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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

1リリカル名無しA's:2010/03/29(月) 23:42:31 ID:lCNO3scI0
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。

注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。

・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/

詳しいルールなどは>>2-5

481 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/02(火) 23:25:53 ID:iKb4r1060
【リインフォースⅡ:思考】
 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
 1.かがみを警戒する……?
 2.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。
※ヴィヴィオにルーテシアのレリックが埋め込まれ洗脳状態に陥っている可能性に気付きました。また命の危険にも気付いています
※かがみに憎しみを抱いています。それによって、自己嫌悪も芽生えています。

【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
 基本:ゼストに恥じない行動を取る
 1.かがみを警戒する
 2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
 3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。

482 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/02(火) 23:27:24 ID:iKb4r1060
これにて、投下終了です
タイトルの元ネタはトライガン・マキシマム一巻に収録された
6話のサブタイトルからです。
矛盾点、誤字・脱字などがありましたら、ご指摘をお願いします。

483リリカル名無しStrikerS:2010/11/03(水) 12:02:42 ID:/94TBiNc0
投下乙です。
なのスバ合流、なのヴィヴィ親子再会、はやリイ合流、こなかが再会、やった対主催集結だ!!
……と上手く行けばよかった筈なのに、かがみを軸に思いっきり仲違いをする皆様。(いや、主にはやてとリインがかがみを殺そうとしているのを周りが止めているわけだが。)
つかはやて……言いたい事わかるがお前だってギルモン殺しているだろうに偉そうな事言うなや(他2名はマーダーなので除外)……
ていうか、近くに金居がいる状況であんまり仲違いすなー一撃入れられたら終わりやでー!!
……そういや、金居アジト近くで一体何やってるんだ??? 出待ち?

とりあえず一点気になったんですが、

『その事実が、こなたにとって何よりも嬉しかった。
なのはっていう人はよく知らないけど、ユーノの幼なじみでスバルの上司らしい。
それなら、信頼できる。』

こなた側から見てなのはは元の世界の知り合いなので、よく知らないという事は無いのでは? この辺は些細な内容なのでwiki収録時に修正すれば済む話ですが。

484 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/03(水) 13:10:45 ID:qeziA8oA0
ご指摘ありがとうございます
勘違いをして、申し訳ありませんでした。
以後、このようなことがないように気を付けます
収録時に、修正いたします。

485リリカル名無しStrikerS:2010/11/03(水) 13:41:57 ID:rjSYAKhg0
投下乙です
対主催集合でさあみんな一致団結して……と、簡単にはいかないよな
特にはやてとかがみはもうこれ修復不可能レベル
ここで上手くまとめないとドロドロの展開もあり得るか?
そういやはやては元世界でなのはとフェイトと口喧嘩したところから来たんだっけ
なんの因果なんかねえ

ちょっと気になった点
本文中見るとはやてはリインが自分の世界のリインだと分かっているようですが、状態表見ると違っているみたいですけど状態表の不備でいいんでしょうか
あと
>何も知らないのに、かがみを侮辱したことに怒るなのは。
>何も知らないのに、なのはを侮辱したことに怒るはやて。
前者は「はやてが」でしょうけど、後者は誰がになるのでしょうか

486 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/03(水) 15:46:54 ID:qeziA8oA0
前者の状態表に関しては自分のミスです
以下のように、修正します

 1.なのはと話をして、かがみに引導を渡す。
 2.バクラを警戒、ヴァッシュを乗っ取るか?
 3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 4.キングの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
 8.金居は警戒しておくものの、キング対策として利用したい。

後者の修正
何も知らないのに、はやてがかがみを侮辱したことに怒るなのは。
何も知らないのに、かがみがなのはを侮辱したことに怒るはやて。

487リリカル名無しStrikerS:2010/11/03(水) 21:33:51 ID:rjSYAKhg0
修正乙です

488リリカル名無しStrikerS:2010/11/03(水) 21:37:27 ID:rjSYAKhg0
もう本当に終盤なんだな

489リリカル名無しStrikerS:2010/11/03(水) 21:41:25 ID:rjSYAKhg0
あ、雑談スレに書き込むはずだったのに
まあいいか

490リリカル名無しStrikerS:2010/11/03(水) 23:21:25 ID:rjSYAKhg0
>>483
金居の性格上少し離れた場所で様子を窺っている可能性は大だな
それも今の予約次第か

491 ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:22:10 ID:3dDhRjqw0
金居、キング、アンジール・ヒューレー分投下します。

492Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:26:00 ID:3dDhRjqw0










 ――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼を照らしていた。





「嫌な月だ――」





 金居はそう呟く。
 昨日と同じ変わらぬ満月――自分達参加者以外には人も動物も虫もいない異常な空間――それはこの場所が作られた空間である事を意味している。
 その場所に放り込まれて一方的に殺し合いをしろと言われて良い気などするわけがないだろう。





 C-9、ジェイル・スカリエッティのアジトより北方数百メートルの位置に金居はいた。
 放送前、プレシア・テスタロッサからの要請でアジトに集結するであろう対主催集団を崩壊させろと指示を受けていた筈の金居はアジトに向かう事無くその場所で待機していた。
 プレシアの指示を無視? 確かに最終的に遵守するつもりはないが、現状で刃向かうメリットなど少ない。では何故か?

 実際の所、アジト周辺に到着したのは放送開始前だった。上空から確認した所アジトには2人の参加者が既に到着していたのが見えた。
 両名とも自身にとって未知の人物であった為、この2人と接触し攪乱もしくは殺害する事を考えてはいた。
 だが、やはり上空から確認した所、ヴァッシュ・ザ・スタンピードと八神はやてがアジトに向かってくるのが見えていた。
 そして、実際に地上に降りた後、アジトに近付こうとしたタイミングではやてとヴァッシュが到着。結果として接触のタイミングを逃してしまった。
 その後、連中に気付かれない様にアジトから離れたという事だ。幸い再会での盛り上がり、及び放送が流れてきた事で周囲への警戒が多少緩んでいたため自分の存在には気付かれていないだろう。
 そして、双方共に確認出来ない場所まで移動し周辺への警戒は怠らず待機していたという事だ。なお、只待っていても意味など無い為砂糖を舐めながらである。

 何故、4人の集団に接触しなかったのか? それは金居自身にとって少々分の悪い賭けだったからだ。
 金居、ヴァッシュ、はやては共に激闘が繰り広げられたホテルアグスタにいたがその場所から先に離脱したのはヴァッシュとはやてだ。金居はジョーカーこと相川始と戦う為その場に残った。
 その後、金居と始は激闘を繰り広げたがそこにエネルとヴィヴィオという金居でも手を焼く強敵が乱入した事で金居は2人をジョーカー、そして始の戦いを見届けるため残ったはやての部下スバル・ナカジマに任せる形でホテルより離脱した。
 金居が戦いに加わる前、始は既にスバル、ヴァッシュ、そして柊かがみと戦っていた。その決着については始が紫髪の少女を倒しヴァッシュとスバルを助ける形で終わった。そしてヴァッシュとスバルは始を仲間として迎えていた。
 始の正体は最強最悪の存在ジョーカー、ギラファクワガタムシの祖であるギラファアンデッドである金居から見ても人類から見ても敵でしかない。だが、事情を知らないヴァッシュ達が理解出来なくても仕方のない話ではある。
 つまり、もしこの場でのこのこ自分が現れた場合、始やスバルを置き去りにした事でヴァッシュやはやてから不要な疑いを掛けられる可能性が高い。少なくても始が封印された事は事実なのでどちらにしても警戒される可能性は高いだろう。
 そもそもホテルを経ったタイミングが遅い筈なのに同じタイミングで現れるというのも違和感を覚えさせる要因だ。

 幾らプレシアの要請とはいえ、金居にとっては不利な要因が大きい。戦いになったところで負けるつもりは無いが、後にキングとの戦いが控えている以上消耗は最小限に抑えたい。
 故に現状は下手に介入せず近くで待機する事が最善と判断したのだ。時が経ち状況が変われば介入するタイミングも見えるだろう。

493Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:26:30 ID:3dDhRjqw0



 とはいえ、ただ無駄に待つ事をプレシアは望まないだろうし金居としてもそうするつもりはない。
 故に金居は先を読み一手仕掛ける事にした。そう、金居の手元にあるガジェットドローン5機を利用するという事だ。
 頭に命令を思い浮かべるだけで実行するそれは金居にとって強力な武器だ。金居は手元の5機にある命令を送り現在位置よりから北方向へ飛ばしたのだ。無論、アジトからは確認出来ないように。

 その命令は『各種施設の探索及び破壊』、『施設に向かった参加者の殺害』である。

 何故、ガジェットをアジトで繰り広げられるであろう戦闘で使わず遠くの施設に飛ばしたのか?
 勿論手元に密かに置いておく事で隙を作るメリットは確かにあった。しかし一方でガジェットを所持しておく事で不要な警戒を招く危険性もある。
 故に全てのガジェットを手元から離す事でその疑いを避けるという手法も有効だという事だ。
 幸いガジェットへの命令は頭で思い浮かべるだけで済む為、集団でいる所でガジェットに自分以外を襲う様にし向けても自分が命令元だと悟られる可能性はさほど高くはない。

 さて、先の命令を送った理由だが、それは対主催集団の次の行動を読んでの事だ。
 アジトに集った参加者は次はどうするのか? おおかた首輪解除に向けて工場等他の施設に向かうだろう。
 また、アジトで戦闘が起こった場合も他の施設へ待避する事も想像に難くない。
 つまり、先手を打つ事で連中の次の手を潰し仕留めるという事だ。対主催の妨害になっているのならば少なくてもプレシアから文句を言われる筋合いは無いだろう。

 北を見ると火の手が上がっているのが見える。どうやら工場が炎上しているのだろう。ガジェット達はちゃんと仕事をしているという事だ。

「これで首輪解除の手段が1つ潰れたな」

494Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:27:10 ID:3dDhRjqw0



 その最中、金居は今後の事を考える。放送からある程度時間が経過した。このタイミングならば連中の前に姿を現しても疑われる可能性は大分低くなる。
 とはいえ絶対とは言い難い、残り人数は自身を含め12人。彼等の情報を今一度纏め直したい所だ。
 まず元々の敵とも言うべきコーカサスビートルアンデッドキング、厳密に言えばここで決着を着ける必然性も無いが奴の性格上自身の目的の障害になる可能性が高い故、戦いは避けられない。
 そもそも最後の1人になるまで戦う事を偽装するならばキングとも戦うという事は当然の理だろうし金居もキングと戦う事については異存はない。
 幸いこの場では時間停止が行えない事は確認済みなので戦いになっても自身が圧倒的に不利という事はないだろう。とはいえ自身と同じカテゴリーKである以上その実力は互角、どういう状況になるにせよ極力自分優位に持っていきたい所だ。
 次に仮面ライダーカブトこと天道総司、ライダーに変身出来ないならば戦力的に問題は無いが変身出来るならば厄介な相手だ。
 また変身出来ない状況でもその能力は侮りがたい。味方だと入り込んだ所で自身の目的を看破される可能性が高いだろう。
 続いてはやて、高町なのは、スバル、ユーノ・スクライア、管理局の4人だ。ユーノに関しては未知の人物だがはやてとなのは辺りに対してはある程度信頼を得てはいるが完全とは言い難い。
 いや、以前仕掛けたカードデッキの仕掛を看破されたならばなのはからも警戒されている可能性も高い。どちらにせよ以前のように味方として接する事が出来るとは言い難いだろう。
 またスバルに対しても彼女が始を信頼していた事などを踏まえ自分を敵と認識している可能性が高いだろう。ジョーカーが危険な存在であってもその脅威を知らない以上それも仕方がない。
 続いてなのはの娘であるヴィヴィオ、ホテルでの戦いでは殺戮マシーン状態だったが、今現在は元の無力な幼女に戻った事を確認済み。故に現状警戒する必要はない。
 次にヴァッシュだ。先の戦いを見た所その実力は確か。同時に人格面でも殺し合いを良しとしない事は明白。自分の事をどう思っているかは不明瞭だが警戒しておくにこした事はない。
 先のホテルで始達が交戦したかがみに対しては特別脅威ではないだろう。ライダーに変身するベルトは既にスバルが取り上げている。ベルトがなければ只の少女、大きな障害にはなり得ない。
 もっともライダーに変身したところで始の変身したカリスに敗れている以上その実力は始以下、どちらにしろ問題はない。
 泉こなた、アンジール・ヒューレーに関しては詳細不明、もしかしたらアジトで待っていた人物かもしれないがそうでない可能性もあるため言及は避けよう。

 勿論、金居自身アンデッドや仮面ライダーはともかく人間程度に負けるとは思ってはいない。
 しかし前にギンガ・ナカジマ及び始と戦った時、武蔵坊弁慶が盾にならなければ自分が敗れていた状況であった事を踏まえるならば人間を侮りすぎる事は愚行と言える。
 そもそもエネルやアーカード、先のヴィヴィオと言った自身の戦闘能力を凌駕する連中が数多くいる事は認めたくはないが事実だ。どの相手に対しても油断せずにゆくべきだろう。
 とはいえどんな強敵であっても倒す事が可能なのはこれまでの戦いが証明している。故にそれについては絶望していない。だが、それはこちらも同じ事、いかにアンデッドといえども倒される可能性を決して忘れてはならない。

495Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:28:00 ID:3dDhRjqw0



 一方で金居自身ある事が引っかかっていた。それは先の放送が定時より10分遅れだった事だ。金居にとってこれは重要な事である。
 金居視点から見た場合、10分遅れた理由は放送前に自身との接触があり、自身が無事にプレシアの言葉に従い倉庫の中身を確保しアジトに向かうかどうかを確かめていたからと説明する事は可能だ。
 しかし、今回に限っては説明出来てしまっては正直まずい。要するに10分遅れてしまったら、暗に何かあったのではと思案される危険がある。
 つまり、遅れたのは『何か仕掛をしていた=金居と接触していた』と悟られる可能性があるという事だ。
 わかりきった事だが金居としてはこれは非常に困る話だ。散々人に参加者殺せと言っておきながらその足を引っ張るのは如何なものか。
 別にサポートしてくれとは言わないがせめて足を引っ張らないで欲しいと思う。
 勿論、これ自体がプレシアが参加者を攪乱させる為だけという話も無いではないが、警戒される以上自分としては良い迷惑である。真意が何であれ自分に不利益な解釈をされかねない事は避けてもらいたかった。

「定時に出来ないのなら前の放送の様に誰かに変わってもらえば良かっただろうが……」

 そう毒突く金居であったが、実際3回目の放送の様にオットーにやらせれば何の問題もない話なのは確か。自分との接触で遅れたのならば正直笑えない話である。

 だが、プレシアもそこまで愚者だとは思えない。もしかすると自身との接触の段階では問題は無かったがその直後に何かあったという可能性は否定出来ない。
 いや、それならそれでひとまずオットー辺りに定時に行わせプレシア自身は事態の鎮圧に向かえば良い。それでもどうにもならなければ10分遅れた事について簡単で良いからフォローを入れればある程度違和感は拭える筈だ。
 それをせずに単純に10分遅れただけで何の変哲も無い放送をしたとなると、漠然と放送を聞くだけの何も考えない参加者はともかく知略に秀でた者達は容易にその異常さに気付くだろう。
 考えられる事としてはオットーに放送を任せられない事態が発生したという可能性。つまり、主催側の内乱である。
 だが、こういう解釈が出来るとなるとその内乱でプレシア自身にも何かが起こり――最悪退場した可能性もある。
 そしてプレシアがいかにも健在であるかの様に見せる為、放送はプレシアに扮した者が行うという話だ。金居自身の世界に人間に擬態するワームの存在がある以上そういう可能性があっても不思議ではないだろう。


 だが――


「――何にしても現状すべき事に変わりはない」

 結局の所、主催側で何かが起こったとしてもそれは想像の域を出ない。確定的な証拠が出ない以上断定は避けるべきだ。
 それに仮に何かが起こっていたとしても自分優位な状況を作り出すため今後も当面は参加者同士を潰し合わせる方針に変わりはない。
 そもそも主催側の事情がどうあれキングは何れ倒す敵である事に変わりはないし、参加者の中には障害となるものもいる。故に、

「あんたの望む通りに戦ってやる。もっとも俺なりのやり方ではあるがな――」

 プレシアに聞こえる様にそう呟いた――

496Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:29:20 ID:3dDhRjqw0



 そんな中、1体のガジェットが金居の所に戻ってきた。前述の金居の指示に従うならば戻ってくる理由は――

「……ほう」
 ガジェットが持ってきたのは3つの道具だ。一見すると全て無用の長物に見える。しかし金居の目を惹くものがそこには確かにあった。
「まさかクラブのKが手に入るとはな」
 その内の1つがアンデッドが封印されているラウズカード、それも金居やキング同様カテゴリーKのカードだ。
 もっとも、金居が手に入れた所で別段使えるものではない。しかし自身の世界のものである以上捨て置く理由はない。故に金居はそれをデイパックに仕舞う。
「後の2つは……よくわからんな」
 残りは宝石の様な球体と何かの首飾りだった。
 使い道がわからない為、今の金居にとって有用な道具ではないが他の者にとってはそうとは言えない。
 故に下手に利用されるのを避けるため自分の手元に置いておく分には問題はないだろう。そうかさばるものではないというのも理由にある。
 そして用事を済ませたガジェットは再び金居の指示に従い北へ向かった。
「しかし、一体何処で手に入れたんだ? まぁどうでもいい話だがな」



 金居自身知る由は無いが3つの道具はある場所から回収されたものだ。
 それらは聖王のゆりかご玉座の間にあった。ガジェット達は北上しループを越えてゆりかごに辿り着いた。そしてその玉座の間にあった道具の中で使えると判断したものを回収したのだ。
 これまでの話を読んだ方の中には玉座の間には他にも道具があったのではと疑問に思う者も数多いだろう。しかし結論を言えば他に使える道具を見つける事は出来なかった。
 何故か? そもそも玉座の間には3人の参加者ルーテシア・アルピーノ、キャロ・ル・ルシエ、フェイト・T・ハラオウンが所持していた道具があった。
 だが、その後ヴィヴィオがキャロの遺体を完膚無きまでに破壊した際に力任せに攻撃を繰り返した。エネルにも匹敵する力を無尽蔵に加えればどうなるだろうか?
 その結末など考えるまでもない。その周囲にも破壊が及ぶのは当然の理。結論を言えば、そこに置かれていた道具の殆どは完膚無きまでに破壊された。
 破壊を免れたのは惨劇の場から離れていた首飾り型のスバルのデバイスマッハキャリバー、破壊される事の無いラウズカード、本当に幸運にも被害を避ける事の出来た球体かいふくのマテリアぐらいだった。
 余談だがフェイトの道具に関してはフェイトが事切れる前フェイトの手から離れていた。そのためフェイトの遺体自体は攻撃から免れたが道具に関しては破壊に巻き込まれている。なお、フェイトの遺体はその後ヴィヴィオによって何処かへ移送されている。

 なお、マテリアにしてもマッハキャリバーにしても金居にとって未知のものである以上使用は不可能。当然だがマテリアの説明書きは攻撃に巻き込まれ消失している。
 マッハキャリバーについてはマッハキャリバー自身がガジェット及び金居を敵と判断したため一切の応答を断っていた。
 ルーテシアに利用されて持ち主のスバルを危険に巻き込んでしまった事もあり、もう二度と敵に利用されるつもりはなかった。利用されるぐらいならば壊された方がずっとマシだと考えている。
 幸い金居は自身を知らない為、現状は何の変哲もない首飾りと思われている。それで十分だとマッハキャリバーは思考していた。

497Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:30:00 ID:3dDhRjqw0





「さて、そろそろ動こうか――」
 腹ごしらえも済みアジトへ向けて歩を進めようとした矢先、一発の銃声が響いた。無論方向はアジト方面である。
「どうやら俺が手を下すまでもなく争ってくれているようだな」
 このタイミングならば内部に入り込み集団を瓦解させる事も襲撃して一網打尽する事も可能ではある。
 しかし油断してはいけない、内部分裂の状況だからこそ襲撃を警戒する者もいるだろう。





「どうしたものか――選択肢は数多い――いや、俺が選ぶ道は1つか――」





【2日目 深夜】
【現在地 C-7密林】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。

【全体の備考】
※ガジェットドローンⅣ型×5@魔法少女リリカルなのはStrikerSがアジトより北にある各種施設に向かいました。以下の命令を受けています。
 ・各種施設の探索及び破壊、確保した道具は金居の所へ持ち帰る。
 ・施設に向かった参加者の殺害。
※工場がガジェットにより破壊されています。
※ゆりかご玉座の間に残っていた道具の殆どが使用不能になるまで破壊されています。もしかしたら何か使える物が残っているかもしれません。

498Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:30:30 ID:3dDhRjqw0










 ――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼等を照らしていた。





「ふっ、良い月だ」





 キングはそう呟く。
「何か言ったか?」
「いや、別に」
 アンジール・ヒューレーの問いかけをそう返したキングの心中は高揚していた。
 月光はゲームの支配者である自分だけを照らしている。一方的に放り込まれ殺し合えと言われた時は良い気はしなかったが実際はどうだろうか?
 ゲームは幾つかの不測の事態があったものの概ね自分の思う通りに進んでいる。天も地も、そして全ての者達が自分の玩具であった。
 月明かりは自分を祝福してくれると思えば良い気もするだろう。





 E-9にある森林に2人はいた。D-2のスーパー跡地にいたはずの2人が何故ここにいるのか? そこで、少し時間を遡りつつ振り返っていこう。

 そもそも2人はあの後逃走した天道となのはの追跡をしていた。逃走した方向に関しては戦闘時の立ち位置等からある程度予測出来た。その方向は西方向、故に2人はまず西へと向かった。
 市街地の闇に消えた可能性も無いではなかったが敢えてその裏をかき、逆方向の平野へ向かった説もあるとキングは判断していた。
 アンジールはそうではないが、キングにとってはここで2人を見失っても別段問題はない。只の戯れの1つ程度にしか思っていなかった。

 結論から言えば2人を見つける事は出来なかったがその代わりにD-1に血痕をそれも比較的新しいものを見つけた。
「ふむ……」
「そんなものどうでも良いだろう、何もないなら市街地に戻るぞ」
「いや、そうでもないさ。何故こんな所に血痕が出来る?」
「ここで戦いが起こったからだろう?」
「アンジール、君はわざわざフィールドの端で戦ったりするか?」
「……そういう事か」
 普通に考え参加者は人のいる市街地へ向かい当然戦いもそこで起こる。殺すにしろ組むにしろ参加者の足取りは端から中央、もしくは施設に向くのは当然の事だ。
 だが、D-1はエリアの端にあり同時に周囲に施設はない。好き好んでここで戦いを起こす理由は皆無だ。しかもこの場所はD-1においても西側、ますますこの場所で戦う必然性に欠けるだろう。
「……試してみるか」
 キングは更に西方向に足を進める。アンジールは何を考えているんだと思いつつ着いていくが――突然キングの姿が消えた。
「何?」
 アンジールは慌てて追いかけた。そして気が付いたら景色が森に変わっていた。
「なるほど。プレシアの奴も面白い仕掛しやがって」
 と、ゼロを演じる事も忘れ素の姿をキングはさらけ出していた。
「どういうことだ?」
「何、大したことじゃない。フィールドの端と端は繋がっているというだけの話だ」
 一連の事から端と端は繋がっていてループするという事実に気が付いた。先の血痕の主もループしD-9へとワープしたのだろう。と、
「キング……お前主催者側の人間だったな、知らなかったのか?」
「私とてプレシアから全てを聞かされているわけじゃないさ。逃がさない仕掛をしているとは聞いていたがまさかループとは予想外だったという事さ」
「それでこれからどうする? 俺にとってはループなどどうでも良いんだが……」
「そうだな……状況から考えて2人もループを使って逃げた可能性が高い……」
 キングは地図を見ながら
「よし、ホテルへ向かおうか。恐らくそこで参加者を集めているのだろう」
 と、南方向へと足を進めていく。アンジールも後方のアジトを気に掛けながらもキングの後を着いていった。





