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魔界都市新宿 ―聖杯血譚― 第3幕

13Cinderella Cemetery ◆zzpohGTsas:2016/10/01(土) 22:46:55 ID:giNKql1g0
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 ムスカもまた、結城同様個室から、アイドル達のステージを眺めていた。
プロデューサーの面々からは、最前列の特等席を用意したと言ったが、彼はやんわりと、紳士的に断った。
アイドルの歌唱力に興味がなくなった、と言う訳じゃない。純粋に、危険があまりにも大きすぎるが故だった。

 今回のライブイベントにおいて、襲撃の要となるのは、黒贄礼太郎に扮したタイタス10世である。
偉大なる始祖の系譜に連なる10世は、アルケアの歴史について記された歴史書及び、後代の如何なる歴史家が、帝国を分裂させた暗君或いは狂王として評価している。
と言うより、暗君とか狂王以前の問題として、この皇帝は玉座に座るべき人物ではなかった事が、初めから解り切っていた。
姉妹の近親相姦からくる、脳の障害。そして、長年の幽閉による精神異常。これら二つを同時に患った人物に、王位を継がせると言う事が、
そもそもをしてあってはならない事だったのだ。それ程までに、アルケア帝国の王位継承問題は、当時逼迫していたと言う事を意味する。

 この逸話から見ても解る通り、タイタス10世は、狂化の適性を持つ……いや、バーサーカーとしてしか呼ばれぬ宿命を持つ。
始祖帝の支配下に組み込まれてすら、10世の精神性は健在。同じく乱心を起こしている2世同様、この双王は1世の支配を完全に振り切れており、通常は御す事は出来ない。
だからこそ、ムスカは令呪を使って10世を、何とか制御出来る程度にまでは落ち着かせる事が出来たが、それでも元々がそんな存在。
何時、そのメーターが振り切れるか解らない。そんな存在に、メインステージを襲わせるのだ。アイドルは間違いなく死ぬとして、ムスカとて累が及びかねない。
だからこそ、距離を取った。つまりムスカは、安全圏からこれから起こるだろう惨事を眺めようとしているのである。

 そしてその最高のショーの幕が、間もなく切って落とされる。この時に、人々の想念が光となり、レンズとなり、渺茫たる空にアーガデウムの実像を結ぶのだ。
天空の大帝国――ラピュタ――が、<新宿>の地と人を睥睨し、其処に、始祖帝と己が君臨し、聖杯を獲得するのである。

「間もなく、か」

 この曲が終われば、フレデリカの登場だった。同時に――古の都が、夢から現(うつつ)に変わる、大いなる一歩となる瞬間であった。
口の端を、ムスカは吊り上げた。犬歯を覗かせるその笑みは、酷く邪悪で、紳士の名残など欠片も存在していないのだった。


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