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真贋バトルロワイヤル part5
39
:
正義Ⅲ:Nothing Helps
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:20:44 ID:.I21kXzM0
「行ってあげてください、チェイスさん。私達が絶対に邪魔させませんから」
マジアアズール…小夜もまた力強い言葉でチェイスを送り出そうとした。
自分の道を、こうなりたいと願った己を見失い取り返しのつかない所まで堕ちる。
殺し合いに巻き込まれた当初の自分と、今の果穂が重なるなら。
あの時、手を差し伸べてくれた少女のように。
自分にとっての小さなヒーローが、きっと果穂にも必要だから。
「……分かった、任せるぞ」
迷う素振りを見せるのは一瞬、仲間達の選択を無駄にはしない。
果穂の元へ駆け出すチェイサーを、ゼインが妨害に動く。
「邪魔はさせないって言ったでしょう!」
余計な手出しは断じて認めない。
氷の長剣と竜殺しの大剣が咆え、ゼインを仲間の元へは行かせない。
背後から聞こえる戦闘音に背を押され、遂に辿り着いた。
「果穂」
「……っ、チェイス、さん」
ヒーローと守られる者として出会い、ヒーローとヒーローを支える者になり、
そして今、相容れぬ正義を掲げる敵として、彼らは対峙する。
40
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:22:26 ID:.I21kXzM0
◆
追い付くのはそう難しく無かった。
はるかを後部に乗せ、ライドチェイサーを猛スピードで発進。
最高時速470km/hを誇るモンスターマシンを、所有者であるチェイス以外が乗りこなすのは困難。
しかし現実の桐ヶ谷和人ではなく、ALOのキリトのアバターなら無茶も利く。
これまでの移動で、独自のクセも掴んでいたのも幸いした。
何より、本気で逃げおおせる気が敵にはない。
頃合いを見て追い付けるよう、わざと痕跡を残していったのだ。
「やっと来やがったか。良かったなぁ?お優しい奴らでさ」
徐々に近付く気配を察知し、灯悟は口元に弧を描く。
怯える子供を安心させる為の、頼もしい笑みとは違う。
他者の努力を嗤い、徹底的に精神を甚振る。
悪意を煮詰めた顔で、囚われの身となった少女を見つめた。
返答には最初から期待していない。
マトモに言葉を話せる状態じゃないのが、誰の目にも明らかだった。
「んむおおおおおおお……!!??!」
くぐもった悲鳴が千佳から飛び出る。
灯悟への怒りや、仲間達へ心配を掛けさせない為の言葉など。
言いたい事は多くあるのに、言葉らしい言葉を紡げない。
何も知らない者が見れば、悪趣味なホラー映画の撮影と思ったかもしれない。
成人した男性を優に超す長身の、巨大なクマのぬいぐるみ。
所々に継ぎ接ぎが見られるが、これだけなら不気味であれど然して驚く程じゃない。
異様なのは全開された腹部のチャック。
綿が詰め込まれた筈の箇所には、無数の触手が蠢いていた。
まるでぬいぐるみ自体が一つの巣のような、非常にグロテスクな光景。
当然精巧な模造品などに非ず。
粘液を纏わせ、一本一本が違った動きを見せる。
腹の中に触手を飼う巨大なぬいぐるみという、おぞましい存在が現実にいる。
41
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:23:07 ID:.I21kXzM0
「んごっ、んぐぐ…おごおおおお……!」
適当な場所で降ろされた直後、抵抗の間もなく千佳に触手が絡み付いた。
四肢の動きを封じたのみならず、衣服の隙間から侵入。
幼い肢体を楽しむかのように這いずり回り、たっぷりと粘液を塗りたくる。
まるで、この少女は自分の玩具だとでも言うように。
体中へマーキングをされた。
(やだっ…気持ち悪い……!)
目尻に涙を浮かべながら、いやいやと首を振るもお構いなし。
ノワルや使い魔の天使に弄ばれた異常に、酷く気持ちが悪かった。
人の形を保った手で弄られるのと違い、触手という生理的嫌悪の強いモノが体を這うのだ。
一刻も早く抜け出したいが、状況は千佳に甘い顔を見せてくれない。
千佳を嬲る触手の一本は口内にも入り込み、言葉を発させない。
偶然か意図してかは不明だが、魔法使いを封じる最適な方法だった。
おまけに触手が素肌を撫でる度、ノワルに調教された際の快楽が呼び起こされる。
精神的なトラウマだというのに、一度開発された肢体は9歳の少女では有り得ない程に敏感。
(やめてぇ……やめてよぉ……!)
凹凸のない幼子の体を、絶えず攻め立てる。
平らな胸を撫でまわされ、桃色の突起が痛いくらいに硬くなった。
触手の先端が小さなへそをこじ開け、舌先で突くように弄ぶ。
下半身を汚すのが触手の粘液なのか、自分が漏らした液体なのかすらもう判断が付かない。
やめてという懇願は、口内で暴れる肉槍に虚しく吸い込まれた。
「うっわ、御大層な趣味してるよアイツら。まあ、女の死体に自分の脳みそ移す変態だしなぁ」
憐憫を誘う千佳を、解放してやろいうという気にはならず。
気色の悪いNPCを用意した運営側へ、辛辣な評価を下す。
自分を棚に上げてと自覚があっての発現であり、余計手に負えない。
そうこうしてる内、バイクが目視可能な位置まで現われた。
42
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:24:50 ID:.I21kXzM0
「千佳ちゃ……っ!?」
ライドチェイサーを飛び降りたはるかの目に、真っ先に飛び込む惨状。
肉の檻に囚われた千佳の姿に、顔は青褪め言葉を失う。
予想通りの反応へヘラヘラ笑う灯悟へ叩きつけられる、猛烈な敵意。
射殺さんばかりに睨むキリトへ、臆した風もなく視線を合わせた。
「ああなんだ、ガキは趣味じゃなかったか?そっちのピンク頭にしとけば、お前も喜んだか?」
「ふざけるなよ変態野郎……!」
怒りのままに起動鍵を使い、デュエルガンダムを装着。
シンプルな基本形態だが、キリトの戦闘スタイルに照らし合わせると最も使い勝手が良い。
ビームサーベルを引き抜く横では、はるかもキッと睨みつける。
高まる闘争の空気は灯悟の望む所だ。
開戦の合図とでも言うように、カードをドライバーに叩き込む。
『FINAL ATTACK RIDE WI・WI・WI WIZARD!』
「そらそら!馬鹿面晒して避けろよ!」
ウィザード専用可変型武器、ウィザーソードガンの引き金を引く。
火炎を纏った銃弾が大量にばら撒かれ、キリト達に殺到。
互いに地を蹴り回避へ動き、狙いの外れた銃弾は付近の建造物に傷を付けるだけで終わる。
その筈が、再度迫り来る脅威に思わず振り返った。
「なっ、追尾式か!?」
歯嚙みするキリトへYESと答えるように、銃弾が軌道を変え襲来。
弾自身に意思が宿ったかの現象は、覚えがない訳じゃない。
ALOの魔法にも、追尾(ホーミング)式の魔法が複数存在した。
逃げ回ればやり過ごせる、と単純な攻撃じゃない。
43
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:25:36 ID:.I21kXzM0
しかしデュエルガンダムの機動力を乗せた今の剣なら、突破は不可能に非ず。
MSの武装とは別にもう一本の剣を引き抜き加速。
自ら銃弾の雨に飛び込むや、双剣を豪快且つ的確に振るう。
撃ち殺されに顔を出したんじゃあない、無謀にも飛び込んで来た火の玉の群れを掻き消すのだ。
弾幕を二本の剣で斬り落とし、もう一人の仲間に叫ぶ。
「はるか!」
「うんっ!」
何をやれとは最後まで言われずとも分かる。
この状況で最も優先すべきは、囚われ心身共に消耗の著しい少女の救出。
片方が攫った張本人の相手を引き受け、もう片方が助け出す。
方法としては何も間違っておらず、灯悟をキリトに任せ駆け出した。
既に魔法少女への変身は済ませており、片手には槍を生成。
触手を切り裂き千佳を助けるのに、何の迷いもない。
灯悟が許すかは別の話だが。
「勝手な真似すんじゃねぇよ!」
『KAMEN RIDE FAIZ!』
バックステップで距離を取り、新たなカードを装填。
スマートブレイン製のベルトを使い、人類の進化系と戦った戦士。
仮面ライダーファイズに姿を変え、すかさず次のカードを装填。
はるかの妨害に丁度良い、手駒を一体用意してやろう。
『ATTACK RIDE AUTO VAJIN!』
カードに内蔵されたデータを読み取り、能力を解放。
傍らのディケイド専用バイク、マシンディケイダーがファイズ専用ビークルへ変化。
これもまたファイズのベルト同様、スマートブレイン社の製造品だ。
新たなバイク、オートバジンのスイッチを押すと一瞬で変形。
二足歩行の戦闘形態となり、はるかへ攻撃を仕掛けた。
「きゃあああああっ!?」
空中を飛行しながら、右手に前輪を装備。
高速回転し、計16個のマズルから弾丸が撃ち出された。
オルフェノクの外皮を削り、灰の山へ帰る強力無比な銃撃だ。
打たれ強い魔法少女の肉体とて、何発も浴びればタダでは済まない。
咄嗟に飛び退いて回避するも、執拗に狙い撃ち続ける。
乾巧の心強い味方だが、ファイズの変身者に逆らえない都合上今や灯悟の手先だ。
44
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:26:43 ID:.I21kXzM0
『ATTACK RIDE FAIZ EDGE!』
「お前とは俺が遊んでやるぜ!カッコ付けの騎士様よぉっ!」
「くっ、お前……!」
ファイズ専用の光剣を左手に持ち、右手にはソードモードのライドブッカー。
奇しくもキリト同様、二刀流のスタイルで斬り掛かる。
振り下ろされた一撃を双剣の交差で防御、弾き返される前に灯悟自ら腕を引く。
体勢が崩れるのを嫌った動きへ、ならばと懐へ潜り込む。
汎用性重視故の軽量さは、剣術を主体にするキリトと相性は悪くない。
尖った性能が無い分、己の技量で補うまで。
ビームサーベルとファイズエッジ、マクアフィティルとライドブッカー。
四本の刃が奏でる戦の音色へ、聞き入る者はここにおらず。
両名共に互いを斬る事へ意識を裂いて、得物を操る。
(何だこいつ、見た目以上に一撃が重い……!)
斬り合う中で即座に気付く、灯悟の振るう剣の異様な重みを。
少女の見た目に反し腕力に優れてるのか、変身中のライダーの恩恵か。
外見と不釣り合いな重量を持つとしか思えない、一撃に籠められた高さ。
改めて不可解過ぎる眼前の敵へ、得物を挟んで問い質す。
「お前は本当に、イドラの仲間のキズナレッドなのか!?」
「あぁ!?何度も同じ事言わせんなよ!ウザってぇ真似されて女になったが、俺以外にキズナレッドはいねぇっての!」
真紅の光剣を受け流し、反対の手で突きを見舞う。
姿勢を低くし下半身狙いで振るった剣を、数歩下がって回避。
逃がしはせぬと斬り掛かった灯悟へ、応じるように双剣を叩き付けた。
「イドラはお前を信頼出来る奴だって、そう教えてくれた!なのに何で、殺し合いに乗った!?」
「……んなもん、イドラがもう死んじまったからだよ!」
「なっ……」
押し込もうと両腕に力を籠めるが、灯悟の防御を崩せない。
至近距離での問い掛けへ、吐き捨てるように答えが返って来た。
思わず息を呑むキリトをどう思ったのか、仮面越しに負の念を籠めた言葉をぶつける。
45
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:27:26 ID:.I21kXzM0
「イドラは俺の全てだった…イドラとの絆が、俺にとって一番大事だった!アイツのいない世界じゃ、どんな絆にだって価値はねぇ!だから取り戻すんだよ!どんな手を使ってでもなぁ!」
「最後の一人に勝ち残って、羂索に頭を下げて蘇生を頼み込む気か!?」
「アイツらも最後には殺すさ!けど他に方法がないなら、媚び諂うしかねぇんだよぉっ!」
「……っ」
知らず知らずの内に、キリトは表情を歪ませていた。
気持ちが全く理解出来ない、とは言い切れない。
キリトとて、最愛のアスナが命を落としたら到底平静など保っていられまい。
間違った道へ微塵も靡かないと、断言出来る自信はない。
「優勝が目的なら、何で千佳にあんな真似をした!?あの子を弄ぶのが必要だって言うのか!?」
「はっ!必要だね。イドラが死んだのに他の奴らがのうのうと生きてるなんて、不公平だろ?徹底的に甚振って、お前らのくっだらねぇ絆を壊してやらなきゃ気が済まないんだよ!」
「お前って奴は……!どこまでイドラを馬鹿にする気だ…!!」
「黙れ!イドラを死なせやがった無能が!」
余りにも身勝手な動機へ、キリトの怒りが激しさを増す。
自信満々に灯悟への信頼を口にし、最後まで自分達を守ろうと戦った魔法使い。
共有した時間は短いが、仲間だった彼女の心はよりにもよって浅垣灯悟が最も踏み躙っている。
憤怒を乗せた得物が激しさを増すも、これ以上の剣戟へ望む気は向こうにない。
ファイズエッジを投げ付け、更にライドブッカーを素早く変形。
光弾を乱射し牽制、ダメージを与えられずとも構わない。
僅かにでも足止めが叶えばこっちのものだ。
余分な動作の一切を削ぎ、流れるようにカードを装填。
スペックの低さを拡張性で補う、ファイズの本領を発揮。
『FORM RIDE FAIZ ACCEL!』
胸部の装甲が展開し、肩部を覆うアーマーに。
剥き出しの箇所には前進を流れるエネルギー、フォトンブラッドの核。
両の瞳は黄色から、鮮血の如き色へ変化。
高速戦闘特化の形態、ファイズアクセルへの変身を完了。
弱点を露出したリスクを補って有り余る、脅威的な能力を見せ付ける時だ。
46
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:28:11 ID:.I21kXzM0
「10秒間、必死に抵抗してみろよ!」
『FINAL ATTACK RIDE FA・FA・FA FAIZ!』
電子音声が鳴り響くと同時に、灯悟の姿が消える。
逃げたのではない、猛烈な悪寒がキリトを激しく苛む。
何をする気かは難しく考えるまでもなく、すぐに分かった。
咄嗟の判断で、アサルトシュラウドに切り替えたキリト。
オートバジンの銃撃をどうにか掻い潜り、千佳の元へ駆け寄ろうとするはるか。
狙いを二人に絞って、頭上から赤い雨が降り注ぐ。
「これは……!?」
驚愕を声に出すも、既に遅い。
オルフェノク達を灰の山に変えた、ファイズの蹴り技。
通常形態では一つのみ放つマーカーを、10秒間の高速移動中に複数発射。
逃げ場を塞がれた二人に出来るのは二つに一つ。
諦めてフォトンブラッドの毒素に蝕まれるか、持てる技を駆使して抗うか。
どちらを選んだかは、説明するまでもない。
「く、おおおおおおおおおっ!!!」
マーカーを突き抜け、ファイズの蹴りが次から次へと叩き込まれた。
両肩の武装をひたすらに撃ち、追加装甲で可能な限りダメージを減らし。
磨き上げたスキルを以て双剣を振るい、死へ引き摺り込む手を払い除ける。
たった10秒がこれ程に長く感じたのは、初めてかもしれなかった。
『TIME OUT』
10秒ピッタリ経過し、ファイズも通常形態へ戻る。
振り返り視界が捉えた光景へ、つまらなそうに鼻を鳴らした。
47
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:28:58 ID:.I21kXzM0
「ハッ……言われた通り、抵抗してやったぞ……?」
素顔は見せずとも、不敵な笑みを浮かべてるのが察せられる。
五体満足のキリトだが、決して無事とは言えまい。
増加装甲は使い物にならなくなり、最早単なる枷。
キリト本人へのダメージもゼロとはいかず、消耗が見て取れた。
「ま、間に合った……」
黒の長槍を杖代わりにし、はるかもどうにか立ち上がる。
ポインダーに囲まれた瞬間、ウォーパイクを取り出したまでは良いが半端な技では対処が追い付かない。
であればはるかの切ったカードは、最善と言えるだろう。
月光と言う名の技は、標的の頭上へ瞬間移動を行う。
本来であれば真下の敵へ一撃を見舞うのだが、此度は緊急脱出の手段に使用。
複数の蹴りに貫かれるのこそ回避出来たものの、ファイズアクセルはまだ時間切れ前。
殴り飛ばされたと気付いた時には、既に地面へ叩き付けられた後。
魔法少女故の打たれ強さで死んではいないが、無傷とはいかない。
「死んでないなら、別にそれでも良いけどな。もっと苦しんで、惨めな最期になるだけだろ!」
『KAMEN RIDE OOO!』
『タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!』
生き延びたのを運が良いと思ってるなら、大間違いと教えてやらねばなるまい。
科学技術で生み出されたファイズとは反対に、神秘のメダルで誕生したライダーへ新たに変身。
仮面ライダーオーズの登場へ最も反応を見せる、真紅の強欲はこの場に不在。
異常な程に手数が豊富な敵に、キリト達の表情には苦々しさが漂う。
「お前らの首をあのガキの目の前に並べてやるよ!助けに来たのに弱くてごめんなさいって、精々今の内に謝っとけよなぁっ!」
どこまでも見下し、絆に唾を吐く醜悪な言動。
灯悟が吐き散らす全ては、千佳の耳にも届いていた。
身動きを封じられ、呪文を唱えるのが叶わなくとも。
両目と両耳は解放されたままであり、戦場の様子は確認出来る。
だから余計に、心が苦しい。
48
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:29:46 ID:.I21kXzM0
「んぐうううう!むぐっ、んんんんん……!」
まただ、また自分は何も出来ない。
ノワルに捕らえられ、泣き叫ぶ皆の前で殺されそうになった。
ゼインが篝を殺し、果穂を傀儡として連れ去った。
無力感を噛み締めたあの時と同じ。
今は助けられる魔法があるのに、この有様。
それに、はるか達が傷付けられているのに。
触手が体中を愛撫し、その度に跳ね上がって声を漏らす。
意志とは裏腹の反応を見せる体が、今は酷く恨めしい。
悔しさの余り、涙が零れて止まらない。
(このまま……あたしは見てるしかできないの……?)
マジアベーゼが自分のあこがれを優しく包んでくれて、魔法を託してくれたのに。
空色の魔法少女に誓った、皆を助ける為に魔法を使えず。
無力でちっぽけなまま、弄ばれて終わりなのか。
胸の真ん中に置いた、絶対に曲げたくない気持ちを自分自身が裏切るのか。
(…………いや。あたしはそんなの…絶対にいやっ!!)
はるかとキリトが、若しかしたら殺されてしまうかもしれない。
チェイス達だって、ゼインに敗れ死んでしまうかもしれない。
助けられなかった果穂は、この先ずっとゼインに利用されてしまうかもしれない。
もうこれ以上、大事な友達を失いたくない。
「ん……ぐ……んぐぐぐ……!」
粘液塗れの体は火照り、身動ぎするだけでも思考がおかしくなる。
だから何だ、苦しいのが自分だけだと思うのか。
皆頑張って戦ってる、諦めないでいるのに。
自分一人がこんな、気持ちの悪いぬいぐるみなんかに、
49
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:30:53 ID:.I21kXzM0
(負けない……ラブリーチカは……負けないんだからっ!!!)
呪文は唱えられない、手も足もマトモに動かせない。
ではもう、自分には何一つ残っていなのか。
いいやある、チェイスが言ってくれただろう。
大事な人を守る為に、立ち向かう勇気。
その一つがあれば――
「んんんんんぐぐぐぐっ!!」
『――ッ!!??!』
そうしてやれたのは、大掛かりなものじゃない。
無我夢中で顎を動かし、関節が痛むのもお構いなしで。
口内を貪る触手に、出せる精一杯の力で歯を突き立てた。
それだけだ、それだけの単純な行動が変化を齎す。
予期せぬ痛みへ触手も驚き、反射的に口から引き抜いた。
ほんの僅かな間のみ、自由に声を出せる。
数秒後には即座に陵辱が再開し、痛みを与えた報いとして一層苛烈となるに違いない。
そんな未来は、永劫訪れないが。
「あたしから……離れてよ……っ!」
反撃の狼煙を上げる声に呼応し、千佳の魔法が発動。
固有魔法イノセンスは、あらゆる束縛を認めない。
纏わり付く触手が一斉に千切れ、ぬいぐるみが苦痛に悶える。
自由を取り戻すのも束の間、地面に放り出された千佳は息も絶え絶えだ。
弄ばれた体には、快楽の残滓が付いて回った。
「あのガキ何しやがった!?」
その様子は戦闘中の三人にも見えた。
正体不明の力で拘束を脱した千佳に、案の定灯悟は困惑。
驚きはキリト達にもある、だがそんな些事に一々反応していられない。
千佳が作り出したチャンスを、無駄になどするものか。
50
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:31:48 ID:.I21kXzM0
「行け!はるか!」
「うん…!」
「なっ、テメ――」
灯悟が妨害に出るも、キリトが手出しはさせない。
傷の痛みも切り捨てて、繰り出す双剣が余計な真似を封じ込める。
心強い助けを背に、はるかは今度こそ手を届かせるべく走った。
獲物が奪われると気付いたのだろう、ぬいぐるみが巨体を震わせ再度捕えんとする。
しかしもう、二度も目の前で掻っ攫われるのは御免だ。
黒槍片手に跳躍、友を辱めた魔物への怒りを籠め投げ付けた。
「月光・烏!」
月が零した涙の如く、頭上よりの殺意を見舞う。
黒槍に腹部を貫かれた途端、宿した魔力が炸裂。
スタズタに斬り刻まれ、僅かに残った触手も細かな肉片へ早変わり。
悲鳴すら上げられず土へ還る魔物へ、最早はるかは見向きもせず千佳を抱き起す。
「チッ!変態趣味だけのデカブツが!役に立たねぇな!」
『FORM RIDE SAGOZO COMBO!』
『FINAL ATTACK RIDE O・O・O OOO!』
奪還を許したNPCをこき下ろし、苛立ち任せにカードを装填。
基本形態のタトバコンボから一転、白のコアメダルを使ったコンボへチェンジ。
サイの角を象った頭部パーツに、ゴリラもかくやの剛腕。
足にはゾウ型の装甲を履いたサゴーゾコンボは、見た目に違わずパワーに優れた形態。
機動性ではキリト達に後れを取るが、何の問題にもならない。
重力操作能力を用いて急浮上、次いで一直線に落下。
粉砕された足元を起点にエネルギーを放出し、キリト達を捕捉。
有無を言わせず地面にめり込ませ、身動きを封じ仕留める算段だ。
51
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:32:55 ID:.I21kXzM0
「させない……もうみんなに酷いことは許さないんだから……!」
「なにぃっ!?
