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決闘バトルロイヤル part4

472融合準備 ◆EPyDv9DKJs:2025/03/28(金) 23:26:06 ID:o/DhURPE0
「イタタタ……此処何処よ!?」

 ブラックホールはブラックホールでも、
 野獣先輩のブラック・ホールに巻き添えにされたキャルであった。
 クッソ汚いホモ……なんて表現の仕方は当然キャルが思うはずもないので、
 薄汚れた茶色のおっさんに色々面倒なことをさせられて怒り心頭と言った状態だ。
 あの状況だ。誰がどうなったかなんてものは分からないし、
 場所を見るに南東よりだ。いくら怪獣に変身したところで、
 こうして自分がどこかへ飛ばされた以上、他の仲間も飛ばされただろう。
 運良く残っていたとしてももう病院にいる理由がないので移動も始めてる。
 要するに、行くだけ無駄な状況と言うことになってしまっている。

「と言うか何なのよ!? いきなり竜になったり、
 ブラックホール作ったり! 七冠以上に無法じゃない!!」

 わけがわからない。
 あの男は一体何なのだ。
 神が面白半分で作り上げたミームの化身など、
 誰がどうやったって理解できるはずがないので普通の反応である。

「……ってあんた大丈夫!?」

 そしてようやく万丈の姿に気づき、
 転倒してるDホイールも相まって状況を察する。

「いやお前が出てきたからこけたんだけどな!?
 交通事故とか俺に冤罪増やすのマジでやめろよ!?」

 冤罪で刑務所に入れられた見だ。
 こんなところでも誤って人を轢く、
 なんて洒落にならないことはしたくない。
 まあ、幸いなことにお互い大事にはならなかったのだが。

「ってか、ひょっとしてだけどゲントクが言ってたバンジョウ?」

「! 誰かに会ったのか!?」

 本戦が始まって間もないころ。
 怪獣となって暴れていた時にみふゆと出会い、
 それと一海とも交流があったらしい承太郎達との情報を交換する。
 或人一人に執着して竜郷どうしても情報が乏しくなっていたところだったが、
 ここにきてどっと押し寄せてくる情報は朗報、

「悪い、頭整理させてくれ。」

 なわけがなかった。
 万丈はお世辞にも頭がいいとは言えない。
 だから鬼だ魔法少女だデュエリストだの謎の男だの、
 情報過多になれば当然この男ではパンクを起こすに決まっている。

「……でもまあ、あいつらしいか。」

 一海の最期。
 承太郎からの又聞きの、キャルからの又聞き。
 だから具体的な情報が与えられているわけではないものの、
 あいつらしく真っすぐに戦って散っていったのは、納得がいった。
 それでも、できることなら会いたかったと言うのが本音ではあるが。

「このDホイールの持ち主もいたのか……合流できりゃよかったんだがな。」

 別の乗り物で代用してはいるようだが、
 やはり馴染んだ乗り物の方が快適に乗れるだろう。
 そういう意味でも合流を果たしたかったが今となっては栓なきこと。
 今から病院に向かっても、もういないと見た方がいいのだろうと。

「で、此処どの辺?」

「地図的にみりゃ多分G-7だ。」

「幸か不幸か、近づいたってわけね……」

 メダルガッシャーの場所はG-6。
 隣のエリアにいけば当初の目的地に辿り着ける。

「あたしG-6の研究所に行かなきゃなんないけど、そっちはどうするわけ?」

「ゲ、逆走か……けどあいつがいねえとも限らねえし、行ってみるのもありか?」

 研究所で有用なものや、
 滅を探すために時間をかけてる可能性もある。
 それならば逆走と言う形になってしまっても探すメリットはあるかもしれない。
 少し苦い顔をしていたものの、キャルを乗せる……とは言うがおぶる状態になり、
 より安全な運転で目的地へと向かう。





「なんつーか、いかにも悪党の秘密基地って感じだな。」

「怪獣のメダルが作れるってこと考えたら、そんなもんじゃないの?」

 薄暗い、緑の光が不気味さを漂わせる地下施設と言ったところだろうか。
 スマッシャーの研究施設とか、そんな風に言われても一切の違和感がない場所だ。

「で、何しにきたんだ?」

「いや話聞いてなかったの? 此処で変身用のメダルを作る為よ。」

473融合準備 ◆EPyDv9DKJs:2025/03/28(金) 23:26:21 ID:o/DhURPE0
 意思疎通はできるのだが、微妙に物覚えが悪い。
 説明したはずよねと逆にキャルが疑問を持ってしまう。
 漫才のようなやりとりを交わしながら歩いていると、見つかるのは一つの釜だ。
 手回しハンドルがついてたり現代よりではあるが、此処が目的地の最終地点だと確信を持つ。

「えーっと材料入れてこのハンドル回すんだったわよね。」

 『本当にこんなんで怪獣になれんのか?』と興味深そうに釜を眺める万丈。
 子供かアンタはと突っ込みたくなるような行動にツッコミを入れる気すら失せながら、
 回収したモンスターの材料を釜へと放り込み、近くにあった液体の便の中身を流し込む。
 丁寧に手順があったので操作に手間取ることはなく、手回しハンドルを回転させると
 カランと、パイプのを伝ってメダルが出てくる。

 何とも奇妙だ。
 ファンタジーの錬金術とかそういう類の行為から、
 出てくるのは現代的なメダルと言うこの謎の光景は。
 物珍しそうにメダルを万丈が拾い上げると、それをキャルが取り上げる。
 後は同じことの繰り返しだ。メダルを生成を間違えないよう丁寧にやっていく。
 結構素材は集めたつもりだったが、サイズが小さすぎたか何かしらの制限か、
 できたメダルは十五枚、組み合わせしだいでもあるが基本は五種類だろう。

「じゃ、試すから……念のため大分離れておきなさいよ。でかいから。」

「でけえのか!」

 念のためそれなりに距離を取りつつ
 最初の時のように変身の準備を行う。

『モモチ・アクセスグラッテド!』

「グリムフュージョン!」

『ギアソルジャー! ワイバーン! ギアボックス!』

 新たなに作ったメダル。
 機械的な兵士や竜、箱をベースとしたモンスターをメダルにセット。

スロットをスライドさせメダルを読み込み、最後に天高く掲げる!

「チェンジ・モンスターフォーム!」

『アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム!!』

「でっけぇ……」

 仮面ライダーは基本的には人とガーディアンと、
 全体的には人か、一回り大きい敵と戦うのが殆どだ。
 ガーディアンが合体させて巨大化したりといったことはあるが、
 生身の人間(ケモ耳はあるが)がいきなり巨大な怪物に変身できる。
 特別驚きはしないものの、すげーと感嘆の声を上げるのは万丈らしくもあった。

「後の奴も試しておこうかしら……」

 いくら新しい力を得ても、
 肝心な時に使い方が分からないでは困る。
 だから他の変身も試しておくことにした。
 因みにギガトン・ゴーレムは外見の巨体さとは裏腹に、
 承太郎のスター・プラチナにも劣らぬ連続攻撃ができた。
 加えて魔法・罠を封じることで安全な攻撃を通せる手段になりうる。

 二体目はキャル以上に獣人になった、獣戦士の剣士。
 月光舞獅子姫。こちらも二回攻撃できるのは魅力的だが、、
 それ以上に強みなのはカードへの耐性、及び戦闘を行えば、
 モンスターを一掃できる。NPCや支給品の一層にもつながる手段

 三体目は人型によった、白を基調としたモンスター。
 E・HERO  Core(エレメンタルヒーロー コア)。
 このカードは全体的に守備向けで、攻撃的なものより悪くはない。

 他の二体も試して、
 ひとまず最低限のことは覚えておく。
 結果としては大正解だ。十分に戦える。
 これでもカイザーインサイトと言った上位に位置する、
 危険人物に対抗できるのかは怪しくあるのが恐ろしいところだが。

「終わったのか?」

「ええ、ひとまずね……って、アンタなんでいるのよ。人探ししてるんでしょうが。」

「いや変身途中に妨害されたらあぶねえだろうが。」

「……それもそっか。そこは礼をいっとかないとね。」

 キャルの変身はメダルを三枚セットする工程だ。
 どうしても変身に長引くし、危険な敵がそれを待つ暇を与えないだろう。
 転がりながら変身、も最悪メダルを落としてしまう可能性もあるので納得だった。

「でもまあ、大丈夫なら俺は行くぜ。
 或人にあったら、無理は言わないが止めてくれると助かる。」

「ええ、分かったわ。」

 移動手段は怪獣やモンスターになれる。
 それならば、移動は困らないだろう。
 研究所から出てDホイールに跨ると、快速で走りだす。
 キャルもCoreへと変身して、警戒に壁を上っていく。

【G-5/一日目/午前】

474融合準備 ◆EPyDv9DKJs:2025/03/28(金) 23:26:41 ID:o/DhURPE0
【万丈龍我@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、運転中
[装備]:龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、遊星のDホイール@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品一式、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、クローズドラゴン@仮面ライダービルド、火炎剣烈火&聖剣ソードライバー@仮面ライダーセイバー、ガトリングフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]
基本方針:主催の奴ら全員倒して殺し合いを潰す。
1:或人を追い掛ける。急いで見付けねえとヤバいだろ
2:遊戯って奴が心配。
3:檀黎斗はもう絶対に許さねぇ
4:戦兎ならクレヨンの腕も直せる筈だ
5:戦兎、玄さん、絶対生きてろよ
6:エボルト、滅、DIOを警戒、特にエボルトは一度共闘したからって信用出来るわけねぇ
7:爆発頭野郎(パラダイスキング)は次に会ったら絶対に倒す。
8:他にも仮面ライダーがいるのか知りてぇな
9:俺のフルボトル(ドラゴンフルボトル)はどこいったんだ?出来たら知りてぇな
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。
※キャルと情報交換しました。
※万丈がどの方角へ向かったかは後続の書き手に任せます。
 また或人やDIOの正確な位置を把握していない為、同じ方へ向かったとは限りません。

【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
[状態]:疲労(絶大)、ダメージ(中)
[装備]:ウルトラゼットライザー+ウルトラアクセスカード@ウルトラマンZ、怪獣メダル(ゴルザ、メルバ、超コッヴ、ガンQ、レイキュバス)@ウルトラマンZ」、E・HEROCoreに変身中
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、詳細地図アプリ@ロワオリジナル、ウルトラマンベリアルメダル@ウルトラマンZ、メダル(古代の機械兵士、古代の機械飛竜、古代の機械箱、月光???、月光???、月光???、E・HERO??? E・HERO??? E・HERO??? ???×6)
[思考・状況]
基本方針:クロトや覇瞳皇帝からコッコロたちを守るために更なる力を求める。
0:とにかく移動して皆を探す。
1:メダルは手に入った。あとはやるだけよ。
2:途中誰かに出会ったら、覇瞳皇帝に関して警告し、コロ助への伝言を頼む。
3:エボルト、里見灯花、柊ねむ、カイザーインサイトを警戒。
4:こんな力、強さじゃないってわかってる。けどこれで守れるものがあるなら……。
5:ヤバいってのは十分承知。でもあたしに力を貸しなさい、ベリアル。
6:あの茶色野郎(野獣先輩)ふざけんじゃないわよ、次会ったらタダじゃおかないわ…。
[備考]
※ウルトラゼットライザーは、アクセスカード、
 ファイブキングを構成する怪獣のメダル5枚で一個の支給品扱いです。
※ウルトラアクセスカードは、一番最初に支給された参加者の物のみ支給されています。
※ウルトラゼットライザーは変身の際に、
 インナースペース(安全圏)にいる時間が短くなる様に、
 怪獣の力が本来のスケールで出せない調整されています。
 恐らく、ウルトラマンに変身する際も、同様であると考えられます。
※回収したNPCの残骸の詳細は、後の書き手様にお任せします。
※万丈と情報交換しました。
※キャルの他の変身できるモンスター、怪人が何かは後続の書き手にお任せします

475融合準備 ◆EPyDv9DKJs:2025/03/28(金) 23:27:04 ID:o/DhURPE0
投下終了

476融合準備 ◆EPyDv9DKJs:2025/03/28(金) 23:27:17 ID:o/DhURPE0
です

477融合準備 ◆EPyDv9DKJs:2025/03/28(金) 23:29:10 ID:o/DhURPE0
すいません場所間違えました
【G-6/一日目/午前】

478 ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:32:19 ID:aeZHeRXk0
投下します

479スタンバイフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:32:46 ID:aeZHeRXk0
『仮面ライダービルドこと桐生戦兎の相棒である俺、エボルトは単独行動から戦兎の元へ戻ろうとしたとき、わるーい魔女に襲われている可憐な少女たちと遭遇した。
 俺は咄嗟にその少女たちを庇って魔女と戦い、華麗に撃破。
 おいおいこれってひょっとしたら、女っ気のない戦兎と違って俺はいわゆるハーレムルートって奴に入ったか?』
『多分ですけどあなたハーレムとか別に欲しくないですよね』
『しかし少女たちに俺は刺激が強かったのか、どうにも避けられているようで。つれないねえ。
 とはいえ仲良しこよしはともかく情報交換くらいはしたいもんだ』
『どう考えてもあなたのムーヴの問題なんですよね……』
『さてどうなる第88話』
『ずっと無視ですか!?  このルビーちゃんを!?』





 戦いは終わった。
 復讐の魔女と希望の魔法少女の戦いは、途中から現れた地球外生命体の手によって終わりを迎えた。
 そこに横たわるは首から上が切り離された魔女の肉体。
 首輪を取るために、エボルトによって斬られたルナの遺体だ。

 エボルト―この場にいるイリヤとチノは未だその名前を知らないが―の振る舞いに文句をつけることはできない。
 ルナ―これまたイリヤ、チノ、エボルトが名前を知ることは永遠にないだろう―は理由がどうであれ殺し合いを是として動き、イリヤ達に殺意と攻撃を向けていた。
 ならばこれも因果。この決闘で氷室幻徳が持つスカルメモリの、本来の所持者の言葉を借りるなら「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけ」ということだろう。

 だからと言って救いの手を伸ばしてはならないということではない。
 イリヤはルナを、名前も知らない少女を救いたかった。
 されどその望みはもう叶わない。
 それをエボルトのせいだと責めることもできない。
 そうしなければ己の命はもとより、隣にいるチノの命も危うかっただろう。
 イリヤは、救いの手をと叫ぶほど身勝手にはなれなかった。
 
 そして首輪を手に入れる為に首を切り落としたことも、殺し合いの打破を考えるなら仕方のないことだ。
 文句をつけるのは、少々無作法というものだろう。

「……」

 それらを差し引いてなおイリヤは、いや彼女のみならずチノもルビーも、目の前の地球外生命体に対し警戒心を解けなかった。

『オイオイ。いくらなんでもそりゃないだろ。俺は命の恩人だぜ?
 どっかのてんっさい物理学者みたいに正義のヒーロー、仮面ライダー扱いしろとは言わねえけど、カワイ子ちゃんにはもうちょっと愛想よく接して欲しいなあ?』

 エボルトはそんな二人の対応に対し軽口を叩くが、当の二人は何も返さない。
 彼の言葉にこちらを安心させようとか、宥めようという意図はないのが伝わってくる。
 彼は言葉とは裏腹に何一つ気にも留めていない。
 あるのはただ、まるでこちらを見定めるかのような不躾な感覚だけだ。
 するとそこに――

「大丈夫か二人とも!?」

 遊戯とロゼが飛び込んできた。
 零という犠牲を出しつつもジャンヌを退けた彼らは、悲しみに暮れる間もなく仲間であるイリヤとチノの援護にやってきたのだ。
 しかし目の前の光景は想像と少々違っていた。

 熾烈な争いが行われた形跡はある。
 しかしそこにいるのは二人の仲間と、得体のしれない人型の怪物としか言いようない何か。
 そして最後に、見覚えのない服を着た、首が切り離された少女の死体。

「どういうこと……?」

 情景だけでは今一つ把握できない現状に、思わず戸惑いの声を漏らすロゼ。
 それに答えたのはルビーだった。

『平たく言うなら、こちらで亡くなっている方が最初にイリヤさん達を襲ってきて、それをそこの得体のしれない地球外生命体に助けられた、という感じですね』
『そう思ってるならもっと感謝してもバチはあたらねえぜ?』

 ルビーの棘のある物言いに軽く苦言を呈すエボルト。
 本来ならエボルトの言い分の方が通りそうだが、誰も反論をしない。
 しかしいつまでも無言でいる訳にも行かず、代表して遊戯が口を開く。

「仲間を助けてくれたこと、一応礼は言っておくぜ!
 だから忠告だ。そのあからさまに人を自分に都合がいいかどうかでしか判断してない態度をやめないと、痛い目を見ることになるぜ!!」
『はいはい。忠告どうも。武藤遊戯くん』

 名乗っていない自分の名前を呼ばれ、一瞬虚を突かれる遊戯。
 しかし最初の場で自分の名前が呼ばれているのは、おそらくほぼすべての参加者が見ているはず。
 それと名簿を合わせれば名前を特定するくらいは難しくない、と遊戯は結論を出す。

 一方、遊戯の忠告を軽くいなしたエボルトは、諦めたように息を吐く。
 そもそもエボルトは遊戯の言う『痛い目』を、既に一度見ている。
 しかしなお変わらずこうなのだから、彼は微塵も変わるつもりはない。
 それをいっそ言ってやろうかと考えた所で――

480スタンバイフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:33:06 ID:aeZHeRXk0

『御機嫌ようプレイヤー諸君。まずはおめでとうと言わせてもらおう』

 その前に、檀黎斗の放送が空気を裂く。
 ここから始まるのは神を語る男の、無慈悲かつ苛立ちを感じさせる情報の羅列。
 聞くに堪えない嘲笑が誰の耳にも聞こえるが、誰もが聞き逃すことを許さない。

『続いては君達が最も気になるだろう情報…そう、脱落者達の発表だァ!』

 禁止エリアの発表もそこそこに、腹立たしくも正しい分析をする檀黎斗の発表を、エボルトすら黙って聞いていた。

『御伽龍児』
『城之内克也』
「……っ!!」

 遊戯が反応したのはこの二人。
 最初こそいがみ合ったものの中を深めた御伽と、決闘者として、友として絆を深めた城之内の死に、遊戯は思わず動揺を隠せない。

『猿渡一海』
「おっ」

 エボルトは己が知る仮面ライダーの死に反応するも、何を思っているのかは外から読み取れない。
 ただ強いていうなら、面倒そうな顔を浮かべたようにその場にいた面々には見えた。

『白鳥司』
『涼邑零』
「「「「……」」」」

 仲間である二人の名前が聞こえ、遊戯、イリヤ、チノ、ロゼの四人は神妙な顔を見せる。
 遊戯とロゼは司が、イリヤとチノは零がなぜこの場に顔を見せていなかったのか、薄々察していたとはいえここで確定してしまうのは、やはり辛い。

『天々座理世』
「リゼさん……」

 そしてチノは追い打ちの様に、ラビットハウスで共に過ごした友人ともう会えないことを知った。

『以上30名。ン素晴らしいッ!!君達は私の予想を超えて、実にゲームを盛り上げてくれたッ!』
「何で、そんなこと言えるの……!!」

 檀黎斗のプレイヤーに対する言動について、命をなんだと思っているのかとイリヤは怒りを燃やす。
 この世の全てが自分のゲームの為にあるとでも思っているのか。
 そんなことを本気で考えているから、こんなことが出来て、そんなことが言えるのか。
 しかし放送は彼女の怒りなど聞き届ける筈もなく、無慈悲に続く。

『優勝者への褒美を、死をも覆す権利を、ゲームマスターにして神の私が約束しよう』
「随分豪華賞品じゃねえか。どっから調達してきたんだか」

 エボルトは檀黎斗の語る内容に思わず零す。
 死者の蘇生などそう簡単なものではない。なにせ自身の蘇生ですら不完全もいい所なのだから。
 それも万丈に自分の遺伝子があるからであり、他者となればするしないは別として、できるかどうか不明である。
 にも拘わらず檀黎斗はすると宣言している。
 本当である保証はどこにもないが、仮に本当ならどうやって実現するのか疑問は尽きない。

 なので、その答えに辿り着くべく少しでも情報が欲しいので、エボルトは目の前の集団から情報を引き出したいのだが――

(無理だなこりゃ)

 エボルトは、それを無理と考えた。
 理由は、さっきの放送にある。
 放送で呼ばれた人数は40人。参加者が112人なので実に三分の一近く。
 それだけいれば、知人の一人や二人呼ばれていても不思議ではない。
 事実、この場で元の世界の知人が呼ばれているのはエボルト含めて三人いる。
 そしてエボルトはともかく、残りの二人はその事実に動揺する類のお人よしだ。

 その二人が落ち着くまで宥めるなり待つなりして話をするという手もあるが、そこまで待つ気にはなれないし、戦兎の印象が待たせ杉で最悪になる。
 元々最悪ではあるが、行動を縛り無駄にとどめるせいで決定的な仲たがいをするのはエボルトとしても不本意だ。
 ここは首輪一つにラストパンドラパネルブラックと六つのブラックロストフルボトルを戦果として一度撤退し、情報交換は後に回すとしよう。

481スタンバイフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:33:29 ID:aeZHeRXk0

『んじゃ、俺帰るわ』
「えっ?」
『おや、あなたはイリヤさんを何やら舐めるように見つめていたと思ったのですが』
『俺にそんな趣味ねえよ』
『えっ……じゃあまさか、私を?』
『構造的な意味なら興味はあるなあ。解剖していいか?』
『ダメに決まってるでしょう! ルビーちゃんはお触りNGです! 握手会出禁にしますよ!!』
『手どこだよ』

 ルビーの軽口をエボルトは切って捨て、疑問符を浮かべたイリヤに対し軽く意図を説明し始める。

『本音としちゃ情報交換したいんだが、今のお前らには少々時間が必要そうだからな。
 俺はオーエド町に戻るから後でもう一度会おうぜ。
 いや、時間がかかるようならこっちに来てくれてもいいぜ。首輪解除の当てもあるしな』

 そう言ってエボルトは地図を広げ、ある場所を指差す。
 そこはやちよと合流を約束した場所である。
 エボルトはどちらの場所を教えるか考え、結局両方教えるのだった。
 首輪解除のあてがあると聞けば無視はできないだろうし、また会えるのなら今はそれでいい。

「……驚いた」
『何がだよ、剣持った嬢ちゃん』

 するとロゼが言葉を零す。
 それは本当に思わず出てきた言葉だったが、彼女は構わず続けた。

「あなた、気遣いとかできるんだ」
『心外だねえ』

 ロゼの言葉にエボルトは肩をすくめるも、即座に背を向けてこの場を去っていこうとする。
 しかし、すぐに足を止めると彼はこういった。

『おっと、名前を言っていなかったな。
 俺の名前はエボルトって言うんだ。よろしくな。
 せっかくだしお前らの名前も教えてくれよ。あ、武藤遊戯くんは別にいいぜ』

 エボルトの唐突な自己紹介と、名乗りの要求に少し戸惑う一同。
 しかし要求に従わず黙っているのにも危険があるように感じたので、遊戯以外は結局名乗ることにした。

「イリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
「私はロゼ」
「香風、智乃です……」
『オッケー覚えたぜ。
 じゃ、また会おうぜ武藤遊戯と嬢ちゃんたち。チャオ♪』

 それだけ言ってエボルトは今度こそ去っていく。
 その姿に、その場にいる誰も声を掛けることはなかった。


【D-3/一日目/朝】

【エボルト@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ブラッドスタークに変身中
[装備]:トランスチームガン(ワープ機能6時間使用不可)+ブラックコブラロストフルボトル@仮面ライダービルド、ラストパンドラパネルブラック+ブラックロストフルボトル×6@仮面ライダービルド、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品一式、じわじわキノコカン@スーパーペーパーマリオ、ブレイクスルー・スキル@遊戯王OCG((1)の効果6時間使用不可能)、ルナの首輪
[思考・状況]
基本方針:生存優先。あわよくば未知の技術や檀黎斗の持つ力を手に入れる。
1:戦兎達の元へ戻る。ここでこいつらから情報聞き出してたら、いくらなんでも時間をかけすぎでキレられそうだ。
2:戦兎と共闘しつつどこまで足掻くのか楽しむ。仲良くやろうぜ?
3:エボルドライバーを取り戻す。元は内海の?知らねぇなァ。
4:ロストボトルを回収しパンドラパネルを完成させる。手間を掛けさせないで欲しいんだがな。
4:正攻法じゃあ檀黎斗を倒すのは難しいか。
5:カイザーインサイトを利用。2回目の放送後に桜ノ館中学校で合流。戦兎には何て言おうかねぇ。
6:やちよの声はどうにも苦手。まぁ次に会えたら仲良くしてやるさ。
7:また会おうぜ、武藤遊戯に嬢ちゃんたち。
8:猿渡死んじまったか。戦兎の奴どうなるかな。
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』で地球を去った後。
※環いろはの姿を写真で確認した為、いろはに擬態可能となりました。
※トランスチームガンのワープ機能は一度の使用後、6時間経過しなければ再使用不可能になっています。

482スタンバイフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:34:01 ID:aeZHeRXk0





『エボルトさん、アバンであらすじしてた割にあっさりいなくなりましたね』
「ルビーは何の話をしてるの……?」

 エボルトとの邂逅を終えた遊戯達は、一度エーデルフェルト亭のまだ壊れていない部分に移動した。
 心の整理をするにしても、外に居たままではNPCしかり他の参加者に襲われる可能性が高くなる。
 なのでとりあえず適当な一室に移動し、たどり着いて最初の発言がルビーのとぼけた言動とイリヤのツッコミだった。
 しかし内容に反して二人の声色に元気はない。
 当座の脅威が消えて、この場にいる一同が感じるのは仲間、友人を失った悲しみ。
 もし幸いなことがあるとしたら、今この場であるD-3を禁止エリアに選ばれなかったので、そそくさと移動する必要がないことくらいだろうか。

「なんで……」

 静寂が漂うエーデルフェルト邸にて、チノのささやくような声が響く。
 マヤの死を見た時に流れた、一度拭われた涙がもう一度溢れる。
 その涙と共に堰を切って溢れるのは、血を吐くような叫びだった。

「なんで私達がこんな目に遭わなきゃいけないんですか……!
 マヤさんが、リゼさんが、零さんが、司さんが……何か悪いことをしたんですか……!!
 私達が一体、あの檀黎斗って人に何をしたっていうんですか……!!」
「チノ……」

 感情のまま泣き叫ぶチノに対し、ロゼは前の放送の時の様にまた抱きしめて頭を撫でる。
 チノの問いに対し答えを出せないロゼができるのは、これくらいしかない。

 答えが出せないのはイリヤも遊戯も同じだ。
 とはいえ、その答えは今ここで出せるものではない。
 ならばやるべきは次どうするかの行動を決めることだろう。
 そう考えたイリヤは遊戯の方を見る。

「すまない皆。少しだけ、俺を一人にしてくれ……」

 だが遊戯の口から出た言葉は、憔悴したものであった。
 しかしそれも無理はないとイリヤはすぐに思い直す。
 何せ、遊戯から聞いていた友達が二人も放送で呼ばれているのだ。
 本当は、チノと同じ様に泣きたくてもおかしくないはずだ。
 なのでイリヤが何かを言おうとするも――

『遊戯さん、行っちゃいましたね』

 それより先に遊戯は部屋を出て行ってしまった。

「待ってよっか。ルビー」
『その間、少し考えることもありますしね』

 こうなればイリヤとルビーにできるのは待つことのみ。
 とはいえ考えるくらいはできるだろうと、二人は思索を始めるのだった。

483スタンバイフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:34:34 ID:aeZHeRXk0





 部屋を出て行った遊戯がいるのは、部屋から少し離れた場所の廊下だ。
 仮に部屋で何か大きな物音がすれば即座に戻れるような位置に彼は立つ。
 そして――

 ガン!

