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本スレに投下するか迷ったような作品を投下するスレ

19オカンな悪魔:2009/05/15(金) 02:47:47
以上です。

失礼しました。

20名無しさん:2009/05/15(金) 18:41:01
>>14
GJ
ほんのり萌え。
モウンがツンデレに思えるのは気のせいかw

21名無しさん:2009/05/16(土) 23:18:04
>>14
半獣型悪魔ktkr
モウンさんは明らかにめいどg(ry じゃなかった 家政ガイ。
お持ち帰りした後のラブエロもみたいです師匠!

22名無しさん:2009/05/18(月) 01:18:05
>>14
優香がどんなサイトででそんな知識を付けたか気になるぜw
GJでした。

23名無しさん:2009/05/29(金) 01:08:34
こういうのも大好物です。GJ!

24オカンな悪魔2:2009/05/31(日) 04:09:41
微エロとストーリー上、話の殆どで人外が人に化けているのでこちらに投下します。

悪魔×少女
NG指定はタイトル「オカンな悪魔2」でお願いします。

25オカンな悪魔2 /1:2009/05/31(日) 04:15:12
『これで冷やせ。』

何故か自分を見て玄関の作り付けの下駄箱に頭を思いっきりぶつけた少女に冷凍庫のアイスノンを手渡す。

『…ありがとう。』

第一印象のショックが大き過ぎたせいか、少女はそれ以上騒ぐことはなくあっさりと礼を言って受け取り、
頭に乗せて『本当に出て来ちゃった…。』と顔を顰めた。

やはりな…。

モウンは赤い瞳を歪めた。
キッチンの床に残っていた稚拙な魔方陣の跡、あんなモノで本当に悪魔が呼び出せるはずがない。
召還の呼び掛けもごく軽いモノだった。本当に、ちょっとした遊びだったのだろう。

だが、利用させて貰う。

少女に見えないように口端に小さい曲線を描く。
モウンの男爵家は元は古代妖魔との戦いで数々の武勲を揚げた侯爵だった。だが時代が流れ、古代
妖魔を地下に封印し、魔界に温い時が流れるようになった今、未だに忠誠心を失わない多くの魔獣軍を
持つ侯爵家はその力を恐れる中央の貴族達の姦計に乗せられて没落、辺境の田舎貴族と成り果てている。

魔王達に媚を売ることしか能が無い連中にここでちょっと一泡噴かせてやるのも面白い。

モウンはゆっくりと口を開いた。

『契約を言え。どんな望みも叶えてやる。だが、望みを果たしたらお前は俺の「お嬢様」コレクションに
なって魔界に来て貰うことになる。』

『望み?どんなことでも良いの?』

少女はアイスノンを頭から外して置くと周囲を見回した。片付き過ぎた部屋に小さく息を吐くと考え込む。

顔立ちは悪くない。スタイルはこれから発育させれば良い。肌が浅黒いのは日焼けだ。襟元の肌の白さと
きめ細やかさに思わず笑みが零れる。それにこの魂の輝きときたら…。

『あたしの望みはね…。』

少女が口を開いた。黒い牛の顔の割烹着をきた大男を見上げ、くすりと笑う。

『あたしをいっしょにこの家で暮らしてくれること。』

こうして悪魔と少女の奇妙な共同生活が始まった。

26オカンな悪魔2 /2:2009/05/31(日) 04:22:28
薄く立ち上る線香の煙の中、黒いワンピース姿の優香が灰色の墓石に白房の数珠を掛けた両の手を合わせている。
蝉時雨が鳴り渡る墓地の、大小様々な墓の間の狭い通路をぶらぶらと歩きながら、モウンは石の弾く
強い夏の日差しに顔を顰めた。
八月半ば、旧盆の昼前。気温は今日も殺人的にグングンと上がり、花活けに飾られた供花がぐったりと
項垂れている。

…まあ、磨けば光る原石だとは思っていたがな。

墓石の間から、ここ五ヶ月間の自分の仕事の成果を眺め、彼は満足げに鼻を鳴らした。
外出の為、モウンは人間の男に変化している。浅黒い四角い顔に大きな鼻、角刈りの身長二メートルは
ありそうな黒いスーツの大男が『「お嬢様」は箸より重いものを持ってはいけない。』という彼の信念から、
優香の可愛らしい女性向けのバックを手に歩いているのを見て、すれ違う参拝客が顔を強張らせ、
こそこそと道を譲っていく。
今日は二人は優香の祖母の墓参りに来ていた。
マンションを出てから、途中の花屋で白い小菊の花束を買い、墓についてから周囲の草むしりと掃除をし、
花を活け、ロウソクと線香を手向けた。その間中、周りの注目を集めまくる連れに、

『モウン、悪いけど少し離れていて。』

と優香が困った顔で頼み、彼は彼女に日傘を離さないよう、しつこいくらい言い聞かせると側を離れたのだ。

しかし…五ヶ月でここまでになるとはな。

少女の横顔を眺め、目を細める。
パサついていた黒髪は光沢を帯び、浅黒く焼けていた肌はうっすらと白さを取り戻している。
発育不良気味だったスタイルも少しは育ち、へこむところはそのままに、出っ張らなければならない
ところは若干サイズアップしている。面立ちも最初に会った頃に比べ、更に明るくなり、
時折浮かんでいた不安げな表情が消えて、落ち着きが漂うようになった。

このまま育てれば…。

自分を小馬鹿にしている連中のコレクションの「お嬢様」を思い浮かべ、ほくそ笑む。

ただ見栄えばかりが良い白痴美人等、比べ物にもなるまい。金と権力の乳母日傘の下ぬくぬくと育ち、
悪魔の保護下で蝶よ花よとふわふわと生きている「お嬢様」等、俺の優香に比べれば…。

モウンが自分を呼び出した二人の少女のうち、彼女を選んだのは魂の輝きの違いからだった。
父母にこれだけ存在を無視され、ただ金だけを与えられている娘なのに、優香は明るさを失わない。
金銭は豊富にあるのだから父母への反抗に堕ちようと思えばいくらでも堕ちられるのに、むやみに乱れることもない。

よほど祖母とやらの育てが良かったのだな。

自分が育てた「お嬢様」に他の悪魔達が目を剥く様を描き、モウンは彼女の前の墓に感謝の意を投げ掛けた。

後はあれに女の色香が漂えば…。

白い肢体を腕に抱く様を思い浮かべる。あの小さなピンクの唇と柔らかな口内を厚い青黒い舌で、
思う存分蹂躙し、知識と拙い自分の手ぐらいでしか知らないだろう悦びを一つ一つ、身体に
教えて込んでいく。そして、いずれは黒い瞳を潤ませ、甘い息を吐きながら擦り寄るように…。
そこまで想像してモウンは奥歯を噛み締めた。ギリッと鈍い音が頭の中に響く。

どうかしている…「お嬢様」は無垢でなければならないというのに…。

欲望と快楽は悪魔の専売特許。だからこそ、「お嬢様」を手元に置くことにはコレクションとしての意義がある。
清らかなモノを汚し堕落させたいという悪魔の本能を押さえ、どこまで「清い」まま手元に置き続けられるか、
これもコレクターの評価の大きな一つなのだ。

なのに…。

あの晩以来、自分の中に澱のように溜まっているもどかしい思いにモウンは顔を顰めると深い息を吐き出した。

27オカンな悪魔2 /3:2009/05/31(日) 04:28:22
「ん…?」

今は周囲に合わせて黒色に変えているモウンの瞳が微かに歪む。

「呼ばれてきたか…。」

夏の日差しに照り光る墓の周りがいくつか陽炎のように揺らめいている。燃えるような暑さの中、
陰気な気配がうっすらと辺りに漂った。
死者の念だ。幽霊と呼ぶにも至らない、残留思念のようなモノである。たぶん、盆参りの人々の故人への
呼び掛けに釣られて出てきてしまったのだろう。蝉時雨と眩しいまでの陽光の中をいくつもふわふわと浮いている。
モウンは鼻を鳴らして、足早に歩き出した。悪魔にしてみれば羽虫ほどにもならない、
空気の揺らぎ程度のものだが、精神的に弱っている人間には悪い影響を与えることもある。
念の為、自分の契約主の少女の元に戻る彼の前を念が過ぎった。
手で払うまでもない、通り過ぎるだけで悪魔に触れたそれはあっけなく消えてしまう…が、周囲を
いくつも漂うそれが一箇所に集まりつつあるのを感じ、モウンは顔色を変えた。

「…優香…。」

その先には優香がいた。祖母の墓の前にうつむいている。胸の前で数珠を握り締めた手が小さく小刻みに
震えているのが見えた。漂う陰気な念は次々と集まり、そんな彼女に纏わり付こうとしている。

「優香!!」

鋭い声で少女の名を呼ぶが聞こえてないのか、顔をあげない。暗い気を背負った少女に引き寄せられるように
念は集まり、その気配を濃くしていく。濃くなった念は徐々に死霊へと変化する。
死霊は弱った人間に憑くと、憑かれた者を更に弱らせ、自分達と同じ世界…死の世界へと誘う。

「優香!!」

死霊に囲まれつつある少女を抱き寄せ、近づくものを目だけ元に戻した悪魔の赤い瞳で追い払う。
しかし数が多い。墓地のあちらこちらから旧盆の迎え火に便乗してやってきた念が次々と集まり彼等を包む。

「おばあちゃん…。」

優香の口からポツリと呟きがこぼれた。彼女の立っていた足元がこの暑さの中濡れている。
小さな顎に手を掛けると指がぬるりと濡れた。顔を上げさせるとうつろな黒い瞳が彼を見上げる。
頬全体が濡れ、わななく口から祖母を呼ぶ声が漏れる。
モウンは奥歯を噛み締めた。どうやら糸が切れたらしい。たった一人、彼女を愛してくれた祖母を亡くして一年半。
ずっと一人で頑張ってきた張りがプツリと切れたようだ。無理もない、まだ14歳、普通でも不安定な年頃だ。