万全とは言い難くも、瞳に宿す千佳の決意に微塵の亀裂も無し。
放出された光が灯悟以外の全員を覆い、即座に効果が表れた。
不可視の壁が阻むように、オーズのエネルギーが消失。
サゴーゾコンボの技は、発動直後に破られる憂き終わりを迎える。
イノセンスシールド。
予め発動しておく事で、拘束を無効化する防御魔法。
隕石を破壊し、富良洲高校では浅倉へ手痛い一撃を与えたイノセンスドライブ同様。
此度もまた一つ、固有魔法の可能性を千佳は掴み取ったのだ。
「クソタッレのガキがぁ……!余計な真似しやがって!」
「ガキはお前だろ!八つ当たりでヘマして当たり散らす、どうしようもないクソガキだ!」
悉く目論見を潰す千佳への苛立ちを切り捨て、キリトが距離を一気に詰める。
敵自ら機動力を捨てたなら好都合、遠慮なしに技を叩き込む。
片手剣が切れ味を増し、放つは垂直の4連続攻撃。
分厚い装甲相手に手数で押し切り、短い悲鳴を上げ大きく後退。
仮面の下で顔を悪鬼の如く歪め、元のタトバコンボへ戻った。
「はぁ…はぁ…上手くいった……」
「今のも千佳ちゃんの魔法……」
「えへへ……マゼンタ達が戦ってるんだもん……あたしだって、まだまだ頑張れるよ……!」
額に汗を浮かべ、陵辱を受け心身の疲労は少なくない筈なのに。
千佳の笑みは不安や恐れを吹き飛ばす、人々に笑顔を届ける魔っ娘のもの。
無理しちゃ駄目だよと、口を突き掛けた言葉を咄嗟に飲み込む。
傷付いて欲しくない、守ってあげたい心に嘘は無い。
しかし諦めずに戦おうとする、小さな体に秘めた大きな勇気を。
はるかは絶対に否定したくないから。
52
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:34:07 ID:.I21kXzM0
「……うん!あたしが絶対に守るから、だから一緒に戦おう!」
皆の力になりたい、友の願いに呼応しはるかも心火を一層激しく燃やす。
見せかけの決意でない事は、湧き上がる膨大な魔力が証拠。
秘めたる想いが、魔法少女を新たなステージへと導く。
トレスマジアの宿敵が、そこへ至ったのであれば。
花菱はるかが到達出来ない道理はない。
「マゼンタ!?凄くきれい……」
目を奪われる千佳へ微笑み返し、輝きは最高潮へ。
激怒戦騎との戦いで、反撃の兆しとなった力。
真化(ラ・ヴェリタ)が今再び、絆の破壊者を撃破すべく発動された。
彼女の真化がどういったものかを知る参加者がここにいないのは、果たして運が良いのか悪いのか。
「あっはぁぁぁん♡あたし♡本日二度目のさんじょー♡」
「え゛っ?」
アイドルらしからぬ声が漏れたのは、仕方ないと千佳は自分でも思う。
誰だってこの光景を見たら、困惑する他ない筈。
千佳の知るマジアマゼンタは、褐色の肌ではなかった。
着てるのは可愛らしい魔法少女の衣装で、扇情的なナース服じゃなかった。
谷間を見せ付けていないし、臀部を丸出しにしてもいない。
数秒前までとは余りにも違う、両の瞳へハートマークを浮かべ妖しく微笑む。
マジアマゼンタ・フォールンメディックへ、千佳は言葉が出て来ない。
53
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:35:34 ID:.I21kXzM0
「さてと♡じゃあ早速千佳ちゃんを元気にしてあげるねぇ♡」
「え、あ、マゼンタ?」
混乱から覚めぬ千佳を抱き寄せ、その場にぺたんと座り込む。
元気とは言うが、一体何をする気なのか。
皆目見当も付かない千佳の頬を愛おしそうに撫で、
「こ・こ♡た〜んと飲ませてア・ゲ・ル♡」
躊躇なく自身の胸元をズラした。
「えぇっ!?な、何してるのマゼンタ!?」
当然千佳からすれば意味が分からない。
回復魔法を使うならともかく、何故胸を見せ付けるのか。
そこが人前で見せ付けるべき部位でないことは、小学生の千佳でも知っている常識だ。
「おいはるか!?お前何を……」
「キリトくんはこっち見ないで!女の子以外見るの禁止!」
「は、はいっ!」
異様な雰囲気に制止を試みたキリトだが、ピシャリと一喝された。
有無を言わせぬ迫力へ、つい素直に応じてしまう。
目を白黒させる千佳にお構いなしで、顔に手を添える、
「ほぉら♡おっぱいでちゅよぉ♡」
「んむぅっ!?」
中学生ながら発育の良い乳房を、誘惑するように揺らす。
元の彼女とは違う褐色の肌と、鮮やかな桃色の突起。
同性の体なのにどうしてか、頬が熱くなる千佳の姿にペロリと舌なめずり。
目を離せないでいる千佳の口元へ、乳房を押し付けた。
54
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:36:12 ID:.I21kXzM0
「あっ♡そう♡千佳ちゃん上手♡アイドルはお口も使うもんね♡(歌う的な意味で)」
マジアマゼンタの嬌声が鼓膜を震わせ、千佳の思考をドロドロに溶かす。
吸ったつもりはないのに、口の中へ流れ込む感触。
赤ん坊はとっくに卒業しているのに、気付けばちゅうちゅうと音を立てていた。
(なに、これ……マゼンタのあったかさが伝わって来る……)
恥ずかしい事の筈なのに、ノワル達に弄ばれた時の嫌悪感はまるでない。
乳房から流れ込む魔力を通じ、分かってしまった。
見た目は変わっても、マジアマゼンタが自分を想う気持ちは変わらない。
守ってあげたい大切な友達で、一緒に戦う魔女っ娘。
言葉にするよりもハッキリ自分の中へ染み渡り、体が熱を帯び出す。
「もっと♡もっといっぱい吸ってぇ♡あんっ♡ユフィリアちゃんとまふゆちゃんも上手だったけど♡千佳ちゃんもいいよぉ♡」
「っ!?」
さり気にとんでもない内容を口走った。
別行動中の二人の仲間。
千佳と近しい年頃の可愛い女の子と、お姫様のように綺麗な年上の少女。
知らない内に彼女達とも、同じような事をしていたのか。
蕩けた顔の二人がマジアマゼンタの乳房に吸い付く様を想像し、余計に頬へ熱が集まる。
詳しく知りたいけど、知るのが恐い気もした。
「何だってんだよあの女!?変態しかいないのかよ!」
「あの気色悪いNPCを利用した、お前が言うな!」
理解不能の光景を余所に、キリトと灯悟が斬り合いを続ける。
正直に言って、敵の困惑自体はキリトも分からんでもない。
アスナという恋人がいるとはいえ、思春期の少年。
聞こえて来る嬌声に動揺があったが、無理やりに押さえ付け戦闘に集中。
55
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:37:17 ID:.I21kXzM0
(こいつは馬鹿力だが、剣の腕は大したことない!)
幾度も得物をぶつけ分かったが、灯悟の剣術は決して高くない。
仮面ライダーの固有能力を多数操るのは厄介だが、逆に言うとそれだけだ。
SAOのラスボスとして一騎打ちに挑んだヒースクリフ、この地で二人の仲間を奪ったやみのせんし。
そして、マクアフィティルの元々の使い手とは比べるまでもない。
「チィッ!」
苛立ちが剣にも表れ、徐々に精細さを欠いていく。
反対にキリトの思考は研ぎ澄まされ、技の出し所を冷静に見極める。
次にどう動くか、どの位置で斬ればこちらの狙い通りになるか。
アインクラッドの単独(ソロ)攻略に始まり、命懸けの戦いで磨き上げた感覚が勝機を掴む。
ビームサーベルを持つ左手を翳し、本命の右手は肩の上に置く。
独自の構えで大きく引いたマクアフィティルが、灯悟目掛け突きを放った。
最早それを、剣を用いた攻撃と言って良いのか。
伝説上の魔物を撃ち抜く、必殺の魔弾にも等しい威力。
SAO時代から愛用するソードスキルの一つ、ヴォーパル・ストライクが炸裂。
ライドブッカーの防御を間に合わせない、爆発的な速度。
トラメダルの装甲を突き、大量の火花を散らしながら地面を転がる。
「がっ、あぁ……!お前……っ!?」
キリトへの恨み節は、吐き出す前に喉奥で消失。
起き上がった先で見た、膨大な魔力が一点に収束するのを。
「凄い…普段よりも体がずっと軽い!」
「いえーい♡大成功♡」
驚き自身の体を見回す千佳の横で、そうなった理由の魔法少女がピースサインを作る。
特殊なプレイで千佳に授乳を行った訳ではない。
消耗した体力を回復し、NPCによる悪しき快楽の残滓を消し去ったのだ。
56
:
正義Ⅳ:Mystic Liquid
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:39:31 ID:.I21kXzM0
「さあ千佳ちゃん♡準備は良い?」
「う、うんっ!」
背後から抱き着き囁くマジアマゼンタへ、少々困惑しつつも肯定を返す。
自分の中に、信頼する魔法少女の力が宿ったと分かる。
ならば何をするかは言うまでもない。
後頭部へ押し付けられる乳房の感触に、赤面しながらも標的から目は逸らさない。
「クッソ…またこうなるのかよ……!」
うんざりするように吐き捨て、灯悟がカードを取り出す。
だが一手遅い、今度ばかりは後れを取らない。
千佳が伸ばした右手へ、マジアマゼンタも自身の手を添えた。
頼もしい仲間が、大好きな友達が傍にいてくれる。
その事実が千佳に強く思わせるのだ、「負ける気がしない」と。
「いっけぇええええええっ!!!」
纏わり付く悪意を消し飛ばす、勇気の輝きが一帯を照らす。
カード装填は間に合わないと悟り、灯悟が防ぐの構えを取るも無意味だ。
イノセンスドライブはあらゆる防御を無視し、確実に届かせる矛。
加えて放たれた規模と威力たるや、放送前の使用時を上回る程。
オーズの装甲でも殺し切れないダメージが、鎧で隠した外道の肉体を焼く。
「がああああああああっ!!!??!」
絶叫を上げる灯悟は瞬く間に地から足を離し、彼方へと吹き飛ぶ。
日が落ちる前の空を彩る、汚れた流れ星は何処まで行くのか。
「って、チェイス達がいる方じゃないかあれ!」
「えぇ!?」
ウィザードが使った悪臭の魔法で悶えてる間に、ここまで連れて来られたのだ。
当然来た道など分かる筈もない。
よもや仲間達の元へ吹き飛ばしてしまったとは思わず、途端に千佳は慌て出す。
「あれ?あたし確か…えっ?あの人は?」
タイミングを同じくし、マジアマゼンタの真化が解除。
記憶が飛ぶのは富良洲高校での戦闘時から、もっと言えば正史にて真化した時と同じ。
いつの間にやら灯悟が姿を消しており、状況への理解が追い付かない。
「はるかお前、元に戻ったのか?というかもしかして、覚えてない……?」
「へっ?何が?えっと、あたし確か――」
「そっ、それよりも今は!チェイスくん達の方に行かないと!」
「お、おう」
記憶の糸を手繰ろうするが、寸前で千佳が阻止。
顔の赤い理由を知るのはキリトだけであり、本人も詳細な説明は憚れる。
何より千佳の言った通りだ、自分達も急ぎ行動に出なければ。
首を傾げていたはるかも、詳しく聞いてる場合じゃないと切り替えた。
元来た道を駆ける一同は、仲間の元へと急ぐ。
絆の破壊を目論んだ外道の、正体は未だ知らずに。
57
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:40:57 ID:.I21kXzM0
◆
自分が動揺している理由が、果穂には理解出来なかった。
ゼインの正義に歯向かった時点で、誰であろうと敵。
たとえそれが、殺し合いで自分を何度も助けた男でも関係無し。
残念には思うも、倒すのに何の躊躇もいらない。
正しい事なのだと自信を持って言えるのに。
(あたしが……チェイスさんを倒す……)
言葉に出さず、胸中で自身が今から何をするかを繰り返す。
何も間違っていない、先に間違えたのはチェイスの方だ。
ゼインに聞けば、その通りだと言ってくれるだろう。
幸せの羽をくれた善意の使者の言葉は、一から十まで正しい。
じゃあやっぱり自分の行いは、正義の行いである。
「……あっ、あの!本当にチェイスさんは、ゼインさんと協力してくれないんですか?」
だから、こんな問いが口から出た自分が俄かに信じ難い。
余計な話を続けず、早急に倒せば良いだけの話じゃないか。
まるでチェイスを手に掛けるのを、少しでも先延ばしにしてるようだと。
自覚してるかどうかすら、果穂には曖昧だ。
「何度聞かれようと、俺の答えは変わらない」
内心の困惑を余所に、簡潔に返答を得られた。
但し望んだ形とは異なる。
咄嗟に言い縋ろうとし、ハッと我に返った。
そうじゃない、ゼインの為に戦うのならこれは正しくない。
手を跳ね除けた以上、誰が相手でもゼインの敵だ。
「じゃ、じゃあ!やっぱりチェイスさんはあたしとゼインさんの敵です!」
雑念を振り払おうと声に出した内容が、不思議と自分の胸に刺さる。
どうしてと疑問に思えば、余計泥沼に嵌る気がしてならない。
58
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:42:38 ID:.I21kXzM0
<鎧武!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
ならばこれ以上、思考を割き続けるのは無駄に他ならない。
やや乱暴にゼインカードを引き抜き、ドライバーへ喰らわせる。
シビト化で再現された複製品とはいえ、また一つ英雄の力が使い捨てられた。
銃剣一体の無双セイバーと、スライスした果実モチーフの大橙丸。
アーマードライダー鎧武の得物を両手に装備し、動揺を断ち切る勢いで突撃。
ガントレットに搭載の、武器管制補助エンジンが即座に起動。
初めて手にする装備だろうと問題無し。
インベスゲームに始まり、黄金の果実を巡る戦いに身を投じた青年。
葛葉絋汰と謙遜ない戦闘力を発揮。
豪快ながら簡単に隙を見せない動きで、両の刃を叩き付ける。
感じた手応えは無防備な胴体を切り裂き、痛みを与えたのとは別物。
二本の刀身はチェイスを軽く撫でてもおらず、押し留められていた。
こちらが剣を使うのに合わせてか、向こうが持つのもまた剣。
無双セイバー以上に刀と呼ぶに相応しい得物は、チェイスの手にある。
「っ、てやああああああっ!!」
一度防がれた程度で、勝負は簡単に決まらない。
倒れるまで何回だろうと、斬り付ければ良いだけだ。
嘗てメガヘクスによる侵略の際、一度だけチェイスが共闘した戦士の剣だと知る由もなく。
世界を守ってみせた始まりの男の剣で、人を守る戦士を斬り付けた。
内心の動揺とは裏腹に、襲い来る刃に容赦はない。
素人が出鱈目に振り回すだけなら、対処は非常に安易。
現実には以前からの得物と思わせる程に、双剣を巧みに操る。
怒涛の勢いで敵意を振り撒く斬撃へ、チェイスもむざむざ我が身で受け止めはしない。
刀を用いて防ぐ度に、刀身同士が甲高い音を奏でる。
鼓膜を痛める音の中に、どこか澄んだモノが混じっていると。
思考の片隅で果穂が思うのも一瞬、すぐさま眼前の敵へ意識を引き戻す。
59
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:43:16 ID:.I21kXzM0
「……っ」
防御をすり抜け、無双セイバーの切っ先が胸部を走った。
僅かに漏れ出た呻き声を、果穂は聞き逃さない。
流れに乗るべく、間髪入れずに大橙丸を振り下ろす。
防がれればすかさずもう片方を、位置を変えて斬る。
派手な乱舞のようであり、見方によっては苛立ち交じりに剣を振るっているようにも見えた。
(いけます!このまま……!)
一撃、また一撃とチェイスを傷付ける刃が増えていく。
レンズ越しに見る火花が飛び散る様は、勝利の予感を抱かせる。
ゼインがくれた力はやっぱり凄い、チェイスですら手も足も出ない。
正義が勝ち悪が滅ぶ、理想的な決着は時間の問題だ。
(そうです!チェイスさんは悪者だから、本当の正義のゼインさんには――)
勝てない、その四文字が出て来ない。
何か、何か違和感があった。
言いようのない奇妙な感覚の正体へ、辿り着くのはすぐのこと。
「どうして……」
ポツリと、呟かれた声は蚊の鳴くように小さい。
しかしチェイスにはハッキリと聞こえた。
「どうして……あたしを斬ろうとしないんですか……?」
違和感の正体は至って単純。
チェイスはずっと剣を防いでばかりで、一度も反撃に出ない。
それだけ自分が強く、どうにか凌ぐので精一杯だから。
なんて楽観的に思えれば、どれだけマシだったろう。
60
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:44:52 ID:.I21kXzM0
「俺はお前を倒す為じゃなく、助ける為にここにいるからだ」
「っ!なんですかそれ…言ってる意味が分かりません!」
得られた答えは納得に程遠く、却って心が掻き乱される。
戯言で惑わせ、隙を見せた瞬間に斬り付ける気か。
だとしたら卑怯極まりない、絶対的正義のゼインとはまるで違う。
そんな真似をする男じゃないと、よく知る己の記憶に目を逸らし憤る。
「あたしはっ!助けて欲しいなんて思ってません!誰の助けもいらないんです!ゼインさんがくれた幸せの羽があれば、あたし一人で何だってやれます……!」
「それが本当に、お前が心からの言葉か?」
戯言を一蹴すべく、ささくれ立つ感情を刃に乗せる。
苛立ちは怒りに、敵意は殺意へ変わりただ一人へ向け殺到。
持った得物の数は二本にも関わらず、数十に増えたと錯覚を抱き兼ねない。
斬撃の嵐を前にチェイスは不動、たった一本の刀を頼りに防ぎ続ける。
各部に備わったアーマーがダメージを最小限に押し留めるも、蓄積は免れない。
だが傷などどうでもいいと言わんばかりに、言葉を紡ぐ。
「どんなヒーローにも支えてくれる者が必要、お前が言った言葉じゃないのか」
「……っ。だからどうだって言うんですか!?あたしはチェイスさんと違うんです!助けてもらわなくても平気で……っ!」
「そうだ。俺はこれまで多くの仲間に助けられて来た」
怒るでもなく、ぶつけられた言葉に肯定を返す。
共に戦う仲間達がいて、時には命を賭し自分達を生かした者がいて。
彼らの助けを得た事を恥には思わず、むしろ自分も彼らの力に少しでもなれればと思う。
そして今は、一番初めに自分を支えてくれた少女を助けたい。
たとえ人間から拒絶されようと、彼らを守れるのなら愛されなくて構わない。
仮面ライダーとしての再起を、霧子が信じ続けてくれた。
仲間として受け入れ、共に戦った進ノ介ら特状課のメンバーがいた。
ダチにはなれなかったが、剛を守った自身の最期に後悔はない。
短くとも宝物のようなあの日々で、十分過ぎる程だ。
だというのに自分はまた一つ、信頼と言う名の宝を人間からもらった。
傍で支えると、恐怖を乗り越え約束してくれた少女。
ヒーローとして、アイドルとしての覚悟を見せた仲間。
61
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:45:47 ID:.I21kXzM0
「お前の言葉に、決意に俺は助けられた。お前自身にも、それは否定させない」
「――――っ!!し、知りません!そんなの…分かりませんっ!」
怒声を放たれてはいない。
なのに驚く程深々と突き刺さり、心を揺さぶる言葉。
受け入れてしまったらどうなるか、まるで分からない。
恐怖にも似たモノを覚え、駄々をこねる幼子のように拒絶する。
これ以上何も言わせない為に双剣の柄を組み合わせ、エネルギーを纏わせた。
インベス同様、爆散の末路をくれてやれば全てが片付く。
防御へ翳した刀をへし折る勢いで、両刃を叩き付けた。
「果穂……!お前にとっての正義を、お前の目指すヒーローの在り方を……お前自身が裏切るな……!」
「うるさいっ!嫌いです……あたしをおかしくさせることばっかり言うチェイスさんは、大嫌いですっ……!」
どうしてだろうか。
ゼインの敵となったチェイスへ、好感を抱く筈がないのに。
明確な拒絶を口に出した時、胸に見えない傷が刻まれた感覚があったのは。
「ぐっ……!」
ゼインカードを使った技は、原典のライダーよりも上。
刀の脅威的な強度故か、破壊は免れたが刀身の発するエネルギーが容赦なく痛め付ける。
ボディスーツを火花が散り、僅かにでも怯めばあっという間。
