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バトル・ロワイアル Lost Paradise

53 ◆oUF53W6sMM:2021/01/05(火) 13:26:10 ID:SP03vseY0
投下完了です

54 ◆oUF53W6sMM:2021/01/05(火) 13:31:13 ID:SP03vseY0
先程の状態表に追加です。
【うこぎ@鬼滅の刃】(支給品)
[状態]:健康
[思考]:とりあえずゼシカについていく

55 ◆oUF53W6sMM:2021/01/05(火) 15:55:51 ID:SP03vseY0
投下お疲れ様でした!
『*ケツイが みなぎった』
妖夢ちゃんまさかのマーダーですか…!
そしてアズゴアは無念…
咲夜さんもトロデーン城に向かってるので、出会いがありそうで楽しみです。

56 ◆oUF53W6sMM:2021/01/05(火) 21:13:30 ID:SP03vseY0
先程投下したSSの修正です

エイトとククール→エイトとククール、それにトロデ

エイトやククール→エイトやククール、トロデ

57 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/05(火) 23:07:34 ID:By25xSNY0
アリス・マーガトロイド、フリスク予約します。

58名無しさん:2021/01/06(水) 01:01:20 ID:XnkJTaz60
投下乙です。
序盤からぐいぐい進んでいく展開の早さが素敵な企画だと思います。
善逸プロポーズ大喜利で心を掴まれました。

59 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 03:21:51 ID:aVuehrKk0
霧雨魔理沙、累で予約します

60 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 04:55:14 ID:aVuehrKk0
投下します

61 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 04:57:40 ID:aVuehrKk0
 陽の光のような優しい手。
 誰の手かは分からなかった。
 でも家族のことを思い出せた。
 全部、僕が悪いのだと。





 幻想郷の東端に位置する博麗神社。
 しかしなぜか今はこの舞台の中央に存在する。
 人が来ない神社は此処でも閑古鳥が鳴くかのような静けさ。
 静かな状態ではあるが、イコール誰もいないには繋がらない。
 その神社の縁側にて夜空の月を眺める一人の子供がいた。
 雪のような白い装いに文字通り雪の如き白い肌。
 ある世界で十二鬼月、下弦の鬼であった少年『累』。
 彼は何をしているのかと問われると答えは一つ。

「何故、僕は生きているんだろう。」

 困惑。ただそれだけ。
 自分の状況が理解できなかった。
 鬼狩りの刀で首を斬られれば死ぬはずなのに。
 父と母と共に地獄へ逝ったはずなのに。
 しかし生きている。血鬼術も問題なくできる。
 そういう感覚があるだけで本当は死んでて、此処は地獄なのか。
 状況は分からず、最初の話もほとんど聞いてなかった。

「父さん、母さん……」

 それ以上に今の状況の奇怪さの方が大事だったから。
 でも解決はしなかった。手持ちの情報が少ない以上当然だ。
 嘗ての夜のように、月を眺めて家族のことに思いをはせる。
 漸く思い出した自分の咎にして、本物の家族の絆。
 いい記憶ではないとはいえ、忘れないようにしたい。
 彼にとっては罪でもあるのだから。

「お、丁度いいところに人がいるじゃあないか。」

 背後から迫る少女の存在に気づき、ゆっくりと振り返る。
 殺し合いとしては余りにもゆったりとした動きだが、
 動けなかった炭治郎を怒りながらもゆっくり迫ったりと、
 元々激しい動きは余りしてないのが累と言う存在だ。
 人間の頃が病弱だったころの名残とも言うべきものか・

「鬼狩り……じゃない。」

 鬼狩りは黒い隊服に何かしらを羽織ってるもの。
 視線の先にいる少女はそれらしい恰好ではなく、
 無惨のような異国の文化を踏襲した格好だ。

「鬼狩り? 私は桃太郎じゃないって。
 霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ?」

 ウインクをしながら彼女、魔理沙は名乗る。
 魔法使いと言うものが何かは累には分からない。
 鬼狩りではないのであれば自分は殺せず、
 鬼として人を喰うのにも今は記憶のせいで抵抗がある。
 故に何をすることもなく隣に座る彼女を見やるだけだ。
 かなり気安く(累の時代であれば)女性らしからぬ行動ではあるが、
 病弱で外に出られなかった彼にそのような認識は全くない。

「そっちは何をしてるんだ?
 子供が……って見た目の判断はだめか。
 萃香とかレミリアとか、例外一杯だし。」

 見た目の判断は意味をなさない。
 幻想郷ではいくらでも経験してきたことだ。
 だから彼が一人で無防備にいるのは所謂余裕、
 そう捉えて口にしようとしてた言葉は飲み込む。

「家族を思い出してた。」

「家族……ねぇ。私には無縁だな。」

 勘当された魔理沙にとって、
 ある意味最も縁遠いものの一つ。
 いい思い出なんてろくにないものだ。
 下手をすれば顔も思い出せないレベルに。

「そうなんだ。」

「まあよく言えば、
 あいつが家族みたいなものか。」

 物心ついた時から関わり続けて、
 今もなお世話になっている古道具屋の店主。
 兄妹のような感覚であるとは思うが、あれも家族だろう。
 彼のことを軽く語るも、累の表情は余り変わらない。
 達観してるなぁ。なんて風に軽く流したが。

「お前の家族は?」

「病弱な僕を気遣ってくれたとてもいい家族だった。」

62 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 04:58:51 ID:aVuehrKk0
「お、そうなのか。」

「でも、僕はそれを断ち切ったんだ……自らの手で。」

 表情に影を落としながら累は語っていく。
 地獄へ堕ちた人間が隠し事などすることはせず、
 自分がしてきた所業を全て包み隠さずに語る。
 累は魔理沙の顔を見てないので気付かなかったが、
 話の途中で、彼女は引きつった表情をしたりもしていた。
 妖怪が人を喰ったと言うことならある意味慣れてはいるものの、
 あくまで結果だけのものだ。家族を殺し、同族も殺し、人も殺し。
 事細やかに生々しい話を前に、慣れた魔理沙でも余り気分はよくない。

「取り返しのつかないことをしてしまった僕は殺されて、この地獄へ来たんだ。」

「死んだ奴も蘇らせれるってか。あの植物何でもありか?」

 不老不死は見てきたが、
 死んだ人間を蘇らせられるとは。
 死霊術と呼ぶには余りに精度が高いし、
 本当に蘇生そのものができることが伺える。

「植物?」

「え、お前話どころかあいつすら分からないのか。」

 適当に木の枝でそれっぽい姿を描きながら、
 魔理沙は累へ今の状況を説明してあげることにする。
 そして魔理沙は生きた人間であり、死者でもない。
 当然、此処が地獄と言うわけでもなく。

「じゃあ、父さんと母さんだけが……」

 自分が生き返った喜びなど初めからない。
 生き返って思ったのは一緒に地獄へ逝くと言ってくれた家族のことだけ。
 その家族を置いて自分だけが生き返ったことを理解し、首輪に手を掛ける。
 鬼は日輪刀に使うような特別なを使ったものでなければ死なないの。
 だが今彼は首輪をつけられており、それが自分にもある。
 と言うことは、これもその素材を使われてるのではないか。
 すぐに戻ることができると思って引っ張ろうとするも、

「わあああああ!? 何やってんだお前ー!!」

 文字通りの自殺行為であったので魔理沙は止めに入る。
 だが累は鬼、それも十二鬼月。力は常人のそれを凌駕しており、
 人間である魔理沙にそれを止めることなどできなかった。
 仕方なく姿勢を崩すことを優先として、突き飛ばす形で止める。

「お前、何考えてるんだよ!?」

「母さんと父さんは僕の為に一緒に地獄へ逝ってくれた。
 なのに僕だけが生きているなんて、おかしいじゃあないか。」

「いやまあ、確かにそうかもしれないけどさ……」

 はっきり言って魔理沙も累の所業は擁護できない。
 白か黒かをあの閻魔に尋ねれば間違いなく黒になる。
 幻想郷は人を喰らう存在がいるが、それでもかなり良心的だ。
 スペルカードルールで多少の秩序は保ててるのだから。
 だからこそ累のやってきたこととの差が激しかった。
 まるで唯我独尊と言う言葉を体現するかのような性格。
 今はそれは改善された方だが、なら今までの人殺しは許されるか。
 肯定すればふざけるのも大概にしろと野次が飛ぶことは間違いない。

「……私にとって家族のことはよくわからないから、
 正直あんまりこう言うのは性に合わないんだけど、
 多分お前の両親は向こうで待っていてくれてると思うぞ。」

 ため息交じりに後頭部を描く。
 自分が家族だなんだのと言う日が子ども相手に言う日が来るとは。
 なんだかむずかゆく感じながら話を続ける。
 累も耳は傾けてるようで、首輪に手はかけていない。

「その、両親の件から死ぬまでの間って時間は経ってるんだろ?
 それでも一緒に地獄へ逝ってくれたなら、すごく待ってくれてたってことだろ。
 一日二日ぐらいだったら、待っててくれそうな気がするんだけどな。」

「でも生きて何をするの?
 僕は人を喰う鬼だ。いつか取り返しがつかなくなる。
 そしたら僕はまた家族の記憶を失ってしまうかもしれない。」

 人を喰うと過去の記憶が希薄になる。
 それを一度経験してから漸く取り戻せた記憶。
 何物にも代えられないそれをもう失いたくはなかった。
 紛い物ではない、自分が断ち切ったとはいえそこにあった本物の家族の絆。
 あの時は無惨に縋ってしまったが、今度はその選択を誤りたくはなかった。
 此処にあの陽のような温かい手はない。次失えば二度と取り戻せない。
 またあの希薄になりながらまがい物の家族ごっこはもうごめんだ。

63 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 05:00:34 ID:aVuehrKk0
「じゃあ、そうだな……せめて他の家族の絆を守ってやってくれ。」

「他人の?」

「私の家族は此処にいないんだけどさ、
 他の参加者には家族のような存在はいるはずだろ。
 お前が他人なんて知ったことじゃないなら止めようがないけど。」

 家族とは厳密には違うが、
 紅魔館や白玉楼の主従が参加者にいるように、
 血は繋がらずとも、兄弟とかでなくとも家族の絆はあるものだ。
 あくまで自分の知る範囲で、残りの三十六名にもそういう存在がいるかもしれない。

「そういう人達を助けてからでも、遅くはないんじゃあないのか?」

 正直なところこれが本音かと言うと少し怪しくもある。
 過去に身勝手に宝を漁って封印を解いて妖怪退治をするようなことをした彼女だ。
 だから他人の為だどうこうと言うのは、正直なところ微妙でもあった。
 魔理沙にとって異変解決を他人の為とか使命感とかでしたこともない。
 なので正直なことを言うと、お前が言うなになってしまう。
 ある意味幻想郷の住人らしい自分中心と言えば、そうなのだが。

「他の人の絆……」

 そう突っ込む相手がいないのならば話は早い。
 見た目以上に長く生きてると言っても元は子供。
 記憶も取り戻したことで幼い彼はそれに納得してしまう。
 どこか利用しているようで悪いし、終われば彼は死ぬことは変わりはない。
 けど、ただいきなり自殺されてもそれは余りに寝覚めが悪いと言うものだ。
 しかも自分の説明が原因で死ぬつもりだったのでは自分が殺したようなものになる。
 もとより寝覚めが悪くなるのにそれが起きたら一生安眠できそうにない。

「行きたいところはあるか? あ、勿論日の出までには此処に戻れる範囲でだ。」

 地図だけでは陽の光を回避できる場所はいまいちわからない。
 累の体質を考えると余り遠くへ行くと回避できなくなってしまう。
 魔理沙の支給品にもそれを回避できるものはないし、
 としょかんや遺跡と回避できそうな場所もどれほどの距離かも曖昧だ。

「……那田蜘蛛山。」

 自分が拠点としていた山がなぜ此処にあるのか。
 よくは分からず、気になるのでそこを指す。
 だがあまりに遠すぎて無理があると思われる。

「山かぁ……陽が落ちるまで待つのは長すぎるか。
 なあ、お前の方の支給品……って見てるわけないよな。見るぞ。」

 手つかずのデイバックから、
 支給品の確認すらしてないのだろう。
 フラウィーの話を何一つ聞いてないし、
 そこを考えれば当然のことではあった。

「お、これ行けるか?」

 累のデイバックから取り出したのは箱。
 ただの木の箱ではあるが、材料がいいことは魔理沙にはわかる。
 デイバックから入りきらないようなものが出てきたことについては、
 幻想郷で常識に囚われてはいけないを既に通った故に殆どスルーだ。

「……あの鬼狩りが背負ってたやつだ。」

「ん?」

 自分をあと一歩まで追い詰めた鬼狩りが、妹の鬼を背負っていたものだ。
 となれば、日除けの性能があることについては間違いない。

「お、それはいいな。最悪これで移動できるし行くぞ!」

 箱にデイバックをしまって、いざ走り出す魔理沙。
 無理であれば途中で累を収納すれば問題はない。
 軽快に走り出して神社から離れるが、すぐに戻ってくる。

「いやおっそいなぁ!!」

 累がまさかの歩き、しかも遅いときた。
 魔理沙が階段の途中から戻ってきたと言うのに、
 あまり進んでるかと言われると怪しい。

「……走ったことないんだ。」

 生前病弱だったからか山から動かなかったからか。
 累が走ると言う行為に不馴れなのは、思えば当然のことだ。
 これでは朝陽を迎える前に神社を離れることもできるか怪しいので、
 累のデイバックに魔理沙のデイバックを入れると言う荒業で中を広げ、
 その中に累と累のデイバックを詰めると言うこれまた少し荒い手段でなんとか入らせる。

「今度こそいくとするか。気分悪くなったら言えよ。」

 ぎゅうぎゅう詰めにしてる時点であれだけど、
 なんてこと思いながら魔理沙は走り出すが、

「いや、やっぱちょっと重いかも。」

64 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 05:01:20 ID:aVuehrKk0
 子供一人背負う時点でそこそこ負荷がきつく、
 走る行為は余り長々とできるものではなかった。
 これを背負っていた男はしっかり鍛えられたから、
 と言うのと中の人が質量を変えられるが故にできただけで、
 普通の魔法使いにとって子供であっても少々厳しい所だ。
 適当に箒でも見繕って空を飛べればもっと気楽ではあるが。
 ミニ八卦炉もないことだし、色々不穏な状態で幕は上がった。






 もっとも、累はどれだけ改心しても究極のところ鬼だ。
 禰豆子と違って喰らうことを別のことで代替えはできない。
 いずれは耐え切れず人を喰らうときが来てしまうだろう。
 鬼や妖怪と言う存在に慣れすぎてしまったが故の見解の甘さ。
 しかも彼を狙う鬼狩りたる鬼殺隊の参加者は何人もいる。
 ある意味では、彼女は地獄の片道切符を手にした。
 どうあがいても前途多難な未来でしかないのだから。
 カンダタのように蜘蛛の糸は天より垂れているのか。
 今度は糸が断ち切れないことを願うしかない。

【E-6/博麗神社周辺/1日目/深夜】

【霧雨魔理沙@東方project】
[状態]:健康、累を背負ってる都合動きが少し鈍い
[装備]:箱@鬼滅の刃
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず乗るつもりはないけどどうするか。
1:累と一緒に那田蜘蛛山を目指して置く。知り合いも探す。
2:ミニ八卦炉とか箒とか欲しい。空飛ぶにはやっぱ箒だよ、箒。
3:いやこれきっついな。鬼狩りどうやって背負ってたんだよ。
4:知り合いを探す。
【備考】
・参戦時期は少なくとも星蓮船以降。
・累の生前から今に至る話を聞いてます。
 鬼滅の刃の世界観をある程度理解しました。

【累@鬼滅の刃】
[状態]:人を喰らうことへの抵抗、箱の中
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×1〜2(魔理沙が確認済み)、魔理沙のランダム支給品×1〜3(魔理沙が確認済み、日除けになりうるものはない)
[思考・状況]
基本行動方針:他の人の家族の絆を守る。父さんと母さんには少しだけ待ってもらう。
1:この子(魔理沙)についていく。
2:陽を浴びないよう気を付ける。
3:ことが終わり次第命を絶つ。

【備考】
・参戦時期は死亡後。
・家族の記憶は全て思い出してます。
・フラウィーの話は全く聞いていませんが、
 魔理沙によってある程度かいつまんで理解してます。
・名簿は一切見ていません(見てもわかる人が殆どいないけど)

