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UnHoly Grail War―電脳世界大戦―Part2

160tartarus_0d01 ◆sYailYm.NA:2024/04/18(木) 04:05:25 ID:exJQf8rQ0


「これは“聖杯戦争”だ。故に私も、その理に則らせて貰う」


 “捌”が再び轟く。
 無慈悲にして無情の刃が過つ事など決してない。
 だからこそ、宿儺はあらゆる術師から畏れられ崇められるのだ。
 
 絶対的最強。永遠不変の悪意。人の世の移ろいや一時の感情に左右される事なく、常に最上の殺意を導き出し続ける魔性。
 それは当然、生死善悪の悲願を超えて繰り広げられるこの聖杯戦争という営みにあっても変わる事はない。

 ――であるにも関わらず、その斬撃が黒き斬撃によって阻まれ、切断された。これは一体何の道理か?
 
「出番だ『イチ』。星界無双、あまねく枝葉の中でも最も剣呑なる殺意で星界に君臨した者」

 ……サーヴァント化した“黒い鳥”はAIを創造する。
 自らの霊核を分け与える事によって、単なるNPCの枠組みには収まらない戦力を作り上げる事が出来る。
 
 今此処で“黒い鳥”が吐き出した新たな端末は、彼らの物語に連なる仮想世界の枝葉の中でも限りなく最強に近い武力を持つ個体だった。
 造物主の息子という無二の立ち位置。当然のように丘へと集い、そして物語の中核となって活躍していく世界の“幹”。
 その中でも最も破滅的なパーソナリティーを有し、自滅の可能性をさえ秘めるものの、その分他の枝葉の彼とは比にならない力を持って君臨したとある枝の『イチ』。有馬太一郎。有馬小次郎の長男であり、彼に最も強く反発した存在。

 ――“星界無双”。

 黒い鳥の血肉によって再現された大剣聖が今、不遜にも新たな星界にて最強を騙る悪魔に対しその殺意を閃かせた。







 宿儺の顔に浮かんだ驚愕が喜悦の相に変わるまでに要した時間を換算するならば、およそ0.01秒と言った所であろうか。
 彼はこの瞬間に至るまで、赤羽士郎が従える“黒い鳥”の事を単なる呪霊の延長線上に存在する物として然程評価していなかった。
 だが其処は呪いの王と呼ばれる者。竜戦虎争を地で行く千年に渡る呪術の歴史の中で、依然揺るぎなく最強の座に君臨し続ける絶対不変の凶王だ。彼は現れた影と解き放たれた千もの剣が自分の身に降り掛かる今際の際、自分の認識が誤りだった事を改めた。

「ハ――何だ、存外に出来るではないか」

 呪力による身体強化を挟んでいなければ、宿儺でさえ致命傷は免れないと断じられる剣の波。
 それを自身の術式・『解』で切り裂き対処しながら跳んだ宿儺の顔には、最早侮りの色はない。
 完全な奇襲だったにも関わらず、押し寄せた剣々波を一振り残らず撃滅する偉業を平然と成し遂げながら、突撃して来た剣士に相対する。

 剣士の顔に色はなかった。色彩としてではなく、感情としての“色”だ。
 破滅、不吉、凶兆、そして死。そういったありとあらゆる負の観念を混ぜ合わせて貼り付けたようなその顔が、この電脳冬木市に召喚されてから今日に至るまでで一番の高揚を宿儺に与える。

 そしてその期待に応えるように振るわれる黒剣の冴えもまた、平然と呪いの王の期待を超えて来た。
 音にも迫る速度で振るわれる剣は爆発的と呼んでもいい勢いで殺到し、事もあろうに初撃から宿儺の頬に傷を負わせる。
 流れ落ちる流血の重みが理解出来ない者は、彼と同じ呪術の世界からやって来た者でなくとも皆無であったに違いない。

 それほどの速度。それほどの、殺意。虚勢や自棄でなく当然の事として、この剣士は己を屠り去ろうとしている。そう分かったからこそ宿儺の興はすぐさまに乗っていく。
 徒手で剣の側面を打って破壊しながら『捌』を放ち、剣士を達磨落としのようにぶつ切りにしようと目論む宿儺。
 それに対し剣士――『イチ』と呼ばれたその小柄なシルエットは、最初と同じく無数の剣を出現させて盾代わりに使う事で難を逃れた。


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