「ところで――先程君は私をキングと呼んでいたが、私は君に名乗っていたかね?」
「……さっきの戦いで天道達がお前をそう呼んでいただろう。それを聞いただけだ」
「そういえばそうだったな。正直この姿の時はゼロとでも呼んで欲しいが……まぁいい」

499Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:31:00 ID:3dDhRjqw0





 その後、2人はF-9に辿り着いたがそこは崩壊したホテルと1人の半裸の男の死体しか残っていなかった。真面目な話半裸の男の死体など2人にとっては意味は無く、得る物も無い為早々にこの場から離れようとしたが、

「……あれは?」
 キングは地面に何かを見つけその場所に向かった。そして
「これジョーカーのカードじゃん、何でこんな所に?」
 とまたしてもゼロを演じるのを忘れカードを拾い上げる。それはハートのAのラウズカードだ。
「キン……ゼロ、そのカードがどうかしたのか?」
「いや、別に君に関係の無い事だ」
「それと同じようなカードなら向こうにもあるぞ」
 と、少し離れた場所にも別のラウズカードが落ちているのが見える。
 それらの位置から考え起こった事はある程度推測出来た。ホテルでジョーカーこと始は戦い激闘の末に封印された。その後、カードだけが風などで飛ばされて散っていったという事だ。
「アンジール、他にもカードが落ちているだろう。捜すぞ」
「ちょっと待て、こんなカードなどどうでも良いだろうが。何故……」
「おや、君は私に逆らえる立場だったかな? まぁ君が捜したくないというのなら別段構わ……」
「くっ……わかったそのカードを捜せば良いんだな?」
 キングにとってラウズカードはある種最高の玩具、故にキングはそれを集めようとしていた。アンジールは渋々それに付き合いカード探索をした。





 そして、キングの手元にはハートのA、3〜10、9枚のラウズカードが集った。
「ふむ、ジョーカーとハートの2が無いのは些か妙だな……先に拾われたか?」
 こうしてカード探しをしている内にE-9まで戻ったという事だ。どうやら風が北方向に吹いていたためカードも北方向に散らばりそれらを拾っていく内に北へ進んだという事だ。
「ゼロ、そういえばさっきからバックの中で何かが騒いでいるが何かあったのか?」
「ん? ああ、こいつか。只の人質だよ、連中を従わせる為のね」
 なのはから奪ったフリードリヒはキングを警戒、いやむしろ嫌悪していた。キングのした事を踏まえるならばそれも当然の事である。
 故に度々フリードは暴れだそうとしていたがデイパックに押し込まれていたが故に何も出来なかったのだ。
「人質程度で連中がお前に従うとは思えないが?」
「だが少なくとも私に刃向かう事は無いだろう」
「不意を突かれ奪還されるかも知れないだろうがな」
 そう口にするアンジールの言葉を聞いてキングも少し考える。
 確かに先の戦闘でカブトは自分から2つのデイパックを奪取している。2度も同じ事をされるとは思わないが警戒しておいて損はない。
「そうだな……ならコレは君が持っていたまえ」
 と、フリードの入ったデイパックをアンジールに渡した。
「良いのか?」
「構わないさ、他にこれといった物は何もない」
「俺がコイツを殺すとは考えないのか?」
「ソレは参加者じゃない。殺した所で君にメリットは皆無だ。それに私の意に背いて殺したり逃がしたりなど君に出来るのか?」
「……もっともだな」
「もし私に何かがあればその時は……」
 キングが追いつめられた時、アンジールがフリードに刃を突き付け連中を抑制しろ……その指示をアンジールは無言で頷いた。
 連中もフリードをアンジールに渡しているとは思うまい。優位に立ったと思った所で絶望させる……そう考えキングは仮面の下で笑みを浮かべていた。
 真面目な話、渡した理由の中にはデイパックの中で騒ぐフリードが正直疎ましく感じていたからというのもあった。

 その最中、キングは地図を確認し次の目的地をスカリエッティのアジトに定めていた。恐らくホテルでの戦いを終えた者達はそこに向かっていると判断した。
「喜べアンジール、ようやく君の望む通り戦えるだろう」
 強敵とも言うべきジョーカーもエネルももう退場済み、仮面ライダーであろうとも自分を倒す事は不可能。いざとなればフリードを人質にすればよい。
 放送が10分遅れた事もキングにとってはどうでも良い話、主催側で何が起こっていようが自分はやりたい様にやるだけだ。
 このゲームの支配者はプレシアではなく自分――そう考えキングは足を進めていた。

500Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:31:30 ID:3dDhRjqw0







「(――全く、何をやっているんだろうな俺は……なぁセフィロス……)」
 キングの後方でアンジールは空を見上げていた。
 妹達を守る為に戦い続けたが結局何も守れず、生き返らせる為に戦おうとしても結局は主催関係者と語るゼロの手駒と化す状況、
「(これでは道化人形としか言いようがないな……)」
 これまでずっと守る為に走り続けたアンジールにとってキングの指示に只従うという状況は結果として落ち着いて考える時間を与えてくれた。

 結論から言えばアンジール自身、キングの言葉については疑心を抱いている。そう、キングがプレシアの手先であるという部分について嘘の可能性を疑っているという事だ。
 前述の通りキングの名前を知っていた事に関しては斬りかかる直前天道及びなのはの口からキングの名前が出てきた事が耳に入ったからだ。それに対してキングが何と応えていたかまでは聞き取れてはいなかったが。
 勿論、それだけでゼロがキングという名前だと判断出来るとは言い難い。しかし、少し時間が経過し考えている内にある事を思い出したのだ。
 それはデパートのパソコンに残っていたメールのログ。そこにはキングに警戒しろという情報があった。その時点では特に気にしていなかったがそれを思い出した事を切欠にキングの存在とゼロを結びつける事が出来たのだ。

 勿論、これだけならばキングが警戒すべき存在でしかない。だが、どうにもキングの言動を見る限り本当に主催者側の人間として働いている様な感じがしない。
 突然口調が変わった事と言い、追跡すると言っておきながらカード集めに走った事といい、どうにも納得がいかない。悪く言えば遊んでいるとしか思えないという事だ。
 しまいには主催側の人間といっておきながらループの事を知らなかったのも気になる。
 そう、主催者側の人間という話自体が自分との戦いを避け同時に手駒にする為の口からでまかせという可能性に気付いたのだ。主催者側の人間でないならば従う通りは全く無い。
 自分について妙に詳しかったのは別のカラクリがあったとすれば説明が付く。
 それこそ当初考えた様にセフィロス辺りが自分の情報を売ったという説もあるし、自分がメールで情報を得たのと同様に何処かの施設で情報を得たという説もある。確かメールには施設を調べろという事も書かれていた筈なので情報を得られる可能性はある。

501Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:32:00 ID:3dDhRjqw0

 勿論、本当に主催者側の可能性もあるが仮にそうだとしても許せる存在ではない。
 そもそもの話、クアットロを殺したのはキングではないのか? 仮に主催者側の人間であったとしても直接の下手人を許せる道理はない。
 また、根本的な部分で引っかかる事がある。オットーが放送を行った件についてだ。勿論、これ自体はオットー達も主催者側にいるという事で説明が出来るだろう。
 だが、一方でクアットロ達が参加者側にいる事が気になる。オットー達がいるならクアットロ達も主催者側の人間でなければおかしいだろう。
 ではクアットロ達も主催者側の人間で参加者を攪乱するために送り込まれていたのか? いや、一度クアットロと接触した限りクアットロは自分を覚えていなかったしそういう役割を与えられていたという素振りも見せなかった。
 勿論、記憶を操作した上でそういう役割を与えたという説もあるだろう。だが仮にそうだとするならばなおの事キングを許す事は出来ない。
 キングは参加者の情報を与えられている一方、クアットロ達は記憶封鎖されている。何故こうも扱いに差があるのだ? キングや主催側に怒りを覚えずにはいられない。
 そして最終的にはクアットロ達を斬り捨てた――オットー達もきっと主催者側に命を握られているのだろう。決して主催者達を許す事は出来ない。

 だが現状では主催者の望み通り彼等に従い優勝を目指し妹達を助けるしか選択肢はない。それが真実という保証も無いが嘘だという確証も無い。故に今は従うしかないのだ。
 同時にキングに対しても現状は従うしかない。キングに疑心があるとはいえこれまた確たる証拠が無い。もし本当に主催者側の人物だったら彼の機嫌を損ねれば最悪優勝しても願いは叶わない。
 自分が状況に流されるだけの道化人形だという事は理解している。それでも願い事を叶えたいという想いだけは誰にも否定させやしない。



「(笑えよ――セフィロス――)」



 友が今の自分を見てどう思っているかはわからない。妹達を守るために奴の大切な者――八神はやてを殺しておきながら結局何も守れなかった。
 今の自分の姿はさぞかし滑稽に映っているだろう。





 自虐はそこで終える。何にせよ目的地はある意味本拠地とも言うべきスカリエッティのアジト。全ての決着を着けるという意味ではある意味相応しい場所だ。

「(キング、今はお前に従ってやる。だが、クアットロを殺したお前を許すつもりはない――何れ落とし前だけは着けさせてもらう――
 プレシア達もだ――妹達をこの殺し合いに巻き込んで只で済むと思うな――)」

 敵意だけは決して消すことなく、道化へと堕ちてもなお兄としての僅かなプライドを残して戦士は行く――

502Round ZERO 〜MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:32:30 ID:3dDhRjqw0





「そうだ――俺が選ぶ選択肢は――1つだ――」
「何か言ったか?」
「いや、別に」





【2日目 深夜】
【現在地 E-9】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3〜10)、ボーナス支給品(未確認)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
 1.アジトに向かう。
 2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
 3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
 4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
 5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。

【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングと主催陣に対する怒り
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
 1.キングと共に、参加者を殺す。
 2.参加者の殲滅。
 3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
 4.キングが主催者側の人間で無かった事が断定出来た場合、キングを殺す。
 5.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。
※キングが主催側の人間という事について疑いを持っています。





 月明かりに照らされながら終末の光へと誘われるかの様に虫の王達は一点へと集う――





 それは偶然か? それとも必然か?





 何れにせよ運命の決着は近い――





 決めてとなる切札は王の手にあるのか――





 あるいは――

503 ◆7pf62HiyTE:2010/11/07(日) 17:36:30 ID:3dDhRjqw0
投下完了しました。何か問題点や疑問点等があれば指摘の方お願いします。 容量としては29KBなので分割無しで収録可能だと思います。
今回のサブタイトルの元ネタは過去何度も使われているのでご承知の事と思いますが『仮面ライダー剣』OP『Round ZERO 〜 BLADE BRAVE』です。
ちなみに後半部分の『MOONLIT BEATLES』については一応『GALAXY ANGEL Moonlit Lovers』(ギャラクシーエンジェルのゲーム第2作)から取りました。
決して、伝説のバンド名から取ったわけではありません、結果的にそうなっただけです。(意味合いとしては『月光に照らされた甲虫達(カブトムシやクワガタムシ等)』)

ぶっちゃけ金居サイドは別段今回の話必要無いと思うけど、アジトパートで色々やっている間棒立ちというのもおかしいのでワンクッション入れさせてもらいました。
キングサイドは……真面目な話、こうでもしなきゃ他の参加者と絡む可能性低いと思った。
さぁ、アンデッド無双が始まるか?

504リリカル名無しStrikerS:2010/11/07(日) 23:43:50 ID:yVsqUiYE0
投下乙です
続々とアジトに集結する参加者たち
もう何があってもおかしくないなw
そして着々とアンジールに離反フラグが…でもクアットロの遺言あるからどうなんだろう…
できればこのまま最後の一人を目指してほしいな

505リリカル名無しStrikerS:2010/11/08(月) 19:13:11 ID:K6KlF1KQO
投下乙です
アジトでの最終戦へと着々と進んで行ってるな
4つのカテゴリーキングとジョーカーも集まってるし、14フラグも?
さあ、一体どんな乱闘が起こるのか…

506リリカル名無しStrikerS:2010/11/09(火) 11:02:57 ID:wNMi3NgA0
投下乙です
金居にキング、アンジールも着実にアジトへ向かうか
キングはボロが出かけてるが、これは何気にアンジールの離反フラグ?
そういえばこのロワって未だに金居とキングの邂逅は無かったんだな……
そろそろ二人のカテゴリーキングが出会ってしまうが、やっぱり戦闘になるかな?
てかキングは全て破滅させるのが行動理念の筈がいつの間にかちゃっかり殺し合いにのっちゃってる気が……w

507 ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:23:51 ID:VDYaY.Gc0
天道、ヴァッシュ、ユーノ、なのは、はやて、スバル、ヴィヴィオ、こなた、かがみ、金居、キング、アンジール・ヒューレー
で投下します

508Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:25:34 ID:VDYaY.Gc0

「はやてちゃん……」
「なんで分かってくれへんのや……」
「なのはもはやても落ち着いてくれ!」
「お前たち、今の状況を考えろ!」
「二人とも冷静になって!」
「私は……」
「なのはさん……八神部隊長……」
「…………ぅ…………ぅ」
「かがみん……」
「あ、そ、そんなつもりじゃ……」
「おい、お前も落ち着け!」

風変わりな青系統の着物を身にまとった魔導師が説得を試み――。
茶色の陸士制服の胸元を真っ赤な血で染めた魔導師が主張して――。
深緑のスーツを着こなす司書長が場を静めようとして――。
ジャケットとジーンズという格好の天の道を往き総てを司る男が咎め――。
真紅のコートに身を包んだガンマンが仲裁を図ろうとして――。
薄汚れた下着の上に着物の上着という露わな姿を晒す女子高生は怯え――。
白きバリアジャケットを展開する魔導師は苦悶して――。
薄紫の大きな帽子と橙色の大きなリボンで着飾った幼き子は未だ眠り続け――。
水色と白のセーラー服とスカートを着用した女子高生は悩み――。
烈火と蒼天の二人の融合騎は急転する状況に混乱を隠せず。

(おいおい、なんだこれは……)

今の状況を一言で表すなら『混沌』、そんな言葉が相応しいとバクラは一人で思いを巡らせていた。
デスゲームの会場の北東部、鬱蒼と木々が茂った森の中に隠れるように建設されたスカリエッティのアジト。
その入り口付近に集った参加者は延べ9名+精霊みたいなやつ2名+バクラ。
総勢60人もいたデスゲームの参加者も24時間の間に全体の8割にも及ぶ48人が脱落して、残りは僅かに12人。
つまり実に生き残った参加者の4分の3がアジト前に集結している事になる。
しかも9名とも一応全員今のところは積極的に殺し合いをして優勝を目指すつもりではないらしい。
だが優勝するつもりがないからと言って、皆で一致団結してプレシアを打倒しようという流れにならないのは、悲しいかな人の性か。
人が集まれば集まるほど力は結束して強まる場合もあるが、その反面僅かな諍いからせっかく結集した力が崩壊する場合もある。
それが集団というものの宿命であり、どうやら今は後者の場合になりかけているらしい。

最大の焦点はバクラの元宿主でもある柊かがみへの処分についてだ。

だが実のところ大半の参加者はそれぞれ程度の差はあれど改心したかがみを信じて許す方向に傾いている。
それに対してはやてだけが強硬に禍根を断つべき、つまりここで始末するべきだと主張していた。
一応リインフォースⅡもはやての意見に同調する様子を見せているが、それでも一見すると大勢は明らかに思える。
しかしはやての主張にも納得できる部分があるために、誰もがはやての意見を頭から抑える事が出来ないでいた。
さらに危険人物のキングやアンジール、不審な行動が目に付く金居といった参加者が今もどこかで暗躍しているのかもしれない。
このままでは早々に事態の解決を図らないと最悪全滅の可能性も出てくる。
一方ではやてはここでかがみを始末しないと後々必ずや災いとなると確信しているので、何がなんでもかがみを殺そうと必死だった。
それゆえに誰も彼もが不安と焦りを知らず知らずのうちに胸の内に抱えていた。

だがそれこそバクラの望むところだ。

(ヒャハハハハハァ、元宿主様は良い仕事してくれるねぇ。なるほど、この状況なら……)

ヴァッシュの首にかけられた千年リングの中で盗賊王の魂は盗賊らしく盗みの準備に取り掛かろうとしていた。

509Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:26:26 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


(どちらも強情だな。しかしここで上手く収まったところで前途多難だな)

天道はこの状況が収集した後に待ち受ける事態に危惧を抱いていた。
未だにこの会場を闊歩している危険人物キングとアンジール、そして裏で何を考えているか分からない金居。
そのうちアンジールはまだ説得の余地がありそうだが、ここで大きな問題がある。
アンジールがいた世界ではナンバーズはアンジールにとって妹のような存在であったらしい。
そのナンバーズ達が殺された事でアンジールが修羅に落ちた事は容易に想像がつく。
だがよりにもよってかがみはそのナンバーズの一人であるチンクを殺している。
もしアンジールに仲間になるよう説得するとなると、この事実を隠し通すか打ち明けるか悩みどころだ。

(だが、まずはこの二人をどうにかする方が先決か)

510Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:27:51 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


(やっぱり、あの時はやてはかがみに……)

二人の間に割って入りつつヴァッシュは少し前の出来事を思い出していた。
それははやてがかがみと二人っきりで話したいと言って森の中に入っていった時。
今までの話からするとはやてがかがみを殺そうとしているのは疑う余地もない。
おそらくあの時も自分が見ていないところではやてはかがみを殺そうとして逃げられたのだろう。
つまり本当ならかがみはあの時はやてに殺されていたかもしれないのだ。

(俺は何をやっていたんだ……フェイトの時も、新庄君の時も、何度同じ過ちを繰り返すんだ……)

それは悔恨。
自分の知らないところで起きた凶行、だがもしかしたら止められたかもしれない惨劇。
それは確実にヴァッシュを苛む小さな要因になっていた。

511Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:30:08 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


(はのはとはやてのこんな光景を見るなんて……くそっ、デスゲームめ……)

ユーノもまたなのはとはやてを仲裁しようとしている一人だった。
実はその気になれば天道やヴァッシュと違ってユーノは得意のバインドを使って二人の動きを封じる事もできた。
だがユーノはある理由からその手段の行使を躊躇っていた。
その理由は数時間前に同じような場面でバインド使って失敗したからだ。
相手は元一般人で白夜天の主として覚醒した天上院明日香。
ユーノは明日香をいきなりバインドで捕獲してしまったせいで明日香を修羅に落とした経緯があった。
もちろんバインドを使ったのは止むを得ない事情があったからだが、明日香にその意図は伝わらないまま別れてしまった。
そしてユーノの知らないところで明日香は死んでいった。
だから同じような過ちを繰り返さないためにも強硬手段に打って出るのは極力避けたかった。

だがユーノは知らなかった。
その明日香を殺した張本人が目の前にいるはやてである事に。

512Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:32:13 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


(なんでこんな事に……)

スバルは今の状況を見ているしかできなかった。
初めて見る隊長同士が本気でいがみ合う場面に気圧されたのかもしれない。
だが理由はそれだけではない。
なのはとはやての諍いの他にも、背中で回復中のヴィヴィオ、かがみを責めるような発言をしたリイン。
複数の問題が同時に発生してスバルは正直軽くパニックだった。
本来なら頼りになるはずの上官であるリインは自分で自分の身体を強く抱きしめてガクガク震えている。
先程のかがみへの非難に対して激しく自己嫌悪に陥っているのは目に見えて明らかだ。

(それにこなたも……)

ふと横目で見たこなたの表情は相変わらず暗いままだった。
それも当然だ。
待ちに待った親友との再会がこのような形になったのだ。
その心中に渦巻く感情の複雑さは容易には計り知れない。

(ルルーシュ、あたしどうしたらいいんだろう)

なんとなく先程デイパックから出して左手の薬指に嵌めたお守り代わりのエメラルドの指輪に視線を向けてみた。
そうする事で少し不安が和らぐような気がしたから。
スバルの切なる願いに答えたのか一瞬指輪が光ったように見えた。

513Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:34:36 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


(そ、そんな、そんなつもりじゃなかったのに……)

祝福の風を運ぶはずの融合騎リインフォースⅡは先程の自らの発言に激しく後悔していた。
いくらシグナムやエリオを殺した張本人だからとはいえ、かがみを悪しざまに非難するような言葉を言うなんて最低だ。
しかもこなたやスバルの目の前で何の配慮もなしに吐露するなど、普段のリインからは想像しがたい行動だった。
だが殺し合いという環境は本来無邪気であったリインの精神を蝕むのに十分すぎるものだった。
次々と死んでいく仲間、何もできない自分の無力さ、そして突然対面した仲間殺しの犯人。
まだ幼いリインが冷静に対処するには酷な状況というものだ。

だがリインとて管理局に身を投じる一員だ。
自らの発言をなかった事にするなど出来ない事ぐらい分かっている。
だからこそ自らの非を認めて、その上で相手に誠意を込めて謝る事を優先しなければいけない。

そのはずなのだが。

(でも、本当にかがみは許してもいいんでしょうか?)

まだ幼いリインにとって理性よりも感情が行動に与える影響は大きい。
だからこそ思い悩むのだ。
本当にかがみは許されるべき存在なのか。
確かにはやてや守護騎士のみんなは闇の書事件の罪を償った。
だがあの時は守護騎士たちが誰も殺す気はなかった事もあって、誰一人として死者は出なかった。
しかし今回は明確な殺意を持って殺人を繰り返した上での改心だ。
果たしてそのような人物でも罪を償えるものなのか。
まだ人生経験の浅いリインには俄かには判断が付かない難問だった。

(はやてちゃん……はやてちゃん……! リインは、リインはどうしたいいんですか……!)

