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Fate/clockwork atheism 針音仮想都市〈東京〉Part3

448TOKYO 卍 REVENGERS――(開戦) ◆0pIloi6gg.:2025/06/10(火) 22:41:06 ID:D5Ika2WY0

 視線に熱が籠もった瞬間、戦場は再び脈動を取り戻す。
 レッドライダーの赤黒い身体がわずかに蠢く。
 のっぺりとした頭部に刻まれた眼窩を思わす二孔が、遥か彼方、ビル群の彼方に佇むシッティング・ブルを確かに捕捉していた。
 その刹那。彼の身体に巣くう"兵器の胎"が集団越冬する足の多い蟲のようにひしめき始める。
 泡立つ体表の隙間、肩口、脇腹、脊髄の延長線……あらゆる場所から微細な機構が浮かび上がる。
 それは虫の翅を思わせる金属の羽であり、赤黒く光る機関部であり、鋼鉄の小さな外骨格(パーツ)だった。

 すなわち――無数の超小型戦闘機である。
 宿主の体内から湧き出す寄生虫のように、それらは赤い霧を引いて空へ舞い上がる。
 レッドライダーは兵器を生む赤い沼。いわば活動する空母のようなものだ。

 一斉に旋回、俯角をとり、敵影へと降下開始。
 街路は瞬時に新たな形の地獄に染まった。
 爆撃、銃撃、ミサイル砲撃。空から降り注ぐそれらの攻撃はいつかの戦火をなぞるが如し。
 命死せよと猛る雷火に隙はなく、これに標的と看做された者が生き延びられる確率は真実皆無。

「いつの時代も同じだな。何も変わらん」

 が――そのさだめにさえ否を唱えるが如く。
 地が唸った。風が舞った。
 草木なきコンクリートジャングルの只中に、"大地"の気配が漲った。

「厭なものだ。戦争というのは」

 現れたのは、バッファローに続く精霊の獣たち。
 まず、ビル群の外壁を足場にしながら跳躍し疾走するコヨーテが四方から機影へと跳びかかった。鋼の外殻をものともせず、神秘の牙で喉元を喰い破る。
 かと思えば路地裏から這い出たグリズリーが咆哮し、爆裂で以って十を超える小型戦闘機を撃墜。
 先ほど赤騎士を両断した鷹が旋空飛行で制空権を奪い、霊的な風のうねりで科学の小鳥達を撹拌して粉砕する。
 霊獣たちはシャーマンの呼び声に応じ、厄災討つべしと各々の意思を示し続けていた。

 彼らに号令を下すシッティング・ブル。その目は、静かに冷たい。
 戦場の混沌の中心で呼吸し、彼は全てを視ていた。
 両手には、祈りと戦いの象徴――トマホーク。
 白銀の刃を握り、もうひとつ息を吸う。

 次の瞬間、厳しい顔の男が目を見開いた。
 吹き抜けたのは一陣の風だった。身のこなしは驚くほどに軽やかで、地と空と霊とを纏って一直線にレッドライダーと相対する。
 赤騎士もまた、迎え撃つ。戦場を彩る爆裂の中、彼の躰はすでに新たな兵器形態へと変質を始めていた。
 腹部から突き出した重機関砲の砲身が、空気を揺らす重圧を発しながら殺意を充填していく。

「シィィッ――――!」

 しかし間に合わない。
 シッティング・ブルのトマホークが、騎士の行動を待たずして振るわれた。
 風すら裂く一撃。レッドライダーの頭蓋が、トマホークの一閃に触れるなり風船さながら弾け飛ぶ。
 有機とも無機ともつかない不定形の構造が千切れ、赤い雫が鮮血のように空を舞う。
 霊的な理論と肉体的な習熟の融合が、黙示の影をもう一度、こうして確かに斬殺した。


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