「…おばあちゃん…おばあちゃん…。」

祖母を呼ぶ声が、嘆きと悲しみの念が、祖母ではなく周りの陰気な念を呼び、死霊へと変えている。
モウンは小さく舌打ちをすると口の中で力ある言葉を呟いた。


『優香!!』

遠くで呼ばれる声が少女の頭を通り抜けた。
墓参りに来た彼女の目に映ったのは灰色一色の祖母の墓だった。
旧盆も終わりの一日、周りの墓は花が飾られ、ロウソクと線香が上げられた跡が残っているというのに、
祖母の墓には何一つ置かれていない。

おばあちゃんもひとりぼっちなんだ…。

そう思った途端、何かが自分の中で壊れた。

おばあちゃんもひとりぼっち…あたしもひとりぼっち…。

祖母の墓に祈っているうちにいつしか涙が溢れてきた。
何も無い墓に、たったひとりで暮らしていたころの自分が重なる。

きっとあたしがあのまま一人で死んじゃってもお父さんもお母さんも、おばあちゃんのように
放って置くんだろうな…。

両親には家族など何の意味も持たない。その事実が彼女を只一人愛してくれた祖母の墓にはっきりと印されていた。

『優香!!』

また声がした。と、同時に何か大きくて暖かいものが自分を抱き締める。
太い腕が背中をしっかりと抱える。顎を軽く摘まれ持ち上げられた。

もう、いやだ。こんなところいやだ。おばあちゃんのところへ行きたい…。

「…おばあちゃん…おばあちゃん…。」

祖母を呼ぶと小さな舌打ちの音が聞こえた。少し間を置いて、すっと蝉時雨の音が遠のく。

『…優香…。』

小さな、だが優しい声が耳に響くと唇に大きな暖かなモノが重なった。

28オカンな悪魔2 /4:2009/05/31(日) 04:36:43
暖かい…。

自分を包み込むモノが重なるモノが暖かくて、手を大きな何かに回してギュッとしがみ付く。
何かが自分の背中を優しく撫でている。

…手…?

大きな手が自分の背中の感触を味わうように上下している。上から下へ、下から上へ、ゆっくりと背骨に
そって太い指が動く。

「…あ…。」

気持ちが良い。ぞくぞくするような感覚が背中を駆け上り、息が軽く乱れる。小さく漏れた声を
重なる大きな唇が吸い取る。

「…あ…ん…。」

手は一つはしっかりと優香の腰を抑え、もう一つは彼女の反応に答えるように更に下に下がる。
黒いワンピースのスカートの上から、大きな手が今度は彼女の小ぶりな尻を撫で回す。

「う…ん、…あ…。」

気持ち良さと恥ずかしさに小さく身じろぎをするが腰の手ががっちりと彼女を抑えていて動けない。
手は撫でるだけでなく、指で弾力を楽しむように柔肉を押してくる。

「…やっ…だめ…。」

押される度に甘い感覚が沸き起こる。喘ぎつつ抗議するが声は全て吸い取られてしまう。
しかし、それはしっかり相手には伝わっているらしく、手の動きは段々大胆になっていく。

「…やだ…あん…は…ふ…。」

尻全体を揉みしだかれる。太い指が割れ目に入り柔肉を押し広げなから上下する。
撫でられる度に感覚がますます鋭くなり、ビクリ、ビクリと背中が震える。
いやらしいことをされていると解かっているのに抵抗が出来ない。包み込むような逞しい胸が暖かくて、
重なっている唇が心地良くて、腰に回された手が優しくて、気持ち良くてたまらない。
しがみ付く手に力が篭る。息がますます荒くなってくる。下腹部と足の付け根がだんだんと熱を帯びて、
そこも触れて欲しくなる。
熱い息を吐きながら優香は目を開けた。いつもの黒い牛顔の自分の悪魔の顔がそこにある。
顔を見下ろす赤い瞳は何故か怖いくらい真剣だ。優香は再び目を閉じると自分から伸びをして
唇を押し付けると囁いた。

「…モウン…もっと…。」

その声に手がスカートの中に入り込む。ゆっくりと太ももを外から内側に指が這い上がる。

「…あ…あん…!」

さやさやと鳴る衣擦れの音がひどく恥ずかしい。なのに身体はもっと強い刺激を欲しがる。
そっと閉じた足の力を抜く。それを合図のように指がショーツの縁に掛った。

『お母さん!早く!!』

パタパタと軽い足音が聞こえてくる。小さな男の子の声が側を駆け抜け、次の瞬間二人は慌てて離れ、
互いに飛び退いた。

29オカンな悪魔2 /5:2009/05/31(日) 04:42:07
大きく深呼吸をすると優香はスカートの乱れを直した。ちらりと横目でモウンを見上げると彼は顔を背けて
眉を顰め、何かブツブツと呟いている。

「「お嬢様」は「清らか」でないといけないんじゃなかったの!?」

気持ち良さに負けてつい自分から誘ってしまった恥ずかしさから、つい責める口調で文句を言うと
悪魔はやむえない手段だっただの、不可抗力だの、もそもそと言い訳を始める。

パシン!!

突然、空気の鳴る音がした。さっき自分達を邪魔して…もとい、止めてくれた親子連れが薄い膜のような
揺らぎの向こうで驚いた顔でこちらを見ている。

「調子ついてきたな。」

モウンが周囲を睨み、舌打ちする。

「あっ〜!!」

突然、優香が悲鳴を上げた。

「モウン、元の姿に戻ってる!!それに、もしかしてさっきの皆に見られてた!?」
「…今頃、そこに気が付くか?」

呆れた声に優香は周囲をきょろきょろと見回した。親子連れの他にも墓地にはちらほらと花や桶、
ヒシャクを持った参拝客の姿が見える。少女の顔が真っ赤に染まった。

「やだあ!!もうお嫁に行けない!!」
「行かんでいい!!お前は俺のコレクションだろうが!!」

何故か大声を出した後、モウンが眉間を揉む。

「大丈夫だ、ここは元の世界から薄紙一枚程隔てた異空間だ。こちらからは外が見えるが、向こうからは見えない。」

その答えに優香は赤い頬を両手で押さえつつ、ほっと息をついた。

パシン!!バチン!!

また音が鳴る。バンバンと壁を手の平や拳で叩くような音が重なる。
気味の悪さに慌ててモウンに飛び付くと、彼はしっかりと彼女の肩を抱き寄せた。

「ラップ音だ。死霊が調子ついて鳴らしている。こちらの空間に気付いて、入り込もうとしているモノもいる。」
「死霊?」
「なんなら見るか?今、目の前に沢山並んでいるぞ。ちょっと霊感を高めれば見れるが。」
「…夜、眠れなくなるから辞退致します。」

ぶるりと身震いして優香が丁重に断る。

「そうか。なに、お前が正気に戻ったなら心配は無い。追い払うから待っていろ。」

優香の肩を抱いたまま、モウンは軽く手を振った。ゴウッと音がして参拝客の悲鳴が上がる。
熱い風が墓地を吹き抜ける。墓の前の供花達が大きく揺れた。
風に音が次々と消える。恨みがましい悲鳴のようなものが聞こえ、優香は彼にしっかりとしがみ付いた。
モウンが指を鳴らす。目の前の揺らぎが消え、つんざくような蝉時雨が降ってくる。

「もう、大丈夫だな。」

ギュッと肩を抱く手の強さに隣の悪魔を見上げると、いつの間にか人の姿に変化し直した彼は大きな手で
ワシワシと優香の頭を撫でた。

30オカンな悪魔2 /6:2009/05/31(日) 04:44:14
風に流された日傘を探しに行った悪魔が戻ってくる。

「ちゃんと差していろ。紫外線は肌の大敵だ。」
「うん。」

大きな手からそれを受け取ると優香はモウンの顔を見上げた。
小さく日傘を回して微笑む。

「おばあちゃん…。」

優香は祖母の墓に向き直った。

「あたし、もうひとりぼっちじゃないから。」

甘えるように隣の悪魔の腕に腕を絡める。

「ねえ、モウン。」
「…まあな。」

むすっと答えるモウンに明るい笑顔を向けると腕を離し、もう一度日傘を回して歩き出す。

「お昼食べに行こう!この近くのカレー屋さん、インド風のチキンカレーとナンがおいしい店を教えて貰ったんだ!」
「ああ。」

優香の細い足が弾むように石畳を蹴る。さっきの暗い気から立ち直り、笑顔ではしゃぐ少女を、
悪魔が眩しそうに見詰める。
優香の日傘が細い道を曲がり、木造りの寺の門へと消えた。

「…まさか…この俺がな…。」

モウンの口から真剣な声が漏れた。頭に浮かんだ認めたくない答えに首を振ると、ふと背中に揺らぎを感じる。
優香の祖母の墓、日差しにキラキラと煌く小菊の間に陰気を帯びない念が揺らめきながら現れる。
悪魔は黙ってそれを眺めた。大きく息を吐く。

「早く〜!!何してるのぉ〜!!」

優香の声が自分を呼んでいる。クルリと踵を返し、そちらに足を向ける。

「心配するな。もう決して一人にはしない。」

低い呟きともとれる声が蝉時雨の中、しっかりと響いた。


(了)

31オカンな悪魔2:2009/05/31(日) 04:46:12
以上です。

失礼しました。

32名無しさん:2009/05/31(日) 12:54:18
いいよいいよ!GJ!
お嬢様を育てる悪魔ってのがとてもいいシチュだ!

