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lily Crown Battle Royale
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:
鬼隠し(裏)
◆9rj3OvFOmY
:2023/06/26(月) 19:44:34 ID:lVM5Sm.M0
赤座あかりとは幼馴染だった。
大人しかったあの頃から、自他共に認めるはっちゃけキャラになった今までずっと仲良くし続けてきた。
あかりは楽しいやつだったし何よりいい子だ。それはたまに見ていて心配になるくらいだったが、だからこそあかりらしいとも思っていた。
たぶん仲間の誰よりも優しくて純粋で、たまにびっくりするほど影が薄いけれど一緒にいるとこっちまで笑顔になれる、そんなやつ。
存在を忘れることは何度もあったが、かと言っていざいなくなったらきっと自分たちの日常は成り立たない。今思い返すと、自分があかりに対して抱いていたのはそういう感情だったと歳納京子はそう思う。
大切な友人。かけがえのない仲間。いつまでも続いてほしいゆるくて愉快な日常のシンボル。
楽しい時間はいつしか終わるものだし子どもとは大人になっていくものだ。
七森中を卒業して高校に進めば、その先で大学へ出れば、大人になれば……今の仲間たちともどんどん疎遠になっていくのかもしれない。
そう思ったことは能天気で知られる京子にも当然あったが、大抵その手の考えは苦笑で幕を閉じることになるのがお決まりだった。
だって───想像出来ないから。自分たちが離れ離れになることはあっても、疎遠になって友達でなくなってしまうという光景がまるで思い浮かばないから、まるで漫画だなぁと思ってはついつい苦笑してしまうのが常。
その筈だったし、そうあるものだと信じていた。赤座あかりの首が切り落とされる瞬間を目の当たりにしたその瞬間でさえ。
「ぁ……」
刀を持った鬼が立ち去っていき、見えなくなるのを確認してからようやく京子は声を発した。
何故すぐさま駆け寄っていかなかったのか。支給されていたナイフを片手に握り締めて、あかりの仇を取るべく走り出さなかったのか。
いや、そう問いかけるならもっと前に遡らなければならない。何故、こうなるまで声もあげず行動も起こさなかったのか。そう問うべきだ。
あかりが無警戒にもあの鬼へ手を振り、呼びかけ、むざむざと招き寄せている光景をどうして制止しなかったのか、と───。
「ぁ、ああああ、ああああああ!! あかり!! あかりぃっ!!」
今更声をあげて駆け寄る自分の白々しさに反吐が出る。
駆け寄ったところで何も変わらないと頭では冷静にそう判断しているのに、この期に及んで何を善人ぶっているんだと理性は冷たく言っていた。
歳納京子は何もしなかった。赤座あかりが殺されかけていると分かっていながら自分が隠れていた藪の中から飛び出すこともせず、ただ震えながら友人が素っ首落とされる瞬間を見ているだけ。
何も、しなかったのだ。京子がようやく動き出した時のはもう何もかもが終わった後だった。
「あかり……あかり……!」
ホラー系の番組か何かの再現VTRで見た、首のない幽霊。
それと全く同じ姿を、足元の赤座あかり“だったもの”は晒していた。首がすっぱりと寸断されて、あの愛らしかった顔は色のない無表情でそれぞれの眼球を別々の方向に向けながら永遠に停止している。
誰がどう見ても、生きていない。救命の余地などある筈もない。
完膚なきまでに死んでいる。歳納京子が何もしなかったから、赤座あかりはあの鬼に食べられてしまった。
「───死ねよ」
あかりとは違って、京子は遠巻きに見ただけでも気付いていた。
道の向こうから親友へ近付いていく緑髪の女。時代劇の侍みたいに腰から刀を提げたそいつが、“まともではない”ことに。
ただ見ているだけで全身が総毛立つ。歯がかちかちと噛み合わずに音を立てる。全身が、本能が、あれは人間ではないから近寄るな、存在を気取られるようなことは絶対にするなと喚き散らしていたから。
京子はそれに従ってしまった。怖いから、死にたくないからというそれだけの理由が十年近くにもなる友情にあの一瞬確かに勝った。
その結果がこれだ。全て終わった後で今更友人面をして死体に駆け寄って、生前の明るさの欠片もない虚ろな死に顔を見つめながらわざとらしく涙を流して叫び散らしている。
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