化け物の矯正が止まった。
そこにあったのは、大型のバズーカを仰向けに抱え込んだ、青一色のMS――。

92 ゲッターロボ0080 第二話13/13 :2011/10/10(月) 23:45:45 ID:aBCXeFeY0
「オオッ!」


―― ドワォ!! ――


不埒な乱入者の来訪は、強烈な火薬で以って報われた。
ドテッ腹を真っ赤にブチ抜かれ、仰向けにブッ飛んだ異形が大地にのたうつ。
ドゥ、と言う音と共に工場の壁が崩れ、鋼鉄の青鬼がその全容を露わにする。

MS−18E ケンプファー。
全長17.7m 重量43.5t 推力159,000kg

装備は197mm口径ショットガン1本、ジャイアントバズⅡが2門。
更に2基のシュツルムファウストと、白兵戦用に最新式のビームサーベルを2本帯同する。

強襲戦特化と言う目的の元に開発されたジオン最後期のMSは
装甲の脆弱さと引き換えに高い機動力を有し、前述の大げさなまでの火力と合わせ、
【闘士】の名に恥じぬ攻撃力を誇る。
本来ならばルビコン作戦の切り札として、新型ガンダムとの戦いに用いられるはずの機体であった。

「このォッ!!」

怒声と共にショットガンを浴びせ、異形の腹に開いた風穴を打ち破る。
すかさずポンプアップし、痙攣する頭部に一発、千切れとんだ肉片に更に一発。
蠢くミンチを巨大な脚ですり潰し、そこでようやくバーニィは大きく息を付いた。

『バーニィ、アイツを倒せる?』

「……ああ、もちろんだ、楽勝だよ、アル」

不意に脳裏に響いた声に小さく応えると、バーニィは強襲機特有の前傾姿勢を取り。
武蔵の待つ戦場へと踵を返した。

93 ゲッターロボ0080 :2011/10/10(月) 23:49:42 ID:aBCXeFeY0
以上、投下終了です。
バーニィの扱いに関しては、
①最後までザクで戦う。
②フォッカー辺りも呼んで即席ゲッターチームを作る。
③ゲッターヅダを拾う。
などのパターンも考えていたのですが、結局一番分かりやすい乗換に落ち着きました。
短編で考えているので、あと2、3話で終了の予定です。

94 ゲッターロボ0080 :2011/10/30(日) 10:31:19 ID:L4yA9L8s0
第三話、投下します。

95 ゲッターロボ0080 第三話1/13 :2011/10/30(日) 10:33:43 ID:L4yA9L8s0
「この、化物どもがッ!」

咆哮と共に、強大な鋼の豪腕が、さながら鎖付きのハンマーのように唸りを上げ、
正面の機械人形を力任せに薙ぎ払う。
圧倒的な質量を前に、チタンセラミックの複合装甲がいとも容易く両断され、
中空で破裂し、どす黒い肉の花を咲かせる。

だが、ゲッター線に巣食い、周囲の物質を取り込んでは独自の進化を繰り返す、
【インベーダー】たる異形の生物にとって、金属の外装は仮の宿に過ぎない。
依るべき定型を失って尚、肉片はしぶとくのたうちながらゲッター3にまとわりつき、
その動きを絡め取らんと律動する。

同時に、後背のメタルビーストが、肘先より同化した90mmマシンガンを乱射する。
至近で打ち放たれた火箭が炸裂し、ゲッターの強固な装甲を容赦なく穿つ。

「ぐぁ、っの野郎ッ!!」

目一杯にペダルを踏み締めながら、足元の肉塊をすり潰し、遠心力のついた左腕を強引に振り回す。
物言わぬジムコマンドの頭部がマシンガンごと宙に舞い、鼠花火のように銃弾の軌跡を描く。

「ハァ……、ハァ……」

大きく呼吸を整え、武蔵が周囲の状況を見渡す。
足元の肉片は真っ黒な汚泥のようにてらてらとキャタピラを捉え、
四方を取り囲んだ連邦製のメタルビースト達は、あたかも武蔵の疲労を推し量るかのように、
じりじりと包囲の輪を縮めつつあった。

「チッ!」

じわりと蘇る苦い記憶に、武蔵が短く舌打ちする。
このゲッターがもしも3人乗りであったならば、小回りの聞かないキャタピラは諦め
即座に変形に移るべき場面であった。
だが、周囲を銃口で囲まれた状況で、マシンの自動制御を頼りに変形を敢行するのは無謀に過ぎる。
徐々にであるが、均衡は数に任せた異形の群れへと傾きつつあった。

『シュアアアァアァァッ!!』
「ぐっ!?」

仇敵の逡巡を察知したか、突如として足元の泥中より鉤爪がすらりと伸び、
ゲッターの両肩を抑えに掛る、合わせて左翼の一体が、ビームサーベル片手に一足飛びで迫る。

『ショギュアァ……』
「!?」

―― ドワォ!! ――

異形の絶頂とも言うべき咆哮は、突然の爆発音の前に遮られた。
予期せぬ後背よりの砲撃を受けたインベーダーが、火ダルマとなって大地をのたうつ。

反射的に武蔵が上空を仰ぎ見る。
スラスターを勇ましくふかし上空より迫るは、
いかつい胸甲と一本角のようなレーダーが映える鋼鉄の青鬼。
遠目にも数多の火器を搭載したそのロボットは、武蔵にとっては初見であったものの、
スラスター用に裾の広くとった脚部や、何より特徴的な真紅の単眼が意味する事は明白であった。

「アレもザクの仲間……、だとしたら乗っているのはバーニィか」





96 ゲッターロボ0080 第三話2/13 :2011/10/30(日) 10:35:37 ID:L4yA9L8s0
―――――――――― 第三話・『虹の果てには?』 ――――――――――



「このォ、ムサシさんから離れろ!」

―― ドゥ!! ――

上空よりショットガンを構え、2度、3度と打ち放ちながら降下する。
散弾の雨が広範囲に降り注ぎ、差しものインベーダーも、水が引いたように
にゅるりとその場を引き上げる。

「バ、バカ野郎! 何てぇ事しやがる!?」

「どうせゲッターの装甲に、散弾なんか通用しないでしょう?
 ムサシさん、とりあえずこの場は急いで変形を」

そう一言交わすと、ケンプファーは腰だめの形でホバー走行に移り、
メタルビースト達の間を器用に抜けていく。
元より知性より本能、とりわけ凶暴性の高いインベーダーである。
たちどころにゲッター3の囲みを解いて、小癪な乱入者を追って一目散に走り出した。

「バーニィ、変形までの時間を稼ごうってのか……だが!」

にゅるり、と再び足元のスライムがうねり、定型をとってケンプファーを追撃しようとする。
その生え揃った両足を、ぐわっとゲッター3の武骨な指が鷲掴みする。

『ギャギャ!?』

「へへ、けどよ、テメエにだけはキッチリお返しさせてもらうぜ。
 どうりゃあァッ!! 大・雪・山 おろしいイィィイイィ―――ッ!!」

蛇腹のような大型アームを全身に巻きつけ、捻りを加えながら上空に投げ放つ。
巻き上がる両腕が竜巻となり、成形したばかりの怪物を千々の肉片に引き裂いていく。

「オープゥン、ゲーット!!」

ドス黒いミンチを弾き飛ばし、三台のゲットマシンが上空へと舞い上がる。
ベアー号からの誘導で三台が直線状に並び、後背より突き上げる形でドッキングする。
機体より余剰エネルギーが稲光となって迸り、増殖するチップが直ちに両腕の骨格を形成する。
ベアー号より逞しい脚がズドンと生え、全身が徐々に人型を成していく。

「チェーンジ! ゲ……」

―― カッ ――

97 ゲッターロボ0080 第三話3/13 :2011/10/30(日) 10:37:44 ID:L4yA9L8s0
変形が成功し、深紅の巨体が誕生したかに見えた刹那、一条の閃光が天空を駆けた。
高熱の光がゲッターの脇を走り抜け、連結が未熟だった左腕が肘先より熔断し、ズシャリと大地に沈む。

「なッ!? ゲッタービームだと!?」

ウェイトバランスを失ったゲッター1を突き上げるかのように、尚も追撃の光が放たれる。
それは、ただのゲッタービームでは無かった。
先の左腕を吹き飛ばした一撃とは異なり、光は短く、絶え間無く、
あたかもビームのマシンガンのように光群を成して武蔵に迫る。

「ぐうっ、ゲッターウィング!」

咄嗟に帯電するマントを全身に巻き付け、避けようが無い光の群れを必死に弾く。
だが、機体を間断無く襲う衝撃までは捌きようもなく。
失速したゲッターは、勢いのままに地表へと叩き付けられた。

「かはッ! コイツは一体……」

頭を一つ振い、痙攣する機体を起こして、立ち込める粉塵の先を睨みつける。
漆黒の影が埃の先にゆらりと現れ、両眼がおぞましい金色の輝きを放つ。
一陣の風が砂塵のヴェールを取り払い、武蔵の眼前に現れたのは、
かの規格化された連邦製のMSを思わせる巨体であった。

ジムコマンドとの外見上な違いは、『顔』に備えたマスクにカメラアイ。
ヘルメット型の頭部には、中世の鎧武者の角飾りのような、V字のアンテナを有する。
だが、頭部の構造以上に武蔵を驚かせたのは、その体格である。
悠然と大地を揺らすその骨格は、武蔵の知る量産機より一回り大きく、
遠目にもゲッターに迫るほどの威容を誇る。

外装は、ブ厚く鈍い灰色の装甲板で全身を覆われ、さながら重騎士のように逞しい。
更にその左腕部には、緑色に輝く照準を備えたいかつい砲身、
……先のゲッター1を襲ったものであろう、ゲッター線の照射装置が取り付けられた。

「俺の、俺の知らないゲッターだと?
 もしや、こいつがバーニィの言っていた【ガンダム】なのか?」

未だ見えぬ敵の正体を推し量りながら、肩口より引き抜いたトマホークを構える。
並みのMSを凌ぐ体格、強力に過ぎるゲッター線の兵器、
何より、歴戦のパイロットである武蔵すらも怯ませる、圧倒的威圧感。
新たな敵は、外見こそMSの延長上の存在ではあったものの、
どうしても武蔵には、眼前の怪物が、バーニィの駆るザクと釣り合うものとは思えなかった。

「あるいは、あるいはコイツが、この世界に地獄を生み出しやがった元凶なのか……?」





98 ゲッターロボ0080 第三話4/13 :2011/10/30(日) 10:39:40 ID:L4yA9L8s0
(……ムサシさん、まだか?)

バーニィが機体を反転させ、武蔵のいた場所を仰ぎ見る。
あの場を離れてから既に10分、だが、未だ武蔵からのリアクションは無い。
高速戦闘を常道とするゲッターロボにとって、考えられる事態では無かった。

『キシャアアアァアァァ!!』

「くっ、このォ」

迫りくるインベーダーを前に冷静に腰を落としバズーカを構える。
直後、轟音と共に異形の頭部がオレンジ色に爆ぜる。
色めきだつ化物共に向き直り、無用の長物と化した空筒を投げ捨てる。
いかに走る火薬庫たるケンプファーとは言え多勢に無勢、
しかも相手はゲッターチームですら苦戦を覚悟するインベーダーの群れである。
手元の弾薬は、既に尽きた。

(あるいは、ムサシさんの方こそ新手に苦戦しているのかもしれない。
 ……この場は自分で切り抜けるしかない、か)

短い逡巡を挟み、腰元のビームサーベルを抜き放つ。
MS戦における白兵戦の花形。
ビーム兵器実用化に後れをとったジオン公国において、限られたMSにしか持ち得ぬその近接兵器が
ことケンプファーと言う機体においては危うい両刃の刃でしかたり得ない事実を、バーニィは先刻承知している。

携帯に向いた近接武器の存在は、強襲用と言う機体のコンセプトを損なわず、
また、燃費の面でも実弾兵器を中心に構成されたケンプファーの重荷にはならない。
一見すれば、装備と機体の相性は非常に高いようにすら思える。
だがそれは、パイロットの心理を顧みぬ、技術者の欺瞞に過ぎない。

いかに高い機動力を有するとは言え、17mを超える巨大兵器に、マタドールの優雅さを求める事は出来ない。
ケンプファーはあくまで、奇襲攻撃に用いられるべきMSなのだ。
敵が訳も分からぬ内に火力で圧倒し、目的が叶わぬ時は即座に撤退する。
乗り手に求められるのは、勇気よりもむしろ割り切りの早さであると言えよう。
火力が突きたその時、尚も手元に残る僅かばかりの抵抗の余地は、却ってパイロットの寿命を縮める事となる。

99 ゲッターロボ0080 第三話5/13 :2011/10/30(日) 10:40:50 ID:L4yA9L8s0
「けれども今は、こいつで何とかするしかないよな……」

額に浮かぶ汗を拭い、ゆらりと左方に機体を滑らす。
下手に包囲されれば、機動力以外の優位を持たぬケンプファーはその場で死ぬ。
強行に打って出るタイミングを計りながら、じわり、じわりと間合いを縮める。

――と。

「……? なんだ」

不意に目の前の玩具に興味を失ったかのように、異形の群れが一体、また一体と飛び去っていく。
最後の一体が視界より消え去り、バーニィが大きく息を吐く。

「助かった、のか?
 けど、一体何が起こったって言うんだ……?」

異形達が消えた先をじっと睨みつける。
やがてバーニィは、彼方の空に薄ぼんやりと、緑色の輝きが灯るのを見た。
どくりと心臓が跳ねる。
その輝きは、この世界に来てから毎日のように目にしたもの。
――ゲッター炉心の輝きである。

「あれは、ムサシさんの居た……!」





100 ゲッターロボ0080 第三話6/13 :2011/10/30(日) 10:42:55 ID:L4yA9L8s0
「ムサシさん!?」

凄絶なる緑一面の世界を前に、バーニィが声を振り絞る。
周囲の急速な気温の上昇に、コックピット内でアラームが悲鳴を上げる。
いや、上昇じているのは沸き立つ大気ばかりではない。

緑の光の中心に向う異形の群れが、あるいは膨張して内側より爆ぜ、あるいは翼を灼かれて大地に堕ちる。
大気に満ちた高純度のゲッター線を喰らいきれず、組織が崩壊を始めているのだ。
それは、さながら炎に自ら飛び込む羽虫の姿。

「ムサシさん、どこだ、返事をしてくれ!」

「……来るんじゃねぇ、バーニィ」

「――! ムサシさんッ!?」

濃密な緑色の大気に揺らめく二つの機影。
胸元の炉心を煌かせ、沸き立つ破壊の中心に武蔵はいた。

「あの機体……、まさか〝出来損ない″!?」

『 グ ア ア ァ ア ァ ァ ア ァ ァ ァ !!』

おぞましいばかりの咆哮と同時に、出来損ないのマスクがガギャンと外れ、寧猛なる牙が露わとなる。
既に両腕を失ったゲッターを荒々しく大地に叩きつけ、さながら野獣の如く首筋に齧り付く。

「ム、ムサシさん!」

「動くんじゃねぇ、黙ってそこで見ていろ!
 よく目に焼き付けておけ、ゲッターの恐ろしさをよ」

「ムサシさん、一体……?」

慮外の言葉に躊躇う内にも、緑の光は濃霧のように世界を覆い尽くしていく。
コックピット内は既にサウナのように沸き立ち、大粒の汗がこぼれ落ちる。
果たして中心地は、どれ程の惨状になっている事であろうか?

「……少しづつだがよ、俺にはカラクリが分かってきたぜ、バーニィ」

「…………」

「たった一基、ただ一つだけの炉心であっても、
 一たびフル回転させれば、周囲を丸ごと吹っ飛ばす力を秘めている。
 こんな力を、もしも人類同士の争いに使っちまったら、世界はどうなる?」

「……ムサシ、さん」

「その答えがこの世界だ!
 この世界のゲッター共も、インベーダーも、この出来損ないも、
 そして、おそらくは俺自身も……
 全てがゲッター線に取り込まれていく」

通信機からノイズ混じりに届く武蔵の言葉。
全身を包む熱気とは裏腹に、バーニィの心臓がブルリと凍りつく。
武蔵の言わんとしている事、彼のしようとしている事。
状況は、この期に訪れるであろう残酷な未来を如実に示していた。

101 ゲッターロボ0080 第三話7/13 :2011/10/30(日) 10:44:51 ID:L4yA9L8s0
「バーニィ、お前は生きろ!
 生き延びて元いた世界の奴らに、ゲッター線の真実を伝えるんだ。
 家族を、友人を、恋人を……、お前の故郷を救え、バーニィ!」

「ムサシさん、でも、それじゃあ……」

「……いいんだ、バーニィ」

ポツリ、と武蔵が自嘲を漏らす。
炉心が臨界状態へと加速し、白色の輝きが空間に溢れす。
ノイズ混じりの武蔵の独白が、静寂の中で奇妙に響く。

「へっ、おかしな話だがよぅ……懐かしいんだ。
 なんか……前にも、こんな……」

「ム――」


―― カッ ――


刹那、地上より音が消え去り、閃光が、視界を完全なる白色に染め上げる。
絶望的な光景が、数瞬の内に物理的な衝撃となり、装甲ごしにバーニィを襲う。
轟音と叩き付けんばかりの烈風、瓦礫の渦が視界を塞ぎ、ケンプファーの巨体を容赦無く叩きつける。

「ム、ムサシさああぁぁぁんッ!?」

圧倒的な暴力の嵐の中
巨大な鋼鉄人形を四つん這いに倒し、叩きつける瓦礫に必死で耐えながらバーニィが叫ぶ。
それは大時化の中、こぼれ落ちた船員を呼ぶがごとき淡い抵抗。
やがて嵐は過ぎゆき、惨劇が若者の中で理解へと変わり始める。
もうもうと視界を塞ぐ黒煙、間を置いて地面を叩く瓦礫の音、僅かに跳ねた火の音まで届く。
ぞっとする程の静寂。

「……一体、なんだってんだよ、ムサシさん」

故郷を救え。
武蔵の口にした問い掛けの意味を求め、知らずと恨み事が口を突く。

だが、いかに思考の濁流が脳内をドロドロに呑み込もうとも、
バーニィの霊感は、一つの答えを導きだしつつあった。

鋼鉄の肉体を奪い合う阿修羅の坩堝、未知なるエネルギーを糧とする宇宙の怪物。
醜悪なる悪鬼すら一撃で葬り去る、炉心の煌き。

この世界を形作る地獄の因子は、全てがあの、忌まわしきゲッター線へと繋がっている。
いや、あるいはあの日、自分と〝でき損ない″が対峙したあの瞬間から、
自分のいた世界もまた、この地獄の一部に連なりつつあるのではないのか?

102 ゲッターロボ0080 第三話8/13 :2011/10/30(日) 10:47:07 ID:L4yA9L8s0
「バカな……、仮にそれが真実だったとして、俺に何が出来るって言うんだ?
 こんな廃墟に、唯一人とり残された俺に、一体……」


―― ガシャン ――


静寂を打ち破る金属音に、バーニィがハッと顔を上げる。
辺りに動く物は見えない。
バランスの崩れた瓦礫の山が、間を置いて崩れただけなのか?

(……いや)

胸中に湧いた希望的観測を捨て去り、立ち込める黒煙の先をはっしと睨みつける。
知っている。
現在の状況が、かつての同胞の戦闘と酷似している事。
おぞましいばかりの悪寒が最悪の事態を直感させる。
考えたくも無かった、あの攻撃の爆心地で、尚も耐えられる怪物の存在など……。


『 オ オ オ オ オ オ ォ ォ オ ォ ォ ォ ン !! 』


わずかばかりの希望を打ち破り、生まれたての悪夢が咆哮を上げる。
崩れ落ちる外装の下から現れたのは、まさに悪鬼と形容するしかない異形のガンダムであった。
全身に負った傷を、却って誇らんばかりに輝く真紅の装甲。
砕け散ったマスクの中からは寧猛たる肉食獣の牙。
両眼は烈火の如く赤一色に輝き、獲物の姿を探し求めるようだ。
両腕の鋭いブレードは、MSよりもむしろゲッター系統機のそれを思わせる。
そして傷ついた胸元からは、ゲッター炉心の証明たる薄緑色の輝きが零れる。

こみ上げる嫌悪感に、バーニィが口許を抑える。
記憶にある新型のガンダムは、敵機と言う偏見を加えても尚美しく。
調和のとれた青と白のデザインは、ある種の芸術性すら感じさせる物であった。

だが、眼前の赤い悪魔は、あの優雅さの欠片すら持ち合わせてはいない。
おぞましいほどに艶めかしい、全身の律動すら感じさせるような異形の怪物。
こんなものが、ゲッターの力を得た兵器の行きつく姿であると言うのか……?

「……一体」

どくりと心臓がうねり、バーニィの内側からドス黒いものが噴き出す。
憎悪と嫌悪、怒り、そして恐怖。
ドロドロにブレンドされた負の感情が、思考のわだかまりを押し流す。
理性は脆くも消し飛び、思考と行動はシンプルに、単調なまでの凶行へと一本化される。

「お前は一体、何だってんだよぉッ!!」

絶叫と共に腰部のビームサーベルを引き抜き、一直線に駆け抜ける。
余りにも愚直で、惨めな突撃。
自棄を起した羽虫を嘲笑うかのように、悪鬼がガパリと口を広げる。

103 ゲッターロボ0080 第三話9/13 :2011/10/30(日) 10:49:32 ID:L4yA9L8s0
「―!」

不意に光が網膜に突き刺さり、バーニィが反射的に操縦桿を倒す。
直後、異形の口中より放たれた一条のビームがケンプファーの脇を舐めるように通過し、
サーベルを右腕ごと飴細工のように捻じり切る。
破壊の輝きは大地を走り、ドゥッとばかりに後方のビルディングまでを打ち破る。

「ハァッ、ハァッ、ハァ……!」

急制動でもんどりうって倒れ込んだ機体を起こし、コックピットの中を見渡す。
すぐにバーニィは、自らの命を救った輝きの正体に気付いた。
前方のモニター脇に吊るされたスキット。
酒好きの機体の持ち主が備えておいた銀色の容器が光を反射し、バーニィの網膜を襲ったのだ。

「何を……、何をやってるんだ、俺は」

沸き立つ衝動を振るい落し、眼前の悪鬼の姿を再び観察する。
予想された追撃は無い。
よくよく見ると、対手もまた機体を大きく痙攣させているようであった。

「あの爆発をモロに受けたんだ、タダで済むハズが無いか……なら!」

かろうじて体勢を立て直し、ケンプファーがその身を翻す。
片腕のウェイトを失ったバランスの悪さから、機体が前傾に大きくよろめく。
直後、悪鬼の放った第二射が、その背面を舐めるように通過していく。

「ぐぅっ! だ、だがツイてる」

ビームの行方など追いもせず、バーニィが一目散に遁走する。
敵機の位置をレーダーで確認しつつ、ビル群を盾に機体を隠して突き進む。

「どうした、追って来ないのか?
 それならこっちは、このまま逃げ去るだけだぞ」

バーニィの機内での呟きが聞こえたものか。
悪鬼はしばしの間、呆然と中空を見上げていたが、その後、独特な咆哮で大気を震わし
その背に巨大な蝙蝠のような翼をばさりと広げた。

「ぐっ!」

直後、レーダー上の赤い点が、驚異的な勢いで動き始めた。
紅点は一直線にケンプファーを抜き去り、巨体が影を成して上空を通過する。
一拍遅れの衝撃波がケンプファーを吹き飛ばす。

「くそっ、なんて化物だ……」

力無く転がった獲物を一舐めし、大きく機体を旋回させた悪鬼が乱暴に着地する。
衝撃で、ズン、と大地が一つ揺れる。
そこは、連邦軍の基地にほの近い、大型の駐車場。
奇しくも、以前の世界において、〝できそこない″とケンプファーが雌雄を決した舞台であった。

104 ゲッターロボ0080 第三話10/13 :2011/10/30(日) 10:51:33 ID:L4yA9L8s0
「……いいぜ、こいよ〝できそこない″戦いの仕方を教えてやる」

口中で低く呟き、バーニィが最後の兵装となる、二本目のビームサーベルを抜き放つ。
異形の怪物であっても、諧謔精神というものを理解するのであろうか。
敵機もまたビームは使わず、肩部より得物を引き抜く。
ブゥウゥンと言う起動音と共に化物の両手にビームが走り、巨大な光の大斧が現出する。

『 オ オ オ オ オ オ ォ ォ オ ォ ォ ォ ン !! 』

くだらぬ茶番に幕を下ろすべく、怪物が風を巻いて一直線にケンプファーに迫る。
それを見たバーニィは悠然と、手元のサーベルを投げ捨てる。

「かかった!」

足元に転がっていたトレーラの荷台に腕を突っ込み、一気に引き抜く。
ズラリと転がったのは、数珠繋ぎとなった13基の大型機雷。

「おおッ!」

最後の奥の手を投げ縄の要領で振り回し、対手目がけて投げ放つ。
吸着型機雷が、怪物の腕に、首に、脚に、そして胸元の炉心へと絡み付き、
ピピッという電子音が運命の刻を告げる。

直後、ドゥという轟音を上げ機雷が連鎖的に起爆する。
爆発はドミノでも倒すかのように小気味よく異形を襲い、やがて最後の一撃が
緑色の輝き放つ胸甲を打ち砕く。
たちまちに閃光が広がり、緑色の煌きが溢れだす。

「やったのか……、でも、これじゃぁ」

今度は夢でも幻でもない。
眩いばかりの閃光の中、バーニィは大破した〝できそこない″が塵に還るまでの姿を、
スロー・モーションの映像のように、はっきりとその目に焼き付けた。
そしてやがて、輝きはケンプファーのコックピットをも焼き尽くす……。

「すまない、アル、約束は守れそうにない……」





105 ゲッターロボ0080 第三話11/13 :2011/10/30(日) 10:53:39 ID:L4yA9L8s0
――夢を見ていた。

大地を埋め尽くすMSの群れが、天へと昇っていく夢だ。
いずれもが正規の姿形ではなく、腕を、脚を、あるいは顔を、異形のパーツに組み替えている。
だが、その異形の兵器達の【表情】は奇妙に澄んだものであるように、バーニィには思えた。

不意に天空より落ちた雷鳴が、先頭の一機を焼き払う。
機体は音一つ上げず、蚊トンボのように尾を引いて堕ちて行く。
だが、周りの機体達は振り向きもせず、ただ天空の一点のみを見つめて飛んでいく。

矢継ぎ早に降り注ぐ落雷が、次々に異形のMS達を灼いていく。
それでも彼らは振り向きもしない。
ただ、バーニィのみが、堕ちて行く名も無き兵器の悲しみを想像している。

叫びたいが声が出ない。
手を伸ばしたいが、指一本動かせない。
目を逸らす事も出来ない。

何一つ状況も掴めないままに、大地に堕ちていく同胞を見つめるしかない、悲しい夢だった。

(……?)

どれほどの時が流れたのであろうか。
柔らかな光を感じ、ゆっくりと後背に視線を向ける。
最後に大地より昇って来たのは、一機のガンダムであった。

他の異形達とは明らかに異なる、白と青のトリコロールカラー。
奇妙なのは白のアンテナを頭部では無く、口元に髭のように備えている事。
その姿はかつての愛機、ザクの表情をどこか思わせる。

降り注ぐ雷鳴を恐れもせず、ガンダムが悠然と翼を広げる。
それはさながらオーロラの輝きのような、虹色に輝く巨大な蝶の羽。
立ち昇る姿はゆっくりと大きくなり、バーニィの視界を埋め尽くし、そして……。





106 ゲッターロボ0080 第三話12/13 :2011/10/30(日) 10:55:39 ID:L4yA9L8s0
「うわぁッ!?」

バーニィは見た!
機体のすぐ脇を通り過ぎて行く、巨大なガンダムの横顔。
それは夢でも幻でも無い、ガンダムはバーニィの存在を意に介さず、
天空目がけて一直線に駆け上ってく。
背中に広げた蝶の羽から、きらきらと輝く燐光が大地に降り注ぐ。

『おう、気が付いたか、ちっこいの』

コックピット内に響くハリのある声に、バーニィが反射的にモノアイを動かす。
モニターに映ったのは、年季の入ったマントを羽織った、寄せ集めのゲッターの姿であった。
同時に現在の状況に気付く。
どうやらバーニィは大破したケンプファーの中、このゲッターに抱えられる形で飛んでいたらしい。
そんなバーニィの様子を気にも留めず、ゲッターのパイロットが舌打ちする。

『ケッ、今度こそ決着を付けてやろうと思ったんだがな。
 あのヒゲ野郎が出てきたって言うんなら、花を持たせてやらぁ。
 ちっこいの、脱出するぜ』

「脱出って……、ちょ、ちょっと待ってくれ!?
 あれは、あのガンダムは一体何なんだ?
 アイツは一体、何をしようとしてるって言うんだよ?」

『……あいつはよ、この世界を完全に埋め戻しちまうつもりなのさ』

「世界を、埋め戻す……?」

ゲッターのパイロットに促され、バーニィが大地を見下ろす。
降り注ぐ光の粒がビルディングに、瓦礫の山に、MSの残骸にと纏わり付き、
砕け散っては砂へと還していく。

『ああやって地上一面に燐紛をバラまいて、文明の全てを砂に変えちまうつもりなんだ。
 ゲッター線に取り込まれた人類が、宇宙の全てを滅ぼしちまう前にな』

「文明を埋め戻すって、そんな……!」

今のバーニィには、男の言葉の全てを理解する事はできない。
だが、不意に胸中を襲った絶望感が言葉となって口を突いた。

「だったら、だったらコイツは現実の光景だって言うのか?
 ゲッター線と人類が出会っちまったら、遅かれ早かれ、
 最後はこの世界に行き尽くしかないって、そう言う事なのか?」

『あん? フザけんじゃねぇ! 人間がそんな捨てたモンかよッ!?』

男の突然の剣幕に、バーニィがハッと息を呑む。

107 ゲッターロボ0080 第三話13/13 :2011/10/30(日) 10:59:29 ID:L4yA9L8s0
『ムサシの奴は、ゲッター線のヤバさをお前に伝えて死んだんだ。
 だったら、お前が諦めさえしなきゃ、ムサシも人類もゲッターには屈してねぇて事だろうが?
 このクソったれな世界がイヤだってんなら、テメェの世界ぐらいテメェで救って見せろッ!』

「ムサシさんが……」

『……チッ、ガラにも無ェ事を、もういい、とっととズラかるぞ。
 これ以上は、お前の機体が持たねぇ』

そう言い終わるか否かの内に、ケンプファーを抱えたゲッターの周囲が、
金色のエナジーに包まれ始める。
奇妙な高揚感が、コックピットごしにバーニィの胸を突く。

「ま、待ってくれ!? あんた、話はまだ……」

『舌噛むぞ、黙ってろ。
 いくぜェ、ゲッタアァアァァー、シャアァイィィン……!』


――刹那、二つの機影が文字通り光りの矢と化して天空を駆け昇る。


強烈な衝撃と閃光の中、一つの【壁】を超えた感覚がバーニィを貫く。
溢れかえる輝きの世界で、様々な光景がバーニィを通り過ぎて行く。

宇宙を覆うゲッターの戦艦、光の翼、月の輝き、ぶつかり合う鋼の拳、鬼、そして神。
インベーダーと月面戦争、相打つ二機のガンダム、惑星を押し返すMS達の輝き。

世界は思う間もなくとめどなく流転を繰り返し、思考が追い付かない。
やがてその中で、一際輝き放つ世界がバーニィの前に現れる。

『熱い血潮も、涙も流さねぇ冷血野郎のトカゲどもッ!
 テメェらなんぞに、この地球は渡さん!』

「――! ムサシさんッ!?」

バーニィが叫ぶ。
ゲッター線がオーバーヒートを起した爆発寸前の機体の中、そこに武蔵はいた。
二人の視線がちらりと交差する。
不敵な笑みを浮かべたその瞳は、バーニィに先を促すように見えた。
こちらの存在に気が付いたのか、あるいはただの偶然か。

『貴様らの祖先を絶滅させたエネルギーの源だ、もう一度滅びやがれえぇぇ――ッ!!』

「ムサシさあぁぁん!」

バーニィの叫びはもはや届かない。
戦いの結末を見届ける術も無く、刻が再び加速し、世界が再び白色に包まれる。
閃光が視界を覆い尽くし、バーニィの周囲からノイズが消え去り、そして……!


――そして宇宙世紀0082。


バーナード・ワイズマンは、再びその世界で瞳を開けた。

108 ゲッターロボ0080 :2011/10/30(日) 11:02:37 ID:L4yA9L8s0
以上、投下終了です。
バーニィが無事UCに帰れたので、次回で終了の予定です。
チェーンマインを持ち上げた結果、アレックスの扱いが酷くなってしまいましたが
第二話と第三話の間に武蔵に倒されていたスカーレット隊よりはマシだと思ってください。

109 ゲッターロボ0080 :2011/11/26(土) 00:57:02 ID:0/fO4gJU0
最終話、投下します。

110 ゲッターロボ0080 最終話1/13 :2011/11/26(土) 00:59:28 ID:0/fO4gJU0
季節は巡る。

――宇宙世紀0082年、12月24日。

バーナード=ワイズマンはあの日のように、ただ一人、森林公園の一角に佇んでいた。
早朝らしいひんやりと澄んだ空気が、バーニィの頬を撫ぜる。
とはいえ暦の上ほどの寒さは無い。
宇宙に浮かぶ巨大な試験管【スペースコロニー】たるサイド6は、
回転運動による疑似重力とミラーを用いた採光により、設計段階より住民が住みやすい環境を想定している。

だがそれでも、吹き抜ける風の中に季節の移り変わりを感じるような気がするのは。
移民より80年以上もの時が流れてなお、人類が地球の重力に心を惹かれ続けている証しなのだろうか……?

人気のない早朝の森林を散策しながら、サングラス越しに土手の方向を顧みる。
あるいはそこに、ザクの整備をする自分と少年の姿があるのではないかと妄想したのだ。
そこが無人の窪地である事を確認し、安堵の息を吐く。

よくよく見れば、不時着の際に削り取られた大地の傷跡も、今やすっかり苔蒸し始めていた。
おそらく来年の今頃には、少年と歩んだ戦いの記憶と共に、すっかりこのコロニーから消え失せてしまう事であろう。

ついと歩みを変え、木立の中へと分け入る。
三年前と変わらぬ数少ない光景の一つが、そこにはあった。

盛土の上に、手頃な太めの枝で組んだ木製の十字架。
それはかつて、【ルビコン作戦】失敗の際、この地に逃げ込んだバーニィが作ったものであった。

背広のポケットより、煙草の箱を取り出して封を切る。
「何か欲しい物はあるか?」と問われ、わざわざ銘柄まで指定してやった時の連邦士官の顔を思い出し、思わず苦笑する。
一本抜き出し、ライターを探して内ポケットをまさぐってみたが、そこでやや考え直し、
結局、火は点けないまま墓前へと添えた。

「――隊長、報告が遅くなりました。
 〝出来損ない″は、俺が破壊した……、とまでは言いませんが、
 自分でも、できる限りの事はやったつもりです」

短い黙祷の後、念願の『報告』を終え、ほうっと息を吐く。
最後の夜に、虚偽を見抜かれた時の重荷が、幾分か軽くなったような気がした。

「――けれどもその後、一週間もしない内にジオンは負けちまって……、
 結局、俺たちやってきた事は、一体何だったんでしょうね」

今や、一年戦争の名で呼ばれるようになったかつての戦争。
叩き上げの軍人であった上官たちの戦いを思い、思わず眉間に皺を寄せる。

かつて、連邦の新型MSの奪取を目標に、サイクロプス隊がルビコン作戦を決行に移したのが、三年前の12月19日。
一年戦争全体の分水線となったソロモン要塞の陥落が、五日後の12月24日。
バーニィが【クリスマス作戦】と称し、コロニー内の連邦軍基地に再攻撃を仕掛けたのが、更に半日後の25日。
この時には、既に新型ガンダムの破壊など、戦略的には何ら意味を持っていなかった、と言う事になる。

ジオン公国の独立宣言を気に加速した刻の流れは、確かに異常なものであったが、
それでもあるいは、対局がもっと早くに伝達されていれば、と思わずにはいられない。
当時一介の新兵だった自分とは違い、叩き上げの軍人であった彼らには、もっとふさわしい戦場があった筈である。
少なくとも、無謀な作戦に捨て駒のように使われ、名前も公表できないまま、人知れず死んで行くような憂き目には……。

111 ゲッターロボ0080 最終話2/13 :2011/11/26(土) 01:01:23 ID:0/fO4gJU0
(……いや)

頭を一つ振るい、個人への侮辱を取り払う。
相手はあのシュタイナーと、百戦錬磨のサイクロプス隊なのだ。
作戦の無謀さも、自分たちが囮として使われていた事も、今のバーニィが知りえる程度の情報は承知していた事であろう。
全てを知っていて、その上で彼らは戦う道を選んだのだ。
成功の目が無い事を知りながら、それでもこのコロニーに戻ってきてしまったバーニィのように。

あれからバーニィは時おり考える。
もしあの時、全てを捨てて逃げ出していたら、自分はどうなっていたのだろうか、と。
あの時のバーニィは無力な新兵で、作戦が失敗した以上、当時の彼には出来る事など無かった。
客観的に見て、あの場面での彼の逃亡を責める事が出来る人間などいる筈がない。
ただ一人、彼の事を英雄だと信じていた少年を除けばだが……。

結局は、自身の心との折り合いの問題なのだ、とバーニィは思う。
もし、あのままコロニーを見捨てていたならば、少なくともその後の彼は、二度と心の底から笑う事は出来なかっただろう。
隊長も、ガルシアも、ミーシャも、きっと同じだったのではないか?
それぞれが、やるべきだと思った事を貫き、そして敗れた。
ならば、それ以上の詮索は無用であろう。
少なくともバーニィは、自分の行いを後悔していないのだから。
たとえ事敗れ、連邦軍の捕虜となり、今日には人知れずコロニーを去る身であったとしても、だ……。





112 ゲッターロボ0080 最終話3/13 :2011/11/26(土) 01:03:47 ID:0/fO4gJU0
「地球へ……ですか?」

――3日前。

宙ぶらりんになっていた己の処遇を聞かされ、呆然と顔を上げたバーニィに対し、
スチュアートと名乗ったベレー帽の連邦軍佐官は短い頷きで応じた。

「三日後、12月24日の特別便で、君にはこのサイド6を離れ、地球に降りてもらう。
 行き先はオーストラリア東部のトリントン基地だ。
 当面の間はそこで、新任のテストパイロット達にまぎれて生活してもらう事になる。
 準備、と言っても、大した手荷物はないだろうが、当日の午前中にはここを発てるよう用意を進めておいてくれ」

「…………」

「どうかしたかね? 何か質問があるなら聞くが?」

「あ、ああ、その……」

晴天の霹靂とも言うべき人生初の地球行き。
突然の提案に混乱する思考を整理し、やや、緊張した面持ちで、バーニィが本心を切り出す。

「三年前にこの基地を攻撃した時、俺は連邦の制服を着ていました、ですから……」

「――軍事裁判にかけられるとでも思っていたのかね?
 連邦はそこまでヒマではないよ、伍長。
 工作員と言っても、君は当時まだ徴用されたばかりに新兵で、部隊に編成されたのも
 作戦行動のわずか一週間ばかり前の事だったとの調べもついている、それに……」

と、スチュアートはそこで一旦言葉を区切り、やや複雑に顔をしかめ、続きを口にした。

「――それに、マスコミに提出されたテープの証言からも、
 君が連邦に害意を以ってザクを動かしたわけではない事も理解している。
 これ以上君をこの基地に拘束しておく理由は、既に無いのだよ」

「……あ」

その表情を見て、ようやくバーニィにも事態の推移が呑み込めてきた。
これまでの自分が、処遇未定のまま今日まで拘留されてきた理由も含めて。





113 ゲッターロボ0080 最終話4/13 :2011/11/26(土) 01:05:53 ID:0/fO4gJU0
――半年前。

宇宙世紀の暦の中で、実に二年ぶりに瞳を開けたバーナード=ワイズマンを待ち受けていたのは、
メディカル・センター内の一角を使ってのリハビリの日々であった。

後から聞いたところによると、かつての〝出来損ない"との戦いの最中、壊れたザクのコックピットから投げ出されたバーニィは、
頭部を打った衝撃で昏睡状態に陥り、そのままこの施設に運び込まれたのだと言う。

バーニィ付きの看護婦達の証言は、彼自身の記憶にある【クリスマス作戦】の顛末とは明らかに異なるものであったが、
どちらの言葉が正しいものであるかは、二年もの寝たきり生活で衰弱しきっていたバーニィ自身の肉体が、如実に物語っていた。

とにかく、バーニィは当面の間、まっとうな日常生活を行えるよう、肉体の回復に勤めねばならなくなった。
幸い体には大きな怪我は無く、鈍っていた筋肉の復活と共に、バーニィの行動範囲も徐々に広いものとなっていった。

ひとつ奇妙だったのは、予期していた連邦政府の取調べが無かったことである。
さすがに外出の許可こそ得られなかったものの、バーニィの周囲にはこれといった監視の目も無く、
この半年の間、彼はそれなりに快適なリハビリ生活を送ることが出来た。

自分がサイド6の住人達から【リボーの英雄】と呼ばれている事も、その内に耳にした。
クリスマス作戦が失敗した時のためにと、少年に託しておいたもう一つの保険。
ルビコン作戦の実態をバーニィ自ら証言したテープは、その後一体どうした事か、マスコミの手に渡ってメディアに公表されたらしい。

当時の中立協定を無視し、コロニー内で新型MSの調整を行っていた連邦軍と、
その新兵器を、核ミサイルでコロニー諸共焼き払おうとしていたジオン軍。
凄惨な一年戦争の争いの最中、ただ一人コロニーを守るために命がけの作戦に望んだ、名も無きジオン兵の証言は、
泥沼に咲いた一輪のヒューマニズムの花として賞賛され、その意識の回復も見込めぬ内から、
多くの助命嘆願署名が連邦政府に宛てて送りつけられたのだと言う。

(無論、コロニー内でのモビルスーツ戦の危険性を説き「核ミサイルを止めたいのなら初めから自首するべきだった」
 と言う主旨の正論も散見されたのだが、普段おおっぴらに連邦政府を批判できない当て擦りからか、
 バーニィを英雄視する風潮を止めるほどの力とはなり得なかった)

バーニィと少年の戦いはいつの間にか、当の本人が眠りこけている間に映画にまでなってしまったらしい。
『一流のドキュメンタリーを三流のハッピーエンドに貶めた駄作』などと酷評されたゴシップ誌を見るに至っては、
さすがにバーニィも苦笑せざるを得なかった。





114 ゲッターロボ0080 最終話5/13 :2011/11/26(土) 01:08:14 ID:0/fO4gJU0
(そう言う事か……)

ようやく全ての事情が繋がり、バーニィがひとり頷く。
目の前のベレー帽が言った、連邦はヒマでは無い、と言う言葉は、そのままの意味であったらしい。
もとより相手は、既に反抗の意志を持たないただの新兵である。
無駄な裁判や不必要な拘留で世論の評判を下げるような真似をする意味は無い。
バーニィにとっては元々はコロニーを守るために残したテープに、皮肉にも自分自身が救われた形と言える。
だが、それならば何故ここに来て、地球への移送なのであろうか?