防御を崩され、橙色の刃が胴体を疾走。
「がっ!?」
短い苦悶の声と共に斬り飛ばされ、後方へと転がった。
地面へ落ちた刀が、一際甲高い金属音を発する。
互いの聴覚センサーが拾う中、先に動きを見せたのは果穂。
カード効果が切れ、無双セイバーと大橙丸も消え去るが問題無い。
持ち得る手札は豊富、新たな一枚を抜き取る。
「倒さないと…あたしが絶対に……」
自分へ言い聞かせながら、確実に倒す為の下準備を行う。
ガントレットに隠れた生身の手の甲、刻まれた令呪が一画消失。
影響は即座に表れ、右手のカードが数段階上の力を発揮可能に。
本来であれば最終フォームの力を自由に行使可能だが、殺し合いではそうもいかない。
令呪を切らねば使用不能という、ゼイン本人に言わせれば邪魔な制限。
悪意を裁くのに不要極まりない枷を、数分のみ取り外す。
「いなくなって、ください……ゼインさんの為に……!」
チェイスが消えれば、異様にざわめく心も落ち着きを取り戻す筈。
幸せの羽が齎す喜びを感じながら、ゼインに協力し正しさを貫ける。
であれば躊躇を抱く余地はない、カードを読み砕こうとし、
62
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:46:30 ID:.I21kXzM0
――『君を助けようとするチェイス達を殺すのは、君自身が本当に納得して出した答えなのか』
手が止まる。
決着を付けるのに必要な動作は、たった一つだけなのに。
それ以上動かない、動かそうと思っても無駄。
問い掛けが透明な鎖となって、右腕に絡み付く。
――『あなたの心は、本当は何て言ってるの?』
結局答えを返せなかった問いかけが、今になって聞こえて来た。
どうしてそんな、分かり切った事を聞くのか。
最初からずっと自分の口で言ってるだろうに。
幸せの羽をくれたゼイン、彼の正義の為だけに戦うのが本心。
――『俺が人を愛し、守れれば、それでいい』
だけどふと、己自身への疑問が浮かび上がる。
ゼインの正義のみが正しくて、他の正義は悪。
百人が間違いと言っても、ゼインが悪と断じればその百人を殺す。
――『果穂はみんなを笑顔にする、本当のヒーローになったんだ』
そんな自分で、みんなを笑顔になんて出来るのか。
他人の持つ正義を、たった一つの正義で否定し。
ただ言われるがままに間違いだと決めつけ、命まで奪う。
こんなものが、自分のなりたかったヒーローか。
自分が目指したアイドルの姿と、胸を張って言えるのか。
63
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:47:30 ID:.I21kXzM0
ガシャリと、硬い物が地面に落ちる音が聞こえた。
他でもない、果穂自身がゼインドライバーを外し変身解除。
生身を晒して、俯き立ち尽くすのも一瞬。
下着が丸見えになるのもお構いなしに、上着を捲り上げた。
「果穂――」
「来ないでくださいっ……!」
ダメージを伝える内部機能の音声を無視し、チェイスが立ち上がる。
だが近付こうとするのを、一際大きな声で拒絶。
動きを止めた、仮面越しにチェイスは見た。
小学生とは思えない程、憔悴し切った顔の果穂が胸へ手を伸ばすのを。
「いっ、ぎっ…!……っ」
自身の胸元、人体の肌色とは異なる金色。
植え付けられた幸せの羽、フェザーサーキットを両手で掴み。
まるで異物を取り除くように、渾身の力を籠めた。
チェイスが果穂相手に振るった刀、それこそが今の状況を作り出したと言って良い。
ゼインカードを元にパラドが生成を行った得物の名は、鳴刀・音叉剣。
音角と呼ばれる音叉型のアイテムへ呪力を流し、刀に変えた仮面ライダー響鬼の装備の一つ。
元々音叉とは特殊な音波を発生させ、所持者を鬼に変身させる道具。
響鬼の用いる装備である以上、鬼の力が音叉へ宿っていても何らおかしくはない。
そして鬼の最も特徴的な能力と言えば、魔化魍の弱点たる清めの音だ。
魔化魍が体内に蓄えた邪気を祓い、爆散へ追い込み大自然の一部へ還すように。
鎧武の双剣と打ち合う度に音叉剣が清めの音を奏で、邪気に囚われた心へ揺さぶりを掛けた。
この場合の邪気とは無論、フェザーサーキットが齎す偽りの幸せ。
音撃棒烈火に比べると効果で劣るものの、影響が如実に表れたのは言うまでもない。
幸せを齎したゼインへの絶対的信頼へ、僅かな綻びを生み出し。
畳み掛けるように投げかけたチェイスの言葉が、フェザーサーキットの支配を妨害。
膨らみ続けた自分自身への疑問は、やがて無視できない大きさとなり爆発。
それらを経た結果が、今繰り広げられる光景だった。
64
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:48:10 ID:.I21kXzM0
「ぎっ、あぐ……っああああああああああっ!!!」
声を枯らして尚も足りない絶叫。
へばり付いたフェザーサーキットは今や、肉体の一部も同然。
無理やり引き剥がそうとすれば、相応の激痛が襲う。
痛ましい姿へ駆け寄るチェイスを、しかし果穂が近付けさせない。
「だめです……っ!!」
喉を震わせた叫びは、チェイスに向けてだけではない。
自分の中から聞こえる、果穂自身の声に対してもだ。
もうやめよう、痛い思いをする必要なんてどこにもないよ。
幸せを捨てる理由が、一体どこにあるの。
「あた、し、は……」
迷わず頷けば、きっと楽になれるだろう。
泣きたい程の痛みは消えて、幸せな気持ちに戻れる。
生きてきた中で間違いなく一番の、この先絶対に手に入らない。
唯一無二の幸せを捨てる方が、どうかしている。
「あたしは……っ」
だけど、気付いてしまったのだ。
ゼインがくれたのは、大勢を傷付ける幸せだと。
自分が今までに沢山の人からもらった幸せを、否定するものだと。
あの日、公園でプロデューサーと初めて会った時。
アイドルの世界に足を踏み入れ、送って来た刺激的な日々。
明るいだけじゃない、表舞台からは見えない悔しさと涙が溢れていて。
それでも、自分が選んだ道は間違いじゃないと。
胸を張って言える、ヒーローのようなアイドルの在り方を見付けられたから。
65
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:48:57 ID:.I21kXzM0
「あたしは……っ!みんなを傷付けて……幸せになんかなりたくないです……!!」
血を吐くように、羽蛾齎す幸せを断固受け入れまいとする。
心を満たそうと侵す絶頂感と、フェザーサーキットを引き剥がすのに生じる激痛。
両者がいっぺんに襲い掛かって、頭がどうにかなりそうだけど。
これ以上大切な人達を傷付けたくない一心で、狂おしい程の苦難に抗う。
「果穂……っ」
苦しむ少女へ駆け寄らんとするチェイスだが、また別の声が意識を奪う。
どうにか受け身を取る少年と、膝を付き荒い呼吸を繰り返す魔法少女。
ゼインを引き受けた彼らは体中に傷を作り、消耗が顔にも表れている。
一方で仲間達を傷付けたライダーは、未だ存在感を保ち続けていた。
「無意味な抵抗はよしなさい。あなた方に一欠片でも善意が残っているなら、大人しく命を差し出すべきとは思いませんか?」
「悪いが……聞けない提案だ……」
「自分を正義の味方だなんて、言える資格はないけど……あなたに殺されてあげる程、落ちぶれてないわ……!」
疲労を押し殺し、立ち上がって得物を構え直す。
敵の強さが本物だろうと、戦意を吹き消すにはまるで足りない。
心をへし折るには程遠く、何度だって挑む気概は健在。
心強いくとも劣勢は否定できない状況へ、チェイスの焦りもじわじわと肥大化。
どうにかしなければならないと分かるのに、最適解は姿を見せない。
「俺は……」
余裕が剥がれ落ちるのを見計らい、憎たらしく顔を出す無力感。
人間を守る仮面ライダーでありながら、零れ落ちてばかり。
腕を失い腹を掻っ捌かれた者が、崩壊が進む体で自分を送り出した者が、善意の名の元に命を奪われた者が。
失われた命が重しとなって圧し掛かり――ソレを見付けた。
66
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:50:08 ID:.I21kXzM0
「っ!」
思わず手に取り見やるのは、記憶に保存されたのと違わぬ姿の戦士。
果穂が落としたゼインカードは偶然にも、チェイスが深く知るライダーの力が封じられていた。
令呪の効果が継続中故か、描かれたのは戦士にとっての最終形態。
忘れ得ぬ戦友のカードを目にし、弾き出される一つの打開策。
頭部の各種センサーがカードのデータを読み取り、自身が扱う為の機能として再構築。
正直に言って、成功する確率はゼロに等しい。
自分はパラドと違ってバグスターではなく、ゼインカードから装備の生成は不可能。
奇跡頼りも同然の、悪足掻きですらない奇行と見なされても当然。
だというのに、強くカードを握り締めた理由は。
それ程に余裕を失っているからか。
或いは、己の声に必ずや応えてくれる確信があったのか。
もしもここいるのが、チェイスと名付けられる前の彼だったら。
プロトドライブ時代の、ロイミュード000なら。
若しくは番人にして死神、魔進チェイサーとしてのチェイスであれば。
不可能で終わり、無常な現実が訪れただろう。
再起を願う詩島霧子の想いに応え、仮面ライダーチェイサーに変身を果たし。
人間の仲間達から、愛の力を教えられ。
守りたい者を守る為に、自爆を試み消滅し。
殺し合いにて、一人の少女と出会った。
上記全てを経て、仮面ライダーの使命感を燃え上がらせたチェイスだからこそ。
人のように感情を見せるのが不得意であれど、無機質な機械にはない心を持つが故に。
想いの強さは最大限に高まり、有り得ぬ現象を実現させる。
人間かどうかは関係無い、心意システムはロイミュードにも微笑んだ。
そう示すかのように、ゼインカードは全く異なる形状へ生まれ変わる。
「これは……」
掌に乗るソレが何かを、知らない訳がない。
考えが上手くいった驚きは一瞬に留め、強く握り締める。
ここにはいない、二度と会えない筈の仲間達の存在を感じ取り。
背を押してくれるように、『シフトトライドロン』がエンジン音を響かせた。
67
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:51:00 ID:.I21kXzM0
「進ノ介……クリム……。俺に、力を貸してくれ……!」
『ADVANCE SYSTEM』
『CHASER TRIDORON』
ブレイクガンナーへ装填し、発する電子音声は全く聞き覚えがないもの。
だが信頼する男達の力なれば、不安や危惧は皆無。
タイヤ状のエネルギーが複数重なり、チェイサーの装甲と一体化。
収束する虹色の光は攻撃に非ず、心強い戦友達が力を貸してくれる証拠。
シルバーのボディスーツに覆い被さる、真紅の装甲。
車のパーツを分解し、全身各部へ搭載させたかのよう。
『本来』は左肩部分にあるタイヤは、右肩部分に装着。
元のスマートさは損なわず、より性能を高めた形態をここに実現。
名付けるならば、仮面ライダートライドロンチェイサー。
チェイサーバイラルコアの後発品であるシフトカーのデータロードが可能な、ブレイクガンナーの拡張性。
元々プロトドライブに変身していたのもあり、仮面ライダードライブの固有形態へ変身出来るチェイス自身のボディ。
それらに加え、正義の心へ応えたシフトカーの意思。
正史では存在しなかった仮面ライダーチェイサーの新たな可能性を、この瞬間に掴み取った。
「っ!?馬鹿な……チェイサーにあのような形態があるなど……!」
未知の姿へ変身を遂げたチェイサーに気付いたのだろう、ゼインからは驚愕の声が飛ぶ。
しかし律儀に説明を行う程、親しくなった覚えはない。
優先すべきは、苦境に立たされた仲間達。
新たな姿で何が出来るかは己が目で見て来たから、戸惑いという枷を生み出さない。
シフトトライドロン右の起動スイッチを押し、固有能力を発動。
68
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:52:02 ID:.I21kXzM0
『COME ON!HUNTER!DOCTOR!BRAVER!』
『タイヤ!カキマゼール!ピーポーセーバー!』
ドライブドライバーではなく、ブレイクガンナーに装填した為か。
重低音の電子音声に呼応し、三つのタイヤが出現。
左肩部分へ装着後、一つへと合成。
これぞタイプトライドロン最大にして唯一無二の能力。
相性の良い三つのタイヤを組み合わせ、シフトカーの機能を最大以上に引き出す。
緊急車両タイプのシフトカー三台の力を、早速使わせてもらう。
円形の柵をゼインの頭上目掛け投擲、巨大化し檻へと変形。
パトカー型シフトカー、ジャスティスハンターでゼインの動きを封じる間に残る二台も行動開始。
「きゃっ!?」
「む……」
伸縮自在の梯子アームを伸ばし、二人の仲間を確保。
素っ頓狂な声を出す小夜とジークを、ゼインから引き離し自分の傍へ。
消防車型シフトカー、ファイヤーブレイバーが救助を行う間にも最後の一台が自身の役目を果たす。
即ち、果穂を苦しめるフェザーサーキットからの解放だ。
「うああああっ!?」
胸部へ複数本の光線が放たれ、果穂も声を上げずにはいられない。
痛みが走ったと思えば、また違った感覚が体を駆け巡る。
両目がチカチカする感覚へ、堪らず膝から崩れ落ち、
69
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:52:45 ID:.I21kXzM0
「果穂……!」
地面へのダイブ寸前で、抱き止められた。
「チェイスさん……え……?あたし……」
朧げな視界が徐々に鮮明さを取り戻し、見えたのは赤い瞳の仮面。
初めて見る姿だけど、自分を何度も助けてくれたヒーローだと分かり。
ふと、視線を移せば今の今まであった物が見当たらない。
幸せを齎す金の羽は無く、瞳に映るのは元の肌色。
まるで最初から存在しなかったように、果穂を苦しめた原因は綺麗さっぱり消失。
救急車型シフトカー、マッドドクターによるフェザーサーキット切除が無事完了。
聴診器モチーフの装備を複数使い、果穂を蝕む羽を取り除いた。
更に麻酔や治療も並行し行い、痛みを長続きさせない。
タイプトライドロンになり通常時以上に機能を発揮出来た為、患者への負担も大幅に非常に少ない。
「あ……」
またしても彼に助けられたと理解し、自分が何をやったかが重く圧し掛かる。
殺し合いをさせる羂索達を、ヒーローとして必ず止める。
一番最初に抱いた決意は何処へやら、ゼインに言われるがまま出会う者達を攻撃して来た。
自分を止めようとした人達に、殺すつもりで襲った。
「ごめん、なさ……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
双眸から流れ落ちた涙が頬を濡らす。
快活な笑みの似合う表情は今や、後悔と罪悪感の泣き顔だった。
70
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:53:49 ID:.I21kXzM0
「ごめんなさい……!あたし…!みんなに、ひどいことして……!」
「果穂……」
「約束…っしたのに……!チェイスさんのことも、う、裏切っ、て…!ごめんなさい……!」
チェイスはただの一度も、自分を攻撃しなかった。
傷付けようとはせず、助ける為に手を伸ばし続けた。
忘れてしまったヒーローの在り方を、思い出せようとしてくれた。
なのに一体、自分は何をやっていたのか。
傍で支えるという約束を破り、何度も傷付けた。
心から信じられて、カッコいいと思える彼を拒絶し殺そうとまでした。
助けてもらった嬉しさ以上に、罪の意識で胸を苛む。
「果穂、俺はお前が裏切ったなどと一度も思っていない」
だというのに、自分を腕の中に抱きしめながら。
怒りや失望なんてまるで宿らない、自分の知るままの声で。
チェイスは強く言い切った。
「ゼインに囚われ苦しみながらも、自分自身と戦ってヒーローの在り方を取り戻したお前は俺達の仲間だ。それは変わらない」
「チェイスさん……」
ゆっくりと手が伸び、頭へ置かれる。
少しぎこちないけれど、そこに籠められた想いが分からない筈がなく。
「よく、頑張ったな」
「……っ!」
散々傷付けた自分は、受け取ったら駄目なのに。
掛けられた言葉はどんな攻撃や罵倒よりも、深く心に響き。
何処も痛くない、温かさを齎してくれたけど。
もっと沢山の涙が溢れ、後はもう声にならない。
頬を濡らす雫に籠められたのが、罪悪感以外だと自分でも分かった。
71
:
正義Ⅴ:雨のち、マイヒーロー
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:54:21 ID:.I21kXzM0
「そうか…あなたと彼女自身で、救ったんだな」
「ああ。果穂の強さと、お前達が共に戦ってくれたからだ。感謝する」
マッドドクターの能力で回復剤を散布し、二人の仲間も傷を癒す最中だ。
安堵の笑みを浮かべたジークの隣では、小夜も同様に頬を緩める。
だがふと、頬を赤くしコホンとわざとらしく咳き込む。
「と、ところで。女の子がずっと肌を見せるのは、良くないんじゃないかしら」
「ふぇ?……ひゃあっ!?」
涙の痕が残る顔で首を傾げるも、何を指してるのか察し。
フェザーサーキット切除の際に上着を捲り上げ、今もそのまま。
お気に入りの私服の下には、スポーツブラ以外何もない。
小学生とはいえ少女、年上の異性の前で下着を見せるのには羞恥が勝る。
慌てて隠す果穂に、チェイスとジークは何となく気まずさを覚えた。
「フンッ!」
ほのぼのとした空気は、檻を砕く音と共に崩れ去る。
己を閉じ込める牢など認めない、強化エネルギーを籠めた拳で粉砕。
破片を踏みながら、ゼインが排除すべき悪意を睨む。
「ふむ……念の為に聞いておきましょうか。果穂、引き続き私に協力する意思がありますか?」
問われた果穂は緊張に身を震わせるも、ゼインから目は逸らさない。
彼の正義によって、傷付けられた人は少なくない。
悪と思う者も当然いるだろうと、理解した上で答えを返す。
「……ごめんなさい。ゼインさんの言う正義が、譲れないものなんだってあたしにも分かります。ゼインさんにとって大切な正義を、駄目だってあたしには言えません。
でも!ゼインが自分の正義で、色んな人を傷付けるなら……」
「分かりました、もう結構ですよ。あなたも私の資格者として不十分でしたね」
フェザーサーキットが外れた時点で予想出来た展開だ。
特に惜しいといった素振りも見せず、排除対象を一人追加。
対話の余地を一切見せない物言いへ目を伏せる果穂を、背に庇うは真紅の戦士。
「複製品とはいえ私のカードを利用した罪、あなた自身の命で償ってもらいますよ。チェイス」
「俺にとっての償いは、命を賭して人間達を守ることだ。お前の正義の為に、死ぬ気はない」
再び対峙したチェイスを前に、ゼインは無機質な雰囲気のまま殺意を触れ上がらせた。
相容れない両者の言葉が、導火線に火を点ける。
72
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:55:54 ID:.I21kXzM0
◆
拳を握りファイティングポーズを取るゼインは、静かに相手に出方を窺う。
タイプトライドロンのスペックは、仮面ライダードライブのデータとして把握済。
多少は手を焼くだろうが、自身の能力を上回るには至らない。
まして此度はチェイサーによる、不格好な再現態。
一歩踏み出す体勢を取った相手へ、カウンターを取るべく予測を組み立て、
「ぬぐっ!?」
胸部へ叩き込まれた一撃に、呆気なく崩された。
リミッター解除機能も備えた装甲越しに、生身まで伝わる衝撃。
ダメージを計算し、戦闘続行可能と瞬時に下す。
なれば二撃目までは許さぬと、真正面の敵を視界に閉じ込める。
が、真紅のライダーは影も形も見当たらない。
(後ろか!)
