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オリロワA part3

468ラストスタンド ◆A3H952TnBk:2025/12/31(水) 21:08:31 ID:jesZa4Jc0

「君も見ただろう。“あの”エルビスを」

 仁成は追憶するように、静かに呟く。
 ――エンダは振り返る。先の被験体との戦闘で垣間見た“奇跡”を。
 弾丸として放たれたエルビスと、亡霊と化して現れた漢女の闘争。
 体術の限界を極めた者達の、熾烈なる死闘を。
 その狭間でエルビスが仁成に何かを伝えていたことも、感じ取っていた。

「僕にもしものことがあった時は、君が伝えてほしい。
 エルビスの恋人と、その子供に――彼の生き様を」

 これから仁成は、再び被験体と相見えるかもしれない。
 そうなれば死闘は避けられない。命を落とすかもしれない。
 だからこそ彼は、エンダにも託すことを選んだ。
 もしも自分に何かあれば、君がエルビスの祈りを守ってほしい――と。

「仁成……」

 仁成からの願いを、茫然と聞き届けるエンダ。
 それは即ち、仁成が自らの死に備えた保険だった。
 複雑な思いを滲ませながらも、エンダはその言葉を受け止める。

「それと、もう一つ伝えたいことがある」

 それから仁成は、言葉を続ける。
 それはエルビスのことではなく。
 仁成自身が伝える願いだった。
 先のやりとりを、仁成は振り返る。

 ――――“私は、あの娘以外の人間なんて、どうでもよかった”。

 ジョニー・ハイドアウトとの対峙で、エンダが吐き出した本音。
 その心の奥に封じ込めていた、本心と呼べる感情。

 ――――“少しでもあの娘の死に関わった連中を、皆殺しにしてやりたいとすら思っている”。

 それを聞いた仁成は、背筋の凍えるような感覚を抱き。
 その怨恨の思念に、言い知れぬ悲しみを抱いた。
 だからこそ、伝えなければならなかった。

 かつての仁成もまた、荒んでいた。
 実験体として数多の組織から身柄を狙われて。
 自らの生存のために、逃亡生活を送り続けていた。
 世界中を必死に逃げ回り、人を信じられなくなっていた。
 全てを恐れて、全てを恨み、荒廃した魂を抱いて生きていた。
 
「僕が君と出会い、心を取り戻したように」

 それでもエンダとの出会いで、失って久しかった心を思い出した。
 かつて家族と過ごしていた頃の、穏やかな感情を取り戻した。

 エンダが“一人の少女”を想い、彼女のために奔走していたからこそ。
 確かな絆を結ぶ戦友として、傍に立ち続けてくれたからこそ。
 仁成はこうして、再起へと向かうことができたのだ。
 そして、それ故に――――。

「君もどうか、人を愛してほしい」

 仁成もまた、エンダにそうあってほしいと。
 自らの本心を伝えたのだ。

「……これは、僕からの願いだ」

 穏やかな声色で、仁成は口元に笑みを見せる。
 その願いに、エンダはただ目を丸くする。
 彼から手向けられた祈りを、呆然と受け止める。

 ――あの時ジョニーに吐き出した言葉が、エンダの心中で反響する。
 あれは紛れもない本心。紛れもなく、自分が抱き続けていた真実。

 己は土地神。生前の記憶など忘れて久しい、人ならざるもの。
 世界の過ちも、人の醜さも見続けてきた。
 “エンダ”の祈りを踏み躙るような悪意も溢れ返っていた。
 だからこそ――人にも世界にも、失望を抱いていた。

 彼女を繋ぎ止めるのは、“エンダ”の願いだけだった。
 仁成達のような例外を除いて、それ以外の存在にも希望など抱いていなかった。
 そして故に、仁成の願いもまっすぐ受け止めることはできず。

 しかし、それでも――。
 エンダは、その胸に手を当てて。
 静かに、ゆっくりと拳を握り締めた。
 仁成の言葉を受け止め、咀嚼するように。
 今はまだ飲み込めずとも、その手から離さぬように。


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