「――戦争終結から間もなく三年、既に多くの捕虜達が帰国の途に着いている」

そんなバーニィの疑問の表情を察したのか、スチュアートが再び言葉を紡ぐ。

「日常生活を遅れるまでに肉体が回復した以上、我々にもこれ以上、君をここに留める理由は無い。
 本来なら君は、今日で釈放、と言う手はずになるべきなのだが……」

「?」

と、そこでスチュアートは再び一つため息をつき、憐れみ混じりにバーニィを見た。

「……ツイていなかったな伍長、君は少し名前を売り過ぎた」

それからベレー帽が口にしたのは、地球圏周辺を取り巻く勢力状況であった。

ジオンの降伏による一年戦争の終結より三年。
ジオン残党の多くが解体、ないしアクシズ方面へと落ち延びたことで、現在は一定の平和を得てはいるが、
それでも尚、一部の軍閥はゲリラ化して地球圏に留まり、抵抗を続けているのだと言う。

「無論、それらの活動に旧来の勢いは無いのだが、それだけにヤツらも必死だ。
 今後は利用できるものはなんでも利用してくるだろう。」

「……はぁ」
 
「――例えば、ジオン公国にとって不倶戴天の敵である、ガンダムタイプのMSを破壊した【英雄】が参戦したならば
 ヤツらにとっては格好のプロパガンダになるだろうな」

「――! ちょ、ちょっと待ってくださいよッ!
 俺があの時、出来損な……、ガンダムの新型とやり合えたのは偶然に過ぎませんし、
 それに俺は、今更になって戦争に加担するつもりは……」

「ジオンの残党に与するつもりはない、かね?
 だが伍長、残念ながらこの場合、君の意志や能力は問題ではないのだ。
 ヤツらからしてみれば、君の身柄と腕の良いパイロット、それにザクが一機さえ確保できれば、
 十分に【リボーの英雄】を演出することが出来るのだからな」

「…………」

「一たび連中の行動が活発化し始めたならば、このコロニーのセキュリティでは心許ない。
 理不尽な話ではあるが、今回の移送は君の命を守るためでもあるのだ。
 あくまでこの一件は、状況が落ち着くまでの仮の処遇だ。
 連邦の制服を再び着るのは窮屈かも知れんが、何とか承知しておいてくれ……」





115 ゲッターロボ0080 最終話6/13 :2011/11/26(土) 01:10:36 ID:0/fO4gJU0
「……シドニーは今頃、雪で真っ白、か」

空の果てにあるであろう母なる大地を見据え、バーニィが一人呟く。

想像する。

白塗りの連邦カラーのザクを駆り、新型ガンダムの当て馬を勤める【リボーの英雄】の姿。
わずかばかりの時間とはいえ、サイクロプス隊の一員であった自分。
彼らの生き様の証人である自分は、一体どこに誇りの置き場を作り、戦いに臨むべきなのか……?

更に今、バーニィの胸中を締め付ける課題がある。
それはともすれば、彼自身の小さなプライドの問題よりも、ずっと切実で深刻なものだ。


『お前の故郷を救え、バーニィ』


耳を澄ませば、今でも残響のように聞こえる、遥かな異世界で出会った戦友の声……。
夢ではない、幻でもない、何一つ証拠は無くとも、バーニィ自身がはっきりと身に滲みて覚えているのだ。
体を灼いたビームサーベルの痛み。
血と金属とオイルで満ちた、むせ返るような戦場の匂い。
おぞましいばかりの鋼の巨体より感じ取った死の気配。
臨界寸前の奇妙な静寂の中で聞いた、武蔵の息使い。

与えられた現実の中、全てをなあなあで済ませるわけにはいかない。
何故ならば、バーニィはかつて一度死に、そして【彼】の助けを借りて、再びこの世界に帰って来たのだから。

あれ以来、バーニィはそれとなく周りの人間に、中破した〝出来損ない"の顛末を尋ね回っていたが、
いずれも良い回答は得られずにいた。
本当に行方を知らないのか、あるいは知っていても、ジオンの虜囚である彼に真相を聞かせてくれるはずも無い。

(三年前、俺が破壊し損ねたガンダムの新型炉心、
 アイツは一体、どこに消えちまったって言うんだ……?)

あの時はただ、核を止めるのに精一杯で、想像する事すら出来なかった『本当の敵』。
それはただ炉心を探し出し、人知れず破壊してしまえば済むと言う問題ではない。
80年前より人類の住処となって久しき宇宙、その世界には、見えざるゲッター線の輝きが溢れているのだから……。

改めて思う。
自分に何が出来るのかと。

バーニィは科学者ではない。
ゲッター線の開発を統御できる役職の人間でもなければ、
プロジェクトに携わる事のできるテストパイロットでもない。
それどころか、今日には見知らぬ異国の地で、大きく行動を制限されながら生きねばならぬ虜囚であった。

(――それでも今は諦めず、自分に出来ることを、一つ一つ探していくしかない。
 あの時、死んだハズの自分が、今、再びこの世界に居る事に理由があるとしたら、
 それはきっと、アイツを止める為なのだから……)

116 ゲッターロボ0080 最終話7/13 :2011/11/26(土) 01:12:49 ID:0/fO4gJU0
ゆっくりと瞼をあけ、背筋を伸ばして十字架に向き直り、静かに敬礼する。
迷うべき事は既に無い。

「もう一度、必ずここに戻ってきます。
 その時はもっと、ちゃんとした手土産を持って……。
 どれ程の時間が掛かるかは分かりませんが、必ず」

顔を上げて踵を返し、振り返る事無くその場を立ち去る。
最後に口にした言葉を繰り返しながら。

(アル、お前との約束を叶えるのは、当分先の事になりそうだ。
 けれども約束は守る。
 今はまだポケットの中にしまっておくしかない、俺の中の戦争を終わらせたなら、その時は……)

不意に頭上より響いてきたクラクションの音に、バーニィが思考を中断させる。
連邦からの出迎えか、それにしては時間が早いし、そもそも正確な場所を知っているとは思えない。
訝しげにサングラスを外し、土手の高みを見上げる。

逆光の中、バーニィの瞳に飛び込んできたのは、見覚えのある洒落た一台のエレカ。
柔らかな赤の豊かな髪の女性が、じっ、とバーニィを見つめている。

「ああ……」

思わず感嘆がこぼれる。
友愛と、恋慕と、痛ましさと、言葉にならない想いが交じり合い、じんわりとした温もりがバーニィを満たす。

何故だか唐突にバーニィは、外出許可を求めた際のベレー帽の微妙な表情を思い出した。
「サンタクロースってガラかよ」と、一人口中で嘯く。

「バーニィ!」

助手席より飛び出してきたはちきれんばかりの叫びが、束の間の思考を打ち破る。
記憶にあるよりも遥かに背の伸びた、黒髪の痩せ型の少年。
震える両足で大地に立ち、不安げにこちらを見下ろしている。
バーニィの次の言葉を待っているのだ。

ゆっくりと、気付かれぬように深呼吸する。
心の動揺を悟られぬよう、静かに、偶然散策中に出会ったかのような何気無さを装いながら。
三年の重みを感じさせない軽やかさで。

「……やあ、おはよう。
 何だよ、少し見ない間に大きくなったな、アル」

陽光が、やんわりと三人の上へ降り注ぐ。
遥かシドニーの銀世界まで塗り替えんばかりの温もりが、
やがて少年の、凍りついた三年の月日をゆっくりと溶かし……。



「お帰りなさい、バーニィ」





117 ゲッターロボ0080 最終話8/13 :2011/11/26(土) 01:15:31 ID:0/fO4gJU0
―― オーストラリア大陸・トリントン基地 ――

鮮やかな夕焼けの中、一台の軍用ジープが、演習後の軽やかさを以って荒野を駆け抜けていく。
地平線が見える、とまではさすがに言い過ぎだが、大陸の演習場にふさわしいダイナミックな風景。
もっとも、これほどに広大な敷地を軍用に確保できたのは、連邦に潤沢な予算があるからではない。
一年戦争時、悪名高いコロニー落としにより、豪州はシドニー以下主要都市に壊滅的な被害を受け、その人口が激減していたのだ。
連邦の基地設営は、その事を逆手に取った新型兵器のテスト運用を目的とした物であり、
今日もまた、若者達の目指す格納庫の前に、一機のペガサス級戦艦が降り立った所であった。

「……ったく、コウ、お前といると本当に退屈しないね。
 焦らなくったって、新型は逃げやしないだろうに」

「だってさ、噂が本当だったら一番に見てみたいだろ」

コウと呼ばれた黒髪の青年が、無邪気な子供のように快活に応じる。
MS乗りに憧れて士官の道を目指し、実際にパイロットとして非凡な才能を見せる若者であったが、
性格的にはあるいは、一介のメカニックでも目指していた方が向いていたのかもしれない。

「そんな事よりキース、噂の方は当てになるのか?
 あのペガサス級が積んで来たのが、ガンダムタイプの新型だって……?」

「ん、ああ……」

コウに促され、助手席のキースが眼鏡を抑えて呟く。

「まあ、五分五分ってとこだろうが、割と信憑性はあるんじゃないか?
 何せ今回の艦には、サイド6からの技術者が多数乗り込んでるって話だったし……」

「サイド6?」

「何だよ、コウ、忘れちまったのかよ?
 ほれ、例のルビコン作戦ってヤツだよ」

「あ……」

言われてコウも思い出す、それは仕官学校時代の一コマ、
宿舎のロビーで見た、とあるジオン兵の証言を取り扱ったニュースであった。

118 ゲッターロボ0080 最終話9/13 :2011/11/26(土) 01:17:34 ID:0/fO4gJU0
――自分がジオン軍の特務部隊に所属している事。
――先日のサイド6における一連の戦闘は、連邦軍の新型MS奪取を目指した【ルビコン作戦】の一環であった事。
――ルビコン作戦には続きがあり、24日までに作戦が遂行できなかったときは、ジオンの母艦が核攻撃を敢行する手筈になっている事。

一切の感情が抜け落ちてしまったかのように、淡々と事実のみを伝えた、ある意味つまらないメッセージは
それゆえにコウに深いショックをもたらした。
なぜならばそのメッセージを残した後、自分と大して年の変わらぬその兵士は、
現地改修したザク一機のみを駆り、ただ一人、決死の戦いを挑んだのだから。

「このテープを託した少年は、行きがかり上作戦行動に利用された被害者です」そう締め括った最後の言葉のみが
終始淡白であった自供の中で、唯一切実なものであった。
敵であるジオン兵の中にも言いヤツはいる、そんな当たり前の事実を、コウはその日、骨の髄に至るまで、深く刻みこまれたものだった……。

「……一体、どんなヤツなんだろうな」

「ん〜? まあ、いくら秘密兵器って言っても、三年も前の型落ち品だからな。
 あるいはウチに配備されてるジムの方が、よっぽど強かったりしてな」

「え?、ああ、いや…… ま、いいか」





119 ゲッターロボ0080 最終話10/13 :2011/11/26(土) 01:20:33 ID:0/fO4gJU0
「これが、新型の……」

「へぇ、ガンダムタイプって言っても、トリコロールカラーじゃ無いんだな」

ハンガー前
で言葉を失ったコウに代わり、キースが安直な感想を述べる。
目的の地で二人を待ち受けていたのは、鮮やかなブルーに染まった鋼の巨体であった。

慣れ親しんだGM達よりも一回り大きい青のボディ。
既存のカタログに存在しないその機体が、果たしてあのガンダムの系統機と呼べるものかまでは判別がつかない。
確かに両眼のカメラアイや、口許を覆うマスクには、資料で見たガンダムの面影がある。
だが頭部のアンテナは有名なV字では無く、槍の穂のように鋭利な三又。
さらに、曲面を押し出した肩部や胸甲の盛り上がりは、見る者に鋼鉄の筋肉を想起させ、
既存の連邦製MSにはない強烈な個性を放っていた。
そんな中、両椀に収納された小型のガトリング砲のみが、元の機体の名残を残す唯一の兵装であったのだが、
サイド6での戦いの真相を知らない二人は、当然その事には気付かない。

「こらァ! そこの二人」

「!? やばっ」

背後からの怒声に、おそるおそるキースが振り返る。
彼方より両肩をいからせずんずんと迫るのは、まるでパースでも間違えたのではないかと言う大柄の、
ツナギ姿の褐色の乙女であった。

「その機体は調整中、正式な公開は明日の午後からよ。
 それと何、これからこのモーラさんを、素敵なディナーに誘ってくれるとでも言うのかしら?」

「ああ、いやぁ、そうしたいのは山々なんですが、僕たちも勤務の途中ですので……、
 ほれ、コウ、そろそろ行こうぜ」

「ちょ、ちょっと待てって! あの、モーラさん」

「……? なにさ」

訝しげな瞳を向けるモーラの前で、何やらぶつぶつと呟いていたコウが、意を決したように顔を上げる。

「この機体、胸部のスペースがやけに大きいように見えるけど、
 もしかしてコイツには、何か特別なエンジンでも積んでいるのか?」

「へ……?」

「やっぱり」

おもわずぱちくりと目を丸くさせたモーラを横目に、キースが口笛を鳴らす。

120 ゲッターロボ0080 最終話11/13 :2011/11/26(土) 01:22:41 ID:0/fO4gJU0
「参ったわね……、確かにこの機体に積んでるのは普通の核エンジンじゃないわ。
 アナハイム社でも研究中の試作機、プラズマ・ボムズの一号炉心を搭載しているのよ」

「プラズマ……?」

「ええ、あたしは学者じゃないから理屈は説明できないけど、
 カタログ上の出力は同型の核融合炉の一割増し。
 さらに核爆発の心配が無い事から、コロニー内での運用にも期待されている優れ物よ。
 まっ、実際の性能は、テストしてみてからのお楽しみってところね」

「へえ、そんな凄い物を積んでるのか」

「ええ、けれどもコイツはあくまでパートナー、
 本命はあくまで向こうの二号機よ。
 もっとも今はまだ炉心を収めてない〝出来損ない″だけどね……」

モーラのややうんざりとした口調に疑念を覚えつつも、視線の先を二人が追い掛ける。
これから整備に入る所なのであろうか、後背の機体を包み込んでいたシートがタイミング良く取り払われ……。

「うッ!」

そして、思わずコウは小さな呻きを零した。
彼の眼前に現れたのは、ディープブルーの外装に包まれた一号機とは対称的な、
血で染め上げたかのように鮮やかでおぞましい、深紅のガンダムであった。





121 ゲッターロボ0080 最終話12/13 :2011/11/26(土) 01:25:26 ID:0/fO4gJU0
――同時刻。

トリントン基地内の施設の一角では、厳重なセキュリティの施された鉄扉が押し開かる様を臨む、
三人の男女の姿があった。

「……ここを開けるのも、実に二年半ぶりかね、シナプス艦長?」

「心境的には漸く……、と言うよりも、とうとう、と言った感じですな、准将」

温厚そうな初老の男、トリントン基地司令・ホーキンズ=マーネリの問い掛けに、
シナプスと呼ばれた痩せ型の艦長帽が感慨深げに応じる。
一方、傍らの水色のスーツの女性はただ無言で、開きつつある扉の先を、ただ憂い気にじっと睨み据えていた。

「パープルトンさん、民間人の方がここに入るのは、あなたが初めての事ですよ」

「…………」

准将の世間話に対しても、ニナ=パープルトンは無言であった。
それは彼女の性格の問題でも無ければ、無論、初めての栄誉に感動して言葉が出ないわけでもない。
この時の彼女は、扉の先に待ち受ける存在を知るあまり、周囲の言葉に対応するゆとりを失っていたのだ。

ほどなく、ガコン、と言う音と共に扉は開ききり、
2メートル程の高さの透明な試験体が、三人の前に姿を現した。
一見するとガラス製の大型タンクのようなその代物には、大小さまざまな計器が取り付けられ、
久方ぶりに外気に触れる機会を喜ぶかのように、柔らかな緑色の燐光を内部で煌かせていた。

「この光……、准将、炉心は起動しているのですか!?」

「いや、アルビオンより運び込まれたあの日以来、一切手を付けてはおらんよ。
 ただ、技術者達の分析によれば、炉心に残存するエネルギーが反応して、
 時折このような輝きを放つのだそうだ。
 今日のように、宇宙線の観測値の高い夜には特にね」

「下手に破棄や解体も出来ないと言う訳ですか。
 それにしても、随分と物々しく蓋をしたものだ……」

「……あれからもう、三年近くも経っていると言うのに……」

科学の常識を通じぬ遺物の輝きを前に、ニナが俯きがちにか細い肩を震わす。
未知なるゲッター線への畏れを隠しきれない技術者の姿を、ホーキンズが横目で見やる。

「パープルトンさん、やはりあなたは今回の試験には反対ですか?」

「……三年前、リボーコロニー内での戦闘の折、
 この炉心はあわや暴走直前にまで陥り、一時的にですが、膨大な量のゲッター線が大気に放出されました。
 幸いその時は事無きを得ましたが、一たび誤ればリボー……いえ、
 サイド6という名称自体が、この宇宙より消滅していてもおかしくない程の事件だったのです」

端正な顔立ちを深刻に歪め、ニナがきっ、と顔を上げる。

「お願いします。
 マーネリ准将、今回のプロジェクトの中止、もう一度だけご再考下い。
 こんな事を言うのは技術者として失格かもしれませんが、
 私には、この炉心を制御する自信が無いのです」

本音を切り出し、淡い紅を差した口許が、わずかに震える。
元々彼女は、アナハイム社のエリート達の中でも指折りのシステムエンジニアであり、
それだけに仕事に対する思い入れも人一倍強い。
今回のように、与えられた仕事に対し降伏宣言をするなど、本来の彼女からは考えられる姿では無かった。

122 ゲッターロボ0080 最終話13/13 :2011/11/26(土) 01:28:15 ID:0/fO4gJU0
だが、彼女の仕事への情熱はあくまでも、自らの生み出したMSが秩序の構築に貢献する事を前提としている。
一たび暴走すれば核以上の悲劇を生みだしかねない新エネルギーの研究も、
そのテストとして、未来あるパイロット達をモルモットのように扱う事も、
彼女の矜持からは到底耐えられるものでは無かったのだ。

――長い沈黙。

小さな溜息を一つ付き、准将が訥々と口を開く。

「――個人的な見解を言えば、私もこの炉心を軍事運用するのには反対ですよ」

「准将! でしたら――」

「……ですがね、パープルトンさん、
 残念ながら人類はもう、こいつから逃れる事はできんのですよ」

と、そこで事態を静観していたシナプスが、
あくまで視線を炉心に向けたまま、二人の会話に割って入った。

「三年前、リボーで起きた一件はメディアを通じ世界中に流れ、
 今や一介の民間人ですら、あのコロニーで連邦が何らかの研究をしていた事を知っている。
 いずれは誰かが背後にあるゲッター線の存在に気付き、実用化に向けて動き出す事でしょう……。
 パープルトンさん、あなたはその先鞭を、
 軍内のタカ派連中や、宇宙にいるジオンの残党のような輩に執らせて良いと思いますか?」

「それは……」

「未知のエネルギーを取り扱う危険性は、十分に承知しているつもりです。
 ですが、なればこそ研究は、我々の手で進めなければならんのですよ。
 それがどのような性質を持ち、どうすれば制御する事が出来るのか?
 邪な者が、最悪の暴走事故を引き起こす前に……。
 言うなればこのプロジュクトは、真実を知った我々にとっての義務なのです」

「義務……」

シナプスの言葉を、口許で小さく反芻する。
ニナは軍属では無く、ゆえに本来ならば、シナプスの言葉を強制される所以は無い。
だが、この場合のシナプスの言う『義務』とは、そんな俗っぽい意味では無い。
例えるなら、たまたま決壊寸前の堤防を発見してしまった者のように、
あるいは明日、コロニーに核ミサイルが落ちる事を知った兵士のように、
良識ある人間が、悲劇的結末を回避するために負わねばならぬ行動について言及しているのだ。
それはもはや立場や役割、ましてや能力の問題ですら無かった。

覚悟を決めたニナが、こくりと頷いたのを横目に、シナプスは軍帽を目深にかぶり直すと、
心底申し訳無さそうに呟いた。

「たとえその為に、あなたが心血を注いだガンダム達全てを、犠牲にする事となったとしても……」 

ニナの背筋がぞくりと泡立つ。
シナプスの言葉に感応したものか、炉心はいつしか輝きを増し、静寂に満ちた室内を彩り始めていた。
もう一度、新たな肉体を得るその時を歓喜するかのように。

あたかもそれは、宇宙を駆ける生命の煌きのように幻想的で、
これから始まるであろう戦慄の夜には、まるで似つかわしくない光景だった……。

123 ゲッターロボ0080 :2011/11/26(土) 01:33:05 ID:0/fO4gJU0
以上、投下終了です。
うん、すまない、完結なんだ。
繋げるか繋げ無いかは最後まで悩んだが、ケンイシカワとのクロスである事を重視したと思って欲しい。
次回作があるならば、頭の悪いオリヴァー・マイがゲッターヅダの性能評価をする話とかも書いてみたい。
ではでは。

124 追い出された名無しさん :2011/12/26(月) 22:22:58 ID:50ty2rdw0
乙です!

こちらも、ネタですが投下します

125 ツーと一緒(原題『マヤーと一緒) :2011/12/26(月) 22:27:08 ID:50ty2rdw0
ツーと一緒     (原題『マヤーと一緒(新装版あずまんが大王三年生『NOVEMBER SPECIAL』)』)



隼人「・・・」
キーワード検索:ゲッターロボ
隼人「・・・ほぅ」
キーワード検索:ゲッター2

弁慶「隼人ー、何やってんだ?あ、コンピューターしてるのは分かるぞ。
  あぁ、てことはコンピューターしてんだな。今のは取り消しといてくれ」
元気「何言ってんですか」
弁慶「ん?」

グシャァァァ

弁慶「ああ、ゲッターが・・・」
元気「試作型のゲッターだよ。
   合体失敗?確かゲッター乗りの主な死因の一つが合体の失敗なんだよね」
隼人「・・・こいつは・・・」
元気「どうしたんですか?」
隼人「ゲッター2の兄弟機な気がする」
元気・弁慶「え?」

元気「いつの事故ですか?」
隼人「ゲッターGの修理が終わった翌日だ」
弁慶「昨日喰ったイカにしか見えねぇ・・・もしかしたら昨日喰ったイカがゲッター2なのかもしれないけど」
元気「それ大問題ですよ」
弁慶「かわいそうになぁ・・・別の形態ならいいけど・・・よくないけど・・・」
   武蔵先輩だったら・・・仕方ないけど・・・
隼人「・・・・・・」

隼人「おや? このあたりのゲッター指数が低い」
元気「うん、真ゲッターが来てからちょっとおかしいんだ」
隼人「そうか、以前この辺りにはシブすぎるゲッターがいたんだ。
   一度調べてみたかったんだが・・・」

126 ツーと一緒(原題『マヤーと一緒) :2011/12/26(月) 22:30:13 ID:50ty2rdw0

元気「隼人さーん!昨日持ち出した新型ゲッターの設計図だよ」
竜馬「あ?」
隼人「・・・ほぅ」
竜馬「なんだこのかわいく無さは。なんだお前、ゲッター作るのか?」
隼人「いや、博士がゲッター炉心を貸してくれないから・・・」プラズマ動力だけだ
竜馬「ああ、じゃあ仕方ねぇな」

竜馬「まぁいいじゃねぇか!作ってもどうせその時にゃ今より平和になってるだろうさ!」
隼人「このゲッターを造って、パイロットが見つかったら、
   組織を作ってゲッター線を使うゲッターを造ろうと思う」
竜馬「でも隼人、この間も回路ショートさせたからなぁ。
   人を乗せる段階になっても全然合体成功しなくて、
   有能な自衛官達が部屋の隅で脅えて震えてる・・・なんてことにならねぇといいんだけど」
隼人「・・・・・・」

隼人「それは有り得る・・・だがそいつはきっと優秀な・・・」
元気「プラス思考!プラス思考だよリョウさん!
   マイナスイメージを持たせちゃ余計危険だよ!!もっと犠牲者が増えちゃうよ!!!」
竜馬「しまった!!今のはウソ!ウソでしたー!!」

弁慶「そっかー、隼人がゲッター造りたいのかー。造ったら乗りに行くな」
隼人「何故だか知らんが三号機になら乗せてもいい」
弁慶「まぁ大丈夫!大丈夫だから!根拠はねぇけど!俺もきっと大丈夫だから!アバヨ!!」明日は実験だ!
隼人「・・・あれが三号機乗りの思考か・・・」俺は長生きしそうな気がする



翌日、ゲッタードラゴン暴走

更に数日後

127 ツーと一緒(原題『マヤーと一緒) :2011/12/26(月) 22:33:09 ID:50ty2rdw0

元気「・・・あ。廃棄されたプロトゲッターだ。沢山あるなぁ」


ガシャ

ギシャッ

ガシャンッ

隼人・元気「・・・」

元気「誰も乗ってないのに動いてる!?」
隼人「・・・・・・」

キシャァーッ

隼人「・・・アーク」
元気「アーク!?」
隼人「なんだかよくわからないが―――博士が厳重に封印していた奴だ」研究用に俺が封印を解いた
元気「ええ!?」
隼人「俺が強引に解析しようとすると必ず噛み付いて来るんだ」
元気「強引にやっちゃ駄目だよ!だからゲッター線に嫌われてるんじゃないの!?」

元気「あーっっ!!ゲッター線には人間を蕩けさせる力があって!
   ゴロツキたちが自分を選ばれた者とか言い出したりして!!!
   女の人達が冒頭から凄くひどいことされて!!」
隼人「元気は俺が解析し放題の間に逃げて・・・」
元気「まだ懲りてないの!?」

グワァァァァァアアアアア!!!!!!!!!

元気「わーっ!!」


ザッ…


隼人「!」
元気「!?」

隼人「ゲッター2!?」

128 ツーと一緒(原題『マヤーと一緒』) :2011/12/26(月) 22:40:53 ID:50ty2rdw0

ギャァァァウウウウ!!!!!!!!!

元気「凄い!先輩風を吹かせて追い払った!!」
隼人「・・・ゲッター2・・・」

ガクン

隼人「無人だと!?」
元気「またゲッター線が暴走したのかもしれないよ! 最近お父さんが引きこもってる部屋が近いからそこに!!」

博士「やぁ元気・・・久しぶりだな。近いうちにスバラしいものが見えるぞ」
元気「あ、うんそれは楽しみだよ! それよりこの現象は!?」
博士「なに・・・単なる試運転だ。これは第一段階の一歩に過ぎぬ」
隼人「え?」

博士「それよりあれは特に変わった現象だな。まるで隼人を守」
隼人「新機能です」
博士「・・・」
隼人「俺が付け加えた新機能です」
博士「・・・そうか、新機能か。そうなのか、元気?」
元気「はい、しんきのうです」
博士「そうか、なら持っていけ。大事にな」
隼人「・・・失礼します」

元気「どうやって動いたんだろうね。操作記録が誤作動を起こしたのかな」
隼人「・・・」
元気「それとも、弟(兄)分がいなくなって、隼人さんを捜しにきたのかな」

隼人「俺がこいつの乗り手になる。
   何十年経った後でも戦えるよう、育ててやる」

隼人「・・・そしていずれ、炉心搭載型の兄弟も造ってやる」
元気「まだ全然懲りてないの!?」

元気「でも、置いておく場所が・・・」元々殆ど蕩けてたから・・・
隼人「・・・」
元気「そうだ、研究所廻りの山に空洞を掘ればいいんだ」

元気「試作ゲッターのパワーに限界を感じたら持って行ってください」
隼人「法律とかいいのか」
元気「何を今更」
隼人「・・・そうだ、俺はやはりこいつが・・・」
元気「ゲッター2も、これからずっと戦っていくのかなぁ?」
隼人「・・・ゲッター2、共にゲッター線地獄の果てまで行こう」
元気「隼人さんも!?」


終わり

129 追い出された名無しさん :2011/12/26(月) 22:47:22 ID:50ty2rdw0
本来は飛焔の妄想だった・・・


どうしてこうなった

130 降臨 1/14 :2012/01/01(日) 23:20:17 ID:clnv6oXc0
竜馬「ゲッターで隕石を迎撃しろ、だぁ?」
早乙女「そうだ」
今回早乙女博士が出した命令は今までには無い物だった
隼人「そりゃ一体どういうことだ」
ミチル「どうもこうもないわよ、観測された結果隕石がこの研究所目がけて降ってくることが分かったのよ」
弁慶「で、そいつを俺達に?」
早乙女博士が頷く
隼人「その隕石はどれくらいの規模なんだ?」
弁慶「そうだぜ、いくらゲッターでもでかすぎりゃ手に負えん」
早乙女「心配するな、ゲッターで十分迎撃出来る程度の大きさだ」
竜馬「へっ鬼の相手ばっかでちっとばかし退屈してたところだ、やってやろうじゃねえか!」
早乙女「迎撃に失敗すればお前たちはおろかこの研究所全てが吹き飛ぶ」
ミチル「頼んだわよ三人とも」

131 降臨 2/14 :2012/01/01(日) 23:21:12 ID:clnv6oXc0
三機のゲットマシンが勢い良く出撃する、そのまま上空を目指し―――
竜馬「チェェェンジゲッタァァァアゥワンッ!ゲッタァーウィーングッ!!」
合体を果たしたゲッターロボはその赤い翼で更に更に空高く昇っていった
やがてゲッター1の遥か上空に光る物体が現れた、それは徐々に大きさを増して向かって来た
隼人「竜馬!」
竜馬「来やがったか、いくぞっ!!」
隼弁「おうっ!!」
三人「ゲッタァァァァアビィィィイイムッ!!!」
ゲッターロボの腹部から放たれたゲッタービームは寸分違わず隕石へと向かい炸裂する
その一撃で大爆発を起こした隕石は巨大な火の玉と化した
竜馬「意外とあっけねえな、退屈凌ぎにもなりゃしねえ」
弁慶「ん?おい何だありゃ!」
ゲッタービームにより吹き飛んだ隕石、その異変に弁慶が気付いた
その炎が徐々に爆発の中心へと集まり”何か”の姿を創り始めている、そして―――

132 降臨 3/14 :2012/01/01(日) 23:22:07 ID:clnv6oXc0
竜馬「なんだありゃ…」
隼人「竜…か?」
弁慶「おいおい…」
呆気にとられる三人の前にそれは姿を現した

全身を隙間なく覆う黄金の鱗、二股に伸びた尾、その身体を支えるに相応しい太い二本の脚、空を覆うような巨大な翼、ゲッターロボの二倍はあるであろう巨躯
そして最も目を引く長くしなやかな三本の首、その先には卑しい鬼とは一線を画す金細工のような角を持った竜の顔の異形
それはまさに怪獣と呼ぶべき存在だった

133 降臨 4/14 :2012/01/01(日) 23:22:46 ID:clnv6oXc0
コロロロッキリリリッ!!
その怪獣は一声鳴くと中央の首の口を開きいきなりゲッター1めがけ光線を放った
竜馬「くっ!オープンゲェット!」
隼人「奴さんはどうやら友好的じゃないらしいな!」
弁慶「うぉぉおっ!?」
三機に分かれ今までゲッターロボがいた空間を稲妻状の光線が走る
間一髪回避に成功した三機のゲットマシンは地上へと急ぎ体勢を立て直そうとした
だが怪獣も翼を羽ばたかせ、その巨体に見合わぬ速度で追撃する

ゲッターチームが遭遇した相手は地上の早乙女研究所でも確認されていた
ミチル「あんなのが…あんな怪物が宇宙にはいるっていうの…?」
早乙女「やはり人類の脅威は鬼だけではなかったか…」

134 降臨 5/14 :2012/01/01(日) 23:24:01 ID:clnv6oXc0
竜馬「チェェンジゲッタァーワンッ!」
一足先に地上へ戻り合体したゲッターロボは追って来る脅威を見上げる
竜馬「トマホークブーメランッ!!」
先手必勝とばかりにゲッター1の肩から巨大な戦斧を引き抜き、怪獣へと投げつけた
だが大振りな軌道のトマホークは難なく怪獣にかわされ、更に先程と同じ光線で粉々に砕かれてしまう
隼人「あの光線に当たればただでは済まんな…!チェンジゲッタァーツウッ!!」
ならばとばかりにゲッター2へと変形し、その勢いのままドリルを構え敵へ突っ込む
隼人「ドリルストームッ!」
ドリルの高速回転によって生み出される竜巻で動きを止めそのまま貫こうという算段だ、だが
隼人「なにっ!」
怪獣は翼を大きくはためかせ突風を生み出し竜巻を相殺してしまう
弁慶「あんなナリなら水の中じゃ動きにくいはずだ、湖へ放り込んでやる!チェンジゲッタァスリィ!!」
ゲッター3へ変形すると同時に両腕を長く伸ばし怪獣の脚をしっかりと掴んだ
怪獣は身を捩り外そうとするがゲッター3のパワーにはなかなか打ち勝てない
ゲッター3は怪獣を離さず浅間山の斜面を勢い良く降りていく
怪獣もその翼を広げ逆らおうとするが、麓近くまで来た時
弁慶「大雪山おろしぃいいい!!」
その力に任せゲッター3は怪獣を回しながら思い切り湖の中へ抛り込んだ
さらにゲッター自身も湖の中へ飛び込み追いかける
水底はもうもうと泥が舞い上がっているが相手は金色の巨体、すぐさま発見し攻撃を仕掛けた

135 降臨 6/14 :2012/01/01(日) 23:25:23 ID:clnv6oXc0
弁慶「ミサイルストームッ!」
発射されたミサイルが怪獣へ集中する、その全てが炸裂するかに見えたが
弁慶「なにっ!」
隼人「バリヤーだと!?」
怪獣はエネルギーの障壁、バリヤーとでも呼ぶべき光り輝く壁を自身の前に作り出しミサイルを全て凌いでしまった
さらに悪いことに怪獣は翼を使い空中に負けず劣らずの速度でゲッターへ向かい
真正面から光線を吐いた
光線の直撃を食らったゲッター3は水中から空中へと巻き上げられ、その装甲を爆発が襲う
三人「ぐううっ!!!」
頑丈なゲッター3故その被害はまだ軽い方だった
しかし、爆発で陸へ吹っ飛ばされ未だ体勢を立て直せていないゲッターロボを、水中から飛び出した怪獣が全体重をかけて踏み付ける
弁慶「こなくそぉっ!」
怪獣の脚の下で軋みをあげていたゲッター3だが渾身の力で押し返し、出来た隙間を逃さずオープンゲットで脱出する
それと同時に下にあった物が無くなった怪獣は踏み付けの勢いによって脚を地面にめり込ませた

136 降臨 7/14 :2012/01/01(日) 23:26:29 ID:clnv6oXc0
竜馬「チェェェンジゲッタァーゥワンッ!」
その機を逃さずゲッター1に変形すると引き抜いたトマホークを未だ抜けない脚に叩きつけようとする
が、怪獣は自分の足元に光線を放ち爆発を起こして空へと脱出しながらゲッターの目を眩ませた
竜馬「煙幕だと!知恵のある真似するじゃねえか」
弁慶「あの光線は一体何なんだぁ?」
隼人「おそらく反重力で物をとらえ爆散させる重力に作用する光線、言わば引力光線か、来るぞっ!」
土煙を切り裂き隼人の言うところの引力光線が飛んでくる
ゲッター1は空中へと飛び上がりそれを避けると、真正面にいた怪獣と対峙する

137 降臨 8/14 :2012/01/01(日) 23:27:24 ID:clnv6oXc0
先に動いたのはゲッターロボだった
竜馬「うぉおりゃぁあっ!!」
いくつもの敵を切り裂いたそのトマホークを構えるとゲッター1は一気に突っ込んでいく
怪獣も動き出しゲッターへと飛び、双方あわやぶつかるかという瞬間
互いに身を捻り相手に一撃を加えつつすれ違った
ゲッタートマホークは確かに敵の身体を捉えた、だがその斬撃は厚く堅い鱗に阻まれ僅かな傷しかつけられず
逆に怪獣がその翼のカギ爪から放った薄赤色の光線を浴びてしまい大地へと落下した
落下の衝撃によって先程とは比べ物にならない土煙が舞い上がる地上へ怪獣はここぞとばかりに三つの首から引力光線を吐きまくる
引力光線の雨がやみ晴れてゆくのを待って土煙の中から飛び出したゲッター1は、一瞬の油断を突いて一気に怪獣に組みついた
力任せに首をへし折ろうとするがその長い首はしなやかに動かすために強靭な筋肉に包まれている
折れぬどころか逆にゲッター1が巻きつかれ三本の首で締め上げられてしまった
さらに各々の頭でゲッターに喰らいつき鋭く尖った牙で装甲を破るとそこから電撃を流し込んでいく
ゲッターの各部から小規模な爆発が連続して起こる、これによりゲッターは今度こそ力尽き地上に落ちていった

138 降臨 9/14 :2012/01/01(日) 23:29:13 ID:clnv6oXc0
竜馬「ぐうっ、なんとかならねえのか!」
隼人「あの翼が厄介だな、あれがある限り奴の動きは止められん」
弁慶「でもバリヤーで攻撃が防がれるぞ!!」
隼人「いくらバリヤーでも防げないものもあるはず、現にトマホークは奴の身体に傷を付けた」
弁慶「俺たちの中ででかい質量兵器というと…」
隼人「ゲッター2のドリルとゲッター1のトマホークだな、後はいかにそれを当てるかだ」
竜馬「任せときな!しっかりとあの隕石野郎にお返ししてやる!弁慶、おめえも頼んだぞ」
弁慶「おおう!やってやらぁ!!」
怪獣は眼下に力尽きた敵をどの様に仕留めようと考えているのか攻撃の手を休めていた
だが再び立ちあがったゲッター1の姿を認めると身構えた
竜馬「ダブルッ・トマホォオオクッ・ブゥゥメランッ!!」
ゲッター1は両肩から一本ずつ戦斧を引き抜くと時間差をつけて怪獣に投げつけた
一本目はやはり難なくかわされる、だが一本目に隠れ同じ軌道で飛んできた二本目は予想外だったらしく
さらに避けようと身を捩ったが回転によって破壊力の上がったトマホークによって片方の尾が切断された

139 降臨 10/14 :2012/01/01(日) 23:30:10 ID:clnv6oXc0
斬られた尾が落下していく
それによって怪獣の怒りに火がついたのか今までよりも速い引力光線の一筋が尾を切断したトマホークを粉砕する
仕留め損ねたトマホークに首の一本を向けつつも再びゲッターの方へ怪獣が注意を向けると、そこにはすでに変形を終えたゲッター3がいた
弁慶「ミサイルストォオオムッ!!」
先程のようにゲッター3はミサイルの嵐を浴びせた、怪獣も同じくバリヤーでそれを防いでいく、しかしゲッター3は撃ち続けるのをやめなかった

140 降臨 11/14 :2012/01/01(日) 23:31:12 ID:clnv6oXc0
その時、怪獣は己に接近する物を発見し迎撃しようとした…が今はミサイルの攻撃を受けている
それを防ぐためにバリヤーを展開しているため攻撃に移れず、また避けようとバリヤーを解くとミサイルの追撃を受けてしまう
絶対に動けない状況、そこへ戻ってきたトマホークは容赦なく怪獣の翼に深い傷を残した
ミサイルの嵐も着実にバリヤーにダメージを与えているらしく、その表面には全体に亀裂が走っていた
ミサイルを撃つのをやめたゲッター3はゲッター2へと変形し
隼人「ドリルアタックッ!」
その左腕の巨大なドリルを空中で体勢を崩した怪獣の翼のめがけ撃ち出す
怪獣はバリヤーと翼の光線でそれを落とそうと試みる
バリヤーにドリルが衝突した、雨霰と浴びせられる光線もその勢いは殺せず
ガラスを砕くようににバリヤーを破り怪獣の翼に大穴を開けながら貫いていった

141 降臨 12/14 :2012/01/01(日) 23:32:22 ID:clnv6oXc0
尾の片方は千切れ、両の翼はボロボロ、鱗もところどころ剥がれ満身創痍といった姿だった
それでも怪獣は敵を倒そうと最後の攻撃を仕掛けようと、三つの口にエネルギーを溜め、翼を一層大きく広げる
竜馬「チェェェェエンジゲッタァァアッゥワン!」
もう一度ゲッター1へと変形しこちらもゲッタービームの準備をする
ゲッタービームを、引力光線を両者は一気に相手へ放つ
薄赤いビームと黄色い光線が真正面から激突した
互いに押し押されと一進一退の状況が続く
執念か、怪獣は三本の引力光線を束ねると一つの渦にして威力を上げた光線をゲッタービームにぶつけた
その威力により一気に押されるゲッタービーム
あと少しでゲッターロボが光線に飲み込まれる

142 降臨 13/14 :2012/01/01(日) 23:34:07 ID:clnv6oXc0
隼人も弁慶も、早乙女研究所の者もそう思った、だが
竜馬「三対三なら数は同じだ、負けるんじゃねえ!!」
竜馬が吼えた、それによってゲッターチームが気合を入れる、三つの心が一つになる
三人「うおおおおおおおおおおおおぉぉっ!!」
ゲッタービームの出力が爆発的に上がり、相手の光線を逆に飲み込んでいく
金の輝きを纏い渦を巻いたゲッタービームは怪獣へ真っ直ぐに伸びていき、大爆発を引き起こした
その爆発は怪獣を鱗一枚残さず消し去っていく、爆炎から三方向に飛んだ稲妻は断末魔だったのだろうか

隼人「博士、結局あれは何だったんだ」
早乙女「宇宙にはまだまだ未知の脅威がいるということだ、もしかしたら鬼の次の敵はああいう存在なのかもしれん」

しかし早乙女博士の予想に反し、地球に怪獣は二度と出現することはなかった

だが

斬り落とされたはずの怪獣の尾は独りでに動き、静かに浅間山の地下深くへ、ゲッター線の坩堝へと潜っていった…

143 降臨 14/14 :2012/01/01(日) 23:35:52 ID:clnv6oXc0
遥か未来、そこにはゲッターに抗う為、たった一人ゲッターロボを駆り戦い続ける竜馬の姿があった

そしてその前にそれは再び姿を現す
開かれた地獄の釜に飲み込まれたことが彼を変えたのだろうか
かつて黄金の輝きを持った鱗は金と黒の混ざった分厚い表皮へ、脚は四つに増えその身体をさら巨大にし
角は捻じれ伸び、赤い眼へ変わったその顔はゲッターへの憎悪を剥き出しにした禍々しさを持っていた
もはや面影は三本の首くらいしか残っていない、だが竜馬はその怪獣をかつて戦った相手だと確信していた
グルルゥッ…
怪獣は低い唸り声をあげ一度己を滅ぼした相手、ゲッターロボを睨み据える
だが竜馬も負けじと吼える
竜馬「ここまで追って来るほど骨のある奴がいるたぁな、いいぜ、何度でも相手になってやる!!」
ゲッターロボは肩から戦斧を引き抜き、怪獣は口内にエネルギーを溜め込む

二頭の”竜”が今ここに、再び激突した



144 追い出された名無しさん :2012/01/01(日) 23:39:37 ID:clnv6oXc0
初めて投下してみました
新ゲッターロボとギドラの対決を書いてみようと思ったけど
SSを書くのは難しい事だと改めて思った

文体、キャラなど問題点は多々あれど
一番の失敗は行と行の間を空けなかった事です・・・

145 <削除> :<削除>
<削除>

146 追い出された名無しさん :2012/01/18(水) 18:09:48 ID:trgz/ZkE0
鯖落ちてる?

