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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
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当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。
注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。
企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。
・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/
詳しいルールなどは>>2-5
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【基本ルール】
・参加者全員で殺し合いをして、最後まで生き残った者のみが元の世界に帰れる。
・参加者の所持品は基本的に全て没収され、その一部は支給品として流用される。
・ただし義肢などの身体と一体化した武器や装置、小さな雑貨品は免除される。
・主催者に敵対行動を取ると殺されるが、参加者同士のやりとりは反則にならない。
・参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバーとなる。
・バトロワ開始時、全参加者はマップ各地に転送される。
・マップとなるのは「各クロス作品の建造物が配置されたアルハザード」という設定。
・バトルロワイアルの主催者はプレシア・テスタロッサ。
・バトロワの主催目的は未定です。それはバトロワの今後の発展次第で決定されます。
【支給品】
・参加者はバトロワ開始時、以下の物品を支給される。
・デイパック(小さなリュック。どんな質量も収納して持ち運べる素敵な機能有り)
・地図(アルハザードの地形が9×9マスで区分されて描かれている)
・名簿(参加者の名前のみが掲載されたファイル)
・水と食料(1日3食で3日分、都合9人分の水と食品が入っている)
・時計(ごく普通のアナログ時計。現在時刻を把握出来る)
・ランタン(暗闇を照らし、視界を確保出来る)
・筆記用具(ごく普通の鉛筆とノート)
・コンパス(ごく普通の方位磁石。東西南北を把握出来る)
・ランダム支給品1〜3個(現実・原作・クロス作品に登場する物品限定。参加者の能力を均一化出来る選択が必要)
・尚「地図」〜「ランダム支給品」はデイバックに収められている。
【支給品の制限】
・以下の支給品には特別な制限がかかります。詳しい内容は【制限一覧】のページを参照してください。
1.デバイス系
2.ライダーベルト系
3.火竜@FLAME OF SHADOW STS
4.巫器(アバター)@.hack//Lightning
5.カード系の支給品(遊戯王、アドベントカード@仮面ライダー龍騎、ラウズカード@仮面ライダー剣)
6.意思持ち支給品(自律行動あり)
・制限が必要そうだが制限が決定していない物品を登場させたい場合は、事前の申請・議論が必要。
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【時間】
・深夜:0〜2時
・黎明:2〜4時
・早朝:4〜6時
・朝:6〜8時
・午前:8〜10時
・昼:10〜12時
・日中:12〜14時
・午後:14〜16時
・夕方:16〜18時
・夜:18〜20時
・夜中:20〜22時
・真夜中:22〜24時
【放送】
・以下の時間に「死亡者」「残り人数」「侵入禁止エリア」を生き残りの参加者に伝える。
・深夜になった直後(00:00)
・朝になった直後(06:00)
・日中になった直後(12:00)
・夜になった直後(18:00)
【地図】
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/pages/126.html
【禁止区域】
・侵入し続けると1分後に首輪が爆発するエリア。「放送」の度に3エリアずつ(放送から1時間後、3時間後、5時間後に一つずつ)増える。
・侵入禁止はバトロワ終了まで解除されない。
【首輪】
・参加者全員の首(もしくは絶対に致死する部位)に装着された鉄製の輪の事です。
・これにより参加者各人の「生死の判断」「位置の把握」「盗聴」「爆破」が行われ、「爆破」以外は常に作動しています。
「爆破」が発動する要因は以下の4通りです。
・主催者が起動させた場合
・無理に首輪を外そうとした場合
・主催者へ一定以上の敵対行動を取った場合
・禁止区域に一定時間滞在していた場合(尚、警告メッセージが入る)
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【書き手のルール】
・バトロワ作品を作る上で、書き手に求められる規則。
・トリップをつける
・本スレでも連載中の書き手は、あくまでもこちらが副次的なものである事を念頭において執筆しましょう
・残虐描写、性描写は基本的に作者の裁量に任されます。ただし後者を詳細に書く事は厳禁
・リレー小説という特性上、関係者全員で協力する事を心掛けましょう
・キャラやアイテムの設定において解らない所があったら、積極的に調べ、質問しましょう
・完結に向けて諦めない
・無理をして身体を壊さない
【予約について】
・他の書き手とのかぶりを防止する為、使用したいキャラを前もって申請する行為。
・希望者は自身のトリップと共に、予約専用スレで明言する事。
・予約期間は1週間(168時間)。それ以内に作品が投下されなかった場合、予約は解除される。
・ただし諸事情により延長を希望する場合は、予約スレにて申請すれば3日間の延長が可能である。
・自己リレー(同一の書き手が連続して同じキャラを予約する事)は2週間全く予約がなかった場合に限り許可する。ただし放送を挟む場合は1週間とする。
・書き手は前作の投下から24時間経過で新しい予約が可能になる。ただし修正版を投下した場合は修正版を投下終了してから24時間後とする。
・作品に登場したキャラはその作品が投下終了してから24時間後に予約可能になる。ただし修正版が投下された場合は修正版を投下終了してから24時間後とする。
【状態表のテンプレ】
・バトロワ作品に登場したキャラの、作品終了時点での状況を明白に記す箇条書きです
【○日目 現時刻(上記の時間参照)】
【現在地 ○ー○(このキャラがいるエリア名) ○○(このキャラがいる場所の詳細)】
【○○○○(キャラ名)@○○○○(参加作品名)】
【状態】○○(このキャラの体調、精神状態などを書いて下さい)
【装備】○○○○(このキャラが現在身に付けているアイテムを書いて下さい)
【道具】○○○(このキャラが現在所持しているアイテムを書いて下さい)
【思考】
基本 ○○○(このキャラが現在、大前提としている目的を書いて下さい)
1.○○(このキャラが考えている事を、優先順で書いて下さい)
2.○○
3.○○
【備考】
○○○(このキャラが把握していない事実や状況など、上記に分類出来ない特記事項を書いて下さい)
・以下は、バトロワ作品の参加キャラ数人以上が、特定の目的を果たすべく徒党を組んだ際に書くテンプレです
【チーム:○○○○○(この集団の名前を書いてください)】
【共通思考】
基本 ○○○(この集団が共有している最大の目的を書いてください)
1.○○(この集団に共有している思考を、優先順で書いてください)
2.○○
3.○○
【備考】
○○○(この集団が把握していない事実や状況など、上記に分類出来ない特記事項を書いてください)
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【参加者名簿】
【主催者】
○プレシア・テスタロッサ
【魔法少女リリカルなのはStrikerS】4/10
○高町なのは(StS) ●シャマル ●ザフィーラ ○スバル・ナカジマ ●キャロ・ル・ルシエ ●ルーテシア・アルピーノ ○ヴィヴィオ ○クアットロ ●チンク ●ディエチ
【魔法少女リリカルなのはA's】1/4
●高町なのは(A's) ●フェイト・T・ハラオウン(A's) ●シグナム ○ヴィータ
【リリカル遊戯王GX】0/5
●ティアナ・ランスター ●遊城十代 ●早乙女レイ ●万丈目準 ●天上院明日香
【NANOSING】1/4
○アーカード ●アレクサンド・アンデルセン ●インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング ●シェルビー・M・ペンウッド
【コードギアス 反目のスバル】0/4
●ルルーシュ・ランペルージ ●C.C. ●カレン・シュタットフェルト ●シャーリー・フェネット
【魔法少女リリカルなのは マスカレード】4/4
○天道総司 ○相川始 ○キング ○金居
【仮面ライダーリリカル龍騎】0/3
●八神はやて(A's) ●浅倉威 ●神崎優衣
【デジモン・ザ・リリカルS&F】0/3
●エリオ・モンディアル ●アグモン ●ギルモン
【リリカルTRIGUNA's】1/3
●クロノ・ハラオウン ○ヴァッシュ・ザ・スタンピード ●ミリオンズ・ナイブズ
【なの☆すた nanoha☆stars】2/3
○泉こなた ○柊かがみ ●柊つかさ
【なのは×終わクロ】0/2
●新庄・運切 ●ブレンヒルト・シルト
【リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】1/2
●セフィロス ○アンジール・ヒューレー
【魔法妖怪リリカル殺生丸】0/2
●ギンガ・ナカジマ ●殺生丸
【L change the world after story】1/2
○ユーノ・スクライア ●L
【ARMSクロス『シルバー』】1/2
○アレックス ●キース・レッド
【仮面ライダーカブト】0/2
●フェイト・T・ハラオウン(StS) ●矢車想
【ゲッターロボ昴】0/1
●武蔵坊弁慶
【魔法少女リリカルなのは 闇の王女】0/1
●ゼスト・グランガイツ
【小話メドレー】1/1
○エネル
【ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】1/1
○ヒビノ・ミライ
【魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】1/1
○八神はやて(StS)
現在:19/60
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立て直したほうがいいという意見が多かったので立てました
では投下します
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創造の後には破壊があり、破壊の後には創造がある。
つまり創造は破壊から生まれるのだ。
だから一面瓦礫の山と化したこのE-5のエリアから新たな芽が息吹くのは当然の流れかもしれない。
そう静かで暗い芽が――。
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俺は負けたのか?
今まで『欠陥品』や『初期不良品』と歯牙にもかけてこなかった奴に。
同じ遺伝子プールから生まれた存在ではあるが、唯一アリスの意思を宿していない奴に。
俺は負けたのか?
