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lily Crown Battle Royale

8 ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 02:45:00 ID:lVM5Sm.M0
以上で投下を終了します。
おそらく牛歩になりますが、ぼちぼち進めていきますのでどうぞよろしくお願いします

9名無しさん:2023/06/26(月) 12:37:59 ID:0xjuil3.0
短命あかり…
ゆるめからダークな作品まで揃っていてとても楽しみです、応援してます!

10 ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:41:04 ID:lVM5Sm.M0
感想ありがとうございます、めちゃくちゃ励みになります

歳納京子、花邑ひなこで投下します

11鬼隠し(裏) ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:44:34 ID:lVM5Sm.M0
 赤座あかりとは幼馴染だった。
 大人しかったあの頃から、自他共に認めるはっちゃけキャラになった今までずっと仲良くし続けてきた。
 あかりは楽しいやつだったし何よりいい子だ。それはたまに見ていて心配になるくらいだったが、だからこそあかりらしいとも思っていた。
 たぶん仲間の誰よりも優しくて純粋で、たまにびっくりするほど影が薄いけれど一緒にいるとこっちまで笑顔になれる、そんなやつ。
 存在を忘れることは何度もあったが、かと言っていざいなくなったらきっと自分たちの日常は成り立たない。今思い返すと、自分があかりに対して抱いていたのはそういう感情だったと歳納京子はそう思う。
 大切な友人。かけがえのない仲間。いつまでも続いてほしいゆるくて愉快な日常のシンボル。

 楽しい時間はいつしか終わるものだし子どもとは大人になっていくものだ。
 七森中を卒業して高校に進めば、その先で大学へ出れば、大人になれば……今の仲間たちともどんどん疎遠になっていくのかもしれない。
 そう思ったことは能天気で知られる京子にも当然あったが、大抵その手の考えは苦笑で幕を閉じることになるのがお決まりだった。
 だって───想像出来ないから。自分たちが離れ離れになることはあっても、疎遠になって友達でなくなってしまうという光景がまるで思い浮かばないから、まるで漫画だなぁと思ってはついつい苦笑してしまうのが常。
 その筈だったし、そうあるものだと信じていた。赤座あかりの首が切り落とされる瞬間を目の当たりにしたその瞬間でさえ。
「ぁ……」
 刀を持った鬼が立ち去っていき、見えなくなるのを確認してからようやく京子は声を発した。
 何故すぐさま駆け寄っていかなかったのか。支給されていたナイフを片手に握り締めて、あかりの仇を取るべく走り出さなかったのか。
 いや、そう問いかけるならもっと前に遡らなければならない。何故、こうなるまで声もあげず行動も起こさなかったのか。そう問うべきだ。
 あかりが無警戒にもあの鬼へ手を振り、呼びかけ、むざむざと招き寄せている光景をどうして制止しなかったのか、と───。
「ぁ、ああああ、ああああああ!! あかり!! あかりぃっ!!」
 今更声をあげて駆け寄る自分の白々しさに反吐が出る。
 駆け寄ったところで何も変わらないと頭では冷静にそう判断しているのに、この期に及んで何を善人ぶっているんだと理性は冷たく言っていた。
 歳納京子は何もしなかった。赤座あかりが殺されかけていると分かっていながら自分が隠れていた藪の中から飛び出すこともせず、ただ震えながら友人が素っ首落とされる瞬間を見ているだけ。
 何も、しなかったのだ。京子がようやく動き出した時のはもう何もかもが終わった後だった。
「あかり……あかり……!」
 ホラー系の番組か何かの再現VTRで見た、首のない幽霊。
 それと全く同じ姿を、足元の赤座あかり“だったもの”は晒していた。首がすっぱりと寸断されて、あの愛らしかった顔は色のない無表情でそれぞれの眼球を別々の方向に向けながら永遠に停止している。
 誰がどう見ても、生きていない。救命の余地などある筈もない。
 完膚なきまでに死んでいる。歳納京子が何もしなかったから、赤座あかりはあの鬼に食べられてしまった。
「───死ねよ」
 あかりとは違って、京子は遠巻きに見ただけでも気付いていた。
 道の向こうから親友へ近付いていく緑髪の女。時代劇の侍みたいに腰から刀を提げたそいつが、“まともではない”ことに。
 ただ見ているだけで全身が総毛立つ。歯がかちかちと噛み合わずに音を立てる。全身が、本能が、あれは人間ではないから近寄るな、存在を気取られるようなことは絶対にするなと喚き散らしていたから。
 京子はそれに従ってしまった。怖いから、死にたくないからというそれだけの理由が十年近くにもなる友情にあの一瞬確かに勝った。
 その結果がこれだ。全て終わった後で今更友人面をして死体に駆け寄って、生前の明るさの欠片もない虚ろな死に顔を見つめながらわざとらしく涙を流して叫び散らしている。