【箱@鬼滅の刃】
竈門炭治郎が竈門禰豆子を陽の光から避けるため作った箱。
念入りに作ったので割と頑丈であるが、禰豆子は蹴って開けたり割とぞんざい。

65 ◆EPyDv9DKJs:2021/01/06(水) 05:01:59 ID:aVuehrKk0
以上で【もう何一つだって失いたくない】投下終了です

66 ◆oUF53W6sMM:2021/01/06(水) 09:45:35 ID:XLfHo1mE0
投下乙でした!
累くんは死亡後からの参戦ですか…
魔理沙とこれからどうなるのか。楽しみですね。

67 ◆oUF53W6sMM:2021/01/06(水) 09:47:29 ID:XLfHo1mE0
ちなみに完全に失念していましたが、ゲリラ投下もOKとします。

68 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:18:02 ID:T8e3PgQM0
投下します。

69 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:19:24 ID:T8e3PgQM0
「あなた、私の人形にならない?」

ㅤ目の前に佇む子どもに向けて、アリス・マーガトロイドは第一声、語りかけた。

「えっと……どういうこと?」

ㅤそれを受けた子ども、フリスクは疑問で返した。アリスが出会い頭に振り翳したのは、人の基準で言えば怪しさ――或いは妖怪としての、妖しさ。端的に言えば、関わらないのが最も無難な選択だろう。しかしそれでもフリスクは『にげる』選択を取らず、『はなす』ことを選んだ。

「私、人形遣いなの。一人じゃあまり強くはないのだけれど、支給品に人形が無かったから困ってて。」

ㅤアリスは、一目見たときからフリスクを操りやすい子だと感じた。このような殺し合いを命じられた手前、他者とのエンカウントは本来、警戒して然るべき事態だ。しかしあろうことか、フリスクは出会った自分の顔を見て、安心したかのように表情を緩ませたのだ。

ㅤ突然こんな場所に飛ばされて不安だったのだろう。誰かに縋りたかったのだろう。スペルカードルールが制定され、本当の命のやり取りとは比較的無縁だった幻想郷の住人としてそれも理解できる感情だ。

70 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:19:56 ID:T8e3PgQM0
ㅤその上で――甘いのよ、とアリスは内心で毒づく。この殺し合いはこの異変はスペルカードが適用された弾幕ごっこという遊びではない。間違いなく、自分の命を賭けた決闘だ。そして、同じ実力の参加者同士がぶつかるのなら――先に戦力確保に乗り出していた方が勝つのは道理。霊夢や魔理沙をはじめとする幻想郷の強者たちと渡り合うには、人形や、それに与するものが是非とも欲しいところだ。

「簡単よ。私の言う通りに動いてくれたらそれでいいわ。その代わり、あなたを殺そうとする敵に立ち向かえるよう指揮してあげる。」

ㅤ動かす人形ひとつひとつの位置を把握する必要のある人形遣いは多角的に戦場を俯瞰する必要があるため、指揮する能力には長けている。こんな幼い子供でも、駒は駒だ。せいぜい私が生き残るのに利用させてもらおうじゃないか。

ㅤなどと考えているアリスに、伏し目がちにフリスクは尋ねる。

「立ち向かうって……フラウィに言われた通り、みんなを殺すの?」

ㅤ気のせいかその震えた声は、他者を殺すことへの躊躇とは少し、違った気がした。その裏にはこの子の信念、或いはそれに関係する何かが滲み出ているように思える。しかし、アリスのすることは変わらない。

「私だってそんなことしたくないわよ。でもね、しなきゃいけないことだってあるわ。でも……」

ㅤ赤子をあやす様に、またはたしなめるように。落ち着いたトーンでアリスは告げていく。懐柔するための甘言――しかし同時に、それはアリスの本心でもあった。霊夢も魔理沙も、本音では殺したくなんかない。魔法の森で一人静かに暮らしている中でずけずけと入り込んできて、鬱陶しく思うことだってたくさんあった。だけど――同様に楽しく思うことだって少なくはなかった。

71 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:21:17 ID:T8e3PgQM0
ㅤ自分でも気付かぬ内に視線を落としながら、簡潔に、述べる。

「……この世界、殺すか殺されるか、なんだもの。」

「――そんなことないっ!」

ㅤフリスクの唐突な大声に一瞬、気圧されるアリス。驚くままにフリスクの顔を見遣る。

「ボク……知ってるんだ。ヒトとモンスター、どうしようもない種族の垣根があったとしても、戦うさだめにあったとしても、手を取り合って分かり合うことができるって。トモダチにだって、なれるって。」

ㅤ細く見開かれたその目は、『ケツイ』に満ち溢れていた。それは人形には――そして、周りに流されず、どこであろうとも個を貫く幻想郷の者たちには決して達せぬ境地。

「だから、ボクはお姉さんの人形にはならない。」

ㅤふと、アリスの脳裏にある光景が過ぎる。異変を解決し、誰が始めたかも分からない宴会に、自分も、かつて敵だった者たちも含め、皆が賑やかに騒ぎ合って――ああ、それこそが幻想郷の良いところだったはずだ。異変が終われば誰もが盃を交わすことができる。悪も敵も全てを受け入れる温床は、確かにそこにあった。異変でスペルカードを交えれば、誰も死なず誰も欠けず、しかし公正かつ厳正に紛争は解決するのだから。

ㅤこの殺し合いは違う。生き残れるのはたった一人。他者を決して受け入れず、拒み、そして殺す。たとえ、やりたくなくても――

「そう。あんた、つくづく頭が春だね。」

ㅤ頭を支配する光景を、戦いへの迷いを、振り払うように首を横に振る。

「やっぱり人形には向いてないわ。ここで糸を切ってあげる。」

ㅤアリスは、人形遣いである前に魔法使いである。その出力は火力バカの魔理沙なんかには一歩及ばないが、しかし子どもひとりを屠るには充分過ぎる。フリスクを怖がらせないよう仕舞っていた支給品の杖を取り出し、構える。

「人形に向いてるヒトなんて、いないよ。」

ㅤそしてフリスクもまた、戦いに備える。その手には武器を、その胸には防具を、そしてその眼には――ケツイを。

「だってみんな、みんな……ボクの大事なトモダチだもの。お姉さんも、ボクのトモダチになろうよ。」

ㅤ戦い、或いは、戦いとも言えない何かが、始まる。

72 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:24:43 ID:T8e3PgQM0
【E-8/平原/1日目/深夜】

【アリス・マーガトロイド@東方project】
[状態]:健康
[装備]:魔封じの杖@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君、いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを生き残る
1:フリスクを殺す
2:人形代わりになるもの(者)を探す
3:……。

【備考】
参戦時期はご想像におまかせします。

【フリスク@UNDERTALE】
[状態]:健康
[装備]:いつもの武器、いつもの防具、いつもの服装
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ケツイ。
1:たたかう。

【備考】
参戦時期は
















「そう、みんなみんな、大事なトモダチ。」

















ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤざ








ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤし








ㅤㅤㅤㅤㅤㅤゅ








ㅤㅤㅤㅤ。











「だㅤかㅤらㅤ殺ㅤしㅤがㅤいㅤがㅤあㅤるㅤんㅤじㅤゃㅤなㅤいㅤかㅤ。」

73 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:25:26 ID:T8e3PgQM0





「えっ……?ㅤあっ…………。」

ㅤアリスの華奢な身体に、斜めに閃光が走った。違和感に気付いた時には、時、既に遅し。胸に咲いた鉄製の刃を、ただただ眺めることしかできない。

ㅤ脚の力が抜けて崩れ落ちていく。視界が、真っ赤に塗り潰されていく。

ㅤその様を見下ろしながら表情を崩さぬまま嗤う執行者へと、アリスは、最後となる問いを投げかける。

「あん、た……ほん、と……に……ニン、ゲン、な、の……?」

「さあ?ㅤモンスターではないと思うよ。」

ㅤフリスクの返事は、その命を散らしたアリスには届かない。

ㅤ予測なんて、できようはずがなかった。

ㅤどこか迷いを脳裏に残しつつも、それでもフリスクを殺すと豪語していたアリス。そんな彼女に比べても、奴には一切の躊躇というものがなかった。まるで、おやつのバタースコッチシナモンパイにフォークを突き立てるかの如く、ナイフを振りかざし、そして突き刺していた。

ㅤその脳内でトモダチとなれるまでの筋道を導きながらも、あらゆる他者に暴力を振りかざし、あらゆるものを破壊していき、モンスターの住む地底を恐怖と絶望に陥れた人間。それが、フリスクという子どもの歩んできた道筋だ。その生き方は、この世界でも変わらない。ジャマなやつも、カモも、全てを破壊していくだけだ。

ㅤそれにこの世界にやってきてから、妙にスッキリしている気分だ。モンスターをぶち殺してLOVEが上がるたびに頭の中で蠢いていた何かの存在を、もはやまったく感じない。殺戮をも躊躇わない、人の形を模した怪物の歩みを唯一止めていた存在が消えたことで、もはやフリスクを止めるものは何もなかった。

ㅤそれに――支給品のを開くと『いつも』の装備品だけがぽつんと入っていたのも、そういうことなんだろ?ㅤフラウィ。

【アリス・マーガトロイド@東方Project 死亡確認】

【* 35体ㅤのこっている。】


【E-8/平原/1日目/深夜】

【フリスク@UNDERTALE】
[状態]:健康
[装備]:ほんもののナイフ@UNDERTALE、ロケット@UNDERTALE、いつもの服装
[道具]:基本支給品、魔封じの杖@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君、ランダム支給品1〜2個(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ケツイ。
1:たたかう。

【備考】
参戦時期はGルートの、ニューホーム訪問より後です。

74 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/08(金) 10:26:09 ID:T8e3PgQM0
以上で、タイトル『人の形弄びし――』の投下を終了します。

75 ◆oUF53W6sMM:2021/01/08(金) 11:18:28 ID:iMkhqomA0
投下乙でした!
フリスクの参戦時期はまさかのGルート!
そしてアリス無念…

76 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/09(土) 14:38:55 ID:/Ehfx7FQ0
竈門禰豆子、サンズ、トロデで予約します。

77 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/11(月) 00:22:38 ID:0lYqG7HI0
投下お疲れ様です!
「*ケツイが みなぎった」
本来の口調から妖夢の覚悟を受けとり、名乗りをする「アズゴア王」のカリスマが凄いです。
『みのがす』という選択肢を無くすや炎の『欠け』や『!』など、UNDERTALEの世界観がとても伝わる戦闘描写が勉強になりました。

「魔法使いの決意」
OPでの出来事に落ち込むが直ぐに自分に喝を入れて立ち直るゼシカに惚れます。
支給品の「うごき」とのコンビ、想像するだけで、もう可愛いしかでてきません。

「もう何一つだって失いたくない」
累の参戦が死亡後という驚き!
魔理沙とのコンビですが暗雲が立ち込めるラスト…今後に注視です!

「人の形弄びし――」
Gルートのフリスク!!これは、他の参加者にとって脅威ですね。
「だㅤかㅤらㅤ殺ㅤしㅤがㅤいㅤがㅤあㅤるㅤんㅤじㅤゃㅤなㅤいㅤかㅤ。」
に至る流れ、読んでいてゾクッとすると同時に小説の表現に感嘆の声を上げました!

富岡義勇、西行寺幽々子、フェネックで予約します。

78生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:51:07 ID:S2qkepAA0
完成したので投下します。

79生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:52:53 ID:S2qkepAA0
「おはようございます」
「……」

「あら、聞こえなかったかしら?おはようございます」
「……」

女性の2度にわたる挨拶に返事を返さない男……・名は富岡義勇。
鬼殺隊の最高位に立つ剣士の一人で【水柱】の肩書を持つ。

「…友人のいない人生は塩気のないピラフよ」
女性はため息をついて呟くと……

「俺は…」
ようやく挨拶を返すと女性は予想したが……

「…俺は嫌われていない」
「……」

予想外の返答がきた。

「あら。以外に気にしたのね」
女性は苦笑する。
女性の言葉に男はそれ以上返事を返さず、刀を構えている。
「ふふ。挨拶は好きじゃないのね?じゃあいいわ。あなたの名前を聞かせて下さる?」
挨拶を交わすのを諦めた女性は男の名前を尋ねる。

「……」
「……」

「…富岡義勇だ」
刀を構えながらようやく、男は名乗った。

「私は西行寺幽々子。「白玉楼」の主で亡霊をしているわ」
ようやく、名乗りをした富岡に女性も自己紹介をする。
女性の名は西行寺幽々子。 華胥の亡霊の二つ名を持つーーーーー


「…どうして、亡霊がこんな場所にいる?」
「さぁ?それは、あのフラウィというお花に聞いてくれないかしら?それに、亡霊だって昼間も居ますよ」
「今は、真夜中だ」
「あら。そうね」

「…殺し合いに、乗ってはいないのか?」
「ええ。殺し合いよりもツタンカーメン展の方がよっぽど興味があるわ」

80生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:53:53 ID:S2qkepAA0
幽々子の一見ふざけているかのような回答にも富岡は構えた刀を下げようとはしない。

「…むしろ、あなたの方が殺し合いに乗っているように見えるけど?」
「…俺はむやみに命を奪わない」
「そうなの?私は【興味本位】で命を奪うことができるわ」

それは嘘偽りない言葉ーーーーー死を操る程度の能力をもつからだ。

ピクッ!富岡の眉間に皺が寄る。

「…ふざけるなッ!」
普段、表情を顔に出さない富岡だがーーーーーー

「生殺与奪の権は貴様にない!!」

幽々子のその言葉だけは黙っていられないーーーーー

「いいえ。生殺与奪の権は私にはあるわ」

生前、その力を忌み嫌う果てに自害を選んだ幽々子。
もっともーーーーー西行妖を封印する際に記憶は失われているが……

「…どうやら、戦いは避けられないようね」
幽々子は残念そうな表情を見せーーーーー

亡郷「亡我郷 ‐さまよえる魂‐」

闘いの火蓋が切られた。
幽々子の足元から霊魂が出現して同時にレーザーが放たれる。
富岡は右に左に水平移動を行い、避けると、幽々子の首元目指して水平に薙ぎ払う。
それを幽々子は支給品の月のおうぎで受け止める。攻撃が防がれても富岡は瞬時に垂直方向に体ごと一回して斬りつける。
幽々子はバックステップでそれを避ける。

「それにしても、ずいぶんと無口ね?」
「会話を楽しむのは好きじゃないのかしら?」
「戦っている相手に名乗るような名は持ち合わせていない」
「俺は喋るのが嫌いだから喋るな」
「なら。勝手に喋るわ」

「先ほどの水平の薙ぎ払いに一回転しながらの斬りつけーーーーーあれは私たちでいう「スペルカード」に匹敵する技」
幽々子が指摘したのは壱ノ型 水面斬りと 弐ノ型 水車 のことだ。
「別に名乗らなくてもルール違反ではないけれど、あまり美しくはないわね。【弾幕ごっこ】だと、減点でしかないわ」
幽々子は富岡の眼前で指をバッテンに交差して伝える。
「これは、ごっこ遊びではない」

「敵と話すのが嫌いじゃなかったかしら?」

「……」

81生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:55:00 ID:S2qkepAA0
「華霊「スワローテイルバタフライ」」

スペル宣言と同時に幽々子の背面に扇が出現した。
先ほどの攻撃とは違うという意味だ。
弾幕が再び富岡に襲い掛かる。
赤と青の蝶弾が四方八方に弾けるのを避けると、幽々子に攻撃をしかけようとするがーーーーー
「…ッ!」
避けたはずの弾幕が富岡を追いかける。

「そのスペルカードはどこまでも、おいかけるわ」

幽々子の言葉通り、蝶弾を避けてはまた追尾してくる。
(…面倒だな……!?)

「はい、油断大敵💗」
弾幕を避けることに集中していた富岡は背後に迫る幽々子に気づけなかった。
月のおうぎで背中を思い切り叩かれる富岡。
「…ぐッ!?」
痛みに顔を歪める……
幽々子は見かけによらず格闘戦においてはパワータイプなためだ。

「私を嫌うわりに実力はそんなものだったの?」
幽々子の煽り。
「…おい」
「何かしら」
「俺は頭に来てる。猛烈に背中が痛いからだ」

そういうといなや、上下左右に凄まじい渦を発生させてしつこく追尾する蝶弾にぶちかます。
「なッ!?」
渦の勢いに驚く幽々子に更なる驚きと痛みがーーーーー
「…ゔッ!!??」
左肩の後ろに渦のエフェクトがーーーーー

名乗りこそないが、水の呼吸陸ノ型 ねじれ渦で広範囲のゴーストバタフライの弾幕をかき消した上に漆ノ型 雫波紋突きで幽々子の左肩を突いたのだ。

ついに幽々子に技を与えることに成功した富岡。

「…やるわね。スペルプラクティスというわけね…」
負傷した左肩をおうぎを持った右手で押さえる……

(傷口に凍傷が……あの刀は氷の追加効果があるようね)
幽々子はダメージから富岡が構える刀の効果を瞬時に推理した。

ヒュゥゥゥゥ
幽々子はかつての緋想天の異変の時のように周囲の気質を雪に変えて傷口を凍らせた。


「…いくわよ」
飄々とした幽々子の眼が鋭くなるッ!