後方の気配を察知し、すかさず迎撃へ。
動力ケーブルの補強により、あらゆる方向からの襲撃にも対処は容易い。
ガントレットが打撃の破壊力を引き上げ、裏拳を放つ。
小賢しい真似に出た相手を、殴り潰す感触はない。
宙へ無数に漂う空気を切り裂き、ヒュオンと音を立てたに過ぎず。
何処へ行ったと慌てるまでもなく、別方向からの敵意で位置を特定。
拳を打ち込まんとし、だが今度はチェイサーが一手早い。
獲物を仕留める狩人の如き、脚部が音を置き去りに振るわれた。
「ヌゥ……!」
片腕を翳しゼインは防御、腕部装甲へ走る電気のような衝撃。
腕と脚で互いに押し込まんとし、不意にゼインへ掛かる力が消えた。
自ら引いたチェイサー目掛け、突き進む悪意を砕く鉄拳。
馬鹿正直に胴体で受け止める趣味は持ち合わせず、腕部を添えて受け流す。
強化合金を用いた多重構造装甲だ、ゼインと言えども破壊は簡単ではない。
今度は自分の番とばかりに、チェイサーが拳を連続し放った。
圧縮エネルギーを利用し、命中と同時に打撃力を高める。
一発二発と防ぎ、或いは躱す傍から次の拳が次々飛来。
手数と威力に優れていようと、ゼインならば完璧な対処を行える。
73
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:56:46 ID:.I21kXzM0
「ぐ、ぉ……!」
では一体、何が起きているのか。
ゼインの防御をすり抜け、仮面越しの頬を捉える。
元々肉弾戦に優れたチェイサーが、新たな形態へ進化し放ったのだ。
頭部を揺らし、視界の安定性を奪う。
これはマズいと察するのも束の間、回し蹴りが炸裂し堪らず体勢が崩された。
(何が起きている!?何故ここまでの力を……)
咄嗟に防御の構えを取りながらも、ゼインの中では疑問が尽きない。
シフトトライドロンを使い、強化変身を行ったのだとしても。
ここまで能力が引き上げられるのは、流石に予想外。
ドライブドライバーを用いず、変身者は泊進ノ介でもないロイミュード。
ならば何故だと、保存済データから正解を模索し。
「そういうことですか……ロイミュードであるが故に……!」
確かにトライドロンチェイサーは、本来のタイプトライドロンとは違う。
進ノ介とクリム、死の淵から蘇った相棒の絆が齎す奇跡の形態。
人機一体による強さを、持ち合わせていない。
しかし仮面ライダーチェイサーの強化形態だからこそ、進ノ介にはない強みも存在する。
進ノ介は唯一無二と言っても過言ではない、ドライブの資格者。
ドライブドライバーの性能を最大限に引き出せるが、肉体はあくまで人間。
強化の度合いが激し過ぎれば、当然負担も大きい。
例を上げればタイプフォーミュラだろう。
超重加速を物ともしないスピードにより、進ノ介自身もダメージを受けた。
つまりドライブに変身中、進ノ介への肉体的負担を考慮し一定の制限を必要となる。
一方でチェイスは機械生命体ロイミュード。
身体機能や耐久力も、人間の限界を優に超える。
ゼインの計算が狂った原因が、そこにあった。
進ノ介では負担の大きかったろう機能も、ロイミュード故にクリア。
制限を掛けることなく、能力を発揮。
基本スペックを含めた出力全般が、ドライブのタイプトライドロンを上回ったのだ。
74
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:57:41 ID:.I21kXzM0
かといって、ゼインに打つ手なしと断じるのは気が早過ぎる。
ライダーの戦闘はスペック差も影響するが、それだけが全てに非ず。
数値上の強さをでかでかと張り出し、どっちが上でどっちが下か。
などと表面上のデータだけで測るのは、ナンセンスの極み。
自らの強みを活かすべく、抜刀を思わせる勢いでカードを引き抜く。
描かれたライダーは、ゼインに最初から支給されたカードと別物。
アウトサイダーズとの戦いでも存在こそしたが、結局使わず終いだった。
何の因果か、浄水場を訪れるまでの間にドロップアイテムとして入手。
チェイサー相手に力を振るう機会が訪れた。
<カイザ!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
裁断と引き換えに、ライダーの専用装備が出現。
χ(カイ)の形状をし、銃身やグリップを黄色のガードパーツで覆った武器。
スマートブレイン製のベルトで変身する戦士、仮面ライダーカイザのカイザブレイガンを右手に持つ。
搭載済のスキャン装置とマーカーが、精密射撃能力を向上。
トリガーを引き、濃縮フォトンブラッドを発射。
オルフェノクを灰に変える高熱を弾に変え、悪意へ銃殺刑を言い渡す。
『GUN』
対するチェイサーも対抗すべく、ブレイクガンナーを遠距離形態にチェンジ。
シフトトライドロンを装填中なのも影響し、より高純度のエネルギー弾を生成。
無慈悲な判決へ、銃口が異を唱える。
襲い来る光弾を時に躱し、時に腕部装甲で叩き落とす。
更には敵が放った弾を、自身のエネルギー弾で貫き相殺。
如何な凄腕ガンマンでも不可能に等しい芸当を、やってのけるのが仮面ライダー。
まして高性能の各装置に加え、本人の技量も高いとくれば当然だ。
カイザブレイガンの銃撃へ対処しつつ、攻めに転じるはチェイサー。
装甲ブーツへ装着済のタイヤが高速回転。
走力を急激に引き上げ、ゼイン目掛け突進。
光弾がここぞとばかりに連射されるも、抜群の旋回力に掠めもしない。
と、カイザブレイガンの弾倉が空になり乾いた音を立てた。
再装填を終える数秒は、チェイサー相手にあってはならない隙と化す。
75
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:58:22 ID:.I21kXzM0
「……っ!」
爆発的な加速で以て、ゼインの懐へ潜り込む。
添えた銃口から吐き出されたエネルギー弾が、純白の装甲を噛み削る。
火花を散らし後退するゼインを、このまま逃がす気はない。
タイヤの回転数を再度速め、寸前で視界へ飛び込む黄色い光。
機械の体に感じる悪寒を気の迷いと切り捨てず、上体を知らし回避。
判断は正しい、突っ込んで入れば逆に一撃もらっていた。
カイザブレイガンのグリップ下より突き出た、フォトンブラッドの刀身。
切断力は皆無だが、常時放射する熱は対象を焼き斬る。
リーチの差で優位に立ったゼインが反撃に移行。
ガントレットの補助エンジンに不調無し、逆手持ちの得物を振るうのに支障は生じない。
カイザの変身者たる、草加雅人に引けを取らないばかりか凌駕し兼ねない。
近付けさせまいと振るわれるブレードを躱し、チェイサーが三度装甲ブーツのタイヤを回転。
距離を取った標的を、あえて見逃すつもりはない。
レバー部分を引き照準を合わせ、先程とは別種の効果の光弾を撃つ。
網目状の光波で相手を拘束し、瞬間的な加速を乗せた刃で切り裂く技だ。
トリガーに指を掛け、撃ち込めば片が付く。
『COME ON!FLARE!SPIKE!SHADOW!』
『タイヤ!カキマゼール!アタック1.2.3!』
されどチェイサーもまた、距離を離しつつ次なる攻撃の準備は完了していた。
カイザブレイガンの光弾が命中し、捕えられたのは分身。
複数体の分身を生み出しゼインを包囲、棘状の弾丸を一斉に撃ち出す。
ブレードを巧みに操り斬り落とすも、装甲越しに襲う熱が対処を阻む。
棘に含まれた火炎はあっという間にゼインを包み込み、やがて爆発。
我が身をマントで守りながら、煙を払い除ける間にチェイサーは眼前へ到達。
76
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 20:59:05 ID:.I21kXzM0
「目晦ましとは小賢しい!」
<ジャスティスパニッシュメント!>
カイザブレイガンを投げ捨て、プログライズキーからエネルギーを引き出す。
自ら近付いた事を後悔させんと拳を放つが、仕留めた感触はない。
手裏剣型のタイヤと火炎を纏った拳、両方と激突し弾かれ合う。
ゼインカードを使わせるまで待たない。
右肩部で合成したタイヤが三つに分かれ、踊り狂うようにゼインへ突撃。
マックスフレア、ファンキースパイク、ミッドナイトシャドー。
チェイサーの意志で操り、一つ弾けば別方向から残る二つを叩き付ける。
やがて打ち漏らした打撃がゼインの装甲を削り、たたらを踏ませた。
「この程度……!」
再び合成させたタイヤを投擲。
進化態に至ったロイミュードでも爆散は免れない威力だが、敵も一筋縄ではいかない。
両腕の交差で即席の盾を作り、勢いに押し負けるもダメージは最小限に。
<ZO!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
ゼインカードの裁断によって、記録されたライダーの能力を自身に付与。
外見に変化は見られず、武器の類も現れないが効果は発揮された。
「トォッ!」
バッタの遺伝子に由来する跳躍力で、遥か頭上に移動。
ネオ生命体と互角の戦闘力を持つ、仮面ライダーZOが秘めた大自然のエネルギーを右脚に収束。
急降下の勢いも味方に付け、神罰さながらに地上の罪人へ裁きを下す。
77
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:00:23 ID:.I21kXzM0
「お前達の力を借りるぞ」
『EXACTLY!』
傲慢な救世主の判決は、力で以て否定するまでのこと。
戦友の声に、トレーラー砲が軽快な電子音声で応える。
更にもう一台、シフトデッドヒートもまたエンジン音を激しく鳴らす。
進ノ介の仲間が自分達を頼りにしたとあらば、聞き入れない理由はない。
『デッドヒート砲!』
『Fire!All Engines!』
『ヒッサツ!FULL THROTTLE!』
コンテナ部分へ装填するは、二台のシフトカー。
シフトデッドヒートとシフトトライドロンを収納し、エネルギー充填率がこれまでの最大値をも超える。
『フルフルデッドヒートビッグ大砲!』
天より迫り来る標的を撃ち落とす魔弾が放たれた。
爆熱を纏ったその姿は、ドライブ専用のスーパービークル。
トライドロンを象ったエネルギー弾と、ゼインの蹴り技が宙で激突。
片やネオ生命体と死闘を繰り広げた、超自然の申し子の力。
片や超進化態となった、フリーズロイミュードをも下す弾。
勝利を譲る気はどちらにも存在せず、いらぬ油断を持ち込み隙を見せもしない。
互いに引けを取らぬ威力、しかし天秤が傾きを見せるはゼインか。
ZOの技でありながらも、原典の戦士を超える力を授けるのがゼインカード。
エネルギー弾が徐々に押し返され、真紅の車体が崩壊の兆しを見せる。
「くっ……!」
「今度こそ終わらせてあげましょう!」
驕りや慢心ではなく、自身の勝利へ確信を抱く。
トライドロンを蹴散らし、撃った本人を貫くのは時間の問題。
唯一無二の善意が悪意を倒す、望みの展開を引き寄せるまで残り数秒。
78
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:00:54 ID:.I21kXzM0
爆速で宙を泳ぎ、突っ込んで来るモノさえなければ実現しただろう。
「――あああああああああああああっ!?」
「なにっ!?」
決着まであと後僅かのタイミングで、予想外の妨害が発生。
激突必至の相手が何者かは、高機能な視覚センサーで即座に判明。
マゼンタ色のバックルを見れば一目瞭然。
何故今、自分の元へやって来たかの理由は捨て置く。
「ごえっ!?」
顔面を殴り付け叩き落とし、自身へ余計な傷は負わせない。
衝突には至らない、だが犯した失敗へ珍しく苛立ちが湧き出す。
ほんの一瞬とはいえ、よりにもよって今。
鎬を削る敵から意識を外してしまい、何を意味するかは嫌でも分かる。
「ぐおおおおおおおっ!?」
天秤の重しは外され、置く先は相手の方へ移った。
拮抗は完全に崩れ去り、貫く筈が押し返される。
自身の勢いが削がれるのと反対に、エネルギー弾は輝きを増していく。
放出される余波だけでも相当な熱を浴びせられ、ダメージが蓄積。
最早、勝利の女神が誰に微笑んだかはいうまでもない。
真紅の光に撃ち抜かれ落ちる姿は、裁きを下す執行人と正反対。
天罰を与えられた、傲慢な罪人のようだった。
79
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:01:41 ID:.I21kXzM0
○
「何が起きた?」
ゼインへ打ち勝ったチェイスが真っ先に感じたのは達成感。
ではなく、不可解な形で乱入した存在への疑問。
自身の勝利をアシストする形となったが、望んでやった訳ではあるまい。
地面へ転がる者を見やる寸前で、別方向から複数の気配を察知。
そちらへ警戒の必要はない、仲間の姿を見間違えはしなかった。
「おーい!みんなー!」
「マゼンタ!?…良かった、そっちも無事だったのね」
千佳を抱きかかえ、飛行し戻って来たはるか。
起動鍵を解除し、ライドチェイサーを駆るキリト。
乱入者の元へ向かった三人に、小夜も安堵で胸を撫で下ろす。
見れば向こうも自分達が全員生きてると分かり、笑みが零れていた。
「えっ、果穂ちゃん?」
はるかに降ろしてもらった千佳が、気付くや驚き駆け寄る。
自分が攫われた時、果穂はゼインの側に付いてた筈。
だけど今目の前で小夜に介抱される彼女は、最後に見た時と雰囲気がまるで違う。
仲間達を襲う様子もまるでなく、涙の痕が見て取れた。
戻って来るまでの間に、何が起きたを凡そ察するのは難しくない。
「千佳ちゃん……あの、あたしは……」
再会の喜びを素直に表すには、果穂の中で罪悪感が強い。
直接手を出してないとはい言っても、敵だったのは事実。
説得を試みてくれた千佳想いを踏み躙り、排除を選んだのだ。
やった過去は消せず、誤魔化すつもりもない。
謝らなければと口を開き掛けた時、柔らかい感触があった。
「ち、千佳ちゃん?」
戸惑いの理由は、突然千佳が自分に抱き付いたから。
目を白黒させる果穂にお構いなしで、両腕の力を強める。
胸元へ埋めた顔を上げると、瞳からボロボロ涙が零れ頬が濡れていた。
80
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:03:06 ID:.I21kXzM0
「よかったぁ……果穂ちゃんが元に戻って、よかったよぉ……!」
「っ!」
「もし果穂ちゃんに何かあったらって、そう思うと恐く、て……!あたし、もう…友達が、し、死んじゃうなんてやだから……!」
絶対に助けようと誓ったのは嘘じゃない。
仲間達と、果穂自身を信じてなかったつもりじゃない。
でも、もしかしたらの可能性を捨て切れなかった。
最悪の展開も頭の片隅で燻ってただけに、友が戻って来てくれて涙が止まらない。
「あたし……ごめん、なさい……!みんなを沢山傷付けてて……!」
「果穂ちゃんはなんにも悪くないよ……!本当に、本当に助かって良かった……!」
涙ぐむ謝罪を途中で遮り、はるかも果穂を抱きしめる。
頬を濡らし無事を喜ぶ二人の姿へ、こんなに心配させてしまった申し訳なさと。
今でも変わらず自分を受け入れてくれる感謝で、瞳がまたもや潤んでしまう。
「ふざけやがって……クソッ……!」
仲間同士で向け合う信頼を噛み締める一方で、孤独に怨嗟を吐き出す者が一人。
露出過多のセーラー服を纏った灯悟は、見て分かるように無事と言い難い。
肉体の負傷『は』放っておいても問題ないが、蓄積されたストレスで無意識に顔が歪み出す。
千佳達が放った魔法で吹き飛んだ挙句、白い仮面ライダーに殴られ地面へ落下。
激突の衝撃でネオディケイドライバーも外れ、近くには見当たらない。
だが頭の中に浮かぶのは玩具の行方ではなく、自分に舐め腐った真似をした連中への報復。
弄び、絶望と憎悪に掻き乱される様を笑ってやる予定が台無し。
ああ本当に、人間という奴はとことんこの■■■■■を苛立たせてくれる。
アスファルトへ指がめり込む、常人では有り得ぬ力で立ち上がり、
81
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:03:47 ID:.I21kXzM0
その腹部へ白いドライバーが装着。
何を言うよりも早く、急激に体の自由を失った。
「やれやれ、またしても悪意に満ちた者を資格者に選ばざるを得ないとは」
沸点の低い嘲りとは似ても似つかない、落ち着いた口調で嘆きを零す。
青く染まった瞳は、肉体の主導権を灯悟が失った証。
ダメージで変身を強制解除されたのは灯悟がだけじゃない。
トレーラー砲に撃ち抜かれたゼインも同様、地面へ激突の衝撃でドライバーが外れたのだ。
尤も、高密度焼結体を用いた外装材の衝撃吸収力で破壊は回避成功。
となれば最優先は資格者の確保であり、灯悟が新たに選ばれた。
シビトの桜井侑斗を引き続き使う選択が、なかったとは言わない。
生憎ゼインドライバーが外れた時点で、侑斗の支配も解除。
自身を蘇らせた大道克己がとっくに脱落したと、理解する自我もなく。
『KAMEN RIDE DECADE!』
偶然すぐ傍へ転がっていた変身ツールを使い、ディケイドに変身。
こうなっては別の資格者を探す方が早く、灯悟が目を付けられたのだった。
「変身」
<ZEIN RISE>
<JUSTICE!JUDGEMENT!JAIL!ZEIN!>
<"Salvation of humankind.">
プログライズキーを起動し装填、必要な工程を踏み再び仮面ライダーゼインに変身。
纏った純白の装甲も、羽織るマントもこれまでと変わりない。
額の特殊センサーが正常に機能し、この場に集まった全員の収集データを分析。
弾き出す結論は、一人残らず己が裁くべき悪。
82
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:04:42 ID:.I21kXzM0
「こ、今度はあの人が変身しちゃった……」
引き攣った声の千佳に反応してか、二体のライダーの殺気が増幅。
手を組んではいない、お互いも排除対象に含まれる。
しかし自分以外の者を殺す目的だけは一致。
ゼインからすれば、シビトの侑斗はまだ利用価値がある器。
侑斗も先に目の付いたチェイス達を、仕留めるつもりらしい。
「ありがとう、だいぶ楽になった。これでもう一度戦える」
「マゼンタやチェイスさん達だけに、押し付けてられないものね」
回復の済んだジークと小夜が立ち上がり、戦線へ復帰。
二人に遅れは取らないように、キリト達も得物を構え直す。
唯一、チェイスを筆頭に庇われていたのは果穂。
仲間達の頼もしい背を見つめ、ややあって勢い良く顔を上げた。
「あたしも……一緒に戦わせてください!」
驚く一同の視線が集まるも、怯まず見つめ返す。
フェザーサーキットの支配を解かれたばかりの自分に、気を遣ってくれてるのは分かる。
仲間達の想いを感じ、嬉しくないとは言わない。
「チェイスさん達があたしを助けてくれたみたいに、今度はあたしも力になりたいんです!だから……」
「果穂」
最後まで言う前に、一言彼女の名前を呼ぶ。
視線を合わせた果穂の瞳に迷いはなく、ただほんの少しの不安が宿ると気付いた。
戦いへ挑む事へのではない、拒否されないかという思いがある。
自分達に任せて、休んでいたって責めはしない。
守らせてくれ、無茶はするな。
言わねばならないものが複数浮かび、そのどれもが間違いではない。
(だが違う)
自分はもう知っている。
彼女が抱く覚悟が、どれ程に強固で砕けないかを。
小宮果穂という人間の強さを、一番近くで見た。
果穂の決意に、他ならぬ救われた自分だからこそ。
掛ける言葉は一つしかない。
83
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:05:31 ID:.I21kXzM0
「一緒に戦ってくれ」
「――はいっ!」
込み上げる熱さは、彼が自分を認めてくれたから。
共に戦う仲間として、信じてくれる。
偽りの幸福へ堕ち、迷走を重ねた魂へ。
今再び、ヒーローであらんとする火が灯った。
『SET』
デザイアドライバーが告げる、装着音。
悪しき龍から自分を守ってくれたヒーローを、助けたいと強く願い。
一番初めに手にした決意の証。
誰に命令されたのでなく、今度は自分自身の意思で言う。
ヒーローとして、闘争へ飛び込む為の合言葉を。
「変身っ!」
『DUAL ON』
『BEAT&BOOST』
音楽を武器にする、ビートフォーム。
燃え上がる戦意に相応しい、爆発的な強化を齎すブーストフォーム。
異なるレイズバックルを反発させず、一つの力へと構築。
己のアイデンティティーを激しく揺さぶられた、本来の変身者。
鞍馬祢音が、手紙の中の王子様と共にもう一度立ち上がった姿。
仮面ライダーナーゴ・ビートブーストフォームに、変身を果たした。
『ATTACK RIDE ILUUTION』
「あなた方の悪意を、ここで断たせてもらいましょう」
複数体の分身を生み出す破壊者と、冷徹に処刑を告げる救世主。
敵は強い、数で勝っていても容易く勝てるとは思えない。
だが自分は一人じゃなく、仲間が傍にいてくれる。
その事実がある限り、果穂は負ける気がしなかった。
『READY FIGHT』
正義の敵は悪に非ず、異なる正義故。
二つの正義は同じ道を往かない、ならば戦う以外に選択肢はなく。
今宵最後のステージが始まる。
84
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:06:14 ID:.I21kXzM0
○
<G3-X!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
シビトではなく、生存中の参加者を資格者に選ぶ最大の利点。
令呪を切り、ゼインカードをランクアップ。
対アンノウン用に開発された特殊強化装甲服、G3-Xの装備を生成。
携行型のガトリング銃が轟音を鳴らし、無数の弾を吐き散らす。
未確認生命体の強固な皮膚も貫く威力は、ライダーの耐久性をも削り取る。
対するチェイサー達も、棒立ちになってはいられない。
装甲ブーツのタイヤを急回転し、傍らのナーゴも脚部のマフラーが火を噴く。
加速能力を得た両者が縦横無尽に駆け、我が身へ弾を当てさせない。
秒間30発の連射性能を走って避ける。
普通ならば有り得ない方法を実現に至らせるのが、今の二人だ。
時折弾を叩き落とし、凌ぎ続けるチェイサー相手に新たな武器を取り出す。
銃口の先端にグレネード弾を装填し、銃身には突撃銃を装着。
G3-Xが持つ装備の中で、最も威力に優れた必殺の形態。
原典の戦士以上に威力が強化されるのもあり、ちまちま避けた程度では無駄。
広範囲を爆撃に巻き込み、二人纏めて消し飛ばす。
だがトリガーに力を籠める寸前で、ゼインの元へ急接近。
自ら飛び込む愚かな獲物と、そう嘲笑うなら間違いだ。
「シッ!」
「なに……っ!?」
グレネードの発射より一手早く、銃身を蹴り上げる。
加速力を乗せた影響で、重火器だろうと小枝のように軽い。
ゼインの意思とは無関係に、銃口が睨む先は真上へ強制変更。
午後の青空目掛け撃たれた弾は、誰一人焼かず宙で爆発し終わった。
85
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:07:07 ID:.I21kXzM0
「いつまで無駄に足掻き、死を遠ざける気ですか?」
「お前を倒す、その時までだ……!」
破壊力に優れていても、こうまで近付かれては取り回しに不便。
ガトリング銃を投げ捨て、片手タイプの突撃銃を代わりに持つ。
左手には近接戦闘用のコンバットナイフを装備。
風のエルと呼ばれるアンノウンとも渡り合った刃を突き出せば、チェイサーが腕部で防御。
片方を防がれたとて、もう一つの手は開いたまま。
至近距離で顔面に狙いを付けるが、弾は発射されない。
銃身をブレイクガンナーで弾き、力任せに照準を外す。
再び狙いを付ける前に、逆にエネルギー弾を浴びせるべく撃つ。
しかしこちらも、ナイフで弾かれ銃口はゼインから数ミリズレる。
互いに同じタイミングで蹴りを放ち、胸部を叩かれ揃って後退。
距離を離されるも攻撃は躊躇せず、ゼインの右腕が跳ね上がった。
「せやあああああああっ!」
銃声は威勢の良い声に掻き消され、弾もチェイサーへの到達を阻まれた。
ジェット噴射もかくやの勢いで、急加速したナーゴがビートアックスを振るう。
音を掻き鳴らす以外に、斬撃用の武器としても機能する拡張装備だ。
銃弾を斬り落とし、勢いを殺さずに回転。
腰の捻りを加えた一撃をゼインは両手の武器で防ぐも、衝撃は殺し切れない。
火花を散らし後方へよろけ、追撃を受ける前に次の手を切る。
<ライジングイクサ!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
素晴らしき青空の会が誇る最大戦力、仮面ライダーライジングイクサのカードを選択。
銃剣一体型のマルチウェポン、イクサカリバーで突っ込んで来たナーゴを斬り付けた。
「させるか!」
仲間への攻撃をむざむざ許容する、薄情者になった覚えはない。