「檀、黎斗……!」

 遊戯は近くの壁を殴りつけた。
 彼が浮かべるものは怒り、憎しみ。
 友の、いや友を含む四十という多数の人間の死をエンターテイメントの様に扱う檀黎斗への、猛烈な怒り。

『もう一人の僕……』

 そんな遊戯を、精神の内側でもう一人の彼、表の遊戯が見つめている。
 表の彼が浮かべるのは悲しみであると同時に、闇遊戯への心配だ。

「分かってるぜ相棒。檀黎斗は許せない。
 だけど憎しみや怒りに囚われたまま進んだりはしないさ」

 そんな表遊戯を安心させるべく、闇の遊戯は声に出す。
 檀黎斗に対して怒りはある。憎くないかと言われれば嘘になる。
 だがそれでは駄目だ。

『憎しみ、怒り、そんなもの束にしたって俺には勝てないぜ!』
『憎しみを重ねてもそれは……脆い!!』
『憎しみと怒り、そんなもので勝利の重圧を受け止められるか!』

 バトルシティ準決勝第二戦においてライバル、海馬瀬人に己が語った言葉が蘇る。

『相棒! 相棒おおおおおおおおお!!』
『速攻魔法発動! バーサーカーソウル!!』
『相棒……! やめてくれ!!』

 憎しみに囚われた結果、どうなったかも己の経験が語っている。

「あの時は相棒や周りのみんながいたから何とかなった。
 だけど同じ間違いを二度も繰り返したりはしないぜ」
『うん! 信じてるよもう一人の僕!!』

 二人の遊戯は対話を経て、決意を新たに固め直す。

(見ていてくれ城之内君、本田君、御伽君。それから牛尾さん。
 俺は真の決闘者として戦い、必ず殺し合いを止めて檀黎斗を倒してみせるぜ!)

 ザッ

「出遅れちまったようだな」
「だけど誰かいるぞ……って、あいつはもしかしたら……」

 するとどこからか聞き覚えのない二人の声が聞こえた。
 二人は警戒することなく遊戯の元へ近づき、声をかける
 声を聴いた遊戯が心持ち警戒するが、次の言葉を聞いて警戒を解く。

「あんたが武藤遊戯か。話は不動遊星から聞いてるぜ」
「遊星くんに会ったのか!?」

 現れた二人のうち、海賊のような服装をした異形の右腕を持つ男、蛇王院空也の言葉は、遊戯から警戒を消すに足るものだった。
 空也はそんな遊戯に対し話を続ける。

484スタンバイフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:35:03 ID:aeZHeRXk0

「ま、今は別行動中だがな。とはいえ随分あんたを買ってたのは間違いねえさ。
 それにさっきの態度を見てたら信用できるのも納得はいくってなもんだ」
「そうか。遊星君が世話になったようだな。
 それで、そっちの君も仲間なのか? 決闘者なのはすぐに分かったが」
「神代凌牙、決闘者だ。空也とはさっき会って共闘したってだけで、その遊星って奴とは別に会ってねえよ。
 それはそうと、てめえが相当やる決闘者ってのは見れば分かるが、デッキはどうした? 支給されてねえのか?」

 凌牙の質問は酷く当然だ。
 遊戯がどれほどの決闘者なのか、凌牙レベルの実力者ならある程度の察しは付く。

「つくのか?」
「決闘者には特有の殺気があるからな。凌牙もそれを感じたんだろうぜ」
「そんなところだ」
「そんなところなのか?」

 カードゲーマー特有の殺気ってなんだよ、と空也はツッコミを入れようかと思ったが、迷っている間に二人の話は進んでいた。

「話を戻すが、そうだ。俺のデッキは支給されてない」
「俺には支給されてるんだがな……いや、遊馬にも支給されてなかったな」
「そういや遊星もそんなこと言ってたぜ。代わりにかなり使いにくそうな代物だったけどな」

 そう言って空也は遊星に支給されていたホカクカードとデュエルディスクについて説明をした。
 すると説明を受けた二人は思わず顔をしかめる。

「確かにこの決闘なら多少は何とかなるだろうが……デュエルモンスターズはモンスターだけじゃない。
 魔法や罠とのバランスが大事なんだ。そんなデッキじゃいくら遊星君でも満足に戦えないぜ!」
「全くだ。フルモンデッキって構築もあるにはあるが、あれは練りに練ってやるもんだ。
 この決闘に出てくるNPCでくみ上げるにしてもかなりキツイだろうな」

 単にデッキを支給しないだけならまだしも、そんな特殊な代物を代わりに寄越し、挙句下手をすればそれ以外の支給品を奪われているかもしれない。
 最早恨みでもあるのかと言いたくなる采配である。

「どうにも自分で実装した決闘を持て余してるようだし、その弊害が出たってところか」
「なんだそりゃ。大した神様もいたもんだぜ」

 遊星の処遇について遊戯が推察すると、それに対し空也が軽口を叩く。
 自分で実装した要素に振り回された挙句プレイヤーに不利益を押し付けるなど、ゲームマスターとしては三流もいい所だろう。
 もっとも、そもそも始めたゲームからしていささか一流とは言えないと遊戯は付け加えるだろうが。

 一方二人の話に対し、凌牙は神妙な顔で口を挟む。

「神様なんて大したもんじゃねえよ。真の決闘者三人がかりなら倒せる程度のもんさ」
「そうだな。真の決闘者にとって力なんてまやかしにすぎない」

 凌牙の言葉に同意する遊戯。
 とはいえ凌牙にとっての神はドン・サウザンドであり、世界の支配すら間近だった存在である。
 たいして遊戯の語る神は三幻神。資格こそ必要なものの、決闘の中で従える存在だ。
 この決闘の中では支給品として扱われたり、ネットの情報の集合体である参加者が変身したりしている程度のものである。

 そんな認識の隔たりが二人の間にあるが、それが埋まるかどうかは現状分からない。
 別に埋まらなくてもそこまで支障はない。

「なあ、ゲーマー二人。仲いいのも結構だけどよ、そろそろ話し進めていいか?」
「……ああ悪ぃ。なあ遊戯、こうして話をしてると分かんねえかもしれないけど、こいつ結構怪我やばいんだよ。
 何か治療できそうなカードか何か持ってないか?」
「あいにく俺の手持ちにそういった物はないが、仲間が持っているかもしれないな。
 ついてきな! 案内するぜ!!」

 遊戯はそれだけ言って二人に背を向け歩き始める。
 その背を二人は追うが、一人空也はある疑問を覚えていた。

(どう見ても遊戯より遊星の方が年上だよな。
 なのになんでどっちも遊戯が目上ってノリで話してんだ?)

485メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:35:34 ID:aeZHeRXk0





「おかえりなさい遊戯さ……」

 チノ、ロゼ、イリヤの三人の元へ戻って来た遊戯を最初に迎えたのは、イリヤの途中で途切れたおかえりだった。
 しかもそれも無理はない。
 何せ遊戯と共に知らない男が二人もやってきたのだから。
 しかも一人はどこかタコを思わせる奇天烈な髪形をしており、もう一人はいかにも海賊と言わんばかりの恰好をしている上に右腕は異形の物と化している。
 正直戸惑いを超えて警戒心すら湧く二人組だった。

『フック船長にでも憧れてるんですか?』
「誰が好きで腕をこんなにするんだよ」

 そんな相手に対しルビーはいつも通りのノリで絡むも、空也は呆れたようにツッコミを入れるのだった。
 ちなみに彼は杖が喋ることに驚いてはいない。
 元の世界がまんぼうや埴輪が内政をするような魔境であることと、異世界を早々と認識しているのでそういうこともあるんだろくらいで流していた。

 一方、そんなやりとりを見ていたチノたちは、見た目に反して少なくとも悪い人ではないのだろうと少し警戒を解く。
 その頃合いを見計らって遊戯は話しかけた。

「皆、ちょっといいか?」

 ここで遊戯は空也の傷を説明し、回復できる支給品がないか確認を求める。
 とはいえ傷だらけ、ダメージを負っているのは皆も同じ。
 なので時間もあることだし、一度アイテムを検めることにした。
 とはいえ空也も凌牙も回復アイテムの持ち合わせがないことは確認済み。
 必然、調べるのは遊戯達四人となる。

「こんなのあったんだ……」

 最初に支給品を取り出したのはイリヤ。
 彼女の手にあるのは、さながらRPGの回復アイテムのようなビンに入った液体。
 否、これは事実ゲームの回復アイテムだ。
 彼女が持つアイテムはハイポーション。ソードアート・オンラインにて高い効果を誇る回復アイテムである。

 早速見つかった回復アイテムだが、いくらなんでも自身より重症としか思えないイリヤから譲ってもらう気など空也には無い。
 これは支給されたイリヤ自身が使用した。おかげでダメージはかなり回復し、疲労も少しだけマシになる。

「これならイケますね。私は魔法カード、ご隠居の猛毒薬を発動します!」

 次に支給品を取り出したのはチノ。
 彼女の手にあるのはデュエルモンスターズのカードであり、彼女は効果を見るや否や即座に発動した。

 すると、いきなり虚空から老婆が現れた。
 老婆は無言で試験管に入った二つの薬を取り出す。
 片方は緑色で、もう片方が濃い紫色の薬だ。

「あ、あの……回復させる薬をください」

 チノが老婆に頼むと、老婆は緑色の薬を手渡しそのまま姿を消す。

「……どうぞ」
「いや、お前が飲んだ方がいいだろ。お前結構ボロボロだぞ」

 貰った薬を即座に渡そうとするチノに対し、空也はやんわりとそれを止める。
 事実、チノはなれない戦闘で体も心もボロボロだ。
 しかし彼女としても、イリヤほど傷ついているならまだしも目の前で大怪我している相手を無視して自分を選ぶ気持ちにはなれない。

「なら私がこれをあげる」

 するとロゼが空也に向けて支給品を投げる。
 それは一見するとただのシリアルのチョコバーだが、その実回復アイテムである。
 これはリドゥという仮想空間にて、二代目帰宅部と名乗る集団が回復に使っていたもの、名をプレミアムクランチという。

486メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:35:55 ID:aeZHeRXk0

「いいのか?」
「いい。私にはこれがある」

 そう言ってロゼは手にあるカードを見せる。
 それはモウヤンのカレーというカードで、効果は僅かながらライフを回復させるものだ。
 なので安心しろと言わんばかりの態度に、空也は少々思うところがあるもののここは大人しく厚意に甘えることにした。

 モグモグ

「……おお!?」

 空也がプレミアムクランチをあっさり食べ終えると、なんと胸に真一文字の傷が塞がった。
 痛々しい傷跡こそ残るものの、命の危機は脱したと言っても過言ではないだろう。

 その様子を傍目で見ながらロゼは考える。
 あのシリアルは零の支給品だ。
 もしアレを彼が死ぬ前に食べることができたら、彼は助かったのではないか、と。
 しかしそれはもう叶わない。
 食べたとて助からなかったのかもしれない、あるいは回復するとは思ってなかったのかもしれない。
 事実が何であれ、死という事実は変わらないのだから。

「モウヤンのカレー発動」

 思考を止め、ロゼは手にあるカードを発動させる。
 モウヤンのカレーは自分、相手のどちらかのライフを200回復させるカードだが、この決闘では本来自分を回復させるカードでも他者を回復させることができる。
 ならこのカードの特別性は何かというと、まず複数人を同時に回復させることができる。
 具体的には使用者と、それ以外の参加者を一人回復させることができる。

 なので彼女は自身と遊戯を回復させた。
 これにより疲労こそ取れていないものの、二人の傷と出血を止めるのだった。





『では、情報交換とこれからの行動方針について話し合いましょうか』
「お前が音頭とんのかよ」

 各々傷を回復させたところでルビーがこれからの話し合いを始めようとするも、そこに凌牙がツッコミを入れた。
 なんで杖が音頭を取っているのかという意味で。
 とはいえそれはそれとして、情報交換が始まった。

 まずは空也と凌牙から、これまで出会った相手と知っている参加者について話す。
 とはいえ空也の語る遊星についてはジャックや遊戯から聞いており、明石は参加者に面識のある者はいないのでそこまで大きなリアクションはない。
 ただ話が元の世界で因縁のあるジャンヌになると話は別だ。

「その女なら俺達は戦ってるぜ」
「私は最初に遭っただけだけど、遊戯さんは二回も戦ってたんですね……」
「マジかよ。あいつ俺らともやり合ってんだぞ。どんなスパンで戦ってんだ」

 イリヤと遊戯、ロゼはジャンヌと一戦交えているので、必然話はそれに移る。
 彼女の余りに頻度の多い戦いっぷりに、決闘が始まってから一度しか戦っていない空也が驚く。
 実の所、ジャンヌはこれらに加えて、イリヤと遊戯が面識のあるジャックや遊馬とも戦っているので更に増えるのだが、それを知る術を今の彼らは持たない。

「次は俺か。
 俺が知ってる中で生きてるのは、天城カイトとベクターだな」
「そのカイトっていうのは、初めて檀黎斗が出てきた放送に出てた、あの葛葉紘汰って仮面ライダーが言ってた人?」
「いや、生憎だが仮面ライダーなんて聞いたことねえよ。
 だからあの男が言ってたカイトってのは、おそらく名簿の俺らより少し下の所にあるこの駆紋戒斗だろうな」

 途中、ロゼが疑問を挟むも凌牙は即座に答える。
 情報交換するとなった時にこんな質問が飛んでくることは、ある程度予想できたことだからだ。
 なので彼はよどみなく答え、そのままの流れで次はロゼが話す。

487メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:36:19 ID:aeZHeRXk0

「私が元々知っているのは閃刀姫-レイだけ。名簿の横にある深淵の冥王については何も知らない」
「その冥王さんなら私達が会いました。向こうもロゼさんやレイさんのことは特に何も言って無かったです」

 途中、イリヤが口を挟んだ話は決闘で出会った相手に移る。
 決闘の始めにチノ、次に零と出会い、その次には殺し合いの乗った筋骨隆々の男、おそらく名前は野比のび太。
 もっとも、野比のび太は死亡しているので確かめる術はない。

 そしてイリヤ、遊戯、司、ジャンヌ。
 そして犬吠埼と呼ばれた金髪の少女と――

「……衛宮さんと呼ばれてた少年が、殺し合いに乗っていた」
「シロウさん、が……」
『美遊さんの為、ですよねえ』

 ロゼの話を聞いたイリヤはショックを受け、縋るような目で遊戯を見る一方、ルビーはどこか達観したような言葉を口にする。
 一瞬自分の兄の方かとも考えたが、殺し合いに乗る筈もないし、そもそも戦闘能力もないので除外してもいいだろう。

「遊戯さん、それ、本当ですか……?」
「ああ。もしかしたら支給品か何かで、誰かがその衛宮という男の姿に変わっている可能性もあるが……」

 イリヤの問いかけに推測を口にするも、すぐに噤んでしまう遊戯。
 確かにないとは言えない可能性だが、あまりにも希望的観測すぎた。
 そこに今度は凌牙が口を出す。

「話をぶった切って悪いがロゼ、こいつに見覚えはあるか?」

 そう言って凌牙は閃刀姫-カガリのカードをロゼに見せる。
 すると彼女は驚愕の表情を露わにした。

「この娘は確か、レイの……」

 驚きを隠せないロゼだが、カガリについて彼女が知ることは少ない。
 その昔、ロゼがレイと剣を交えている間に他の相手と戦っていた、レイのかつての仲間と言うことくらいの知識しかない。

「仲間か?」
「私にとっては仲間じゃない。けど……」

 レイは、戦場から逃げた今でも仲間と思っているかもしれない。
 向こうがどんな感情をいだいていてもおかしくないとしても。

「なんだかよく分からねえが、思うところがあるなら渡しとくぜ。そいつは好きにしろよ」

 凌牙の言葉にロゼは大いに逡巡するも、結局受け取ることにした。
 実力のほどは知っているし、もし自分と敵対するとしても一般人を見捨てるようなことはしないだろうから。
 もっとも、このカードのカガリが自分と同じ世界のカガリである可能性はそれほど高くないだろうが。

「最後は俺達か」

 トリを飾るのは遊戯。とは言っても話すことはそう多くない。
 今までの会話で情報が出ている部分も多いので、話すことと言ったら遊星の仲間であるジャック、彼のライバルであるこの決闘には二人いる海馬瀬人。
 後は――

「衛宮士郎と美遊って奴のことを教えてくれ」
「えっと……」

 凌牙に促され、イリヤは話す。
 まずは美遊について。
 自身の友達で、自分と同じ魔法少女であること。
 生まれた時から完全な聖杯で、願いを叶える能力がある代わりに行使すると魂が削れ、いずれ死に至ってしまうこと。

 そしておそらくこの決闘に参加している衛宮士郎は彼女の兄であること。
 妹を守るために世界を見捨て、ただ一人の為に戦う人間であること。
 なのでおそらく、この殺し合いの商品である願いを叶えるというは美遊を行使して行うことであり、士郎はそれを防ぐために殺し合いに乗ったのではないか、と。

488メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:36:50 ID:aeZHeRXk0

「成程な。自分が優勝すりゃ他の奴らには絶対手を出せないってことかよ。
 もしくはダチのイリヤに託すって選択肢もあるか」

 イリヤの説明に納得する空也。
 そこにルビーが補足を入れる。 

『自分の事を最低の悪とか言っておきながら、自分の事は割とどうでもいいタイプなんですよね〜。
 多分ヒーローの方が向いてますよ』
「どうだかな。本物なら大切な奴も世界も両方救うって叫ぶだろうぜ」
『確かにそれはそうでしょうけど、そういう人は稀ですよ。世に何人いるやら』

 イリヤさんみたいに、と凌牙と話していたルビーは付け加える。
 凌牙はそんな奴が二人もいたのかこの殺し合いは、と少々驚愕した。
 別の世界とは言え、遊馬みたいな奴がいるという事実に。

「……ところで皆、放送で言ってた本来なら使えない力やアイテムを、死闘を経験し手に入れるってことあった?」

 一方、これまでの話し合いの中で出なかった話で、類似する現象に遭遇していないことについてイリヤが思わず問う。
 内容は彼女が経験した、バーサーカー(マグニ)のクラスカードの創造。
 おそらく檀黎斗が放送で語ったもの。

 しかしこの面々でそれを経験しているのはイリヤだけである。
 とはいえ、同一かどうかは分からないが似たようなものを凌牙は知っている。

「よくわからねえが、シャイニングドローやバリアンズカオスドローみたいなもんか?」
「それは?」
「ああ、俺や遊馬はドローカードをデッキの好きなカードにしたり創造できるんだが」
『おおよそカードゲームで言っちゃいけないこと言ってません?』
「俺もデッキに入れていないカードをドローならしたことはあるが、流石に作り出したことはないぜ」
「それはそれで大概じゃねえか?」
「それに俺のバリアンズカオスドローもいざという時にしか使わねえし、今使えるかもわからねえよ」
「そういう問題ならじゃないような……」
「でも、創造って意味なら近いのかも……」

 シャイニングドローについて各々言いたいことを言うなか、一人思いをはせるイリヤ。
 そもそもこれが何か分からない以上、どうやっても推測しかできないのだ。
 今はここでこの話は終いにして、次の話題に移ることにした。

「仮面ライダーを探すべきだぜ」

 その口火を切ったのは遊戯だ。
 ここまでで心意と同じく話題に出なかった、しかし殺し合いにおいては決して小さくない意味を持つであろう仮面ライダー。
 それを探し見つけることは、きっと大きな意味を持つだろう。

『なら、さっき話したエボルトさんに会うべきでしょうね』
「うっ……」
「どうして?」

 エボルトの名前を聞き思わず顔をしかめるチノと、純粋な疑問を浮かべるロゼ。
 彼女の中では仮面ライダーとエボルトが結びつかないのだが、それも無理はない。

『遊戯さん達が来る前にエボルトさんがごく自然に仮面ライダーってワードを出してたんですよ。
 だからおそらくあの人……もとい地球外生命体には馴染みのある物なんでしょうきっと』
「となると、名簿でエボルトの横にある名前の奴らが仮面ライダーってこと?」
『おそらく』

 ルビーの言葉にロゼが返す。
 桐生戦兎、万丈龍我、猿渡一海、氷室幻徳、このうち猿渡はさっき放送で呼ばれていたのでこれで三人。

「そういや、放送で一人だけ妙な呼ばれ方してる奴いたな。
 確か、宝生永夢だったか」
「仮面ライダーを知ってそうな檀黎斗と何かしら因縁があるのかもな。
 だったら、横にある花家大我も仮面ライダーに関わりがありそうだぜ」

 空也と遊戯の会話で更に一人加わり四人。
 更にさっきの会話で出てた駆紋戒斗を含めれば五人。
 もしかしたらまだ仮面ライダーかその関係者もいるだろうが、現段階の情報で推測することはできない。
 なのでここはこの五人を追加で探すことにして、次はこれを決めねばならない。

489メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:37:25 ID:aeZHeRXk0

「で、誰がそのエボルトとかいう改心する前のベクターみたいな奴に会いに行くんだ?
 ちなみに俺は行ってもいいぜ。そういう奴にはまあまあ慣れてんだ」

 凌牙が代表して口を出す。
 四人なら全員で行くのだろうが、六人である。一塊で動くには少々重荷を感じる人数だ。
 ならリスクはあるがここは二組で分かれるべきだろう。

「そのエボルトって奴はこっから西にあるオーエド町に行くんだろ。
 元々俺は西に行くつもりだったんだよ。だったらそのついででエボルトに会ってもいいぜ」
「なら俺も行くぜ! 空也は遊星君と合流するつもりなら、俺もついて行かせてもらおうか」

 こうして希望を出した男性陣が西、女性陣がそれ以外の場所に向かうことになる。
 かと思いきや――

「なんかバランス悪くない……?」
『男女別なのはいい感じですけどねぇ』

 この面子だと、女性陣の構成が剣士二人と後衛一人ということになる。
 魔法少女のイリヤが万全ならそれでもいいだろうが、彼女はまだ疲労もダメージも残っている。

「そう考えるなら俺とイリヤが入れ替わった方がいいか」
『まあイリヤさんはともかく、エボルトさんと会おうと言った私がいないのもなんですしね』
「それだと私巻き添え!!」

 こうして凌牙とイリヤが入れ替わり、最終的にエボルトと会いに行くのは遊戯、イリヤ、空也の三人。
 イリヤと空也はそれぞれジャンヌと士郎がどこに行ったのか気にはなっているが、探すにしても当てがないので今は目的地をシンプルに目指す。
 別の方向に行くのはロゼ、チノ、凌牙の三人となった。

 決めるべきを決めた六人は各々移動するための準備を始める。
 彼らは檀黎斗の打倒の決意を固め、迷いなく進もうとしていた。


 唯一人を除いて。

『優勝者への褒美を、死をも覆す権利を、ゲームマスターにして神の私が約束しよう』
(死んだ人が生き返る……マヤさんもリゼさんも……)

 チノだけは、蘇生の可能性に縋りつきかけていた。
 放送だけなら信じなかった。
 だがイリヤの話を聞いた時、現実味の帯びた話だと思えてしまった。
 皮肉にもここまでの積み重ねが、チノのイリヤへの信頼が、彼女を蘇生の可能性に縋りたくさせていた。

 しかしそれを誰が責められる。
 決闘が始まった直後の遊星みたいに、願いを叶えるという言葉を現実のものと捉えながら、取り戻したいものがあるのに突っぱねられるのか。
 あるいは、この決闘の参加者は誰も知らない別の世界の衛宮士郎みたく、過去を変えられるやもしれぬ聖杯を間近にして「死者は蘇らない。起きた事は戻せない。そんなおかしな望みなんて、持てない」と言えるのか。
 そんなことを、つい六時間前まで日常を過ごしてきた少女に求めるのか。

 結束の中に生まれた小さな綻び。
 それはやがて大きな解れとなって結束を砕くのか。
 はたまた綻びは気付かぬ間に直るのか。


 今それを推察できるものは、神であろうと居やしない。


【D-3 エーデルフェルト邸/一日目/朝】

【武藤遊戯@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、無力感、主催者への怒り
[装備]:千年パズル@遊戯王デュエルモンスターズ、ガーディアン・エアトス@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品一式、結束 UNITY@遊戯王OCG(3時間使用不可)
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、殺し合いを止める
1:仮面ライダーらしき参加者(駆紋戒斗、花家大我、桐生戦兎、万丈龍我、氷室幻徳)とチノ、凌牙の仲間を探す
2:仲間達との合流と、デッキも取り戻したい。
3:衛宮士郎は殺し合いに乗っているのか…?
4:ロゼはデュエルモンスターズが存在しない平行世界の人間なのかもしれない。
5:相棒の言うように、神(ゲームマスター)も完璧じゃない。そこに攻略法があるかもしれないぜ。
6:このカード…何で相棒や城之内くん達が描かれてるんだ?
[備考]
※参戦時期は最低でもドーマ編終了後。

490メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:37:56 ID:aeZHeRXk0

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中・治療促進により回復中)、悲しみと悔しさ
[装備]:マジカルルビー@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード『セイバー』@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ(2時間使用不可)、クラスカード『バーサーカー(マグニ)』@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ(2時間使用不可)、光の主霊石@テイルズオブアライズ
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。元の世界に帰ってやることがある
1:司さんもあの子(ルナ)も、私は……。
2:仮面ライダーらしき参加者(駆紋戒斗、花家大我、桐生戦兎、万丈龍我、氷室幻徳)とチノ、遊戯、凌牙の仲間を探す
3:美遊を必ず助けに行く。
4:エボルトを警戒。何がしたいの…?
5:シロウさん殺し合いに…?
6:ジャンヌを警戒。
[備考]
※参戦時期はドライ!!66話、6千年前に向かった直後
※心意システムによりバーサーカー(マグニ)のクラスカードを創造しました。