12鬼隠し(裏) ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:45:25 ID:lVM5Sm.M0
「全部……全部、お前のせいじゃん……! 全部、おまえが……!」
 何をどう哭いたってあかりは帰ってこない。
 死んだものは戻らない。京子のせいで、あの朗らかな笑顔は永遠に失われた。
 二度とあの日々が戻ることはない。ごらく部と七森中の愉快な仲間たちの物語は、このどことも知れない田舎道で打ち切りになってしまった。
「うああぁああああっ……! あかり、ごめんね、ごめん、あかりぃいいいいいい……!!」
 京子ちゃん、泣かないで。
 そう言ってくれる優しい少女の魂はどうやらもう此処にはないようで、したがって京子の慟哭に応えてくれるものは何一つなかった。
 臆病の代償は孤独な絶望。京子はそれをただ噛み締め続けるしかない。
 鬼の餌食を免れた少女は幸運でも何でもなかった。その判断を、きっとこの先命が尽きるまでずっと悔やみ続けることになるから。
 はてさて哀れな少女はこのまま、他の誰かが声を聞きつけて狩りにやって来るまで此処でこうして蹲っているつもりなのか。
 京子一人だったならそうだったかもしれないが、幸いにして歳納京子にはまだ運が残っているようだった。

 道の先で───新たな参加者が一人、呆然と泣きじゃくる京子の姿を見つめていたのだ。
 彼女の次の行動は、武器を抜くでもほくそ笑むでもなかった。
 少し迷った後、無防備すぎる姿を晒す京子へと控えめな足取りで近付いていく。
 そして、せっかく拾った命を無防備にまな板の上に放り出している京子に話しかけた。
「あの……」
「───ひ、っ!?」
「あっ、ごめんね、驚かすつもりはなかったんだけど……その」
 自分のせいで死んだ友人に縋りつくのに夢中だった京子は、声をかけられるまで気配にも足音にも気付いていなかったらしい。
 尻餅をつきながらとっさに声の方向を見るその目は、気の毒なまでに怯えきっていた。
「これ、あなたがやったの?」
「───ちがう! 違う、違うっ! 私じゃない、私じゃ……! ひ、ぐ……!」
 かぶりを振って必死に否定する。
 してから、何が違うんだよとそう思った。
 直接手を下したわけじゃない、それは確かだ。だけど見殺しにしたのは他でもない自分自身。歳納京子。
 幼馴染だったのに、大事な友達だったのに、視界の先で首を切り落とされるのをただ指を咥えて震えながら見つめていただけの自分。
 それがどの口で自分は殺していませんなんて言えるんだと思うと、京子は本気で自分をこの場で殺してやりたくなった。
 そんなことが出来る度胸があるなら友達を見殺しになんてしていないことに気付くと、余計に頭の中がぐちゃぐちゃになって、目の前に人がいるのも構わずに地面へ拳を叩きつけていた。
「…………」
 そんな京子の姿を、しばらく少女は見つめていたが。
 やがて身を屈ませると、自暴自棄のような行動に走る京子の手をそっと止めさせた。
「友達だったの?」
「………うん」
「そっか。じゃあ、悲しいね」
「私のせい……私なら助けられた! 私が、隅っこでガタガタ震えてなかったら───この子の手ひっ掴んで一緒に駆け出せてたら……! あかり、死ななくてもよかったのに……!」
 それから、転がるあかりの首に手を添えて瞼を閉じさせてやる。
 あらぬ方向を向いた目が瞼に隠れて、少し死体の顔は見られるものになった。
 鼻水を啜りながら、京子は少女の顔を見上げる。背丈や見た目は自分とそう変わらないように見えたが、どこか大人びた雰囲気があった。
 だから多分年上だろうと思う。ふわふわした金髪がとても綺麗で、精微な顔立ちも合わさりお人形のようだった。
 お調子者な京子のことだ、こんな状況でなければ軽口の一つも出ていたかもしれない。

13鬼隠し(裏) ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:46:07 ID:lVM5Sm.M0
「悲しいのはわかるけど、このまま此処にいたらあなたも危ないよ。私と一緒に行こ?」
「お姉さんは……乗ってないの? この《プログラム》に……」
「誰かを殺すとか蹴落とすとか、私には無理かな。まともにやっても勝てそうにないよ。体力もないし、頭もよくないし」
 肩をすくめて苦笑する彼女の言葉に、つい反射的にほっと胸を撫で下ろしてしまう自分が忌まわしかった。
 あかりを死なせておきながら、まだこうやって自分の身の安全のことばかり考えている。
 汚い。醜い。あかりじゃなくてお前が死ねばよかったのに、あの鬼に食われてしまえばよかったのに。
 京子がそんなことを思っているなど露知らないだろう少女は、四つん這いで蹲ったままの京子にそっと手を差し出してくれた。
「近くに空き家があったから、とりあえず私とそこに行こ? 落ち着くまで一緒にいてあげるから」
 歳納京子は親友を見殺しにして生き延びた。
 鬼に差し出して逃げ延びた。
 しかしこの有様では、まともに生き残るのも戦っていくのも不可能だろう。だから京子には彼女の手を取る以外の選択肢はなかった。
 手を取り、涙を拭いながらなんとか立ち上がった瞬間、少女が微かに口角を釣り上げたことにはついぞ気付かないままで。


