したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

UnHoly Grail War―電脳世界大戦―Part2

132方舟の救いと洪水の救い ◆WutzLL0xx2:2023/12/27(水) 02:28:26 ID:4Rbxc5TA0
「ただ眼の前のものを否定したくて、感情のままに暴力を振るう。それで何かが変わるとでも」

「──ぁ」

極道の一人が振るう警棒が、白黒の少年──オモリに届く前に落ちる。極道は喉を押さえ、白い床に倒れ込む。

(思考を乱す、呼吸を封じる、奇妙な戦闘技術。"地獄の回数券"で強化された視覚でも、全く攻撃の予兆が見えねえ。こいつは──なんだ?本当に人間か?)

既に立っている極道は一人だけ。
他の極道たちは、このただ白い空間の床で、どこからともなく伸びる"赤い手"で拘束されていた。

赤い令呪が、オモリがマスターであることを表している。
彼ら極道はまだ、自分たちが夢に落ちたことすら自覚せずオモリと相対している。
それゆえにマスターを拘束するために彼に襲い掛かり、このザマだ。

「あなたたちは、ただ他人に求めることしか考えていないクズだ。誰かに与えようとしたことなんてないクセに」

オモリの悪罵は、いっそ自嘲のようにすら響く。
全く、相手にされているように思えない。
ただゆっくりと、オモリが歩いてくる。拳銃を持っているというのに、まるで通用する気がしない。

「怪物(バケモン)ガァ…」

それでも恐怖に抗って、引き金を引く。何回も何回も。
あっさりと弾丸はオモリに当たる。

「本当は解っているのに、それでもまだ間違い続けているんだ。自分でそれを選んでいる」

オモリは明らかな致命傷を負いながら、なんら意に介さずこちらにナイフを向ける。そのナイフは赤く染まっている。

「手前(テメ)ェ…死ねよ!」

弾切れを起こした銃を投擲(な)げるも、ナイフで弾かれる。その隙をついて、素手でオモリの首を狙う。
オモリが僅かに体を屈める。

極道の目が、オモリと合う。

「そうだね」
「あなたたちみたいな人は、死ねばいいのに」

オモリの目の奥底を、見てしまう。
それは自閉した精神の果てだ。
闇を深く見てきた極道ですら、一瞬足を止める程の。

きっとここが現実なら、こうはならない。
極道の精神は闇に擦れていて、可哀想な子供だろうが狂人だろうが殺すことに躊躇いはない。
けれどここは夢世界(ホワイトスペース)。精神の世界。
擦れて鈍った共感力を飛び越えて、精神の奥底に直接オモリの精神が干渉する。
それは不可避の一撃だ。

その手がオモリの首に届く前に、極道は赤い手に捕われた。

★★★★★


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板