【蛇王院空也@大番長 -Big Bang Age-】
[状態]:胸に真一文字の傷(治療済み)、疲労(大)
[装備]:ティアドロップ@Caligula2、
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(薄緑ほど使えないかつ回復系ではない)
[思考・状況]基本方針:普段どれだけキレても殺しはしないが、てめえらは別だ。
1:うちの傘下や同じ考えの奴がいるならなるべく優先する。
2:九時間後に指定されたエリアの一つに向かい、再度作戦会議。
3:仮面ライダーらしき参加者(駆紋戒斗、花家大我、桐生戦兎、万丈龍我、氷室幻徳)とチノ、遊戯、凌牙の仲間を探す
4:明石、いい女なんだが残念だな。
5:ジャンヌとは必ず決着をつけてやる。
6:今はこいつら(イリヤ、遊戯)と一緒に動く。明石が無事だといいんだがな。
7:西へ向かい明石と合流する。エボルトについては俺もいたほうがいいか?
7:村雨を持った奴を警戒
[備考]
※参戦時期は扇奈ルート、狼牙に敗北後。
※異形の腕はそのままです。そのためゲーム上の攻撃で使ってる砲撃も可能です。
 細い触手を切られてもダメージはありません。
※遊星、明石と情報交換しました。

【閃刀姫-ロゼ@遊戯王OCG】
[状態]:疲労(大)、左肩に斬傷(治癒済み)、悲しみ
[装備]:閃刀姫-ロゼの剣@遊戯王OCG、
[道具]:基本支給品×2、涼邑零の魔戒剣@牙狼-GARO-、チームみかづき荘のロケット@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)
     モウヤンのカレー@遊戯王OCG(2時間発動不可)、閃刀姫-カガリ(現在召喚不可能)@遊戯王OCG、、ランダム支給品×0〜2(零の分含む。)
[思考・状況]
基本方針:檀黎斗やハ・デスを斬り、大切な人(レイ)の待つ平和な日常に帰る
1:零……司……。
2:仮面ライダーらしき参加者(駆紋戒斗、花家大我、桐生戦兎、万丈龍我、氷室幻徳)とチノ、遊戯、凌牙の仲間を探す
3:レイを見つけて守る。
4:私やレイがカードに?どういうこと? それに彼女(カガリ)ってレイの……
[備考]
※遊戯王カードについての知識はありません。
※どの方角に向かったかは次の書き手氏にお任せします

【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、悲しみと決意……?
[装備]: チノ(せんし)の剣@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1、ご隠居の猛毒薬@遊戯王OCG(6時間発動不可)
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスや檀黎斗達を倒して平和な日常に――ココアさんのいる場所に帰りたいです
1:仮面ライダーらしき参加者(駆紋戒斗、花家大我、桐生戦兎、万丈龍我、氷室幻徳)と遊戯さん、凌牙さんの友人を探したいです
2:ロゼさんや凌牙さんに協力します。
3:ココアさんやみんなを探したいです
4:ティッピーはここにはいないんでしょうか……?
5:マヤさん……リゼさん……
6:平行世界のココアさん…私の知ってるココアさんとは違うんですか?
7:エボルトを警戒。何なんですかこの人……。
8:本当に死んだ人が生き返るとしたら……?
[備考]
※どの方角に向かったかは次の書き手氏にお任せします

491メインフェイズ ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:38:13 ID:aeZHeRXk0

【神代凌牙@遊☆戯☆王ZEXAL】
[状態]:動揺、怒り
[装備]:デュエルディスクとデッキ(神代凌牙)@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品×2(自分、遊馬)、
[思考・状況]基本方針:遊馬の導いた希望の未来のために主催者を倒す
1:カイトは協力を頼んでおく。ベクターは……会ってから判断
2:不動遊星、仮面ライダーらしき参加者(駆紋戒斗、花家大我、桐生戦兎、万丈龍我、氷室幻徳)と遊戯、チノの友人を探す。
3:魔法を破壊出来る上にあの攻撃力……あの女(ジャンヌ)厄介だな。
4:こいつ(蛇王院)の怪我はもう大丈夫か
5:遊馬を殺した奴は気になるが、復讐心にはかられるな
6:村雨を持った奴を警戒
[備考]
※参戦時期は最終回後。
※どの方角に向かったかは次の書き手氏にお任せします


【ハイポーション@ソードアート・オンライン】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに支給。
主街区の店で売っているポピュラーな回復アイテム。効果はかなり高い。
本ロワでも飲むと回復するアイテムだが、効果は多少制限されている。

【プレミアムクランチ@Caligula2】
涼邑零に支給。
ちょっと贅沢な大人のためのクランチチョコ。香ばしいアーモンドと奥深いビターな味わいが高級感を演出する。
ひと口噛むと心地よい食感と共に本格的な香りが口いっぱいに広がる。(アイテム詳細より)
使用するとHPが1500回復するアイテム。

本ロワでも食べると回復するアイテム。

【ご隠居の猛毒薬@遊戯王OCG】
香風智乃に支給。
①:以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分は1200LP回復する。
●相手に800ダメージを与える。
(遊戯王デュエルモンスターズOCG カードデータベースより引用)

本ロワでは発動するとイラストに描かれたご隠居が出現し、上記の効果を持つ薬のどちらか選択した方を渡してくれる。
薬は飲むことで効果を発揮する。
片方を渡すと姿を消すのでもう片方も欲しいならもう一回発動しよう。

なお、ダメージを与える薬も飲ませないと効果を発揮しないので、攻撃したいときは飲ませ方を各自で考えよう。
このカードは一度発動させるとどちらの薬を選んでも六時間使用不可となる。

【モウヤンのカレー@遊戯王OCG】
閃刀姫-ロゼに支給。
ライフポイントを200ポイント回復する。
(遊戯王デュエルモンスターズOCG カードデータベースより引用)

このカードはライフ回復カードだが、使用した際自身か相手のライフかを選ぶことができる。
本ロワでは発動すると自分と自分以外の選択した参加者を回復させることができる。どちらか片方だけでも可能。
ただし回復効果を自分または相手に重複させることは不可。
一度発動させると二時間使用不可となる。

492 ◆7PJBZrstcc:2025/03/29(土) 13:38:28 ID:aeZHeRXk0
投下終了です

493 ◆QUsdteUiKY:2025/04/04(金) 10:08:10 ID:cMBXxcTE0
キリト、空、尊、ユキで予約します

494 ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:01:05 ID:5/YixKfI0
投下します

495fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:02:57 ID:5/YixKfI0
何気ない日々 交わした言葉
 その裏側など探ることもなく
 心の奥の絆を信じて、誰もが幸せを願い続けていた――


 ○


 尊徳とユキは、しばらくコントみたいなやりとりをした。
 それを俺――桐ヶ谷和人と空は見守る。
 デスゲームのクリアは急ぎたいけど、仲間が全員呼ばれたユキのメンタルも不安だ。それに尊徳も影山っていうこのデスゲームで知り合った相手を殺されて、後を託されてる。表向きは仲良くコントしてるけど、正直に言うと心配だ。
 空もそこら辺は察してるらしくて、二人のやり取りに口出しせずカードゲームのルールを再確認していた。

「その麗華って人は本当にボクより美しいの?このボクより♪」

「当たり前だ。麗華様ほど可憐で美しい方はなかなかいない」

 こんな感じに、仲良くやり取りしてる二人を見ていると少し微笑ましい。
 これがデスゲームっていうのを忘れそうなくらい――

『御機嫌ようプレイヤー諸君。まずはおめでとうと言わせてもらおう』

 ――その声が聞こえた瞬間、俺は気を引き締めた。これは間違いなくデスゲームだって――現実に戻されたみたいだ。

 まるで死者を冒涜するような言い方に、怒りが湧く。こいつはヒースクリフ――茅場よりも最悪な性格のゲームマスターだ。

「何様だ、こいつは……!」

 尊徳が怒りの声をあげる。
 影山を理不尽に殺されて、こんなふうに煽られたんだ。誰だって怒りたくなるだろう。

 ユキは、悔しそうな表情で顔を俯かせていた。アユミと影山のことを思い出したんだろうな……。

 そして空は嫌悪感を出しながらも、冷静を保つ。俺もあくまで冷静に放送を聞いていた。
 この放送は貴重な情報源だ。聞き逃すわけにはいかない。

496fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:06:08 ID:5/YixKfI0

『ニノン・ジュベール』

「……え?」

 ユキは不意を突かれたように……そう口にした。

「嘘、だよね……?」

 ニノン。ユキが言ってた仲間の一人だ。
 そんな存在が、俺達の――ユキすらも知らないうちに死んだ。

「ニノンさんが死ぬわけないよね?」

 信じられない――とばかりに周囲を見渡すユキ。
 きっとユキは、パニック状態に陥ってる可能性がある。だから「生きてるかもしれない」なんて優しい嘘をつく奴がいても、俺は批判出来ない。
 でもデスゲームを生き抜いた俺だからわかる。デスゲームで、人の命は簡単に失われることを。取り戻せないことを。そして――きっとこのゲームマスターが嘘をついてないことを。
 だから俺は、残酷な真実をユキに突き付けなきゃいけない。
 
「いや……たぶん本当にニノンは死んだよ」

「どうして?ニノンさんが死んだ証拠はあるの?」

「それはないけど……あのゲームマスターは嘘をつかない気がするんだ」

「そんなの、キリトくんの勝手な思い込みじゃ――」

「いや、キリトの言うことが正しいだろうな」

「ソラくんまでそんなこと言うの!?証拠は!?」
 
「……放送で死んでもない奴の名前をあげても、そいつやそいつの同行者にはすぐ嘘ってバレる。そんな嘘をつくような奴に思うか?」

「……空の言う通りだ。ユキ、キミが信じたくない気持ちはわかるけど――ニノンは死んだんだよ」

「そんな……。ニノンさんは強いよ?タカノリくんなら嘘って信じてくれるよね?」

「――――ッ!」

 尊徳は悔しそうに歯噛みして、苦虫を噛み潰したような表情をした。……きっと、尊徳も察してるんだろうな。

497fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:07:46 ID:5/YixKfI0

「……ユキ。よく聞いてくれ。キリトや空が言う通り、ニノンは死んだ可能性が高い」

「――! そ、んな――」

 ユキの瞳から、涙がどんどんと溢れ出る。今まで嘘だと思い込んで我慢してたのが、解放されたみたいに。
 でも俺はそんなユキに、なんて言葉を掛ければいいのかわからない。……まだ知り合ったばかりだし、デスゲームで大切な人を失う辛さを知ってるからこそ、安易に優しい言葉を掛ける気にならなかった。
 流石の空もカードゲームのルールを確認する作業を一度やめてユキの方を見るけど……何も口は開かなかった。
 
 「ユキ、しっかりしろ!」

 涙を流しながら崩れ落ちるユキに声を掛けたのは、尊徳だった。

「お前は麗華様ほどじゃないが、美しいんだろう。そんな体勢をしていたら自慢の美貌が汚れるぞ」

「タカノリくんは、優しいね……♪
 たしかにこんなボクは可愛くないかもしれない……。でも……今だけは、美しくないボクを許してくれないかな……」

「……やれやれ。仕方ないな」

 そして尊徳の胸でたくさん泣きじゃくるユキを――俺と空は黙って見ていることしか出来なかった。
 作戦会議とか、情報整理とか。そういうことも今はする気になれなかった。
 デスゲームは無情に命を奪っていく。俺達の事情なんて知ったことかってくらい、次々と命が刈られていく。

498fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:08:48 ID:5/YixKfI0

「最初はみんなバラバラだったけど……ボクはヴァイスフリューゲルを気に入ってたんだ。まずモニカさんがボクとクウカさんとニノンさんを勧誘して、それからニノンさんがアユミを誘って――ねぇ、どうしてこんなことになっちゃったのかな?」

「そうか……。全てはあの悪趣味な自称神のせいだろうな。そしてニノンを見つけられなかった僕の責任でもあるかもしれない」

 ――――ッ!

 悔しい。
 もしもニノンと合流出来たら――まだ死なずに済んだかもしれないのに。
 それかレッドプレイヤーを減らせば、犠牲は減るのに。
 俺はこの6時間、何をしてたんだ……!
 自分の不甲斐なさに思わず怒りが湧いてくる。

 同時にアスナ達がまたソードアート・オンラインみたいな危険なデスゲームに巻き込まれなかったことに少し安心して、その考えに虫酸が走る。
 目の前に仲間を失った娘がいるのに、俺はなんてことを考えてるんだ……!
 これじゃもうアスナに――みんなに合わせる顔がない。ごめんな、ユージオ。やっぱり俺は、英雄なんかじゃないんだ……。泣いてる娘一人、救えやしない。

「……ねぇ、タカノリくん」
 
「……ん?なんだ?」

「さっきの放送で、優勝者には死をも覆す権利を与えるって言ってたけど……それって死んだ人達を生き返らせることも出来ると思う?」

「貴様……まさかそんな内容を真に受けたのか?こんな悪趣味な殺し合いを開いたことの言うことだぞ?」

「でもキリトくんやソラくんやタカノリくんは、ニノンさんが死んだ可能性が高いって言ってたよね。放送で嘘をつくはずがないって……」

「それはそうだが……それとこれは別だろう!?」

「タカノリくん。もし本当に死んだ人を生き返らせれるなら……アユミも、ニノンさんも、カゲヤマさんも……みんな生き返るのかな?」

「そんなわけないだろう!死んでしまった相手は……もうどうにも出来ないんだ」

 尊徳は現実を受け止めて、ユキを説得する。

「そうだ。死んだ人はもう帰ってこない……」

 サチ、ユウキ、ユージオ――
 今まで何人も失ってきた。
 でもみんなは絶対に生き返らない。そんな都合のいい話、あるわけないんだ。
 だから俺は尊徳の言葉に同調した。ユキを少しでも落ち着かせるために……。


「でもボク達、いつの間にかこんな場所に連れてこられてたし……こんな大規模な殺し合いを開ける技術があるなら、もしかしたらみんなを本当に生き返らせることも出来ないかもしれないよ」

「だが……!」

499fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:11:48 ID:5/YixKfI0

「ねぇ、タカノリくん」

「……なんだ?」

「もしボクが優勝を目指すって言ったら、共犯者になってくれるかい?」

「ふざけるな!誰がなるものか!目を覚ませ、ユキ!」

 尊徳が怒号と一緒に、ユキの頬を叩いた。
 ユキから出てきたのは、最悪の言葉だった。
 尊徳はそれを真っ向から否定したけど……万が一に備えて俺は臨戦態勢に入る。空もいつでもカードがドロー出来るようにデッキに手を添えていた。

「……やっぱりそうだよね。じゃあボクが優勝を目指したら、どうする?」

「今、ここで止める。俺に後を託した影山のためにもな」

「殺さないと止まらないかもしれないよ♪」

「殺さなくても止められる方法を探すだけだ」

「エリートだから?」

「わかってるじゃないか。……それに貴様が誰かを殺すのも気に食わん」

「……なるほど。タカノリくんって意外と優しくて仲間思いなんだね」

「ふん。誰が仲間だ、ナルシストが」

500fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:12:47 ID:5/YixKfI0
「ボクに対して口は悪いけど、実はなんだかんだ優しいよね。……そんなタカノリくんだから、殺しづらくなっちゃう……。後で生き返らせるにしてもだよ。それにモニカさんやクウカさんを殺すのも嫌だしさ」

「麗華様や彩お嬢様ならともかく、貴様のようなナルシストに優しくする気はないぞ」

 ひとまず険しい空気が落ち着いて、ユキと尊徳の表情が多少は穏やかになる。

「ユキ。僕達は託された身だ。自暴自棄になるより、やるべきことがあるだろう」

「そうだね……。アユミやニノンさんやカゲヤマさんが死んだのは悲しいけど……そうだよね」

「……俺の言いたかったことを言ってくれてありがとう、尊徳。そしてユキも……苦しい中、納得してくれてありがとう。俺も色々と仲間が死んだことがあるけど……残されたやつに出来ることは、そいつらの意志を継ぐことだけなんだ」

 ――そうだろ、ユージオ。

「うん。だからボクはアユミと、ニノンさんと、カゲヤマさんの意志を継ぐよ。キリトくん、ソラくん、そしてタカノリくん――これからもよろしくね♪」

「よく立ち直ったな、ユキ。とりあえずふんぞり返ってる神を一泡吹かせてやろうぜ。人類をナメるんじゃねぇってな」

 空は不敵な笑みを浮かべる。本当に頼りになる相棒だな、こいつは。

「……そういえばリリスが終始無言だけど、どうしたんだ?」

 リリスが急に黙り込んでいたことが不自然で、思わず疑問が出る。

「たぶん、放送と同時にキバットと同じで口封じされたんだろうな。1回目の放送まで喋れたのは、神を自称するような奴のことだからあえて野放しにしてたんだろ。そしてある程度実力者が絞られた放送後からは口封じ――って可能性があるな」

 空の言葉にリリスの依り代――ごせん像が頷いた。どうやら本当に喋れないらしい

 ○

「黎斗様……どうしてリリスを口封じしたのですか?」

 ハデスが、檀黎斗に尋ねる
 その質問に対して檀黎斗は大袈裟な動作で声を張り上げた

「第一回放送までリリスが話せたのは神の恵みだァ!
 だがあまりプレイヤー以外がいつまでもペラペラと情報を話すのはフェアじゃない。あくまでゲームの主役はプレイヤーだ。まあ第一回放送までの情報源を元に、色々と考えるがいい!」

「なるほど……。ゲームの主役がプレイヤーというのは、一理ありますね」

501fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:13:57 ID:5/YixKfI0

  
「ユキ。もしまた何か気の迷いが起こったら貴様は必ず止める」

「わかってるから大丈夫だよ、タカノリくん♪ボクはもう迷わないから――死んでいったみんなの分までがんばるよ♪」

「それでいい。貴様はナルシストだが、そうして前を向く姿は麗華様や彩お嬢様ほどじゃないが――」

「なになに?」

「……なんでもない。このナルシストを一瞬でも見直した僕がバカだった」

「素直にボクの美しさを認めたらいいのに♪」

「ユキ、貴様は美しいというよりナルシスト成分が強すぎる」

「美しや可愛さ成分は?♪」

「僕が知るか」

「ほんとはボクの可愛さに魅了されたんでしょ?恥ずかしがらなくていいよ。可愛いものに惹かれるのは当然のことなんだから!」

「……その自信はどこから湧いてくるんだ」

 相変わらず軽口を叩き合う尊徳とユキ。
 なんだかんだ、この二人は相性が良いのかもしれない。正直、ユキを踏みとどませてくれたのも尊徳のおかげだからな。

「タカノリくん。これからも美しいボクを間近で見て、もっと目に焼き付けてほしいな!」

「本当にナルシストだな、貴様は。だが僕も影山から託された身だ。守ってやるくらいはしてやろう」

 ニッコリと微笑むユキに対して、尊徳の口角は少し上がっていた。
 尊徳が、ユキの心を救ってくれたんだ……。
 俺もパーティーメンバーを守れるように、がんばらなきゃな。

502fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:14:35 ID:5/YixKfI0

 ○

 最初は、ただの偶然だった。
 いきなり殺し合いに巻き込まれて……流石に可愛いボクでも困惑はした。
 でもそんな時にタカノリくんとカゲヤマさんに出会って、自分らしさを取り戻せた。鏡で美しいボクを堪能出来たのもあるけどね♪
 タカノリくんやカゲヤマさんと協力して魔獣を倒した時は、意外と大した事ないって思ったよ。

 でもアユミが見るも無惨に……何の美しさすら感じない、むしろ醜い殺され方をして、ボクはショックを受けたし、この殺し合いについて考えを改めた。
……その時は少し動揺して可愛さのカケラもない叫び声をあげちゃったけど……それだけボクはヴァイスフリューゲルやアユミを気に入ってたのさ……。
 でもその時はなんとか、立ち直れた。
 立て続けにカゲヤマさんも理不尽に殺されたけど……ボクはボクらしく、美しく振る舞い続けた。
 ……もしそこで挫けたら他のヴァイスフリューゲルのメンバーに会えない気がしたから。なんとなくの精神論だけどね。

 その後、ヴァイスフリューゲルのメンバーが全員参加してると知って、がんばらなきゃと思った。泥臭いことは美しいボクに似合わないし、可愛くないけど――みんなを失う方が嫌だからね!
 でも正直……ヴァイスフリューゲルのみんななら、大丈夫だと思った。みんなで帰れるっていう気持ちが、心のどこかにあったよ。

そしてキリトくんとソラくんに出会って……情報交換の時にアユミとカゲヤマさんの死に様を思い出した。
 ……思い出したくもないものを、思い出しちゃったんだ。

 でも挫けるわけにはいかないから……ボクは美しく振る舞った。……やせ我慢が可愛いかどうか、わからないけどね。
 そんなボクをキリトくんやソラくんが心配したように見てきた時は……逆にこっちも辛かった。
 でもタカノリくんはボクを元気付けるように普段と変わらない態度で接してくれて、嬉しかったよ♪

 そして――放送でニノンさんが死んだことまで知った。
 今までなんとか美しくて可愛く振る舞ってきたけど――流石にメンタル的に限界がきた。
 だからボクはボクらしくもない、美しさが微塵もない取り乱し方をして――動揺した。

 信じたくなかった。
 ニノンさんが死ぬなんて。
 これ以上、ヴァイスフリューゲルのみんなが死ぬなんて……。

 でもキリトくんやソラくんの言う通り、ニノンさんがほんとに死んだことは薄々わかってた。
 わかってたけど、納得が出来なかった……!

 だからボクはみんなを生き返らせるために優勝も視野に入れた。
 きっとみんな怒ると思うけど、それよりも失ったままの方が嫌だったんだ。

 でも――そんなボクをタカノリくんは止めてくれた。
 ボクの美貌を叩いて、気の迷いを断ち切ってくれた。
 それはきっと……タカノリくんの優しさだと思う。だからボクはタカノリくんを更に気に入ったし、嬉しかった。……タカノリくんが止めてなければ、ボクは自分がどうなってたかわからないからね。

 今でもタカノリくんに叩かれたほっぺたが痛い。
でも不思議と嫌な痛みじゃない。タカノリくんとなら、ボクはもっと可愛く美しくなれる気がする!
 タカノリくんにほっぺたを叩かれたボクもきっと可愛いからね♪少なくとも積極的に殺し合いをするより、断然美しいよ。

 だからタカノリくん……ありがとうね。

「そんな嬉しそうな顔をしてどうしたんだ?」 

 タカノリくんが不思議そうな表情(かお)で聞いてくる。

「タカノリくんとならもっとボクは可愛くなれると思っただけだよ♪」

「……何を言ってるんだ、このナルシストは」

 タカノリくんの呆れるような声。
 でも、それでいいとボクは思う。
 それがタカノリくんで、そんなタカノリくんをボクは気に入ったからね♪


 ○


 彷徨い出す、微かな希望を必死に抱きしめるのは。
 失えない理由があるから――
 ボクを支える温まり……

503fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:16:36 ID:5/YixKfI0
【一日目/朝/C-8】
【宮川尊徳@暁の護衛 トリニティ】
[状態]:健康
[装備]: ホッパーゼクター&ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]基本方針:僕たちがゲームマスターを倒す!
1:ユキ、キリト、空と一緒に影山とアユミやニノン、影山の仇を取る
2:影山……お前の意志は僕が引き継ぐ
3:ヴァイスフリューゲルのメンバーを優先的に探す
4:ユキのように誰かを生き返らせるのが目的になって優勝狙いになろうとする参加者が増えなければいいが……
[備考]
※パンチホッパーとしての戦い方がわかりました

【ユキ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ボクの美しさをクロトやハ・デスにも知らしめてあげる
1:タカノリくんはボクが応援してあげるよ ♪
2:モニカさん、クウカさん……無事でいてね
3:アユミ、ニノンさん、カゲヤマさん……
4:ヴァイスフリューゲルのメンバーを優先的に探す
5:ありがとうね、タカノリくん。タカノリくんのこと、気に入ったよ
[備考]

【キリト@ソードアート・オンライン(アニメ版) 】
[状態]:疲労(小)
[装備]:カゲミツG4@ソードアート・オンライン、ごせん像@まちカドまぞく
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:ハ・デスと檀黎斗を倒す
1:空、尊徳、ユキと共闘する
2:空ならあの放送を聞いて何か考えてそうだから、それを聞きたい
3:2の後、エルキア大図書館に寄り、調べる。その次にD-6の島を調査する
4:リリスのよりしろ探しを手伝う
5:変なおっさん(肉おじゃ)、PoH、謎の気狂いの変態、念のため美遊の関係者を警戒
6:金髪の男(ポセイドン)、継国縁壱を最大限に警戒
7:ヴァイスフリューゲルのメンバーを優先的に探す
8:俺が探索してるうちに40人も死んだのか……
[備考] 
※参戦時期はソードアート・オンライン
アリシゼーション War of Underworld終了後
※遊戯王OCGのルールをだいたい把握しました
※アバターはSAO時代の黒の剣士。
GGOアバターに変身することも出来ます。GGOアバターでは《着弾予測円(バレット・サークル) 》及び《弾道予測線(バレット・ライン) 》が視認可能。
その他のアバターに変身するためには、そのアバターに縁の深い武器が必要です。SAOのアバターのみキリトを象徴するものであるためエリュシデータやダークリバルサー無しでも使用出来ます。SAOアバター時以外は二刀流スキルを発揮出来ません。これらのことはキリトに説明書に記されており、本人も把握済みです。
※主催陣営はSAO事件を参考にしたと推測しています。
※空と空黒というコンビ名を結成しました。

504fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:16:55 ID:5/YixKfI0
【空@ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版) 】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(蟲惑魔)@遊戯王OCG、キバットバット三世@仮面ライダーキバ
[道具]:基本支給品、高級木材のモーターボート@現実、首輪×2(御伽、遠野)
[思考・状況]基本:ハ・デスと檀黎斗を倒す。あまり人類ナメるんじゃねぇ
1:キリト、尊徳、ユキと共闘する
2:ユキが落ち着いたから、とりあえず情報と自分の考えををみんなに伝えたい。取り乱して放送を聞き逃してそうなユキには特に。でも今はもう少しユキのメンタルケアをするべきか?
3:2の後、エルキア大図書館に寄り、調べる。二手に別れるかは人数と戦力状況による。その次にD-6の島を調査する
4:主催者と関係ある人物と接触する
5:リリスのよりしろ探しを手伝う。それに大きくする道具はあるか?
6:渡の殺害の件がきな臭い。士とレイに接触し、当時の状況の詳細を聞き出す
7:変なおっさん(肉おじゃ)、PoH、謎の気狂いの変態、念のため美遊の関係者を警戒
8:金髪の男(ポセイドン)、継国縁壱を最大限に警戒
9:ヴァイスフリューゲルのメンバーを優先的に探す
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後
※遊戯王OCGのルール及び蟲惑魔デッキの回し方を把握しました
※主催陣営はSAO事件を参考にしたと推測しています。
※キリトと空黒というコンビ名を結成しました。

