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オリロワZ part3
353
:
Z' ―永遠の山折―
◆H3bky6/SCY
:2024/08/25(日) 19:04:28 ID:fyYMDBK20
――――2012年初夏。
日差しも強くなり始めた夏
山折村は慌ただしい雰囲気に包まれていた。
今日は年に一度の鳥獣慰霊祭だ。
何もない小さな村で行われる唯一の大きなお祭りである。
都会(そと)から見れば打ち上げ花火のような派手な催しをするような予算もない小さな祭りでしかないのだろうけれど。
それでも村中が飾り付けられ、商店街には屋台が立ち並ぶ年に一度のお祭りである。
村の子供たちはその日ばかりは皆一様に心を躍らせていた。
「あれ、哉くん」
日も暮れてきた夕暮れ時。
友人たちとの待ち合わせに向かう途中、昼間の稽古でお小遣いの入った財布を道場に置きっぱなしにしていた事に気づいた哉太が八柳の道場に向かうと、そこで茶子と出会った。
茶子は一人で道場に座り込み、遠くに浮かぶ提灯の明かりをぼうと眺めていた。
「何してんの茶子姉? お祭り行かないの?」
「……ん。ちょっとね。哉くんこそどうしたの? お祭りに行ってたんじゃないの?」
「うん、今から行くところだよ。ちょっと忘れ物をして。茶子姉も一緒に行こうよ」
そう言って哉太は座っていた茶子に向かって小さな手を差し伸べた。
だが、茶子は視線を遠くから動かさなかった。
その手は取られることなく、茶子は拒否するようにゆるゆると首を振った。
「うーん。そっか」
茶子が手を取る気がない事を理解したのか、素直に哉太が手を引っ込める。
だが、哉太は剣道場から立ち去ることなく茶子の横まで移動するとその隣に腰を下ろした。
「じゃあ俺もここでいいよ」
「いいの? お友達と一緒に回るんじゃないの?」
「うーん。約束すっぽかしたら圭ちゃんは怒るかもだけど……。
まあ今日は光ちゃんや珠ちゃんを案内するんだって張り切ってたみたいだし、俺が居なくても気にしないよ」
リーダーである圭介は引っ越してきたばかりの日野姉妹に初めての鳥獣慰霊祭を案内するんだと妙に張り切っている。
みかげや諒吾もいるだろうし、むしろ今は自分がいない方がいいまである。
圭介たちは自分が居なくても大丈夫だ。だけど、今の茶子はどうだろう。
なんとなく哉太はここにいないといけないような気がした。
遠くを見つめる茶子の瞳には大人びた達観と一抹の寂しさの様なものが混じっているように見えた。
何より、誰もが楽しい祭りの日なのに、一人でここにいるのは酷く悲しい事のように思えた。
何をするでもなく2人並んで遠くの祭りの明かりを見つめる。
時折吹き抜ける静かな風が頬を優しく撫でてゆく。
穏やかな時間、だが、哉太の心は妙にどぎまぎしていた。
この村の子供たちは一緒に生まれ育った家族のようなものだ。
だが、突然現れた年上のお姉さんである。
日野姉妹も同じような立場だが、彼は年上のお姉さんと言う存在に憧れのような感情を抱いていた。
そんな相手と2人きりと言う状況は少年心に落ち着かないものがある。
「知ってる? 屋台って木更津組の奴らがやってるんだよ」
沈黙を破るように、茶子がそんな事を言い出した。
「え、う、うん。木更津組って沙門さんの所でしょ?」
「そ、悪い人たち」
商店街に並ぶ的屋の殆どが木更津組のシノギだ。
都会ではもうあまり見かけなくなった光景だが、この山折村では未だにその手の輩が幅を利かせている。
その売り上げは反社会的活動の活動資金となる。
だが、それはお日様の匂いはダニの死体の匂いだとかと同じ知らなくてもいい話だ。
的屋に関してはシノギと言ってもアガリは大した額ではないし、荒事の起きやすい祭りに睨みを利かす治安維持の意味合いが強い。
この嫌悪感自体が、子供の浅慮に過ぎない。子供はそんな事を考えず無邪気にお祭りを楽しんでいればいいのだ。
だというのに無邪気に楽しむ気になれないのは茶子が子供ではないからなのか。
子供ではない、大人でもない。けれど、思春期で済ませるには少し行き過ぎた潔癖症である。
いずれにせよ、子供である哉太にはよくわからない話だった。
悪の組織が運営する悪いお店なんだと、朝の特撮番組に準えてそんな理解をした。
確かにそれはよくない気もしてきた。
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