33オカンな悪魔終:2009/06/14(日) 03:20:41
「オカンな悪魔」の最終話です。

悪魔×少女
和姦 挿入無し。
NG指定はタイトル「オカンな悪魔終」でお願いします。

34オカンな悪魔終:2009/06/14(日) 03:22:57
繊細なバイオリンの旋律のクラシックが会話を邪魔しない程度の音量で静かに流れている。
ピンと張られたシミ一つ無いクロスが敷かれたテーブルには香りを押さえた花が飾られ、
壁には美術展で見るような重厚な質感の油絵が掛けられている。
東京ミシュランにも掲載された創作フランス料理の高級レストラン。
価格破壊の激しい最中、ワインだけで十万円以上取られるレストランの個室で、
優香は目の前の白い皿の濃厚なソースの掛ったステーキを苦労して腹に収めていた。
去年の春から同居している、口うるさいが料理の腕は天下逸品の悪魔の作る薄味の和食のせいで、
夕食に重いモノは胃が受け付けてくれない。
お腹に溜まる食事に小さく息をつくと最後の肉片を飲み込み、背の高いグラスから水を飲んだ。
食が中々進まないのはテーブルに同席している一組の男女のせいもある。
ブランドのスーツを普段着のように自然に着こなした薄い顔の男と、一回ン十万円のエステのお陰で
未だに一つの皺も弛みも無い整った顔の女。

「うむ…例のミシュラン掲載以来、少々味が濃くなったな。」
「押し掛ける大衆客向けに味を変えたのかしら。」

お互い作ったような笑顔で自分に笑い掛ける二人…自分の両親に優香は聞こえないよう深く息を吐いた。

35オカンな悪魔終 /2:2009/06/14(日) 03:26:22
最後に運ばれてきたデザートにほっと息をつくとスプーンを取り上げる。
これまた濃厚な味ののムースに胸焼けしながらも、これで最後と無理をして食べていると、
隣で食後酒を飲んでいる父がチラリと優香を見た。

「お前も今年で中学三年生か…。」
「えっ?そうなの?」

母が驚いた声を上げる。そんな母に小さく苦笑を口端に刻むと父は、彼がいつも取引相手に
そうするように優香を上から下まで値踏みするような目付きで眺めた。

「進学先は決めておくから、今度のテストの結果を送れ。成績次第では受験まで学習プランを立てねばならん。」
「…学校はどこにするの?」

優香の消え入りそうな声の問いにグラスを傾けつつ唸る。

「如月グループの娘に相応しいところだ。全く母さんにも困ったものだ。
あんな平凡な学校に決められたお陰で三年間が無駄になってしまった。」

無駄ときっぱりと言われ、優香の持つスプーンが小さく震え、皿に固い音を立てる。

「だから私が言ったでしょ。海外の学校が良いって。お母様ったらそれでは優香が一人で
可哀想なんていうんだもの。今度こそ海外のお嬢様学校にしましょうよ。良い自慢になるわ。」
「…それじゃあ、今のお友達と離れちゃうよ…。」

小さく抗議する娘に母がコンマ一ミリ単位で整えた細い眉をピクリと動かす。

「あんな一般の学校の子なんてどうでもいいでしょう。新しい学校でもっと格式のある家の子と
付き合えば良いじゃない。」

優香は小さく唇を噛んだ。
いつもこうだ。父と母は自分言うことなど少しも聞きはしないし、自分の気持ちを考えることなど
最初からしようとすらしない。
虚しさの漂う会話に、もうこんな不快な時間は早く終わらせようと無理矢理、皿のムースを口に押し込む。

「それと最近お前のマンションに一緒に住んでいるという男のことだが…。」

父の言葉に優香の口の動きが止まった。

「やだ、この子ったらこの歳で男を部屋に引っ張り込んでいるの?」

母が嘲るような笑みを父に向ける。「誰に似たのかしら?」

「お前だろう。」

あっさりと眉一つ動かさず父は母に言ってのけると優香に向き直り言葉を続ける。

「母さんの知り合いの親戚の男という触れ込みらしいが調べはついている。
どこの馬の骨かはしらんが早々に追い出すからな。代わりに家庭教師兼任の家政婦を入れる。
今度は住み込みで勉強も生活面も厳しくしつけてくれる者をな。」

…モウンと別れさせられちゃう…。

スプーンを握る指が震えながら白くなる。微かにぼやけ始めた視界の向こうで父と母がお互いに
皮肉りながら自分の進路を話し合っている。
完全に自分を置いてけぼりにした会話を聞きながら、優香は必死に二人の前で泣き出してしまわないように
唇を噛み締めていた。

36オカンな悪魔終 /3:2009/06/14(日) 03:29:27
「遅い。」

マンションの入り口でオートロックを開けて、自分の部屋の玄関のドアを潜った途端、
玄関で正座で待ち受けていた割烹着姿の黒い牛頭の悪魔が文句を言う。

「ごめんなさい。」

小さく謝ると大きな手を伸ばし優香の手のバッグを受け取る。

「お前に言っているんじゃない。全く中学生をこんな夜中まで引き回してお前の両親は何を考えているのだ?」

既に日付が変わった時計の針を睨むモウンに、「自分達のことしか考えて無いよ。」と答えそうになって
優香は口をつぐんだ。

「風呂が沸いている。入って来い。着替えももう用意してある。」
「うん。」

いつものように手際の良い悪魔に素直に頷く。
次々と先回りして世話を焼いてくれるモウンの隣がいつも以上に心地良い。バッグの手入れをする為、
自分の部屋に向かう大きな背中に急にすがりつきたくなって手を伸ばしかける。

…別れたくない…!!

先程見た父の薄い笑みが脳裏を横切る。少女は一つ息をつくと腕を下ろし風呂場へと向かった。


風呂場は柔らかなラベンダーの香りが満ちていた。
この一年の付き合いでモウンは、彼女が両親と会ったときは心身共に疲れて果てて帰って来るのを知っている。
薄紫色のお湯に満たされたバスタブで細い手足を伸ばして、優香は湯気の向こうの白い壁を眺めた。

『優香ちゃん、お風呂が沸いているから入ってらっしゃい。』

優しい祖母の声が聞こえる。祖母も彼女が両親と出掛けて帰って来た時は、
この香りのするお風呂を用意してくれていた。

「おばあちゃん、あたしね、モウンに出会ったとき、おばあちゃんの代わりをしてくれる人に会えたと思ったの…。」

小さな声が風呂場に響く。

「でも…今は違うんだ…。」

あの、いっしょに居てくれると言ってくれた晩のキス以来、モウンの態度はわずかながら優しくなってきている。
初めは自分のコレクションの「お嬢様」を育てる為の、手は込んでいるが事務的な世話だったのが、
少しずつ優香の気持ちに合わせてくれるようになっていた。
いつもどんなに遅くなっても玄関で待っていてくれる。落ち込んでいると黙っていても
優香の好きな食事を作ってくれ、なるべく側にいてくれる。
いつも態度はそっけないが、そこには自分への気持ちが込められている気がした。

「…別れたくない、離れたくないよ…。」

声が涙を帯びていく。
ずっと側にいて欲しい。世話を焼いてくれなくていいから、「お嬢様」コレクションのひとつでいいから、
ずっとずっといっしょにいて欲しい。

「…モウン…。」

喉の鳴る音が重なる。湯気以上にぼやけた視界に優香は両手を顔に当てた。ずっと堪えていた涙が零れ落ちる。
しかし、父はやるといったらやる男だ。いずれは自分がそうしたように自分の都合良く嫁がせる
一人娘に悪い噂が立たないよう、モウンをどんな手段を使っても優香から引き離すに違いない。

「やだよ…だって…あたし、モウンのこと…。」

父や母からすれば今の自分の想い等、爪の欠片程にも気にならないモノだろう。
手で顔を覆ったまま優香はどうにも出来ないむなしさにポロポロと泣き続けた。

37オカンな悪魔終 /4:2009/06/14(日) 03:31:54
風呂から上がってパジャマに着替えリビングに入ると、テーブルの上に可愛い花柄のカップが置いてある。

「ジャスミンティーだ。口の中がさっぱりする。」

隣に座った世話焼きな悪魔の声に暖かな金色のお茶を啜る。涼やかな花の香りと共に
口の中に粘ついたまま残っていたムースの味が溶けて流れていく。

「後、これも飲んでおけ。胃薬だ。お前は夜中に重い食事を取ると必ず胃がもたれるからな。」

トレイに乗せて差し出された水と粉薬を受け取り飲み込む。薬の苦味に顔を顰めてジャスミンティーの残りで
口をゆすいでいると大きな黒い手が頭の上に乗った。

「いやに長風呂だと思っていたら、泣いていたのか?気にするな。お前の両親等、俺にかかればどうにでも出来る。」

内容は物騒だが優しい響きの声に顔を上げる。赤い瞳はあの墓参りの出来事以来、どこかいつも自分に暖かい。

…モウン…。

優香は思わず彼に飛びついた。

「おい!?」

いきなり首に抱きついてきた少女にモウンが驚きの声を上げる。
それに構わず優香は彼の背中に手を回すと思いっきり叫んだ。

「あたしを今すぐ魔界に連れて行って!!」
「はぁ!?」
「お願い!あたしを今すぐにモウンのお城に連れていって!!」

抱きつく手に力を込め、呆然としている悪魔に訴える。

「お願い、向こうでモウン好みの「お嬢様」になるから、もしなれなかったらメイドさんでもなんでもやるから、
あたしをモウンの側に置いて!!」
「…おい、優香…。」
「お父さんがモウンをここから追い出すって…。」

また涙が零れ出す。

「お父さんはするっていたら、何でもやってしまう人なの。あたし、モウンと別れさせられちゃう…。」
「おい、お前は俺をいったい何だと…。」
「別れたくないの!!離れたくなんてないの!!」

ギュッとしがみ付き、暖かな大きな肩に顔を埋める。

「…あたし、モウンが好きだよ。大好きだよ。だから、お願い、ずっと側に居させて。」

赤い瞳を丸くしている悪魔に顔を上げ、涙に濡れた目を向ける。
優香はそっと柔らかなビロードのような短い毛に覆われた首から頬へと手を撫でるように回した。
そのままモウンの頬を両手で挟む。ゆっくりと顔を近づけ自分の唇を彼のいかつい唇に重ねると、
目を閉じて強く押し付けた。