【リリス@まちカドまぞく】
[状態]:正常
[思考・状況]基本:全員で生きて脱出
1:空、キリト、尊徳、ユキと行動を共にする
2:吉田一家を優先に捜す
3:清子、小倉……
4:桃とミカンの合流は後回し。合流したら挨拶はしたかったが……
5:よりしろを見つけ出す
6:ヴァイスフリューゲルのメンバーを優先的に探す
[備考]
※参戦時期は4巻(アニメ2期)終了後
※他者との肉体を入れ替える能力と他人の夢に入る能力は制限対象で黎斗によって不可にされています。
※黎斗によってよりしろで活動出来る時間は10分に制限されていて、二時間経過しないと活動出来ません。等身大よりしろも同様です。
※よりしろ状態でも並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すことは可能とします。ただし、少なくともキリトの支給品にきらファンでのリリスの専用武器はありません
※主催により口封じをされました。今後は何かキッカケがない限り話せません。きらファンで手にした力も主催により剥奪されています

505 ◆QUsdteUiKY:2025/04/05(土) 02:17:29 ID:5/YixKfI0
投下終了です

506 ◆4Bl62HIpdE:2025/04/06(日) 18:55:15 ID:hT7dYR7U0
恐れ入りますが予約を破棄します。キャラの拘束申し訳ございません。
中途で執筆していたssは予約がなければ後日投下します。

507 ◆ytUSxp038U:2025/04/06(日) 22:47:48 ID:FT1s1/7Q0
カイザーインサイト、保登心愛(きらファン)、琴岡みかげ、マサツグ様、衛宮士郎、犬吠埼風、環いろは、黒死牟、エボルトを予約し延長もしておきます

508 ◆4Bl62HIpdE:2025/04/12(土) 10:54:58 ID:QDDTrW1k0
投下します

509発進!進むべき道とマコトの願い ◆4Bl62HIpdE:2025/04/12(土) 10:56:10 ID:QDDTrW1k0
大天空寺。一旦合流を諦め…ここに戻って来た。
地下室に入り戦兎は、うずくまって重症を負い、苦しんでいるモニカと、モニカほどではないが同じく治療を受け眠っている學を見つめる。


救急箱や布類で、受けた傷の処置は済んだ。
しかし、容態は安定しないままだ。

戻って来た理由は二つ。モニカ達の治療と……

「……お前なら、何か知ってるんじゃないか?」

「……あぁ」

戦兎は、この施設を十分に知っていると思い、地下室にマコトを招いた。…やちよの合流場所とは真逆の位置に流れ着いたが、重症の怪我人もいるのでそこは仕方ない。

「…何をしてるんだ?」
出現したゴーストドライバーを装着するマコトに、戦兎は訝しむ。
「…多分、もう意味はないと思うが」
アイコンドライバーG。それは15人の眼魂も内部に入っている。

しかし、マコトの知るグレートアイはもう元の世界にはいなかったので、おそらく無駄だろう。そう思っていたが……。


次の瞬間、戦兎が驚愕した。
「な……!?」


モノリスから目の紋章が現れ、魔法陣のような陣が展開したからだ。




「………グレートアイ……!?」

驚きつつも、意を決したようにマコトは光の中へ入る。

510発進!進むべき道とマコトの願い ◆4Bl62HIpdE:2025/04/12(土) 10:57:26 ID:QDDTrW1k0




「望みを述べよ」


「グレートアイなのか……?」



「望みを述べよ」

マコトがグレートアイと呼んだその者は、それしか喋らない。


…マコトは、思い悩む。

グレートアイは眼魂とゴーストドライバーを持つ者には、どんな願いも叶える。
…ここで「檀黎斗を倒してくれ」と願えば、このゲームは終了するのだろうか。

浮かぶのは、かつて救われた友の姿。
「………俺の望みは」




戦兎はモノリスの反応と連動するノートPCを再び操作しながら、思索する。

……この反応についての説明も書かれていた。つまりこれは黎斗を倒しうる策にはなり得ない。

やがて、光の中から出てきたのはマコトと……


「……モニカ」
「……これでいいんだ」

傷が完治し、眠っているモニカだった。
マコトは、「モニカを治してくれ」と願ったのだった。

「……済まない。あの男を倒すような事を願っていれば……」
「……気にすんなって。それより、もうすぐ放送だぞ」

…真実を知っていた戦兎は、それでもマコトに微笑んだ。

『御機嫌ようプレイヤー諸君。まずはおめでとうと言わせてもらおう――――





「――エグゼイド………一海が……死んだ……?」
放送を聞き終え、戦兎は顔を歪める。
仲間である仮面ライダー達の死。……悲しみと、それ以上に絶望が強い。

一海が死ぬという事は、まさしく制限が解除されたエボルト以上の敵で無い限り在り得ない。
…そんな強敵がこの殺し合いにはいるという事になる。自分にもビルドドライバーが支給されていた以上、一海にもスクラッシュドライバーが支給されていた可能性は高い。……ビルドスパークリングでは、自分も確実に後を追う事になる。

そして、宝生永夢――エグゼイド。
エグゼイドはその力を知る者にとっては黎斗に対抗する術を持つ、謂わば「希望」だったからだ。


ムテキゲーマー。かつて葛城巧のファイルにあったそれは、どんなダメージも無効化し、ポーズさえも打破できる力を持つ。


それに変身する事のできるエグゼイドは、謂わば檀黎斗に唯一対抗できる希望だった。だが、彼が死んだ以上、エグゼイドの変身アイテムすらどこにあるのか分からない。


「――永夢」マコトも、動揺せずにはいられなかった。
宝生永夢。それは、友である天空寺タケルの命を救った英雄の名だった。
その名を嘲笑うように口にした黎斗に煮えたぎるような怒りを覚えながら、マコトは尚も抑えようと唇を嚙み締める。

「……禁止エリアはD-1か。…あのまま居たらやばかったな」悔恨を噛み締めながら、戦兎達は地図を確かめこれからの方針を練る。

「どうする?モニカと、學が目覚めるまで待つか?」「……いや。これから合流場所へ向かう」


…どうやって、とマコトが言おうとした矢先、戦兎はノートPCを操作した。

すると役目を終え、消失したモノリスを中心に……大天空寺の地下室が変形する。
「行くぞ。……お前のバイクをここまで持ってきてくれ」

511発進!進むべき道とマコトの願い ◆4Bl62HIpdE:2025/04/12(土) 10:58:32 ID:QDDTrW1k0
【E-1 大天空寺/一日目/早朝〜朝】

【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[状態]:ダメージ(中、処置済み)、疲労(小)
[装備]:ビルドドライバー+フルボトル(ラビット、タンク)+ラビットタンクスパークリング@仮面ライダービルド、ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1(確認済み、フルボトルは無い)、月村アカリのノートPC@仮面ライダーゴースト、リボルギャリー@仮面ライダーW
[思考・状況]
基本方針:檀黎斗を倒し殺し合いを終わらせる。
1:このままE-4に向かう。……エボルトの奴もいるのか?
2:監視も兼ねてエボルトと共闘する。信用した訳じゃねぇからな。
3:首輪解除のための研究器具は持ち込んだ、問題ない。後はサンプルも必要だが…。
4:万丈と幻徳を探す。
5:環いろはをこっちでも探してみる。
6:デュエリストにも接触しておきたい。
7:――エグゼイド……一海……。
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。
※再度探索した月村アカリのノートPCから、リボルギャリーの操作に関するファイルを見つけました

【深海マコト@仮面ライダーゴースト】
[状態]:ダメージ(中、処置済み)、疲労(中)
[装備]:ゴーストドライバー&スペクターゴースト眼魂&フーディーニゴースト眼魂@仮面ライダーゴースト、アイコンドライバーG@仮面ライダーゴースト
[道具]:基本支給品、マシンフーディー@仮面ライダーゴースト、リベンジシューター(7/8)@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:ゲームマスター達は俺が倒す!!
1:タケル、俺の選択は……。
2:ニノン…お前の生き様は忘れない……。
3:あの男(マサツグ様)は仮面ライダーなのか……?
4:永夢……俺はタケルに何て言えば……。
[備考]
※参戦時期はゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター終了後
※シンスペクターゴーストアイコンを自分の意思で出すことは制限により不可能です。他の参加者に個別に支給されているか、何らかの条件によって出すことが可能になるかもしれません
※心意システム及び眼魂の特性により、友情ゴースト眼魂がアイコンドライバーGに変化しました。

【土部學@女装男子のつくりかたシリーズ】
[状態]:ダメージ(中、処置済み) 、疲労(極大)、精神的疲労(大)、緋々色金による擬似的なエイヴィヒカイト覚醒、気絶
[装備]:緋々色金@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:モニカちゃんに一人で背負い込ませたくない。怖いけど一緒に戦う
0:……
1:ゆきさんは本名で参加させられた可能性もある……?
2:モニカちゃんの背負ってるもの、僕も少しだけ持ってあげますよ
[備考]
※参戦時期は女装男子のまなびかた終了後
※ 緋々色金に仕組まれた細工により、心意をトリガーに擬似的なエイヴィヒカイトに覚醒しました。身体能力が格段に上がり、素人の彼でも仮面ライダーと生身で戦えるくらいになりました。ただし効果はそれくらいです

【モニカ@プリンセスコネクト!Re:Dive】
[状態]:健康、みんなを照らしたいという渇望(極大)、悲しみ(大)、眠っている
[装備]:戦雷の聖剣@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:決闘を終わらせる
0:……
1:ニノン……。
2:私はもう誰も失いたくない…… 。だから私が、皆を照らすのだ!
3:アユミ……私たちの勇姿、見ていてくれ……
[備考]
※参戦時期は少なくともイベントストーリー『ショーグン道中記 白翼のサムライ』以降。



【支給品紹介】

リボルギャリー@仮面ライダーW
ハードボイルダーシステムの高速移送装甲車。原作ではスタッグフォンで操作されていたが、この殺し合いにおいては月村アカリのノートPCで操縦できる。
(制限によりハードボイルダーは搭載されていない。)





深海マコトには知る由にもなかったが、グレートアイは檀黎斗が用意したNPC。
謂わばゴーストドライバーを持っていたら発生するイベントキャラ。勿論、主催を殺害させる・会場内から脱出するような願いは叶えられないように制限されていた。

それを知ることなく大天空寺を後にしたのは、幸か不幸か……あるいは、未来においてマコトを後悔させる記憶になるかは、誰にも分からない。




【NPC紹介】
グレートアイ@仮面ライダーゴースト
15個の眼魂とゴーストドライバーを持った者に対して発生するイベントNPC。
ドライバー所有者の願いを叶えるが、殺し合いの打破・会場内の脱出は出来ない。
※モノリス@仮面ライダーゴーストは消失しました。

512発進!進むべき道とマコトの願い ◆4Bl62HIpdE:2025/04/12(土) 10:58:47 ID:QDDTrW1k0
投下を終了します

513 ◆QUsdteUiKY:2025/04/13(日) 08:16:43 ID:Ja9rkDrU0
ゲリラ投下します

514魁!!野獣塾 ◆QUsdteUiKY:2025/04/13(日) 08:18:40 ID:Ja9rkDrU0
「はぁー……。どうして俺がこんな悪役みたいなことをしなきゃいけないんですかね」

 野獣先輩は一通りデュエルを終えた後、ため息をつく。
 それもそのはずだ。野獣先輩は後輩が好きなだけの先輩であり本来ならば殺し合いに乗らない人物。
 もしも自分や遠野が巻き込まれてなければ。
 遠野が殺されてなければ――殺戮者には成り下がらなかった。

 野獣先輩は此度の殺し合い――つまり決闘でゲスなことやクズなことばかりしているが、根底にあるのは愛する後輩である遠野を救いたい。ただそれだけの純粋な願いがある。

 その過程で、何故かスタンドを出したりオシリスの天空竜になったり――普通の人間では有り得ないことが起こった。
 殺し合いで優位に働くのは間違いないが、自分の肉体がもはや人間とは思えない変化を遂げていることに多少の恐怖はある。

 何故なら当然だが彼自身、ミームから生み出された存在だと理解していない。
 自分を普通の人間だと思っている。

 しかし、考えれば考えるほどに謎は深まる。
 自分の名前は鈴木か田所だったはずだが、その2つが名簿にない。愛する後輩である遠野の本名も思い出せない。

 更に言うならば、名簿の順番だ。
 遠野の近くにはMNRや苗字のない〝ひで〟や虐待おじさん。挙句の果てにはNHKに喧嘩を売ってるのか、肉体派おじゃる丸なんて名前もある。おじゃる丸が実在するわけないし肉体派でもなんでもないだろ、いい加減にしろ!
 そして愛する遠野の隣にある、野獣先輩という名前。

 (まさか主催者は一部の参加者にニックネームを付けてて、この野獣先輩が俺なんですかね?)

 野獣先輩は遠野を愛している。
 であるならば当然、彼の隣に名前があると野獣先輩はガバガバ考察をした。恋する女の子は盲目だから、多少はね?は?野獣先輩は女の子じゃない?野獣先輩は女の子だろ、いい加減にしろ!
 まあ実際、今の野獣先輩はなろうと思えば(王者の風格)女の子になることも出来るので野獣先輩女の子説はあながち間違ってないのである。

「いやー……それにしても俺の横にいる奴ら大半がわけわかんなくないですか?何かの実験にされてるんですかね」

 いきなり我が身に起こり得ぬ非現実が起こってしまった。
 それはマーダーとしてはクッソ有能な能力だが、野獣先輩からしたらわけがわからないし実験道具にされてるとも思う。特にこの肉体派おじゃる丸とかいうのは、筋肉ムキムキのおじゃる丸みたいな肉体に改造されたのだろう。そう考えると流石の野獣先輩も同情する。もちろん出会えばパパッと殺って、終わり!なのだが自分が凄まじい力を得たこともあり、ニックネームみたいな名前の参加者は何か強い力を秘めている可能性を考慮する。それなのに死んだボーちゃんや虐待おじさんはよっぽど間抜けだったのだろう。

 それにしても今までは殺意ばかり漲らせてきたが、良く考えたら恐ろしいことばかりだ。
 だが、そんな恐ろしい技術を持つ主催者だからこそ本当に死者蘇生出来る方法があると確信出来る。
 もっともこんな人間でないような能力を得た自分を遠野が愛してくれるかと、一瞬迷うが――

「遠野なら愛してくれるってはっきりわかんだね」

 それは野獣先輩を遠野を心から信用してるから出てくる言葉だった。
 彼は無から生まれた存在。所詮はネットミームが姿を得たものだ。

515魁!!野獣塾 ◆QUsdteUiKY:2025/04/13(日) 08:19:11 ID:Ja9rkDrU0
 彼だけじゃない。肉体派おじゃる丸以外の巻き込まれた淫夢キャラは大半がそうだ。
 しかし彼らには彼らの日常があると、自分達は思い込んでいる。まさかその日常が虚構などとは知らない。彼らを虚構と知るのは参加者だと肉体派おじゃる丸くらい。
 肉体派おじゃる丸は紛れもない被害者だが、いきなり無から生み出されて偽りの記憶を植え付けられた野獣先輩達も立派な被害者である。クッソ汚くて傍迷惑な桐生戦兎だなぁ。

 とりあえずここで得た野獣先輩新説シリーズはとにかく強いが、なにぶん体力を消耗するのがネックだ。
 キングフォームやジャックフォームも強いが、制限がキツい。もっともこれは野獣先輩が野獣先輩新説シリーズに覚醒するのを期待して、意図的に野獣先輩だけに付けられた制限なのだが。事実、仮面ライダーというカテゴリでは同類のクロスセイバーにマサツグ様は制限なしに変身している。駆紋戒斗の事実上の最強形態といえるロード・バロンに時間式の制限はないのにキングフォームやジャックフォームだけ時間式の制限があるというのもおかしな話だ。バランス崩壊にも程がある。

 簡単な話、バランス調節である。野獣先輩新説シリーズはとにかく多彩で、強い。それに加えて仮面ライダーの強化フォームまで時間制限なく使えたら強すぎるので、野獣先輩だけは強化フォームに対して時間式の制限がある。

「自分の体が変わるのは怖いけど……優勝するにはこれとデュエルと仮面ライダーが大事ですね、間違いない」

 野獣先輩としては野獣先輩新説シリーズに対する恐怖もある。もし戻れなくなったらとか、もしよくわからない存在になったらとか、もし淫夢くんになったらとか。
 だがこれは便利な能力だ。上手く使えば暗殺にも使えるかもしれない。愛する遠野のためなら……やるしかないだろう

「こんなことならAKYS師範からもっと真面目に空手を学べば良かったな」

 そんな言葉を零す野獣先輩だが、彼は実はフィジカルも強い。何故なら迫真空手を習ってるからだ。
 それなのにこんな言葉が出てきたのは、それだけAKYSが強いからである。AKYSなら仮面ライダーと殴り合えたかも……なんて妄想する

「まあこんな妄想しても仕方ないんですけどね」

 妄想は所詮、妄想だ。現実じゃない。
 まあAKYSやMURという実力者が参加していたら彼らの性格的に真っ当な対主催になってただろうからまだマシだと考える。

「それにしてもこのデッキ、攻撃力と守備力はそこまで高くないなぁ……」

 デッキを手に入れたのは嬉しい。使い方もわかった。
 だがモンスターが全体的に貧弱すぎる。そんなんじゃ一般人くらいしか倒せないよ。
 まあマジェスペクター・ソニックを使えばその弱点は克服出来るが、今度はダメージが半減されてしまう。弱点がなければ最強カードだったのに残念だ。まあデメリット無しなら強すぎだから、多少はね?デメリットありでも割と強いし、使い所が重要だ
 次に目をつけたのがマジェスペクター・ストーム。デッキに戻す効果的にワープ効果があるかもしれない。メスガキ(ねむ)が誰かに同行してたら使うのもありか。
 破壊は出来ないだろうが、能力を無効化出来るマジェスペクター・テンペストも中々良い。無効化は永続じゃないだろうが、それでも強い。
 そしてマジェスペクター・トルネード。除外効果ということは、対象を一時的に異次元に放逐するということだろうか。だとしたらすごく使い勝手がいい。強い参加者を除外するのにも、メスガキと再戦する時にメスガキを守る参加者が居たときにも使える。あのメスガキは、今度こそ確実に仕留めたい。そう考えると、マジェスペクターはメスガキ(ねむ)を殺すにはとても有用に思えてくる。他者を使い捨てるクズ女を殺すにはちょうどいいデッキだ。

「この青薔薇の剣ってのも侮れないスね。仮面ライダーは強い状態だと時間制限があるし、体を変えるのは疲れるし、デッキのモンスターは貧弱。でもこの青薔薇の剣はそういう面倒なの気にせず使えそうですねぇ!」

 もっとも魔力なしに武装完全支配術と記憶完全術は相応に体力を消耗するのだが。
 それでも野獣先輩新説シリーズの強いのに比べたらマシかもしれないから、多少はね?

516魁!!野獣塾 ◆QUsdteUiKY:2025/04/13(日) 08:19:48 ID:Ja9rkDrU0
【B-3 湖前/一日目/朝】

【野獣先輩@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、野獣先輩新説シリーズに対する若干の恐怖と使い続ける決意
[装備]:ブレイバックル+ラウズアブゾーバー(キングフォームに2時間変身不可)
[道具]:基本支給品一式×5、デュエルディスク+デッキ(マジェスペクター)@遊戯王OCG、ホームランバット@大乱闘スマッシュブラザーズ、風間大介のギターケース@仮面ライダーカブト、どこでもドア(6時間使用不可)@ドラえもん、まあまあ棒@ドラえもん、青薔薇の剣@ソードアート・オンライン(アニメ版)、ステフの手作りドーナツ×12@ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版)
[思考・状況]
基本方針:勝ち残り遠野を生き返らせる。
0:川を沿って、左右どちらに行こうか?
1:殺りますねぇ!(尚も衰えぬ殺意)
2:あのメスガキ(ねむ)はかち合えばもう”五度目”はない。マジェスペクターで孤立させて、殺す
3:白コートの剣士(鋼牙)や厄介そうな参加者は悪評を流して同士討ちを狙う。
4:仮面ライダーブレイドの名を利用する。
5:デッキの力は状況によるが、同じデッキを持つ奴或いは最後の手段として使う。
6:遠野を殺した奴は許さない。
7:姿を変える(野獣先輩新説シリーズ)のは怖いけど、優勝するためには惜しまない
8:変な名前の奴らは実験体のニックネームですかね?
【備考】
※バトル淫夢みたいな戦闘力があります。
※野獣先輩新説シリーズで対象キャラへの変身や能力・技能の獲得が可能になりますが、新設シリーズを使う度に体力が消費されるようです。
 参戦作品以外のキャラクターの説は使用不可能に制限されています。
 他にも天体説@現実など、殺し合いを破綻させるような説の使用も制限により禁止されています。
※遊戯王OCGのルールとマジェスペクターの回し方を大分把握しました。
更に経験を積めばデッキを十割程、使いこなして、成長するでしょう。
※仮面ライダーの強化フォームに変身する時に時間制限があります
※青薔薇の剣

517魁!!野獣塾 ◆QUsdteUiKY:2025/04/13(日) 08:21:47 ID:Ja9rkDrU0
>>516
途中送信してしまいました

※青薔薇の剣の武装完全支配術と記憶完全術は相応に体力を消耗しますが野獣先輩は気付いてません

518 ◆QUsdteUiKY:2025/04/13(日) 08:22:20 ID:Ja9rkDrU0
投下終了です

519 ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:19:38 ID:lWhjTvow0
投下します

520切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:20:50 ID:lWhjTvow0
リムジンで移動する前、士はカブトの能力をココアに軽く説明していた。キャストオフ、プットオン、そしてクロックアップといった基本的なまものだ。
 カブトはただ変身するだけでは十全に能力を発揮出来ないので当然である。
 そしてカブトの変身者のことも話した。

「もしかしたらそいつ(カブトゼクター)がお前を選んだのは必然だったかもな」

「そんな人が元々、カブトに変身してたんだね。まるで戒さんみたい……!私も負けないようにがんばらなくちゃ!」

「まあココア専用ソードとかいう支給品も専用なんてついてる辺り何かあるんだろ。説明書によると仮面ライダーじゃないが変身出来るんだってな。ま、上手く使い分けていけよ」

 士さんがそうアドバイスをくれる。

 ――戒さんは、たぶん死んじゃった。
 あんな強い人達を相手に生き残れると思えないし……戒さんの最期の言葉がそんな雰囲気を帯びてたから。
 だから私はあの時、戒さんを必死に引き止めようとして「酷いよ」なんて言葉も出てきちゃった。
 でも私は戒さんに本当はそんなこと思ってなくて……つい出てしまった言葉があんなもので、すごく後悔してる。
 戒さんの妹さんを見たかった。戒さんにチノちゃんを紹介したかった。私の自慢の妹だって、見せたかった。

 でもそんな願いは二度と叶わない。
 叶わなく、なっちゃた……。
 それはすごく悲しいけど……だけど、戒さんやあんこの命懸けの行動が私の命を繋いで……背中を押してくれた。
 
 マヤちゃんは殺された。あんなに元気で優しい笑顔を、私やチマメ隊のみんなはもう見れない。
 苺香ちゃんも殺された。知り合ったばかりだったけど……死んでいいはずがないと思った。
 あんこや戒さん以外も……みんなみんな、取りこぼしたくなかった。

 それでも――私は前を見なきゃいけないと思った。
 だから――私は諦めない。カブトゼクターが私を選んでくれたのも、そんな決意に反応してくれたからだと思うんだ。

『こいつは自分にとって大切な連中を失った。周りが思う以上に心へ傷を負った筈だ。
 そのまま戦えなくなったって責められやしない。
 だがな、それでもこいつは戦うことを選んだ。殺されてもおかしくないってのに、歯を食い縛ってお前に立ち向かった。
 だからレイも無事でいられたんだ』

『俺達は皆誰かに託されてる。自分が助からないと分かっても、諦めなかった奴らからだ。
 ある男がこいつを助けたように、今度はこいつが俺達の助けになった。
 そうやって繋いでいった先にあるのは破滅なんかじゃない、希望って言うんだよ』

 士さんがあの時話した言葉は、今でも強く胸に残ってる。
 だから私達は希望を繋いでいくんだよ。そうだよね?チノちゃん、リゼちゃん、メグちゃん。
 そして希望を紡いでくれてありがとうね、戒さん。あんこ。

521切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:22:01 ID:lWhjTvow0

「あまり気負わないでくださいね、ココア。あなたは元々ただの一般人なんですからね」

「ありがとね、レイちゃん。でも私はもう大丈夫だよ!もう誰も失いたくないし――私はチノちゃんのお姉ちゃんだからね!」

「それならいいのですが……」

「それよりレイちゃんも自分の心配をしなきゃダメだよ。見た感じまだ私と同じくらいの歳の女の子でしょ?」

「まあ……年齢はそうかもしれませんが、私は閃刀姫だからいいんですよ!それに私にもロゼっていう守りたい子がいますから!」

「えへへ。それじゃあ、私と一緒だね!」

 ぴょんぴょん。

「あっ、ちょ……いきなり飛びついてこないでください!ペースが乱れます、ペースが乱れますから!」

「お前ら、仲良くなるのが早いな。ほら、さっさと次の場所へ行くぞ」

 こんなやり取りの後、私は車に。
 レイちゃんは士さんのバイクに乗って移動した。

「シャミ子……シャミ子……」

 桃ちゃんは、車でひたすらシャミ子ちゃんの名前を呼んでた。
 その姿がマヤちゃんやあんこ、そして戒さんを失った私みたいで……すごく胸がチクチクする。

 少しでも元気付けてあげたい。
 でも今の私達ではシャミ子ちゃんを救えるかわからなくて……。
 それでもジッと見ていられないから……。

「大丈夫だよ、桃ちゃん。シャミ子ちゃんは私達が助けるから!お姉ちゃんに任せなさい!」

 そんなことを言ってみる。
 まあ年齢は近そうだけど、細かいところはおいといて……。
 とりあえずシャミ子ちゃんを助けてあげるって元気付けてあげたかった。
 でも、桃ちゃんは一向に顔色が悪いままで……顔が青ざめてる。

「シャミ子……ごめん。ごめん。力になれなくて……今すぐ助けに行けなくて……ごめん」

 女の子にしては大きな身長で、顔付きも凛々しそうに見える桃ちゃんが……体を縮こまらせてただひたすら謝っていた。

「……気持ちは私もわかるよ。私も、大切な人達を失ってきたから」

「……ごめん。私は大丈夫」

「大丈夫に見えないよ!大丈夫ならどうして――」

 そこまで言い掛けて、言葉に詰まる。
 答えは1つしかないのに。わかっているはずなのに。
 
「シャミ子を……助けたいから」

「そんなこと知ってたはずなのに……ごめんね、桃ちゃん」

「気にしないで。私は今まで……ひたすら筋トレを繰り返してきた。……魔法少女としては弱い方だけど片手でダンプを止めれるくらいの力もあった。でも、筋肉ではシャミ子を救えない……」

「桃ちゃんにとって、シャミ子ちゃんはすごく大切な人だったんだね」

「うん。ココアにとってチノちゃんに近いのかな……。妹じゃないけど、放っておけなくて……。すごく頭が残念な子なんだけど……」

 それから桃ちゃんはシャミ子ちゃんについて語り出した。
 その話を聞いて、桃ちゃんが焦る気持ちも余計にわかっちゃうけど……今の私達じゃ勝てないのもわかってる。

 でもシャミ子ちゃんの話をしてる間に、桃ちゃんの心が落ち着いてきたみたいで……良かったのかな?