「蝶符「鳳蝶紋の死槍」」

本気である。
富岡もただならぬ攻撃と感じたのか、そなえようとするがーーーーー
「……ッ!?」
ビリィ!!!
突如、体が痺れて動きが遅れてしまった。
その一瞬が明暗を分けたーーーーー水色、黄緑、紫の槍と無数の霊魂の弾幕をその身に受ける!!!!!

ーーーーー致命傷。
それを見届けると幽々子はすぐさま【あの力】が込められたスペルカードを詠唱する。

「………ッ!!??」
肩に腹……幽々子に与えたダメージ以上に受けた富岡。

幽々子は油断せず追撃を行う。

 死符「ギャストリドリーム」

無数の蝶弾が瀕死の富岡の命の灯を消そうとおそいかかるッ!!

なんとか水柱としての矜持で避けてはいるが、スペルカードのタイムアップの時間まで耐えきるのは厳しい……
(やはり、俺は水柱にふさわしくなかったのかーーーーー)
(…ここまでか)
富岡の自らの敗北と死を覚悟するーーーーーすると

82生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:56:17 ID:S2qkepAA0
「義勇」

自分の名を呼ぶ懐かしき声に富岡は顔を上げる。

「…ッ!蔦子姉さん…!?…錆兎!?」
目の前に立っているのは、鬼により命を失った富岡義勇の姉、蔦子と同期であり親友の錆兎。
「ど…どうして?」
死んだはずの2人の姿が見えて困惑する富岡。
するとーーーーー

パァァァァァン

「さ…錆兎?」
錆兎に頬を叩かれた富岡は戸惑いながら頬を抑える。

「あの時、言ったこと忘れたのか?」
「お前は絶対死ぬんじゃない」
「姉が命を懸けて繋いでくれた命を。託された未来を」

それは、錆兎との思い出ーーーーー

(ありがとう…錆兎)
「凪」
富岡の間合いに入った蝶型の弾幕全てを一瞬にかき消した。
(…私の弾幕を全てッ!?)
驚愕する幽々子。

(まだやれる!!しっかりしろ!!最後まで水柱として恥じぬ戦いを!!)

水の呼吸は本来、 拾ノ型 までしかない。
つまり、これは富岡が産みだした新たな型。

義勇の間合いに入った術は全て凪ぐ。無になる。

(まずいわ…ここは富岡から距離をーーーッ!?)

静寂の時の中、富岡は幽々子の横を通り過ぎーーーーーー
シュパァァァァァン!
幽々子の首を滑らかに斬りおとした。

【西行寺幽々子@東方Project 死亡確認】

幽々子の首が落ちるのを見届けーーーーー
「蔦子姉さん…錆兎…俺は…」

【E-2/平原/1日目/深夜】

【富岡義勇@鬼滅の刃】
[状態]:負傷(極大) 疲労(極大) 満ち足りた心
[装備]:ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエストVIII いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個
[思考・状況]
基本行動方針:柱として行動し、フラウィを討つ
1:フラウィを討つ
2:煉獄の仇「猗窩座 」を討つ
3:炭次郎達と合流したい(名簿に記載されている煉獄の名前には疑問)

【備考】
柱稽古中、炭治郎に過去を話す前

【支給品紹介】
【ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
硬い刀身に冷気を宿した氷の魔剣
相手に与えたダメージの2/5だけ、ヒャド系の追加ダメージを与える

83生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:57:34 ID:S2qkepAA0














「…満ち足りた穏やかな表情ね」
真夜中の夜空を仰ぎ見るかのように倒れている富岡を見下ろす幽々子。

死符「酔人の生、死の夢幻」
ーーーーー酔ったように生きて、夢を見ているような気持ちのまま死ぬこと

そう、富岡の体は蝶符「鳳蝶紋の死槍」で受けた致命傷で限界を迎えていた。それは、すなわち幽々子の「死を操る程度の能力」から逃れる術はないということだーーーーー

「安心なさい。死後は意外に愉快よ」
そう言うと幽々子は斃れた富岡の体に触れーーーーー
そこから青白いのが飛び出てきた。
ーーーーーそれは、富岡義勇の霊魂。

幽々子の能力で死んだ者は【成仏することができない】

「それじゃあ、行くわよ。富岡。あの寂しがりやな子に満足を与えに」

【富岡義勇@鬼滅の刃 死亡確認】

【E-2/平原/1日目/深夜】

【西行寺幽々子@東方Project 】
[状態]:左肩負傷 霊力消費(中) 
[装備]:月のおうぎ いつもの服装 富岡の霊魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品4個(富岡の支給品X2) ふぶきのつるぎ
[思考・状況]
基本行動方針:気ままに任せているように見せかけて異変解決
1:首輪を対処できるように会場を探索する
2:紫または妖夢と合流できたらしたい
3:避けられる戦闘は避けたい

【備考】
参戦時期は緋想天後
※富岡の霊魂は幽々子の周囲の霊魂と同様に漂っている

【支給品紹介】
【ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
硬い刀身に冷気を宿した氷の魔剣
相手に与えたダメージの2/5だけ、ヒャド系の追加ダメージを与える

【月のおうぎ@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
扇系武器
攻撃力+78、マヒの【追加効果】がある。

84生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 20:58:38 ID:S2qkepAA0
☆彡 ☆彡 ☆彡

「はぁ…はぁ…はぁ…」
息を切らしながらも全力で走っている動物ーーーーー
動物の名はフェネック。 さばんなちほーに生息するフレンズ。

「あの、幽々子というフレンズは危険だわー」
フェネックは先ほどの富岡と幽々子の死闘を草むらに潜みながら観戦していた。

勝負が決したのを見届け、フェネックはその場を離れ、地図上にある馴染みの場所…「さばんなちほー」に向かおうと走っている……

「アライさんは、無事だといいけれど…」
相棒のような存在であるアライさんを心配する。

「でも、ま、生きてるだけでも丸儲けってね。私は生き残るよー」
自然界は弱肉強食、ここは、さばんなちほーで行われる「狩りごっこ」ではなく本当の命の奪い合い。
あの死闘により一匹のフレンズのケツイが定められたーーーーー

【F-2/橋/1日目/深夜】

【フェネック@けものフレンズ】
[状態]:健康 生き残るケツイ
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3個
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを生き残る
1:私は生き残るよー。たとえどんな手を使っても
2:アライさんと合流できたらしたい
3:…かばんさんも幽々子と同じで危険なのかしら?

【備考】
参戦時期は11話でアライさんに付き添い追いかけていたかばんさんと遭遇する前

85生殺与奪の権 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/14(木) 21:02:59 ID:S2qkepAA0
投下終了します。

そして、すみません!
冨岡さんの字が富岡になっているのに今、気づきました。

wikiの方できちんと修正します……(汗)

86 ◆oUF53W6sMM:2021/01/15(金) 01:12:11 ID:MHljLOwM0
投下お疲れ様です!
まさかの義勇さんもここで退場とは……
東方勢、かなりマーダーが多い印象。
そしてフェネックは生き残れるのか……?

アンダイン、マルチェロ予約します

87 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 13:37:13 ID:sVgtKLl60
すみません、予約の延長をお願いします。

88 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:22:12 ID:sVgtKLl60
遅れてしまい申し訳ありません。完成したので投下します。

89 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:22:53 ID:sVgtKLl60
「うむむ……」

「ウゥ……?」

ㅤそこには奇々怪々とした光景が広がっていた。人の姿をした少女が、鬼面の男と向かい合っている。そして、そのどちらともがそれぞれ困惑しているのだ。

「困ったのお。」

ㅤと、困惑を人語に変えるのは鬼面の男――しかしその実はれっきとした人間、トロデ。

ㅤ殺し合いなるものを命じられ、エイトたちとバラバラの場所に飛ばされた地点で彼にとっては相当な窮地である。何せ、ドルマゲスにかけられた呪いにより、その姿は魔物となっている。以前の旅路でも、普段の感覚で町に立ち入ろうものなら、それだけで大騒ぎとなってしまった。ましてやここは、殺し合いの地。トロデ自身に殺し合う気がなくとも、魔物の姿であることは他者との協力において大きな障壁となることは目に見えている。

ㅤまた、トロデ自身に他者と渡り合えるような実力はない。魔物の姿をした自分と、協力的でない者に出会った場合、抵抗もできず殺される未来は安易に想像できる。一刻も早く家臣たちと合流せねば――

ㅤなどと考えながらとぼとぼと歩いていると、一人の少女と出会った。黒髪のロングヘアーを風に靡かせるその姿は、愛娘のミーティアにとてもよく似ている。あの子もはやく馬の姿から戻してやりたいものじゃ、と感慨を覚えながら、その少女に話しかける。しかし、彼女の瞳は確かに自分を捉えているにもかかわらず、まともな返答がなかったのである。

ㅤそして様々、試行錯誤の末に時系列は現在に至る。

90闇夜のモンスターフェスティバル ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:23:48 ID:sVgtKLl60
「もしかして、喋れんのか?」

「ウウゥ……。」

ㅤ少女は答えない。こちらの言葉が通じているのかも、分からない。そのような状況、覚えのないトロデではない。

「まさか……この子も何かの呪いにかかっておるのではなかろうな……?ㅤおのれ、フラウィとやら。このような可憐な娘にまで呪いをかけるとは……。」

ㅤどこぞの花に冤罪をかけながら、配られていた名簿をペラペラと捲る。エイトに、ゼシカに、ククールに……すでに確認済みの家臣の名前を読み飛ばし、目の前の少女と顔写真とを照合していく。そして間もなく、目当てのページを見つけた。

「ふむ、この子の名前はネズコ、というのか。」

ㅤその名を呼ぶと、少女は微かに反応を見せた。言葉が分からないというのとは少し違うようだ。少女は物珍しそうに、トロデの周りをぐるぐると周り、全身をまじまじと見つめている。

「おうおう、大丈夫じゃ。お主のことはワシとワシの家臣で守ってやるからの。」

「ウゥ……?」

ㅤ何らかの呪いを見出した事でいっそう、少女――竈門禰豆子をミーティアと重ねるトロデ。そして、その予想は概ね正しいと言える。禰豆子には原初の鬼、鬼舞辻無惨の呪いが掛かっている。人間に見えるその姿とは裏腹、彼女は鬼である。

ㅤただ、彼女に掛けられた呪いは完全にはその効力を発揮しなかった。睡眠を通じ、鬼の性質の変化を見せた禰豆子は、鬼舞辻の呪いの一部を克服した。禰豆子はもはや他人を問答無用に襲うことはなく、むしろ人間の味方となっている。

「うーむ、それにしてもどうしたものかのう?」

ㅤコミュニケーションを取れない禰豆子をどうしたものか、困惑するトロデ。そんな彼の前にそれは突如として現れた。

91闇夜のモンスターフェスティバル ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:24:26 ID:sVgtKLl60
「――よお、お困りかい?」

「っ……!ㅤだ……誰じゃ!?」

ㅤ新たな声に反応し、サッと振り返るトロデ。そんな彼の視界に映るは、夜の闇に溶け込んだまま凛と立ちはだかる人型の黒い影。トロデは1歩後ずさりしつつも、思い直したかのように禰豆子の前に立ち塞がる。

「まあまあ、そんなにリキむな。チカラ抜けよ。」

ㅤ影の容貌を、月明かりが次第に明かしていく。現れたのは、一体のスケルトン――トロデの世界の常識で言えば、ゾンビ系と呼ばれる類のモンスターだ。"たたかう"手段のないトロデにできるのは、"にげる"ことのみ。しかしこの危機を正しく認識しているか分からない禰豆子がいる手前、その選択肢も無いに等しい。

ㅤただ立ちはだかり、威嚇することによって"おどかす"しか手のないトロデに、スケルトンは1歩、1歩と歩み寄る。そしてその姿が完全にトロデの視界に入るや否や、口という名の空洞を開き、言い放つ。

「――これがホントの、"ホネ"休め――なんてな!?」

ㅤスケルトンは決めポーズをキメた。その見た目と言動、状況と態度の場違いさにトロデは困惑する。

「な、なんじゃあお主は……」

「オイラはサンズ。スケルトンのサンズさ。ほら、せっかく会ったんだ。あくしゅしようぜ。」

ㅤサンズはさらに1歩躙り寄る。トロデも1歩引き下がる。トロデを突き動かすのはモンスターを前にした恐怖感ではなく、得体の知れないものを前にした忌避感。

「安心しろよ。ブーブークッションなんてしかけてないから。」

「そういう心配はしとらんわっ!」

ㅤ声を荒らげ、反論するトロデ。

「こんな時にどこの馬の"骨"とも知らんやつと、気軽に接するわけがなかろう!」

ㅤそれは、無意識の一言だった。しかしそれは、サンズがトロデを気に入るには十分な一言。

「へっ……なかなかやるじゃないか。染みたぜ――ホネ身にな。」

ㅤ再び決めポーズをキメながら、サンズは強引にトロデと握手を交わす。そして、次はトロデの背後にいる禰豆子に手を伸ばす。

「おい、その子は……」

「ウゥ?」

――バキッ!

ㅤすると禰豆子は、唐突にサンズの腕の骨を1本、抜き取った!

「うおっ、これは驚きのアプローチだぜ。」

「だ、大丈夫なのかお主?」

ㅤそして禰豆子は、サンズから引き抜いたホネを横に倒して持ったかと思うと――

「むー!」

――それを、おもむろに口に咥えた!

92闇夜のモンスターフェスティバル ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:25:43 ID:sVgtKLl60
「むー!ㅤむー!」

「……こいつ、イヌかなんかなのか?」

「……ワシもよくわからん。名前だけならネコに近いんじゃがな。」

「むー。」

「まあいいか。ところでどこをめざしてるんだ?」

ㅤ身体を抜き取られておいて、まあいいかで済ませても良いものなのだろうか。疑問は尽きないが、ひとまず質問の答えとして行き先の宛てはトロデにはひとつしか無かった。

「ひとまずはトロデーン城を目指そうと思うのじゃ。ワシの住んでいた城なんでな。家臣との合流もできるかもしれん。」

「しかたないな、それじゃああんたについていってやるよ。わるいニンゲンとモンスターじゃなさそうだし。」

「むー。」

「言っとくが、ワシは戦えんからな。……って誰がモンスターじゃ!ㅤ誰が!」

「え?ㅤあんたどっからどう見てもモンスターだぜ?」

「ええい、ワシはれっきとした人間じゃ!」

「むー。」

ㅤ印象というのは大部分が見た目に由来するため、呪いにかかったトロデを人間であると認識するのは、サンズにとっても当然難しい。トロデも魔物であると誤解されることは仕方ないと割り切っており、そこを深く追及するつもりも毛頭ない。

「まったくもうよい、早く行くぞ!ㅤあと言っとくが、ワシは戦えんからな!」

「だいじょうぶ。オイラがバック"ボーン"になってやるからさ。ホネだけに!?」

「それはもうええわい!」

「むーむー。」

ㅤツッコミを入れつつトロデが試しに歩き始めてみると、禰豆子はとてとてと、背後をついてくる。それを見たトロデはホッとしつつ、そして3人(?)はトロデーン城に向けて歩き出した。

93闇夜のモンスターフェスティバル ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:26:30 ID:sVgtKLl60
――ところで、この場ではある奇跡が起こっていることには、誰も気付いていない。

『――人間は皆、お前の家族だ』

『――人間を守れ、鬼は敵だ』

『――人を傷つける鬼を許すな』

ㅤ禰豆子には、鱗滝左近次による暗示がかかっている。それにより、人間を襲わず鬼舞辻無惨やその配下の鬼には対抗する唯一の鬼と化した。

ㅤしかし、トロデという魔物の姿をした男と、れっきとしたモンスターであるサンズ。そのどちらにも、禰豆子は攻撃しなかった。暗示など、所詮気休めに過ぎないのだと言うこともできるだろう。鬼の知能で人間と鬼の正確な識別は不可能だと、言ってしまうこともできるだろう。

ㅤしかし、可能性の話ならばこう語ることもできる。禰豆子は、普通の人よりもいっそう温かい心を持った2人を、敵でない存在であると認識したのだ、と。

【B-1/平野/1日目/深夜】

【トロデ@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城に向かう
1:エイト達と合流したいのう
2:禰豆子を保護する
【備考】
参戦時期は少なくとも呪いが解ける前です。

【竈門禰豆子@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装 サンズのホネ@Undertale
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:むー
1:緑の人は敵じゃない。
2:青と白のホネは敵じゃない。
【備考】
参戦時期は太陽克服前(喋れるようになる前)です。

【サンズ@UNDERTALE】
[状態]:健康 右腕のホネ1本喪失(自然に治るかもしれません)
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3個
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城に向かう
1:トロデはデキるヤツだな。

【備考】
参戦時期は後続の書き手にお任せします。

94 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/16(土) 23:26:47 ID:sVgtKLl60
投下完了です。

95 ◆oUF53W6sMM:2021/01/16(土) 23:40:55 ID:H013Nx5k0
投下乙でした!
このロワでは珍しい、ほのぼのとしたチームですが、これからどうなるか楽しみです!