38オカンな悪魔終 /5:2009/06/14(日) 03:34:34
…全く、この娘は…。

目を閉じ、すがりつくように自分に口付ける少女の背に腕を回して抱き寄せる。

…どこまで、俺を惑わせれば気が済むんだ…。

いつもなら、連れて行けと訴えた段階で嬉々として魔界に連れて行くところだ。…普通の人間なら。
ゆっくりと唇を動かし、優香の小さな下唇を挟む。そのまま上唇を上げて少女の口を開けると舌を
暖かな口内へと滑り込ませた。

「…んっ…。」

モウンの厚い舌に優香が小さく呻く。チロチロと舌を動かし中をまさぐるとおずおずと彼女は自分の舌を絡めてくる。
一度唇を離し、今度は彼女の口を覆うように口を重ねる。モウンは再度舌を彼女の口の中に潜り込ませた。
拙い動きの優香の舌に強引に舌を絡める。舌を離すと歯列を頬の内側を舌先でなぞる。
クチャリと湿った音がお互いの頭に響いた。

「…ふ…っ…。」

塞がれた口から篭った呻き声が漏れる。
小さな少女の口には余る大きな牛の舌を受け入れているというのに優香は引こうとはしない。
手を首に回しすがりつく少女の身体をモウンはしっかりと抱き締めた。
自分と契約した様々な人間の顔が浮かぶ。永遠の美貌と若さを求め、自ら淫魔となることを望んだ少女、
悪魔の与える快楽を求め身体を投げ出した女、自分から見れば、つかの間の現世での富と名誉を求め
悪魔を喚んだ男、すべて望みを敵えた時点で自分の格を上げる魂のコレクションとして魔界に連れて帰った。

だが…。

暖かな少女の口内を思う存分味わいながらモウンは満たされるような心地良さに酔った。

この娘は、優香は違う。

大きな手で少女の身体をまさぐる。背中から前へ、未発達な小ぶりな胸を軽く揉むと腕の中の細い身体が
ビクリと跳ねる。だが、優香は唇を離そうとしない。小さな舌が口の内を嘗め回すモウンの大きな舌を撫でている。

この娘が求めているのは俺自身だ。

手を少女の股下に伸ばす。パジャマのズボンの上から股間を後ろから前へ何度も撫でる。

「…ふあっ…!」

甘い刺激に反射的に離れようとした頭の後ろに手を回し、強引にキスを続ける。

こいつは俺を…俺そのものを欲しがっている。

太い指で秘裂をなぞる。探り当てた肉芽を指で押し潰すと細い身体が仰け反った。

「…ああっ!!」

強い刺激に優香が思わず口を離す。唾液の糸が二人を繋ぎ、プツリと切れた。
息を乱した少女が濡れた目で自分を見上げている。
モウンは小さく笑むとその細い身体を思いっきり抱き締めた。

39オカンな悪魔終 /6:2009/06/14(日) 03:37:09
「魔界に連れて行けというのなら、連れて行ってやる。」

少女の柔らかな背中を撫でながら、モウンは言い聞かせるように黒い髪の耳元で話し掛けた。

「しかし、本当に良いのか?後悔はないか?人としてやりたいことは残っていないのか?」

畳み掛けるような質問に優香は顔を上げた。

「どうして…そんなことを聞くの?」
「俺は泣いたままのお前を魔界に連れていくつもりはない。」

モウンは顔を顰めると真っ直ぐな優香の視線から目を反らせた。

「どうせなら笑顔の方が良い。その…いつもの笑顔のお前を連れて行きたい。」
「でも…。」
「父親のことなら気にするな。さっきも言ったが俺は悪魔だ。人間の心を変える等造作もない。」
「優しいんだ、モウン。」

優香は思わず笑い出した。両親に今日の夕方、学校から強引に食事に連れていかれて以来、初めて笑ったなと思う。
悪魔は腕の中の少女の笑顔をチラリと横目で眩しそうに見ると大きく息を吐いた。

「…自分でも最近知ったが、どうやら俺は惚れた女にはとことん甘いらしい。」
「え?」

優香は目を丸くした。目の前の悪魔の牛の耳がピクピクと震えている。ゆっくりと言葉の意味を考え、
気がついた瞬間、少女の顔が赤くなった。

「それって、もしかして告白?」
「…うるさい。」

モウンが更に顔を顰める。

「…モウンって照れるとしかめっ面になるのよね。」
「…やかましい。」

むっとした声に笑い出す。明るい弾けるような声でひとしきり笑うと悪魔の胸に寄り添い身体を預けた。
学校の友人達の笑顔を思い浮かべる。つい先日彼岸の墓参りに行った祖母の墓も。

「…皆と同じ高校に行きたいな…後、おばちゃんのお墓もひとりぼっちにしたくない…。」
「契約変更だな。」

モウンがニヤリと笑い、優香に真っ直ぐ顔を向けた。

「俺はお前の側にいてお前を両親から守る。その代わり、お前にはその高校とやらを終え、
祖母の墓をどうするかを決めた後、俺の「花嫁」として魔界に来てもらう。」

モウンの口から出た「花嫁」という単語に優香の頬が再度赤く染まる。

「…もう「お嬢様」にはならなくていいの?」
「これを知ってしまったからな。」

モウンの太い人差し指が優香の股の間に入り込み、まだ痺れが残る肉芽を弾く。

「やぁん!!」

再度与えられた刺激に優香が大きな胸にしがみ付く。

「うずいているだろう。イカせてやろうか?」
「…うん。」

恥ずかしさから胸に顔を伏せ頷く腕の中の少女に悪魔の喉が更に楽しげに鳴り響いた。

40オカンな悪魔終 /7:2009/06/14(日) 03:43:58
優香をソファーに寝かせ、剥き出しにした細い足の太ももに手を掛けて大きく割り開く。
まだ女に成り切らない少女の秘所を眺めてモウンが小さく鼻を鳴らした。
浅い茂み、男を知らないピンク色に割れ目には小さな肉芽が触れて欲しそうに顔を覗かせている。

「…は、恥ずかしいよぉ…。」

消え入りそうな優香の抗議を無視して秘裂を指で開く。

「…ん…。」

小さく呻く声を聞きながら、そっと奥の窪みを指でつついた。

「…つっ!!」

優香が痛みに息を飲む。

「まだまだ、ここはお子様だな。」

ボソリと呟いた悪魔に「その、お子様にいやらしいことしているのは誰よ!」と声が上がる。

「どれ、どのくらいのモノになるか確かめてみるか…。」

モウンは青黒い大きな牛の舌をヌラリと出すとざらついたそれで優香の秘所を下から上へと舐め上げた。

「ひやぁ!!」

覚悟していたとはいえ、予想していたより遥かに大きく甘い刺激に優香が声を上げる。
ゆっくりと表面を軽く覆うように舐めながら、手をパジャマの中に入れる。
下着の中に手を入れるとまだ未発達な胸を撫で回した。

「…うっ…ああ、あっ、ううん…。」

秘所と胸に与えられる刺激に優香が小さく身じろぐ。薄い胸を寄せるように撫で回し、頂に指を触れさせると
更に甘い声が響く。
太い指で両方の頂きをこね、ヌラヌラと舌を動かし秘裂を開くと壁に丁寧に舌を這わす。
ゆっくりと形を確かめるように花弁を嘗め回し、ぷっくりと膨れた肉芽をつついた。

「…あっ!!ああん…はぁ…。」

優香の顔が歪む。小さな手がすがるものを欲しがり彷徨い、
パジャマ越しに下腹に当たるモウンの牛の角を掴むとしっかりと握り締めた。
膝裏に手を掛け、足を高く持ち上げる。大きな舌が少女の太ももを這い上がる。
所々強く吸い付き、赤い跡を散らすと優香が甘さを伴う微かな痛みに小さく呻く。
左右の足の付け根に吸い付き、そこにも跡を残す。舌を秘所に戻し
ほぐすように丁寧に窪みの上をなぞり、つつくと乱れた息と同時に細い身体が震えた。
小さく指を鳴らし、脳裏に自分が愛撫する優香の姿を映し出す。
舌先で肉芽をつつき、くすぐりこねる。最も敏感な部分を弄られて優香が甘い声を上げつつ
反射的に足を閉じようとする。
太ももに掛けた手に力を込めて、それを押し返すと彼女は大きく身をよじり、
角を掴む手に更に力が篭り指が白く染まった。

41オカンな悪魔終 /8:2009/06/14(日) 03:44:54
「ほお…色っぽいな…。」

感心の声を上げると与えられる刺激に敏感になった肉芽に掛った息だけで感じてしまうのか、
優香がぎゅっと唇を噛んで首を振る。ショートヘアの髪がソファーの布に当たりパサパサと音を立てた。

「なかなかのものだ。」

再度股間に顔を埋めると、牛頭の男の角を握り締め、快楽に細い眉を顰め、
閉じた紅色に染まった瞼を震わせて鳴く少女の姿が脳裏に映される。
小さな口は初めて他人から与えられる甘い刺激に大きく開き、喘ぎ声と共に透明な唾液が口端から零れた。

「ああ…ああっ…やだ…あん…やだぁ!!」

細い身体が弓なりに仰け反る。ザラザラとした獣の舌に執拗に秘所を嘗め尽くされ、足の指がビクビクと跳ねる。
固く閉じた瞼から涙が零れ落ちた。

「やだぁ…やだよぉ…。」

想像以上の強い快楽に耐え切れず少女が泣き出す。だが、身体自体は反対に素直に刺激に反応し蜜を零す。
それを見て、まだ何も入ったことの無い胎内に悪魔の舌が滑り込んだ。ヌラリとした感触にヒクッっと喉が鳴る。

「して欲しいと言ったのはお前だろう?」
「でも…でもぉ…っ!!」

もう一度、舌が胎内に入り込む。大きな牛の舌は微かな痛みを伴いながら彼女の身体を開き、中で蠢く。
不可解な、だが確かな今までもよりも身体の奥底に響くような未知の快楽に優香は大きく首を振った。

「やだ!!…やだ、やだぁ!!」

太い指が秘裂を割り、壁を走り、肉芽を撫でる。胎内では大きな舌がうねうねと動く。
直接与えられる鋭い刺激と奥を掘り起こすような刺激、重なる二つの快楽に幼い腰が動き始める。