147 追い出された名無しさん :2012/01/26(木) 04:12:21 ID:gBIf.2Cc0
投下します。
俺の屍を越えてゆけ(リメイク版)とのクロスです。

148 剣の行方は? 1/9 :2012/01/26(木) 04:15:02 ID:gBIf.2Cc0
【○×年 一月】

本日、かねてより刀鍛治の剣福殿に依頼していた業物が当家に届き、それを嫡男へと託した。
刀身には一族の悲願である、朱点打倒の祈願を込め『童子斬丸』の銘を刻んである。
ようやく立ち上がれるようになった幼子に初めて与えるのが玩具では無く、
鬼を斬るための得物であるなど、並の親であるならばさぞ眉を顰める事であろう。
だが、惜しむらくは我らの一族には、人並みの幸福を享受する時間が無い。
今はただこの一振りが、倅の未来を切り開く一助にならん事を願うのみである。



【○×年 十二月】

先代の法要を終え、久方振りに双翼院への出陣を行う。
四代目当主として初めて指揮を執り、院内にて六体の鬼を斬るも、
それ以上のめぼしい戦果を挙げる事は叶わなかった。
「この剣には、携えし者の魂が宿る」と、亡父が事ある毎に語っていたことを、今更のように思い出す。
今はまだ、剣は何も応えてはくれない。
一人の武芸者として、そして一族の当主として、
先代の名に恥じぬように、精進を積み重ねていかねばなるまい。



【×△年 八月】

会心の一撃!
今日の朱点童子打倒選考会において、当家は抜群の働きを挙げ、陛下より格別の恩情を頂戴した。
勝負の明暗を分けたのは、我が童子斬丸の一太刀であった。
だが、一方で都に上れば、中傷の類も度々耳にする。
曰く「当家の剣士の上げる戦果の数々は、先達の磨き続けた宝刀の加護があればこそ」云々云々。
まったくもって洒落臭い!
先代の加護が俺を支えていると言うのならば、その力で鬼どもを斬りまくって、
やがては俺の剣名で以って、この刀の銘を天下に轟かせてくれようではないか。



【×○年 二月】

亡き兄様の形見分けの折、一族の神刀、童子斬丸を拝領した。
代々当家の嫡男に引き継がれてきたこの一振りが、傍流の私に託されたのは、
兄様の戦死により、直系に剣士の血が途絶えてしまった事に依る。
いざ手にした憧れの剣は、兄様が嬉々として語っていた印象よりも、遥かに重く、禍々しい。
刀身を震わす亡者の嘆きが、平時でもこの身を苛まんばかりである。
イツ花が言うには、この剣は敗走のおり、鬼の大将の呪いを浴びてしまったのだと言う。
剣に再び輝きを取り戻すには、彼の怨敵を倒し、その仇を雪がねばならないのだ、と。
一族の皆が、呪われしこの身を気遣うが、しかし今の私には、この痛みこそが救いなのだ。
刀より響く怨霊の声は、兄様の怒りであり執念だ。
死して尚、あの人はこの剣と共に戦っている
この剣が傍らにある限り、私はまだ、あの人と共に戦えるのだ。
私もいずれは、この剣の贄となる、そして、その時は。

149 剣の行方は? 2/9 :2012/01/26(木) 04:16:42 ID:gBIf.2Cc0
【△×年 九月】

親王鎮魂墓最深部にて、七ツ髪を打倒。
これにより、残す髪はあと三匹となる。
神刀継承の折、イツ花が素っ頓狂な声を上げた理由も、今宵、身を以って知った。
輝く刀身より燃え上がる紅蓮の炎は、先代が仇敵『赤猫お夏』を討ち果たし、
一族の仇を雪いだ折に、新たな加護を得たものだと言う。
先代ばかりではない、剣に宿る輝き、胸を焦がさんばかりの高揚感は、
当家歴代の剣士達が研鑽を積み重ねてきた証だ。
携えた剣が、困難なる道程をいつだって照らし出してくれる。
この家に生まれてきて本当に良かったと、僕は心の底から言える。
この素晴らしい人達と共に戦えた誇りを、僕の生涯忘れまい。



【△○年 三月】

本日、一族の者達が黄泉坂に旅立つのを見送る。
この大事の時に役目を果たせぬ我が身が恨めしいが、胸中に不思議と不安は無い。
今朝方見た、子供たちの自信に満ちた表情がありありと瞼の裏に蘇る。
若い力は永劫の呪いの連鎖の果てに、ようやく雄飛の時を迎えようとしている。
彼らならばきっと、朱点童子打倒の宿願を果たし、今生の無間地獄に終止符を打つ事が出来るであろう。

ただ、今一つだけ、気になる事がある。
歴代当主によって代々継承されてきた御神刀・童子斬丸の事だ。
まっすぐに刀身を見つめる少年の、あの奇妙に煌いた瞳が、頭の隅にこびりついて離れないのだ。
それが今は亡き先代、大叔父の瞳の色にそっくりであった事を、今更のように思い出す。
そのように考えると、ぽつりぽつりと疑念も沸いてくる。
例えば、刃に宿る多様な神通力もそうだ。
イツ花は加護などと言葉を濁していたが、恐らくはそんなに生易しいものでは無い。
あれは間違い無く、斬り捨てた鬼の力を、刀自体が取り込んでいるのだ。
のみならずあの剣は、所有者の力量までを取り込んで、一層に輝きを増していく。
それはあたかも、神々との禁忌を繰り返しながら血の濃さを増していく、我が一族の縮図のようですらある。

もし、今一度この身が動くならば、剣を生み出した剣福殿に問い質す事も出来ようが、
我ながら、気付くのが一手遅かったようだ。
一族が無事に朱点を討ち果たしたならば、この身を苛む呪いからも開放されるのだと言うが、
残念ながら、全ての真相を探るのは、次の世代への課題となりそうだ。





150 剣の行方は? 3/9 :2012/01/26(木) 04:17:59 ID:gBIf.2Cc0
「この日が訪れる時を心待ちにしておりました、……殿
 やはり血は争えませぬな、こうしていると、あの御方に剣の依頼をされた時の光景が
 ありありと蘇るかのようでございます」

「私の来訪を……?
 それならば、私の用件も分かっておられるのであろうな、剣福殿」

「……その前に、まずは一度、
 童子斬丸を検めさせては頂けませぬか?

 ……おお! 何という凄まじい輝き。
 よくぞ、よくぞこれほどまでに研鑽なされた。
 これほどの輝きあらば、失われし御神器の代わりに、存分にお役目が果たせまする」

「……? 剣福殿。
 一体何の話をしておられるのだ?」

「いやはや、失礼致しました。
 あなた様が知りたいのは、この剣の由来でございましょう?
 それならばまずは、この剣の生まれし場所にご案内仕ろう」





151 剣の行方は? 4/9 :2012/01/26(木) 04:19:32 ID:gBIf.2Cc0
「全く知らなかった。
 都にほど近い山中に、まさかこのような遺跡が眠っていようとは」

「遺跡ではございませぬ。
 これはかつて、古の民が作り出した戦船の名残でございます」

「船? 海はおろか、湖も沢すらも無いこの山の中に?」

「水の上を行く船ではありませぬ。
 この船はかつて、星々の大河の間を往くために建造された代物なのです」

「まさか」

「私の言葉が嘘かどうかは、この扉の向こうに行けば分かりまする」



「……! こ、これは、何と面妖な……!?」

「落ち着きなされ。
 これなるは実体ではなく、遥かな空の果てで繰り広げられている戦いの一部を写した
 立体映像に過ぎませぬ」

「映像? それは例えばそれは神々の使う幻術や、遠見の術の類、と言う事か?」

「根源的な原理としては同じです。
 ただし我が一族の技術はは神々の奇跡ではなく、
 船に用いた唐繰りの働きを動力としております」

「我が一族?」

「さ、どうぞこちらへ……
 あなた様の知りたがっていた剣の秘密は、この通路の先にございます」

152 剣の行方は? 5/9 :2012/01/26(木) 04:20:55 ID:gBIf.2Cc0
「このまやかしは、今なお空の上で続く戦いの一部と、
 確かそう仰られたな、剣福殿。
 見たところ、片方の神々だけが一方的に打ち破られているようだが……」

「その、敗れていく勢力の方が、我々の同胞です」

「何故だ? なにゆえ彼らはこのように勝ち目の無い戦いを……?
 いや、彼らにこれほどの出血を強いる【敵】とは、一体何者なのだ」

「分かりませぬ。
 ただ一つだけ言えるのは、星々の間を飛び回れるほどの実力を持った神々が集まって尚
 その正体を掴めぬほどに彼奴等は強い、と言う事のみです」

「…………」

「例えば、幼子が力任せに積み木を崩す行為に理由を見出せぬように、
 奴らもまた確たる理由も無く、単なる衝動のままに、
 天地の全てを無に帰そうとしているのやもしれませぬ。
 いや……、あるいはそう言った存在こそが、本来の意味での【神】なのかもしれませぬな」

「愚かな事を……」

「そう、愚かな事です。
 ゆえに我らは一命を賭し、何一つ勝機の見えぬ戦に身を投じているのです……

 ……余談が過ぎましたな。
 さて、ようやく着きました。
 その剣の起源は、この扉の奥に封じておりまする」





153 剣の行方は? 6/9 :2012/01/26(木) 04:23:10 ID:gBIf.2Cc0
「これは……、鉄の神体か!?
 鎮魂墓に封じられていた土偶器に似ているようだが
 しかしこれは、なんと雄大な」

「これがかつての戦いで、私の用いていた兵器です。
 神々の奇跡ではなく、大気に満ちた【ゲッター線】を動力源としています。
 尤も現在では既に大破し、まともに動かすことも適いませぬが」

「げっ、たぁ……?」

「天空より降り注ぐ、ある種の意志を持った光の事です。
 少量浴びても、直接的な害はありませぬが、
 生命の根源に働きかけ、様々に成長を促す効果があると考えられております。
 例えばそれは、妖術や神通力の類として発露したり
 あるいは寧猛な爪や牙、角と言った形に顕れて、様々な異形を生み出したり……」

「……随分とまわりくどい言い方をする。
 つまり、お主の言を借りるならば、
 八百万の神々も魑魅魍魎も、太古の昔に降り注いだ光を起源にしているという事か?」

「あくまで可能性としての話でございます。
 けれども、鬼共の多くや彼の神々が、
 その身に並外れたゲッター線の輝きを宿しているのは事実です。
 そして、神と人の混血であるあなた様の一族の体内にも……」

「……我らの中に?」

「その事に気が付いた時、私の中で一つの妙案が生まれました。
 大破した神体や船の代わりに、この京の都に溢れるゲッター線の力を用い、
 新たな兵器を生み出す事は出来ないだろうか、と。

 手始めに私は神体の持つ大斧を鋳潰し、より純度の高いゲッター鋼を精製しました。
 膨大な鉄塊を惜しみなくつぎ込み、残ったのは人の手に収まる程度の欠片のみでしたが、
 私はそれがゲッター線と共鳴し、やがては神域に至る強度を得る事に期待したのです」

「それがこの刀の前身と言う事か」

「ええ、けれどもそれだけではまだ不十分でした。
 大気に満ちたゲッター線を収集するのみでは、望みの強度を得る前に、私の寿命が先に尽きてしまう。
 もっとより直接的に、膨大な光を吸収する方法が必要でした。
 そこで私はナノマシン……目に見えぬほどに微細な唐繰りを施し、金属に二つの特性を付与しました。
 一つは金属に触れた生物のゲッター線を吸収する装置。
 今一つは、ゲッター線を浴びた生物の血液を解析し、より攻撃的な因子を取り込んで進化する能力です。

 あとは金属を武器の形に変え、鬼退治を生業とする者に提供するだけ……。
 問題は、誰にこの剣を鍛える役を与えるかでしたが、最適な候補もすぐに見つかりました。
 短い生涯をひたすら闘争に明け暮れる一族。
 神々との交配を繰り返し、代を重ねる度にゲッターの因子を高め続ける一族……」

154 剣の行方は? 7/9 :2012/01/26(木) 04:24:21 ID:gBIf.2Cc0
「……ッ!?
 剣福! お主、我ら一族の呪いを利用したのだな。
 ただひたすら、最強の兵器を生み出す事のみを目的に!」

「左様、なれど誤解なされるな。
 私はただ都合の良い流れに乗ったまでの事。
 童子斬丸はあなた方一族に十分な貢献をしてくれたはず、
 彼の神々があなた方に施した運命の過酷さに比べれば、随分と割りの良い取引ではありませぬか」

「貴様ッ!」

「あくまで私が許せぬと申すのならば構いませぬ。
 我が身を如何様にでもなさいませ。
 あなた様の一族にその刃を託した時から、いつかこのような日が来る事を覚悟しておりました。
 神々をも凌ぐほどの強大な力を得たあなた様にならば造作も無いはず。
 ……なれど、私を始末する前に一つ、やらねばならない事があるのではないですか?」

「……この刀の、処分、か」





155 剣の行方は? 8/9 :2012/01/26(木) 04:26:03 ID:gBIf.2Cc0
「全ての戦いを終えたあなた様が、私の許を訪れるであろう事は明白でした。
 今や天下無双の剣士となったあなた様の鍛えた剣は、錆びる事も朽ちる事も無く、
 圧し折る事も鋳潰す事も叶わない」

「そして、人の手に過ぎたるその威力は、地上の何処に封じようと……、仮に天界に持ち込もうとも
 いずれは誰かが禁を破り、都にいら去る災いを持ち込む事になる」

「災厄を退ける方法はただ一つ、
 その剣の力を必要としている異世界に、跳ばしてしまうことのみです。
 さ、後はその台座の前に」

「この船を、もう一度天空へと飛ばすのか?」

「いえ、この船には、もはやそれほどの力は残っておりませぬ。
 ですがただ一度のみ、その台座に納めた物体を異世界に転送できるようにしてあります。
 名残は尽きぬでしょうが、後はあなた様のお気持ち次第です」

「……これで、剣とも今生の別れか」

「お気持ちはお察しいたします……、ですが、その剣をこちらの世界に留め置けぬ事は、
 理解しておられるはずでしょう。
 その剣を手離した時、それでようやく、あなた様は全ての呪いから解き放たれ
 人並みの幸福を得られるのでございます」

「……幸福、か」

「……?、如何なされた?」

「やはり私には出来ぬ相談だよ、剣福。
 君は信じぬかもしれないが、剣に宿るは【げったぁ】の光ばかりではない。
 我が一族の剣士達の喜びも、痛みも、苦しみも、全ての想いが煌き
 この刀身を輝かせているのだ。
 彼ら一族を切り捨てねば得られぬ幸福など、私には必要ない」

「……殿、なれど……」

「なれどこの剣を、こちらの世界に留め置く事は出来ぬ。
 ならば是非も無し、とるべき道は一つのみだよ
 剣福殿、貴殿の言う戦場に、剣もろとも私を飛ばして貰おうか」

「……! それだけはなりませぬ。
 この船で飛ばされるは、ただ片道のみ。
 その先は未来永劫、修羅の世界が待ち受けるのみです。
 ようやく全ての呪いから解き放たれたあなた様が、何ゆえ今、茨の道を求められる!」

「剣がざわめいておるのだよ、剣福。
 ただひたすら復讐のみに費やされた我らの生涯。
 この闘争の果てに、我らが屍を踏み越え続けた意味があると言うのならば、
 是が非でも、私はそれを見定めたいのだ。
 なぜならそれが、一族の中でも剣士として生を受けた者の運命であり、特権だからだ」





156 剣の行方は? 9/9 :2012/01/26(木) 04:27:16 ID:gBIf.2Cc0
――時は1037年三の月。

京の都を騒がせし鬼の総大将・朱点童子は、ついに勇者の一族によって打倒され、
日ノ本に平和がもたらされた。

長きに渡る戦いに終止符を打ち、短命の呪いから解放された戦士たちは、
その身に宿る強大なる力を自ずから封じた後、めいめいに各地へと散った。

――ある者は都に留まり、武人としての本懐を全うし、

――ある者は仏門に帰依し、生涯を行脚の旅の中で費やし、

――ある者は市井の一員として、ささやかなる生涯を終えた、

……ただ一人、家宝の神刀を携えた赤髪の青年がいずこへと消えたのか、その行方を知る者はいない。

157 剣の行方は? :2012/01/26(木) 04:34:26 ID:gBIf.2Cc0
以上、投下終了です。
一応、特注剣のシステムをざっくり説明すると。

・購入した剣士一人の専用装備となる。
・レベルアップ時、使用者の攻撃力(体の火)に応じて性能が上昇する。
・持ち主が死んだ場合、一族の剣士に継承される。
・継承時、先代の倒したボスによって、特殊効果が付加される事がある。
・先代がボスに敗れていた場合、呪いが付加される事がある。
・最高まで鍛えるとチート。

と言う、余りにケンイシカワなシステムだったため、ノリで書いてみました。

158 追い出された名無しさん :2012/01/27(金) 04:41:34 ID:F5aARE0w0

なんて卑しい俺屍なんだ

159 追い出された名無しさん :2012/01/27(金) 14:50:39 ID:xzJNYxic0
職殺。の非ずの村を思い出した

切ないな・・・

160 追い出された名無しさん :2012/06/04(月) 01:08:50 ID:D/f9JxGg0
ゲッター1はピンチに陥っていた
メカザウルスのカマによって両腕を切り落とされトマホークが振るえず
もう一つの必殺技であるゲッタービームも分厚い装甲に阻まれる
さらにダメージで内部に異常が出たのかオープンゲットして形態を切り替えることも出来ないのだ
「グワハハハハ!ゲッターロボ敗れたり!」
「くそっ!こうなりゃこうだ!」
何を思ったのか竜馬はゲッター1の腕が無いのにトマホークを射出したのだ!
「血迷ったかゲッターロボ!今トドメを刺してやる!!」
メカザウルスは牙の並んだ口を開け、熱線を吐いてゲッターロボを焼き尽くそうと構えた
だが!ゲッターロボは片足を後ろに引き
「そこだぁーっ!ゲッターシュートッ!!」
先程頭上高く打ち上げたゲッタートマホーク、それが落ちてくるタイミングを見計らい
メカザウルスの開いた大きな口へ蹴り込んだ!!
「グエ〜ッ!!」
エネルギーの充填している所へトマホークをぶち込まれメカザウルスは自爆してしまったのだ
かくして今日もゲッターチームにより平和は守られた

161 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:31:58 ID:ua/8RxNc0
なんとなく投下してみる

162 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:32:32 ID:ua/8RxNc0
 宇宙、それはほぼ地球を制覇している人類が次に開拓する新天地である空間。
 宇宙、それは限りなく広く、限りない速さで広がり続ける空間。
 宇宙、それは灼熱と極寒の真空の厳しい空間。
 ――――しかし、その空間は人類だけのものではなかった。


 あるものが宇宙から海に向かって落ちていた。
 それは百メーターを超える鈍色の巨大なモノ。
 楕円型で卵のような形をしているが、卵とは違って完全な無機物である。
 その速度は音速をはるかに超え、空気摩擦で燃えて赤い火球と化していた。


 それを鋼の三体の巨人が眺めていた。
 黒い巨人は寸胴で腕と脚は太く、一昔前のブリキの玩具を連想させる。
 だが、大きさは三十メーターを超える巨体を誇り、最強の兵器『スーパーロボット』である。
 残りの二体は色は青く、体も細めであるが同じ最強の兵器である。 
 その肩に女性が立っていた。三機のスーパーロボットに一人づつで計三人でいずれも20前後の若く美しい女性。
まるでそれはファンタージー物語出てくる妖精のようである、妖精のように美しいが彼らも『IS』という同じく最強の兵器を纏っている。
 どこか武者を連想させる姿の三機は『打鉄』という名のIS、量産型ながらなかなかの性能を誇っている機体である。
 彼女たちもまた巨人と同じように火球を睨むように眺めていた。
 巨人の操縦者も肩に乗っている女性達もそろってオペレーターの声に耳を傾けていた。

『到達まで――――』

 無線から消えてくる女性はどこののど飴をなめているのかを尋ねたいぐらい聞き取り奇麗なやすい声をしていた。
 着かぬ間の戦いがないときの基地では皆のアイドル的な存在であるが、今その声は緊張感にあふれていた。

『5――4――3――2――1――到達します!』

 高速で海にそれは落下、空気との摩擦による熱によって水蒸気爆発が生じ、半径数理にわたる爆風と衝撃波が暴れまわり、大波を生じさせる。

163 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:33:08 ID:ua/8RxNc0
だが、百メーターを超える物体の落下にしては被害少なすぎる。
 は落下する直前で減速したからだである。もちろん、奇跡という偶然で減速したのではない、これの確かな『意思』で減速したのだ。

『タイプは蟲(バグ)タイプ……数は大型一、中型九、小型三十』

 卵形のそれは花弁のように開きそこからワラワラと異形のモノが現れる。
 生理的な悪寒を感じさせられるそのグロテスクな姿の異形は『蟲』と呼ばれている。
 その呼称の通りに地球上の生物である虫に似ている。
 だが、彼らは宇宙――――いや、別次元からの生命体である。
 証拠に大きいのは六十メーター、中型で三十メーター、小型で三メーターの大きさである。
 だが、確かに大きいのはダンゴムシ、中型はクワガタムシなどの甲虫、小型は雀蜂に似ていた。

「蟲か……蜂が1000匹とかじゃなくてよかったぜ。一気に吹き飛ばすぜ」

 黒い巨人は身の丈もあるマシンガン、というよりもガトリングを構えて敵に向ける。
 ガトリングと巨人がリンクし最新のFCSが大量の敵をロックオン――――引鉄に力が入れられる。

「たっぷりと歓迎を喰らえ!」

 ガトリングがラッパのような低温の騒音とガ共にガスバーナーのように断続的に火を噴く。
 数匹の小型種の数センチ前で弾丸が爆発を引き起こすものの、多くの蟲は散開し、射線から逃れるようとする。
 すると、弾丸が向きを変えて後を追う。
 弾丸というには語弊があった、これは一発一発がミサイルであった。
 そのミサイルは敵を逃すまいと、敵の生体反応をどこまでも追う。
 二機の青い巨人も肩からミサイルと手に持っていたバズーカやロケットランチャーで負けずに砲撃。
 三機のISも、何もない空間からさまざまな火器を造りだし援護する。

『小型種十、中型種三を撃破。中型二体のダメージは中、大型種には目立ったダメージは見られません』
「さすがジジイだな。思ったより減ったか……ゲッター1から各機へ。とっと行くぜ!」

 鋼の巨人たちは持っていたガトリングとバズーカ、ロケットランチャーを捨て、P-90を巨大化させたサブマシンガンに持ち替え目標に向かって飛び立ち、左右に青い巨人が後を追うように並ぶ。 
 肩乗っているISは、三機の巨人が動くと同時にこれまた妖精のように飛び立ち三角の陣形を組む。
 数秒で音速の世界に突入し、対する蟲も同じく音速の世界に突入する。

164 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:33:43 ID:ua/8RxNc0
 
 蜂を数匹引き連れたクワガタが人類では発音も表現もできそうもない咆哮を上げ巨人と相対する。
巨人達はサブマシンガンを放つ、偶然小型種は運動性で勝るために偶然一匹あたり撃破した程度。
中型種にはかなりの数が当たったが、すでに半分死んでいる二匹が楯になるように弾丸の雨を受けて、被害を最小限に抑えようとした。
中破していた二匹は完全に沈黙、他の六匹中二匹にダメージを少々与えた程度。弾幕強引に突破したクワガタが大顎で青い巨人の胴体に喰らいつこうとする。
青い巨人はサブマシンガンを投げ捨て大顎を掴む。
蟲の大顎の力と青い巨人の力はほぼ互角に拮抗し両者の動きが止まる。
そのクワガタについてきていた蜂の一匹が巨人の腰に張り付く、鋭い針を刺すと、針を切り離し巨人から離脱、すると、タイミングを見計らったのように針が爆発する。
巨人がグラつき、膝を付くがなんとかクワガタと拮抗し続ける。
他にも数匹の蜂が動きを止めた巨人に群がる。
この数の爆弾を受けたら青い巨人は耐えきれたとしても、目の前のクワガタに到底戦えるわけがない。
だが、青い巨人のパイロットはにやりと笑う。

『今だ撃てぇ!』

 青い巨人に一直線に向かっていた蜂達が全部撃墜される。
 打鉄が手に持っていたライフルから白煙が上がっていた。 
 蜂は運動性が高く、狙いづらい相手だが巨人に気を取られて直線的な軌道を取ったためになんとか撃ち落とせたのだ。
 打鉄は武器を野太刀に持ち替えて、蜂が巨人に対してそうしたように動きを止めているクワガタに攻撃を試みる。

『タアァァ!!』

 クワガタの大顎を斬りかかる、このクワガタの皮膚は鋼鉄をはるかに凌ぐ頑丈さを誇り、大顎もかなりの高度を誇っている。
 そのために、斬り落とすことには至らなかったがヒビが少し入る。
――――それで十分。
 巨人とクワガタの力は凄まじく、一秒間ですら千メガジュールを超えるエネルギーがぶつかっているのだ。
 ヒビはコンマ秒の一瞬の世界で駆け廻り、大顎を一週しするとそこから大顎が折れる。
 同時に巨人は掴んだままの折れた大顎をクワガタの腹を刺す、顎と顎の中間に拳を振り下ろす。

165 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:34:13 ID:ua/8RxNc0
『チェエーンナァックルゥ!!』

 殴った拳から先が飛び出し、 ロケットエンジンにより推進するそれは硬い皮膚を突き破り体内を進みちょうど反対側から飛び出て拳に繋がっている鎖がクワガタが縦半分に裂く。
 
『危ないところでしたね』
『すまんな、今度酒でもおごるぜ』
『安酒はやめてくださいね』
『みんな、クワガタは腹が弱いぞ』
『あっ、逃げた』



 青い方のもう片方はクワガタ二匹と相対していた。こちらはうまく距離をとれているようで、一方的に攻撃していた。
サブマシンガンの弾丸が内一匹のクワガタ硬い皮膚を貫き停止させる。
だが、もう一匹のあふれる活力は未だに健在で背中が盛り上がり寄生虫のような生体ミサイルが巨人に向かって発射される。
 青い巨人は拝むように手を合わせると、掌の間から電流が走る。
 巨人の膨大なエネルギーが体中を巡り、掌の間に集中する。
 強烈な磁場が発生し、それは生体ミサイルを巻き込み巨人の目前で爆発させる。
 また、蜂はまるで電子レンジに入れられた卵のように爆ぜる。

『プラズマァァサンダァァー!!』

 超高エネルギーが巨人の掌から放たれ、光の矢と化したそれはクワガタを瞬時に消し炭にする。

『結構危なかったな――――ッ!?』

 真下の海から最後のクワガタが現れ巨人胴体を大顎で挟み、海中へと引き摺り込もうとする。
ミシミシと嫌な音が挟まれている胴体から響き、機内に煩い位に警告音が響く。

『あっぶねえな! おいっ』

 その通信と同時に轟音と鎖付の拳が飛んでくる。
 どうやらうまい具合にクワガタの腹部を貫通し、その生命を奪い去った。

166 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:34:49 ID:ua/8RxNc0

『ヘッヘ! スコアはこれで互角だな』
『余裕あるなお前……中佐は?』
『ほら』


「トマホークブーメラン」

 大ムカデの頭に巨大な投げ斧が突き刺さる。
 この大ムカデはお供のクワガタに負けない強度の皮膚を持っていて、サイズから言ってこちらの方が厚い。
そのため、斧は頭部に突き刺さる程度で止まり、大きさに見合った生命力を保有している大ムカデには大したダメージにはなっていない。

「一秒でいい、トマホークが刺さった場所の動きを止めろ」
『了解ッ!』

 二機は全火力で足止めをする。
 戦車も圧倒する火力、だがそれでも大ムカデに碌なダメージを負わせることはできない。

「よくやった!」

――――だが、足止めには成功。

「ゲッターキック!」

 音速をはるかに凌駕した黒い巨人が黒い矢のように足先から突っ込む。
 二百トンを超える大質量と重力によりマッハ四を超える速度、TNT火薬にすると数トン分を超える運動エネルギー。
実に広島型原子爆弾の三十分一のエネルギーそれが巨人の足先という狭い面積に凝縮される。
足先に斧が当たり、斧がそのまま楔の役割になり、硬い皮膚を粉砕。
大ムカデは体をくねらせ、黒い巨人の進行コースから体を離させて被害を最小限に抑える。
頭を粉砕されたのに、強靭な生命力で暴れ続ける。
だが、思考力が完全になくなっている暴れ方で出鱈目な方向にあがいている。

 ――――止め。

167 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:35:19 ID:ua/8RxNc0
 黒い巨人は大の字に体を広げる。
 全エネルギーを叩き込む巨人の最大最強の必殺技

「ゲッタービーム!!」

 先ほどの攻撃で剥き出しになった部分に赤色の熱線が照射される。
 数万度のそれは内部から大ムカデを有毒な煙に蒸発、消滅させる。

『打鉄二機が援護しているとはいえ、化物だな。さすが十年選手というべきか……』

 彼ら五人は呆れているのか、関心しているのか、あるいは両方なのか、分からない顔で上司の活躍を見守る。
 ほどなく、大ムカデは完全に停止し、中型種すら存在しないために残った蜂を難なく殲滅で戦闘は終了した。

「よっし、帰還だ」
『あの……流中佐』
「あん?」
『義弟さんが――――』

 伝えられたことは信じられない内容であった。
 最近会っていないから、近況は知らなかったがあまりにもな内容、
 意外で済まされるようなというレベルではない。

「はあっ!?」

 その叫びはロボットの外まで響き、月が浮かぶ青空へと吸い込まれていった。
 空に浮かんでいた月は昼だから朧であった、ある一部を除いて。
 その部分は昼の白い月には対照的に真っ黒の円。今見えている部分のちょうど裏側にももう一つ同じものが存在している。十年前に突如として発生したそれは『ゾーン』と呼ばれている。
この蟲達はあそこから現れて、裏側からは別種の化物が発生している。
 何故発生したのかは誰にも分かってはいない、そしてあの向こうはどうなっているのかどういう原理で存在しているのかもわかってはいない。
分かっていることは二種の化物は敵対関係であり月はその戦場、偶にどちらかの種類の化物が地球に襲来しているということだけである。蟲かゲルかの化物と彼らは戦っている。

168 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:35:50 ID:ua/8RxNc0


 空を駆ける四つの影があった。
 その四つの影は音の三倍近い速度で覇者のように空を縦横無尽に駆けていた。
 その四つはアメリカ軍の精鋭が操る超兵器である。
 四機とも黒く三角形に近い形をしていて、昔に作られたF-117やB-2と言われたステルス機に似ていた。
 勿論、これらもステルス機である。が、F-117やB-2ではない。
 そして、これらは戦闘機でも、爆撃機ではない。
 四機は徐々に減速し、高度もそれに比例するように下がっていた。
 
「はぁ……」
 
 先端が開き鋼の頭が現れる。
 翼が二つに分かれて折れ、鋼の拳と鋼の脚が現れる。
 そして、地上に鋼の兵が降り立つ。
 鋼の兵――――その名は『ステルバー』

 アメリカの代表的な超兵器の一つである。
 少年が生まれる数年前発案された宇宙開発用作業用重機を造る計画で生まれた『スーパーロボット』に分類される。
 音速を軽く超える飛行モードと人型のバトルモードの二つの形態に変形でき。
 また、『空飛ぶ火薬庫』とも言われるほどに弾薬を搭載でき、ハリネズミのように体中から全方向に攻撃でき、バトルモードになることで接近戦に対応できるようになり、さらに戦闘能力が跳ね上がる。
 ステルス性とその機動性で敵の懐に潜り込んでその火力で一掃するというコンセプトの兵器である。
 輸出用でステルス機能がなく、一部の性能が落としているモンキーモデルが世界中で活躍している。 
 日本にも国産のスーパーロボットがあるとはいえそれが配備されている。

「どうせなら……こっちの方がよかったな」

 愚痴を呪いのようにこぼしながら液晶テレビ画面を少年は眺めていた。
 そんな彼の隣に同情の色に染まっている少年がいた。
 落ち込んでいる少年は背は一七〇で中ぐらいであり、髪も黒でどこにでもいそうな地味な印象である。
 対して隣の少年は少し背が高く大人びているように見え、バンダナを巻いた茶髪に近い赤い髪で派手な印象与えていた。

「でもお前はお前ですげぇじゃねんじゃね? ISが――――」

169 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:37:03 ID:ua/8RxNc0
「……言うな。お前は……そっちの道にいけていいな」

 ISとは『インフィニット・ストラトス』の略称である。
 これも、宇宙開発計画から生まれた兵器である。
 先ほどのスーパーロボットと違い、パワードスーツに分類され、小型である。
 小型であれど、小回りと運動性、運用性などで戦闘能力はスーパーロボットに決して劣らない。
 ――――だが使えるものには限られている。
 その点が黒髪の少年の悩みである。

「だって、俺は男だぞ。……なのに…………ISって……」

 ISは女性にしか使えない兵器である。
 開発者が変わり者で何を考えているのかが分からないことで有名な人間で、しかも失踪してしまった。
 ISの最重要部分であるコアが現在では完全なブラックボックスであるためにどうすることもできないのである。
 公表されてからすぐは「女尊男碑」の世の中になるのではという意見もあったが、
結局スーパーロボットの出現や敵の出現によって通常戦力すらも欲しいような状況になってしまったためにそのようなことはならなかった。

 とまあ、世間一般では常識を変え得た女性専用超兵器と位置づけである。

 だが、この黒髪の少年は唯一の例外なのだ。
 女性にしか使えない兵器を男のこの少年が使えるという前代未聞のことが起きてしまったのだ。
 ブラックボックスが多いこの兵器を解明するために少年はIS学園と言われるIS操縦者や開発者の育成学校に通うことになったのだ。

「俺は……ダイナミックに行きたかった……」

 赤毛の少年が通うことになるところはIS学園のようにロボットを操ったり、開発したりする者の育成校である。
 その学校は軍学校に分類されているために学費が掛からず、むしろ給料がもらえ、重機やロボット操縦をはじめとした多くの資格を習得できるため、就職率がいい。
 さらに、万年人手不足の今現在ではある程度の学力があれば入れる。
 少年は本当のところは中学校を卒業したら就職し家を出ることも考えていた。さすがにそれは義兄と姉に怒られて止められたが。
 「家を出たい」それは、家が気に入らないという思春期特有のわがままな理由ではない。

170 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:37:47 ID:ua/8RxNc0
彼には両親も親戚もいなく、優位いつの家族である姉夫婦に養ってもらうという負い目を感じていたからだ。
 彼女達は少年を追い出すようなことはしていないし、少年との仲は彼が思う以上に良好ともいえる。
 仕事が忙しいのかなかなか家にいないが、いつかは子供ができる。
 だから、少年は彼らには負担をかけたくなかった、故に彼はすぐに食っていけるようになる進路を希望した。
 それに、義兄の影響でスーパーロボットに憧れていていたのもある。
 何度か義兄の元に行ったときにシュミレーターで操縦したときの痺れる快感に近い感覚を味わった。
 「仮想でこれならば本物はどうなのか?」ということを何度か思ったこともある。
 だが、彼がこれから歩むことを強制させられた道はそれとはあまりにも離れた道。

 IS学園の就職率はいい、学費も特別な存在となった彼は払う必要はない。
 しかし、IS学園はISが女性しか使えないので女性の通う学校…………つまり、女子校。
 乙女の花園に行くことになる年頃の少年。
 間違いなく珍獣扱いであろう。もっとも、『ISを使える男』として現段階でも十分珍獣扱いされている。
 そして、憧れのスーパーロボットに乗ることはおそらくできないであろう。
 入学を断れば、世界中から実験材料としてなにされるか分からない。
 なまじ義兄の仕事の関係でマッドサイエンティストを見たことあるためにどうなるのかが簡単に想像できてしまう。
 頭を抱えながら渡された必読の電話帳並みの厚さの資料と睨んでいたが、頭の中では「ああ、電話帳と間違えそうだな」と別のことを考えて全く集中していなかった。
 この少年こと、織斑一夏はある意味では英雄と言われた家族を超える有名人となっていた。



 
 赤毛の少年、五反田 弾はそんな一夏の親友なのか悪友なのという関係者である。
 めでたく彼が通う通称ダイナミックという名のパイロット育成校はIS学園のスーパーロボット版で一夏が行きたかったことである。
 弾はそこに通う以上パイロットの卵、または整備士、開発者の卵である。
 もっとも、弾は死ぬのは怖いし家族が心配するから後方で整備士か作業用に操る仕事を希望している。 

 宇宙からの敵、蟲とバクテリアとよく似たゲル状生命体達通称『侵略者(インベーダー)』と人類との戦争は十年を超えている。
十年を超える戦争は決して珍しいものではなく、長さだけで言えばかつての米ソ間の冷戦は四十年を超えている。

171 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:38:59 ID:ua/8RxNc0
しかし、人類は防戦一方。
これは敵の本拠基地が宇宙であるために攻め込むことができないからである。
 運よく二つの化物たちが潰し合っているために地球に攻めこむ敵戦力は少なく、ISとスーパーロボット達の活躍で最小限の被害で持ちこたえている原状。
戦況は膠着状態で人類が月に大規模戦力で込めるようになるまで続くと考えられている。
それは多分、彼らの子供世代という説、孫世代という説、五世代先という説もある。

 ともあれ、弾と一夏はいつかはその化物たちと戦うかそのサポートに回ることになる。
 そして彼はロボットに乗っている。
 残念ながらスーパーはつかないロボット『ビィート』
 アメリカの偵察用に十年以上昔から作られた全長八メートルの小型ロボット。
 パーツを換装することでさまざまな状況に対応できる汎用性から出る実用性。
 世界各国の共通小型汎用ロボットと認定されているためにちょっとした都会レベルならば工事現場で見かけるほど浸透している。
 そして、大抵のロボットはこの操縦システムをベースとしているためにこれを操縦できれば大体の機体を操縦できる。
 スーパーロボットもその例外ではないので訓練用に数十機がある。 



 そんな彼の前には泣いていることを隠そうともせず泣いている少女がいた。
 彼にはその少女が誰なのか朦朧とている意識の中で思い出す。
 
「――蘭」 

 彼の一つ下の妹で彼同様の派手な赤毛は長髪でいまどきの女の子らしくおしゃれをしている。
 男勝りだが優等生で生徒会長で、親友に恋する乙女である。
 「一夏に見られたら、笑われるぞ」っと冗談を弾は言おうとした。
 いつもならば、ボコボコにされるのだが、彼は声を出すことができなかった。
 妹の手に大量の血で濡れていた。「怪我しているのか」と考えたが妹の手には傷一つない。 
 その血が誰のものか気付くのかに時間はかからなかった。

 五反田弾、自身の血であった。

 数十分前のことをぼんやりと思い出そうとしていた。
 たしか、一年生全体でビィートを用いた訓練をしていて……。

172 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:39:48 ID:ua/8RxNc0
模擬戦をしていたような、途中で何かが乱入して生きたような?
 たしか……黒いIS?
 なんでこちら側に腕を向けているんだ?
 ……どうも、この先が思い出せない。
 上体も首も動かせないために自分がどうなっているか分からないが相当な怪我をしていることはぼんやり自覚していた。
 ここはどうやら病院でドラマやアニメなどでよくある手術室に運び込まれている途中であるようだ。
 「ウチ金はらえるか?」「保険降りるかな?」「学校側が負担してくれるのか?」と心の中でぼやく。

