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バトル・ロワイアル 〜Paradisiacal Memories〜

402追想のラグナロク ◆Ok18QysZAk:2025/03/27(木) 02:06:23 ID:yC3WvoJY0
「……気付いてたか。隠密に特化していたつもりだったんだけどね。」



 草陰から出てきたエルフの魔法使い――フリーレンは無表情のまま、戦場へと足を踏み入れた。周囲一帯に漂う薄く張り巡らされた魔瘴は、全身を覆う防御魔法によってその細身に到達することができていない。その点で、フリーレンはナラジアに挑むに足る資格を有する者であったと言えよう。

「僕が大きい力を使ったところを狙い撃ちするつもりだったんだろうけど、残念だったね。」

「……よく分かったよ。
 この世界が粒揃いの化け物だらけだって。」

 名前が増えていた名簿を見て、フリーレンの焦燥は加速した。断頭台のアウラに留まらず、その配下の首切り役人の2人。さらには、黄金郷のマハトと無名の大魔族ソリテール。死んだはずの魔族たちが、当初の認識よりもさらに4体もこの殺し合いに招かれている。

 一緒に招かれている旅の仲間、フェルンとシュタルク。2人とも、少なくとも足手まといと呼べるほど弱くはない。けれど、大魔族を相手取るには半世紀早い。もし、彼らが大魔族たちと衝突する事態が起これば逃げるように伝えてある。どれだけ仲間を信頼していたとしても、実力差という現実的な壁がそこにはある。

 それでも、もしも逃げられない理由がそこにあったら?不意打ち、負傷、人質……幾らでも思い付く。

 巡る思考の中、人よりも長い時間感覚を生きるフリーレンの歩みは、心なしか早まって――故に、早期に魔瘴から発せられる魔力を感知し、この戦場へと赴くことができた。


「……仕方ない、ここは引くとしよう。」



 ――と、そう切り出したのはナラジアだった。

「逃げるの?」

「……奥底の知れないキミと戦うのはリスクでしかないからね。
 もう一人の女の子ももう要らないし、あえて戦う理由も無いさ。」

(……魔力の制限に気付かれている。)

 その言葉に、動揺が走る。
 ソリテールをはじめとした一部の魔族には、自分が魔力制限による力関係の誤認で魔族を欺いている事実が伝わっている。だが、目の前の相手は魔族ではない。魔族と世間話がてら情報交換をするような人物でも無さそうだ。

 つまり――この僅かなやり取りの間に、違和感を持たれ、気付かれた。それだけでも、ナラジアが只者ではないと分かる。むしろ、存在としての格は、かの"魔王"にも――

「逃がすと思ってるの?」

 ――ノイズでしかない思考を辞める。ポーカーフェイスを崩さないまま、話を続ける。

「逆に、逃げない方がいいかい?
 僕はそれでも構わないよ?
 どちらかが死ぬまで殺し合おう。」

 だが――実力差は明確だった。

 ここに立っているだけでも、魔瘴を防ぐための防御魔法を常時展開している必要があり、魔力の消耗が激しい。そんな中、一度撃ち合った魔法力からの概算でも自分に匹敵する魔力を有しているばかりか、さらに力を隠しているであろうナラジアと継続的に戦闘をすることになればどうなるか。

 今の自分では、勝てない。
 自分の魔法で、勝利するイメージが湧かない。

 それほどまでに、目の前の"神"の力は圧倒的だった。

 追撃の意思がないことを示す。

「……懸命だね、フリーレン。
 せいぜい、頑張って。」

 ナラジアが最後に残したその言葉の意味するところを、私はまだ分かっていなかった。


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