96 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/17(日) 01:07:10 ID:QmQRv3E20
アルフィー予約します。

97 ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:00:05 ID:oTQZ0Dw60
投下します

98本物のヒーローの戦い ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:00:46 ID:oTQZ0Dw60
「なかなかに見事な槍捌きだった。だが、この私相手では、遠く及ばなかったようだがな」

聖堂騎士団の騎士団長、マルチェロは、つい先程打ち倒した魚人の少女――アンダインの首元に、漆黒の刀身を当てながらそう投げかける。

「……」

アンダインは俯いたまま、何も答えない。マルチェロはああ言ったものの、実際のところはアンダインが殺し合いの場に呼ばれて動揺していた所にマルチェロの不意打ちを受け、すぐさま支給品の槍を手に応戦したものの、フラウィーの気まぐれにより一般人程度には肉体が強化されているとはいえ、元より死線を超えているマルチェロとの実力差は如何ともし難く。
加えて、戦いの舞台が気温の高いさばんなちほーだった事も相まって、アンダインとマルチェロの戦いはマルチェロの勝利と終わった。

「さらばだ」

そう言って、マルチェロは刀を引く。するとアンダインの首元から鮮血が吹き出し、アンダインの体がゆっくりと後ろに倒れていく。





(私、は……)


アンダインの体から力が抜けていき、視界が狭まるのがわかる。

(パピルス……アルフィー……アズゴア……
私は……もう……ダメ、らしい……)

脳裏に浮かぶのは、自らの弟子、大切なモンスター、そして、自らの主。
皆、この殺し合いに巻き込まれ、どうなってしまうのか、とアンダインは憂いを持った。

特にパピルスは優しすぎる。例えこの男のようにゲームに乗った者に出会っても、笑顔でズタズタにされるのがオチだ。

(私はお前たちの……期待には応えられなかったな……)

そして、アンダインはその生を終わらせる……

筈だった。

99本物のヒーローの戦い ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:01:40 ID:oTQZ0Dw60
(いや……)

「まだ、だ……」
「……ん? 何だと…!」

確実に仕留めた筈の、アンダインの声が聞こえた事に驚愕し、目を見開くマルチェロ。
そこには、明らかな致命傷を負いながらも、それでも尚立ち上がろうとするアンダインの姿があった。

「今にも私の体は……粉々になって砕け散ってしまいそうだ……
それでも、まだこの魂の奥には、何故か力が燃えたぎっている……
私はまだ、死ぬ訳にはいかない…!
今、私がここでお前を止めなければ……お前は他の参加者も殺し尽くす……そうだろう?
夢も……希望も……一瞬で握りつぶす……
だが、この私がさせはしない」

マルチェロを強く睨みつけるアンダイン。そこには、命を賭してもマルチェロを止めようとする、強い『ケツイ』が宿っていた。

「例え……お前が何であろうとも、私が必ず、貴様を打ち倒す!」

『ケツイ』を胸に、顔を上げるアンダイン。
そして、『騎士』は『勇者』へと進化を遂げる。


「……さあ、貴様の本気を見せてみろ」


*ゆうしゃが あらわれた。


胸にハートのついた漆黒の鎧を身にまとい、左目からは眼光が迸るアンダインの姿を見て、マルチェロは口角を上げた。

「……そう来なくては。勇者よ、どこからでもかかってこい!」


初手は、アンダインだった。

アンダインが槍を掲げると、マルチェロの周囲に魔力で作られた槍が現れ、容赦なくマルチェロに襲いかかる。

(その技は先程見た……が、速度も威力も桁違いだ!)

漆黒の刀で槍を弾いていくマルチェロ。しかし威力も速度も急激に増した槍に対応しきれず、何発かは被弾する。

「なるほど、少し貴様を見くびりすぎていたようだな。今度はこちらから行く」

アンダインに肉薄し、切りつけるマルチェロ。アンダインはそれを槍で防ぐと、続けて突きを繰り出す。

「ぐっ……!」

槍が左肩に直撃し、マルチェロは一旦距離を取る。それを追うように、アンダインは槍を掲げ、魔法の槍がマルチェロに向かっていく。
それを見たマルチェロは刀を一旦収め、右手でかまいたちを放つ。次々と消されていく槍。
そして、槍の雨をくぐり抜けた風の刃が、アンダインを襲う。

「……まだだ!」

風の刃を喰らい、一度は吹き飛ばされるも立ち上がるアンダイン。しかし同時に全身に痛みが走り、片膝をつく。
決してマルチェロが何かをした訳では無い。アンダインの体そのものが、壊れそうだったものを無理やり押しとどめたものであるが故に、限界が迫っているのだと。

アンダインが顔を上げると、眼前に大きな火球が迫っていた。咄嗟に回避体制をとるアンダインだが、完全には避けきれず、左腕を火球が飲み込む。

「ぐあああぁぁぁぁ!」

あまりの熱さにのたうち回るアンダイン。回避行動をとっていなければ、一瞬のうちに灰になっていただろう。

(もう……私は長くない……この一撃に、全てを賭ける!)

霞む視界、思うように動かない体。それでもなお、アンダインは立ち上がる。
全てはこの男、マルチェロを倒すために。

「まだ立ち上がるか……良いだろう。私も全力をもって、貴様を葬ってくれよう!」

アンダインはこれまで以上に多くの魔法の槍を生み出し、
マルチェロは祈りを込めて、十字を切る。

「これが私の、ケツイだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「グランド……クロォォォォォス!」

100本物のヒーローの戦い ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:01:57 ID:oTQZ0Dw60
槍と十字が、至近距離でぶつかり合い、大きな土埃を起こる。
やがて、土埃が晴れた先には――

肩で息をし、身体中から血を流しながらも立っているマルチェロ。
そして……




元々瀕死の体だった上に、無理やりケツイの力で砕けそうな体を押しとどめ、更にマルチェロとの戦いにより致命傷を負い、体がケツイの力に耐えられずに体が殆ど溶けているアンダインの姿があった。

(くっ……
これほどまでの力を持ってしても、届かなかったか……!
だが……)

段々と溶けていく体、薄れゆく意識の中でも、アンダインは希望を捨てない。

――きっと、私のように殺し合いに肯定意見を持たない者達が、この男やフラウィーを止めてくれるだろう。

そう、自分のように、殺し合いに反旗を翻そうとする者達に、自らの希望を託し。
アンダインは笑顔で、その命を散らした。

【アンダイン@UNDERTALE 死亡】
【残り32人】




「終わった、か……」

マルチェロは息を吐き、その場に座り込む。
アンダインを倒したとはいえ、自らも無傷ではない。
すぐさまベホイミで自らの傷を癒そうとするが……

(回復力が……明らかに落ちている……!
糞っ、フラウィーとやらめ、何をした……?)

フラウィーの手により、回復力の落ちた呪文を見て、苛立ちを覚えるマルチェロ。

(いや……ひとまず落ち着け。私が最優先で殺すべきはククールだ。変にあの花に当たっても仕方ない)

この殺し合いには、自らの居場所を奪った、憎きククールも呼ばれている。
少なくともククールは自らの手で殺し、最終的には優勝を目指すというのに、こんな所で苛立っていては先が思いやられる。

十数回の詠唱を経て、ようやくある程度まで回復したマルチェロは立ち上がり、アンダインの支給品を手に、優勝するというケツイを定めたのであった……




【G-2/さばんなちほー/一日目/深夜】
 
 
【マルチェロ@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
[状態]:槍による刺し傷(中、ベホイミである程度回復)、MP消費(中)
[服装]:騎士団長の服
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:ゲームに乗り、優勝する
1:ククールは自らの手で殺す
[備考]
参戦時期は後続の書き手様にお任せします

101 ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:02:13 ID:oTQZ0Dw60
投下完了です

102 ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:03:29 ID:oTQZ0Dw60
修正です
【残り32人】→【残り33人】

103 ◆oUF53W6sMM:2021/01/17(日) 16:22:34 ID:oTQZ0Dw60
また修正です
マルチェロの持ち物に、不明支給品0〜4(うちアンダインの支給品0〜2)、英雄の槍@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
を追加します

104 ◆NYzTZnBoCI:2021/01/20(水) 14:10:33 ID:Bo5k7KLA0
自作「✱ケツイが みなぎった」について修正させていただきます。

その言葉を最期にアズゴアの呼吸が停止する。→ その言葉を最期にアズゴアの呼吸が停止し、体が塵と化す。

でお願いします。

105 ◆2zEnKfaCDc:2021/01/20(水) 21:26:48 ID:SHWkCxrw0
すみません、予約を破棄します。

106 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/20(水) 23:07:50 ID:WuzCEMcU0
竈門炭治郎予約します

107 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/21(木) 01:46:40 ID:FRuF94Io0
投下します。

108一かけらのユウキ ◆vV5.jnbCYw:2021/01/21(木) 01:47:13 ID:FRuF94Io0

ここは、会場の最南端。
潮風が吹き、波の音が聞こえる。
雰囲気を作るためか、ヤシの木まで生えている。
上を見上げれば、雲一つない青空と、眩しく輝く太陽。


輝く青と緑に覆われたこの地にいれば、高揚した気分になれるはずだが、そんなわけにもいかなかった。
事実、この地に降り立つことになった、市松模様の服を着た少年も、表情に憤りを見せていた。

(絶対に許さない……。)
少年の名は竈門炭治郎。
人に仇名す鬼を殺す、「鬼殺隊」の一員である。

(ふらうぃ……とか言ってたな。あいつも鬼なのか?それとも別の生き物なのか?)
このような醜悪な催しを開き、そして平然と人を殺す。
やっていることは卑劣な鬼と変わらないような気もするが、花の姿をしたフラウィーは、炭治郎から見ても異質な存在だった。


(そうだ…。)
炭治郎はフラウィーに言われた言葉を思い出し、いつの間にか肩にかかっていた鞄をひっくり返す。
様々な物が出てくるが、彼は真っ先に手に取ったのは名簿だった。


(禰豆子!?善逸!?伊之助!?義勇さん!?)
本をめくってみると、最初のページに妹、同期の鬼殺隊、そして自分を鬼殺隊に導いてくれた人物の名前が一度に載っていたことに驚く。
だが、それ以上に炭治郎が驚くことがあった。

(煉獄さん!?それに……累だって?)
名簿の下の方には頸を斬られて、灰に帰したはずの下弦の鬼、累の名があった。
さらに、かつて共に任務へ向かい、上弦の鬼との戦いで命を落とした炎柱、煉獄杏寿郎。
何の因果か、その煉獄杏寿郎を殺した鬼にして、絶対に殺さなければならない猗窩座までも。



(どういうことだ!?まさか、死んだ人や鬼を生き返らせたのか!?)
そんなことは鬼の首魁、鬼舞辻無惨でさえ不可能なはずだ。
花の怪物のしでかした恐ろしさに、死線を潜り抜けてきた炭治郎の背筋も寒くなる。


とりあえず、鬼である累、猗窩座に注意を払いながら、善逸達を見つけ、ともにこの不気味な世界から脱出しようと決めることにした。
幸いなことに、自分や他者を守るための武器は見つかった。


(日輪刀とは違うみたいだな……。)
鬼殺隊が使い慣れている刀とは異なる、両刃のデザインに違和感を覚える。
(いや、武器だけじゃない。何か、違う。)


この世界から、いつもの野山とは全く異なる臭いを感じ取った。
ありふれた嗅覚の持ち主ならそうしたものは感じないはずだが、人の怒りまでも臭いで嗅ぎ取れる炭治郎は違っていた。

そこら中から、薄っすらとだが血のような臭いが漂ってきた。

109一かけらのユウキ ◆vV5.jnbCYw:2021/01/21(木) 01:48:21 ID:FRuF94Io0

「おーーーーい。」
嗅ぎ慣れぬ空気の臭いに困惑していたところで、近くから人の声が聞こえて、炭治郎はその場所に走っていく。

そこにいたのは、草原に不似合いな雪だるまだった。
かつて雪がよく降った自分の故郷、雲取山で今は亡き弟達と、雪だるまを作った記憶が蘇る。
しかし、その雪の塊は溶けかけていた。
冬になると毎年雪が積もる雲取山と違って、むしろ暑いくらいなこの辺りでは、逆に溶けていた方が当たり前かもしれないが。


声の主を探して、雪の塊に近い形状になっていたそれの近くを見回す炭治郎。
「違う違う。キミを呼んだのは、ボクです。」
「え!?」

一瞬驚くが、雪だるまを見つめる。
「俺は鬼殺隊の、竈門炭治郎。君は?」
「ボクは、ゆきだるまです。気が付いたら、こんな暑いところにいました。せかいじゅうを旅したいからって、こんなの、あんまりです。」

こんな所で溶けかけて、大丈夫なのか、と思っていたらその心配は当たっていたようだ。

「し、しっかりしろ!俺が……どうにかするから……。」
どうにかする、と言っても、解決策は見当たらない。
死と隣り合わせな鬼殺隊である以上、最低限の応急処置の技術は身に着けているが、それはあくまで人間のためのものだ。


「キサツタイさん。ボクのからだから、雪をとってください。」
今もなお溶けつつある雪だるまは、自分をバラバラにしてほしいかのような言葉を発した。

「でも……それって……。」
雪ダルマごと入るほど大きな鞄ではないが、欠片なら入る。
だが、それでいいのだろうか。

「いいんです。ボクのかけらを、スノーフルって雪山に返してくれれば。」
「……。」
最早雪の塊になるのも時間の問題な彼から、何も言わずに一掴み体を取る。

「ありがとう。それはきっと、溶けません。
そうだ。きっと彼もこの世界に呼ばれているかもしれないです。」

「彼?」

「紫と青のシャツの男の子です。彼と、友達になれると思いますよ。名前は……。」
最後に、かつて同じように自分のカケラを渡した少年、フリスクの名を告げようとする。

名前を言おうとした瞬間、形が崩れて雪の塊になってしまった。
それもそう長くないうちに溶け切ってしまうはず。


「ありがとうございます。この欠片、大事にします。」
白い塊に祈りを捧げ、心優しい少年は歩き出した。


しかし、忘れてはならない。
噂の相手と、実際の相手が似て非なる存在である可能性も。

【G-8/草原/1日目/深夜】

【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]:健康 フラウィーへの怒り
[道具]:基本支給品一式、兵士の剣@DQ8 雪だるまのカケラ@Undertaleランダム支給品0〜2

[思考・状況]
基本方針:禰豆子・善逸・伊之助・義勇さん・煉獄さんを見つけ、フラウィーを倒す
1:雪だるまが言っていた少年(フリスク@Undertale)も探す
[備考]
参戦時期は半天狗撃破後、無惨襲撃前の間です。


【支給品紹介】
【兵士の剣@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
竈門炭治郎に支給された剣。
トロデーン城の兵士が城を守るために渡される武器である。
あまり強いとは言えないが、使い方次第で強力な技を使うことができる。

【雪だるまのカケラ@Undertale】
炭治郎に託されたSnowman/雪だるまの一部
食べると体力が大きく回復する。現実の雪と違い、時間経過だけでは溶けない

【NPC紹介】
【雪だるま@Undertale】
G-8に一体だけいた、その名の通りの雪だるま。既に溶けてしまっている。
原作でも、雪だるまのカケラをフリスクに託してくる。
食べるか、ずっと持ち続けるか、さらにカケラを取るかはプレイヤー次第。

110一かけらのユウキ ◆vV5.jnbCYw:2021/01/21(木) 01:48:51 ID:FRuF94Io0
投下終了です。
今回はNPCとして雪だるまを出しましたが、何か問題がありましたら破棄します。

111 ◆oUF53W6sMM:2021/01/23(土) 17:50:40 ID:/lVuU.IY0
投下お疲れ様です!