いや、正確には『負けていた』が正しいか。
本来なら身体を刃で地面に刺し貫かれた時点で俺は死んでいる。
あの時レッドが“グリフォン”を発動させれば超振動でARMSの心臓たるコアは破壊されていたのかもしれない。
だがそうはならなかった。
おそらく制限によって“グリフォン”の威力がコアまで届かない可能性を危惧したんだろう。
だからこそ確実に止めが刺せるように左手に持ったベガルタを捨てて、己の刃を振り翳したのだ。
あるいは自らの手で直接最期となる感触を得たかったのかもしれない。
もう死んでしまった今となっては確かめる術はないが。
確かにあの時のキース・レッドの判断に誤りはなかった。
だがそれはこの特殊な場所だからであって、ここ以外なら死んでいたのは俺の方だ。
今も俺が生きているのは単に運が良かっただけ。
だがそんな考えは慰めでしかない。
俺はあいつに負けたんだ。
そして次はもうありえない。
あいつは俺が殺したのだから。
そうだ。
勝負に負けた俺が勝負に勝ったあいつを殺したんだ。
その事実はもうどんな事をしても拭い去る事はできない。
ああ、それにしてもここは静かだ……。
▼ ▼ ▼
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瓦礫の山。
八神はやては目が覚めるとそこにいた。
不思議な事になぜ自分がここにいるのか記憶がない。
自分がどこにいるのか把握しようにも辺り一面360°全て瓦礫ばかり。
これでは自分がどこにいるのか分かるはずがない。
しかしそんな状況に置かれているのになんとなく受け入れている自分がいた。
「ん?」
ふと右手で何かをつかんでいる感触があった。
今まで気が付いていなかったのは不思議だが、はやては別に何とも思わなかった。
それはここがどこだかおぼろげながら理解しつつあるという事もあった
だがなにより右手にあったものが些細な疑問を全て吹き飛ばしたからだ。
「ああ、そうか……ついに、ついに、取り戻せたんや。みんなを……」
いつのまにかはやての周りには5つの人影があった。
「主はやて……」
剣の騎士、烈火の将シグナムが。
「はやて……」
鉄槌の騎士、紅の鉄騎ヴィータが。
「はやてちゃん……」
湖の騎士、風の癒し手シャマルが。
「主はやて……」
盾の守護獣、蒼き狼ザフィーラが。
そして――。
「主はやて……」
幸運の追い風、祝福のエール――リインフォースが。
「みんな……」
はやてが取り戻したいと強く願い続けてきた家族がそこにいた。
「はやてちゃん……」
そしてはやての隣には新しい家族リインフォースⅡの姿もあった。
「ああ、これでもうみんな一緒やね……みんな、みんな一緒や!
シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、そして――リインフォース、もちろんちっこいリインも!」
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それははやてが望んでいた光景だった。
誰一人欠ける事なくみんな一緒にここにいるという願い。
それが今この瞬間目の前で実現している。
それは本当ならこの上もないほど嬉しい出来事――のはずだった。
「でもな……」
だがはやての心には嬉しさ以上の感情が渦巻いていた。
「なんで……」
それは温かいものではなく、もっと暗いもの。
「なんでみんなそんな目で私を見るんや?」
はやては自分に向けられた視線の意味を悟って愕然としていた。
すぐにこれは嘘だと自分が置かれた状況を否定しようとした。
だがそれは決して勘違いではない。
「シグナム? ヴィータ? シャマル? ザフィーラ? なあ、そんな顔やなくて、私は笑ってほしいんや……」
シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、そして――。
「リイン! なあ、笑ってや!」
――二人のリインフォースもまたはやての笑いかける事はなかった。
「私、頑張ったのに、それなのに、なんで? なんで? そんな目で私を見るんやああああああああああ!!!!!」
はやては分からなかった。
なぜみんながそんな悲しそうな表情を浮かべているのか。
いや本当は分かっていた。
ただ認めたくなかっただけ。
その事実を認めたくないばかりにはやては泣き叫び、そして――。
『はやて! はやて! はやて!』
――静かな悪夢は終わりを迎えた。
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プレシア・テスタロッサの手によって幕を上げたバトル・ロワイアル、通称『デスゲーム』。
その会場であるアルハザードの某所に作られた特別な9km×9kmの会場の中央に位置するE-5エリア。
その位置ゆえに序盤から様々な参加者がそのエリアを訪れ、時には手を組み、時には戦い、そして今はもうすっかり廃墟と化していた。
セフィロスの『メテオ』による隕石群。
憑神刀(マハ)の持ち主によって幾度も放たれた『妖艶なる紅旋風』による竜巻。
二つのロストロギアの力を借りて天上院明日香が行使した『星を破壊する最強の光』にも匹敵する砲撃。
それ以外にも短時間でエリアに与えられたダメージは計り知れない。
これで無事であるエリアなどあるはずがない。
その跡地の中でヴィータは必死にはやてを抱え起こして名前を呼んでいた。
「はやて! はやて! はやて!」
金居からミラーワールドについての事情を聞いている最中に発生した大規模な魔力の衝突。
それによる衝撃波は辛うじて残っていた地上本部を倒壊させるほどのものだった。
幸いヴィータがいた場所までは若干距離があったのでシールドを展開する事で難を逃れる事が出来た。
そして爆発の中心に向かったところ、瓦礫の中に倒れているはやてを見つけて今に至る。
「おい、ヴィータ。あんまり大声出すなよ。まだ近くにセフィロスやアーカードがいるかもしれなないし、それに金居も――」
「うるせえ。今はそんな事よりも――」
その声を遮るかのようにデスゲーム開始から18時間が経過した事を知らせる放送が流れた。
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アーカードは静かに放送に耳を傾けていた。
今回の死者は19人。
前回の倍以上しかも前回の放送まで生き残っていた参加者の半数が死んだ事になる。
だがアーカードはあまり関心がなかった。
今のアーカードの目的はプレシア・テスタロッサの抹殺。
最終的に主インテグラのラストオーダーを果たせるなら誰が死のうと関係なかった。
それゆえに円卓会議の一員であるペンウッドが死んでいた事に別に興味はなかった。
だが例外はある。
(……セフィロス、貴様は別だ)
アーカードを後一歩まで追い詰めた化け物。
そのセフィロスもまた死んだ。
その瞬間は予想外に呆気ないものだった。
かなりのダメージを負っていたのではっきりとは分からないが、正面から撃たれて死んだらしい。
誰が殺したのか少し興味はあるが、目星は付いている。
(おそらくあの女、はやてと呼ばれていたな)
あの時点で同じエリア内で戦闘を目撃していた人物は3人。
金居とヴィータとはやて。
そのうちヴィータとは背格好が合わない上に銃殺という手段を取るとは思えない。
そうなると金居とはやての二択だが、アーカードは戦闘中の気配からはやてだと半ば確信していた。
それは殺気。
ヴィータがアーカードに対して並々ならぬ殺気に似た物を送っていたとの同様にはやてはセフィロスに対して同じものを送っていた。
むしろこっちは純粋に殺気と呼べるほどにどす黒い視線だった。
もしも予想が正しいなら生かすつもりはない。
先程の爆発で建物の崩壊に巻き込まれて傷を負ったが、問題はないだろう。
(どちらにせよ、直接会えば分かるか)
そして吸血鬼は静かに姿を現した。
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アレックスは悩んでいた。
参加者にとっては重要な放送も耳に入らないまま悩み続けていた。
これから自分は何をするべきかと。
もちろん六課の仲間と合流してデスゲームを終わらせるべきだ。
だがキース・レッドに敗北した事実はアレックスの身体をこの場に縛りつけていた。
そんな時、誰かが近付いてきた。
「おい、生きているのか?」
今のアレックスはARMSの力で再生中ではあるが、その事を知らない人から見れば死人も同然の状態だ。
だからそういう質問がされるのは半ば自然な流れだ。
「ああ……なんとかな……」
とりあえずそれだけ答えた。
正直なところ今は誰かと話す気分ではない。
それにこうして質問してくるという事は少なくとも相手は殺し合いに乗っていない。
もしも殺し合いに乗っていれば何も聞かずに殺しにくるはずだから。
「再生力が高いのか。ところで貴様は殺し合いに乗っているのか?」
ここがデスゲームの場である以上、当然とも言える質問だ。
「いや、俺は殺し合いには乗っていない」
以前なら本能のままに闘争を繰り広げていたのかもしれない。
だがアレックスは一度死んだ時にその呪縛から解き放たれている。
(そうだ、俺は決めたはずだ。運命に縛られず自らの意志で闘争を行うと! だから――)
「――それなら用はない」
真上から振り下ろされる断罪の鉄槌。
それがアレックスの目に映った最期の光景だった。
【アレックス@ARMSクロス『シルバー』 死亡確認】
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ヴィータにとって先程の放送は人数の割に衝撃は大きくなかった。
19人の死者のうちヴィータと関わりがあったのはシャマル、ゼスト、セフィロス、フェイト、ルーテシアの5人。
だがシャマルは事前にはやてからその死を聞かされていたから改めてその死を悼むに止まった。
フェイトに関しては敵対している間柄とはいえ信用できそうな人物ではあったが、そこまで深い関係でもないので上に同じ。
ゼストとルーテシアもアギトの大切な人ではあるが、直接会った事がないのでまた上に同じ。
そのアギトだが今は二人の死によるショックからかデイパックの中に籠っている。
別人の可能性があるとはいえ大切な存在を一度に失ったのだから無理もない。
だがセフィロスだけはその衝撃は大きかった。
ヴィータから見てセフィロスは別次元の強さを誇っていた。
最初ははやてを死に追いやったと思い込んで戦ったが、アギトから事情を聞くに及んで最初ほど敵視できなくなっていた。
むしろ僅かではあるが共感できるものがあった。
最後に見たのは同じく規格外の化け物であるアーカードと戦っている最中だった。
そのアーカードが生きている事から戦いに敗れて死んだのかもしれない。
(セフィロス、結局お前とは――)
「ほう、また会ったな」
「――ア、アーカード、てめえぇぇぇえええええ!!!!!」
セフィロスの最期に静かに想いを馳せていた時に聞こえてきた声。
その声をヴィータが聞き逃すはずがない。
最凶の吸血鬼アーカードの声を。
「やっぱり生きていたのかよ……」
「降りかかる火の粉は払わないといけないな」
ヴィータはすぐさま真紅のバリアジャケットを身に纏って槍を構える。
先程の戦闘の傷がまだ癒えていないのかアーカードの身体には真新しい傷がいくつも刻まれていた。
何かにうなされていたようなので治療のために核鉄をはやてに持たせているが、まだ目覚めていない。
どうせ気絶したはやてを連れて逃げ切れるとは思えないので決死の覚悟で迎え討つつもりだ。
それに今ならアーカードの傷も癒えていないので勝機の芽はあるのかもしれない。
こうして廃墟の真っ只中で静かに死闘の火蓋は切られた。
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【1日目 夜】
【現在地 E-5 崩壊した市街地】
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】健康、奇襲に対する危機感(大)、アーカードへの恐怖
【装備】ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、セフィロスのデイパック(支給品一式)
【思考】
基本:はやての元へ帰る。脱出するために当面ははやて(StS)と協力する。
1.アーカードは殺す!!!
