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UnHoly Grail War―電脳世界大戦―Part2

170 ◆yy7mpGr1KA:2024/04/24(水) 12:27:06 ID:bFgInopw0

『アーチャー、そこの住所は?』
『ああ、ここは……』

彼の現在地は深山町のほぼ端あたりだ。その地点をミヤコ越しに救急隊員に伝え、指示を飛ばしていたリーダーらしきチンピラを一人と、その懐の天国の回数券(ヘブンズ・クーポン)を抱えて帰路に着く。
ミヤコの待つ深山町の中央あたりまでそこそこの距離だが、サーヴァントの脚力であればさほどかかるものでもない。
たどり着いたのはNPCに協力を仰ぎ、ミヤコの拠点として確保した大きな武家屋敷。
その玄関前にアーチャーを待ち構える影があった。

「お、おかえりなさいアーチャーさん。その子が例の?」
「…………ああ。ただいま、ミス藤村。雷画翁はお待ちかねかな?」

藤村大河。
深山町に座す極道、藤村組の組長藤村雷画の孫娘であり、穂群原学園の教師でもある。
この世界でのミヤコは通っていた私立柳洞大学付属月海原学園(SRTと在校生は呼んでいたらしい)が廃校になり、学生寮も潰れて行く当てがないというロールだった。
そこで転入先として穂群原学園を志望しているということで、編入試験の手続きや仮宿などを大河の世話になっている、というわけだ。
むろんタダではない。情に篤い大河はそれでもよしとしたろうが、むしろアーチャーのほうがそれを望まなかった。
町の平和のために藤村組に力を貸す。見返りにミヤコの表向きの生活を整える。さらに組の伝手で冬木の異常を知る。
かつて冬木を拠点とした正義の味方の成れの果ては、それが効率的であろうとミヤコに提言して、彼女もそれを受け入れたのだった。

「うん、待ってるけど……ウチの生徒と変わんない歳の子から聞き取りなんて乗らないわ。若い衆が無茶しないように見てないと」
「子供だからこそここで止めてよかったと思うべきだろう。薬で身を崩すなど、年寄りの終末医療で十分だよ」

警察も取り締まるだろうが、蛇の道は蛇だ。
極道の動きは極道が規制したほうが早い。藤村組に挨拶なく麻薬を氾濫させるということは、つまりケンカを売っているということなのだから。

「元締めか売人が分かったら共有してほしいとそちらからも言伝してくれ。鉄砲玉なら任せろ、とも」
「う〜ん、組の面子もあるからお客さんにそこまでさせるのはちょっとねえ……」
「足並みをそろえるのは重要だ。オレが単独でどこぞに乗り込んでも困るだろう?」

しょうがないなあ、と苦笑いする大河にチンピラと天国の回数券(ヘブンズ・クーポン)を引き渡し、組長のもとへ連れられて行くのを見送る。
さすがに少人数、密室で会わせてもらえるほどの信頼を得てはいないが、組長にそれなりに気に入られてはいるし村八分にはされんだろうという自負がアーチャーにはあった。
藤村雷画と衛宮の人間が相性良しなのは偽りの冬木といえど変わってはいなかったから。
いつものシニカルなものとはどことなく違う笑みを口元に浮かべて、エミヤ[オルタ]は武家屋敷の敷居を跨いだ。

「おかえりなさい、アーチャー。無事で何よりです」
「心配は嬉しいが、場末のチンピラに苦戦するようじゃ三騎士のサーヴァントは務まらんよ」

ミヤコからのねぎらいにアーチャーはそんな捻くれた答えを返す。
さらには現状への皮肉まで添えて。

「にしても意外だ。仮にも正義の特殊部隊サマが、極道の世話になるのをよしとするとはな」
「公園暮らしでいいといった私に代案を提言したのはあなたでしょう」
「ああ、このあたりの公園はロクでもない。泥に沈んで死にたくないなら止したほうがいい、とは言った」
「地の利を取れる経験者の提言を無視するほど愚かではありません。それに……」

ミヤコの脳裏で、二人の先生の姿が重なる。

「藤村大河という人物のことは信用してもいいと思えたので。あなたの推挙もありますし」
「フッ」

ミヤコの言葉にアーチャーから失笑が漏れた。

「なるほど。極道の娘が先生というのは、なんとも。なぜだかおまえには似合いのような気がするな?」

どういう意味です、と疑問を返そうとするが。
なんだか苛酷な議論を呼びそうな予感がしたので黙殺することにした。


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