炭治郎、鬼の王からの登場も懸念されましたがひとまず安心。
しかし、フリスクに会った時にどうなるかが不安ですね…

112 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/28(木) 18:30:26 ID:NDPucsdQ0
エイト、煉獄さん、キャラ予約します

113 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:39:26 ID:r0GyRMpw0
投下します。ただしその前に前回の作品に不備を発見したので訂正を。


ここは、会場の最南端。
潮風が吹き、波の音が聞こえる。
雰囲気を作るためか、ヤシの木まで生えている。
上を見上げれば、雲一つない青空と、眩しく輝く太陽。


ここは、会場の最南端。
潮風が吹き、波の音が聞こえる。
雰囲気を作るためか、ヤシの木まで生えている。
上を見上げれば、白く輝く満月。

114 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:39:42 ID:r0GyRMpw0
では、改めて投下しますね

115宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:40:18 ID:r0GyRMpw0
「何だ……これは。」
トロデーンの兵士、エイトがこの地に降り立って一番初めに発した言葉だった。
そこにあったのは、木で作られた家。
ただの家ではなく、蜘蛛の糸にぶら下げられていたのだ。
「蜘蛛の巣」という言葉はあるが、糸に絡まっているのはどう見ても人間の家だ。


ここに誰かいたのか?
いくら異様な場所にあろうと、家は家。
人の住処という役割は成しているはずだ。
しかし、下からむき出しになった家の中を覗いてみるも、その予想に反して、そこには誰もいなかった。


「誰もいない……か。」
かつてとある蜘蛛鬼が住んでいた家を確認すると、今度は鞄から支給された名簿を取り出し、知り合いが誰かいないか確認する。
自分だけではなく、ゼシカまでこの戦いに呼ばれていた以上、他の仲間や知り合いが呼ばれているかもしれないと思ったからだ。

あるページに、自分の知り合いたちの名前が載ってあった。
ククールやゼシカは、元の世界でも頼れる仲間だった。
実力はよく知っているし、殺し合いに乗るようなこともない。

問題はあとの二人。
自分が仕える王にして、恩人でもあるトロデ王。
腕のほどには自信はあると嘯いていたが、やはり心配なことはこの上ないし、近衛兵の名に懸けて守らなければならない。

仲間のククールの義兄であったマルチェロ。
成りあがるためなら何でもするような男だ。
奈落の祭壇で一度は助けてもらったにしろ、死闘を繰り広げた相手でもある。
この世界でも味方と考えるのは、聊かそう急すぎるだろう。


次に鞄から出したのは、大きくて真っ赤な槍だった。
少し大きいかもしれないが、扱うのに難儀するほどでもない。
先端が三つ又に分かれているのは、サザンピークの宝物庫にあったバトルフォークを彷彿とさせるデザインだ。

最後に、地図を取り出す。
なぜこの世界にトロデーン城があるのか分からないが、自分が知ってる地名がここだけである以上、他の仲間やトロデ王も向かうことになるはず。
少なくとも、今自分がいる得体のしれない山の中に留まるということはないだろうとエイトは結論付けた。


行動方針を固め、まずは山を下りようとしたところで、自分の居場所に向かってくる足音が聞こえた。

116宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:40:38 ID:r0GyRMpw0

「誰ですか?」
エイトが足音の方向を向いて呼びかけると、そこにいたのは一人の子供だった。
まだ性の分かれ目がはっきりするほどの年齢でもないためか、少年か少女かは分からない。

「私はキャラ。友達と遊んでいたら、こんな所にいたの。お兄さん、連れて行ってくれない?」

「はい。私は仲間を集めるために、トロデーン城へ向かうと思うのですが、それでいいですか?」
キャラはにこりと微笑み、エイトの後ろをついていく。


それから二人は言葉を交わし、互いの知り合いについて聞いた。
子供の知り合いに、トリエルとアズゴアという育ての親が参加させられているらしい。
地下世界、というのは聞いたことがなかったが、自分にとっての闇の世界のような場所ということにしておく。


(こんな所に一人で、心細かっただろうな。)
強張っていたエイトの表情が僅かながら緩む。
エイトは、困っている人は見捨てられない性格だ。
勿論、兵士という職業であるからこそ王トロデと王女ミーティアの命こそ優先するが、街中で誰かから仕事を頼まれれば引き受けてしまう。
例え旅の途中で襲ってきた山賊でさえも、橋から落ちかけていれば助けてしまうほどだ。


この世界でもそれは変わらず、キャラを連れていくことにする。


その先でエイト達を待ち受けていたのは、山らしいと言えば山らしい、非常に足場の悪い道だった。
おまけに暗いため、エイトでさえも足元に気を付けないと落下しそうな山だった。
「キャラさんは、歩けますか?」
「うん。なんとか。」

こんな道を歩いていても怖がるどころか、弱音一つ吐かないキャラに感心しながらも、エイトは一つ思いついたことがあった。

「ちょっと待っててください。」
エイトが手刀でそこそこの大きさの枝をへし折り、その先にギラの魔法で火をつけた。


(……!?)
ずっと同じ表情を浮かべていたキャラが、一瞬だけ表情を変える。
「驚きましたか?熱と閃光の魔法です。これで少しくらい歩きやすくなったかなと。
それと少し離れてついてきて下さい。二人まとめて襲われるかもしれませんが、離れていればこれを持った私だけが狙われます。」
「ありがとう。お兄さん優しいね。」

再び微笑みを浮かべ、エイトを褒めるキャラに、少しだけ照れくさそうな顔をする。
しかし、この時青年は知らなかった。
人畜無害な表情をした子供が、想像もつかないような残酷さを秘めていたことを

117宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:41:36 ID:r0GyRMpw0



同じ哪多蜘蛛山での異なる場所。

(ここは……一体どこだ?)
鬼殺隊の炎柱、煉獄杏寿郎は辺りを見渡す。
那田蜘蛛山は彼のいた世界から転移した場所だったが、訪問したことのない彼にとっては、聞いたような場所という程度だった。

(そうだ……俺は列車に乗っていて、気が付いたらここに……。)
彼は無限列車に出たという鬼を、同じ鬼殺隊と共に倒しに来ていた。
だが、いつの間にやら殺し合いに参加させられていた。


名簿を読むと、自分のみならず同じ列車に同席していた3人の鬼殺隊と、そのうち一人の鬼にされた妹もいた。


「やめてええええええ!!助けてええええええ!!!」
遠くから子供らしき声が聞こえて来た。
殺し合いに乗ったいぶせき輩がいるということは、煉獄でなくても分かることだ。

(こうしちゃいられん。よもやよもやだ!!)
世界が変わっても彼のすることは変わらない。
亡き母に言われたように、弱気を助け強きをくじくだけだ。
助けを聞き、すぐに猛火のごとき勢いで走り出す。


この時、彼は急な状態が続いたため、焦っていた。
異様な力を持つ鬼と何度も戦った煉獄でさえも、ここまで凄まじい力を使った鬼は見たことがない。
そのため、わずかながら冷静さを欠いていた。

あくまで僅かながらだが、それが争いを生むことになるとは予想も出来なかった。





その頃、エイトとキャラは、まだ山道を続いていた。
とはいえ、道は先ほどより広くなっていた上、エイトの松明が道を照らしていたので、意図していない限りは崖から落ちたりすることはない。

そう、意図しなければ。


何度目か、エイトはキャラが付いてきているか否か確認した時だった。


「やめてええええええ!!助けてええええええ!!!」
(!?)
突然、キャラが崖から飛び降りた。
まるで誰かに襲われているかのような口調と共に。


一瞬何が起こったか状況を受け止められず、エイトは硬直してしまう。
それはほんの僅かな時間だったが、彼にとって最悪な事態を招いてしまうことになる。
彼の冒険の途中で言えば、オディロ院長やメディばあさんが殺された時のように。一瞬の戸惑いによる足止めが、取り返しのつかなくなることはある。


すぐにやって来たのは、炎を彷彿とさせる男だった。
反射的に背の槍に手をかける。

「今、この辺りで子供の悲鳴が聞こえた。何か知っているのか!!?」
金髪の男は夜の山道でも分かるほど鋭い眼光で見つめる。
猛禽類か何かのようなその眼光には、自分への疑いが含まれていた。


「ええ。そこから私の連れていた子供が……」

118宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:42:42 ID:r0GyRMpw0
冷静さを取り戻し、キャラのいた方向に指をさす。


しかし、エイトの松明の光を浴びて、そこにはあるものが落ちていた。
血が付いた、一本のナイフだ。


「これは……どういうことだ!!」
ナイフを見つけたのは二人同時だった。
だが、煉獄はそれを拾い、エイトに突きつける。


(!?)
「君は子供をナイフで脅し、崖から落とした。そうではないか!?」
「違い……。」


―――――炎の呼吸、壱の型 不知火

まるで炎と一体化したかのような速さで、金髪の男はエイトに襲い掛かった。

「ッ!!」
慌てて槍の柄で受け止める。
「まさか人間までも殺し合いに乗っているとは……。」
「違います!!聞いてください!!」
「じゃああのナイフは何だというのだ!!助けてくれと叫んでいたのは誰に襲われたというのだ!?」


焦りは焦りを生み、やがては暴力を生み、それは更なる焦りを生む。


「やむを得ない……。五月雨突き!!」
――――炎の呼吸、肆の型 盛炎のうねり


エイトが放たれた四連撃を、巨大な円運動で全て打ち払う。

焦りか、はたまた激しい運動をしたからか。
むしろ涼しいくらいの山中で、エイトの顔はじっとりと汗でぬれていた。




【D-3/那田蜘蛛山/1日目/深夜】

【エイト@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
[状態]:健康 焦り
[装備]:アズゴアの槍@undertale いつもの服
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城へ向かう ゼシカ、ククール、トロデと合流する
1:あの子ども(chara)は何をした?
2:金髪の男(煉獄)を止める
【備考】
参戦時期はラプソーンを倒した後、ミーティアの結婚式へ向かう前です

【煉獄杏寿郎@鬼滅の刃】
[状態]:健康 エイトへの敵意
[装備]: 楼観剣@東方projectいつもの服装、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:鬼殺隊と共に、フラウィーと殺し合いに乗った者を倒す
1:子供を崖から落とした男(エイト)を倒す。
2:落ちた子ども(キャラ)を助ける
【備考】
参戦時期は無限列車に乗った直後
キャラとの会話で、地下世界やトリエル、アズゴアのことについて知りました

[支給品紹介]
アズゴアの槍@undertale
エイトに支給された、地下世界の王アズゴアが使っていた、赤い三つ又の槍

楼観剣@東方project
煉獄杏寿郎に支給された武器
妖怪が鍛えたとされる刀で、強力な力を秘めるが長いため並の人間には扱えない。

119宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:43:30 ID:r0GyRMpw0




彼らが戦いを始めた頃、キャラは持っている支給品で安全に着地していた。
「中々いい道具だな。これは。」

キャラが持っていたのは半天狗という鬼の一部が持っていた、大人の掌くらいある葉の団扇。
持ち主が好きなように風を起こすことができ、今のように風を起こして落下の衝撃を抑える気流も、人を吹き飛ばすほどの強風も起こせるという。


彼がエイトを嵌めるために使った道具は、これだけではない。
二つ目にあったのは、参加者の場所を認知できる首輪レーダー。
最初にエイトに出会ったのも、偶然ではなく場所を知ってのものだった。
そして別の人物が近づいてくるタイミングを見計らって、崖から飛び降りた。


そして最後に、投げナイフのセット。
説明書を見る限りはどこやらのメイドが持っていたそうだが、投擲には使わなかった。
エイトという男は相当の手練れのようだし、何より自分の本心がバレてしまう。
そのうちの一本で自分を傷つけ、血を付けたまま崖の近くに置いておいたのだ。


上から金属をぶつけ合う音が聞こえるため、予想通りになっていたことが伺える。
下から見えていても飛び散る火花が見えるほどなので、早くも白熱した戦いが始まっていることを察するのは容易だ。

(しかし……。)
キャラには、一つ疑問に引っかかることがあった。

(フラウィー、いや、アズリエルか。君は何を考えている?)
彼は意図的に病を患い、地上に戻った後、地上の人間に友人であるはずのモンスター、アズリエルを殺してもらうことを考えていた。
そして新たに地下世界に落ちてきたニンゲンのEXPとLOVEを用いて復活し、その時こそフラウィーもろとも世界をめちゃくちゃにしようと画策していた。


だが、自分は異なる形で復活した。
しかも、得体のしれない首輪まで付けられて。


(まあ、面白そうな場所だから、楽しませてもらうことにするか。)
とはいえ、この世界は自分が望んだ世界だということも事実。
好き放題人間を殺し合わせて時には自分も殺しに参加し、優勝してから事の詳細を聞けばいい。

「いつの世でも、皆死者にだけは優しいのだからな。」
子供らしく純粋に笑いながら、その場所を去った。




【キャラ@UNDERTALE】
[状態]:健康
[装備]:可楽の団扇@鬼滅の刃  十六夜咲夜の投げナイフ9本@東方project
道具]:基本支給品- 首輪レーダー@バトルロワイヤルシリーズ
[思考・状況]:フラウィー、何をしたい?
基本行動方針:殺し合いを楽しむ、最後には優勝する。その途中で首輪は解除したい。
戦時期はGルートで、復活する直前です。
※エイトとの話で、知り合い(ゼシカ、ククール、トロデ、マルチェロのことについて知りました)

[支給品紹介]
可楽の団扇@鬼滅の刃 
上弦の鬼 半天狗の分身のうち一体が持っていた葉の形をした扇。
振ると強い風を起こすことができる。

首輪レーダー@バトルロワイヤルシリーズ
キャラに支給された、小型サイズのレーダー。
首輪に反応し、参加者がどこにいるか知ることができる。索敵範囲をある程度広げることも可能(最高で直径1マスくらい)

十六夜咲夜の投げナイフ@東宝project
紅魔館のメイド、十六夜咲夜が持っていたナイフ。10本1セットで、細いデザインで投げるのに適している。

120宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 15:43:41 ID:r0GyRMpw0
投下終了です

121宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/29(金) 16:03:47 ID:r0GyRMpw0
すいません。キャラの状態表に訂正を

健康→右腕に切り傷

122宵闇花火 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/30(土) 00:32:50 ID:6rvtasUc0
度々申し訳ありません。コピペ漏れがあったので加筆


>>118
冷静さを取り戻し、キャラのいた方向に指をさす。


しかし、エイトの松明の光を浴びて、そこにはあるものが落ちていた。
血が付いた、一本のナイフだ。


「これは……どういうことだ!!」
ナイフを見つけたのは二人同時だった。
だが、煉獄はそれを拾い、エイトに突きつける。


(!?)
「君は子供をナイフで脅し、崖から落とした。そうではないか!?」
「違い……。」

煉獄はすぐにナイフを投げ捨て、代わりに支給品の長剣の柄を握りしめる。

―――――炎の呼吸、壱の型 不知火

まるで炎と一体化したかのような速さで、鬼殺の柱はエイトに襲い掛かった。

「ッ!!」
慌てて槍の柄で受け止める。
「まさか人間までも殺し合いに乗っているとは……。」
「違います!!聞いてください!!」
「じゃああのナイフは何だというのだ!!助けてくれと叫んでいたのは誰に襲われたというのだ!?」


焦りは焦りを生み、やがては暴力を生み、それは更なる焦りを生む。


「やむを得ない……。五月雨突き!!」
――――炎の呼吸、肆の型 盛炎のうねり


エイトが放たれた四連撃を、巨大な円運動で全て打ち払う。

焦りか、はたまた激しい運動をしたからか。
むしろ涼しいくらいの山中で、エイトの顔はじっとりと汗でぬれていた。

123 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/30(土) 11:44:13 ID:dI2ofkTw0
皆様投下お疲れ様です ^^) _旦~~

闇夜のモンスターフェスティバル
とても微笑ましいパーティが結成されましたね。
竹筒を咥えていない禰豆子はどうするのか?と思っていたらサンズの骨を咥える禰豆子(笑)
読んでいて瞬時に頭の中でイメージができました!
今後の展開が楽しみです!

本物のヒーローの戦い
アンダイン…無念だろうが、マルチェロに立ち向かう姿は正にヒーロー(ゆうしゃ)でした!
アンダインのケツイを引き継ぐ者が現れてほしいものです。

一かけらのユウキ
雪だるまの願いを引き受ける炭治郎の優しさ、素敵です。
パロロワ特有の参戦時期の違い…フリスクと出会ったときの長男がどうなるのか…注視です!