これは、なかなかのモノになりそうだ…。

上物を手に入れた予感にモウンの口端が綻ぶ。しかも心も自分に夢中の娘だ。

「もう、やだ…やめて、やだ!!…あっ…ああっ!!」

否定の言葉が悪魔をより喜ばせているとは解からず少女が叫ぶ。
自分の身体がより深い快楽を求めて動き出しているとも知らず、腰を振りながら喘ぐ。
奥から蜜が湧き出し、悪魔の舌を刺激する。

ここまでにしておいてやるか…。

ヒクヒクと震える喉と零れる涙に愛おしさを感じながら、モウンは大きく舌を動かし優香の胎内を嘗め上げた。
同時に指で肉芽を摘み押し潰す。

「あっ…あああっ!!」

少女の身体が大きく跳ね、悪魔の舌を締め付ける。甲高い甘い悲鳴の後、細い身体はぐったりとソファーに落ち込んだ。

42オカンな悪魔終 /9:2009/06/14(日) 03:53:33
口の周りについた優香の蜜を青黒い舌で舐め取るとモウンはまだ身体を震わせている少女を抱き締めた。
荒い息をしている口元の唾液を舐め、そのまま軽く口付ける。

「…あの…モウン、その…もう終わり?」

戸惑いつつも聞いてくる声に「最後までして欲しかったのか?」と問うと優香は困った顔で眉を顰めた。

「俺をその辺の年中発情中のがっついた餓鬼と同じにするな。お子様の身体に無理を強いるつもりはない。」
「…お子様じゃないもん…。」

優香がむっとしたように頬を膨らます。「それが、お子様だ。」からかうような悪魔の声に
今度は口を尖らせる。

「どうせ、お前は俺のモノだ。これからゆっくりと教え込んでやる。」

モウンは楽しげに喉を鳴らした。

「このまま処女のまま開発して、挿れて欲しさに自分で股を開いてよがりながら、
俺の上に跨るように仕立て上げても良いな。」
「モウンの変態…。」

頬を染めて抗議する少女に赤い瞳がいたずらめいた笑みを含んだ。

「悪魔を惚れさせたんだ。それくらい覚悟しろ。」
「…う〜。」
「悪魔に惚れたんだ、それくらい我慢しろ。」
「…う〜。」

不満げに唸りつつも自分から離れようとしない少女の頭をモウンは優しく撫でた。

「風呂場に連れていってやるから、身体を洗って、もう寝ろ。お子様はとっくにねんねの時間だ。」

脱がしたズボンと下着を拾って、腕の中の少女に言い聞かせる。

「…お子様じゃないもん。」
「明日は特別好きな時間まで寝ていていいぞ。起きたら軽い食事を用意しておく。」
「うん。」

口では子供では無いと言いつつも優香は幼女のような甘えた笑みを浮かべる。

「高校とやらは自分で決めろ。お前には俺がついている。父親に化けて手続きを取るのも、
後で両親に自分が納得して了解したんだと暗示を掛けるのも簡単に出来るからな。」
「うん!」

心底安心した顔で嬉しそうに笑う優香を黒い牛顔が覗き込む。悪魔はニヤリと笑うと大きく鼻を鳴らした。

「その代わり、これからは「お嬢様」ではなく、俺の「花嫁」に相応しい「淑女」になって貰う。
…もちろん、夜の方もだ。」

黒い手が剥き出しの下腹を撫でる。

「…ん…!」

小さく身を捻り、優香が自分の悪魔を睨み付ける。

「…変態。」
「諦めろ。」

モウンが喉を鳴らして笑った。

「絶対に離さんからな。」
「うん。」

腕を伸ばし、太い首に抱きつく。モウンが優香を抱き上げ、廊下を歩き出す。
二年ぶりに出来た暖かな居場所に少女の顔に花のような笑みが零れる。
優香は自分の悪魔の腕の中に全身を預け、頭を寄せると抱きつく手にしっかりと力を込めた。


(了)

43オカンな悪魔終:2009/06/14(日) 03:55:50
以上これで完了です。

失礼しました。

44名無しさん:2009/06/14(日) 05:10:33
リアルタイム乙
モウンのおかんで紳士なとこが大好きだわ
二人とももっと幸せになっちゃえばいいのに

45変態紳士:2009/06/14(日) 22:17:12 ID:6LRruSgE
GJ!
悪魔なのに優しいモウンに萌えました。

46変態紳士:2009/06/14(日) 22:18:41 ID:6LRruSgE
へ、変態紳士が名前欄w

47変態紳士:2009/06/14(日) 22:47:42 ID:G.DTpj32
GJでした!
顔しかめ&耳ピクピクさせて照れるモウン萌えw
二人でお幸せに〜

48変態紳士:2009/06/14(日) 22:51:13 ID:G.DTpj32
名前欄が 名無しさん→変態紳士 に変わったんだな
びっくりしたw

49859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:36:54 ID:s8VVcypg
絵板67氏のイラストを元に書いてみました。
非エロなのでこちらに投下。ヒーロー×少女で、NGは Hero of Hero!で。

50Hero of Hero! 1 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:38:14 ID:s8VVcypg
 サニー・サインドはヒーローである。
 誰から決められたわけでもないが、物心ついた頃には、その自覚を持ち合わせて生きてきた。
銀色の体は鋼よりも頑丈で、拳は一撃で岩を粉々に砕き、両足で大地を蹴れば空まで跳躍する。
 人並み外れた力を持ち得て生まれた彼は、当然ながら、良からぬ連中から目を付けられている。
有り体に言えば悪の組織だが、世界征服を目論む彼らにとってヒーローであるサインドは厄介だ。
悪の組織が放つ怪人達は頻繁にサインドへと差し向けられているが、どれもサインドの敵ではない。
理由は簡単、サインドが強いからだ。強くなければヒーローとなど名乗れず、正義など行使出来ない。
 しかし、そんな彼にも唯一の弱点がある。それは、目の前で仁王立ちしている仏頂面の少女だった。
小柄で華奢で、裾がふんわりと広がった少女らしいワンピースの上に青いカーディガンを羽織っている。
少しだけクセの付いた髪は二つに分けて結ばれ、ワンピースに合わせた色のシュシュを付けている。
見るからに非力で、守ってやりたくなるような愛らしさがあるが、今ばかりはそう思えそうになかった。

「たったの三日間、顔を見せなかっただけなのに」

 少女、戸末りくは眉間のシワを深く刻み、小さな唇を曲げ、控えめな胸を張った。

「どうしてこんなに散らかってるんですかっ、サインドさん!」

 二人の現在位置は、サインドの自宅でありリビングであるが、その全てはモノに埋め尽くされていた。
リビングテーブル、ソファー、床、戸棚、テレビ台、引いては電話台に至るまでがゴミに襲われている。
その大半は酒類の空き缶と食料品のパッケージで、リビングと隣接したキッチンまでがゴミ溜めだった。
 りくにじっと睨み付けられたサインドは、やりづらくなって顔を逸らそうとしたが、咳払いが聞こえた。
渋々、オレンジのバイザーを彼女に向けると、りくはゴミを蹴散らしながらサインドに歩み寄ってきた。

「あなたはヒーローなんですから、もうちょっと自覚を持って下さい!」
「持ってる持ってる、持ってるからこうなるんだろうが!」
「いい加減、自分の身の回りぐらいはきちんとしたらどうですか! いい歳してみっともない!」
「だから、俺が何かやろうとすると、決まって怪人が現れてだなぁ!」
「現れたらどうだって言うんですか、怪人が現れない時間の方が明らかに長いじゃないですか!」
「一戦交えたら疲れるんだよ、面倒になっちまうんだよ!」
「それは言い訳です! せめてゴミはゴミ袋に入れて下さい! きちんと分別して下さいね、ヒーローなんですから!」
「だから、しようと思ったらあいつらが出てきて…」
「だから言い訳は聞きません、自堕落なのはあなたの責任です!」

 りくは、サインドの目の前に人差し指を突き出した。

「世界の平和を守る前に、あなたの部屋の平和を守って下さい、サインドさん!」
「…世界に比べりゃ、俺の部屋が汚ぇことなんて」
「何か言いましたか」
「いや、別に」

 サインドはりくの前から一歩身を引き、肩を落とした。りくの言うことは至極もっともで、反論出来ない。
だが、部屋を片付けようとすると、本当に都合悪く怪人が出現して街中で暴れ出してしまうのである。
警察や消防や市長から通報があるので、ヒーローである以上はそちらを優先しなければならない。
そして、怪人と激闘を繰り広げて帰宅すると、当然ながら疲れているので適当に酒を喰らって寝てしまう。
 りくが部屋に訪れなかった三日間はその繰り返しで、自分でもダメだと思ったがどうにも出来なかった。
ヒーローであろうと、所詮は自堕落な独身男である。仕事のために生活が二の次になるのは仕方ない。
その辺のことをりくに理解してほしいと思ったが、口にしたらもっと怒られるので、言えるわけがなかった。
 戸末りくはサニー・サインドの助手である。彼女が怪人に襲われたところを助けたことを切っ掛けに知り合った。
命を助けてもらった恩を返すために、と、りくはサインドの日常や戦闘をサポートする役目を買って出てくれた。
それは非常にありがたいし、おかげでまともな生活を送れるようになったのだが、口うるさいのが難点だ。
だが、それらは全てサインドを思ってのことだと解っているので、鬱陶しいどころかちょっと嬉しかったりする。
 りくはぶつぶつ言いながらキッチンに入り、ガスレンジやシンクの惨状を見て大いに嘆き、冷蔵庫を開けた。
案の定、空っぽだった。何枚もの写真の貼られたドアを閉め、戸棚を開けたが、目当てのゴミ袋はなかった。
これでは、片付けようにも片付けられない。りくは腰を上げてスカートを払うと、部屋の主に言い付けた。