2.はやて(StS)は様子見、当分の間は同行するが不審点があれば戦闘も辞さない。
3.ヴィヴィオとミライを探す。
4.アーカード、アンジール、紫髪の少女(かがみ)は殺す。
5.グラーフアイゼンはどこにあるんだ……?
6.そういえば金居はどこだ?
【備考】
※ヘルメスドライブの使用者として登録されています。
※今のところ信用できるのはミライ、なのは、ユーノのみ。
※はやて(StS)、甲虫の怪人(キング)、アーカード、アレックス、紫髪の少女(かがみ)、アンジールを警戒しています。
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
基本:???
1.旦那……ルールー……。
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。
※ヴィータがはやてを『偽者』とする事に否定的です。
【アーカード@NANOSING】
【状態】疲労(中)、全身に裂傷(中)
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
1.邪魔をするヴィータを殺した上ではやてを……。
2.再度プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。
3.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない
4.首輪解除の技能者を探してみる?
5.アンデルセンを殺した参加者を殺す。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る者とは別人だと気付いています。
※第一回放送を聞き逃しました。
※デスゲーム運行にはプレシア以外の協力者ないし部下がいると考えています。
※首輪解除時の主催の対応は「刺客による排除」だと考えています。
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(さて、どうしよっか? さすがに手負いとはいえヴィータだけでアーカードを倒せるとは思えん。
私が加勢できたらいいんやけど、まだ回復までには時間がかかりそうやな)
はやては今の状況を努めて冷静に見ようとした。
実は少し前から意識はあったが、すぐにアーカードが来たので様子を見る事にしたのだ。
本来ならアーカードとは戦わずに逃げたい。
だが今のアーカードは万全とは言えない状態だ。
もしかしたらヴィータと組めば倒せるかもしれない。
(でもまずはヴィータに時間を稼いでもらうしかないか……)
不幸中の幸いか、明日香が魔力の源にしていたジュエルシードはその内包する力を使い切ったせいか何の反応も示さないようだ。
ジュエルシードの力も加わっていたと知った時は使うのは危険だと思ったが、これなら夜天の書も問題なく使える。
だが備えあれば憂いなし。
もし可能ならば明日香の近くに落ちている道具で使えそうなものがあれば活用したい。
はやては静かに自分が動く時を持ち続けるのだった。
【1日目 夜】
【現在地:E-5 崩壊した市街地】
【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(大)、魔力消費(大)、胸に裂傷(比較的浅め、既に止血済)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(中)、スマートブレイン社への興味
【装備】コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金
【道具】支給品一式×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、首輪(セフィロス)
【思考】
基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
1.様子見。
2.手に入れた駒(ヴィータ等)は切り捨てるまでは二度と手放さない。
3.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
4.金居のことは警戒。
5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。その為なら外見だけでも守護騎士に優しくするつもりです。
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金居がアレックスを殺した理由は至極単純で簡単なものだった。
つまりこのまま生かしておけば邪魔になるからだ。
高い回復能力を持つ主催者に反抗する参加者。
しかもその戦闘能力が高いのはミラーワールド見ていたので既に知っていた。
そのような参加者を放っておけば障害になる事は確実だった。
だから満足に動けないこの千載一遇の機会を逃す手はなかった。
殺害の手口は首から胸にかけての部分にイカリクラッシャーを叩きつけて潰すというもの。
生半可な方法では再生されてしまうと考えた結果、絶対的な致死を司る首輪周辺を破壊することにした。
そして予想通りもう再生する事はなかった。
金居がアレックスを発見したのはヴィータが爆心地へ向かっている最中。
それまではミラーワールドのことを大まかに話している最中だった。
因みに話した内容はあの時点で以下の二つ。
・ミラーワールドに参加者を引きずり込んだのは浅倉威。
・確認できただけで引きずり込まれた参加者は9人(金居、キング、相川始、天道総司、柊かがみ、柊つかさ、キース・レッド、キース・レッドに似ている男、黒服の少年)
そこまで話したところであの衝撃波が襲ってきた。
まだアンデッドの姿には戻れなかったが、逆にヴィータにその姿を見せずに済んで結果オーライだった。
そのヴィータは移動中に遠目ではやての姿を確認したのか、はやてと名を呼びながら一目散に走って行った。
この時金居は無理に急いで行くつもりはなかった。
まだ近くにアーカードがいた場合、離れていた方が何かと都合がいいと考えたからだ。
それから放送があり死者の多さに驚いたが、それだけだった。
ただアーカードが死んでいないと分かって少し警戒心が増したぐらい。
アレックスを見つけたのはそんな時だった。
そして一応殺し合いに乗っているか聞いた上で邪魔になると判断して殺した。
(少し気になったのはボーナスの基準か。前の放送であんな発破をかけたぐらいだから、もしや基準はそこか?)
ボーナスとして与えられる道具が何になるか。
第二回放送から第三回放送までに殺した人数。
第三回放送までに殺した人数。
殺した参加者の力量。
果たして選ばれる基準が何に基づいているのか、それはまだ誰にも分からない。
「さて、こいつのデイパックも回収して、あとは……ん?」
それを見つけたのは偶然だった。
地面に走った亀裂。
その周囲には倒壊した地上本部のなれの果て。
つまりは地上本部の地下部分が倒壊の影響で僅かに剥き出しの状態であった。
そしてその亀裂から金居は何かを感じた。
それを確かめるべく近づくと、そこにはある模様が描かれていた。
ちなみに近くに落ちていた看板には次のような説明が書かれていた。
『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』
【1日目 夜】
【現在地:E-5 地上本部跡地】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】なし
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.なんだ、これは?
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
4.上手く状況を動かして隙を見てアーカードを殺害する。
5.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。
6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
▼ ▼ ▼
-
「あれは転移魔法陣!? なんで地下に移動を!?」
会場の様子を監視していたリニスがそれに驚いたのも無理はない。
確かに魔法陣は屋上にしかなく、その魔法陣も屋上ごと崩れたはず。
それが今は地下に移動している。
まるで元からそこにあったかのように。
元々リニスは今回から採用されたボーナスシステムを使ってどうにか参加者の助けとなる道具を送りたいと思っていた。
だが誰にも気づかれる事なく道具を仕込むのは簡単な事ではない。
案の定ボーナス用の道具が置かれた場所にも何らかの監視システムが設置されていた。
まずはそれをどうにか掻い潜る方法を考えている時に最初のボーナス適用者である金居が現れたのだ。
その際のボーナスの転送から何かヒントが得られないか注意して監視していた時、金居と同様に魔法陣の存在に気付いた。
(いったい何が……)
そしてその様子をさらに監視している人物がいる事にリニスは気付く事はなかった。
▼ ▼ ▼
(あの子は思いもしていないでしょうね。まさか私がこんなに早く休息を終えているなんて)
リニスを監視していたのは休息すると言って一度奥に引っ込んだはずのプレシア。
既にその顔には疲労の色はない。
それも当然だろう。
参加者の何人かには一瞬で体力や魔力を回復してくれる道具が配られている。
その配った張本人がそのような便利道具を全て参加者に渡して手元に残していない訳がない。
(でも地上本部が崩れるなんて……少し甘く見すぎていたようね。これからは一層の注意が必要ね)
さすがにキース・レッドによる内部破壊、E-5エリア全土に放たれたいくつもの砲撃。
まさか短時間で地上本部にここまで攻撃が集中するとは思わなかった。
キース・レッドが手を出すまで本格的な破壊活動がなかっただけに油断がなかったというのは嘘になる。
(それにしても、まさか万が一に備えて付与しておいた機能が役に立つなんて……そのおかげで『要』は無事……。
ただ、調整のために禁止エリアにせざるを得なかったけど、果たして誰か気づく参加者がいるのかしら。
ふっ、気づいたところで何もできないでしょうけどね。それよりも今は山猫と――)
そしてプレシアは別画面に映る二人を見て静かに微笑みを浮かべるのだった。
(――馬鹿ね。ここに辿りつけないとも知らずに……)
そこに映っていたのは亡き主の仇を討つために乗りこんできた『風』と『犬』の姿だった。
【全体備考】
※E-5のアレックスの死体に近くに以下の物が放置されています。
アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3))
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投下終了です
誤字・脱字、疑問、矛盾などありましたら指摘して下さい
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一応トリ付け忘れていたので
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投下乙です。
アーカードとヴィータ、普通なら勝負は見えているがこれはどうだ?
そしてアレックスは再生中をやられたか。
あと魔法陣はキーポイント?
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投下乙です。
ただ、セフィロスの技は「メテオ」ではなく「スーパーノヴァ」なのでは?