ふと項垂れていた頭を上げて激しく主張を繰り返す主の方に顔を向けた。
何か少しでも不安を取り除きたかったから。


そして光が見えた。


その光は次の瞬間にはリインの目の前まで迫っていて――。

(え、なん、で……す…………か――)

――気付いた時にはもうリインの胴体は光に喰われていた。

何も分からなかった。
何も理解できなかった。

そしてリインは驚愕と苦悶に満ちた表情と共に消えていった。

514Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:36:57 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


それはあまりに唐突な出来事だった。
それは誰も気づかないうちに終わっていた。
それは静かに一瞬で奪っていった。
それは光、誰にも阻まれる事なく全てを持っていく光。

その光が皆の前から奪っていったもの――それは幼き祝福の風、リインフォースⅡの命だった。

蒼天の融合騎は最期まで自身の身に降りかかった悲劇を理解できないまま死んでいった。

そしてこの場に残された者達も皆一様に突然の凶事に理解が追い付いていなかった。

驚愕と苦悶に満ちたリインの生首が地面に落下して光の粒子となって消えた時と同時に、皆ようやく何が起こったのか理解できた。

「い、いやああああああああああ!!!!!!!!!!」

最初に反応したのはリインのマイスターであるはやてだった。
もちろん慟哭という形で。
数秒前まで言い争っていたなのはも、あれほど殺そうと躍起になっていたかがみも放り出して、リインが消えたであろう場所にしゃがみ込んで泣き叫ぶ姿はさっきまでの姿とは打って変わって痛々しかった。
そのあまりに鬼気迫る様子にリインの傍にいたスバルやこなたは自然とその場から離れていた。

そして、残りの全員も事態を把握すると当然の疑問が湧き上がった――つまり誰がリインを殺したのか。
しかしこれはすぐに分かった。
なぜなら下手人は右手の凶器を構えたまま棒立ちになっていたからだ。


真紅のコートに身を包んだヴァッシュ・ザ・スタンピードは右腕を水平に構えたまま呆然とした表情を浮かべていた。


だがすぐに我に帰ると、すぐさまはやての元に駆け寄ろうとした。

「はやて――」

そこで皆の耳に静かにある単語が飛び込んできた。

「……憑神刀(マハ)」

その単語の意味を悟った時には、もうすでに真紅の旋風が迫っていた。

515Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:39:31 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


“憑神刀(マハ)”。

異世界よりも持ち込まれた巫器(アバター)はこれまでも幾度となく参加者に大いなる被害をもたらしてきた。
その性質上その時の所有者の心の喪失に対する強靭な意志を糧に。
一度目はシグナムを失ったはやて(小)によって。
二度目ははやて(小)を失ったセフィロスによって。
三度目は家族を失ったはやて(大)によって。

だがこの3人の中ではやて(大)だけは少々事情が違った。

それは他の二人とは違って失ったものが戻ってくる可能性がある点だ。
一度目と二度目の場合、シグナムははやて(小)の目の前で、はやて(小)はセフィロスの目の前で死んでいった。
それに対して三度目の場合、はやて(大)の家族は元の世界で存命中だ。
ただしゴジラを封印するために再会が限りなく困難という意味で失った事に変わりはない。

だからはやては当初からこの会場にいる家族は全て偽者であると断じて、時として非情な対応もしてきた。
だがリインフォースⅡだけは別だ。
リインだけは唯一はやての下に残された家族であり、リインだけがこの会場内で正真正銘の家族であった。
その家族が殺された。
これは憑神刀(マハ)を手にした時の喪失を遥かに上回るものだった。
さらに人が身体を保護するために無意識にかけているリミッターを半ば外してまで魔力を注ぎ込んだ一撃だ。
それゆえにはやての今回の『妖艶なる紅旋風』の威力は半端なものではなかった。

案の定周囲にいた参加者は全員方々に吹き飛ばされてしまった。

まずなのは・ユーノ・スバルといった魔導師達はさすがと言うべきか反射的に防御魔法を展開できていた。
だがその直前ヴァッシュの凶行に気を取られていた3人の対応には一瞬の遅れが生じざるをえなかった。
しかも背後にいたこなた達のような力のない参加者を守ろうと効果範囲を広げた事で逆に耐久力が落ちた事も一因だった。
それゆえに不十分な状態で展開されたなのは達3人のプロテクションは直撃こそ防いだが、威力を完全に相殺する事は出来なかった。
はやてなら自分の身を優先してこなた達を切り捨てる選択をしたが、なのは達がその選択肢を取るはずがなかった。

次にこなたとかがみは後ろの方にいたおかげでなのは達の思惑通りプロテクションの効果範囲に入っていた。
スバルに背負われていたヴィヴィオは言わずもがなだ。
しかもここでこなたは密かにバスターブレイダーを召喚していた。
だが単純な強さならもう一枚のカード、レッド・デーモンズ・ドラゴンの方を選ぶべきだ。
なぜわざわざ弱い方のカードを選んだのか。
それはレッド・デーモンズ・ドラゴンの召喚に必要なチューナーをどうすればいいか分からなかったからだ。
しかも今回は攻撃ではなく防御なので守備力2000のレッド・デーモンズ・ドラゴンよりも守備力2300のバスターブレイダーの方が適していると判断した。

だが天道は効果範囲から少し外れたために防ぎきれず、ヴァッシュに至ってははやてに近づいていたがために直撃を食らっていた。

そしてが『妖艶なる紅旋風』が収まると、その被害の様子が月光の下に晒されていた。
あれほど鬱蒼としていた森の木々は大部分が根こそぎ倒されて、アジト前の一帯は完全に荒れ地と化していた。
しかもあちこちに多種多様な道具やその残骸が散らばっている。
ここまでの激戦で痛んでいたデイパックのいくつかが限界に達して、とうとう破れて中身が散乱しているのだ。
もちろん元が大量生産品の基本支給品一式を皮切りに、耐久力が低い道具はことごとく破損しているようだ。
しかもアジトの入り口への被害は岩盤の崩落という甚大なもので、ほぼ出入りは不可能な状態となっていた。

そして『妖艶なる紅旋風』を発動させた張本人であるはやてはしばらく蹲ったままだった。
だがその胸にはかつてないほどの激情が渦巻いていた。

516Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:42:24 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


『ヒャハハハハハァ! 計 画 通 り !』

一連の惨劇の発端を作ったバクラは現状に大いに満足していた。
先程バクラがした事は簡単に言うと“乗っ取り”だ。
万丈目やかがみにしたようにヴァッシュの身体を一時的に乗っ取ったのだ。
だが今回は今までとは違った。
まず乗っ取った時間は僅かに数秒が限界で、しかも完全に身体を乗っ取る事は不可能だった。
それはひとえにヴァッシュの強固な精神の賜物。
最初の見立て通り今のバクラではヴァッシュの身体を乗っ取って自由に行動する事は不可能であった。

だが完全ではなくとも、片手を上げさせて、その精神をコンマ数秒ほど揺るがす事は可能だ。

例えるなら今のヴァッシュは水が入った器。
バクラの狙いはその器を少しでも傾けて中の水を外に零す事。

つまり精神の安定を崩してエンジェルアームを暴発させる事こそバクラの狙いだった。

だがそのような僅かな時間で暴発させたところで出来る事は限られている。
それにヴァッシュが身体の自由を奪い返したら、有無を言わさずリングが破壊されるのは必然。
でもバクラにとってはその一瞬だけで十分だった。

八神はやての家族であるリインフォースⅡを殺すのにはそれで十分だった。

そもそもこのまま現状維持だとバクラは遠からず破壊される事は目に見えていた。
今までの所業から見て参加者がバクラを生かしておく理由は皆無。
まさにかがみ以上に百害あって一利なしの存在。
特にスバルとヴァッシュは実際にバクラが唆したかがみと戦っているだけあって、その事実を痛感しているはずだ。
先程は相次ぐ戦闘で後回しにされたが、いつ千年リングの破壊を進言するか時間の問題だった。
それはバクラ自身が一番分かっていた。
だから早急に何か手を打たないとみすみす滅びの時を待つだけ。

そこで降って湧いたかのように勃発したのがかがみの処遇を巡る騒動。
これによって強硬に意見を主張するはやては若干孤立気味になっていて大分気が立っていた。
そこでヴァッシュが事故とはいえ大切な家族であるリインを殺せばどうなるか。
今以上の大混乱が起きるのは火を見るより明らか。
あとはその混乱に乗じてリングが別の人に拾われるのを待つだけ。

正直これはかなり危険な賭けだった。
だがこのまま何もしないでいるのは座して死を待つだけ。
それならば最期まで足掻いて活路を見出すしかない。

『さて、ここまでは順調だ。だが問題は誰が俺様を拾うかだ』

死んだリインを除いてあの場にいたのはアギトも含めて10人。
そのうちバクラの危険性を知っていて且つ即座に破壊しそうな奴以外ならこの混乱に乗じて上手く誘導すれば――。

「IS起動……」

だが最後の最後で天は盗賊王に微笑まなかった。
一番重要なところで引いてはいけないジョーカーを引いてしまったようだ。

『はぁ、また俺様の負けか』
「……振動破砕!!」

こうして千年リングに宿った盗賊王バクラの魂による最後の盗みは一応成功に終わった。
自らの存在という大きすぎる代償を払った上で。

517Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:44:49 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


「鋼の軛」

その言葉と共に一つの魔法が発動した。
守護騎士が一人“蒼き狼”の二つ名を持つ盾の守護獣ザフィーラが得意とした拘束魔法。
本来なら対象を突き刺して動きを止める・室内の通路を塞ぐという形で使われる捕獲系の魔法だ。
だが今回は違った。
明確な殺意を以て地面より伸びた1本の条は地面に横たわる青年の首と胴体を容赦なく切り離していた。

もうそこにあるのはヴァッシュ・ザ・スタンピードという参加者のなれの果てだ。

「…………ッ、仇は取らせてもらったで」

物言わぬ骸に向けて八神はやては冷たい目線を浴びせていた。
今のはやてにとってヴァッシュはもう協力者でも何でもなかった。
「仮に100歩譲ってあの阿保餓鬼のシグナム殺しを許したとしても、あんたが仕出かしたリイン殺しは天地が引っくり返っても許されへん!
 あの子はなあ、シグナム達みたいな偽者やのうて本物の家族や、私のとってはたった一人残された家族や!!
 だから、それを奪ったあんたは、あの阿保餓鬼以上に許されへん!!!」

たった一人残された家族であるリインフォースⅡを殺した極悪人。
どんな事情にせよエンジェルアームを暴発させてしまった危険人物。
この時点ではやてにとってヴァッシュはかがみ以上に生かしておくべきでない人物になったのだ。
だからこそ先程のように邪魔が入る前に禍根を断った。
幸いにもヴァッシュは近くで気絶した状態で転がっているところをすぐに発見できた。
先程無理して『妖艶なる紅旋風』を放った反動で身体を動かすのも辛い状況だったので、その場から動かずに始末できたのは助かった。
だが逆に『妖艶なる紅旋風』の影響で周囲には土煙が舞い上がっているのは好都合だった。
そのおかげで月光だけが頼りの闇夜との相乗効果で視界の確保は困難だ。
つまり誰が何をしようと他の人に気付かれる可能性が大幅に低くなっている。

「で、これがボーナスか。ちっ、リボルバーナックルとか重たくて使えないちゅうねん」

ヴァッシュ殺害に際して送られてきたボーナス支給品は右手用のリボルバーナックル。
だが近接戦闘を得手としないはやてにとってそれは外れの部類だった。
初期支給品の組み合わせといい今回のボーナスといい、どうも運に恵まれていない感がある。
しかも『妖艶なる紅旋風』でデイパックがどこかへ飛んでいってしまったせいで、せっかく手に入れたボーナス支給品も容易に持ち運びできない。

518Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:46:40 ID:VDYaY.Gc0

「まあいいわ。全く外れというわけでもないからな。それよりも今のうちにあの阿保餓鬼を殺さな……そうや、今が絶好の好機や……」
「おい、ちょっと待てよ」

ヴァッシュの生首に一蹴り入れて本命の柊かがみを探そうと悲鳴を上げる身体に鞭打って移動しようとしたその時。
後ろから自分を呼びとめる声が掛かった。
それはこの場に残されたもう一人の融合騎のものだった。

「なんやアギトか。無事でなによりやわ」

烈火の剣精アギト。
その二つ名に相応しく両手には燃え盛る炎を灯していた。
はやてはそれを冷静に見ていた。
既にこの時点でアギトが何を見ていたのか予想は付いていた。

「お前、今自分が何をしたのか分かっているのか」
「ああ、見ていたんか。はぁ、仕方ないやろ。あんなまたいつ暴発するかも分からへん危険人物を生かしておく気が知れへん」
「だから殺したのか?」

アギトの詰問に対してはやてはしばらく黙ってから、少し間を置いて答えを返した。
自分でも驚くほど思考が冷めているのが分かった。

「そうや、みんなは優しすぎるからなあ。私が汚れ役は引き受けたるしかないやん」
「じゃあ、シャマルはどうなんだよ」
「…………」

守護騎士が一人“風の癒し手”の二つ名を持つ湖の騎士シャマルの名を聞いた瞬間、はやての表情は凍り付いた。
それを知ってか知らずかアギトは胸の内に抱えていた心境を吐露していた。

「あたしはこの耳で聞いたんだぞ、お前がシャマルを見殺しにしたって!
 それにさっきシグナム達は偽者って、それじゃあヴィータもお前にとっては偽者で、あれは捨て駒だったのか!!
 それってつまりあのバッテンチビ以外はお前にとって家族でもなんで――」
「蒐集」
『Sammlung.』
「な――お、お前、そこま――」

最後まで言葉を言う暇もなくアギトは光の粒子となって消えていった。
そしてその粒子は夜天の書に余さず吸収される様子をはやては冷静に見つめていた。

「……ベラベラと要らんこと喋って五月蝿いわ」

はやてがアギトを蒐集した理由はいくつかある。
まずは口封じ。
先程のヴァッシュ殺しもそうだが、アギトにはシャマルを見殺しにした話も聞かれていた。
今でさえ立場が微妙なのにこれ以上悪くされたら取り返しのつかない事態になってしまう。
それにアギトは融合騎だから蒐集すればそれなりの魔力を蓄える事ができる。
闇の書時代に所有者達が最後のページを埋めるためによく守護騎士で行っていた方法だ。

だがそれ以上に――。

(シグナム達の事をどう思おうが私の勝手やろ、ホンマ胸糞悪いわ……)

――アギトの言葉がはやてをどうしようもなく苛立たせていた。

519Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:48:36 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


「ありがとう、バスターブレイダー」

水色と白の制服に付いた土埃を払いながら今は亡き竜騎士に対してこなたは感謝の言葉を送っていた。
リインがヴァッシュに射殺されて、はやてが紅い旋風を放った瞬間。
こなたはとっさにデイパックからバスターブレイダーのカードを取り出してモンスターを召喚していた。
最初の直撃を防いだ時点でバスターブレイダーは破壊されたが、そのおかげでこなた達へのダメージはいくらか軽減されたはず。
だからこそ今こうして生き延びられているのだ。
もしも召喚が間に合わなければあの紅い旋風のダメージで死んでいたかもしれない。

(でも、タイミング悪すぎるよ……リイン、せっかくはやてと再会できたのに……)

はやての事を誰よりも案じていたのはリインだった。
こなたもかがみと再会したいとずっと願っていたから、はやてとリインが再会した時は自分の事のように嬉しかった。
それが再会できた直後、しかもあんなギスギスな状況の中で死んでいくなんてあんまりだ。

(そうだ、みんなは、かがみは!?)

真っ先に思い至るのは仲間の安否、特に親友であるかがみの安否。
先程再会したかがみの姿は想像していた以上に実に痛々しかった。
こなたが知っているかがみは、紫のツインテールを揺らして、陵桜学園の制服を着て、ツッコミを入れてくれる元気な女子高生だ。
だが再会したかがみは、ツインテールの片方はなくなってサイドポニーが寂しく揺れて、下着に着物の上着だけというみすぼらしい格好で、どこか怯えている少女だった。
同じ24時間を過ごしていてもあそこまで変わるのかと驚いたが、あの言い合いを聞く限りそれも無理もない。
今までの話を総合すると、かがみはこのデスゲームで3人もの参加者の命を奪ったのだ。
しかもそれ以上の数の参加者に襲いかかった事もあるらしい。
つまりこのデスゲームの趣旨通りずっと殺し合いの中に身を投じていたのだ。
今は悔い改めて罪を償うと言っているのが、せめてもの救いだ。
だがせっかく再会できたかがみも先程の紅い旋風のせいでまた離ればなれだ。

(かがみん、どこにいるの? 私もっとかがみんと話したいよ。そして、かがみんの口からどんな事があったのか聞きたい)

それが親友としての務めであり、それこそ泉こなたができる事だ。
今までみんな自分にできる事を精一杯やっている中で自分だけが何もできなかった。
でもこれは自分にしかできない事だ。
それに自分はこうして運良く大した怪我もなく生きているが、かがみもそうだとは言い切れない。
もしかしたらさっき吹き飛ばされた時に打ち所が悪くて一人寂しく――。

「……痛っ! ん、ここは……え、こなた……」

だがそんな最悪な想像は背後からの呼び声でかき消された。
それは間違いなくかがみの声。
柊かがみが生きている証だ。

「か、かがみん!!」
「……こなた」

ほのかな月明かりの下、急いで後ろを振り返ると、そこには少し離れた場所でこちらを見ているかがみの姿があった。
どうやらあちらも大きな怪我はしていないようだ。
その姿を見たらもう何も考えられなかった。
だから必死に足を動かして、走って、走って、走って――。

「かがみん!」

――思いっきり突き飛ばした。

そしてこなたは目にした――自分目がけて伸びてくる紅い光を。

520Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:51:22 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


「きゃっ!?」

ようやく再会できた親友に突き飛ばされた。
少し前までのかがみなら別人だとか思いこんだ挙句に疑心暗鬼に陥って、敵意を剥き出しにしていただろう。
だが今は違う。
数々の苦難を経験して、時に人の浅ましさに、時に人の優しさに触れてきた。
だからこれもきっと何か理由があるのだとかがみはまずは気持ちを落ち着ける事ができた。
そして、その理由を教えてもらおうと振り向いた先にあったのは――。

「こなた、いった……い、え、こ、こなた……」

――かがみを庇った結果、頭から血を流して倒れていく親友の最期の瞬間だった。

「いやああああああああああああ!!!!!!!!!!」

悲鳴と共に出した両手でなんとかこなたの身体を支えようとしたが、それは無駄な事だった。
頭を貫通した穴から赤い血が噴き出して止まる気配はなく、瞳は虚ろな状態。
すでに事切れているのは明白だった。

「嘘でしょ! ねえ目を開けてよ、こなた! 私、私、あんたに謝らないといけないのに! ねえ、こなた! こなた! こなた!」

かがみが何度呼びかけてもこなたが目を開ける事はなかった。
それでもかがみはこなたの死を受け入れられなかった。
そんなかがみの背後に影が一つ忍び寄っていたが、目の前で親友を殺されたかがみが迫り来る危険に気づくはずなかった。

521Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:54:30 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


「すいません、あたしがあの時リングを破壊しておけば……」
「いまさら悔やんでも仕方ないよ。それにもうリングはスバルが破壊してくれたんでしょ。それならもうバクラの件はおしまい」
「うん、リインが死んで責任を感じるのは分かるけど……でも、とりあえずなのはもスバルも無事で良かったよ」

はやてによって吹き飛ばされたなのは、ユーノ、スバルら魔導師3名は運良く合流する事に成功していた。
もちろんスバルに背負われていたヴィヴィオも。

「いえ、実はあたしとヴィヴィオが無事なのはこの子のおかげなんです」

そう言ってスバルが懐から取り出したのはひび割れた一枚のカード。
白地に赤の意匠が施されたそれはスバルのパートナーであるティアナのデバイス、クロスミラージュだった。
あの『妖艶なる紅旋風』の発動の瞬間、直撃を回避するためにスバルがとっさにデイパックに手を入れてつかんだ物がそれだった。
結果的にスバルのプロテクション+クロスミラージュの補助+リアクティブパージの三段構えのおかげでヴィヴィオへのダメージが極力軽減された。
しかしその代償として手持ち以外の道具はデイパックごと吹き飛ばされて、何よりほぼ破損状態での使用でクロスミラージュは完全にその機能を破壊してしまった。
つまりもうクロスミラージュが起動する事はない。
教え子のデバイスの最期の活躍を聞いて、なのははティアナの事も思い出しつつ少し目頭が熱くなるのを感じていた。

「それにすいません。せっかく貰った回復アイテムが……」

スバルが指し示したのはヴィヴィオの腕に装着されているデュエルディスク――の壊れた姿だった。
先程の騒動からヴィヴィオを守った衝撃は極力軽減されていたが、着地の際の地面との接触でディスクは壊れてしまった。
今までも幾度も乱暴な扱いを受けた事で蓄積していたガタがここ来て限界に来たのだ。

「それなら僕がヴィヴィオの回復は引き継ぐよ。それに他の皆を早く探した方がいい。特に――」
「――かがみだね」

こうしてなのは達3人は合流できたが、未だに他の仲間の行方は杳として不明だ。
だがそのうち天道とヴァッシュは自分達と同等以上の力を持っているのであまり心配要らない。
ただヴァッシュはエンジェルアーム暴発の件が気掛かりではあるが。
そしてはやてとこなた、そしてかがみ。
はやては直前までかがみへの仇討ちに強い執念を見せたので、この混乱に乗じて目的を遂行しないか心配だ。
こなたは特別な力を持たない一般人ゆえに3人の防御の背後にいたとしても、どこまで効果があったのか確認は出来なかった。
かがみはその両方の意味で心配であり、今最も気掛かりな存在であった。
とりあえずヴィヴィオの治療はユーノに一任して、カードは回復の手段を持たないスバルが持つ事になった。

522Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:55:10 ID:VDYaY.Gc0

「レイジングハート、エリアサーチお願い」

まだ手放してから1日しか経っていないのにもう随分と久しぶりな気がすると、長年の相棒を構えながらなのはは周囲一帯の探索に取り掛かった。
デスゲームの制限下でどこまで探れるか不安だったが、意外とすぐに反応があった。
ここからすぐ近くの地点に特別な力を持たない者が二人。
その条件に該当する参加者は泉こなたと柊かがみの二人だ。
幸先良い結果に頬を緩ます3人は急いで合流しようと二人がいる方向へ移動を開始した。

「嘘でしょ! ねえ目を開けてよ、こなた! 私、私、あんたに謝らないといけないのに! ねえ、こなた! こなた! こなた!」

だがそこで待ち受けていたのは、なのは達の努力を無下に嘲笑うかのような光景。
頭部を紅い光線で貫かれて糸が切れたかのように倒れる泉こなたと、それを支えようとする柊かがみ。
あまりの光景に思わず3人ともその場で足を止めざるを得なかった。
そして時間が止まったかのように静寂な空間で沈黙を破ったのは愛機の名を叫ぶ白き衣を纏った魔導師。

「レイジングハート!!!」
――Flash Move――

ガンッ

間一髪だった。
こなたの死にショックを受けて無防備だった背中に振り下ろされようとしていたレイピア。
その斬撃はレイジングハートの障壁に阻まれていた。
そしてかがみの無事を確認すると、なのははレイピアの持ち主に問いかけた。

「なんでこんな事するの、はやてちゃん!」

なのはの視線の先にいる人物。
それは間違いなく親友の八神はやてに相違なかった。
先程あれほどかがみを許すように訴えていたにもかかわらず、はやてには少しの共感も得られなかったようだ。
だが同時にやはりという妙な納得感もあった。

「そんなの分かってるやろ。じゃあ、逆に聞くで。なんでこんな奴助けたりするんや!?」
「約束したんだ、例えはやてちゃんがかがみを殺そうとしても私はかがみの味方、絶対に守ってみせるからって!!」

それはたった一つの約束。
だがそれゆえに何にも代えがたい尊い誓いだった。

「そうか、どうしてもその阿保餓鬼を守るって言うんやな」
「うん、かがみは絶対に殺させないよ」
「……ふっ、今のなのはちゃんの顔、かなり怖いな。まるで悪魔みたいや」
「悪魔で……いいよ。悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから!!!」

523Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/13(土) 23:57:28 ID:VDYaY.Gc0


     ▼     ▼     ▼


(はぁ、出来る事なら戦いたくなかったけど……もうこうなったら避けられへんな……)

はやての執念が天に通じたのか思ったよりも早くかがみは見つかった。
しかも何かに気を取られているようでこちらにはまるで気付いていない。
だから今が好機と思って『愛の紅雷』を発動したところ、御覧の有様だ。
確かに必殺の薔薇のニードルに貫かれた者は死んだ。
ただし目標だったかがみではなく、そのかがみを庇って躍り出た泉こなたが死んでしまった。
はやての位置からは死角になっていてこなたの姿は確認できなかったのだ。

まさしく完全な事故だったが、意外とはやては冷静だった。

(……まあこの際ええわ。それに良い気味や。これで私の気持ちも少しは分かったやろ)

するとすぐそばで見慣れた光が見えた。
こなたを殺した事によるボーナス支給品の転送だ。
先程外れだった事もあって期待はしていなかったが、今回は違った。
ファウードの回復液。
体力や傷の治癒、さらに魔力も回復できるという今までの外れが全て帳消しにできるかのような当たりだった。
あまりの出来過ぎ具合に驚きつつも、はやては迷わずそれを摂取した。
魔力はリボルバーナックルから抜いたカートリッジで補充したとはいえ、体力や負傷は半壊した核鉄では追い付かない。
先程怒りに任せて大規模な魔法を行使した事も少なからず身体への負担を大きくしていた。
だからこの支給品は当たり中の当たりだった。
そして一気に飲み干して空になった水筒を投げ捨てると同時に、はやては泣き叫ぶかがみの下へ走り始めた。

今後こそかがみの息の根を止めるために。

だが結果は失敗に終わり、こうして親友との対決に至っている。

(それにしてもここでもなのはちゃんと対立する羽目になるとは、なんや因縁めいているな)

思い出すのはここに連れてこられる直前の出来事。
オペレーションFINAL WARS実行のために怪獣を使い魔化させる事に不満を述べたなのはと自分は今のように激しく口論を交わしていた。
その時も今も口論に至った原因は自分が冷徹であるのに対して、なのはが優しすぎるのだ。
確かにその優しさには自分もずいぶん救われたものだ。
だがこのデスゲームでは優しいだけでは生き残れない。
最悪の場合、不用意に優しくすれば悪意ある者に付けこまれて破滅するだけだ。
はやてには成し遂げなければならない目標があった。
だからこそこんなところで躓く訳にはいかない。

(これで終わりや、阿保餓鬼。私にはやらなあかん事があるんや。
 なにがなんでもプレシアの技術を手に入れてみんなを、本当のみんなを取り返すんや!)

524Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:00:29 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


『ユーノ君、ヴィヴィオをお願いね』
『分かったよ、でもその代わり無茶はしないでほしい』
『……難しいなあ。善処してみる』
『うん、なのはならきっと上手くできるって信じているよ。それから僕たちは駅に避難しておく』
『……駅? うん、了解』

念話でのやり取りを終えた時を見計らってスバルはユーノに疑問を投げかけた。
この制限下での念話は少し距離が開くと無理になってしまうが、これくらい近くだとなんとかできるようだ。
もちろん先程の念話はスバルにも聞こえるように調節されていたので内容は把握していたが、どうしても腑に落ちない点があった。

「ユーノさん、なんで駅なんですか?」
「ああ、元々首輪はアジトで解析していたけど見ての通りアジトの出入り口はさっきの騒動で崩落して中も無事かどうか。
 それでもここから北に行けば工場があるけど、ほら見てごらんよ」
「北って……え、あっちの方の空が赤い……!?」
「おそらく誰かが先回りして工場を破壊したんだろう」

いったい誰がそんな事を?
決まっている、デスゲームの打倒を良しとしない者だ。
おそらくキング辺りが。

「それに駅には残り人数が15人になったら……」
「それなら知っています。確かにもう15人切っていますからね」
「……もしかして、あの立札壊したのって」
「え、はい、あたしですけど……すいません、もしかして不味かったですか?」
「いや、いいんだ。それよりも早く移動しよう」
「はい、まずはかがみさんを連れて……」

そこでスバルはかがみを見て居たたまれなくなった。
かがみはさっきからずっとこなたの遺体の前で蹲っていた。
スバルもこなたの死に大きな衝撃を受けている。
だが今はのんびりと感傷に浸っていられる状況ではない。
すぐ近くでSランク同士の激戦が始まろうとしているのだ。
いくら制限が掛かっていてもこの周辺が無事である可能性はほぼ皆無。
それにヴィヴィオの容体も心配だ。
だから心を鬼にしてかがみに早く移動を促そうと近づいて、そこで気付いた。
かがみの手に銀色のグリップのようなものが握られている事に。
そしていつのまにか腰には何かのベルトが巻かれていた。

「まさか、かがみさん、ダメ――」
「変身」

525Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:01:12 ID:Fz3yIYd20

――Standing By――

そしてスバルの見ている前でかがみはグリップをベルトの横に装着して。

――Complete――

紫白色のフォトンストリームがかがみの身体を包みこみ、光が晴れた時そこには仮面の戦士がいた。
かがみの狂気に走らせた元凶とも言うべき忌むべきデルタの姿だった。

「かがみさん、いったいどうして……まさか、こなたの――」
「ええ、その通りよ」

この状況でかがみが再び力を手にした理由。
思いつく理由は単純なものだった。
それが分かったからこそスバルはかがみの前に立ち塞がった。

「お願いスバル、そこを退いてちょうだい」
「ダメだよ、かがみさん! そんな事をしてもこなたは――」
「そんな事は分かっているわよ!!!!!」
「――ッ!?」
「でも、でも、無理なのよ。あのはやてと一緒で大切な親友を! 家族を! 目の前で殺されて、素直に許せるほど私は立派な人間じゃないのよ」
「かがみさん、お願い。あたしの話を――」
「ごめん、無理。だってこれは理屈じゃないのよ……たぶん呪いなのかな……」
「呪い?」
「例えばさあ、スバル。あんた今目の前で私がなのはを殺したら、どうする?」
「え、そ、そんな……」
「ほら、今一瞬私のこと許せないって思ったでしょ」
「そ、そんなこと……」

だがスバルは最後まで言葉を続けられずに、顔を下に向けてしまった。
確かに一瞬かがみがなのはを殺す場面を想像して、かがみが言うような感情を抱いていたのは事実だ。
それにスバルには似たような前科があった。
スカリエッティによる地上本部襲撃の時。
スバルは目の前でボロボロに傷つけられた姉のギンガを見て、我を忘れて暴走している。
目の前の敵を同じようにボロボロにしてギンガの仇を取ろうとした。
だからそんな自分が果たして今のかがみを止められるのか迷ってしまったのだ。

「それが普通なのよ。でも、たぶんなのはやあんたはそのうち呪いに打ち勝てる奴なのよ、でも私は違う」
「だから八神部隊長を殺すの?」
「今のはやてはつかさを殺した浅倉と一緒で、私にとってはどうしようもない悪人なのよ。だから私がこの手で――。
 ごめんなさい、本当は私だって皆に許されたい、皆と一緒にいたい。
 だけど、あいつだけは、こなたを殺したあいつだけは絶対許せない、あいつだけは私がこの手で……そうじゃないと私、私……。
 だからあと一度だけ罪を犯すわ、そうしたらもう本当に罪は全部償う、だからお願いスバルそこをどいてよ」

かがみの言い分は分かった。
だが、だからと言ってここを退く訳にはいかない。

「それでも、かがみさんにこれ以上罪を重ねさせるわけにはいかないよ」
「そう、それならあんたを倒してでも私は行くわ」
「それなら私も全力全開でかがみさんを止めてみせる」

そう言い切るスバルの手に握られているのは腕時計――いや起動したその姿は槍、エリオのデバイスであるストラーダだった。
それをレヴァンティンと左手の間に差し込んで新たな添え木とすると同時に、バリアジャケットを構築し終えた。
今の自分の力で仮面ライダーの力を手にしたかがみを止められるか分からない。

(だから、シグナム隊長、そしてエリオ、力を貸して!)

526Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:02:35 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


(こなた、やっぱりあんたも怒るわよね)

こなたが仇討ちを望まない事は百も承知だ。
こんなに手を血で汚した自分でさえ受け入れてくれた親友がさらに罪を重ねる事を望むはずない。
それは痛いほど分かっていた。

だが理解できていても、どうしても譲れないものはある。

(八神はやて、あんただけは絶対に許さない)

527Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:04:45 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


『そういうわけでユーノさん、あたしはかがみを止めてから行きます。あとヴァッシュさんと天道さんも探しておきます』
『うん、分かった。じゃあ駅で待っているよ』

こういうところは本当になのはと似ているなと、先生と教え子の関係を垣間見たユーノ。
実のところユーノもこの場に残って後方支援をした方がいいのかもしれない。
だがなのはとスバルの両方に託されたヴィヴィオの回復がこの状況では優先されるだろう。
それにあの二人の戦いに手を加えるのは無粋だとなんとなく感じていた。

(二人とも信じているよ)

528Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:06:44 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


「あっちでいいんだな、ハイパーゼクター」

新たな騒動の中心から少し離れた場所。
そこに天道はいた。
あの旋風に巻き込まれてデイパックを失って気絶していた天道を呼び覚ましたのは他でもなく現在先導役を務めているハイパーゼクター。
近くに資格者がいると察知したハイパーゼクターはスバルのデイパックから抜け出して、天道の元に馳せ参じていたのだ。
しかしハイパーゼクターはそれ単体だけではただの空飛ぶ銀色のカブトムシに過ぎない。
その真価が発揮されるのは仮面ライダーカブトが使ってこそ。
ハイパーゼクターの力で変身するカブトの第3形態、ハイパーフォーム。
そのポテンシャルはマスクドライダーの中で最強を誇り、時間移動さえ可能なその性能は並みの相手では太刀打ちできない。

だが天は微笑まなかった。

「また会ったな、天道総司」

不意に横から聞こえる呼び声に思わず足を止める。
その声には聞き覚えがあった。
数時間前死力を尽くして戦い合った修羅に落ちた戦士、アンジール・ヒューレー。
キングと潰し合わせるように仕向けて以来の再会だった。
そして放送でどちらの名前も呼ばれず、アンジールにも目立った新しい傷がないという事はキングと手を組んだ可能性が高い。

「残念だったな、カブト。そうそうお前の思い通りにはいかなかったようだ」
「そうか、最初からそれが狙いだったのか」

相も変わらず黒尽くめのゼロの格好に身を包むキングも当然のようにこの場に現れた。
その足元には先程まで先導役を務めていたハイパーゼクターの残骸が月の光を反射しながら転がっていた。
最初から二人の狙いはハイパーゼクターだったのだ。
おそらく何らかの方法でハイパーゼクターの脅威を知った二人が力を発揮される前に破壊しに来たというところだろう。
そうでなければわざわざ不意打ちの機会を捨ててまで天道の注意を引きつける理由がない。

「キング、いつまでその格好で茶番をしているつもりだ」
「なんのことかな」
「元々その仮面はC.C.が持っていた物だ。その仮面もマントも、C.C.とペンウッドを殺して手に入れたものだろ」

もう正体がばれていると当人も分かっているはずなのに未だにゼロを演じるキング。
ここに来た当初シャーリーにゼロと誤解された天道にとっては複雑な心境だった。
しかもその衣装が一時でも行動を共にした仲間のものである事も天道の神経を少なからず逆撫でしていた。

「少々口煩いな。やはり君はここで――」
「待てゼロ、あいつの相手は俺がしよう。悪いがデイパックは預かっておいてくれ」
「……なるほど、いいだろう。見届けさせてもらうぞ、貴様の覚悟を」

正直なところここでアンジールと戦うのは得策ではないだろう。
もし勝ったとしても次に控えているのは最強クラスのキングだ。
アンジールと戦った後で勝てるほど楽な相手ではない。
だが避ける訳にはいかない。
おそらくアンジールを説得するなら早い方がいい。
時間が経てばキングにそれだけ毒される。
正直かなり厳しいが、それでも天道に諦める気は全くなかった。

「おばあちゃんが言っていた、俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する!」
――HENSIN――

529Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:08:48 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


カブトムシの仮面ライダーとカブトムシのアンデッド。
似て非なる者のやり取りを見ていたアンジールは密かにキングへの疑いを強めていた。

(どういうことだ、つまりこの格好は現地調達で揃えたのか? もしや中身は俺の知っている奴で正体を隠すために仮面とマントを……だが今は――)

時間と共に深まるキングへの疑念をひとまず頭の片隅に追いやってアンジールは目の前の敵に目を向ける。
天道総司。
同じデスゲームの参加者ではあるが、出会ったのはほんの数時間前。
あの時の決着はミライの横槍で結局有耶無耶に終わってしまった。
だからこれはその時の続き。
そして今度こそ決着がついた時こそ――。

「決着を付けようか、天道総司」

530Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:10:07 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


(さ〜て、どっちが勝つかなあ。んー、コンディションはカブトの方が良さそうだけど、もし変身が解ければアンジールの勝利は確定。
 五分五分かなあ、いやあハイパーゼクターあらかじめ壊しておいて正解だったね)

この会場で持ち主である天道総司を除いてハイパーゼクターの脅威を把握していたのがキングだ。
『CROSS-NANOHA』で特に天道について念入りに調べていたおかげで、天道を発見した時すぐにハイパーゼクターの存在にも気づけた。
正直なところ時間移動は自分同様制限されている可能性が高いが、自分と同じ事ができるのは気に食わなかった。
それにあれほどの強化アイテムを破壊されたと知った時の天道の顔も是非とも拝んでみたかった。
だからアンジールと打ち合わせて天道の注意が逸れた時を見計らって、ハイパーゼクターをつかまえて爆砕牙で滅多刺しにしてやった。
結果的に天道の反応は大して面白くなかったが、成り行き上始まったカブトVSアンジールは新たな楽しみとしては十分だった。

(そういえばさっきの紅い竜巻みたいなのはなんだったんだろう。あとで確認しておかなくちゃ)

531Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:12:13 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


(ほう、天道とアンジールが対決で、キングは高みの見物か……さてどうするかな……。
 あっちはあっちで、ヴァッシュと泉こなたが死亡、さらになのはとはやてが、スバルとかがみが激突。
 そしてユーノとヴィヴィオは南東へ避難か……)

これまでの一部始終を目にしていた冷徹なアンデッド、金居。
銃声を頼りに着いてみれば、そこはすでに混乱の坩堝。
金居が手を下すまでもなく、アジトに集った参加者たちは分裂していた。
それを隠れて観察していた金居はあまりの展開に笑いを堪えるので必死だった。

(やはりキングが高みの見物なのは後々の事を考えると厄介だな。どうにかして戦場に引きずり出して消耗してくれれば、こちらも楽なんだがな)

532Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:14:51 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


「はやてちゃん、絶対にかがみはやらせないよ!」
「ごめんな。私にだって譲れへんものあるんよ!」


【2日目 黎明】
【現在地 C-9 森の中】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、魔力消費(小)、はやてへの強い怒り、バリアジャケット展開中
【装備】とがめの着物(上着無し)@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、レイジングハート・エクセリオン(6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ケリュケイオン(待機モード)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、グラーフアイゼン(0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ホテル従業員の制服
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。
 1.かがみを守るために全力全開ではやてを止める。
 2.出来れば片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
 3.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
【備考】
※キングは最悪の相手だと判断しています。また金居に関しても危険人物である可能性を考えています。
※はやて(StS)に疑念を抱いています。きちんとお話して確認したいと考えています。
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。

【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(小)、魔力消費(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味、胸に裂傷痕、かがみへの強い怒り、騎士甲冑展開中
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジュエルシード(魔力残量0)@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、カートリッジ×3@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
 1.なのはを倒して、かがみに引導を渡す。
 3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 4.キングの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
 8.金居は警戒しておくものの、キング対策として利用したい。
【備考】
※この会場内の守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。

533Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:16:20 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


「かがみさん、絶対に止めてみせます」
「……ごめんね、スバル」


【2日目 黎明】
【現在地 C-9 森の中】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】バリアジャケット展開中、魔力消費(中)、全身ダメージ(中)、左腕骨折(処置済み)、悲しみとそれ以上の決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(添え木代わり、0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS)、ストラーダ(添え木代わり、3/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.これ以上かがみに罪を重ねさせないために、全力全開で止める。
 2.かがみと一緒に、罪を背負う。
 3.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
【備考】
※金居(共に名前は知らない)を警戒しています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】疲労(小)、両手首と両太腿に切断痕、腹部に刺傷痕、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、デルタに変身中
【装備】とがめの着物(上着のみ)@小話メドレー、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:出来るなら、生きて行きたい。
 1.スバルを倒して、はやてを殺す。
 2.1が叶えば、みんなに身を委ねる。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※第4回放送を聞き逃しました。その為、放送の異変に気付いていません。
※耐性ができたせいか今のところデルタによる精神汚染の影響はありません。

534Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:18:18 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


「なのは、スバル、信じているよ」
「…………ぅ………ぁ」


【2日目 黎明】
【現在地 D-8北東部 森の中】

【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】全身に擦り傷、魔力消費(中)、決意
【装備】バルディッシュ・アサルト(待機状態/4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車)、首輪について考えた書類
【思考】
 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。プレシアを止める。
 1.駅で待機しつつ、ヴィヴィオの治療を行う。
 2.ジュエルシード、夜天の書、レリックの探索。
 3.首輪の解除は状況が整うまで待つ。
 4.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。
【備考】

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】気絶中、リンカーコア消失、疲労(極大、回復中)、肉体内部にダメージ(極大、回復中)、血塗れ
【装備】フェルの衣装、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【道具】なし
【思考】
 基本:?????
 1.ママ……。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。

535Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:19:52 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


「」
「」


【2日目 黎明】
【現在地 D-9 森の中】

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】全身にダメージ(小)、カブトに変身中
【装備】ライダーベルト(カブト)&カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.アンジールとキングを倒す。
 2.なんとかして皆と合流して全員をまとめる。
【備考】
※放送の異変から主催側に何かが起こりプレシアが退場した可能性を考えています。

【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングと主催陣に対する怒り
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】なし
【思考】
 基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
 1.天道との決着を付ける。
 2.参加者の殲滅。
 3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
 4.キングが主催者側の人間で無かった事が断定出来た場合はキングを殺す。
 5.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。

536Pain to Pain ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:22:48 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


「さて、どっちが勝つかな〜どっちが勝つかな〜」
(さて、どうやって引きずり出すかな)


【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3〜10)、ボーナス支給品(未確認)、ギルモンとアグモンと天道とクロノとアンジールのデイパック(道具①②③④⑤)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【道具⑤】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
 1.カブトとアンジールの対決を高みの見物。
 2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
 3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
 4.『魔人ゼロ』を演じてみる(そろそろ飽きてきた)。
 5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。

【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、Lとザフィーラとエネルのデイパック(道具①②③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.キングをどうにかして戦場に引きずり出す。
 2.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
 3.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 4.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。

537リリカル名無しStrikerS:2010/11/14(日) 00:24:46 ID:Fz3yIYd20


     ▼     ▼     ▼


草木も眠る丑三つ刻、それぞれの戦いの幕が今切って落とされた


【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's  死亡確認】
【泉こなた@なの☆すた  死亡確認】
【リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS  消滅確認】
【バクラ@キャロが千年リングを手に入れたようです  消滅確認】
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS  消滅確認】

【全体備考】
※以下のものがC-9スカリエッティのアジト付近に放置されています。
・ヴァッシュの死体(ダンテの赤コートとアイボリー(5/10)を装備、首と胴体が分離)
・こなたの死体(涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)着用)
・コルト・ガバメント(4/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、首輪(セフィロス)、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード、リボルバーナックル(右手用、0/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、黒のナイフ@LYLICAL THAN BLACK、ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
※はやて、ヴィータ、天道、こなた、スバル、かがみ、始のデイパック及び上記以外の中身は「妖艶なる紅旋風」で破損しました。
※D-9森の中にハイパーゼクターの残骸が放置されています。

538 ◆HlLdWe.oBM:2010/11/14(日) 00:26:43 ID:Fz3yIYd20
投下終了です
誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい
タイトルの元ネタはリリカルなのはStrikerS第22話より

539リリカル名無しStrikerS:2010/11/14(日) 01:26:27 ID:zJULzm5.O
投下乙です
まさかこの土壇場でこれだけ混沌とした状況に陥るとは…全滅エンドフラグ?
スバルも天道も状況的には圧倒的に不利か。うん、対主催涙目だな。


質問ですが、プレシアは死に、スカ一味も逃げる準備をしているという現状でもボーナス支給品は支給されるのでしょうか?
ロワが放棄されたなら、ボーナス制度も停止していると思うのですが。

540リリカル名無しStrikerS:2010/11/14(日) 08:46:29 ID:p.ujl5OU0
投下乙です。
うわぁ、敵側3名何もしていないのに対主催ボロボロじゃねーの。バクラは最後にトンデモナイものを残していきました。つか意志持ち支給品一網打尽かよ……
対主催側で収拾つけたところで残り戦力でダブルカテゴリーKどうにかなるとは思えないんだが……

指摘点についてはどうだろう……まぁ、表向きにはまだ進行中を装っているから機能していそうな気もするが……ぶっちゃけ出てきたのがリボルバーナックルにしろファウードの回復液にしろ回復アイテムとしてしか使ってないから展開上必然ってわけでもないんですよね(というか回復液って小ネタにちょこっと出てきただけじゃねぇか……)。いっそ無しにしても問題なさそうな気も。
正直、キングと金居は戦力充実していますから今更必要性があるとも思いませんし(対主催側が倒した時のボーナスの必要も無いからなぁ)。


……というかコレ、千年リングをもっと早く粉砕しなかったスバルとヴァッシュの怠慢じゃね(ホテル戦の段階で砕く事が出来た筈)?

541 ◆Vj6e1anjAc:2010/11/14(日) 12:44:02 ID:R3BHTnLs0
>>539
それに関しては自分がお答えします。
ボーナス支給システムについては、放送SSで「オートになっている」と書いたので、
そのまま機能していると判断してもらって構いません

542リリカル名無しStrikerS:2010/11/14(日) 13:57:47 ID:9hNKdNOY0
投下乙です。
まさかあの状況から二人も死者を出すとは……
本物のマーダーはまだ手出ししてないっていうのにまさかの大混乱。
まぁはやてはやっぱりというか、ある意味で本物のマーダーより悪質か……。

そして現在の対戦カードは
はやてVSなのは、
かがみVSスバル、
アンジールVSカブト……。
でもスバルとなのはを除けばかがみVSはやての構図になる。
キングは高みの見物で、金居はキングを引きずりだそうと暗躍。
あとの対主催メンバーは離脱か……これは先が読めなくなってきたな……。

543リリカル名無しStrikerS:2010/11/15(月) 18:24:17 ID:5dEkgfIQ0
投下乙です
マーダーが誰も手を出してないのに二人死ぬって…対主催涙目すぎる…
これ、終わったとしてもカテゴリーK相手にできるんだろうか…?