感想有難うございます(*´▽`*)

生殺与奪の権
始めはほんわかな幽々子様と幽々子の言動にツッコみながらも同行する富岡さんにフェネックを想定していたのですが、
2zEnKfaCDc様の「人の形弄びし――」を読んだ際、「この展開だ…ッ!」と路線変更しちゃいまいました。
すまぬ…富岡さん(/_;)
本当にまだまだ勉強中で皆さまのバトル描写や表現方法を学んでいきたいと思います。

パピルス・ククール・マクロファージで予約します。

124 ◆s5tC4j7VZY:2021/01/30(土) 11:48:22 ID:dI2ofkTw0
すみません!感想で抜けておりました……

宵闇花火
純粋な子どもほど、怖ろしいのはありませんね…
誤解して対峙した煉獄さんにエイト…目が離せませんッ!
タイトルがまた良いですね(*‘∀‘)

125教えて!マクロファージ先生! ◆s5tC4j7VZY:2021/01/31(日) 16:59:27 ID:DKElCkx60
投下します。

126教えて!マクロファージ先生! ◆s5tC4j7VZY:2021/01/31(日) 17:00:28 ID:DKElCkx60
「さて…どうしましょうか…」
憂いを見せる女性ならぬ細胞……
名はマクロファージ。
白血球の一種で見つけた異物を貪食して抗原や免疫情報を見つけ出し、それを樹状細胞に連絡するのが仕事 。
また、死んだ細菌や細胞も片付ける掃除屋の役割も兼ねている。

「とりあえず、この場所は人体さんではないということね」
当然だが、マクロファージ達、細胞は本来体内を守る存在。
体外で活動するなんてことは一生ないはず…だった。

「地図を見る限り、心臓…おそらく他のみんなもそこへ向かうはずね…」
名簿の確認後、地図を広げたマクロファージは自分と同じくこの殺し合いと言う狂宴に招かれた細胞達が向かうのではと推測した……

二そお」
ンこい
ゲのッ
ン !



「え!?」
呼び止める声に振り向くマクロファージ。

呼び止めた声の主は骸骨の男。
名はパピルス。
王国騎士団【ロイヤルガード】の一員となることを夢見るモンスター。


にのあま」
あ二いさ
うンつか
とゲい ッ
はンが!

ニャハハハハハ!パピルスは口癖を発しながらるんるんスキップの足取りでマクロファージに近づく。

「…残念だけど、私は【人間】じゃないわ💗」

え」



女性の言葉に呆気にとられるパピルス……

☆彡 ☆彡 ☆彡

127教えて!マクロファージ先生! ◆s5tC4j7VZY:2021/01/31(日) 17:06:12 ID:DKElCkx60
「…まったく、世の中は新鮮なおどろきに満ちてるよ。うれしくもなんともないけどな!」
自らの置かれた状況に怒りながら名簿を確認している男…
男の名はククール。
マイエラ修道院の【聖堂騎士団】の一員 。
孤児となったククールを育てた恩師オディロ院長がドルマゲスの手により命を奪われ、敵討ちの名目でエイト達のパーティーに加わった。
「エイトにゼシカ、トロデ王と…おいおい、おっさんはハブられてるじゃねえか…」
ヤンガスの名前が無いことに気づき、ぼやく。
「そして、【あいつ】か…」
ククールがいうあいつとはマルチェロのことだ。
共に育った異母兄にあたる。
法皇へと登りつめた男。

「あいつはオレがとめてやらなくちゃな…」
おそらく、殺し合いに乗っているであろう兄を止めるべくククールはケツイを定める。

「とりあえず、トロデーン城へ向かうか…?」
ククールは仲間が向かうであろう城を目指すか方針を考えていると……
「ん?あれは、モンスターが美女を襲っている!?ッ!助けなければ!!」
ククールは支給品の愛刀であるしっぷうのレイピアを装備し、疾風の如く現場へ向かう!!

☆彡 ☆彡 ☆彡

さではマ つ」
いは二ク ま
ぼなンロ り
うくゲファ!
か ンー
   ジ

パピルスはマクロファージの説明を聞いて、うんうんと顔を何度も頷いた。

「私も、人体さんから出たことがないから外の生き物と出会うのは初めてよ」
一方、マクロファージも始めて出会う外の生物が骸骨男であることに表情は笑顔だが、驚きを隠せない……

はでさじゃ二お」
じあいな ンれ
めうぼく ゲも
てのう   ン
だはと


「……」

かきなど」
?ににう
 なかし
 る た
」  ?

考え込むように顎に手を添えるマクロファージにパピルスは質問する。
「ちょっと、パピルスちゃんは話し方が独特ね…うん💗先生が教えてあげるわ♪」
一人納得をしたのかポンと手を置くと笑顔でパピルスに近づきーーーーー

☆彡 ☆彡 ☆彡

128教えて!マクロファージ先生! ◆s5tC4j7VZY:2021/01/31(日) 17:08:06 ID:DKElCkx60
「なぁ?先生?オレ喋り方変じゃない?」
「ええ♪聞き取りやすくなったわ💗」
マクロファージには、赤芽球を育成して赤血球 に育て上げる先生としての側面を持つ。
パピルス独特の喋り方はマクロファージの教育によって多少変化が見られたようだ。

「そうか!お礼に今度、オレさまのパズルを一番に挑戦させてやる!」
「あらあら…楽しみにしておくわ♪」

「おい。そこのモンスター。女性から離れろッ!」
ビュッ!突きがマクロファージとパピルスの間を横入る。

「大丈夫ですか?安心してください。そこのモンスターは直ぐにオレが退治しますから」
銀髪の男…ククールはマクロファージの肩に手を添えながら語る。

「おいッ!危ないじゃないか!!」
ぷんすかぷんすかと怒りを見せるパピルス。
「ほう…モンスターが一丁前に言語を話すとはな!」
「くらいなッ!バギ!」
小型の竜巻がパピルスに襲い掛かる。
パピルスは支給品のバトルフォークの先を地面に食い込ませて吹き飛ばされないように耐えきる。

「ヒュ〜。やるね」
モンスターとは思えない機転にククールは素直に称賛する。

「おい!危ないし、痛いじゃないか!!」
バトルフォークを構えると……
「ん?この形状…スパゲティを食べるのにいいかも?」

※それは食用ではありません。

「…調子が狂うな。だが、手加減はしないぜッ!バギ…」
ククールはさらなる呪文を唱えようとする。
「させないッ!」
バトルフォークの切っ先がククールの頬を掠め呪文は中断された。

「ちょっと。お互いやめなさい!」
マクロファージは戦闘を始めた両者を制止する声を投げかける…が。

「こっちも本気でいくぜ」
「パピルスさまを甘く見ていると痛い目に遭うぞッ!」

互いの死闘が今!始まろうとーーーーー

ガギィィィィン!!!!!!

「なッ……!?」
「えッ!?」

ククールとパピルスの突きを受け止めたのは、斧…そうキングアックスを装備したマクロファージ。

「ストップ💗お互い動いちゃダメよ♪」

二人の間を遮るように仁王立ちだが、あらあらうふふの表情のマクロファージ。

「先生!?でも…」
「しかし、麗しきレディ!こいつはモンス…」
「喋るのも禁止💗」

「「……」」
有無もいわせないマクロファージの天使の声。

「もう…いいわ。きちんと説明するわね…」

かくかくしかじか……

☆彡 ☆彡 ☆彡

「そうなると、俺の体にもマクロファージさんがいるのかッ!?」
マクロファージから細胞の事を学ぶとククールは驚愕する。

「ええ。理解が早くて助かるわ♪ククール君」

「おい!キザ男!!それより先にオレに言うことがあるんじゃないか?」
腕組しながらククールに言葉を投げかける……

「キザ男!?…悪かったよ。ガイコツ君」
ククールはパピルスに頭を下げるーーーーー

「はい♪ククール君えらいわ💗」
2人が仲直りできたのを確認し終えたマクロファージはその豊満な双丘 でククールを埋める。
「お…おい。マクロファージさん!?何を…?」
孤児で育ったククールの瞳の奥の寂しさを感じ取ったマクロファージはククールを教育するようだ。

「うふふ…ククール君は寂しいのね」
マクロファージはククールの耳元で囁く……

「先生?何するんだ?」
「パピルスちゃんは、目を閉じていてね♪」
「?何だかよくわからないけど…分かった!」
パピルスは言うがままに目を瞑る。

「まじかよ…」
口ではそういうが、満更ではないククール。

「安心して…私にまかせてね💗」

マクロファージの水風船が……

129教えて!マクロファージ先生! ◆s5tC4j7VZY:2021/01/31(日) 17:09:59 ID:DKElCkx60
「そーれ💗ぱふぱふ。ぱふぱふ。ぱふぱふ、ぱふぱふ………」

☆彡 ☆彡 ☆彡

「うーん。ずーっとここで、ぱふぱふしてもらいながら一生を終えるのも悪くないな」
冗談なのか本気なのかマクロファージによる「ぱふぱふ」を受けてククールは呟く。

「もう、目を開けていいわ、パピルスちゃん♪」
「そうか?…ん。キザ男はどうしたんだ?」
パピルスは天国へ昇天しかけているククールを指さしながら訊ねる……

「ふふふ…さぁ?」
マクロファージはあらあらうふふ…のご様子。

「それにしても、マクロファージさん…あんたは細胞なんだろ?どうして、ぱふぱふを…?」

ククールの疑問にマクロファージは人差し指を口元に寄せて答えたーーーーー

「乙女にはヒミツの1つや2つあるものよ💗」

【C-7/平原(橋前)/1日目/深夜】

【マクロファージ@はたらく細胞 】
[状態]:健康
[装備]:キングアックス  いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2個
[思考・状況]
基本行動方針:人体さんの元へ戻る
1:トロデーン城か心臓へ向かう
2:パピルス・ククールと行動を共にする
3:あらあらうふふ💗

【備考】
参戦時期は少なくとも1話以降 詳細は後続の書き手様にお任せします。

【支給品紹介】
【キングアックス@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
攻撃力80 ルーンが彫られた豪華な斧

【パピルス@ UNDERTALE 】
[状態]:負傷(極小)
[装備]:バトルフォーク いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2個
[思考・状況]
基本行動方針:兄ちゃん(サンズ)、フリスクと合流したい
1:マクロファージ、ククールと行動を共にする。
2:フリスクや地下世界のみんなと会いたい
3:ぱふぱふ…?今度、兄ちゃんに聞いてみよう。
参戦時期はPルート、フリスクとのデートイベント以降。
マクロファージの教育を受けて喋りの表記が統一されました(時々、素が出るかもしれません)

【支給品紹介】
【バトルフォーク@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
攻撃力42  農具のフォークの形状をしている。
ちなみに食事用ではない。

【ククール@ ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君 】
[状態]:ハイテンション(ぱふぱふによる) 健康  MP消費(極小)
[装備]:しっぷうのレイピア いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2個
[思考・状況]
基本行動方針:マクロファージを守りつつ殺し合いの打破
1:マクロファージを守る
2:マルチェロを止める
3:ぱふぱふ…いいものだな
参戦時期は聖地ゴルドでマルチェロと戦う前。
LV40 一通りの呪文は覚えている。

【支給品紹介】
【しっぷうのレイピア@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君】
細身で先端の鋭く尖った刺突用の片手剣 。柄の部分が風のような装飾が施されている。
攻撃力+78、素早さ+20のボーナスを持つ。

130教えて!マクロファージ先生! ◆s5tC4j7VZY:2021/01/31(日) 17:10:11 ID:DKElCkx60
投下終了します。

131 ◆vV5.jnbCYw:2021/01/31(日) 22:33:47 ID:MxiRYIL20
投下乙です。
まさかのパピルスセリフ縦読みは草
フリスク登場回の攻撃エフェクトといい、アンテは本当にロワでも書き手の演出次第で化けますね。

132 ◆s5tC4j7VZY:2021/02/06(土) 10:21:39 ID:zQPcm7FQ0
感想ありがとうございます!

教えて!マクロファージ先生!

アンテの書き手の皆さんの演出に感動し、私もやるからにはパピルスの特徴はぜひとも再現したい!とやりました!
ですが、それを突き通すのは正直しんどいのと他の書き手様にも負担がかかるので、マクロファージさんの先生設定を使い、皆と同じように表記するようにさせました。

133 ◆2zEnKfaCDc:2021/02/07(日) 05:51:05 ID:g/jenux60
キャラ、猗窩座予約します。

134 ◆2zEnKfaCDc:2021/02/14(日) 02:27:05 ID:7hifYacU0
すみません、予約の延長をお願いします。

135 ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:12:54 ID:/A1/z9Uk0
遅くなってすみません。倒壊します。

136In the Cursed WORLD ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:14:26 ID:/A1/z9Uk0
ㅤこんな世界、大嫌いだ。

ㅤ誰もかもが愛想を振り撒き、嘘八百を並べ立て、どこかで相手を喰らう隙を伺っている。だというのに、自分だけは無実だとでも言いたげに、暗黙の了解とばかりにトモダチごっこを繰り広げている。愛情だとか友情だとか、周りのみんなが綺麗だと信じて疑わないものはことごとく汚らわしい。少しばかり刃物を振り抜いて見せるだけで、数年、或いは数十年にもわたって積み上げてきたものは崩れ去る。それに気付いておきながら、なおごっこ遊びに身を投じる必要がどこにある?

ㅤああ、分かっている。分かっているとも。間違っているのは私で、そして正しいのはこの世界だ。だが、誰に何と言われようとも私はこうなんだよ。気持ち悪いと罵られようとも、サイコパスと吐き捨てられようとも、私は誰かが不幸に泣いていても絶望に沈んでいても笑い飛ばすことしかできないんだ。

ㅤそれならば、何故私は間違って生まれてきた?ㅤ何故私が、私を生んだ世界が払うべきツケを払わなくてはならない?

ㅤ本当に、くだらない。いっそのことこんな世界、壊してしまえればいいのに――



――五月蝿いな。分かっている。分かっているんだよ。到底、叶わぬ願いだ。だが間違って生まれた私には正しさなんてもううんざりなんだよ。

ㅤもういい。この世界の間違いとやらを背負い、私が消えよう。貧乏くじを引いた戒めに、せいぜい華々しく散ってやるさ。

ㅤそして私は、イビト山に身を投げた。

ㅤこの呪われし世界へ、怨嗟を込めて――





137In the Cursed WORLD ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:15:22 ID:/A1/z9Uk0
――重力に任せたはずの身体は、一切の痛みを感知することなく大地に到達した。

ㅤ初めの内は多少の躊躇もあったそれを、もはや一切動じることもなく、必要な限り繰り返す。

ㅤエイトと煉獄杏寿郎、2人の実力者を戦わせることに成功したキャラは、支給された可楽の団扇を利用して幾つもの崖を飛び降りながら、最短ルートで那田蜘蛛山からの下山を果たした。

「ふふ……どうやら高いところとは切っても切れない関係らしいな。」

ㅤあの日のことは今でもはっきり思い出せる。世界に絶望し、死を選んだ先にみた新たな世界。まさかモンスターと呼ばれる者がファンタジーではなく現実に存在していて、それでいて意思の疎通までできるとは思わなかった。

ㅤそして再びくだらないトモダチごっこ、そして家族ごっこさえ始まらなければ、もう少し喜びに打ち震えていられたのかもしれない。前者はともかく、現にホンモノの家族ではない分、後者はなおさら歪でタチが悪い。私はお前たちの子どもなんかじゃない。

ㅤだからだろうか。トリエルとアズゴア――不愉快な名前が名簿に書いてあっても、この世界に来てからは居心地がいい。あの平和主義者どもが家族ごっこもしていられない状況になればどう動くのか、何とも興味深いじゃないか。アズリエルの奴もなかなか粋な真似をしてくれる。その礼というわけではないが、この催しが終わったらフラウィーだとか名乗っていたその花の身体、二度と軽口を叩けないようバラバラに切り刻んでやるよ。

ㅤ生に執着があるでもないが、久々の楽しそうな催しだ。優勝を狙わない理由もない。

ㅤだが、その一方で優勝を狙うには手持ちが足りないのも事実。可楽の団扇は移動に、首輪探知レーダーは奇襲をかける際などには便利であるが、戦闘における殺傷力の大部分を投げナイフに頼るのは心もとない。

ㅤエイトのような実力者ではなく、独力で殺しきるような弱者を探し、支給品を奪う。一先ずの方針はそれに落ち着くだろう。第一候補は仮にも家族ごっこをした者としてこちらが殺される危険の少ない、トリエルとアズゴア。次いで他者を殺せるようには思えないパピルスやアルフィーというところか。

ㅤそして、近くの参加者を選別すべく、首輪探知レーダーに目を落とす。

「――なっ……!」

ㅤ次の瞬間、キャラは驚愕に目を見開いた。レーダーに写った首輪の反応が、一直線に自分の方向へと近付いてくる。

(なんだ……!?)