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投下乙です。
アレックスはここで退場……そして道具はほぼ金居総取り(ただ、ボーナスの解釈を断定しかねているのが気に掛かるが……まぁ、金居第2回〜第3回で仕留めていないから金居だけをみたらどっちでも変わらないか……しかし、金井の推察次第では他の対主催涙目だぞ……)。
魔法陣が何故か現れていたが……禁止エリアになる事踏まえるとどちらにしろこれが最後の出番か?
で、アーカードvsヴィータ……とりあえず結果は見え見えな気もするが何で対主催同士で争うんだよと小一時間(いや、今回は展開上しゃーないけど。)
そして早々に発見された『犬』&『風』オワタ
……実は予想では、ヴィータ辺り退場とか対主催アーカード退場とかアレックスマーダー化とか、『犬』&『風』退場とかロクでもない展開ばかりが浮かんだけど別にそんな事はなかったぜ。
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投下乙です
アレックスは金居に殺されたか。順調にキルスコア稼いでるな
はやては目覚めたのはいいが、アーカード戦はどう乗り切るか
金居も助太刀して三人がかりなら勝率も上がりそうだが…
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投下乙です。
はやては何とか目を覚ましたみたいだけど、今のアーカードは
はやても敵対視してるから早く行動しないと拙いという……。
ヴィータだけじゃ間違いなく勝てない、はやても魔力は空っぽ、となればやはり金居がどう出るかによる?
最後に出て来た転移魔法陣もどんな展開に繋がるのか楽しみです。
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>>22
wiki上で修正しておきます
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ヴィータ、アーカード、八神はやて(StS)、金居分を投下します
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別に、大層な正義感があったわけじゃない。
騎士の誇りもどぶに捨て、大切な人を救うために、その人との約束に背いた身だ。
辻斬りまがいの行為に手を染めてるあたしらに、今更正義を説く資格なんざありゃしない。
天下の管理局に盾突いて、はやてと同い年くらいの子供にまで牙をむいた。
外道だ悪党だと罵られたって当然さ。
だけど、言い訳することが許されるなら、せめて1つくらいは弁解させてほしい。
あたしらだってこんなこと、本当はしたくなかったんだ。
あたしらは長く戦いすぎた。もう二度と戦いたくなんてなかった。
そして、はやてはそれを叶えてくれた。
戦うことしかできなかったあたしらに、人並みの穏やかな暮らしを与えてくれた。
戦うことしか知らなかったあたしらに、人並みの感情というものを教えてくれた。
だからもし許されるなら、あのまま戦うこともなく、平凡に日々を過ごしていたかったんだ。
リンカーコアの蒐集だって、そんな日を繋ぐためにやっていたことだ。
はやての命を救うために、仕方なくやっていたことなんだ。
事情も目的もない戦いなんて、誰が好き好んでするものか。
だから、今目の前にいるこいつは許せない。
本当なら、誰だって傷つかないのが一番なのに。
こんなくだらない殺し合いなんかで、死んでいい命なんてない方がいいのに。
それでも奴はその力で、大勢の人間の命を奪っていった。
いいや、こいつだけじゃない。
こんな狂ったゲームの中で、何人もの人間が殺し合いに乗り、何人もの人間が死んでいった。
守りたかった命。
救えなかった命。
大勢の人間の血が流れて、その度に自分の無力に嫌気がさした。
ああ、そうだ。
もうそんな想いをするのはたくさんだ。
だから、あたしはこいつと戦う。
こいつだけは絶対に、あたしが今ここで殺してやる。
どんなに実力差があろうと、そんなものは知ったこっちゃない。
どんなに絶望的な戦いだろうと、諦める理由になんかなりゃしない。
もうこれ以上、誰もお前に殺させやしない。
だから。
だから、お前はここで倒されろ。
吸血鬼――――――アーカード!
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◆
(さて、どうしたものか)
白銀に輝く拳銃を手に、金居は1人思考する。
その手に握られたハンドガンは、名をデザートイーグルという。
つい先ほど、淡い魔力の光と共に、デイパックの中に現れたボーナス支給品だ。
放つ弾丸は50口径。超大型の鉛玉は、拳銃というくくりにおいては、世界最強の破壊力を有している。
一方でその巨大さと反動故に、並の人間には満足に扱えない代物とも言われていた。
反動や重量の方は、アンデッドである彼にとっては屁でもないが、確かにこのグリップの大きさは少々握りづらいだろう。
とはいえ破壊力は申し分ない。ギリギリではあるものの、あのアーカードにも手傷を負わせる威力はあるはずだ。
アンデッドの正体を隠しているうちは、多少は出番も回ってくるかもしれない。
(だが、果たしてこいつは当たりか外れか?)
改めて銃身を見据えながら、自問した。
拳銃としては破格の威力を有するデザートイーグル。
それでも威力ではイカリクラッシャーに劣るだろうし、利便性ではデバイスに劣るだろう。
それらの条件を加味した上では、この武器のランクはいかほどのものなのだろうか。
プレシアの意図を探る上では、こいつの性能はかなり微妙だ。
強いともとれるし、弱いともとれる。
上位ともとれるし、下位ともとれる。
紺色の髪の娘や眼鏡の女の分が得られなかったことから、ご褒美の対象が3回放送以降のキルスコアのみということは分かった。
しかし、支給品のレアリティが敵の力量に左右されるのか、というのは謎のままだ。
(まぁそれはそれとして……問題はむしろこっちだな)
銃をデイパックへと収め、足元の魔法陣へと視点を落とす。
ぼんやりと煌く円環の紋様は、落ちていた看板の説明によると、望む場所へのワープに用いるものなのだそうだ。
光の印象が似ているあたり、先ほどデザートイーグルを転移させた技術と、同じ理屈なのだろうか。
ワープできるとだけ書かれた説明文には、それ以外の情報はほとんどなし。
せいぜい魔力を消費する必要がある、というものくらいで、他に制約らしいものはなかった。
つまりはほとんどリスクを冒すことなくして、無制限な距離の移動を行うことができるというわけだ。
普通に考えてもみれば、これはやや便利すぎる代物ではないのか。
故にこれは記述通りのお助けアイテムではなく、逆に騙されて使えば被害を被るようなトラップではないのか。
(……それはそれで不自然、か)
しかし、その懸念もすぐに消える。
これまでの状況を整理すれば、そんな罠が仕掛けられるはずもないというのは明確だ。
プレシア・テスタロッサが望むのは、殺しではなく殺し合い。
ただ死体を築き上げたいというのならば、こんな回りくどい手を使うまでもなく、首輪を一斉に爆破すれば済むだけのこと。
第2回目の放送では、自らそれをしたくないと口にしていた。
ミラーワールドの戦闘では、主犯の浅倉のみを始末するに留まり、残りは全員生かして会場に戻した。
それほどに主催者側の介入を嫌がるというのなら、この魔法陣に罠を仕掛けるような真似をしでかすはずもない。
故にこれの有用性については、八割方信じてやってもいいだろう。
(問題とすべきは、こいつがどこまで融通の利く代物か、だ)
それが残り二割の懸念だった。
こいつが本物であるとして、さてではその本物の機能とやらは、一体どの程度優れているのだろうか。
有効移動圏内は、一体この場所から何マス分か。
マスとマスの間を移動したとして、果たしてどれほど精密に着地点を指定できるのか。
どこかにいる特定の人物と会いたいだとか、そういう正確な座標も分からない場所には飛べるのか。
(何にせよ、実際に魔法使いを連れてこないと始まらないか)
ひとまずはそこで思考を打ち切る。
今は亡きアレックスのデイパックを拾い上げ、自分の持ち物へと無造作に突っ込む。
よくよく考えてもみれば、金居は魔導師ですらないのだ。
ああだこうだと考えたところで、発動させるための魔力がなければ、何を試すこともできない。
であればさっさとはやてらと合流し、これを使わせてみなければ。
かつり、かつりとアスファルトを踏み、荒れ果てた廃墟を進んでいく。
するとそれから程なくして、自分の足音とは異なる音が、遠くの方から聞こえてきた。
きん、きん、きん、きん。
断続的に響いているのは、金属のぶつかり合う音だ。
「どうやら向こうも向こうで、荒事になっているらしいな」
ぼそり、と呟くと同時に。
金居は自らを音の方へと加速させた。
-
◆
「つらそうだな」
忌々しいあの低い声が、己の鼓膜を震わせる。
ぜいぜいと自身の口を突く吐息に混じって、余裕たっぷりなあの声が響いてくる。
ぐ、と歯を食いしばって、槍を地に突き立ち上がった。
膝をつく姿勢を取っていた身体を、得物を杖代わりにして持ち上げた。
既に我が身はボロボロだ。
振りかざす穂先は届かない。時たま届いたとしても、すぐに傷口が再生する。
自己修復の速度は大幅に落ちていたようだが、それでも脅威には変わらない。
どれだけ傷つけたとしても、一分の隙も見せやしない。
逆に敵の切っ先は、こちらの防御を押しのけて、着実にこの身体を切り裂いていく。
騎士甲冑はずたぼろに引き裂けた。