 妹がナンパしたくなるぐらいかわいらしい看護師に抱かれ、弾の手から離れる。
 証明がやけに明るい……手術室であるらしい。
 看護師も医者も青い顔をしている。
 そんな者達の後ろから小柄な老人が満面の笑みで歩み寄っていた。

「うひゃひゃ! ここまでグチャグチャならば、方法は一つしかないのう。」

 老人の隣には助手らしき人物が道具を運んでいたが、だが、その道具はスパナや鋸、ハンマーなどの手術には使いそうもない道具。
 老人はその道具の山からチェーンソーを取り出し、エンジンを作動させる。

「チミィイ、命が惜しくないか? 生きたいか? それともあの世に逝きたい? 話せそうにもないのう。
 YESならば瞬きを三回、NOならば瞬きを四回。 それが合図じゃあ」

 弾は、目で生きたいと思っているが目の前の光景に強張っていた。
 ――――だが、生きたい。
 瞬きを三回し、弾はそのまま意識を闇の向こうに手放す。

「ならば――――わしの芸術、科学の礎となってもらおうかのう」




「うわああああ!……夢か」

 あまりの悪夢にベットを砕かんばかりの勢いでから飛び出す……。
 覚めた目で周りを見ると清潔な白で統一された質素な部屋。

173 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:41:05 ID:ua/8RxNc0
 だれもがイメージするだろう典型的な病室であった。
 いやな予感がした彼は、腕と脚を確かめることを試みる。
 ファントムペインなどと言われる、失ったはずの部分から感覚を感じる現象があるが。
 右手のある部分、左手のある部分、左足、右足のある部分毛布が盛り上がり、自分の意思で動いている。

「よかった、五体満足か……」

 右手を見つめるとエジプトのミイラ(完全な漫画のイメージだが)のように包帯に巻かれているものの確かに存在する。
 左手もちゃんとあり、右手と左手でひとりジャンケンして、ちゃんと動くことを確かめる
 次に足はどうなのかと上体を起こそうとベットの柵を軽く掴んだ。
 メキョとアルミ缶が潰れるような音が静かな病室に響いた。
 潰れた缶のようになってる掴んでいた円柱状の柵を彼は凝視し、突然の出来事で顔が困惑に染まる。

「なんだこれ?」
「ヒョッヒョッヒョッ。思ったより早く起きたのう」

 悪夢で見た怪しい老人がドアを開け現れていた。

「えっと……? じいちゃんは?」
「わしか、わしはお前さんの命の恩人じゃよ。最初は戸惑うと思うがのう」
「リハビリがつらいってこと?」
「う〜ん、惜しい。五反田弾君――――サイボーグ二号」
「へえっ!?」

 潰れた柵で腕の包帯が破れ。
 そこから、メタリックな光沢で輝く五反田弾の新たな腕が覗いていた。

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 病院中にその声は木霊し、その声で大急ぎで駆け付けたナースに弾は叱られた。

174 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:41:57 ID:ua/8RxNc0



 昔、二人の兄弟がいた。
 二人の生家の敷島家は当時は裕福な家であり、何不自由なく育った。
 二人は紛れもない天才であり変人でもあった。

 兄は車にひかれた犬を拾い解体して、脳、眼球、内臓、筋肉、骨の一本一本をまで分解した。
 弟は父が趣味で保有している刀や猟銃を解体して中身を調べて、分解する前よりも精密に組みなおした。

「僕は最強の生命を造りたい」
「僕は最強の兵器を造りたい」

 兄は生物学、特に遺伝子を中心に学びクローニング技術の第一人者となった。
 弟は機械工学、特に兵器開発でその道で知らないものはいない存在になった。

 だが、彼らの目的は名声を得ることではない、「最強」を作り出すことである。
 時々、彼らは論議を交わし合い、互いを磨き合い、さらに先、さらに強い存在を作り出していた。
 ――――サイボーグ、それもその一環で生まれたものである。

 無機物と有機物の融合。
 兵器と人間の融合。 

「っで、この体はあんた達の産物なのか」
「いい体じゃろ?」
「確かに命は危なかっただろうけど……」

 弾は包帯のほどけた銀色の腕を見る。
 先ほど潰したベットの柵を見てぞっとする。 
 夢かと思って頬をつねろうと思ったがパンを千切る様に取れそうなのでやめた。

「パンチ力は二トン、キック力は八トン、ジャンプ力は十メーターを超える体が不服か?」
「オーバースペック過ぎんだよ」

 潰れたベットの柵を雑草に用に毟り、握ったままのそれを親指の力だけでへし折る。
 その行動を興味深そうに老人は眺め続けている。

175 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:42:42 ID:ua/8RxNc0

「安心しろ、根性で制御できる」
「無茶言うな!!」

 弾が怒りで床に柵だったものを叩き投げる。
 深々と床に刺さり込み、人の力では抜き取ることは不可能なくらい深く刺さっていた。

「冗談じゃあ、制御コードを設定すれば抑えられる」つまらなそうな顔で老人は続ける「その設定のために来たんじゃあ」
「よかった……俺は……どのくらい…………」

 弾の口は震えで止まってしまった。歯と歯がまるで雪山の遭難者のようにガチガチぶつかり合う。
 春には季節外れのその震えは不安から来るものであった。
 事実を知ることの恐怖である。

「どのくらい……? 人工物が埋まっているかと聞きたいのか?」老人は顎を摩りながら続ける「大体八割かのう」
「八割!?」
「残っているのは……一部神経と脳の九割」
「脳も!?」
「おっと、一応生殖機能は残ってあるぞ」

 思い出したかのように付け加える。

「ここに運び込まれた時生きているのも不思議なぐらいじゃったからかのう」敷島はどこか遠くを見つめる「あの男みたいな悪運じゃのう」
「あの男?」
「以前改造したやつで、極道じゃったか。どこ行ったのやら」

 弾は他にも自分に似たような境遇の人物がいたことを知ったがそれはどうでもいいことであることを知った。
 気になっているもう一つの点もあった。

「ああ、サイボーグ手術代は六億な」
「ろっ、六億!?」

 その気になっていた点は、まるで昨日の晩飯を答えるかのような気軽さで思い出したかのようにあっさり切り出された。
 六億その百分の一でさえ、食堂の彼の実家に簡単に払えるわけがないし。
 ましてやただの学生の自分には無理な金額だ。

「まあ、モルモッ……もといいデーターを取らせてもらえばチャラにしてやるぞ」
 老人はニヤリと顔を歪ませる
「なんせサイボーグなんてめったに作れるものではないからのう」
「ハハハ…………」

 弾の頭の中は真っ白になった。
 早い話が目の前のマッドサイエンティストの体現者の人体実験に付き合わされるのだ。
 六十億の体になった彼にもう平穏は訪れないのだろうか?

「とりあえず、エントラッセンじゃあ、おめでとう弾君」

176 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:43:39 ID:ua/8RxNc0
ほぼ同時刻の遠い国の酒場、値段も酒も料理の味も並みであるが、基地が近いだけに訪れる客は多い。
 今、この店で飲んでいる客の一人にドイツ人がいる。
 ドイツ人と言えば、勤勉、誠実などの真面目なイメージを思い浮かぶものは多い。
 ところが、この男ヒム・シャトナーはそのイメージとは無縁の人間である。
 「イタリア人なのではないか?」と言われるほどに女性がいれば声をかけ、手を出し、そちらの意味でもエースの戦績がある男である。
 ドイツ人らしいところは今手に持っているビールがドイツ産であることぐらいである。
 もっとも、隣にいる流竜馬は日本人であるが、不真面目というほどにないにしても規律を重視せず、粗暴な部類に入る男である。
 面白いことにこの二人はエースパイロットである。
 戦争初期はスーパーロボットが少なかったころ各国から集められて結成されたエースを集めた部隊があった。
 彼らはそれに選ばれ。その時からの付き合いであるのだが友人と言えば友人だが悪友の部類にはいる。
 もちろん、部隊のメンバー同士は手紙や電話で時々であっても交流は続いている。

「日本に帰るって? そりゃあいいな」
「あくまで仕事だがな。……三か月ぶりか」
「IS学園か?」
「バカ。俺がISについて何か教えることができると思うか? まあ、場所は近いけどな」
「じゃあ、日本の地理に詳しくはねえけど、ち、……嫁さんの実家に近いんじゃないのか?」
「あいつか……三か月ぶりになるな」

 妻の弟、つまり竜馬の義弟が今とんでもないことになっているのは知っている。
 義弟は竜馬の影響かロボット、特にスーパーロボットに乗りたがっていた。
 これは何度か一人にするのは可哀そうだからということで早乙女研究所に預けていたことが関係している。
 年の近い早乙女博士の子供がいたためにできた処置であったが。
 そこはロボットの聖地と言われる場所、全く影響されないわけがなかった。
 竜馬得意の空手を教えてくれと頼みに来たり、自主トレに付き合うことも何度もあった。
 さすがに年を重ねるにつれて、戦場に行きたいとかいうことは言わなかったが、ロボット乗りの育成校が第一目標であった。
 多分、整備か作業などの方面でロボットを操る進路を行くだろうと竜馬は思っていた。

 なのだが、先日のニュースで彼がとんでもない事態に陥っていた。
 妻の職場に行くということは分かったのでいったん一息をついたものの女子校であることを聞いて別の意味で気が気でなくなっていた。

「あいつやっていけるんだろうか」
「IS学園ね……流石に十八未満は守備範囲外だな」
「お前、それしかねえのかよ」

 幸いにもと言うべきか、IS学園は彼が出向する先に近いところにある。
 皮肉のことに義弟が行きたがっていた学校である。
 さらに皮肉なことに竜馬を呼んだのは早乙女研究所現所長である。
 またまた、皮肉は続き義弟と同年代の少年少女の面倒を見る仕事である。
 極めつけに新型ゲッターの開発関連でもある。

177 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:44:45 ID:ua/8RxNc0



 そのセシリア・オルコットは憤慨していた。
 目の前の男がクラス代表に推薦されたからだ。
 セシリア・オルコットはイギリスから代表候補生に選ばれた存在である。
 生まれも名門貴族で高貴な生まれたが、だからといって地位でそれを勝ち取ったわけではない。
 生まれ持った才能等もあったが努力による部分が大きいことは誰にも否定はできない。
 努力のきっかけは彼女の両親が残した遺産を守るためである。
 彼女の今は亡き母親は会社を経営して成功し続けていた。
 ――――だが、父は婿養子のためか卑屈にもそんな母親の顔を窺うような軟弱男であった。
 彼女が父に抱く思いは「情けない」の一つしかなかった。
 だが、彼女にとって一番知っている男性が父であったために、先入観に偏見が混じってしまっているにしても、
全ての男が腑抜ではないということは一応は頭にはある。
 現在、インベーダーからIS使いと共に地球を守っているロボット兵器を操る者は大半が体力の面で男性である。
 その男達は彼女に負けないくらい、またはそれ以上に切磋琢磨をしたはずである。
 今日、もしかしたらこの瞬間ですらも過酷な任務に命を削っているかもしれない。
 だから、そういう男達を認めざるえない。

――――だから、「ISが動かせる」という点だけの男がクラスの代表になることは許せなかった

178 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 00:46:57 ID:ua/8RxNc0

 そういうわけで一夏はセシリアと模擬戦という決闘を行うことになった。
 決闘まで数日後に控えている一夏だが、彼とセシリアのISについての知識、技能差は大きい。
 それをどうにかするために彼は特訓をしていた。

「一夏、やるな! だが、甘い」

 ――――パン。
 奇麗な一本の音が道場に響く。
きれいに箒の竹刀が一夏の面が叩く。

 一夏は再会した幼馴染の箒と道場で剣道していた。
 姉がIS開発者である箒に協力を求めたところ「実力を見る」ということで剣道をすることになった。
 確かに、ISの動きは操縦者に左右されるために生身の戦闘の技能が高ければ高いほど強いともいえる。
 一夏は一応ロボット乗りを目指していたために体力付を怠らず、バイト(お手伝いレベルだが)の合間に部活動生以上の運動はしている上に、
義兄のトレーニングに付き合ったりしていた。
 バイトの合間だったために部活動に所属はできなかったが、体力には飛びぬけてというほどにないにして、もある程度の自信があった。
 それが功をなしたのか目の前の箒に善戦していた。
 目の前の箒は全国制覇したこともある腕利きの剣士である。

「一夏……お前、体力はあるが剣の腕が鈍っているな。中学では剣から離れて陸上部か球技でもやっていたのか?」

 体力が付いても、剣道や柔道などの戦うための技能は磨かなかった。
 まず、藍越に入学することから考えており、中途半端でヘタな偏りは避けたほうがいいと考えていた。
 本当は超実戦思考空手の使い手で且つロボットパイロットである義兄から教えてもらいたかったが彼は多忙のため、
なかなか家にいないから中途半端に偏りかねない。
 姉もロボットのりではないがかなりの腕利きである、のだが同様の理由で無理。
 とりあえずは基礎体力を上げて戦闘の技術はそこで身に着けようと思っていた。
 なのだから、まさかいきなり模擬戦をする羽目になるとは思っていなかった。
 一応は性別差からくる、腕力、体格差で箒を吹き飛ばすことはできるのだが、箒の技がそれをさせなかった。
さらに、ISでは筋力が反映されにくいのでそれで勝っていても意味がない。


「――だから、どんどん来い、箒!」
「行くぞ! 一夏ぁ」




彼らの戦いこれからだ!!

        未完

本作は今亡き某所に投稿しようとしたゲッターとISのごちゃまぜSSです。
コンセプトとは私がためらわない程度の改変で実はこれでもギリギリなチキンハートです。
IS、ゲッターロボと共にいろいろ設定を変えています。
このまま書いたままにするのは無駄なことをした気になるのこっそり投下させてもらいました。
もちろん、続きはもう書くことはありません。

179 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 20:54:17 ID:sHpB6GYc0
GJ!
続き無いのかもったいない……

180 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 22:07:29 ID:r5nJu7JM0
乙ぅー!   

それにしても規制の嵐で本スレに全然書き込めないのが辛い……

181 追い出された名無しさん :2012/08/01(水) 23:00:26 ID:q1i0MiUE0
どうも作者です。
感想ありがとうございます。
某所の三月の規制で投下のタイミングを逃し、そのまま放置していたので。
もう続きを書くのが…………って状況でしって。

一応この後にゴウが出てきて
竜馬・境遇が変わっているされている
一夏・スペックが少し変わっている。
弾・機械的な魔改造
ゴウ・ナマモノ的な改造。

という感じの四人の主人公で書こうと思ったんですが、難しすぎると断念

他のキャラはゲッターは
隼人・やっぱり偉くなっている、あるキャラのある部分に驚く
武蔵、弁慶・チェンゲ第一部の設定。
元気・チェンゲ版なので女、でもおもに面倒見ていたのが弁慶たちなので性格が……
    一夏と昔からの友人だが好みが境遇のせいで偏っているために恋的なものは全くない。
敷島・チェンゲ版も漫画版も好きなので二人とも出しました。
    ちなみにサイボーグ一号は極道なあのかた

ISのヒロインは箒と鈴は変化なし、セシリアはすでに書かれている通り
シャル・母親の負担を軽くするために手先の器用さでパイロット育成校に特待生として入学しているため男装設定なし。
ラウラ・千冬の特訓で克服する前にロボのパイロットをさせられたために能力が原作より低いし、性格が少し卑屈(逆補正改造)
     敷島兄に作られた設定でゴウは彼女を作った時のデータが利用されている。
生徒会関連:そこまで考えていませんでした。
山田・隼人の自分(の胸部)を見る熱い眼差しを意識しているのかしていないのか?

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184 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:38:50 ID:shK785nE0
 悪魔がホルンを吹き鳴らす時刻、街に立ち並んだ巨大なビル群は、峻厳とした山々の峰のように如く天高く聳え立っている。

 チクタクと静かに回る秒針の音──時計の針が午前一時を差す。路地裏にたむろするギルドの売人どもから、月のアガリをせしめるバイケン。
 バイケンは売人にロド麻薬を売らせ、売人はバイケンに売った麻薬の金の二割を上納金としておさめるのが、ここでの取り決めだ。

 闇金、賭博、売春宿、殺し──この街での非合法なビジネスは、全てバイケンの息がかかっている。
 悪党のバイケン、それがこの男の通り名だ。口に咥えた葉巻が、グレーの煙をゆらゆらと立ち上らせる。

 バイケンは海賊ギルドの中堅幹部で醜い痘痕面をしていた。
 魔女のように伸びた鷲鼻は痘痕だらけで、右目には眼帯が巻かれている。
 おまけにせむしで、到底女受けするような色男とは呼べない。
 右目の眼帯はかつて一匹狼の海賊に奪われた。海賊の名はコブラ、宇宙最高の賞金首と呼ばれた男だ。

 もっとも、数年ほど前にぷつりと消息を絶ち、今ではもう死んでいるだろうというのが、もっぱらの噂だった。
 だが、バイケンはそんな噂話なぞ信じてはいなかった。

 そうだとも、奴はどこかで生きているはずだ。あいつはそんなヤワなタマじゃない。 
 奴は地獄の住民だ。悪魔を友にし、死神と連れ歩く、それがあの男だ。
 バイケンの胸裏にはいつまでもコブラとサイコガンのシルエットが付きまとっていた。

 ぼんやりとした薄明かり、外灯の回りでは、季節外れの蛾が飛び回っていた。
 今月に入ってから、ロド麻薬の仕入れ値があがるという。そんな話が近頃のバイケンを悩ませていた。

 ロド麻薬は金になる。買った奴はやがて廃人になる。売人は新しい客を捕まえて、ロド麻薬を売りつける。
 売った金はバイケンの懐へと転がり込む。仕入れ値があがれば、その分値段をつり上げなければならない。
 麻薬の売値をあげれば、客との揉め事が置きかねない。その事が今夜のバイケンを不機嫌にしているようだった。

185 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:39:30 ID:shK785nE0
 上がりをせしめて回っているうちに、バイケンは息のかかった売人のひとりを捕まえた。
 「ナット、最近売り上げが落ちてねえか」
 「バイケンさん、この頃、銀河パトロールの目がうるさくて、ロド麻薬が思うように売れないんでさァ」
 灰色のコンクリートでできた街路、壁に貼られた賞金首のポスター、
 方眉をつりあげ、バイケンが不機嫌そうに灰になりかけた葉巻を吐き捨てる。
 言い訳がましい売人にバイケンが一発、蹴りをくれてやる。それも睾丸のど真ん中にだ。
 
 ブーツの先が売人の股間をえぐった。
 身体をくの字に曲げ、呻くナット──バイケンが引き抜いた拳銃をナットの額に押し付けた。
 「ナット、お前が手下の売人どもから金をチョロまかしてんのは知ってんだ」

 恐怖のあまり、ナットの全身が硬く強張った。バイケンが三十八口径の銃口を額の皮にぐりぐりと押し付ける。
 ネズミをいたぶる猫のように、サディスティックにネチネチと。
 「か、勘弁してください、バイケンさん、出来心だったんです……」
 ナットは胸の辺りで両手を握り合わせ、バイケンに許しを求めた。それに対するバイケンの返答。

 「勘弁できねえな、ナット、俺はそこまで心の広い男じゃねえ」
 銃口が火を噴いた。銃弾がナットの額から後頭部へと突き抜ける。血と脳漿がザーメンのように派手に吹き飛んだ。

 髪の張り付いたピンク色の肉片が、壁に付着する。地面に散らばったナットの砕けた頭部を踏みつけ、バイケンはせせら笑った。
 「ひひひっ、俺の金をチョロまかそうなんざ、百年早えんだよ、なあ、ナット」

 「また派手にやったもんだな、バイケン」
 突然後ろから何者かに声をかけられ、バイケンは驚きながら振り返った。全く気配を感じなかった。それこそ微塵もだ。

186 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:40:09 ID:shK785nE0
 「そこにいるのは誰だッ」
 バイケンは叫んだ。振り向きざまに叫んだ。
 暗がりから、こちらを覗く一体の影法師──影法師がジッポーライターに火をつけた。

 ライターの炎で、葉巻の先を炙る男の素顔──バイケンは、映し出された男の顔に見覚えがなかった。
 男の髪は短めのブロンドヘアで鼻は丸っこい団子鼻だった。目は垂れ下がって、口元がしまりもなく、にやついている。

 愛嬌のある顔ではあるが、お世辞にもハンサムとはいえない。
 「おいおい、俺を覚えてないのか。冷たいなあ」

 男が親しい友人に話しかけるように、バイケンに向かって気さくに声をかける。

 記憶の糸を手繰り寄せてはみたが、やはり身に覚えはない。なるほど、銀河パトロールの犬ってとこか。
 恐らくは犯罪現場を押さえる為に、こちらをつけ回していたのだろう。それなら納得がいく。
 「兄ちゃん、人殺しを見られたとあっちゃ、生かしておけねえ。悪いがここで死んでもらうぜ」

 バイケンが引き金を引いた。路地裏に閃光が走った。
 闇夜を引き裂く銃声──死の間際、バイケンの瞳に黒光りする男の左腕が焼きついた。

 鈍色に輝いた紡錘形のフィルム──それはまるで死神の鎌を彷彿とさせた。
 「サ、サイコガン……」
 バイケンの瞳から命の灯火が、ふっと消えうせた。前のめりに崩れ落ちる。

 サイコガン──最後に遺したその言葉が、バイケンの墓碑銘となった。

187 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:41:30 ID:shK785nE0
 闇に沈んだ廃屋で、キリコは赤ん坊を優しく抱きしめた。夜風のせせらぎと静かな月の光。
 キリコ・キュービィー、それがこの男の名だ。キリコ──神の後継者と呼ばれ、神を殺し、そして神の赤ん坊を連れ去った男。

 その半生は神秘と伝説に彩られ、マーティアルですら恐れおののいた。

 カインは森にある一際大きな老いた杉の木に登り、二百メートル離れた廃屋の壊れた窓から、暗視スコープ越しにキリコの様子を覗った。
 異能生存体/不死身の男/触れ得ざる者──本当にそうなのか。元レッドショルダーだけあって、確かに腕は立ちそうだ。

 スコープドッグを扱わせれば、超一流の腕前を誇るのだろう。だが、今はどうだ。足手まといの赤子をつれ、武器は一丁の銃のみ。

 奴を消せば、名があがる。カインは愛用のライフルを手に取り、構えた。自作したステンレスの銃身が、カインの眼に頼もしく映る。
 スコープのピントをあわせ、汗で蒸れた掌で、グリップを握った。ストックに右頬を張り付かせる。ライフルの照準が、キリコの頭部に狙いを定めた。

 カインは胸の奥底で、小さなざわめきを感じた。ざわめきを振り払うように遊底をスライドさせ、チャンバーにライフル弾を送り込む。
 
 激しく胸を打つ心臓の鼓動、血管を駆け巡る血潮──ゆっくりと息を吐き、カインはライフルの引き金を絞った。
 反動──ライフルの床尾が、カインの肩に食い込んだ。やったかっ!?カインはスコープを通して、一筋の血が宙に舞うのを見た。

 廃屋の床に倒れるターゲット──呆気ないものだ。所詮は相手も生身の人間、伝説には尾ひれがつくものと相場は決まっている。
 カインが通信機のスイッチをいれた。

 『やったぞッ、キリコを仕留めたぞッッ!』
 応答はなかった。通信機のダイヤルを回し、カインがマイクに何度も呼びかけ続ける。だが、帰ってくるのは雑音だけだった。
 『おいっ、ボブっ』
 数秒後、森にバハウザーの銃声が木霊した。

188 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:42:56 ID:shK785nE0
 惑星アルディーンはザ・ゴザと並ぶ戦場の星だった。金に目が眩んだ命知らずの傭兵と、賞金首のお尋ね者が集う星、
 それがアルディーンだ。巨大なドームが割れ、次々と宇宙船が飛来していく。
 
 空中に掲げられた航路標識を小型の飛行艇が横切った。ここはアルディーンの首都だ。
 傭兵達が雑多で薄汚れたメインストリートを行きかう。

 通りの角に備え付けられたシャワールーム──曇りガラスから湯飛沫の音が聞こえた。
 熱い湯を浴び終え、キリコがシャワーのコックをひねって、湯を止める。
 タオルで身体を拭き、オレンジ色の耐圧服を着込むとキリコがシャワールームから出る。

 「ああ、さっぱりした。これで綺麗な姉ちゃんでもいればなあ」
 キリコと同時に隣のシャワールームから男が出てきた。肩から湯気を立ち上らせ、陽気に鼻歌をうたいながら、男が髪の毛を指でぬぐう。
 「よう、キリコ」

 男がキリコにウインクし、今から飲みに行かないかと誘った。キリコが無言で頷く。
 それじゃあ、いこうぜと男が葉巻を唇の端に咥え、ジッポーで火をつけた。男の陽気な振る舞いと出で立ちは、キリコに若い頃のバニラを思い起こさせた。
 ふたりが大通りへと出て、いきつけのバーへと向かう。

189 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:43:26 ID:shK785nE0
 激しいドラムとベースのリズム、耳を聾するエレキギターの咆哮。カウンターに並ぶスティールにふたりは腰を下ろした。
 コブラがバーテンにライトビールを二つ注文した。キリコはあまり酒が飲めない。ビールを嗜む程度だ。
 この前、コブラがバーボンを奢ってやったら、酒の度数にキリコは顔をしかめていた。

 薄暗い照明、天井からつり下がった裸電球は、絞首台にぶらさがった死刑囚のように音もなく揺れていた。
 ふたりが知り合ったのは、ほんの二週間前だった。

 ATの訓練場で、右も左もわからず困り果てていたコブラにスコープドッグの操縦を教えてやったのはキリコだ。

 眼を見張るばかりの吸収力だった。コブラは凄まじい集中力と適応力を見せ、一週間もしない内にATの完璧な操作技術を身につけた。
 最初は全くの素人だった。当たり前だ。コブラはこれまで、ATを見たこともなかったのだ。

 異能者──それがキリコの脳裏に浮かんだ言葉だった。
 「ここの酒場は華がないね」
 「それは言いっこなしですぜ、旦那」

 バーテンが運んできたビールグラスをコースターと一緒にふたりの前においた。
 「でもよ、色気ってもんがないぜ。男ばっかで、むさ苦しいったらないね。悪い事は言わない。可愛い子をウエイトレスに雇いな」
 バーテンに軽口を叩きながら、コブラがグラスのビールを半分ほど飲み干す。
 「ま、ビールの味は悪くないがね」

190 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:45:11 ID:shK785nE0
 「そういえば、おふたりさん、サラマンダーの噂はご存知ですか?」
 グラスを磨きながら、バーテンがふたりに尋ねた。
 「サラマンダー?なんだ、そりゃ?」
 コブラがバーテンに聞き返す。バーテンが声をひそめて喋りだした。キリコが静観したまま、バーテンの話に耳を傾ける。
 「たった一機で二十機のATを仕留めたっていう、化け物の話ですよ」
 「へえ、そいつはおっかねえな、くわばら、くわばら」
 
 「旦那、あっしの話を信じちゃいないでしょう。でも、こりゃ本当のことなんですよ。
 サラマンダーっていうのは赤いATに乗ってるから、そんな名前がつけられたそうなんですがね。金さえ貰えりゃ、どの陣営にもつくっていう流れ者でさ」
 「なるほどね。まあ、用心はするよ」
 コブラがグラスを傾けながら答えた。


 低い空、暗雲が重く圧し掛かってくる。森と森を隔てる川──黒い急流を二体のスコープドッグが泳ぐように突き進む。
 水深に足を取られないように注意しながら、岩床の裂け目に流れ込む、強く引っ張るような川の力をふたりの男は感じていた。

 川岸にたどり着き、泥濘を踏みつけながら、キリコは辺りに敵兵が潜んでいないか警戒した。
 地面から突き出た岩場の影、生い茂った茂みの中、苔むした倒木にカモフラージュし、敵はどこからでも飛び出してくる。
 何の前触れもなく、飛び出してくる。何気なく落ちている枝、松の木から伸びた葉、何気げない自然物でさえ、敵は利用する。

 葉のこすれる音、踏みつけた枝の折れる音、これらの鳴らす音が敵にこちらの存在を告げるのだ。
 ──おい、キリコ、そっちはどうだ?
 コックピット内の通信機からコブラの肉声が飛び出す。
 ──問題ない。
 ──OK、こっちもだ。

191 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:46:44 ID:shK785nE0
 
 互いに背を張り付かせ、死角を補いながら、ふたりはすすむ。目的の場所へと。
 山の冷たい風が、木々の間を通り抜けた。ふたりが深い谷底へと降りていく。
 急な勾配な岩肌を駆けおりると、だだっ広い平地に出た。

 断崖に囲まれた谷間には、障害物や隠れられるような場所はなく、ふたりは敵に会うこともなく目的地へとたどり着いた。
 ──おい、キリコ、なんだか妙な胸騒ぎがしやがるぜ。敵さんは一体全体、どこにいるってんだ。

 コブラは拍子抜けするほど無用心な敵を逆に気味悪がっていた。それはキリコも同感だった。
 ──もしかしたら、罠かもしれない。
 ──俺もそう思うね。それじゃあ、こっちから燻りだしてやるとするか。

 パネルを眺めていたコブラが、おもむろにヘビィマシンガンを乱射する。弾丸を浴びせられた岩壁が砕け、地面が抉られる。
 渓谷に大きく響き渡る銃声、硝煙の匂いが一陣の風に吹き抜けた。
 ──へへ、どうやらおいでなすったぜ。

 地面が盛り上がり、土にまみれた四機のツヴァークがその姿を現した。ローラーダッシュの鋭い回転音。
 轟音をあげ、岩棚から飛び降りた六機のスタンディングトータスが、ふたりの目前へと迫る。
 敵は十機、こちらは二機だ。
 ──面白くなってきやがった。

 ふたりが左右に旋回しながら、敵の銃弾を回避する。キリコの撃った数発の弾が敵の装甲を貫いた。
 ポリマーリンゲル液に引火し、一機のツヴァークが回りの仲間を巻き込んで爆破した。

 鼓膜を震わせる爆音、吹き上がる紅蓮の炎、機体の破片が岩肌に突き刺さる。ゴーグル越しにキリコは敵を見据えた。

 アルディーン──そこはもっとも地獄に近い惑星だ。コブラが、断崖から突き出た岩に向かってアサルトライフルを発砲する。
 まるでビリヤードのように跳びはねる弾丸が、二機のスタンディングトータスのタレットスコープにヒットした。
 スタンディングトータスのコックピット内で、血が派手にぶちまけられた。

192 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:55:57 ID:shK785nE0


 ──これで敵さんは半分に減ったな。おまけに相手は及び腰だぜ。
 敵が怯んだ隙をつき、キリコとコブラが示し合わせたように同時に動く。

 右腰に装着したミサイルランチャーをキリコが立て続けに発射し、二機を吹き飛ばすと、ターンピックを地面に打ち込み、反動を利用する。
 キリコへと追いすがるように接近するツヴァーク──顔面にアームパンチを浴びせた。

 バウンドするツヴァーク。焦げるようなモーター音──後方へと吹き飛び、ツヴァークは炎に飲み込まれた。
 ──おい、キリコ、ありゃなんだ?
 
 キリコが谷を見上げた。崖からこちらを見下ろす深紅の機体。突然、深紅の機体がこちらに攻撃をしかけてきた。
 唸りあげるロケット砲が断崖に炸裂した。瀑布の如く降り注ぐ岩盤が、残った敵の機体をスクラップにする。
 深紅の機体がキリコとコブラに向き合い、再びロケット弾を撃った。

 発射された小型ミサイルが、キリコの乗ったスコープドッグ目掛けて襲い掛かる。
 コブラがコックピットの蓋をはねあげた──ミサイルが空中で花火のように爆発した。

 キリコは見た。コブラの左腕を。そこに腕はなく、肘から先にあったものは銃だった。
 キリコは動揺した。それは深紅の機体も同じだった。身を翻し、深紅の機体がふたりの前から姿を消す。
 「なるほど。奴がサラマンダーか」

 コブラが葉巻を咥えた。
 「コブラ、引き返すぞ」
 銃撃戦を聞きつけた敵の傭兵がこちらに群がってくるのがわかった。あいよと返事をし、コブラがコックピットの蓋をしめる。
 それからふたりは森の奥へと戻っていった。そのふたりの後姿を見送ると、深紅の機体もまた姿を消した。
 岩の裂け目から消えた三機の様子をスコープ越しに探っていた男──流竜馬が呟く。
 「この星にはおもしれえ連中がいるようだな」

193 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/15(金) 04:57:54 ID:shK785nE0
第一話終了

194 追い出された名無しさん :2013/03/15(金) 22:49:39 ID:poXppeK20
なんちゅうクロスwww
今後の期待大

195 追い出された名無しさん :2013/03/16(土) 02:20:42 ID:wEO5ghAQ0
GJ
忍法帖関係か規制で本スレに投稿できないのかな?

196 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/16(土) 17:49:50 ID:shK785nE0
本スレに投稿すると規制中って出るんだよね。

197 追い出された名無しさん :2013/03/16(土) 19:44:33 ID:wEO5ghAQ0
代理に本スレへの投下必要ある?

198 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 03:25:00 ID:shK785nE0
出来れば本スレへの投下代行してもらえると嬉しいよ。

199 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 03:28:52 ID:shK785nE0
あとこのクロスSSは某所で投下したのを書き直しながらする予定だよ。

200 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 03:33:56 ID:shK785nE0
ミッター橋が強い突風にあおられて、グラグラと揺れるように傾いだ。キリコが橋の中央までいくと、橋下を見おろす。
 打ち寄せる汚水の波が、コンクリートの壁を引っかいている。
 排水溝が垂れ流す廃棄物──ヘドロの川から昇る異臭がキリコの鼻腔を撫でた。

 コブラの左腕は義手だった。義手の中に仕込まれていたのは銃だ。

 帰還した後のキリコは、コブラの左腕については何も尋ねなかった。元来が口数の少ない男だ。
 尋ねる必要などなかったし、誰しも他人に聞かれたくない事情がある。それはキリコ自身が良く知っていた。
 
 血に染まった戦場を生き抜いてきた男達だ。何も語らずとも察する事ができる。
 バイマン──レッドショルダー部隊に所属していたキリコの戦友のひとり。

 バイマンもまた、戦場で右手を失った男だった。
 伊達男の右手にはまった銀色の精巧な義手の輝きを、キリコは今でも覚えている。

 キリコは嗅いだ。コブラの身体に染み付いた硝煙と血の臭気を。
 キリコは見た。死の陰りを纏わせたコブラの後姿を。 
 キリコは感じた。コブラもまた、己と同様に戦いの中でしか生きられぬ男であるという事を。

 ふたりは性格は違えど、似た者同士だった。まるで兄弟のように。

 通行人が投げ捨てたタバコの吸殻が、真っ黒く染まった河面に吸い込まれていった。
 星一つ見えない夜空、排気ガスの黒い人口雲、タール舗装の道路を横切り、キリコは近くにある食堂に入った。

 キリコはウエイターにブラックコーヒーを注文した。ニコチンの匂いが滲む食堂で、キリコは運ばれてきたコーヒーを飲んだ。
 ここは血と暴力が渦巻く戦場の星アルディーン──キリコが飲むアルディーンのコーヒーは苦い。

201 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 03:37:43 ID:shK785nE0



 食堂を出てから月のない殺風景な夜空を眺めるキリコ。いつもの酒場へと歩を進める。
 コブラとキリコが良く集う、その酒場の名前は「ハッシュ・ハッシュ・ハッシュ(マリファナだらけ)」といった。
 何故、そんな名前なのかは誰にもわからない。バーテンですら知らなかった、
 
 酒場に陽気なサックスが響いた。赤々と燃えた葉巻の煙を吐き出し、コブラが空になったグラスをコースターに置く。
 溶けかかった氷がグラスにぶつかり、カランと音を鳴らした。
 「お次は何を飲みますか、旦那」

 灰皿に葉巻の灰を落とし、それじゃあ、タルカロスをくれとコブラがバーテンに告げた。
 「なんですか、そりゃ?」
 バーテンが聞き返す。コブラがやれやれといわんばかりに軽く首を振った。

 「いいんだ。忘れてくれ。んん、そうだな、じゃあ、ウイスキーのミルク割りをくれ。ミルクを抜いてな」
 仰せのままにと、バーテンがグラスに琥珀色の液体を注ぎ足す。
  
 バーのボックス席は傭兵達が陣取り、ポーカーに興じながらギャンブルの勝敗に一喜一憂していた。
 「ひひ、そういや、聞きましたよ、旦那」
 バーのボトル棚に並んだ酒を入れ替えながら、バーテンが愉快そうに笑い声をあげた。

 「何のことだ?」
 「またまた、とぼけちゃって。ちゃんとこっちの耳にゃ、届いてるんですからね。
 なんでもたったふたりで、敵さんのATを十数機も吹っ飛ばしてきたそうじゃないですか。
 まあ、旦那方が凄腕のボトムズ乗りだってのは、薄々気づいちゃいましたがね」

 「なんだ、その事か。ありゃ、敵の傭兵達が勝手に自滅したんだよ。
 奴さん達は、どうやらATライフルの扱い方がわからなかったようでな。何度もトリガーを引いたんだが、弾がでなかったんだ。
 それであいつら、何で弾がでないのか不思議がって銃口を覗いたのさ。
 その時、たまたまライフルが火を吹いてな。それで奴さんたちの頭が、半分ほど無くなっちまったってわけだ」

 「そりゃまた、随分と間抜けな傭兵もいたもんだ」
 「全くだ」
 バーテンがグラスを拭き、コブラがグラスを掲げ、ふたりはさもおかしそうに笑いあった。

202 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 04:00:48 ID:shK785nE0


 ふたりが与太話を飛ばしていると、バーのドアが勢い良く開いた。扉の向こうから現れたシルエット。
 擦り切れた赤い布地を首に巻いた機甲猟兵じみた無骨な印象を受ける大男だ。
 その男がコブラとキリコの座るカウンターの隣に腰を下ろし、バーテンにバーボンのボトルを持ってくるように告げる。

 流竜馬──それがこの男の正体だ。コブラは何となくきな臭い匂いを感じていた。
 キリコも同様だったが、口に出さなかった。
 「隣いいか?」
 ふたりにたずねる竜馬。

 「ああ、かまわんよ。このカウンター席は自由席だからな」
 おどけた口調で竜馬に返すコブラ、相変わらずキリコは何も語らず。
 「しかし、珍しい光景だな。宇宙最高の賞金首と銀河随一のボトムズ乗りが肩を並べてやがる。
 そっちがキリコ、そしてあんたがコブラだ」
 ふたりを指さしながら喋る竜馬。

 「どうやらあんたは俺達のスリーサイズまで知ってるようだが、生憎と俺達はあんたの事を知らない。
 なんだ、賞金稼ぎか、それとも俺達の首を取って名を上げたいって手合いか?」
 「物騒なもんはしまってもらえるか、生憎と俺は賞金稼ぎじゃないんでな。あんたらの首に興味はない」
 「は、どうだか」
 右手にウイスキーグラス、左手にマグナムを握ったコブラが竜馬の両眼を覗き込む。

203 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 04:10:32 ID:shK785nE0


 「実は面白い話があるんだが、興味はないか?」
 マグナムを弄びながら尋ねるコブラ。
 「面白い話だって?」 
 「ああ、ある輸送車を襲おうって計画なんだが、ひとりじゃ難しくてな」
 「その輸送車には現金か何かが詰まってるのか?」
 コブラが新しい葉巻を口に咥えた。ジッポーライターで火をつける。
 「ああ、勿論だとも」
 まとわりついてくる甘ったるい葉巻の煙を嗅ぎながら、竜馬は答えた。

 ストリートに立ち並んだ露店の行商人達が大声を上げ、客を呼び止める。

 行商人のひとりが、背中にイボを乗せた大きな牛蛙の足を引っつかみ、純粋な蛋白源はいらねえかっ、と威勢良く声を張り上げた。
 酒と女に浮かれ騒いだ傭兵達が行商人を冷やかす。ドラッグのキレたヤク中がショットガンをぶっ放す。
   毒々しくも色艶やかなネオン──その下を通る路上の人込みは絶える事を知らなかった。

 安物の香水/濃い化粧/泣き黒子/路地の一角に集う娼婦達。
 通行人に小銭をせびる老婆、路地裏にあるポリバケツの生ゴミを漁るホームレスと孤児。
 血と硝煙に包まれた惑星アルディーンにいま、三人の男達が交差する。

204 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 04:21:57 ID:shK785nE0



 アルディーンの首都──クルンテープ──意味は神の都だ。
 神の都──なんとも皮肉の利いた名前だ。ここでは誰もが死の恐怖に晒されている。
 男も女も老人も幼子も人はいつか死ぬ。問題なのは、その死に方だ。

 愛する者に見取られて死ぬか、それとも戦場の炎に巻かれて死ぬか。
 クルンテープではまともに死ねる者は少ない。それでもここの住民達は銃を手に取り、ATに乗り込んでは戦い続ける。
 
 酒場から西へ十二ブロック離れた地域を三人は歩いていた。アルディーンはどこもかしこも物騒だ。
 頭のイカレたならず者が、突発的に通行人を銃で撃つ。
 ホルスターに手をかけ、暗がりからこちらの様子を覗っているチンピラ──コブラがウインクを投げた。

 コブラに毒気を抜かれたチンピラが、暗がりへスゴスゴと退散する。
 
 どこの路上にも家を焼け出され、親を失ったストリートチルドレン達がいる。
 配線に止まるカラスのように、横に並んで物欲しそうにこちらを見ている。

 コブラがポケットを探り、小銭を掴むとストリートチルドレン達に向かって放り投げた。
 ばらまかれたギルダン硬貨に孤児達がわっと群がる。
 「さっきも話したように、狙うのはバトリング、それも闇バトルで集まった金だ」
 竜馬がストリートチルドレン達を尻目に話を続ける。

 「最初にその闇バトルに参加して、内部の様子を探り、客の金が集まってきたところを襲撃するんだろ」
 「ああ、そうだ」
 「キリコ、お前はどうだ?」
 「金に興味はない」
 無表情なままでふたりに答えるキリコ。
 「だそうだ」
 小さく頭を振り、両手で後頭部を揉むコブラ。口元に張り付かせた笑みを崩さぬ竜馬。

