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二次キャラ聖杯戦争OZ Re:visited

44第6話Eyes Of Heaven ◆Mti19lYchg:2022/08/03(水) 00:06:09 ID:8ZoAuRlE0
『アビー、何か言いたそうね』
 店内に戻ったミザリィは入り口近くのレジの席に腰かけ、近くに立つアビーに声をかけた。
「ミザリィは、この店に来たマスターにまるで『ゲームマスター』の正体を暴くようたきつけているに私は見えるわ。
 でも、さっきみたいに襲い掛かってきたマスターには容赦しないし、願いを抱くマスターの邪魔もしない。何が目的か私にはわからないわ。ミザリィはこの聖杯戦争をどうしたいの?」
 アビーは、最後の方は強い調子で問いかけた。
『私はマスターがただ『願いを叶える』。または『主催者を倒す』だけをやろうとするのはつまらないと思っているからよ』
 ミザリィは椅子の背もたれに寄りかかった。
『私は以前、魔女狩りの亡霊たちを退治した事があるのよ。死んでも尚己の過ちを認めようとしなかった奴らに、真実を突きつけてね』
 唐突にミザリィは話を変えた。それを聞いたアビーの胸が高鳴った。『魔女狩り』というその言葉で。
『でもね、アビー。あなたは亡霊たちが真実を、過ちを認めても尚罰しようとするでしょう?
 この世に罪無き人などいない。だから全ての人に苦痛と言う贖罪を与えようとする。それがあなたの抱く邪悪な赦し。
 いけない事、許されない事と思っていても、心の底にある邪神の悪意』
 違う。そうアビーは言いたかった。繰り返されるセイレムの魔女裁判で、アビーは魔女として処刑された人たちも、死してなお贖罪を乞う罪人である魔女狩りに加担した人物も救いたかった。
 でも、最後にアビーが辿り着いた結論は、ミザリィの言う通り、罪を犯した者を別け隔てなく救うため、永劫の苦痛をもって全人類を救罪する事だった。
『現実にいくらでも転がっている悲劇や絶望、人間が大なり小なり抱く欲望。それらは人を時に否応なく犯罪行為へと駆り立てるわ。
 でも、時に不幸であっても善なる心を失わず、戦う人もいる。身に余る欲望に、超自然的な何かがつけこみ破滅させようとしても、逆に一杯食わせて成功する人間もいる。
 そんな人生を脅かす超自然な罠や不幸や悪意に立ち向かい、暖かでしなやかな心を失わずに乗り越えて見せる人間達がいる。その過程で不幸が起こる事もあるけど、結局幸福との帳尻を合わせてしまうのよ、そういう人たちは。
 私はそんな人間を罪人と呼びたくないわね』
 それはアビーに対しても。ミザリィはアビーが邪神の悪意に対抗する限り、罪人ではない。そう言っているのだとアビーは悟った。
『私はそんな人間が大好きよ。だからゲームマスターの意図なんかぶち壊して、そうね、『願いを叶えて』『主催者を倒し、黒幕も暴いて倒す』。
 そんな予想外で贅沢な結末、雀のお宿で大きなつづらを選んで幸福を手にするような、そんな展開を私は見たいの」
「ミザリィは……」
『なに?』
「ミザリィは知恵と勇気を振り絞って、無敵の相手に一杯食わせる。そんな人間が好きだって言ったけど、じゃあ逆に嫌いな人間はいるのかしら?」
『私が嫌いなのは自分の『悪意』を肯定、実行するどころか人間だれもがそうだと開き直る、賢しらに悟ったような凡俗な人間。
 そんな奴らはもし超自然な力を手に入れても卑劣な行為しかできない。そんな人間は……破滅がふさわしいと思うわ』
 ミザリィは眉ひとつ動かさず、微笑を崩さずに言った。
 その姿を見たアビーは、ミザリィの人間に対する意志を理解できた気がした。

 ミザリィが悪人に厳しいのは、世界中にいくらでもいる、残酷な行為をしても咎められない人が嫌いだからだ。
 ミザリィが善人に温かいのは、例え異界の邪神であろうと負けない、人間の知恵と勇気を信じているからだ。
 ミザリィは、善良な人間に希望の光を。邪悪な人間には無慈悲な絶望を。相手にそれぞれ導こうとしている。
 私は……そんなミザリィはとても優しく、そしてとても残酷だと思う。

「ミザリィ。あなたは一体何者なの?」
 アビーの問いに、ミザリィは柔らかい笑顔と声色で答えた。
『さぁ……。アビー、あなたは何者だと思う?』


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