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ジョジョ×東方ロワイアル 第八部

400黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』 ──:2018/10/13(土) 19:07:21 ID:DAf9RJjQ0


『今───動揺したのか? 聖白蓮』


 獲物の隙を捉えた蛇が、チロチロと舌を出しながら頭を前屈みに低くした。
 目と鼻の先で手刀を構えたホワイトスネイクの姿をそのように錯覚した白蓮の背に、冷たいモノが過ぎる。

 不覚にも彼女は、一瞬ではあるが気圧された。
 『人間の悪意』というキーワードに、白蓮という女の過去に打ち立てられたどうしようもない楔が呻きを上げてしまった。
 かつて信頼し合っていた人間達から裏切られた悲痛な過去。どうあっても、古傷は癒えたりしない。

『例えば……“肌の色が違う”だとか“産まれたばかりの我が子の死を受け入れられない”だとか。
 自覚・無自覚に関わらず、人間は反吐の出る悪意をバラ撒きながら生きている』

 白蓮とは対照的に。
 プッチの“古傷”は、彼という人間性を大きく歪めた。
 湖に打ち上げられた妹の遺体を前に、生まれて初めて『人殺し』をも為す覚悟を固めた。
 誰を憎めばいいのかすら分からなかった。発端が何なのかも、殺された妹の為に何を為せば善いのかも、何一つ分からない。

 しかし彼は、弟のウェスとは全く違って。
 憎悪に走ることは無かった。
 憎しみよりも遥かに大切な───命を懸けてでも掴むべき『真理』を目指そうと決心したからである。

 目指した場所は邪道。
 殺人をも厭わない手段は、世間からは〝悪〟だと罵られ、木槌を振り落とされることも理解している。
 故に、当時のプッチではまだ力不足であった。弟の記憶を封じたはいいものの、きっとこの先、巨大な困難が待ち受ける。この身一つでは、成す術もなく運命に叩きのめされてしまうのは目に見えていた。

 だから力を求めた。
 物理的な力でなく、概念的なパワーを。
 その為に、かつて礼拝堂で出会った奇妙な男───DIOとの再会を願う。


 この時、彼は〝悪〟へと成った。
 エンリコ・プッチの、悪のルーツだった。


『過去から生まれる恐怖に打ち勝つ困難こそ、人間に課された試練だ。
 白蓮。君は私とよく似ている。私も今では、人類を“真の幸福”へ導く事を使命だと心得ているからだ』

 人間の生んだ悪意の犠牲者となった過去を持つ、エンリコ・プッチと聖白蓮。
 何の因果か、二人は共に聖職へと携わりながら、それぞれの意志・手段で幸福を目指した。
 憎悪に囚われず、かつて自らを陥れた人間達をも含めた『救済』。正気の沙汰ではない覚悟であった。


『幻想郷などという世界の片隅でしか生きていない。
 私とお前を隔てた境界とは文字通り、その大結界とやらだ。
 お前達が言うところでの“正しさで世を導く”という夢物語は、この宇宙では到底通用しない、カビの生えた理想論でしかない』


 最早、正しさという理屈を武器に世界を変える事は不可能。
 若くしてそれを痛感したプッチは、心に従うままに〝正しさ〟を捨てた。
 その様は白蓮から見れば狂気的でもあるが……やはり憐れだという感情が先行してしまう。

 〝悪〟の中に見出した〝真理〟など、どうあっても世の中に綻びしか生まないというのに。


「悪を受け入れ、支配によってこの世の乱れを抑える……。
 貴方の『覚悟』の正体……正しき目的とは、そんな暴虐の彼方に在る真理なのですか」
『支配ではない。そんなモノよりも遥かに崇高で、果てしない“力”を得た者のみが、それを可能にするのだ』


 やはり、プッチと自分は絶対に相容れない。
 先程彼は、自分達はよく似ていると言ったが……白蓮にはとてもそうは思えなかった。
 あたかも達観した目線で物事を説き、白蓮を隔壁の内に見下すプッチは、あまりに独善的に映る。
 自分の行いを悪と自覚してはいるようだが、数多の屍の上に打ち立てる“より大切な目的の為ならば”という小を殺して大を生かす本音の奥には、世界で最もタチの悪い『正義』が顔を覗かせている気がしてならない。


 矛盾するような言い方だが。
 彼は自分が悪だと気付いていない、最もドス黒い悪だ。


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