51Hero of Hero! 2 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:39:46 ID:s8VVcypg
「買い物に行きますよ、サインドさん」
「だったら、プロミネンサーでも出すか?」
「近所のスーパーに行くだけなんですから、最大時速五百キロで空も飛べて賢くて良い子なスーパーなバイク
は必要ありません。近所なんですから、歩いていった方が早いです」
「言ってみただけだ、本気にするなよ」

 サインドは呟きながら、ソファーの背に引っ掛けてあったジャケットを取った。だが、当人は割と本気だった。
りくと買い出しに出ると、荷物が相当な量になるからだ。大半は食材で、その次に多いのが日用品である。
それもこれも、サインド自身がろくに買い出しに行かないからだ。理由は至って簡単で、面倒臭いからである。

「ほら、行きますよ!」

 りくはサインドの袖を掴むと、玄関へと引っ張っていった。 

「へいへい」
「返事は一回です!」
「はいよ」

 サインドはやる気なく答えると、玄関に転がしてあったブーツを履き、りくに続いて部屋を後にした。
早々に階段まで行ってしまったりくは、サインドを急かしてきたので、サインドは自室のドアに鍵を掛けた。
 ビル街の奥に立ち並ぶレンガ造りのアパートを出て並んで歩きながら、りくは延々と説教してきた。
少女の小さな背を追うように歩きながら、サインドはその言葉を半分は聞いて半分は聞き流していた。
 せっかくなんだから並んで歩けばいいのに、とサインドは思うが、りくはサインドと並んで歩こうとしない。
助手としての立場を頑なに守っているので、サインドが馴れ馴れしくしようともあしらわれてしまうばかりだ。

「可愛い顔してんだから、そんなに怒ったら台無しだぜ」

 サインドはりくの背後に寄り、肩に手を回そうとしたが弾かれた。

「そんなことを言っても無駄です、部屋の掃除はサインドさんにしてもらいます」
「そんなんじゃねぇんだけどなぁ」
「じゃあどういうつもりですか、夕ご飯に注文を付ける気ですか」
「何、カレーでも作ってくれんのか?」
「サインドさんの働き次第では考えてあげてもいいですよ?」
「あ、でも、ニンジンは入れるなよ。絶対にだ」
「もちろん入れます、たっぷり入れます。ヒーローなんですから、世のお子様のお手本になるべきです」
「…きっつう」

 サインドは首を竦めてから、りくの横顔を窺うと、不機嫌そうに唇を尖らせていて態度は緩みそうにない。
眼差しは険しく、歩調も早かったが、サインドの歩調に比べれば遅いので彼女に合わせて歩いていた。
いくつかの角を曲がり、車が行き交っている大通りを渡ると、目当てのスーパーマーケットが見えてきた。
店に入ったら、りくは早々に買い出しを終えてしまうだろう。要領も手際も良く、無駄なことはしないからだ。
サインドには、それが残念だった。今日は休日で敵も現れていないのだから、ゆっくりしてもいいではないか。
 ヒーローだって、平穏を味わいたい。

52Hero of Hero! 3 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:41:02 ID:s8VVcypg
 小一時間後、買い出しが終わった。
 はち切れんばかりに食料品が詰まったエコバッグと、それに入り切らなかった日用品はレジ袋に入れた。
その二つを抱えたサインドは、割と軽いものを持っているりくの背を見下ろしながら、帰路を辿っていた。
買い出しの最中も、サインドは事ある事に叱られた。それというのも、酒とその肴を買おうとするからだ。
 機械の体といえど、人間以上に人間臭いサインドは経口摂取が可能で、分解して動力機関で燃焼させる。
本人にも今一つ構造が解り切っていない内部機関は、消化器官もないのに栄養成分をきっちり摂取する。
そのため、機械の体のくせに酒精は素通りせずに吸収出来、それはもう気持ち良く酔うことが出来てしまう。
もちろん、四六時中飲んでいるわけではないが、ヒーロー稼業は結構ストレスが溜まるので不可欠なのだ。
だが、りくはそれを許してくれない。酒など飲んでいてはヒーローらしくない、というのが彼女の主張である。
確かにその言い分は解らないでもないのだが、ヒーローも生き物なのだから気晴らしがあっても良いだろう。
だが、この数日で酒の買い溜めが尽きてしまった。だから、りくが帰った後にでも買いに出る必要がある。

「サインドさん」

 不意に足を止めたりくは、目を据えて振り返った。

「私が帰った後に、お酒を買いに出ちゃダメですからね。ヒーローなんですから」
「うぐっ」

 あっさり見抜かれ、サインドは呻いた。

「ストレス解消だったら、もっと建設的なことで解消して下さいよ。トレーニングとか必殺技の練習とか」
「俺は実戦こそ最大の訓練だと思うんだがね。戦えば戦うほど強くなるんだよ、俺は」
「だったら、どうして先々週は苦戦したんですか?」
「ありゃ、怪人との相性が悪かったんだよ。水っぽくてぐにゃぐにゃした野郎だったから」
「おまけに光線技も効きませんでしたもんね、あのクラゲの怪人は」
「そうそう、そうだろ? プロミネンサーで体当たりしても跳ね返されるし、ソードで切っても再生しちまうし、
突きも蹴りも大してダメージを与えられないし、あれは傑作の怪人だったぜ」
「だから、私が作戦を立てたんじゃないんですか」

 りくは、少し自慢げに唇の端を持ち上げた。

「ああ、感謝してるぜ。あれは俺じゃなきゃ出来ない戦いだった」

 サインドは先々週の戦闘を思い出し、マスクフェイスの下でにやけた。りくの立てた作戦はこうである。
サインドは、物理攻撃はおろか光線技も効かないクラゲ怪人、ジェロゲに海へ誘い出されるふりをしたのだ。
そして、海中に引きずり込まれたサインドは、動きの鈍る水中で交戦したがやはり劣勢は続いていた。
当然、ジェロゲの攻撃は激しさを増し、度重なるダメージで動きの鈍ったサインドは海底へと投げられた。
だが、それこそが作戦だった。サインドはりくから教えられた海底ケーブルを利用し、ジェロゲに電撃を与えた。
同じ海中にいたサインドも多少なりとも電撃のダメージは受けたが、そこはヒーローなので無事に生還した。

「でも、本来ならサインドさんがそういうことを考えなきゃならないんですからね?」

 りくの強い言葉に、サインドは辟易した。

「助手に志願したのはりくの方だろ? お前の方こそ、そういうことを考えるのが仕事だろうが」
「ええ、そうですね。私としては、もっともっと戦いのことを考えていたいのですが、サインドさんがどうにも
こうにもダメな人なので、私はやるべきことも出来ずに家政婦代わりを努めているというわけです」
「いちいち怒るなよ」
「怒らせているのはどこの誰ですか」
「別に俺は、家のことまでやれっつってるわけじゃねぇんだけどなぁ」
「ああも汚されたんじゃ、嫌でもやりたくなりますよ。それが常識ある人間なら尚のことです」

 りくは路地の角を曲がったが、急にその足が止まった。サインドが駆け寄ると、角の先には異形がいた。
サインドは荷物を置いてりくの前に立ち塞がり、身構えた。オレンジのバイザーに映った者は、怪人だった。
 うねうねと蠢く金属の糸が絡み合った人型の物体は単眼のスコープアイを動かし、ぎゅっとピントを合わせた。
引き摺るほど長い両手足からは、イトミミズのように跳ねる鈍色の金属糸が零れ出し、不規則に揺れていた。
機械と称するには奇妙な外見の怪人は、ぎしぎしと糸同士を軋ませながらサインドを見据え、丸く口を開いた。

53Hero of Hero! 4 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:42:20 ID:s8VVcypg
「ききききききき。待ち兼ねたぞ、サニー・サインド」
「デートの約束なんてした覚えはねぇぞ」

 サインドが毒突くと、奇妙な怪人はぎゅるりと左腕を回転させて絡み合わせ、いびつなドリルを成した。

「我が名はメタリング、貴様を葬るために生み出された刺客!」
「もう聞き飽きたんだよ、その枕詞は!」

 サインドは駆け出し、メタリングに殴り掛かろうとしたが、拳が頭部を抉る寸前で頭部が弾け飛んだ。
否、糸が解けた。ぶわりと大きく広がった金属糸は、サインドの拳が中空を殴り付けた瞬間に収縮した。
途端にサインドの右腕が糸の中に捉えられ、固定された。解こうとしても、ぎりぎりと硬く締め付けてきた。

「なっ…」
「きききききき、死ねぇっ!」

 左腕のドリルを振り上げたメタリングは、サインドの頭部を狙ったが、サインドはメタリングの胸を蹴った。
メタリングの姿勢を崩させて上体を反らし、その攻撃は回避したものの、右腕はがっちりと固定されたままだ。
それどころか一際締め付ける力が増してきて、このままでは腕自体が圧砕されてしまう、との予感が走った。

「サインドさん、これを!」

 りくはエコバッグからオリーブオイルの瓶を取り出すと、サインド目掛けて放り投げてきた。

「気が利くぜ!」

 サインドは左手でオリーブオイルを受け取り、メタリングの頭部に思い切り叩き付けて瓶を粉々に割った。
器を失ったオリーブオイルが糸の一本一本を伝い、広がると、サインドの右腕を戒める金属糸が少し緩んだ。
僅かな遊びが出来たことを見逃さなかったサインドは、左手でメタリングの頭部の糸を強引に押し広げた。
そして、右腕を引き抜き、油による光沢を帯びたメタリングの頭部を強かに殴り付けてアスファルトに埋めた。
 アスファルトに倒れたメタリングは、ぐしゃりと潰れて頭部の糸が崩れ、赤いスコープアイにヒビが走った。
これなら、倒せないこともない。サインドはジャケットの襟元を直してから、油にまみれた右手を握り締めた。

