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仮投下・修正用スレ

1名無しさん:2009/05/10(日) 23:38:31 ID:pmy889Lc0
2chの規制や意見を聞きたいなどで本スレに投下できない時にどうぞ。

前スレ
一時投下・修正用スレ
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ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/10906/1204105308/

17613人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:23:26 ID:pNHdHYB60
 今やつかさは、否、つかさだったものは、人体模型を我が身で実演していた。
『VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO…………』
 つかさを引き裂いたのは、おそらくメタルゲラスの口がベノスネーカーほどに大きくなかったからだろう。細くなったつかさの肉体は、まるで麺を啜るようにしてメタルゲラスに吸い上げられていく。
 その様子に、剥離によって大量発生した血液を少女に浴びせている事を気付いた風は、全くなかった。
「……ばっ! がっ、はぁっ、……ぷふっ!!」
 位置が悪かった。
 つかさを見上げる形となっていた少女は、つかさが秘めていた体液をその顔に浴びる形となってしまったのだ。しかも叫んでいたのが悪い。めいいっぱいに開いた口はさながら餌を求める雛の様相、少女は双子の片割から溢れ出した血や体液を嚥下する羽目になったのだ。
「……はっ」
 そして血の滝は途絶え、左の眼球を嚥下したところで少女は息をついた。
 直後、
「おおおおぇぇぇぁぁぁぁぁ……」
 吐瀉される液体は真っ赤だった。
 喉と口を全開にして放たれた嘔吐物に顔を埋めて、少女はそれっきり動かなくなった。
 レストラン前の大通りの音は死に絶えた。
 両手の指の数に等しい人数がいるであろうに、誰1人として喋るものはいない。目の前の暴力を前にして何れもが言葉と心を失い、語るものがいなければ器物はそれに応えない。人に始まり物で終わる静寂に鼓膜は寂しいと叫び、耳鳴りだけがおわす者共の耳を苛む。
 だがその中にあって声を作れる者がいる。
 加害者だ。
「はは……っ」
 紫の鎧を身に包んだ浅倉は、鎧に守られた肩を小刻みに上下させる。幾度となく連呼する、は、という哄笑が大気を叩き、仰け反った首は見ている筈もない空へと向けられた。
 その嗤いが、酷く気に障る。
「貴様ーー」
 カードを仕舞い込んだポケットに手を滑らせ、始は浅倉へ1歩を踏み出す。
 掲げた足裏が路上を踏んだ、直後、
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!!!』
 哄笑を掻き消す咆哮が大通りを揺らした。
「!!?」
 大音量は重力に似ている。あらゆる物体を透過し、全てに与えられる衝撃を受け、何人かの人影が膝をつく。そうでないものであっても、思わず耳を抑えざるを得ない猛りだ。
 ビルは窓という窓を口にして、しゃ、という大合唱を唄う合唱隊に早変わりだ。1棟につき何十個はあるであろう窓口は硝子を打ち砕くことを歌声とし、路上にたむろする小人どもへ形ある歌声の雨を降らせる。
 誰も彼もが耳を塞ぎうずくまるところに注いだ硝子の雨は、まさしく弱り目に祟り目を表現する。
「……ぐ」
 咆哮に降り注ぐ雨がどれほど降り注いだだろうか。硝子の破片は積雪のように始へのしかかり、重さこそないものの、硬質な痛みが突き刺さる。右膝をついて頭を垂れていた始は震える足を奮い立たせ、体中に乗る硝子を手で払った。
 そして、周囲がいやに影っている事に気付く。
 何であろうか、と見上げ、
「…………!!」
 太陽を遮る赤龍の姿に目を見開いた。
 見やる余裕もなく、しかし見るまでもなく周囲の者共は自分と同じなのだと理解する。これに気付けないほどの愚か者は有り得ない、という事だろう。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA…………!!』
 唸り声をあげる龍は、先から少年や少女を喰らい続ける化物の同類らしかった。
 光沢で何処か無機質な身体と瞳のない双眸は、ベノスネーカーやメタルゲラスに通じる様相だ。ベノスネーカーのように長い胴を持つが身体は赤く、爪もあれば牙もある。顎を縁取る牙や細長い髭は、東洋の龍を再現していた。
 極めつけはその威圧感だ。
 空中に長胴をうねらせた姿が重力を強めているかのようだ。たった1回の咆哮で周囲一体の窓硝子を粉砕した龍は、まさしく鏡写しの世界の支配者といった風体、この世界に2体といない覇王の存在感だった。
 だがそれを前にして尚、浅倉は哄笑の姿勢を変えようとはしない。
「来たか、ドラグレッダー」
 浅倉は龍の名を、そして到来を予期していたらしかった。
 何故解ったのだろうか、と始は思い、
(あの時砕いた箱……!)

17713人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:26:23 ID:pNHdHYB60
 レストランへ青年を叩き込んだ直後に、浅倉の左手は何か黒い箱を握りつぶしていた。やはりあれは、ベノスネーカーやメタルゲラスを支配する道具と同じものだったのだ。あの赤い龍、ドラグレッダーなるモンスターもまた箱に隷属する怪物の1体。それが砕かれた事で、今現れた。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA…………』
 ドラグレッダーの凶貌は浅倉を見据えて離さない。
 さながら箱を砕いた主を、青年を害した浅倉を許すまじと怒っているかのようだ。
(だが)
 まずい、と始は思う。
 浅倉があの箱で変身する仮面ライダーのいた世界の人間だったならば、箱を砕いたことによって、それに隷属するモンスターが現れることは予想してしかるべきだ。現にドラグレッダーが現れた今も、浅倉は微塵も揺るがない。
(何か、企んでいる……!!)
 何を企んでいる、反復するように始は思い、しかし目の前にしてドラグレッダーは動いた。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!!』
 巨体を軽やかにうねらせ、ドラグレッダーの開かれた牙が強襲する。
 空気を穿って向かう先に立つのは、紫の鎧を纏う浅倉威。
 バックルに装填した箱から取り出した1枚のカードをドラグレッダーに掲げる、浅倉威だ。
(あれは)
 思う言葉を音にする間もなかった。
 それほどまでの須臾であったし、何より、掲げられたカードとドラグレッダーが接触する寸然に起きた強烈な発光が始の網膜を貫いたからだ。
「ぐ、ぅ」
 腕を交差して両目を守り、だがそれも10秒と満たない短時間。しかし取り戻された視界は劇的な光景を描いている。
 ドラグレッダーの姿がないのだ。
 龍の姿は今や浅倉が掲げるカードの中にある。
「契約完了、だ」
 告げる浅倉は、どこに隠していたのだろうか、ベノスネーカーを模す杖を取り出した。
 コブラの形相を象る杖の先端はやや平らに広がっている。カードを親指と人差し指で摘んだ掌は形相の後頭部に触れ、するとその部位がスライドしてスロットが飛び出す。
 丁度手にしたカードが嵌るような大きさだ、と始が思った通りに浅倉はカードをスロットに挿入、叩き付けられた五指によってスロットはカードごと杖内部に送り込まれる。
 直後に杖の双眸が発光、電子音声が響く。
『ADVENT』
 それは契約を意味する言葉であり、どうやらカードそのものの種名でもあったらしい。そして同時に、契約の履行を求める命令でも、あったらしい。
 姿を消していたドラグレッダーが、ビルの合間からその長胴を出現させる。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!!』
 浅倉の頭上でとぐろを巻いたドラグレッダーの姿は、先ほどまでとは違ってどこか意図的だ。
「支配、されたのか」
 それは始の言葉ではなかった。
 この場にいる十数人の人影、そのうちのどれか1つが紡いだ声である。だがそこに込められた感情は始のそれと同種のものであり、また、この場にいる浅倉以外の全員が抱いている思いでもあっただろう。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!』
『SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
『VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOーー!!』
 上空のドラグレッダーに対抗するかのように、ベノスネーカーとメタルゲラスも浅倉の背後に現れた。
 赤い龍、紫の大蛇、銀鎧の犀、3体の異形を従える浅倉の哄笑は、いよいよをもって堪え切れないところまで来たらしい。咆哮の中にあって、その耳障りな愉悦は確かに聴こえる。
「はは……! はははははははははっ!!」
 身を仰け反らせ、腕を、顔を、喜悦を辺りへ撒き散らすかのように振り回す。狂人じみた振る舞いだ。
「……これで!」
 不意に、哄笑混じりの言葉が紡がれた。
「これでっ! ようやくっ!! 始められるよなぁ!!!」
「何をだ」
 始は問い返さずにいられなかった。
「我々を攫い、惨殺した人間を怪物に喰わせ、ーーこの上何を望んでいる!!?」
「戦いだ!!! それ以外に何がある!!!」
 断言は響く。
「カードデッキを手に入れた今、我慢する必要はねぇんだ!! 距離も場所も関係ねぇ、このミラーワールドがある限り、鏡がある限り、どこに至って化物共で引きずり込めるんだからなぁ!!!」
 一息。
「あのババアの言う事聞くこたぁねぇんだ……!! 俺達は!! 俺達で!! 殺し合おうぜ!!!」

17813人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:27:11 ID:pNHdHYB60
     ●

「あの男!」
 視界の一切を黒く染めるその中に立つプレシア・テスタロッサの衣装は黒い。
 ローブともドレスともつかない軟質の布地、大きく開いた胸元からは病的に色白な肌が覗けている。首筋や手首をか細くやつれ、狂気に打ち込まれた瞳の色は、病的な印象に拍車をかける。
 かくもプレシアの姿を捉えられるのは、彼女が周囲に空間モニタを展開しているからだ。
 青白い光の長方形は、まるで虚空がPC画面であるかのように表示される。大きさはプレシアの上半身程度、それが腰ほどの高さに映し出されているのだから、プレシアの顎は若干引かれる形だ。
「やってくれたわね……!!」
 怒りに揺れるプレシアの瞳は、空間モニタに映し出される動画を睨んで離れない。
 映し出されているのは大通りを敷いた市街地、看板として大きく印刷された文字はいずれも鏡移しとなっており、そこはプレシアが用意した世界とは違う、ミラーワールドであえる事が伺い知れた。
 その中には黒い影が幾つも浮いていた。数にして両手の指を全て折る程度、五体に輪郭を隆起させるそれは人影だ。その誰もが、そこに含まれないたった1人によって引きずり込まれた被害者である。
 全ての元凶であるたった1人の男、操作を受けた空間モニタはその姿をクローズアップする。
 紫の鎧を持つ仮面ライダー、個体名を王蛇とするそれで本来の姿を隠しているが、彼を監視し続けるプレシアには正体が知れている。
 名を浅倉威、凶悪な殺人犯として社会全体から追われていた男だ。
 野獣のような男だが、その常軌を逸した戦闘欲求とカードデッキを使いこなす経験が、このバトルロワイヤルにおいて生き残る参加者の半数近くを一点に集中させるという暴挙を組み立てた。
(カードデッキ無しでも生きられるように調整したのが裏目に出たわね)
 本来のミラーワールドならば、現実世界側から来たあらゆる物体は5分と待たずに霧散し消滅する。
 しかしカードデッキの個数が限られている以上、消滅までにかかる時間をそのままにしておけば、引きずり込まれる事が死ぬ事に直結する広大な武器となってしまう。だからこそプレシアはミラーワールドに働きかけ、猶予の時間を12時間程度にまで引き延ばした。
 だが生存可能時間を引き延ばしたために、今やミラーワールドは強者が集う闘技場と化した。
 まさか理解していたのか、と思うが、今までミラーワールドに侵入した参加社はいない。浅倉でさえも今回が始めてなのだから、知っている筈がない。
(完全に、考え無しに片っ端から引きずり込んだわね……!!)
 あまりにも愚かな所業であったが、とにもかくにも、それは最悪の状況に至ってしまったのだ。
「くぅ……!」
 白い歯が唇を噛んだ。
「バトルロワイヤルの横取り!! ーー戦闘狂の野獣が、ありもしない頭を使って!!」
 紫色の口紅が溶け、皮膚が破れて一筋の血が顎を伝う。しかし胸中で渦巻く憤怒はこれで収まるようなものではない。流血が怒りに比例していたら、既にプレシアは辺りを赤く染めて失血死している。
 だがいつまでも手をこまねいている訳にはいかない。
 殺し合いによってなし得る望みがある以上、この争いには介入する必要があった。
 その時、プレシアの背後で光が生じた。
 2つの光点は水平に走り、弧を描いて正円を描いた。内側に灯った光点はインコース、若干小さめである。二重の円が闇に浮かび上がり、次いでそこに幾何学模様の羅列が走る。文字のようにも見えるそれは円に倣って環状となり、始点に繋がった後は回転を始めた。
 そしてインコースの円の中央に正方形を重ねたような図形が現れ、その中にも文字を挟んだ二重円が入る。
 それらも回転し始めれば、ミッドチルダ式の空間転移魔法が発動する。
「プレシア!」
 魔法陣の中、水中から出てくるかのように現れたのは1人の女性だ。茶髪に白亜の西洋風法衣を纏う風貌は、賢げな印象をまとっている。しかし今は端麗な顔を焦りに濡らし、足が現出するとともに駆け出す慌てぶりを見せた。
 消えゆく魔法陣を見返すこともなく、茶髪の女性はプレシアの後ろに立つ。
「セフィロスの死についてお話ししたい事が……!!」
「どうでも良いわ」
 女性、リニスの言葉をプレシアは断ち切る。しかしリニスの唇はそれに従わなかった。

17913人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:27:43 ID:pNHdHYB60
「ですが!」
「どうでも良いって言ってるでしょう!!」
 振り向き様の平手が、リニスの白い頬を打った。
 あぅ、と短い悲鳴をあげてリニスはよろめき、その拍子に頭頂部を隠していた帽子が飛んだ。法衣にあつらえた白い帽子は闇の上に落ち、その内側に隠していたもの、リニスの頭部に生える山猫の耳が露見した。
 頬を抑えるリニスに、プレシアは烈火の表情で言葉を浴びせかける。
「使い魔風情が主の命令に背くというの!? 身分を知りなさい、魔力で動く死体如きが!!」
「………………っ」
 震える唇を噛み締め、俯いたリニスの肩が震えた。
「答えなさい道具! 貴方は何? 貴方の主は? 貴方の存在意義は!?」
「……私は」
 引き攣る喉で、しかし声は紡がれる。
「私は、プレシアの道具です。プレシアだけを主とします。……プレシアの目的の為だけに使い捨てられる、F計画の技術で幾らでも代えの効く、人の皮をかぶった山猫の死体です」
「解っているなら、私の気を患わせないで!」
 俯くことすらもプレシアは許さない。
 リニスの左耳を掴み、捻り上げるようにして面を上げさせる。
 涙の滲んだ双眸が目前となり、そんなに濡らしたいなら唾を吐きかけてやろうか、という思いでプレシアは自らの顔を突き付ける。文字通り、目と鼻の先にリニスの顔が迫った。
「“貴方”に次はないわ、次にやったらは新しい“貴方”を起動させて交替させる! 全身の随意筋を意思と切り離して、虚数空間に叩き込んでやる!! 解ったら命令に従いなさい!!」
 そこまで言って、リニスの表情は、一瞬で目が打ちくぼんでしまったような色合いとなった。
「……は、ぃ」
 雨天に放浪する野良猫のような様相に怒りを僅かばかりに諌め、放り捨てるようにリニスの耳を離す。
 猫の死体に触っていたのかと思うと、ばい菌がべっとりと掌に移り住んだ気がして、洗浄魔法を発動させて無菌状態にした。
 もはや振り向かず、プレシアはリニスに命令した。
「今すぐ“アレ”を連れてミラーワールドに行きなさい」
 その言葉に、え、とリニスが息を飲むのを聞く。
「“アレ”とは……彼女達の事を言っているのですか」
「何、もう私の命令に逆らうの?」
「……いえ、ですが彼女達を連れ出す前に、あのカードを使ったら宜しいのでは」
「所詮は猫畜生ね、それともボケが始まったのかしら? あれは効果が特殊過ぎて複製が効かないの。それ以外はどうにかなってもね。解りきったことに口を開かないで。死臭がするのよ、貴方の息」
「……すみません」
「こういう時のための量産型でしょう? 脳髄まで腐ったかしら? 死体だものね、貴方」
 ふん、とプレシアは鼻を鳴らし、僅かばかりに加虐心を満たす。
 それでも、消滅を恐れて言葉を引っ込める癖に一端の口を、と思うと、埋まりかけていた苛立ちも再び疼くような心持ちがした。
「ミラーワールドに引きずり込まれたのは、いずれもが高い戦闘力を持つ者ばかり。それを狙ったんでしょうが、このまま潰し合われたのでは、パワーバランスが崩れるのよ」
 彼等には殺し合ってもらわなければならない。だが異なる勢力がもう一方の勢力を圧倒的に踏み潰したのでは意味がないのだ。拮抗して泥沼となり、血に塗れてむせび泣いてもらわなくてはならない。
 今の状況は、穏健派を穏健派で、過激派を過激派でまとめているようなものだ。これはプレシアにとって非常に都合が悪い。
 急ぎミラーワールドに連れ込まれた参加者を現実世界へ戻す必要があった。
「奴等を現実世界に戻しなさい。ああ、でも浅倉威は……殺すのよ」
「やはり、そうしますか」
「当たり前でしょう。奴にカードデッキを持たせ続ければ同じ事が何度も繰り返される。そしてあの男は、圧力や制限で御せるような人種ではないわ。ーー殺すのが妥当なところね」
「はい」
 答えが来て、背後に魔力の気配が生じる。リニスが転移魔法を再び発動させたのだ。
 解れば良いのよ、という思いで、プレシアは再び言葉を紡いだ。
「ーー行くのよ。馬鹿共のらんちき騒ぎを、とっとと収めてきなさい!」

     ●

 宣言の直後、大きな破砕が発生した。
 起点はレストランの向かいに並ぶビルの一つ、硝子の自動扉を壁ごと内側から砕くものだ。衝撃は渦を巻いてレストラン側まで届き、瓦礫は硝子の破片は粉塵を引き連れて道路へ飛来する。そうした中には、ベルトの千切れたデイバックも混じっている。
 誰もが息を飲み、そして粉塵の中から一際大きな影が現れた。

18013人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:28:17 ID:pNHdHYB60
 人影だ。
 体を折り畳むように小さくまとめ、大きくバックステップするようにして道路上空を横断する。着地したのは砕かれたビルの対向車線側に並ぶガードレールを越えた先、つまりは浅倉が立つレストランの側に拓かれた駐車場だ。人影の靴底がアスファルトを擦り、耳障りな音をたてる。
 移動の止まった人影を浅倉は見る。
(男か)
 金髪に色白な肌をする典型的な白人だった。厳つい顔に碧眼を秘め、髪と同色の眉は合間に皺を寄せた厳しいもの。太い首から広がる肩幅は広く、軍服の上からでも筋骨隆々である事が解る。
 そして左右の袖を引裂いた両腕は、体格に不相応に大きい。それどころか人体ですらなかったのだ。
 黒みの強い灰色に染まる岩のような腕は、それぞれに1枚づつ刃を伸ばしている。
「…………………」
 異形の腕を持つ男は浅倉を見ない。
 まるで狩りを現在進行形で行う豹か何かのように、身を低く屈めた姿勢を維持している。青い双眸は自らが飛び出してきたビルの大穴にだけ注がれ、
「おぅ?」
 大穴から新しい人影が歩いてきた。
 それは刃を生やす男と同じように異形の腕をした、同じ顔を持つ白人だった。ただし新たに現れた方の男に刃はなく、砲門のように深く穿たれた穴が空いていた。
 晴れ始めた粉塵を蹴散らし、持っていて邪魔になったのか、デイバックを放り捨てた。ガードレールに足をかけて男もまた路上に出る。
 その視線もまた、1人目の刃を持つ男を捉えて離さない。
 空気が張り詰め、しかしそれを意に介す事もなく浅倉は声を紡いだ。
「解ってる奴がいるじゃねぇか」
 笑いに首を浅く傾げ、
「お前、名は」
「キース・レッド」
 軍服の方の白人は短く答える。
 獰猛さを滲ませつつも笑んだ声に対し、その答えは非常に事務的で色がない。しかし浅倉は気分を害することもなくそれを受け止めた。むしろ、それでぐらいでなければ可笑しい、とさえ思っていた。
 争いに従事する者は、かくあらねばならない、と。
 個人的にはもう少し絡んでくれると楽しみが増すのではあるが。
「イケる口だな」
「勘違いするなよ」
 答える男、キース・レッドの声はやはりつっけんどんだ。
 視線を揺るがさず、しかし意識を浅倉に向け、キース・レッドの分厚い唇が蠢く。
「ここに来る前からやっていた戦いを再開しただけだ、貴様の下らない自殺願望に付き合う気は無い」
 だが、
「……そんなに死にたければ、後で気が向いたら殺してやる」
 それだけ言って、キース・レッドはアスファルトを蹴撃した。
(速ぇな)
 瞬いた後、軍服の姿は浅倉と同基軸、歩道の上にある。
 一体どれほど地を蹴っただろうか、跳躍のごとき歩幅は人知を越えている。
 だが道路に立つ砲の男もまた動いている。異形の腕を突き出し、暗闇をたたえる穿ちは、今やガードレールの手前で腰を落としたキース・レッドを見つめる単眼だ。
 穴の奥で僅かに光が灯り、何かが来る、という短い一語が浅倉の本能を支配する。
「ーー散れ!」
 浅倉の号令に3匹の怪物はめいめいの方向へと走る。浅倉はベノスネーカーの胴に両足を置き、どうしても足りない移動距離を補った。
浅倉の動きに誰もが身を動かす中、移動をモンスター任せにした浅倉はキース・レッドへ振り向いた。
 奴はどうしただろうか、その思いを乗せた視覚は須臾の応酬を見る。
「ふ……っ!」
 キース・レッドの両腕を疾く振られ、一対の刃は光線となって閃いた。
 ぴ、という耳の奥が痺れるような効果音をたて、その軌道上にあるガードレールの一端は切断、連結の軛を解かれた鉄塊に送られるのは、振り抜かれた分厚い靴裏だ。
 かぁん、甲高い音。
 風を破る先にあるのは男が構えた巨腕の砲門。
「……!!」
 鉄塊が男とキース・レッドの丁度中間まで飛んでいく。
 そして、光。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………!!!」
 穴から放たれる光は空気を焼き、鉄塊を飲み込んで影に変え、消し飛ばす。
 周囲に熱気の圧力が波となって押し寄せ、窓硝子や鉄を僅かに歪める。

18113人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:28:56 ID:pNHdHYB60
 だがそうした被害の中にキース・レッドの死はない。
「……滑り込み!」
 男が直立姿勢で砲撃する以上、地上とは胸丈までと同じだけの隙間が空いている。キース・レッドがいるのはその空白地帯、姿勢は右半身でアスファルトを擦るスライディング姿勢だ。
 ガードレールを切り飛ばしたのは攻撃ではない。初動を紛らわす陽動、そして飛び越えることなく路上に出るための障害除去だ。
 腕からの光が尾を見せた。
 そうなればキース・レッドに分がある。
 頭上を光線が通り過ぎたのを確認して巨腕が起立、楔となったそれに身が止まり、動きは弧を描く。
 それを利用しての起立は、蹴り上げとして男の顎を狙う。
「キース・シルバぁああああああああああああぁぁぁーーーーーーーー!!」
 それが片割の男の名前だろうか。
 怨恨まざまざといった口ぶりの強襲は、しかし背が仰け反らされた事で回避された。
 続けてキース・シルバーなる男はバック転へ動きを接続、更にサマーソルトキックへと昇華する。
 だが回避と連動した攻撃は狙いが甘い。だからこそ余裕のあったキース・レッドは膝を曲げ、打ち上がるキース・シルバーの爪先を踏みつけた。
 かたや勢いのある逆立ち、かたや浮いた身を落としつつある踏みつけ。地に着く分、動力はキース・シルバーの方に分がある。
 故にキース・レッドの足は空に打ち上げられ、彼もまたバック転を打った。
 互いに全身をバネにした幾度かの回転、それが止まるのはそえぞれが背後にしていたガードレールの手前まで辿り着いてから。刹那の攻防を見せた同形の男達は、再び道路と同じだけの幅を挟んで対峙する。
「ここで」
 空白の後に口を開いたのはキース・レッドだった。
「ーーここでこそ、ケリをつけてやる」
「やってみろ」
 応さ、とキース・レッドは再び瞬発、相対するキース・シルバーもまた、構えた腕から光を放った。



【現在地 F-6(ミラーワールド) レストラン前の大通り】

【キース・レッド@ARMSクロス】
【状態】疲労(中)、グリフォン起動中
【装備】核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金
【道具】ベガルタ@ARMSクロス『シルバー』
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)を倒して自分が高位だと証明する
 1.キース・シルバーと決着をつける
 2.紫の仮面ライダー(浅倉威)を殺してミラーワールドから脱出する
 3.極力早く首輪を外したい
【備考】
 ※キース・シルバーがアレックスと名乗っている事を知っていますが呼ぶ気はありません
 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかに把握しています
 ※白刃の主をヴァッシュだと思っています
 ※サンライトハート改は極力使うつもりはありません
 ※ルーテシアの話の真偽に興味はありません

【アレックス@ARMSクロス】
【状態】疲労(中)、マッドハッター起動中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本:自分の意思で戦い、この殺し合いを管理局の勝利で収める
 1.キース・レッドと決着をつける
 2.キース・レッドに勝って彼が所属する組織を尋問、その後首輪を破壊する
 3.六課メンバーと合流する
【備考】
 ※セフィロスは殺し合いに乗っていると思っています
 ※はやて(A's)は管理局員であり、セフィロスに騙されて同行していると思っています
 ※キース・レッド、管理局員以外の生死に興味はありません
 ※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似た機能があると思っています
 ※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています
 ※他の参加者が異なる時間軸や世界から来ている可能性を考慮しています
 ※市街地東部に医療施設が偏っている事から、西部にプレシアにとって都合が悪いものがある可能性を考えています