ㅤ慌てて身を隠そうと、辺りを見渡す。しかしその挙動とて、圧倒的な速度を前にしては遅い。さらにそれの脅威はその速度だけではなく、自分に向けて正確な直線を描いて進行しているのだ。向こうも首輪探知レーダーを持っているのか――そんな考察とて諦念が塗り潰す。レーダーの反応はもはや眼前に迫っていた。

ㅤ数秒前までレーダー上の光点でしかなかったそれは、カタチを持って眼前に降臨した。その到達の瞬間、叩かれた大地は瞭然と砕け、大きく砂煙を撒き上げる。

138In the Cursed WORLD ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:15:51 ID:/A1/z9Uk0
「お前、俺の接近にいち早く気付いていたな。」

ㅤ煙の中なら現れたのは、藍色の模様を全身に纏った軽装の男。眼に刻まれた『上弦』『参』の文字が異質さを引き立てる。

「だが闘気は微弱。所詮、弱者だ。」

ㅤ勝てない、と一瞬の内にキャラは悟った。たかだか姿を現しただけで、未だ微かに揺らぐ地脈。あまりにもニンゲンとは次元が違いすぎる。

「何者だ。」

ㅤ目を細め、尋ねる。仮に問答に乗ってくるようなら言いくるめる余裕はあるかもしれないが、そうでなければ抵抗する間もなく殺される。出会ってしまった地点で――否、奴に感知される場所に踏み込んだ地点で、もはや確定事項だ。

「俺は猗窩座。そしてお前の名には興味が無い。俺は弱者が嫌いだ。」

ㅤ視認はギリギリ可能、しかし反応は不可能。鬼舞辻無惨の率いる十二鬼月の内の上弦の参に位置する悪鬼、猗窩座は人を優に超えたその速度で、瞬時にキャラの背後に回っていた。

ㅤコンマ一秒にも満たぬ次の瞬間に、自分の首が消し飛ぶ想像がキャラの脳裏を駆け巡る。高鳴る心臓。すでに両の手では数え切れない回数、殺されていてもおかしくないだけの隙を晒している。それでも現状、キャラの首と胴体が接合されているのは、猗窩座の気まぐれひとつに過ぎない。

ㅤそして、数秒が経過した。猗窩座もキャラも、微動だにせずその場に留まる。

「……生を諦めたか。お前のような弱者には殺す価値すら見出せない。失せろ。」

ㅤ猗窩座は優勝する気概など持っていない。フラウィーの言うことに従うのも癪であるし、願いとやらにも興味はない。しかし奇しくも、強者との戦いという猗窩座が真に求めるものと、この催しで求められているものは向かうところを同じくしている。

ㅤ唯一都合の悪い点といえば、この世界では強者同士が自分と戦うまでもなく潰し合い、死に絶える可能性があるということ。もはや出会う弱者全てに構っている時間など無い。キャラを殺さない理由は、或いはそれだけではないかもしれないが――何にせよ、猗窩座がキャラを『みのがす』選択肢を取ったことに変わりはない。

ㅤしかし、それを受けたキャラの反応は、猗窩座に僅かながらの興味を抱かせる。

ㅤ鬼に慈悲をかけられた人間は、例外なく、一目散に去るものだ。時に悲鳴をあげながら。時に強者を盾にしながら。

ㅤしかしキャラは、逃げるでもなく、かといって礼を言うでもなく。

139In the Cursed WORLD ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:17:11 ID:/A1/z9Uk0
「――ふっ……ふふふっ……ふふふふふっ……!」

ㅤただただ、笑っていた。

ㅤキャラの全身をある感情が蝕んでいく。死を体現したかのような、超越的存在に直面した恐怖――などではない。死を回避出来たことへの安堵でもない。

「私には分かる。お前からは、もはや変質しているがタマシイだったものを感じる。ああ、かつてはニンゲンだったのだろう。」

ㅤ立ち去ろうとしていた猗窩座の足が止まる。弱者の戯言に付き合う道理は無い。しかし、キャラの言葉が、これまで出会ってきた弱者のステレオタイプと一致しないのもまた事実。元より対話は好む猗窩座。その言葉に好奇心が沸くのは無理もないことだった。

ㅤキャラの視線の先には、着地の際に猗窩座が形成した地割れ。人と鬼を区分する象徴たる、破壊の現れ。人が戦慄し、恐怖に打ち震えるべきそれを見たキャラは――憧憬の表情を浮かべた。

「素晴らしい。これが人に為せる破壊だというのか!ㅤ……いや、違うな。こんなものではない。お前はまだ力を隠している。或いは、本当にこの世界を破壊してしまえるのではないか。」

ㅤけたけたと笑うキャラは、鬼である猗窩座からしても、もはや人には見えない。性質として、鬼は人を喰らう。それ故に、人は鬼を恐れる。両者の間には、捕食・被食という明確なパワーバランスが存在している。つまり力を持つ鬼は絶対的な存在として、何者にも平伏しない。ただ一人、無惨様という例外を除いて。

ㅤだというのに、だ。鬼という存在を恐怖せずに笑みを浮かべ、さらには恍惚の情念までもを見せたキャラ――ほんの一瞬であれ、背筋に伝う寒気を覚えてしまった。これは、何かの冗談なのか。

ㅤここで猗窩座は初めてキャラと真っ向から向かい合った。清々しいほどに虚ろな目。その先に何が見えているのか、誰にも知る由はない。ともすれば、閉ざされし猗窩座の記憶よりも、深い霧の中に隠されている。

ㅤそして、猗窩座は感じ取る。自身が抱く力への渇望と同様の、破壊への執着。そして無惨様の備えるそれと同様、何色にも染まらぬ絶対者としてのキャラの素質。

140In the Cursed WORLD ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:17:43 ID:/A1/z9Uk0
「認めよう。お前は弱いが、弱者ではなかった。敬意を表する。名を名乗れ。」

「……私はキャラ。」

「輝亜羅(きあら)、か。いいだろう、輝亜羅。敬意の証として、俺はお前に提案しよう。」

ㅤ弱者は嫌いだ。弱者は正々堂々やり合う度量を持たない。

「――お前も鬼にならないか?」

ㅤ鬼とは何であるのか、共通認識を持っていない。その鬼となる方法も代償も、キャラには何一つ伝達されていない。肯定するに足る要素を、キャラは持たない。

ㅤしかしキャラは一切の迷いなく、答える。

「ああ。なってやろうじゃないか。」

「そうこなくてはな。」

ㅤ苦しむことなら慣れている。死ぬことなど抵抗はない。そもそも、最強のモンスターとなったアズリエルにニンゲンを殺させる計画の地点で自身の死は組み込んでいたのだ。自分が死のうとも、世界を破壊できるのならどうでもいい。

ㅤあの計画の失敗の原因は、ヤツの理性に任せたこと。だが、猗窩座の語るところの鬼となった自分が、心の赴くままに殺戮できる――この上なく理想的で、何より面白そうだ。

「それで、どうすればいい。」

「鬼の始祖、無惨様は此処には御座せられぬ。どの道、お前には死んでもらうぞ。」

「ああ、それだけか。」

ㅤこの世界で生き残るのは一人だけ。しかし『願い』とやらを行使するのであれば、一人は蘇生することも可能だ。元より、願いなど無い。悲願とする至高の領域への到達は誰かに与えられるものだと見なしていない。優勝することに疑いは無いが、どの道浮く権利だ。それならば『輝亜羅』を無惨様の下へ連れていき、鬼へと変えるよう懇願する。力への揺るぎなき執着、きっと永遠に高め合い、殺し合える同胞となるに違いない。

「だがそれだと面白くは無いな。私もこの催しは楽しみたいからな。」

「好きにしろ。お前など敢えて手を下さなくとも支障はない。だが、そうだな……」

ㅤ唐突に、何かを思い付いたように猗窩座は口を開く。

「誰か強者を見つけたら伝えろ。人を喰らう鬼が西に在り、と。」

ㅤあくまで娯楽として優勝を狙うキャラにとっては好都合だ。強者と猗窩座が潰し合い、結果的に優勝した自分が逆に猗窩座を蘇らせ、目的を果たした上で猗窩座の鼻を明かすのもまた一興。アズリエルがハナから願いを叶える腹積もりが無いと言うなら、それもまた結構。首輪を外し、死ぬ直前まで追い詰めて否が応でも叶えさせてやるのも面白い。

「分かった。では私も一つ伝えておこう。」

ㅤだからこそ、それにより猗窩座が死ぬリスクが増えようとも、戦いの予感となる情報を惜しみなく渡す。

141In the Cursed WORLD ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:18:06 ID:/A1/z9Uk0
「この山の上、2人の強者が戦っている。魔法を扱うニンゲンと、もう一人は知らないが、男だ。」

「分かった。」

ㅤそれがかつて殺した男であるとも知らずに興味を示す猗窩座。そして同時に、すでに戦いが始まっているのであれば急がない理由は無い。山の山頂を見据え、飛び立った。

「……さて。」

ㅤそして、必然的にその場に残されたキャラ。

(私は見逃さなかったぞ、猗窩座。お前が支給品を持っていなかったことを。)

ㅤフラウィーが支給品は1個から3個と言っていた以上、支給されていないことはないのだろう。しかしあの猗窩座が誰かに支給品を奪われたとも考えにくい。だが、素の能力が優れており、戦いそのものを楽しんでいるようなあの性格だ。自分で捨てたと考えればしっくり来る。

(もしかしたら、ヤツが捨てたものがどこかに残っているかもしれないな。誰かに拾われるのも面倒だし……探してみるのも悪くない、か。)

ㅤエイトと煉獄という強者の情報。猗窩座の支給品の行方。争いの種は、すでに幾つも撒かれている。

ㅤだが、真に殺し合いを生む種は、それ以前にすでに撒かれていた。猗窩座とキャラ――世界を呪い、力を求めた二人の存在。彼らがこの世界に呼ばれた瞬間から――True Pacifist Route――大円団のハッピーエンドは、すでに失われているのだ。

【E-3/平原/1日目/黎明】

【猗窩座@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝して願いの権利で輝亜羅(キャラ@Undertale)を蘇生し、無惨様の下へ連れていく。
1:那田蜘蛛山に向かい、強者を探す。
【備考】
参戦時期は煉獄杏寿郎を殺した時より後です。

支給品一式やザックは身に付けていません。スタートからキャラとの遭遇までのいずれかで処分しています。どこかに落ちているかもしれませんし、破壊しているかもしれません。

【キャラ@UNDERTALE】
[状態]:健康
[装備]:可楽の団扇@鬼滅の刃  十六夜咲夜の投げナイフ9本@東方project
道具]:基本支給品- 首輪レーダー@バトルロワイアルシリーズ
[思考・状況]:フラウィー、何をしたい?
基本行動方針:殺し合いを楽しむ、最後には優勝する。その途中で首輪は解除したい。
1:猗窩座の捨てた支給品を探す。

戦時期はGルートで、復活する直前です。
※エイトとの話で、知り合い(ゼシカ、ククール、トロデ、マルチェロのことについて知りました。)

142 ◆2zEnKfaCDc:2021/02/19(金) 00:18:31 ID:/A1/z9Uk0
投下完了しました。

143 ◆oUF53W6sMM:2021/03/06(土) 11:51:42 ID:4wYUgutQ0
お久しぶりです。
長期間席を開けてしまい申し訳ありませんでした。

かばんちゃん、竈門炭治郎予約します。

144 ◆oUF53W6sMM:2021/03/06(土) 16:55:32 ID:4wYUgutQ0
投下します

145君も手を繋いで大冒険 ◆oUF53W6sMM:2021/03/06(土) 16:56:07 ID:4wYUgutQ0
「ど、どうしましょう…」

会場の南端、羽のついた帽子をかぶった1人の少女
ーー正確にはヒトのフレンズであるかばんは、この状況に困惑し、恐怖を抱いていた。

フラウィーという花より宣告された殺し合い、そして見たことも無い服装をした人の首が飛ぶという凄惨な見せしめの光景は、かばんの脳内に詳細にこびりついていた。

手が震えて止まらない。
サーバルちゃんは大丈夫だろうか。

そんな事を考えていると、やがてひとつの人影が現れる。
この殺し合いに乗った人物だろうか。それとも……

考える前に、かばんの足は動いていた。
かつて、サーバルの狩りごっこに巻き込まれた時のように。

「あ、待って!」

そんな声がした気がするが、恐怖に駆られたかばんの耳にはそれは聞こえなかった。
そして、逃げたとしても、運動能力に優れているとは言えないかばんと、鬼殺隊として訓練を重ねている炭治郎の身体能力には雲泥の差があり、すぐに炭治郎に追いつかれ、肩を掴まれる。

「お、追いついた…君…」
「た、食べないでください!」
「食べないよ!」







「…つまり、炭治郎さんはこの殺し合いには乗っていない、という事でいいんですね?」
「そうだよ、こんな殺し合い、許せる訳が無い…
でも良かった、ここに来て出会えたのが、かばんちゃんみたいな優しい匂いがする人で」
「そ、そんな…そんな事ないですよ」

炭治郎とかばんは、歩みを進めながら情報交換を行っていた。
そして、このタイミングで初めて名簿の確認をしたかばんは、自分とサーバルの他にも2人のフレンズが殺し合いに巻き込まれている事を知る事になる。

「アライグマさんに、フェネックさんまで…」

もしかしたら、既に襲われているかもしれない。
そんな恐怖の匂いを感じ取ったのか、炭治郎はかばんの頭に手を置く。

「ど、どうしたんですか…?」
「君から恐怖の匂いがしたから。俺、鼻が効くんだ。大丈夫。君の言う『ふれんず』っていうのは、優しい子たちばかりなんだろう?」
「あっ…はい。炭治郎さんも…仲間の方とかいるはずですから、探さないといけませんね」

そんなやり取りをしていると、炭治郎があっ、と声を上げ、

「そういえば、探してる人がいるんだ。俺が君に会う前に出会った雪だるま……今はもう溶けちゃってるんだけど、その雪だるまさんに頼まれてる。青と紫の服をした人なんだけど…かばんちゃんは見ていない?」
「いいえ、ぼくが最初に出会ったのは炭治郎さんでしたから…」
「そうか…それじゃあ、移動しながら探すしかないか。まずはどこに行こうか…?」
「そう、ですね…ここからだと、じゃぱりとしょかんが近いです。僕が知っている場所でもありますし、まずはそこに向かうのはどうでしょう?」
「よし、それじゃあそこに行こうか!」
「はい!」

目的地をじゃぱりとしょかんに定め、2人は歩き出す。
この恐ろしい殺し合いでの、かばん達の命懸けの冒険が、始まった。


【G-8/草原/1日目/深夜】
 
 
【かばん@けものフレンズ】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装、いつもの帽子
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いはしたくない
1:フレンズの皆を探す
2:炭治郎さんが探している人も探す
[備考]
参戦時期は11話、アライさんとフェネックに出会った後です


【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]:健康 フラウィーへの怒り
[道具]:基本支給品一式、兵士の剣@DQ8 雪だるまのカケラ@Undertaleランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:禰豆子・善逸・伊之助・義勇さん・煉獄さんを見つけ、フラウィーを倒す
1:雪だるまが言っていた少年(フリスク@Undertale)も探す
[備考]
参戦時期は半天狗撃破後、無惨襲撃前の間です。

146 ◆oUF53W6sMM:2021/03/06(土) 16:56:25 ID:4wYUgutQ0
投下完了です

147 ◆EPyDv9DKJs:2021/03/12(金) 11:51:34 ID:N3SEpFvc0
投下します

148 ◆EPyDv9DKJs:2021/03/12(金) 11:54:03 ID:N3SEpFvc0
 Gー3に位置する鉄橋の上。
 ボロボロの白シャツにズボンと地味目な見た目とは裏腹に、
 紫色の肌や顔、背中から生えるもう二本の腕に白い翼と人外離れした外見を持つ。
 ガン細胞。身体の不具合によって生じる存在すら許されない文字通りバグの細胞。
 彼の人生はただのバグだから細胞に殺されそうになって、実際に二度殺された。
 三度目の生で、謎の植物に殺し合いと共に提示された願い事を叶える権利。
 嘘でも本当でもどうでもいい。元々望まず生まれた存在でチャンスはもうない。
 決められたサイクルではなく、自由に生きる権利を手に入れられる最後の機会。
 たとえどれだけ僅かな時間しか自由を得られなかったとしても彼はそれに縋る。
 故に殺し合いに乗って、早速参加者を狙ったのだが───

(何なんだあの細胞は!?)