それはそうと、>>535のセリフがカギ括弧だけになってます。

544リリカル名無しStrikerS:2010/11/15(月) 21:28:46 ID:Q.uXURfU0
投下乙です
ハイパーゼクターが破壊され、対主催も仲間割れと今のところ二大アンデッドの思惑通りにことがすすんでいるな・・・・
このまま悪が勝ってしまうのだろうか

545 ◆HlLdWe.oBM:2010/11/15(月) 21:31:53 ID:cH0hVcXA0
>>543
wiki収録の際に修正しておきます

>>539
すでに>>541でも返答あるように機能していると判断します

546 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:50:29 ID:MZGXMrQQ0
天道総司、キング、金居、アンジール・ヒューレー、ジェイル・スカリエッティ、ウーノ、ドゥーエ、セッテ、オットー、ディード、リインフォース、アルフ
これより投下します

547地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:51:29 ID:MZGXMrQQ0

アルハザードを舞台とした狂気の演劇、バトル・ロワイヤル。
その主催者たるプレシア・テスタロッサは死んだ。
協力者たる科学者、ジェイル・スカリエッティの一味によって。
これより、時の庭園の主導権は彼らの手に渡った。
そして、戦いの終了条件も、変わる。
スカリエッティ達の、脱出を阻止すること。



だが、プレシアの罠はまだ生きていた。
それは怨念が乗り移ったかのように、瞳を煌めかせている。
罠が蠢いていることに気づいている者は、誰一人としていない。
プレシアはもしもの時に備えて、戦力を整えていた。
ルーテシア・アルビーノが使役する召喚虫。
究極召喚によって呼ばれる王、白天王。
巨大甲虫、地雷王。
ルーテシアの守護兵、ガリュー。
古代より目覚めた屍兵器、マリアージュ。
そして――――――



これらの主導権を握っていたのは、他でもない只一人。
プレシア・テスタロッサのみ。
地上壊滅の序曲は、もうすぐ始まる。







現在時刻、黎明。
暗闇に覆われた森の中を、二つの影が駆け抜けていた。
互いを敵と認識し、睨み合っている。
そして、銀色の輝きを放つ刃を、彼らは振るった。
瞬き一つの時間が経過した後、激突する。
接触面から火花が飛び散り、周囲を照らした。
それと同時に、甲高い音が彼らの鼓膜を刺激する。
木々の間に光が灯ったことで、姿が浮かび上がった。
一人は、重厚感溢れる銀色の鎧に身を包んだ、天道総司のもう一つの姿。
水色の輝きを放つ単眼、額からVの字に伸びたアンテナ、右肩に刻まれたゼクトマーク、腰のベルトに装着されたカブトゼクター、下半身を守る黒いスーツ。
『光を支配せし太陽の神』と呼ばれる仮面ライダーカブトの第一形態、マスクドフォーム。
対峙するのは、反逆の名が付けられた剣、リベリオンを構える屈強な戦士。

548地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:52:33 ID:MZGXMrQQ0
その背中からは白い片翼を生やし、肉体を黒い装甲で覆っている。
ソルジャー・クラス1St、アンジール・ヒューレー。
深い森の中で、一陣の風が吹き荒れている。
それは、自然現象によって生まれる物ではなかった。
百戦錬磨の戦士たる彼らの手によって、起こされている。
互いに武器を振るい、互いに攻撃を回避し、互いに闘気を向けた。
二人の戦士が繰り広げる戦いに巻き込まれて、木々は次々と折られる。
一本は刃によって、一本は魔法によって生まれた炎によって、一本は銃弾によって。
次々に大木が倒れたことで、地面に振動が生まれる。
枝から振る木の葉は、風で舞っていた。
しかし、瞬時に両断されてしまう。
戦士達には、それは空気にも等しい存在。
故に、気を止める必要はなかった。

「はあっ!」
「オオオオオオオッ!」

そして今もまた、彼らは得物を振るい続ける。
カブトのかけ声と、アンジールの雄叫びは重なった。
互いに凄まじい勢いで、刃を交えた。
カブトは下から掬い上げるように、斧の形状へと変えたカブトクナイガンを振るう。
アンジールは上から両断するように、リベリオンを振り下ろす。
瞬時に激突し、火花が飛び散った。
激突音が鳴った瞬間、互いの身体に衝撃が伝わる。
腕に僅かな痺れを感じる中、彼らは同時に背後へ跳躍。
数メートルほどの距離を下がり、着地した。
そして、二人は地面を蹴って距離を詰め、武器を振るう。

(やはり、一筋縄ではいかないか)

カブトクナイガンを振るう中、カブトは考えた。
目の前で対峙する男、アンジールとはこれで三度目の戦いとなる。
一度目は、スーパーの前で突然の襲撃を受けたことから、始まった。
二度目は、キングが下らないゲームとやらの開催宣言から、始まった。
しかし、どちらも決着を付けるまでには、至らない。
前者の戦いは、銀色の戦士が乱入したことで、膠着状態に繋がることで終わった。
後者の戦いは、高町なのはを守りながらキングとアンジールの二人を同時に相手にするのが、不可能と判断して撤退した。
そして今、この森の中で三度目の戦いに突入している。

(奴は確実に、俺の手の内を読んでるな……)

この戦いにおける不安要素。
それは、自分との戦闘経験が二度もあること。
アンジールとの激闘で、こちらはキャストオフとクロックアップの機能を使った。
加えて、こちらの戦闘パターンを見ている。
これら二つが示すこと。
手の内が全て、相手に知れ渡っていることだ。
これほどの達人ならば、対抗策を考えているはず。

(恐らく奴は、まだ何か手があるだろう)

自分も、アンジールとの戦いは経験済み。
その結果、戦法及び炎や氷を放出する魔法を使うことを、知ることが出来た。
だが、それはほんの一部という可能性がある。
二度に渡る戦いでは使っていなかった技も、存在するかもしれない。
そして、最大の武器であるハイパーゼクターも、先程キングによって破壊されてしまっている。
しかし不安に溺れたり、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。
どんな隠し技があろうとも、ハイパーフォームになれなくても、アンジールを打ち破る。
今やるべき事は、これ一つだけだ。

549地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:53:08 ID:MZGXMrQQ0

「ハアッ!」

カブトの右肩を目がけて、アンジールはリベリオンを振るう。
だが、それが当たることはない。
鎧が斬られようとした瞬間、カブトは後ろに飛び退く。
この行為によって、リベリオンは地面を少し抉るだけに終わった。
そして、アンジールに微かな隙が出来る。
カブトがそれを見逃すことはなかった。
彼は地面に着地すると、拳銃を持つようにカブトクナイガンを構え直す。
握る右手をアンジールに向けて、トリガーを引いた。
銃口が輝くと同時に、イオンを原料とした高エネルギーのビームが、放たれる。

「チッ!」

だが、アンジールはただでやられる訳ではない。
迫り来る光の弾丸を前に、突進を開始した。
自らの姿勢を低くしながら、彼はリベリオンを構える。
そして、イオンビームを切り裂いた。
カブトとの距離を詰めながら、大剣を振る。
横に一閃。弾丸は真っ二つに分かれて、アンジールの横を通り過ぎた。
縦に一閃。弾丸を構成する物質が、呆気なく吹き飛ばされる。
斜めに一閃。弾丸の軌道を強制的に変え、背後の地面に着弾させた。
その際に生じる爆風で、アンジールは自らの速度を上昇させる。
刃で銃弾を弾くという、あまりにも常軌を外れた行為。
しかしソルジャーとして、多くの戦場を乗り越えたアンジールには、造作もない事だった。
高速の勢いで放たれる弾丸を、次々とリベリオンで弾いていく。
やがてアンジールは、カブトの目前にまで迫った。

「ダアッ!」

横薙ぎにリベリオンを振るう。
この勢いには流石のカブトも対抗できず、胸板を切り裂かれた。
未知の金属、ヒヒイロノカネで構成された鎧に傷を付け、火花が飛び散る。
アンジールが与えた一撃を受けて、カブトは後ろへ吹き飛んだ。
そのまま彼の身体は、背中から大木へ叩きつけられる。

「がっ…………!」

痛みを感じて、呻き声を漏らした。
やはり、アンジールは強い。
防御力に特化したマスクドフォームの鎧に、こうも易々と傷を付けるほどの怪力。
加えて、クロックアップを用いた連係攻撃に対抗できるほどの、反射神経。
スーパーで繰り広げた戦いでも感じたが、ただ者ではない。
カブトは体勢を立て直しながら、改めて思う。
その最中に、アンジールは既に追撃を加えるために、迫っていた。
彼は両手でリベリオンを、頭上に掲げる。
標的となったカブトは、クナイガンを再びアックスモードの形で構えた。
刹那、二人の武器は激突し、鍔迫り合いの体制に入る。
互いに押し合い、力の拮抗が始まった。
視線がぶつかる中、カブトは呟く。

「甘いな」
「何?」

彼の右腕が、腰に伸びた。
そしてその手で、カブトゼクターの角を掴む。
それを見たアンジールは目を見開くと、すぐさま後ろに飛んだ。
彼は激情のあまりに、失念していたのだ。
先程この目で見た、天道が身に纏う鎧が持つ機能を。
距離を取ろうとするが、もう遅い。

「キャストオフ!」
『CAST OFF』

力強い宣言と共に、ゼクターホーンを反対側へ倒す。
すると、主の言葉に応えるかのように、カブトゼクターから電子音声が発せられた。
中心部が輝きを放ち、全身に電流が迸る。
その直後、全身を守る銀色の装甲は、勢いよく弾け飛んだ。

550地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:54:35 ID:MZGXMrQQ0
頭部、両腕、胴体の順番に。
これは、マスクドライダーシステムに搭載されている、キャストオフと呼ばれる機能。
カブトの身体から生まれた衝撃波と、辺りに散らばっていく鎧はアンジールの身体に激突した。
後方に吹き飛んでいくも、純白の翼を羽ばたかせる。
彼は空中で後ろ向きに一回転し、体制を整えながら地面に着地。
一方で、キャストオフを行ったカブトの顎から、一本の角が力強くせり上がる。
単眼を複眼に変えると、その輝きが更に強くなった。

『CHANGE BEETLE』

新たなる形態に変えたことを示す、声が響く。
太陽のように赤く彩られる鎧、カブト虫を思わせる額から伸びた角、闇の中で強い輝きを放つ瞳。
それは俊敏性に優れた、仮面ライダーカブトのもう一つの姿。
ライダーフォームの名を持つ形態へと、変身を果たした。
重厚な鎧を脱ぎ捨てたことで、身が軽くなるのをカブトは感じる。
そのままクナイガンから鋭利な刃を出し、持ち方を変えた。
イオンが纏われた黄金の刃が輝く、クナイモードの形状へと。
カブトとアンジールは、互いに睨み合う。
数秒の時間が経過した後、一陣の微風が彼らの間に吹いた。
それがゴングとなるように、二人は同時に地面を蹴る。

「「ハアッ!」」

掛け声が、重なった。
それはまるで、初めて繰り広げた戦いのように。
突進を開始した彼らの刃は、すぐに激突する。
微かな火花が闇を照らし、激突音が木々の間に流れた。
剣戟を振るう度に、腕から衝撃が伝わる。
カブトはクナイガンを振るうが、アンジールはそれを防いだ。
アンジールはリベリオンを振るうが、カブトはそれを弾いた。
この場で行われている、己を鍛え抜いた達人同士の戦い。
どちらも、なかなか決定打を放てないでいた。
何度目かの激突の後、互いに距離を取る。

(何処だ……何処にいる?)

不意に、カブトはアンジールの背後に視線を向けた。
その先には、漆黒のマスクと衣装、そしてマントに身を包み、魔王ゼロを演じているキングが立っている。
右手には、自分やなのはから奪い取ったデイバッグが、いくつもあった。
あの中の一つに、閉じこめられているはず。
こんな下らない戦いの、ゲームマスターを気取りたければ、勝手にすればいい。
キングの定めたルールがまだ残っているなら、生きているはず。

「デヤアッ!」

しかし、そちらにばかり意識を向けていられない。
目の前には、強敵であるアンジールがいる。
こちらの相手と、彼の捜索。
少々骨が折れるが、やれないことはない。
アンジールの刃を捌きながら、探せばいいだけのこと。
迫り来るリベリオンを、カブトはクナイガンで防ぐ。
だが、このまま力比べに持ち込むつもりはない。
腕力では、アンジールの方に分がある。
まともに正面からぶつかっても、勝てるわけがない。
カブトは横に飛んで、大剣を受け流した。
そして、ほんの僅かにキングへ近づく。

(いるはずだ……)

カブトは、一瞬だけ視線を横に向けた。
キングの手にあるデイバッグは、何も変わる気配がない。
それを察すると、再びアンジールの方に振り向いた。

「ハアァァァッ!!」

この僅かな時間で、敵は既に目前まで迫っている。
それが視界に映った瞬間、アンジールの姿が消えた。
突然すぎる出来事だが、カブトは狼狽えない。
彼は、すぐさま上空に顔を向ける。
すると、一瞬の内に十メートルを超える高さに跳び上がっている、アンジールが見えた。
相手は空中でこちらを見下ろしながら、右腕を向ける。

「サンダガッ!」

アンジールは、マテリアルパワーを集中させた。
そして手の平を地面に向け、言葉を紡ぐ。
最上級の位が与えられた、必殺の魔法を放つために。
その直後、カブトに向かって雷が降り注ぎ、轟音が鳴り響いた。
サンダガの影響に伴い、周囲が眩い光で覆われる。
天空より襲いかかる雷によって、カブトは目を細めた。

551地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:55:13 ID:MZGXMrQQ0

「くっ…………!」

アンジールが使った魔法は、周囲を容赦なく破壊する。
地面は砕かれ、雑草は黒く焦げて、木々はあっという間に燃え尽きた。
雷による爆音は闇の中で響き、カブトの身体に直撃する。
衝撃は感じるが、熱は内部に届かない。
マスクドライダーを構成するパーツの一つに、サインスーツが存在する。
あらゆる衝撃から資格者を守る耐久性。
五千度から絶対零度まで、広い温度に対する守備範囲。
これら二つの特性によって、サンダガのダメージは装着する天道には響かない。
しかし、彼の中で疑問が芽生えた。
これは自分の知らない、アンジールの技の一つか。
だが、マスクドライダーの鎧に魔法攻撃が通じないことは、先の戦いで経験したはず。
それなのに、何故使ったのか。
精々、視界を遮ることしか出来ていない。

(…………そういうことか!)

カブトは、答えを見つける。
仮面の下で、彼は目を見開いた。
その途端、上空よりリベリオンを構えながら、急降下に迫るアンジールの姿を見つける。
これほどの達人が、何の考えもなしに技を使うわけがない。
雷の魔法を使った意図は、単なる目くらましの為。
視界が不安定となり、硬直した隙を付いて一閃を放つことが、本当の目的だ。
このまま真っ正面に攻撃を受けるのは、拙い。
元々の鍛え抜かれた筋力に、空からの落下スピードが加算される。
そうなっては、マスクドライダーの鎧でも耐えられるかどうか。

「オオオオオォォォォォッ!」

咆吼と共に、アンジールは突進する。
この勢いでは、回避が不可能。
リベリオンの標的となったカブトは、左に飛びながらクナイガンを構える。
そして、互いに武器を振るった。
激突によって音が生じ、空気が震える。
その衝撃によって、カブトは僅かに蹌踉めき、後退った。
直撃は避けられたとはいえ、アンジールの力を全て受け流すことは、流石に出来ない。
腕に痺れを覚えながらも、彼は身体を反転させた。
そのまま、敵の方に振り向く。
すると、アンジールが突きを繰り出す姿が、目に映った。

「ッ!?」

直後、胸に衝撃が走る。
攻撃を受け、少し吹き飛ばされるも、すぐに体勢を立て直して後ろに飛ぶ。
カブトはキングに近づくように、アンジールと距離を取った。
痛みを感じるが、この程度は何て事もない。
彼はもう一度、王を気取る観戦者の方に振り向いた。
キングが持っている、五つのデイバッグ。
その中に一つだけ、異様に膨らんでいる物がある。
まるで何かが暴れているかのように、表面が蠢いていた。

(あそこか)

カブトは確信する。
あのデイバッグに、閉じこめられている事を。
これで、第一段階は終了。
次にやることは、悟られないようにキングに出来る限り近づくことだ。
その為には、この戦いを続けなければならない。

「ダアッ!」

アンジールの握る剣が、カブトに襲いかかる。
軌道を読み取り、クナイガンで防いだ。
そこから力比べに入る前に、カブトは横に回り込んで敵の一撃を受け流す。
勢いを止めることが出来ずに、アンジールの体勢がほんの少しだけ不安定となった。
生まれた隙を付き、カブトは左足を軸にした鋭い回し蹴りを放つ。
だが、アンジールはリベリオンを掲げて、それを受け止めた。
七トンもの衝撃によって両腕に痺れを感じ、数歩分後退してしまう。
しかし、アンジールはすぐにリベリオンを構え直し、カブトを睨んだ。
そのまま彼は、勢いよく地面を蹴って前進する。

552地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:55:55 ID:MZGXMrQQ0
「ハアァァァァッ!」
「ふんっ!」

一瞬の内に、開いた距離は詰められた。
その瞬間、互いに武器を振るう。
アンジールはリベリオンを。
カブトはクナイガンを。
伝説の魔剣士が愛用していた大剣と、マスクドライダー計画の産物である刃が激突した。
アンジールの得意とする、直線的な剛の戦術。
カブトの得意とする、力を受け流す柔の戦術。
対極に位置する二人は、それぞれ大剣と刃を交錯させる。
アンジールが力に任せて我武者羅に振るう度に、カブトは必要最低限の動きで受け流した。
先程から、何度もそれが繰り返されて行われている。
妹達に新たなる生を与えるため、カブトを倒そうとするアンジール。
離れ離れとなった仲間達と合流するため、アンジールを退かそうとするカブト。
その目的の為、純粋に戦う二人の闘士。
彼らが抱く信念は、とてもよく似ていた。
されど、その為に取る行動は、全く正反対。
彼らが武器を振るい、火花と金属音を辺りに散らし続けた。

(もう少しか)

その最中、カブトは考える。
キングが立つ場所まで、ほんの数メートルまで近づいていた。
これで、第二段階は完了。
残ったのは、あと一つだけ。
アンジールに隙を作らせること。

「ダアァァァァッ!」
「はあっ!」

暴風雨のように繰り出される斬撃を、クナイガンで防ぎ続ける。
機会が訪れないが、焦ってはいけない。
無理に踏み込もうとしては、返り討ちに遭う。
斜め上から袈裟斬りが来るが、身体を捻って紙一重の差で回避。
直ぐさまアンジールは、軌道を戻すように斬り返しを放った。
眼下より迫るリベリオンを、クナイガンで受け止める。
そして、横に飛んで距離を取った。
だが、アンジールの斬撃は終わらない。
彼は続くように、横胴斬りを放った。
リベリオンを振るった際に、大気が音を立てて震える。
カブトは再び、跳躍して回避した。
その直後、彼の立っていた位置に生えている木が、次々と倒れる。
この結果を見るに、威力がどれほど高いかを物語っていた。
けれども、臆することはしない。

(よし、見切った)

むしろ、ようやくチャンスが訪れた。
自分は今、アンジールの死角に立っている。
それに加えて、キングとの距離も近い。
行動するならば、今しかない。
カブトは脇腹に手を伸ばし、スイッチを叩いた。

「クロックアップ!」
『CLOCK UP』

二つの声が重なる。
その瞬間、カブトゼクターからタキオン粒子が噴出され、全身に流れ込んだ。
張り巡らされた血液と神経を通り、カブトの運動速度を劇的に上げる。
すると、周囲に存在していたあらゆる物質の存在が、スロー再生のように減速。
否、カブトだけがたった一人、光速での移動を行ったのだ。
機密組織ZECTが、ワームに対抗するために生み出した機能、クロックアップ。
それは使用者を通常とは、異なる時間流への突入を可能とさせるシステム。
しかしこの戦いでは、首輪の制限によって発動時間が短くなっており、使用後に疲労が溜まるように仕組まれている。
それ故に乱用が出来ず、タイミングを見極める必要があった。
カブトはアンジールの手を掴み、リベリオンを奪い取る。
そのままキングの方に振り向いて、勢いよく投降した。

553地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:56:32 ID:MZGXMrQQ0

(クロックアップの時間は短い。ならばこれしかないな)

残り時間、五秒。
リベリオンが空中で一直線に進む中、カブトも走り出す。
銀色の大剣は、キングが被るゼロの仮面に突き刺さろうとした。
しかしその瞬間、虚空より障壁が現れる。
それはキングの能力によって、自動的に生まれる盾、ソリッドシールド。
如何に優れた切れ味を誇るリベリオンといえど、貫くことは出来ない。
金属音と同時に勢いを失い、ゆっくりと落下を始めた。
キングを守ったソリッドシールドは、未だ顕在している。

(これでいい)

しかし、これは想定の範囲内。
キングにダメージを与えることが、目的ではない。
残り時間、四秒。
ソリッドシールドは、顔面の前でゆっくりと収縮していく。
カブトはその間に、地面を蹴って全力で駆け抜けた。
キングとの距離は一瞬で、埋まる。

「ふんっ!」

残り時間、三秒。
クナイガンを構えて、横一文字に振るう。
その狙いは、キングが握るデイバッグの肩紐。
荷物が入った場所から切断し、その中の一つを掴む。
これは今まで探していた、目的のデイバッグ。
とても遅いスピードでだが、表面は蠢いている。

(当たりか)

残り時間、二秒。
直ぐさまカブトは、キングの元から離脱を開始する。
他のデイバッグも奪うべきだったが、そんな暇はない。
残り時間、一秒。
彼は瞬時に木の裏に隠れて、ファスナーを開く。
やはり、中に彼がいた。

『CLOCK OVER』

クロックアップの終了を告げる、音声が流れる。
その瞬間、カブトの体感時間は通常の物へと戻った。
証拠に、何かが地面に落下するような音が、後ろより聞こえる。
だが、そんなことはどうでもいい。
カブトの意識は、デイバッグの中に閉じこめられていた仲間の方に向いていた。
雪のように白い肌、紫色に染まった背中、頭部から伸びた角、それに巻かれたリング、小さな二つの翼。
高町なのはのパートナーである飛竜、フリードリヒ。

「大丈夫か」
『キュ〜!』

カブトの言葉に、フリードは笑顔で返す。
これなら、大丈夫だ。
見たところ、何処にも怪我はない。
その手からすぐに、フリードを離す。
無事を確認し、本来ならば安堵すべきだが、そんな暇はない。

「奴らは俺が叩き潰す。お前は早く行け」
『キュックル〜』
「高町達は向こうだが、注意しろ。妙な爆発が起こって、散り散りとなった」

フリードは頷き、カブトに背を向ける。
そのまま、空へと羽ばたいた。
一瞬の内にフリードの背中が小さくなり、木々の間へと消えていく。
見えなくなった瞬間、カブトは物陰から姿を現した。
戻った先では、キングとアンジールの二人が、こちらに視線をぶつけている。

「やってくれるじゃないか、カブト」

黒い仮面の下から、声が発せられた。
変声機で低く聞こえるが、怒りが込められているのを感じる。
その足下には、紐の千切れたデイバッグが全て、転がっていた。

554地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:57:11 ID:MZGXMrQQ0

「ゲームのルールを守らずに、私に攻撃して景品だけを奪うとはね……」
「それがどうした」

キングの言葉を、カブトはあっさりと遮る。
もうこれ以上、茶番に付き合うつもりは毛頭無い。
減らず口も、言わせる気がなかった。

「おばあちゃんが言っていた」

カブトは、声に力を込める。
彼の脳裏には、おばあちゃんから教わった偉大な教えが、蘇っていた。
それをキングに言い聞かせるため、言葉を続ける。

「まずい飯屋と、悪の栄えた試しはない…………ってな」

これが示す意味は、言葉の通り。
半端な料理しか作れない飯屋は、一度たりとも栄光を掴めないこと。
そしてもう一つ。
世界を作り続けてきた長い歴史の中で、悪が未だかつて勝利を果たしていないこと。
その言葉をぶつけられた事により、キングは仮面の中で表情を顰めた。
彼は今、カブトに対する強い苛立ちを感じている。
最初はあのベルトを浅倉に渡し、人々を守れなくした。
キャロ・ル・ルシエを暗黒道に落とし、如何に無力な存在であるかを分からせようとした。
C.C.やシェルビー・M・ペンウッドの命を奪い、絶望させようとした。
フリードを人質にとって、正義の味方を気取るあの男に人殺しをさせようとした。
ハイパーゼクターを破壊した時の、反応に期待していた。

(気に入らないなぁ…………)

だが、どれも自分が満足できる結果にまで、至らない。
それどころか、カブトにとって都合のいいように動いている。
クロックアップをし、アンジールが使う剣を自分に投げて、ソリッドシールドが形成された隙を付いた。
これはオートで出現するが、逆に仇となるなんて。
視界を防ぐ為に、わざわざ自分の所まで近づくよう戦っていたのか。
たかが人間の分際で、小細工を仕掛けるなんて。
そして最強の王である自分に、ここまで逆らうなんて。
もはや、我慢の限界だ。

「どうやら、君にはお仕置きが必要みたいだね」

キングは、一歩だけ前に踏み出す。
リベリオンを拾ったアンジールは、それを制止しようとした。

「待て、奴の相手は俺がすると――――」
「奴はゲームのルールを破った、もうこれ以上遠慮をするつもりはない」

しかし、彼の言葉はあっさりと流される。
その瞬間、キングの身体から黄金の光が放たれ、姿を変えていった。
漆黒の衣装は、瞬く間に消えていく。
キングは、コーカサスオオカブトの始祖たる、異形の姿に変貌を果たした。
アンデッドと呼ばれる、異形の怪物へと。
カブト虫を連想させる額から伸びた角、黄金色に輝く外骨格、全身から突き出した禍々しい棘、腰に顕在するバックル。
今のキングは、他のアンデットより遙かに優れた能力を持つ、上級アンデットの一体だった。
その名を、コーカサスビートルアンデッド。

(アンジールにはバレるけど…………まあ、いっか)

もはや、こうなった以上関係ない。
カブトは。いや、天道総司はこの手で叩き潰さなければ、気が済まない。
もしもアンジールが真実を知り、自分に刃向かおうというなら、始末すればいいだけだ。

555地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:57:51 ID:MZGXMrQQ0
ふと、ヒビノ・ミライの事を思い出す。
奴もウルトラマンメビウスに変身し、自分の知らない攻撃を使った。
あの時は屈辱を覚えたが、今回は違う。
ハイパーカブトになる為の道具は、この手で壊してやった。
メビウスの時のようなことは、もう起こらない。
元々二対一で戦う予定だった。
だから、丁度いい。
コーカサスビートルアンデッドはカブトを睨みながら、額に手を当てる。
そのまま、両手に武装を出現させた。
右手には、あらゆる物質を両断する破壊剣、オールオーバーを。
左手には、百五十トンもの衝撃に耐える盾、ソリッドシールドを。
それぞれ握り、コーカサスビートルアンデッドは構えた。
冷酷な輝きを放つ破壊剣を、カブトに向ける。

「第二ラウンドの、始まりだね」

緑色の瞳からは、確実な殺意が感じられた。
されど、それに押し潰されることはない。
カブトもまた、その瞳から覇気を放っていた。
人数で不利に陥ろうとも、関係ない。
自分の使命はただ一つ。
天の道を往き、目の前の敵を倒すことだ。
コーカサスビートルアンデッドは装備を構えながら、一歩一歩近づいてくる。
カブトはクナイガンを構えながら、それに迎え撃った。







(あれが、ゼロの本当の姿か)

黄金色の異形、コーカサスビートルアンデッドへと姿を変えたキングを、アンジールは目撃する。
その姿は、まるで自分が元いた世界に生息する、モンスターのようだ。
天道との決着を付けようとしたが、奴はそれを無視している。
きっかけはついさっき、敵があの超高速移動を使ったときのこと。
自分から剣を奪うと、キングの方へ投げた。
発生した盾で視界を覆った隙を付いて、あの白い竜を解放する。
正直な所、フリードが逃げられたとしても、アンジールからすればどうでもよかった。
気にくわない男の荷物が無くなったところで、こちらの知ったことではない。
カブトとコーカサスビートルアンデッドが刃をぶつけ、火花を散らす中、アンジールは考えていた。
そして、奴らは鍔迫り合いの体制に入る。

「アンジール、お前はそれで良いのか」

そんな中、カブトの声が聞こえた。
コーカサスビートルアンデッドを押して、剣戟を交わす。
すぐに距離を取って、言葉を続けた。

「このままキングの操り人形のまま、終わるつもりか」
「何……!?」
「こいつの元に付いたところで、天は微笑まない」

その声は、アンジールの心に突き刺さる。
確かに、このまま手駒となったところで、妹達が生き返るとは限らない。
むしろその可能性は、限りなく低いだろう。
あの姿に変わった途端、一気に口調が変わった。
威厳で満ちた声から、まるで我が儘な子どもを思わせる声に。

556地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:58:35 ID:MZGXMrQQ0
(やはり、奴は俺を騙している……?)