18213人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:29:30 ID:pNHdHYB60
 2人の男を中央として熱気が渦巻く。
 波濤にして怒濤の威圧は夕暮れの街をより赤く染め上げ、路上に散らばる窓硝子の破片を巻き込んだ様はさながら吹雪、誰もが危機の回避に眼を閉じる中、煌めく群は遥か彼方へと飛ばされる。
 金居が立つのはショーウィンドウを失ったビルの内側、椅子とベンチ、カウンターが隆起する内装は軽食店の作りだ。事実、カウンターの向こうに立付けられた棚には皿が並んでいた。今や軒並み破片の憂き目だが。
「………………」
 さすがの威圧も建造物までは砕きえない。だからこそ金居は、2度目の激突が起こる前にこの中へ飛び込んだ。
 そして今、影から覗くようにして両者の戦いを盗み見る。
「浅薄」
 金居は路上に巻く争いを、そう評した。
 男達がいかなる関係であるかはあずかり知るところではなかったが、見る限りにおいて拮抗しているようだ。仮に片方が倒れても残りは半死半生、生とつけば殺と続ける狂人どもが渦巻くこの場においては漁父の利で殺されるだけだ。場を読まぬこと甚だしい。
 それでなくとも、このミラーワールドという世界が自分達にどれほどの影響を与えるのか解らないのに。
(所詮アレらも狂人ということだな)
 種族の代表として常に生き残らねばならないアンデットとして、金居は愚挙を軽蔑の眼差しで捉える。
 だからこそ金居はミラーワールドの脱出を最大唯一の目的とする。幸いにして自分には脱出できる手段を持ち合わせているのだ。
 肩にかけていたデイバックを下ろし、取り出したるは青色の平たい箱。虎を象る紋章のそれは、紫色の仮面ライダーが身に付け、また握りつぶしたものとも同種のものであるようだった。
(これが何ほどのものかは知らないが、……大方これが“あの種のライダー”の変身を為す物なのだろう)
 そしてミラーワールドの出入りを為す鍵でもある筈だ。
 金居はこれまでの体験を思い出す。
「入口は鏡となった硝子、この世界の文字は鏡移し、……ここが鏡の世ならば」
 だとしたら、
「ーー出口もまた鏡、というのが打倒か」
 告げて、金居は壁に押し当てていた背を離して振り返る。
 そこにあるものは、一面の壁を形作る、鏡。
(視覚効果、店内をより広く見せるための工夫だろうか)
 この殺し合いに引きずり込まれる前、人間の街を歩いている最中に幾度となく見受けられた内装だ。さすがに無傷とはいかなかったが、屋内の、それも威圧を防ぐ壁の裏に張り付いていたお陰で全損は免れていた。
 小さなヒビを這わせ、埃に塗れつつも、しかし鏡は金居の姿を映す。
「出られるか、な」
 金居はそう呟いて、片手にした青い小箱を鏡に掲げようとして、
「ーーそうか」
 聞き覚えのある声が耳朶に注ぐ。
 無意識の動きで小箱を懐に仕舞い込み、振り向きによって金居は人影を見る。全身を黒くした人型は硝子を失ったショーウィンドウの向こう側、建造物の際で歩道を踏んでいる位置取りだ。
 だが、金居は一つの思い違いをしていた。それは影をまとうから身を黒くしているのではない。その人物そのものが、黒い姿に包まれているのだ。
 その姿が目の前まで迫ったことで、それは一目瞭然だ。
「!!」
 不意をつかれて金居は反応出来ない。したのは黒尽くめに胸ぐらを掴まれ、路上へ投げられてからだ。
 デイバックを店内に取り残してしまった、それすらどうでも良い。執着して注意を乱せば死へと直結する。今や自分達アンデットの不死性は失われているのかもしれないのだ。
 放物線を描く金居の姿が歪んだ。
 人の姿が、鈍く光り輝く黄金の外殻をした双角の異形へと。
「ふ……ッ!」
 空中で身を翻して着地、重量の増した身体を両足は支えきるも、引き換えにアスファルトが陥没した。
 そうして異形の面構えとなった金居は、店内から戻ってきた黒い人物を睨む。
「……カリス」
 黒い流線型の外殻に茨のような紋様、胸板と目元にあるハート形の隆起は、奴がハートスーツのアンデットを支配する仮面ライダーであることを暗に主張している。
 だがその正体はカリスではない。
「ジョーカーか」
「その名で呼ぶな」
 自分と同じアンデットの一種、しかしその存在は全てを絶滅させる最悪の切り札だ。
 醜悪な本性をカテゴリーAで押し隠し、ジョーカーは金居を指差す。
「……渡してもらおう」

18313人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:30:05 ID:pNHdHYB60
 ジョーカーが何を望んでいるのかが解らない金居ではない。奴もまたアンデット、そして人間を模倣する心の持主、この場から離脱したいと考えるのは同じだ。
 だが小箱は1つしかなく、互いに手を取って仲睦まじく帰還するような性根も持ち合わせていない。
「渡すと思うか?」
「頼んでると思うか?」
 会話が結ぶ火蓋、それを切らんとして互いの手は武器を創造する。
 カリスが現すのは弦のない弓、しかし中央から上下に伸びる弧は刃の閃き、もはやそれは柄のない鎌だ。
 対する金居は反りを向き合わせた双刃を1つの鍔から生やす剣、その柄は左右の五指がそれぞれに1つずつ握り締めている。名をヘルターとスケルター、アンデットに与えられた武器創造能力によって金居が生み出しうる、種族の権威を顕現する武器だ。
「あの時つかなかった決着をつけるか」
 金居、いやさギラファアンデットと表すべき自分は、右の大剣の切先でジョーカーを指す。
 応じるようにジョーカーは、身を深くして両腕を開く独特の構えだ。アンデットが顔を合わせた時、言葉を交わすまでもなく意思は通う。それを敢えてした自分は、ひょっとしたら人間に感化でもしたのだろうか。
 そして互いの脚が力み、
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
 突然の哄笑が空を貫き、穿たれた道を通って影が路上を破砕した。
「「…………!!」」
 道路が断片として隆起するのは、丁度ジョーカーと金居が相対する直線の中央だ。さながら噴煙する火口といった風に、アスファルトのクレーターは土埃を舞い上げている。
 その中央に踞る影は、まるで隕石を真似ているかのようだ。しかしそれは、自ら輪郭を崩すことでそれを否定する。
「……ククククク」
 黒色の正体はマントだ。クレーターの底部に起立し、声の主はマントを払うことで土埃を蹴散らす。
 立ち上がるのは紫紺のスーツに黒い単眼の仮面で全身を隠す、体格的に見て、男だった。
「貴様は……」
「我が名はゼロ」
 仮面の男は宣言する。
「ーー魔王ゼロだ!!!」
 その男に対して抱くべき一語を、金居は胸中において絶叫することとなった。
(変態だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!?)
 激情に精神と五体は支配されて金居は動けない。ジョーカーもそうだったのだろう、体を強ばらせたままにゼロなる男の宣言を容認する。
 それを良いことに、ゼロは一歩を踏み出した。
『貴様等、戦いに背を向けるのか』
 二歩目。
『逃げ出す負犬か』
 三歩目。
『ならば』
 三歩目を踏み出し、
『ーー死ぬがいい』
 四歩目には、金居の懐に立っている。
「!!!」
 地を蹴る暇もない。
 腹部に触れた黒い拳、しかし訪れる衝撃は全身に対する。
「あぐ……ッ!!」
 さながら突風を受けたような感覚、しかし大重量のアンデット体である金居を飛ばす風はどれほどか。黄金の体は白いガードレールに叩き込まれ、幾つかの支柱をもぎ取り、鉄の帯を巻き込み変形させた。
 強化された体は人類の作る器物程度で痛まない。だからこそ、今得られる痛みはゼロの拳によるものだ。
(有り得ない……!) 
 器物にも痛まない外殻が、何をして人体の一撃に痛みを得るというのか。
(そもそもどうやれば拳で体躯の前面全てに衝撃が来る!?)
「考える必要があるのか?」
 は、とした動きで金居はゼロを見た。
 細く小柄な体に据えられる大きな単眼に表情は無く、しかしこちらを見透かしているような気がする。
 事実ゼロは、嗤っている。
 両腕を深く広げ、左右の五指に虚空を握り、機械的に加工された声は第二の宣言を響かせる。
「私は魔王! 虫けらの王者風情が届くと思うか!? 貴様が圧倒されるのも驚愕するのもこれから敗北するのも!! ーー全ては私が魔王であるが故なのだ!!!」

18413人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:40:46 ID:pNHdHYB60
     ●

(やっべーーーー超ぉーーーーーーーー楽しぃーーーーーーーーーーーーーー!!!)
 仮面に表情を、服に歓喜を押し隠してキングの胸中は狂喜乱舞する。
 今ならばこの仮面という人間文化も理解出来る。自分を曝け出さないということは責任からの解放、違う誰かを演じることを無意識の深度にまで根付かせ、普段は出来ないようなことも声を大にできる。
 途方もない開放感だった。
 そして謝辞と賛辞をない交ぜにして、仮面に隠した視線は紫の鎧姿を見る。
(浅倉威! やっぱお前サイコーだよっ!!)
 ベノスネーカーから降り立つその姿はミラーワールドを出入りする仮面ライダー、その1体である王蛇の装いだ。それでもあの言動は、浅倉以外のものである筈がない。
(ミラーワールドで巻き起こるオールスター総当たり戦! ジョーカーもダイヤのカテゴリーKもいるとはね!!)
 そして何より、
(この状況っ! プレシアだってマヂギレってもんだろー!!)
 それが何よりも楽しかった。
 神様面をしてふんぞり返ったあの女が口角泡吹かして青筋たてているのかと思うと、腹筋が崩壊しそうだ。
 ざまぁみろ、という思う。より正確に表すならば、ざまぁwww、って感じだ。
「……ぐ」
 と、視界の端でカテゴリーKが動いた。
 腰を落とした巨体に応じて折れ曲がったガードレールに手をつき、二本角の下に埋め込んだ双眸がキングを見る。だが、その目に映るのは黒尽くめの怪人、ゼロの姿だ。
 吹き飛んだ拍子に離れて落ちた双剣が消失、直後にカテゴリーKの手中に現れる。転移した訳ではない。顕現を解き、しかる後に再び創造したのだ。
 両手の剣で身構える異形の目にあるのは警戒、そして少しばかりの怯え。
(ビビってるビビってる! 戦いはやっぱイニシアチブだよね!!)
 まさか本当にカテゴリーKの重量を吹き飛ばしのが、純粋な腕力だと信じ込んでいるのだろうか。
 ただ単に、殴ると同時に念動力で全身を突き飛ばしてやっただけだというのに。
 使用後に訪れる疲労感も今や快感だ。苦労の伴う娯楽は比較対象となり、純粋な娯楽以上の愉快を与えてくれる。むしろ疲れるほどに楽しくなっていくのだ。
(ブラフかかってゴクローさん! もぅちょい僕の“魔王サマごっこ”に付き合って欲しぃなぁ!)
 折角巡り巡ってきたアンデット同士の戦場、極めつけにこの格好なのだ、超人のフリをして場を引っ掻き回してやりたい。精一杯自分の掌の上で踊り狂ってもらおうではないか。
(さて)
 と、キングはゼロの姿を振り向かせた。カテゴリーKが立つ延長線上、キングを越えた先に立つのはカリスの姿だ。今や彼はある意味自分の同類だ。別人の姿に変装して戦っているのだから。
『貴様はどうする?』
 仮面の変声機能がキングのそれを歪めて響かせる。
 思わぬところで役に立ったな、とキングは思う。この2人を前にしてしまえば、声で正体が悟られただろう。
 『CROSS-NANOHA』で見たゼロの口調に多大な尊大さを加味する調子で、ゼロの単眼に黒い姿が映る。
 その姿は、
「うぅ」
 苦悶の声を漏らす様だった。
 鎌とも弓ともつかない武器を取り落とし、外殻に膨らんだ胸を抱きしめるようにして身をよじっている。胸の内で何かが蠢くかのように、それが身を破って現れようとしているかのように、その有様をジョーカーの膝は大笑いをする。
 だがキングにはそれを笑う気にはなれなかった。
 楽しくはある。しかし、いよいよか、という緊張感に仮面の中で汗が伝う。
(僕の正体が解らなくても、本能的にアンデットがいるのだと理解しているんだね)
 変貌こそしていないが、そうした力の片鱗を発揮したのだ。本能的に感づいても可笑しくはない。
 そして、最強のアンデット2体を前にして、絶滅の象徴は本能を抑え切れない。
「おおおおおぉ……ッ!!!」
 月に吼えるように、仰け反ったカリスは身を反り返す。
 直後、
「ぉアァぁ……!!」
 全身が水を放った。
 人の輪郭をした水流は、内側に秘めたカリスの姿をもやに変える。
 そして現れたのは、ジョーカーの本当の姿だ。
「……ハぁーーーーーー……カぁーーーーーー……」

18513人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:41:31 ID:pNHdHYB60
 全身に牙を生やしているかのような、凶悪な姿だった。黒い頑強な外殻に埋め込まれた緑色の結晶は、キング達アンデットにとっての血潮の色だ。額から伸びる長い触覚と口角の牙は、あたかもカミキリムシを思わせる。もっとも、黒光りする外殻と合わせれば、ゴキブリのようにも思われたが。
 バックルの意匠は形を変えていない。しかし中央に断層を刻んだハートの紋章は緑色に変色していた。 
 姿勢は大きく背を曲げた猫背、だらしなく腕を垂らし、唾液を零す様は野獣の様相だ。
「ぉおおおおうるるるぁあああああああぁぁぁぁーーーーーー!!!」
 吼えて、煩わしいデイバックを引裂いてしまう。周囲に散らばった道具の輪を作るその様には、知性の欠片もなかった。
(本気で覚醒したんだね)
 狂気を発散する有様に、キングはそう思う。
 切り札たるアンデットの出現は本来危機的なものであったが、しかし今のキングには幸運だ。ただのカリスでは、カテゴリーKである自分の戦闘力には決して敵わないからだ。
 互角以上の戦闘力が三竦み、否応もなく感情が高揚する。
『さぁ!!』
 ジョーカーとギラファアンデット、その両者を左右にしてキングは告げた。
『ーー戦え、化物共!!』



【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】ジョーカー形態、暴走
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:目に入るものは皆殺し
 1.……ぐるるる……
【備考】
 ※自身の制限にある程度気付いています
 ※ジョーカー化の欲求に抗っています
 ※首輪の解除は不可能と考えています
 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝利者となるのではないか」と考えています
 ※特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘するとおおよその位置が察知できます
 ※エネルとの遭遇からこのバトルファイトに疑念を抱き始めました
 ※赤いコートの男(アーカード)がギンガを殺したと思っています
 ※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)
 ※カードデッキの複製(タイガ)@魔法少女リリカル竜騎でミラーワールドから出られると考えています
 ※ハートスーツのラウズカードを揃えた場合、ジョーカー形態を解除できます

【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、ハイテンション、ゴジラへの若干の興味
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】なし
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする
 1.カリスとギラファアンデット(金居)の戦いを引っ掻き回す
 2.ギラファアンデット(金居)からタイガのカードデッキ(複製)@魔法少女リリカル龍騎を奪う
 3.浅倉と手を組んでこの戦いを更に引っ掻き回す
 4.浅倉以外のこの場にいる参加者を皆殺しにする
 5.『魔人ゼロ』を演じてみる
 5.はやての挑戦に乗ってやる
 6.浅倉とキャロに期待
 7.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える
【備考】
 ※自身の制限にある程度気付きました
 ※キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレードには以下の画像が記録されています
  ・相川始がカリスに変身する瞬間の動画
  ・八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像
  ・高町なのは、天道総司、の偽装死体の画像
  ・C.C.、シェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像
 ※首輪に名前が書かれている事を知っています
 ※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています
 ※ゼロの正体がルルーシュだと知っています
 ※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています
 ※カードデッキの複製(タイガ)@魔法少女リリカル龍騎でミラーワールドから出られると考えています

18613人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:42:15 ID:pNHdHYB60
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】ギラファアンデット形態、腹部に痛み、ゼロ(キング)への警戒
【装備】ヘルター&スケルター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのは STS OF HUNTER
【思考】
 基本:プレシアの殺害
 1.カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎でミラーワールドから離脱する
 2.ジョーカー(相川始)とゼロ(キング)を退ける(可能なら倒す)
 3.利用できるものは利用し、邪魔者は排除する
 4.隙を見てアーカードを殺害する
 5.アーカードの隙を見てUSBメモリ@オリジナルの内容を確認する
 7.時間停止の対抗手段を手に入れたらキングを殺す
【備考】
 ※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています
 ※最終目的はバトルファイトの優勝なのでジョーカーやキングも封印したいと考えています
 ※カードデッキ(龍騎)@魔法少女リリカル龍騎の説明書をほぼ暗記しています
 ※殺し合いが難航すればプレシアの介入があると考えています
 ※首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています
 ※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています
 ※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています
 ※自身の制限に気付いています。変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています
 ※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれない、と考えています
 ※カードデッキの複製(タイガ)@魔法少女リリカル龍騎でミラーワールドから出られると考えています





 路上で宣言を轟かせる黒尽くめの男、しかし彼は、自分が飛び降りたビルより更に高いところに、もう1つの視点があったことに気付いていないようだった。
 高さにして10の階層を数えるほどの建造物を足場として、アーカードの視覚は路上を見下ろす。
 暴風を吹き起こす対決と、異形が直線で三竦みを描く対決が始まるそこで、足を止めているものなどありはしない。誰も彼もが自らの命と敵対者の命をぶつけ、奪うか奪うまいかの攻守を交換している。
 実際その通りなのであるが、アーカードには、それらがとても遠くの情景に思えた。
「………………」
 薄らとヒビの浮かんだビルの屋上、鉄柵を超え、僅かばかりの段差に足をかけるアーカードの視線は乾いている。耳になる空洞を風が走るような音は、背後にした大型ダクトの音か、それとも心境ゆえに聞こえる幻聴だったのか。
 どうでも良いか、とアーカードは思う。
(……少年)
 思い起こすのはこれまで戦ってきた者達の姿だ。
(アンデルセン。……セフィロス)
 その誰も彼もがアーカードに血を吹かせ、心を血によって潤し、しかる後に濡れる寒さを味合わせる者共だった。強い戦闘力と、そして精神力を持っていながら、それを持って立ち向かいながら、しかしアーカードの満足感を徹頭徹尾で維持してくれた者はいない。
(少年は私を見ずして死に、アンデルセンは知らぬ間に殺され、セフィロスもまた同様……)
 退屈とは違う。
 憤りとも違う。
 ただ、全ての敵対者に置いてけぼりにされたような、寂寥だけが胸を満たす。
 眼下で争う者どもの一体どれほどがセフィロス並みの戦闘力を持っているだろうか。アンデルセンの再生力と狂信を抱いているだろうか。少年の使命感を持っているだろうか。
(闘争)
 欲しい、そう思った。
 血を吹きたい。
 血を吹かせたい。
 血を啜りたい。
 血に浸りたい。
 血を喰らいたい。
 血、血、血、吸血鬼故なのか自分がアーカードたる故なのか、そんな事はどうでも良い。ただ、血に塗れる闘争だけが欲しい。
 故にアーカードは屋上の縁取りを踏む脚に力を込め、黒装束の男に倣って飛び降りようと思った。
 その時だ。突如として背後に気配が生まれ、空気が震えたのは。
「アーカード氏ですね」
 呼びかけにアーカードは動きを止める。
 音色は女性のものだ。だが油断することはない。“第三の目”によって周囲一帯を把握するアーカードの特殊能力をかいくぐり、唐突に背後に立つことが出来た人物が、正常な人間であるはずがない。

18713人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:42:47 ID:pNHdHYB60
「参加者No.20、種族は吸血鬼。類稀な戦闘力と闘争意欲を持ち、バトルロワイヤルを円滑に進行させる勢力ーーつまりは“マーダー”」
「不躾だな、レディ」
 アーカードは脚を揃え、そこに至って振り向いた。
 鉄柵の向こう、ビルに合わせて奥行きのある長方形を描く屋上の中央に、1人の女性が立っている。褪せた茶髪、白と焦茶は法衣を思わせる装いだが、胸の谷間を覗かせる法衣はこの世に存在しない。付属品なのだろう、衣服に合わせたデザインの帽子が頭頂部を隠している。
 彼女には、自分達にあるものが欠落している。
 首輪だ。
 何者にも遮られない首はあんなにも白かったか、アーカードは言外に感嘆する。
「プレシアの眷属か」
「はい、リニスと申します」
 アーカードの誰何に女性は一礼した。
 帽子を取って胸に当てる一連の動作は瀟酒の一語、しかしその時に露見した頭部には、山猫を思わせる三角形の耳が生えていた。
 純粋な人間ではないらしい、そう思った目線は、リニスのそれと向かい合う。
「プレシアはこの戦いを望んでいません」
 冷えきった表情だった。
「貴方達を、元々いた世界に戻します」
「元々? 笑わせる、さっきまで殺し合っていたあの世界だろう?」
 思いの欠片もない、それこそ道具の作業音のような声を、アーカードは嘲笑う。
 そこには微かな怒りが漂っていた。
「私をこの戦場から離すと?」
「この世界に生物は存在し得ません、長時間いれば肉体が消滅します。例え貴方といえども……」
「私から、闘争を、取り上げようと言うのだな?」
 そこで始めてリニスの顔が動いた。伏し目がちだった瞳は大きく剥かれ、薄らと汗の滲んだ顔は、青ざめ引き攣っている。
 賢い娘だ、とアーカードは思う。もはや遅いが。
「ーー宜しい、ならば戦争だ」
 携えた抜き身の日本刀を向け、後ろ手にデイバックを放り捨てた。10階分はある下方の大地へと落ちていくデイバックを見ることもなく、その双眸はリニスを捉えて離さない。
「都合の悪い争いはさせない、と? つくづく業腹な連中だ」
「私は望んでいません。……というのは、欺瞞ですね」
 解りました、と浅く俯いたリニスは呟く。
 日本刀を迎えるようにして差し出されたリニスの掌、そこには金色の三角形が乗っていた。ブローチか何かであろうか、一片の三角形の上に一回り小さな同形を乗せたそれは、台座のようにも見える。
 リニスの麗しい唇が、音を紡いだ。
「バルディッシュ、セットアップ」
『ーーYes,sir』
 単語の羅列を口ずさむとともに、金色の三角形は強く閃いた。
 やがて光は収束、先端に角張った板を備え付ける棒のような形となった。柄の長い斧のようだ、と思うが、実際光が失われてみれば、それはまさしくその通りの姿となる。
 鈍色の柄に黒い刃、基部には黄色い獣の瞳のような球が埋め込まれており、武器というよりは武器型の機械と言った風だ。
「バルデッシュ・レプリカ、……転移魔法を」
 Yes、その返答も終えぬうちに新たな光が放たれる。
 それはリニスと自分の間、どちらかといえばリニスよりの位置からだ。円と文字、図形を交えて回転するそれは、さながらオカルトの魔法陣といったところか。
 しかし円陣の中から人が現れた時、アーカードはそれが本当の魔法陣だったのだと知った。
「……貴様は」
 水からせり上がるようにして屋上に立ったのは、1人の女性だった。
 金髪に赤い瞳、若々しい顔立ちは長身でグラマラスな体躯を誇示している。だがそれも、分厚い軍服のような黒衣の下にあっては、いささか興ざめな感も諌めない。
 そんな彼女は、見覚えのあるベルトをつけていた。まるで機械で構成されているような黄金色の装甲、脇には何かを接続するためのジョイントが設けられている。バックルだけは、鳳を模した紋章を浮き彫りにする茶色いレリーフが嵌め込まれている。だがそれは、楔のようなものでバックルに縫い付けられていた。
 そこだけが、アーカードの記憶との相違点だった。
(かつて少年が身に付けていた物の同種か)
 だとすれば、あの金髪の女も何らかの怪物を従えているのだろうか。
「リニス」
 ふいに、金髪の女がリニスの方へと振り向いた。

18813人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:43:33 ID:pNHdHYB60
「あの人を捕まえれば、良いんだよね」
「そうです、フェイト」
 フェイト、そう言うらしい金髪の女に向けるリニスの表情は笑み。
 しかしそれはどこか軋むような、引き攣ったような感情だった。
「そうすれば、きっとプレシアは貴方を褒めてくれますよ」
「……うん」
 その言葉にフェイトは表情を締めた。生気のない瞳に意欲が宿り、一直線にアーカードを見つめる。
 そして、一語を紡いだ。
「ーー変身」
 途端にどこからともなく人影が出現、しかし黒ならざる鏡色の影はあちらこちらから現れ、そしてフェイトの体に重なって覆い尽くす。それらが割れた時、そこに立っていたのは、それまでの姿ではない。
 茶色と金色に彩られた、荒鷲を思わせる鎧の戦士だ。
『ーー戦え』
 放たれる声までもがフェイトのものではない。
 腕を組み、威厳を漂わせるように、高圧的な声が響き渡る。
『最後の1人になるまでーー戦え』
 アーカードはその様に違和感を覚え、戦士の背後に立つリニスへと声を飛ばす。
「訊かせてもらおうかレディ、何だコイツは」
「仮面ライダーオーディン」
 リニスは答えた。
 そこにはさっきまで見せていた笑みはない。それどころか、初対面以上に感情は失われていた。
「とある世界において最も強く、また心の伴わない戦士」
 そして、
「変ずるのは、ーー量産型フェイトです」
 正体を明かすリニスの言葉には、苦渋の臭いが伴っている。
「このバトルロワイヤルにおいてフェイト・T・ハラオウンと記された人物、彼女はそもそも、かつて存在した人間の複製としてプレシアが造ったものなのです。そして彼女は今回のバトルロワイヤルにおいて、作業の人手として新たに創造した」
 つまり、
「フェイト・T・ハラオウンは2番目のアリシア。……だから今貴女の目の前にいるのは3番目のアリシア、フェイト3号です」
 なるほどな、とアーカードは頷く。
(よもや人間を建造する技術が存在したとはな)
 言うほどでもない驚きを胸に秘め、続けて予想のついた問いと確認してみた。
「それを本人の目の前で言って良いのか? さっきの会話を聞いたところ、彼女にその自覚はないようだが?」
「問題ありません。オーディンに変身した今、彼女はカードデッキに入力された人格に動かされる肉の人形ですから」
 やはりな、とアーカードは思う。
「加えて言うなら、このオーディンは主催仕様です。貴方達の鎮圧用に造られたものなのでベルトから取り出すことは出来ませんし、戦闘力や使用に関する制限もかけられていない代物。……制限の下で重傷を負った貴方に勝機はないと思われますが?」
「言うじゃないか」
 く、と喉を鳴らして嘲る。
「ミス・リニス、お前は……人でなしと呼ばれることに抵抗が?」
「心にもないことを言うんですね、心もない癖に」
「違いない」
「そもそも私は獣です」
「なるほど」
 ならば、
「化けの皮を剥がす楽しみができた訳だ」
 その言葉が、アーカードのリニスに対する返答となった。
 一度何かを思うように目を伏せ、改めて開くとともにリニスは命令を下した。
「オーディン、彼を鎮圧しなさい」
 翼を思わせる兜が僅かに首肯する。
 その直後、オーディンはその姿を失った。それまで立っていた場所に舞い落ちるのは金色の羽毛、そして今やオーディンの体は、アーカードの目前にある。
「!」
 腕の引きはすでに終わっている。振り抜かれたオーディンの拳がアーカードの顔面に迫り、
「ははっ」
 何の手間取りもなく、アーカードに受け止められた。
「な……!?」