装甲ブーツの回転数を上げ、チェイサーが前に飛び出る。
振るわれた脚と、鮮血色の刀身がぶつかり合う。
特殊合金製の高耐久同士な為に破壊は起きず、弾かれたように退がる。
尤も、ゼインが大人しく逃がしはしない。
イクサカリバーを銃撃形態に変え、折り畳んだ刀身は弾倉へ早変わり。
加えてもう片方の手には別の銃、イクサライザーが出現。
ファンガイアの殺傷能力を高めた、銀弾と光弾を二丁同時に吐き出す。
今度はブレイクガンナーを撃つ隙を与えず、全身の装甲を喰い破る弾が襲い掛かった。
86
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:08:02 ID:.I21kXzM0
「あたしも!チェイスさんを傷付けさせませんっ!」
『TACTICAL THUNDER』
助けられた、だから今度は自分が助ける番だとナーゴがビートアックスを掻き鳴らす。
弦が奏でる音楽が雷に変わり、ゼインの頭上から降り注ぐ。
ブーストレイズバックルの影響も合わさり、威力・範囲共に強烈だ。
地面が弾け飛び、立ち込めた煙に白い救世主が覆われる。
「フンッ!」
視界を塞ぐ煙幕を、光刃の一閃が斬り払う。
再度イクサカリバーを剣に戻し跳躍、宙での一回転を加えた振り下ろしを見舞う。
上級のファンガイアの命を神の元へ送った、斬首刑への対抗策はあるか否か。
『COME ON!DUMP!MIXER!GRAVITY!』
『タイヤ!カキマゼール!コウジゲンバー!』
無論前者だ、ナーゴが雷を落とした時既にシフトトライドロンを操作。
安全第一の文字と安全ヘルメット型センサーが特徴の、合成タイヤがチェイサーの右肩に装着。
10tマークの重りを投擲するが、しゃらくさいと両断の憂き目に遭う。
といった予想を裏切り、異変が起きたのはゼインの方だ。
「ぬぅっ!?」
重りは単なる鈍器じゃあない、重力操作を行うローリングラビティ専用の武器だ。
追い打ちを掛けるように、大量のコンクリート弾を発射。
動きに制限を掛けられたゼインは命中を許し、急激に固まり始める。
しかし二重の拘束を受けて尚、右手を動かせるのは流石の高性能と言うべきか。
イクサライザーへエネルギーを急速充填、特大の光弾をチェイサーへ撃つ。
「おおおおおおおっ!!」
対するチェイサーは真正面からの迎撃を選択。
右手のドリルを構え突進、光弾を貫かんと一点集中の構えを取った。
87
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:08:37 ID:.I21kXzM0
『REVOLVE ON』
拮抗を崩すのは両者ではなく、チェイサーの仲間。
ドライバーを回転し、ナーゴの装甲が上下入れ替わる。
稼働フィギュアを思わせる、人体では有り得ない動きはさておき。
『TACTICAL FIRE』
「でえええええいっ!!」
腕部へ装着した噴射口から火炎が吐き出され、技の勢いを加速。
先程までは走力や蹴りの強化なら、今は腕力や武器を振るった際の威力を引き上げる。
掻き鳴らす音は瞬く間に火炎となって、ビートアックスが纏う。
振り抜かれた炎刃がドリルに加勢し、光弾をより削ぎ落とす。
「がぁっ!?」
光弾を掻き消し威力が半減しようと、二人で放てば無問題。
回転刃と炎刃、双方に押し負けたゼインが地へ転がる。
鬱陶しく忍び寄る敗北の二文字を否定するべく、カードへ手を伸ばす。
対峙するチェイサー達に怯む気配は見られず、望む所とばかりに戦意を昂らせた。
88
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:09:28 ID:.I21kXzM0
○
『FORM RIDE FOURZE FIRE STATES!』
ロケット状の頭部を持つ戦士、仮面ライダーフォーゼの持つ力をもう一段階解放。
スーツの色は灼熱の赤へ変わり、専用装備の銃も出現。
消化ホースモチーフだが撃ち出すのは水じゃなく、対象を焼き尽くす炎だ。
「意地の悪いことするわね……!」
火炎弾の連射を躱しながら、マジアアズールは思わず悪態を零す。
応戦で氷の刃を飛ばすが案の定、フォーゼへ触れさせてももらえず消失。
弾をすり抜け向かったとしても、高熱を帯びた右拳で粉砕の末路を辿った。
氷と炎、率直に言ってマジアアズールとは最悪の相性だ。
ならばと距離を詰め、直接胴体へ斬り掛かるも簡単には突破不可能。
銃を近距離に適したモードにし、火炎放射が近付けさせてくれない。
コスチューム諸共炙られる前に後退、その瞬間にフォーゼは一気に仕留めに掛かった。
『FINAL ATTACK RIDE FO・FO・FO FOURZE!』
身体に蓄積された火炎エネルギー全てを、銃内部の転換装置へ流し込む。
天ノ川学園高校で、騒動を引き起こしたゾディアーツを焼き払った砲撃だ。
魔法少女の肉体であっても、直撃を許せば火傷程度じゃ済まない。
「……」
発射までの猶予は僅かだというのに、マジアアズールへ焦りは見られない。
脳裏へ浮かび上がるは、自分の命を救った一人の男(にんじゃ)。
芸術品めいた美男(イケメン)ながら、顔の良さだけが全てに非ず。
己が長髪を名刀(メス)に変え繰り出す斬撃たるや、余りの速さに敵は文字通り凍り付く程。
魔力(インチキ)を用いぬ、磨き上げた技であるならば。
89
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:10:03 ID:.I21kXzM0
「ふぅ……っ!」
ステッキに刃を形成し直し、意識を研ぎ澄ます。
彼の領域へ簡単に手が届くと、自惚れる気は毛頭ない。
であるがこの先、数え切れぬほどの死闘を潜り抜けねばならぬと言うのなら。
もう一度会わねばならない、戦わねばならない者が待つのなら。
自我なき影法師一体に梃子摺ってなど、いられるものか。
未だ至らぬ身だとは自覚の上。
覇世川左虎に及ばないのは、当然の事実。
しかし忘れるなかれ。
呪術や聖文字をロクに使えぬ頃なれど、激怒戦騎相手に持ち堪えたように。
「――ハァッ!」
マジアアズールは、決して脆き少女ではない。
ただ前に突き進み剣を振るう。
複雑な動作を挟まないからこそ、集中力を切らさずに済んだ。
刃の形成以外に魔力は用いない、だがフォーゼに刻まれた刀傷は。
僅か一瞬のみ、刀身の震えが零度を遥かに下回る空気を生み出し凍り付かせた。
火炎を撒き散らす銃が、右腕共々凍結し動かせない。
反撃には絶好の機会と誰の目にも明らか。
しかしマジアアズールもまた、今の一撃を放った直後に疲労感が圧し掛かる。
復帰を待たずにフォーゼが改めて砲撃を行い、結局無駄に終わるのか。
「いや、これで終わらせる」
無慈悲な展開に否を唱えるは、竜殺しの心臓を宿す少年。
掌をフォーゼに置き、ジークの魔術回路が起動。
自身の手は銃口となり、放つ魔力は銀の弾丸。
零距離でなければ当てられない、ピーキーな性能。
フォーゼ、否、ディケイドの分身体の組成を解析完了。
本体ならばまだしも、耐久性が劣化した複製故に問題無し。
構成する魔力…ライダーカードへ秘められた、次元エネルギーの一端を変質・同調。
装填は済んだ、フォーゼが動きを見せるも既に遅い。
「理導/開通(シュトラセ/ゲーエン)!」
炎は肌を焼けず、拳は心臓を貫けない。
ガラスが割れるのに似た音を立て、片は付いた。
90
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:11:14 ID:.I21kXzM0
○
『FORM RIDE WIZARD WATER STYLE!』
青い宝石を填め込んだ戦士、ウォータースタイルのウィザードが剣を片手に斬り掛かる。
自我の宿らない分身に手加減は期待出来ず、完全に力尽きるまで斬り刻まれるだろう。
変身者がそもそもシビトなので、襲ったのが本体でも変わらないが。
「やああああっ!」
殺意のみを宿す刃の到達を阻む、ハートマークをあしらった槍。
最も使い慣れた得物を手に、マジアマゼンタが剣を弾いた。
間髪入れずに踏み込み突きを繰り出し、一撃決着へ持っていく。
残念ながら、そう容易く打ち破れる相手じゃない。
踏み込む勢いをあえて押し返さず、槍に刀身を軽く添える。
自らへ向かう力の矛先を、ほんの少しだけズラし受け流す。
よろけて生じた隙へ切っ先を差し込むが、簡単に倒されないのはマジアマゼンタも同じだ。
槍を引き戻し、身を捩りながら防御へ翳し事無きを得た。
防がれたウィザードはバックステップで距離を取り、カードを取り出す。
操真晴人が変身した指輪の魔法使いと違い、魔法の使用にはライダーカードを用いるのだ。
何らかの技を使われる前に、阻止せんとマジアマゼンタが槍を投擲。
だが相手は軽やかな動きで蹴りを放ち、難なく叩き落とす。
カードの装填も終え、バックル両サイドのレバーが押し込まれた。
『ATTACK RIDE LIQUID!』
槍を蹴られた時点でマジアマゼンタも疾走し、片手には黒槍ウォーパイク。
駆け抜け様に得物を振るい、斬った感触が穂先から伝わる。
「えっ!?な、なにこれ!?」
分身を切り裂き砕く、富良洲高校で浅倉と戦った時のとは違う。
まるで水を斬ったような手応えの無さは、正に感じた通り。
ウィザードの全身が液体に変化し、マジアマゼンタの攻撃を物ともしない。
斬っても貫いても傷一つ与えられず、液体は宙をスイスイと移動。
自身に絡み付くや実体化し、一瞬で捕らえられた。
91
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:11:42 ID:.I21kXzM0
「や…!この……!」
背後から両腕と両足を絡ませ、ガッチリと拘束。
異性に抱きしめられてる、と言うには羞恥など微塵もなく。
肌に添えられた刀身への、警戒と戦慄が大半を占める。
「マゼンタから離れてよっ!」
とはいえ此度は相手が悪かった。
友を援護すべく、すかさず千佳が魔法を発動。
『拘束』という形であれば、イノセンスは効果を最大限に発揮。
不可視の魔力に弾き飛ばされ、ウィザードが地面へ転がる。
マジアマゼンタへの不埒な行為へ、怒り心頭の千佳へ何ら思うものはなく。
『FINAL ATTACK RIDE WI・WI・WI WIZARD!』
水流を斬撃に変え、一撃で屠らんと技を発動。
四つの形態の中で特に魔力が豊富な、ウォータースタイルだ。
幼い少女の薄い皮など、中の骨や臓器共々まともに残らない。
「させないよ!」
友達に危機が迫ると理解し、マジアマゼンタが動かない筈がない。
両手に構える二本の得物。
桃色と黒色、形状の異なる槍を手に跳躍。
敵意の矛先がこちらへ向かうも好都合、二槍を思い切り振り下ろす。
「翔舞槍月閃!!」
元々は黒槍一本で放つ技を、此度はマジアマゼンタ本来の得物も加えた二本で行使。
籠められた魔力が生み出す衝撃波が、頭上より叩き付けられた。
水の刃も放つ前に潰され、分身共々木っ端微塵。
後には地面へ破壊の痕だけが残った。
92
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:13:17 ID:.I21kXzM0
○
『FORM RIDE KIVA GARURU FORM!』
左半身の上部と、コウモリを象った瞳。
双方を青色に染めた仮面ライダーキバ・ガルルフォームが睨むは、MSを纏った剣士。
異名通りの黒い装束は見えずとも、培った剣術が如何程かすぐに思い知るだろう。
と言っても、近接戦闘を得意とするのはキバも同じ。
ウルフェン族がメタモルフォーゼを果たした剣、ガルルセイバーが妖しく光る。
獲物を見付けた狼さながらの俊敏性を発揮し、キリトへ飛び掛かった。
振り下ろす剣をビームサーベルで防ぐ。
やはりと言うべきか、物理攻撃にも関わらず焼き切れない。
科学の域では測定不能の、魔族の力が宿る故か考える余裕は無し。
「っと……!」
押し返す前に敵自ら剣を引き、位置を変え襲来。
こちらも片手剣で弾くが、反撃に出るより早く三撃目が迫る。
ビームサーベルを操り防御、装甲の耐久性を不要に削らせない。
「滅茶苦茶な振り方の割には……!」
随分剣筋が鋭いと、装甲の下で引き攣り笑いを浮かべる。
型も何もない荒々しさへ全振りしてるように思わせ、急所を的確に狙う。
暴風雨の如き斬撃を時折すり抜け、斬り付けた剣は反対に防がれた。
面倒な手合いと実感を抱く間に、キバは攻撃の手段を変更。
自身の顔の前に剣を翳し、狼の頭部を模した鍔がキリトを射抜く。
「なん……っ!?」
湧き上がった嫌な予感は、決して気のせいじゃなかった。
狼の瞳が輝いたと思った次の瞬間、発せられるは猛々しい咆哮。
口内部の音波砲が衝撃を放ち、ダメージこそ薄いがその場に留まっていられない。
平均的な人間の重量を超える、ファンガイアだろうと吹き飛ばすのだ。
汎用機とはいえデュエルガンダムの装甲ですら、両足が地から浮き掛ける。
力を籠めどうにか踏み留まるも、キバは手早くドライバーにカードを読み込む。
高威力の技の出し所は、キリトに隙が生じた今を置いて他にない。
93
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:13:47 ID:.I21kXzM0
『FINAL ATTACK RIDE KI・KI・KI KIVA!』
ファンガイアを始め、魔族のみに許された力。
魔皇力が刀身に付与、柄を仮面の口部分に咥える。
奇怪な構え方と侮るなかれ、キリトを襲う勢いたるや先の何倍も苛烈。
「っ!流石に、口に咥えて斬り掛かる奴は初めてだな……!」
苦笑いも知った事かと斬り続ける。
得物の差で一本負けているにも関わらず、双剣を寄せ付けない。
上半身を捻り繰り出す斬り上げが、ビームサーベルを弾き飛ばした。
取りに行かせる猶予は当然ながら、与えられない。
片方の得物を失った隙を突く、戦法は何も間違ってない。
自分だって仮に相手が同じ状態へ陥ったら、迷わずそこを利用する。
だからキバがどう出たかに驚きはなく、納得さえあった。
「本当に――狙った通りだ」
こっちの剣が一本弾かれれば、間違いなくその隙を突いて来る。
あえて作らせた敵の有利な展開は、逆に自身が決着へ持って行く為の誘導。
無手と思振るわれたガルルセイバーを、隠し持っていたシャドーセイバーで受け流す。
敵にとっては予想外の反撃で、逆に隙を晒した。
となれば、一気に攻める以外に選択はあるまい。
ガルルセイバーを防御へ回させはしない。
空一面に輝く流星の勢いで、斬撃が襲い掛かった。
94
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:14:47 ID:.I21kXzM0
○
<キバ!エンペラーフォーム!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
刀身へ巨大蝙蝠が噛み付いた大剣、ザンバットソードがゼインの手に現れる。
ファンガイアの王以外に持つ事は許されず、関係者が知れば極刑は免れないだろう。
固い掟はゼインからすればどうでもよく、王の証も単なる道具に過ぎない。
刀身が血よりも濃い赤に染まり、魔皇力が最大まで高まった。
振り下ろし放つ斬撃もまた真紅、マザーサガークを一刀で斬り伏せた時以上の威力で飛来。
『COME ON!VEGAS!CAB!CIRCUS!』
『タイヤ!カキマゼール!アメリカンドリーム!』
高威力の技を使うのは、ゼインの専売特許ではない。
シフトトライドロンのパネルに表示された三台のタイヤを、合成し装着。
豪奢な装飾のタイヤで何をする気か、自分の目で確かめるまでゼインは待たない。
迫り来る真紅の刃へ恐れは見せず、チェイサーが片手を翳す。
能力の詳細は確認済だ、これならばいける。
出現するは、異次元と繋がったワームホール。
ディメンションキャブの能力で作ったものだが、生成した目的は攻撃吸収に非ず。
穴の向こう側から放出される、大量のカジノ用チップ。
更には賑やかな歓声と共に、ピエロ達が出現。
派手に踊れば踊る程、紙吹雪や風船が視界を覆い尽くさんばかりに溢れ出す。
「これは……!?ぐおおおおっ!?」
ロイミュードへダメージを与えるそれらが、ゼイン一人を対象に殺到。
ザンバットソードを振るい斬り刻んだ、しかし全部じゃない。
機関銃の掃射が生易しく思える程の、圧倒的物量で圧し潰す。
粉砕される末路はお断りだ、引力操作機能で走力を強化。
射程圏内へ逃れ、新たなゼインカードへ手を伸ばす。
95
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:16:11 ID:.I21kXzM0
<アルティメットバイス!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
読み砕き効果が表れるも、これまでのカードとは違う。
武器や技ではない、ゼインの隣へ別のライダーが姿を見せた。
恐竜モチーフの装甲を纏った戦士、仮面ライダーバイス。
五十嵐一輝と契約した悪魔が、真に相棒でありライダーとしての進化を遂げた形態。
無論、ここにいるのは本物のバイスではない。
再現体(コビー)に過ぎないが、スペックはオリジナルと変わりない。
絆が入り込む余地のない、単なる暴力装置として顕現。
仮面ライダーゲンムを相手取った時同様、抵抗を許さぬ連携で仕留めるまで。
一輝とバイスの絆を踏み躙る行為だと、五十嵐家の者を始め二人を知る者は憤るだろう。
生憎ゼインに、そういった情を汲む気は微塵もない。
だからこそ、仲間という存在をゼインは甘く見過ぎた。
「果穂ちゃん!チェイスくん!」
分身の破壊者が消え、千佳が真っ先にやろうと思ったのは一つ。
元凶であるゼインと戦う仲間達へ、少しでも力になりたい。
それを可能に出来る方法を、自分は既に持っている。
他でもない、千佳にしか出来ないたった一つの戦い方。
「負けないでーっ!」
声援と共に放つ、青空のように自由奔放な少女の魔法。
痛みを与える力じゃない、けれどこれでいい。
何せゼインが最も望まない展開を、イノセンスは引き起こす。
『っ!!!??!!これはまたしても……!!』
「お、前ぇぇ……!勝手なことばっかりしやがって……!クソがっ!令呪まで使ったな……っ!」
『――っ!黙れ!今はそれどころでは……っ!』
パラドを助けようとした時とは、状況がまるで違う。
しかし、“最も自由を封じられた者の解放”は此度も発生。
有無を言わさず資格者になった、灯悟の意識が支配を逃れようと藻掻く。
必死に抑え付けるゼインの隣では、命令を受け損ねたアルティメットバイスが立ち尽くす。
追い打ちを掛けるように、攻撃のタイミングを見失った無防備な背へ激突するマゼンタ色のライダー。
キリトから連撃を受け、元の破壊者へ戻ったディケイドだ。
偶然か意図してか、倒すべき者達が一纏めに。
96
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:18:11 ID:.I21kXzM0
「チェイスさん!行きましょう!」
「ああ!」
『UNLIMITED EXECUTION TRIDORON』
『BOOST TIME』
ならば今しかない、終わらせるにはここ以外に有り得ない。
頷き合い、それぞれの変身ツールを操作。
ブレイクガンナーを押し込み、生成するのは赤いスーパービークル。
エネルギー体のトライドロンがエンジンを唸らせる。
隣に並ぶは、同じく赤い体の巨大な獣。
拡張装備、ブーストライカーをナーゴモチーフの形態で召喚した。
チェイサーとナーゴの意志に従い、一台と一頭が疾走。
ゼイン達の周囲を縦横無尽に駆け回り、真紅の檻を作り出す。
標的を閉じ込めるだけが目的じゃない。
二人揃って跳躍し、車体を蹴り反動を付けての蹴りを幾度も叩き込む。
ゼインに当たれば、蹴り貫いた先で車体に弾かれ。
ディケイドに当たれば、同様に弾かれの連続。
十を超えた時にはとっくにカード効果は切れて、アルティメットバイスは影も形も見当たらない。
「ぐ、が、あぁ……!」
ダメージに呻く声は、果たしてどちらのだったか。
カードを取り出す余裕はどちらも与えられず、装甲で殺し切れない傷が蓄積。
お互いの背が激突したタイミングで、真紅の戦士達も遥か上空へ跳躍。
決着(フィナーレ)の瞬間が、今正に訪れた。
97
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:18:59 ID:.I21kXzM0
『ヒッサツ!』
『FULL THROTTLE!CHASER!』
『BEAT BOOST GRAND VICTORY』
それは、欺瞞に満ちた善意を砕く鉄槌。
それは、太陽を背に闇を照らす希望。
それは、断ち切れぬ絆が紡ぐ英雄譚。
悪しきを貫く必殺の技(ダブルライダーキック)が。
善意の怪物と、シビトが纏いし破壊の鎧に敗北を下す。
「ごあがああああああああああああああああっ!!!??!!」
声を出せないシビトと正反対に、善意の装甲からは絶叫が上がる。
意識を急浮上させられた影響だと、灯悟に言っても何の慰めにもならないに違いない。
複数回のバウンドを経てようやく停止、衝撃でドライバーがいつ外れたかなど気付けなかった。
『マズい……!』
ゼインもまた、些事に構ってられない。
今の自分は無防備、器を早急に手に入れなくては。
想定外の敗北により、無機質な人格データへらしくもない焦燥感が生まれたのか。
人であれば血眼になったろう有様で、新たな資格者を求める。
誰でもいい。
黒の剣士、ホムンクルス、魔法少女、アイドル、ロイミュード。
目に付く者へ装着出来れば、全て片が簡単に済む。
『体を私に……!』
「いや、もう誰もお前の道具にはさせない」
聞こえた声に、人格データが覚えた感情は何だったのか。
分からない、分かる余裕なんて有る筈がない。
悉く自身の邪魔をしたロイミュードが、仮面越しに見つめていて。
その手に握る刀がギラリと光り、全てを察する。
『チェイス……!お前の体を寄越せ――』
悪足掻きは長続きしない。
器を求めた声も、最後まで言わせない。
邪悪を断ち切る鬼の刀が切り裂くは、魔化魍とは異なる悪。
大自然ではない、行き過ぎた善意は科学技術による忌子。
98
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:19:45 ID:.I21kXzM0
両断されたゼインドライバーは、一度だけ微かな光を灯し。
すぐにそれも消え失せ、完全に沈黙。
部品コードを晒すただのガラクタと化し落下。
散らばった複数枚のゼインカードが、虚しさを告げていた。
「……あっ」
「っ、果穂……!」
暫し見下ろしていたチェイスの意識は、傍らで膝から崩れ落ちた少女へ移る。
デザイアドライバーが外れ、生身に戻った果穂を抱き支えた。
目立った外傷はなく、フェザーサーキットの後遺症だってそう。
視線を合わせれば呼吸を若干荒くしつつ、見慣れた笑みを作った。
「えへへ……ちょっとだけ、疲れちゃいました……あっ、でも!羽があった所チェイスさんが助けてくれたおかげで、もう大丈夫ですっ!」
決着が付き、安堵からか気が抜けたのか。
元々の消耗も相俟って、傷はほとんどなくとも体力的には限界。
それでも、出会った時から変わらない表情を見せ。
果穂が戻って来た事を、改めて実感した。
「ゼインさんも、もう……」
「ああ……。そういえば、もう一つ奴と同じベルトがあったが……」
「えっと。あっちのベルトは変身出来ますけど、でもゼインさんはいないみたいでした」
精巧なコピー品ということか。
だとしても、よりにもよってゼインドライバーとは。
ふと顔を上げれば、仲間達が駆け寄るのが見えた。
全員消耗は見て取れるが、重症を負った者は皆無。
更に視線を移すと、捉えた先にはうつ伏せの状態からどうにか立ち上がろうと試みる侑斗。
但し傷の大きさが軽く見れるレベルを明らかに超えてるのもあり、動きは非常に緩慢だ。
99
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:20:16 ID:.I21kXzM0
「っ!?」
もう一人を見て、最初に驚いたのは誰だったか。
恐らくは全員が同じような反応だったろう。
表情を憤怒に歪ませ、二本足で立ち上がったセーラー服の少女に明確な異変が起きた。
腹部や太腿といった素肌の傷が、全て独りでに塞がっていく。
「えっ!?あ、あの人も傷を治す魔法を使ってるの……?」
「いえ、魔力を使った形跡はどこにも……」
目を白黒させる千佳の疑問へ、小夜も困惑を隠さず返す。
トレスマジアの魔法体系と違っても、魔法が行使されれば必ず分かる。
なのにあの少女、浅垣灯悟は魔法を使わず傷を塞いだ。
というよりは、勝手に再生したとの表現が当て嵌まる気がしないでもない。
「お前は一体……いやそもそも、お前は本当にキズナレッドの浅垣灯悟なのか……?」
イドラから聞いた話で、灯悟にこんな力があるとはなかった筈。
ヒーローに変身し続けた影響で、体に変化が表れた。