 ガン細胞は、はっきり言って強い部類だ。
 白血球、キラーT細胞、NK細胞の三人によって倒されたが、
 裏を返せば戦闘を主とした細胞が束になってそれでようやく勝てる。
 しかもかなりの辛勝であり、細胞たちにとって最大の敵である証左だ。
 故に一対一で戦うのであれば、かなりの難敵になるのは間違いない。
 ある意味そこの理解もあわせ、制御性T細胞や細胞分裂もしてたと言うべきか。
 数で挑む相手にもある程度の数で対抗する。理にかなった戦術だ。

 では目の前の彼女はどうか。
 質量に任せたと言えども肥大化させた拳のラッシュを避け、
 触手の槍の雨も、壁もないのに白血球たちが用いる遊走で避ける。
 鉈による白兵戦も無数の飛び道具で妨害されて刃は届かない。
 今まで出会ってきたどの細胞にも属さない特殊な戦闘技術。
 攻撃自体はたまに当たってるし、拮抗と言えば拮抗している。
 だが相手が単独でこの状況は、余りにも予想外だった。

(空間から空間に開けるスキマは距離的に二メートル……短いわ。
 主に緊急回避として切り札相手にとっておくのがベターとみて良さそう。)

 ガン細胞が相対する敵、八雲紫は幻想郷の賢者が一人。
 いかに相手が細胞で最も危険とされるガン細胞と言えども、
 流石に彼女が遅れを取るような敵かと言われると違う。
 (因みに名簿には目を通していたので相手がガン細胞と理解してる)
 にもかかわらず、かすり傷がその道士めいた中華服に刻まれており、
 今一つ攻めきれない状態にある姿は彼女を知ってれば驚くことだろう。

(相手の力量も確認はしないといけないけど、
 下手に攻め込んでできることができないと困るし、悩みものね。)

 当然と言えば当然だ。
 彼女は今自分に科せられた制限の調査中である。
 慣れ親しんだ力が十全に発揮できなくては無理からぬことだ。
 なにせ紅魔館の吸血鬼や幽々子だけなら相性次第で分からなくはないが、
 博麗の巫女とスキマ妖怪である自分も含めて拉致など、容易ではない。
 故に目的は最初からただ一つ。フラウィーを相手にする道それ一つのみ。
 なのでまずは、自分がどれだけ制限をさせられてるかを調べようとした。
 その矢先にガン細胞の襲撃。戦闘中に試さざるを得なくなったと言うわけだ。

(移動の連発不可能。インターバルはどれくらいかしら。)

 スキマを使って攻撃を躱そうとするも、目の前にスキマが出てこない。
 これぐらいは想定済みなので飛んできた槍のような触手を身体能力だけで回避する。
 相手も戦いの心得があるので、わずかに頬に赤い筋ができるが文字通りのかすり傷だ。

 紫の能力『境界を操る程度の能力』は、全ての事象に於いて根底から覆せてしまう。
 ルール無用である場合能力だけで言えば、この殺し合いに於いていて誇張抜きの最強格とされる。
 はっきり言って反則の次元ではない。反則と言う概念すら弄って正当化が可能なのだから。
 あくまで幻想郷のスペルカードルールによってまともな勝負が成り立ってるだけであって、
 ルール無用の殺し合いであれば、そもそも勝負になる相手がこの場にいるかも怪しい。
 空を飛ぶ程度の能力で干渉を受けない霊夢でもなければ、勝ち目はないのだから。

(物とかにスキマで穴を開けるのと、
 空間にスキマを使うのとだと大分違うわね。
 消耗しやすいし距離も短いし、いいことないみたい───!)

149 ◆EPyDv9DKJs:2021/03/12(金) 11:55:09 ID:N3SEpFvc0
 故に最も制約を受ける立場なのは当然であり、勿論それを理解した上で調べている。
 実際その通りで、ルール無用ならまず一瞬で勝負がつく類は軒並み封じられた。
 どう封印してるかは向こうが提示してくれたので、当面の目的は首輪解除。
 思考している間ににもまだまだ鋭利な触手が次々と襲い掛かる。
 地面に突き刺さりアスファルトを砕き、鉄骨をへこませたりと破壊の痕を刻むが、
 妖怪らしく人間離れした動きで致命傷となりうる部分は回避していく。

(これは見た目は相手のを見るに機械なんでしょうけど、
 内部は思ってるよりオカルトやファンタジー寄りかしら。)

 まず程度の能力を科学で封じるということそのものが非現実的だ。
 神にも等しい能力とされる自分の能力を首輪一つで封印できるのは、
 幻想郷だろうと外の世界双方の技術でもできたものではないだろう。
 自分の知らない技術、フラウィーの知る技術と言う可能性もあるが、
 一先ずは魔法や神秘と言った、非科学的なものを考慮する必要がある。

(幻想郷以外のグループはおおよそ五、六あるとして。
 彼らから話を聞くのが、現状は脱出の手掛かりになる?)

 名簿の並びで動物の名前や細胞の名前など、
 ある程度の法則性が見受けられる名簿を見るに、
 一定の人物の身内を中心として集められてるはずだ。
 霊夢より先にある八名も、一つか二つのグループの筈。
 フリスクからマルチェロまでの名前については法則性がなく、
 かつ横文字で不明だが、人数的に二グループだと確信してる。

(けど、それだけに気を取られてる場合じゃあないか。)

 それらとの接触もしたいのだが、それ以上に厄介な問題として身内。
 前述のとおり、幻想郷はスペルカードルールで一応の秩序を保った世界。
 ではそのルールがなければどうなるか。霊夢と魔理沙はまだ問題ないだろうが、
 残るメンバーは何とも言えない。特に厄介なのは───

(妖夢よねぇ。)

 昔馴染みに仕える彼女は、主がいるなら守るための行動をするはず。
 身内である意味一番純粋とも言えるが、悪い言い方をすれば単純なのだ。
 だから主に危険が迫っていればどうするかが、容易に想像がついてしまう。
 レミリアと咲夜も正直グレーゾーン。確認しておかなければかなり面倒になる。
 幽々子については信じたいものの、相手が不老不死だと分かってると言えども、
 毒入りの飲み物を普通に出したことがあるなど、過激な部分があって微妙に怪しい。
 価値観や倫理観と言ったものが違うからこそ外と隔絶した幻想郷があるようなもの。
 余り放っておけば風評被害で、此方の信頼を損ねてしまう可能性もある。
 故に優勝を狙う敵の排除より、身内か誰かとの接触を優先したい。

「っと。」

 上から迫りくる巨腕によるハンマーを間一髪で回避。
 続けざまに再び触手の雨だがギリギリのところで避ける。

(? さっきより動きが速い!)

 気のせいか先程よりも力を増している節が見受けられる。
 避けたと言えども、さっきより余裕を持てない状態だ。
 流石に避ける動作だけで戦うのは限度があり、多少弾幕を放って相殺していく。

(あの黒いモヤが原因か。)

 何処かからか、黒いモヤがガン細胞に吸い寄せられている。
 それが何かは知らないが、もし力の供給があるのであれば。
 正面戦闘で消耗するよりその供給手段を絶つのがいいだろう。
 避けられる強敵は避けて、弱らせて楽ができるならその方が得策だ。
 普段のようなふざけた態度は、この場では殆どしてる余裕はない。

「お互い消耗するだけだし、此処は退かせて貰うわ。」

「何?」

 倒そうと思えば倒せる相手であるのは間違いない。
 だが現状敵となる数が不明、首輪の解除に人員がどれだけいるかも不明、
 身内がどれだけやらかしてるかも不明と、分からないことが多すぎだ。
 それらを放置してまだ序盤に消耗しきって、肝心な場面で限界では困る。
 こういうことが嵩むといくら紫だとしても、格下に負ける可能性も高い。
 それに、相手は弱体化させることが可能な相手かもしれない可能性もあるなら、
 此処は撤退するのが最適解。床に穴を開けて、逃走経路と言う名の落下をする。

「逃がすつもりはない!」

 紫が潜り込んだ、無数の目玉が渦巻くスキマ空間。
 閉じつつあるスキマに対して、躊躇なく拳を突っ込む。
 弾丸のように伸びる拳は紫の落下速度を超える。
 橋の下から空中に身を投げた紫へと追いつき捉え、

「グレイズで加点かしら。」

150 ◆EPyDv9DKJs:2021/03/12(金) 11:55:54 ID:N3SEpFvc0
「グレイズで加点かしら。」

 しかし避けられる。
 躊躇せず突っ込んでくるところは驚いたが、
 ギリギリまで攻撃を回避しないなんてことはよくある。
 何よりスペルカードルールは基本的に空中でするのが本分。
 空中と言うホームフィールドで立ち回りで負けるはずもなし。
 身を空中で華翻しえし、拳を蹴りつつ飛翔でその場を離脱。

「逃がさないと言った───!」

 飛んでいく姿を視界に捉え走り出そうとするが、
 スキマは閉じられ腕が引っかかって抜け出せない。
 紫が態々最初から飛翔せず穴から落下したのはそういうことだ。
 海に落ちての逃走経路でも良かったが、相手は肉体を変化させる。
 となれば泳ぎが得意になるように改造することも可能の筈だ。
 それならば最初から自分の得意となる空中へ逃げるのは当然だが、
 流石に足止めもなしに逃げては追いかけられて色々面倒になる。
 勿論相手は肉体を変化させることが可能。長い時間止めれるものではない。
 その一、二秒程度の時間さえあればこの夜間なら逃げ切ることは可能だが、
 すべてが完璧にはいかない。

「だったらこれを使わせてもらうよ。」

 視界から消えそうになる寸前、
 ガン細胞はデイパックから支給品を取り出して、
 それを彼女の方角へと掲げた瞬間、高出力のレーザーが放たれる。

「! これってまさか───」

 高出力レーザーについては酷く見覚えがある。
 ミニ八卦炉。紫の知る魔法使いが持っていたマジックアイテムだ。
 ガン細胞には魔力があるわけではなく、別の力を出力としている。
 だからか恋色でも虹色でもなく、放たれるのは死を象徴した漆黒。

「回避は間に合いそうにないし、必要経費ってことにしましょう。」

 速度的に避ける前に直撃する。
 その前に対応するべく、ガン細胞と同じように手を相手の方へと掲げ、

 境符「四重結界」

 青く輝く結界を、文字通り四重に重ね合わせて迎え撃つ。
 黒いレーザーが結界へとぶつかり合いながら、空を駆け抜ける。
 威力の強さと距離的な都合で、相手が生きてるのか死んだのかも、
 撃ち終えたガン細胞からは確認することはできない。
 逃げた方角も東で最も大きい島。容易には探せないだろう。

「何なんだ、あの細胞は……?」

 白血球、キラーT細胞、NK細胞、マクロファージはおろか、
 赤血球などのいずれの細胞にも属さない存在。
 自分が此処まで苦戦させられる細胞はいない。

「まあいいさ。僕のやることは変わらない。」

 乗ってる参加者が他にもいるだろう。
 一人で全員を相手にするつもりはない。
 だが譲れないことは一つだけある。

「キラーT細胞……!」

 ギリ、と歯に力がこもる。
 名簿は全く手を付けてないが、
 あの場に居合わせたのを彼は見ていた。
 図体のでかい金髪の男は紛れもなくあいつだ。
 絶対に彼だけは自分の手で殺さないと気が済まない。
 あいつのパープリンなんとかによって、形勢が逆転して敗北に繋がった。
 自分を殺せる特効だからとかではない、単純な私怨によるものだ。

「ああ、でも───」

 キラーTと自分がいて彼、優しい白血球がいないはずもない。
 恐らく彼も此処に来ているが、優勝と言う名の生存権は僅か一つだ。
 新しい世界を作る場合、彼を殺さなければならない。
 できることなら、自分以外に殺されてほしいと。
 そう願いながらガン細胞は東へと歩み出した。





 さて、此処でガン細胞の強くなった理由を話そう。
 理由もなく彼が強くなれる要素や八卦炉からレーザーが撃てるはずがない。
 この舞台には、参加者となる赤血球以外の赤血球や、雪だるまとNPCが存在している。
 参加者に足りうるだけの者ではないが、全員が友好的な関係になれるわけがない。
 故にどこかにいる。彼に味方する悪玉菌の毒素を出してる存在がこの舞台に。

151 ◆EPyDv9DKJs:2021/03/12(金) 12:02:03 ID:N3SEpFvc0
【G-3/橋/1日目/深夜】

【がん細胞@はたらく細胞】
[状態]:疲労(中)、悪玉菌による強化
[装備]:鉈@はたらく細胞、ミニ八卦炉@東方project
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:自分がいてもいい世界を作る。
1:一応あの細胞(紫)を追うため東へ。無理に追わなくても構わない。
2:キラーT細胞だけは殺さないと気が済まない。パープリンなんとかには気を付ける
3:優しい殺し屋さんとは余り戦う気が起きない。できるなら別の誰かに殺されていてほしい。

【備考】
・参戦時期は二度目の死亡後。
・細胞分裂はゲームの破綻レベルには使えません。
・悪玉菌の活動次第で能力が向上します。(ただしある程度近いエリアにいる必要あり)
 またミニ八卦炉は悪玉菌で得た力で使います。
・名簿は見ていませんが最初の説明時にキラーTを見かけ、
 同時に白血球も此処へ来ていると言うことは確信してます。










「なるほどね。」

 F-4の丘陵にて、紫は座り込んで一人理解する。
 結界で防いだものの威力によって結構な距離を飛ばされた。
 飛行する際の消耗を抑えながら移動できたと思えばある意味僥倖か。
 そして何がなるほどなのかと言うと、彼女の周囲に転がる『それ』のこと。
 辺りには、無数の何かよく分からない生物たちの亡骸が転がっている。
 姿形は様々だが、これが何かはすぐに理解することはできた。
 と言うより、向こうが自ら悪玉菌と名乗ってきたので理解する以前の問題だが。
 がん細胞の強化を促していた黒いモヤの発生源は此処で、文字通り瞬殺した。
 参加者にもなれないような幸運も、実力もないのだから当然である。
 問題はこの舞台にどれだけいるか、と言うことでもあるが。

 いかにがん細胞を弱体化できると言えども、
 どのエリアにどれだけの悪玉菌がいるかは分からない。
 都合よく細菌を見つけられる受容体があるはずもなく。

(さて、どこへ行こうかしら。)

 山を一人で散策するのは今の状態では荷が重い。
 がん細胞がいるさばんなちほーへ向かうのも論外で、
 消去法で、東側へ行くことになる。

(がん細胞、か。)

 生まれただけで殺されなければならない細胞。
 言うなれば世界から拒絶されてしまった存在。
 幻想郷の住人とは、何処かに通ってる部分もある。

(余り情に流されない方がいいわね。)

 彼のような存在は受け入れられる存在だ。
 お互い自分の世界を守るべく、活動しているだけ。
 しかしこの状況ではとてもそれはできそうにない。
 哀れに想いながら、遠くに見えた橋に背を向けた。

【F-4/丘陵/1日目/深夜】

152 ◆EPyDv9DKJs:2021/03/12(金) 12:02:56 ID:N3SEpFvc0
【八雲紫@東方project】
[状態]:全身に細かい裂傷(再生中)、霊力消費(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決
1:フラウィーが何者かの調査。
2:首輪解除の為の人材探し。無理なら材料でも探しましょ。
3:身内の捜索。特に妖夢、咲夜、レミリアあたり
4:別のグループに接触。大体五、六グループ?

【備考】
・参戦時期は少なくとも緋想天は経験済み。
・現在判明してる境界を操る程度の能力の制限一覧
 ①ゲームが破綻するレベルの能力は使用不可能(死の境界を操る等)
 ②物質にスキマで穴を開ける場合はそれほどの消耗はない
 ③空間に穴をあける場合の消耗は大きく、インターバルあり
  移動距離は二メートル、穴も短時間で消滅し中に籠れば大幅に霊力消費する。
 他制限は後続の書き手にお任せしますが、概ねの制限は確認済みです。



※G-3で橋が損壊してますが、崩落する程度ではありません。
※G-3で高出力のレーザーが空に放たれました。
 ある程度近くにいれば視認できるかも。

【鉈@はたらく細胞】
マクロファージがいつも持ってるアレ
マクロファージは元々攻撃力が高いので、多分結構な業物かも

【ミニ八卦炉@東方project】
森近霖之助が一人で生活する魔理沙を心配したのか、
緋々色金まで使った霧雨魔理沙のマジックアイテム
マイナスイオンも出せたり山一つ吹き飛ばせたり、
扇風機のように風を出したり開運に魔除けetcと、
魔理沙にとっての宝物であり生活必需品である
なお料理にも使えるのでコンロ代わりにもなる


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