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バトル・ロワイアル 〜狭間〜
553
:
共に沈めよカルネアデス(後編)
◆2zEnKfaCDc
:2021/11/29(月) 20:42:29 ID:jig807Q60
伏し目がちになりながら語るその様子に、ヒナギクには次の言葉が概ね、予想がついた。そしてその予想通りの言葉を、ハヤテは紡いだ。
「……伊澄さんが、亡くなったんです。」
その焦燥の原因を、ハヤテは簡潔に――しかしこの上なく荘厳に、述べる。それを受けたヒナギクは少し俯きがちになりながら返す。
「……ええ。」
目の前で死んだ佐々木千穂の時とはまた違う。いつどこで死んだのかも不明瞭なままに、単に放送という曖昧な手段で知り合いの死を突き付けられたことは、ヒナギクの心にも少なからず影を落とした。どうすれば彼女が死ななくて済んだのかなど、後悔する余地すらも残してくれない。関わることも最初から許されぬままに、死という結果だけがそこにあった。
「つまり……この世界には伊澄さんを殺せるような人がいるってことなんですよ……!」
切羽詰まった様相でハヤテは語る。
伊澄の持っていたゴーストスイーパーの力を、ハヤテは何度も見てきたから、そんな彼女を殺せる相手がこの世界で殺し合いに乗っているという事実に対し、お嬢さまの身の危険を感じずにはいられない。
しかしその一方で、ヒナギクは伊澄の力のことを知らない。成人男性に見える者も一定数いるこの殺し合いに、伊澄を殺せるような人など決して少なくないだろうという認識がヒナギクにはある。
言葉は、不完全だ。この場においてハヤテの言葉がヒナギクに正しく伝達されることはない。
「……だったら、どうするの?」
――だけど、それでも。
「……お嬢さまを、守ります。」
言葉が不完全でも、発した言葉が正しく受け取られる保証なんてどこにもなくても。
言葉の裏の心だけは、きっと等身大のままに伝わることのできるものだから。
「――もし敵がいたとしたら、命を奪ってでも?」
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