「シャミ子は500円を返すだけでも泣くような貧乏な家庭で……」

 それはちょっとまずくないかな!?

「ただフードコートで食べるだけで嬉しそうにして」

「ふ、複雑な環境なんだね!」

「うん。でも私はそんなシャミ子を気に入ってる」

「なるほど、二人は仲良しなんだね!」

「うん。……まあいい子だよ」

 桃ちゃんの口数は少ないけど、そこからもシャミ子ちゃんを大切にしてることがよく伝わってくる。
 だから私もシャミ子ちゃんを救うんだ!桃ちゃんと一緒に!

「一緒にシャミ子ちゃんを助けようね、桃ちゃん!」

「……zzz」

 気合を入れた私の声を、桃ちゃんは聞いてなかった。……ていうか寝てた。
 まあすごく傷を負ってるし安心したら気が抜けて気絶しちゃったのかな。
 でもスヤスヤと眠る桃ちゃんの顔は、安心感に満ちたすごくいい顔だったよ!

522切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:22:50 ID:lWhjTvow0
「安らかに寝てるわね」

 そんな桃ちゃんを眺めて、やちよさんが柔和な表情をする。

「ココア。あなたとはまだ出会って間もないけど、優しいわね。……少しだけ、私の守りたい子を思い出すわ」

「ありがとね、やちよさん。ちなみにその子はどんな子なの?」

「環いろは。この殺し合いにも巻き込まれてる子よ。歳はあなたより少し幼いくらい。優しくて、温かくて……仲間のフェリシアが死んでもまだ私が折れないなによりの理由よ」

「じゃあいろはちゃんとも合流しなきゃね!」

「ええ、そうね。いろはは必ず、探し出すわ」

「オレは知り合いはいないけど、必ず生き抜くぜ。そして主人公に返り咲いて、飽きるまで青春を楽しむ」

 小鳩さんはそんなふうに笑ってみせた。
 殺し合いの最中だということを忘れるくらい、明るい雰囲気だった。

523切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:23:40 ID:lWhjTvow0

 ――でも、そんな雰囲気も唐突に崩れる

「変身、でございます」

『バナナアームズ!ナイト・オブ・スピアー!』

 いきなり車の目の前に女の子が飛び出して、仮面ライダーに変身して――

「――避けろ、お前ら!」
「くっ……!まさか新手が待ち受けていたとは」

 士さんが叫んで、レイちゃんが悔しそうに呟いたのが聞こえた。
 車は急いで右に曲がろうとするけど――
 
『バナナオーレ!』

 巨大なバナナが、車を真っ二つに斬った……!



「作成成功でございますか」

「(あっさりハマって)笑っちゃうんすよね。(バトロワの最中だと忘れてた可能性)濃いすか?」
「これもみんなのためだからね!」

 ブラックバロンに変身したコッコロが車を叩き斬ってから、近くで待機してた肉体派おじゃる丸とメグが姿を現す。
 なにやら車とバイクが呑気に走ってたのを発見したから、不意打ちしてやろうと画策していたのだ。

 車内からドロリ、と血が溢れ出す
 マシンディケイダーに乗っていた士とレイはバイク特有の小回りの良さから避けていたが、車は見事に真っ二つにされて炎上していた。

「けほっ、けほっ……みんな、大丈夫?」

「ええ、なんとか命に別状はないわ」

 小鳩が咄嗟に突き飛ばしたココアとやちよがら返事をする。

「オレもなんとか無事だ。今からこいつら、ぶっ潰してやる!……って、まだこんな小さな女の子かよ!?」

 そんなふうに口に出す小鳩だが、左足半分が欠損していた。咄嗟に庇った際に切り取られたのだ。

524切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:25:39 ID:lWhjTvow0

「そうはさせないよ!えーい!」 
 
 そしてそんな小鳩に容赦なく光弾を放つメグ。
 しかしその光弾をレイが対処。光弾に刀をぶつけたレイに、更にココアが専用ソードをぶつけ重ねることで完全に防ぐ。

「酷いよ、ココアちゃん。せっかくみんなが生き返れるチャンスなのに」

「そんなチャンス本当にあると思ってるの!?」

「思ってるよ〜。優勝したら願いを叶えれるからね」

「あんな奴の言うことを聞くなんてバカか、お前は。――変身」

  そして士がディケイドに変身する

「いいの?あの人を守らなくて?」

 メグは血塗れの桃に容赦なく光弾を放つ。
 この中で一番の手負いは桃だ。気絶していたせいでなにも対応が出来なかった。小鳩が庇ってなければ即死してたろう。
 そして小鳩が庇っても回避行動が取れなかったせいで技がある程度当たり、右足と左足が千切れてる。

「ほら、ほら、ほら〜」

 メグが何度も桃を狙う。
 ディケイドがライドブッカーでそれらをひたすら撃ち落とす。
 これではディケイドは戦えない。しかも相手がまだ幼い良くも悪くも無垢少女ということで、皆がなかなか攻められずにいる。――約1名を除いては。

「メグちゃん、そんなことしちゃダメ〜!」

 ココアが専用ソードで杖を折ろうとする
 が――

「なまっちょろすぎて笑っちゃうんすよね」

 肉体派おじゃる丸が邪魔をして、自慢の拳で軽くココアの腹を殴る。挑発の意味も込めて。

「けほっ!」

 思わず咳き込み、地面に蹲るココア。
 しかし彼女は諦めない。剣を支えに立ち上がり、構える。
 諦められない理由(わけ)があって、あの大きな大きな――戒の背中が見えたから。

「まだ、だよ!」
 
 そんなココアの勇姿を見たやちよが。レイが並び立つ。

「遅れたわね。私も戦うわ」
「ココアだけにいいカッコさせませんからね!」

 (こんなに女の子が頑張ってるのに……オレはモブでいたくねぇ!)

 小鳩も立ち上がろうとするが、左足がないゆえに上手く立ち上がれない。
 苛立ちに青筋が浮かび上がる。
 大地に仰向けになりながらも、怒り気味にカタルシスエフェクトのモーニングスターを肉体派おじゃる丸にぶつけるがまるで効かない。

「(さっきからロクな目にあってなくて)笑っちゃうんすよね。ここらでストレス発散してないとやってらんないんすよね」

 負の感情によって起こった心意。それが肉体派おじゃる丸のシンプルな強化に繋がる。苛立てば苛立つほど、強くなるのだ。

「ここらで死んで、どうぞ」

 体躯に見合わぬ素早い動きで小鳩の近くまで行き、顔面に拳を振り下ろし、彼の元を去る。

 ぐしゃ!

 何かが砕ける音が、無情にも鳴り響いた。
 これはだめだ。間違いなく即死だ。本来ならば、だが。
 そしてコッコロはこの肉体派おじゃる丸を正式に仲間として迎え入れ、更なる地獄を齎すためにホッパーゼクター&ZECTバックルを渡した。

「クソがぁああああ!」

 小鳩が叫び、モーニングスターを乱雑に振り回す。
 しかし狙いが定まっていないのか、本当に乱雑で肉体派おじゃる丸は「笑っちゃうんすよね」と嘲笑した。
 だがそんなモーニングスターがいきなり方角を変えて、ホッパーゼクターを打ち砕いた。神が微笑むのは、マーダーだけでないということだ。

 しかし、小鳩は死んだ。
 頭蓋骨が砕かれたのだから、当然だ。
 最後の奇跡は心意によるものに他ならない。
 一度鳴り響いた黒の宣告は、止まらない。
 ココアがただの腹パンで済んだのはせんしの力を引き出していたのと、肉体派おじゃる丸の気まぐれだ。ムカついてたから、目の前な少女を甚振りたいというノンケのような思想である。

「クキキキキ…」

525切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:26:18 ID:lWhjTvow0
 最後の悪足掻きに苛立ちを見せる肉体派おじゃる丸。

「メグちゃん、止まって!変身!」

『HENSHN』
 
 そしてココアはカブトに変身して、まずは力付くの格闘戦で止めることにした

「変身なら私も出来――」

 対するメグも変身しようとするが――

「クロックアップ!」

 それより先にココアがクロックアップでメグの腹を軽く殴り、気絶させていた。
 手段は問わない。この子は必ず元に戻すという確固たる信念と共に。

『クロックオーバー』

 そして一瞬の加速は終わり、今度は肉体派おじゃる丸とコッコロがココアを危険視する。特にコッコロはクロックアップの強さをよく理解している。制限されていれど、強い能力だ。

 ゆえに肉体派おじゃる丸とブラックバロンが同時に襲い来る。
 
「クロックアップ!――あれ?連続で使えない!?」

 短時間に連続で使えたら強すぎるので制限されている
 しかしブラックバロンのバナスピアーをやちよが槍で対抗し、肉体派おじゃる丸の拳をレイが剣でいなし――

「はぁああああ!」

 自由になったディケイドのファイナルアタックライドが肉体派おじゃる丸に命中した。
 満身創痍になりながらも、それでも怒りと憎しみで体を動かす肉体派おじゃる丸。彼は1枚のカード――ゴッド・ハンド・クラッシャーを発動する。

 肉体派おじゃる丸の剛腕は更なる高みに、巨躯は更に大きくなる。
 今から放たれれるのは、神の一撃だ

「あんたら全滅の可能性、濃いすか?」

 神の前に人間は抗えない。
 肉体派おじゃる丸は嘲笑うように彼らに声をかけた

526切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:27:09 ID:lWhjTvow0
「これは……?ひっ、私の足が……」

 圧倒的な空気に、気絶していた桃まで起こされる。
 しかしそれが逆に良かった。やちよは身勝手を承知で桃に頼み込む

「コネクトをお願い!」

 幸いにも桃にはまだ両手がある。
 起死回生の策は、それしかない。

「シャミ子ちゃんを助けたいなら、早く――!」

「そうだった。私はシャミ子を……」

 やちよの声が届き、コネクトに成功する。
 それも今回はただのコネクトじゃない。

 (サイズがあの時より大きい……!?それでいて軽い。これなら……!)

 巨大なピンクの槍を手にしたやちよは、これならばいけると確信した
 桃の心意とコネクトの合わせ技だ。

 コッコロが妨害しようとするが――

「ここから先は、行かせないよ!桃ちゃんとやちよさんの決意は誰にも邪魔させない!!」
「まあそういうことだな」
「閃刀姫在る限り、敗北は有り得ません」

 専用ソードで変身したココアと、ディケイドと、レイがブラックバロンに立ち塞がる。

「くっ……!」

『バナナスパーキング』

 コッコロが必殺のバナナスパーキングでバナナ型のエネルギーを無数に地面から出すが――

「もう誰も傷つけさせないよ!」

 ココアが剣を左右に振り回すと、風を帯びて飛行。その際にレイと士を抱え、更にコッコロに剣を向けた急降下で大ダメージを与えることに成功する。

(一か八かだったけど、なんとかなった!)
 
 これがココア専用ソードの〝とっておき〟だ。
 何故だかココアには今、このタイミングで使い方がわかった。
 多大なダメージによりコッコロは強制的に変身解除されてしまう。

そしてぶつかる、桜色の巨大槍と神の剛腕。
 それは時空が揺れるほど途轍も無い、まるで神話の一節のようだったが――刹那の攻防の末、やちよの槍が肉体派おじゃる丸の拳を貫いた
 オベリスクは海馬瀬人が主に使う神であり、悪しき神ではない。こんな誇りもクソもないプライドなき使われ方をしても、オベリスクの力は十全に発揮出来なかったのかもしれない。

「わけわかんない威力で、笑っちゃうんすよね……」

 そう口にする肉体派おじゃる丸の顔は、怒りに満ちている。
 流石の肉体派おじゃる丸も負けを悟った――がまだ死ぬわけにはいかない
 ゆえにカードを掲げる

「即効魔法!異次元からの埋葬!」

527切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:27:59 ID:lWhjTvow0

 ○

「なんとか逃げ切れたっすね」
「でも、なんで棺桶の中なの?」
「埋葬だからじゃないすか?まあギャンブルでしたが成功して笑っちゃうんすよね」
「……成果は得られましたが、一網打尽には出来ませんでしたね」

 こうして肉体派おじゃる丸、コッコロ、メグは3人同じ場所にワープした

「ココアちゃん、どうしてあんなに怒ってたんだろう?私達、正しいことをしてるよね?」

「はい。そのはずなのですが……理解出来ない人もいるのでしょう」

 (このメスガキ達やっぱ頭がおかしいっすね。まあおかげで簡単に組めたから良かったけど、優勝する目的がキチガイ過ぎて笑っちゃうんすよね)
 
 ○

「小鳩さん!小鳩さん!」

 小鳩さんが、いきなり殺された。
 その事実は変わらないけど、思わず私は小鳩さんを揺さぶっていた。
 もしかしたら、奇跡的に生きてるかもしれないから!

「ココア……」

 そんな私に届いたのは、桃ちゃんの声。

「私はこの状態だと、流石に戦えない……。コネクトという技術でやちよさんをサポート出来るけど……。だから私を守ろうとか考えず、シャミ子を探すのをみんなには優先してほしい。シャミ子が死んだら、私は――――」

「そんな……桃ちゃんがシャミ子ちゃんのこと好きなのはわかるけど、そんなこと……!」

「わかりました、桃。このレイが閃刀姫としてシャミ子の身の安全を保証しましょう」

「それなら……良かった……」

 それだけ言って、桃ちゃんはまた気絶した。

「ココア。あなたが桃の立場でも、自分よりチノを優先していたでしょう。もちろん私もロゼを優先します。託された側はままならないですが――そういうもんなんですよ」

 この時、私にはレイちゃんがすごく年上に思えた。

「まあともかく、足の止血はしないとな。何かいい方法はあるか?」

 そう口にする士さんの瞳は揺れていた。
 平気なフリをしてるだけで、きっと今の状況が苦しいんだと思う……。

 こうして私達は小鳩さんを失って、桃ちゃんまで大変なことになっちゃった……

その後、最悪な放送が流れて……

「リゼちゃん……戒さん……」

 私はすごく嫌な気持ちになった。
 戒さんは察してたけど、リゼちゃんも死んじゃったなんて……。

 ねえ、戒さん。
 私はどうチノちゃんに顔を合わせればいいのかな……
 リゼちゃんが死んだことはチノちゃんも知ってるはず。私はチノちゃんにどう接したらいいのかな……

 そしてリゼちゃん。守れなくて、ごめんね。

 でも私は出来る限り……前を向くから。もう俯かないし、メグちゃんも元に戻してみせる
 色々な人を殺してみんな復活させるなんて、どうかしてるよ。

 だから――天国で見守ってね、みんな。
 戒さんみたいになれるかわからないけど……私、がんばるから!
 リゼちゃんが居なくても、チノちゃんは。ラビットハウスは立派に守り切ってみせるから。

 私がこんなに強くいられるのは……正しさを守り抜くと戒さんやチノちゃんに誓ってるからだと思ったのでした。
 だからどんな切なさも胸の痛みも――勇気に変えるよ!

528切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:32:42 ID:lWhjTvow0
【風祭小鳩@Caligula2 死亡】

【E-4/一日目/早朝〜朝】


【閃刀姫-レイ@遊戯王OCG】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(極大)
[装備]:閃刀姫-レイの剣@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:士に協力してこの世界を破壊しちゃいますか
1:桐生戦兎達との合流場所に向かう
2:士と旅をする
3:渡の意志は引き継ぎました。人々の音楽は私が守ります
4:ロゼに会いたい。たとえ自分の知るロゼじゃなくても、守ってみせます
5:大男(リンボ)の一団を警戒、あの少女(最上)は一体…
6:何で小鳩は私の名前を知っていたんですか?
[備考]
※参戦時期は閃刀起動-リンケージ(ロゼ死亡)以降。
※遊戯王カードについての知識はありません。
※カガリやシズクなどにフォームチェンジするには遊戯王OCGのカードが必要です。閃刀姫デッキとして支給されたカードではフォームチェンジ出来ません。

【門矢士@平成仮面ライダーシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(極大)
[装備]:ネオディケイドライバー&ライドブッカー&各種カード(ディケイド、カブト、キバ)@平成仮面ライダーシリーズ、マシンディケイダー@平成仮面ライダーシリーズ
[道具]:基本支給品、団結の力@遊戯王OCG(6時間使用不可)
[思考・状況]基本方針:この世界を破壊する
1:ビルド達との合流場所に向かう
2:レイ達と旅をする
3:檀黎斗を倒して渡の世界も俺が守ってやる
4:ユウスケ達がここにいないのは……
5:悪役面(リンボ)を警戒。
[備考]
※参戦時期はRIDER TIME 仮面ライダージオウVSディケイドで死亡後。
※各世界の主役仮面ライダーかその関係者と心を通わせることで、その世界の主人公の仮面ライダーのカードを創造してカメンライド(変身)できるようになります。又変身者が他作品出典の場合でも可能なようです。

【七海やちよ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(大)、魔力消費(大)、精神疲労(中)
[装備]:環いろはの写真@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)、カルデア戦闘服@Fate/Grand Order、冴島家のリムジン@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品一式、グリーフシード×1@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)、アーカードの棺桶@HELLSING
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:フェリシア……
2:桐生さん達との合流地点に行く。
3:いろはに会いたい。
4:マギウスの魔法少女達を警戒。
5:さっきの二人組(パラダイスキング、タラオ)にも警戒しておく。
6:桐生さんはともかくエボルトは信用できない。
7:ドッペルの使用は控えた方が良いとは思うけど…。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン2話で黒江と遭遇する前。

【千代田桃@まちカドまぞく】
[状態]:疲労(大)、精神疲労(極大)、全身にダメージ(大)、左手に裂傷(処置済み)、内臓損傷(大)、額と腹に幾つか殴られた痕、右腕と左脚に深い刺し傷、まどかを守れなかった・永夢を見殺しにした悔しさ、ポセイドンやデェムシュへの強いトラウマ、戦うことへの恐怖、スタミナジュースの効果でじわじわと回復中、両足欠損、恐怖感、焦燥感、無力感、魔力消費(大)
[装備]:ハートフルピーチモーフィングステッキ@まちカドまぞく、
[道具]:基本支給品x2、ゲーマドライバー(破損)+マイティアクションXガシャット+マキシマムマイティXガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ガシャコンブレイカー@仮面ライダーエグゼイド
[思考・状況]基本方針:私が守りたい街角の人達を最優先で探す。その後……
1:シャミ子を助けたいのに…どうして私は……。
2:まどかちゃん、永夢さん……。
3:良ちゃんが人を殺した……?
4:私には無理だよ、永夢さん……
5:シャミ子は、みんなに任せるしかない……?
[備考]
※参戦時期は2度目の闇堕ち(アニメ2期8話、原作45丁目)以降です
※ゲーマドライバーは片桐によって基盤が出て大きな傷が付いているぐらいに傷つけられており、修復しない限りドライバーを使っての変身はできません。

529切なさも、胸の痛みも全て秘めた勇気に変え ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:34:16 ID:lWhjTvow0

【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(極大)、腹部に打撲、深い悲しみ、リンボ達への恐怖(大)、強い決意
[装備]:ココア専用ソード@きららファンタジア、カブトゼクター&ライダーベルト@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:チノちゃんや皆と一緒にバトルロワイヤルを終わらせるよ!
1:戒さん、私頑張ってみる…!
2:シャミ子ちゃん大丈夫かな…
3:チノちゃん達はどこにいるんだろう?
4:もう迷わない。私は私――ココアだよ!
5:リゼちゃん……
6:桃ちゃんには、辛い目にあわせちゃったね……
7:メグちゃんを止めて、元に戻したいなぁ
[備考]
※名簿を確認しました。もう一人『保登心愛』がいることを確認しました。
※カブトの資格者に選ばれました。


【E-4/一日目/早朝〜朝】
【奈津恵@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、オレイカルコスの結界による心の闇の増幅
[装備]:メグ専用ロッド@きららファンタジア、ゴーストドライバー&ディープスペクターゴースト眼魂@仮面ライダーゴースト
[道具]:基本支給品×2、巨大化(数十分使用不可)@遊戯王OCG、ランダム支給品0〜2(ボーちゃんの分)
[思考・状況]基本方針:優勝しゲームに関する記憶を全部消した上でマヤちゃん達を生き返らせる。
1:チマメ隊の絆は永遠、だから私が取り戻すよ〜!
2:コッコロちゃんと協力して頑張る。
3:タラちゃん死んじゃったんだね…でも最後に生き返らせてあげる。
4:マサツグさんとクウカさんも、最後に生き返らせてあげるね!だから次はちゃんと殺さなきゃ
[備考]
※ディープスペクターの武器であるディープスラッシャーについては、変身しても出現しません。他の参加者に武器として支給されている可能性があります。
※ディープスペクターへの変身は他の仮面ライダーと同じく魔力を消耗しません。
※オレイカルコスの結界の効果には気付いていません。

【コッコロ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(大)、オレイカルコスの結界による心の闇の増幅 、キャルへの罪悪感(大)
[装備]:量産型戦極ドライバー+バナナロックシード(ナンバー無し)+マンゴーロックシード@仮面ライダー鎧武、タンポポロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品一式×2、オレイカルコスの結界@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)、盗人の煙玉@遊戯王OCG(1時間使用不可)、スイカロックシード@仮面ライダー鎧武(2時間使用不可)、デスノート(複製品)@DEATH NOTE
[思考]
基本:主さまたちの所へ戻る、たとえどんな手段を使ってでも
1:逃走に集中、こちらの方(肉体派おじゃる丸)に関しては逃げてから考えましょう
1:コッコロは、悪い子になってしまいました
2:キャルさま……それでもわたくしは…………
3:メグさまと協力。ですがいずれは…
4:タラオさまはお亡くなりになられましたか…
5:カイザーインサイトを要警戒
[備考]
※参戦時期は『絆、つないで。こころ、結んで』前編3話、騎士くんに別れを告げて出ていった後

【肉体派おじゃる丸@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(大)、右胸から左脇腹までの切創、淫夢ファミリーへの憎悪(極大)、虐待おじさんを殺せた喜び、ダンデライナーにしがみ付いてる、右拳に槍の刺し傷
[装備]:
[道具]:基本支給品(タブレット破壊)、ゴッド・ハンド・クラッシャー@遊戯王OCG(発動不可)、攻撃誘導アーマー@遊戯王OCG(発動不可)、デス・メテオ@遊☆戯☆王(発動不可)、虐待おじさんのデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜1)、ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[思考・状況]基本方針:優勝して淫夢の歴史から自分の存在を抹消する
1:今は振り落とされないようにする
2:淫夢ファミリーだけは絶対にこの手で殺す。特に野獣先輩、野獣死すべし
3:黒の剣士とI♥人類の男は次に出会ったら絶対殺してやるっすからね……
4:遊戯王カードはこの決闘で大事すね……
5:できれば他の優勝狙いの参加者と組みたいすね。とりあえずこのメスガキどもとは組むっすね
[備考]
※遊戯王カードの存在を知っていますが決闘者じゃないのでルールなどは詳しくありません
※本来の名前を思い出せません

【異次元からの埋葬@遊戯王OCG】
速攻魔法
(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から
合計3体まで対象として発動できる。
そのモンスターを墓地に戻す。

本ロワでは3名まで選び同じエリアにワープするアイテムになっている。またその際、棺桶に入れられる

530 ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:34:41 ID:lWhjTvow0
投下終了です

531 ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 07:59:21 ID:lWhjTvow0
>>522の小鳩のセリフを

「オレは知り合いはいないけど、必ず生き抜くぜ。そして主人公に返り咲いて、飽きるまで青春を楽しむ」から↓

「オレは知り合いはいないけど、必ず生き抜くぜ。そして主人公に返り咲いて、嫌だけどクソみてぇな現実に戻るぜ!」

に修正します

532 ◆QUsdteUiKY:2025/04/14(月) 08:10:10 ID:lWhjTvow0
間違いに気付いたので>>529のメグ達の場所を【???/一日目/早朝〜朝】に変更します

533 ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:43:46 ID:EeVgOa2w0
皆様投下お疲れ様です。自分も投下します

534どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:44:55 ID:EeVgOa2w0
概ね予想通りの内容だった。
ひたすらに上から目線で喧しく放送が行われ、不快感を抱くこと数分。
苛立ちはあるものの、直接ぶつける機会は当分訪れないとも分かっている。
なので今は不機嫌さを内に留め、得られた情報を吟味。

(おおよそ全体の三割、ってところかしらね)

最初の放送前に死んだ者達と、ゲームが本格始動して以降に死んだ者達。
計40名の死亡に然したる驚きはなく、むしろカイザーインサイトには納得さえあった。
100人以上を閉鎖空間、それもアストライア大陸とは比べ物にならない小島に集めたのだ。
積極的に他者を襲う気質のプレイヤーを相応数用意し、円滑な進行を可にするのは何も不自然じゃない。

序盤はハイペースで篩にかけて参加者を選定、黎斗の思惑通りにゲームは進んでいる。
向こうにとっては満足だろうが、脱落ペースを考えると余り悠長に事を構えるのは宜しくない。
死亡者の中にキャルとコッコロは含まれなかった。
後者はともかく前者の生存を知れたのは朗報だろう、使える駒を一つ失わずに済んだのだから。
尤も正確な現在位置は不明、キャルと合流するまでは現状動かせる駒でどうにかする他ない。

チラと見やれば、人形染みた真顔の少年少女が映り込む。
開始早々暗示を受けたココアと、名簿上でマサツグ様と表記された使い捨ての道具。
知己の者だろう名が呼ばれ、ほんの僅かにココアの瞳が揺らいだがそれだけだ。
支配下を脱する気配は微塵も表れず、都合の良い傀儡のまま。
マサツグ様に至ってはそもそも意識がなく、放送を聞けてもいない。
仮に起きていたとしても、脱落者に心を痛める人間ではないが。

535どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:45:43 ID:EeVgOa2w0
「なに、それ……」

となれば問題は残る一人だろう。

白鳥司の名前が呼ばれる可能性を、みかげは考えていなかった。
或いは、考えないようにしていたのか。
陛下と呼ぶ同行者に任せておけば大丈夫、何も問題無い筈。
暗示の影響込みとはいえ、根拠もなしにそう結論付けて。
結果、司はみかげの関わらない所で命を落とした。