致命的な直撃こそまだだが、至る所が血まみれだ。
額から流れる血液を拭い、ヴィータの瞳がアーカードを睨む。
「それで終わりか、お嬢ちゃん(フロイライン)? 身体が殺意に追いつけないのか? 一人前なのは威勢だけか?」
「うる……せぇッ」
精一杯の強がりを吐いた。
実際にはもういっぱいいっぱいだ。
全身から流れ出る真紅の雫は、根こそぎ体力を奪って地に染みていく。
五体に刻み込まれた刀傷も、痛くて痛くてたまらない。
体力も気力も限界ギリギリ。有り余っているものといえば、せいぜい魔力くらいだろう。
「見せてくれ。そして分からせてくれ。
お前は私を殺せるのか。私を殺すに足る者なのか。その手に握り締められた杭は、果たして私の心臓に届くのか」
彼我の戦力差は絶望的だ。
分かり切ったことではあったが、その事実が急速にリアリティを増して、深く身体にのしかかってくる。
クロノが撤退を促した時点で、まともに戦える相手ではないことは推測できた。
セフィロスと互角に戦った時点で、自分が勝てなかったあいつ並に強いことは分かっていた。
だが、結局それらは全て傍証に過ぎない。
こうして直接刃を交えなければ、主観の確証にはなり得なかった。
そして、今だからこそ分かる。
今目の当たりにしているこの鬼の、なんと猛々しくおぞましいことか。
人間離れの再生力の、なんと忌々しいことか。
常識外れの怪力の、なんと凄まじいことか。
指先が震えそうだった。膝が振動で崩れ落ちそうだった。
戦う前から刷り込まれた恐怖が、より深く心を侵食していく。
もう嫌だ。できることなら逃げ出したい。
こんなにも強くおぞましき魔物とは、これ以上戦いたくなんてない。
刃が突き刺されば確実に死ぬ。
拳を当てられただけでも砕け散る。
明確ににじり寄る死のビジョンが、怖くて怖くてたまらない。
「できるできないじゃねぇ――」
ああ、それでも。
だとしても、引き下がることなどできないのだ。
今ここで自分が逃げ出せば、今度ははやてが犠牲になる。
自分の知るはやてとは雰囲気の違う、正直いけ好かないタイプの人間だが、さすがに殺されるのは後味が悪い。
そしてはやてが殺されれば、今度は金居とかいう奴が襲われるだろう。
奴までもが殺されてしまえば、もう誰にも止められない。
自分がこの場から逃げ出すことは、それだけの人間の死を意味するのだ。
「――やるんだよッ!!」
だから、やってやる。
殺ってやるとも。
一体実力差が何だというのだ。どれだけ怖かろうと知ったことか。
どれだけ力の差があろうが、そんなことはどうだっていい。
殺せる殺せないの問題じゃない。
殺さなければならないのだ。
怒号を上げるヴィータの足が、かつんと鋭くアスファルトを蹴った。
-
跳躍と同時に、飛行魔法を発動。
滑空するような低空飛行で、真っ向からアーカードに突っ込んでいく。
加速、加速、なおも加速。
並行して身体強化を発動。
ありったけの魔力を纏い、五体の運動能力を向上させる。
煌々と煌く槍の穂先は、武器強化の術式の賜物だ。
「悪くない返事だ」
いい返事だ、とは言わなかった。
にぃと笑みを浮かべる吸血鬼は、それを正解とは認めなかった。
弾丸並の加速を見せるヴィータを前に、しかしその顔には余裕の笑顔。
口先だけとしか見なしていない。
それだけで殺せると思っていない。
当然といえば当然だ。自分はまだ一方的に蹴散らされるだけで、一度も結果を出していないのだ。
「では、あとは結果を示してもらおう」
がきんっ、と響いた鋼鉄の音。
難もなく、無造作に。
軽く持ち上げられたのは、常識外れな長さの長剣。
全身全霊を込めた一撃が、そんな動作で受け止められる。
のれんをめくるかのような動作で、あっさりと受け止めてみせたのだ。
「お前は取るに足らないただの狗か、はたまた尊厳ある人間か」
刃の向こうの瞳が光る。
名刀・正宗越しに向けられた視線が、爛々と真紅の瞳を放つ。
赤は燃え盛る炎の色。
そして滴る血の色だ。
「――ッッ!」
瞬間、烈風がヴィータを襲った。
痛烈な衝撃が叩きつけられる。槍の穂先を怒濤が押し返す。
ギリギリまで身体強化を付与した身体が、まるで貧弱なやせっぽちのようだ。
渾身の力を込めた一撃が、まるで問題にもされていない。
視界の風景が遠ざかり、みるみるうちに距離が開いた。
ビルの残骸もたなびく煙も、遥か彼方に置き去りになった。
「くそっ!」
吐き捨てると同時に、急制御。
飛行魔法のベクトル制御で、吹き飛ぶ身体にブレーキをかける。
開始からたっぷり3秒をかけ、つんのめるようにしてようやく停止。
つくづく恐るべきはアーカードだ。
あんな態勢からこれほどのパワーを発揮して、こちらの攻撃を弾き返してくるとは。
「言われなくとも……やってやらぁっ!」
だが、今更その程度では足を止めない。
力が強いことなど、とっくの昔に分かり切っていることだ。
こんなものはせいぜい、パワー勝負では勝てないということを、再認識した程度にすぎない。
ならば、パワー以外で勝負するまでのこと。
力で駄目なら、スピード勝負だ。
再度飛行魔法を加速させる。
ぎゅんと、再度世界が加速。
遠ざかった景色を追い越して、置き去りにして突撃する。
風を切る音が耳に響いた。三つ編みの髪が鬱陶しく暴れた。
猛スピードでアーカードへと殺到。
そしてそのまま立ち止まることなく、すれ違いざまに槍を一閃。
ざく、と肉を斬る感触を覚えた。
振り返る先の左腕に、赤の一文字が刻み込まれた。
そしてその程度では止まらない。空中で我が身を反転させ、再び肉迫と同時に斬撃。
寄らば斬る。近づけば突く。
蜘蛛の糸を描くような高速機動で、忙しなく繰り出されるヒット・アンド・アウェイ。
スピードを突撃力ではなく、純粋に機動力として使ったというわけだ。
-
(まだだ……!)
それでもヴィータの表情は晴れない。
苦虫を噛み潰したような表情で、肩越しに吸血鬼の姿を睨む。
まだ足りない。
この程度のダメージではまだ駄目だ。
すれ違いざまに放つ一撃など、所詮はたかが知れている。
その僅かな傷の積み重ねで、最終的に体力を削り切れるならまだよかった。
しかし、これではまだまだ足りないらしい。
いくら手傷を負わせようと、斬ったそばから回復していく。
思うようにダメージが蓄積されず、瞬く間に無傷になってしまう。
これではまるで無駄骨だ。
弱体化したはずの再生能力すらも、上回ることができないのか。
槍の使いこなせぬお前に、剣を持った私が倒せると思ったか――あの漆黒と銀髪の魔人の言葉が、脳裏で絶えず反響する。
そうだ。
相手が悪かっただけではない。
自分の実力も足りないのだ。
これが使い慣れたグラーフアイゼンなら、もっとましなダメージを与えられたはずだった。
だが結果はこの有様だ。
拙い槍の制御では、思うように力がこもらない。
力の込め方が分からないから、中途半端な威力しか発揮できない。
その結果がこのジリ貧だ。
槍一つ使いこなせない未熟が、この無様な有様を生みだしたのだ。
(それでも――やるしかねぇんだよっ!)
だからといって、止まれない。
前言を撤回して逃げることは許されない。
豪快に振りかぶった切っ先で、横薙ぎに叩っ斬ろうと突撃をかける。
これまで以上に速度を上げた。
これまで以上に力をこめた。
ほとんどやけくその一撃だ。それでも、通らないことはないはずだ。
フルスピードとフルパワーの特攻を、敵の視界の範囲外から叩き込むのだ。
単純な速度はこちらが勝っている。ならばこの一撃、そう易々と反応できるはずが――
「がッ……は」
瞬間、目の前に閃光が走った。
電流を浴びせられたかのように、五臓六腑が硬直する。
雷撃に照らされたかのように、視界が激しくスパークする。
呼吸困難に陥った身体が、浮遊感と共に投げ出された。
意識は霞がかかったように焦点を失い、ただただ強烈な苦痛の中、ゆっくりと過ぎていく風景を彷徨う。
どすん、と背中に衝撃を感じた時。
その時背中を打ったのだと理解し。
かは、と息を吐き出した時。
自分は反撃を食らって吹っ飛ばされたのだと、ようやく理解することができた。
起伏の乏しい胸元が、絶えず激痛を訴え続ける。
吐き気を伴う独特な感触だ。肋骨がへし折れたサインに他ならなかった。
びくびくと痙攣する身体を懸命に起こし、足に力が入り切らず、俯いたような姿勢になる。
攻撃を受けた。
峰打ちとはいえ、正確なタイミングで直撃を食らった。
よけられない角度と速度を伴い、反撃しきれない威力を乗せたはずだった。
いいや、その認識こそが誤りだったのだ。
そもそも思い返してみれば、奴はあのセフィロスの速度に、完璧に追いついていたではないか。
-
「さぁ、どうした? まだ肋骨が折れただけだぞ」
あの声がまた響いている。
忌々しい声が鳴り響いている。
かすみきった視界にも、確かに奴の存在を感じられる。
あの恐ろしくもおぞましき、赤き装束を纏いし鬼の姿を。
爛々と瞳を煌かせ、血塗られた長刀を携えた、吸血鬼アーカードのその姿を。
「それともやはりそこまでか? その程度の器でしかなかったということか?」
つくづく反則的な男だ。
不死身で無敵で不敗で最強で、嫌になるほど馬鹿馬鹿しい。
目を向けられただけで威圧される。
幾千万もの剣の雨を、真っ向から浴びせられたような錯覚に、心が砕けそうになる。
気配だけでそれなのだ。現実の実力は言うまでもない。
その手は百万の鉄槌を砕くだろう。
その足は百万の剣閃を折るだろう。
その身は百万の銃弾を受けても、なおも笑って佇んでいることだろう。
何もかもが規格外の男。
誰よりも強く、誰よりも高く、その上殺しても死なない男。
単純に力が強いということが、これほどまでの恐怖を生むのか。
砲撃も撃てず、音速でも走れず、空も飛べないはずの男が、これほどまでに恐ろしく映るとは。