「さあて、部屋の掃除の前哨戦だ。十秒で片付けてやる」
「ききききききき…」

 金属同士が擦れるような耳障りな笑いを上げたメタリングは、頭部を元に戻し、サインドを仰いだ。

「片付けられるのは貴様が先だ」
「いやあっ!?」

 背後で悲鳴が上がり、サインドが振り向くと、りくが何本もの金属糸に絡み付かれていた。

「いた…ぁ…」

 細い両手足に容赦なく鋼鉄の糸が食い込み、身を捩るとその度に食い込みが増していくようだった。
先程のサインドと同じ状態だが、りくでは訳が違う。彼女の肌や肉など、あっさり切り裂かれてしまう。
露出した手首や脹ら脛には痛々しく赤い跡が付き、もう一息擦られれば、血が噴き出してしまいそうだ。
恐らく、サインドが本体に集中している隙に、メタリングは己を構成する金属糸を放ってりくに絡めたのだ。

「りく!」

 サインドが彼女に駆け寄ろうとすると、ぎゅるりとメタリングは広がり、サインド自身を拘束してきた。

「ききききききき、貴様は確かに強いがアレは別だ。我らの敵にもならぬ、脆弱な人間だ」

 ぎりぎりと締め付けられるサインドの顔の脇に、暗い光を宿した赤いスコープアイが迫る。

「貴様は我らの同胞を倒しすぎた。貴様がしてきたように、アレを切り刻んでくれる。ききききききき、一瞬だぞ。
ききききききき。綺麗だぞ。ききききききき。骨も肉も千切れるんだぞ。ききききききき」
「お前ら怪人は、倒されても仕方ねぇことをしてっからだよ!」

54Hero of Hero! 5 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:45:22 ID:s8VVcypg

 サインドは関節を軋ませながら抗うが、メタリングは笑い続ける。

「ききききききき。貴様も同じことだ。ヒーローと呼ばれていても、所詮は我らと同じ。我らと変わらぬ。だから、
俺とも変わらない。ききききききき」
「黙りなさい!」

 メタリングの卑屈な笑い声を、りくの叫びが断ち切った。

「サインドさんとあなた達を一緒にしないで!」
「ききききききき。耳障りだ。ききききききき。ならば、その喉から切るぞ。ききききききき。一瞬だぞ」

 メタリングの視線がりくに向くと、りくの体を戒める糸が一本解け、白い首を締め上げた。

「うぐぅっ!」
「調子扱いてんじゃねぇぞ変態がっ!」

 サインドは渾身の力を込めて右腕を上げ、拳にエネルギーを込めてメタリングの頭部を殴り付けた。
りくに気を向けていたためか、まともに拳を受けたメタリングは、サインドに絡めていた解き、戻した。
だが、まだりくの拘束は緩んでいない。それどころか、サインドが攻撃したために強くしたようだった。
バイザーに映るりくの様子は芳しくなく、一刻も早く倒さなければ。だが、未だ勝機が見つからない。
 メタリングは糸で体を成している、切っても再生するだろう。金属なのだから、電撃は通用しないだろう。
ならば、手段は一つだ。サインドはりくに駆け寄り、横抱きに抱えると、地面を蹴って高々と跳躍した。

「ちょっと我慢しろよ、りく!」

 サインドの腕の中でりくは小さく頷き、目を閉じた。背後を見やると、メタリングは追ってきていた。
全身の金属糸を伸ばしてサインドを掴もうとするが、金属糸自体の長さが足りないので届かなかった。
雑居ビルの屋根や給水塔を蹴り、飛び跳ねたサインドは、アパートに隣接したガレージを見据えた。
ガレージの正面目掛けて着地すると、サインドに続いてメタリングも現れ、ぐにょりと潰れて着地した。
 サインドはりくを抱えたまま指を弾くと、ガレージのシャッターが騒音を撒き散らしながら独りでに開いた。
外界からの光が差し込み、闇が晴れると、サインドの外装と近しい色合いの大型バイクが控えていた。
どるん、とエンジンを噴かしてマフラーを鳴らしたバイク、プロミネンサーは忠犬のように主に添った。

「行くぜ、プロミネンサー!」

 りくを抱えたサインドはプロミネンサーに飛び乗ると、片手でスロットルを回してエンジンを噴かした。

「シャイニングバーストォオオオオッ!」

 サインドを中心に赤い閃光が迸ると、プロミネンサーはその名に相応しい炎の鎧を全身に纏った。
焦げるほど高速回転したタイヤがアスファルトを噛み、凄まじい熱量を持った戦士とマシンが飛び出した。
メタリングとの距離は十メートルもない。一瞬と呼ぶには速すぎる速度で両者は接し、一方が蒸発した。
 悲鳴にも似たブレーキ音を立てながら停止したプロミネンサーは、炎を解き、エンジンを咆哮させた。
サインドが振り返ると、メタリングの影はなく、どろどろに溶解して真っ赤に熱した金属の海が出来ていた。
その中に赤い単眼が沈み、弾けた。サインドが彼女を見下ろすと、りくを戒めていた金属糸が外れていた。
喉を解放されたりくは、げほげほと咳き込んでから、前髪をいじって恨みがましくサインドを見上げた。

「サインドさん。前髪が焦げたんですけど」
「文句言うなよ、これしか手段がなかったんだ」

 なあ、とサインドが声を掛けると、主に答えるようにプロミネンサーはヘッドライトを点滅させた。

「プロミネンサーが偉いのは認めます。でも、サインドさんの扱いは荒すぎます」

 サインドの胸を押して下ろさせたりくは、プロミネンサーのカウルを撫でた。

「ねえ、プロミネンサー?」

 りくが微笑みかけるとプロミネンサーは鋭く警笛を上げたので、サインドは唸った。

「…お前らなぁ」
「早く戻らないとせっかく買ったものが盗られちゃいますよ、サインドさん」

 りくが曲がり角の先を示したので、サインドはプロミネンサーから下りた。

55Hero of Hero! 6 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:47:10 ID:s8VVcypg
「解ってるさ、それぐらい」
「私も用事がありますから行きますけどね。さっき、オリーブオイルをダメにしちゃいましたから」

 りくがサインドに続くと、プロミネンサーが存在を主張するように前輪を上げた。

「プロミネンサーは良い子でお留守番しているんですよ。ね?」

 りくが窘めるとプロミネンサーは素直に従い、バックしてガレージの中に消え、シャッターが閉まった。
その様を、サインドは若干複雑な気持ちで見ていた。相棒が助手に懐いたのは良いが、懐きすぎた。
プロミネンサーはサインドよりもりくの言うことを利くようになってしまい、今ではサインドは二番目だ。

「なあ」

 サインドはりくの少し前を歩いていたが、一旦立ち止まって彼女に向いた。

「なんですか、サインドさん」
「たまには俺を労ってくれよ、今だって頑張って戦ったんだぜ?」
「もちろん、それは認めていますよ。サインドさんは、世界を守るために不可欠な男です」
「そう思うんだったら、もうちょっと、こう、あるだろ?」
「何がですか」

 訝しんだりくに、サインドは腰を曲げてマスクフェイスを寄せた。

「ない、とは言わせないぜ?」

 オレンジのバイザーに映るりくの顔は、不愉快げにしかめられたが、頬の血色が良くなっていった。

「もう…。今回だけですからね」

 りくは苛立ちを押し殺したような、だが心なしか上擦った声で呟き、かかとを上げてサインドに近付いた。
冷ややかな銀色のマスクに花びらのような唇が触れたが、それは数秒にも満たず、りくはすぐに離れた。

「おう、充分充分」

 サインドが笑うと、りくは足早にサインドの横を通り過ぎた。

「私は買い直しに行きますからね! サインドさんは荷物を持って帰って、掃除をしていて下さいね!」
「りくのカレーのためだ、頑張るっきゃねぇだろ」

 サインドがその背を見送りながら呟いたが、りくの背は角を曲がっていったので、聞こえなかっただろう。
金属の肌で感じられるのは、彼女の暖かな体温と吐息ぐらいなものだったが、それだけでも満足だ。
サインドはりくに何かしらのことを言わせる気だったが、まさかキスをしてくれるとは、思い掛けない幸運だ。
意地っ張りで気の強いりくのことだから、言うよりも楽だからそうしたのだろうが、それはそれで嬉しい。
 サインドは姿が見えなくなったりくに目掛けてキスを投げてから、荷物を放置してきた場所を目指した。
りくを落とすのは怪人を倒すよりも厄介だが、だからこそやりがいがあるというものだ、と内心でにやけた。
 世間から注目されているヒーローである以上、言い寄られた女性の数も少なくないが、りくだけは特別だ。
鋼鉄の板の如く靡かないし、滅多に弱みを見せないが、その一方でサインドへの好意を隠し切れていない。
それがまた可愛らしいから困らせてみたくなるが、あまり困らせすぎると本気で怒られるから自重している。
早く部屋に戻り、部屋中を片付けて、りくのお手製カレーを頂こう。それが、今のサインドには最重要事項だ。
 世界は大事だ。だが、愛すべき助手はもっと大事だ。

56859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/16(火) 16:52:00 ID:s8VVcypg
以上。特撮と言うより、朝八時台の子供向けアニメみたいな雰囲気を目指しました。
絵板67氏のイラストでニヤニヤと妄想が止まらなくなったので。
サインドさんを崩しすぎた気がしないでもないですが、後悔はしていない。

57変態紳士:2009/06/16(火) 19:42:14 ID:hFzHG5lM
67です、本当にありがとうございます!
イメージぴったりです。
妄想至らないグレーゾーンを描写して頂いたので相乗してこちらも妄想膨らみました!
貴重な小説ありがとうございました!

58変態紳士:2009/06/17(水) 21:33:44 ID:x9l94LN6
これはニヤニヤせざるを得ない、GJ!!

59変態紳士:2009/06/18(木) 07:30:47 ID:uA0A7yNM
GJ!元ネタイラストに萌えてただけに小説もめっちゃ楽しめました!