205 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 04:27:13 ID:shK785nE0


 「最初にその闇バトルに参加して、内部の様子を探り、客の金が集まってきたところを襲撃するんだろ」
 「ああ、そうだ」
 「キリコ、お前はどうだ?」
 「金に興味はない」
 無表情なままでふたりに答えるキリコ。
 「だそうだ」
 小さく頭を振り、両手で後頭部を揉むコブラ。口元に張り付かせた笑みを崩さぬ竜馬。


 隣では、錆びた給水塔からこぼれた水を野良犬がぴちゃぴちゃと舐めている。
 「コブラ、あんたはどうなんだ?輸送車に興味はないか?」
 「そりゃあ、無いといえば嘘になるがね」
 「なら、俺とあんたで計画を進めよう。キリコ、もし興味がわいてきたらいってくれ」
 それから三人は一旦、その場を離れた。

 特大スクリーンの向こう側では、顔面にアームパンチを叩き込まれたスタンディングトータスが、派手に転倒した。

 変形したコックピットのハッチから、夥しい血が溢れ出す。スタンディングトータスに乗っていた奴は間違いなく即死だろう。

 「くそっ、くそっ、くそったれっ、これで有り金全部スっちまったっ」
 汗ばむ掌のチケットを握り潰し、冴えない顔色をした中年の男が悔しそうに地団太を踏む。

 僅かに残っていた気力も萎えていった。乾いた唇から青い吐息を吐き、男が力なく肩を落とす。
 「おい、おい、どうしたんだい、とっつぁんよ。辛気くせえ顔してよ」
 
 後ろから声をかけられ、ムッと不貞腐れた顔を浮かべ、男が振り返る。
 「どうしたもこうしたもあるかッ。大穴狙いで新米のボトムズ乗りに金を賭けたらよ、たったの一分で全財産が水の泡さっ」
 葉巻をくゆらせ、コブラが肩をすくませて答えた。
 「そいつはご愁傷様だな、まあ、元気出せよ。その内良い事もあるさ」

 「そうだといいんだがな」
 「なんなら、とっつぁんよ。次の勝負は俺に賭けてみな。たっぷりと儲けさせてやるぜ」
 中年男が胡散臭げにコブラをじろじろと眺めた。

 「お前さんがだって?」
 「ああ、そうさ」
 男がコブラの身体つきに気付く。

206 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 04:33:47 ID:shK785nE0


 なるほど、肩幅は広く、がっしりとした筋肉に覆われた身体は素人から見ても鍛え抜かれているのがわかる。
 厳しい戦場を渡り歩く歴戦のワイルドギース──大方そんな所だろうと中年男が検討をつけた。

 「いいだろう。お前さんの言葉を信じよう。次の試合はお前さんに賭けるとするよ。だがな、ここで一つ問題があるんだ」

 中年男が声を潜めて、コブラの耳元に呟く。
 「問題だって、何の問題だ?」
 「オアシの問題さ。なんせ有り金全部突っ込んだせいで、一ギルダンも持ち合わせがないんだ。
 これじゃあ、賭けたくったって賭けられねえ」

 中年男の話に耳を傾けていたコブラが、なるほどねと、カールされた金髪をぽりぽり掻いた。

 「いいだろう。俺がとっつぁんに少しばかり貸してやろう」
 コブラの申し出に中年男がいやらしく、相好を崩す。
 「へへ、すまねえな」  
 「何、困った時はお互い様さ」
 ギルダン金貨を中年親父に何枚か手渡すと、コブラは控え室へと消えた。
 そうだ。コブラはバトリングの輸送車襲撃計画に乗った。退屈しのぎになると思ったからだ。
 控え室の呼び出しボタンを押し、コブラは整備士に向かってスコープドッグを用意してくれと頼んだ。

207 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 04:36:55 ID:shK785nE0
二話終了

208 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 05:10:09 ID:shK785nE0

一話予告

ワイズマンの手を逃れたキリコと神の子を待っていたのはまた、地獄だった。
血と硝煙が渦巻く欲望と暴力の惑星アルディーン。
悪徳と野心、退廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてぶちまけたここは、戦場の星。
次回もまた地獄に付き合ってもらおう。

209 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 05:13:43 ID:shK785nE0
二話予告

食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。牙を持たぬ者は生きて行かれぬ地獄の街。
あらゆる悪徳が武装する、ここは神の都。ここは百年戦争が産み落とした傭兵どもの血塗られた惑星。
奴らの体に染みついた硝煙の臭いに引かれて危険な奴らが集まってくる。
竜馬が飲む、アルディーンのバーボンは苦い。

210 奴らに墓標はいらない。 :2013/03/17(日) 05:15:19 ID:shK785nE0

三話予告

かつて、あの重々しき歌に送られた戦士達。故国を守る誇りを、厚い装甲に包んだアーマード・トルーパーの、ここは、墓場。
無数のカリギュラ達のギラつく欲望にさらされてコロッセオに引き出されるアルディーンの剣闘士。
魂無きボトムズ達が、ただ己の生存を賭けて激突する。
回るターレットから、コブラに熱い視線が突き刺さる。

211 追い出された名無しさん :2013/04/05(金) 12:14:38 ID:R5NOdJNA0
それにしても本スレに書き込めないな
神の軍団の仕業かってくらい規制が多い

212 力への意思 :2013/05/26(日) 22:58:55 ID:Is/rVKB20
「ちっ、こいつら物体を通り抜けられるのか!」
「あ、あああーーーーー!!」
A.M.W.Sのパイロットが悲鳴をあげた。別の幽霊に捕まり、頭を持ち上げられている。
「離せ!」
弁慶がネオゲッター3でその腕を叩き折ろうとするが、金属の拳は幽霊の体を通り抜けてしまった。
そして捕まったパイロットは、接触している頭部から次第に白くなっていき、最後に足まで白くなると、その場で砕け散った。床には白い灰の様なものが降り積もる。
「灰……!?」
「いや、塩だ。気をつけろ! こいつに捕まると塩にされるぞ!」
「塩だと!? 蒔かれる側のくせしやがって!」
竜馬は、ガトリングガンを幽霊向ける。無駄弾だけが排出されていくが、銃口を向けられた一瞬だけ、幽霊が怯む。
幽霊は壊れたA.M.W.Sに近づくと、ふいとその金属に潜り込む。さっきまでそこにあったA.M.W.Sが鎧の様に幽霊に貼りつく。
「…………この幽霊野郎! インベーダー見てぇなことしやがって!!」
A.M.W.Sの部分は半透明になっておらず、竜馬は金属が粉微塵になるまで弾を撃ち続けた。
ずるり、と天井をすりぬけ、幽霊が落ちてくる。落下先で倒れていたパイロットが踏み潰され、塩になった。幽霊はそのままネオゲッター達に手を伸ばしていく。

  バゴォッ!!

壁に大穴が開いた。A.M.W.S作成の大手、ハイアズム重工業の部屋からだった。
血糊や塩のついたA.M.W.Sを着こんだ幽霊が、装備されたガトリングガンやミサイルランチャーをネオゲッターに向ける。
「ゲッタートルネード!!」
ネオゲッター3の頭部周囲のファンから発生した竜巻が、吐きだされた弾を巻き込み、幽霊共々爆発させる。破れた鉄の扉が更に捲れあがり、壊れた研究室を露呈させる。
「やったか!?」

213 力への意思 :2013/05/26(日) 23:00:24 ID:Is/rVKB20
だがやはり壊れたのはA.M.W.Sの部分だけで、幽霊たちは平然とネオゲッター達に近づいてくる。
ネオゲッター1の両手にプラズマエネルギーが発生した。
「竜馬!?」
「外に出るぞ! こんな狭い場所で戦えるか!」
「しかし……」
「こいつらは中心の第三区画にまで入りこんでるんだ。ブリッジは塩だらけだろうよ」
隼人が代わりに言い放った。実際、飛び交う通信は、回線が込み過ぎていてまったく通信の役目を果たさず、辛うじて拾えた一言二言は悲鳴のみというありさまだ。ヴォークリンデのみならず、随伴する艦も同様なのは間違いない。
反対側の通路からも幽霊が集団で出てきた。銃口も見えないのに無差別に気化弾頭を撃ってくる。
「プラズマサンダアァァァーーーー!!」
フルパワーで放ったプラズマサンダーは、幽霊共々ヴォークリンデの数百メートルある艦体を貫いた。真空中に、空気と機体が吸い出される。
宇宙空間に放り出された瞬間から映し出された映像には、幽霊の艦体が見えた。面を覆うその数は膨大で、視界を埋め尽くすというに十分に値する。
幽霊巨大な深海魚のような外見から、次々とミサイルのような何かと、小型のロボットサイズの幽霊を吐きだしている。
「結構な数が来てるじゃねぇか」
周囲に漂う戦艦やA.M.W.Sの残骸を見ながら、竜馬は再度プラズマサンダーの発射態勢に入った。
「竜馬、避けろ!」
物理攻撃を受け付けない幽霊相手に分が悪いネオゲッター2は避けるしかない。細かに動きながら、発射前の無防備になる一瞬、ネオゲッター1に幽霊が群がってきているを見た。トルネードを発生させているネオゲッター3には取りつきにくい様で近づいていかない。
幽霊の一匹がネオゲッター1の頭部にくっついた。そのまま装甲を無視して竜馬に向かって手を伸ばす。
「くそっ!」
竜馬は咄嗟に機体を振って振り落とそうとしたが、鉤爪の様なものでしっかりくっついており、容易には剥がれおちない。ヘルメットを通り抜け、爪が竜馬の頬に当たる。
顔を掴まれた、その感触は確かにあった。

214 力への意思 :2013/05/26(日) 23:02:49 ID:Is/rVKB20
「だったらそこからぶっ殺すまでだ!!」
咄嗟に操縦桿から手を話、幽霊の腕を逆に取ろうとする。掴まれた頬と、掴んだ指先から、一気に全身に緑色の線が走った。
「うおおおおおおおおお!!!!」
群がる幽霊がゲッター線に触れ、風化していく。10体近くの幽霊が消し飛んだところで、ゲッター線は消えた。
「竜馬!?」
「無事か!?」
隼人と弁慶が慌てて機体を近づける。ネオゲッター1の中で、竜馬は貧血でも起こしたかのように、ぐったりとシートに凭れて荒い息を吐いていた。
「大丈夫だ……あいつら、ゲッター線ならぶっ飛ばせる…………!」
「取りに行くのがちと面倒だがな!」
遠巻きに見ていた幽霊達が、一斉に更に群がり始めた。能動的に動いているのが、もはや自分達だけらしい。
「ゲッタートルネード!」
ネオゲッター3が回転をしながらエネルギーの竜巻を起こし、幽霊を追い払う。
「どうする……? 何か手はないか……?」
隼人は周囲に目を配った。沈黙した戦艦のエンジンでも爆発させればロジカルドライブが暴走して、幽霊達をどこかの位相に吹っ飛ばせるが、こちらも見ず知らずの辺境に飛ばされる可能性もある。その時は避難信号で拾ってもらえばいい。
「やるか……!」
プラズマソードをドリルアームに変形させると、まだエンジンが無傷の艦に向かって飛んだ。
刹那。
爆光が迸った。衝撃波も何も伴わない、青白い光が数百天文単位に波紋を広げる。
光に触れた幽霊が、次々と実体化していく。
「なんだこの光は!?」
「実体化……発生先は!?」
「んなのどうでもいい」
ネオゲッター1は手近な幽霊を鷲掴んだ。
「こいつらをぶっ殺せるようになったんだからな!!」
そのままぐしゃりと握りつぶすと、ショルダーミサイルを視界360度全方位に向けて放った。
「ドリルアーム!!」
隼人もネオゲッター2の両手のドリルで、幽霊の只中に突っ込んでいく。一番近くの戦艦クラスの大きさのものに突入すると、そのまま反対まで通過した。
ネオゲッター3は背中からプラズマブレイクを撃ちだし、次々と幽霊を撃破していく。
「いくら実体ができたからといって、これじゃキリがないぞ!」
「戦艦クラスだけでもまだ20近くある! 先にそっちを……」
「あれだっ!!」
突然竜馬が叫んだ。そのままネオゲッター1を反転させ、ブリッジもエンジンも破壊されたヴォークリンデに向かって行く。
壊れたヴォークリンデの一角から、幽霊にまとわりつかれた巨大な一枚の板がせり上がってきた。それはヴォークリンデの真上に制止している戦艦クラスのクジラのような幽霊に格納されようとしている。
「隼人!」
「任せろ!!」
隼人はネオゲッター2をフルスロットルにして、その物体に高速接近する。防ぎにかかる幽霊はそのままドリルで貫き、攻撃してくる他の幽霊はネオゲッター1とネオゲッター3が撃ち落とす。
だが最後の肉の壁に手間取っている隙に、幽霊達の周囲を丸く削り取るかのように空間が開いた。
「ゲートジャンプする気だ! 間に合わせろ! 隼人!!」
「うおおおおおおお!!!!」
更に加速し、幽霊の壁を貫き終わった瞬間、板を収納した巨大幽霊が消えた。
「ちっ、間に合わなかったか……」

215 力への意思 :2013/05/26(日) 23:04:41 ID:Is/rVKB20
以上です。

216 力への意思2話-11 :2013/06/16(日) 22:52:42 ID:Is/rVKB20
(いきなり話かけるんじゃねえよ!!)
(お前にしか話しかけられないからいいだろうが。
それより、今の感覚わかったか?)

自分とまったく同じ声――流竜馬の声――が、竜馬の頭の中に響く。

(今の、音か? 何か落ちたんじゃ……)
(違う。あの部屋の物が物理的に落ちたんじゃない。何処かで何かが傾いたんだ。まあ、まだ俺もそれが何か分かる程進化してないがな。
そっちにいる間は、俺の感覚とリンクさせておくから、ちゃんと調べてこいよ。例のモンは、多分この音と関わってる気がする)
(勝手にそんなもん取りつけるんじゃねーよ!)

文句を言っても返事も返ってこない。竜馬は舌打ちすると、談話スペースに戻った。

「それで、第二ミルチアだがな」

隼人は特にそれに頓着することもなく話の続きに入る。

「U.M.N管理局の中央センターがある。隠ぺい資料なんかも含めて、そこを調査するのが一番だろう」
「なるほどな。
しっかし何時までスパイごっこをするんだ? 俺にゃ性に合わねえよ」

弁慶の言葉に俺もだと言いたいが、竜馬は黙ってコーヒーを飲んだ。性に合わないスパイごっこをさせている本人も、全くそういうのに向いていないのがわかっているからだ。

「そこまでの潜入は別に俺達でなくてもいいだろう。ハイパースペースを抜けたら、艦に連絡を入れて別部隊を……」

突然、艦内に緊急帯の通信が入った。艦内通信用のモニターが勝手に開く。三十代ぐらいの、金髪をオールバックにした男性の顔が映った。

『前方を航行中の民間船へ。
ハイパースペース内で戦闘が発生している。貴船の安全の為、速やかにゲートアウトする事を勧める』

同じ通信を強制的に聞かされているマシューズ達は血相を変えた。

『お、おいちょっと待て!
ハイパースペース内で戦闘だぁ? どこのバカだ、おまえら!!』
「へっ、どうやら面白いことになってるじゃねえか」

竜馬達は凶悪な笑顔を浮かべると、ブリッジに通信を繋げる。

217 力への意思2話-12 :2013/06/16(日) 22:54:08 ID:Is/rVKB20
「おい、戦闘ってのはどの規模だ?」
『よしてくれ! 厄介事はあのロボねーちゃんだけで十分だ!』
「だから追っ払ってやるってんだよ! カーゴベイ開けろ!」
『バカ言うんじゃねえよ! A.M.W.Sで出る気か!?』
『小型艇を数十機の戦闘機が追ってる。救難信号が小型艇から発せられているんだ』

ケイオスはブリッジのカメラ映像を竜馬達の方に回した。
丸っこい形の小型艇の後ろを、可変構造の戦闘機が追いながら、射撃を繰り返している。小型艇のパイロットの腕が良いのか、今のところ被弾はない。

『何処の所属だ、こいつら!? 
ヴェクターのねーちゃんは知ってるか!?』
『うちの製品じゃないと思いますけど……』

シオンがのんびり返事をしている間に、小型艇はエルザの側面を回って前方に出た。戦闘機がそれを追う。

『まずい! 射線軸に載ってる!』
『何だと!?  かわせ!! 境界面に触れたら御陀仏だ!!』
「今すぐカーゴベイ開けろ!」

竜馬は怒鳴って艦内通信を切ると、隼人と武蔵と共にエレベーターに駆け込む。
第六層のカーゴベイに着くと、ネオゲッターに飛び乗った。同時に被弾したのか、船体が揺れる。

『やりやがったな、このトーヘンボク!!』
「だから言ったろうが!」
『わーったよ! 
ケイオス!』
『了解』

目の前の壁が開く。三機のネオゲッターがワームホールの内側のハイパースペースに飛び出した。

「ゲッタートルネード!」
ネオゲッター3はエルザの上部に着くと、すぐに後方から追い上げてくる戦闘機めがけてトルネードを発生させた。よじれたビームがエルザを掠め境界面に吸収される。

「プラズマソード!」
高速で飛んだネオゲッター2は、後方からのビームの嵐を避けながら前方を行く戦闘機に追いつくと、次々とそれらを斬っていた。

『ちょっ……A.M.W.Sで戦闘機以上の機動とかありえないですよーーーっ!?』

アレンとハマーがブリッジでそのスピードに目を剥いた。

「チェーンナックルゥーーー!!」

ネオゲッター1は近くに来た戦闘機を蹴飛ばして弾くと、チェーンナックルで自分と同サイズの戦闘機を鷲掴みにすると、そのまま振り回して付近の戦闘機と一緒に境界面に叩きつけた。圧縮された時間と空間の狭間に飲み込まれ、たちまち分解されていく。
戦闘機群を全滅させたところで、更にまた別の戦闘機群が出てきた。

「新手か! しつこい野郎どもだ!」

しかも先程のものよりも機動が早い。

『巡航速度を維持し、降伏しろ。しからざれば攻撃する。
繰り返す。巡航速度を維持し、降伏しろ。しからざれば攻撃する。こちらの指示を遵守すれば、危害は加えないことを確約する』

合成された音声に、及び腰だったマシューズの表情が引き締まる。

『自律戦闘端末<オーテック>か。くだらねぇ。
見え見えなんだよ! 死人に口無しってな!
トニー! ジェネレータ出力最大! 船でヤツを吹っ飛ばせ!!』
『おっしゃぁ!
お客さん達、しっかりつかまってろよ!!』
『わあ、何するっすかーーーっ!』

ハマーはトニーが操縦桿を引っ張った瞬間に嫌な予感がした。
エルザの船体が船尾側に傾いた。境界面に接触した装甲から炎が噴き上がり、エルザ後方の空間を埋め尽くす。

「ハイパースペースでウェーブライドかよ! イカレてやがる」

竜馬は犬歯を剥きだして笑うと、隼人のいる方に目を向けた。辛うじて炎の飛沫を免れた戦闘機が、ビームを放ちながら小型艇とネオゲッター2に向かっている。
一条のビームが小型艇に当たった。

「ドリルアーム!」

ネオゲッター2は両手をドリルに変形させると、ほぼ平行に突っ込んでくるオーテックを同時に貫いた。

「おっと!」

そして境界面に接しそうな小型艇を抱え上げる。1秒にも満たない早技だった。

218 力への意思2話 :2013/06/16(日) 22:54:43 ID:Is/rVKB20
以上です

219 追い出された名無しさん :2013/08/10(土) 17:26:31 ID:3BNZIxfw0
つながらないな
盆前だしな
例のたかしげゲッターに辛口コメントがあってワロウタ

220 追い出された名無しさん :2013/08/10(土) 19:27:01 ID:.vhqGgJw0
僕は一巻買ってないけど読みました(半ギレ)
それにしても規制半端なさすぎワロエナイ、たすけて汚穢衆!!

221 追い出された名無しさん :2013/08/10(土) 22:45:41 ID:3BNZIxfw0
電子書籍版いつの間にかなくなったしな

222 追い出された名無しさん :2013/08/12(月) 00:38:52 ID:inkvUpdE0
SS書こうと思っても他のことに気を取られてしまう…………
畜生…………

223 力への意思5話-9 :2013/08/15(木) 16:07:25 ID:Is/rVKB20
次に来たのは、何処かの森の中にある教会の前だった。
モモがその場に泣き崩れる。
「う……う、うう……。
パパ……初めて、会えたのにっ……!」
「モモ……」

Jr.がモモの方に手を置く。

「思い出して泣くのもいいが、今はやめておけ。この世界は起きた時間軸を再現しているだけに過ぎん」

隼人はそういうと、さっさと教会に向かって歩き出す。慰めの言葉はジギーとJr.が勝手にかけてくれるだろう。
教会の入り口で、走ってきたらしいシオンとアレンに出くわした。

「シオンか?」
「リョウマさん。あっちにはJr.君達も……。
あなたたち、どうやってここに?」
「わかんね、シオンがダイブした途端、視界がぼやけて……気付いたらここに来ていた。
その後、いろんなもの見せられて……」

Jr.が苦い顔で返事をする。

「そっちはヴォークリンデの映像を見ていないのか?」
「え? ベンケイさん達は、ちゃんと追体験できたんですか?
僕ら全員、主任のエンセフェロンダイブに引きずられたんでしょうか?」
「まさか……。みんなは接続してなかったのよ」
「でも、KOS−MOSから発信されるパルスがダイブモジュールを介して逆流したとすれば、考えられない話じゃないですよ、うちで採用してるのは、非接触式ですし」
「だとしても、簡易モジュールではその負荷に耐えられないわ。なにかもっと別の外的な力がないと……」
(いや、KOS−MOSだかマリアだか知らねえが、モジュールなんて関係なくできたはずだ。ただ、そのチャンスがくるのを待ってただけってことだ)

竜馬がケイオスを見ると、彼は曖昧に笑って答えた。

「いずれにせよ、ここはKOS−MOSのメインフレーム―――いわゆる内的世界。僕らの持っている記憶が共鳴した結果 創造された世界……そんな感じがする」
「でも、僕にはこんな場所、記憶にありませんよ。それに、それなら僕とかベンケイさん達の記憶とか混じっててもいいはずじゃないですか?」
「そうだね。
記憶――つまり、過去に起きた出来事は、同一の時間軸、空間軸が共鳴することによって、より強固で優先的、選別的なものになるんじゃないかな。
そう考えれば、僕やアレンさんの記憶が反映されていなくても不思議じゃない」
「要するにこの世界は、共通の空間的、時間的体験を持った者たちによって常に変化するということか」
「そうなるな。そのうち俺達の記憶も出てくるかもしれん」
「みんな幻なんですか?」

モモの疑問にシオンが微かに震えながら首を振った。

「幻覚と現実は、それを体験する主体者にとっては同じことよ。これは幻なんかじゃないわ」
「主任……」

224 力への意思5話-10 :2013/08/15(木) 16:09:03 ID:Is/rVKB20
教会の中に入ると、礼拝所を20歳ぐらいの女性が一人で掃除をしていた。灰色のショートボブにロングスカートの清楚な感じだ。

「レアリエンか」
「ええ、たしかにレアリエンみたいですけど……でも、ちょっと違う感じもします。もっと人間に近い……」

モモの観測装置はその女性を見て、微かな違和感を伝える。

「モモちゃん、観測できるのか?」
「え? は、はい……」
「今まで見せられた一方通行の光景とは違うようだな」

隼人の考察を受けてジギーが尋ねた。

「君はレアリエンなのか?」
「はい、フェブロニアといいます。レアリエンの安らげる場所が欲しくてこの教会の手入れをしているんです」

聖母の笑みという言葉がぴったりのフェブロニアの笑顔に、シオンが2,3歩よろける。

「フェ、フェブロニア……」
「知り合いか?」
「私、知ってる……知ってるわ…………あなたを。
でも、嫌……思い出したくない……。だって、だって……」

いやいやと頭を振って逃げようとするシオンに向けてフェブロニアはまた微笑んだ。

「シオン、いらっしゃい」

フェブロニアは教会の裏手に出る扉の方に向かうと、先にその向こうへと出て行った。

「シオン」

そのフェブロニアの後ろ姿に重なって、10歳ぐらいのオレンジ色の長い髪を持った少女が現れた。

「なんだこのガキは」
「ネピリム……」

ネピリムは竜馬達にまるで闖入者を見るような視線を一瞬向けると、シオンにその視線を固定する。

「その扉を開けた瞬間から、あなたたちは自分自身と向きあっていくことになる。
それは、とても辛くて哀しいこと……。
だけどそれは、あなたたちにとっても私たちにとっても、とても大切なことなの」
「何が出てくるか知らねーが、そんなもん見せる為に呼びつけたのか?
見せたきゃ見てやるが、とっとと元の場所に帰せよ」
「え?」

大股でずかずかとフェブロニアの後を追った竜馬達を見て、ネピリムやシオンは当惑した表情をした。

「ネピリム、もう、そんなことをしなくてもいいんだ」

ケイオスはそう言うと、晴々とした表情で竜馬達の後を追った。

225 力への意思5話-11 :2013/08/15(木) 16:10:49 ID:Is/rVKB20
「ケイオス!? どういうことなんだ!? おい!」

Jr.達も慌てて後を追う。
扉の向こうは、灯りの落ちた病室だった。
医者と看護師と、普通の服を来ているから見舞いの者と思われる死体。そしてベッドの上に群がるレアリエン達。
レアリエン達は布団に浸みてもなおしとどに流れ落ちる血の中で、貪っていた。

「暴走レアリエンってのは人を喰うのか……」
「い、いや……」

シオンがか細い声をあげる。

「ここは重篤神経症治療施設。あなたのよく知っているところよ」
「い、いやあああああっ!!!!」
「くひひ……!」

シオンの悲鳴に混じって、甲高い子供の笑い声がする。窓の外には、白い髪をしたJr.と同じ顔の子供が、隣のビルの屋上で笑い転げていた。

「アル……ベド……」
「きひひひひ!
歌、歌声が……僕を……ひゃはははは!
鏡よ、僕を映せ! 僕を定義しろ……! うひゃひゃ!
僕は無限のテロメラーゼだ! 僕は反存在なんかじゃない……完全なる連鎖だーー!!
あーっはっはっはっあっはっひゃっひゃははっはっははひゃひゃひゃはっはーひゃひゃっひゃひゃひゃひゃはは!
「う……うわあああああああっ!」
「いやああああああっ!」
「主任、Jr.くん! いったいどうしちゃったんですかっ! ねぇっ、主任……」
「あー、うるせえ!」

笑い声に殺意を憶えた瞬間、竜馬の手に勝手に銃が出現した。

「そうか、エンセフェロンの中だから好きな様に……」

過去に起こった出来事を変えることはできないが、今この面倒な映像を消すことぐらいはできる。銃が出現したということは、そういうことだろう。
竜馬は躊躇なく引鉄を引いた。隼人も弁慶もショットガンやマシンガンを手にして、目の前の光景をガラスの様に打ち砕いた。

「よーし、以上だな?
他に見せたいものはあるか?」

ネピリムは竜馬達の態度に怯んだように一歩退いた。

「あなた……あなたは……違う……」
「うるせえ! さっきからワケのわからないもんばっかり見せやがって!
いい加減に説明しろ! でなきゃてめーら全員殺せないまでもここの背景ぶっ壊すぞ!!」
「ひい〜〜!! や、やめてください!」

慌てて止めに入ったのは腰が引けているアレンだった。

「エンセフェロンが崩壊したら、接続している僕達全員、廃人になっちゃいますよ〜〜〜!」
「根性がねえからなるんだよ!」
「何無茶苦茶な事言ってるんですかーー! 根性のある人だってなっちゃいますよ〜〜!!」

半べそをかきながらしがみついてくるアレンを弁慶の方に押しやり、竜馬はネピリムに銃口を向けた。

「ごめんなさい」

226 力への意思5話-12 :2013/08/15(木) 16:12:06 ID:Is/rVKB20
謝罪をしたのは、フェブロニアだった。周囲は草原と、一本の大木に切り替わっている。

「私達は、この意識の世界でだけしか存在できない。だから実数世界に助けを求めるには、こうするしかなかった」
「くどくど言いわけすんな。もっと短く言え」
「私の妹達を解放してあげて欲しいの」

大木の下には、座って微笑むフェブロニアと、その周囲を駆け回っている女の子が二人いた。

「……なんか変じゃないか?」

弁慶が二人の子供を見て言った。女の子達は、ずっと同じ方向だけをぐるぐると回り続けているのだ。
「そうですか? 楽しそうな光景に見えますけど」
「子供ってのはもっと好き勝手に追いかけっこするもんだ。あれじゃまるで……」
「ええ。ここは、あの子たちを捕らえた檻なの。
私達はゾハルを制御するために、創られた、”人間と誤認される”トランスジュニックタイプのレアリエン。
そしてあれは人が創ったシステムによる呪縛。でも、あの子たちにとっては現実の世界そのもの。
ここから解放してあげて欲しい、妹たちを……。
私はそれをシオンに頼みたかった」
「わ、私に……?」
「でも、それはとても辛いことを思い出させてしまう。今のあなたは忘れることで自分を保っていられるのに。
もし、関わり合いの無いあなた方にお願いしても良かったら、どうか……」
「まあいい。考えといてやる。
てめーはどうなんだ?」

睨みつけられたネピリムは、少し落胆した様子で口を開いた。

「私は……ただ未来を変えたかっただけ」
「未来を、変える……?」
「私達が存在できるのは、意識の世界だけ。だから、私を見れるシオンに接触したの」

ネピリムは背伸びをして、シオンの眼鏡に触れた。

「やめて!」

思わずその指先を叩き落とす。

「主任……?」
「あ……ご、ごめんなさい……」

ネピリムはシオンの態度に頓着はせず、首を巡らせた。

227 力への意思5話-13 :2013/08/15(木) 16:14:14 ID:Is/rVKB20
視界は一気に宇宙空間になり、目の前に惑星が一つせり上がってくる。

「あの惑星は?」
「……旧ミルチア……!」

シオンが目を見開く。
そのミルチアに向かって飛来する物体があった。

「あれは……KOS−MOS!?」
「しかもあれって、第三種兵装じゃないですか! 開発中ですよ!」

KOS−MOSはミルチアから湧き上がってくるモノに、両肩の相転移砲の照準を向けた。

「なんだ、あれは……!?」

竜馬の全身が総毛立つ。
見たことはないが知っている。それは”竜馬”も同じであり、同時に倒すべきものだと直感的に分かった。
蔦の様な、コードの様な、骨の様な、常に何かを侵食するソレ。

「竜馬?」
「おい、あいつは……」

KOS−MOSの放った相転移砲は、やがて掻き消され、KOS−MOS本人も飲みこまれていく。

「あの波動は、ウ・ドゥと呼ばれる意識体」
「ウ・ドゥだって!?」

ネピリムの答えに、叫んだのはJr.だった。

「ウ・ドゥは十四年前、ミルチア宙域を巻き込んだ局所事象変移の源。
いま見た光景は、そのウ・ドゥと本来あるべき姿となったKOS−MOSとが出会ったときに起こる、未来の映像<ビジョン>。
ウ・ドゥはじき目醒める。”彼”を目醒めさせようとする者たちと”彼”を求める者の意識を糧として」
「目醒めるのか……奴が……」
「いま見た未来は、無限にある可能性事象のうちのひとつ。
でも、決定されているわけじゃない。新たに生じた僅かな波が、全体に波紋を広げることもある。事象は刻々と変化する、漂う波のようなものだから」
「だから、こういうのもあるんだろ?」

KOS−MOSの飲みこまれた空間が、緑色の光線によって引き裂かれる。

「……!!」

ネピリムが息を飲み、ケイオスが表情を和らげた。

「その波は、もう生じているみたいだね?」

大きい。
周囲360°全てを使ってもまだ足りない。それほどの巨大な戦艦が、遥か銀河の果てから、こちらを目指してやってくる。

「これは……希望、なの……?」
「さあ? 絶望かも知れないぜ?」

隼人達は顔を見合わせて笑う。

「もしかしたら……」

ネピリムが呟くと、その姿は扉へと変わった。

「こっから帰れってことか?」
「多分な」

228 力への意思5話-14 :2013/08/15(木) 16:15:23 ID:Is/rVKB20
宇宙空間に突然できた奇妙な扉に手をかけ、開く。
扉の向こうは洞窟に手を加えただけの簡素な墓所だった。正面にはKOS−MOSが磔にされている。

「KOS−MOS!」
シオンがKOS−MOSに駆け寄る。

「ここがあなたの心の中なの……?」

竜馬はケイオスを見た。曖昧な笑みの中、眉根を潜めて一つの石棺を見つめている。

(マリアの墓、か……?)

シオンはKOS−MOSの前で手を翳して、パスワードを告げた。

「汝ら神の如くなりん」
KOS−MOSを縛りつけている鎖が消え、俯いていた顔が正面を向き、そして赤い瞳が真正面にいるシオンを見た。

「深層領域プロテクトを解除します」

青白い光が何匹もの龍の様に畝って洞窟を満たす。
眩しさに思わず目を瞑る。次に目を見開いた時、そこはエルザのカーゴスペースだった。

「戻ってきたのか」
「全員、無事らしいな」

調整槽のKOS−MOSがゆっくりと上体を起こす。

「おはよう、KOS−MOS」
「おはようございます、シオン」
「ああ、主任! しゅにーん!」

アレンはバイザーを外したシオンに抱きついた。

「良かったあああーーーー!! 無事で、本当に良かったです……!」
「アレン、君……?」


デュランダルのブリッジでは、まだ部下を介抱しているローマン大尉がいた。竜馬達の顔を見て、一瞬顔を引きつらせる。
シオンがデータディスクを渡した。

「対グノーシス専用人型掃討兵器KP−X略称KOS−MOSのメモリーデータです。
プロテクトレベルAAA。改竄の余地はありません」
「たしかにお預かりします。おって嫌疑が晴れるまでミルチア太陽系圏を出ないように」

229 追い出された名無しさん :2013/08/15(木) 16:16:59 ID:Is/rVKB20
以上です。

230 追い出された名無しさん :2013/11/30(土) 23:03:35 ID:yW8O/g/E0
本スレ規制のため、27番目スレの162の続きです

231 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話 :2013/11/30(土) 23:04:22 ID:yW8O/g/E0

時間があるのなら、精々利用させてもらおう。
彼は、両の手首から垂れ下がる包帯の端を、器用に口に咥えると、一気に腕を下ろした。
緩んでいた包帯が締り、逞しい両手が現われる。
感覚が痛みとして骨にまで届くほど、彼は包帯を引き絞った。
完全武装でない以上ぶち殺す方法はある。
眼球を拳で突き破り、内部のメカニズムを破壊すればいい。
脳天を叩き潰すことが出来るかもしれない。
リスクがあるが、装甲を引き剥がしてやるのもいい。

左の指が、僅かに痺れた感覚を宿している。
痛みは麻痺しかけているが、こればかりはどうしようも無い。
確実に、凄惨無比な光景となる。
元より、自分に選択肢などないことは、遥か昔に気付いている。
異形と戦う前から、人間では自分の相手にならないと分かった時から。

心を決めた途端に、別種の生き物になっているとは思うが、感慨に耽る趣味も余裕も無い。
相手を仕留められない武術など、踊りと大して変わりはしない。

両手が彼の満足の行く形に搾られるまで、1秒とかからなかった。

「待たせたな、トカゲ野朗」

敬語ではない彼の言葉に、暦は背筋を震わせた。
ああ、先程の違和感は、これだったのか、と思った。
恐怖ではない何かが、彼女の心に去来していた。

対峙してからほんの数秒しか経っていないが、彼には莫大な時間が過ぎたように感じた。
コンマ数秒を争う戦いを続けていたことによる、一種の職業病だと思った。
選択肢などは無い。
この命のある限り、この侵略者どもを殺し続けてやる。

232 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話 :2013/11/30(土) 23:05:41 ID:yW8O/g/E0

臨戦態勢に入ったと、翼竜は悟った。
生物の本能と、電脳が、眼前の矮小な敵の危険性を全身に知らしめる。
それが優越感を上回ったのか、先に仕掛けたのは翼竜だった。
巨大な嘴が、大きく開かれ、右の手が刃の速度で竜馬に迫る。

ぎりぎりでかわし、懐に飛び込む。
シンプルかつ、確実に一撃が加えられそうなプランであった。
竜馬はカウンターを構えた。

既に、だとは思うが、他人から見れば、自分はやはり化け物なのだろう。
英雄を気取っている訳でもないし、嫌われることが好きであるわけが無いが、
自分と会話をしたあの女性に、苦労をかけるかもしれないと思った。
こんな時に何を考えているのか、竜馬自身でも苦笑したくなった。
そもそも、なんでこんなことを考えているのか、自分でも分からなかった。

「(あいつは…)」

とだけ、ほんの少しだけ思い、すぐに消した。
左の指の震えは、その途端に止まった。
無意識というもののおぞましさについて、忘れていなければ、後で考えることにした。

自分まであと数メートル。
彼の視界に異物が映った。

それは、白い輝きを放っていた。
数は、1個、そして数えた時にはもう1つ増えていた。
翼竜の巨体が、大きくよろめいた。

彼は、漲らせていた力の全てを、両足に込めて飛んだ。
弾丸と化して、背後へと。
ちらと振り向くと、生徒たちはもう十分後ろにいることがわかった。
心配するのは、己の身だけであることに、安堵を覚えた。
装甲を喰い破って減り込んだ箇所を基点に、一瞬、
翼竜の細身が鞠の様に膨らむと、その輪郭は完全に崩壊し、内側から熱と光が溢れ出した。
生じた衝撃は思いの他小さかったが、体育館の入り口を
完膚なきまでに破壊することと、退避中の「浮遊物」を爆風で
吹き飛ばすには十分すぎるパワーがあった。

233 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話 :2013/11/30(土) 23:06:15 ID:yW8O/g/E0

暦の傍らを、何かが通り過ぎていった。
ゴムが焼ける臭いを立て、摩擦音を起こしつつ、それは停止した。
振り返ろうとした時、体育館内に白塵が充満した。
翼竜の叫びで緩んでいたことと、先程の爆発がとどめになったに違いない。
破砕された物体の粉っぽい臭いと、霧のような塵によって、視界はほぼゼロとなった。
割れた窓から注ぐ光によって、かろうじて人のシルエットが映っている。
突然の暴虐に、相次ぐ異常時に疲れを見せていた生徒たちも、
再び動揺せざるをえなくなった。
約1年半の異常な敵対種族との戦争に曝された経験が、彼らの精神を多少タフにしていたようだ。
しかし、それでも

「おいこらこの鬼娘!!!」

と、爆発音や翼竜の叫びをも上回るとさえ思わせる怒号を聞いたときは、
もう感情を捨て去りたくなった。

「そんなのがあったらさっさとよこせ!無駄な手間食ったろうが!」
「貴女には危険すぎるわ。巻き添えを出したらどうなるの」

更に、新しい声が加わった。
何人かは、決して少ない数の者たちが、その存在に恐怖した。
冷徹、と呼ぶに相応しい声色と、彼らの担任に匹敵する声の大きさを、
その主は持っていたからだ。

「んなもん知るか!あたしが何度食い殺されかけたか分かってんの!?」
「7回ね。面白かったわ」
「やかましいわ!さっさと手伝え!私はそいつを知らん!」

誰もが、嫌な予感しかしなかった。
最も近くにいた暦は、声をかけようと思ったが、
白塵の奥から迫りつつある半月の4つの眼に、何も言うことは出来なかった。

234 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話 :2013/11/30(土) 23:07:34 ID:yW8O/g/E0

ごそごそと何かを漁る音。
そして、何かが引きずられる音が、体育館の中に不気味に木霊していた。
誰も、その場を動けなかった。
少なくとも、まともな奴は。

塵が収まる頃、聞きなれた女教師の冒涜的な怒号と、
聞きなれぬ女傑な声の主、そして流竜馬と名乗った少年の姿が消えていた。

「何だったんだ…今のは」

分かりきってはいた。
言わずにはいられなかった。
ある意味、自分の習性なんだと思った。
振り返った暦は眼を剥いた。
衝撃と爆音の影響か、馬鹿者を拘束していた女子生徒が全員床に伏せていた。
ぴくぴくと、涎を垂らして痙攣している。
どことなく、破廉恥な様子だった。
その姿を見ている男どもに、暦はキツい視線を飛ばした。
ぞっとするものを背に覚え、思春期な男子たちは沈黙した。

緊張と疲労で、混乱も大いにしている精神であっても、
あの少年への少なくない感謝と、嘆きに近い感情を抱かずにはいられなかった。
せめて、眼を閉じている間は、安らかにと。

とりあえず、周りの連中をまとめることに努めた。
どうやら自分は、男口調のせいか、そういうことに向いているらしい。
その過程で、2人ほど女子がいないことに気付いて、激しい頭痛がするのを覚えた。

「…なんで、あいつまで」

外を見ると、かつて翼竜であったものの残骸から白煙が昇っていた。
鉄の部分だけを残して、溶けているかのようだった。















つづく

235 追い出された名無しさん :2013/11/30(土) 23:16:23 ID:yW8O/g/E0
本スレの方、代理していただきありがとうございました
今度からまともに書き続けられそうなので、またよろしくお願いします

236 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 20:56:26 ID:yW8O/g/E0
ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(2)-



「………………」

決して小さくない揺れに身体を預けながら、彼はぼんやりと眼を開いた。
職業柄、よく気絶してはいたが、最近は特に酷い。
元々、気を失う原因としては、巨大クラゲに突撃して無茶をやったとか、
超高度から愛機もろとも落下しただとか、そういうものであったが、
ここ最近のものは体力が限界を迎えてのそれとなっている。
思考がまともに動き始めるまで、しばし待つことにした。