アンジールはその可能性を、思いついた。
先程考えていたように、クアットロを殺したのはキングである可能性を。
そして、このまま奴の言いなりになればどうなるか。
協力したところで、道化のままで終わることもあり得る。
別にキングを、心から信頼しているわけではない。
それどころか、時間と共に疑念が強くなる。

「そんな戯言を言って、どうするのかな?」

アンジールが考える最中、新たな声が響いた。
その主であるコーカサスビートルアンデッドは、オールオーバーを横に振るう。
標的となったカブトは、クナイガンでそれを受け止めた。
青白い火花が、闇の中で飛び散る。
一瞬だけ光が灯ると、コーカサスビートルアンデッドはアンジールに振り向いた。

「アンジール、何をしてるの」

異形の瞳と、目線が合う。
コーカサスビートルアンデッドが乱入してから、アンジールは一切動いていなかった。
何故カブトと戦わないのかは、彼自身分かっていない。
自分に命令する、コーカサスビートルアンデッドへの反抗心か。
それとも、横槍を入れられたことで興が醒めたのか。
もしくは二対一で決着を付けるのを、プライドが許さないのか。

「君は妹達を生き返らせたいんでしょ。だったら、一緒にあいつを倒そうよ」

コーカサスビートルアンデッドは、淡々と言い放つ。
その瞬間、彼の中でクアットロの最後の姿が、一気に蘇った。
自分が死んでも、アンジールが生き返らせると、クアットロは言った。
そして、チンクやディエチもそれを望んでいると、クアットロは言った。
その為にやる事は、この戦いで優勝して願いを叶えること。

「…………そうだったな」

アンジールはリベリオンを構えて、コーカサスビートルアンデッドに答える。
そうだ、今やるべき事は迷うことではない。
目の前の敵、カブトを倒すこと。
その為ならば、夢も誇りも全部捨てて、参加者を皆殺しにする。
もしもコーカサスビートルアンデッドが裏切るのなら、殺せばいいだけのことだ。
人形になった所で、後悔など無い。
それが妹達の為に出来る、唯一の選択だ。
自らにそう言い聞かせて、アンジールは走る。
そして、リベリオンを振りかぶった。







(なるほど、やってくれるじゃないか。天道総司)

カブトとアンジールの戦いに、コーカサスビートルアンデッドが乱入する光景を、一人の男が眺めている。
身に纏うのは、黄色のハイネックと黒いジャケット。
その顔には、銀縁の眼鏡を掛けている。
理知的な雰囲気を漂わせるその男の名は、金居。
上級アンデッドの中でも、ダイヤスートのカテゴリーキングに位置する。
先程から金居は、何とかキングを戦場に引きずり出せないかと、策を練っていた。
だが、その手間はすぐに省ける。
カブトの手によって、何とあのキングの方から、自ら戦いの場に出たのだ。
理由は単純。
キングのバッグを奪い、その中に閉じこめられていた白い竜を、カブトが逃がしたから。
それで何故戦場に出たのかは分からないが、キングはアンデッドへと姿を変える。
この結果だけでも、金居にとっては充分。

(わざわざ俺の手間を省いてくれるとはね…………礼を言うよ)

思考を巡らせる必要すら、無かったとは。
その事に笑みを浮かべながら、心の中で呟く。
無論、アンデッドである金居が、人間に対して感謝などしない。
彼にとって、あの戦場で戦っている三人は、ただの駒。
自分の都合のいいように動く、哀れな者達にしか見えなかった。

557地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:59:22 ID:MZGXMrQQ0

(まあ、後は待つしかないか)

とにかく、やるべきことはもう無い。
あとは勝手に潰し合って、倒れるのを待つだけだ。
もし、仮に誰か一人でも生き残ったとしよう。
実力者同士の戦いなら、消耗は避けられないはずだ。
そうなったら、こちらから楽にしてやればいい。
デザートイーグルで狙撃するか。
それとも、アンデットとなって殺害するか。
物陰から戦場を眺める金居は、口元を歪めながら思考する。

(精々頑張ってくれよ、俺は応援してるからな)

誰にも気づかれないように、侮蔑の言葉を投げた。
自分にとって都合のいい出来事が、ここまで続くなんて。
金居自身、予想していなかった。
彼は声を漏らさぬよう、笑みを浮かべ続ける。
あの三人の中で、果たして誰が一番長く耐えるか。
ふと、金居は思うようになる。







激しさを増す戦いの影響で、辺りは次々と吹き飛んでいった。
仮面ライダーと、アンデッドと、ソルジャーの手によって。
周囲の大地は所々が砕かれ、所々に亀裂が走り、植物はメラメラと音を立てながら燃えていた。
もはや、森林という元の原形は一片たりとも、保っていない。
そんな中で、三人は戦いを繰り広げていた。
カブトは、クナイガンの引き金を引いて、イオンで出来た弾丸を放つ。
アンジールは、渾身の力を込めてリベリオンを振るって、それを弾いた。
コーカサスビートルアンデッドは、ソリッドシールドを形成させ、イオンビームを防ぐ。
遠距離からの攻撃は、通らずに終わった。
カブトはクナイガンの持ち方を、クナイモードに変える。
目前からは、アンジールがリベリオンを振りかぶりながら、迫っていた。

「フンッ!」
「はあっ!」

クナイガンを頭上に掲げて、カブトは銀色の剣を防ぐ。
二つの得物が、掛け声と同時に激突し、火花を散らせた。
クナイガンとリベリオンの刃が擦れ合い、互いの力が拮抗する。
しかし、純粋な腕力ならばアンジールの方に、分があった。
故に、カブトは徐々に押されていく。
彼はふと、疑問を感じた。
コーカサスビートルアンデッドの姿が、見られない。
鍔迫り合いの中、彼は一瞬だけ横に視線を移す。
すると、見えた。
少し離れた位置から、コーカサスビートルアンデッドが真っ直ぐに腕を向けているのを。
何をするつもりなのか。
疑問を抱いた瞬間、掌から輝きが放たれる。

「「ッ!?」」

カブトとアンジールは、同時に背後へ飛んだ。
その直後、轟音と共にエネルギー弾が発射され、彼らのいた場所を飲み込んでいく。
そして凄まじい爆発が起こり、辺りの地面を容赦なく吹き飛ばした。
しかし、それだけでは終わらない。
音と共に発生した爆風は、カブトの身体を容赦なく飛ばした。

「くっ!」

だが、彼はすぐに受け身を取る。
そのお陰で、地面に激突する事態だけは、避けることが出来た。
ここから半径三メートル。
視界を遮る物は、全て跡形もなく吹き飛ばされていた。

558地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 00:59:55 ID:MZGXMrQQ0

「なるほどな」

体勢を整えながら、カブトはぽつりと呟く。
コーカサスビートルアンデッドは、まだこんな隠し球を持っていたとは。
先程の念力に加えて、今のエネルギー弾。
そしてアンジールと同じように、奴は自分の戦いを見切っている。
状況は、こちらが圧倒的に不利だ。
だがそんなことは関係ない。
おばあちゃんだって、言っていた。
仕事は納豆のように粘り強くするものだ…………と。
だから、今は必死に戦う。
その言葉を思い出しながら、カブトは敵に振り向いた。

「…………貴様、俺を巻き込むつもりだったのか」

アンジールは、コーカサスビートルアンデッドを睨み付ける。
彼もまた、エネルギー弾による衝撃波に、吹き飛ばされていた。
後退したことで、幸いにもダメージは負っていない。

「君だったら、すぐに避けられたでしょ?」
「何?」
「そんなことより、カブトを倒そうよ」

しかしコーカサスビートルアンデッドは、まるで悪びれもせずに答えた。
アンジールが避けるのを見て、彼は失望の感情を抱く。
この男は優勝するためなら、何でもするかと思っていた。
だが、実際はこのザマ。
カブトを止めている隙にエネルギー弾を放とうとしたが、避けるなんて。

(やれやれ、こいつはただの腰抜けだな)

コーカサスビートルアンデッドは、心中で溜息を吐く。
もうこの男は駄目だ、使えない。
初めは妹を殺した自分の駒になるという、シチュエーションに心を躍らせた。
しかし、実際の戦いになってはロクに使えない。
カブトを始末するための道具にしたが、それすらも満足に出来ないとは。
だが、今だけは特別に一緒に戦ってあげよう。
侮蔑の視線を一瞬だけアンジールに向けて、カブトに振り向いた。

「ゲームを続けようか、カブト」

言い放ちながら、コーカサスビートルアンデッドは足を進める。
その様子は、まさに王。
カテゴリーキングの名が示すように、威風堂々としていた。
異形の身体からは、圧倒的と呼べるほどの覇気を放っている。

「一つ教えてやろう」

それを真っ向から受けながらも、カブトは微動だにしない。
彼もまた、一直線に足を進めていた。
その様子は、まさに太陽。
仮面ライダーカブトに与えられた、太陽の神の称号を示すように、威風堂々としていた。

「例え如何なる王が相手だろうと……太陽の前には平伏すのみ」
「太陽だって? 笑わせないでよ」

カブト虫を彷彿とさせる赤い仮面ライダーと、カブト虫を彷彿とさせる金色のアンデッド。
昆虫の王と、昆虫の王。
互いに言葉を、そして敵意を乗せた視線を激突させる。
太陽を自称する、カブト。
王を自称する、コーカサスビートルアンデッド。
同時に武器を振るって、激突を再開した。
クナイガンとオーバーオールの刃が、闇夜で煌めく。
力に任せたコーカサスビートルアンデッドの斬撃を、カブトは一つ一つ受け流した。
接触面から、次々と甲高い音が響く。
数度の撃ち合いが終わった後、彼らは距離を取った。
しかし、カブトは息を整える暇が与えられない。
地面に足を付けた直後、流れるようにアンジールが突進してきたのだ。

559地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:00:40 ID:MZGXMrQQ0
「オオォォォォッ!」

咆吼と共に、リベリオンが左袈裟斬りで振るわれる。
再度跳躍して、カブトは斬撃を回避した。
その結果、刃先は空振りに終わる。
カウンターを放つために、カブトはクナイガンを振るった。
しかし、それは届かない。

「うっ!?」

突然、身体が宙に浮かぶのを感じる。
地面から両足が離れた瞬間、カブトは数メートル後ろに吹き飛ばされていった。
受け身を取ろうとするが、四肢が動かない。
この現象には、覚えがあった。
数時間前にも経験した、キングの念力。
無様にも、カブトは地面に叩きつけられてしまう。
そのまま転がってしまうが、何とか起きあがって体勢を立て直した。
刹那、彼は見てしまう。
コーカサスビートルアンデッドとアンジールが、こちらに掌を向けているのを。
それを目撃したカブトの行動は、早かった。

「――――プットオン!」
『PUT ON』

カブトゼクターの角を、反対側に倒す。
それは咄嗟の判断だった。
この離れた位置からのクロックアップは、途中で切れる危険性が高い。
故に、マスクドフォームに戻るための機能、プットオンを選ぶ。
電子音声と共に、伸びた角が元の位置に下がっていった。
その直後、キャストオフによって吹き飛んだ銀色の鎧が、カブトの身体を覆う。

「遅いよっ!」
「ファイガ!」

そして、それぞれの腕から、エネルギー弾と灼熱の炎が襲いかかった。
ファイガはカブトの全身を飲み込み、光線が爆音を鳴らす。
一発だけでなく、無慈悲に次々と放たれていった。
連射される二つの力によって、大地は抉られていく。
それによって、大量の粉塵が舞い上がった。
視界が遮られたのを見て、二人はようやく攻撃を止める。
この光景を見て、コーカサスビートルアンデッドは充実感を覚えた。

(ハハハッ! 太陽とか名乗っておきながら、やっぱり弱いな! さて、どんな無様な姿を見せてくれるかな?)

敵は咄嗟にマスクドフォームになった。
『MASUKARE−DO』に書かれた文章によると、あれは防御に特化した形態らしい。
だが、この攻撃の前では意味を成さないだろう。

『CAST OFF』

侮蔑の視線を向けていると、音声が聞こえた。
その途端、目の前から金属片が放出されて、一気に煙が晴れる。
コーカサスビートルアンデッドとアンジールの脇を、凄まじい勢いで通り過ぎた。

『CHANGE BEETLE』

そして再び、粉塵の中から姿を現す者がいる。
言うまでもなく、ただ一人。
ライダーフォームへと形態を変えた、カブトだった。
しかし、先程とは少しだけ違うところがある。
短剣一本で戦っていたはずなのに、反対側の手に見慣れぬ剣が握られていたのだ。

「――――いくぞ」

右手には、クナイガンを。
左手には、黄金の輝きを放つ巨大な剣を持っていた。
それはZECTが生み出した、全てのゼクターの頂点に立つ必殺の武器。
ハイパーゼクターと同じく、ワームとの戦いに勝利する鍵の一つ。
パーフェクトゼクターの名を持つ、究極の剣だった。

560地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:01:14 ID:MZGXMrQQ0







時間は、ほんの少し遡る。
爆発の衝撃を受けて、カブトは地面に吹き飛ばされた。
身体が転がっていくが、瞬時に勢いを止める。
エネルギー弾と炎の直撃を受けたが、瞬時にマスクドフォームとなったため、ダメージは軽減された。
関節を軽く動かす。やはり、致命傷は負ってない。
周りを見渡しながら、カブトは考える。
煙幕が広がっているので、視界がはっきりしない。
キャストオフをする手があるが、それでは格好の的になるだけ。
かといって、このままでは煙の向こうから、奇襲を受けるだろう。

(…………ん?)

周囲を見渡すカブトは、思考を止めた。
吹き上がる爆煙の向こうで、一つの影を見つける。
一瞬、敵かと思い構えを取った。
しかし、影は動かない。
それは棒のように、この場に突き刺さっている。
何かと思い、カブトは一歩前に進んだ。
見えるところまで行った途端、仮面の下で目を見開く。

(これは、まさか……)

そこに顕在するのは、一本の巨大な剣だった。
刀身は黄金色に輝いて、握り手には四つのボタンが備え付けられている。
それぞれのスイッチには赤、黄、水色、紫の四色に彩られていた。
この武器を、カブトは知っている。
ワームを初めとした数多の脅威に対抗するため作られた、完全の名を持つゼクター。

「やはり、パーフェクトゼクターか…………」

敵に悟られないほどの小さな声で、カブトは呟く。
何故、これがここにあるのか。
ここに、彼の知らない事実が存在する。
先程合流したスバル・ナカジマの荷物の中に、パーフェクトゼクターが存在した。
しかしそれは、八神はやてが『妖艶なる紅旋風』を放ったことで、このC−9地点まで吹き飛ばされてしまう。
そして偶然にも、コーカサスビートルアンデッドとアンジールの攻撃によって、カブトもまたここまで辿り着いた。
彼はすぐにパーフェクトゼクターを手に取る。
まるで主の帰還を喜ぶかのように、刃は輝きを放った。
ハイパーフォームにはなれないため、本来の威力を発揮することは出来ない。
しかし、自身の中で力が沸き上がっていくような感覚がした。
これさえあれば、戦える。
カブトは、空いた方の手でゼクターホーンを反転させた。

「キャストオフ!」
『CAST OFF』

カブトゼクターから、力強い音声が発せられる。
その瞬間、堅牢な鎧と共に、辺りの煙が吹き飛んだ。







C−9地点と、D−9地点の境目。
そこは既に、完全な荒れ地と成り果てていた。
カブトがパーフェクトゼクターを手に入れたことにより、戦況は更に変わる。
コーカサスビートルアンデッドとアンジールが、数と物量の差で有利に立っていたはずだった。
カブトの視線に、左右から同時に凶器が襲いかかるのを目にする。
彼はそれらに対抗するため、両腕を突き出した。
左から迫るオーバーオールを、パーフェクトゼクターで受け止める。
右から迫るリベリオンを、クナイガンで受け止める。
四つの武器が衝突し、火花が散った。
そのままカブトはバックステップを踏んで、距離を取る。
そして、構えを取った。
普段なら二刀流での戦いは行わないが、この場合は仕方がない。

561地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:02:07 ID:MZGXMrQQ0

(…………まるで、あいつみたいだな)

ふと、カブトは仮面の下で笑みを浮かべる。
今の構えが、長い間共に戦っていたあの男と、とても似ているのに気づいたため。
『戦いの神』と呼ばれる、クワガタ虫を模したマスクドライダーの資格者と。
とても考えが甘いが、見ていてとても面白いあの男と。
仮面ライダーガタック。
否、加賀美新とよく似ていたのだ。

「そんな武器を使うなんて、いけないなぁ」

無論、感慨に耽っている場合ではない。
コーカサスビートルアンデッドは、こちらに腕を向けている。
これが意味するのは、二つ。
エネルギー弾での攻撃か、念力を使ってパーフェクトゼクターを奪うこと。
可能性としては、後者が高い。
両足に力を込めて、カブトは跳躍した。
その途端、先程立っていた空間は予想通り、歪みが生じる。

「はあっ!」

舞い上がるカブトは、空中でクナイガンを投げた。
標的は、地上にいるコーカサスビートルアンデッド。
突き刺さろうとした瞬間、刃はソリッドシールドに阻まれる。
だが、それでいい。
目的は先程のように、敵の視界を隠すこと。
それを果たしたカブトは、身体を反転させる。
目前からは、アンジールが片翼を羽ばたかせながら、高速で迫っていた。

「「ダアッ!」」

互いに武器を振るい、激突させる。
スーパーでの戦いを再現しているようだったが、二つの違いがあった。
一つ、二人は相手の戦術を見切っていること。
二つ、所持する武器の違い。
それ故、彼らの条件は拮抗していた。
パーフェクトゼクターとリベリオンが、間髪入れずに次々と振るわれる。
一度激突する度に、火花が飛んだ。
一度激突する度に、微かな光が灯った。
一度激突する度に、金属同士が激突する音が響いた。
一度激突する度に、闇が震えた。
純粋な力ならば、アンジールに天秤が傾く。
しかし今のカブトは、パーフェクトゼクターを手に戦っていた。
その威力は、クナイガンを上回る。
アンジールまでには届かないが、その要素を足すことでカブトは戦っていた。
やがて、彼らの打ち合いは一時終わる。
きっかけは、アンジールが更に上空へ羽ばたいたことによって。

(距離を取る…………なるほどな)

カブトは、眼下に視線を移す。
案の定、その先ではコーカサスビートルアンデッドが、腕を向けていた。
直後、あのエネルギー弾が轟音と共に放たれる。
最初に使った念力は、ただの囮だった。
空中戦という、アンジールの本領を発揮できる状況まで追い込んで、先程のように光線を放つ。
しかしその攻撃を、ただ受けることなどしない。

「クロックアップ」
『CLOCK UP』

再び脇腹のスイッチを叩いて、クロックアップを行った。
瞬時にカブトは超高速の世界に突入して、落下する。
周りの光景が遅く見える中、パーフェクトゼクターのボタンに指を付けた。

562地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:02:48 ID:MZGXMrQQ0

『KABUTO POWER』

大剣から、音程の高い機械音声が発せられる。
それは、聞き慣れた音。
武器の力を発揮するための、合図だった。
音声が鳴った瞬間、パーフェクトゼクターの刀身にタキオン粒子が纏われる。
生まれた原子は稲妻の形となって、赤い輝きを放った。
そんな中、カブトは地面に着地する。
残された時間は、三秒も満たない。
彼は姿勢を低くしながら地面を蹴って、コーカサスビートルアンデッドの懐に潜り込んだ。

『CLOCK OVER』

全ての動きが、元通りになる知らせが告げられる。
コーカサスビートルアンデッドはそれに反応し、振り向いた。
視界に映るカブトは、パーフェクトゼクターの握り手に備えられた、引き金を引く。

『HYPER BLADE』
「はあああぁぁぁぁっ!」
「なっ……!?」

咆吼と電子音声が、重なった。
パーフェクトゼクターから、凄まじいほどの赤い風圧が放たれる。
カブトはコーカサスビートルアンデッドの胸板を、下から斜め上に薙ぎ払った。
咄嗟に発生したソリッドシールドすらも、易々と砕いて。
タキオン粒子によって生まれた刃、ハイパーブレイドの一撃は、コーカサスビートルアンデッドを呆気なく吹き飛ばした。
その反動は凄まじく、身体が痺れるのをカブトは感じる。
いつもなら、感じたことのない衝撃。
本来パーフェクトゼクターは、ハイパーフォームに変身することを前提で、作られた武器。
このゼクターに内蔵されている一撃の威力は高いが、反動も凄まじい。
通常の形態で技を使っては、こちらに衝撃が来ても当然だった。
加えて、手応えがいつもより感じられない。

(だが、キングにダメージを与えた…………上出来だ)

それでも、コーカサスビートルアンデッドに傷を負わせた。
クロックアップの疲労や、パーフェクトゼクターの反動など、耐えればいいだけ。
天の道を往く自分なら、この程度は何て事無い。
先程投げたクナイガンを、カブトは拾う。
その直後、空に飛んでいたアンジールもまた、地面に降りた。
片翼から羽根が舞い落ちる中、無言でリベリオンを構える。
カブトもまた、何も言わずに二刀流の構えを取った。
二人は睨み合い、冷たい空気が広がる。

「あ〜あ…………痛いなぁ」

そんな中、緊張感を壊すような声が聞こえた。
カブトとアンジールは、そちらに振り向く。
二人の視線の先から、異形の怪人が黄金色の身体を輝かせながら、ゆっくりと迫っていた。