といった可能性もゼロでないとはいえ、頷くには躊躇が生じる。
自分達を襲った事といい、悪辣な言動の数々といい。
余りにもイドラの話と違い過ぎるのもあってか、本当に少女の正体が灯悟なのかも疑わしくなった。
「お前は、先生を殺してベルトを奪ったと言ったな。それも本当なのか?」
「……さあねぇ」
ネオディケイドライバーを持っていたのも、こうなると異なる理由じゃないか。
もしやと思って聞いてみたが、納得のいく答えとは程遠い。
本当に灯悟かどうかも怪しい異様なナニカへ、必然的に場の空気は引き締まり、
100
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:21:10 ID:.I21kXzM0
視界の端で、白い機械が浮かぶのが見えた。
「なにっ!?」
見間違えでないのを全員が思い知る。。
真っ二つになった方とは別、もう一つのゼインドライバーが浮遊。
誰一人触れていないにも関わらず、意思を持ったかの動きで飛来。
ようやく立ち上がり掛けた侑斗の腰へ装着、途端に動きは機敏性を取り戻す。
精巧な操り人形の動作でプログライズキーを差し込み、あっという間に変身完了。
「そんな……!?だってあのベルトにゼインさんは……」
愕然と震えた声を紡ぐ果穂だが、起きた事は変えられない。
再び現れたゼインが何をするにしろ、ロクなものとは思えなかった。
動きを封じようと、ブレイクガンナーを突き付けるチェイスを誰も止めない。
誰もが各々得物を構え、或いは技や術の発動を試みて、
気付いた時にはもう、事は起きてしまった。
「……っ?」
違和感がチェイスを襲う。
見ている景色が今の今でと違っている。
ついさっき、という表現すら当て嵌まらない。
瞬きを終えもしない内に、見ているものが変わった。
何故、ゼインがこうも近くにいるのか。
持っていなかった筈の支給品袋を、握り締めてるのか。
101
:
正義Ⅵ:UNLIMITED DRIVE type CHASER
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:22:08 ID:.I21kXzM0
転がっているソレは。
レジスターを付けたままで、斬り落とされた手首は誰のものなのか。
視線を落とす。
見た。
見てしまった。
「果穂……?」
鎮静剤を失い、命のタイムリミットが尽き掛けた少女を。
102
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:24:28 ID:.I21kXzM0
◆
これで終わった筈だった。
ゼインはドライバーを破壊され、殺し合いから脱落。
突き詰め過ぎた善意は悪意と何ら変わりなく、故にいずれは朽ち果てる宿命。
戦いはヒーロー達の勝利で幕を閉じ、これ以上誰もゼインの手には掛からない。
桜井侑斗のシビト化さえなければ、そうなっただろう。
仮面ライダーゼインの正体はベルトに宿った、ゼインと言う名の人工知能。
謂わば実態を持たないデータ、故に現実世界での活動には器が必用不可欠。
ゼインがやったのは実に単純、データである自分自身の転送。
ドライバーが破壊され、人格が完全に消失する寸前。
使い物にならなくなった、ジョージ・狩崎作のアイテムに見切りを付けたのだ。
とはいえ、何にでもデータを移せる訳ではない。
最初から自身の存在を宿せる機能が備わった、ゼインドライバーならともかく。
マッハドライバー炎やデザイアドライバー等の、変身“のみ”を目的にする物では不可能。
変わりの器が存在しなければ、ゼインの足掻きも結局は無意味。
消滅をほんの少しだけ、先延ばししたに過ぎない。
だがたった一つ、条件を満たす器がここにはあった。
侑斗のシビト化に伴い再現された、複製品のゼインドライバー。
変身機能のみならず、ゼインカードの使用や細かい装置までオリジナルと同じ。
唯一、ゼインの意識データが存在しない点もプラスへ働いた。
不要な抵抗を受ける事無く、己のデータを収められる。
主不在の屋敷へ我が身を滑り込ませ、支配下へ置いたのだった。
103
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:26:19 ID:.I21kXzM0
「果穂……っ!」
理解が現実へ追い付いたチェイスが呼びかけるも、既に遅過ぎた。
侑斗の肉体の主導権を奪ったゼインは、操り人形同然に動かし変身。
6時間中に三回までの時間停止能力、その最後の一回を使用。
僅かな猶予を得て、果穂へ急接近するやレジスターの付いた手首を切断。
同時にリュックサックとゼインカードを回収し、時が動き出す。
「――テメェ!!」
「お前は……!!」
何が起きたかはこの際どうだっていい、何をされたかの方が重要。
助かった筈の仲間を、確実な死へ追いやる一手を打たれた。
激情と焦燥に突き動かされ、キリトとジークが突撃。
双剣の餌食か大剣に磨り潰されるか、どちらの未来も訪れない。
ゼインへの道を阻むかのように、現れるは奇怪なナニカ。
亀裂の入った仮面が浮遊し、キリト達へ射出。
この程度の壁で押し留めるというなら、言語道断。
マクアフィティルの一振りで、陶器のように砕け散る。
<シン!>
<執行!ジャスティスオーダー!>
ほんの僅か、されど足止めは足止め。
ゼインカード裁断の時間稼ぎに、十分貢献した。
生体改造兵士(バイオボーグ・ソルジャー)レベル3、仮面ライダーシンの技を発動。
高出力の念能力を使い、接触せずとも二人の剣士を吹き飛ばす。
更には周囲一帯に破壊を齎し、煙と飛び散る破片が視界を塞いだ。
「くっ!待て……!」
制止の声に従う義理はない。
今しがた破壊されたモンスターカード、闇の仮面の効果は発動されている。
正規のデュエルでは墓地の罠カードを手札に戻す、リクルートの効果を持つ。
殺し合いのドロップアイテムとしての調整で、時間制限が解除される前の罠カードを再使用可能という具合に作用。
富良洲高校からの撤退で使った、強制退出装置を発動。
自身と侑斗を対象に、別のエリアへ一瞬で転移。
粉塵を斬り払った時にはもう、ゼインは煙のように消えた後。
104
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:28:01 ID:.I21kXzM0
『KAMEN RIDE RYUUKI!』
もう一人の敵対者、灯悟も今がチャンスと踏んだのだろう。
ネオディケイドライバーを拾い、急ぎ龍騎に変身。
一番近くの反射物へダイブ、ミラーワールドを経由し逃走を図った。
カードデッキを持たない以上、追跡は不可能だ。
「果穂ちゃん!お願いしっかりして……!」
目尻に涙を浮かべ、はるかと千佳が回復を試みる。
幾度も仲間を死の淵から掬い上げた魔法も、今回ばかりは無力。
効果があったのは、欠損部位の止血のみ。
バグスターウイルスの除去は叶わず、肉体を走るノイズは消えない。
「頼む……!もう一度果穂を……!」
一抹の望みを託し。チェイスがマッドドクターの能力を使用。
超進化態となったブレンの毒すら打ち消せたなら、望みはある筈。
そう信じるも、現実は何一つ変えられなかった。
バグスターウイルスは羂索達が設定した、プレイヤーへの枷。
プロトガシャットの支給や医療関係者の参加等、解毒の芽は存在する。
かといって、あっさり無効化されては興醒めだと相応に難易度が設定されたのも事実。
財前美智彦との戦いで、バグスターウイルスのデータを記録したドライブドライバーを用いたならまだしも。
如何に心意システムが作用し創造したシフトトライドロンでも、不可能の壁を超えられない。
「……っ!」
打つ手なし、どう足掻いても助けられない。
非情な現実に場が侵食される中、当の果穂も理解する。
自分は死ぬ、チェイス達と最後まで一緒に戦えない。
家族や283プロの皆の所へも、もう二度と帰れない。
悲しくないなんて有り得ない。
近付いて来る死の気配に、恐怖がないとは口が裂けても言えない。
W.I.N.G優勝まで支えてくれて、そしてこの先も力になると言ってくれたプロデューサー。
彼と共に、アイドルとして突っ走る道は途切れてしまった。
本当だったら、人目も憚らず泣いていただろう。
105
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:28:51 ID:.I21kXzM0
「ありがとう……ございます……」
だけど、果穂はヒーローだから。
自分なりのやり方で笑顔を届ける、ヒーローたらんとするアイドルだから。
悲観する少女じゃなく、最後までヒーローの小宮果穂でいる事を選んだ。
「あたし……嬉しかったんです……皆さんが助けてくれて……仲間として受け入れてくれて……」
きっとここで自分が泣き叫んだら。
死にたくない、こんな最期は嫌だと絶望を口にしてしまったら。
きっと仲間達の心に大きな傷が刻まれる。
だから、ほんの少しでも皆が痛くならないように。
最後にありったけの感謝を伝える。
「本当のあたしを……取り戻させてくれたから……あたし、は……っ、チェイスさん達に会えて……良かったって、思います……」
すすり泣く誰かの声が聞こえる。
俯く誰かの姿が見える。
もっとはっきり捉えたいけど、やけに朧気だ。
限界が近いのを察し、やっぱり恐いなと感じた時。
もう片方の失っていない手を、握り締める感触があった。
「俺は、お前の傍にいる。お前を一人にはさせない」
「――――」
会った時から変わらない淡々とした、でも優しさが籠められた声。
彼が一番近くにいる、それだけで恐怖が薄らいでいく。
「やっぱり、チェイスさんは……あたしの大好きな……優しくてかっこいい……ヒーローです…………」
終わりの時まで、頼りない視界で精一杯彼の顔を見て。
傍にいてくれるのを忘れないよう、強く手を握り返して。
淡く、だけどどんな星よりも輝く笑みで。
少女は天へ還って行った。
106
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:29:29 ID:.I21kXzM0
○
6人の参加者がそこにいた。
肩を震わせ悲しみに暮れる千佳とはるかを、小夜が慰め。
その彼女も唇を噛み絞めて、何かを堪えていて。
二人の少年は沈黙を貫いているも、どんな顔かは分かる。
では、自分はどうなのだろう。
作り物めいた鉄面皮へ、ほんの少しでも変化が訪れているのだろうか。
本当の自分ではない、白バイ隊員の擬態でしかない顔へ手を伸ばす。
頬に触れてみると、濡れてるのが分かった。
雨は全く降っておらず、空は変わらず午後の太陽が照らしてある。
自分が泣いていると、その時ようやく気付く。
涙を流すのはこれが二度目だ。
失恋の痛みを感じた時と違い、人間に近付けた喜びはない。
胸を刺す苦痛が誇らしいなど、誰が言えようか。
大事な誰かを失って、悲しみの雨を双眸から降らす。
人間だけじゃなく、ロイミュードだってそれは同じ。
ブレンを失ったハートとメディックが、頬を濡らすのはこの目で見た。
故に何も、不可思議ではない。
だとしても、今の自分を素直に受け入れられるかは別。
守ると誓った少女を、結局助けられず。
取り零し続けるだけの弱い己に、
「俺に悲しむ資格など……」
「資格とか関係無いだろ」
無意識の内に吐き捨てた言葉へ、返されるのは否定。
顔を上げれば、真剣な表情のキリトと視線が合う。
その目は自分を見ていると同時に、過ぎ去った過去を見つめてるようでもあった。
107
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:31:15 ID:.I21kXzM0
「自分自身をどうしようもなく見限りたくなるのを、理解出来ないとは言わない」
お前は俺達に会うべきじゃなかった。
嘗て言われた言葉は今も尚、消えない傷となってキリトの中に存在する。
世界が色褪せ、自分自身を無価値と断じてやりたくなった過去は忘れない。
「だけどチェイス、お前は彼女を救ったんだ。命を喪われたけど、それでも心は確かに救われた」
短い余命を、閃光のように駆け抜けた少女がいた。
待ち受ける最後を変えられはしなかった。
けれど満たされた人生だったと、心から告げて力尽きるのを見届けた。
助けられた筈の少女がいた。
自身の驕りが彼女を殺し、一度は道化に身を堕としたが。
それでも自分は、赤鼻のトナカイである彼女にとってのサンタクロースになれた。
助けられなかったけど、救われた少女達を知る者として。
チェイスが果穂を救った事実を、彼自身に否定させたくなかった。
「彼女の為に流すあなたの涙は間違いではないと、俺も思う」
もう一人、ジークもまたチェイスへ向けて言葉を紡ぐ。
自分以外の為に流す涙の理由を、知っている。
名も無きホムンクルスで終わる筈だった自身の無事に、泣いて喜んだ友の記憶は鮮やかに思い出せるのだ。
「そうか…………」
仲間達の言葉を受け、そっと自分の胸元へ手を置く。
ここに傷は付けられていない、しかし感じる痛みは本物。
大事なナニカが欠けた傷の癒し方は、まるで分からない。
「果穂……」
激情を露わに泣き叫びはしない。
我を忘れて、憎悪に身を焦がすなど以ての外。
それでも、名前を呼んでも彼女の声が返って来ない事に。
喪失の悲しみを拒絶せず、今だけは身を委ねていた。
【小宮果穂@アイドルマスター シャイニーカラーズ 死亡】
108
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:32:46 ID:.I21kXzM0
【エリアG-6/現代都市 浄水場前/9月2日午後3時40分】
【チェイス@仮面ライダードライブ】
状態:ダメージ(中)、無力感(大)、喪失感
服装:紫のライダースジャケット(いつもの)
装備:マッハドライバー炎&シグナルチェイサー@仮面ライダードライブ、ブレイクガンナー&チェイサーバイラルコア@仮面ライダードライブ、シフトデッドヒート@仮面ライダードライブ、シフトトライドロン@仮面ライダードライブ、鳴刀音叉剣
令呪:残り三画
道具:トレーラー砲@仮面ライダードライブ、メカ救急箱(使用回数3/5)@ドラえもん、野晒@BLEACH、亜空間物質転送装置@遊戯王OCG(1時間40分使用不可)、シフトチェンジ@遊戯王OCG(1時間40分使用不可)、給食部のトラック@ブルーアーカイブ、大量の購買部の商品、ホットライン
思考
基本:人を守り、殺し合いを止める
00:……、……
01:ゼインはどこへ逃げた?このままテレビ局へ向かうべきか?
02:久留間運転免許試験所へ向かう傍ら、協力可能な参加者を探す。
03:俺達を襲った先生は偽物だったのか……?
04:キリトたちと共に行動する。
05:蛮野もこの島にいるのか?
参戦時期:死亡後。
備考
※制限により重加速は短時間で強制的に解除。連続使用は不可。
※心意システムにより仮面ライダードライブ・タイプトライドロンのゼインカード(複製)からデータを読み取り、シフトトライドロンへ再構築しました。
【ジーク@Fate/Apocrypha】
状態:疲労(大)、ダメージ(小)
服装:本編の服装
装備:浅打@BLEACH→幻想大剣(バルムンク)@ロワオリジナル(BLEACH+Fateシリーズ)
令呪:残り二画(竜告令呪)
道具:缶コーヒー@現実(残数2本)、???
N・Sワッペン(N×10、S×4)@ドラえもん
ホットライン
思考
基本:可能な限り被害を少なくゲームを終了させる
01:大聖杯はどうなっているのだろうか...
02:ユメたちは無事だろうか?
03:ノワルに宇蟲王はどこかで倒しておかなくては。
04:小鳥遊ホシノは明らかに大丈夫でなかった。
もう一度合流しなくては。
05: ギラたちと情報交換を行い、出来れば協力も取り付ける。
06:うてな、ディアッカ……本当にすまない。
参戦時期:本編終了後
備考
※FGOコラボイベントのイベントの記憶も有しています。
※時系列的には邪竜の姿が正しいですが、ホムンクルスの姿をしています。本人は羂索の制約によるものだと考えています
※うてなからノワルについての情報を得ました。またノワルと対立した面々を信頼できる人物として認識しています。
109
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:33:37 ID:.I21kXzM0
【花菱はるか@魔法少女にあこがれて】
状態:疲労(大)、精神的疲労(大)、ダメージ(中)、ノワル戦のトラウマ(極大)、悲しみ
服装:学生服/マジアマゼンタのコスチューム
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り二画
道具:ウォーパイク@テイルズオブヴェスペリア、ランダムアイテム×0〜1、ホットライン、通り抜けフープ@ドラえもん
思考
基本:魔法少女として殺し合いを止める
00:果穂ちゃん……
01:千佳ちゃん達と行動。
02:うてなちゃん、皆……ごめんなさい
03:ノワル、赤い服の男の人(宇蟲王ギラ)に対して最大限警戒
04:マジアベーゼはいつか仲間になってくれると思ってるよ!ここで正体は探らないって約束する!
05:小夜ちゃん……本当に良かった。
06:あたしが気絶してからとんでもないことになってる……
参戦時期:少なくともマジアマゼンタ フォールンメディックに覚醒前
備考
※真化形態に覚醒しました。
原作同様真化中の記憶はないようです。
【水神小夜@魔法少女にあこがれて】
状態:ダメージ(小)、疲労(大)
服装:錬金アカデミーの制服(青)@仮面ライダーガッチャード
装備:トランスアイテム@魔法少女にあこがれて
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜1、???
ホットライン、アビドス高校の体操服
N・Sワッペン(S)@ドラえもん
思考
基本:今度こそ『マジアアズール』の矜持を貫く。
01:冥黒の五道化……あれだけ強くて参加者じゃないなんて。
02:今となってもシェフィちゃんと一緒にマイさんを庇ったのは間違ってないと思う。
03:シェフィちゃんは必ず守る。
04:左虎さんもシェフィちゃんもこの様子だと操られたままなのよね?
05:もしまたマイさんに会ったら……。
06:ディアッカさん、柊さん……そんな!
07:マジアベーゼの正体ってまさか――
参戦時期:アニメ7話、原作2巻Episode10の終盤
備考
※マイの編集(エディット)により、バトルロワイヤルのルールを把握しました。
※マイ=ラッセルハートの"削除"及び"編集"の影響で欠落した記憶が回復しました。
植え付けられた偽の記憶も残っていますが偽の記憶と理解しています。
【横山千佳@アイドルマスターシンデレラガールズ U149(漫画版)】
状態:疲労(中)、精神的疲労(大)、ダメージ(小、処置済み)、ノワル戦のトラウマ(極大)、悲しみ、魔力残留
服装:普段着
装備:イノセンス@魔法少女ルナの災難、まどうしのつえ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:怖いけど、殺し合いになんて負けない!
00:あたしまた、大事な友達を助けられなかった……
01:はるかちゃん達と一緒にいる。
02:イドラちゃん……レッドくん……。
03:マジアベーゼのこと、あたしは信じたい。
参戦時期:サマーライブ編(原作14巻)終了後以降
備考
※まどうしのつえでスクルト、ピオリム、ルカニ、ホイミ、メラ、マジックシールドが使用可能なようです。
他にどの呪文が使えるかは後続の書き手に任せます。
※マジアマゼンタ・フォールンメディックに授乳された影響で、マジアマゼンタの魔力が体内に宿っています。
もしかしたらマジアベーゼの魔力も混ざってるかもしれません。
110
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:34:09 ID:.I21kXzM0
○
一つ、どうも引っ掛かる事があった。
果穂の死をおざなりに扱うつもりはない。
共有した時間はほんの僅かだが、喪われた命を悼む気持ちはある。
にも関わらず意識を割くのは、キリトにとってどうしても捨て置けないからだった。
浅垣灯悟と斬り合った時、吐き捨てられた内容を思い出す。
「ウザってぇ真似されて女になった」と、確かにそう言った。
あれが真実だとすると、やはり灯悟は元々男性。
殺し合いに巻き込まれた後、何らかのアクシデントで性転換し女性になった。
元の性別に戻れないまま、自分達の前に姿を見せたということか。
ではその灯悟が女になった原因は何かだが、心当たりがない訳でもない。
発電所でホシノ達が降ってきた後、一悶着を経て間もない時、
集めた支給品の見分と分配を行った際、該当する道具を見付けたのだ。
ころころダンジョンくんと言う名のアイテムは、解説書曰く時間制限付きで性別を変える。
灯悟の肉体的な現状と結び付けても、何らおかしくない。
更に付け加えるなら、自分達が出会った灯悟は果たして本人だったのだろうか。
イドラの仲間を疑いたくない私情を抜きにしても、不可解な点は少なくない。
襲って来た灯悟を偽物だと仮定した場合、一つの説が浮かび上がる。
本物の浅垣灯悟はころころダンジョンくんで、体が女になってしまった。
それを見た何者かが灯悟の姿を偽り、自分達を襲った。
装備から考えるに、その何者かは灯悟だけでなく先生の姿も偽ったんじゃないか。
肝心の姿を変える力が、固有能力か支給品かまでは現状不明だが。
上記の説が正しいとすれば、灯悟は自分の外見を利用された被害者。
人間性についても、イドラが言った通りの人物と見てほぼ間違いない。
111
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:34:51 ID:.I21kXzM0
と、簡単に言い切れたらどれ程良かったか。
キリトが覚えた疑問は、ここからが本番。
灯悟の性転換の原因が、ころころダンジョンにあると仮定した場合。
問題となるのは、アレをそもそも誰が持っていたか。
イドラやレッドの支給品ではなく、所持者の正確な名前も知らない。
自分が気を失ってる間、デクとやみのせんしが戦っていた時。
何処からか現れた、三色模様の怪人(ヴィラン)のリュックサックにあったらしい。
デク曰く、やみのせんしとの戦闘中に奇声を上げ乱入。
イドラの死体へ、脇目も振らずに飛び掛かろうとした。
餌とでも思ったか、或いは唾棄すべき欲の捌け口に狙ったか。
理由は何にしろ、件の怪人はもういない。
イドラへ手を出すのはデク達に妨害を受け、最終的にはやみのせんしが殺害。
結局、怪人が何者だったかは不明だという。
だが偽物らしき灯悟との戦闘を経て、キリトの中で線と線が結び付く。
ころころダンジョンくんを持っていた、正体の分からない怪人。
デク達を無視し、真っ先にイドラの方へ向かった行動。
既に起こった事実が、ある可能性を導き出す。
(デクが言ってた怪人は、本物の浅垣灯悟だったんじゃないか……?)
そのように考えると、別の見方も生まれて来る。
実際にはイドラを襲ったのではなく、変わり果てたイドラに錯乱し駆け寄っただけじゃないか。
外見のみならず、人語もロクに喋れないせいで誤解され。
襲って来た怪人(ヴィラン)と勘違いされた、それが真相ではないのか。
112
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:35:31 ID:.I21kXzM0
(もしそうなら、デクは……)
確実にその通りだとは言えない。
しかし強く否定出来るだけの根拠もない。
直接怪人を殺したのはやみのせんしだからといって、デクがあっさり切り替える淡白な少年でないのを。
キリトはもう知っている。
喪われた仲間は少なくなく、生きてる仲間にも苦難が降り掛かる。
立ち行かない現状に、キリトは歯痒さを感じるしか出来なかった。
【キリト@ソードアート・オンライン】
状態:ALOアバター、疲労(大)、ダメージ(中)
服装:いつもの服装
装備:マクアフィテル@SAOシリーズ
デュエルガンダム(核動力型)の起動鍵@機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
令呪:残り三画
道具:ホットライン、???
シャドーセイバー(短)@仮面ライダーBKACK RX、ライドチェイサー@仮面ライダードライブ
思考
基本:このゲームを攻略する。
1:茅場晶彦……今回で完全に決着をつけてやる。
2:ギラ達との協力は取り付けられた、今はチェイス達と行動。
3:アスナたちや逸れたデクたち、ガッチャードなどの協力できそうな者を探す。
4:PoHやダークマイトは死んだらしいがギギストにグリオンにノワルにアルジュナ・オルタは健在……休む暇なしかもな。
5:シノン、亜里紗……また、間に合わなかった。
6:この短剣、もう投げるのはやめとこう。
なんか毎回敵に拾われる。
7:デクが言ってた怪人の正体は、浅垣灯悟なのか……?