有り得ぬ話、とは言い切れない。
司本人に死ぬ気がなくとも、ゲームに乗った参加者は容赦なく死を突き付けて来る。
自分と違い、保護してくれる者とは会えなかった。
若しくは会ったけど、その人共々殺された。
過程の想像は幾らでも出来るが、結果は既に放送で伝えられた通り。
まして司は自分と同じ、本来争いとは一切無縁の女子中学生。
運動神経に優れてるからといって、常人以上の力を持った相手に襲われればどうしようもない。

実は脱落者の情報は嘘で、司はまだ生きている。
都合の良い展開に期待しようにも、そんな訳がないとみかげ自身の内で声が囁く。
呼ばれた名前の中には一番初めに会った少女、ニノンもいた。
定時放送が始まるより先に死を知らされ、証拠と言わんばかりに脱落者へ名を連ねたのだ。
ニノンの死は本当なのに司の死は嘘、と断じるのは流石に不自然。
納得なんてしたくないのに、放送内容が嘘と思い込める強い根拠がどうしても見付からなかった。

「死ぬわけないじゃん…だって……」

だって、その先の言葉が思い付かない。
自分と撫子を置いて、勝手に死ぬ奴じゃないから?
会えたら何て言うかも決められてないのに、死ぬなんておかしい?
どれもがその通りであり、同時に違う気もする。

考えが纏まらず、こめかみがズキズキと痛む。
自分が立っている場所が地面にも関わらず、不安定な足場のようにグラつく錯覚があった。
喧しい自称神様が言った白鳥司の三文字だけが、嫌になるくらい木霊して消えない。

536どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:46:23 ID:EeVgOa2w0
「まだ取り戻すチャンスならあるんじゃないかしら」

耳障りなゲームマスターの声がフッと消える。
蝋燭の火を吹き消すみたいに、一瞬で無くなった。
か細く声を漏らし振り返った先には、同性の自分でさえ息を呑む美貌の『彼女』。
浮かべた笑みは優し気で、こっちの抱える事情に理解を示してくれた時と同じ。
帰り道を見失った迷子の手を引くように、此度もみかげの憂いを取り除かんと口を開く。

「あなたの大好きなお友達を取り戻すチャンスなら、まだゼロじゃないわ」
「陛下……?それってどういう……」

自分の力になろうとしてくれるのは分かる、けど具体的に何を言いたいのか不明。
困惑を隠さずに問うと、機嫌を悪くした風もなく答えが返って来る。

「自称神様も言ってたじゃない、死をも覆す権利を与えるって」
「え……いや、ちょ、待って……!い、言ったけど、でもそれは……」

真実かどうかは一旦置いて、そのように言ったのは本当。
願いを叶える、死者の蘇生だって不可能じゃない。
但し、ゲームに優勝したらという大前提が付く。
ルールの制定されたスポーツなんかじゃない、正真正銘の殺し合いに勝ち残る意味での優勝だ。
暗示の影響下にあるがココア同様の完全な操り人形でない為、至極当然の倫理観で拒否を示す。
あからさまに狼狽するみかげをどう思ったのか、笑みを崩さずに続ける。

「落ち着きなさいな。誰も優勝しろ、何て言ってないわよ?」
「えっ?だ、だって……」
「願いを叶える力は檀黎斗の手元に存在する。なら、別に優勝しなくてもあの男を倒した後で奪えば良いと思わない?」

何を言われたのか分からない。
予想してたのと全く異なる答えが返って来て、暫し年頃の少女らしからぬ間の抜けた顔を作る。

537どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:47:03 ID:EeVgOa2w0
「ゲームのクリア条件は優勝か檀黎斗の撃破。でも願いを叶える報酬は優勝の場合のみ。どうしてなのかしらね」
「どうしてって……」

どうしてだろう。
いきなり殺し合いに巻き込まれ、司まで参加してるのを知り深く考える余裕なんてなかった。
でも今になって自分よりも遥かに冷静な大人から問われれば、確かに疑問に感じる。
参加者を殺さず、あくまで主催者だけを倒す。
黎斗直々に提示されたのもあり、優勝以外のゲームクリア方法も禁止ではない。
けど願いを叶えるのは優勝者が出た時だけ。
漠然と「そういうもの」と思っていたが、言われてみると妙な話だ。

「…………殺し合うのをやめる人が大勢出るかもしれない、から?」
「極端に沢山って程じゃないにしろ、そうなるのを防ぎたいのはあるでしょうね」

最初から自分以外の命に一切の価値を見出していない者や、協調性皆無の者。
若しくは殺戮に喜びを感じる者、そういった連中は抜かすにしてもだ。
譲れない願いの為に血を吐く思いで殺し合いに乗った者がいるとして、別に優勝を目指さなくても願いは叶うと聞かされればどうなるか。
本当はやりたくもない殺人で手を汚さず、巨悪を倒す方法で良いのならそっちを選ぶ可能性は低くない。
自身との直接対決も望む所と豪語する黎斗だが、ゲームの根本的なルールは参加者同士の殺し合い。
故に一番の報酬である願いを叶える権利を、優勝以外で渡す気は無いのだろう。

しかしだ、その願いを叶えるナニカを黎斗が確保してるなら。
わざわざ言いなりになって皆殺しせずとも、奪い取るのが不可能とも限らない。
カイザーインサイトの言いたい内容を理解し、尚もみかげの顔色は曇ったまま。
願いを叶える力を奪うにしろ、本当にそんな力は黎斗は持っているのか。

「力の正体は分からないけど、これだけの規模の殺し合いを始めたんだもの。こっちの想像を超える力を持っている可能性は、低くないんじゃないかしら」
「そりゃ、そう………かもだけど……」

コミックの世界とかアニメの設定とか、非現実的な事が殺し合いでは起きている。
みかげとしてもそこは受け入れざるを得ない。
死者が生き返るのが有り得ないと言い切るには、己の常識を壊す存在に遭遇し過ぎた。
完全に信じてるとまでは言えずとも、若しかしたらという思いはみかげの中にも芽吹きつつある。

538どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:47:46 ID:EeVgOa2w0
「すぐに全部を信じろとは言わないわ。ただ、後悔させないって事だけは約束させて。……生きてる内に、あなたの友達を助けられなかった贖罪も籠めて、ね?」
「陛下……」

申し訳なさそうに告げられれば、みかげとしても何も言えない。
何とかすると言ったのにと責めたら、多少は心が楽になるのだろう。
けどみかげにとって、相手は初めて自身の苦悩に共感し味方してくれた大人。
傷付けたくないし、傷付けるような言葉をぶつけ失望されたくもない。

「取り敢えず、みかげは少し休んでなさい。ここの探索は私とココアでやるから、あなたには落ち着く時間が必要よ」
「うん……」

私なら大丈夫と返すには、精神的な疲れが大きい。
気を遣ってもらってるのへ素直に感謝し頷く。
一言も発さず様子を見守る少女を引き連れ、カイザーインサイトは部屋を後にした。
だだっ広い空間に残ったのは傷心中の少女と、念の為に護衛で置いていった少年。

放送前、移動した先のエリアで見付けたのが今いる場所。
白い外壁の巨大な施設は外見のみならず、内部も豪奢な装飾に彩られてあった。
だが真新しさはなく、所々年季の入った箇所から察するにさぞ歴史ある建造物らしい。
外から見た以上に広大に感じる施設を探索中に放送が流れ、今に至る。

古いけど座り心地は悪くない長ソファーに寝そべり、じっと天井を見つめる。
もう一人の少年は何も言わず、傍らであらぬ方を向くばかり。
正直、ニノンを殺した相手との二人きりで不安が無いと言うと嘘になる。
ただこちらへ敵意を剥く様子はなく、カイザーインサイトだってあくまでみかげの安全を考え置いて行った。
不満を口に出さずにいると、話し相手もいなくなったからか。
司がどこかで死んだ事実が毒のように内側を蝕み、目尻に涙が溜まる。

539どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:48:10 ID:EeVgOa2w0
「……っ」

制服が濡れるのも構わず、腕を強引に瞳へ押し付けた。
ストレートに喪失へ泣き叫んでしまったら、司の死を心から受け入れてしまってるような気がして。
直接この目で見た訳でもない、胡散臭い男の悪趣味な放送一つで伝えられ納得なんて出来ない。
『三人組』が喧嘩とかじゃなく、死に別れる形で完全に壊れてしまう。
現実として簡単に飲み込むには余りにも苦い。

「なんでよ……」

叶わぬ恋だと自覚はあったし、叶わなくて良いと思ってた。
小学校時代と同じ結末を迎えるくらいなら、友達のままで良い。
『普通』の関係のままで、三人ずっと一緒にいられればそれだけで十分だった。
でも、こんな風に永遠に会えなくなるのは望んでない。

陛下を信じていない訳ではない。
けどもし司の蘇生が不可能となって、自分だけが元いた場所に戻ったら。
撫子になんて言えば良い。
司の弟にだってどう伝えてやるのが正解なのか。
分からない、何も分からない。
『普通』を望んで、その結果が『普通』とはかけ離れた友達との別れだなんて。
とてもじゃないが現実とは思いたくない。

どうしてこうなっちゃうんだろう。
零れた嘆きに応えてくれる者は、誰もいなかった。

540どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:48:58 ID:EeVgOa2w0
◆◆◆


「どうなるかしらね、あの娘」

階段を降り地下深くを歩く最中、ポツリと呟く。
傍らに控えさせた少女から返答はないし、求めてもいない。
先程みかげを気遣ったのとは似ても似つかない、冷めた表情でカイザーインサイトは歩を進める。

自身が仕掛けた暗示解除の兆しはなかった。
もし素のみかげならもっと取り乱したろうけど、今は術中に囚われている。
だから司の死を知り動揺こそ抱いても、会話もままならない程の錯乱や八つ当たりには出ていない。
後は適当に彼女を落ち着かせる言葉を選び、尚且つこちらを頼らざるを得ないよう働きかける。
一般的な10代の悩みとは少々違う背景があろうと、所詮は平和な世界を生きて来た子供。
手玉に取るのは実に難しくない。

完全にへし折れて使い物にならなくなる前に、希望をチラ付かせてやった。
なので利用価値ゼロと断じるにはまだ早い。
最終的に使い潰す駒なのは変わらないが、生憎ランドソルにいた頃よりも諸々の制限を受けた身。
普段なら見向きもしない小娘だろうと、ここでは貴重な道具の一つ。
無意味に手札を失うのはなるべく避けたい。

その為に使えるカードは多く集めて損はない。
現在いる施設へ立ち寄ったのも、自分の役に立つ物があるかを確かめたかったから。
C-1エリア、桜ノ館中学校から北西に向かった先。
最も目を惹く白い建造物、名をホテル・フェントホープという。
元はマギウスの翼の本拠地である巨大な廃ホテルも、ゲームにおいては精巧に再現された施設に過ぎない。
羽の魔法少女とすれ違う、なんてこともなく主不在の寂れた城同然だ。

地上の音が届かない程の深い場所を臆さずに進む。
ただの廃ホテルにしては余りに妙な作りだ。
人目から隠しておきたい、簡単に手出しが出来ない所へ隠したい。
そういった理由で地下空間が作られたと仮定するならば、多少は期待して良いのかもしれなかった。

541どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:49:41 ID:EeVgOa2w0
「へぇ……当たりを引いたって所かしら?」

進み続け見付けたモノに、思わず薄く笑みが零れる。
里見灯花や柊ねむがこの場にいたら、わざわざ再現したのかと呆れただろう。
透明な球体へ閉じ込められた、何十体もの異形。
どれもが人の大きさを遥かに超え、身動ぎせずに捕らえられていた。
一つへ近付きそっと掌を当てる。
人間の生命とは別物、なれどまだ生きてるのが分かった。
動きを封じられてるだけで死んではいないらしい。

希望を抱き願いを叶えた少女達の成れの果て。
魔法少女がいずれ行き着く絶望の末路。
マギウスの翼によって飼育され、やがて大いなる救済の贄となる存在。
魔女を閉じ込めた檻が、カイザーインサイトの目の前にあった。

エンブリオ・イヴの成長を早める餌として飼われた魔女達だ。
秘めた力も相応に高められ、イヴの栄養源に相応しく育てられている。
発見したのがマトモな感性の持ち主だったら、触らぬ神に祟りなしと放置を選んだかもしれない。
カイザーインサイトにそういった弱腰の姿勢はなし。
警戒は払うも、利用せずに立ち去るのは馬鹿のやること。
唇に人差し指を当て、暫し考え込む仕草を取る。

(解放すれば勝手にこっちの言う事を聞く、なんて都合良くはいかないわよね……)

ケージ越しに魔力を感知し、魔女の気性をある程度察知。
解き放った者に従順な忠犬とは、残念ながらいかないだろうと分かる。
とはいえそこはカイザーインサイト、御するのが不可能かと言われれば否。
多少は「じゃれつく」だろうが、相手が未知の魔物であっても恐れる必要はない。
人間程融通は利かなくとも、手駒を纏めて増やすのは悪くない。
場合によってはプリンセスナイトの力を持つココアに、数体貸し出す手もある。

(ま、キャル程の働きが出来るかは微妙だけど)

魔物の使役能力の精度で言ったら、与えた力の量の差も影響しキャルの方が上。
今頃どこをほっつき歩いてるのかと、呆れたようにため息を吐く。

よもや自分が敗北した未来の時間軸からキャルが参加してるとは、夢にも思わず。

542どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:50:37 ID:EeVgOa2w0
◆◆◆


「ん……」

小さく身動ぎし、やけに重い瞼をこじ開ける。
精神的な疲れもあったのか、何時の間にか眠ってしまったらしい。
彼氏でもない男子がすぐ傍にいるのに、無防備を晒すとは自分らしくもない。
来る者拒まずと豪語するみかげといえども、流石に相応の警戒心は持つ。
陰湿な性根の見え隠れする相手であれば猶更だ。
自我を奪われ操り人形状態だからといって、気を抜き過ぎたか。
のっそりと上体を起こし、寝惚け眼を擦る。

「おはようさん。快適な睡眠が出来たようで何よりだよ」
「……うわっ!?」

友人のような気楽な口調で話しかけられ、思考が数秒フリーズ。
起きた筈だがまだ夢の中かと思い、徐々に精細さを取り戻す五感に現実と理解。
予想外の、ここにいる筈のない者がテーブルを挟んだソファーに腰掛けリラックスしていた。
四十は超えてるだろうに引き締まった体付きに加え、やけに脚の長いモデル体型。
整った顔立ちも相俟って、みかげの母くらいの年の女性達から黄色い歓声を浴びそうな男。
但し、間違っても心を許して良い相手ではない。
気さくな態度を取ってるが、男の持つ本当の『顔』をみかげは知っていた。

「な、何でいるのよ!?陛下との合流はまだ先の筈じゃ……」
「俺だってこんなに早く再会するとは思ってなかったんだぜ?それもこれも、どっかの神様が余計な事してくれちゃったせいでなァ」

肩を竦め、大袈裟に嘆くリアクションを取る。
放送前に協力を取り付け別行動となった参加者、エボルトが何故かフェントホープ内に現れた。

理由を説明するには少し前、エーデルフェルト邸を発った時まで遡らねばなるまい。
イリヤ達との情報交換を先延ばしにし、戦兎の元へ戻るのを優先。
となったまでは良かったが、オーエド町に近付いたタイミングでふと現在時刻を確認。
これは無理だと理解するのに時間は掛からなかった。

指定された禁止エリアにはオーエド町が設置済の、D-1も含まれている。
エーデルフェルト邸のあるD-3から戻るには、どうやったって1エリア分余計に移動しなくてはならない。
トランスチームガンのワープ機能は未だ使えず、来た時と同じ大幅ショートカットは不可能。
しかもこういう時に限ってNPCは影も形も見せない。
フライングスマッシュを作って移動時間短縮という手も、肝心のスマッシュの素材がなければ無理。
結局早足で移動したものの、戦兎達が呑気に待ってるとは言い難い時刻へなってしまった。
幾ら何でも、禁止エリアが機能するギリギリまで戦兎が待つとは考え辛い。
同行者には重症を負ったモニカもおり、いざ禁止エリアを離れるタイミングで移動に遅れが生じ揃って死亡。
といった展開を避ける為に、もうとっくに戦兎達はオーエド町を去ったと考える方が自然である。

543どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:51:28 ID:EeVgOa2w0
「で、どうせ大遅刻確定ならもうちょっと寄り道して、手土産を増やしてからでも良いかと思ったんだよ。丁度馬鹿デカい施設も目に付いたしな」
「いやそれ、あんたの自業自得じゃない……」

参ったもんだぜと頭を抱える仕草を見せ、説明を終えるエボルト。
事のあらましを聞いたみかげからすれば、呆れ交じりに返す以外ない。
自分達と別れた後、真っ直ぐオーエド町に戻っていれば良かっただけの話ではないか。
D-1が禁止エリアになるのが予想外だったのは分からんでもないが、帰還を遅らせなければ避けられた事態だろうに。

「耳が痛ぇが、俺がいなけりゃ殺されてた連中がいたんだ。人助けと思って大目に見て欲しいもんだね」

目的はパンドラパネルとボトルの回収であり、イリヤ達を助けたのはほとんどついでだが。
詳細を聞かされなくとも、純粋な人命救助目的で寄り道したんじゃないとはみかげにも察しが付く。
飄々とした言動の裏に隠された、地球外生命体の本性を見ただけに余計そう思う。

「そんで中を適当に見て回ってたら眠れるお姫様と、番犬坊主を見付けたって訳だ」
「この人、あんたを見ても何もしなかったの?」
「ああ、指一本触れられてねぇさ。お前さんに手出ししない限り、特別アクションも起こさないんだろうよ」

こうなると本当にただの人形と変わらない。
軽薄な笑みをエボルトに向けられて尚も、少年は無表情で佇むだけ。
ニノンを殺した相手だけにどう思えば良いのか分からず、何よりニノンへの感情も整理が付かない内に彼女は退場。
言葉に出せぬ複雑な思いがよぎる。

というか、何で自分はこんな得体の知れない怪物と雑談をしてるのだろうか。
カイザーインサイトと手を組んだ以上、自分へ危害を加えるつもりは無い筈。
だからといって仲良くしたい男でもなく、今更になって居心地の悪さを覚える。

544どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:51:59 ID:EeVgOa2w0
「そういや、お前の尊敬する陛下殿は――」

気安い態度で問い掛けた内容を中断、エボルトの顔が一瞬で引き締まった。
突然の変化の理由はみかげには何が何やら不明。
片腕にブラッド族のエネルギーを纏わせ、振り向きながら放射。
同じタイミングで壁を破壊し、光輪が猛加速し侵入。
放って置けば室内の全員を焼き殺すだろう熱量を、むざむざ受け入れ得る自殺志願者はいない。

「訪問のノックにしちゃ乱暴過ぎじゃねぇか?いつから地球の常識は変わっちまったんだ?」

皮肉を乗せながらエネルギー波の出力を上昇。
エボルドライバーが無くとも、石動の体に憑依していた頃より能力全般が上だ。
徐々に光輪の威力は低下し、鮮血の渦に飲み込まれ消滅。
唐突過ぎる事態に目を白黒させていたみかげだが、ようやっと自分達が襲われたと気付く。
途端に全身が強張る少女へ見向きもせず、もう一人の男も動きに出た。
番犬の役目を担わされた少年のやる事は一つ、己の命を度外視してでもカイザーインサイトの駒を守る。

『ヨモツヘグリ!』

エボルトを押し退けるように前へ出て、右手の錠前を起動。
鳴り響く音声が果実の名を告げる。
同時に肉体を激痛が走り、多大な負荷を掛けた。
正気であれば苦悶の声を上げたろう現象にも、一切の反応を示さない。
標的排除、そこに少年の意志が介入するのを覇瞳皇帝は望まなかったのだから。

『ロックオン!ハイーッ!ヨモツヘグリアームズ!』

『冥・界!ヨミ・ヨミ・黄泉…!』

頭上に出現した暗雲から果実が落下し、鎧状へと展開。
ライドウェアの上に纏う装甲は、通常のアーマードライダーであれば身を守る役目を持つ。
しかし、この戦士だけは違う。
腐り切った果実の如く紅黒いカラーリング、所々の特徴は殺し合いでフグ田タラオが変身したのと同じ。
なれど性能はおろか、変身者へのリスクも決定的に異なる。
禍々しいオーラを漂わせる姿に、安堵を覚える者は存在しない。

アーマードライダー龍玄・黄泉。
戦極凌馬の手で生み出された、文字通りの禁断の果実。
利用される形で呉島光実が変身を実行し、果てに自らの手で絆を砕いた苦い過去の証。
聖剣も己を守護するスキルも奪われ、唯一少年に与えられた力。

「代わりに戦ってくれるのか?なら、俺は安心して見物出来るみたいだな」

ヘラヘラと笑うエボルトは無視、襲撃者への対処に動く。
自我無き龍玄の右手にはアームズウェポン、ブドウ龍砲が出現。
名前通りブドウ状の銃口からエネルギー弾を吐き出し、壁に開いた穴から外を狙う。
闇雲に撃ってるのではない、龍玄の視覚センサーは標的の位置を正確に捉えた。
但し敵も簡単には当てさせてくれない。
得物を翳しながら飛び退く影を追い、龍玄は追跡を開始。
赤銅色の髪の少年と、バイザーで表情を隠す鎧の少女をレンズが映す。

敵を見付けた以上は容赦や加減が入る余地なし。
相手も迎撃を選んだのだろう、それぞれの刃が龍玄を襲った。

545どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:52:42 ID:EeVgOa2w0



定時放送によって揺さぶられる者がいる一方で、何ら影響を受けない者も存在する。
目的の為に手を組んだ二人、士郎と風もそう。
勇者部の面々は勿論、最愛の妹である樹も不参加。
優勝の為に助けたい者達を殺す、という矛盾は立ち塞がらない。
故に風が今になって考えを変える展開は起きなかった。

士郎も同様に、元から参加者の中に知り合いは皆無。
唯一知っている美遊は今も主催者に囚われたまま。
仮にほんの少しだけ未来の士郎なら、妹の親友も参加者だと気付けただろう。
そんな事実を知る由もなく、引き続き協力相手に真意を隠し兄としての戦いを続ける。

檀黎斗の放送は神経を逆撫でされる内容ではあったが、二人の方針を揺るがす効果は無かった。
エーデルフェルト邸を離れ幾分かの休憩を挟んだ後、次の標的を探し移動を再開。
辿り着いたのがマギウスの翼の拠点、フェントホープだった。
そこからは放送前の襲撃と同じ、風が支給品を使って内部の参加者を確認。
流石にエーデルフェルト邸を超える大きさな為時間は掛かったが、広い一室に三人の姿を見付けた。
砲撃で先手を打った、までは良いが結果は失敗。
三人の内の一人と対峙し、直接戦闘を強いられている。

「ねえ、連続でミスってるし次はやり方変えない?」
「それを話し合うのは、切り抜けてからのが良さそうだぞ。向こうは逃がす気ゼロみたいだ」

敵が手練れなのを加味しても、またもや誰も仕留められてないのは思う所がある。
唇を尖らせ愚痴る風に苦笑いを返しつつ、士郎も意識を戦闘に集中。
放送前に戦った銀狼とは違うが、全身を鎧で覆い素顔は見えない。
説得を試みる手合いでないらしく、これが答えとばかりにトリガーを引いた。

546どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:53:28 ID:EeVgOa2w0
「あっぶな…!」

剣を用いた斬り合いは経験済だが、銃で撃たれるのは初めて。
火力は東郷に劣るからといって、軽くは見れなかった。
焦る口調と裏腹に、回避行動へ出るまでに時間は掛けない。
夢幻召喚の効果は依然変わらず風を強化し、常人を遥かに超える動きを可能とする。
飛び退きエネルギー弾を避け、地面に降り立つや即座に疾走。
棒立ちになって、的と化すつもりがないのは士郎も同様だ。
英霊への置換により得た身体能力を以てすれば、銃撃の対処も不可能に非ず。

地を駆けエネルギー弾を躱しながら、得物を手に距離を詰める。
日本刀と西洋剣の間合いへ閉じ込めるまで残り僅か。
しかしむざむざ接近を許す程、容易く打ち破れる相手ではない。

『ヨモツヘグリスカッシュ!』

ドライバーを操作しロックシードからエネルギーを更に引き出す。
通常形態の龍玄と違い、チャージという手間を挟まずに高威力の弾を発射。
連射性能を大幅に上げた弾幕を張られ、近付く足にもストップが掛かる。
再び回避へ動く士郎と反対に、風が選んだのは突進。
剣を風が覆い刀身が消失、間髪入れずに大きく振り被った。

「逃げてるだけじゃ埒が明かないでしょ!」

風王鉄槌(ストライク・エア)。
剣を不可視へ変えた風の鞘を解き放つ、サーヴァントカードを使用中だからこそ使える攻撃方法。
暴風の砲丸にも等しい威力で、エネルギー弾を纏めて薙ぎ払う。
装甲からも火花を散らし怯んだ今がチャンス、脳天から叩き割らんと振り下ろす。

しかし龍玄、ここで得物を即座にチェンジ。
銃を投げ捨て両手に出現させたのは、円盤状の刃。
アームズウェポンの一種、キウイ撃輪で聖剣を防ぐ。

だったら武器共々粉砕すればいいと、篭手で覆った両手に力が籠る。
バーテックスとの戦いを通じ、剣の扱いにも慣れた。
勇者に変身時にも引けを取らない、ともすれば超えるやもしれぬ身体機能も味方し苛烈極まる猛攻を実現。
されど龍玄という壁は、呆気なく突破可能な紙切れではない。
変身者の生命力を代償に膂力を強化、キウイ撃輪を振るう速度が急激に上昇。
聖剣を寄せ付けず防ぎ切る。

547どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:54:18 ID:EeVgOa2w0
どちらかが痺れを切らすのを待たずに動くは、勇者の協力者たる少年。
シンケンマルのディスクを交換し回転、日本刀から全く異なる形状へ変える。
聖女相手にも使ったシンケンブルーの固有武器、ウォーターアローを新たに装備。
投影により出現させた弓と若干使い勝手は違うも、精度を低下させる程じゃあない。
弦を引き絞り狙いを定め、水の矢を解き放つ。
この一発で敵の装甲を破れるとは思ってない、貫く対象は別の所だ。

キウイ撃輪の刃と中央の安定板を繋ぐ接続部が破壊。
得物の片方が使い物にならなくなり、更に射抜かれた衝撃で体勢が崩れた。

「衛宮さんナイス!」

的確な援護へ感謝を返すも、視線は真正面の標的へ固定。
振り上げた剣がもう片方の円盤を叩き落とし、すかさず胸部へ突きを繰り出す。
少女の細腕ながら弾丸もかくやの勢いだ、呻き声一つ出さずに後退。