18913人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:44:44 ID:pNHdHYB60
 驚愕したのはリニスだ。
 押し殺していた感情が止められなくなったのか、それまでの冷徹な振る舞いを崩して目を見張る。だがどんなに目を剥いても、オーディンのバックルに縫い付けられた紋章を撫でるアーカードの指は、影になっていて見えない。
「取れないんだったな。ーーならば要らん」
 柔らかな手付きは一瞬にして硬直、抜き手となった手は、紋章をオーディンの胴体ごと貫いた。
『……ォッ!』
 短い苦悶の後、ベルトが砕かれたためだろうか、変身が解けて再び金髪の美貌が現れる。
 痛みと驚きに震える瞳が愛らしい。さくらんぼ色の唇は吐血によって濡れて照り、とても美味しそうに思えた。
「は」
 不意の動きで、アーカードは口付けをした。
 歯を舐め、歯茎をなぞり、舌を絡め、唾液を交換し、そしていつまでも溢れ続ける吐血を啜る。携えていた日本刀を床に突き立て、空いた掌で抱きしめるようにフェイトのうなじを撫でる。
 そして、千切る。
「……ぁ」
 リニスの声がどこか遠い。
 それほどまでに自分は興奮しているのだろうか。
 頭部と胴体の繋がりは断たれ、フェイトの体を支えるのはアーカードの腕だけだ。それも抜き放れば、ご、と鈍い音をたてて屋上に倒れるのもまた道理。遺るフェイトの頭は、その麗しい下唇に食いついたアーカードの唇によって宙ぶらりんだ。尤も、ぶぢり、と喰い千切られて胴体の二の舞を見るのだが。
 くちゃ、くちゃ、と水の滴る音をたててアーカードはフェイトの唇を咀嚼する。味わうように何度も反芻し、嚥下して、血を口紅にしたアーカードは一言、
「やはり処女だったか。……良い味だ」
 血の残り香を口臭に、そうまとめるのだった。
「……化物め」
「解り切った事を」
 リニスの憎悪を受け止めるようなアーカードではない。この程度の視線、今まで何度も受けてきた。同様に虚ろな眼球でこちらを見上げるフェイトの生首を踏み潰し、脳と頭蓋の感触を味わう。
「何が最強の戦士。化物ですらないコイツ等が、何の足しになる」
 突き刺しておいた日本刀を再び手に取り、軽く振ってフェイトの胴体を斬りつけてみた。何の抵抗もなく屍骸は切断、どろり、と黒い血液を垂れ流して、上半身と下半身とが更に分けられる。
 切れ味に問題はないようだ、と確認し、リニスを見やる。
「次はどうする? お前が戦うか、ミス・リニス」
「……いえ」
 若干の竦みを含んだ声だった。
 しかしその目は未だにアーカードへの憎悪をたたえている。
「所詮は戻れぬ道、……ならば、外道に徹しましょう」
 リニスはバルデッシュを掲げ、
「ーー来なさい」
 突如として屋上全体を魔法陣が埋め尽くした。
 数にして百に至る数はアーカードとリニスが立つ屋上だけでは面積が足らず、左右に隣接するビルの屋上にまで展開される。
 そしてその何れもが、円の中央よりオーディンを出現させる。
「これは……」
「単体の強さで敵わない以上、人海戦術でいきます」
 リニスの目は据わっている。だがその姿すらも、一面を埋め尽くすオーディンによって遮られた。
「全てがアリシアの複製とやらか」
「量産型と言った筈です。ーープレシアは少しでもアリシアの面影を消すために成人体で量産しましたが、図らずもそれは個々の戦闘力を高めることになっているのですよ」
 どうですか、という声がする。
「これでもまだ抵抗しますか」
「ようやく面白くなってきた、というところだな」
 もはやオーディンが立っていないのは背後、眼下に大通りを敷いた虚空だけだ。前も右も左も、金色と茶色の鎧に身を固めた兵隊で埋め尽くされてしまった。
「“最後の軍隊(ラスト・バタリオン)”ならぬ“空っぽのブリキの兵隊”。ーーどれほど通用するのか、試そうではないか」
 しかる後に、
「手足をもいでやろう、ミス・リニス。そして泣きわめくお前の髪を引っ掴んで持ち運び、プレシアに至る道を開けてもらうとしよう」

19013人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:45:25 ID:pNHdHYB60
【アーカード@NANOSING】
【状態】ダメージ・疲労(中)、左胸に刺傷(大)、怒り・戦意(大)、
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】なし
【思考】
 基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
 1.リニスに自分をプレシアの元まで連れていかせる
 2.邪魔をするなら量産型フェイトを皆殺しにする
 3.首輪解除の技能者を探してみる?
 4.アンデルセンを殺した参加者を殺す
【備考】
 ※スバルやヴィータが自分の知る者とは別人だと気付いています。
 ※パニッシャーは相当の強者にしか使うつもりがありません。
 ※第1回放送を聞き逃しました。
 ※ヘルメスドライブに関する情報を把握しています。
 ※セフィロスを自分と同等の化物だと認識しています。
 ※ゲーム運行にはプレシア以外の協力者ないし部下がいると考えています。
 ※首輪解除時の主催の対応は「刺客による排除」だと考えています。

【リニス@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康
【装備】複製バルデッシュ@オリジナル
【道具】なし
【思考】
 基本:使い魔として創造主であるプレシアに従う
 1.プレシアの命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進める
 2.量産型フェイトを率いてミラーワールドにいる参加者を現実側の世界に戻す
 3.浅倉威からカードデッキを剥奪、もしくは殺害する
 4.アーカードを鎮圧して現実側の世界に送り返す
 5.プレシアにバトルロワイヤルを中止して欲しい
【備考】
 ※バトロワ会場の世界、主催のいる空間、ミラーワールドを行き来する空間転移魔法が使えます





 ゼロとか名乗る変態と同様に、上空からデイバックが落ちてきた。
 内容物はそれほど多くもなかったのだろうか、内部で砕けたり潰れたりするような音はするものの、デイバックそのものに大きな損壊は見られなかった。
 誰が落としたのだろうか、と見上げる摩天楼で撃音が連鎖する。
 誰かが戦っているのだ。
(……最高だ)
 見えるところでも見えないところでも、至るところに争乱が満ちている。これこそが浅倉が今まで望んでいたもの、何度でも繰り返したいと思う情景だった。
「はは……っ!」
 哄笑に王蛇の鎧が揺れ、しかし浅倉自身に苛みを与えない。それが苛々を募らせなくて、そこまた浅倉が仮面ライダーによる戦いを好んでいる理由の1つであった。
「ご機嫌だな」
 と、体を振るわせる身にかかる声がある。
 あぁん、と横一線の左右に幾つも刻まれる顔を向け、その先に1人の姿を見た。
 男だ。頭に布を巻き、眠たげな瞳とやたらに長い耳たぶを持つ顔は野太い首に支えられ、曝け出された筋骨隆々の肉体へと続く。下半身はエジプトで見られるようなたるみのあるものを履いていたが、2つの穴を貫いているのは素足だ。広い肩幅の後ろには、大きな輪に連ねられた幾つもの太鼓が背負われている。
 声の主の異様に、しかし浅倉は笑みを刻んだ。その男が、再会したくて仕方がなかった相手だからだ。
「久しぶりだなぁ」
「不遜」
 こちらの挨拶を、しかし男は3つの音で断ち切る。
 双眸の瞼はやる気もなくたるんでいたが、しかし僅かばかりに引き攣っているのは、怒り故か。

19113人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:45:57 ID:pNHdHYB60
「虫けら風情がこの私に話しかけるなど、何と不届きな行い」
「…………」
「よりにもよって珍獣を使って私を貶めるなど、第一級犯罪も鼻で笑う咎だなぁ」
「…………」
「とっとと私を元いた場所に戻れ。……否、貴様の力は有用だな……。そうだ、あの男を殺す為に使おう。その力を寄越すか、それとも我が配下となるか、どちらかを選べ」
「…………」
 男の言葉に浅倉は答えない。そして喋ることに夢中な男は、兜から滲む浅倉の気配にも気付かない。
 だがそれもここまでだ。
「何だ、何故なにも答えない。竦んだか?」
 ようやく問われて、満を持して、という気分で浅倉は答える。
「どうした? 今は随分、余裕が無ぇじゃねぇか」
 答えに、男は気配と表情を一変させる。
「不届き……!!」
 振り抜かれた男の両腕が閃光に変じる。
 ゴロゴロ、とどこからともなく空気の揺れる音。
「私に祈れ……!」
「俺は生涯誰にも頭を垂れねぇ」
 もはや声もなく、男の輝く腕が振り抜かれる。
 背後で契約モンスター達が動き、しかしその様に哄笑が轟いた。
「馬鹿め! 雷より早く動けるものか!!」
 雷、それがお前の力か、浅倉が言う間もなく、輝く腕はもはや眼前。
 響きと閃きに霞むエネルの声は、
「!!!?」
 音もない、いやさ音を潰された驚愕だ。
 ご、という衝撃、それを受けたのは浅倉ではなく男の方だった。顎がたわませて首を晒し、エビ反りの姿勢となって空中で仰向け姿勢、かと思った時には浅倉とは正反対の方向へ吹っ飛んでビルの外壁を貫く。
 両腕の輝きは仰け反った拍子にあらぬ方へ放たれしまった。
「………」
 何だろうか、とは思わない。未だ知り得ぬ力を持っている奴等は、まだ何人もいるからだ。
『CLOCK OVER』
 どこからか機械の声が聴こえた。
 そして男の姿が失われた空間で1つの影が浮かび上がる。それは、布を摘まみ上げたような造形の一本角を生やす仮面ライダーだった。側頭部には背後へ伸びる一対の角、取り付けられた赤い双眸の下には黒い隈のような彫り込みがあり、まるで削れるほどに流した涙の痕のようですらあった。
「……あんた」
 だらしなく両手を垂らした姿には精神力の欠片も無い。
 何もかもに絶望した穴ぐらのような声は、その印象に反して若々しい女のものだった。浅倉はその声に聞き覚えがある。
「あぁ、さっきのガキか」
 その声は、目の前で双子の片割を殺してやった少女のものだった。仮面ライダーだとは思っていたが、しかし自分の知らない種類の仮面ライダーに変身するとは思っていなかった。
 意外、といった口ぶりで浅倉は話しかける。
「何だ、復讐に来たのか?」
「どうでも良いわ、そんなの」
 緑色の仮面ライダーが返した返事は、やはり予想外だった。

19213人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:47:24 ID:pNHdHYB60
「……皆して私に文句言うばっかり…………折角助けてやってるのに……何よ……何よ…………なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ…………バクラもつかさもこなたもみゆきも……誰も……彼も……誰も彼もよ? ……みんなして私をいぢめないでよ……なんで私なのよ……誰だっていいじゃない……男だって女だって子供だって年寄りだって動物だって植物だって物だってミミズだってオケラだってアメンボだって空き缶だって生ゴミだって死体だって何だっていいじゃない! 何で私なのよ!! 何で私? 何の権限で私? 一体どこの誰に私をいぢめる権利があるっていうのよ!! 何で私がこんなに不幸? 勉強だって出来るし運動だって出来るしみんなに好かれてだっている……優等生じゃない! 勝ち組よ勝ち組!! この世の不幸なんてそこら中にいる屑共に押し付ければいいじゃない! 何で私なのよ! 家族だっているのに! まだ若いのに!! 将来有望なのよ……? これからなのよ……? それが何でこんな目に遭うの……? 人殺したり人に操られたり妹殺されたり妹の全身の血飲んじゃったり妹の目玉呑み込んじゃったりさぁ……もうやぁよこんなの…………1秒だっていたくないこんな場所……殺し合い……? バトルロワイヤル……? 何だっていいわよそんなの…………私を巻き込まないでよ……私は善良な市民なのよ……無力で無辜で護られなきゃ行けない子羊じゃない……それがどうしてこんな目に遭うのよ……どうしてこんな目に遭うのかって訊いてるじゃない!! ああ良いわ良いわ答えなくていいわそうよね馬鹿で屑で塵で芥で変態で阿呆で生きるゴミと書いて生ゴミと略すあんた達の脳みそなんかで答えが出る訳ないもの……え……違う? そうじゃない? ……私が馬鹿で屑で塵で芥で変態で阿呆で生きるゴミと書いて生ゴミと略す底辺中の底辺だっていうの……だから皆私をいぢめるの……? だから私を傷付けるの……? ひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいよぉーーーーーーっ!! 私だって好きでこんなんじゃないのに! 私だってもっと良くなりたいのに! こなたみたいに正直になりたいしつかさみたいにみんなになんも考えないでいたいしみゆきみたいにスタイルだって良くなりたいのに……ひどいよぉ……ぐす……それみんな……馬鹿で屑で塵で芥で変態で阿呆で生きるゴミと書いて生ゴミと略す底辺中の底辺でもだえる蛆虫の鳴き声だって言うんだ……そうなんでしょ……そうだって言いなさいよ!! 顔に書いてんのよみんなして!! 私を馬鹿にしてるんでしょ!!? いいわよ好きなだけ言ってなさいよ!! アンタ達なんてもう知らない……知らないわよ……もう好きにしなさいよ……知らないわよアンタ達なんて……何してても良いから私に関わらないでよ……こなたでもつかさでもみゆきでも好きにすれば良いじゃない……殴ろうが蹴ろうが犯そうが知ったこっちゃないわよ…………もう……もうやだぁ……もうやだああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!! うぇっ! ぐぇっ! ぇぐっ! ひぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーん!! もういぢめないでよぉ〜〜〜〜……もう痛いのやだぁ……もういぢめられるのやだぁ……ひっ……ひぐ……もうやだぁ……私を見ないで触らないで話しかけないで…………どうせ私は馬鹿で屑で塵で芥で変態で阿呆で生きるゴミと書いて生ゴミと略す底辺中の底辺でもだえる蛆虫の鳴き声に見せかけた下痢の効果音よ…………底辺中の底辺なんだから……それでいいからぁ……もう私に関わらないでぇ……もう来ないでよぉ……帰してぇ…………おうちに帰してよぉ…………なによぉ……見てんじゃないわよ!! 見せ物じゃねぇんだよ!! 金とんぞビチグソが!! ぁぁ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……もう何も言いませんからぁ………御願いですからぁ………………!!」
 狂気、それを垣間見た。
 やり過ぎたか、とは思わない。どうでもいい、とそう思った。
 ぶつぶつと呟きながら、ぐるぐると身を回して、どれ程経ったのか不意に動きの一切を断つ。
 そして絞首死体のような立ち姿で、
「……もぉーーーーーーどぉーーーーーーでもぃーーーーーーーーーーーーーーーー…………」
 一言。
「ーーみんなしんだらいい」

19313人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:48:02 ID:pNHdHYB60
 そのたった一言に、少女の心は費やされた。
 浅倉は言葉を紡がない。
 だから、次に響く声は男のものであったが、浅倉のものではなかったのだ。
「どうだ」
 それは背後からの声だった。それもまた聞き覚えのあるもので、誰であろうか、と浅倉は見る。
 立っていたのは青年だ。安物の衣服をところどころ解れさせ、皮膚に切傷を持つ姿には硝子の破片をそこかしこに乗せている。髪と髪の間から流血し、しかし濡れる瞳はそれらに動じたところが無い。
 浅倉は彼の名を知っている。
「それがお前の生んだ遺恨だ」
「天道、総司」
「そうだ」
 青年、天道総司は答えた。
「俺は天道総司。ーー天の道を往き、全てを司る男」
 浅く指を曲げた掌は空へと掲げられ、全ての後ろで落ちつつある夕陽を逆光とした。
 そして、その掌目掛けて迫るものが空気を裂いた。
「……?」
 羽音だ。
 高速で空気を叩く音は、び、とも、ぶ、ともつかない超速連鎖によって浅倉の耳朶に届く。次第に音は大きくなり、そして赤色の一閃という形で浅倉の右手にある空間を貫いた。
 それはカブト虫だ。
 ただのカブト虫ではない、赤い楕円形に丁の字の角を伸ばす、鋼作りのカブト虫である。
「ここにいたんだな、……カブトゼクター」
 告げる天道を主と崇めるかのように、掲げられる掌へ鋼の甲虫は自ら突っ込んだ。
 五指が赤い機体を鷲掴みにする。
 そうして、いつの間に巻いていたのであろうか、腰にはベルトが装着されている。自分達カードデッキ式の仮面ライダーとは異なる装いのベルトは、バックル全体が平たいジョイントとなっている。
 続く動きは簡単なもので、浅倉も予期していた。呟きをもってカブトゼクターをバックルに接続させたのだ。
 口ずさむ単語は簡潔明瞭、たったの一言、
「ーー変身」
 たったそれだけのことで、天道の姿は六角形をした光の羅列に包み込まれる。
 それらが消えた時こそ、この場における最後の仮面ライダーが現れる瞬間となった。
「……それがてめぇの仮面ライダーか」
 光の中から身を表したのは、灰色の分厚い外殻を持つ戦士だった。潜水服か宇宙服のようでもあるそれは随分と不格好に思え、浅倉の印象に影を落とす。
 だがそれに感づいた風もなく、左右に一回ずつ首を回して、鎧のうちより天道の声がした。
「どうやらこの場にいる人間のほとんどは、殺し合いに乗っている輩らしいな」
 続くは、やはり一言。
「都合が良い」
「それは、お前もこの場で殺し合うって意味だよなぁ?」
「貴様等全員この世界に閉じ込めるって意味だよ」
 外殻の仮面ライダーは拳を構えた。
「おばあちゃんは言っていた。ーー“臭いものには蓋をしろ”」
 浅倉は首を傾げた。
「……何言ってんだ、お前」
「阿呆には理解出来ない高尚な言葉だ。貴様らの毒牙を、高町なのはや数多の非力で戦意のない者達に向けさせない」
 そう言って、
「俺は天の道を往き全てを司る男。ーー全ての命は、俺無くして健やかなることはない」
 溜め息を一つ。
「全く、俺が死んだ後の世が心配だ。死ぬ気は毛頭無いが」
「大層な自信だ」
 しかし、
「俺に勝てる計算をしちゃいねぇか?」
「何だ、俺に勝てると思ってるのか?」

19413人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:48:40 ID:pNHdHYB60
 天道の即答に、ほんの少しだけ遅れて、いつしか哄笑していた。
 召喚器であるベノバイザーを取り出してスロットを起こし、バックルから取り出したカードを装填する。叩き付けるようにして装填すれば、コブラを模す杖は目を輝かせた。
『SWORD VENT』
『SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーー!!』
 背後でベノスネーカーが雄叫びをあげる。
 長い胴の末尾を振り抜き、それによって弧を描いた影が尾の先端から放たれた。影は浅倉の足下に音をたてて突き刺さり、さながら岩に突き刺さる剣といった風体をとる。
 ベノサーベル、浅倉にとっては使いなれば武器だった。
 は、と浅倉は笑う。
「嫌いじゃねぇ」
 天道の態度は、
「嫌いじゃねぇなぁそういうのは。だからよぉ……」
 もたれるように喋って、急激な動きを見せるのは浅倉特有の戦闘スタイルだった。
「苛々に変わる前に死ね……!!」
「……!!」
 振り抜かれたベノサーベルに対し、天道は幾重にも防護された拳で応じる。
 向かっていた2人だけに接触も一瞬、高音の響きにお互いの猛りは弾かれ合い。
「!!!?」
 一瞬にして天道の姿が消えることとなった。
 ご、という音がして並び立つビルの外壁が倒壊する。瓦礫となったそこには、今しがたまで浅倉の目前にいた天道の着膨れした鎧が倒れている。
「ぐ」
 苦悶の声、天道は移動したのではない、攻撃によって吹っ飛ばされたのだ。
 加害者は緑色の仮面ライダー、ではなかった。彼女は未だに自分の背後にいたし、何より、その攻撃は速かったものの肉眼で捉える事ができた。そして何より、その姿はそれまで天道が立っていた場所、つまりは浅倉の目前にある。
「うううううううううううううううううううううううううううううぅ」
 唸り声をあげる女だった。
 黒いボディスーツのような服装、豊満な体型を惜しげもなく晒すその姿には、金色のサイドポニーという風にまとめられた髪の束がかかっている。中でも特徴的だったのは、女の双眸だ。左右で異なる色合いの瞳、いわゆるオッドアイという体質を、その女は持っている。
(……何だ?)
 見覚えがあるな、と浅倉は思う。
 そんなに古い記憶ではない。つい最近、どこかでこの女に会ったことがあっただろうか、と思い、無い筈だ、と改めた。では、この記憶のくすぐりは一体どうしたことであろうか。
 対する女の方は浅倉に見向きもしない。
 まるで狂犬病を患った犬のように、怯えとも敵意ともつかない感情に瞳を痙攣させている。
「高町ぃ……なのはぁ……」
 ふと、女は名を呟いた。
 それはつい先ほど天道総司が告げた名前だ。
「お前えぇーーーーーーーーーー!!」
 女は跳んだ。
 常軌を逸した跳躍力だ。仮面ライダーですらも、たった一度地を蹴っただけであれほどまでの移動は出来ない。
 一拍で天道まで辿り着いた女は、左脚を天に掲げる踵下ろしの態勢。
「なのはママに何をしたぁーーーーーー!!!」
 掠れて見える蹴撃はギロチンのようだ。
 それが一直線に分厚い装甲を叩き割ろうと迫り、
『CAST OFF』
 出迎えたのは、解き放たれた装甲の連打だった。
「!?」
 あたかも天道が破砕したかのような光景だ。全身を覆う装甲があらゆる方向に弾けて飛び、その幾つかは近接していた女の全身に打ちつけられる。片足立ちとなっていた女は姿勢を崩し、対応するために距離を開けざるを得ない。
 そして装甲が消失した今、瓦礫の上にあるのは、赤い装甲の仮面ライダーだった。
『CHANGE BEELE』
 鎧そのものが音声を放つ中、顎を起点にして丁の字の角が起立、ゆっくりとした動きで眉間に収められ、額に角を生やす様相となった。
(あれが本当の姿か)
 二段変身とは愉快な仕様だな、と浅倉は思う。
「お前」
 と、天道が喋った。
「高町の関係者か」
 高町、その名前に少女は再び反応した。俯いたことでせり上がった肩が痙攣し、
「俺は……」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 意思も意味もない雄叫びを一声し、天道の言葉を遮る。
 そして、先ほど与えられなかった分の打撃を今与えようというかのように、再び天道へ挑みかかった。

19513人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:49:17 ID:pNHdHYB60
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】仮面ライダーカブト(C.OFF)、疲労(小)
【装備】カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、『SEALー封印ー』@仮面ライダーリリカル龍騎、『CONTRACTー契約ー』@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
 基本:極力多数の参加者とともに帰還する
 1.オッドアイの少女(ヴィヴィオ)の誤解を解く
 2.王蛇のカードデッキを破壊して全マーダーをミラーワールドに閉じ込める
 3.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者の未来を切り開く
 4.『封印』と『契約』のカードでミラーモンスター(ジェノサイダーA)に対処する
 5.キングを警戒する
 5.このゲームに存在する全ゼクターを回収する
【備考】
 ※参戦次期はACT.10冒頭、クロックアップでフェイト達の前から立ち去った直後
 ※自信の制限に気付いています
 ※首輪に名前が書かれている事に気付いています
 ※ドラグレッダーはなのはと天道に城戸真司の面影を重ねています
 ※SEALのカードを持つ限り、モンスターは現実世界にいる天道総司を攻撃できません
 ※C.C.からカードデッキの説明書を受け取っています

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、聖王モード@、洗脳による怒り(極)
【装備】レリック(ルーテシアのシリアルNo.、融合中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】なし
【思考】
 基本:ママ(なのは(StS))の敵を皆殺しにする
 1.一本角(仮面ライダーカブト=天道総司)を叩きのめす
 2.なのはママとフェイトママを殺した参加者を優先的に殺す
 2.頃合いを見て聖王のゆりかごにを動かすべく戻る
【備考】
 ※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています
 ※浅倉はまだ信頼しています。殴ったのは何らかの理由があるからだと考えています
 ※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています
 ※キングは天道総司を助ける善人だと考えています
 ※クラールヴィントは浅倉を警戒しています
 ※ヴィヴィオに適合しないレリックが融合しています。弊害の有無・内容は後続の書き手さんにお任せします





 持っていかれたな、というのが正直なところの感想だった。
 浅倉の見やる先で巻き起こる新たな戦い、それは赤と黒の高速戦闘だ。さながらルーレットのように両者は旋回し、しかしながらルーレットならざる身ゆえに、幾度となくぶつかり合う。
「うううううううううううううううううううぅぅぅぅぅ!!」
「ぐ……!」
 圧倒的な猛攻を加える女に対し、天道を秘める赤い仮面ライダーが攻勢に転じることはない。
 専守防衛だ。過剰なほどの外殻を切り離し、スマートな体格となった姿だからこそ攻撃に応じることが出来るが、同時に衝撃をもろに受けることになっているのか、その挙動と声には苦しみが滲んでいた。
(馬鹿が……)
 攻めれば良いものを、と麻倉は思う。精々俺が行くまで生き延びろ、とも。
「浅倉ぁ……!」
 名を呼んで振り向き、眼前に迫る靴裏をベノサーベルで払いのけた。
 どれほど強固にして強靭な脚なのだろう、斬れることも削れることもなく、迫る脚は弾かれただけで終わってしまった。だがそうした動きの乱れさえも利用して、蹴りの連続は発動する。

19613人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:49:53 ID:pNHdHYB60
「死ね!」
「ダラぁ!」
 右に払い、
「消えろ!!」
「ウラぁ!!」
 左に払い、
「潰れろ!!!」
「オラぁ!!!」
 受け止めて、
「「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーー!!」」 
 重複する叫びに互いを弾き合った。
 じゃ、というアスファルトを擦る音を引き、2人の仮面ライダーは距離を開ける。
「殺してやるぅ……」
 ベノサーベルを構える浅倉に対し、緑の仮面ライダーがとる姿勢はまるで野獣のようだ。
 中腰の姿勢で腰を折り、尻を高々と掲げる態勢。両肘はだらりと路上につき、掌はアスファルトを愛撫するかのようだ。全てを睨み上げるようにひねられた首には、死体に睨まれているような心地がする。
 まさしく幽鬼といった風情だ。
「悪くねぇ」
 考え無しに加虐したものの、ここまで形になるのは予想外だった。てっきりあのまま、地と嘔吐の中に倒れ、適当に誰かに踏み潰されて終わるものだと浅倉は思っていたのだ。
 しかし今、少女は仮面ライダーとして自分と拮抗する。
 悪いのは自分の体調だった。
(……っ)
 ミラーワールドに引きずり込む以前のこと、相川との戦いで受けた傷が痛む。今の応酬で傷が開きつつあるのだろうか、しかし鎧の上からでは自覚症状以外に被害を把握する術はない。
(だせぇなぁオイ)
 せっかく盛り上がってきたというのに、始めた自分がこれでは楽しめない。
 もっと滾れよ、と浅倉は自らの体に思う。
 と、
「……当たり前よぉ」
 聴こえたのは相変わらずの陰気な声だった。緑の仮面ライダーが、姿勢を一定させることもなく、ゆらゆらと揺れながら声を吐き出している。
「悪いのはぁ……全部あんたぁ…………私は清廉潔白良い子ちゃんなんだからぁ…………」
「言ってろ」
 高揚しつつある感情を剣に込め、踏み出した脚で緑色の頭を狙う。
 対する緑の仮面ライダーも急激な動き、猫背を戦闘にした跳躍はまるで烏賊か蛸のようだ。そのままもんどりうって前転、ベノサーベルの刀身と交差するようにして、踵をこちらの顔面へと振り下ろす。
 そして、
「……!!!?」
 強烈な閃きに目が眩み、怯んだためにお互いの攻撃を受ける形となった。
「がっ!」
 浅倉は顔面から吹っ飛び、
「ぎゃんっ!」
 緑の仮面ライダーは胸を斬りつけられて火花を散らす。
 転げ回る2人の姿の姿は白と黒の二色刷り、余りにも強い光が有色を殺し、光当るところを白、当らぬところを黒と明瞭簡潔に切り分けたのだ。
 2人だけではない、大通りの一角は、まるで太陽が降り立ったように輝いている。
 否、降り立ったのは雷か。
 それとも、神か。
「……溶解だと!?」
 それは浅倉だったかもしれないし、緑の仮面ライダーだったかもしれないし、他の誰かかも知れなかった。しかし言われた通りの事実が発生している。
 大通りに並ぶビルの1つが、突如として融解したのだ。
 じゅ、と蒸気をあげるコンクリートはまるで溶岩といった風体、瓦礫を呑み込み、手前の歩道を伝って、大通りのアスファルトにまで生コンを垂れ流す。
 そして、コンクリートの泥から現れるのは巨大な、
「野犬?」
 違う。それは流動によって野犬の形をとりつつある、ビルの鉄骨だ。1棟分の鉄材は帯電によって光を迸らせ、表面を真っ赤に灯らせた溶岩のように変形していく。ビルの4隅は4脚となり、天に向かって伸びる長方形は高さを落とし、引き換えに前後へと太くまとまる。
「……ふっ! とっ! どっ! きィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
 声がしたのは、鋼の巨犬の頭部辺りだ。人間で言うならばうなじ、頭部と首の境目あたりに、長い耳たぶを振り乱す雷の男がいる。
 いる、というよりも、合一している。
 四肢を雷電に変化させた男は四つん這いにも似た姿勢だ。4つの雷電は巨犬の内部へと浸透し、未だにそれを赤く輝かせる力の原動力となっているようだ。