参戦時期:少なくともマザーズロザリオ編終了後
備考
※アバターはALOの物です。
【全体備考】
※鮮血@キルラキルと同様にキズナレッドのデイパックとホットラインは焼失しました。
※以下のアイテムをキリト、デク、小夜、シェフィ、ホシノ、薫、ジーク、学郎で分配しました。
誰にどのアイテムが行き渡ったかは後の書き手様にお任せしますが、少なくともキリトは通りぬけフープ以外にアルカイザーが元々持っていたいアイテムを受け取っていないようです。
以下、分配したアイテム
キズナブレス@戦隊レッド 異世界で冒険者になる
片太刀バサミ@キルラキル
アナザーオーズウォッチ@仮面ライダージオウ
ころころダンジョくん@Toloveるダークネス
ライドベンダー@仮面ライダーオーズ/OOO
なんでもそうじゅう機(飛行機タイプ)@ドラえもん
セルメダル数枚@仮面ライダーオーズ/OOO
イドラのランダムアイテム×0〜2
イドラのホットライン
ジャンプ強化のエナジーアイテム×2
アルカイザーのランダムアイテム×0〜2
アルカイザーのホットライン
※付近にデザイアバックル&コアID(ナーゴ)&ビートレイズバックル@仮面ライダーギーツ、ブーストレイズバックル@仮面ライダーギーツ、レジスター(小宮果穂)、裁断されたゼインカード(X(複製)、V3、鎧武(複製)、カイザ、ZO、G-3、イクサ、キバ、バイス、シン)、破壊されたゼインドライバー、ゼインプログライズキー@仮面ライダーアウトサイダーズが落ちています。
113
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:36:57 ID:.I21kXzM0
◆◆◆
「ったく、ほんっとに苛つかせてくれるよあいつら……」
性転換した灯悟の見た目で、エンヴィーは四肢を投げ出す。
ミラーワールドを潜り抜けた先、適当な民家へ侵入。
家主不在なら遠慮は無用、仮にいたら殺して黙らせたろう。
二階の寝室のドアを乱暴に開け、質素なベッドへ寝転がった。
質が良い家具とは言えないが、疲れた体には非常に効く。
どっとため息を吐き出し、ストレスの元となった先の戦闘を思い浮かべる。
黒き最後の神が猛威を振るった場から撤退後、改めてアビドス高校を目指し出発。
となったのは途中まで。
やたらと湧き出るNPCに足止めされたか、或いはマシンディケイダーの慣れない運転のせいか。
到着を待たず察したのだ、放送までに間に合わないと。
どこでもドアを使えば一瞬で行けるも、利用機会の多い破格の移動アイテムだ。
使い所に悩んだ結果、勿体なさが勝ったのか温存を選択。
案の定、アビドス高校へ着く前に定時放送が流れた。
先生の見た目でやれる遊びは大きく減ったが、それならそれで構わない。
むしろ新しい試みへ出るのに丁度良いと切り替え、灯悟の外見へ変身。
善人の皮を被った時に聞いた情報を元に、『イドラの死で優勝を選んだ』風を装ったのだ。
尤もいい具合に掻き乱せたかと言うと、腹立たしい事に首は横に振る他ない。
手痛い反撃を受け、しかも自分の正体へ勘付かれたのだから不愉快極まる。
「本当に令呪減っちゃってるよ……」
手の甲を見れば、ウロボロスの印とは異なる模様が刻まれている。
リミッター解除の切り札にして、寿命を削るに等しい諸刃の剣。
貴重な令呪一画が、ゼインのせいで失われた。
勝手に自分の体を動かし、挙句令呪まで無駄に切られ怒るなと言う方が難しい。
114
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:37:29 ID:.I21kXzM0
「ま、あいつらの惨めなとこを見れたのは良いけどさ」
不愉快気な顔から一転、仲間を殺された参加者達の姿へ嘲笑が浮かぶ。
自分を苛立たせた二人組の片方、果穂はまず助からない。
無力感に打ちのめされるだろうチェイスを含め、多少溜飲が下がるというもの。
次に会う事があったら、果穂の姿になって嘲るのも面白いかもしれない。
先生の退場が発表されたとて、遊びに何の支障をきたさない。
イシュヴァール内戦の引き金を引いたように、人間達を弄ぶ悪辣さは健在。
真に絆の破壊者として、嫉妬のホムンクルスは自由気ままに殺し合いを謳歌するだろう。
―『エンヴィー、おまえ…人間に嫉妬してるんだ』
己の根底を鋼の錬金術師に理解された、鬱屈とした最期を振り切れぬままに。
【?????/?????/9月2日午後3時40分】
【エンヴィー@鋼の錬金術師】
状態:浅垣灯悟(TS)@戦隊レッド、異世界で冒険者になるに変身、疲労(大)、苛立ち(大)
服装:鮮血を真似たセーラー服
装備:ネオディケイドドライバー@仮面ライダージオウ
令呪:残り二画
道具:ランダムアイテム×0〜1、マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド、どこでもドア@ドラえもん、ホットライン(簡易プロフィール付き名簿@オリジナルがインストール)
思考
基本:好きにやる
01:次はどうやって遊ぶかねぇ。
02:纏流子に会ったらお友達の最期を伝えてやるのも良いかもな。
参戦時期:死亡後
備考
※先生の支給品はエンヴィーが回収しました。
※ネオディケイドライバーは戦闘を重ねる毎に、一枚ずつライダーカードが解禁されるよう細工されています。
少なくともウィザードまでのカードが使用可能です。
115
:
正義F:サヨナラの向こう側まで
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:38:52 ID:.I21kXzM0
◆◆◆
こうして、今宵の物語は語り終えられる。
ヒーローの再起と死、書き換えられない苦い結末で以て。
しかし始まりの先に終わりが待つように、終わりの次には新しい始まりがある。
良いか悪いかで決められるものでなく、必然的にそうなる仕組みとしてだ。
小宮果穂の物語はここで終わり、次は必ず新たな物語のページが開く。
たとえそれが、誰にも望まれない醜悪な復活祭だとしても。
116
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:40:13 ID:.I21kXzM0
◆
運が良かった。
超高性能な技術を用いて生み出されたゼインにしては、らしからぬ一言。
本人も自覚はあるが、今回ばかりはそう思わずにいられない。
桜井侑斗共々、ゼインドライバーの複製品がなかったら。
自分はオリジナルのドライバーと最期を共にしただろう。
ディケイドに変身した者の存在で、チェイス達の意識を引き付けていなければ。
複製品のゼインドライバーも危険と見なし、破壊された可能性は低くない。
ボタンが掛け違えば、自分は今も現世に留まっていられなかった。
よりにもよって、排除すべき悪意が結果的に助けとなった事実は屈辱であれど。
過ぎた事だと切り替えるのが最適、長々とは引き摺らない。
転移先でまた一つ幸運が巡り、回復のエナジーアイテムを使いそうゼインは思う。
(最善の結果とは言えませんが、巻き返しは幾らでも可能でしょう)
ゼインドライバーはある、資格者として選んだ侑斗も問題無く操れる。
複製品も含め、ゼインカードは回収済。
裁断した分だけは置いて来てしまったが、仕方ないと割り切る他ない。
現在位置をホットラインで確認しながら、一先ずは移動。
運が良いのか、ランドマークは目と鼻の先。
参加者が集まる可能性が高く、そうでなくとも一応調べて損はない。
至極当然の理由で立ち寄ってみると、早速複数の人影を発見。
ファーストコンタクトはどう出るかを暫し考え、
ゼインの意思とは無関係に、侑斗が彼らへ襲い掛かった。
(馬鹿な!?急に何を!?)
驚愕し制止を試みるも、侑斗を止める効果はゼロ。
駆け出しながらプログライズキーを起動、ドライバーに差し込む。
純白の装甲を纏った者が駆け寄るのを、向こうも気付いたのだろう。
警戒する参加者達へ向けて、拳が突き出された。
117
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:40:42 ID:.I21kXzM0
○
サビルバラとレンが外に出ていたのは、全くの偶然だった。
中等部〜大学部までに加え、学生用の寮。
ランペルージ兄妹が住まうクラブハウスなど、アッシュフォード学園は非常に広大だ。
神と魔女の闘争の舞台に選らばれる、憂き目に遭ったコーカサスカブト城にも引けを取らない。
そんな広い施設である為、探索にも時間は掛かる。
集まった全員で固まり動くのは、安全性はともかく効率は悪い。
よって家康と堀北、サビルバラとレンに蛮野を加えた二手に分かれ行動。
クラブハウスの方へ足を運んでいた時、自分達以外の存在が見えたのだった。
「挨拶も抜きに問答無用たぁ、穏やかじゃありゃせんのぅ!」
不躾な登場へ眉を顰めながらも、抜刀に躊躇は無い。
襲撃の可能性は常に視野に入れていた為、十分予想出来たこと。
迫りくる拳を防ぎ、逆に押し返す。
性別が男なので刀使の術は使えないが、単純な強度と切れ味だけでもお釣りが来る。
岩をも砕き兼ねない鉄拳を防いで尚、刀身に亀裂一つ見当たらない。
かといって、敵も一発で諦めてはくれないらしい。
反対の拳で殴り掛かり、時には蹴りも交え殴打を繰り出す。
サビルバラも刀で以て応じ、打撃を悉く弾く。
対格差を考慮しても、一撃一撃の重さは向こうが上か。
(妙な奴じゃの……。けったいな鎧が仮面ライダーちゅうのは分かるぜよ。しかしこいつ、“空っぽ”じゃありゃせんか?)
とある流派の一門に生を受け、復讐の旅路で刀は常にサビルバラと共にあった。
故に斬り合いや屠り合いを通じ、相手が攻撃に何を宿すかは言葉以上に感じ取れる。
だからこそ現在鎬を削る敵から、全くと言って良い程何も読み取れないのに首を傾げざるを得ない。
バルバトスのような、狂気染みた闘争心は勿論。
暗く淀んだ目をした鎧の青年の、自暴自棄に似たのともまるで異なる。
真実何もない、外見だけを人に似せた人形と言っても過言ではないだろう。
118
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:41:36 ID:.I21kXzM0
「あれって……仮面ライダー……!?」
自身の記憶にある赤龍とは別物だが、似通った存在に思えてならない。
散々痛め付けられ、ある程度塞がった筈の傷が再び疼きを覚える。
奥深くまで刻まれたトラウマは鎖となって、レンを拘束。
何も出来ずに怯えて、ただ恐怖が過ぎ去るのを祈る以外にやれなかったろう。
数時間前までは、だ。
全く恐くないと言い切れはしないが、震えていたって何も解決しない。
戦いに挑む気概ならとっくに取り戻しており、サビルバラを援護すべく銃を構える。
『待つんだレンくん。ここは私に任せてくれないか』
やる気へ待ったを掛けたのは、レンが最も信頼を向ける者。
タブレットへ映る顔へ、思わず疑問を瞳で問うのも束の間。
弾かれ合い、サビルバラから距離を取った襲撃者が新たな手に出た。
「カード!?じゃあもしかして……」
腹部の機械からカードを取り出す動作は、嫌でも龍騎を思い出す。
見た目は全く違うが、何らかの特殊な能力を使う気と見て間違いない。
脅威を知るだけにレンの緊張も高まるが、傍らで急発進するバイクへ目を剥く。
「蛮野さん!?」
制止の声も虚しく、蛮野は襲撃者目掛け突撃。
幾ら改造を施されたバイクとて、敵は仮面ライダーだ。
拳一発で返り討ちにあってもおかしくなく、蛮野がそれを分からない筈ないだろうに。
レンの困惑を無視しバイクは疾走、驚くサビルバラの横を取り抜け襲撃者の元へ到達。
人であろうとなかろうと、近付く者に容赦する気はないらしい。
振り被った拳がスクラップに変えるまで、一刻の猶予もない。
堪らず駆け出そうとしたレンは、
タブレットから伸びた触手が、襲撃者の腹部へ巻き付く光景に。
違う意味での驚愕を露わにした。
119
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:42:18 ID:.I21kXzM0
○
『馬鹿、な……!』
もしもゼインに感情を表せる顔があったら、きっと愕然とした表情を浮かべただろう。
ゼインドライバーのデータベースへの侵入を許し、プログラムが書き換えられていく。
善意を為す己の玉座が、悪意を為すモノへ腐り果てる。
抵抗に出ようにも、防衛機能が全く働かない。
自身の力を急激に削ぐ張本人の名を、怒りを籠めて呼ぶ。
『蛮野天十郎……!羂索はお前をも参加させたのか……!?』
『ほう?私を知っているのか?』
声色に籠めた驚きは本心からだ。
会場にいる者で前々から蛮野を知るのは、プロトゼロことチェイスただ一人。
当然このようなドライバー内のデータと、生前知り合った覚えはない。
まさか、クリムが密かに研究していたのでもあるまいに。
『まあいい。お前の正体は後々、保存データをじっくり調べれば済む事だ』
『貴様……!』
『感謝しているぞ?私の為にわざわざ、自由に動く体を運んで来るとはなぁ!』
データで構成された触手を伸ばし、干渉を試みたのに特別深い理由は無い。
自分の知らないライダーシステムの技術が、今後何らかの役に立つかもしれない。
その程度のつもりだったが、全く良い意味で予想を裏切ってくれる。
ゴルドドライブと同じ、意思をインストール済のベルトとは。
これはつまり、自分の為に役立ててくださいと言ってるようなもの。
利用しないのは、それこそ馬鹿以外に有り得ない。
『消え、る……私が消えるなど、そんな馬鹿な……!』
どれだけゼインが必死の抵抗に出ようと、全て等しく無駄に終わる。
参加させられた直後だったら、蛮野の干渉を跳ね除け逆に消し去っただろう。
しかしゼインはここに来るまで、余りにも資格者を変え過ぎた。
本人も気付いていない特殊な制限により、支配力は徐々に低下。
遂にはシビトの侑斗の、『大道克己以外の参加者の殲滅』という自我ですらない思考すら制御下を離れる始末。
蛮野と出会ってしまった時点で、既にゼインは詰んでいたのだ。
120
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:43:32 ID:.I21kXzM0
『認めない……!お前のような悪意に私の力を明け渡してなるものか……!』
『やれやれ、随分と往生際の悪い。私に体を届けたその時点で、お前はもう用済みだ。いらぬ手間を掛けさせるな、この……クズがぁっ!!』
『あ――あああああああああああああああああっ!!!!!』
崖から落ちまいとしがみ付いた手を、強く踏みつけられるように。
ちっぽけな足掻きは何の意味もないまま、大口を開けた終焉へ落ちて行く。
何故こうなった、こんな筈じゃなかったと繰り返しても最早手遅れ。
『こんな最後……私は、みと、め、な――――』
消滅を受け入れられぬ声は、虚しく溶けて消えた。
唯一聞き届けた蛮野は、頭の悪いピエロを見るような笑みを一つ。
数分後まで覚えてるかも怪しい、塵の最期としか思わないだろう。
アウトサイダーズに敗れる正史の末路と、一体どっちがマシだったか。
聞いた所で答えを返す者はもう、どこにもいない。
『これはこれは……プログライズキーに、バイスタンプ?ラウズカードだと?実に興味深い!だが、カラーリングはどうも気に食わんな』
ゼインドライバーに用いられた複数の技術は、コアドライビアとは全く異なるもの。
研究者の欲望へ大いに刺激を受けるが、不満点が皆無とも言えない。
ベースとなった色が白なのは出来損ないの息子を思い出し、少々頂けない。
やはり自分が使う力と言ったら、アレしかないだろう。
装甲のデータを弄り、求めるままに作り替えた。
121
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:44:10 ID:.I21kXzM0
○
何が何だか分からない。
レンとサビルバラの心情は、その一言に集約される。
蛮野が触手を出したと思ったら、敵が動かなくなって。
触手も消えて、痛々しい沈黙が流れること数秒。
襲撃者、仮面ライダーゼインの全身が眩く輝き始めた。
「こっ、今度はなに!?」
混乱しっ放しで思わず目を瞑り、ややって開く。
視界に飛び込んだのは、10秒も経たない内に様変わりしたライダー。
装甲や各部の意匠は同じだが、カラーリングが明らかに違う。
金色で彩られた派手な、悪く言えば悪趣味な姿。
頭の中がこんがらがるも、ライダーは見た目と不釣り合いな落ち着いた口調で言葉を発す。
『済まない、二人共驚かせてしまったね』
「ば、蛮野さん!?えっ?じゃあこっちは……』
聞き覚えのある声にタブレットを見るも、画面は電源を落としたように真っ暗。
表示されていた顔はどこにもないが、蛮野が消えてしまった訳でないと。
金色に染まったライダーが告げて来る。
『私も驚いたが、このベルトには私のデータを移せるスペースが運良くあってね。今はこっちが私の体という訳だよ』
「……取り敢えずおんしが消えたっちゅーんでないのは分かったぜよ。だが、体を勝手に使われてそいつは何も言わないのか?」
『そのことは直接見て貰った方が早いだろうね』
訝しく問うサビルバラの疑問にも動じず、変身を解除。
見覚えのない男の姿が露わとなり、蛮野の言った意味を即座に理解する。
レジスターが装着されていない。
参加者を苦しめるバグスターウイルスによる消滅回避には、鎮静剤が必用不可欠。
他の者達、ルルーシュをも追い越し解除に成功。
といった可能性もゼロでないが、説得力のある理由は他に思い付く。
122
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:44:48 ID:.I21kXzM0
『恐らく彼は会場に解き放たれた非プレイヤー、NPCの一種だと私は考えている』
「NPC……あれ?でもこの人、私達と同じリュックサックを持ってますよね?」
『そこは私も気になるが、追々考えるとするさ。とはいえ、私自身も戦う力を得られたのは大きい収穫だ。
……済まなかったね、レンくん。私がもっと早くに戦えていれば、君達の被害を防げたかもしれないのだが……』
「そんな!蛮野さんは何も悪くないですよ……!」
悔しさを滲ませた様子の蛮野へ、慌てて首を横に振る。
蛮野が仮面ライダーの力を得られたのは、全くの偶然。
どうしてもっと早くとか、そういった文句をぶつけるのはお門違いもいい所だ。
それに蛮野はこれまでずっと、自分を真摯に気遣ってくれた男。
信頼は変わらないし、大事な仲間だと思ってる。
(悪い気がしてならんぜよ……)
レンとは正反対に、サビルバラは内心危惧を抱かずに得られない。
もし蛮野が信頼の置ける者であったら、今回の件も心強いと受け入れられたかもしれない。
だが実際に蛮野は出会った当初からどこか疑わしく、極めつけはリュージからの質問。
自分達の味方と言い切るには、きな臭い部分が多い。
タブレットに封じられてる以上は、何らかの強硬策に出ても対処はそこまで難しくなかった。
しかし自由に動ける体を得てしまい、悪い予兆に思えてならない。
家康はともかく、堀北もまた同意見で頭を痛めるだろう。
一体全体、蛮野に体を乗っ取られた男は何者なのやら。
ゼインをここまで追い詰めたのが因縁深いチェイスであると、蛮野は知らない。
ゼインが人格を完全に消去されて力を蛮野に奪われたことを、チェイスは知らない。
泊ノ介も詩島剛も、ハートもこの地には不在。
しかし終わった筈の、仮面ライダードライブとロイミュードの物語は再び動き出す。
車輪のように回る因縁を止める術は、誰の手にもなかった。
123
:
獰悪EX:黄金の悪魔はなぜ蘇ったのか
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:46:16 ID:.I21kXzM0
【仮面ライダーゼイン@仮面ライダーアウトサイダーズ 退場】
【蛮野天十郎@仮面ライダードライブ 新生】
【エリアG-4/租界 アッシュフォード学園敷地内/9月2日午後3時40分】
【レン@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】
状態:疲労(小)、ダメージ(中)、精神疲労(小)、戦いへの恐怖心(ほぼなくなった)、蛮野に若干依存、全身に軽度の火傷、左目失明、左目や至る所に包帯、髪がそこそこ焦げてる、ずぶぬれ
服装:綾小路武芸学舎の制服@刀使ノ巫女
装備:無限バンダナ@メタルギアソリッドシリーズ、Vz.83@メタルギアソリッドシリーズ、ブレンのタブレット@仮面ライダードライブ+渋井丸拓男のバイク@DEATH NOTE、治療キット×1@ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン
令呪:残り三画
道具:予備マガジン×30、ホットライン
思考
基本:生き残ることを優先
00:怖いけど逃げない。生きるために。
01:家康さんたち。蛮野さんと共に行動する
02:松坂さとうと出会ったら警戒する
03:怖いけど、自分の不甲斐なさの方がよっぽど許せなくなった。
04:私本当に生きて帰れるのかな……左目、治るかなぁ……
05:SAOの人、生き返ってるんですけど……
06:蛮野さんが仮面ライダーになっちゃった!?