「あ、起きた」

耳元で、正確には肩の辺りで声がした。
眠気は、一気に消滅した。
声量ではなく、その声の主が誰であるかが、覚醒の鍵となった。

「よぉ。久しぶりだな」

時間的には数時間、恐らく4、5時間ぶりだろうが、異常に長く感じていた。
何となくだが、年単位で会っていなかった様な気さえする。
確かな感慨を覚えていると、細い指が彼の頬に触れた。
それは肉を掴むと、主の下へと肘を引っ張った。

「何しやがる」

少し左に傾いた耐性のまま、頬を伸ばされながら、
やや兇悪な眼つきを携えて竜馬が言う。
尚、ややというのは竜馬の基準でである。
敬語など使う必要は、細胞一つ分も無い。
使うときは、からかう時ぐらいだろう。

「怪我の治り具合の確認に」
「嫌がらせの間違いだろ」

左の頬を引っ張られたまま、竜馬は器用に返答した。
音速を越えた戦闘の中で叫び続けていた成果だろうか。

237 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 20:56:59 ID:yW8O/g/E0

「うんうん、傷も大分治ってるね」
「お前が掴んでるところは、ちょうど裂けてた場所なんだが」
「確かにちょっと赤いね。ここは?」

左手の指は、竜馬の右眼辺りを指していた。

「古傷だよ。たまに疼くんだ……イラついたりな」
「そういうのはよくないよ。ストレスは発散しなきゃ」
「悪ぃが補充されてるんでね」
「これのせい?」

掴んでる部分を、ミリ単位で上下に動かしながら智が言う。
意味深そうな表情で。

「そもそも、何で掴んでんだ」
「リハビリのために」
「………」
「必要悪ってやつだよ」

善意でやってるのか、よく分からなかった。
それに、肌のリハビリなぞ聞いたことも無い。
とりあえず、智の指で生じた汗の塩分のせいで、治りかけた傷口がむず痒かった。
何かを握ってでもいたのだろうか。
やたら汗の量が多い。そして油の匂いもする。
自分のナリも相当なものだが、衛生的に大丈夫だろうか。

「ふむ…」
「…何だよ」

考えるような顔付きになった。
考えているのではない。
つまり、危険ということである。
訝しげな表情を(彼女と出会ってから、よくこの顔をするようになっていた)、
まじまじと眼に映しながら

238 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 20:57:50 ID:yW8O/g/E0

「あんた、彼女とかいないの?」

唾液が枯渇しかけていることを感謝する時が来るとは、竜馬ですら思っていなかった。
何時の間にか、友の手が頬から離れていた。
飽きたのだろう。
竜馬の頬に、よく分からない感覚が残った。
修行と治療と暴力以外で頬に触れられた思い出は、少なくとも彼が覚えている限りではなかった。
尤も、智の行為はこれら3つに含まれるに値するだろう。

「何言ってるんだお前は。こんな状況で」

少なくとも、怪物の襲撃を受けた後の会話ではない。
しかしこの場合、発信源も受け手もどうかしているとしか言いようが無い。
重要な話題が、こんな事である筈が無い。

「今はいねぇよ」

数ヶ月前は、女性を映画に誘っていたのでそう応えた。
なんでああなってしまったんだろう、という考えは、消そうとしても
どうやっても心に去来してくる。

「んな余裕も無えしよ」
「どっかに囲ってない?」
「いたら世話してもらってると思うんだが」
「ああ、あんた頭良いね」
「おう、ありがとよ」
「いや、礼には及ばないよ」

皮肉で言ってんだよと言いたかったが、更なる火種を撒くだけなのでやめた。
防御でもそうだが、直接受けきるよりは流した方がダメージは少ないのだ。
そろそろ、口の中の渇きが気になってきた。

「まぁ、こういうのは巡るものだから、そんなに気を落さないでさ」
「流行のことか?70年代の服や車じゃあるまいし」
「そう!それだよそれ!分かってるじゃん!」

どうせなら、20年は生まれる時期がずれてくれればと思い始めた。
こういう考えをするのは、こいつと会ってからなので、それは恐らく
影響を受け始めていることなのだろうと竜馬は判断した。
汚染とまではいかないにしても、侵食という言葉は当てはまるようであった。

239 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 20:59:21 ID:yW8O/g/E0

「こういうのはぐるぐる回るんだよ!宇宙みたいに」
「ほう、俺は宇宙規模だったのか。知らなかった」
「いや、私が宇宙で、あんたは瀬戸内海の渦潮レベルだよ」
「話の主旨もあったもんじゃねぇな」

主旨もなにもへったくれもない会話であった。

「ところで、ここはどこだよ」

話の本筋への、遅すぎる流転であった。

「車の中」

じっと、竜馬は智を睨んだ。
そんなことは分かっている。
ついでに、割と良い車であることも。少なくとも、
シートはあの機械の化け物よりは上等であると感じられた。
難点を言えば狭いことだが、これは許容範囲を越えて乗り込んでいるので仕方が無い。

「街の中」

更に眼を細ませた。
街のチンピラなら彼方へ逃げ出しているような眼だった。
智は、相変わらず太陽のような笑顔をしている。
どうやら、耐性がついているようだ。
或いは、脅威と受け取っていないのか。

「次は地球か?」
「いや、日本。惜しかったね。あと少しだったのに」
「何が?」

掠れているせいで、普段よりも恐ろしげな声になっていたが、
智は気にする様子が無い。
むしろ、「ふふん」と、少なくとも向けられた方としては不愉快な笑みを零した。
竜馬はもう慣れたので別段嫌な思いもしなかったが、
少なくとも、あの時の奴なら顔面を毟(むし)り取るだろうな、と竜馬は思った。

240 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 21:01:11 ID:yW8O/g/E0

いや、アホらしくて離すか、いや、毟るな、と追加で思った。
身体的な特徴も、好みからは外れまくっているであろうし。
奴と呼ばれた者の思考の、少なくとも人間にあるまじき部分は彼でも分かりえないものだった。
尤も、人間とはそういうものだと、彼も理解してはいるのだが。
今思っても、あの時の様子は異常だったと思わずを得なかった。
同時に、それは自分も似たようなものではなかったかということも。

「ほれ」

たぷん、と竜馬の前に、黒いボトルが差し出された。
簡素なもので、「コーラ」とだけ書かれていた。
ギャグマンガ、しかも枠の少ない4コマ漫画の小道具のような手抜き振りだった。

「少し飲んだ。大丈夫、口付けてないから」

黒い液体の奥にある、少し歪んだ竜馬の顔を眺めながら、楽しそうに智は言う。

「どこに入れてたんだよ」

液体の揺れる音は聞いた覚えが無い。

「付けた方が良かったかな?こういうのって売れるんだよね?」
「お前は何を言っているんだ」

疑問符は付かない。
呆れきっているのだ。

「あんたネットできる?ああ、やり方知らないんなら教えるよ?あ、顔写真撮らないと」
「そのぐらいは分かるが自分でやれ。というか恥を知りやがれ」
「あ、その言い回しいいね。恥を知りやがれって。覚えとこう」
「あの…」
「忘れろ。いや、忘れてくれ、頼むから」

自分の口調を口に出して記憶すると言われるのは、何か無性に腹立たしい。
いよいよ咽喉が辛くなってきた。
コーラで回復できるかは知らないが、このままよりはマシなはずだ。
炭酸さえ抜けば。
危機を感じ始めた竜馬には、智の奥から聞こえた声など、耳に入っていなかった。

241 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 21:02:24 ID:yW8O/g/E0

「つうか、それ一口でいいからくれよ。俺を生殺しにするのに持ってきたんじゃないんだろうが」

口をつけずに一口で一気に飲み干してやるつもりだった。
そして、後半に彼が口走ったことこそ、こいつの目的なんじゃないかと思い始めていた。

「あぁ、それいいね!」

確定してしまった。
ひらめいた!と、誰でもわかるようなリアクションをしていたので、
言わなければ、素直にくれたのかもしれない。

「お前…いい加減にしろよ…怒るぞ」

声がもうおぞましささえ感じさせるものへとなってきている。
紅の閃光で、無数の百鬼を焼き払った時も同じような声だった。
それが、こんなところで出るとは。

「な、なんだよ!そんなに飲みたいのかよ!」

流石に怒気が通じたのか、ややびびっているようだった。
大事そうに胸元で抱えられたコーラがたぷんと揺れた。
先程よりも揺れ幅が大きい。
何時の間にか、また少し飲まれたようだった。

「ああそうだよ…昨日から、何も飲んでねぇ」

これは嘘だった。
起きた時に500mlボトルに入った麦茶を1本飲んでいた。
状況が状況だったので、忘れてしまっていたのだった。

「質問に答えてから」
「その質問とやらの話を逸らしたのはテメェだろうが!!

残りの水分を振り絞り、竜馬が叫ぶ。
被害者のようにも見えるが、状況を鑑みるに、どう見ても加害者の立場であった。
更に、話をこじらせた原因にも見て取れる。
そして普通なら、この叫びを前にすれば人間なら大悪党でも怯む。
底知れぬ恐ろしさを感じるからだ。

242 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 21:03:03 ID:yW8O/g/E0

「なんだとぅ!?」

しかし残念ながら、相手は普通ではなかった。
どこかで、何かが擦れ、砕けるような音がした。
彼らにとって不幸だったのは、それに気付けなかったことだ。
そして、ここが車内だということを、竜馬は途中から、智はほぼ最初から
脳内から消し去ってしまっていたことだった。

「これ高いんだぞ!!国からも認められてるんだ!」
「ああ、ありがとよ。でももう三分の一しかねぇじゃねえか!何時飲んだんだ!」
「細かいこと言うな!デリカシーの無い奴め!下郎!」
「下郎だと!?」
「えと…あの…」
「あ、ゴメン。意味は知らないから削除で」

咽喉が渇いたのか、キャップを緩めて口に運ぶ。
遅れたが、コーラは2L入りである。
そして、ヒートアップした両者の間に、普通の声は最早届かない。

「お前!どれだけ飲めば気が済むんだ!」
「ふーんだ。口付けちゃったからもうやらねーっと。値段下がるし」
「お前な…つうか、元はといえばそれ俺の金で買った奴だろ!」
「ぎくり」

口に出して言う奴を始めて見た。
それこそ70年代のキャラクターかと思った。

「か、金のことを出す男は嫌われるんだぞ!」
「現実的でいいと思うがね」
「夢がないと駄目なんだよ!現実に縛られるな!」
「咽喉の痛みって現実にやられそうなんですけどね!」
「おい」
「急に敬語を使うな!怖いだろうが!」
「敬語じゃなくて丁寧語ですよ滝野さん」
「うわあああ!!やめろ!夢が壊れる!」
「夢って何だ!?気色悪いことを抜かすな!」
「おいったら」
「ええいうるさい!気色悪いとか言うな!傷付く!泣くぞ!」
「ああ、泣けよ。笑ってやる」
「言ったな!泣くからな!泣いてやる!」

半月の形になった眼の隅に、瑞々しいものが溜っていく。
笑ってやると豪語した竜馬も、気まずさを感じ始めていた。
一応、一応は智は女の子なのである。
胸はそれなりだし、竜馬の持つ女性像とはかけ離れているどころか
別次元の存在であったが、世話にもなっている。
それに、こういうときにどうすればいいのかも分からなかった。

243 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 21:04:05 ID:yW8O/g/E0

「(…野朗だったら、気絶させればいいんだが)」

と、恐ろしげな考えをした時、智の動きが止まった。
大きな眼が、ぱちっと開いている。
2、3度、ぱちくりと眼を瞬かせた顔が、左向きに動き始めた。
彼女の頭には、健康的に日に焼けた手が置かれていた。

「お前、ちょっとうるせぇ」

向けられた先にある、快活そうな少女の顔が、きつめの口調と表情で静かに告げた。
竜馬は、その声に聞き覚えがあった。
その、傷付いた手にも。
相手も、竜馬の視線に気が付いたようだった。

「…それ以上は、やばいよ」

竜馬は気付いた。
真の脅威は彼女ではない。
それは、彼の前にいた。

バックミラー越しに、眼が、こちらを向いている。
その眼光に、智は笑うのをやめた。
竜馬は、その様子を見て、不気味な感覚を覚えた。

「大丈夫。バレてな「いい加減にしろお前等!!」」

怒号。
そう呼ぶに相応しかった。
少なくとも、彼が起きてから聴いた音では、最も大きな音だった。

「直立トカゲぶちのめした奴がいるって言われたからどんな奴かと思ったら、
人の車で延々とワケの分からんこと言いやがって!お前だ!お前が原因だバカ智!!
聞いてた話と違うじゃないか!私はこいつが目を覚ました瞬間、
首を引き千切られるんじゃないかと思ってたんだぞ!
お前アレだろ!今やってるアニメでそうやって死んだ奴がいたんだろ!」
「いや、あれは食い千切「うるせぇ!馬鹿!」」

馬鹿の一言には、質量があるように感じられた。
それも、莫大な。

244 追い出された名無しさん :2013/12/14(土) 21:06:46 ID:yW8O/g/E0

「お前はさっさとそいつに栄養やれ!そのために持ってきたんだろ!
 それに死なれたら寝覚めが悪い!!あと、誰がこの車を掃除する!?
 お前らの靴、結構汚れていたからな!!靴ぐらいちゃんと洗え!
 あと神楽!お前はさっさとこいつらを止めろ!先手必勝って言葉を知らんのか!
 頭潰せば後は楽なんだよ!トカゲみたいに!」

なんということだ、と竜馬は思った。
あの滝野が押されている。
破壊不能なものが壊されていくような気がした。
御するならともかく、勢いで負けているというのは中々信じられなかった。
気が付けば、智は傍らで静かになっている。
黙っている、のではなくだ。

「それと、少年」

竜馬は思わず、はいと答えた。
思い出して、自己嫌悪に陥れるぐらいの情けない声だった。
咽喉の渇きのせいにすることにした。
あと、トカゲは頭を通してからが厄介なんだよな、心の中でと突っ込んでおいた。

「生きて戻ったら、あの女の弱みを教えなさい。それが運賃」

とてもじゃないが聞き捨てならない台詞をかけられ、非現実的な光景も目の当たりにしたことで、
竜馬は思考が正常に戻っていくような感覚がした。
狂気というものと、さほど変わり無いような気がした。
いいや、それに違いないと、竜馬は心の中で勝手に肯定した。
確実なのは、それがどうなるかは、残念ながらここにいる4人に
掛かっているということだった。














つづく

245 追い出された名無しさん :2013/12/22(日) 13:11:33 ID:yW8O/g/E0
規制がかかってしまったので、本スレ399からの続きです。

246 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(3)- :2013/12/22(日) 13:12:36 ID:yW8O/g/E0


「(これが、あれか、ゆかり車ってやつか)」

飾り気も品番もない、鉄の巨筒とでも呼ぶべき兵器、
恐ろしく古典的な形状をしたロケットランチャーを構えつつ、竜馬は智の話を思い出した。
聞いてた話と、よく似ている。
この教師は、条理を覆す存在のようだ。
この滅茶苦茶さに、竜馬は素直な好感を持った。
竜馬の心に渦巻いていた思惑が、それを合図としたかのように、ある感情へと昇華する。

背後の二人にぶつけないように注意を払われて器用に回された重火器を、
竜馬は自身の右肩に備え付けた。
凶悪な重さが、その感情に磨きを掛けた。

戦いに必要な、敵意と、殺意に。

「くたばりやがれ!!」

敵対者に対する破壊衝動で彩られた声と共に彼は引き金を引いた。
白煙が車の背後に広がり、車体を大きく揺らす。
クロガネの巨筒が吐き出した弾頭は、命中と同時に白光を放ち、爆風と爆音で巨体を包む。
傍らにまで迫った車が、白煙を吹き飛ばすと、奥からグロテスクな形状となった角竜の姿が現われた。

二本の角は神経の断片を根元にちらつかせて消失し、
嘴は口腔内へと減り込んでいる。
更に、体表面からは泡を吹き、肉は骨から剥がれ落ちつつある。
そして、身体のあちこちに開いた肉の穴からは、
液体の代わりに火が唾液のように垂れている。
彼らにとって幸いだったのは、動体視力の極端な差があったため、
その様子を認識できたのが竜馬だけであったことだ。

「…やっぱ普通の兵器じゃねぇな」

火花を吹きつつもまだ動いている頭部の、爆砕された部分に、
用済みとなった砲を投擲した。

247 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(3)- :2013/12/22(日) 13:13:26 ID:yW8O/g/E0

あふれ出したものは蒸発したのか、爆風で皮も抉られた
その破壊口の奥で、潰れて弾ける音が鳴った。
それが脳髄、または電脳を破壊したのか、角竜は四足を折り曲げて地に伏した。
ゆかりが「やったぜざまあみろ!」と叫ぶ声が聞こえた。
これが演技であってほしいと、竜馬は願った。

「うぉ!?」

角竜の最期の抵抗か、破砕した角と思しき部分を踏み上げ、車体が大きく揺れた。
乱暴さを増した運転でふらついた身体が、内側に倒れ込んだ。
何時の間にか、車内の二人が竜馬のボロボロになったコートの、
中央から破れ、いびつな翼のように左右に分かれた端の部分を握っていた。

「悪い、助かった」

二人の上に倒れ込めかけた身体をシートに無理矢理ぶつけつつ、竜馬は智に言う。
引かれなければ、転落していたかもしれない。

「いいのいいの。今度やるときは私にも撃たせてね」
「お前は前見て座ってろ」

渡したらどんな状況になるのか、竜馬でさえ想像できなかった。
最終手段ということにしておこうとだけ、頭の隅に置いておいた。

「大丈夫だよ。説明書なら読んだから」
「そんなもんねぇよ」

ちらと神楽の様子を見ると、煙を吸い込んだのかむせている。
どうやら、貧乏くじを引きやすい体質のようだ。
少なくともこの車内で最も真っ当な人間なのは神楽であった。

「次、どれにする?」

と、ゆかりに聞かれたが、しばしその光景を見つめるしかなかった。
普通の武器の山なら、彼もそんなには驚かなかった。
せいぜい、どこで手に入れて来たんだと疑うぐらいだ。
しかし、それらは違った。
とてつもなく嫌な気配を、それらは放っていた。
危機は迫っている、そしてこれらを使えるのは現状では自分しかいない。
それを少しの間とはいえ留まらせるものが、山と詰まれたものからは感じられた。
しかし、事態は切迫している。
この中から、選ぶ必要があった。
いっそ降りて素手で戦おうかとさえ彼は思い始めた。
ゆかりの隣、助手席に積まれていたのは、そんな武器ばかりだった。



つづく

248 追い出された名無しさん :2013/12/22(日) 13:15:19 ID:yW8O/g/E0
以上です
解除され次第、見やすいように本スレにも投稿しておきます

249 追い出された名無しさん :2013/12/26(木) 00:45:02 ID:bF1rrBLI0
時獄篇のPVでトップバッターだったり
パケ絵でど真ん中だったり
不思議な優遇を受けてる気がするのは俺の気のせいだろうか

250 追い出された名無しさん :2014/01/03(金) 22:57:02 ID:yW8O/g/E0
なにか度肝を抜くことやってくれるんですかね?
新年早々だけど、ゲッター+あずまんが投下します

251 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 22:57:44 ID:yW8O/g/E0

ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)-


その車は、多くの者から注視されていた。
人間から、そして異形から。
眼の良い者、或いは不幸にもその近くにいたものは裸眼で。
遠くの者は、望遠鏡や双眼鏡を用いて。

当初、異形を注視していた視線は、次第にそちらに移り始めていた。
というのも、

「正に、悪魔ね」

という言葉を漏らした白衣の女性の言葉通り、
悪魔に相応しき光景が広がっていたためだ。
そして、それは『火炎地獄』という意味に等しい。
突如、建物を崩して出現する角竜。
本来備わっていないはずのはばたきと牙を用いて大空より急襲する翼竜。
そのどれもが、疾走する車から吐き出される火力によって砕かれていった。

無数の火花と共に撃ち出される弾丸群は翼竜の鼻面をごっそりと抉り取り、
炸裂した鉄塊は角竜を肉と機械が雑じった奇怪なオブジェに変えていく。

何人かは、この車の右側面に何やら風に揺れている物体が張り付いているのを
目撃したが、それは犠牲者たちの残骸が怨念のように、そこに残っているのだと判断した。
そして大量の火力は、この車に備え付けられた兵器であると。
この場所が何の麓町であるのかを熟知している一部の者であれば、特に疑問も持たなかった。
勿論、例外の方が多かった。
この車を、誰が操縦しているのか知っている連中である。
そして彼らは、砕かれていくものよりも恐ろしげな思いを車に抱き、
無慈悲な破壊活動を屋上からみつめていた。
時折、車は観測者たちから見て遮蔽物となる建築物に隠れるが、それもほぼ一瞬のことだった。
何故なら、見えなくなったと思ったら、その遮蔽物はすぐに煙を上げて破壊されていったためだ。

「…あいつ」

天文部の友人から借りた、中々に精度の高い望遠鏡を用いながら、

「やっぱり、あの一員か」

水原暦は、呻くように呟いた。

目撃者の多くから残骸扱いされていたその者は、
火花の残滓と煙を浴びつつ、殺戮の使徒となっていた。

252 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 22:58:35 ID:yW8O/g/E0

「またきやがった」

悪態と共に空へと向けられた砲が火を吹く。
数秒の後に炸裂した弾頭が犠牲者の残骸をぱらぱらと地に落す。
弾頭の恐るべき威力は、太古に君臨した大空の覇者さえも木っ端微塵の群体に変えていく。
車の周囲に、殺戮と破壊の乱舞が構築されていた。

「何でロケランがこんなにあるんですか」

まだ息があるものの、ひしゃげた鼻面に鉄の筒をぶち当て、
車の振動で物騒な音を立てつつ揺れる銃火器の山を見ながら、呟くように竜馬は訊いた。
ロケランという言葉を使ったのは、傍らの少女が「はい、新しいロケラン」、
「ロケラン一丁上がり!」などと言いつつ、
物騒極まりないことに鼻先にその弾頭を押し付けてくるので、
何時の間にか脳に刻まれてしまったからだった。
また、先の質問の解答に関しては、あまり期待していないようだった。

「ロケット花火とか好きだから」
「誘爆したら車が消し飛びますよ」

その程度で済むわけが無いが、危機を伝えるためにピンポイントで説明した。
回りに被害が及ぶと言っても、この人は自分は生き残るだろうと思う人種な気がしたからだ。
取り返しのつかないことをやることも大好きなように感じた。
それにしても異常な量だと、竜馬は思った。
既に5本の砲を使い果たしたが、まだ2〜3本ほどが助手席に刺さっており、
その周りには、最早、群体生物にさえ思えるほどに絡まり、重なり合った銃火器が山を成している。

「(このまま放って置けば、何か生まれんのかね)」

その様子が、生物の臓物か筋組織と骨格のように見えたらしく、竜馬はそう思った。

253 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 22:59:20 ID:yW8O/g/E0

現在、竜馬はほぼ車体に張り付いての迎撃を行っており、武装の運搬役は主に智が行っている。
神楽はというと、

「ごほっ、うぐっ、ごぁああ……」

と、本来は快活かつ可憐さを備えた声を悲鳴に近い嗚咽に変えてむせ続けていた。
というのも、周囲で巻き起こる破壊の副産物たる煙が
窓から侵入し、彼女を直撃し続けているせいであった。
竜馬は慣れているので耐性があり、ゆかりは窓を開け、冷房を最大にして無理矢理
煙を己から引き剥がしている。
そして智に至っては竜馬を盾にすることで煙を交わしている。
結果、竜馬で遮蔽しきれなかったものと前列から追いやられた煙が神楽を直撃することになっていた。
どうにかしてやりたいとは竜馬も思ったが、位置的にもどうしようもなかった。
実際は、神楽側の窓を開ければある程度は解決したのだが。

そこに、再び高周波を伴う叫びが鳴った。

「はい」

タイムラグは殆ど無く、竜馬に武器が手渡される。
先ほど竜馬が生物に見立てた部分で言う、心臓に当たる部分の担っていた物だった。
受け取ると同時に、鋭い犬歯でピンを抜き、遥か上空へと放り投げる。
汗による仄かな塩味を口に感じた頃、投擲された手榴弾はその身を炎に変えていた。
胴と嘴を分断された翼竜は、最期の抵抗か車へと頭部を落下させたが、
それを少年は許さず、激突の寸前に左の裏拳でその肉塊を薙ぎ払った。
目玉が潰れ、左右に20センチ以上も嘴をずらした頭部は、
弾き飛ばされた先の壁に激突した。

「おー、凄いな。一撃必殺ってやつ?」

壁面に減り込みつつずるりと落ちた骸を見て、智が言った。
楽しげ、且つ誇らしげな口調だった。

254 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 23:00:13 ID:yW8O/g/E0

「殴ったのは屍骸だけどな」
「じゃあ、ちょっと凄みが減ったね」
「なんだよそれ」
「アレ、大体私と同じくらいの大きさだね」
「寝覚めの悪いことを言うんじゃねぇ」

殺戮の手を止めると、竜馬は全身に痺れが回るのを感じた。
どうやら、あの銃火器の出所は、これではっきりしたようだ。
彼の身を蝕みつつ守っていたのは、製作者が、
螺子の一本から弾丸の一発に至るまで込めた狂気に違いない。

「あんたら…修学旅行じゃねぇんだぞ」
「ごめんごめん。つい花咲いちゃった」
「咲いてねえだろ」

言いつつ、心の中では咲いていると思っていた。
ただし、破壊と殺戮の花火のことであったが。
竜馬は、今時の修学旅行はこういう雰囲気なのかと思っていた。
まともな神経なら絶対に楽しくないに違いないと、勝手な誤解をするにまで至っていた。

この武器群は、使用者を高揚させる何かがあった。
狂気による酩酊感とでもいうべき感情が、
敵対者の破壊を使用者に見届けさせる度に、手元から脳髄へと駆け上がっていく。
竜馬としては、慣れかけたようなもので、感情の制御はできているようだが、
もしも慣れない者が使えば、それは麻薬よりも危険なもので、脊髄と脳を蝕むだろう。

「ったく、トカゲどもめ。あたしの車返せっつうの」

この状況でこの女性が己を貫いているのも、
恐らくこのおぞましい武器を使用したことによる影響だと、竜馬は断定した。
でなければ、こんなに順応できるものか、と。

再び身を乗り出し、竜馬が周囲を見渡す。
周囲は残骸が散乱し、大気は黒煙にまみれている。

255 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 23:00:56 ID:yW8O/g/E0

「戦後みたいだね」
「戦後だけどな」

その言葉に、智はデジャヴを感じた。
実際に言われた言葉だった。
竜馬はというと、空を見渡しながら学校のほうを見据えた。
遥か遠くにいた、先ほど会話した女性と(少なくとも竜馬の方は)眼が合い、彼は軽く会釈した。
相手方に困惑の色が走ったのは、言うまでも無い。

「やっと一息つけるな。おい神楽、今どこらへん?」

なにかおかしい気がしたが、竜馬は気にするのをやめた。
隣の智は、「んん〜〜」っと猫のように背伸びをしている。
本当に一息ついていた。
そして問いの内容は、どこに行けばいい、ではなく、今どこに自分たちはいるときた。
振られた方としては、最上級に困る問いかけだった。

「…こ」
「何言ってんだお前。お姉さんに話してみ」

ぜぇぜぇ言いながら頭を抱える神楽の手が、這い寄るように近付いた智の左耳を引っつかんだ。
彼女が「痛ぇ!!」と叫ぶ前に、神楽は大きく息を吸った。

「ここだよ!!ここ!!」

エネルギーが蓄積していたのか、凄まじい声量だった。
先ほどまで銃火器を振り回していた竜馬すら、一瞬だがぎょっとしていた。

「って、ああもう少し過ぎちまった!先生、ちょっと戻って!」
「あいよ」
「真っ直ぐって言っただろ!先生!人の話聞いてくれよ!!」
「え?むせてたじゃん」
「お前の肩叩いただろ、智!!何度も!何度も!」
「あー、重いの持ってたから麻痺してた。私ってこう見えて神経は繊細だからさ」
「お前がそんな上等な神経の持ち主か!!」
「仕方ないじゃん、感じなかったんだから」
「かっ…変なこと言うな!!」

何やら、勝手に話が始まった。
恐らく、到着するまで続くだろう。

256 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 23:04:12 ID:yW8O/g/E0

「疲れるでしょ、こいつらといると」

疲労と緊張の弛緩により、ややぐったりとしていた竜馬に、ゆかりが声をかけた。

「ま、こんな連中をまとめられるのも私の手腕があるからよ」

性格に問題ありだというのは智の談だが、
多分それは彼女の隣にある物どものせいだろう。
独り身だというのは、なんとなく分かったが。
ブロンドヘアーの中々の美人さんだが、並の男では御せられないのだろうと。

そんなことを考えているうちに、車は停車した。
山の斜面の一角に、白いシートで覆われた箇所があった。
町外れ、そんな言葉が正しい場所に、これはあった。
建築中の、建物か何かのようだった。

「おし、これだな。じゃお前ら降りろ」
「え?」

返したのは竜馬である。
『ら』とはどういうことなのか。
聞き間違えだろうと竜馬は思った。
先ほどから、鼓膜が酷使されているせいだと。

「おい智。まだ話は終わってないからな」
「はいはい分かった分かった。ん?竜馬は降りないの?」
「降りるよ。俺は」
「あんたも、よ」

聞き間違えでは無かったらしい。
なし崩し的に、三人は車から降ろされた。

257 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 23:05:08 ID:yW8O/g/E0

「あの、なんで二人も」
「え、いや。こういうのって、そういう展開じゃないの?」
「何がですか」
「大人は大人でやることあんのよ。ガキは邪魔にならないように隠れてな」
「危ないと思うんですが」
「大丈夫よ。あんたがいるし」
「んなムチャクチャな」

少なくとも、会ってから僅かな時間しか経っていない人間に託すことではない。
しかし、その時間も少ないようだ。
竜馬は、再び地面に足を降ろしたその時から、
足の裏で生じる『振動』に気付いていた。

「…分かりました。生徒さんをお預かりします」

『生徒さん』どもは早速先程の続きをしていた。
ヒートアップしているのか、互いに互いの頬を抓りあっている。
ぐにぐにと、柔らかく張りのある肌が漫画のように伸ばされていた。

「そんなに畏まんなくていいよ。グロい怪我とか死ななければ御の字」
「…まぁ、それが俺ならいいんですがね」
「…ナガレくん、ちょっと耳貸しなさい」

妙な気配がしたが、逆らっても逃げられなさそうなので、
竜馬は大人しく従った。
首肯に近い形で顔を近づけると、頭部で『ポカン』と間抜けな音が鳴った。
緩く握られた拳が、彼の頭を叩いたのだ。

「ガキのくせに、死ぬの生きるの簡単に言うんじゃないわ」

僅かに、その表情から疲れが見えた。

「少年。あんた、もしも心臓をエグられたらどうなる?ここをぐいーって掻っ捌かれて」

少しだけ時間を置いて、

「多分、死にます」

と応えた。
多分、という言葉と即答ではなかったことにゆかりは少しの疑問を感じたが、
それは無視することにした。

258 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 23:07:33 ID:yW8O/g/E0

「あんま無茶するんじゃないわよ。強いみたいだけど、あんたは普通の人間なんだから」

普通という言葉に、思わず竜馬は苦笑したくなった。
そんな言い方をされるのは、一体何時以来だろう。
もしかしたら、生まれて初めてかもしれなかった。

「努力しますよ」
「努力じゃ駄目だ。結果出せ」

強引だが、尤もな言葉だった。
存外に優秀な教師ではないかと、竜馬は思った。
少なくとも、彼が昔に通っていた学校の教師とは大きく異なっている。色々と。

「つまり死ぬなってことよ。あんたが死んだら、少なくともあの連中も死ぬわよ」
「…分かりました」

すぅっと、竜馬は息を吸った。
咽喉の痛みを、今になって思い出していた。

「あいつらは、絶対に死なせやしませんよ」

それは、確かな決意の顕われだった。

「うん、ならそれで良しとしておこう。そんじゃ、行ってらっしゃい」

少し深めにこうべを垂らし、竜馬は白いシートの中へと消えていった。
僅かに開いたその先から、

「うわぁ!すげぇ!!」

と空気の読まない声が聞こえてきた。
どうやら、既に進入しているようだった。

259 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(4)- :2014/01/03(金) 23:08:06 ID:yW8O/g/E0

「凄いというか何というか、面白い連中ね」

竜馬の姿が消えてすぐ、かつて彼がいた場所に、白衣の女性が座っていた。
どのような偶然か、周囲は熱が渦巻いているのに、
開いているドアから入ってくる煙も空気も、何故か冷気を纏っていた。
その女性の、声色のように。

「近くにいたなら言いなさいよ。鬼娘」
「あらかた片付けたわ。というよりも、一番大きくても、さっきの角竜だけだったみたいね」
「なにそれ。拍子抜けするわね」
「多分、収容したか様子見だったんでしょう」
「ふうん。まぁ、こっちとしては命拾いしたからいいわ」
「そうね」

隠そうともせず、どことなく残念そうな口調で女性は言った。
ゆかりの方は、軽く「けっ」と呟いた。無論、相手によく聴こえるように。

「でも、何かあったら監督責任を取られるのはあなたじゃないの?」
「証拠物は、私のじゃないし」
「ある意味、誘拐に近いと思うのだけれど?」
「いや、勝手に着いて来たから乗せただけ」
「だったら、こっちの方に回して欲しかったわ。
 あぁ、お友達なら元気よ。少なくとも今は」
「じゃあ大丈夫だわ。体育会系だし」
「貴女って、悪い人ね」
「言われたくないわ、あんたには」

バックミラー越しに、女性の笑みがゆかりの眼に映り、
ゆかりの笑顔はサイドミラーによく映っていた。
女傑という存在の、手本に出来そうな表情を、彼女らは浮かべていた。














つづく

260 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:18:25 ID:yW8O/g/E0

ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)-


「何でお前らまで来るんだよ」
「なんでというか…」
「降ろされちゃったしね」
「一種の置いてけぼりだよな」
「お前ら疑問とか思わなかったのか?」

互いの声がそれなりに大きいことと、この場の環境が会話を可能にさせていた。
彼らは今、細い通路を走っていた。
炭鉱然、とでも言うような山の斜面に設けられた簡素な入り口から、
四方を簡単な支柱で支えられた岩や土の洞へ、そしてしばらくした後の、
四面が金属光沢と確かな足取りを伝える滑らかな通路へ。
高さは、身長約174cmの竜馬よりも頭二つ分程度高く、およそ2m少々といったところ。
幅は約3m程度。その大きさを、竜馬は「丁度こいつ等が縦に並んで寝転がったぐらいだな」
と判断していた。尚、神楽の身長は156cm、智の身長は154cmである。

「ま、今戻っても危なそうだしな」

走りつつ、神楽は竜馬に言った。
確かにその通りである。
彼女らを降ろした女教師の性格上、もう既に車は無いと思った方がいい。
それならば、町に上がるよりもこのまま行った方が無難だと神楽は思っていた。

「…まぁ、そうだな」

竜馬は、全く安全である気がしなかった。
彼自身、こんな場所を全く知らなかったということもある。
それに、事実上の拉致をされた後に待つものは(いいことがある拉致ということ事態異常だが)
ろくでもないことであると、彼は経験上知っている。

「おい滝野、生きてるか?」

ペースは落さず、竜馬は首だけを後ろに回した。
自分(竜馬)→→神楽→→→→智となっていることが分かった。
矢印一つで、1mと思ってもらえればいい。

「ああ!!なんとかな!!!」

死ぬほど元気そうな声だった。
言っている間に、また二人から離れつつあったが。

261 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:19:56 ID:yW8O/g/E0

「ところでお前、何持ってんだよ」

今までどこに隠してたんだ、という意味もある問いかけだった。
ぜぇぜぇ言いながら走る智の左手が、何かを掴んでいる。
薄暗い中で見えたのは、灰色に近い白色の布の切れ端のような物だった。
それが智の手を介して肩に回され、背中から時折ちらちらと膨らみの
断片を覗かせるところから、何か袋を背負っていることが分かった。

「気にするな!あとのお楽しみだ!!」

嫌な予感と、期待が竜馬の中で渦巻いた。
この際、使えるものはなんでも使おうと思い始めていた。
当然、嫌な予感の方が強かった。

「重いんなら持ってやろうか?」

返ってきた声が叫び声に近いものであったためか、
敬語を使い続けていたことの反動か、
竜馬の口調にからかいの要素が加わっていた。

「私とセットならいいぞ!」
「分かった、頑張れ」
「車で見てたけど、お前らちょっと似てるな。何が似てるのか分からないけど」

経験が無かった訳ではないが、突っ込み役に回ることに
神楽は新鮮な何かを感じていた。
また、咳き込みつつも様子は伺っていたらしい。

「もう背負えねぇぞ。ちとヤベぇからな」

ヤベぇのはお前だと、走りながら神楽は思っていた。
包帯を剥かれた彼の怪我の具合は、走るどころか歩くことすら出来そうに無いものだった。
そして、彼の筋肉の付き方にも並々ならないものを感じていた。
水泳部の連中と比べても、至る所を朱に染めていたとしても、
実に作り込まれたカタチをしていたのを、彼女は覚えている。
身体能力に純粋な興味を持ち始めていた。
一体、何をどうすればここまで強くなるのかと。
そして、男の半裸をまじまじと見ていたことを思い出し、
初心(うぶ)な少女の心は頬の紅潮と体温の上昇という形で肉体に作用していた。

262 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:21:41 ID:yW8O/g/E0

「(トレーニング法とか、聞いてみようかな…)」

尚、彼がやばいと感じた怪我の具合ではなく、足の下から伝わってくる振動にあった。
時間は、刻一刻と迫ってきていた。

しかし、これ以上は速く走れなかった。
既に同年代の連中の中でも上位のレベルのスピードで走っていたが、
この程度は彼の中では余所見をしながら怠惰に行う散歩と大して変わりなかった。
それが現状では体力の消耗を確かに感じさせるものになり、
動かす度に、痛みと筋の引きつりいう形で彼を苛んでいた。
また、置いていくわけにもいかなかった。
最悪の場合、運ぶ手段に拘ることなく実行するつもりでもあった。

既に、視線は前へと移っている。
ぎらついた眼は、光を増していた。
通路の切れ目が、間近に迫っていた。

この状況下で、何があるのか。
彼はなんとなく分かっていた。
何故か、不安と嫌悪感は無かった。

「(逃げられねぇってことか)」

皮肉めいた、たちの悪い冗談を悪友から言われたような、そんな気分だった。

その視界に、何かが映りこんだ。

通路の先より這入り込む光を、その影は遮っていた。

「伏せろ神楽!!!」
「っ!」

反射的に頭を抑え、倒れ込むようにして神楽は床に伏せた。
彼女の運動神経と、異形たちの侵略の中で生き残ったために身に付いてしまった
退避行動だったが、それを成し得させたのは竜馬の叫びであった。

伏せつつ、彼女は見た。
光を遮る者の姿を。

それは、壁面に手を伸ばしていた。
神楽の顔があった場所を通過したそれは、壁の鉄板を貫きその一角を歪ませていた。
音も無く引き抜かれた先端は、黄ばんだ歯のような色をしていた。

263 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:23:10 ID:yW8O/g/E0

そのシルエットは、ヒトガタをしていた。
薄暗い中で、何かがのたうつ。
それは、ヒトガタの背後で蠢いている。
しゅうしゅうという、蛇のそれに近い呼吸音が彼らの鼓膜に届いた。

「クワァッ!!!」
「うるせぇ!!!!」

忌々しい叫びと雄雄しい怒号が、爪と拳が交差する。
爪は彼の頭髪を僅かに落としたが、彼の拳は、襲撃者の頭部を捉えた。

驚愕の色を含んだ息が零れる。
それは、竜馬の口から生じていた。
捻じ込んだ拳から、異様な感覚が脳へと伝わっていた。
そこに、一条の肉の鞭が迫った。

「ちっ…」

彼は、右腕でそれを受けた。
残る左手も、右腕を支えている。
先ほど殴打のために振るわれたのも左手だった。
その甲の包帯が、抉れていた。
内側にある肉が、僅かに断面を覗かせている。

「智!急げ!!」

神楽が叫んだ。
私達は邪魔になる、とその声は告げていた。

「ッ!?」

右腕を基点に全身に広がる激痛の中、彼は見た。
受け止めた尾の先端の、金属の光沢を。

「この空き巣野朗!!」

ぎりぎりと、異形の力が込められる尾を、竜馬は現状で出せる限りの渾身の力で振り払った。
襲撃者の身体が薙ぎ払われ、壁面へと叩きつけられる。
その反対側を、智は駆けていった。

壁面に埋まっていない方の眼がぎょろりと動き、
自分の姿を中に写していたことに、彼女は生理的な嫌悪感を覚えたが、構わずに走った。
彼の邪魔には、なりたくなかった。

264 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:24:29 ID:yW8O/g/E0

智を怯えさせたその場所に、竜馬の左拳が飛んだ。
竜馬の拳によって、壁面には洗面器大のクレーターが生じた。

しかし、僅かな鱗だけを許し、異形は壁から滑り抜けていた。
その動きの中で、尾が独立した生物のように異常な動きを示した。

頭部に向けて去来する切っ先を前に、彼は下半身の力を緩ませた。
怯えたのではない。
戦うために、である。

「ぅるぁあ!!!」

獣の声帯を通る空気は、こういう音を孕むのかもしれない。
恐ろしい唸りとともに、弛緩した右足に力が籠もり、
襲撃者の腹に蹴りとなって叩き込まれた。
足の先が、肉と鱗以外の感覚を捉え、爪の損壊を告げたが
竜馬は気にせず、更に力を籠めた。
襲撃者の身体は、電球のいくつかを巻き込んで天井を奔った。

壁面にぶつかり、床面をそのカタチに経込ませたが、
一瞬の停滞のみを残して異形は再び竜馬に迫った。

鋭角を備えた指が、竜馬へと迫っていく。

竜馬は、右足の硬直を感じた。
視線を落すと、黒いジーンズの一角に隙間が生じていた。
眼で認識した時に、そこから溢れ出す物に気付いた。

「グゥゥアアアア!!!」

束ねられた指が開き、竜馬の頭部へと巻き付いた。
竜馬を振り回すように拘束しつつ、異形はそのまま回廊を走破し、光の先へと抜けた。

「っがぁあ!!」

光を浴びると同時に、竜馬は両拳を自らを縛める腕へと放った。
二つの拳が、異形の肉越しに組み合い、挟まれた肉と骨を歪ませた。
拳の接触面が陥没し、また、押しやられた筋が皮膚を食い破って露出する。
そして、それに砕かれた骨が続いた。