パワーでも駄目、スピードでも駄目。
いかな小細工を弄したとしても、全てがことごとく叩き潰される。
できることはこちらの方が圧倒的に多いのに、その全てを駆使しても、何一つ奴には届かない。
これではっきりと分かってしまった。
はっきりと理解してしまった。
この存在には勝てないと。
もはやこれ以上どれほどの手を尽くしても、自分にはこの男を殺す術がない、と。
「……アギト」
背後のデイパックへと、声を飛ばした。
その中に引きこもっている、古代ベルカの剣精へと、蚊の鳴くような声を発した。
この存在にはかなわない。
パワーもスピードもテクニックも、その全てが通じない。
ならば、どうする。
どうやって奴を倒せばいい。
自分にはどう足掻いてもかなわない相手を、それでもなお殺すにはどうすればいい。
「ユニゾンだ……力を、貸してくれ……」
簡単なことだ。
自分1人でかなわないのなら、1人で戦わなければいいのだ。
こいつを倒せるというのなら、どんな手だって使ってやる。
何にだってすがってやるし、誰にだって頭を下げてやる。
もはや躊躇している暇などなかった。
故にヴィータは迷うことなく、背中の融合騎へと助力を請うた。
彼女は自分のパートナーではない。ゼスト・グランガイツという、確固たるロードを持った融合騎だ。
そう簡単に心を許してくれるなどとは、毛頭思ってなどいなかった。
故にこれまでは、あえてその話題を切り出さず、可能な限り1人で戦おうとしていた。
だが、今はそんなことを言っていられる場合ではない。
このまま戦い続けていては、自分は間違いなく死ぬだろう。
それも何一つ為すこともできず、アーカードを野放しにしたままに、だ。
-
「……無理だよ……あたしは、戦えない……」
たっぷり待つこと5秒間。
返ってきたのは、そんな言葉だ。
これがあのアギトの声か。
烈火の二つ名が指すように、気が強く堂々としていた、あの剣精の声だというのか。
あまりに弱く、あまりに細い。
強気な目をしていた彼女の声が、今では風前の灯火のようだ。
一瞬我が耳を疑ったが、それも無理からぬことだと、一瞬後には理解していた。
彼女は数時間前の自分と同じだ。
子供のはやてが殺された時と同じように、ルーテシアとゼストという、何物にも代えがたい身内を喪ったのだ。
その気持ちは十分に理解できる。
はやてのみならず、ヴォルケンリッターの全員を喪った自分にも、痛いほどに理解できる。
「今のあたしが出たって……足手まといくらいにしか――」
「――急げッ!!」
それでも。
だとしても。
そうだと分かっていながらも、しかしヴィータは吼えていた。
微かに息を呑む音が聞こえる。アギトが面食らったのだろう。
それも無理からぬほどの、骨折患者のそれとは思えぬ雄叫びだ。
「時間がねぇんだ……このまま死ぬわけにゃ、いかねえんだよ……!」
確かに、お前の事情は分かっている。
だがそれすらも、今では気にしている時間が惜しい。
正直済まないとは思うが、それでもお前の都合を聞いているわけにはいかないんだ。
悪いが今ここにいる以上は、腹をくくってついて来てもらう。
この場を打開できるかもしれない力があるなら、何と言おうと戦ってもらう。
「こいつはどうしても殺さなくちゃいけないんだ……でなきゃみんな、殺されちまう……みんなみんな、守れねぇんだ……」
思い出すのは、いくつもの顔。
この殺し合いの中で出会った顔に、殺し合い以前から知っていた顔。
中には敵だっている。どうしても分かり合えない奴だっている。
それでも皆、こんなところで死んでいい命ではないのだ。
こんな化け物みたいな男なんかに、無惨に蹴散らされていい命ではないのだ。
「こいつを倒せなくちゃ、意味ねぇんだっ!!」
命を落とすことは怖くない。
今更それ自体を怖れはしない。
それでも、自分が命を落とす時は、同時にアーカードもまた死ぬ時だ。
そうでなければならないのだ。
あの吸血鬼なんかよりも、奴を残して死ぬことの方が、何十倍も恐ろしいのだ。
だから自分は命懸けで戦う。
奴を葬り去れるというのなら、この命を賭けても構わない。
そうすれば残された人々を守れるというのなら、命なんて惜しくはない。
それでも今は、悲しいくらいに力が足りない。
この命の全てを燃やし尽くしても、奴の命には届かない。
今以上の力がいる。
限界を超えた力がいる。
故に。
だからこそ。
「だからあたしに力を貸せ――アギトッ!!!」
-
◆
最初は聞き流すつもりだった。
途中から戦いが起きていたのには気づいていたが、それでも無視を決め込むつもりだった。
自分にどうしろというのだ。
自分に何ができるというのだ。
もう、何もかもがどうでもいい。
いつしか仲間意識を抱いていたヴィータの窮地も、この胸を打つには至らない。
今更戦う意味など見出せなかったし、そうまでして生きる意味すらも見つからなかった。
何せ自分は亡くしたのだ。
あの2人を喪ってしまったのだ。
ずっと共に連れ添ってきた、ゼスト・グランガイツとルーテシア・アルピーノ。
生まれてきた時のことは覚えていないし、自分を作ったマイスターの顔も知らない。
ただ静かに長き時を眠り続け、気付けばどこぞの施設で実験動物
いつかは心と身体が壊れて、何一つ生まれた意味を残せぬままに、終わってしまうのだとばかり思っていた苦痛の日々。
そんな境遇を終わらせてくれたのが、あの2人組の旅人だった。
故に孤独な自分にとっては、2人は絶対的な恩人であって、無二の家族でもあった。
そんな肉親を喪ったのだ。
別世界の別人の可能性はもちろんある。だが、そうでない可能性ももちろんある。
であれば自分が生きる意味など、一体この地上のどこにある。
無理に生き残る理由も、そのためにヴィータに力を貸す義理も、どこにも見当たりはしなかった。
――急げッ!!
その、はずだった。
その言葉を、聞くまでは。
――時間がねぇんだ……このまま死ぬわけにゃ、いかねえんだよ……!
頭から冷水をぶっかけられたような心地だった。
こいつはなんと強い意志で、あの怪物に立ち向かっているのだ。
自分と同じように、全ての家族を喪ってなお、こいつはまだ戦うというのか。
なんと力強い闘志か。
なんと逞しい決意か。
身体がボロボロになってなお、その身に燃える灼熱の意志には、一切の陰りも見受けられない。
何故そうまでして戦えるのだ。
家族ですらない他人のために、何故そこまで戦おうと思えるのだ。
そんな姿を見せられていては。
そんな声を聞かされていては。
――こいつを倒せなくちゃ、意味ねぇんだっ!!
あの男を思い出してしまうではないか。
-
ゼスト。
ゼスト・グランガイツ。
こうありたいと心から思える、誇り高きベルカの騎士。
あの日自分を救い出してくれた、ヴィータの槍の本来の持ち主。
強く気高く雄々しかった、父にも等しき最愛の男だ。
存命の頃のゼストもまた、己の意志と誇りに従い、真っすぐに戦い続けていた。
傷つきボロボロになりながらも、ルーテシアの望みを叶えるために、ひたすらに槍を振るっていた。
結果犯罪者であるスカリエッティに加担こそしたものの、その心の有りようは、正しく騎士の持つべきそれだった。
ゼストがこの場に生きていたなら、一体どう立ち回ったか。
恐らくは目の前のヴィータ同様、あの魔物と戦っていたのではないのだろうか。
たとえ己が滅びようと、その胸の正義を貫くために、命を賭して戦っていたはずだ。
ならば、自分には何ができる。
ゼストを愛した自分には、一体彼のために何ができる。
「……分かったよ……」
見極めろ。
ゼストの願いとは何だ。
ゼストの想いとは何だ。
正しく生きてきたゼストならば、自分にもそれを求めるはずだ。
真っすぐに己の生き様を貫き、生き続けてほしいと思うはずだ。
その想いに従うことで、初めて報われるのではないのか。
その願いを叶えることで、ゼストは救われるのではないのか。
生きるために、戦うこと。
この狂った殺し合いを打開するべく、正義を信じて立ち向かうこと。
そのために戦い続けてこそ、初めてゼストは報われる。
自分を救ったのは間違いではなかったと、初めて認めることができる。
「それを旦那が望むのなら、あたしも一緒に戦ってやる……!」
腰の翼を羽ばたかせた。
緩んだデイパックの口から、勢いよく我が身を飛び出させた。
月の光をその身に浴びる。
闇夜の月明をその身に受ける。
あの日と同じ月の明かりを、五体全てで受け止める。
「ユニゾンするぞ、ヴィータッ!!」
戦うんだ。
ゼストの名に恥じないように。
ゼストの恩に報いるために。
自分はゼストの娘であったと、胸を張って生きるために――――!
-
◆
ユニゾン・イン。
それが魔法の言霊だ。
共に紡いだその言葉が、剣精を光の粒子へと変える。
眩い桜色の魔力光が、この身体へと溶け込んでいく。
精神のリンクを感じた。
感覚の一体化を感じた。
燃え盛る炎の熱と共に、騎士と融合騎の肉体が、光の速さで同調していく。
これがユニゾンというものか。
この胸に感じる温かな炎が、身も心も重ね合わせるということか。
同時に漲るのは力。
血液を沸騰させんばかりに、全身からにじみ出る熱い力。
熱気に当てられた大気中の水分が、真っ赤な湯気となって立ち上った。
ほとばしる体温が炎を成し、火花を散らして五体を包んだ。
燃え上がる真紅の光に包まれて、ヴィータの姿が変わっていく。
灼熱の凱火に包まれて、2人が1つになっていく。
――私は、今のままでも十分幸せや。
守りたい、命があった。
――我ら、夜天の主の下に集いし騎士。
――主ある限り、我らの魂尽きることなし。
――この身に命ある限り、我らは御身の下にあり。
共に戦った、仲間がいた。
――お話を聞かせて!