参戦時期:第一回スクワットジャム終了以降
備考
※GGOのシステム(バレット・サークル、バレット・ライン)は制限なく使用できます。
※仮面ライダーとの戦いで強いトラウマを植え付けられました。
※松坂さとうを危険人物として認識しました。また仮面ライダーへの変身能力を持っている可能性があると判断しています。
※ブレンのタブレットの所有者になりました。ブレンのタブレットはレンに危害を加えることはありません。
※家康が自分の知っている歴史の家康とは別人だと理解しました。
※自分の不甲斐なさにキレたことで浅倉に対する恐怖はほぼなくなりました。
が、常時キレてるわけではないので噛み千切ったりとかをいきなりはしません。
※隆二、アンクと情報交換しました。
【サビルバラ@グランブルーファンタジー】
状態:ダメージ(中)、疲労(小)、蛮野に対する警戒
服装:いつもの(ゲーム上における火SSRの恰好)
装備:蛍丸@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3(ロトの防具なし)、ホットライン、アレフのレジスター、ロトの剣@ドラゴンクエスト
思考
基本:汚れ仕事はやる。だが殺し合いには乗らん。
00:アッシュフォード学園へと向かう。
01:バルバトスは早く倒しておきたい。
02:三人のサポートに回る。それがわしの役割ぜよ。
03:バンノには要警戒。必要なら斬る。ちと悪い展開になっとるのう。
04:リュージ、気ぃつけとくんだぞ。
参戦時期:「待雪草祈譚」終了後以降。
備考
※男性のため御刀の力は引き出せません。
※ギアスコラボ、ドラえもんコラボ、ヒロアカコラボ、プリコネコラボには出てないため、
ルルーシュやドラえもんの名前はうろ覚え程度の扱いになってます。
※蛮野と情報を交換しましたが、信用ならぬと感じています。
※隆二、アンクと情報交換しました。
※リュージの異能について把握してます。
124
:
獰悪EX:黄金の悪魔はなぜ蘇ったのか
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:48:44 ID:.I21kXzM0
【蛮野天十郎@仮面ライダードライブ(非参加者)】
状態:侑斗(シビト)へ憑依中
服装:侑斗(シビト)と同一
装備:ゼインドライバー(複製)@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインプログライズキー(複製)@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインカード一式(純正・複製)@仮面ライダーアウトサイダーズ、ゼインカード一式(二号ライダー)@仮面ライダーアウトサイダーズ
道具:メダジャリバー+オースキャナー@仮面ライダーオーズ、強制退出装置@遊戯王OCG(6時間使用不可能)、闇の仮面@遊戯王OCG(6時間召喚不可)、マイティアクションXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、裁断されたゼインカード@仮面ライダーアウトサイダーズ、檜佐木修兵のバイク@BLEACH、グレードアップえき(2/5)@ドラえもん、桜井侑斗のレジスター、ホットライン×3
基本:どんな手を使ってでも生き残る。
01:家康達のグループを利用。特にレンはこちらを信用し切っていて都合がいい。
02:機を見てチェイスもどうにかしておきたい。
備考
※自身の意識データをタブレットからゼインドライバー(複製)に転送しました。
※裁断された仮面ライダー2号、仮面ライダースーパー1、スカイライダー、仮面ライダー龍騎、仮面ライダーカブト、仮面ライダーダブル、仮面ライダーオーズプトティラコンボ、仮面ライダーウィザードインフィニティースタイル、仮面ライダービルドジーニアスフォームのゼインカードは回収されました。
ゲーマドライバーとランダムアイテム=マイティブラザーズXXガシャットは『ゼインカード(仮面ライダーエグゼイド ダブルアクションゲーマーレベルXX(量産型脳無))@オリジナル』になりました。
※使用済ゼインカード『ストロンガー、ゴースト、ダブル、カブト、スーパー1、エグゼイド、スカイライダー、龍騎、2号、ウィザード、オーズ、ビルド、響鬼、BLACK、ファイズ、アギト、ウィザード(複製)、カブト(複製)セイバー、ライダーマン、電王、ダブル(複製)、龍騎(複製)、ブレイド(複製)、X(複製)、V3、鎧武(複製)、カイザ、ZO、G-3、イクサ、キバ、バイス、シン』
【桜井侑斗(シビト・非参加者)@仮面ライダーアウトサイダーズ】
状態:ダメージ(中)、蛮野が憑依中
服装:私服
装備:
道具:なし
基本:蛮野が憑依中の為なし
00:……
備考
『支給品解説』
【給食部のトラック@ブルーアーカイブ】
…水神小夜に支給。
ゲヘナ学園の給食部の保有車両。美食研究会の愛車(大嘘)。
オレンジ色と白色に塗装された車体のボンネットに「給食」の二文字を冠したバナーを括りつけた、オープントップの四輪駆動車。
ブルアカでのカーアクションの代表格。
【マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド】
…先生に支給。
仮面ライダーディケイドの専用マシン。
車体はディケイドの装甲と同じく、未知の鉱石ディヴァインオレで構成されている。
ディケイドがライダーカードを使用した際に他のライダーマシンに変形するほか、ディケイドの意思に感応して無人走行を行う。
125
:
獰悪EX:黄金の悪魔はなぜ蘇ったのか
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:49:19 ID:.I21kXzM0
『ドロップアイテム解説』
【ゼインカード一式(二号ライダー)@仮面ライダーアウトサイダーズ】
…仮面ライダーゼインが入手。
EPISODE7で存在が確認された二号ライダーのゼインカードを、アギト〜ギーツまで纏めたもの。
ゼインドライバーに読み砕かせる事で技を発動可能。
【闇の仮面@遊戯王OCG】
…仮面ライダーゼインが入手
リバース・効果モンスター
星2/闇属性/悪魔族/攻 900/守 400
(1):このカードがリバースした場合、自分の墓地の罠カード1枚を対象として発動する。
そのカードを手札に加える。
本ロワでは時間制限が解除されていない罠カードを、使用可能に出来る。
一度召喚されると6時間は使用不可。
【天国への回数券(ヘブンズ・クーポン)@忍者と極道】
厳密にはドロップアイテムでないがここに記載。G-6の浄水場に保管されていた。
輝村極道が密造しているペーパードラッグの一種で、強い幻覚作用によって服用者に「幸福な世界」を見せる。
ただし、高い中毒性と副作用を持ち、禁断症状が出ると歪な笑顔を浮かべ、最悪そのまま死に至る。
オリジナルは怪獣医<ドクター・モンスター>の兄で「麻薬の父」とも呼ばれた繰田美伴が造ったとの事。
海外で大々的に売り出しているとの事で、その利益は数十兆円にも及ぶとされる。
孔富率いる救済(すくい)なき医師団は特別に濃度を高めた『天国への回数券ヘヴンズ・クーポン』を大型ダンプの荷台に満載し、そのまま浄水場の水の中に荷台から大量混入することで完成した麻薬入り水道水、
麻薬水(ヤクみず)を使った大テロを引き起こした。
『NPC解説』
【くまぐるみ@魔法少女ルナの災難】
魔女のお茶会の一人、メアの空間結界内に出現する魔物。
胴体にチャックの付いた、巨大なぬいぐるみの見た目をしている。
チャックを開けると中には触手が蠢いており、標的を絡めとる。
126
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 21:50:24 ID:.I21kXzM0
投下終了です。
>>116
からが『獰悪EX:黄金の悪魔はなぜ蘇ったのか』となります
127
:
◆ytUSxp038U
:2025/08/24(日) 22:27:15 ID:.I21kXzM0
すみません、エンヴィーの状態表の道具欄に
万能手綱@ドラえもんを追加し、ドロップアイテムの解説の所にも
【万能手綱@ドラえもん】
…エンヴィーが入手。
ひみつ道具ではなく、ドンジャラ村の小人族が使用するアイテム。
襟巻上で小動物に付けると、思いのままに操れる。
本ロワでは等身大サイズに調整され、主に生物タイプのNPCに対し有効。
を追加します
128
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:56:13 ID:hT4yge/Q0
書き手の皆さん、投下お疲れ様です! 投下します。
129
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:56:34 ID:hT4yge/Q0
ただいかなる時にも己の決意をひるがえさぬ者が、真の勇者の名に値する。
トゥキディデス
130
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:56:56 ID:hT4yge/Q0
「は…はは!」
笑いが漏れる。
眼前には見覚えのあるNPCのモンスター
スライムにドラキー。それぞれ二体ずつ。
いつもなら一対一(タイマン)だが、今は違う。
あえて混戦に臨んでいる。
「…ちっ!」
慣れていたいのか、いつもなら問題ないモンスターだが、頭突きや体当たりを受けてしまう。
冒険をはじめたときぐらいだろう。
ここまで自分が追い詰められたのは。
デクとの闘争に横やりしてきたモンスターを討伐した結果MPは0。
体力も激戦につぐ激戦からダメージに疲労と半端ない。
あの頃だったら、トヘロスを唱えて戦闘をやり過ごしたり、キメラのつばさでラダトームの城へ撤退していただろう。
それでも、俺はあえて戦う。
それも一体一(タイマン)ではなく、混戦を。
さらなるレベルアップをするために。
「ん……?」
気づけば、戦闘音に釣られたのかキメラに見覚えがない木のモンスターとまほうつかいみたいな目ためのモンスターもいた。
じりじりと歩み寄っているが、様子を窺っているみたいだ。
なんだ?怖気づいているのか?なら、こっちから襲うまでだ!
はかいの剣でモンスターを一体蹴散らして俺は叫ぶ
「どうした!さっさとかかってこい!」
やみのせんしの言葉が火花を切ったのか、モンスター達は一斉に襲い掛かる。
☆彡 ☆彡 ☆彡
131
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:57:20 ID:hT4yge/Q0
―― ■■■■の幼少期 ――
「やーい、お前の歩き『カニ歩き〜♪』」
幼いころの俺は、原因不明な奇病にかかっていたのか体の向きを変えることができず、歩行に苦労した。
近所のガキたちはそんな俺を『カニみたいだ』と馬鹿にしてきた。
今だったら、そんなこといってきたら右ストレートで黙らせる。
だが、その頃の俺は自分でいうのもなんだが、母の言いつけを守るよい子ちゃんだった。
いや……正確に言えば母の言うことにすべて『はい』としか答えられない子だったが正しいな。
とまぁ、そんな俺は、虫一匹も殺せないほど心身ともに弱かった。
そんな俺の姿に対して母は――
「しっかりなさい。あなたはあの勇者ロトの血を引き継いでいるのです」
「はい」
慰めることはなかった。
いつも母の叱責があった。
それと母の決まり文句“勇者ロトの血“
母曰く、母は、勇者ロトの子孫だそうで、それを誇りにしていた。
だから、ことあるごとに勇者ロトの血を口にする。
勇者ロトの子孫である自分の子なら、勇者で違いないと。
「いい?貴方には、母の……勇者ロトの血を引き継いでいるのです。ただの村人なんかで終わる一生なんて、ありえないことなのよ?」
「はい」
オレは『はい』と答えるしかない。
あらゆることに『はい』と答えるのがロトであるそうだ。
『はい』以外を選ばせてくれなかった。
“疑問”を口にすることができなかった。
「お誕生日おめでとう……今年も王様から呼び出しがなかったわね。どうして……やはりカニ歩きで、人とも満足に会話ができないのが原因なのかしら?」
前述の奇病(カニ歩き)の弊害か、自分から人と会話するには方角をいわなきゃならないということもあり、母からは、むやみやたらに人と会話するなと厳命された。
当然、それに対する俺の返事は『はい』だ。
「だけどいい?必ず貴方が必要とされる日がくるわ。なにしろ勇者ロトの血を継いでいるのですから」
「はい」
誕生日がくるたび、同じ言葉を贈られる。
それが母からの誕生日プレゼント。
俺に脳内に一つの疑問が生まれる。
自分は本当に勇者なのか? 町の子どものように大人になったら他の職業で生活してはいけないのだろうか?…と
だが、俺はその“疑問”を口にすることができなかった。
月日が流れ――
「おお!勇敢なる若者よ!そなたはあのロトの血を引きし者らしいと聞いているぞ」
奇病にかかっていたのが噓のように俺は成長した。
歩行もカニ歩きではないし、いちいち人と会話するまえに『方角』を言う必要もなくなった。
ちなみに母からは『ようやく人並みになれたのね』と有難い言葉を授かった。
そして、俺は王から呼び出しを受けた。
「その昔、勇者ロトがカミから“ひかりのたま“を授かり魔物たちを封じ込めたという」
「しかし、いずこともなく現れた悪魔の化身“りゅうおう”がそのたまを闇に閉ざしたのじゃ」
「この地に再び平和をっ!勇者■■■■よ!“りゅうおう”を倒し、その手から“ひかりのたま”を取り戻してくれ!」
「はい」
今、思えば『はい』と答えた俺はなんとまぁ道化だったのだろう。
幼少期に抱いた疑問を必死に心の奥へ追いやり、与えられた“勇者”という役割を果たそうとしていたのだから。
「わしからの贈り物じゃ!そなたの横にある宝の箱をとるがよい!」
箱には“たいまつ”と“かぎ”と“G(お金)”が入っていた。
つーか、“ひかりのたま”を取り戻してくれというわりには、120Gはケチりすぎだろ。
町一番の武器(どうのつるぎ180G)が買えないとかクソにもほどがある……
それとも何か?ロトの血を引いているなら問題ないというのか?
ふざけるな。大体、俺は奇病のせいもあり、ろくに戦闘経験もない。レベルは1。
もう少し手厚い支援ぐらいしろ。そのくせ、口には出さないくせに愛娘(ローラ)を救ってほしい空気を醸し出すのだから性格が悪い。
「そしてこの部屋にいる兵士に聞けば旅の知識を教えてくれよう」
はじめてのおつかいかよ。……ま、実質、同じようなもんなのが笑えねぇんだけどな。
青年になっても、とびら一つ開けるのに指南を受けなければならない俺への兵士たちのあきれた顔が今でも夢に出る。
「では、また会おう!勇者■■■■よ!」
こうして俺の冒険の幕が上がった。
ステインに話した選ぶことができない冒険が。
☆彡 ☆彡 ☆彡
132
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:57:41 ID:hT4yge/Q0
「ふぅ……ふぅ……流石に休憩が必要だな」
周囲のモンスターをせん滅し終えた。
「だが、コツはつかんできた」
そう、今回このような戦いをしたのは多人数との戦闘に対処するためだ。
この殺し合い、先のステインや決着がつかなかったがエトウカナミのように慣れた一対一(タイマン)なら、よいが、一対一(タイマン)じゃない場合は、アスラン・ザラとライオットのコンビのときみたいに翻弄されて終わる可能性がある。
デク達だけじゃない……あのルルーシュのように、パーティはすでにいくつもできているのが予測できる。
今後、この殺し合いが激化すれば、イドラ達のように多人数から一対一(タイマン)に持ち込むのが難しくなるだろう。
故にNPC相手だが、混戦の経験値を貯めたのだ。
だが、体力気力ともに限界に近い。
幸いランドマークの一つ。雄英高校本校舎が近くにある。
そこで休息をとろうとする。
だが、そこで俺はまさかの人物と対面する。
そうーー
あの売女(ローラ)の父であり、国王のラルス16世がいた
☆彡 ☆彡 ☆彡
133
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:58:03 ID:hT4yge/Q0
「てめぇは……!」
多数の兵士に護衛されしNPCラルス16世
まさかの人物の登場にやみのせんしも目を疑う。
「うむ、息災のようだな」
ラルス16世は、そんなやみのせんしの様子に関係なく話しかける。
今のやみのせんしの風体は勇者というより、ケチな盗賊(カンダタ)と見間違えてもおかしくないのだが、NPCなのもあるのか勇者の認識をしているみたいだ。
「正直、驚いたが、よくよく考えればこれは僥倖だな」
「なにしろ売女(ローラ)だけでなく、ここでクソ王(ラルス16世)も殺れるんだからな」
やみのせんしは、はかいの剣をギュッと強く握りしめる。
そんなやみのせんしの態度を前にしてもラルス16世は落ち着いている。
「それにしても、ずいぶんと身なりが変わったものだ……」
134
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:58:38 ID:hT4yge/Q0
ラルス16世はやみのせんしの風貌に嘆きつつ口を紡ぐ。
「勇者だいすけよ」
135
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:59:11 ID:hT4yge/Q0
「……あ?」
まさかの呼び名に時が止まった。
「いや……まこと。いやいや、たつや…けんたか?たくや…おっと、かずやもおったな……」
やみのせんしの唖然とした様子を脇目にぶつぶつと様々な人名を口にするラルス16世
「……アルス」
やみのせんしはふと、もう一人の名を口にした。
「おお!あるす!そのような者もおった!あとは、しょうたもか」
もう一人のオレの名(アルス)に反応するが、直ぐに別の名も口にする。
……なんだ?ついに耄碌したか?
「はっ!前からイカれていたと思ってたが、ついに狂っちまったというわけか」
「……ふむ。どうしてわしが狂っておるといえるのだ?」
「そりゃそうだろ。意味わからない名前をつらつらと並べやがって、狂ってなきゃなんだっていうんだ」
「ん?まさか……そなた」
「己が“アレフ”だと思い込んでおるのか?」
再び時が止まる。
「……何を言ってやがるんだ?名簿には勇者アルスと記載されている。そして、俺は二人いる。だったら「確かに名簿には、勇者アレフと記載されておる。だが、お主は“違う”じゃろ?」
ラルス16世は、さも当然という風に答える。
「……」
嫌な記憶が想起される。
『まことの勇者なら、盗みなどせぬはずだ』
『お前が本当にロトの子孫なら、そのしるしになるものがあるはずだ』
『そなたがロトの血を引くまことの勇者なら、 そのしるしがあるはず。 愚か者よ!立ち去れい!』
おれは……オレは……俺は……
「お主は、自身の名がアルスと思い込んでいる参加者。なんとまぁ滑稽じゃ」
「おお!思い出したぞ!本当のお主の名「話にならねぇな。もういい、とっとと死ねよ」
これ以上、耳を呪われたくない。
所詮、こいつもNPC。斬り捨てるだけだ。
「王には指一本触れさせん!」
兵士たちが立ちふさがる。
本当にイラつくぜ……好き放題言いやがったアスラン・ザラ以上に。
おい……俺はロトの血が流れているんだろう?
だったら、その真価を見せやがれッ!!!
そんなやみのせんしに心意システムが応えた。
136
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/02(火) 23:59:27 ID:hT4yge/Q0
「……来たれ、■■の雷」
やみのせんしの周囲に雷が降り注ぐ。
「おお……!それは!?」
ラルス16世は驚嘆する。
なぜなら“それ”は、彼の御世には目にかかれない呪文だからだ。
来たれ、○○の雷。
それは、勇者の血を引く者が使用できる雷。
だが、勇者の血を引かなくても勇者の職業によってそれに準ずる技が使える。
例えば、とある漁村の少年は「来たれ、義勇の雷」といったように。
「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
全員まとめて殺してやるぜ――
「来たれ、無冠の雷」
それをはかいの剣に身に纏わせる。
それは、王にも勇者にもならぬ者。冠を拒絶せし雷。
「ギガストラッシュ!!!!!」
「……これで、わしの役目は果たした」
ラルス16世は抵抗することなくお供の兵士とともに焦げ斬り殺された。
今際の際に笑みを残し――
☆彡 ☆彡 ☆彡
137
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/03(水) 00:00:26 ID:s3ryN1rQ0
「羂索、感謝するぜ。俺が望む願いが決まった」
NPCとはいえ、ラルス16世との問答は己のケツイを定めることとなった。
“ロトをこの手で殺す“というケツイを。
そして、クソ王(ラルス16世)を屠った特技の『ギガスラッシュ』は先のデクとの戦闘中に習得した『ギラグレイド』に匹敵する。
やみのせんしは知る由もないが、この一連のレベルアップは、やはり茅場が施した心意システムの恩恵だろう。
「……ふぅ」
NPC共からドロップした強力傷薬をはじめとしたアイテムでダメージは回復した。
疲労はまだ完全に回復しきれていないがこれで、まだまだ戦える。
本当なら、ここで休息しようと考えていたが、さっさと拠点候補の蛇喰病院へ行き、休息しよう。
やはり、ヒーローを育成する場所は勇者を捨てた者には、居心地が悪すぎる。
――ザッ……ザッ……ザッ
「おい、ロト(勇者)」
「オレはお前を殺し、本当の意味での自由を得る。だから……首を洗って待っていろ」
願いは決まった。
あとは叶えるために前進するだけだ。
【エリアC-8/雄英高校本校舎/9月2日午前2時00分】
【やみのせんし@ドラゴンクエスト】
状態:疲労(大)、MP消費(小)、『忍者』『刀使』に興味(小)、決意(大)、
服装:邪樹右龍の忍装束姿(覆面+マント)
装備:はかいの剣@ドラゴンクエストIII、邪樹右龍の忍装束@忍者と極道
令呪:残り三画
道具:黒嵐剣漆黒&骸骨忍者伝&聖剣ソードライバー@仮面ライダーアウトサイダーズ、ジャッ君と土豆の木@仮面ライダーセイバー、ピーターファンタジスタ@仮面ライダーセイバー、ジョーカーのラウズカード@仮面ライダー剣
思考
基本:殺し合いに乗る。他ならぬ自分自身の意思で。そして、優勝してロトを殺す
0:俺は生きる。……もう一人の俺(アレフ)
1:二度と迷わない。方針は変わらない。だが使えるものは使い、ギギストの云うエターナルや魔王グリオン、ルルーシュのような、俺の掲げた『自由』を奪う力を持つ連中相手なら──
2:過去との決別を証明するため、アスラン・ザラは次会った時に殺す。そしていずれはギギストも。
3:蛇喰病院を目指し、拠点に構える。
4:デクとの決着はひとまず休憩
5:忍者?聞いたことの無い名前だが、恐らく強い者なのだろうな。
6:エトウカナミ……だったか。次にあのシビトやクロガネスパナ、ついでにあのドラゴン(ジゴワット)、それにキラ・ヤマトとやらを見つけたらその時は終わらせてやる。
7:俺自身の自由の為に、願いを叶えた後主催者共も殺す。特にケンジャクは。
8:ライダーの力については過信しない。不覚を取るのはゴメンだ。
9:多人数と戦闘するコツはつかんだ。
10:願いは決まった。ロトをこの手で殺す。それでオレは本当に自由となる。
11:俺の本当の名前?そんなのどうでもいい。俺はやみのせんしだ。
参戦時期:竜王の誘いに乗った後
※レベルアップにより全ステータスが向上しました。
※冥黒王ギギストにより力を付与され更に全ステータスが向上しています。
※シビトと化した衛藤可奈美の剣術を一通り視ました。再現可能かは後続にお任せします。
※数々の戦闘を経て以下の特技、呪文を習得しました。
※乱入してきたアナザ―オーズは、参加者ではなくNPCのモンスターだと思っています。(放送で読み上げられたアレフに対する怒りでレジスターに気づかなかった。
※彼の本当の名前は……
※多人数との戦闘センスが高まりました。
しっぷうづき、はやぶさ斬り、いなずま斬り、だいぼうぎょ
バイキルト、ギラグレイド、ギガスラッシュ
138
:
断血の勇者 〜やみのせんしオリジン〜
◆s5tC4j7VZY
:2025/09/03(水) 00:01:04 ID:s3ryN1rQ0
ラルス16世@ドラゴンクエスト1
やみのせんに関連する五道化に限りなく近い個体のNPC
本来、戦闘する人物ではなく、やみのせんしへの影響を与える目的で用意された。
おお ○○○○よ しんでしまうとはなにごとだ!
しかも のろわれているではないか のろわれしものよ、でてゆけっ!byラルス16世
へいし@ドラゴンクエスト1
ラダトームの城の兵士。
ラルス16世は戦闘向きではないため、護衛として用意されたNPC。
これは ○○○○どの。 まるで 見ちがえるようですぞ。
はじめて この城に来たときは たよりなげな気も しましたがな。
おっと これは しつれい わっ はっ はっ はっ。Byへいし
スライム@ドラゴンクエスト1
おそらく日本でスライムといったら上位にはいるモンスター。
ちなみに某コンビニで肉まんとして売られていたことがある。
勇者といっしょに魔王と戦ってきたbyスラきち
ドラキー@ドラゴンクエスト1
コウモリのモンスター。
スライムと並び旅の序盤に遭遇するモンスター。
なにげに初代の箱のイラストに描かれている。
パタパタパタ…byドラきち
キメラ@ドラゴンクエスト1
ハゲタカとヘビの合成獣(キマイラ)
ルーラの呪文と同じ効果で有名なキメラのつばさだが、ラルス16世の御世では、移動手段というより帰還手段のためか、値が張る。
勇者といっしょに魔王と戦ってきたbyスラきち
キメキメ! もうすぐ すみかに着くラー!byキメラ
げんじゅつし@ドラゴンクエスト1リメイク?
じんめんじゅ@ドラゴンクエスト1リメイク?
ともに本来なら、りゅうおうの時代(ドラクエ1)には出会わなかったモンスターだがHD-2D版『ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ』発売日告知トレーラーに登場していたからおそらくドラクエ1で戦うはず。
間違ってたらすみませんッ!bys5t
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