「やってくれるじゃないか、カブト。でも、礼を言うよ」

コーカサスビートルアンデッドは、気怠そうに肩を回す。
現れたアンデッドを見て、カブトは違和感を感じた。
あるはずの物が、身体にない。

「なんだかよく分からないけど、君のおかげで力を取り戻せたよ! ありがとう!」

そう、コーカサスビートルアンデッドの首にあるはずの首輪が、無かったのだ。
絶対に外せないはずの物が、何故。
カブトの中で、疑問が広がっていく。

563地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:03:26 ID:MZGXMrQQ0







これは、幾つもの出来事が重なった結果、起こったことだった。
まず一つ目。
コーカサスビートルアンデッドはウルトラマンメビウスと戦った際に、二人のウルトラマンが力を合わせて放った技を受けた。
メビュームナイトブレードの名を持つ、闇を切り払う剣を。
それを受けたコーカサスビートルアンデッドは、莫大なダメージを負った。
この時はアンデッドの再生能力と、治療の神 ディアン・ケトのカードを使って、命を繋ぐ。
次に二つ目。
これは参加者の知らない出来事だった。
第四回放送の際に主催側で内乱が起きて、プレシア・テスタロッサは死亡。
新たにゲームマスターとなったジェイル・スカリエッティが、参加者とのバランスを取るために、全ての首輪に備えられた爆薬を解除した。
その結果、首輪の爆発による死亡は、起こらなくなる。
そして最後に三つ目。
パーフェクトゼクターを手に入れたカブトによって、必殺の攻撃を受けた。
下から上に掬い上げるように放たれた、ハイパーブレイド。
その刃先が、コーカサスビートルアンデッドの力を縛る首輪に、偶然にも命中したのだ。
本来なら、首輪はこれだけでは壊れない程の耐久力を持っている。
しかし、メビウスとの戦いで敗北した際に、大きく劣化していたのだ。
アンデッドの再生力とディアン・ケトで、コーカサスビートルアンデッドの傷は治った。
だが、治癒されるのは身体のみ。
能力を縛る首輪は、その対象ではなかったのだ。
メビュームナイトブレードによる爆発と、ハイパーブレイドの一撃。
それら二つと、主催者が行った爆破解除が奇跡的に合わさって、首輪から解放された事になる。
その結果、コーカサスビートルアンデッドは本来の力を、全て取り戻した。
恐らく、この真相に気づくのは、誰一人としていない。







「ふふふふふふ、力が漲っていくなぁ…………!」

コーカサスビートルアンデッドはわざと両腕を広げながら、嘲るように喋る。
その態度からは絶対的有利に立ったという、余裕が感じられた。
首輪が破壊されて、何故無事でいられるのかは、彼自身分からない。
だが、真相などどうでもよかった。
忌々しい首輪が無くなったと言うことは、もう死ぬことはない。
元から心配もしていなかったが。
自分の身体が軽くなったような感覚を、コーカサスビートルアンデッドは覚えている。
そのまま、カブトとアンジールの方に振り向いた。

「せっかくだから、君にプレゼントをあげるよ」

軽く呟きながら、コーカサスビートルアンデッドは腕を向ける。
そしていつものように、二人を目がけて勢いよく衝撃波を放った。
カブトとアンジールはすぐに後ろに飛んで、回避行動を取る。
直後、彼らのいた大地にエネルギーの塊が激突し、大爆発を起こした。
その威力は先程までとは比較にならず、大地を激しく揺らしていく。
そしてエネルギーの余波で飛ばされそうになりながらも、カブトとアンジールは地面に着地した。
そんな中でも、コーカサスビートルアンデッドは笑い声を漏らしている。

564地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:03:59 ID:MZGXMrQQ0

「わかったでしょ、君じゃ僕には勝てないって。さあ、どうするのかな?」

たった今放った衝撃波の威力を見て、確信していた。
やはり自分こそが、最強の存在であると。
そして、脆弱な人間をもっと苦しめてやりたい。
コーカサスビートルアンデッドの脳裏に、いつもの光景が浮かぶ。
苦しむ人間の姿を見つけて、それを携帯のカメラに収めてホームページにアップロードすること。
もしも目の前にいるカブトを敗北へ追い込み、その姿にタイトルを付けるなら何がいいか。
そんなことを考えながら、コーカサスビートルアンデッドはエネルギー弾を放ち続ける。

「くっ!」

標的となったカブトは、左右に飛んで回避した。
彼は必死になって避けるが、その先に繋ぐ余裕がない。
何度目になるかわからない爆発の直後、周囲が再び煙で覆われる。
それでもコーカサスビートルアンデッドは、笑い声を上げながらエネルギー弾を発射した。
今度は、プットオンもクロックアップもさせない。
ペースがこちらに乗ったと確信した故の行動。
その最中、爆音と共に広がっていく粉塵の中から、一つの影が跳び上がってきた。

「はああぁぁぁぁぁっ!」
「ちっ!」

パーフェクトゼクターを構えながら、カブトは姿を現す。
叫びと共に大剣を、重力の落下速度と重ねながら、敵に目がけて振り下ろした。
コーカサスビートルアンデッドは、オールオーバーを構えて迎え撃つ。
そして、二つの刃は激突した。
カブトの与えた一撃によって、コーカサスビートルアンデッドが立つ地面は、ほんの少しだけ沈む。
だが、そこから先に進むことは出来なかった。
純粋な腕力だけで言えば、コーカサスビートルアンデッドに分がある。
カテゴリーキングの称号があるように、それはアンジールと匹敵するほどだった。
それを察したカブトは、上空からの攻撃を選ぶ。
この結果、ようやくコーカサスビートルアンデッドにまで力が届いたのだ。
地面に足が付いたカブトは、背後へ飛ぶ。
彼の首には、あの銀色の首輪が巻かれていなかった。
コーカサスビートルアンデッドの攻撃で煙が吹き荒れる中、彼はもしやと思い外すことを選ぶ。
結果、爆発は起こらなかった。

(どういう事だ、爆発が起こらないとは…………何かの罠か?)

プレシア・テスタロッサは殺し合いを強制させる手段として、一人の少女を犠牲にしたはず。
だが何も起こらない。
もしや、これ自体が何かの罠で、首輪を外した参加者にペナルティを用意してるのか。

(いや、考えるのは後だ。まずはこいつらを倒すことが先決だ)

目の前には、コーカサスビートルアンデッドとアンジールがいる。
まずは、この二人との戦いに集中するべき。
特にアンジールも、自分達を見て異変が起こらないと気づいて、首輪を掴む。
そして力ずくで外し、残骸を投げ捨てた。
案の定、その首が飛ぶことはない。
こうしてここにいる三人は、自らに課せられた制限から解放させた。
彼らは同時に、地面を蹴って走り出す。
そのまま武器を掲げた。

565地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:05:03 ID:MZGXMrQQ0







戦士達が突進を再開した瞬間、荒れ地に火花と金属音が広がる。
しかし、それは起こらなかった。
突如、足下の地面が大きく揺れて、崩壊する。
亀裂が走った大地に、巨大な穴が現れた。

「「「なっ――――!?」」」

あまりにも唐突すぎる出来事によって、三人は驚愕の声を漏らす。
皆、反応する暇がなかった。
眼下にあるのは、闇。
地面が壊れた原因は、度重なる激闘によって。
カブトの、アンジールの、コーカサスビートルアンデッドの。
それぞれの攻撃が、大地に亀裂を走らせていた。
決定打は、制限が解除されたコーカサスビートルアンデッドのエネルギー弾。
そして偶然にも、真下に存在する空洞。
地面の脆い部分に、何度も刺激を加えた故の結果。
それまで耐えていたが、もはや限界だった。

「「「――――ッ!」」」

全員、闇の中へと落ちていく。
しかし幸運にも、彼らは鍛え抜かれた強者達。
不測の事態だろうと、対応する事は用意だった。
カブトはクロックアップを行いながら、空中で着地の体制を整える。
アンジールは片翼を羽ばたかせて、落下の勢いを緩めた。
コーカサスビートルアンデッドは念力を使って、ゆっくりとそこに降り立つ。
そうして彼らは、激突することなく地面への着地を成功した。







「何だ、ここは…………?」

突然発生した大穴に落下し、何とか着地を果たしたカブトは周りを見渡す。
何も見えない暗闇かと思っていたが、光に照らされていたのだ。
しかし、それは自然による物ではない。
電気が生み出す人工の輝きだった。
青白い光に覆われるこの空間は、辺り一面に機械が存在している。
この会場のマップや、上下する波紋が映し出された画面も見つけた。
それらの周りには、キーボードのような物や、点滅を放つ謎の機械も存在する。
どれも、彼の理解を超える物だった。
そしてもう一つ、光を放つ物体を見つける。
奇妙な模様が円の中に重ねられて、謎の文字が周りに並んでいた。
まるで、魔法陣のように見える。

「ふうん、こんな場所があったなんてね」

突如、背後から声が聞こえた。
振り向いた先にいるのは、コーカサスビートルアンデッドとアンジールの二人。
彼らもまた、この場所に疑問を抱いている。
続いて口を開いたのは、アンジールだった。

「これは一体どういう事だ」
「知らないね」
「何?」
「さっきも言ったでしょ。プレシアから全てを聞かされてる訳じゃないって」

だが、あっさりと流される。
その態度に、アンジールはコーカサスビートルアンデッドに対する苛立ちを、更に強めた。
そして、確信する。
この男は、自分との協力など初めから考えていない。
先程から何度も、攻撃に巻き込もうとしたのがその証拠。
奴にとって自分とは、使い捨ての駒に過ぎない。
ならばこれから、反旗を翻すべきか。
いや、この状況でそれを行うのは危険。

(奴の力は侮れない…………どうする)

コーカサスビートルアンデッドは、念力に加えてエネルギー弾を撃つ。
その威力は、先程目にした通り。
下手に突っ込んでいっても、返り討ちになる可能性がある。
ならば、まずはカブトとの戦いを優先するべきか。
その隙を付いて、コーカサスビートルアンデッドを討つ。
クアットロを殺した奴が相手なら、どんな卑劣な手段でも使うつもりだ。
そう決意を固めながら、アンジールは振り向く。
視線に気づいたカブトは、構えた。
戦いはまた続いている。
この場所がどうだろうと、関係ない。
首輪もそうだが、真相を確かめるのは後だ。
二人の闘士が、ゆっくりと近づいてくる。
カブトも、構えながら足を進めた。
その瞬間に、モニターの画面が急に変わる。
気づいた三人は足を止め、振り向いた。

「あれは……まさか!?」

赤い仮面の下で、カブトは驚愕の表情を浮かべる。
そこに映し出されているのは、一人の女性だった。
この戦いを仕組んだ主催者、プレシア・テスタロッサ。
唐突に画面に現れたプレシアは、口を開く。

566地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:05:44 ID:MZGXMrQQ0
『この画面が映っていると言うことは、私は既にこの世にいないでしょうね。ジェイル・スカリエッティ』
「何…………?」

疑問に満ちた声で、カブトは呟いた。
そんなことを気にせず、プレシアは言葉を続ける。

『これは、私からの制裁よ…………裏切った愚かな貴方達へのね』







時計の針は、少しだけ戻る。
既に、プレシアの遺産は動き出していた。
それは最悪の二日目が始まって、数時間が経った後に。
時の楽園に眠る、兵士達。
皆、主の無念を晴らすために、動き出す。







「これは…………」

モニター画面を見つめるドゥーエは、驚愕の表情を浮かべた。
彼女の瞳は、D−9地点で起きた異変を映している。
あの場所に空いた、巨大な穴。
それが偶然にも、参加者全員が知らない施設に繋がっていたのだ。
その中に進入した、三人の男。
天道総司。
キング。
アンジール・ヒューレー。

「まさか、あそこに進入するとはね…………」

ぽつりと呟く。
あの場所は時の庭園の一部であり、殺し合いの会場を生み出す中枢と呼べる場所だ。
あそこに設置してある機械が、禁止エリアや転送魔法陣のエネルギーを生み出し、会場に設置されている施設を作っている。
そしてあそこには、時の庭園にまで転送するための、魔法陣もあるのだ。
この殺し合いで、何か不都合がないかを点検するため。
そんな場所へ、一度に三人もの参加者が進入した。
これは、見逃せない。

「とにかく、ドクターに…………ん?」

ふと、背後から気配を感じる。
ドゥーエが振り向くと、堅牢な骨格に身を包んだ一匹の異形が姿を現した。
それは本来、ルーテシア・アルビーノが使役していた召喚虫の一匹で、それをプレシアが奪い取った。
今は、スカリエッティが使役主となっている。

「どうかしたの、ガリュー?」

しかし、ガリューは何も答えない。
ドゥーエは、怪訝な表情を浮かべた。
それにも関わらず、相手は沈黙を保っている。
彼女は溜息を吐きながら、モニターに視線を戻した。

(全く、所詮虫かしら…………)

そんな奴に、まともな答えを期待するのが間違いかもしれない。
今はそんなのに構っている場合ではなく、侵入者への対応を練ることだ。
ドクターもウーノも、研究成果の持ち出しや脱出艇の調整に力を注いでいる。
セッテ、オットー、ディードの三人は、時の庭園に進入した夜天の融合騎体制に入った。
残った自分は、こうして参加者の監視を行っている。
ドゥーエは自らの指を、パネルに伸ばした。
しかし、それは届かない。

「…………ガアッ!?」

苦痛に満ちた、悲鳴が漏れる。
そして、下腹部に激痛が走った。
全身の神経に焼けるような痛みが伝わる中、ドゥーエは視線を落とす。
その先には、紫色の刃が腹部を貫き、血を流しているのが見えた。
凶器は、一瞬の内に消える。
ドゥーエには、何が起こっているのか理解できない。
足下が蹌踉めく中、彼女は傷口を押さえる。
首を動かすと、ガリューの両腕から鋭利な刃が突き出ているのが見えた。
左手からは、黒い血潮が床に滴り落ちている。

567地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:06:20 ID:MZGXMrQQ0

「な、何を――――!」

疑問の言葉は、最後まで出ない。
上から振り下ろすように、ガリューは再び刃を振るったのだ。
あまりに唐突すぎる出来事で、ドゥーエは反応できない。
そして、ガリューの刃は一切の容赦なく、彼女の身体を切り裂いていった。
声にならない悲鳴を漏らしながら、一気に倒れる。
ドゥーエの血が、ガリューの身体にかかった。
彼女は受け身が取れず、背中に衝撃を感じる。
ドゥーエを見下ろすガリューの目は、機械のように冷たかった。
召喚虫は、足を振り上げる。
そして、ドゥーエの首を目がけて勢いよく振り下ろした。

「…………あ…………ぁ………」

もはや呼吸すら、まともに出来ない。
異形の発達した足によって、首が砕かれる。
鈍い音が鳴った途端、ドゥーエの身体は痙攣した。
しかし、すぐに終わる。
もう二度と、彼女の身体が動くことはない。
奇しくも、その姿は彼女が殺したプレシアと、とてもよく似ていた。
動かなくなったドゥーエの姿を見ても、ガリューは何の感情も抱かない。
自分の役目は、始まった。
返り血をその身体に残しながら、彼はこの部屋を後にする。
次の得物を狩るために。


【ドゥーエ 死亡確認】









全てが終わった部屋の中では、ドゥーエの亡骸が転がっていた。
身体からは血が流れ、鉄の匂いが漂う。
そんな中、モニターの画面が急に切り替わった。
この部屋だけではない。
時の庭園全体に設置された、全てのモニターも。
そして、アルハザードの地下に隠された、会場の機能を司る施設にも。
彼女の姿が映し出されていた。
かつての主催者である、プレシア・テスタロッサの姿が。
映し出された魔女は、静かに語り始めた。

『この画面が映っていると言うことは、私は既にこの世にいないでしょうね。ジェイル・スカリエッティ』

彼女の隣に、新しい画面が映る。
それは、プレシアの用意していた戦力が、動き出す姿だった。
究極召喚、白天王。
巨大甲虫、地雷王。
屍兵、マリアージュ。
プレシアの生み出した、傀儡兵。
そして、ガリューがドゥーエを殺害する光景。

『これは、私からの制裁よ…………裏切った愚かな貴方達へのね』

次に映し出されるのは、兵隊達が暴れ出す姿。
ある者は動きだし、ある者は武器を振るい、ある者は周囲への破壊行動を始めた。
その総数は、三桁を超す。

『哀れな貴方達に教えてあげるわ。どういうトリックなのかを』

プレシアはそう言い放つと、順を追って説明を始めた。
まず、スカリエッティ達が求める自分の研究成果には、ある仕掛けがある。
それら全てに、定期的に魔力を送りつけていたのだ。
そして、これらを持ち出すには、自分の手でロックを解除する必要がある。
その意味は、反逆者が現れた時の備え。

『もしも、強制的に魔力リンクが全て断たれた時、この映像が流れてることになっているわ。恐らく、貴方達は私を殺した…………』

プレシアは画面の向こうで、冷たい笑みを浮かべる。
彼女の隣では、未だに兵隊達が暴れていた。

568地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:06:51 ID:MZGXMrQQ0
『私を出し抜いたことは褒めてあげるわ、素晴らしいじゃない
貴方達みたいな能無しの科学者や人形風情が、少ない知恵を振り絞って頑張ったのだから
でも、やっぱり能無しは能無しね』

一言一言に、侮蔑と嘲笑が込められているのが容易に感じられる。
そのままプレシアは続けた。

『何の考えもなしに、私を殺したのですから…………そして、目的だけを果たそうとするなんて
素敵な根性じゃない。なら、私もそれに答えて素敵なプレゼントを贈ってあげるわ』

そして、画面はもう一度切り替わる。
映し出された場所には、空間に亀裂が生じていた。
そこからあっという間に、次元断裂と変わる。
その向こうには、虚空空間が広がっていた。
やがて一枚のカードが、虚無へと消えていく。
それは『RYU−KI』の世界に存在する時を操るカード、タイムベント。

『このフィールドを囲む結界を生み出すジュエルシード…………それらに刺激を与えて、貴方達もろとも時の楽園とアルハザードを消してあげる
逃げたければ逃げればいいわ。出来たらの話だけれど』

プレシアが語る一方で、兵隊達は破壊行動を続ける。
ごく一部は、虚空空間に落下したが、それに気を止める者はいない。

『でも安心しなさい、私は寛大だからすぐには消してあげないわ。貴方の愛するお人形さん達と一緒に、怯える時間は残してあげる
後悔するなら、好きなだけしなさい。私は別に止めはしないから…………
そしてもう一つ、素敵な映像を見せてあげる』

映像は、再び切り替わる。
新しくそこに映し出されたのは、血の池に沈む少女達の姿。
それは時の庭園にいない、ナンバーズ達だった。

『スカリエッティ、貴方が死んでしまったら残った娘達が可哀想でしょう?
だから貴方がいない間、私がこっそり転送魔法で体内に爆弾を仕掛けてあげたわ。
この映像が流れると当時に爆発する仕組みだから、先にあの世で待つことになるでしょうね
素敵じゃない、あの世で家族仲良く暮らせるなんて』

ナンバーズ実戦リーダー、トーレが。
幻惑の使い手、クアットロが。
刃舞う爆撃手、チンクが。
潜行する密偵、セインが。
破壊する突撃者、ノーヴェが。
狙撃する砲手、ディエチが。
守護する滑空者、ウェンディが。
皆、身体がバラバラとなった状態で映っていた。
これが意味することは、裏切られた事によるプレシアからの復讐。

『貴方のために作ってあげた最後の数時間…………その間に、どんな風に死ぬのか考える事ね』

その一言を最後に、画面からプレシアが消える。
残ったのは、時の庭園が虚無へと飲み込まれていくまでのカウントダウンだった。







呪いの言葉は、ようやく終わりを告げる。
今までプレシアが映っていた画面は、ようやく元に戻った。
しかし、先程とは違う部分が一つある。
それは画面の右端に、終末への時間が書かれていたこと。
モニターの前に、一組の男女が立っている。
女が呆然とした表情を浮かべている一方で、男は笑みを浮かべた。

「ハハハハハハハハッ! まさか彼女が罠を仕掛けていたとは、一杯食わされたよ!」

その男、ジェイル・スカリエッティは心の底から愉快な表情で、笑う。
彼はやることがなくなったので、たまたま次元航行船用のドックへ訪れた。
その途端、プレシアの映像が流れ、全てを知った。
アジトにいるナンバーズが、殺された事による悲しみはない。
プレシアが罠を仕掛けていた事に対する、驚愕はない。
スカリエッティの心に沸き上がっているのは、歓喜。
彼の表情からは、一片の正気が感じられない。

569地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:07:44 ID:MZGXMrQQ0

「ゲームマスターのつもりだったが、知らない間にプレイヤーにされていたとは! やってくれるじゃないか、プレシア・テスタロッサ!」

主催者の跡を継ぐつもりでいた。
だが、それはただの勘違い。
本当はドゥーエがプレシアを殺したときから、既に一人のプレイヤーに格下げされていたのだ。
参加者だけでなく、時の庭園もろとも虚空に巻き込み、全てのターゲットを破壊する狂気の装置。
バーサークシステムと、呼ぶべきだろうか。
何処からか爆音が響く中、スカリエッティはそんなことを考える。
その一方で、別のモニター画面を眺めるウーノは、狼狽した顔でキーボードを叩いていた。
時の庭園には、多くの兵が暴走しており、武器を振るっている。
それらはすぐに動力炉にも進行し、セッテ、オットー、ディードの三名が、その対応に追われていた。

「ドクター! 時の楽園各所に、プレシアの用意した兵が次々と…………はっ!」

次の瞬間、強大な魔力反応を関知する。
ウーノは画面を切り替えた。
見ると、時の庭園の巨大ホールに、唐突に巨大な転送魔法陣が出現。
その中央から、山のように大きな怪物が次々と姿を現した。
参加者の一人に、八神はやてがいる。
彼女がいた『FINAL WARS』の世界から、プレシアが強制的に捕まえた怪獣。
長く伸びた三つの首、龍を思わせる頭部、全身に輝く黄金の鱗、背中から広々と伸びた巨大な翼、太い両足から揺らめく二本の尻尾。
最大の特徴は、百メートルを超えるその巨体だった。

『『『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』』』

全ての頭部が、同時に咆吼する。
現れたキングギドラの後ろを付いていくように、他の怪獣が次々と現れた。
ラドン、アンギラス、マンダ、クモンガ。
五体の怪獣軍団は、時の庭園を揺らしながら進撃を開始した。
これら全て、スカリエッティ達に存在を知らせず、プレシアが隠し持っていた兵器。
ウーノは、静かに息を呑んだ。

「いいだろう、プレシア・テスタロッサ! 私もプレイヤーの一人として、君のデスゲームに付き合ってあげよう! 娘達の弔い合戦といこうじゃないか!」

スカリエッティは、両腕を広げながら高らかと宣言する。
そのままウーノに振り向いた。

「ウーノ、君はそのまま作業に集中したまえ。私はアレを導入する」
「ヴォルテールと、ガジェットドローンですか」
「それだけじゃない。最近手に入れた『アレ』もだよ」

直後、彼女の背筋が凍る。
創造主は、狂喜に満ちた笑みを浮かべながら、言葉を続けた。

「あの世界では『生体ロストロギア』と分類された怪獣王。封印されている結界の技術を複製し、興味があってプレシアの技術で手に入れたが…………まさか、こんな所でその力を拝めるとは」
「待ってください、ドクター! 『アレ』の調整はまだ終わっておらず、完全に制御できるかわかりません! それに危険度が強すぎます、一歩間違えれば私たちにも牙を――!」
「いいじゃないか! 目には目を、歯には歯を、怪獣には怪獣王を! もしも暴走して我々が滅ぶとしても、大人しくその運命を受け入れようじゃないか!」

ウーノの反論は、あっさりと遮られる。
冷静で理知的な彼女を、ここまで狼狽えさせる兵器。
それはキングギドラを筆頭とした怪獣達の、頂点に立つ王。
『FINAL WARS』の世界を、滅亡寸前にまで追い込んだ、生体ロストロギア。
そんな危険な兵器を、創造主は導入しようとしている。
長年サポートをした彼女ですらも、その決断には恐怖を覚えていた。

「それに、この時の庭園はまもなく消える。『アレ』が面倒になれば、一緒に虚空へと放り込めばいいじゃないか!」

しかし、それとは対照的にスカリエッティの胸にあるのは、純粋な好奇心。
これから使おうとしている兵器が、いったいどれほどの力を持つのか。
聞いた話によれば、闇の書や聖王のゆりかごとロストロギアが、まるで子供だましと呼べるらしい。
科学者として、その力を見たいと思うのは当然だ。
プレシアのバーサークシステムを使うなら、こちらもバーサークシステムで対抗するのが礼儀だろう。
スカリエッティは起動させるため、画面の前に立った。

「さあ、我々にその力を見せてくれ! 怪獣王、ゴジラよ!」

彼は、キーボードを叩く。
その直後、キングギドラ達の前に一匹の怪獣が姿を現したのが、モニターに映った。
怪獣王、ゴジラ。
比類無き力を持つ無敵の存在が、時の庭園で咆吼した。



この時、彼らは気づかない。
既に時の庭園へ進入した参加者が、数人いることを。
監視役をしていたドゥーエが死んだのだから、当然かもしれない。
それが如何なる結果を迎えるか、まだ誰にも分からなかった。

570地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:09:14 ID:MZGXMrQQ0







リインフォースは、時の庭園の動力室まで、ようやく辿り着く。
しかし、彼女は物陰に隠れていた。
理由は一つ、目的地には戦闘が繰り広げられているため。
スカリエッティの配下である戦闘機人三体が、突然現れた傀儡兵やマリアージュの軍団と戦っている。
恐らく数は三桁に届くかもしれない。
そんな中、別行動を取っているアルフからの念話が届いた。

(リインフォース、聞いたか! 今の話を)
(ああ、プレシアは殺されたようだ。私は目的地まで着いたが、敵で大勢いて迂闊に近づけない)
(こっちもだよ! いきなり変な奴らが通路を埋め尽くして、辺りを破壊してる!)
(それだけじゃないぞ。この時の庭園には、時間と共に次元断裂が広がっていくようだ…………)

リインフォースは、目の前の光景を苦い視線で見つめる。
もしこのまま、潰し合うのならそれはそれで有り難い。
だが、そんな時間を待っている余裕など、残されてなかった。
先程発信されたプレシアの放送が終わった直後、彼方此方から爆音が聞こえる。
そして、不気味な獣の叫び声も。

(使い魔アルフ、とにかく無闇に突撃するな。もう何が起こっても可笑しくはない)
(わかってるよ! そんなこと)
(私は何とか隙を伺う、お前も気を付けろ)
(ああ、それじゃあな!)

