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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

547夢見るさだめ ◆753g193UYk:2019/03/27(水) 18:12:08 ID:1qUWgLbM0
 
「なんだ……なにが起こったんだ」

 顔中に冷や汗を浮かべて周囲を見渡す吉影に対し、ぬえは気の利いた返事も思い浮かばず、ただ首を横に振ることしかできなかった。この場にいる誰もが状況を飲み込めていない。
 勝利したのは、自分たちの筈だ。それなのに、いったいなぜ、どうして夢美が殺されるという『結果』に至ったのか、この場の誰も理解できなかった。

「この館の……女神像だ」
「えっ」
「岡崎夢美の心臓に突き刺さっていたアレは……女神像が持っていた、水差しだ……! 今、我々は『攻撃』を受けているッ! エシディシではない、新手の攻撃を……!」

 夢美の心臓に突き刺さっていたのは、吉影の言葉の通り、ジョースター家の慈愛の女神像が手にしていた水差しだった。その先端は鋭利に尖っており、それを、恐らく遠距離から投げつけられたのだろう。
 この場の誰にも気取れられることなく、正体を隠したまま。

「クソッ!」

 ぬえはすぐさまこの場の全員に正体不明の種を振り撒いた。
 正体不明の影に恐怖させるのは、必ずこちらでなくてはならない。他ならぬ大妖怪のぬえが、正体不明の敵に脅かされるなど、絶対にあってはならないことだ。
 仮に敵が自分たちの情報を知らない相手だとすれば、今振り撒いた正体不明の種である程度は認識を撹乱させられるはずだ。その正体不明に対する恐怖を糧にして力を取り戻し、迎撃する必要がある。
 ぬえはひとまず、夢美のそばに駆け寄った。

「おい、夢美、夢美、大丈夫か」

 大丈夫でないことは明白だった。質問のていを取ってはいるが、それは最早質問ですらないことをぬえ自身自覚している。
 心臓から夥しい量の血液を流しながら、夢美は光を失いつつある瞳で、ぬえを見た。瞳から、つう、と涙が零れ落ちてゆく。
 敵は何処から攻撃してきたか、とか、なんで狙われたのか、とか、そういうことを尋ねようかとも思ったが、今にも死にゆこうとしている夢美の顔を見た時、その質問は無意味であることをぬえは悟った。今の夢美から情報を引き出すことは、きっと難しい。
 ぬえは罰が悪そうに目線を伏せた。

「……なにか、言い残したこととかあったら、きくよ」

 夢美の瞳が、徐々に薄く閉じられてゆく。
 それでも、唇は動いた。

「パチェ……、あり……が、とう……って」

 震える唇が紡いだのは、今までともに過ごしてきた仲間に対する感謝の言葉だった。けれども、それがなにに対する礼なのか、その礼に付随する言葉があるのか、夢美が最期になにを思ったのかは、ぬえにはわからない。
 わからないが、死にゆく人間に最期に伝える言葉として、なにがふさわしいかくらいはわかった。

「わかった、伝えとくよ。もう休みな」

 ぬえには、夢美の頬が、僅かに緩んだような気がした。
 それきり夢美は、一言も喋らなくなった。


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