追撃へ一歩踏み込む風を近付けさせまいと、次なる武器を出現。
先端に果実をぶら下げた長槍、ダウを豪快に振り回し接近を阻む。
元々はフェムシンムののレデュエが使う得物なのを、この場の誰も知る筈はなく。
ロングレンジを活かし突き出された穂先が、的確に急所を狙う。
素の状態に比べ打たれ強さも上がったとはいえ、あえて受ける理由はない。
聖剣の強度はそのまま防御にも利用出来る、ダウを弾き一撃たりとも食らってはやらない。
ならば確実に力尽きるまで繰り返すだけ、喉元目掛け殺意を籠めた槍が迫り、

「ああ、やっぱりそう来るんだ」

予想通りの攻撃にするりと回避、懐へ潜り込み剣を叩き付けた。

キウイ撃輪を振り回した時も、今のダウの猛攻の時も。
防御を繰り返す内に風が抱いたのは違和感。
敵の力は侮れない、かといって放送前の戦闘時程の脅威を感じ取れない。
疑問への答えはすぐに見付かった。
龍玄の動きは激しくはあるも、ワンパターンなのだ。

意識を奪われ支給品の効果で操られるだけの変身者では、閃刀姫やホーリーフレイム総長のような戦闘技術は発揮不可能。
龍玄・黄泉のスペックでカバーしたものの、やはり限界は訪れる。
戦闘の不得意な相手ならともかく、勇者としての戦闘経験を積んだ風にとっては十分突ける隙。
血飛沫代わりの火花を散らす龍玄の手から得物が落ち、ダメージに堪らず怯む。

意識は無くとも命令には逆らえない、再びドライバーに手を伸ばす。
得物を細かく変えるより、高威力の技で一気に仕留めるつもりか。

548どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:55:01 ID:EeVgOa2w0
尤も、むざむざ敵が許すかは別。

腹部の機械を操作し、特殊な技を繰り出す。
既に一度見せた工程故に、生まれる僅かな隙を見逃さない。
鍔状のディスクを回転させ、士郎はシンケンマルを再度変化。
シンケンレッド専用の大剣、烈火大斬刀を両手で振り被り急接近。
士郎もまた龍玄の動きを見て察したのだ。
戦闘技術の面において、黒衣の魔戒騎士程の手強さはない。
手数と速さを捨て威力重視の武器に変え、決着を早めても問題ないと。

「悪い、こっちも容赦なんかしてやれないんだ」

無意味と分かった上で謝罪を入れ、火炎を纏った大剣を振るう。
血も涙もない外道衆を幾度も葬った刃が、黄泉の遣いを切り裂く。
咄嗟の防御すら間に合わせず、斬り飛ばされた龍玄からは悲鳴も上がらない。
意図したつもりはないが砲撃で開いた穴へ見事に吸い込まれ、屋内へ逆戻り。
所々に亀裂の走った床へ、盛大に叩き付けられた。

「な、なに…!?」
「どうやら、こいつにゃ番犬の仕事は重荷だったみてぇだな」

出て行ったと思ったら時間を掛けずダイナミックな帰還。
ビクリと震えるみかげの横で、エボルトは大袈裟にため息を吐く。
これを見て襲撃者を華麗に撃退、などと口が裂けても言えまい。
十中八九返り討ちに遭ったのだろう、ボディーガードとしては合格点を与えてやれない。

別に期待はしてなかったがとの呟きに反応してか、勢い良く龍玄が立ち上がる。
ライダーに変身中なのもあってか中々にタフらしい。

だが次の行動はエボルトの予想と大きく異なった。

「え、なんでこっち来て……!?」

もう一度襲撃者を相手取ると思いきや、龍玄はみかげの元へ突き進む。
困惑し距離を取ろうとするも、突然の動きへ頭は半ばパニック状態。
呆気なく接近を許し、次に何か言うより早くデイパックを引っ手繰られた。

「……あ!それ私の……!」

何をされたのか理解が追い付き、至極当然の抗議を口に出すも効果なし。
デイパックを奪うと背を向け、あっという間に走り去って行く。
声は届いてるだろうに、振り向く気配すらなかった。

549どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:55:47 ID:EeVgOa2w0
◆◆◆


取り出した菓子パンに無我夢中で齧りつく。
食べる、というよりは貪ると言った表現が当て嵌まるだろう。
数日は食料に有り付けなかった乞食もかくやの、鬼気迫る食べっぷりだった。
但し食事中の当人は空腹を満たすのが目的じゃあない。
もっと別の、自身を苛む苦痛を和らげる為だ。

「ハァ…ハァ……クソッ!あの蛆虫どもが……!」

デイパックに入っていたコロッケパン三つを平らげるが、そこに満足の二文字は無い。
食べれば体力を回復させるとの、説明書の記載内容に偽りはない。
全快には至らずとも、痛みが遥かにマシになった。
しかし傷の癒えた喜び以上に、胸中を占めるのは圧倒的な憎悪。
自分を散々痛め付け、あまつさえ道具のように使った連中への耐え難い怒り。
悪鬼同然に歪んだ顔は自我無き人形ではない、マサツグ様が正気を取り戻した証拠だろう。

マサツグ様が支配を解かれた原因は、つい先程の襲撃者達との戦闘にあった。
まず第一にマサツグ様は士郎達を迎え撃つ際、アーマードライダーへの変身を実行。
元は並行世界のココアに支給され、カイザーインサイト経由で装備させられたヨモツヘグリロックシード。
使用者の生命力を代償に能力を強化する危険な代物だ。
嘗ての呉島光実同様、マサツグ様の肉体もロックシードの影響で負担が圧し掛かった。
ただ此度は度重なるダメージの蓄積が、封じ込められた意識の強引な覚醒を促したのである。
加えて士郎と風の攻撃はマサツグ様のみならず、彼を操った不可視の支給品にも衝撃を与えた。
意図したつもりはなくとも、結果的に人間あやつり機の機能に障害が発生。
正気に戻ったマサツグ様はみかげの支給品を奪い逃走、フェントホープ内の別室に身を隠し今に至る。

「なにが『私の』だ。ハイエナのように他人の物を盗むゴミめ…お前のような猿以下の奴に物を与えても、無意味なだけだろうが。俺の手に渡った事を感謝しろ」

みかげのデイパックを奪ったのに罪悪感は微塵もない。
姑息にも支給品を取り上げた女の仲間だ、傷の回復を優先していなければ道具のみならず命も奪ってやった。
何よりマサツグ様にとって自分以外の参加者は、優勝を阻む屑の集まり。
仮に支給品を取られていなくても、一切躊躇せず殺したのは想像に難くない。

550どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:56:21 ID:EeVgOa2w0
ともかく回復が済んだなら次は武器だ。
一番良いのは自分の支給品の聖剣だが、忌々しい事にみかげとは別の女の手元にある。
あのような物の価値も分からず、我こそに相応しいと抜かす勘違い女に奪われたままなのは非常に腹立たしい。
直ぐにでも殺して取り返したい衝動に駆られつつ、指先がナニカに触れた。
引っ張り出すも聖剣どころか武器ですらない。
顰めっ面で一応説明書に目を通し、顔色を変え即座に使用を決めた。

「やれやれ、代用品とはいえ戻って来たか。全く、ゴミは人様の手を煩わせるのだけは天才的だな」

満足気に見つめる手元には、紺色に輝く一振りの聖剣。
腰にはバックル型の鞘と、神獣の物語を記した本。
クロスセイバーの変身に必要な装備一式が、一つも欠けずマサツグ様の元へ返って来た。

カイザーインサイトから取り返し、再び装備したのではない。
みかげの支給品にあった、タイムコピーというひみつ道具の効果だ。
名前の通り、過去の映像に映った物を立体コピーする機能を持つ。
時間をずらしながら細かく操作を続け、目当ての人物を発見。
地下へ降りる前のカイザーインサイトの持つ、聖剣一式を対象にコピー開始。
複製品と侮るなかれ、性能はオリジナルと変わらない。
念の為に変身してみれば、問題無くクロスセイバーになれた。

いずれカイザーインサイトを殺し本物を取り戻すのは確定事項だが、まずは試運転がてら奴の腰巾着を軽く仕留める。
ついでに自分を痛め付けた少年と少女、奴らも生かす気はない。
己の油断がオーエド町での敗北に繋がったと、反省の二文字がある筈もなく。
鬱屈とした本性を傲慢さで隠し、来た道を戻って行った。

551どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:57:29 ID:EeVgOa2w0
◆◆◆


支給品を勝手に持っていかれたみかげは、怒りと困惑で頭がどうにかなりそうだ。
陛下はあのような命令を下してないだろうに。

「結局俺が働くしかないってか。短い休憩時間で涙が出そうだよ」

苛立ちを声に出し掛けるも、うんざりしたエボルトの言葉で中断。
面倒そうに見つめる先に誰がいるのか、みかげだって分からない筈はない。
嫌な予感で背筋が寒くなるがお構いなしだ、状況は待ってくれない。

黒い鎧の少女と赤毛の少年。
龍玄を追って襲撃者達も屋内へ現れ、視界に映る二人を見据える。
紅黒い装甲の者が変身を解いた、にしてはダメージを受けた様子がない。
何処へ行ったという疑問は、軽い足取りで前に出た地球外生命体から答えがあった。

「お前達とはしゃいでた奴なら、こっちのお嬢ちゃんの支給品を奪って逃げて行ったよ。今頃は一人反省会でもしてるかもな?」
「……女子の持ち物取って一人だけ逃げるとか、普通にドン引きなんだけど」
「そう思うんだったらこっちは無視して、アイツを追い掛けちゃあくれないかねぇ?」
「悪いけど無理な相談だ」

冗談交じりの提案はバッサリ切り捨てられた。
別に本気で言った訳じゃない、予想通りの答えである。

真っ先に自分達へ向かって来た相手が、まさか我先に逃げ出すのは士郎達にも驚きだ。
しかも仲間の支給品まで奪うとは、少々思っていた人間性と違う。
かといって残された二人を見逃す気はない。
向こうもそれが分かってるのだろう、怯えを露わに少女が後退る。

「ちょっと…!どうすんのよ…!?」
「まぁそう慌てなさんな。俺じゃ愛しの陛下程の安心感は無いってか?泣かせてくれるよ」

この期に及んで緊張感の欠片もないエボルトへ、敵対中の士郎達も思わず呆気に取られた。
青褪めながらも他に頼れる相手のいないみかげは、苛立ちと恐怖でいっぱいいっぱい。
流石に同情を抱かないでもないが、優勝の為に蹴落とさねばならない相手。
切り替えた風が殺意を発し、

552どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:58:09 ID:EeVgOa2w0
「ま、協力者のよしみで一働きしてやるよ」

口調は軽いままで、エボルトが長ソファーを蹴り飛ばす。
幾ら成人男性とはいえ、容易く片足で動かせる重量じゃない。
驚きつつ聖剣を振るって両断、綿や部品が床へ散らばる。

拙い目晦ましだがこれで十分だ。
みかげの腕を掴んで大きく後退、傍らで悲鳴が上がるのも無視。
降り立った先で懐から得物を取り出し、反対の手でボトルを活性化。
ファウストを隠れ蓑に使っていた時からの慣れた動作で、スロット部分へ叩き込む。

「蒸血」

――MIST MATCH――

――COBRA…C・COBRA…FIRE――

有毒色のスモッグが全身を覆い、擬態中の肉体を血濡れの装甲で隠す。
各部から蒸気が噴出、背後で盛大に花火が散る。

「ほらよ」
「熱っ……え、ちょっ…!?」

ブラッドスタークに変身すると、デイパックから引き上げた道具をみかげに放った。
火花が手に当たり熱がっていた所へ渡され、慌ててキャッチ。
突然の譲渡へ意図を掴めずにいるのも気に留めず、ブラッドスタークは自身の得物を操作。

――RIFLE MODE――

『特別にくれてやるよ。こっちでカバーが追い付かない分は自力で何とかしとけ』
「はぁ!?」

気安く告げられ堪らず聞き返すも、会話を続ける気はないらしい。
薙ぎ払うようにトランスチームライフルを撃ち牽制、床一面に火花が散る。
先手を切り相手の動きを止めるやすかさず接近、ブレード部分で斬り掛かった。

553どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/15(火) 23:59:10 ID:EeVgOa2w0
武器内部のスチームヒーターで加熱された刃は、敵を溶かしながら切断する。
仮面ライダー相手にも有効な斬撃を、生身で受ければ結果は言うまでもない。
大剣を元の形状に戻し、士郎は双剣を重ね防御。
ただの刀では溶解は免れないが、対外道衆を想定した侍戦隊の装備なら別。
高熱ブレードを防ぎ、押し返さんと両腕の筋肉が盛り上がる。
士郎の望み通りにむざむざ怯んでやる理由はない、自ら得物を引き蹴りを放った。

靴底が胴体を叩くより先に、床を転がり回避。
英霊との置換により打たれ強さも常人以上であるも、余計なダメージは負わないに限る。
入れ替わりで攻撃に出たのは風だ、跳躍しブラッドスタークの頭上を確保。
落下の勢いを乗せ聖剣の威力を引き上げ、フルフェイスの頭部を砕き斬るべく迫る。

『おっかないねぇ。最近のお嬢ちゃんはお淑やかって言葉を知らないのか?』

高度な視覚センサーと変身者自身の戦闘経験が、頭上からの奇襲にも焦りを生じさせない。
軽やかにステップを踏み回避、聖剣の餌食となった床は憐れ木っ端微塵。
力を籠めた強力な攻撃程、空振りが発生時の隙は大きい。
シューズに搭載済の機能が足音を消し、一瞬で死角へ移動。
猛烈な悪寒が風を襲った時にはもう遅い、後頭部へ銃口が突き付けられた。
三点バーストの高熱硬化弾が頭蓋骨を食い破り、脳漿で部屋を汚すまで残り僅か。
名前も知らない少女の命を終わらせたとて、ブラッドスタークに一切の罪悪感はなし。

故に風の死を阻むは仮初の協力者。
生まれた隙に我が身を躍らせるのは、何もブラッドスタークのみに限った話ではない。
獣の牙の如く双剣が長銃を弾き、得物を操る本人をも仕留めんと走る。

『おっとォ、優秀な騎士様の参戦か』

軽口を叩きつつも双剣を捌き、時には間を縫って打撃を放つ。
首を狙った手刀を躱し、反対に士郎が切っ先で腹部を突く。
喉元はパイプが巻かれ胸部には分厚い装甲がある以上、脆いだろう箇所はそこだ。

ブラッドスタークが纏う鮮血色のスーツは変身者の強化のみならず、耐衝撃の盾としても機能する。
しかし既存の生物を超える生命力の外道衆を幾度も斬り、地獄へ送り返したのがシンケンマル。
士郎自身の身体能力と相俟って、直撃を受ければ相応のダメージが襲うのは確実。
トランスチームシステムを過信せず、迫る刀身を蹴り上げ退ける。
爪先で得物を叩かれ、士郎の意志とは無関係に腕が跳ね上がればがら空きの胴体が完成だ。

554どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:00:08 ID:Kv0u2Bhg0
が、そう何度もブラッドスタークの読み通りにはしてやらない。
ただ闇雲に得物を振るうだけでは聖杯戦争に勝ち残れなかった、油断を持ち込まず一挙一動へ常に気を払う。
脚部の僅かな動きを捉えた瞬間、自らシンケンマルを手放していた。
宙を回転し舞う刀には目もくれず、装填済のディスクを回転。
新たにシンケンマルを複製し懐へ潜り込み、今度こそ両の刃が赤い蛇を切り裂く。
なれど標的の動作を冷静に見極められるのは、ブラッドスタークもまた同じ。
斬られる寸前で全身を影状に変化、地面を這い士郎の背後を取る。
うなじがヒリヒリと痛む感覚へ逆らわず、振り返り様に双剣を振るって対処。

『悪くねぇ反応だな。どっかのお坊ちゃんよりも、よっぽど腕が良い』
「誰と比べてるか知らないが、俺だってあんた相手に余裕がある訳じゃないぞ」
『そう腐りなさんな。年長者からの誉め言葉には素直に喜んどくもんだぜ?』

どこまで本気か分からない称賛への反応もそこそこに、武器を動かす手は互いに止めない。
双剣の乱舞を銃剣一本で捌き、時に至近距離で高熱硬化弾を放つ。
顔面スレスレを横切る銃弾に冷汗を掻く暇すら惜しい。
全身装甲姿はついさっきの果実を被った者と同じでも、強さは明らかに目の前の男が上。
剣のみに限って言えば黒衣の剣士に及ばないが、培っただろう戦闘技術は引けを取っていなかった。

「おじさんの癖に動き良すぎでしょ……」

士郎と鎬を削るブラッドスタークに、風も呆れ交じりで呟く。
あの赤い装甲がそこまで高性能なのか、男自身が相応に場数を踏んで来たのか。
いずれにしろ面倒な手合いということは分かった、士郎との二人掛かりで片付けようとし、

「あっ」

視界の端に後退る少女を捉えた。
突如始まった戦闘へ慄き動けずにいたみかげだが、我に返って真っ先に思い付いたのは逃走。
エボルトから道具を渡されたからといって、はい分かりましたと即座に戦える訳がない。
真っ赤な装甲姿よりも更にヤバい、怪物の力を発揮すれば2対1でも問題ないだろう。
むしろ自分は足手纏い、早く陛下を呼びに行った方が良い。
己を納得させる言葉を繰り返し逃走を試みたタイミングで、運悪く見付かった。
バイザーがこちらへ向けられてると気付き、ぶわっと冷や汗が流れ出す。
弱者には興味の無い武人肌、なんて都合の良い展開は当然やって来ない。

555どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:00:43 ID:Kv0u2Bhg0
風が目指すのは優勝による願いを叶える権利の獲得。
一時的に手を組んだ士郎を含め、全参加者が殺すべき対象。
戦えるかどうかは関係無く、殺し合いのプレイヤーに選ばれた時点で例外はない。
ここでみかげを見逃す理由は欠片も存在しなかった。

「……ごめん」

それでも、何一つ感じないと言えば嘘になる。
様子を見れば元々争いとは無縁の、巻き込まれただけの一般人だと察しは付く。
勇者とバーテックスの戦いを知らず、日常を謳歌して来た者達と変わらない。
人の為になることをする、勇者部の部長にあるまじき暴挙。
自分の行いが誰にとっても許されない自覚はあり、風本人にしか聞こえない声量でその三文字が零れた。

だけど今更後戻りするつもりもなく、聖剣の柄を痛いくらいに握り締める。
せめて余計に苦しませないよう一撃で、相手にとっては何の嬉しさもない心持で突進。
斬られたと理解させずに首を落とし、今度こそ本当に手を汚す。

「――――っ!」

風と目が合った瞬間から、みかげは己の死を強く予感した。
蛇に睨まれた蛙という諺がここまで合う状況は、平凡な学生生活でまず訪れない。
『普通』を求めた末に、『普通』じゃない相手の手で『普通』からかけ離れた終わりを迎える。
納得なんて出来ない、大人しく受け入れる気が起きるなど有り得ない。

(いや……私まだ……だって……)

自分が何をやれば良いのか答えは見付からない、でも死にたいとだけは思えない。
死にたくない、声には出さずとも心からの叫びを聖剣が終わらせる。

556どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:01:23 ID:Kv0u2Bhg0
『黄雷抜刀!』

「なっ…!?」

逃れられない結末へ否と答え、雷がみかげを守る盾と化す。
聖剣によって引き起こされる死を阻むのは、同じ聖剣以外にない。

光がみかげを包み込み、現れるは甲冑を着込んだ新たな剣士。
左肩には黄金のランプを思わせる装甲。
垂らしたローブも同色で高貴さが漂う一方で、頭部からは鋭利な刃が突き出る。
稲妻を象ったエンブレムを填め、聖剣の使い手がここに降臨。
仮面ライダーエスパーダ。
予選では破滅の未来に囚われた青年が、本来振るった力の名。

「た、助かった……」

手にした雷鳴剣黄雷を見つめ、震える声が喉を引き絞り溢れる。
元々黄雷を含めたエスパーダに変身する為の装備一式は、ルナの支給品だった。
ライダーにならずとも十分な強さを持つ魔女には無用の代物として、生きてる間は使われず死蔵。
だが放送前に脱落し、残った黄雷はデイパック諸共エボルトがちゃっかり回収。
ついでに司の支給品もドレイクグリップを含め、自分の手元に確保。
エーデルフェルト邸に集まった面々が定時放送で大なり小なり動揺があった為、エボルトの抜け目ない行動に口を挟む余裕も無かったのである。
とはいえ自前の戦闘手段を有するエボルトも聖剣は必要としていない。
未知のライダーシステムへ多少の興味こそ抱くも、譲渡は問題無しとみかげへくれてやった。

(ってかこれ、陛下が使ったのと同じっぽい?)

みかげが咄嗟の変身を実行に移せたのは、事前にクロスセイバーの存在を知れたから。
スペックこそ大きく差が開くが、バックルから聖剣を引き抜く工程は同じ。
死への恐怖から無我夢中で黄雷を抜き、こうして死なずに済んだ。

「あんまり余計な抵抗しないで欲しいんだけど!」
「っ、するに決まってんでしょ…!何なのよいきなり襲って来て!頭おかしいんじゃないの!?」

安堵するにはまだ早い、一撃防いでも襲った相手が健在では根本的な解決にはならない。
理不尽な要望へ苛立ちを露わに返し、次いで起こるは聖剣同士の激突。
黒を纏いし刃が変わらず死を望み、稲妻を帯びたが死を否と叫ぶ。

557どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:02:07 ID:Kv0u2Bhg0
「ぜやああああああっ!!!」
「痛っ……!」

気合の入った構えからの豪快な振り下ろし。
得物は勇者だった時の大剣よりサイズダウンしてるが、強度も切れ味も上。
得意の戦法で敵の剣共々破壊に出る。
しかし世界は違えど聖剣は容易く砕けはしない、翳した黄雷がみかげへの被害を防ぐ。
尤も夢幻召喚を経た斬撃だ、両腕を襲う重圧に短く悲鳴が漏れた。

「この……離れなさいよ…!」

みかげの意志に聖剣が応え、刀身から稲妻が更に迸る。
鍔迫り合いの体勢を崩さず電撃を流し、全身の痺れに風の力が幾分弱まった。
戦闘の素人と言えども今がチャンスだとは分かる。
引き上げられた膂力で力任せに振り払い、敵を押し返すのに成功。
また斬り掛かられるのは御免だ、刀身から電撃を放射。
マトモに食らえば危険な黄雷の能力も、一度我が身で味わえば二度目は許さない。
夢幻召喚で風が得たのは、少女にあるまじき怪力のみに非ず。
床を踏み砕き疾走、泳ぐように電撃を避け再び接近。
横薙ぎに振るわれた聖剣をみかげが防ぎ、続けて二撃三撃と刀身が叩き付けられた。

「そらそらどうしたっ!敵わないって分かったら大人しくしてな!一撃で終わらせてあげるからさ!」
「勝手な事ばっかり言うな!くぅ…っ!ゴリラみたいな力して……!」
「はぁ〜〜〜!?こんな美人相手に何言ってくれちゃってんのかしら…!女子力の高さが剣の強さにも出ただけでしょ!」
「剣振るうのに女子力は関係ないでしょうが…!」

向こうが言えばすかさず言い返してを繰り返し、口と腕が休まる所を知らない。
相手に勝ちを譲るつもりは互いに無くとも、押されているのはみかげの方。
エスパーダの機能でどうにか動けてるだけで、元々ただの女子中学生では勇者として戦って来た風には届かない。
細腕に圧し掛かる重みへ戦慄を抱き、防御を崩さずに口を開く。

558どうにもならないからよ ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:03:17 ID:Kv0u2Bhg0
「ほんっとに…なんなのよ……!あんな自分を神様とか言う痛い奴の言い成りになって、何がしたいの――」
「あんな奴に縋り付くしか、どうにもならないからよ」

己の抗議を遮って紡がれた言葉に、思わず息を呑んだ。
バイザーの奥に隠した瞳が、見えないのに悲痛な色を浮かべた気がしてならない。

冥界の王はもとより、神を名乗るゲームマスターに悪感情が湧かない訳ない。
よりにもよって、『神様』なんかに頼らざるを得ない自分に嫌気が差す。
けど他に方法があるのか。
供物と称して奪った妹の声を、何も悪いことなんてしてない勇者部の皆の体を返してくれる、奇跡が起きると言うのか。
起きないから、蜘蛛の糸に等しい可能性に縋り付いている。
結局どの世界でも変わらない、捻くれて意地の悪い『神様』の言い成りになった。

「うぁ…っ!?」

詳しい事情が語られずとも理解出来る、言葉の重みへみかげが何も言えずにいる中。
話はこれで終わりとばかりに、風の剣が一層激しさを増す。
防いだ体勢のままに吹き飛ばされ、床を転がるも敵の手加減には期待するだけ無駄。
心なしかプレッシャーまで上がった風に恐怖しつつ、バックルへ手を伸ばす。

『ランブドアランジーナ!』

ワンダーライドブックの力を引き出し、聖剣から三日月状の斬撃を放つ。
メギドを怯ませる威力も風を止めるには頼りない、苦し紛れの抵抗に過ぎない。
一振りで霧散した刃には目もくれず、優勝へ一歩近付く為に斬り殺さんと踏み込む。





「ごがあああああっ!?」





だというのに、またしても手を止めるしかなかった。
聞こえた声は風もみかげでも、同じ空間で戦闘中の男二人とも違う。
今度は何事かと視線を彷徨わせる必要もなく、声の主が壁を突き破って彼の前に転がる。
全員暫し戦いを中断し乱入者へ意識を向ける中、

「いた…!こっちの部屋まで飛ん、で…?」
「……」

続けて現れる新たな顔ぶれへの、高まった混乱故の視線を浴びせられ。
桜色の髪を靡かせた少女も、異形の貌を貼り付ける侍も、発するべき言葉を直ぐには見付けられなかった。

559ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:04:53 ID:Kv0u2Bhg0



正直に言って驚いた。
病院が設置されたエリアとは正反対の西側へ転移したのも。
移動を始めた矢先、見覚えのあり過ぎる建造物を見付けたのも。

「ここってマギウスの翼の……」

聳え立つ廃ホテルは物言わずいろはを見下ろす。
本物のフェントホープではなく、精巧な再現に過ぎないとは察せられる。
しかし見知った施設が実際に目の前にあれば、一切驚くなというのは難しい。
イヴの孵化と共に崩壊し、二度と訪れる機会はない筈だった。
本物でないとはいえ、よもやこういった形で再び目にするとは。

呆然と見上げるのも束の間、直ぐに顔を引き締める。
傍らに立つ黒死牟もいろはの変化に気付き、短く問う。

「行くのか……」
「はい、やちよさん達がいるかもしれないですし。それにもし結芽ちゃん達が近くに飛ばされてたら、ここに来ててもおかしくないです」

やちよもマギウスの二人も、フェントホープを見付けたらまず間違いなく調べるだろう。
加えてこれだけ目立つ施設だ、転移した仲間や他の参加者だって無視は出来ない。
いろはと違って特別行きたい場所も無い黒死牟には、強く反対する理由もない。
好きにしろと無愛想に告げると、承諾を得られた礼が返って来た。