そのやり取りを最後に、念話が終わる。
轟音が響く中、彼女は歯軋りをした。
まさかプレシアが、このような罠を残していたなんて。
だが、今更そんなことを言っても仕方がない。
何が起きても可笑しくないのは、とうに分かり切ったことだ。

「さて、どうするか…………」

不意に、リインフォースは呟く。







映し出された映像が、元の物に戻った。
三人は皆、言葉がない。
プレシアの告げた、真実。
殺されていた、少女達。
ジェイル・スカリエッティと呼ばれた名前。
そして、動き始めた地上壊滅へのカウントダウン。
カブトも、コーカサスビートルアンデッドも、アンジールも何も言えなかった。

「馬鹿な…………!」

そんな中、ようやく沈黙が破られる。
プレシアの映像を見て、カブトは自分の推測が真実だと確信した。
放送の時間が遅れたのは、主催側で異変が起きたため。
そしてそれを起こしたのは、スカリエッティと呼ばれた一味。
恐らく首輪が爆発しないのも、この時に何かが起こったからだろう。
だが、そんなことはもうどうでもいい。

(まさか、俺達の知らない間にこんなことになっていたとは)

プレシアの言葉が正しければ、このままでは参加者全員が虚空空間とやらへと、飲み込まれてしまう。
そうなっては、全てはおしまいだ。
まずは仲間達と合流し、この事を話さなければならない。

571地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:11:50 ID:MZGXMrQQ0

「セッテ……オットー……ディードッ!」

そんな中、アンジールが叫ぶ。
妹達が無惨な屍とあって映し出されたとき、彼は言葉で表せないほどの衝撃を受けた。
目の前でクアットロが殺された時以上の。
しかし、悲しみに溺れている暇はない。
次に映し出された、セッテとオットーとディードが、凄まじい数の敵に襲われている光景。
それを見た途端、アンジールの体は動いていた。
その行き先は、この空間の中で光を放つ転送魔法陣。
彼の中では、カブトとの決着や、コーカサスビートルアンデッドを殺すなど、完全に消え去っていた。
アンジールの脳裏を支配するのは、妹達を助けること。
たった一つだけ。
転送魔法陣に飛び込んだ瞬間、アンジールの身体は光に包まれる。
すると彼の姿は、一瞬で消えていった。

「やっぱり、あれって転送魔法陣だったんだ」

コーカサスビートルアンデッドは、軽い呟きを漏らす。
それを聞いたカブトは、振り向いた。

「転送魔法陣だと?」
「良いこと教えてあげる。あれの上に乗るとね、自分の思った場所にワープできるんだ。僕もこれを使って、君に会えたんだし」

初めに八神はやてと出会ったときに知った、転送魔法陣。
コーカサスビートルアンデッドはそれを見つけて、天道を見つけた。
ここにもあると言うことは、恐らく時の庭園という場所に繋がってるかもしれない。
プレシアの言葉によれば、ここはもうすぐ消滅するらしい。
それに、物凄い化け物が大勢いた。
商店街で暴れていたミラーモンスターが、まるでちっぽけに見えるほどの。

「君との勝負はここまでだね、僕もあれを使って一足先に脱出させて貰うよ。もうここにいても面白くなさそうだし」
「逃がすと思ったのか」
「僕に構ってる暇があるのかな? 君の仲間にこの事を早く伝えないと、大変なことになるよ」

楽しそうに笑いながら、コーカサスビートルアンデッドは告げる。
カブトは気づいた。
今の放送が、散り散りになった仲間達にも届いているとは限らない。
そして何より、首輪のこともある。
仮に地上に届いているにしても、これに関しては何も語られなかった。
まず優先するのは、離れた仲間達との合流。

「まあ、僕と戦いたいなら好きにすれば? いつでも殺してあげるから! じゃあね!」

コーカサスビートルアンデッドは右腕をカブトに向ける。
そして、エネルギー弾を放った。
カブトは横に飛んで、それを回避する。
彼の背後に着弾し、爆音と共に周囲が煙で覆われた。
すぐに視界は晴れるが、既にコーカサスビートルアンデッドの姿はない。
敵を逃がしてしまった事で、カブトは己に苛立ちを感じた。

「…………いや、まずは合流が先だ」

コーカサスビートルアンデッドとアンジールより、まずは仲間達との合流。
彼は上空に空いた大穴を、見上げた。
パーフェクトゼクターを握り締め、両足に力を込める。
そして、カブトは跳躍した。
三十七メートルの高さすらもあっという間に届くジャンプ力で、彼は地上に戻る。
離れ離れになった仲間達との再会を目指し、カブトは走った。

572地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:13:11 ID:MZGXMrQQ0





【2日目 黎明】
【現在地 D-9 荒れ地】


【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(中)、カブトに変身中
【装備】ライダーベルト(カブト)&カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.まずは仲間達と再会し、今の状況を話す。
 2.アンジールとキングを倒す。
【備考】
※首輪を外したので、全ての制限から解放されました。
※ハイパーフォームになれないので、通常形態でパーフェクトゼクターの必殺技を使うと反動が来ます。









誰もいなくなった、地下の施設。
その中に、新たに一人の男が進入する。
全員が消えた隙を付いて、戦いの衝撃で空いた穴からここに入った。
その男、金居の表情は若干の焦りが見られる。

「チッ、とんでもない事になったな」

繰り広げられていた戦いを見て、彼は己の不運を呪った。
物事が自分の都合の良いように動いていると思ったら、むしろ逆。
戦いの最中で、何故かキングの首輪が壊れたのだ。
それだけでなく、この施設から発せられたプレシアの声。
これが真実だとするなら、あの女はスカリエッティという輩に、殺されたことになる。
別にそれ自体は大きな問題ではない。
当初の予定からは外れるが、殺す手間が省けただけのこと。
だが、もうそんなことはどうでもいい。
金居は、モニターに目を移す。
そこには赤い字で、この世界が消えるまでのタイムリミットが書かれていた。

「残された時間は三時間を切ったか…………」

苛立ちを覚えながら、金居は呟く。
キング達が落下してから、放置された荷物で必要な物だけを拾い、首輪を壊した。
その際に、荷物の整理を行って、必要のない物は放置する。
今の状況で荷物が多くあっても、邪魔なだけ。
まず最優先に行うのは、脱出通路の確保。
キングやスカリエッティ達は、余裕があった場合に始末する。
画像では、多くの化け物達が暴れている光景が見えた。

(まあ、キング達はあの怪物に任せておけばいいか)

自分の邪魔となる者達は、出来る限りプレシアが呼んだ兵に任せる。
もしも前に立ちはだかる場合、戦えばいい。
金居は行動方針を決めると、転送魔法陣に足を踏み入れた。







淡い光が視界を包み、身体が浮かぶのを感じる。
しかし、すぐに両足に地面が着いた。
金居は目を開ける。
そこは当然のように、自分の知らない場所だった。
周りを見渡すと、見覚えのない巨大な乗り物を多数見つける。
まるで、人間の作り出した飛行機のようだった。

573地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:16:29 ID:MZGXMrQQ0

(もしかしたら、当たりか?)

金居はその可能性に辿り着く。
会場にあった転送魔法陣も、自分の望んだ場所にワープできると書かれていた。
ということは、たった今使った物も同じ効果かもしれない。
しかし、金居は安堵をしなかった。
もしこれらの機械が脱出の手がかりだとしても、動かし方が分からなければどうしようもない。

(さて、どうするか…………)
「ウーノ、先程言ったように君はここで作業をしたまえ。私は上に戻って娘達に指示をしてこよう」

眼鏡を押し上げながら、金居は考える。
直後、何処からか聞き覚えのない声が聞こえた。
それに気づいた彼は、物陰からそちらに目を向ける。
視線の先には、一組の男女が立っていたのだ。
金居は知らないが、その男こそがジェイル・スカリエッティと呼ばれた、プレシアを殺した張本人。
スカリエッティはすぐ側にある階段に登り、この場所から消える。
残されたウーノと呼ばれた女性は頷くと、画面の前に立ってパネルを叩いた。

(まさか、あの男がプレシアの言っていたジェイル・スカリエッティとやらか?)

不意に、その考えを思い立つ。
これが正しければ、ウーノとやらは奴の娘。
プレシアは奴らのことを『能無しの科学者や人形風情』と言っていた。
その言葉が真実なら、奴らは脱出の手がかりを持っている。

(何にせよ、どうするかな…………)

制限が解放されたアンデッドは、考えた。
金居の瞳は、脱出艇の調整を続けるウーノの姿を、映し続けている。


【2日目 黎明】
【現在地 エリア外 時の庭園 次元航行船用 ドック】


【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)及びスカリエッティ一味への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜
【道具】支給品一式、、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、Lとザフィーラとエネルとギルモンと天道とアンジールのデイパック(道具①②③④⑤⑥)
【道具①】支給品一式
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【道具④】RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具⑤】『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具⑥】ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ボーナス支給品(未確認)
【思考】
 基本:この世界から脱出する。
 1.あの女(ウーノ)は…………?
 2.脱出の手段を確保する。
 3.キング及びスカリエッティ一味は、プレシアの戦力と潰し合わせる。
 4.出来る限り戦わない。邪魔者が現れた場合、自らの手で始末する。
 5.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※首輪を外したので、全ての制限から解放されました。









「へぇ、早速凄いお出迎えをしてくれるじゃないか!」

転送魔法陣を使ったコーカサスビートルアンデッドの前に現れたのは、傀儡兵と屍兵マリアージュの軍団だった。
その数は五十体を超えている。
冷たい瞳からは、殺意が感じられた。
されど、コーカサスビートルアンデッドには、子供騙しにしか感じない。
やがて傀儡兵達は、多種多様の武器を振りかぶりながら、飛びかかる。
しかしその一撃が届くことはなかった。
ある攻撃は、神速の勢いで振るわれたオーバーオールで弾かれる。
ある攻撃は、突然現れたソリッドシールドに防がれる。
ある攻撃は、コーカサスビートルアンデッドの念力で強制的に起動を反らされた。
続くようにマリアージュ達もまた、武器を振るう。
だが、結果は同じ。
どれか一つたりとも、コーカサスビートルアンデッドに届くことはなかった。

「弱っ! マジで弱っ! 君達なんかで、僕が倒せるわけないじゃん!」

574地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:17:03 ID:MZGXMrQQ0
侮蔑の言葉と共に、オーバーオールを振るう。
その一撃は、傀儡兵とマリアージュの身体を同時に貫いた。
まるでゴミを捨てるかのように、勢いよく引き抜く。
迫り来る数々の一撃をソリッドシールドで防ぎながら、武器を振るった。
それは力に任せた攻撃だが、一発たりとも外していない。
カテゴリーキングの実力なら、当然だった。
制限を解除されたコーカサスビートルアンデッドの進行を、止めることは出来ない。
オーバーオールの刃を浴びた異形は、呆気なくその身体を粉砕された。
やがて、コーカサスビートルアンデッドの周りを囲んでいた者の数は、既に一桁にまで減っている。
その直後、ガリューの名を持つ新たな異形が姿を現した。

「もしかして、君ってガリューって奴? 何、僕と戦う気?」

問いに答えずに、構えを取る。
そして、ガリューは勢いよく飛びかかった。
その反応を見たコーカサスビートルアンデッドは、呆れたように溜息を吐く。

「やれやれ」

ガリューが両腕に備え付けた刃を振るった瞬間、金属音が鳴り響いた。
原因は、突然出現したソリッドシールドと激突したことによって。
次の瞬間、ガリューの腹部は鋭い刃に貫かれていた。
コーカサスビートルアンデッドが握る、オーバーオールに。
それによって、ガリューの体勢は揺らぐと、刃が引き抜かれる。
そしてコーカサスビートルアンデッドは、勢いよくオーバーオールを振り下ろした。
この一撃を彼は避けることが出来ず、肉体を切り裂かれる。
そのままガリューは背中から倒れ、二度と動くことはなくなった。
コーカサスビートルアンデッドはそれに目を向けずに、残った敵に振り向く。
感情を持たない兵隊達は、一斉に飛びかかった。
だが、そんな行動をしても意味はない。
その手に握る剣を、コーカサスビートルアンデッドは勢いよく横に振るった。
最後の傀儡兵を一瞬で葬って、進行を再開する。

「さて、何をしようかな」

兵隊達の残骸が積み重なる道で、コーカサスビートルアンデッドは呟いた。
好奇心に駆られて、彼はここの進入を決意する。
たくさんあった道具は全部置いてきたが、もう必要ない。
ここを探せば、何かあるかもしれないからだ。
もしも、何もないなら脱出の方法を探せばいい。
こういう場所なら、帰る手段もあるだろう。
そして何より、そろそろここにいるのも飽きてきた。
カブト達を待ったり、アンジールを探すのも良いかもしれないが、そこまで胸は踊らない。

「…………まぁ、精々楽しもうかな」

鼻歌を歌いながら、コーカサスビートルアンデッドは呟く。
彼の行く先には、何があるか。




【2日目 黎明】
【現在地 エリア外 時の庭園】


【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(小)、全身にダメージ(小)、今の状況に対する多大な期待、コーカサスビートルアンデッドに変身中
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:この騒動を楽しむ。
 1.何か面白い物がないか探す
 2.面白い物が何もなかったら、脱出する。
 3.『魔人ゼロ』を演じてみる(そろそろ飽きてきた)。
 4.カブト達やアンジールが自分の前に現れたなら、再び戦う。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※首輪が外れたので、全ての制限から解放されました。







575地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:17:48 ID:MZGXMrQQ0



時の庭園の最深部に存在する、動力炉。
その場所で今、一つの戦いが繰り広げられていた。
スカリエッティによって生み出された戦闘機人、セッテ、オットー、ディード。
彼女たちもまた、プレシアの遺産である兵隊達と戦っていた。
放送が終わった直後、突然目の前に現れた傀儡兵とマリアージュの軍団に、三人は襲撃を受ける。
初めの内は対抗できていたが、物量の差は歴然。
瞬時に、ナンバーズ達は窮地に陥った。

「くっ…………!」

そんな中、セッテは膝を付ける。
オットーとディードにも言えるが、限界が近づいている。
こちらがいくら対抗しても、相手の勢いは止まる気配が見られなかった。
ここは、時の庭園の心臓部。
だからこそ、戦力を集中させたのかもしれない。
しかしだからといって、撤退は不可能。
ドクターが命じたのだから、ここは守らなければならない。

「はっ!」

しかし、そんなセッテの決意を嘲笑うかのように、敵は一斉に襲いかかる。
彼女も得物で防ごうとするが、既に疲弊した状態。
その状態では、間に合うわけがなかった。

「――――ファイガッ!」

直後、聞き覚えのない声が響く。
そして、自分達に襲いかかろうとした敵が、一瞬で火だるまとなった。
次の瞬間、敵の間を縫うように、一筋の影が駆け抜けるのが見える。
それによって、傀儡兵とマリアージュは、次々と吹き飛ばされていった。
唐突な出来事に驚愕しながら、ナンバーズ達は現れた存在に目を向ける。
そこには、背中から白い片翼を生やした屈強な戦士が立っていた。

「大丈夫か、お前達」

現れた男、アンジール・ヒューレーは安堵の笑みを浮かべる。
彼は転送魔法陣に突入した後、ひたすらに念じた。
『妹達が捕らわれている場所に、急がねばならない』と。
その結果、彼はここまで訪れることに成功する。
アンジールの姿を見て、初めに口を開いたのはオットーからだった。

「貴方は…………何故、こんな所に」
「説明している暇はない」

疑問を遮ると、敵の軍団に振り向く。
見ると、その後ろからは見覚えのある巨大な虫が姿を現していた。
スカリエッティの協力者である少女、ルーテシアが使役していた召喚虫。
地雷王と呼ばれる、四匹の巨大な虫が。

(まさか奴は、プレシアの手先となっているのか)

ナンバーズ達が連れてこられたのなら、召喚虫も捕らわれた可能性がある。
その結果、プレシアが妹達を攻撃するように仕掛けを施した。
仲間と戦うのに心苦しい所はあるが、妹達を殺そうとするなら話は別。
アンジールは、リベリオンの刃先を敵に向けた。

(お前達、すまない…………また、俺は助けられなかった)

彼の中で、罪悪感が更に強くなる。
その原因は、プレシアの流した映像。
共に暮らした妹達を、見殺しにしてしまった。
自責の念に、アンジールは押し潰されそうになる。
しかし、悲しみに溺れてはいられなかった。
自分の後ろには、残された妹達がいる。
やるべき事は、彼女たちを守ることだ。

576地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:19:23 ID:MZGXMrQQ0

「来い、俺が相手になってやる」

アンジールは力強い視線を向けながら、口を開く。
彼は知らない。
その後ろにいる妹達が、自分の知る妹達とは違う世界に住んでいることを。
彼はまだ知らない。
その事実が、一体どのような結果を導き出すのか。
まだ誰にも分からなかった。




【2日目 黎明】
【現在地 エリア外 時の庭園】



【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(中)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングへの疑念、妹達が生きていた事による微かな安堵
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】なし
【思考】
 基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
 1.セッテ、オットー、ディードの三人を守る。
 2.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。
※首輪を外したので、全ての制限から解放されました。



【全体備考】
※フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS が、C−9地点に向かっています。
※戦いの衝撃によって、D−9地点に巨大な穴が空きました。
※その中には会場の設備を司る施設があり、時の庭園に繋がる転送魔法陣が存在します。
※その仕組みは会場に設置された魔法陣とほぼ同じです。
※以下の物が、金居が役に立たないと判断し、D−9地点の巨大な穴付近に放置されています。
・マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS
・トランプ@なの魂
・ラウズカード(ハートの1、3〜10、J、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
・首輪(アグモン、シグナム、アーカード)
・いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
・ギルモンとアグモンと天道とクロノとアンジールのデイパック(中身なし)
・菓子セット@L change the world after story
・首輪の考察に関するメモ
・レリック(刻印ナンバーⅥ、偽装解除済み)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
・首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル
・ガムテープ@オリジナル
・顔写真一覧表@オリジナル


【時の庭園について】
※プレシアの罠によって、ジュエルシードが暴走を開始しました。
※その影響により、各所に次元断裂が生じています。
※時間の経過と共に、その場所は広くなります。(どの程度かは、後続の書き手さんにお任せします)
※虚空空間に落ちたら、二度と脱出が出来ません。
※ドゥーエが死んだ為、セッテ、オットー、ディードを除くスカリエッティ一味は侵入者の存在を知りません。
※時の楽園での戦力表。
【スカリエッティ一味の戦力】
・ヴォルテール、ガジェットドローン各種
・ゴジラ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【プレシアの残した戦力】
・白天王、地雷王、マリアージュ、傀儡兵。
・ラドン、アンギラス、マンダ、クモンガ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
※ガジェットドローン、マリアージュ、傀儡兵の数は後続の書き手さんにお任せします。







577地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:21:01 ID:MZGXMrQQ0
状態表訂正

【2日目 黎明】
【現在地 エリア外 時の庭園最深部 動力炉】



【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(中)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングへの疑念、妹達が生きていた事による微かな安堵
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】なし
【思考】
 基本:今は妹達を守る。
 1.セッテ、オットー、ディードの三人を守る。
 2.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。
※首輪を外したので、全ての制限から解放されました。

578地上壊滅の序曲 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:22:20 ID:MZGXMrQQ0



プレシアの罠が、ようやく牙を剥いた。
彼女の残した負の遺産、バーサークシステム。
それにより、第二楽章の行く先は全く見えなくなった。
スカリエッティ一味が時の庭園から脱出するか。
全てが虚空の彼方へと飲み込まれるか。
そのどちらでもない結末を迎えるか。
誰にも分からない。
天の道を往き、全てを司る仮面ライダーは、仲間達の元へ急ぎ。
スペードスートのカテゴリーキングは、己の欲求のまま動き。
ダイヤスートのカテゴリーキングは、脱出の手段を探り。
ソルジャークラス・1Stは、妹達を守るために戦う。
新たなる行動を開始した四人によって、この戦いに何をもたらすか。
誰にも分からない。
地上壊滅の序曲は、こうして始まった。
破滅のタイムリミットは、誰に求めることは出来ない。
終末への時間は、刻一刻と迫っていた。




【バトルロワイアル終了、時の楽園及びアルハザード消滅まで――――――02:50:00】

579 ◆LuuKRM2PEg:2010/11/21(日) 01:24:30 ID:MZGXMrQQ0
これにて、投下終了です
タイトルの元ネタはウルトラマンマックス第38話のサブタイトル「地上壊滅の序曲」からです。
矛盾点・修正点・疑問点がありましたら、ご指摘をお願いします

580リリカル名無しStrikerS:2010/11/21(日) 17:39:18 ID:lIBjW6EkO
投下乙です
感想よりも先に指摘になってしまいますが、今回の話は少しやり過ぎではないでしょうか
まず度重なる攻撃で地盤が割れ、会場の地下が時の庭園に繋がっていたという描写に関して指摘させて頂きますが、
いくら制限を解除されたからと言って、たった三人の戦いで足場が破壊されるとは思えないのですが
会場にはヘルシング本部地下や海といった底の深い施設が多数あります
それを考えると、数十〜百メートルはあるであろう大地を戦いの余波だけで破壊するのは不可能かと
また、会場はアルハザードという設定が存在する以上、会場が時の庭園内部に存在しているというのも少し無理があるのではないかと思いました

そしてこれは設定云々に関わらない話ですが、今回の描写は書き手間の話し合いによるものでしょうか?
もしそうなのであれば何も言う事はありませんが、そうでないならやはり独断先行のし過ぎではないかと
今回の話は、終盤だから仕方ないとはいえ余りにもロワ外部の話に比重を置き過ぎているように感じたので
正直な感想を告げると、この話を書くにしても、これだけ外部のキャラを動かす以上、一度仮投下スレに投下し、住人の意見を聞いてからでも遅くはなかったのではないかと思います




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