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児童文庫ロワイヤル

41◆BrXLNuUpHQ:2024/03/02(土) 06:26:23 ID:???0



「二階堂……キミに何があったのさ。」

 千切れかけた腹部から飛び散る内蔵を踏まないように慎重に近づいて、血と糞の臭いが立ち込めるそこで、二階堂の手を取ろうとし、その手首から先が吹き飛んでいるのを見て、代わりに血と脳漿と金属片に塗れた頭部を撫でる。
 そして四宮仁奈は、瞳孔の開いた二階堂の目を閉じさせようとして、硬直した瞼を閉ざせずに呟いた。

「仁奈ちゃん……」

「……もう、大丈夫?」

「はい……でも……」

「うん……ごめん、やっぱムリそう、吐いてくる。」

 口を抑える梶原蓮華に呼びかけられ、四宮は立ち上がるとフラフラと歩きながら女子トイレへと向かった。
 便器まで辿り着けず、洗面台で吐く。何も食べてない胃からは、胃液だけが口へと上がる。苦さは、二階堂と食べたスイーツからはまるで似つかなかった。


 四宮と二階堂の付き合いはさほど長くない。四宮が死者の魂を成仏させる死神のバイトを始めてからだから、数カ月とも言えないほどだ。それに死神のバイトは暇な時は暇で、いつもは拠点としている喫茶店でのバイトが専らだ。
 口は悪いが顔と中身は悪い奴じゃない。思い返せば、二階堂について知っていることといえば、ほとんど喫茶店のバイトの同僚という思い出である。
 そんなバイト仲間が、学校の廊下で血塗れになって死んでいた。
 上半身と下半身は辛うじて繋がっているだけで、手はどこかにいき、そして身体中に金属片が突き刺さっていた。まるで身体の中央が爆発したような、壮絶な死に方だった。

(あー、ヤバイな。今泣いたら、立ち直れなくなる。)

 死神のバイトのキッカケは霊感だった。この仕事は親しい人間の死を経験した子供が就く事も多い。自分の中で、壊れそうなものを感じる。
 優等生という言葉は四宮のためにある。頑張って良い子やってる美少女なのだ。ここで泣いて膝をつけば、その間にどれだけ危険なことが起こるかはわかっている。
 四宮は自分の手に着いた血を洗う。これだけやったら、こんなクソッタレなゲームに負けないバイタリティのある女の子に戻ろう。そう決心して、十数分後手を真っ赤にして蓮華の元に戻った。


「いやー吐いた吐いた。たぶんレンゲより吐いたよ。」
「仁奈ちゃん……」
「でも心配しないで、わかったことはあるから。」

 ──四宮と蓮華は、ゲーム開始から一時間ほどして出会って以来だ。お互い話せる範囲の身の上は話したが、こうなっては突っ込んだことも言わなければならなくなる。なにせこの校舎で死んでいたのは、二人のそれぞれの知人であり、そして動画にも情報があったからだ。
 爆発音を耳にして校舎に入れば、見つけたのは蓮華の親友であるパセリの兄、光矢の死体と謎の少年の死体。蓮華がトイレで吐いている間に二階に上がれば、二階堂の死体。二人で近くの部屋に入り込み崩れるように椅子に座っていれば見つけたのは二階堂のスマホ。録画されていた記録に映る、それぞれの知人。考えなくてはならないことは多い。
 なぜ二階堂と蓮華の知人であるマリモが同行していたのか、光矢について錯綜していた情報は何なのか、誰が爆弾を投げ込んだのか、あのタマネギ頭の少年は何者なのか、そしてマリモたち三人は無事なのか。

「さ、仲間に何があったのか考えよっか。それが今できることだよ。」
「それは……うん。そうだよね、実は一つ気づいたことが。」
「うん、なになに?」
「さっきのビデオで光矢さんが洗脳されてるって言ってましたけど実は──」


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