265 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:25:23 ID:yW8O/g/E0

「ガァ」

悲鳴にも似た叫びに次いで、大きく振りかぶると、異形は竜馬を投げ飛ばした。
ほぼ同時に、鈍い金属音が鳴り、仰け反る異形の胸部が異常な形状を光に晒した。
その中心に、竜馬の左足があった。
ほぼ踏みつけに近い、強烈な前蹴りで陥没した場所を基点に、竜馬の身体が宙を舞う。
蹴りによって、投擲による力を相殺させていた。
もしまともに投げられていたら、壁面や地面への激突による大ダメージは必至だった。
普通の人間なら、一撃で全身の骨と肉を砕かれ、内臓を潰されてしまうだろう。

ふらつき、右足を引き摺りつつも着地した竜馬と異形の間には、約10m程の距離が開いていた。

「竜馬!」

智の声が、竜馬から見て右側で生じた。
かろうじて、りょうま、と聞き取れる、掠れた声だった。
そして智は、傍らの神楽に何かを手渡した。

「ガァァァアアアア!!!!!!」

口と胸から赤紫の液体を滴らせながら、血塗れの咆哮を上げる異形。

それに雑じって、風を切る音を感じた。
彼にとっては大きさは違うが、似たような音だった。

「(成る程な)」

それは、智から神楽へ、

「(お楽しみか)」

そして竜馬へと伝わった。
ブーメランのように回転しつつ飛来したそれを、鎌のように振られた右手が受け止める。
がしっという、獣に噛み砕かれる骨のような音を立てて、
それは竜馬の下へ『帰り』着いた。

大きく開いた異形の両腕の、鎌のような爪を従える手。
貫き、引き裂くことに特化した錐のような歯が密集した口蓋。

一瞬の停滞も無く、それらの中心たる異形の体幹に、その切っ先は向けられた。
無骨な鉄の身をもった狂気の塊は、天井から注ぐ光を受け、
どす黒い輝きを放っていた。

266 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:26:01 ID:yW8O/g/E0

侵略者曰く、ちゃちな武器。
狂人染みた科学者曰く、傑作の一つ。

「くたばりな」

粘着いた唾液と渇きによるためか、黒く、
えぐい発音とでも言うような声を、竜馬は異形へ与えた。
そして、引き金が引かれた。

ドワッ 
  

ドワッ


ドワッ


兇悪な、存在してはいけないような音が鳴った。
空気が弾け、虚が砕けるような音だった。

引かれたのは一度きりにも関わらず、それは自らに
内蔵した殺意の塊を、断ち続けに3発も吐き出した。

放たれた弾丸は空中でばらけ、鋭利な無数の刃と化して異形の全身に突き刺さっていった。
一発目で、表面の皮膚がずたずたになり、二発目は筋肉と骨をもぎ取った。
三発目の弾丸で遂に全身が狂気の奔流に耐え切れなくなり、腕はもげ、
口蓋が引き裂かれ、頭部が内容物の原型も残らず爆散した。

また、内包された散弾を出し尽くして尚、威力は衰えないのか。
胸部に当った三発の弾丸によって、竜馬に穿たれた大穴はこじ開けられ、
背骨さえも砕かれ、異形越しに反対側の景色を露出させていた。

ほぼ挽肉となった異形から生じた、液体を舐め啜るような音に雑じって、
からからという金属音が床面で鳴っていた。
やがてそれは、異形から溢れた赤紫に呑まれていった。

267 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:28:42 ID:yW8O/g/E0

「…凄いな。なんだよ、それ」

自らが投げたものが成した破壊行為は、グロテスク極まる遺骸の状態を眼にして尚、
武器としての性能に着目せざるを得ない興味を神楽に与えた。
或いは、異形以上の脅威と受け取ったためか。

「普通のマグナムだよ」

そんな訳は無いが、妙に興味を持たれても困る。

竜馬の知る限りでも最上級の狂気が作り出した傑作品。

三連発小型散弾銃であった。

よく見ると、真新しい油が差してある事に気が付いた。
量が多く、ややどろっとするほど塗りたくられたそれは、
一目で素人のものだと分かった。
先ほど引っ張られた頬が、同じ匂いを宿している。
そうか、そうだったのか、と竜馬は思った。

ここで、竜馬は自身の身体に宿る力が霧散していくのを感じた。
グリップを握る指は辛うじてその形を保ち、膝を折り曲げることはしなかったが、
呼吸は乱れ、両手はだらりと垂れ下がった。
一呼吸するごとに熱の変わりに、冷気が気道に這入り込み、彼の全身の熱を下げていく。

「(筋もやられてやがるのか。情けねぇ)」

ただでさえ強烈な反動は、現状の彼に多大な負荷を与えていた。
以前だったら痺れる程度だったそれが、
骨に針を抉り込まれていくような感覚に変わっていた。

268 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:29:44 ID:yW8O/g/E0

「おい…竜馬…」

駆け寄りつつ、その傍らに神楽は立った。
神楽が彼の名前を呼ぶのは、これが初めてだった。
運動部だからこそ、彼女は分かっていた。
竜馬を苦しめるものは、単なる疲労や怪我ではない。
生命に直結するものが、脅かされ始めているのだと感じていた。
手を差し伸べることも躊躇うほど、彼の呼吸は乱れていた。
羽織われていたコートは、異形の投擲を受けた際に、
遂に背中が引き裂け、崩れていた。
絞り込まれ、一見細くさえ見える逞しい肉体の表面を、
赤と白と、凝固した赤黒が覆っている。
手や肩を貸すにしても、何処に触れてよいのかさえ分からなかった。

ふと、智が来ていない事に気付いた。
様子を見ている限りだと、自分を押し退けてでも、
真っ先に来てもおかしくは無いはずなのに。

智のもとへと視線を送ると、
彼女は、別の場所を見ていることを知った。

その方向に、神楽も視線を這わす。

アーモンド状の、彼女の性格を体現したかのような眼に、それは這入り込んだ。

高さも幅も、彼女らの体育館を真横に切り裂いたような、この空間の奥に、それはいた。

智は、魅入られたようにそこを見ていた。
神楽は、自分の動悸が激しくなっていくのを感じた。
竜馬も、その存在に気が付いた。

破裂しそうなほど蠢いていた彼の心臓が、どぐりと一際大きく鳴った。
それを最後に心臓の唸りは鳴りを潜め、呼吸も元に戻っていく。
がたがたと蠢くように震える足も、まるで抑え付けられたかのように
その震えが止まっていった。

そして、坂道に垂らした水が自然に流れ出すように、彼はそこへと歩を進めていった。

269 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:31:53 ID:yW8O/g/E0

カツリ、カツリと、鈍い銀色をしたタイル状の金属床を踏む音が、無機質に鳴り響く。

歩み進めていく先に、巨大な穿ちが生じていた。
天井からは、細く長いケーブルと、
昆虫の節足のような形状をした機械の束が群れを成してぶら下がっている。

その中心に、それはいた。

誰がいつ、この場所を構築したのか、何故異形がいたのか。
その全てに彼は答えを持っていなかった。

だが、そこにいるものの正体は分かった。

予感じみたものはあったし、現段階で
対抗する手段はこれしかないことも分かっていた。

薄暗く、その全身の大半を暗闇に喰わせつつも、その輪郭が彼には分かった。

「竜馬!」

彼がふらりと横を見ると、そこに智が立っていた。
彼女の手には、例の袋が握られていた。

「ん…あ、ああ!ごめん、ちょっと待ってね」

これを取り出すのに、そんなにがさごそやる必要があったのか、竜馬には疑問だった。
というよりも、どうやればこれが中に入るのか。

彼女が突き出したのは、あの2Lボトルのコーラだった。
相変わらず(変わるはずがないのだが)、間抜けな筆記体でその名称が書かれていた。

「面白ぇ特技持ってるじゃねぇか」

渇き、古傷の浮かび上がった唇を歪めて、竜馬が言った。
彼は笑っていた。

270 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:34:50 ID:yW8O/g/E0

「ありがとよ」

真っ直ぐ天井を向き、がばっと口を開け、口を付けずに食道へ一気に流し込む。
程よく抜けた炭酸の甘みと水分は、文字通り彼の身体に染みこんで行った。
ヘタに量が多いよりも、このぐらいで丁度いい、と竜馬は思った。
飲み終わったそれに丁寧にキャップをし、
「ご馳走さん」と告げて智へと突き出した。

「いや、もういらないよ」
「売るんじゃねぇのかよ」
「そんな場合じゃないし」
「そういや、そうだな」
「お前ら、何言ってんだよ。こんな状況で」

そこに、神楽も歩み寄る。

「「確かに(な)」」

二人の反応はほぼ同じだった。
言い始めも、言い終わりも。
パクるな、うるせえ、というやり取りをしつつ、

「どんな世界でも、こんな時にこんなコト言ってる連中なんていねぇよ」

と、悪意の無い皮肉っぽい笑いを浮かべて竜馬は言った。

「おおー。そう言われると、誇らしいね。ある意味進化だよ」

無い胸を張り、智も笑う。

「連中って、私もかよ」

疲れたように、神楽は目元を左手で覆っていたが、
その口はにいっと広がり、白い歯を二人に見せている。

271 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:39:46 ID:yW8O/g/E0

「ああ。運が無かったんだよ」
「まぁ、確かに」
「ふ…フフ」
「滝野、お前何、笑ってやがる」
「お前も、似たようなもんだぞ。竜馬」
「へ、そうかい」

それから、直ぐの事。
誰が始めたのかは分からなかった。
恐らくは同時だったろう。
三人は、笑い声を上げていた。
はしゃいでいたと、言ってもいい。
底無しのエネルギーを宿した、暴走馬鹿の笑い声。
快活な、運動に青春を捧げている少女の声。
そして、元来彼が持った明るさと人間味が合わさった声。

それらは不思議で、不可解で。

そして、ある意味普通の光景だった。
彼らは、同年代の若者達なのだから。

「はっ…何やってんだろうな、俺らは」

彼は、思い出していた。
あの時も、こんな気分だったと。
正確には、近かったというべきか。
絶体絶命の中で、亡き友と飛び立ったあの時に。

今度は自分の番だと、竜馬は思っていた。

「じゃあ、俺は行くぜ」

毅然とした口調で、竜馬は二人に告げた。

「…ああ」
「おう!頑張れ!」

神楽に次いで、智が言う。
そこに。

「あ、そうそう」

再び、あの袋をごそごそと漁り始める。
今度は、すぐに見つかったようだ。

272 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:41:20 ID:yW8O/g/E0

「はい、これ」
「おい、これは…」
「いいからいいから。風邪、引くよ」
「……おう」

渡されたのは、男子用の学生服の上着だった。
体育館で、彼が見た連中のものと同じ黒色の、どこにでもありそうな上着だった。

「(最近のはボタンが随分小せぇな)」

と、どうでもいい感想を抱きながら、ああ、そうだ。と竜馬は加えた。

「神楽、こいつは頼んだ。俺らと違ってもうロクに動けやしねぇはずだからよ」
「なんだと!智ちゃんを甘く見る…ん?」

言い終えるが早いか、膝ががくっと折れ、ぺたりと膝を、そして尻が床に着いた。

「ほれ見ろ。燃料切れだ」
「う、うるさい!この怪我人め!」
「まぁ、この調子なら大丈夫だろ。危ねぇから、俺が行ったら端っこまで下がってろよ」

神楽に目を向けると、神楽はそれに頷きで応えた。

「おう。んじゃあな」

まるで、下校途中で分かれる時のような言い方であった。

竜馬は制服の襟首を見た。
『長谷川』と書いてあった。
不幸な奴もいるもんだと、竜馬は思っていた。
そういえば、投げて退かした連中の中に、
一人だけYシャツ姿の奴がいたような気がしていた。

273 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:46:07 ID:yW8O/g/E0

そして再び、彼は動き出した。
彼女が渡した学生服を羽織い、二人に背を向けて歩き出す。
その輪郭は、ひどく歪んで見えた。
包帯が引き剥げた親指も、本来は爪がある箇所が肉の色を晒している。
恐らく、他の部分も似たようなものになっているだろう。

彼が一歩進むたびに、存在が遠くなっていく。
二人は、竜馬がついさっき、ほんの一分足らず前に笑い合っていたものとは、
別の何かに変わっていくような気がしていた。

世界が違うような、異なるものであるというような感覚さえある。
彼の存在を否定するような感情が何故沸きあがってくるのかは分からなかったが、
それを認めるのは嫌だった。

遂に穿ちの縁まで、彼は辿り着いた。
手摺の無い縁の先に、天井から下がる管と鉄の中心に、
穿ちの中で、それは彼を待っていた。
彼はその様子を、『檻』だと思った。
つまり、中にいるものは―――。

足をがくがくと震わせながら、智は彼に寄ろうとした。
もしかしたら、止めようとしたのかもしれない。
それを、神楽が抱きすくめる様にして抑えた。

もうここから先は、彼の住む世界の領域であるようだった。

その先にあるものへと向き合っている彼の左腕が、ゆっくりと水平に伸びていく。
末端の手は、拳の形を取っていた。

「また、遊ぼうぜ」

そして、剥げていた包帯を器用に巻きつけ、親指を立てた。

そのまま振り向かず、彼は「それ」に向って飛び降りた。

背後で鳴った叫びが、竜馬の耳にこびりつく。

274 ゲッターロボ+あずまんが大王 第8話-(5)- :2014/01/17(金) 01:47:16 ID:yW8O/g/E0

ケーブルと機械の檻を抜け、中心部へと近付いていく中、竜馬はそれに目を向けた。


そいつを見つめる竜馬のぎらついた眼光は、
光を宿さぬ、機械の眼に向けられていた。



「久しぶりだな、兄弟」




それはまるで、悪友に語りかけるかのような声だった。

彼を背を覆った黒色が、まるで翼のように翻り、
吸い込まれるようにして、竜馬の姿は、彼が『兄弟』と呼んだ者の胸元に消えていった。


そして、煌煌とした二つの光が、闇の中で輝いた。

二人の少女の、その前で。
















つづく

275 追い出された名無しさん :2014/02/18(火) 18:47:02 ID:yW8O/g/E0
本スレ埋まってね?

276 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 02:54:06 ID:17S8mV5YO
何か板ごと落ちたみたいだな
本スレ新しいの立てたばっかだったのに…

277 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 21:32:04 ID:58yVRQaQ0
鯖復活するのは明日になるっぽいね
せっかくスパロボ新作のPVが出たというのに

278 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 21:37:18 ID:cCdicCI20
機種の関係上出来ないんだよな
評価次第では本体ごと買おうかなとは思っているけど

279 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 23:15:04 ID:tg4Zdc1U0
インベーダー出ないかと思いきや出てきたな

280 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 23:16:55 ID:cCdicCI20
でも、頭は潰されているし宇宙怪獣やELSとかいるしなあ。
もしかして、冥王星を食った口とかその向こうの大群と戦うとかやんのかな。

まあ、前編でインベーダー関連は終わりそう。

281 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 23:49:36 ID:1iG/02tg0
ホント、後篇で何と戦うんだ過ぎる……

282 追い出された名無しさん :2014/02/28(金) 23:51:38 ID:cCdicCI20
そういやあ、なんか転載禁止がまた動きが新しいけどどうなんだろう?

283 追い出された名無しさん :2014/03/01(土) 00:30:36 ID:58yVRQaQ0
>>281
天獄篇でまさかの東映ゲッターと交替

284 追い出された名無しさん :2014/03/01(土) 18:04:54 ID:cCdicCI20
なんか、本スレの方の板は復旧したらしいけど…………
立て直したほうがいいのかな

285 追い出された名無しさん :2014/03/01(土) 19:59:08 ID:58yVRQaQ0
鯖おちスレ見てると順次復旧って言ってるから
待ったほうがいいんじゃないかな

286 追い出された名無しさん :2014/03/01(土) 20:13:27 ID:cCdicCI20
しばらく待ったほうがいいってことか

287 追い出された名無しさん :2014/03/02(日) 07:04:16 ID:gOWRFvV20
ああ、スレが落ちちゃったのか…
まるでラ=グースに飲まれたようだ

288 追い出された名無しさん :2014/03/02(日) 13:52:52 ID:8fQSwyB60
本スレ復旧してる?

289 追い出された名無しさん :2014/03/02(日) 20:23:28 ID:58yVRQaQ0
復活したね

290 追い出された名無しさん :2014/03/05(水) 13:06:32 ID:17S8mV5YO
おー良かった。復旧したか

291 追い出された名無しさん :2014/03/11(火) 23:17:42 ID:dLnxgCcA0
本スレどこ?

292 追い出された名無しさん :2014/03/12(水) 20:14:01 ID:58yVRQaQ0
maguro鯖に移転しました

【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 第28章【クロスSS】
http://maguro.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1392719107/

293 追い出された名無しさん :2014/06/04(水) 20:57:13 ID:C3Tk3ysk0
使えるかな?

294 追い出された名無しさん :2014/06/20(金) 00:29:57 ID:Z0gdDZto0
猿った

295 シドニアの騎士×ゲッターロボ :2014/06/20(金) 00:33:14 ID:Z0gdDZto0
猿ったので一応ここに
導入編終わり
お目汚し失礼しました

296 ゲッターロボ-A EoD- 第九話中編?B :2014/07/26(土) 01:27:11 ID:4I8Y4/zEO
二人はベルクラスから降りて、エレベーターで地上へ。歩いて駐屯地の入り口へ行き、警務隊員に身分証と外出許可証を見せた。

「ああ、君達が例のゲッターロボのパイロットか」

「はい」

「初めての外出か、十分楽しんでおいで。この周辺は広いから迷うなよ」

確認した警務員に笑顔で見送られていい気分な二人。

「ここの人達、いい人ばかりだね♪」

「うん、そういえば早乙女司令が警務員の人に何か、おやつとかのおみやげを買ってきたほうがいいっていってたな。
帰りにコンビニかどこかやってれば何か買うか――」

二人はとりあえず充電器を買いに、早乙女から教えてもらった道を歩いていく。
やはり一周間前のメカザウルスの襲来が原因でこの周辺のほとんどの建物を壊されて、SMBによって撤去されて見晴らしが良い。
まるで自分達を迎えているかのような快晴な空も相まって、水平線の如くずっと先まで続いているように見える。

「――なんかすっきりしちゃってるね」

「うん…………」

自分達の街もおそらくこんな状態だろうと想像する。
二人はなぜメカザウルスが自分達人類を襲い、そして殺すのか――理解できなかった。

しばらく歩くと住宅街へ。街路樹の並ぶ歩道を歩いていくと、途中で公園に差し掛かる。

走り回る子供達、親子連れ、散歩するお年寄りやカップル、結構な人々が行き交うこの平穏な場所は恐竜帝国との戦時中とは思えないくらいに別の世界だと思えてくる。

「いつまでもこういう風景が続けばいいのにね。なんでこんな世の中になっちゃったんだろう……っ」

エミリアは悲観する。
最初はメカザウルスの侵略は外国ばかりだったのが、こんな島国の日本にまで侵攻され、もう壊滅的状況になった都市もあるだろう――。
日本と同盟を組んでいた豪州はすでに恐竜帝国の制圧下にあり、他の各国も次々にメカザウルスに侵略され、人類も必死で抵抗している映像を毎日のようにニュースでやっていたのを思い出す。

297 ゲッターロボ-A EoD- 第九話中編?C :2014/07/26(土) 01:29:36 ID:4I8Y4/zEO
「……けどゲッターロボに乗って、世界を救わないといけなくなったんだ。
本当にそんなの出来るかどうか分からないけど、早乙女司令が俺に『ゲッターロボと乗りこなす人間なら世界を救える』と言ってくれた。
ならあの人を信じてやれるだけのことをやるしかないよ」

「うん。けどリュウトさ、前と比べたらずいぶんとカッコいいこと言うようになったね、やっぱり成長してきてるんだよ」

「え……いや、その――」

彼は照れた。

二人は道中通りかかったコンビニエンスストアに入り、ジュースを買う。
品物不足の為か、店内商品も遥かに少ないのに値段は格段に上がっている。ご時世でも結局は金次第ということか――。

「ス、スミマセン……」

歩きながら飲んでいると、ふと通りすがった外国人だと思われる背の高く、金髪の彫りの深い顔立ちの男性がカタコトの日本語で尋ねてくる。

「ここはアタシに任せて♪」

エミリアは『自分は英語できますよ』と安心させるかのようにペラペラの流暢な英語で話しかけると男性も喜んで英会話を弾ませた。

元は英語が標準語だった彼女にとっては朝飯前だ。
実は家庭内でも結構家族間で英会話するため忘れることはない。
なので学校時の英語の成績は当然、常に首位である。

日本語も英語も出来る彼女は実は優秀なのではないかと思えてしまう――。

互いに握手し、挨拶で軽い抱擁をする二人は会話が終わると男性は笑顔で手を振り去っていった。

「終わったよ。あの人道に迷ってたみたいなのよ、アタシと同じアメリカから来たんだって」

「そうなんだ……けどやっぱりエミリアには敵わないよ。二カ国語堪能って就職には相当有利だよな」

「エヘヘ、けどリュウトと違ってパソコンとかの扱いはド下手だから、デスクワークは無理だなアタシ……」

「ククク、エミリアってスマホの全データを何回も消去して――それで俺に泣きつくぐらいだしなあ」

「もう、からかわないでリュウト!」

「ハハハッ!」

298 ゲッターロボ-A EoD- 第九話中編?D :2014/07/26(土) 01:35:12 ID:4I8Y4/zEO
互いに茶化し合う二人は、二日前までのあの忌々しい出来事があったとは思えないほどに気持ちが和やかである。
気の張りつめた毎日でこういう休日を挟むのはいいことだ。

――二人は一時間かけてようやく早乙女の言っていた大手の大型家電店に到着する。
二人は中に入り、エスカレーターで二階へ移動する。
午前中なためか、あまり人がいない。
そして家電品はコンビニと違って価格が値下げになっているにも関わらずほとんど売れていない――。

「さてと、充電器、充電器っと――」

スマホ用グッズ、オプションコーナーへ行き、見回る。
ここは竜斗の得意分野、すぐに沢山の種類がある充電器の中からすぐに自分達のスマホにあったものを選び当てる。

「はい、エミリアのはこれがいいよ」

「ありがとう。ここはリュウトの独壇場ね」

会計を終えると帰るのかと思いきや、彼はパソコン機器のコーナーへ向かった。
その時の目の色はいつもと違いスゴく輝いている。
彼はこういうのが本当に好きなんだろう。

「このノートパソコンが欲しいんだけどな……今の小遣いじゃ買えないや……ハハッ」

「アタシにはなにがいいのかさっぱり……」

よだれを垂らすように見る竜斗、そして頭を傾げるエミリア――。

数十分間店内を見回り外に出る二人だが、同時に腹から空腹だと知らせる音が。

「お腹すいた。ねえどこかでなんか食べようよ」

「もう昼か、それに駐屯地からずっと歩いてきたもんな。
今日はお金が沢山あるし――エミリアはなにがいい?」

「ん〜〜、リュウトは?」

「オレ?どうしようかな……」

なかなか決まらず、とりあえず辺りをうろついていると……。

「リュウト、あそこは!?」

エミリアが目を輝かせて指を指した方向には焼肉専門店が。

「焼肉かあ……そういえば最近食べてなかったな。そこにするか」

「うん♪」

299 ゲッターロボ-A EoD- 第九話中編?E :2014/07/26(土) 01:39:56 ID:4I8Y4/zEO
二人はその店に向かい、開いているかどうか確認する。入り口に『開店中』と書かれた立て看板があるのを見ると、安心して入っていった。

「いらっしゃいませ……あれ、お二人ともすごく若く見えますね。高校生の方ですか?」

焼肉店には酒類も置いてあるため、とりあえず年齢確認されて正直に答える。

「それに女性の方は……失礼ですが見る限り日本の方ではないですよね?」

「あ、ワタシ日本語大丈夫ですよ。どうぞ気にしないで普通に話してください」

エミリアの流暢な日本語を聞いて驚き、そして安心する店員。
二人は禁煙席に案内されて、長イスに腰掛けると同時に店員がお冷やを持ってくる。

「とりあえずカンパイ!」

お冷やのコップ同士をぶつけて少し口にする。

「やっぱりお前、日本人じゃないから日本語をペラペラ話すのが凄いんだな」

「当たり前でしょ、いつから日本で暮らしてると思ってるの。
さあて、なに頼もうかな……フフッ」

メニューを見ながらルンルン気分の彼女。焼肉が死ぬほど好きなのだから嬉しくて仕方がないのだろう。
一方で竜斗は皿と箸、タレと調味料を彼女に配る。

「リュウトどうする、食べ放題コースにする?」

「それでいいよ、コース外のも頼みたかったら頼めばいいし」

そしてメニューが決まり、机の呼び出しボタンを押す。すぐに注文入力機器を持った店員が現れ、食べ放題コースだと伝える。

「エミリア、いっていいよ」

「ありがとう。ならええっと……まずご飯大と中でしょ、牛カルビ、豚トロ、ハラミ、塩牛タン、牛ホルモン、馬レバー――」

いきなりどばっと注文するエミリア。
しかし彼は全く驚いていない。なぜなら彼女は全部食べるのを知っているからだ。
最初は彼女の胃袋に驚いていたが今ではもう慣れっこだ。

注文が終わると来るのを待つ間、雑談する。

「それにしてもサオトメ司令もマリアさんも粋だよね。
遊んでおいではともかく、こんなにお金をくれたんだから」

「ああ。けど司令達って……休みあるのか?
なんか今日の服装、いつもみたいに仕事用のだったし、特に休みだとも言ってなかったし――」

300 ゲッターロボ-A EoD- 第九話中編?F :2014/07/26(土) 01:43:50 ID:4I8Y4/zEO
「そう考えるとあの人達って大変だよね。
……身体壊さないのかしら?」

早乙女達の生活については、仕事以外は何をしているのか全然知らず想像もできない。改めて二人の謎は深まるばかりだ。

「けど、スマホ使えるんなら……俺らの親に連絡できるんじゃないか?」

「そうだね。けどもし繋がったとしたらなんて言えばいいのかな?
アタシ達今はなんやかんやあって――自衛官になってゲッターロボに乗ってますなんていう?」

「………………」

彼らにとってそこが一番の悩みどころである。そもそも早乙女からの許可なしで連絡していいものなのかが分からない。

「……そういえば水樹、あれからどうなったんだろ。マリアさんから聞いたんだけど――」

「リュウト、あんな奴の話はやめてよ。思い出すだけでムカついてくるわ。
全てアイツが悪いのよ、リュウトにあんな淫らなことして弄んで……絶対に許せないんだから、男をなんだと思ってんのよ――」

不機嫌そうな顔で彼女に対して愚痴を吐くエミリアだった。

「けど事情を聞くとなあ……許せないと分かっていてもなんか割り切れないんだよね」」

「……ホントお人好しだねリュウトは。けどそこがリュウトのいいとこかもしれないけど――」

「…………」

雑談している数分後についに下ごしらえされた各種生肉の入った皿が運ばれてきた。

「さあ、焼くわよ。あ、今日はリュウトが焼肉奉行してよ」

「え?なに、焼肉奉行って?」

「この焼肉する場を仕切る人のことよ。つまりリュウトが自由に肉を焼く係をやってってこと」

日本人の竜斗でも今日初めて知った日本語を使う彼女は、それほど日本語を勉強していると言うことだ。
今の日本人より日本人してるとは彼の弁だが、確かにその通りなのかもしれない。

301 追い出された名無しさん :2014/07/26(土) 01:46:25 ID:4I8Y4/zEO
オリゲタの人です。本スレの容量超えて書き込めなくなったので全て投下しました。以上です。

302 追い出された名無しさん :2014/07/26(土) 11:31:57 ID:40qxfQzk0

新スレ立ても出来ねえな

303 追い出された名無しさん :2014/07/26(土) 12:32:41 ID:v9c1/uM.0
乙だよー
スレのやつパンクしおったかヤワなやつめ(敷島博士っぽく)

304 追い出された名無しさん :2014/07/27(日) 01:24:22 ID:i0tjqJzI0
新スレ建てるにも規制がかかってんな
しばらくは無理なのかな

305 追い出された名無しさん :2014/07/27(日) 07:05:38 ID:4I8Y4/zEO
まあ気長に待とうよ〜(ねっとり)

306 追い出された名無しさん :2014/07/31(木) 22:47:56 ID:3ckrMqwA0
http://maguro.2ch.sc/test/read.cgi/anichara/1406814409/l50

新擦れたててきた

307 追い出された名無しさん :2014/08/01(金) 06:23:01 ID:IZt3xoAM0
>>306
ひょっとして即死してないか?開けない

308 追い出された名無しさん :2014/08/01(金) 09:51:04 ID:3ckrMqwA0
こっちは入れるけど
規制関連かな?

309 追い出された名無しさん :2014/08/01(金) 14:57:19 ID:3ckrMqwA0
よく見たら立てるところ間違えてる
申し訳ない

310 追い出された名無しさん :2014/08/01(金) 21:21:59 ID:0XAfvtIs0
博士、これは一体!?

311 追い出された名無しさん :2014/08/02(土) 04:22:46 ID:4I8Y4/zEO
新スレに貼りにくいので今回ここでゲッター続き貼りますわ。
今回は色々と節目を迎える回です。

312 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?@ :2014/08/02(土) 04:23:56 ID:4I8Y4/zEO
――二時間後、腹をパンパンに膨らまして店から出る二人……。

「うえっ……調子に乗って食べ過ぎた……」

「おいしかったけど……ねえ……さすがにもう入らないわ……リュウトも結構食べてたよね」

「つか俺に焼く係やらせといて、お前一人で十皿以上も平らげてからそのあとにデザートとか――」

「デザートだけは別腹なのっ!」

さすがに今は歩けないと、二人は店の外の横側で休憩する。

「次、どこ行こっか――」

二人は考えるが思い浮かばない。
そもそも急に遊んでこいといわれても、この周辺に何の娯楽施設があるかさっぱりだ。二人は出る前に早乙女にこの周辺について聞くべきだったと今思い知るのであった。

「――とりあえずこの周辺を探索しようか。それも観光の醍醐味ということで」

「……そうね」

少し休んで再び歩き出す。駐屯地周辺と比べたら、早乙女の言うとおりメカザウルスの被害がなく自道路には自動車(自衛隊車両も多い)が走り、様々なビルや店があちこちに立ち並ぶ。

ほとんど取り壊された向こうとは雲泥の差である。
二人はとりわけ建物の密集地へ。二人はをあたりを探索していると。

「リュウト、カラオケに行かない?」

ちょうど比較的大きいカラオケ店前に差し掛かった彼らだが、エミリアはそう提案する。

「……カラオケね。俺歌うまくないしな……っ」

「アタシそんなの気にしないよ。スゴくストレス発散になるよ、いっぱい歌ってすっきりしようよ」

……彼女に促された竜斗は少し考え、

「わかったよ、エミリアがそういうなら俺も歌うか」

「ワァオ、ありがとう!」

……エミリアはスゴく歌いたくてウズウズしてたんだなと彼はそう感じた。
考えたら彼女も学校時でよく女友達とカラオケにいったと聞かされたものである。

二人は受付を受けて、ドリンクサーバーでコップにジュースを入れて、指定された番号の個室へ向かう。
その途中の周りの個室から結構な数の張り上げる歌声が聞こえる、アニソンからJ―POP、有線曲、洋楽、これはどう聴いてもネタだとしか思えないおかしな曲も聞こえてくる。

313 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?A :2014/08/02(土) 04:27:39 ID:4I8Y4/zEO
やっぱりみんな、ここでストレス発散しているんだなとシミジミと思う竜斗だった。

そして二人は個室に入るとソファーに座り、エミリアは中央のカラオケ画面下に取り付けられた入力機器を取り出した。

「暑くなるからエアコン入れるけどいい?」

「いいよ」

そして彼女が先行して、入力機器に歌いたい曲を探す。

「フフ、久し振りだなカラオケ♪
けどリュウトと来るのは初めてじゃない?」

「そうだっけ?」

「うん。だから実はアタシね、いつかリュウトとカラオケ行きたかったんだ♪」

自分にそう言ってくれる女性もエミリアくらいだろうと、スゴく嬉しい気分だ。しかし彼は疑問なこともある、それは。

「……なあ、エミリア」

「どうしたの?」

「お前ってさ、他に好きな人いないの?」

「…………えっ?なによいきなりっ」

「だってさ、いっつも俺ばかり気にかけてるからさあ……」

「そ、それは……っ、さあて歌、うたっと……」


なぜか言い渋り、話をぎこちなくそらすエミリア。
愛美にはブスなどと言われてたが、実際には外国人特有の鼻がツンと高くて顔立ちも良く、そして献身的と、女性にとってはこの上ない要素を持つ彼女は、確か中学、高校時でも何人かの男子に告白されたのを知っている。

彼らは彼女が嫌いになる要素など持たない好印象を持つ男子だったのにことごとく、そして丁重に断っていたのだった。

そして竜斗自身も、彼女は男では誰よりも自分を好いているのを漠然と感じていた。

しかし、それが疑問だ。

なんでこんな地味で弱気の、そして運動も大して出来ずに読書やゲームやパソコン好き、そして女性と一度も付き合ったことのないいわゆる草食系男子の自分なのか……他にも自分より遥かに優れるいい男がいるだろう、なのに――。


「さあて、いくわよ。歌っている間に決めておいてねリュウト」

彼女が歌うのは名前の聞いたことのないアーティストの曲。
しかし表示されたその不思議な名前と流れ出るPV映像を見ると、どうやら日本のロック、それもいわゆるヴィジュアル系ロックバンドの曲であるようだ。

314 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?B :2014/08/02(土) 04:34:14 ID:4I8Y4/zEO
……そういえばエミリアってこういう趣味あったよなと思い出す。
彼女の部屋にそういう系統のCDやライブDVDが沢山あった。
画面には、不思議な世界観を映し出されたパート、バンド本人が歌うパートの映像が流れる。
まるで女か男か分からない程に盛った長髪、ガチメイクを施した細身の男性バンドメンバーの演奏、歌唱姿は、まるで漫画やアニメに出てきそうなキャラクターみたいだ。
けどそれでファンがいるのだから好きな人には好きなんだろう。

「うるぁああああっ!!」

盛り上げるためか、はたまたネタか、ハードロック調の曲に合わせてソファー上に立ち上がると片足をテーブルに載せながらシャウトし派手にヘドバンをかますエミリアに彼は腹を抱えて笑った。

まあアニソンはともかくボ〇ロ曲など、マイナー曲をよく聴く自分も、ある意味で似た者同士なのかもしれない。

歌が終わり、息を乱す彼女に彼は喝采を送る。

「エミリア、最高だったよーー!」

「あ、ありがとう……次はリュウトの番よ!」

「あ、いれてなかった……待ってて!」

……しかし彼は、実際何を歌おうか決めてなかった。とりあえず履歴、つまり前の人が入れた曲のリストを見て、自分でも歌えそうな曲を探す。

(これ歌おうか……)

入れたのはとりあえず無難な、ミリオンヒットした誰でも知っている有名アーティストの曲だった。

「…………」

カラオケという場に全く慣れていない彼は、とにかく音程を外すまいと慎重に歌おうと必死だ。
マイクを持つ手がブルブル震えている。
対しエミリアは終始無言である。

「はあ、はあ……っ」

歌い付かれる竜斗にエミリアは眉間にしわを寄せたムッとした顔となり、

「ダメダメ、すごく堅い堅い!」

「へっ?」

「リュウト、もう少し気を楽にして歌っていいのよ。
これじゃあ聞いてるほうも疲れるよ、カラオケってのは上手い下手はどうだっていい、はっちゃけてナンボなモンよ!」

エミリアに突然の指摘をされて目が点になった。

「アタシがなんで初っぱなからあんなパフォーマンスしながら歌ったか分からない?