19713人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:50:44 ID:pNHdHYB60
「“雷治金”応用版ーー“雷獣・鉄”!! 雷なる我が手足を通わすことで鋼鉄は現在進行形で形を変える!! その重量! その高熱!! その高圧電流で!!! 路上にこびりつく炭となるがいい!!!」
 ベノスネーカーに匹敵する巨体で、赤熱する鉄犬は遂に歩き出す。歩くたびに道路は赤く変色し、足裏のままに硬度を緩めて陥没していく。男の言う通り、度を超えた熱量と重量が為せる業だ。
『…………!!!』
 鉄犬が音もなく吼える。
 生物ではないそれに声帯や肺などある筈はなく、四肢を踏ん張らせて顎を開いたところで、浅倉達はそよ風一つ感じることはない。
 ただし、巨体が発散する熱気と稲妻はその限りではない。鉄犬の出現とともに周囲の気温は上昇し、体毛のように迸る電気は頻繁に弾け、変動する明度と炸裂する電気の末尾が視覚と聴覚は撹乱する。
 鉄犬よりも遥かに小さな浅倉としては、鉄犬の首に乗っている雷の男の姿は見ることができない。
 しかし、その声は明確に聞き取れた。
「まずは貴様からだ“紫鎧”! 愚考と愚挙に全身の体液を流して詫びるが良い!!」
 芸も細かく、鉄犬の凶暴な顔が浅倉を見据えた。
「人を鎧の色で呼びやがって……」
 文句を漏らすが、しかし内心ではそれほど悪い気持ちではない。
 何故なら、未だ出さずにいる力を発動する機会を得られたからだ。
「お前等ぁ!」
 浅倉の呼びかけに答えたのは、怪物達だった。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーー!!』
『SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!』
『VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
 深紅、紫紺、燻銀、それぞれにそれぞれの色を持つ怪物達が一斉に並び立つ。浅倉に、正確には浅倉が使うカードデッキに隷属するミラーモンスター達だ。
 だがそれさえも雷の男は嘲笑う。
「ヤハハハハハ! 珍獣を並べたところで私に敵うと思ったか!?」
 彼我の戦闘力の差が解るのだろう。浅倉ですら解るのだ、雷の男に解るのもまた道理。
 だから、浅倉は三たびにベノバイザーを現してスリットを起こす。
 バックルのカードデッキから抜き放たれるカード、その名は、ベノバイザーが眼光を点滅させて告げる。
『UNITE VENT』
 それは王蛇のカードデッキだけが持つ、特殊なカードだった。
『『『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOーーーーーーーーーー!!!!』』』
「……!!?」
 バイザーの宣言に呼応して同時に叫ぶ化物、それに気圧されたのか、雷の男は一歩たじろいだ。
 それは、カードの効力が果たされるには十分過ぎる時間となる。
『VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
 変化の始まりはメタルゲラスだった。
 もがくようにして外殻を掻き毟り、人型の犀が唐突に倒れる。だがそれは立てないほどの痛みや苦しみがあるからではない。犀として本来の姿、4脚によって体躯を支えることを目的としていたのだ。野太い両腕が道路に突き刺さる。
 続いての変化は体積だ。
 お、と吐瀉を寸然にしたような呻きを幾度も零し、メタルゲラスの体がどんどんと膨れていく。まるで空気を吸い込んでいく風船のように、外殻同士の接続を解き、赤紫の体色を露出させる。
 今やメタルゲラスの体躯は、ビルの2階辺りまで肩が届く大きさだ。
 それを待ち受けて動いたのは雷の男、ではなく、天地からメタルゲラスへと迫る2つの長胴だった。
 地にはベノスネーカー。
 天にはドラグレッダー。
 それらは一様にメタルゲラスの背後へと回り込み、そして背中へと飛び込んだ。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
『SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーー!!!』
 メタルゲラスの背中と頭部が発光し、いかなる変容がなっているのかは把握出来ない。しかし光の中を大蛇と飛龍が左右に並列しながら進み、野太いうなじへと至り、遂にはメタルゲラスの顎より上を削ったのだった。
 消えてしまったメタルゲラスの頭はどこにいったのか。答えはドラグレッダーとベノスネーカー、いやさそれらであったものの頭部にある。
 ドラグレッダーだったもののに右半分を、ベノスネーカーだったものに左半分を分ち、覆い隠してたのだ。今やメタルゲラスの頭部は龍と蛇の顔を半分だけ隠す仮面となっていた。
 そして2体の化物を“だった”と過去形にする理由は一つ。

19813人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:51:32 ID:pNHdHYB60
 発光が止んだ今、メタルゲラスの背へと突っ込んだそれらは、メタルゲラスの体と融合しているからだ。
 最早そこに立つのは3体のミラーモンスターではない。最強と、最悪と、最硬を兼ね揃える、帝の名を冠する化物だ。
『『ZYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!!!』』
 巨大化したメタルゲラスの体を胴体とし、右にドラグレッダー、左にベノスネーカーの首を生やす四足の地龍は、歓喜のままに2本の尾を振り回して周囲のビルを抉り裂いている。
 今や轡を並べる龍に、無双の名は失われた。
 番う頭の龍を表すは又を並べた双の一語、虚無は無として新たなる契約モンスターが生まれた。
 双帝ジェノサイダー・アレンジ、浅倉はそれをそう呼ぶことにした。
『『ZYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーー!!』』
「……小賢しい!!!」
 もはや力も体躯も鉄犬と同等以上になった化物が、2つ並んだ顎を先駆けにして突撃する。
『『ZYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーー!!!』』
「…………!!!」
 双頭の化物と、異形の巨犬が正面から激突した。
 轟音と火花が2体の設置面より弾け、大きく開けた大通りを震撼させる。
「ぬうぅ……!!」
『『ZYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーー!!!』』
 猛牛など比べるべくもない突撃力の応酬、しかし分はジェノサイダーの方にある。
 鉄犬の重量、熱量、帯電を受けてなお拮抗しうるジェノサイダーを前にして、それだけの特殊効果を満足に通用させられなかった鉄犬が、いつまでも拮抗を維持することなど出来るはずがなかったのだ。
「がぁあああああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
 雄叫びも虚しく、ジェノサイダーに押された鉄犬は、首に乗せた雷の男ごと背後のビル群に押し倒される。
 舞い上がる粉塵と蒸気、鉄もコンクリートもアスファルトも、ジェノサイダーの圧力と鉄犬の熱量が蒸発させた。噴煙と悪臭が路上を包み、だがその中で剣戟は再開される。
 浅倉もだ。舞い上がる土埃を貫いて、緑の仮面ライダーが飛び蹴りとともに現れる。
「浅倉ぁーーーーーー!!!」
「はははっ!!」
 憎悪に答えるのは歓喜、武器としての靴裏をベノサーベルが迎え撃つ。
(……楽しい!! 楽しくて仕方がないなぁ!!!)
 浅倉の胸中は歓喜で渦巻いていた。
 何もかものが望み通りだ。本来ならばもう仮面ライダーならざる者は全て消滅しているだろうに、それが起こらない不思議も気にならない。というよりも、思い浮かぶことさえない。
 ただ浅倉威は、自らが開いた修羅の庭を堪能するだけだった。



【浅倉威@仮面ライダーリリカル竜騎】
【状態】仮面ライダー王蛇、疲労(中)、全身ダメージ(中)、右手に火傷
【装備】カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル竜騎、ベノサーベル
【道具】サバイブ“烈火”のカード@仮面ライダーリリカル竜騎、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル竜騎
【思考】
 基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物
 1.紫髪のガキ(柊かがみ=仮面ライダーキックホッパー)を手始めに殺す
 2.エネル→天道→キング、相川始、金居→その他手近な参加者、の順で戦う
 3.鎌を持った奴(キャロ)、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ユーノと戦う
 4.首輪を外したい
 5.プレシアに「規定人数を殺害した参加者には希望した人間の居場所を教える」という特典を採用してほしい
【備考】
 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています
 ※ヴィンテルシャフトのカートリッジシステムに気付いています
 ※カブトに変身できる資格があるかは不明です
 ※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A's)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています
 ※カードデッキの使用制限時間が極端に短縮している事に気付いていません

19913人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:53:01 ID:pNHdHYB60
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】仮面ライダーキックホッパー、ツインテール剥離・頭皮出血、肋骨数本骨折、やさぐれ(極)
【装備】ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ホッパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:みんな死ねばいいのに
 1.浅倉威を最優先で殺す
 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する
【備考】
 ※デルタギア装着により放電能力を得ました
 ※心身に対するショックで、一部の参加者やそれに関する知識が戻っている可能性があります
 ※極度の錯乱状態です。自分以外の生物全てを分け隔てなく憎んでいます
 ※変身時間の制限にある程度気付いています(1〜1時間30分程度の間隔が必要という事まで把握)
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気付いています

【エネル@小話メドレー】
【状態】“雷治金”発動中、疲労(中)、胸に打撲痕(大)、全身に切傷(小)、『死』に対する恐怖、激怒
【装備】巨大な犬型鉄像(“雷治金”により形態操作中)
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:主催含めて皆殺し。この世界を支配する
 1.この珍獣(ジェノサイダーA)めがぁ〜〜!!!
 2.この場にいる全参加者を皆殺しにする
 3.浅倉威からカードデッキ(王蛇)を奪う
 4.ヴァッシュに復讐したい
【備考】
 ※心網の策敵範囲がおよそ1エリア分だと気付いています
 ※黒い鎧の戦士(カリス=相川始)、はやてと女2人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています
 ※自身の制限およびゴロゴロの実の能力を使っても首輪が外せないと気付いています
 ※なのは(StS)のことはうろ覚えです
 ※なのは、フェイト、はやてがそれぞれ2人ずついることに気付いていません
 ※背中の太鼓を2つ失い、雷龍(ジャムブウル)を使えなくなりました
 ※ヴァッシュに『参加者の現在地と生死を把握する能力』があると思っています
 ※ヴァッシュに対する恐怖と怒りで“心網”が使えなくなりました。払拭された場合のみ使用可能になります



【ジェノサイダー・アレンジについて】
 ・ベノスネーカー、メタルゲラス、ドラグレッダーがユナイトベントで融合した形態。10000AP
 ・四つん這いのメタルゲラスの背中が、ベノスネーカーとドラグレッダーと癒着している。メタルゲラスの頭部は左右で分断され、それぞれベノスネーカーの顔左半分とドラグレッダーの顔右半分を覆っている
 ・ベノスネーカーの口から強酸を、ドラグレッダーの口から火炎を吐く。どちらも単体でのものより強い
 ・極度のダメージを受けると3体に分解する。各個体はジェノサイダーAと同等のダメージを維持する
 ・ファイナルベント:ストームスディ(11000AP)
  アクション順序
   €ジェノサイダーAの背を駆け登り、敵の直上へ跳ぶ
    2つの頭部が吐き出した火炎と硫酸を脚に巻き付ける
   ¡敵に垂直からの蹴りをぶつける
   ¤衝撃で火炎と硫酸が解放され、大規模な粉砕・灼熱・溶解の渦が発生する
   ¦ジェノサイダーAの胸部にブラックホールが開き、舞い上がった全てを呑み込む

20013人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:53:49 ID:pNHdHYB60
【共通の備考】
 ※F-6 レストラン前(ミラーワールド)に以下のものが落ちています
  €相川始のデイバック(ベルト破損)
   収納:支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
   浅倉威のデイバック
   収納:支給品一式×2、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
  ¡柊かがみのデイバック
   収納:支給品一式、Ex-st(残弾なし)@なのは×終わクロ、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)
  ¤キース・レッドのデイバック
   収納:支給品一式、ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA's、首輪×2(優衣、なのは@A's)、優衣のデイバック【収納:レリック(No.Ş)@魔法少女リリカルなのはStrikerS】、カレンのデイバック【収納:支給品一式、ランダム支給品0〜2】、アンデルセンのデイバック【収納:各種弾薬30発ずつ、カートリッジ×13、レイトウ本マグロ@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、杖@ゲッターロボ昴】
  ¦アレックスのデイバック
   収納:支給品一式、Lのデイバック【収納:首輪探知機(電池切れで使用不能)、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(No.Š、幻術魔法により花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察を記したメモ】、ザフィーラのデイバック【収納:支給品一式、ランダム支給品1〜3】
  ©金居のデイバック(ビル内部)
   収納:支給品×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル
  ªキングのデイバック
   収納:支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギルモンのデイバック【収納:支給品一式、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル】、アグモンのデイバック【支給品一式、菓子セット@L chenge the world after story】、C.C.のデイバック【支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX】
  «アーカードのデイバック
   収納:支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
  ­ヴィヴィオのデイバック
   収納:支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
  ®エネルのデイバック(ベルト炭化による消失)
   収納:支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
  ¯天道総司とヴィヴィオが争うビルの側に爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸が突き刺さっています
  ²万丈目準のデイバック
   収納:支給品一式、考察などを書いたノート
 ※レストラン前に装甲車@現実 が駐車しています。鍵はすでに入っている状態です
 ※多種多様な火器が装甲車の周囲に散逸しています(全て人間が所持して使用するタイプのものです)
 ※アーカードがいるビル屋上、および左右2棟に量産型フェイトが変身する仮面ライダーオーディンが100体います。


【ミラーワールドについて】
 カードデッキによって鏡(景色を反射するもの)から出入りできる異世界。その中に生物はなく、現実世界側の被害は受けず、またミラーワールド側の被害も影響しない。カードデッキを持つ者は鏡越しに出来事を見ることが出来る。
 以下、本バトルロワイヤルにおける制限
 €ミラーワールドにいる参加者は、カードデッキ系仮面ライダーを装着していない場合、12時間後に消滅します
 ※ミラーワールドから脱出すると、あらゆる変身状態は解除されます

20113人の超新星(修正版) ◆WslPJpzlnU:2010/01/31(日) 18:55:56 ID:pNHdHYB60
【ミラーワールドサバイバル戦・現在の状況】
 対戦カードa:キースレッドvsアレックス
  ※ARMS同士のタイマン勝負。どちらも被害を増やしやすい武器の為、余波が他の戦いに影響する?
 対戦カードb:ジョーカー(相川)vsギラファ(金居)vs魔王ゼロ(キング)
  ※同郷の三つ巴戦。キングはゼロを演じており、この場にいる参加者には正体が知れていないのがミソ
 対戦カードc:カブト(天道)vs聖王ヴィヴィオ
  ※豪快に誤解で始まった戦い。天道の説得力次第ではヴィヴィオと協力する事が可能かも?
 対戦カードd:アーカードvsリニス&量産型フェイト2〜5号体
  ※遂に始まった参加者と主催側の戦闘。主催側の武装は協力だが、殺意がないのが逆転の秘訣?
 対戦カードe:王蛇(浅倉)&ジェノサイダーAvsキックホッパー(かがみ)vs“雷神”エネル
  ※2対1対1の変則戦。王蛇とジェノサイダーAに対してかがみとエネルは協力していないのがミソ
 ※ミラーワールド内部からの離脱手段
  €カードデッキ(王蛇)…浅倉威が使用中
   カードデッキ(ベルデ・ブランク体)…浅倉威が所持中
  ¡主催仕様カードデッキ(オーディン)…量産型フェイトが使用中
  ¤専用の転移魔法…ミラーワールドではリニスのみが使用可能

【ミラーワールド生存者 残り12人と1匹と1種(合計100体)】



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投下終了。
>>161は申し訳ありません、見落としていました。wiki掲載時には修正します。
ご指摘頂いた部分に関しては人通り修正したつもりなのですが、如何でしょうか。

202リリカル名無し:2010/01/31(日) 23:05:50 ID:3y/s61ao0
修正乙です
これで大丈夫だと思います

203 ◆WslPJpzlnU:2010/02/01(月) 09:33:18 ID:9.fOUVG.0
ありがとうございます。
とりあえず投下終了から約24時間後の本日19時頃を過ぎてもご指摘を頂くようでなければ、これを本決まりとしてwikiの方に入れたいと思います。

204リリカル名無し:2010/02/01(月) 10:19:51 ID:.2pSKNkA0
収録の際には分割になるのでそこだけ気を付けてください
(こちらで概算したところ約198KBでギリギリ6分割≪wiki1ページの限界が33KBなので≫という結果が出たので)

205リリカル名無し:2010/02/01(月) 12:30:07 ID:6SKSMN8o0
対戦カードd:アーカードvsリニス&量産型フェイト2〜5号体
  ※遂に始まった参加者と主催側の戦闘。主催側の武装は協力だが、殺意がないのが逆転の秘訣?
↑の
「協力」って強力じゃないですか?

206リリカル名無し:2010/02/01(月) 14:51:55 ID:b5xk4rCYO
WIKI収録の際に直せば大丈夫ですね

207 ◆WslPJpzlnU:2010/02/01(月) 19:29:42 ID:9.fOUVG.0
>>205の方、ご指摘ありがとうございます。収録時に修正させていただきます。
これよりwikiの方に収録したいと思います。

208 ◆WslPJpzlnU:2010/02/01(月) 19:54:31 ID:9.fOUVG.0
申し訳ありません、どういう訳かwikiを編集しようとするとSafariが強制終了してしまい、自分の手で本作を収録することができません。Internet Explorerでも文字化けしてしまい、設定を変えてみてもそれは直せませんでした。
自分でやると言った手前でかような長文をお願いするのは非常に心苦しいのですが、どなたか、お手隙の時でけっこうですので収録を代行して頂けないでしょうか。お願いします。

209 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/01(月) 21:56:14 ID:b5xk4rCYO
ではやってみます
ですが>>204の通りだと6分割か7分割かはっきりとは分からないので
とりあえずこちらで収録してその後で◆WslPJpzlnU氏に分割点を指定していただくという形でいいでしょうか
あとエネルの荷物が二つ(エネルの状態表と共通備考)あるのですが、落とした描写がないのでエネル持ちでいいのでしょうか

210リリカル名無し:2010/02/01(月) 21:58:35 ID:b5xk4rCYO
トリ消すの忘れていた…

211 ◆WslPJpzlnU:2010/02/01(月) 22:19:44 ID:9.fOUVG.0
はい、エネルについては仰るように状態表の方を残して下さい。幾つも見落としていてすみません。
分割点の方も仰るような形でお願いします。「おおよそどの辺りで文量が限界なのか」というのが解るようでしたら、参考にしたいので後に教えて頂ければ幸いです。

212D.C. ?ダ・カーポ? ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:41:44 ID:tbOWS/YE0
これより予約分を投下します

213 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:42:46 ID:tbOWS/YE0
「――ッ、使えないわね」

デスゲームの首謀者プレシア・テスタロッサは黒の装束に身を包んで薄暗い部屋の中にいた。
天井と周囲に展開された無数の空間モニターだけがこの部屋に明るさを提供しているために薄暗いのは仕方ない。
ともすれば部屋の闇と同化してしまいそうな雰囲気さえある。
だがそれがより一層プレシアの表情に浮かぶ影を濃くしていた。
その顔を仄かに照らすのは正面に展開された空間モニター。
そこには最強の吸血鬼・アーカードをリニスに率いられた最強の仮面ライダー・オーディンが囲んでいる様子が映し出されていた。
現在プレシアを囲むモニターは正面を含んで約7割がミラーワールドの様子を逐一映し出していた。
そしてそのいずれにおいても大規模な戦闘が繰り広げられていた。

「やはり連れ込まれた参加者はどれも一筋縄ではいかないようね」

実際にこの状況になってプレシアは改めてミラーワールドの厄介さを実感していた。
実は事前の調査でプレシアはこの事態が起きる可能性を知っていた。
だが現実問題としてこの状況を作り出せる条件が限られていたために元より軽視していた経緯がある。

その条件とはミラーワールドと仮面ライダーの情報に精通して且つ実際にカードデッキを手に入れる事。

実のところ前者の人物に該当する参加者は浅倉威だけだった。
他に同じ世界から連れてきた八神はやてと神崎優衣はその性格から実行するとは考えられなかった。
しかも今回のような状況を考え付くのはそれこそ仮面ライダーとしてライダーバトルに参加していた者ならではの発想なのでなおさら無理だと考えた。
後者に関しても大多数の参加者は強大な力を持つカードデッキを易々と浅倉に渡すはずがなかった。
しかもあの必要最小限しか記載されていない説明書だけで『ミラーワールドに参加者を引きずり込む』という戦法を確立できるとは思えなかった。
実際に頭脳明晰な者は何人かいたが、結局気づく事はなかった。

当初カードデッキを支給品から外すという案もあったが、殺し合いを促進させる道具として最適だったので結局は採用したのだ。
さらに万が一という事も考えてミラーワールド内には脱出用として大量にタイガのデッキの複製を説明書付きで散りばめておいた。
元々複製のデッキにはミラーワールドを出入りする機能はないが、今回のデスゲームに際して可能にしておいた。
ただしこのデッキはミラーワールド内でしか存在を保てないように調整しておいたので、もしこれで脱出してもさらにデッキを奪い合うという面での殺し合いを加速させる事が期待できた。

「それなのに浅倉のせいで全てが台無しね」

このような仕掛けを用意したのは、全てミラーワールドから参加者を早期に脱出させて『とある事実』に気付かせないため。
その危惧も含んでのカードデッキ投入だった。
だが数人程度なら想定はしていたが、今回の浅倉の戦法はさすがに予想外だった。
一気に12人しかも各々戦闘を繰り広げる始末。
これでは複製のデッキを探すどころか、いつ誰が『とある事実』に勘付いてしまうかもしれない。

「放送の時間も近いのね……ったく、この状態で放送とかできるわけないわ」

ふと時刻を確認すると、もうそろそろ放送の時間に近づいている事に気が付いた。
あまり悠長な事も言っていられない。
早期にこの浅倉による茶番を終わらせなければデスゲームの存続が危うい。

「背に腹は代えられないわね」

そしてデスゲームの主催者は静かに決断を下した。


     ▼     ▼     ▼

214 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:43:24 ID:tbOWS/YE0


「喉が……渇く、血が……」

吸血鬼の眷族になったLの口から洩れる言葉はおよそいつもの彼とは思えないものだった。
今のLは最早聡明だった頃のLではない。
もうすでに喉の渇きを自覚してからどれほどの時間が経ったのか定かではない。
何にも増して身体の奥から湧き上がる吸血衝動を止めるべく必死だった。
だが天才的な頭脳を持つ探偵でも吸血衝動を止める術に心当たりがあるはずもなかった。
一つ分かっている事はこのまま外に出て人に会えばもう自分を抑える事は出来ないという事だけ。
だからLは必死に自分を抑えて地上本部内に身を留めているのだ。
あるいは怪我による出血多量でなければこの事態を回避できたのだろうが、そんな事を考えても詮無き事だ。
さすがにL一人でどうにかできる事ではない。

「……どんな天才でも一人では、世界を変えられません……ですか」

それは確か『救うべき人のそばにいられるように』と願って名付けた少年に言った言葉だ。
そして確かあの時はこう続けたはずだ。

――しかしそれこそ素晴らしいところなんですね。


     ▼     ▼     ▼

215 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:44:36 ID:tbOWS/YE0


「このっ! なんでっ! 当たらっ! ないのよっ!」
「はぁ……イライラさせんなよ……」

つかさの死の元凶である浅倉の呆れ具合はひどく癇に障るものだった。
だが妹の仇を前にして姉の柊かがみの攻撃は全く掠る気配すらなかった。
怒りや憎しみは往々として冷静な判断力を削ぎ、元々のかがみのスペックと相まって攻撃は単調でしかなかった。
しかも蹴りが主体であるはずのキックホッパーでパンチを主体で戦っているのだからなおさらだ。
第一に冷静さを失ったかがみ自身は先程のパンチホッパーではなくキックホッパーに変身している事に気付いていない。
これに関してはホッパーの特性を理解していない今のかがみにしてみれば仕方のない事だが。

「お膳立てしてやって結局その程度か」
「ふざけないでよ! それなら――」

不遜な言動による明らかな挑発。
だが今のかがみは当然のように乗ってしまった。
そして一気に勝負を付けようと意気込んでクロックアップを発動させようとしたが――。

――Clock up――
――CONFINE VENT――

――無効化の効果を持つ浅倉のカードがそれを阻んだ。
実のところ浅倉はかがみが何をするのかはっきりとは知らない。
だが事前にクロックアップでエネルを吹き飛ばす場面を見た事、挑発に乗って勝負を付けようと意気込む様子。
その二つの要素から判断して先手を打ってコンファインベントを使ったまでの事だ。
浅倉に宿る戦闘の勘恐るべし。

「え、な、なんでよ!?」

だが当然ながらかがみがその事実を知る事はなく、ただ狼狽える事しかできなかった。
それは浅倉に失望を抱かせるには十分すぎる反応だった。

「まだまだ俺を楽しませてくれる奴はいるんだ。貴様の相手は終わりだ」

そして浅倉はデッキから1枚のカードを取り出しベノバイザーに装填して。

――STRANGE VENT――

別の姿を変えたカードを一度取り出して再び装填する。
それは先程かがみが行おうとしていた行動。

――ACCELE VENT――

超加速のカード。
当然未だに混乱しているかがみにまともな対応ができるはずもなく。

「グハ――ッ!!」

ただ反射的に拾ったデイパックを盾にするしかできなかった。
だがそれもあっさりと切り裂かれて盾にすらならずに何の役にも立たなかった。
超加速で走るベノサーベルの斬撃の威力は計り知れない。
デイパックを間に挟んでも尚衰えない一撃はヒヒイロノカネの装甲に一筋の大きな傷痕を付けた。
自分の呻き声とビルの壁が崩れる音を聞きながらかがみは背後のビルへと吹き飛ばされた。
その衝撃はキックホッパーへの変身を強制解除させる程のものだった。

「――ッ……ガァ……あ、あいつだけは……」

既にかがみの身体は先程の斬撃で限界に近かった。
いくら仮面ライダーに変身したからといって中身は普通の女子高校生。
だがそんな事は関係ない。
つかさを残酷に殺した浅倉を殺すまで止まる気はなかった。

「そうよ、私には、もう――え、これって……」

その時、立ち上がろうと床に手を付けたかがみは手元にデイパックが転がっているのに気づいた。
そして中から零れ出た瓶がかがみの目を引いた。


     ▼     ▼     ▼

216 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:45:17 ID:tbOWS/YE0


「どうした、貴様らの実力はその程度なのか?」

キングは今しがた吹き飛ばした同じくアンデッドであるギラファアンデッドの行方を見守っていた。
彼方に聳えるビルにまた一つ穴が空いてしまった。
もうこれでいくつになるだろうか。
そんな疑問を抱くはずもなくゼロを演じるキングは相変わらず悦に入っていた。
何も分からないままに手探り状態で実力を発揮できないギラファとジョーカー。
それを体よくあしらう自身に大いに満足していた。

本来ならキング一人でギラファとジョーカーの二人を相手にするのはさすがに難しいものがある。
だがそれはお互いに万全の状態である事が前提だ。
人は未知のものに怯えると云うが、それは万物に通じるものがある。
相手の正体が分からなければどういう対処が適切か判断できず、結果それは迷いとして行動を鈍らせる。
金居ことギラファアンデッドはまさにその状態だ。
そのギラファも何かに気付いたのか、大きなダメージは受けないように立ち回っていた。
それに対してジョーカーはゼロを演じるキングがアンデッドであるとジョーカーの勘で悟っている。
だがここでもキングは巧妙だった。
ジョーカーは元々アンデッドを殺す存在。
当然ギラファアンデッドも例外ではない。
キングは戦っている最中にギラファとジョーカーが争う形に誘導して共倒れに仕向けていた。

(それにしても調子が良いね、今なら何でもできそうな気がするよ! ヤベッ、これ楽しすぎるって!!)