不思議な少女と、戦場で出会った。
――だけどそれが、僕の今の意思だから。
――死なせてしまったアグモン君やクロノ君の分まで、僕達が戦うんだ。
共に戦えたかもしれない、人々に出会った。
――ヴィヴィ……ちゃ……を……お願…………―――
救うと約束した、命があった。
――お前が、俺のはやてを殺したんだ。
救えなかった、命があった。
-
まるで走馬灯のように、出会った顔が浮かび上がってくる。
今この時を生きている、救わなければいけない者達。
自分の力が足りなくて、散っていってしまった者達。
自らの内より湧き上がる炎と共に、瞳に浮かんでくるいくつもの顔。
全て、守りたかった命だ。
守るべき者達であり、守れなかった者達だ。
はやてのために戦ってきた。
目的すらなかった人生を終えて、ただはやてを守るために、戦う力を振るってきたつもりだった。
されど周りを見渡してみれば、こんなにもたくさんの顔がある。
少なからず信じた者達の記憶が、こんなにもたくさん浮かんでくる。
人間、変われば変わるものだ。
はやてを救うためとはいえ、人々を脅かしたというのに。
闇の書に支配されていたとはいえ、大勢の命を奪ったというのに。
いつの間にか、守りたい人達でいっぱいだ。
別に、大層な正義感があったわけじゃない。
血と罪に染まったこの身には、正義の味方を名乗る資格はない。
だから、これはただのわがままだ。
人間なら誰しもが持っている、ほんのささやかで取るに足らない、子供じみたわがままだ。
そしてそれでも構わない。
ただのわがままでも構いはしない。
自分1人の勝手な願いで、誰かの命が守れるのなら、いくらでも貫き通してやる。
せめてこの最期の戦いくらい、いいカッコができるというのなら、わがままだって構うものか。
「でりゃあッ!」
槍を握った右手を振り抜く。
身に纏う炎を振り払う。
赤き炎熱を闇に散らせ、戦士の姿を外気に晒す。
ぱちぱちと舞う黄金の火花は、さながら月下の桜吹雪。
陽炎に揺らぐ熱気を切り裂き、銀月の白光をその身に受けて、
剣精と共に新生した鉄槌の騎士は、今こそ戦場に躍り出る。
その身を覆う騎士甲冑は、一瞬前のそれとは違っていた。
半袖の上着は姿を消し、ノースリーブのインナーが露出している。
ゴシップロリータの鎧を彩る、漆黒のリボンと革の手袋は、眩い金色に染まっていた。
黄金に煌く頭髪と、水色に輝く双眸は、さながら赤と青の炎。
「紅の鉄騎、ヴィータ」
今こそ、その名を口にした。
改めてその名を名乗り上げた。
誇り高き守護騎士として。
命を守る騎士として。
輝く満月のスポットライトと、煌く炎の花弁に照らされて。
「烈火の剣精アギトと共に――――――推して参るッ!!」
-
「らぁっ!」
大地を蹴る。
穂先を構える。
鬱陶しいデイパックを放り捨て、アスファルトの地を疾走し、目標目がけて再び殺到。
黒光りする鋼鉄の槍は、今や灼熱に輝く朱色の槍だ。
大振りに構え、一閃。
がきん、と鳴り響くは金属の音。
互いの構える業物が、衝撃にびりびりと振動する。
「ほぅ」
ぽつり、とアーカードが漏らす。
ここに来てあの無敵の吸血鬼が、初めて感嘆の声を上げた。
なるほど確かに、その気持ちは自分でも理解できる。
自分ですらも驚いているのだ。
身体強化も武器強化も、ユニゾン前とは桁違いだ。
烈火の剣精のサポートの成果は、ヴィータの想像を大きく上回るものだった。
ユニゾンデバイスとの融合とは、これほどのパワーをもたらすものなのか。
(でも、まだ十分じゃねえ)
それですらもまだ足りない。
まだまだ微妙に届かない。
まともに押し合えるようになっただけでも、かなり進歩したと見ていいだろう。
だが、所詮はそこまでだ。
他の部位への攻撃はあくまで牽制。最重要目的は、弱点の心臓目がけての一突き。
相手の反応速度よりも早く、防御不可能な速度が発揮できなければ、到底十分とは言えない。
《ヴィータ、一旦下がれ!》
「何!?」
《いいから早く!》
唐突に脳内に浮かぶ声は、念話の感覚に近かった。
急に後退を指示したアギトに従い、一旦その場から飛び退る。
飛行魔法で加速をかけ、対象との間に十分な間合いを保つ。
《いいか? 今からあたしが動作を指示する。でもってお前があたしの動きに合わせて、奴に攻撃を叩き込むんだ》
「何だって?」
着地と同時に提示されたのは、そんなアギトの提案だった。
一瞬、意図を測りかねた。
それもそうだ。
そもそもユニゾンデバイスというものは、術者をサポートし戦闘能力を高めるために作られたもの。
術者がデバイスに使われる、なんてふざけた話は聞いたことがなかった。
《槍の使い方が分からねぇんだろ? にわか仕込みで申し訳ねぇが、あたしが教えてやるって言ってんだよ》
なるほど確かに、よくよく考えてもみれば、それも魅力的な提案かもしれない。
元々アギトが得意とするのは、二つ名通り刀剣型のデバイスだ。
しかし彼女のロードだったゼストは、今まさにヴィータが手にしている、槍型デバイスの使い手だった。
つまりアギトの中には、少なくとも彼と戦闘を重ねた分だけ、槍術のノウハウが蓄積されているのである。
おまけに騎士と神経レベルで一体となり、文字通り融合する融合騎だ。
教官と身体感覚を共有し、全く同じ動作を体感している。恐らくその習得速度は、人間の比ではないだろう。
-
「面白ぇ、その話乗った!」
快諾の声と同時に、再度加速。
全身に灼熱の魔力を駆け巡らせ、吸血鬼の懐へと飛び込んでいく。
体内のアギトが動作を先取りし、狙う行動に最適な構えを取った。
それに合わせ、ヴィータも動く。
アギトと同様の手つきをして。
アギトと同様に腰を落として。
アギトと同様の呼吸リズムで。
問題はない。しっかりとした手本があるなら、それくらいは再現可能だ。
こんな小柄ななりをしているが、自分も数百年の時を戦い抜いてきた、ヴォルケンリッターの鉄槌の騎士。
必要な基礎体力と反応速度は、戦場で十分に磨き抜いてきた――!
「うぉりゃあっ!」
その速度は一陣の熱風。
その鋭さは熱砂の嵐か。
アギトの足さばきを再現し、アギトの手さばきを再現し、低い姿勢から突き上げた。
長身のアーカードの心臓目がけ、足元の高さから突きを放った。
何度となく放ったはずの突き。
それが構えが変わっただけで、その速さと威力の何としたこと。
びゅんと風を切り焼き尽くして。
目にも留らぬ刺突が殺到。
もちろん、そう簡単に当てられるはずもない。急所に命中することなく、心臓直撃コースを回避される。
だが、それだけでも驚嘆に値する成果だ。
轟々と燃え盛る灼熱の槍は。
煌々と光を放つ鋼の豪槍は。
「いい! 実にいいぞ守護騎士(ヴォルケンリッター)!」
あの無敵の吸血鬼の左肩に、深々と突き刺さっていた。
めらめらと炎が衣服に燃え移り、真紅のコートを焦がしていく。
傷口から流れる血液が、炎に焙られ沸騰していく。
肩に刺さった程度なら、一分もすれば塞がるだろう。
だがそれでも、十分な成果だ。これまで軽くいなされていた攻撃が、初めてまともに直撃したのだ。
正直、自分でも驚いていた。
構えを矯正するだけで、こうもスピードを乗せやすくなるものなのか。
「さぁ、これでようやく第一歩だ。このまま終わってくれるなよ。この私の命にさえも、あるいは届くやもしれないぞ?」
「言われねぇでもッ!」
力任せに槍を振った。
肩の肉ごと切り裂いて、強引に穂先を引き戻した。
ミディアムレアに焼けた筋肉が、宙に飛び散り霧散する。
にぃ、と頬の肉を釣り上げて、狂的魔的に笑むアーカードを、鋭く真っ向から睨みつけた。
《融合適正はそう悪くない! もう少し火力を上げていくぞ!》
「でえぇぇぇりゃああぁっ!」
アギトの声に合わせるようにして、再び第二撃を放つ。
次なる動作は薙ぎ払い。
提示された正しい動作は、使い慣れたグラーフアイゼンのそれとは全くの別物。
ぎぃんと唸る正宗によって、今度の一撃は防御された。
それでもまだまだ怯みはしない。すかさず三撃目を叩き込む。
それで駄目なら四撃目。脇腹を裂いただけなら更に五撃目。
ヴィータ1人では成し得なかった、流れるようなコンビネーション。
そして疾風迅雷のスピードに、更に炎熱のパワーが付与される。
「ふんっ! だりゃあっ!」
その手に立ち上るのは陽炎。
その槍に燃え盛るのは灼熱。
斬撃。突撃。突撃。
炸裂。炸裂。炸裂。
穂先が切っ先に激突する度、轟音と共に爆発が上がった。
敵に攻撃が命中する度、炎が弾け火花が散った。
ヴィータの操る無銘の槍は、今や文字通りの爆炎の槍だ。
-
(おしいな。これで身体が万全だったら……)
しかし、それですらも十分とは言えない。
爆裂と刺突を繰り返しながら、しかしその頬には冷や汗が流れる。
確かに敵のスピードは、攻撃速度も回復速度も、あのセフィロスと交戦した時に比べれば遅い。
微々たる差ではあるものの、やはりエリア1つを壊滅させた激戦が、身体に響いている証拠だろう。
それこそこちらのスタミナが万全ならば、あるいは持久戦の末に倒せたかもしれない。
しかし、事はそう単純ではない。
相手の体力が不十分であるように、こちらの体力も不十分なのだ。
否、もはや満身創痍と言ってよかった。
こちらは大量の刀傷を負わされ、ろくに治癒や再生もできず、おまけに肋骨を砕かれているのだ。
その上ユニゾン影響下のスピードアップによって、動きがより激しくなったのもよくない。
痛覚と出血による消耗はピークを向かえ、胸の傷は更に悪化の一途を辿っていた。
適切な治療を受けなかった場合、最悪死んでしまうかもしれない。
そしてその隙を逃す敵ではない。
アーカードは完璧だ。
自分のように、技術や慣れで実力が左右されるような、半端者では断じてはない。
恐らく経験者ではないのだろうが、奴の剣術はあまりにも拙い。それこそセフィロスに指摘された、一瞬前の自分と同じだ。
にもかかわらずこの男は、その大振りで無茶苦茶な動作で、シグナムにすらも匹敵する素早さを見せている。
パワーに至っては言うに及ばない。
もはや技量がどうこうだとか、そういう次元には存在しないのだ。
そんな相手の攻撃を、いつまでもしのぎ切れるような、生易しい健康状態ではないのだ。
(どうする)
今は気合で保っているだけだ。一瞬でもコンビネーションを崩そうものなら、あっという間に叩き潰される。
そうならないうちに倒さなければ。
だが、それができるかどうか。
ユニゾン状態になってなお、未だこちらの力量は、相手の動きに追いつけるレベルを出ない。
相手を完全に出し抜いて、一直線に心臓を潰すのは不可能だ。
それができるというのなら、とっくにセフィロスの技量をも超越している。
セオリー通りに戦うのなら、敵を傷つけ余力を奪い、自ら隙を作らせるしかない。
しかしその隙を生みだすまで、この身体が耐えられるかどうか――?
