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lily Crown Battle Royale

12鬼隠し(裏) ◆9rj3OvFOmY:2023/06/26(月) 19:45:25 ID:lVM5Sm.M0
「全部……全部、お前のせいじゃん……! 全部、おまえが……!」
 何をどう哭いたってあかりは帰ってこない。
 死んだものは戻らない。京子のせいで、あの朗らかな笑顔は永遠に失われた。
 二度とあの日々が戻ることはない。ごらく部と七森中の愉快な仲間たちの物語は、このどことも知れない田舎道で打ち切りになってしまった。
「うああぁああああっ……! あかり、ごめんね、ごめん、あかりぃいいいいいい……!!」
 京子ちゃん、泣かないで。
 そう言ってくれる優しい少女の魂はどうやらもう此処にはないようで、したがって京子の慟哭に応えてくれるものは何一つなかった。
 臆病の代償は孤独な絶望。京子はそれをただ噛み締め続けるしかない。
 鬼の餌食を免れた少女は幸運でも何でもなかった。その判断を、きっとこの先命が尽きるまでずっと悔やみ続けることになるから。
 はてさて哀れな少女はこのまま、他の誰かが声を聞きつけて狩りにやって来るまで此処でこうして蹲っているつもりなのか。
 京子一人だったならそうだったかもしれないが、幸いにして歳納京子にはまだ運が残っているようだった。

 道の先で───新たな参加者が一人、呆然と泣きじゃくる京子の姿を見つめていたのだ。
 彼女の次の行動は、武器を抜くでもほくそ笑むでもなかった。
 少し迷った後、無防備すぎる姿を晒す京子へと控えめな足取りで近付いていく。
 そして、せっかく拾った命を無防備にまな板の上に放り出している京子に話しかけた。
「あの……」
「───ひ、っ!?」
「あっ、ごめんね、驚かすつもりはなかったんだけど……その」
 自分のせいで死んだ友人に縋りつくのに夢中だった京子は、声をかけられるまで気配にも足音にも気付いていなかったらしい。
 尻餅をつきながらとっさに声の方向を見るその目は、気の毒なまでに怯えきっていた。
「これ、あなたがやったの?」
「───ちがう! 違う、違うっ! 私じゃない、私じゃ……! ひ、ぐ……!」
 かぶりを振って必死に否定する。
 してから、何が違うんだよとそう思った。
 直接手を下したわけじゃない、それは確かだ。だけど見殺しにしたのは他でもない自分自身。歳納京子。
 幼馴染だったのに、大事な友達だったのに、視界の先で首を切り落とされるのをただ指を咥えて震えながら見つめていただけの自分。
 それがどの口で自分は殺していませんなんて言えるんだと思うと、京子は本気で自分をこの場で殺してやりたくなった。
 そんなことが出来る度胸があるなら友達を見殺しになんてしていないことに気付くと、余計に頭の中がぐちゃぐちゃになって、目の前に人がいるのも構わずに地面へ拳を叩きつけていた。
「…………」
 そんな京子の姿を、しばらく少女は見つめていたが。
 やがて身を屈ませると、自暴自棄のような行動に走る京子の手をそっと止めさせた。
「友達だったの?」
「………うん」
「そっか。じゃあ、悲しいね」
「私のせい……私なら助けられた! 私が、隅っこでガタガタ震えてなかったら───この子の手ひっ掴んで一緒に駆け出せてたら……! あかり、死ななくてもよかったのに……!」
 それから、転がるあかりの首に手を添えて瞼を閉じさせてやる。
 あらぬ方向を向いた目が瞼に隠れて、少し死体の顔は見られるものになった。
 鼻水を啜りながら、京子は少女の顔を見上げる。背丈や見た目は自分とそう変わらないように見えたが、どこか大人びた雰囲気があった。
 だから多分年上だろうと思う。ふわふわした金髪がとても綺麗で、精微な顔立ちも合わさりお人形のようだった。
 お調子者な京子のことだ、こんな状況でなければ軽口の一つも出ていたかもしれない。


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