黒江の手引きで潜入した時と違い、備え付けの扉を開く一般的な方法で内部へ足を踏み入れる。
拠点として使っていた魔法少女達は当然おらず、人の気配の薄さが自然と肌寒さに変化。
思わず制服越しに二の腕を擦るいろはを尻目に、黒死牟はサガの鎧を解除。
日に炙られないなら窮屈な思いをしてまで、装着を続ける意味も無し。
引き剥がした腹部の絡繰を支給品袋に放ろうとし、勝手に掌を離れた。

『&&&%$&%+##』

解読不能の言語らしきものを発し飛び回る、円盤状の生命体。
サガークと呼ばれる存在が何を言ってるのか、黒死牟にもいろはにも不明。
旧ファンガイア語しか話せない都合上キバットバット三世同様の制限は免れた。
ファンガイアの言葉を理解出来る者が限られている為、必然的にコミュニケーションは困難。
新しい資格者へ伝えたい事でもあるのか、だとしても黒死牟からすれば然して興味もない。
鬱陶し気に目を細める横では、いろはがそっと手を伸ばす。

560ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:06:17 ID:Kv0u2Bhg0
「あなたが、黒死牟さんを太陽に当たらないようにしてくれたんだね。ありがとう」
『&#$%+#@@&』
「わっ、ご、ごめんね?撫でられるの嫌だった?」

純粋な感謝で撫でたつもりだったが、怒ったように全身を震わせ跳ね除けられた。
紅渡以上にファンガイアの血が濃い、登大我に仕えていたからか。
プライドは高く、愛玩動物のように扱われるのは不服だったらしい。
傍目には微笑ましいやり取りも、黒死牟の興味は一切引かない。
サガークを掴んで今度こそデイパックに放り、何も無かったように移動を再開。

慌てて追いかけて来る気配を感じつつ、病院での弟との斬り合いに思考は沈む。
姿形、声、技の冴え、己を見つめる瞳。
何もかも全てが、百年以上が経とうと色褪せぬ記憶のまま。
悪劣な幻覚でなければ、日輪を騙る愚物にも非ず。
正真正銘、本物の継国縁壱だった。

縁壱本人が自分と同じ屠り合いの場にいるのを、今更疑う余地はない。
主への忠義すら削ぎ落とされ、人間の小娘一人に雑念を募らせる有様に堕ちた身なれど。
長きに渡り己を憎悪と嫉妬で掻き毟った男を、見間違える程耄碌してはいない。
だからこそ、受け入れざるを得ないと理解しても脳が現実を拒む。
縁壱が振るう剣の先へ、人に仇為す悪鬼はおらず。
本来ならば人格者たる弟が率先し守らんとするだろう、善良な人々が鬼滅の刃の餌食と化す。

そんな馬鹿なと、有り得ぬ妄想と吐き捨てられるのならそうしたい。
しかし他ならぬ自身の六眼が捉えてしまった。
滅ぼすべき鬼へ向ける筈の殺意を、よりにもよって人間にぶつけた姿を。
己へ付いて回る理解の及ばぬ、だが善性の強さは間違いのない少女の腕を斬り刻んだ暴挙を。

561ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:07:20 ID:Kv0u2Bhg0
悪夢同然の光景に訳も分からず脳が軋む痛みを覚え、気付けば無我夢中で得物を振るった。
いろはの命を再度拾い、小生意気な娘と共に弟と斬り合い、新たな力を得て。
結果、何か大きく変わったのかと言うなら首を横に振る他ない。
縁壱は自身から離れ、今もどこかで血の河を生み出しているのだろう。
一方自分は未だ何がしたいのか、縁壱をどうしたいのかの答えを出せずにいる。

仮に、最早何の意味も無い仮定の話ではあるが。
他者の介入がない、紛れもない縁壱自身の意志で以て眼前に立ったのなら。
枯れ細った老爺ではなく、生命力に満ち溢れた全盛期の姿で。
憎らしくも認めざるを得ない、最強の剣士として刃を向けるのであれば。
四百年前から続く屈辱にやり直しの機会が訪れたと、そう考える自分がともすればいたのかもしれない。

なれど、今の縁壱は神が戯れに二度目の命を吹き込んだ玩具。
鬼狩りとは名ばかりの殺戮に身を委ね、あまつさえ本人は己の在り方に一切の疑問を持たない。
そのような弟と対面し、やれ再戦だ何だのと思える筈がない。
ギチリと口内から発する音にも気付かず、奥歯を忌々し気に噛み締める。
改めて胸を焦がす、神への猛烈な怒り。
私が、俺が憎み焦がれた男はあんな――

「縁壱さんのことを、考えてるんですか……?」

茹で上がる頭を冷やし、意識を現実に引き戻す声。
いつの間にやら表情へ考えが出ていた鬼を覗き込む、少女と視線が合う。
途端に沸き立つ怒りは沈静、打って変わって不機嫌そうに口元が歪む。
余計な事へ思考を割き過ぎたせいで、見せたいとも思わない隙を晒した。
己自身に苛立つ黒死牟をどう思ったか、僅かな間を開けていろはがもう一度口を開く。

「大事な家族だから…っ」

最後まで言い切らず、中途半端な所で途切れた。
口を噤んだ理由は、自分を見る男の視線が険しさを増したから。

562ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:08:06 ID:Kv0u2Bhg0
「お前が……奴と私との……何を知る……」

よくもまあ、そんな戯言をほざけるものだ。
血の繋がった弟ではある、同じ女がこの世に産み落とした兄弟ではある、人間だった頃は瓜二つの容姿を持った双生児であった。
だがしかし、縁壱を家族として愛したことなど只の一度もない。

何度、目障りと思ったか。
何度、死んでくれと願ったか。
何度、何故お前だけがと妬んだか。
何度、どうして私はお前のようになれないと憎んだか。

何度、届かぬ背を焼き付かせた弟へ心を引き裂かれたか。

「言うに事欠き……奴が……大事など……」

負の衝動に背を押され吐き捨てた言葉に、いろはは無言。
揺れ動く瞳が、歪めた鬼の顔を映し出す。
制服の袖を強く握り、失敗の自分を責める。
彼が安易に触れて欲しくはない、心の一番柔らかい部分。
悪意はなくとも、無遠慮に指先で突いてしまった。

「ごめんなさい…また、最初の時と同じことをして……」

頭を下げ、素直に謝罪を口にする。
言い訳はしない、だけどまだ言わねばならい、伝えねばならない事があった。
でも、と続け顔を上げ、もう一度ちゃんと彼の視線を受け止める。

563ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:09:25 ID:Kv0u2Bhg0
「ありがとうございます。黒死牟さんが縁壱さんをどう思ってるのかを、教えてくれて」

多くは語らなくても、声に籠められた感情から察するのは不可能じゃない。
黒死牟が弟へ向ける想いを、悲しく思わなかったかと言えば嘘になる。
家族であっても、自分と妹とは異なる関係も珍しくはない。
理解は出来るがあっさり割り切れもしない。けど、

「縁壱さんのことを良く思ってなくても、でもどうでもいい人なんかじゃないから…」

嫌うということは、それだけ弟の存在が大きいこと。
負の感情を抱くのは、決して弟に無感情じゃない事実に他ならない。
もし弟をどうでもいい存在としか思ってないのなら、あれ程に動揺は見せなかった。
いろはが縁壱の名を口にした時、あんな風に怒りをぶつけなかった。
本当に嫌いなだけだったら、こんなにも強く迷ってはいない。

世に溢れる真っ当な兄弟の在り方とは断じて言えない。
それでも黒死牟…継国巌勝は縁壱の兄だった。
兄に生まれ、弟を見て来た。
憎悪と嫉妬に苛まれる責め苦の如き生であったのは否定せずとも、縁壱への関心を失った時間だけは無かった。

「だから黒死牟さんが縁壱さんのことで、どうすればいいか迷ってるなら――」

今でも思い出す。
助けられなかったあの娘達を。
助ける筈の手で絶望に堕としてしまった、ヨダカの魔法少女を。
どうしてこうなってしまったんだろうと、深く後悔を抱いたのは本当だ。
今になって過去を無かったことには出来ない。

「心から『こうしたい』って答えが出せるように、支えたいって思うんです」

だけど、最初から後悔する為に行動したんじゃない。
助けたくて動いた自分の選択を、間違いとは思っていない。
後悔したくないから手を伸ばし続けるのは、魔法少女になった時から変わらない。

564ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:10:09 ID:Kv0u2Bhg0
「………………」

黒死牟は沈黙以外に何も返せない。
理解の及ばぬ奇人の言動を繰り返すのは、これが初に非ず。
出会って間もない頃から一切変わらぬ、鬼を鬼と思わず手を差し伸べる姿。
口先だけの救済を嘯き己に酔う、善と無知を履き違えた愚か者。
そう断言出来たなら、どれ程楽だったろうか。
紡ぐ言葉は微塵の偽りも宿らず、いざ現実に我が身を動かす行動力を持つ。
一日にも満たない付き合いを経て、疑いの悉く削ぎ落とされた。

環いろはという少女は、本気で自分を助けるとのたまっている。
幾度目になるか数える気にもならないが、改めて突き付けられた。
ああ本当に、この娘は何なのだと愕然とする一方で。
そう言うだろうなと納得を抱く己も片隅に存在し、それがまた黒死牟の混乱を深めるのだ。

加えて、ほとんど衝動的にだが縁壱への嫌悪を口にした。
余計なものを口走らず一睨みで黙らせれば済んだだろうに、一体何をやっているのか。
釈然としない自分への不快感と、未だこちらを見つめる桜色の少女。
両方から瞳を逸らし、広い廊下の奥を睨み付ける。

「談話で無駄に時間を貪るのが……望みではないだろう……」
「は、はい!」

愛想の欠片もない、移動を促す言葉。
共にいるのを拒絶されなかった、その一つだけでいろはには十分だ。
横並びで歩き、ふと目に付いた部屋に入る。
フェントホープへ潜入の経験があるとはいえ、隅から隅まで詳しく調べてはいない。
当然いろはにとっては初めて訪れる場所も、一つや二つではなかった。

室内をざっと見回すと、家具の類はほとんど置かれていない。
積み上がったダンボールの上に、埃の被った布が掛けられている。
羽の魔法少女達の私室ではなく物置に使っていたのだろう。
薄暗い中を進んで行き、何と無しに見やった半開きの箱に驚き近付く。
蓋を全開にすれば案の定、見覚えのある物を手に取った。

565ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:10:47 ID:Kv0u2Bhg0
「こんな場所にあるなんて……」

掌に収まったのは魔法少女なら、誰しも欲するだろう物。
グリーフシード、魔女を倒した証であり魔法少女の生命線。
命の核の穢れを取り除き、やがて訪れる末路を先延ばしにするソレが、無造作に箱詰めされてるとは予想外。
少なくとも本物のフェントホープだったら、もっと保管場所を考えただろうに。
どういった経緯で生まれるかを知ってるだけに、グリーフシードが見付かっても上機嫌とはならない。

自分達魔法少女への救済措置のつもりで、幾つかは会場にばら撒いたのだろうか。
内心複雑だがドッペルを使った時の違和感を思い出せば、グリーフシードが手元にあって損はない。
あったのは大量とは言えず、片手で数えられる分のみ。
後からやちよ達が見付ける可能性も考え、全部は持って行かず一つだけ手に取る。
ごめんなさい、持って行きますと生来の真面目さから断りを入れて。

轟音がいろは達の鼓膜へ届いたのは、正にそのタイミングだった。

「今のって……」
「……」

弾かれたように振り向くいろはより早く、黒死牟は音の発生源だろう方向を見やる。
物理的な広さ故先客がいたとしても、互いに気付かないのは不思議じゃない。
自分達と会わぬ内に相反する目的の者同士がかち合い、戦闘が始まったか。
いずれにしろこちらへ気付いての行動でないのなら、存在を気取られる前に退散も可能。
尤も、実際にその選択を取るかどうかは別である。

行くのかと声に出し問う必要も無い。
娘が何を考え、どう動くのを望んでるかは安易に察しが付く。
であれば、いらぬ会話に時間を割くのは無駄の一言に尽きる。

腰に差した二振りの得物をカチリと鳴らせば、すかさずいろはは魔法少女の衣装を纏う。
何が起きているにしろ、聞かなかった事にする気は皆無。
始まる闘争の予感に気を引き締め直し、急ぎ現場へと身を走らせ――

566ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:11:47 ID:Kv0u2Bhg0
「っ!?」

到着を待たず、頸を断ち切る煌めきが襲い掛かった。

いきなり何事かと、目を白黒させる余裕は皆無。
青く、星々の照らす夜空が剣に形を変え疾走。
目を奪われる輝きなれど、生憎いろはが抱くのは感動とは程遠い戦慄。
切断一歩手前まで追い込まれた痛みが、治った筈なのに首元で疼く。
鬼を滅ぼす灼熱の刀ではない、しかし自分の命を刈り取るのは同じ。
咄嗟の判断で左腕を翳すも、無意味の三文字以外にない儚い抵抗で終わる。

「……」
「チッ…!」

訪れるのを覚悟した痛みは来ない。
代わりに聞こえる小さな吐息と、知らない誰かが舌を打つ音。
瞳が映すは彼が纏った着物の背中。
またしても守られたと理解し、口を突いて出る礼の言葉。
ありがとうございます、そう背に告げ意識は戦闘へ切り替わる。
困惑から脱せず足手纏いになるつもりはない、自分に出来る戦いをするまで。

「ふん、相変わらず無駄に生き汚い害虫だな。あの偽善者どもから寄生先を変えたのか?」
「え?あの、何を言ってるんですか……?」
「口調まで変えるとは、お前の気持ち悪さは底なしか?今度は男に媚びるアバズレでも演じてるらしいな」
「アバズ…!?」

初対面の相手にいきなり殺されかけたのもだが、長々と罵声を浴びせられ困惑を隠せない。
襲って来た人物を見れば、紺色の鎧で全身が覆われている。
天津や承太郎達のような仮面ライダーとは分かるが、声に聞き覚えは全くない。
相手の様子から察するに、自分に何らかの悪感情を抱いてるようだ。
かといって心当たりが無いいろはには、何のことやらさっぱり。
理由を聞きたいが肝心の相手が会話に応じる気配はゼロ。

まさか自分の姿を勝手に擬態され、知らぬ内に恨みを買ったとは露知らず。
一方マサツグ様もまた、目の前にいるのは正真正銘初めて会う少女と気付けない。
みかげ達の所へ戻る最中、放送前に散々舐め腐った真似に出た小娘を偶然発見。
黒々と燃え盛る負の衝動に急かされるまま、標的を急遽変更。
全くの冤罪だと知る由もなく、いろはに襲い掛かったのだ。

567ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:12:43 ID:Kv0u2Bhg0
いろはを恨む理由も黒死牟の知った事ではなく、問い質す気も起きない。
現われた剣士は敵である、その一点さえ確かなら十分。
虚哭神去を抜刀し聖剣を防いだ体勢を、長々と維持しても戦況に変化は無し。
襲って来た、故に返り討ちにし斬り捨てるまで。
人外の肺活量にて行われる呼吸が大気に悲鳴を上げさせ、瞬く間に血液が沸騰。
己が技を繰り出すのに躊躇は不要。

――月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦

「チッ…!」

聖剣を防ぐ構えを崩さず、目の前の剣士を渦に閉じ込める。
刀を振るうという必要不可欠な動作を無視し放つ予想外の技に、クロスセイバーも反応が追い付かない。
甲冑の恩恵でダメージは抑えられるが、不快な痛みはゼロじゃない。
刃が胴を引き裂き、数歩の後退で距離を離す。
むざむざ逃がしはせぬとすかさず踏み込み、鬼は追撃に牙を剥く。

「気安く俺に近付くな!醜い生ゴミが!」

耐久性の高さもあって致命傷には至らずとも、ストレスは増加。
怒声で尻込みする黒死牟ではないが、予期せぬ方向からの飛来物を視界の端に捉えたなら別。
クロスセイバーから対象を変え刀を振るい、斬り落とした物の正体は燭台。
まるで意志を得たように、高級ホテルを過去に彩った調度品の一つが黒死牟を狙ったのだ。

不可思議な現象に首を傾げる場合ではない。
燭台を斬るのとタイミングをほぼ同じくし、いろはがクロスボウを連射。
いろは自身も一度は仮面ライダーになったから分かるが、易々と貫ける強度の装甲じゃあない。
一発二発をチマチマ撃っても無意味、よってこれまで通り連射。
煌びやかな桜色とは裏腹に、魔女やウワサを葬って来た魔法少女の射撃だ。
生半可な防御では的同然だがクロスセイバーには無問題。
青い残像を生みながら急接近、小癪な抵抗を一刀の元に終わらせる。

「くっ…!」

敵が自分の矢を突破するくらい、十分予想の範囲内。
全身の筋肉をしならせて跳躍、後方へと一気に飛び退く。
魔法少女に変身し純粋な力も、十代の少女が出せる限界を優に超える。
背後の扉を蹴破りダイナミックに入室、妙にだだっ広い部屋へ転がり込む。

568ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:14:09 ID:Kv0u2Bhg0
自暴自棄になった梓みふゆが飲酒に逃げた場所、とは勿論知らない。
視界が映す夜空色の装甲へ矢を射る。
装填やトリガーを引く手間は不要、意思一つで発射可能。
しかし寸前で背後の空気を切り裂く音を拾い、嫌な予感に再び回避。

「きゃっ…!」

直撃は凌ぐも完全に回避とはならず、背に衝撃が走る。
魔法少女の打たれ強さなら、床へ叩き付けられても死にはしない。
かといって痛みを受け入れる趣味はなく、どうにか受け身を取った。
何かが壁にぶつかり、視線をやればソファーが落下しバネが突き出るのが見える。

「立ち上がろうとするなよゴキブリめ。害虫は害虫らしく這い蹲ってろ!」
「っ!」

罵声と共に頭上から靴底が振り下ろされた。
憎たらしい少女の顔諸共踏み潰し、靴の汚れに変えるのへ罪悪感はない。
むしろ殺したいと思っていた相手の無様な最期が拝めるのであれば、やらない方が不自然。

忘れるなかれ、此度の闘争もまた魔法少女一人の足掻きに非ず。
悪しき剣士の望む光景を阻む刃が、喉元へ食らい付かんと疾走。
クロスセイバーへ仇為す存在を察知し、色褪せた絵画が回転刃の如く迫る。
まるで剣士を「守る」かの現象も、黒死牟を止めるには至らなかった。

――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮

人の限界しか知らぬ者には悪夢同然の速度で放つ、魔の領域へ座する居合斬り。
両断された挙句、半月状の力場に食い荒らされた絵画には見向きもしない。
己が刃を輝く剣で防ぎ、得物を挟んで睨み合う敵以外へ何を見ろと言う。

腕に力を漲らせ、聖剣共々薙ぎ払う。
鬼の膂力へ呼吸による身体強化を加えたのだ、100kgに近い重量の装甲とて真っ直ぐに立ってはいられない。
後方に足を縺れさせたクロスセイバーへ、立て直しを許さず刀が駆ける。

刀身が胴を撫でる瞬間に、紺色の剣士への守護が発動。
不可視の力により引き剥がされた扉が飛来、人間が直撃を許せば骨の数本はへし折れるだろう勢いだ。
視線を剣士から離さず得物を背後へ振るい、扉の残骸が足元へ散らばる。
改めて標的を切り刻まんとするが狙いが逸れたのは事実、反対に振り下ろされた聖剣を最小限の動作で躱す。

569ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:15:09 ID:Kv0u2Bhg0
次の剣の到達を待たず斬り掛かり、鬼の斬撃が受け流された。
あらぬ方へと伸びる得物を引き戻すも、間髪入れずに聖剣が突きを見舞う。
刀身を弾き返し、逆に斬り込むがあっさりと回避。
躱した体勢から宙へと身を躍らせ回転、円を描いた刃が襲い来る。
防御に出た所で得物共々砕き兼ねない威力に対し、黒死牟が選ぶは迎撃。
そちらから近付いた事を後悔させるべく、得物を振り上げる。

――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月

切っ先で床を引っ掻きながら斬り上げ、三つの月を生み出す。
自ら鬼の狩場へ首を突っ込む哀れな獲物、なんて末路は訪れない。
足場のない不安定な宙にいながら繰り出す、澱みのない剣捌き。
刃を打ち消し華麗に着地、一呼吸終える間もなく剣士は鬼と刃を叩きつけ合う。

膂力、速度、技の完成度。
それら全てで柱や弐以下の上弦を寄せ付けぬ強さの鬼を相手に、クロスセイバーは難なく渡り合っていた。
時に防ぎ、時に受け流し、時に猛攻を与える。
黒死牟がどこから攻めに出ようと、一太刀も浴びず五体満足を保つ。

「おい化け物、そんな醜い顔で一丁前に侍気取りなんて人間様に申し訳ないと思わないのか?俺なら恥ずかしくて自殺してるぞ」

神々しい甲冑姿からは想像も付かない、下衆な内容が飛び出す。
鬼狩りから挑発や憤怒をぶつけられた経験は多々あれど、こうも性根の悪さを漂わすのは滅多にない。
顔を顰めつつ胸部目掛け真一文字を描く。
骨まで断たれ肉塊二つが地に転がるだろう一撃も、クロスセイバーは焦らずに対処。

「やれやれ、必死こいて振るった剣がこの程度とは。ゴミに同情を抱く気なんて無かったが、流石に憐れに思えて来るな」

口を動かしつつ攻撃の手も決して止めない。
流水の如く軽やかであり、激流の如き苛烈な威力で怒涛の攻めを繰り出す。
腕一本で行う動きとは思えない刃の群れが殺到、下手に防ごうものならたちまち肉片の山と化す。
なれど黒死牟に対処不可能と言った覚えはなし。
一つ一つを正確に捉え、無駄を完全に削ぎ落とした剣技で以て捌く。
力と技の両方を兼ね備えた鬼をどう思ったか、声色に少しばかりの苛立ちを含ませ剣士がまたもや挑発を並べる。

570ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:15:59 ID:Kv0u2Bhg0
「ふう、ゴミに時間を割かれるこっちの身にもなって欲しいもんだ。こんなショボい剣で何を為す気でいるのやら。雑魚は雑魚らしく、やる事全てが無駄と理解し――」

「無駄なんかじゃありません!」

スラスラと飛び出す罵倒は、少女の声に掻き消された。
不機嫌を露わに睨み付けると、自身へクロスボウを向ける姿が見える。
ゴミがと吐き捨て己を守る力が発動、長テーブルが少女目掛け飛びこちらへの攻撃を阻む。
とはいえ少女にとっても既に見知った現象だ、予めそうなると分かっていれば二度も同じ手は受けない。
魔力の矢を連射し長テーブルを破壊、連射を止めずに続けてクロスセイバーを狙う。
頭部から突き出たブレード部分に命中。
ストライクマークの効果で貫通力の上がった矢だ、砕けずとも振動で視界を大きく揺さぶられる。
絶叫マシンを降りた直後に似た眩暈を覚え、生まれた隙へ鬼が刃を差し込む。

「生ゴミが…!」

『闇月・宵の宮』が至近距離で放たれ、剣を翳しながらクロスセイバーは後退。
安定しない視界でありながら、咄嗟の対処は見事の言葉以外に見当たらない。
本人に称賛を投げ掛けた所で喜びはなく、不愉快になるだけだろう。
頭を振って射殺さんばかりの視線を叩き付けるが、敵は共に動じた様子なし。
無駄な足掻きを続ける鬼も、自身を悉く不快にさせる少女もだ。

「黒死牟さんが戦って来たことは、絶対に無駄なんかじゃない。否定なんてさせません」

殺意を籠めた瞳に貫かれて尚、いろはは怯まず毅然と反論をぶつける。
殺し合いに参加する前の彼を知らずとも、殺し合いでの彼を近くで見て来たから言えるのだ。
彼が剣を振るったから、失われなかった命がある。
彼が戦ったから助かった者がいて、繋がった命がある。
他ならぬいろは自身が黒死牟に助けられたから、彼を否定する嘲りには黙っていられない。

571ルーツ・オブ・ザ・ファングcresc.鋼の牙を起て ◆ytUSxp038U:2025/04/16(水) 00:17:15 ID:Kv0u2Bhg0
「……本当に気色悪いなお前。こんな蛆虫、いや最早蛆虫にすら失礼か。お前のようなカスをさっさと片付けなかった自分が恨めしくなってきたぞ」

心底の侮蔑を籠めて、いろはを徹底的にこき下ろす。
そもそもマサツグ様にとっていろはは偽善者のヒーロー(笑)連中と一緒にいた、煽り気質の小娘という認識。
放送前とは口調も変えて、化け物の男に媚びを売っている。
全くの人違いとは未だ気付かず、ころころ都合の良い女を演じては自分に楯突く様が非常に気に入らない。

十聖刃は手元に戻った、「守る」スキルも時間経過で罠カードの効果が切れ問題無く機能。
だけど心を蝕む感情は未だに燻り続け、奥底の恨みを激しく燃え上がらせる。
何より苛立つのは、敵が『二人』で自分と戦っていること。
群れなければ何も出来ない、力が無い故の雑魚らしい無様さ。
そう己へ何度言い聞かせても、内心は酷くささくれ立つばかり。
あのような醜悪な容姿の化け物さえ、形はどうあれ共に戦う存在がいる。
口では仲間や友情を見下す一方で、自分では手に入らなかったソレを羨む。

そんなナオミ・マサツグの負の側面を肥大化させた存在にとっては、見ているだけで許し難い光景。
劣等感の刺激で感情が揺れ動き、ニノン達を相手取った時同様に「聖剣の担い手」スキルが効果を発した。
黒死牟とも渡り合ったスキルの恩恵は、感情が高まれば高まる程にマサツグ様へ力を齎す。
自分に余計な痛みを与え、化け物と屑の分際で協力し、痛々しいお仲間ごっこを見せ付ける。
今しがたのいろはの言葉で不快感を煽られたのも影響を受け、マサツグ様の剣技は更に上昇。
放って置けばいずれ黒死牟を完全に凌駕するだろう
全身に力が漲る感覚を覚え、やはり自分にこそ天は微笑むのだと口の端を吊り上げた。

「お前らのような低能に、言葉で懇切丁寧に教えてやっても時間が勿体ない。力が無ければ何も出来ない現実を、体に叩き込んで――」
「貴様は……」

歌うように口から飛び出る挑発はまたもや中断されて、多少マシになった機嫌が急下降。
人の話を最後まで聞けないのかと軽蔑を視線に乗せ、

「一体何を……そこまで妬む……?」

閉ざした心の奥深くを、容赦なく抉られた。


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