――ばぁん。
「!?」
刹那、轟音。
ばぁん、ばぁん、と立て続けに2発。
突如戦場に割り込んできたのは、拳銃の発砲音と思しき爆音。
同時に、ぶしゅ、と赤が広がった。
吸血鬼が剣を携える右の肩から、赤黒い液体の噴水が上がった。
これにはさしもの魔物も驚いたのか。
くわ、とその赤目を見開くと、反射の動作で背後を振り向く。
次なる衝撃はその瞬間だ。
ごしゃ、と鈍い音と共に、鬼の肩が砕け散った。
鈍色の煌きを放つ右肩が、血と肉と骨とリンパ液を撒き散らす。
赤と白と黄色がないまぜになって、なんだかよく分からない混合物となった肉片が、ぐちゃぐちゃと音を立て地に降り注ぐ。
からからと乾いた音を立てたのは、取り落とされた正宗か。
ずどんと轟音を立ててコンクリを砕いたのは、鋼鉄色のイカリクラッシャー。
「――鋼の軛ィッ!!」
そして突然の不意討ちは、その二撃だけには留まらなかった。
叫びと共に飛来するのは、天空より迫る銀色の閃光だ。
放たれた極太の魔力の楔が、残された左手へと突き刺さる。
その楔は殺すためのものではなく、その場に縫いつけるためのもの。
盾の守護獣・ザフィーラの放つ、ヴォルケンリッター最高硬度を誇るバインド魔法だ。
そしてその守護獣が逝った今、鋼の軛を放てる者は、このフィールドの中にただ1人しかいない。
「今やヴィータ! アーカードにとどめを刺せぇっ!」
闇の書を片手に叫びを上げる、未来の八神はやての姿があった。
-
◆
紅の騎士と吸血鬼の戦いに、突如割り込んだ2つの横槍。
これらを放ったのが何者で、いかなる状況の末に放たれたのかを、今から順を追って説明しよう。
まずは、2発の銃弾とイカリクラッシャー。
このコンボを叩き込んだのは、激しい戦闘の音を頼りに、地上本部跡から帰還した金居だった。
(やはりアーカードか)
彼が戦場にたどり着いたのは、ちょうどヴィータが峰打ちを食らい、肋骨を砕き折られた頃だ。
化け物のような長剣を握った、化け物のような男を見据える。
あの激戦を生き残ったのがアーカードであり、敗北したのはセフィロスであるということは、放送の時点で察していた。
今更意外に思うことも、今更絶望することもない。
問題はこれからどうやって、あの不死の魔物を抹殺するか、ということだ。
彼我の戦力差は明白だ。
最強の吸血鬼を前に、ヴィータはあまりにも無力だった。
一方的に嬲られた姿は、まさに見た目通りの非力な子供。
(このまま静観を決め込むわけにもいかないか)
断言してもよかった。
このままではヴィータは殺される。
ろくな抵抗もできないままに、無様に嬲り殺される。
そうなれば自分のプランは台無しだ。
身一つであの不死王(ノーライフ・キング)に勝てるなどという、自信過剰もいいとこな考えは抱いていない。
そしてこの機会をヴィータの死によって逃そうものなら、万に一つも勝算はなくなる。
自分も手助けをしなければ。
自分に危害が及ばない程度に、なおかつあのアーカードを抹殺できるように。
「――ユニゾン・インッ!」
彼女がアギトと融合したのは、ちょうどこの瞬間だった。
なるほど、融合騎というだけのことがある。
紅蓮と黄金に煌く炎へと変貌したヴィータの力は、飛躍的に向上していた。
冗談のように拙かった槍の構えも、見る間に矯正されていく。
(後は、タイミング)
それでも、まだ十分とはいえない。
悲しいかな、今更パワーアップした程度で勝てるようになるほど、彼女の体力は残されていなかった。
今でこそ騙し騙し互角に戦っているものの、あの傷の消耗はいずれ確実に響いてくる。
手を出さなければならないというのは変わらない。
もっとも手を出すタイミングは、かなり掴みやすくなったが。
(見極めろ)
デイパックからデザートイーグルを引き抜く。
まさかこんなに早く使うことになるとは思わなかったと思いつつ、眼前の魔物目がけて構えを取る。
タイミングが重要だ。
あの反応速度と索敵能力を持ったアーカードだ。完全に不意をつかなければ、自分の殺気など容易く気取られるだろう。
未だ自分の立場を守るためにも、アンデッドの正体は明かさないつもりだ。
故に今ある支給品のみを駆使して、一撃で確実に成果を上げなければならない。
狙うは吸血鬼の右肩。正宗を振るう右腕の付け根だ。
見極めろ。
一瞬の光明を見つけ出せ。
この鮮血と爆裂の乱戦の中、アーカードの注意が完全にヴィータに集中されるタイミングを。
なおかつヴィータを傷つけることなく、アーカードにのみ確実に命中させられる位置を。
-
(――そこだ!)
理解してからの反応は素早かった。
グリップを、握りなおし。
トリガーを、引く。
ばぁん、ばぁん、と2連発。
50口径の必殺の魔弾が、硝煙と裂空を伴い加速。
拳銃史上最大クラスの弾丸が、吸い込まれるようにしてアーカードへと向かう。
結果は命中。
2発中どちらもが命中し、盛大な血飛沫を噴き上げさせた。
仕込みは済んだ。本命はこれからだ。
反動ですっぽ抜ける銃身はそのままに、もう片方の手の武器を振りかざす。
膨大な重量を伴い振りかぶられるのは、銀色に煌くイカリクラッシャー。
吸血鬼がこちらを向く前に。
奴がまだ驚愕に硬直しているうちに。
ぶん、と勢いよく投擲。
スパイラル回転を描く超重量は、過たずして右肩に命中。
あらかじめ空いていた銃創が拡張される。
小さな穴を押し広げ、肩全体を粉砕する。
結果はこれまた成功だ。
胴体と右腕が別れを告げ、唯一の得物である正宗が放り出された。
真紅の魔眼と目を合わせたのは、ちょうどその瞬間だった。
その目に浮かぶ感情は、無。
一瞬前まで覚えていた驚愕が、しかし自分と目を合わせた瞬間、急速に覚めていくのが分かった。
やはり、お前はそうくるのか――と。
いつかこうなることは分かっていた、とでも言わんばかりに。
まるでこちらが胸に秘めていた殺意など、最初から見通していたと言わんばかりに。
(さぁ、これからどうする)
底冷えする心を押し殺し、ギラファアンデッドは思考する。
目と目を合わせた一瞬の刹那に、思考の糸を加速させる。
ここまではできた。
だが、ここまでで有効な手札を使いきってしまった。
この隙を突いてヴィータがとどめを刺せるならいい。
問題はそれが間に合わなかった場合だ。
しくじった後の追撃を、一体どうやって実行するか。
イカリクラッシャーは手元にない。相手に捕捉された以上、デザートイーグルの狙撃ではとどめは狙えない。
あまり取りたくない手ではあったが、アンデッドの本性を解放し、双剣の接近戦で仕留めるか――?
「――鋼の軛ィッ!!」
八神はやてが鋼の軛を放ったのは、ちょうどこの瞬間だった。
(これは、無理か……?)
狸は狸らしく。
管理局のちびだぬきは、管理局のちびだぬきらしく。
戦場の脇で狸寝入りを決め込んでいた八神はやては、戦況の一部始終を俯瞰していた。
その上での判断だ。
アーカードはあまりに強すぎた。
いくら使い慣れていない得物とはいえ、あのヴィータが赤子同然にあしらわれた。
刀傷は全身に及んでいるし、恐らくは何本か骨も折れているだろう。
実戦経験に乏しかったであろう、あの調子に乗った天上院明日香とは違う。
自らの全性能を自覚し、理性(ロジック)をもって力を行使する暴君だ。
腕っ節が強いだけでなく、全く隙を見せることがない。あまりに厄介すぎる相手だった。
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