315 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?C :2014/08/02(土) 04:35:32 ID:4I8Y4/zEO
それはね、リュウトの緊張をほぐすためにやったのよ。
そしたら、あれだけ爆笑してたじゃない」

「…………」

「アタシは……リュウトのありのままを聴きたい」

「ありのまま…………」

「怖がらないで。アタシはリュウトをしっかり受け止めてあげるから――なんて思われるか、なんて気にしちゃダメ!」

……エミリアが彼を半ば強引的にカラオケを誘ったのは、これまでの過重なストレス、そして愛美から受けた心の傷を少しでも和らげたらという彼女なりの気遣いである。
外出した時からどうしたらいいかと考えていたら、偶然カラオケ店があったのでこれならと――彼女らしい発案である。

「リュウト、いっぱい叫んで歌って盛り上がろう。アタシも死なない程度ではっちゃけるから!」

彼女の激励に竜斗は徐々に、彼女に対する嬉しさと感情が高ぶった。

「――うん!」

――それから竜斗とエミリアはまさに歌合戦状態となった。
アニソンやボ〇ロ曲、ヴィジュアル系ロック曲、ちょこっと有線曲、デュエットしたりと……自分達の趣味曲を下手上手関係なく、そして感情のままに歌い出す彼らは笑顔と凄まじい熱気に溢れていた――。

そして四時間後、バテバテになって店から飛び出した二人はもはや全てを出し切った表情だった。

「ノドカラカラ…………」

「エミリア、声がかすんでるよ……っ」

「そういうリュウトもじゃない……」

そう言い合い、互いに見つめてクスクス笑う二人だった。

夕方になり、時間も時間で竜斗達はとりあえず駐屯地の方へ向かう。
途中でタクシーを見つけたので、お金もあるし乗ろうとも考えたが、せっかく探索できるチャンスでもあったので二人は疲れるが歩いて帰る選択をした。

「キレイな夕日……」

落ちていく太陽に見とれる二人は、共通で、今日のような素晴らしい休日を作ってくれた早乙女とマリアに感謝するのであった。

――帰り道、二人は夕日をよく見ようとちょうど通りかかった、丘のような高い場所に立ち寄る。頂までの階段を転ばないようにゆっくり登る。

316 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?D :2014/08/02(土) 04:45:17 ID:4I8Y4/zEO
そして一番上についた二人を待っていたのは、見晴らしのよく、そして夕日の光をモロに受ける絶好の場所だった。
ベンチなどもあるが、誰もこないのか砂と枯れ葉だらけで汚れている。

「いい景色……アタシ気に入ったわ。またリュウトと来たいな……」

嬉しそうにそう言う彼女の後ろで聞いていた竜斗は……。

「エミリア」

「ん?」

彼女は振り向くと、どこかやりきれない顔をした竜斗がいた。

「今だから聞けるけど……なんで『俺』ばかりなんだ?」

「リュウト…………?」

「……カラオケん時でも言ったよな。他に好きな人はいないのかって……俺は知ってるよ。お前、中学の時から結構告白されてたの――」

彼女の顔から笑顔が消えた。

「告白したのは全員、俺より遥かに頼りがいがあるいい男だったけど……お前は全部断った。なんでだ?」

「…………」

「……こんなこと、恥ずかしくて言いたくなかったけど俺も大体は気づいていた。俺が好きなんだろ――」

ついに彼は彼女に秘められた想いの核心に迫った――。

「エミリアとは小学校前からの付き合いで常に俺と一緒だったからそれぐらい分かる……それに、お前ほど俺を想ってくれる女性(ひと)はいないよ。凄く嬉しいけど――」

「リュウト……っ」

「なんで俺なんだ。なんでこんな弱い俺なんだ……お前、少しは自分のこと考えたことあるのか?」

その言葉が彼女の心に針のようにグサッと深く突き刺さる。

「それが悪いなんてことはない。
けど……これ以上俺にくっついてると、これからもずっとお前にばかり迷惑がかかる。
お前にこれ以上傷ついてほしくないんだ……それなら、いっそのこと俺よか他の人を探したほうがいいと思う……」

彼は震える声で彼女の思いを引き裂くようなことを伝える――これも彼なりに考えたことである。
自分にばかりくっつき、助けようと庇うから愛美のような悪い人間と喧嘩し、傷ついてしまう。
他の頼りになる男とくっつけばきっと守ってもらえるから――。

「…………」

「お前だってホントはツラいんだろ?俺を助けるためにこんな――」

317 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?E :2014/08/02(土) 04:46:48 ID:4I8Y4/zEO
――だがその時、

「リュウトって……アタシの気持ちわかってない……っ」

「エミリア……?」

「うん、大好きだよ。この際だから言うけど……好きで好きでたまらないの。
もう、周りが白黒になるくらいに――だってリュウトはアタシの初めて友達になってくれて、この日本っていう国に対して好きにしてくれたから……。
だからアタシに告白してきた人には、心では凄く嬉しかった。けど申し訳ないことをしたと思う。

それにリュウトと一緒にいられるなら痛い目にあってもキツいなんて少しも思わなかったっ」

ついに彼女も彼に本心を伝えるのだった。

「……小学二年生の七夕の時、短冊に何書いたか覚えてる?」

「…………!」

「『おとなになったらエミリアとけっこんすること』って書いてくれたの今でも覚えてるよ。
何を書こうか迷ってたアタシは、それを見たらホント死ぬほど嬉しくて……アタシも汚い字の日本語で『おとなになったらリュウトのおヨメさんになる』って書いたんだよ……」

――彼は今、思い出した。そう言えばそんなことを書いた覚えがあると。
まさかエミリアは……。

「あの時クラスのみんなからヒューヒューって笑われたけどね。
四年生から、リュウトは願いを変えちゃったけどアタシはずっと『リュウトのお嫁さんになる』って変えなかったし、今でもその願いを変えようとしたことは一度もなかったよ……」

「エミリア…………っ!」

「……確かにアタシも悪いところはいっぱいあるよ。
不器用で要領悪いから……最初は今までリュウトをただ助けたり庇ってた。

それはリュウトが好きだからこそだよ……けど、それがリュウトに対して逆効果だったって……サオトメ司令やミズキ、そしてクロダ一尉に言われてやっと気づいたの、あたしのやってたことはただの自己満で思い上がりだったってこと。
それからアタシ、どうリュウトと接すればいいかスゴく悩んでた……っ。
それにリュウトがアタシに対してどう想っているか。
もしかしたら、自分にただ献身的な幼なじみだとしか思ってなかったら……そう考えると恐くて、今まで素直に『好き』なんて伝えれなかった……っ」

318 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?F :2014/08/02(土) 04:54:29 ID:4I8Y4/zEO
……顔が真っ赤なエミリアの目から涙が溢れかえる。

「けど……もし迷惑だったんならゴメンね……こんな、アタシの一方的な想いだけで今まで振り回して……困らせてゴメンね……」

「お前…………っ」

「けど……これだけは言わせて……アタシは……リュウトに何があっても最後まで味方になるから……それが、不器用なアタシの出来る、大好きな人への精一杯の優しさだから……!」

……これまでエミリアが自分ばかり寄り添い、助け、そして庇ってきたその真意。
そして――カラオケで歌い渋ってた自分に、対してこれまでしなかった『指摘』をしてきた意味……彼女の本音を今やっと、理解できた。

だが彼女は悲しさのあまり、彼に背を向けて泣きながら駆け出した――が。
「ば、バカ!!それ以上行くな――!!」

「!?」

彼女の行く先にあったのは手すりと鎖が張られ、その先には地面などない崖が。

(ウソ……)

泣くあまりにその存在を忘れていた彼女の足は鎖に引っかかり、勢いで一回転してまさかの崖の下へ転落……はしてなかった。

「エミリア!!」

「リュウト……!!」

間一髪、すぐさま追いかけた彼の差し伸べた手がギリギリで彼女の手を掴み、崖から落ちるのを防いでいた。

「エミリア、下を見るな!」

彼女の下は夕時もあって闇で広がっていた。どのくらい高いのか分からない。恐怖で身震いした。
崖の土に滑って上がれそうにもなかった。
しかし彼の腕の力に限界が来てるのか、今は鎖に必死でしがみついているも引力に従ってズリズリと崖へ引きずられていく。

「手を放して、これじゃあリュウトまで落ちちゃうよーー!」

「死んでも放すもんか!!」

その時、エミリアは見上げて彼の顔を見て感じた。
今までの柔かった顔が消えて、まさに本来の男らしさを感じさせる力強さが。

「エミリア……俺はお前は本心を聞けてもう迷いは吹っ切れたよ。
これからは……俺が絶対エミリアを守っていくんだからっ!!」

「……リュウトっ!!」

319 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?G :2014/08/02(土) 04:56:31 ID:rpG7Xx0Y0
その言葉は彼女の心を溢れさせるくらいな嬉しさに満たされた。
しかし、結局引力に負けて二人はそのまま崖から落ちていった……。

「……あれ、生きてる」

とっさに彼女は起きた。どうやら崖の下のようで偶然にも草むらでしかも地面の土が柔らかい。
少し痛みが走るがどうやらそのおかげで自分は助かったようだが、

「リュウト、リュウト!」

そばで倒れている彼を必死で揺さぶる。すると、

「う…………ん、エミリア、大丈夫か……」

彼の様子を見るとどうやら大丈夫なようだ。ゆっくり体を起こして彼は、彼女と対面する。

「ハハッ……俺、お前を絶対に守るって言ったのに……カッコ悪いよな……」

「ううん、そんなことない。今までの中で一番カッコよかった」

二人は暗い中で見つめ合う。

「ねえリュウト、これからアタシを守るって……ホント?」
「……ああ。俺も実は二日前のあれから、もうエミリアを守っていく、強くなるって決めてた。
けど、あんなことを言ったのはそれも選択肢の一つだと思ったんだ、だから――。
けどエミリアがそこまで俺を想ってくれてたんなら、これでもう完全に決めた、てっ」

「フフ……っ」

すると彼は照れくさそうに彼女に呟いた。

「エミリア、俺もお前が大好きだよ。
だからお前のために強くなるよ、けど俺、水樹にもう――」

「気にしてるのなら言わないの。それに……何があってリュウトはリュウトだから。言ったでしょ、全てを受け止めてあげるって――」

……ついに互いに想いを告げて、本当に結ばれた二人は強く抱きしめ合い、至福の時を迎えた――。

「リュウト……もっかい好きって言って……」

「大好きだよ。世界で誰よりも――」

「アタシも……世界で誰よりもいっとうリュウトが好き……っ」

エミリアにとって、これまでで今日の今ほど気持ちが満たされることなどなかっただろう。それは彼にとっても――。

「あ、世界で好きなのは他にいた」

「……え」

「アタシの親……」

「あ、俺もそうだ」

320 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?H :2014/08/02(土) 05:01:37 ID:4I8Y4/zEO
二人はクスッと笑った――。

その夜、駐屯地に戻りベルクラスに帰艦した二人は、すぐさま早乙女とマリアにお礼を言いに司令室に訪れた。

「おかえり二人共、楽しかったか……ん?なんでそんなに服が汚れてるんだ?」

「え、えっと……まあっ」

「サオトメ司令、そしてマリアさん。こんな素晴らしい休日、本当にありがとうございました!」

二人は今まで見たことのない彼らの満面の笑顔にまるで親のように暖かく見つめたのだった。

「そうそう、二人に吉報がある」

「え?吉報ですか?」

「ああ、実はな。残り一人のゲッターパイロットが正式に決まったよ」

最後のゲッターロボの乗る人間。二人は驚愕すると同時に、誰なのか知りたくなった。

「だ、誰ですか?」

「それはな、君がよく知る『女の子』だ」

「オンナ……のこ」

「…………?」


「なら紹介しよう、最後のゲッターロボのパイロットに任命された――」

すると横からある人物が現れる。見た竜斗達は……一気に戦慄した。

「「水樹(ミズキ)っっっ!!?」」

「そうだ、最後の一人は君達がよく知っている女の子『水樹愛美』だ、よろしく頼む」
なんてことだろう、最後のゲッターロボに乗る人物と言うのが、竜斗達を毛嫌いし傷つけ、そして陥れてきた彼女であった。

「…………よろしくね」

無表情で、そして素っ気なく言う愛美に対し、呆然となる。

「な、なんで……」

「ミズキがアタシ達と同じゲッターロボに……ウソでしょ……」

……まあ二人の感想はそうなるだろう。

「これを見てくれ、実は今日、彼女とゲッターロボの操縦訓練をしたんだが、その時の映像だ」

モニターに映し出されたそれは、二人をさらに唖然とさせた。
地下訓練場にて、初日ということもあり竜斗と比べてぎこちない面もあるが、縦横無尽に動き回る『海戦型ゲッターロボ』の姿が……。

「私達は驚いたよ。ほとんど自分の感覚でこんなに動かせるなんてな。まああまり指示を聞かないのが彼女の難点だがな。
竜斗にエミリア、これから彼女に負けてられないぞ」

321 ゲッターロボ-A EoD- 第九話後編?I :2014/08/02(土) 05:02:10 ID:4I8Y4/zEO
そう、愛美は所謂『天才肌』を持つ女性である……開いた口が塞がらずに立ち尽くす竜斗達。


――ついに揃う三人のゲッターロボのパイロット。

石川竜斗、エミリア=シュナイダー、水樹愛美の同級生同士のチーム。

だが、竜斗とエミリアとの関係が劣悪な愛美のこの三人で果たしてこれから上手くやっていけるのだろうか……。

322 追い出された名無しさん :2014/08/02(土) 05:03:29 ID:4I8Y4/zEO
以上です。こんな展開やるとベタだけどゲッターでやると新鮮味がある不思議w

323 追い出された名無しさん :2014/08/02(土) 13:11:27 ID:Z0gdDZto0
【石川賢】ゲッター線が他作品に出張!! 第29章【クロスSS】
http://maguro.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1406952659/

落ちてたから新スレ立てたよ

324 追い出された名無しさん :2014/08/02(土) 13:16:25 ID:Z0gdDZto0
書き込みないと即死するからね

325 ガイアーの人 :2014/10/03(金) 22:18:53 ID:FDhOGp0U0
お久しぶりです。
私の過去の投稿作品「激突!! ゲッター対ガイアー」「ゲッターロボ0080」について、
ハーメルンにも投稿させて頂いておりますので、その旨、ご報告いたします。

326 追い出された名無しさん :2014/10/04(土) 18:10:47 ID:d/91momw0
なにか変更点などはあるの?

327 追い出された名無しさん :2014/10/11(土) 08:02:23 ID:m1WsBb.A0
スレ落ちてる?

328 追い出された名無しさん :2014/10/11(土) 15:35:59 ID:K6vd1Jxc0
書けないね、なんでだろう?

329 追い出された名無しさん :2014/10/11(土) 17:41:23 ID:V39IiAJ.0
インキュベーターもといインベーダー野郎の仕業か?

330 追い出された名無しさん :2014/10/11(土) 18:40:45 ID:K6vd1Jxc0
まあ…書き込めないならこっちでやるしかないよね

ロボットも良いけど、キャラのアクションも欲しいよね
フィギュアーツ辺りで竜馬、AGPでゲッちゃんとか…

331 追い出された名無しさん :2014/10/11(土) 18:42:17 ID:D2Eiswls0
一年通してほぼ書き込めない
おのれインベーダー!!

332 追い出された名無しさん :2014/10/11(土) 19:32:22 ID:V39IiAJ.0
ゲッちゃんフィギュアは普通に需要ありそうな気がする

333 追い出された名無しさん :2014/10/12(日) 23:23:05 ID:Cju2K04c0
チェンゲ竜馬は立体映えすると思うんだけどね
元は慎一だけど、アレは今でも通用するデザインだと思う

334 追い出された名無しさん :2014/10/12(日) 23:24:22 ID:18Vg4Avw0
カードゲーム用のスリーブに、キャラクターの台詞が入ったのがあるけど、
「目だ!耳だ!鼻!があったら欲しいな」

335 追い出された名無しさん :2014/10/15(水) 20:23:03 ID:6HiEgKhw0
物書きの練習兼ねてなんか書こうと思ったけど、ゲッターと絡めるの難しいな…
ニコニコやVIPのノリでゲッターチームがプレイするポケモン、とかそういうのならともかく

336 追い出された名無しさん :2014/10/15(水) 23:35:22 ID:18Vg4Avw0
地獄の沙汰もノリ次第

337 追い出された名無しさん :2014/10/19(日) 04:37:29 ID:6HiEgKhw0
作品的に、グレン自体がゲッターの子みたいな存在だからって言うのもあるだろうけど
スパロボZのゲッター線と螺旋力って性質以外にも同じような関係なのかなァ
同作で言うW0と00みたいな兄弟と言いますか、いやもっと密接なのかもしれないけど

338 追い出された名無しさん :2014/10/19(日) 22:00:23 ID:6fK11jz20
個人的には螺旋力は虚無戦記のデストサイキックに近い気がする
自分の能力で宇宙からエネルギーを無限に汲み上げるとか

339 追い出された名無しさん :2014/10/23(木) 14:22:50 ID:fBIu6Sjo0
結局、時天空ってどの規模の存在なんだろ
多元規模のラグースやらゲッター線のさらに上の上だし
もしかするとオムニバースよりもデカイのかしら…

340 追い出された名無しさん :2014/10/23(木) 18:57:01 ID:DF9WF/zU0
そういえばドラゴンボール世界は宇宙の果ては壁になってるらしいな

341 追い出された名無しさん :2014/10/23(木) 20:41:59 ID:d/91momw0
頭おかしくなって死ぬから考えないようにしてる

342 追い出された名無しさん :2014/11/05(水) 00:16:33 ID:oMDotDMM0
石川先生存命ならイシカワ宇宙はまだまだインフレし続けてたんだろうか…
ウルトラマンだったかは最近の宇宙観取り込んですげーインフレしたらしいし
「僕のも最新の宇宙論に合わせよう!…アレ?tueeeee!?」みたいな

343 追い出された名無しさん :2014/12/04(木) 09:21:40 ID:Zt4E60vI0
ゲッター艦隊これくしょん(小声)
やかんはどれくらいのレアリティになるんかな

344 追い出された名無しさん :2015/01/10(土) 01:30:14 ID:Z0gdDZto0
今こそここで語らう時!

345 流竜馬の凡庸な日常 プロローグ :2015/04/26(日) 08:04:07 ID:LyYlkloE0
自分で名乗るのも馬鹿馬鹿しいとは思うんだが、
俺の名前は流竜馬だ。
我ながらこの名前は気に入ってる。
付けてくれた親父とおふくろに感謝しねえとな。

ゲッター線とかいうふざけた野郎と神を名乗ってやがる馬鹿野郎どもを
叩き潰すために戦ってる正真正銘の真っ当な人間様だ。
俺が戦い始めてどのくらいになるのかは、
数えてなかったんで忘れちまったが、
寄る年波なんぞ知らずに今日まで元気に生きてるぜ。
というか、ゲッターに乗ってから歳を喰ってる感じがしねぇ。
宇宙にいたときなんざ腹も空かねぇし
出るもんも出さなかったしな。
まぁ俺が人間て言えば人間なんだ。
別に細かく言われる筋合いもねぇし
言われても気にするこたぁねえ。
鍛えりゃこのくらい当たり前よ。

とまぁ、ここまで書いてて嫌になってきたから一応書くが、
これは俺の独り言なんかじゃねえ。

346 流竜馬の凡庸な日常 プロローグ :2015/04/26(日) 08:09:13 ID:LyYlkloE0

寂しくておかしくなったとか変な声に答えてるわけでもねえからな。
未来の俺よ、ちゃんとここまでは読めよ。

こいつは日記だ。
何でこんなもんを書かなきゃいかんのかは
俺でもよく分からん。
今思えば巧妙なワナってやつかもしれん。
酒の席でハメ外すとロクなことにならねぇな。
特に女どもの方が多いとよ。
ガラにもなく王様ゲームなんぞに手を出したのがこのザマだ。
あの時の俺はなに考えてたんだ?
王様なんぞになって何がしたかったんだ、ナニか?んなに餓えてねぇよ。
大体、あいつら人妻だろうが。一人除いて。
それに、王様の俺なんぞもう間に合ってるじゃねえか。
割りとそこらにいるぞ?

にしても、公開しなくていい。
書き続けるだけでいいとかいうのも腹が立つ。
俺がものを書いてるってのがそんなに可笑しいのか。
美樹(今は違うか)よ、お前、3人はこさえてるくせに中身が中坊の時から変わってねぇぞ。
少しは俺を見習いやがれってんだ。
俺だって大分しっかりしてきたんだからよ。

まぁいい、見せる必要がねぇんなら好き勝手に書いてやる。
まぁ、今日はそろそろ寝るか。
明日からは忙しいからな。
しばらくはセンギョウシュフってのやらねぇと。
神どもを蹴散らすのはまた今度にするか。
ガキは独りにさせとくもんじゃねえ。
隼人みたいになっちまったら大変だからよ。
おいゆま、絵本読んでほしいんだっけか?
お子さま向けももたろうじごくへん?
伏せ字とモザイクばっかで読めたもんじゃねぇな。
エロ本かっつの。
アンコの奴、なんでこんなもん買ってきやがった。
え?白いのに貰った?
そうか、いいこと教えてくれたな、ゆま。
ストレス発散の口実が出来たぜ。
こっちにしとけ、あーもんさーがかせいんとでびるに。
ああ、これもいいかもな『しんいちくんとまりあちゃん』
いかにもオンナノコ向けの平和なやつみたいだ。

じゃ、俺は絵本読ませて寝るからよ。
流石にそこまで書かなくてもいいだろ。
ちゃんとノートも作って俺の字で書いといてくれよ、ゲッター。
じゃあな。

347 追い出された名無しさん :2015/04/26(日) 08:32:35 ID:LyYlkloE0
30〜31になった魔法少女を描いてるまどかマギカスピンオフの『巴マミの平凡な日常』とのクロスになります
まどかクロスといいつつ主役は新ゲッターロボの竜馬です
なんやかんやで、竜馬って割りといい父親になりそうな気がします

348 追い出された名無しさん :2015/05/03(日) 07:20:01 ID:LyYlkloE0
引っ掛かかってしまったので、本スレの581〜投下します

349 流竜馬の凡庸な日常 9月18〜19日 中 ◆.a2nfBdRuY :2015/05/03(日) 07:24:00 ID:LyYlkloE0

浄化は間に合ってるから大丈夫だがな。
ところでこの浄化なんだが、拝借した紙コップに
こいつの魂と水と重曹投入してスプーンでからから回してやってる。
間抜けな絵面なのは間違いねえが、
マミの奴も命がかかってるし他に誰もいねぇからな。
笑われるこたねぇだろ。

と、思ったら笑ってやがるよこの女。
腹抱えて笑ってやがる。
試しにスプーンで掬ってみたらな、
見るみるうちに穢れが光に変わっていきやがった。
本当にどうなってやがんだ、こいつらは?
隼人やミチルがいなくてよかったな。
いたらバラされちまうぞ。

まぁいい、こいつの笑いが収まったら始めるか。
ああ、俺の何かがドス黒くなってる気がするぜ。

「ちなみに、あなたもこれをやったことがあるの?」
「あぁ」

やっと治まったか。
やったことあるよ、小一くらいの時にな。

腹空かせた犬と戦わされたりとか何日も山で暮らさせられたりとかよ。
流石に女にそれはきついだろ。
これは次からにしといてやる。
流石に犬は用意できねぇな。
犬型の使い魔にしといてやるか。

てなわけでな、俺はマミの奴がだらしねぇ時に檄を飛ばしたりしてたな。
特に問題は無かったんだが、強いて言えばな、距離の問題があったか。

100m離れないようにってのを互いに忘れててよ、
飛び降りたんじゃなくて落ちたってことがあったな。
無事だっからよかったけどよ。

350 流竜馬の凡庸な日常 9月18〜19日 中 ◆.a2nfBdRuY :2015/05/03(日) 07:28:10 ID:LyYlkloE0
にしてもよ、こいつも中々やるな。
なんだかんだで、俺の思ってる以上に早く終わらせやがった。

「親父が鬼もびびって逃げ出すようなおっかねぇ奴でな。
ガキの頃から修行漬けよ」
「…ちなみに、何歳の頃からしていたの?」
「ヨチヨチ歩きの頃からかね」
「どっちのことに反応していいのか分からないわ…」

失礼な奴だな。
俺だって人の子よ、子供時代くらいあるに決まってんだろうが。

「ま、結構絞れたんじゃねえのか?結果出たならいいじゃねえかよ」
「そういうことにしておくわ。
ああ、でもやっぱり、適度な汗って気持ちいいわねぇ。
もっと早くに気付くんだったわ」
「別に遅くもねえだろうがよ」

時間なんざ、まだあるんだからな。

濁りも大分薄まってるな。
てかすげぇキラキラになってんぞ。
寄生虫のケダモノ野郎。人間様をなめんじゃねえや。

「さぁて、少し休んだらよ。分かってるよな?」

最後は後始末だ。
後腐れが残らんようにな。

ええ、とだけあいつは答えてきた。
いいツラしてやがる。
こいつは根っからの正義の味方ってやつなんだろうな。
俺にはとても真似できねぇや。

「さて、そいじゃぼつぼつ降りるとするかね」

おあつらえ向けにラセン階段までこさえてやがる。
餌が歩きやすいようにってか?
魔法少女どもの絶望から生まれたのがこいつらなんだっけな。
いつまでもこんなとこでウダウダと絶望なんかに浸ってんじゃねえ。

マミのいるとこから、黄色の光が射して来やがった。
分かりきってはいたが、もうそこには魔法少女のマミ先輩が立ってやがる。
前にキツいって言ったがよ、こういうときは話は別だな。

さて、狩りの始まりだ。
使い魔野郎も一匹残らず叩き潰してやる。

この吐き気のする世界ごとな。






つづく

351 追い出された名無しさん :2015/05/03(日) 07:36:08 ID:LyYlkloE0
連休中に、もうひとつ上げられたらと思っています

元々、杏子と竜馬を会話させたくて書き始めたんですが、
今のところマミさんとばかり話しています
我ながらというか、この二人が向き合ってる様子は中々シュールな気が

352 追い出された名無しさん :2015/05/16(土) 16:21:32 ID:LyYlkloE0
引っ掛かったので、凡庸な日常投下です

353 流竜馬の凡庸な日常 ◆.a2nfBdRuY :2015/05/16(土) 16:25:28 ID:LyYlkloE0
弾に貫かれた炉心を見たら、心臓がどくりと高鳴りやがった。
一蓮托生っていうのを知らしめたいのか?俺を大好きらしい、このガイネン様はよ。
いつもいつも、俺に欲情しやがって。

「嫌なもんだな」

思わず口に出ちまったが、どっちの意味で言ったのかは俺にも分からん。
だが、ふつふつと沸き上がってくるこの感情ってのの正体は言い切れる。

俺がいつかブッ潰す、宇宙の概念。
ゲッター線への憎悪だ。

最初は桜がかった光が、化け物どもを呑み込んで色をどんどん変えていく。
結界も削り取ってるんだか融かしてるんだか、そいつらの色も混じっていきやがる。
光は早ええものってのは常識だろうが、こいつは違う。
ゆっくりと、舐め回すように、噛むのを楽しむかのように広がっていきやがんだ。
光ってよりも、霧やモヤに近い。
化け物どもの輪を飲み込む頃には、もう桜色なんざどこにもねぇ。

緑だ。

葉っぱよりも、濁った海よりも深い緑が結界の底を埋め尽くしやがる。
海と俺は言ったが、まさにそれだ。
霧がかかった緑の海だ。

または、宇宙か。

ふざけてやがる。
あいつの色を真似しやがって。

「流くん」

いつの間にか、隣にマミがいた。
包帯越しでも分かるのか。
俺はどんなツラをしてたのかね。

「心配すんな。俺はそれほどヤワじゃねえ」

負の感情ってのか?
なに、案外それほど悪くねぇもんだ。
これもな、俺の餌なのよ。

「当たり前よ。あなたは、守護者なんでしょう?」

まーた、俺の肩書きが増えやがった。
朝まで酒飲まされのアラサー魔法少女の世話に、使い魔、魔女・ドグラのネキリか。
忙しい日だな。

あと、何かやってた気がするが、何だったっけな?

「んな大それたもんじゃねえ。どっちかっつうと、俺は」
「ねぇ」

聞いてねえのか聞きたくねぇのか、マミが俺のコトバを遮る。
気が利く奴だと思ってやるよ。

354 流竜馬の凡庸な日常 ◆.a2nfBdRuY :2015/05/16(土) 16:29:25 ID:LyYlkloE0
「この武器、名前はあるの?」
「一応な。でもこんなのは、もう使うつもりはねぇ」

うっかり落としたら取り返しがつかねぇ。
いや、ゲッターに喰わせりゃ被害はねぇか。
それに、こいつの手持ちはもうこれっきりだ。

「混沌から沸き立つ汚濁を浄化せしめる絶命の緑光…」

かおすよりわきたつおだくをじょうかせしめるぜつめいのりょくこう。
よく、こんなのホイホイと思い付くな。

しかも、これ以外にも幾つかあるのか、ぶつぶつとほざいてやがる。
こいつの将来の旦那サマとガキは大変だな。出来ればだが。
早いとこ隼人のヤロウを探しておくか。

まぁアレだ。
今度、奴の似顔絵でも描いてやるか。
野郎の時期は、そうだな。
俺の力だとかキヒヒヒャハハと叫んでた頃にしてやる。
ある意味、一番輝いてた頃だろ。

方向性ってのは違うけどよ、そういう同士、気が合いそうじゃねえか。

にしても、隼人のガキか。
今日はいい悪夢が見れそうだな。

こんなくっだらねぇことを考えられるくらいになってきた頃にな、マミが俺に向かってこう言いやがった。


「ねぇ、【ダーク・デス砲】なんてどうかしら?」


こいつ、変な声とか聴こえてねぇだろうな?








つづく

355 追い出された名無しさん :2015/05/19(火) 06:35:25 ID:LyYlkloE0
狂気山脈(での修行)にて3

岩礁を溶かした熱き怒涛なる、良識に対して冒涜的な嵐を連想させる感情が流竜馬を支配していた。

人間の尊厳を踏みにじりし、凄惨たる有り様に貶められた遺骸を極寒の世界に葬ると、
彼は手当たり次第にその身に武具を溜め込み始めた。

生物の営みの一部たる、冬眠に臨む熊や哺乳類が餌食を溜め込むがごとく、
鋭角の大小に関わらず、他者を殺傷せしめる存在を学生服の内側へと投じていく。

それは物理の法則から逸脱した、或いは宇宙の原則にさえ唾を吐きかけるような手際をもってして、黒衣の中へと落ちていった。

凄惨という言葉さえ意味をなさぬほどに辱しめられた、人間と犬の遺骸に溶かされていた科学者達の精神は、
この20にさえ至らぬ(4〜5年ほど)若い少年から迸る、狂気にさえ迫る闘争本能によって発狂することさえ許されず、
この物理への冒涜行為を見続けさせられているのであった。

数分後、冒涜的な、というよりも、何物をも超越したような、ある種の絶対者とでもいうべきような姿があった。

現代人が進化の過程で置き去りをせずにはいられなかった自然への回帰とでも言うような暴力的な眼光は、確かに。
狂気が来訪した場所であろう氷原を殺意で満ちた、殺意で構築された渦を多重に巻いた瞳で睨み付けているのである。

「さぁ旅立ちだ!!!行くぜ野郎ども!!」

我々にとっての不幸とは、言葉では伝わらぬとも、この少年の言っていることが
空気に伝染し、それが我々の精神を拘束することにより、理解を強要しているということであった。
そして、宣戦を布告した少年が搭乗した、あの平和に対して冒涜的な装飾とおぞましき武装を装備した
恐るべき探査機に、我々も乗り込まざるを得なかった。
この少年の驚愕すべき収納術は、こと、乗り物に対しても働くのか、どうみても2人、無理をして3人乗りの、
既に内部は武装で埋め尽くされているにも関わらず、6人もの人員の搭乗を可能としていた。

勿論、操縦者たる彼の近くには、考古学的な見地を微塵も感じさせぬほどの穴を開けられ、
生物でいう耳の辺りから紐を通された、あの不気味な怪人形がぶら下げてあったのである。

356 追い出された名無しさん :2015/05/23(土) 19:44:26 ID:20FLeFI20
次回、狂気山脈が地獄をみた

357 追い出された名無しさん :2015/08/15(土) 19:13:26 ID:20FLeFI20
本スレに投下してた者ですが、また止まったので解除され次第落とします

358 ゲッターロボGene :2015/11/08(日) 22:43:58 ID:kC/ZO5m60
作者です 連続投稿で止まったんで残りをこっちに落とします

359 ゲッターロボGene :2015/11/08(日) 22:45:29 ID:kC/ZO5m60

「ふふふ、ひゃははは」

隼人の顔にあのころと同じ狂気が浮かぶ、久しく見せなかった狂った笑い顔を惜しげもなくさらしていた。

「隼人君 もっとこっちへきて」

生きていたころの彼女と寸分たがわぬ声で、それは隼人を呼ぶ。

「ミチルさん」

隼人がそれに近づいていく、竜馬はどうすることも出来ず、ただそれを見ていることしか出来なかった。
鉛のように重くなる体、遠くなる意識、そんな中、自分に向けて誰かの声がする。

「だらしねぇぞ 竜馬ぁぁ!」

とたん釘付けになっていた体に衝撃が走る。続いて銃撃の音があたりに響いた。
竜馬は最初の衝撃にバランスを崩し、その場に倒れる。そのそばをインベーダーの黒い触手がなぞった。
発破音は一発ではなく、連続で聞こえる。倒れた身を起こし、前を見ると、
ハヤトが、アサルトライフルでミチルさん・・・・・・いやインベーダーを攻撃していた。
彼の足元には隼人が倒れている。どうやら隼人も竜馬と同じように攻撃をかばわれたらしい。

竜馬は加勢しようと、手にした銃を撃とうとするも、その手は空を切る。
見ると手の中には何もなく、目当ての得物はすぐそばに立つ女性の手の中にあった。
彼女は竜馬の視線に気づくと、彼にウインクしていった。

「化け物退治なら俺たちにまかせろ!」

竜馬の銃を構え格好をつけようとしたリョウに、ハヤトの冷たい声がなげかけられる。

「リョウ何度も言っているだろう。俺じゃなく私と言え」
「うっさい!普段は言ってるんだからいいだろ!」

その言葉が合図だったかのように、リョウは攻撃を避けながら前に跳び出た。まるで肉食獣のようにしなやかな体は
ヒョウのように、飛び跳ねながら敵の懐を目指す。

「そうもったいないことを言うな。お前はレディなんだからな」

そのリョウに襲い掛かる触手を、ハヤトはアサルトライフルによる的確な援護射撃で打ち落としていく。

「お前のそういうキザったらしいとこ、どーにかなんないか?」

リョウは難なく試験管に接近し、ミチルの生首に竜馬の得物を向けた。

「そいつは無理な相談だな」

その間もリョウに襲い来る触手は、すべてハヤトの手によって撃ち落とされる。

「そうかよ。よっしゃもらった!」

リョウは正面から捕らえた敵に向け、イーグルの引き金を引いた。
拳銃は火を噴くが、彼女の頭を打ち抜いた銃傷は、瞬く間にふさがる。

「うっ嘘だろ?デザートイーグルで駄目なのかよ!」

彼女は再び撃とうと引き金を引くが、
しかし銃は火を噴かず、カチンという、金属音だけが空しく響く、それは弾切れを示していた。
さらに運悪く、弾を撃ちつくし、リロードの操作をしていたハヤトが叫ぶ。

「リョウ!すぐに逃げろ!」

360 ゲッターロボGene :2015/11/08(日) 22:46:11 ID:kC/ZO5m60
「そっそんなこと言ったって」

しかし彼女が体勢を立て直す前に、インベーダーの触手が襲い来る。
とっさに跳ね避けたものの、そのうちの一つが体勢を崩した彼女に迫った。

「このやろう!」

避けることはできない。彼女は体を低くすると、何を思ったか、拳を繰り出した。
その時、二つの発砲音が迫り来る触手を無力化する。

「俺が援護する。戻れ」

竜馬がとっさに取り出したのは、隼人から因縁と共に譲り受けた「コルトガバマント」だ。

「俺もいるぞ。二人ともインベーダーに不用意に近づくな。取り込まれるぞ」

そして今の隼人の持つ「コルトガバマント」
奇しくも、先ほどまで彼女を害そうとしていた隼人の拳銃が、リョウを救ったことになる。

「みんなこっちだ」

部屋の入り口ではゴウが扉を開け放って呼んでいる。隼人は入り口に向かって走った。

「誰か、俺と一緒に来い。 残りはインベーダーを食い止めるんだ」

隼人の進路をふさごうとする触手を、ハヤトが打ち落とし言う。

「ここは俺とリョウが何とかする!この構造物の内部が分かる竜馬、お前が行ってくれ!」

竜馬と隼人は驚いたような顔をしたが、合理的な説明に納得したように笑うとすぐに走り出す。

「分かった、おいリョウ。そいつは預けるぜ。それからインベーダーは「目」をつぶさねぇと倒せねぇぞ」

竜馬がイーグルの弾薬の入ったマガジンを放ると、竜馬と隼人とゴウの三人は部屋の外に出た。
そのまま金属の扉が閉まり、触手の行く手を阻む。

「再開の余韻に浸っている場合ではないな。リョウ、離れるなよ」
「へいへい 分かってるぜ。積もる話は後だ」

部屋に残された二人は、お互いに背中を預け、敵に対峙した。

361 ゲッターロボGene :2015/11/08(日) 22:53:52 ID:kC/ZO5m60
以上で今回の分は終わりです。
長台詞で複線回収しつつ、自然に銃撃戦に移行して
敵の登場と共に武蔵の死、がんばりました(白目)
ここから一気に加速します

次回 地獄へのエレベーター 上へまいります

362 追い出された名無しさん :2016/08/19(金) 09:41:06 ID:yQw0z0Ik0

武蔵ィ…

363 追い出された名無しさん :2016/11/11(金) 19:13:01 ID:DRzQP2fA0
久々に引っ掛かりました
恐竜帝国め…

364 追い出された名無しさん :2016/11/13(日) 00:56:03 ID:DRzQP2fA0
「糞っ!糞っ!糞が!この糞ったれの糞餓鬼が!乙女の顔面をあんなに散々!思い切りぶん殴りやがって!」
「魔法少女のくせに、あんなのも避けられねぇてめぇが悪いんだよ。それにたったの8発だ」
「それだけで飽き足らず、人の手足と手首を捻りやがって!
 あんた、虐殺者に憧れてるか猟奇な趣味でもあるんですか!?」
「少なくともこの俺は虐殺とか侵略には興味がねぇな。
 首とか腰でそれをされなかっただけ、有り難いと思いやがれ」

優木がナガレに悪意の全てを注いでいる事を確認し、杏子はゆまを連れ、ゆっくりと後退を開始した。

「手足をぶっ壊されて転がされた時、犯されるかと思っただろが。この発情期じみた歳の糞餓鬼が」
「てめぇらみたいなガキ相手に、欲情なんぞするもんか。その気はねぇけど、10年早えよ」
「なっ……」

悪意と汚濁で満ちていた女の声が停止した。
自らの言葉に嫌気を見せていたナガレも、その原因に気が付いた。

「…あぁ。そういうのはまだか。意外と真面目な奴だな」  

自分で言いつつ、ナガレは己の内面から溢れ出す不快感に、実に嫌そうな顔になっていた。
それでも彼は、その方向の話題を振る事にした。
足音と気配から、杏子とゆまがまだ近い位置にいることは分かっていた。

「口が悪いにすぎるからよ、てっきり彼氏くらいはいるのかと思ってた」
「はっ!その気になれば、オスの一匹や二匹を従えるのは余裕ですよぉ」
「その理屈だと、テメェは雌になるぞ?」

生物的に当然の事であるのだが、メスという単語に猥褻な物を感じたか、優木の顔に朱が灯った。 
第二次性徴期の、女になりかけの女は面倒くさいと、ナガレは思わずにはいられなかった。
そして、心底から言いたくないとは思いつつも、
効きそうな言葉を思い浮かんだので、彼は伝えてみる事にした。

「まぁ確かに。年相応っちゃそれまでなんだが、その下着は二重の意味でガキ臭い」

優木の顔が、遠距離からでもはっきりと分かるほどにわなわなと震えていた。
同時に、杏子とナガレの間で雷撃に打たれたかの様な感覚が奔った。
それは、優木によるものではなかった。

「死ねッ!!ゴミ屑ども!!」

優木の叫びよりも速く。
世界の一角から、異界とは異なる色が溢れた。
それは、黒の色を伴っていた。









つづく

365 流れ者達の平凡な日常(本スレ750より、規制のため) :2017/02/05(日) 08:10:25 ID:DRzQP2fA0
「精々、失望させないで呉れ給え」

言うざま、キリカは跳ねた。
駆け出し、更に跳んだ。
そして、彼の視界から瞬く間に消え去った。
彼の脳内に残る残像は、奇術師姿の残滓である、黒風の形をとっていた。

「野郎、この前は遊んでやがったな」

ふうと一息吐き、つぶやいた。
言い終え吸った大気には、少女の吐息の甘味が濃厚に残っていた。
それに、彼はげんなりとした表情を浮かべた。

そこに、一つの刺激が走った。
毛髪の間をすり抜け、頭皮に突き刺さり、骨を透過し、頭蓋の内に響いた。

意識を切り替え、彼はそれを読み取った。
相棒特有の、やや舌足らずな口調で

「ゆまが待ってる。早く戻って来やがれ」

との声が脳内で再生された。
了解、と彼は返した。

「戻る、か」

と、どこか自嘲気味の笑みを浮かべつつ呟いた。
その時、彼の眼にはあの輝きが宿っていた。
渦巻く瞳で虚空を睨むように一瞥すると、彼は足早に歩き出した。
包帯の下で形成されかけの、各部の皮膚が悲鳴を上げた。
この時もまた、痛みは停滞の理由と成らなかった。







つづく

366 流れ者達の平凡な日常(本スレ808の続き、規制のため) :2017/02/14(火) 21:40:29 ID:DRzQP2fA0
交渉が済めば、杏子と特に話す事は無いのか、キリカは『友人』と会話をし続けた。
耳を傾ける気は杏子には無かった。
どうせストレスになるだけだと、彼女は思っていた。

とりあえず、割りと近場にいた優木を見た。
「ひっ」と悲鳴を、挙げていた。
これはこれで楽しめそうだと、杏子は思った。
そう思わなければ、この展開についていけそうに無かった。
会話の内容はともかく、順応しているらしき相棒が不気味だった。
少しではなく、かなり不気味だった。
こういうのに慣れているのだろうか、とさえ思っていた。

そして、あの約束はどうしようかと思い始めた。








それらの様子を、遠くから伺う者がいた。
杏子が展開した鎖状の防御結界の中、自身の大切な存在たちを眺めていた。

それらを映す青い瞳に、薄い闇が宿っていた。
闇と青が混じり合い、異形の色と化していた。

それは、彼女の髪の色に似ていた。

鬼火か、業火の様にも見えた。

生々しいほどの、生命の色にも似ていた。

その幼い眼に顕れていたのは、暗い翠の色だった。






つづく

367 もしもこち亀の世界にゲッターチームがいたら(本スレ269の続き) :2017/07/23(日) 20:48:05 ID:29FmaTnU0
両津「どこからやってくるのかもわからない。そもそも人が乗ってんのかもわからない

   それでも町に現れる鬼を退治して帰ってくれるってんでヒーロー扱いだからな

   ワシら本物のヒーローは肩身が狭いな」

中川「そうですね。いっそ彼らの正体を暴いてしまえばと思っていたんで一石二鳥ですよ

   漫画では男の人が乗ってますが現実はどうなんでしょうねぇ」

麗子「そこまで言うなら止めないけど、気をつけてね」


もちろん一筋縄ではいかず、設計図調達の仕事を頼んだ人間が
大金に目がくらみついに強硬手段に出てしまう。
こうして両津の悪だくみによって盗み出された設計図は
ひと騒動をもたらすのだった。


そして話は冒頭の研究所にもどる。


竜馬「要するに盗んだやつらをぶっ飛ばせばいいんだな?」

隼人「違う。潜入捜査だ。人間がやったのか鬼がやったのかまだわからん

   人間だったらぶっ飛ばして鬼だったらぶち殺して帰るんだ」

弁慶「けどよぅ。なんでおれたちなんだ?」

隼人「作戦から行ってぞろぞろと大人数で行くわけにはいかん

   そうなると最悪素手の状態で1対多数でも後れをとらん人間になるが

   そうなるとこの三人しか残らん」

竜馬「なるほど」

弁慶「ほかの連中はなさけないな」

368 もしもこち亀の世界にゲッターチームがいたら(本スレ269の続き) :2017/07/23(日) 20:49:14 ID:29FmaTnU0
隼人「わかったら作戦を説明するぞ

   連中は中川グループから依頼されて設計図強奪の仕事を請け負ったらしい

   そして中川グループは近々秋葉原にコスプレ喫茶をプロデュースするんだが

   そこに巨大な像を建てる計画のようだ。ハッキングして抜き取ったデータの

   縮尺からみておそらく等身大のゲッターを完成させるつもりらしい」

竜馬「へーすげぇな。秋葉ってことは東京か。久々に新宿に帰ってみっかな」

弁慶「都会ってのは恐ろしいところだな。ゲッターを見世物にするなんてよ」

隼人「おれはそこの完成記念式典に乗り込んで中川グループの主に会ってくる。

   主犯ならちょいと叩けば埃がでるだろう」

竜馬「おれたちはー?」

隼人「会場で待機だ。弁慶が食いすぎないように見張ってろ。戦闘にならなければただの付き人で通す」

ミチル「そのことなんだけど、弁慶君は研究所に残してくれない?」

竜馬「あ? なんだよ鬼娘」

隼人「アンタはおれのたてた計画が不服か?」

ミチル「ちょっとした雑用が欲しいのよ。それにあなたたちも困るんじゃないかしら?」

ミチル「もしもタイミング悪くほかの場所に鬼が来たら、浅間山から自動操縦で秋葉原までは飛ばせないわよ

    誰かが一つに乗って残り二機を操作して行くしかないわ」

隼人「そうなると、確かに弁慶を残すのが適任だな。あんたに乗ってこられるとおれたちが迷惑だ」

ミチル(ギロリ)

竜馬「ひえーこえーな」

弁慶「おいおいお前。天女のようなミチルさんになんてことを」

竜馬「おめーは目を覚ませよ」

369 追い出された名無しさん :2017/07/23(日) 20:51:46 ID:29FmaTnU0
終わりっす
タイトルからして不穏ってレベルじゃない
律儀に出会いから書こうと思ったらこれだよ

また時間みつけて書いてこうと思うわ
本スレには書き込めないけどまたねー

370 追い出された名無しさん :2017/08/18(金) 08:46:05 ID:DRzQP2fA0
今更だけど乙
竜馬のリアクションに和む

371 本スレ314から 流れ者達の平凡な日常 :2017/08/29(火) 18:52:17 ID:RhbFtAss0
包帯で巻かれた顔の、口元に異変が生じていた。
その部分だけ、光の反射が著しい。
星屑のきらめきを思わせるような、自然の光が映えていた。
耳を澄ませば、ぐちゅぐちゅという粘着質な音も聴こえてくる。
先程、彼の脇腹で生じた音を更に増幅させたような。

それに気が付きある予感を浮かべた彼は、嫌悪感に一瞬眉を跳ねさせた。
少女の口元は溢れ出した唾液によって濡れそぼっていた。

「…腹減ってるのか?」

それが応えとでも言うように、少女は一気に跳躍。
包帯を引き裂くようにして大きく開いた鮮血色の口腔には、鋭い先端を描いた三角形がずらりと並ぶ。
人間のものではなく、獰猛な鮫のそれだった。

歯の群れの間に空いた暗い虚の中から、廃墟全体を震わせるような大音響が放たれた。
浅ましいまでの、飢餓に染まった咆哮だった。









つづく


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