(そう。私じゃ多分、どう頑張っても真っ向勝負じゃ優勝出来ない)
 未だぐすぐすと鼻を鳴らしている京子の手を引きながら、花邑ひなこは冷静に考えていた。
 さっきはああ言ったが、《プログラム》に乗っていないというのは真っ赤な嘘だ。
 ひなこは虫も殺さないような顔をしながら、内心では今この瞬間も優勝することだけ考え続けている。
 正確にはこの島のどこかにいる最愛の人、ひなこにとっての世界の中心である“彼女”と一緒に優勝するための案を、編み続けている。

14鬼隠し(裏) ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:47:34 ID:lVM5Sm.M0
(だから頭を使わないと。例えば、友達を殺されたかわいそうな女の子を守ってあげるいい子を演じるとか)
 人間の心っていうのはそこまで単純で即物的じゃない。
 必ず、人を殺すことを嫌がって《プログラム》そのものに反旗を翻す連中が出てくるはずだとひなこは考えた。
 ならば、弱くて頭も悪い自分が優勝を目指す上で一番手っ取り早いのは、そういった参加者たちの団体に潜り込んで寄生することではないかと。
 寄生して信用を勝ち取りながら機を伺う。絶好のチャンスが巡ってきたら、そこでごっそり参加者を減らす。これをなるだけ繰り返しながら、絶対に死なせるわけにはいかない“あいちゃん”との合流を目指す。
 それが、ひなこの考える《プログラム》優勝のためのプランだった。
(でもあいちゃんのことは早く見つけてあげないと。あいちゃん、絶対泣いてるよね……どこかでじっと隠れててくれればいいんだけど)
 ───瀬崎愛吏。それが、ひなこが生かさなければと考えている最愛の人だ。
 けれど愛吏は弱い。いろいろあって、彼女はすごく弱くなってしまった。
 愛吏のそんな姿もひなこは愛していたけれど、この殺し合いの場ではその弱さはあまりにも不利だ。
 だから早く見つけて、保護した上で自分の方針を共有して、一緒に戦ってあげる必要がある。
 時間制限はあまりない。うまくやらなければ、自分は大好きなあいちゃんを失うことになってしまう。
(二人で帰ろうね、だから少しだけ待ってて。一緒に帰ったら、二人でもう一回やり直そう。
 今度はもっといろいろよく考えて、二人で話し合って、いっしょに生きていけるように頑張ろう)
 ひなこはこの《プログラム》に少なからず感謝していた。
 だってこれがなければ、自分達はどうあがいても詰んでいたから。
 高校生二人の逃避行、駆け落ちなんて上手くいくわけがないのだ、普通に考えて。
 そして自分達はもうじき、そんな現実に追いつかれるところだった。
 その矢先に舞い降りた非日常。利用しない手はない、ひなこはそう思う。
「私達、永遠に一緒だよ。あいちゃん」
 歳納京子は鬼から逃げるために友人を捧げた。
 しかし京子は、まだ気付いていない。鬼が皆、昔話のように恐ろしい姿形をしているなんてことはないのだと。
 優しい言葉と、穏やかな顔。その裏側に大きな殺意を隠している───そういう鬼もこの世にはいるのだ。
 鬼に手を引かれて京子は歩く。後戻りは、もうできない。

【一日目・深夜/D-4】
【花邑ひなこ@きたない君がいちばんかわいい】
【状態:健康】
【装備:???】
【方針:瀬崎愛吏との優勝狙い】

【歳納京子@ゆるゆり】
【状態:精神不安定、自己嫌悪】
【装備:サバイバルナイフ】
【方針:???】

15 ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:48:34 ID:lVM5Sm.M0
投下終了です
wikiの方が完成しましたので、URLも載せておきます。よく考えなくても作ってからスレ建てればよかったです。
ttps://w.atwiki.jp/thelcbr/pages/1.html

16名無しさん:2023/07/05(水) 01:11:53 ID:IClAJj9Y0
投下乙です
京子、出て行っても死体が二つになるだけだから仕方ねぇよ……
『二人』生き残れるこのゲーム、普通のロワより乗る奴多そうなので日常系は生き残る難しそうだ……


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