     ▼     ▼     ▼

217 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:47:12 ID:tbOWS/YE0


(……奇妙だな)

アレックスは何発目かのブリューナクの槍を放ちながら考えていた。
荷電粒子の光に貫かれたビルが倒壊しているが、その影から見知った人影が飛び出してくるのが見えた。
どうやら肝心のキース・レッドには避けられたらしい。
もうこれでいくつビルが倒壊しただろうか。

(そうだ、俺はもう何度もARMSを使用しているのに――)

おそらくキース・レッドも同じ事を考えているのだろう。

(――以前よりも疲れない。それに気のせいか身体が軽い)

きっかけはふとした疑問だった。
お互いこれが最期とばかりにARMSを駆使して戦っている。
だが今回ばかりは何かが違った。
デスゲーム開始から感じていた身体の鈍さや疲れが軽くなっている気がする。
これまでアレックスは自身の不調はプレシアによる制限だと考えていた。
そしてその元凶は自身を戒める首輪だと。

だがこれではまるで――。

(――もしや、力の制限の元凶は首輪ではないのか!?)

自分と同じように探りを多分に交えた失敗作を横目にアレックスは思案を巡らせていた。


     ▼     ▼     ▼

218 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:48:07 ID:tbOWS/YE0


「なのはママを返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せ! 返せぇぇえええ!!!」
「くっ……!!」

天道とヴィヴィオの死闘もまた熾烈を極めていた。
かたや天の道を往き総てを司る仮面ライダー。
かたや古代ベルカ時代の最強と謳われた聖王。
その戦闘が穏便であるはずがない。
だがその戦闘はヴィヴィオが猛攻を仕掛け、カブトが防ぐという一方的なものだった。
聖王の力に目覚めたヴィヴィオが繰り出す魔力を帯びた打撃のラッシュは一発一発の威力は相当なものだ。
だがそれをカブトはただ避けて、時にはクロックアップで距離を空けて、極力ヴィヴィオに攻撃を加えないように対応していた。

(金髪にオッドアイ、そして高町なのはを『ママ』と呼ぶ少女。やはりこいつは……)

天道にはその人物に一人心当たりがあった。
ヴィヴィオ。
高町なのはが保護したいと言っていた女の子だが、なのはの話によればヴィヴィオは幼い子供のはず。
どう見ても年齢が合わない。

「貴様ぁぁぁ、なのはママを……返せぇぇぇ……」
「俺の名前は貴様ではない。天の道を往き総てを司る男、天道総司。お前の名前は?」
「……ヴィヴィオ」

戦闘の最中にできた空隙。
お互い距離を置いて次のステップに進むためのチャージの時。
そこで聞いた答えは半ば天道の予想したものだった。

「やはりそうか、いいかよく聞け。高町なのはは――」
「うるさぁぁぁあああぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!」
「……駄々っ子め」

だが悠長に説得もしていられない。
一番厄介なのは常に展開されている虹色のオーラ。
牽制のつもりで投擲したスティンガーがあっさり破壊されたところからかなり高エネルギーのバリアである事が分かる。
しかも浅倉に投げ飛ばされた時に負った傷がここにきてじわじわと天道の体力を奪っている。
今こうしている間も特に頭部に負った傷からの流血で視界が霞んでくる。
時間が経てばますます不利になる。
この後には事前に抜いておいた『SEAL-封印-』と『CONTRACT-契約-』で王蛇のミラーモンスターに対処しなければいけないというのに。

「これでぇぇぇえええええ!!!!!」

他の事に気を取られた一瞬の隙を突いてヴィヴィオは勝負を付けに来た。
セイクリッドクラスター。
一つの塊にして撃ち出した魔力弾が天道の付近で爆散してショットガンの如く縦横無尽に襲いかかる。

「チッ、プットオン!」
――Put On――

それに対して天道が取った行動はライダーフォームからマスクドフォームへと戻るプットオン。
大抵の攻撃を避けるだけならクロックアップで十分だ。
だが今回のような範囲攻撃の場合、クロックアップしても避ける事は出来ずにむしろ自ら突っ込んでダメージを倍加させてしまう。
だからプットオンでマスクドアーマーを再構築して防御力を上げて凌ごうという考えだ。

「終わりだ――ッ!!」

だがヴィヴィオの攻撃はそれで終わりではなかった。
セイクリッドクラスターが降り注ぐ中、ヴィヴィオは追撃を仕掛けてきた。
プラズマアーム。
電撃を帯びた一撃がカブトを吹っ飛ばした。

「ぐ、ぉ」

頑強なヒヒイロノカネの装甲しかも蛹を模したマスクドフォームにヒビが走っている事が一撃の重さを物語っていた。
もしもライダーフォームなら防げたかどうか分からない。

「まだま――ガァ――ッ……!?」

だがそれでも傷ついた身体には負担が大きかったらしい。
既に頭部からの出血は致命的なものにまで達しようとしていた。
だが意識を保とうとするが、その努力は虚しく潰える事になる。

「く……っ……ぁ……」

天道に近くにあった中身が半分ほど減った瓶の入ったデイパックを見つけたところで意識を手放してしまった。

219 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:48:57 ID:tbOWS/YE0


     ▼     ▼     ▼


「さてと、次はあいつだな」

キックホッパーを倒して次なる獲物を求める浅倉の目に映るのはジェノサイダー・アレンジと対峙している黄金犬の主、神エネル。
当然かがみとは違って存分に楽しめる事は確実だ。

「それならこっちも相応の姿でやらせてもらうぜ」

浅倉の手がデッキに伸びて自然と1枚のカードを抜き去る。
そのカードが司る力は『強化』、属性は『烈火』――神崎士郎が特別に作った3種のカードの1つ。
そのカードを手にした瞬間、左手の杖型召喚機・牙召杖ベノバイザーはコブラの顔を模した銃型のベノバイザーツバイへと姿を変えた。

――SURVIVE――

そして新たな召喚機にサバイブのカードを挿入すると、王蛇の身体は炎に包まれて、姿を変えていった。
王蛇の顔はより残虐さを増し、肩は後ろへと大きく張り出し、鋭利な棘を見せつけている。
さらに腹部に現れたベノスネーカーを模した恐ろしげな貌がこれから向かう戦場を睨みつけていた。
視線を戻してみればエネルは自身が操る雷治金による大型犬像と戦うジェノサイダー・アレンジに苦戦していた。
先程までは両者共に五分五分という形で一歩も引かなかったが、サバイブの影響でさらに禍々しい姿に強化されたジェノサイダーにおされ始めていた。
ここからでも原因が分からずに焦るエネルの顔がチラチラと見える。

「分からないんなら教えてやろうか、景気付けだ! 受け取りな!」

――FINAL VENT――

王蛇サバイブがカードをベイトインさせると、今まで黄金犬と組み合っていたジェノサイダー・Aは距離を作って主を待った。
その主たる王蛇サバイブは双帝の背を一気に駆け上がり、黄金犬を遥か上に飛び上がり、エネルを見下ろしていた。
次の瞬間、元ドラグレッダーの頭部から火炎が、元ベノスネーカーの頭部から毒液が、それぞれ吐き出された。
王蛇サバイブは急降下しながら、右足に火炎を、左足に毒液を巻き付けてエネルに垂直蹴りを浴びせようとする。
エネルも当然対応しようとした。
四肢のうち両手を黄金犬から離してエール・トールを王蛇サバイブ目がけて放ったのだ。

だがエネルは知らない。
このファイナルベント『ストームスディ』の恐ろしさはこの後に待ち構えている事に。
蹴りを受け止めれば最期、その衝撃で解放された火炎と毒液は大規模な粉砕と灼熱と溶解が合わさった地獄の渦を発生させる。
さらにジェノサイダー・Aの胸部に全てを飲み込むブラックホールが姿を現して、舞い上がった一切合財を無に帰すのだ。

この技が放たれたら最期、逃れる術などあるはずがない。

(ハハハ、やっぱりここは祭りの会場だな……)

220 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:50:16 ID:tbOWS/YE0


     ▼     ▼     ▼


「……もう数えるのも億劫だな」

そう呟いたアーカードは何人目かのオーディンを屠っていた。
腹から背に突き抜ける貫手が変身の解けた量産型フェイトに死を与えている。
だが量産型フェイト一人死んだところで他のオーディンに大した変化はない。
なぜならオーディンに変身した時点で量産型フェイトの人格は既にない。
そこにあるのはオーディンのカードデッキに入力された人格を元に動く人形に過ぎない。
主であるプレシア及びリニスの命令を聞く事はあっても、それ以外の出来事に心を動かされる事はない。

「つまらんな」

確かにオーディンは強いが、無敵というわけではない。
実際に他の仮面ライダーに倒された事もある。
その原因が今まさに量産型フェイトがアーカードに殺されている理由である。
すなわちバトル経験の不足。
それがオーディンの唯一にして無二の弱点だ。

(このような“空っぽのブリキの兵隊”で本気で私を止められると考えたのか? 興醒めだ――ん?)

あれだけの大軍を相手にしていて注意が逸れたが、いつのまにかリニスの姿が見当たらない。
だが姿を消して奇襲を仕掛けるなら、それはそれで構わない。
逆に返り討ちにしてやろうという気になる。

だがその直後、オーディン達の動きに変化があった。

――ADVENT――

「ほう……これは……」

――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――

「いやはや、なんとも……」

――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――
――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――――ADVENT――

「……荘厳な光景だな」

不死鳥ゴルトフェニックス。
生き残っているオーディン全てが呼び出したその群れは輝いていた。
そして不死鳥を背に合体したオーディンはまさに黄金の天使だった。

『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO―――――!!!!!』


     ▼     ▼     ▼

221 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:51:26 ID:tbOWS/YE0


不死鳥が天を舞う中、エネルはただ目の前に転がる物体に視線を向けていた。
既に黄金犬の姿はない。
視線を移動させると近くにそのなれの果てである残骸が異臭を放って広がっている様子が映る。
それもジェノサイダー・Aがいなくなって雷治金を解除したから当然だ。
エネルはもう一度目の前に転がる物体に視線を向けた。


それは首と胴体が分かれた浅倉威の死体だった。


エネルは首輪の爆破で死亡した浅倉威の死体を見ながらなぜこうなったのか考えていた。
だがいくら考えても答えは一つしか浮かばなかった。
そしてエネルが浅倉の死体からカードデッキを奪おうとした瞬間。

『待ちなさい。カードデッキを奪う事は許さないわ』
「プレシアか」

恐れ多くも神に枷を嵌めた愚か者の声がエネルの行動を妨げた。
だがそれで『はいそうですか』とエネルが引き下がるわけなかった。
神が他人の願いをそう易々と聞く事はまずあり得ない。

「神に指図するとは良い度胸だな」
『もちろんただとは言わないわ。ヴァッシュ・ザ・スタンピードについての情報で手を打たない?』

だが神が願いを聞く場合がある。
生贄や作物を備える場合だ。
そしてその情報はエネルにとって供物となるのに十分であった。


     ▼     ▼     ▼

222 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:52:45 ID:tbOWS/YE0


「ああ、承知した。ここに置いておけばいいんだな」

プレシアからの申し出を聞いた時、金居は好機だと思った。
すでに不死鳥の大軍がミラーワールドに連れて来られた参加者を元の会場に戻すべく奔走している。
その真っ只中で金居だけが不死鳥に避けられている事に疑問を抱いたが、それも首輪から発せられるプレシアからの要求で納得した。
たしかに今回のようなカードデッキの使用法はなかなか有効だ。
だが主催者に目を付けられてまで実行しようとは金居は考えなかった。

『随分と素直なのね。もう一人は最初渋っていたんだけど』
「その口振りだと最終的には納得したのだろう。それに代価として情報をくれるとか。俺にはそっちの方がいい。
 俺はこのデスゲームで優勝したいと思っている、それがあんたの思惑だとしても構わないさ。
 むしろ利害が一致すれば手先になってもいいぐらいだ」

金居の最終目的はプレシアの殺害。
そのために大前提が殺し合いを円滑に進めるスタンスを見せてプレシアの信用を得る事だ。
それが思いもかけないところで叶うのだ。
金居に異論はなかった。

『殊勝な心がけね。いいわ、これからもデスゲームを円滑に進める事を期待するわ』
「了解した」
『それで代価の情報だけど、やっぱりジョーカーかキングのものでいいかしら?』
「いや、敢えて希望が通るならゼロの正体だけ教えてくれるだけで構わない。名簿に載っていない名前だが、あれはあんた達の側の人物なのか?」

いまさら手の内を知っているジョーカーやキングの情報を聞く事にあまり意味はない。
それよりもここは再戦に備えて正体不明のゼロについての情報を手に入れたかった。
だが一応ゼロの正体に目星は付いているが。

『そんな事でいいの。いいわ、教えてあげる。あれの正体はキングよ、仮面と衣装で正体を誤魔化しているのよ。
 聡明なあなたならもうカラクリにも気づいたでしょう』
「そうか、念動力と時間操作か」
『時間操作? ああ、元の世界だとそんな事も出来たのだったわね』
「ん? ほう、なるほど。つまりはそういう事か。貴重な情報感謝します」
『さて何の事かしら』

これは故意か偶然か思いもかけない収穫だった。
ゼロの正体がキングと断定しただけでなく、今のキングは時間操作ができないという事実も判明した。
まだプレシアの嘘という可能性もあるが、自ら協力すると申し出た参加者の不快を買うような行動はしないはず。
つまりプレシアの発言は真実であると判断できた。

(……良い流れだな)

プレシアに感謝しながら金居はほくそ笑んでいた。


     ▼     ▼     ▼

223 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:53:52 ID:tbOWS/YE0


「エネルさん、いったいどこに行っちゃたんだろう」

ありとあらゆるゴミが集約されるゴミ処理場。
だがその場所に似つかわしくない可愛らしい人物が一人事務室で心配そうな表情を浮かべていた。
新庄・運切。
特殊な身体を持つ新庄の悩みは目の前に迫った身体が変化する時刻に対するものではない。
もちろん変化に不安がないというのは嘘だが、今新庄の心中にあるのは先程まで同行していたエネルがいきなり失踪した事だ。
エネルはおそらくこの会場内でも五指に入るほどの非常に危険な人物である。
だからこそギリギリの嘘を付いてまで新庄自ら暴虐な神の枷となったのだ。
無論ヴァッシュの生きる意味となる事もあったが。
そのエネルが少し目を離した隙に紅く禍々しいレイピアのみ残して居なくなっていた。
すぐに周辺を探してみたが、何も手がかりは得られなかった。
文字通りエネルは影も形も綺麗さっぱり新庄の前から消えてしまったのだ。

「どうしよう……もしかして僕を放っておいて誰かを殺しに行ったんじゃ……」

だがエネルはヴァッシュに対して並々ならぬ恐怖を抱いていたはずだ。
そのエネルがヴァッシュとの約束を反故にするとは到底思えない。
もしもここで自分が死ねばすぐさまヴァッシュが飛んできてエネルに制裁を加えるとエネル自身は信じこんでいる。
実際は嘘だが、今までばれる気配は全く無かったし、新庄自身も嘘が露見するような言動はしなかった。

「ここで考え込んでいても仕方ないよね。放送までもう少し時間あるから、ここの探索でも――ッ!?」

突如身体に起こる変化。
白い霧のようなものが新庄の身体を包み始めていた。
男の身体である『切』から女の身体である『運』に変わる予兆だ。

「くぅ……んぁ……」

もうこの変化にも慣れてきた。
いつものように身体が変わっていく感じ。
そして胸を貫く――痛み。

「――え?」

それはいつもと違う感触だった。
だがそれは確かに痛みだった。
一瞬新庄の頭は真っ白になった。
何が起こったのか理解できなかったからだ。
しかし認めなくてはならない。
そこに痛みは確かにある。

「うそ、なんで……!?」

胸から背に貫通した紅いレイピア。
それが痛みの正体。
机の上に置いていたはずの紅いレイピアは新庄の血を吸ったかのように禍々しいまでにより一層深紅に染まっていた。

そして恐る恐る振り返ると剣を突き立てた張本人がいた。

「エ、エネル、さん……なんで……」

いくら探しても影一つなかったはずの神がそこに降臨していた。

224 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:54:44 ID:tbOWS/YE0

「ボクが死んだらヴァッシュさんが来るんだよ、それなのに――」
「そうだな」

その時のエネルの顔は酷く歪んでいた。

「――そういう嘘を付いて我を騙していたんだな。この痴れ者めが!!!」

その言葉で新庄は全て理解した。
あれだけヴァッシュを恐れていたエネルがいとも簡単に態度を翻した理由。
それは単純だった。
『ヴァッシュには「参加者の現在地と生死を把握する能力」がある』という嘘がばれたのだ。

「がはっ」

無造作に抜かれた剣と共に命を繋ぎ止める紅い血がごっそりと零れ出る。
すぐに全身から力が抜けて立っているだけで精一杯になる。
だがただ黙って殺されはしない。

「……貴方は間違っているよ」
「ほう……」
「そんな風に間違っている人に、ボクは、負け――」
「目障りだ」

一閃。
雷撃を帯びた袈裟斬りが刹那の間に放たれた。
それは構えていたストームレイダーを真っ二つにして、新庄の身体に新たな紅い線を引いていた。
そこからまた紅い血が噴き出していた。
もう立っている事は出来ず、重くなった身体は床に倒れ伏した。
倒れる間際にいつも自分を励ましてくれたストームレイダーがエネルの電撃で破壊されるのが見えた。
偶然だがその最期は同じ銃の形を取るインテリジェントデバイス・クロスミラージュと酷似したものだった。
同じ下手人に、同じように致命的なダメージを負わされて、同じように止めの電撃で破壊された。
そしてもう二度と動く事はない。

(ストームレイダーも、ごめん……)

もう神を縛る鎖はなくなった。

「さあ、ヴァッシュよ。私は逃げも隠れもしない。次に会った時が、貴様の最期だ」
(ヴァッシュさん、ごめん。ボクの分まで、生きて……)

もしかしたらこれは嘘を付いて騙してきた自分への罰だろうか。
新庄は死に際そのような事を考えていた。
そういえばここに来る直前も一人の少年に嘘を付くところだった。
それがこうして騙さずに済む事は果たして良い事だったのだろうか。

(……佐山君)

神の証である裁きの雷をその身に受けながら新庄の脳裏に浮かんだ最期の映像はここへ来る直前に別れたあの悪役の少年の顔だった。


【1日目 夕方】
【現在地 C-4 ゴミ処理場】
【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(中)、胸に大きな打撲痕、全身に浅い切傷、『死』に対する恐怖、激怒
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:主催含めて皆殺し。この世界を支配する。
 1.もう油断しない。
 2.ヴァッシュに復讐したい。
【備考】
※黒い鎧の戦士(=相川始)、はやてと女2人(=シャマルとクアットロ)を殺したと思っています。
※なのは(StS)の事はうろ覚えです。
※なのは、フェイト、はやてがそれぞれ2人ずついる事に気付いていません。
※背中の太鼓を2つ失い、雷龍(ジャムブウル)を使えなくなりました。


     ▼     ▼     ▼

225 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:55:47 ID:tbOWS/YE0


「とりあえずは大丈夫みたいだな」
「いやまだ安心できねえぞ」

金居がミラーモンスターに連れ去られてから早数十分。
残されたヴィータはアギトと共に瓦礫と化した市街地を一層の警戒を払いながら移動していた。
あれから何も起きてないが用心するに越した事はない。
ほとんど廃墟と化したせいで至る所に鏡やそれに類する物が散らばっている。
いつミラーモンスターが襲ってくるか分かったものではない。

「くそっ! はやてだけじゃなくて金居まで――」
「俺がどうした?」
「「金居?」」

後ろから声を掛けられて振り返ると、そこにはミラーワールドに連れ去られたはずの金居がいた。
少し服装が乱れて疲れているみたいだが、大きな怪我はなかった。

「おい、お前大丈夫だったのか?」
「いろいろあったが、この通りだ」
「そうか。でもいったい何があったんだよ?」
「ああ、今から話すさ」

ヴィータの質問に答える金居の顔には笑みが浮かんでいた。
当然ヴィータ達は生還できた喜びから来る笑みだと思った。
だがその笑みの本当の意味にヴィータ達が気づく事はなかった。

226 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:56:28 ID:tbOWS/YE0


【1日目 夕方】
【現在地 E-5 市街地北部】

【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】疲労小、腹部に軽い痛み、ゼロ(キング)への警戒、1時間変身不可(アンデッド)
【装備】なし
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.とりあえずヴィータに何があったか説明しつつ今後の事について話し合う。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
 4.上手く状況を動かして隙を見てアーカードを殺害する。
 5.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。
 6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※最終目的はバトルファイトの優勝なのでジョーカーやキングも封印したいと考えています
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。
※自身の制限に気付いています。変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労小、奇襲に対する危機感大、セフィロスとアーカードへの恐怖
【装備】ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で数時間使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、セフィロスのデイパック(支給品一式)
【思考】
 基本:はやての元へ帰る。脱出するために当面ははやて(StS)と協力する。
 1.はやて(StS)は様子見、当分同行するが不審点があれば戦闘も辞さない。
 2.とりあえず金居から話を聞く。
 3.ヴィヴィオ、ミライ、ゼスト、ルーテシアを探す。
 4.アーカード、アンジール、紫髪の少女(かがみ)は殺す。
 5.グラーフアイゼンはどこにあるんだ……?
【備考】
※ヘルメスドライブの使用者として登録されています。
※セフィロスの遭遇以前の動向をある程度把握しています。
※今のところ信用できるのはミライ、なのは、フェイト、ユーノ、ルーテシア、ゼストのみ。
※はやて(StS)、甲虫の怪人(キング)、アーカード、アレックス、紫髪の少女(かがみ)、アンジール、セフィロスを警戒しています。
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
 基本:ゼスト&ルーテシアと合流して脱出する。
 1.とりあえずヴィータやはやてと協力。
 2.この状況ってやべぇんじゃねぇの!?
 3.ゼストとルーテシアが自分の知る2人か疑問。
 4.金居の事を非常に警戒しています。
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。ただし具体的には解っていないので現状誰かに話す気はありません。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。
※ヴィータがはやてを『偽者』とする事に否定的です。


     ▼     ▼     ▼

227 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:57:27 ID:tbOWS/YE0


「俺は、いったい――ッ!?」

始が我に返った時には全ては終わっていた。
周りを見渡せばそこは自分が元いた場所。
浅倉との戦闘で崩壊した市街地の風景が目に痛い。
なぜか拾い直した記憶のないデイパックがあったが、とりあえずベルトが切れた方を捨てて一つにまとめておいた。
そして不意に怒りに身を任せてジョーカーとして戦った記憶が蘇ってくる。
おそらく今は制限のおかげでジョーカーへの変身が解けているのだろう。
だが制限はいつまでも続かない。
今度またジョーカーの欲求が強くなれば――。

「――俺は……」

――正気を保つ自信などありはしない。


【1日目 夕方】
【現在地 F-7】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労大、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、一時間変身不可(ジョーカー)
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】ギンガのデイパック、支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:皆殺し?
 1.生きる為に戦う?
 2.アンデッドの反応があった場所、もしくは他の施設に向かう。
 3.アンデッド、エネル、赤いコートの男(=アーカード)を優先的に殺す。
 4.アーカードに録音機を渡す?
 5.どこかにあるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 6.ギンガの言っていたスバルや他の4人(なのは、フェイト、はやて、キャロ)が少し気になる。彼女達に会ったら……?
 7.ギンガの死をこのまま無駄に終わらせたくはない。
 8.浅倉が再び戦いを挑んでくるなら受けて立つ。
【備考】
※ジョーカー化の欲求に抗っています。
※首輪の解除は不可能と考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝利者となるのではないか」と考えています。
※特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘するとおおよその位置が察知できます。
※エネルとの遭遇からこのバトルファイトに疑念を抱き始めました。
※赤いコートの男(アーカード)がギンガを殺したと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。
※相川始のデイバック(ベルト破損)は放置しました。


     ▼     ▼     ▼

228 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:58:28 ID:tbOWS/YE0


「天道、総司……」

それは愛する母を奪った者の名前。

「これは……」

ふと床に目をやるといつのまにかなくなっていたデイパックがあった。
そしてその口からウサギのぬいぐるみが顔を覗かせていた。
それはなのはママとの思い出のぬいぐるみ。

「なのはママ……待っていてね……」

天道がなのはママの居場所を知っている事は確かだ。
素直に教えないようだから今度こそ倒してお話を聞かせてもらう。
母を求める聖王の決意は固かった。


【1日目 夕方】
【現在地 I-5 聖王のゆりかご内の通路】
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労小、魔力消費小、聖王モード、洗脳による怒り極大
【装備】レリック(刻印ナンバー不明/融合中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:なのはママとフェイトママの敵を皆殺しにする。
 1.天道総司を倒してなのはママを助ける。
 2.なのはママとフェイトママを殺した人は優先的に殺す。
 3.頃合を見て、再びゆりかごを動かすために戻ってくる。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています(一応まだ信頼しています。殴ったのは何らかの理由があるからだと考えています)。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※クラールヴィントは浅倉を警戒しています。
※ヴィヴィオに適合しないレリックが融合しています。弊害の有無・内容は後続の書き手さんにお任せします。


     ▼     ▼     ▼

229 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 17:59:26 ID:tbOWS/YE0


「天道さん! しっかりして下さい、天道さん!!」

夕日が差し込むスーパーの事務室になのはの悲痛の叫びが木霊する。
だが部屋の中に赤が目に付くのは決して夕陽のせいばかりではない。

(いったい向こうで何が!?)

何もかも分からない事だらけだった。
いきなりコップから蛇が顔をのぞかせてその毒々しい舌で天道を引きずり込んだ。
そして何とか追いかけようと四苦八苦しているうちに天道がいきなり窓から飛び出してきた。
その時窓の向こうで親友の姿を見た気がするが、戻ってきた天道の姿でそれどころではなかった。
天道は頭から血を流して息も絶え絶えの状態だった。
すぐに回復魔法を掛けようとしたが思うように捗らない。
まだほとんど魔力が回復していないのだから当然だ。
なんとか起死回生の策はないかと辺りを見渡したなのはの目に留まったのは天道が手にしていたデイパック。
それはあらかじめ金居がすぐ使えるように分けておいたものだった。
そこからある支給品が零れ落ちていた。
いにしえの秘薬。
説明書が正しければ万事解決だが、さすがに話が上手すぎるので逆に怪しく思える。

(天道さんは私を庇って怪我をしたんだ。それなら今度は私が身を張って……)

なのはが選んだ方法は毒見。
だが一応最初は少しずつ口に含むように飲んでみたところ、すぐに杞憂だと分かった。
身体に浸透していくにつれて魔力や体力が満ちていき、身体の不調も解消されていくのを感じたからだ。
これなら大丈夫だと判断して天道にも服用させたところ、効果は覿面。
程なく天道の傷は癒えて、すぐに起き上がれるようになった。
そして起き上がれるようになった天道が開口一番に告げた事は――。

「高町、さっそくだが伝える事がある」
「なんですか?」
「ヴィヴィオに会った」

――ずっと探してきた娘の消息だった。

230 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:00:07 ID:tbOWS/YE0


【1日目 夕方】
【現在地 D-2 スーパーの事務室】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、驚愕、キングへの疑念と困惑
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式(クロノ)
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
 1.ヴィヴィオに会った!?
 2.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
 3.フェイトちゃんもはやてちゃんも……本当にゲームに乗ったの?
 4.早く騎士ゼストの誤解を解かないと……。
【備考】
※金居とキングを警戒しています。紫髪の少女(柊かがみ)を気にかけています。
※フェイトとはやて(StS)に僅かな疑念を持っています。きちんとお話して確認したいと考えています。

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、悔恨
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、『SEAL-封印-』『CONTRACT-契約-』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸、弁慶のデイパック(支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER)
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.高町にヴィヴィオについて話す。
 2.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
 3.カードデッキとモンスターについて調べる必要がある。
 4.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
 5.キングは信用できない。常に警戒し、見張っていたが……。
 6.カブトセクターを始めとする各ゼクターを取り戻す。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※SEALのカードがある限り、ミラーモンスターは現実世界に居る天道総司を襲う事は出来ません。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。

【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
 基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
 1.これからどうするか?
 2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
 3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
 4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 友好的:なのは、(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、シャマル、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、キャロ、(ギンガ)、ヴィヴィオ、ペンウッド、天道、(弁慶)、ゼスト、(インテグラル)、C.C.、ルルーシュ、(カレン)、シャーリー
 敵対的:アーカード、(アンデルセン)、浅倉、相川始、エネル
 要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)、キング
 それ以外:チンク・(ディエチ)・ルーテシア、紫髪の女子高校生、ギルモン・アグモン


     ▼     ▼     ▼

231 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:00:58 ID:tbOWS/YE0


「浅倉ァァァ!!! あいつだけはァァァ、あいつだけはァァアアアアア!!!!!」
『おい、ご主人様。落ちつけよ。いったい何があったんだよ?』

バクラは状況がまるでつかめていなかった。
それもそのはずだ。
かがみが連れ去られた事でバクラが宿る千年リングはホテルのロビーに放置されていたのだから。
そして再びかがみが手にするまで誰の手にも渡る事なく沈黙していたのだ。

「浅倉が、浅倉が、つかさを、つかさを……」
『つかさ? 確かご主人様の双子の妹だな』
「つかさぁぁぁ……つかさぁぁああ……つかさああああああああ」
『(こりゃあ、時間がかかりそうだな。だが……)』

バクラは見抜いていた。
かがみの心に以前とは比べ物にならない程の負の感情が宿っている事に。
それはバクラにとっては何よりも好むものだった。


【1日目 夕方】
【現在地 F-9 ホテル1階ロビー】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】バリアジャケット、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、極度の錯乱&やさぐれ、1時間変身不可(キックホッパー)
【装備】ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ホッパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】エリオのデイパック、支給品一式、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:みんな死ねばいいのに……。
 1.浅倉威を最優先で殺す。
 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※バリアジャケットのデザインは【●坂凛@某有名アダルトゲーム】の服装です。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.何があったか聞き出す。
 2.当面はかがみをサポート及び誘導して優勝に導くつもりだが、場合によっては新しい宿主を捜す事も視野に入れる。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.可能ならばキャロを探したいが、自分の世界のキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。仮にかがみが自分の世界のキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 7.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。


     ▼     ▼     ▼

232 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:03:20 ID:tbOWS/YE0


「また水を差されてしまったが、もう誰にも邪魔はさせん……」

地上本部前の惨状の中でキース・レッドは高揚していた。
一度目と二度目はミラーモンスターの介入で図らずも決着は付かなかった。
これで三度目。
今度こそ因縁に蹴りを付ける。
長年の願いが叶う時が刻一刻と近づく事に嬉しさを感じていた。

「ふん、ここにあったか」

先程の戦闘では探りが入ったとはいえ決定打が出なかった。
今の状態で膠着なら外部の道具できっかけを作るしかない。
そのためにジャッカルとカスールは回収しておきたかったが、それは早々に叶った。
だがあくまできっかけ、最期の止めは自らの手で付ける。

そして川で拾ったデイパックの中にあった予備弾の中から合うものを選んで弾を込めながら、ある推測を立てていた。
意外にもそれは同じころ、アレックスも考えていた事だった。

(こっちに戻ってからだと身体が少し重く感じる。やはり力の制限は首輪ではないのか? こういう事はクアットロに――ん?)

キース・レッドはそこで思考を中断した。
コツコツという足音と共に浮浪者のような人物が近付いてきたからだ。
首輪を付けている事から参加者である事は明白だ。
そしてどこか生気がなく不気味な雰囲気だった。

「死ね」

それをキース・レッドは何の躊躇いもなく一閃して殺した。
そこに何の感情もない。
ただ邪魔だった、ただそれだけだ。

だがその現場を見ていた者がいた。

「キース・レッド、貴様ァァァ!!!」
「その様子だと知り合いか、随分と丸くなったなァァァ!!!」

こうして二人は三度目の邂逅を果たした。

233 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:04:10 ID:tbOWS/YE0


【1日目 夕方】
【現在地 E-5 地上本部1階ロビー】

【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(中)
【装備】ベガルタ@ARMSクロス『シルバー』、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING
【道具】支給品一式、ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA's、首輪×2(優衣、なのは@A’s)、優衣とカレンとアンデルセンのデイパック(道具①と②と③)
【道具①】支給品一式、レリック(刻印ナンバーⅦ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(元カレン:0〜2)
【道具③】支給品一式、各種弾薬(各30発ずつ/ジャッカルとカスール共に6発消費)、カートリッジ(残り13発)、レイトウ本マグロ@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、杖@ゲッターロボ昴
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 1.キース・シルバーと決着を付ける。
 2.できるだけ早く首輪を外したい。
【備考】
※今のキース・シルバーの名がアレックスだと知りましたが、アレックスと呼ぶ気はありません。
※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
※白刃の主をヴァッシュだと思っています。
※サンライトハート改は余程の事がない限り使う気はありません。
※ルーテシアの話の真偽についてはどうでもいいみたいです。
※特別な力の制限は首輪以外のもので行っていると考えています。

【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】疲労(中)、激しい怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3)
【思考】
 基本:自分の意思による闘争を行い、この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
 1.キース・レッドと決着を付ける。
 2.決着が付いた後にキース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
 3.六課メンバーと合流する。
【備考】
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダーリリカル龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※市街地東側に医療設備が偏っている事から、西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。
※特別な力の制限は首輪以外のもので行っていると考えています。


     ▼     ▼     ▼

234 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:06:30 ID:tbOWS/YE0


「おかえりなさい、リニス。カードデッキは?」
「はい、ここに」

リニスは返事をしながら主であるプレシア3つのカードデッキを差し出した。
王蛇、元々ベルデで今はブランク、タイガの複製。

「確かに。ご苦労様」
「え?」

リニスは耳を疑った。
あのプレシアが使い魔である自分に労いの言葉を掛けたのだ。
少し前は汚い死体扱いも同然だったのに明らかにおかしい。

「それとさっきは少し言いすぎたわ。こんな主だけど、これからもよろしくね」
「え、あ、はい」

そんな言葉を掛けられても素直に喜べず、申し訳ないが正直気味が悪かった。

「あの、プレシア。カードデッキを回収して良かったのですか? それと浅倉威をこちらで始末したりして……」
「背に腹は代えられないわ。デスゲームを円滑に進めるためにはこれしかなかったのよ」
「そう、ですか」

そう説明するプレシアの顔はどこか憂鬱気だった。
エネルに対しては『ヴァッシュには「参加者の現在地と生死を把握する能力」という能力はない』『エンジェルアームは過度に連発すると身体が持たない』の2つ。
金居に対しては『ゼロの正体はキングである』『キングはここでは時間操作は行えない』の2つ。
それぞれ2つの情報を与える事でカードデッキは回収しなければならなかった。
やはり苦渋の選択だったのだろう。

浅倉の祭りに巻き込まれた参加者は全員ゴルトフェニックスで元の会場に戻して、各自のデイパックもそれぞれの持ち主の元へ転移魔法で戻された。
ただし柊かがみには元々彼女が所持していたものが宛がわれた。
参加者に対してこの方法が取られなかったのは動いている物体だと一度にできないために手間が掛かるからだ。

「本来なら首輪を外す参加者が出た時点で手を出すのが最初だと思っていたのにちょっと予定外だったわ」
「これからどうなさるんですか?」
「計画に変更はないわ。今回のような直接制裁も数人までならなんとかできるわ」
「…………」

やはり中止はないのだと改めて思い知らされた。

235 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:07:54 ID:tbOWS/YE0

「ところであの偽者達は何人生き残ったのかしら?」
「まだ詳しくは分かりません。あなたの命令で魔法構築の礎になった者がかなりいましたから……」

実際アーカードとの戦闘で死亡した量産型フェイトの数は約30にも上った。
やはり慣れないカードデッキでの戦闘で経験の無さを突かれた事が死因の一つだ。
だが残りの死者はプレシアの命令によるものだ。
プレシアは浅倉の首輪を爆破すると同時にフェイトにある命令を下していた。
一つはゴルトフェニックスを使って参加者を強引に拉致して可能な限り元いた場所に返す事。
もう一つはミラーワールドと会場との自由な出入りを封じるための魔法を行使するために魔力の礎となれというもの。
元々この魔法はその特殊性ゆえに大規模な魔力を必要とするために急に使えるものではなかった。
だがそれをプレシアは量産型フェイトに魔力を限界まで放出させて補った。
当然そんな無茶をした者が無事でいるはずがなく過剰な魔力の放出に耐えられずに大多数のフェイトは最期には塵となった。
それをリニスはモニター越しに黙って見ているしかなかった。
それでも奇跡的に生き残った者もいたが、10には至らない事は確認していた。

「納得いかない、みたいな様子ね」
「いえ、私は……」
「生き残った偽者への対応はあなたに任せるわ。ただしまた用があるかもしれないから戦闘の教育はしっかりしておきなさい」
「はい、分かりました」

曲りなりとはいえ量産型フェイトがむざむざ死んでいく事はやるせない。
出来る限りの事はするつもりだ。
それが例えあのフェイト達を死地に追いやる事だとしても。
そこから生きて帰ってくる可能性は少しでも高めたかった。

「そういえばここに転移してきた時にセフィロスに何かあったと言っていたけど、詳しく聞かせなさい」
「はい、実は――」

それを最後にリニスは退室する事になった。

(やはりおかしい……)

部屋を出るなりリニスが思った事がそれだった。
リニスはプレシアの命で出撃するまでは散々な言われようだった。
それが帰還してみれば掌を返したような態度だ。
疑問に思って当然だ。
今までの経緯から考えて改心したとは思えない。
それに何より――。

(――精神リンクは切断されたまま。プレシア、あなたは何を考えているのです)

主の想いを窺う事も許されない身ゆえにリニスの表情が晴れる事はない。

(しかし逆にこれは良い機会かもしれません。この間に参加者の行動を再度調べ直して信頼できる者を一人でも多く探しましょう。
 リインフォースⅡやハイパーゼクターを託すに相応しい者を……)

そしてリニスは自分に宛がわれた部屋へと戻っていった――自分が為すべき事を為すために。


【1日目 夕方】
【現在地 ???】
【リニス@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、困惑
【装備】複製バルデッシュ@オリジナル
【道具】?
【思考】
 基本:使い魔として創造主であるプレシアに従う。
 1.プレシアの命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進める。
 2.プレシアにバトルロワイヤルを中止して欲しい
【備考】
※バトロワ会場の世界、主催のいる空間、ミラーワールドを行き来する空間転移魔法が使えます。


     ▼     ▼     ▼

236 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:09:02 ID:tbOWS/YE0


(我ながら寒い芝居。まあ、それもこれも、余興に過ぎないわ)

リニスの想像通り、プレシアの態度は善意からのものではない。
寧ろ悪意から来るものだ。
実はプレシアは前々からリニスがデスゲームを快く思っていない事は知っていた。
それでも傍に置いているのは直接自分を裏切るような行動を取れないような契約を結んでいるからだ。
ただこの契約内容で禁じているのは直接的な行動なので間接的なものに対する拘束は弱かった。
だから支給品にこちらに不利になるような物を混ぜる事が可能だった――ただしそれでも数個が限界だったようだが。

(でも甘いのよ。やるならもっと上手く誤魔化さないとダメね)

リニスが望みを託した支給品が何かはすぐに分かった。
だがそこで排除する事はしないで、その支給品にはあらかじめ仕掛けを施しておいた。
例えば自律行動を取るものには参加者と同じように違反行為を取れば作動する首輪を付けておいた。
なぜわざわざそのような手間を掛けたのか。
それはリニスの反応を楽しみためだ。
あの反抗的なところがある使い魔に余計な事をしたらどうなるか知らしめるには実に効果的な方法だ。
今から自分が託した物が実はプレシアの手の中で踊っていたと知ったリニスの顔を見るのが楽しみだ。

(この問題はこれでいいとして他にもいくつか気になる点はあるわね)

まずはセフィロスの件。
しかしこれは然程心配する事ではない。
プレシアは参加者を集める際に一応一通りの背後関係を調べていた。
当然ながらセフィロスに目を付けていたカオスなる存在についての知識も少々ならあった。
その知識と【案ずることはない。貴様達の戯れを邪魔するつもりはない】という去り際のセリフからして今後カオスがデスゲームに関わる可能性はゼロに等しい。
プレシアの知る限りこのデスゲームに関わっている人物でカオスと多少なりとも関係があるのはセフィロスだけのはず。
それゆえにこの件については深く考えなくていい。

次に天上院明日香が所持するジュエルシードと夜天の書。
この時までプレシアはミラーワールドに掛かりきりで天上院明日香と八神はやての戦闘に気付いていなかった。
二人の戦闘、及びジュエルシードと夜天の書の相乗効果の進行具合に気付いたのはついさっきだ。
しかし気づくのが遅れたからと言って別に慌てる事はない。
改めて調べてみればジュエルシードが夜天の書に及ぼしている影響は十分想定範囲内。
寧ろ現在の使用者である天上院明日香に元々魔力資質がないために予想の値よりかなり低い。
一応事前に保険としてジュエルシードにはある一定値以上の力は発揮できないように細工はしておいた。
そのため仮にジュエルシード付きの夜天の書が本来の持ち主である八神はやてに渡っても次元災害が起きる程の威力は出ない。
これに関してはデスゲームを開く際の懸念の最重要事項の一つだったので特に念入りに検査したので100%保障出来る。

だが不測の事態という事もある。
金居が新たな協力者として名乗りを上げてくれたが、どこまで信用していいのか甚だ疑問だ。
これも新たな懸念材料になり得る。

「やはり奥の手は用意しておくものね……そっちの調整はどこまで進んでいるのかしら?」

237 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:10:27 ID:tbOWS/YE0

いつのまにか正面の空間モニターに映す出された人物に対してプレシアが問いかけていた。
その人物は如何にも事務系を仕事に向いているという雰囲気を漂わせていた。
今もプレシアとの通信をしている最中も両手は作業を止める事はなかった。

『はい、約八割方調整完了しました。おそらく後2時間ほどで完全に調整は完了する予定です』
「分かったわ。引き続きガレアの冥王とその配下の屍兵器の調整は任せたわ、ウーノ」
『はい、了解しました』

そう戦闘機人ナンバーズの最古参が返答するのを確認してからプレシアは通信を切った。
イクスヴェリアとマリアージュに関しては一応大部分を任せてあるが、念のため根幹の部分のプログラムはこちらで設定してある。
万が一に備えて屍兵器が刃向かう心配はなくしておきたいからだ。
さらにこちらの戦力はまだ他にもある。
時の庭園で使用した傀儡兵、元々ルーテシアの使役していた召喚虫、そして――。

「――まあ、あの子を投入する事は来ないでしょうね」

プレシアは空間モニターに映る二人の参加者を見ながらデスゲームの進行を見守っていた。
一人はこちらから唯一コンタクトが取れる王の位を持つ不死のアンデッド、キング。
もう一人は唯一こちら側の人員であるリニスと接触した不死王と謳われた吸血鬼、アーカード。
純粋な力なら最強クラスである二人の肩書きはどこか似ていて――。

『なんだよ、もう終わりかよ』
『結局、闘争は取り上げられたか』

――ゴルトフェニックスの群れによって元の会場に戻された反応もどこか似ていた。

『さて、次は何をして楽しもうかな』
『さあ、次は誰が私を殺しに来る』

そしてどこか求めるものも似ていた。


【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎  死亡確認】
【新庄・運切@なのは×終わクロ  死亡確認】
【L@L change the world after story  死亡確認】

238 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:12:09 ID:tbOWS/YE0


【1日目 夕方】

【現在地 D-5 橋付近】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、わくわく感、ゴジラへの若干の興味
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式(ペンウッド)、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギルモンとアグモンとC.C.のデイパック(道具①②③)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【思考】
 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
 1.浅倉と手を組んでこの戦いを更に引っ掻き回す。
 2.浅倉と天道の戦いを見られるようにする。
 3.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
 4.はやての挑戦に乗ってやる。
 5.浅倉とキャロに期待。
 6.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える。
 7.ヴィヴィオをネタになのはと遊ぶ。
【備考】
※キングの携帯電話には以下の画像が記録されています。
・相川始がカリスに変身する瞬間の動画。
・八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像。
・高町なのはと天道総司の偽装死体の画像。
・C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※ゼロの正体がルルーシュだと知っています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。

【現在地 E-5 地上本部10階】
【アーカード@NANOSING】
【状態】疲労小、ダメージ小、「命」小程度回復
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
 基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
 1.再度プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。
 2.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない
 3.首輪解除の技能者を探してみる?
 4.アンデルセンを殺した参加者を殺す。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る者とは別人だと気付いています。
※第一回放送を聞き逃しました。
※デスゲーム運行にはプレシア以外の協力者ないし部下がいると考えています。
※首輪解除時の主催の対応は「刺客による排除」だと考えています。

239 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:12:44 ID:tbOWS/YE0

【現在地 ???】
【プレシア・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、ルーテシアの召喚虫の使役主
【装備】?
【道具】カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
 基本:デスゲームを遂行させる。
1.デスゲームの進行を妨げる事態が起きたら時と場合に応じて対処していく。
【備考】
※デスゲームの進行を著しく妨げる事態(首輪の解除etc)が起きた場合、躊躇いなく首輪を爆破する気でいます。

【全体備考】
※ミラーワールド(【F-6 レストラン前】付近)に以下のものが落ちています。
・浅倉威の死体(首なし)、柊つかさの死体(パピヨンマスク、シーナのバリアジャケットを装備)。
・浅倉威のデイパック【支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12】
・万丈目準のデイバック【支給品一式、考察などを書いたノート】
・つかさのデイパック【支給品一式、電話帳@オリジナル、デパートで回収したもの、十代のデイパック(支給品一式、バヨネット@NANOSING、んまい棒×4@なの魂、ヴァイスのバイク@魔法少女リリカルなのはStrikerS、リビングデッドの呼び声@リリカル遊戯王GX、木製バット、エアガン、パン×2、キャベツ半玉、十代のメモ)】
・柊かがみのデイバック(中身ごと真っ二つに破壊されました)【支給品一式(なのは大)、Ex-st(残弾なし)@なのは×終わクロ、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)】
・S2U@リリカルTRIGUNA's
・装甲車(鍵付き)及び多種多様な火器(全て人間が所持して使用するタイプ)。
※【C-4 ゴミ処理場内の事務室】にストームレイダー(破壊/修復は不可能)が放置されています。
※プレシアによりミラーワールドへ入る事が不可能になりました。

240 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/11(木) 18:15:41 ID:tbOWS/YE0
仮投下終了です
今回仮投下した理由はイクスヴェリアとマリアージュをこのまま正式に出していいのか迷ったためです
自分としてはこれぐらい出してもいいと思うのですが、意見があれば言ってください

他に誤字・脱字、疑問、矛盾などあれば指摘して下さい

241リリカル名無し:2010/02/12(金) 20:56:49 ID:17qv4I5EO
仮投下乙です
イクスとマリアージュですが特に意見はないです
敢えて言うならもうすぐ放送なのでそこまで待つ案もありますが放送を氏が書くこと前提になるのであまり強くは言いません

242リリカル名無し:2010/02/12(金) 21:22:51 ID:8543W4N.0
もうしばらく待って問題無ければ本投下でいいと思うよ

243リリカル名無し:2010/02/12(金) 22:20:30 ID:9gOzH0/6O
一応ですが正式に新キャラ登場させるなら、状態表が有った方が良いかと思います。
あと展開自体は問題ないと思うんで本投下しちゃっても良いかと。投下してから時間も経ってますし

244 ◆HlLdWe.oBM:2010/02/12(金) 23:50:24 ID:b3.lv6Z60
ご意見ありがとうございました
本投下ですが状態表などいくつかこちらでおかしな部分を見つけたのでその辺りを修正加筆して明日には本投下します
なお新キャラの状態表ですがモニター越しの登場、
また今まで話に何度か登場しているにもかかわらずプレシアやリニスが前回と今回からようやく本格的に状態表が付いた例から
すいませんが今回は新キャラの状態表は見送らせてもらいます。

245第二回人気投票・テンプレ案:2010/02/22(月) 17:54:09 ID:DMJzmB5E0
第二回・リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル人気投票

      ,. '´:::: ̄::::::`ヽ、        ,. -
     /::::::::::::::::::::::::::::::::::\      /
    /:::::/::::/::::::::/:::::::/:::/^ーヘ∠、
.  /l::::/:/::::::, イ::::::::::/:::/:ヽ::::::::ヽ ::\
  l::|:::l:/l::::/l//7.‐-//,イ|::l:|:::ヽ::::::ヽ :::\
  l:::V|l::l::/i,ィぅ示V // l:|::l:|:::l::l::::i:::::', ::::::ヽ
  V゙{ミYl:l { {:::rリ /  l_!:ハ!::l:::l::::l:::l::lヽ::::::::ヽ
   ヽVl:N ヾニク     ,佇i〉l::::l:::l::::|l::l::l \::::::::',
    V|:l    _  、 ヒダ/l: /Y7_l:::ハ:l   ヽ::::::',  帰ってきました第二回!
      l:l丶  〈::::::::::>  ,.'ノ l ///l   ll     ',::l::l  意中のあのお話やあのキャラは、
 , -r={Vll \  ー'′ /::/ l l l l l  /     ',:N  果たして何位になるのかな?
./: l: l \lー‐v` ー < /:/ r 、 | l l l |        リ  なのはロワ人気投票、再びスタート!
;V〈:l: l  l ̄l〈ニミ、  〃  i lノ-- l│
;;;Vハl l `ー 、   _.K^i>i^ヽ| 〈  ‐/│
;;;;;;;l : l      |: : l : l;;;;; ! )/ │
;;;;;;;l: : lヽ.    |: :/: /;;;;;八    ハ
;;;;;;;l: l: l//7ハア^ l //;;;;;/;;;; VZzzz彡ハ
;;;;;;;l: l: l/ { /  l/;;;;;;;/;;;;;;;;; V三三三ハ
;;;;;;ハl: l  }{  l;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;l V三三彡ヽ
;;;;;;;;;;;V:} :::::ii::::::: Vi;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l  ヽ    ヽ
;;;;;;;;// ::::ノl::::::::: Vi;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l   l     ヽ
;;// .....:::::::::::::::::: Vi;;;;;;;;;;;;;;;;;l、  l        |
_/ ...:::::::::::::::::::::::::::: Vi;;;;;;;;;;;;;/ \ヽ     |


≪開催期間≫ 03/01(月)0:00〜03/10(水)0:00
≪対象≫000「それは最悪の始まりなの」〜123「第二回放送」(台詞部門)
    069「アナタハマタマモレナイカモネ」〜123「第二回放送」(SS部門・キャラクター部門)

246リリカル名無し:2010/02/22(月) 17:57:00 ID:DMJzmB5E0
≪ルール≫
投票者には一名につき、各部門に五票ずつの持ち点が与えられます。
それを振り分ける形で投票してください。
好きなキャラ・SSに平等に振り分けるもよし、一番好きなものだけに全部注ぐもよし。自由に持ち点を割り振ってください。
また、そのキャラ・SSを選んだ理由も書いていただけると、結果発表の際に参考になります。

【例】
・SS部門
「絶望の罪人」に三票、「第二回放送」に一票、「バイバイ/サイカイ」に一票
・キャラクター部門
フェイト・T・ハラオウン(A's)に二票、ヒビノ・ミライに二票、泉こなたに一票
・台詞部門
プレシア「さぁ、デスゲームの始まりよ」に二票、
アーカード「さぁ、戦端は開かれたぞ! 贄は今ここに捧げられた! 闘争の儀の始まりだ!
 私に抗う覚悟ができたものは、この私を求めるがいい。最高の礼儀と苦痛と悦楽をもって、最高の闘争でもてなしてやろう。
 私を恐れる心を抱いたものは、すぐに退散するがいい。私直々に、地の果てまでも追いかけて、その息の根を絶ってやろう。
 歌い踊れ人間達よ。挑み、挑まれ、殺し、殺され、豪華絢爛の限りを尽くした宴を上げろ。
 この私をもてなすがいい。最高の狂気と殺意と暴力に満ちたフルコースによって。
 私を退屈させないことだ。私を苛立たせないことだ。
 戦うなら早く戦うがいい。逃げるなら早く逃げるがいい。さっさと諸君の行動を見せてみろ。
 Hurry! Hurry! Hurry! Hurry! Hurry!」に二票、
なのは(StS)「確かに私たちは、自分一人の為だけに戦う時もある……この手で……」
「でも、この手で相手の手を握る事も出来る。その時は私たちは、弱くても、愚かでも――一人じゃない。」
「例えキャロと再会するまででも……今は私とフリードが、パートナーなんだよ……!」 に一票


≪部門≫
・SS部門
・キャラクター部門

・台詞部門
  そして二回目となる今回からは、新たに「台詞部門」が用意されます。
  物語とキャラクターを彩る、強い啖呵に冷たい言葉、時には笑いを誘う一言など、貴方の好きな台詞に票を投じてください。
  ≪ルール≫の【例】におけるなのは(StS)の台詞のように、複数行に渡る台詞に投じられた票は、
  全て最も範囲の広い台詞に統合されます。
【例】

「でも、この手で相手の手を握る事も出来る。その時は私たちは、弱くても、愚かでも――一人じゃない。」
「例えキャロと再会するまででも……今は私とフリードが、パートナーなんだよ……!」


「確かに私たちは、自分一人の為だけに戦う時もある……この手で……」
「でも、この手で相手の手を握る事も出来る。その時は私たちは、弱くても、愚かでも――一人じゃない。」
「例えキャロと再会するまででも……今は私とフリードが、パートナーなんだよ……!」


「例えキャロと再会するまででも……今は私とフリードが、パートナーなんだよ……!」

これら3つの台詞に投じられた票は、全て②への投票として扱われます。

   なお、この台詞部門の投票対象は、SS部門・キャラクター部門の対象と異なり、
   第一回放送までの68話分も含まれます。間違いのないようにご確認ください。


≪おまけ≫
こちらは強制ではありませんが、日頃SSを手がけている書き手の方々への、応援のメッセージもご一緒にどうぞ。
たった一レスの言葉でも、書き手様方には大きな励みとなります。
好きなSSの感想から単純な声援まで、それぞれ思い思いの形でメッセージをお贈りください。

247リリカル名無し:2010/02/22(月) 17:59:04 ID:DMJzmB5E0
テンプレ案は以上です。
今回は投票期間の3日間の延長、および台詞部門追加の2点の変更を加えました。
投票期間の方は、前回1名あぶれてしまった人がいましたので、延長しようかなと思った次第です。
問題や改善してほしい点がありましたら、どうかご指摘くださいませ。

248リリカル名無し:2010/02/23(火) 09:25:02 ID:Nf2I6LNs0
テンプレ案乙です。

台詞部門追加及び投票期間延長に関して自分的には問題ないと思います。
只、投票期間延長に関しては前回同様投票期間中全スレでID固定しなければならなかった筈なので、したらば管理人からの意見は必要だと思います。
この期間中ならば放送前のSS投下は無い可能性が高いので大きな影響は無いとは思いますが。

249 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 19:54:54 ID:j5DBXWeA0
第三回放送の案ができましたので、こちらに投下させていただきます

250第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 19:56:12 ID:j5DBXWeA0
 それは、小さな願いだった。

 ■の■の名を授けられ、世界に滅びの力を振りまき、忌み嫌われること数世紀……
 けれど、悲しい時間はもう終わり。
 最後に出会った■■の主は、私に名前を与えてくれた。
 強く■■■■もの……幸運の■い■……
 忌まわしき呪いの名前ではなく、祝福の■■■の意を冠した名前――■■■■■■■。

 名前を呼ばれたその夜に、私は戦うことを決めた。
 運命という名の鎖を砕く力を、この手に主と共に掴むため……私は自らに課せられた宿命と戦うことを、その時初めて決心した。
 別に、大層な正義があったわけじゃない。
 世界全てを守る力も、世界全てを牛耳る力も、私は欲していたわけじゃない。
 ただ、ほんのささやかな願いのために……心優しき家族と過ごす、暖かい日々を手に入れるために……
 私は自らの運命と戦い――運命に、打ち克ったのだ。

 願ったものは、手に入れた。
 手にした日常はありふれていて、本当になんてことのない日々だったけれど。
 ただ命令にだけ従い、破壊と殺戮を生むだけだった生涯の中では、最も心穏やかでいられる、尊く愛しい時間だった。

 ああ――本当に。

 それで全てが終わりなら、本当に幸福だっただろうに――。

251第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 19:56:49 ID:j5DBXWeA0


 こんばんは。
 これより18時をお伝えすると同時に、第3回目の定期放送を行いたいと思います。
 今回も過去の2回同様、禁止エリアから発表させていただきますので、メモの用意をお願いします。
 ……なお今回の放送ですが、現在プレシア・テスタロッサ氏がお疲れのため就寝中ですので、
 今回に限り、僕が代役を務めさせていただきます。
 ゲームの進行には何ら問題はありませんので、ご了承ください。

 それでは、禁止エリアの発表です。

 19時から○-○
 21時から○-○
 23時から○-○

 以上、3箇所となります。
 これまでの禁止エリア同様、場所と時間をお忘れなきよう、十分にご注意ください。
 ……では続きまして、前回放送から現在までの間に出た死者の名前を発表させていただきます。

 浅倉威
 L
 キャロ・ル・ルシエ
 早乙女レイ
 C.C.
 シェルビー・M・ペンウッド
 シャマル
 シャーリー・フェネット
 新庄・運切
 ゼスト・グランガイツ
 セフィロス
 チンク
 柊つかさ
 フェイト・T・ハラオウン
 万丈目準
 ルーテシア・アルピーノ
 ルルーシュ・ランペルージ

 以上、17名となります。
 プレシア氏からは、
 「前回が9名だったという点を考慮すると、非常に素晴らしい戦績だと思う。今後も頑張ってほしい」との伝言を預かっております。
 僕の目から見ても、今回の結果は非常に優秀なものだったと思います。
 この分ならば、あるいは次の日の出よりも早くゲームが終了するかもしれません。
 早めにゲームが終わるのは、我々管理する側も楽ができることに繋がりますので、これからも頑張ってゲームに臨んでください。

 最後に、ボーナスの発表です。
 この放送が終了した瞬間から、皆様が他の参加者を殺害する度に、お手持ちのデイパックの中に、1つずつ支給品を転送させていただきます。
 デイパックをお持ちでない方の場合は、その場に転送させていただきますので、回収忘れのないようにご注意ください。
 さすがに極端に強力な支給品を提供することはできませんが、
 少なくとも一定以上の有用性のある武器をご用意させていただきますので、有効にご活用ください。

 それでは、今回の放送はこれにて終了です。
 放送は僕――オットーが担当させていただきました。

252第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 19:57:32 ID:j5DBXWeA0


 かつ、かつ、かつ、と。
 薄暗い廊下を叩くブーツの足音。
 硬質な床を鳴らすたびに、腰から生える尻尾がゆらゆらと揺れる。
 白と茶色を基調とした衣装を纏う、ショートヘアの女性は、プレシア・テスタロッサが使い魔――リニスだ。
(さすがに、そう上手くはいかないか……)
 ふぅ、と軽くため息を漏らす。
 その顔立ちに浮かぶのは憂い。
 その感情の矛先は、つい先ほど流れたばかりの放送だ。

 さかのぼること10分前。
 少し疲れたから仮眠を取る――主君プレシアは、不意にそんなことを口にした。
 無理もない。かれこれ18時間一睡もしておらず、おまけに先ほどは浅倉の手によって、あのような事件まで起こされている。
 体調の優れないプレシアにとっては、そろそろ疲労もピークといったところだろう。
 リニスはこれを快諾し、ベッドで休むように勧めた。
 彼女を裏切るような真似に出ようとしている身が、そんなことを思うのも妙な話だが、確かに彼女の体調を案じてはいた。
 だがその一方で、これはチャンスでもあった。
 このタイミングでプレシアが眠るというのならば、誰かが代わりに放送を行う必要がある。
 いつぞやに彼女が漏らしたように、自分に放送の代役が回ってくる。
 殺し合いを止めたいと願い、いくつかの支給品に希望を託した彼女にとっては、まさに千載一遇の好機。
 直接的な言い回しをすれば、後々でプレシアに意図を悟られてしまうだろうが、
 遠まわしな表現で、それとなく支給品の存在を匂わせることはできるだろう。
 そのためにも、この放送代役は何としても引き受けなければならない。
 リニスは前述の勧めの後、放送の役目を自分に任せるよう、進言するつもりだった。

 だが、しかし。
 そう思った後がよくなかった。

 ――では次の放送は、代わりに僕が担当させていただきます。

 そう割り込んでくる声があったのだ。
 短い茶髪/中性的な顔立ち/華奢な体躯/パンツルック。
 ぱっと見では男とも女とも分からぬ、しかしどちらでもありそうな容姿をした、戦闘機人ナンバーⅧ――オットー。
 ガレアの冥王の調整を担当しているウーノの妹であり、同時に会場にいるクアットロの妹でもある男装の少女。
 そのオットーに先を越されてしまった。
 自分が放送をやると言い出す直前に、彼女がどこからともなく現れ、放送をやらせてほしいと言い出したのだ。
 プレシアの返答は、是。
 断る理由などなかった。
 ただ死者と禁止エリアとボーナスを読み上げるだけの放送担当など、誰に任せても同じことだったのだろう。
 一応、こんな腹の知れぬ者に任せていいのか、とだけプレシアに尋ねた。
 こういう仕事には貴方よりも向いている人材だと思う、という返事が返ってきた。
 なるほど確かに、的を射ている。
 お人よしな自分よりも、冷徹な機械人形そのもののようなこの娘の方が、メッセンジャーには向いているように見える。
 悔しいが、そう返されては仕方がない。
 それ以上言い募ることがあれば、違和感を覚え怪しまれてしまうことに繋がるだろう。
 あるいはオットーを選びリニスを遠ざけたことが、大なり小なり疑われていることの表れなのかもしれないが。

 そうしてリニスは放送を行うことを断念し、現在の状況に至っていた。
 放送役に選ばれなければ、彼女がやることは決まっている。元の通り、参加者達の監視だ。
 新ルールの適応は、リニスにとっては有利とも不利とも言えない、といったところ。
 武器を与えるとは言っても、他人を殺せる人間は、大体既に武器を所有している者か、武器をも必要としない超人くらいだ。
 よほどのものが支給されない限り、そうそう脅威の度合いは変わらない。
 主催に抗う立場の者に奪わせるにしても、自分が忍ばせた支給品のような、脱出の糸口になるようなものにはなりえないだろう。
 これが浅倉の提言した通り、「知りたい参加者の居場所を教える」というものだったならば、もう少しまずかったかもしれない。
 だがそれは却下された。プレシアのプライドが、あの男の望みを叶えることを拒んだのだ。

253第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 19:58:09 ID:j5DBXWeA0
 ふと、足を止め。
 すぐ左側の階段へと目をやる。
 地下へと繋がるその先にあるのは、デスゲームの会場を覆う結界維持を担うもの。
 否――“その性質を考慮すれば”、ある意味デスゲームの会場そのものの根幹といっていいだろう。
 ぴ、ぴ、ぴ、と。
 手元の端末を操作し、空間モニターを投影する。
 淡い光を伴って、虚空に浮かび上がったのは、光を放つ一冊の本。
(異なる世界から奪い取った、もう1つの夜天の書……)
 古びた茶色の表紙に、黄金の剣十字をあしらった魔導書。
 かつて闇の書と呼ばれ恐れられた、古代ベルカのロストロギアの成れの果て。
 あれがデスゲームの会場を、会場たらしめる仕掛けだった。
 殺し合いのフィールドを展開する魔法そのものは、“この地”に足を踏み入れてしばらくの後に入手している。
 だが、その構成式は極めて難解で、必要となる魔力も膨大。
 いかな大魔導師プレシアと言えど、すぐにその式を物にするのは不可能であったし、
 よしんば術を完全に修得したとしても、一個人が何時間も何日も展開し続けられるようなものではなかった。
 そこで、前者の問題の解決のため、白羽の矢が立ったのが夜天の書だ。
 かつて強力な蒐集能力を有していたそれは、闇の書の闇が消え去った今となっては、当時ほど強大な力を持ってはいないものの、
 魔導の演算・実行装置としては、未だ優秀な性能を有している。
 管理外世界のものでたとえるならば、スーパーコンピューターのようなものだ。
 おまけにその術式の性質は、目的の魔法とも相性がいい。
 闇の書の闇が存在しないということも、裏を返せば、暴走を避けられるということに繋がる。
 自力では術を発動するための魔力を発揮できないという難点もあったが、それもジュエルシードによって補うことができた。
 次元干渉型ロストロギアのエネルギーも、この手の魔法とは親和性が高い。
 カメラをもう少しズームアウトすれば、合計10個のジュエルシードが、夜天の書を取り囲むように円を描いている様が見えるだろう。
(でも……そのためにも、犠牲を払ってしまった)
 リニスの表情に影が差す。
 この夜天の魔導書も、ただで手に入れたわけではない。
 その世界に住む持ち主から、無理やり取り上げることで手に入れたものだ。
 夜天の書強奪――“この地”で手に入れた技術の実験運用を兼ねた戦いの結果は、まさに凄惨を極めたものだった。
 招かれた結果は、海鳴市と呼ばれる付近一帯の壊滅。
 大勢の人間が命を落とし、プレシアに立ち向かった魔導師・騎士達は、1人残らず、一方的に虐殺された。
 当然その世界でもまた、フェイト・テスタロッサが命を落とした。
(私達は、一体どれほどの罪を重ねれば……)
 たどり着くことができるのだろう。
 あるいは、止まることができるのだろう。
 未だ暗い面持ちのまま、映像を切り足を進める。
 何もかもが、自分に罪を思い出させた。
 3人ものフェイト・テスタロッサを、助けることも止めることもできず、無惨に死なせてしまった罪。
 幾人ものフェイトを作り上げ、死地へと追いやり殺してしまった罪。
 それ以外にも大勢の人間を巻き込み、命を奪ってしまった罪。
 この道を歩んだその先で、いつか贖罪することはできるのだろうか。
 殺し合いを止めることができれば、それは罪を償ったことになるのだろうか。
 歩みを止めるわけにはいかない。
 されど、それで許されるとは限らない。
 厳然とした事実が、彼女の心を憂鬱にさせた。

254第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 19:59:50 ID:j5DBXWeA0


 悪夢なら、何度も見てきたつもりだった。
 自ら悪夢を振りまく存在となって、何度も滅びを招いてきた。
 だが、それでも。
 こうしてこの光景を見ることで、得も知れぬ悲しみが胸に染みるのは何故だろう。
 見慣れたはずの光景が、この胸を絶え間なく苛むのは何故なのだろう。

 天空より暗雲を切り裂き迸る、次元跳躍砲撃魔法。
 圧倒的な暴力を前に、成す術なく倒壊するビルの数々。
 燃え盛る大地を覆い尽くすのは、見たこともないおぞましき軍勢。
 放つ魔法の数々は、得体の知れないフィールドに無効化された。
 数の暴力と天雷の猛威が、みるみるうちに自分達を追い詰めた。

 紅の鉄騎の小さな身体が、巨獣の前足に踏み潰される。
 風の癒し手の騎士甲冑が、膨大な弾幕に蜂の巣にされる。
 蒼き狼の盾の硬い守りも、その先の身体ごと八つ裂きにされた。
 烈火の将の突撃も通らず、散り一つ残すことなく蒸発した。

 年若き黒衣の執務官も、緑の防壁の使い手も。
 心優しき金の閃光も、不屈の心を抱いた砲手も。
 全てが例外も容赦もなく、等しく赤い海へと沈んでいく。
 涙と鮮血が海を成し、天空を照らす炎と共に、街と屍を飲み込んでいく。

 ああ――そうか。
 私はただ見てきただけだった。
 見ているだけで、知らなかったのだ。
 加害者として見てきた悪夢は、全て自身が一方的に押し付け、一方的に俯瞰するだけで。
 加害者故に苦しむことはあったとしても、被害者として苦しむことなどなかったのだ。
 苦しみをただ見ているだけで、実際に味わったことなどなかったから。
 慣れも風化もないままに、全く未知の悲しみに、こうして純粋に苦悶しているのだ。

「主……■■■……」

 頬を伝う悲しみの涙を、無理に止めようとはしなかった。
 仮に止めようとしたとしても、止められないことは分かっていた。

「■■■、■■■■……」

 生き残った主の口から漏れる声は、あまりにも小さく弱々しい。
 五体を苛む苦しみが、根こそぎ体力を奪っていったに違いなかった。

「みんな……死んで、しもたんやな……」
「はい。主のご友人達も、守護騎士達も……全て残らず、逝ってしまいました……」
「そうか……」

 アスファルトの上に倒れたまま、目の前の主君は微動だにしない。
 飛べるだけの魔力はある。だが、身体の負傷がそうさせないのだろう。
 地に落ちされた■■の主の姿は、ひどく痛ましいものだった。
 無数の銃創と切り傷が、幼い肌と肉を抉り、穴の空いていない部分も、ほとんど痣で埋め尽くされていた。
 特にひどいのが両足だ。
 いずれも激しい戦闘の果てに、膝から下が潰されて、さながらミンチのごとき有様を晒している。
 なんと皮肉で残酷なことか。
 立って歩く力を奪われ、それでもそれを取り戻す兆しを見せた矢先に、その希望が打ち砕かれるとは。
 否、もはや足だけではない。
 これだけの失血だ。骨折や内臓破裂も多い。
 立つだの歩くだの以前に――生きていられる時間すら、もはや残り僅かしかない。

255第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 20:01:08 ID:j5DBXWeA0
 
「■■■■■■■……私の、命を吸って……」
「……何を、おっしゃるのですか」

 声は、揺れていた。
 それでも、それは驚愕故のものではなかった。
 なまじ意味が分かってたからこそ、驚きとは異なる想いに声が揺らいだ。

「私のリンカーコアと、1つに、なれば……■■■■■■■は、生きることができる……
 でも……このまま私が死んでしもうたら……■■■■■■■まで、消えてしまうやん……そんなの……共倒れやん……」

 かつて闇の書と呼ばれていた時、目の前の主と、今は亡き金の閃光を取り込んだ理屈の応用だ。
 主のリンカーコアを蒐集し、主の命を吸い尽くしてしまえば、私は生きながらえることができるだろう。
 そうしなければ、自分まで死ぬ。
 恐らくあの守護騎士達同様、主と■■の■を介して繋がっている自分の寿命は、主の死と同時に尽きることになる。
 そうでなかったとしても、■の■の■を切り捨てた時点で、私に残された命などごく僅かしかないのだ。
 だが、しかし。
 そうして主を好みに取り込み、生きながらえることができたとしても。

「私の愛した者達は、1人残らず命を落としました……その上貴方まで逝ってしまえば……」

 そんな生涯に何の意味がある。
 愛すべき最後の主の命を、自らのパーツにまで貶めてまで生きる理由が、一体この世のどこにある。
 私にとっての命とは、主達との日常そのものだった。
 たった独りで生きる意味も覚悟も、私はまるで見出していなかった。
 騎士を喪い、友を喪い、母なる主さえも喪った未来に、一体どれほどの価値があるというのだ。

「……私の大切なものも……もう……ほとんど全部、なくなってしもうた……」

 虚ろな瞳が、天を仰ぐ。
 鈍い灰色の曇り空を、主の瞳がぼんやりと見据える。
 いつの間にか、雪が降っていた。
 灰色だけの空の中に、柔らかな白が舞っていた。
 ゆらゆらと舞い降りる冷たさが、私の肌に落ちていく。
 涙で濡れた頬に触れて、心の奥底まで冷やしていく。

「でも……だからこそ、■■■■■■■だけは……最後に残った……■■■■■■■だけは……手放したく、ないんよ……」

 ああ、それでも私の命を望むというのか。
 それでもなお私の主は、私に生きることを願うというのか。
 まったくもって、ずるい人だ。主君にそんな風に言われては、嫌でも拒むわけにはいかないではないか。
 主の望みを叶えるということは、主の肉体の尊厳を損ねることに他ならない。
 しかしその望みを拒んでしまえば、主の精神の尊厳までも損ねてしまう。
 そんな言い方をされてしまっては、どんな絶望的な未来であろうと、行き続けなければならないではないか。
 まったく、こんな私などに、こんなずるい言い回しをしてまで、生きることを望むだなんて。
 あるいはそんな優しさがあったからこそ、私はあの日に救われたというのか。

「私の、命……■■■、■■■■に……全部、あげる……せやから……」

 神がこの世にいるというのなら、私はその神を恨む。
 運命が定められているというのなら、私はその運命を憎む。
 こんなあんまりな結末しか、私達には用意されていなかっただなんて。
 手を伸ばして掴んだかと思えば、こんなにもあっさりと奪われてしまうだなんて。

「私の……分まで……」

 ああ。
 本当に。

「強く、生きてや……リインフォース――」

 全てがあの日のままに、幸せに終わっていたならば――本当に幸福だっただろうに。

256第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 20:02:08 ID:j5DBXWeA0


 時の庭園。
 かつてミッドチルダの魔法技術によって建造された、次元航行可能な移動庭園である。
 プレシア・テスタロッサの買い取ったそれは、彼女の研究のために、随所に様々な改修がなされていた。
 長き次元航行の果てに草木を枯らせ、醜い岩肌を晒したその姿は、
 彼女が召喚した傀儡兵の存在もあいまって、今や庭園というよりは、要塞と呼ぶ方が相応しい存在であろう。
「その外観を相変わらず使いまわしてるってのは、どんな未練なんだろうねぇ……」
 ぽつり、と響く女の声。
 いつしか庭園のすぐ傍には、2つの人影が立っていた。
 片やオレンジ色の髪を生やした、グラマラスな肢体を露出した女性。
 髪色と同じ色の耳と尻尾は、犬かはたまた狼か。人ならざる魔導師の尖兵――いわゆる使い魔と呼ばれる存在であろう。
「それで、どうするんだい? やっぱりまずは、夜天の書を取り戻すとこから?」
 どうやら先ほどの声は、この狼風の女性のものだったようだ。
 さばさばとした気の強い声が、傍らの人影へと問いかける。
「いや……ここにあることは分かっているが、どこに隠されているのかは検討もつかない。
 奴の動向や目的を探るためにも、まずは内部の構造を調べるべきだろう」
「だね。外見が同じだからって、中身も同じとは限らないわけだし」
 狼女の問いに答えたのは、全身黒ずくめの衣装を纏った女性だ。
 ところどころに彫金が施された、ドレスのような装束は、古代ベルカ騎士の装備する騎士甲冑。
 背中の4枚2対の翼まで漆黒な中、雪のごとき銀色の長髪と、血のごとき真紅の双眸が、ひどく鮮やかに輝いていた。
「すまなかったな、使い魔アルフ……こんなことに付き合わせてしまって」
「いいってことさ」
 銀髪の女の言葉に、アルフと呼ばれた使い魔が笑顔で返す。
「あんたが助けてくれなかったら、あたしはあのまま何もできずに死んでいた……
 最後に残されたこの命で、せめてフェイトの仇が討てるっていうなら、安いもんだよ」
 このオレンジの毛並みの使い魔もまた、かの世界の海鳴の生き残りだった。
 否。
 正確には、到底生き残りと言えるようなものではなかったのだが
 あの日プレシア・テスタロッサに敗北し、主フェイト・テスタロッサを喪ったアルフは、比喩も誇張なしに死の淵に立たされていた。
 主君との魔力バイパスを断たれ、肉体にも甚大なダメージを負った獣は、数秒遅れるだけで命を落としていただろう。
 それを強引に救ってみせたのが、この銀髪の女だった。
 使い魔たる彼女の身体を「蒐集」し、術式を強制的に書き換えることで、使い魔契約をやり直したのだ。
 つまりこの女こそが、フェイトに代わるアルフの新たなマスターなのである。
「……さ、そうと決まれば、早速いこうか。今度こそプレシアの性根を叩き直してやるために、さ」
 かつての主が身に着けていたものに似た、漆黒のマントを翻し。
 かつ、かつ、かつ、と靴音を立て、アルフが庭園へと進んでいく。
 銀髪の女もまたそれにならい、彼女の後に続いて進んだ。
(主の仇を討つために……か)
 ふと、想いを馳せる。
 女の赤き瞳に浮かぶのは、かつて喪われた主君の姿だ。
 茶色い髪を短く切りそろえ、特徴的な髪留めをつけた主の屈託のない笑顔は、今でもありありと思い出すことができる。
 今や彼女にとって確かなものは、その頃の記憶とアルフくらいのものだ。
(我ながら滑稽なものだな)
 内心で、自嘲気味に苦笑した。
 かつて夜天の書の管制人格として生み出され、忌まわしき闇の書へと作り変えられ。
 命を奪う災厄として、数多の命を屠った果てに。
 最後の夜天の主に出会い、血と涙を塗りたくられた呪いの身体に、新たな名前を与えられて。
 そうして忌むべき過去と決別し、穏やかな日常を手に入れたはずなのに、結局自分は最期の時をこんなことに費やしている。
 これではまるで、復讐のようだ。
 結局デバイスとして生まれた自分には、武器らしく戦って散る末路がお似合いだったということか。

257第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 20:03:03 ID:j5DBXWeA0
(それでも構わないさ)
 胸の中で呟きながら、眼前の時の庭園を仰ぐ。
 プレシア・テスタロッサは危険な女だ。
 戦いの中、彼女が口にしていた言葉を信じるならば、彼女は間違いなく災いを呼ぶ。
 闇の書の闇をも駆逐した英雄達が、何もできず、一方的に叩き潰されたほどの相手だ。
 この身でどこまで追いすがれるかは分からない。だが、このまま野放しにしておくわけにはいかない。
 きっと生き残ったのが自分ではなく、我が主であったとしたならば。
 今自分がしているのと同じように、プレシアの悪意を止めるために戦うだろう。
 ならば、自分もまたそれでいい。
 残されたこの僅かな命を賭してでも、あの女の目論見を止めてみせる。
 多くの犠牲を踏み砕いてきた自分が、最期に大勢の人々を守れるというのなら、きっと主も報われるだろう。
 私は生きる。
 生きて戦う。
 最後の夜天の主――八神はやての命と誇りを、この身に背負って戦ってみせる。
「誤算だったな、プレシア・テスタロッサ……この私が生きている限り、どこにもお前の逃げ場所はないぞ」
 この場所へとたどり着くことは困難を極めた。
 撃沈したアースラの炉の魔力を丸々使い、アルフと2人がかりで転送魔法を行使しても、ここまで来るのに何週間もかかってしまった。
 それでも、どうにかここまでたどり着けた。
 彼女の身体と夜天の書は、未だ魔力で繋がっている。
 何百年もの歴史の中を、次元空間を漂いながら過ごしてきた彼女らだ。
 古代ベルカの記憶に従い、相応の努力と執念を支払えば、たとえそこが未知の座標であろうと、こうして追い着くことができる。
 そう。
 彼女を生かしてしまったことは、確かにプレシア・テスタロッサの誤算だった。
「これ以上――お前の好きなようにはさせない」
 祝福の風・リインフォース――ここに参戦。

258第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 20:03:47 ID:j5DBXWeA0
【1日目・夜(第三回放送直後)】
【現在地:??? 時の庭園前】

【リインフォース@魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES−】
【状態】健康
【装備】騎士甲冑(魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES−におけるデザイン)
【道具】?
【思考】
 基本:プレシアを打倒する
 1.直接戦闘を避け、なるべく身を隠しながら時の庭園に潜入する
 2.プレシアが何を目的に、何をしているのかを知りたい
【備考】
※ゲームシナリオ開始前、闇の書の闇を撃破した数日後からの参戦です
※アルフのマスターとなっています
※彼女の世界の八神はやてを取り込んだことで、元の力を部分的に取り戻しました。
 単独での戦闘能力は、A's本編中で闇の書の闇から切り離された時点のレベルまで回復しています。

【アルフ@魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES−】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】?
【思考】
 基本:プレシアを打倒する
 1.リインフォースに従い、彼女の身を守る
【備考】
※ゲームシナリオ開始前、闇の書の闇を撃破した数日後からの参戦です
※リインフォースの使い魔となっています

【全体の備考】
※プレシアの現在地の外観は、時の庭園と同じであることが判明しました
※殺し合いの会場は、夜天の書@魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES− および
 ジュエルシード魔法少女リリカルなのは によって展開された結界魔法に覆われています。


【追加ルール】
 第三回放送以降、他の参加者を1人殺すたびに、新たな武器が1つずつ支給されます。
 支給対象は現実の銃器やデバイスなど、一般的な武器の範疇に収まるものであり、極端に強力なものや変身アイテムは支給されません。

259第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/25(木) 20:05:17 ID:j5DBXWeA0
放送案は以上です。
もう残り3分の1くらいの人数になってるし、そろそろ第三戦力が出てきてもいい頃かと思いまして、リインⅠとアルフを出してみました。
問題点や矛盾などがありましたら、ご指摘ください

260リリカル名無し:2010/02/26(金) 04:54:52 ID:S7THdU6E0
仮投下乙です。
見た感じ特に問題は無さそうなので、他に案が無ければこれで採用でいいのかな?
ボーナスに関してのみ、もうちょっと何かあった方がいいかも?とは思いました。
とりあえず他の意見も待ってみて、問題が無さそうなら放送案候補で問題無いかと。

261リリカル名無し:2010/02/26(金) 10:08:50 ID:Bts/ahv60
放送案投下乙です。
リインⅠ&アルフ参戦! そういやアルフに限っては何故ハブられたんだ的なキャラだからなぁ……地味にオイシイかも。

自分としてはボーナスに関しては自分はこれで良いとは思います。第2放送時と状況が変わり今更マーダーを活気づけさせる必要性を感じませんので。
個人的に気になったのが出典がPSP版のゲームという事ですね(多分大丈夫だとは思うけど)……原作A'sとの違いがあるのであれば、未把握の人が大変かもとは思います。
勿論、ここの書き手ならば問題なく書けると思いますが、一方ですぐに退場させられる可能性も否定出来ないのが気になる所です。

262 ◆Vj6e1anjAc:2010/02/26(金) 13:08:59 ID:Nw/s7GYE0
>PSP版のゲーム
あ、それなら多分大丈夫です。
①闇の書の闇を倒す→②奇跡的にリインフォースが助かる→③八神家で平和に暮らす→④ゲームシナリオが始まる
おおまかなこの流れのうち、③からの参戦という形にしましたので、
原作との違いはリインが生きているということだけですし、ゲーム版独自の展開も絡まないようにしてあります。
戦闘能力も原作と同じものに戻しましたので、せいぜいゲーム公式サイトのあらすじを読むだけで、十分書けるんじゃないんでしょうか

263リリカル名無し:2010/02/26(金) 22:23:42 ID:55mTzp7s0
放送案投下乙です
私もゲーム出典という点で危惧を抱きましたが時期がそのようでしたら問題もあまりないでしょう
(そもそも外部勢力を書く機会なんて外伝と本当に終盤でしかないから書き手の負担もこれなら何とかなると思われます)
ただ一つ気になる点。
もしこれが正式に採用されるならリインとアルフの状態表は削った方がいいと思います
リインもアルフもバトルロワイアルの観点から見ればただの部外者でしかありません
基本的にロワ進行とは関係ないところにあるべきです
だから状態表は付けずに備考欄で軽く説明する程度に収める方がいいと思います

264 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:13:08 ID:3/RUOXyE0
えー、◆jiPkKgmerY氏の修正も来ましたので、放送SSを投下します。
まだ早すぎるんじゃね?って声もあるかもしれないので、一応投下はこっちに。
これでいいというのでしたら、このままwikiに収録しちゃってください

265第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:14:20 ID:3/RUOXyE0
 それは、小さな願いだった。

 ■の■の名を授けられ、世界に滅びの力を振りまき、忌み嫌われること数世紀……
 けれど、悲しい時間はもう終わり。
 最後に出会った■■の主は、私に名前を与えてくれた。
 強く■■■■もの……幸運の■い■……
 忌まわしき呪いの名前ではなく、祝福の■■■の意を冠した名前――■■■■■■■。

 名前を呼ばれたその夜に、私は戦うことを決めた。
 運命という名の鎖を砕く力を、この手に主と共に掴むため……私は自らに課せられた宿命と戦うことを、その時初めて決心した。
 別に、大層な正義があったわけじゃない。
 世界全てを守る力も、世界全てを牛耳る力も、私は欲していたわけじゃない。
 ただ、ほんのささやかな願いのために……心優しき家族と過ごす、暖かい日々を手に入れるために……
 私は自らの運命と戦い――運命に、打ち克ったのだ。

 願ったものは、手に入れた。
 ほんの僅かな時間ではあっても、求めていたものを手に入れることができた。
 手にした日常はありふれていて、本当になんてことのない日々だったけれど。
 ただ命令にだけ従い、破壊と殺戮を生むだけだった生涯の中では、最も心穏やかでいられる、尊く愛しい時間だった。

 ああ――本当に。

 それで全てが終わりなら、本当に幸福だっただろうに――。

266第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:15:07 ID:3/RUOXyE0


 こんばんは。
 これより18時をお伝えすると同時に、第3回目の定期放送を行いたいと思います。
 今回も過去の2回同様、禁止エリアから発表させていただきますので、メモの用意をお願いします。
 ……なお今回の放送ですが、現在プレシア・テスタロッサ氏がお疲れのため就寝中ですので、
 今回に限り、僕が代役を務めさせていただきます。
 ゲームの進行には何ら問題はありませんので、ご了承ください。

 それでは、禁止エリアの発表です。

 19時から○-○
 21時から○-○
 23時から○-○

 以上、3箇所となります。
 これまでの禁止エリア同様、場所と時間をお忘れなきよう、十分にご注意ください。
 ……では続きまして、前回放送から現在までの間に出た死者の名前を発表させていただきます。

 浅倉威
 L
 キース・レッド
 キャロ・ル・ルシエ
 早乙女レイ
 C.C.
 シェルビー・M・ペンウッド
 シャマル
 シャーリー・フェネット
 新庄・運切
 ゼスト・グランガイツ
 セフィロス
 チンク
 天上院明日香
 柊つかさ
 フェイト・T・ハラオウン
 万丈目準
 ルーテシア・アルピーノ
 ルルーシュ・ランペルージ

 以上、19名となります。
 プレシア氏からは、
 「前回が9名だったという点を考慮すると、非常に素晴らしい戦績だと思う。今後も頑張ってほしい」との伝言を預かっております。
 僕の目から見ても、今回の結果は非常に優秀なものだったと思います。
 この分ならば、あるいは次の日の出よりも早くゲームが終了するかもしれません。
 早めにゲームが終わるのは、我々管理する側も楽ができることに繋がりますので、これからも頑張ってゲームに臨んでください。

 最後に、ボーナスの発表です。
 この放送が終了した瞬間から、皆様が他の参加者を殺害する度に、お手持ちのデイパックの中に、1つずつ支給品を転送させていただきます。
 デイパックをお持ちでない方の場合は、その場に転送させていただきますので、回収忘れのないようにご注意ください。
 さすがに極端に強力な支給品を提供することはできませんが、
 少なくとも一定以上の有用性のある武器をご用意させていただきますので、有効にご活用ください。

 それでは、今回の放送はこれにて終了です。
 放送は僕――オットーが担当させていただきました。

267第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:16:44 ID:3/RUOXyE0


 かつ、かつ、かつ、と。
 薄暗い廊下を叩くブーツの足音。
 硬質な床を鳴らすたびに、腰から生える尻尾がゆらゆらと揺れる。
 白と茶色を基調とした衣装を纏う、ショートヘアの女性は、プレシア・テスタロッサが使い魔――リニスだ。
(さすがに、そう上手くはいかないか……)
 ふぅ、と軽くため息を漏らす。
 その顔立ちに浮かぶのは憂い。
 その感情の矛先は、つい先ほど流れたばかりの放送だ。

 さかのぼること10分前。
 少し疲れたから仮眠を取る――主君プレシアは、不意にそんなことを口にした。
 無理もない。かれこれ18時間一睡もしておらず、おまけに先ほどは浅倉の手によって、あのような事件まで起こされている。
 体調の優れないプレシアにとっては、そろそろ疲労もピークといったところだろう。
 リニスはこれを快諾し、ベッドで休むように勧めた。
 彼女を裏切るような真似に出ようとしている身が、そんなことを思うのも妙な話だが、確かに彼女の体調を案じてはいた。
 だがその一方で、これはチャンスでもあった。
 このタイミングでプレシアが眠るというのならば、誰かが代わりに放送を行う必要がある。
 いつぞやに彼女が漏らしたように、自分に放送の代役が回ってくる。
 殺し合いを止めたいと願い、いくつかの支給品に希望を託した彼女にとっては、まさに千載一遇の好機。
 直接的な言い回しをすれば、後々でプレシアに意図を悟られてしまうだろうが、
 遠まわしな表現で、それとなく支給品の存在を匂わせることはできるだろう。
 そのためにも、この放送代役は何としても引き受けなければならない。
 リニスは前述の勧めの後、放送の役目を自分に任せるよう、進言するつもりだった。

 だが、しかし。
 そう思った後がよくなかった。

 ――では次の放送は、代わりに僕が担当させていただきます。

 そう割り込んでくる声があったのだ。
 短い茶髪/中性的な顔立ち/華奢な体躯/パンツルック。
 ぱっと見では男とも女とも分からぬ、しかしどちらでもありそうな容姿をした、戦闘機人ナンバーⅧ――オットー。
 ガレアの冥王の調整を担当しているウーノの妹であり、同時に会場にいるクアットロの妹でもある男装の少女。
 そのオットーに先を越されてしまった。
 自分が放送をやると言い出す直前に、彼女がどこからともなく現れ、放送をやらせてほしいと言い出したのだ。
 プレシアの返答は、是。
 断る理由などなかった。
 ただ死者と禁止エリアとボーナスを読み上げるだけの放送担当など、誰に任せても同じことだったのだろう。
 一応、こんな腹の知れぬ者に任せていいのか、とだけプレシアに尋ねた。
 こういう仕事には貴方よりも向いている人材だと思う、という返事が返ってきた。
 なるほど確かに、的を射ている。
 お人よしな自分よりも、冷徹な機械人形そのもののようなこの娘の方が、メッセンジャーには向いているように見える。
 悔しいが、そう返されては仕方がない。
 それ以上言い募ることがあれば、違和感を覚え怪しまれてしまうことに繋がるだろう。
 あるいはオットーを選びリニスを遠ざけたことが、大なり小なり疑われていることの表れなのかもしれないが。

 そうしてリニスは放送を行うことを断念し、現在の状況に至っていた。
 放送役に選ばれなければ、彼女がやることは決まっている。元の通り、参加者達の監視だ。
 新ルールの適応は、リニスにとっては有利とも不利とも言えない、といったところ。
 武器を与えるとは言っても、他人を殺せる人間は、大体既に武器を所有している者か、武器をも必要としない超人くらいだ。
 よほどのものが支給されない限り、そうそう脅威の度合いは変わらない。
 主催に抗う立場の者に奪わせるにしても、自分が忍ばせた支給品のような、脱出の糸口になるようなものにはなりえないだろう。
 これが浅倉の提言した通り、「知りたい参加者の居場所を教える」というものだったならば、もう少しまずかったかもしれない。
 だがそれは却下された。プレシアのプライドが、あの男の望みを叶えることを拒んだのだ。

268第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:18:03 ID:3/RUOXyE0
 ふと、足を止め。
 すぐ左側の階段へと目をやる。
 地下へと繋がるその先にあるのは、デスゲームの会場を覆う結界維持を担うもの。
 否――“その性質を考慮すれば”、ある意味デスゲームの会場そのものの根幹といっていいだろう。
 ぴ、ぴ、ぴ、と。
 手元の端末を操作し、空間モニターを投影する。
 淡い光を伴って、虚空に浮かび上がったのは、光を放つ一冊の本。
(異なる世界から奪い取った、もう1つの夜天の書……)
 古びた茶色の表紙に、黄金の剣十字をあしらった魔導書。
 かつて闇の書と呼ばれ恐れられた、古代ベルカのロストロギアの成れの果て。
 あれがデスゲームの会場を、会場たらしめる仕掛けだった。
 殺し合いのフィールドを展開する魔法そのものは、“この地”に足を踏み入れてしばらくの後に入手している。
 だが、その構成式は極めて難解で、必要となる魔力も膨大。
 いかな大魔導師プレシアと言えど、すぐにその式を物にするのは不可能であったし、
 よしんば術を完全に修得したとしても、一個人が何時間も何日も展開し続けられるようなものではなかった。
 そこで、前者の問題の解決のため、白羽の矢が立ったのが夜天の書だ。
 かつて強力な蒐集能力を有していたそれは、闇の書の闇が消え去った今となっては、当時ほど強大な力を持ってはいないものの、
 魔導の演算・実行装置としては、未だ優秀な性能を有している。
 管理外世界のものでたとえるならば、スーパーコンピューターのようなものだ。
 おまけにその術式の性質は、目的の魔法とも相性がいい。
 闇の書の闇が存在しないということも、裏を返せば、暴走を避けられるということに繋がる。
 自力では術を発動するための魔力を発揮できないという難点もあったが、それもジュエルシードによって補うことができた。
 次元干渉型ロストロギアのエネルギーも、この手の魔法とは親和性が高い。
 カメラをもう少しズームアウトすれば、合計10個のジュエルシードが、夜天の書を取り囲むように円を描いている様が見えるだろう。
(でも……そのためにも、犠牲を払ってしまった)
 リニスの表情に影が差す。
 この夜天の魔導書も、ただで手に入れたわけではない。
 その世界に住む持ち主から、無理やり取り上げることで手に入れたものだ。
 夜天の書強奪――“この地”で手に入れた技術の実験運用を兼ねた戦いの結果は、まさに凄惨を極めたものだった。
 招かれた結果は、海鳴市と呼ばれる付近一帯の壊滅。
 大勢の人間が命を落とし、プレシアに立ち向かった魔導師・騎士達は、1人残らず、一方的に虐殺された。
 当然その世界でもまた、フェイト・テスタロッサが命を落とした。
(私達は、一体どれほどの罪を重ねれば……)
 たどり着くことができるのだろう。
 あるいは、止まることができるのだろう。
 未だ暗い面持ちのまま、映像を切り足を進める。
 何もかもが、自分に罪を思い出させた。
 3人ものフェイト・テスタロッサを、助けることも止めることもできず、無惨に死なせてしまった罪。
 幾人ものフェイトを作り上げ、死地へと追いやり殺してしまった罪。
 それ以外にも大勢の人間を巻き込み、命を奪ってしまった罪。
 この道を歩んだその先で、いつか贖罪することはできるのだろうか。
 殺し合いを止めることができれば、それは罪を償ったことになるのだろうか。
 歩みを止めるわけにはいかない。
 されど、それで許されるとは限らない。
 厳然とした事実が、彼女の心を憂鬱にさせた。

269第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:19:28 ID:3/RUOXyE0


 悪夢なら、何度も見てきたつもりだった。
 自ら悪夢を振りまく存在となって、何度も滅びを招いてきた。
 だが、それでも。
 こうしてこの光景を見ることで、得も知れぬ悲しみが胸に染みるのは何故だろう。
 見慣れたはずの光景が、この胸を絶え間なく苛むのは何故なのだろう。

 天空より暗雲を切り裂き迸る、次元跳躍砲撃魔法。
 圧倒的な暴力を前に、成す術なく倒壊するビルの数々。
 燃え盛る大地を覆い尽くすのは、見たこともないおぞましき軍勢。
 放つ魔法の数々は、得体の知れないフィールドに無効化された。
 数の暴力と天雷の猛威が、みるみるうちに自分達を追い詰めた。

 紅の鉄騎の小さな身体が、巨獣の前足に踏み潰される。
 風の癒し手の騎士甲冑が、膨大な弾幕に蜂の巣にされる。
 蒼き狼の盾の硬い守りも、その先の身体ごと八つ裂きにされた。
 烈火の将の突撃も通らず、散り一つ残すことなく蒸発した。

 年若き黒衣の執務官も、緑の防壁の使い手も。
 心優しき金の閃光も、不屈の心を抱いた砲手も。
 全てが例外も容赦もなく、等しく赤い海へと沈んでいく。
 涙と鮮血が海を成し、天空を照らす炎と共に、街と屍を飲み込んでいく。

 ああ――そうか。
 私はただ見てきただけだった。
 見ているだけで、知らなかったのだ。
 加害者として見てきた悪夢は、全て自身が一方的に押し付け、一方的に俯瞰するだけで。
 加害者故に苦しむことはあったとしても、被害者として苦しむことなどなかったのだ。
 苦しみをただ見ているだけで、実際に味わったことなどなかったから。
 慣れも風化もないままに、全く未知の悲しみに、こうして純粋に苦悶しているのだ。

「主……■■■……」

 頬を伝う悲しみの涙を、無理に止めようとはしなかった。
 仮に止めようとしたとしても、止められないことは分かっていた。

「■■■、■■■■……」

 生き残った主の口から漏れる声は、あまりにも小さく弱々しい。
 五体を苛む苦しみが、根こそぎ体力を奪っていったに違いなかった。

「みんな……死んで、しもたんやな……」
「はい。主のご友人達も、守護騎士達も……全て残らず、逝ってしまいました……」
「そうか……」

 アスファルトの上に倒れたまま、目の前の主君は微動だにしない。
 飛べるだけの魔力はある。だが、身体の負傷がそうさせないのだろう。
 地に落ちされた■■の主の姿は、ひどく痛ましいものだった。
 無数の銃創と切り傷が、幼い肌と肉を抉り、穴の空いていない部分も、ほとんど痣で埋め尽くされていた。
 特にひどいのが両足だ。
 いずれも激しい戦闘の果てに、膝から下が潰されて、さながらミンチのごとき有様を晒している。
 なんと皮肉で残酷なことか。
 立って歩く力を奪われ、それでもそれを取り戻す兆しを見せた矢先に、その希望が打ち砕かれるとは。
 否、もはや足だけではない。
 これだけの失血だ。骨折や内臓破裂も多い。
 立つだの歩くだの以前に――生きていられる時間すら、もはや残り僅かしかない。

270第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:20:20 ID:3/RUOXyE0
「■■■■■■■……私の、命を吸って……」
「……何を、おっしゃるのですか」

 声は、揺れていた。
 それでも、それは驚愕故のものではなかった。
 なまじ意味が分かってたからこそ、驚きとは異なる想いに声が揺らいだ。

「私のリンカーコアと、1つに、なれば……■■■■■■■は、生きることができる……
 でも……このまま私が死んでしもうたら……■■■■■■■まで、消えてしまうやん……そんなの……共倒れやん……」

 かつて闇の書と呼ばれていた時、目の前の主と、今は亡き金の閃光を取り込んだ理屈の応用だ。
 主のリンカーコアを蒐集し、主の命を吸い尽くしてしまえば、私は生きながらえることができるだろう。
 そうしなければ、自分まで死ぬ。
 恐らくあの守護騎士達同様、主と■■の■を介して繋がっている自分の寿命は、主の死と同時に尽きることになる。
 そうでなかったとしても、■の■の■を切り捨てた時点で、私に残された命など、よくて半年程度しかないのだ。
 だが、しかし。
 そうして主をこの身に取り込み、生きながらえることができたとしても。

「私の愛した者達は、1人残らず命を落としました……その上貴方まで逝ってしまえば……」

 そんな生涯に何の意味がある。
 愛すべき最後の主の命を、自らのパーツにまで貶めてまで生きる理由が、一体この世のどこにある。
 私にとっての命とは、主達との日常そのものだった。
 たった独りで生きる意味も覚悟も、私はまるで見出していなかった。
 騎士を喪い、友を喪い、母なる主さえも喪った未来に、一体どれほどの価値があるというのだ。

「……私の大切なものも……もう……ほとんど全部、なくなってしもうた……」

 虚ろな瞳が、天を仰ぐ。
 鈍い灰色の曇り空を、主の瞳がぼんやりと見据える。
 いつの間にか、雪が降っていた。
 灰色だけの空の中に、柔らかな白が舞っていた。
 ゆらゆらと舞い降りる冷たさが、私の肌に落ちていく。
 涙で濡れた頬に触れて、心の奥底まで冷やしていく。

「でも……だからこそ、■■■■■■■だけは……最後に残った……■■■■■■■だけは……手放したく、ないんよ……」

 ああ、それでも私の命を望むというのか。
 それでもなお私の主は、私に生きることを願うというのか。
 まったくもって、ずるい人だ。主君にそんな風に言われては、嫌でも拒むわけにはいかないではないか。
 主の望みを叶えるということは、主の肉体の尊厳を損ねることに他ならない。
 しかしその望みを拒んでしまえば、主の精神の尊厳までも損ねてしまう。
 そんな言い方をされてしまっては、どんな絶望的な未来であろうと、行き続けなければならないではないか。
 まったく、こんな私などに、こんなずるい言い回しをしてまで、生きることを望むだなんて。
 あるいはそんな優しさがあったからこそ、私はあの日に救われたというのか。

「私の、命……■■■、■■■■に……全部、あげる……せやから……」

 神がこの世にいるというのなら、私はその神を恨む。
 運命が定められているというのなら、私はその運命を憎む。
 こんなあんまりな結末しか、私達には用意されていなかっただなんて。
 手を伸ばして掴んだかと思えば、こんなにもあっさりと奪われてしまうだなんて。

「私の……分まで……」

 ああ。
 本当に。

「強く、生きてや……リインフォース――」

 全てがあの日のままに、幸せに終わっていたならば――本当に幸福だっただろうに。

271第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:22:00 ID:3/RUOXyE0


 時の庭園。
 かつてミッドチルダの魔法技術によって建造された、次元航行可能な移動庭園である。
 プレシア・テスタロッサの買い取ったそれは、彼女の研究のために、随所に様々な改修がなされていた。
 長き次元航行の果てに草木を枯らせ、醜い岩肌を晒したその姿は、
 彼女が召喚した傀儡兵の存在もあいまって、今や庭園というよりは、要塞と呼ぶ方が相応しい存在であろう。
「その外観を相変わらず使いまわしてるってのは、どんな未練なんだろうねぇ……」
 ぽつり、と響く女の声。
 いつしか庭園のすぐ傍には、2つの人影が立っていた。
 片やオレンジ色の髪を生やした、グラマラスな肢体を露出した女性。
 髪色と同じ色の耳と尻尾は、犬かはたまた狼か。人ならざる魔導師の尖兵――いわゆる使い魔と呼ばれる存在であろう。
「それで、どうするんだい? やっぱりまずは、夜天の書を取り戻すとこから?」
 どうやら先ほどの声は、この狼風の女性のものだったようだ。
 さばさばとした気の強い声が、傍らの人影へと問いかける。
「いや……ここにあることは分かっているが、どこに隠されているのかは検討もつかない。
 奴の動向や目的を探るためにも、まずは内部の構造を調べるべきだろう」
「だね。外見が同じだからって、中身も同じとは限らないわけだし」
 狼女の問いに答えたのは、全身黒ずくめの衣装を纏った女性だ。
 ところどころに彫金が施された、ドレスのような装束は、古代ベルカ騎士の装備する騎士甲冑。
 背中の4枚2対の翼まで漆黒な中、雪のごとき銀色の長髪と、血のごとき真紅の双眸が、ひどく鮮やかに輝いていた。
「すまなかったな、使い魔アルフ……こんなことに付き合わせてしまって」
「いいってことさ」
 銀髪の女の言葉に、アルフと呼ばれた使い魔が笑顔で返す。
「あんたが助けてくれなかったら、あたしはあのまま何もできずに死んでいた……
 最後に残されたこの命で、せめてフェイトの仇が討てるっていうなら、安いもんだよ」
 このオレンジの毛並みの使い魔もまた、かの世界の海鳴の生き残りだった。
 否。
 正確には、到底生き残りと言えるようなものではなかったのだが
 あの日プレシア・テスタロッサに敗北し、主フェイト・テスタロッサを喪ったアルフは、比喩も誇張なしに死の淵に立たされていた。
 主君との魔力バイパスを断たれ、肉体にも甚大なダメージを負った獣は、数秒遅れるだけで命を落としていただろう。
 それを強引に救ってみせたのが、この銀髪の女だった。
 使い魔たる彼女の身体を「蒐集」し、術式を強制的に書き換えることで、使い魔契約をやり直したのだ。
 つまりこの女こそが、フェイトに代わるアルフの新たなマスターなのである。
「……さ、そうと決まれば、早速いこうか。今度こそプレシアの性根を叩き直してやるために、さ」
 かつての主が身に着けていたものに似た、漆黒のマントを翻し。
 かつ、かつ、かつ、と靴音を立て、アルフが庭園へと進んでいく。
 銀髪の女もまたそれにならい、彼女の後に続いて進んだ。
(主の仇を討つために……か)
 ふと、想いを馳せる。
 女の赤き瞳に浮かぶのは、かつて喪われた主君の姿だ。
 茶色い髪を短く切りそろえ、特徴的な髪留めをつけた主の屈託のない笑顔は、今でもありありと思い出すことができる。
 今や彼女にとって確かなものは、その頃の記憶とアルフくらいのものだ。
(我ながら滑稽なものだな)
 内心で、自嘲気味に苦笑した。
 かつて夜天の書の管制人格として生み出され、忌まわしき闇の書へと作り変えられ。
 命を奪う災厄として、数多の命を屠った果てに。
 最後の夜天の主に出会い、血と涙を塗りたくられた呪いの身体に、新たな名前を与えられて。
 そうして忌むべき過去と決別し、穏やかな日常を手に入れたはずなのに、結局自分は最期の時をこんなことに費やしている。
 これではまるで、復讐のようだ。
 結局デバイスとして生まれた自分には、武器らしく戦って散る末路がお似合いだったということか。

272第三回放送 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:23:53 ID:3/RUOXyE0
(それでも構わないさ)
 胸の中で呟きながら、眼前の時の庭園を仰ぐ。
 プレシア・テスタロッサは危険な女だ。
 戦いの中、彼女が口にしていた言葉を信じるならば、彼女は間違いなく災いを呼ぶ。
 闇の書の闇をも駆逐した英雄達が、何もできず、一方的に叩き潰されたほどの相手だ。
 この身でどこまで追いすがれるかは分からない。だが、このまま野放しにしておくわけにはいかない。
 きっと生き残ったのが自分ではなく、我が主であったとしたならば。
 今自分がしているのと同じように、プレシアの悪意を止めるために戦うだろう。
 ならば、自分もまたそれでいい。
 残されたこの僅かな命を賭してでも、あの女の目論見を止めてみせる。
 多くの犠牲を踏み砕いてきた自分が、最期に大勢の人々を守れるというのなら、きっと主も報われるだろう。
 私は生きる。
 生きて戦う。
 最後の夜天の主――八神はやての命と誇りを、この身に背負って戦ってみせる。
「誤算だったな、プレシア・テスタロッサ……この私が生きている限り、どこにもお前の逃げ場所はないぞ」
 この場所へとたどり着くことは困難を極めた。
 撃沈したアースラの炉の魔力を丸々使い、アルフと2人がかりで転送魔法を行使しても、ここまで来るのに何週間もかかってしまった。
 それでも、どうにかここまでたどり着けた。
 彼女の身体と夜天の書は、未だ魔力で繋がっている。
 何百年もの歴史の中を、次元空間を漂いながら過ごしてきた彼女らだ。
 古代ベルカの記憶に従い、相応の努力と執念を支払えば、たとえそこが未知の座標であろうと、こうして追い着くことができる。
 そう。
 彼女を生かしてしまったことは、確かにプレシア・テスタロッサの誤算だった。
「これ以上――お前の好きなようにはさせない」
 祝福の風・リインフォース――ここに参戦。




【リインフォース@魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES−】
【アルフ@魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES−】
※いずれもゲームシナリオ開始前、闇の書の闇を撃破した数日後からの参戦です
※リインフォースは、彼女の世界の八神はやてを取り込んだことで、元の力を部分的に取り戻しました。
 単独での戦闘能力は、A's本編中で闇の書の闇から切り離された時点のレベルまで回復しています。


【全体の備考】
※プレシアの現在地の外観は、時の庭園@魔法少女リリカルなのは と同じであることが判明しました
※殺し合いの会場は、夜天の書@魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE−THE BATTLE OF ACES− および
 ジュエルシード魔法少女リリカルなのは によって展開された結界魔法に覆われています。


【追加ルール】
 第三回放送以降、他の参加者を1人殺すたびに、新たな武器が1つずつ支給されます。
 支給対象は現実の銃器やデバイスなど、一般的な武器の範疇に収まるものであり、極端に強力なものや変身アイテムは支給されません。

273 ◆Vj6e1anjAc:2010/03/18(木) 19:26:34 ID:3/RUOXyE0
以上、投下終了。
ちょくちょくと微調整と、それから前に言われた、「状態表は使わないでほしい」というご意見を反映してみました。

274リリカル名無し:2010/03/18(木) 21:46:43 ID:A53L9.hgO
投下乙です
このままウィキ収録しても大丈夫かと

ただ個人的には状態表はあった方がいいと思います
その為に「参加者以外のキャラ」の追跡表がある訳ですし、以降リイン達が本格的に絡んで来たらやっぱり最初に登場したSSから追跡表に加えた方が便利ですし

275リリカル名無し:2010/03/18(木) 22:19:35 ID:3BWFTTwE0
投下乙です
同じくこれでwiki収録していいと思います

>>274
リインⅠとアルフは「部外者(しかも外からの)」、本来ロワ進行には関係ないキャラです
それを準正式キャラのように扱うのは反対です


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