60859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:39:46 ID:QbIv7UDA
規制中につきこちらに投下。
河童×少女の和姦で、NGは河童と村娘で。

61河童と村娘 番外編1 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:40:43 ID:QbIv7UDA
 夏の日差しよりも眩しい、白無垢を纏った花嫁が歩いていた。
 付き人の手で赤い番傘を差し掛けられ、母親に手を引かれ、新郎を伴って神社の前を過ぎていく。
新婦の後ろに付いている父親と思しき年配の男性は、紋付き袴に身を包み、厳かな表情だった。
その後ろには親族や参列者が二列に並んでずらりと連なっていて、花嫁の門出を祝っていた。
角隠しを被った花嫁の背後では、穂を膨らませた稲が風に揺らされ、さわさわと波打っていた。
空はどこまでも高く、清々しい青だ。これで雨が降れば狐の嫁入りだよな、と清美は思っていた。
 現世と常世の境目である神社の境内で、最も大きな木である御神木の枝に清美は座っていた。
白い半袖ブラウスと紺色のプリーツスカート姿で、ローファーを揺らしながら花嫁行列を眺めていた。
夫である清滝之水神はその名の通りの水神なので、ぱらりと雨を降らせることなど造作もないだろう。
だが、その妻であろうと清美はあくまでも人間だ。神になる修行もしていないので、神通力などない。
花嫁行列に連なる参列者の一人が御神木を一瞥したが、目線を彷徨わせ、訝しみながら前に向いた。
常世の者である清美は現世の者には見つからないと解っていても、こういう瞬間は少し緊張する。
 花嫁行列は、祝言を挙げるために神社に戻ってくるはずだ。見てみたいが、山に戻らなければ。
うっかり勘の鋭い人間に見つかりでもしたら、清美も困るが、清美を守っているタキを困らせてしまう。
清美が御神木の枝から立ち上がり、スカートを払っていると、ぎしりと背後の枝が軋んで葉が落ちた。

「タキ!」

 清美が振り返ると、揺れの残る枝の上に、緑色の肌と皿と甲羅を持った異形が立っていた。

「清美。祝言か」
「うん。昨日から神社が騒がしかったから、何かなぁって思って」

 清美はぽんと跳ね、河童のいる枝に飛び移った。

「そしたら、花嫁行列だったの。お嫁さん、見たことない人だったから、村の外から入ってきたんだね」
「祝言の終いまで見るつもりか」
「いいよ、そこまで気になるわけじゃないし。神社に長くいたら、私もタキも誰かに見つかっちゃうよ」

 清美は風に乱された長い髪を掻き上げ、耳元に掛けた。

「でも、いいなぁ。お嫁さんかぁ」
「おぬしは儂の嫁だ」
「そりゃそうだけど、やっぱり一度は着てみたかったかも。白無垢とかドレスとか」
「何故に」
「だって、綺麗じゃない」
「そうか」

 タキは少し長めに瞬きしてから、クチバシを開いた。

「清美」
「ん、なあに?」
「しばらく外へと赴く。案ずるな、儂がおらぬとも山は乱れぬ」

 それだけ言い残し、タキは両足を曲げて枝を踏み切ると、大柄な体格に見合わぬ身軽さで跳んだ。
直後、水気を含んだ風が一瞬吹き付け、清美が閉じかけた瞼を開くと既にタキの姿は消え失せていた。

「…いってらっしゃーい」

 清美はいずこへと消えた夫の背に向け、手を振っていたが、御神木から降りて別の木に飛び移った。
せめてどこに出掛けるかぐらい言い残してくれればいいのに、と思ったが、意味が解らないのも事実だった。
 神々は未だに古い地名を使っているので、地理や日本史に明るくない清美にはちんぷんかんぷんなのだ。
だから、以前タキが神々の集まりで遠出する時にも行き先を教えられたが、聞いた傍から混乱してしまった。
清美が現代の地名に言い直させようとしても、タキは現代の地名が解らないらしく、今度は彼が混乱した。
なので、タキは地名に関しては清美に理解させることを諦めたのか、最近ではどこに行くか告げなくなった。
夫としてそれでいいのか、と思わないでもないのだが、必ず帰ってくるので問題ないだろう、とも思っていた。

「タキがいないと、暇だなぁ」

 青い葉が生い茂った木々の枝を飛び跳ねて山の斜面を昇りながら、清美は少し機嫌を損ねていた。
心底惚れ合ってしまったタキは別としても、他の神々とは話が合わず、顔を合わせても話が弾まない。
時には女の子らしい雑談をしたいと思っても、丁度良い相手がおらず、喋り足りなくて悶々とすることもある。
その点、タキは清美がぐだぐだと垂れ流す話を辛抱強く聞いてくれるので、清美には何よりもありがたい。
だが、タキがいなければ暇潰しの下らない話を聞いてくれる相手がおらず、退屈が凌げなくなってしまう。
 現世とは違い、常世には漫画もなければゲームもテレビもない。以前拾った携帯ラジオも電池が切れた。
退屈過ぎて、時折荒ぶる神々の気持ちが解ってきた。滞った時間が長すぎるため、刺激が欲しくなるのだ。
けれど、清美は荒ぶることも出来なければ現世にも出られないので、悶々とすること以外にやることはない。
 夫が帰るまでの辛抱だ。

62河童と村娘 番外編1 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:42:44 ID:QbIv7UDA
 一週間後。清滝之水神が帰ってきた。
 その日は雲もないのに朝から弱い雨が降っていたので、清美もなんとなく夫の気配を感じ取っていた。
タキの依り代でもあり二人の住処でもある、石碑の中の洞窟から出た清美は、湿った空気を肺に入れた。
石碑から程近い川の上流に向かい、顔を洗って髪を整え、襟を直していると、あの水気のある風が吹いた。
風が吹き抜けてから振り返ると、タキが現れた。清美はタキに駆け寄ろうとしたが、彼の手元に気付いた。
 タキは、見慣れぬ箱を抱えていた。清美には読み取れないほど達筆な字が書かれた、桐の木箱だった。
お帰りなさい、と言ってから、清美は両腕で抱えるほど大きな桐の木箱と表情の解らない夫を見比べた。

「タキ、これってなあに?」
「開ければ解る」

 タキはぺたぺたと水掻きのある足を鳴らし、朝露の付いた雑草を踏みながら、古びた石碑に向かった。
清美もそれに続いて石碑から中に入り、ある種の異空間の中に成されている薄暗い洞窟に入った。
洞窟の中程に至ったタキは、定位置の石に腰を下ろし、桐の木箱を傍らに置いて清美を見上げた。

「清美。おぬしのものだ」
「ってことは、プレゼント?」
「うむ」
「わーい、ありがとう!」

 清美はタキの傍に座ると、箱を受け取り、骨董品か上等な反物が収まっていそうな桐箱の蓋を開けた。
だが、箱に入っていたのは予想に反した真っ白い布で、取り出してみると裾の広がったドレスだった。
ドレスの下からはヴェールまで出てきたが、箱の底にあったというのにどちらも型崩れしていなかった。
同じく純白のハイヒールとガーターベルトにストッキングまで入れられていて、花嫁衣装一式が揃っていた。
柔らかな絹のウェディングドレスは丈が短く、清美は体に当ててみたが、制服のスカートよりも短かった。
バレリーナのチュチュのように裾が大きく広がったタイプのドレスだが、膝上十五センチかそれ以上はある。
清美が戸惑っていると、タキはどことなく自慢げな眼差しで清美を見上げていたので、その意図を察した。

「これ、タキが作ってきてくれたの?」
「少し離れた山に、機織りの神がおる。儂の膏薬と引き換えに成してもらった」
「でも、なんでドレスなの? 神様だったら、白無垢の着物とか打ち掛けとかを作りそうなもんだけど」
「儂が申し出たのだ」

 タキがいつもの調子で述べた言葉に、清美はきょとんとした。

「へ?」
「機織りの神は、儂に比べれば現世のことに明るいのだ」
「だから、ドレスも作れるってわけ?」
「うむ」
「でも、なんで、タキがドレスを頼んだの? だって、なんかそういうキャラじゃ…」
「儂はおぬしの伴侶よ。嫁を飾り立てようと思うのは当然だ」
「ふえ」

 今まで、そんなことを言われたことはなかった。清美が赤くなると、タキは促してきた。

「さあ、着て見せよ。儂の嫁よ」
「うん!」

 清美はドレス一式が入った桐箱を抱えると、洞窟の奥に向かい、込み上がってくる笑みを押し殺した。
村の中を行く花嫁行列を見た時に零しただけなのにドレスを作ってきてくれるなんて、タキは本当に優しい。
着物であっても嬉しかったが、ドレスはもっと嬉しい。見せる相手はタキだけだが、彼一人いれば充分だ。
 タキに嫁いで水神の妻となったが、その際に祝言を挙げることもなく、二人でひっそりと契りを交わした。
神々の世界ではそれが当たり前なので、清美も文句は言えなかったが、本音を言えば祝いたかった。
けれど、あまり我が侭が過ぎてタキに愛想を尽かされたくはないので、言うに言えずに黙っていたのだ。
 その願いが、こんなことで叶ってしまうとは。一週間大人しくしていた甲斐があった、と清美は歓喜した。
滑らかな手触りのドレスを古びた姿見に掛けてから、ブラウスを脱ぎ、スカートを落とし、下着も全て外した。
ガーターベルトは下着の上から付けるものだと知っていたので、裸で付け、その上に再度ショーツを履いた。
両足に白いストッキングを履き、ガーターベルトのストラップで留めてから、ドレスを下から引っ張り上げた。
ドレスはノースリーブで襟ぐりが大きく開いていて、ミニスカートの割には大人っぽい雰囲気があった。
サイズが合うかどうか心配だったが、寸法合わせもしていないのに胸回りも腰回りもぴったりと填った。
ファスナーを上げても、きつくなるどころか丁度良い。清美は腰を捻って、布地に遊びがあることも確かめた。

「おおー!」

 清美は感嘆し、ヴェールを被ってハイヒールを履き、タキの元へと戻った。

63河童と村娘 番外編3 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:44:16 ID:QbIv7UDA
「タキー、凄いすごーい! 全部ぴったりだよ、靴も丁度良いー!」

 慣れない靴に転びかけたが、姿勢を直し、清美はタキの前に立ってくるりと回った。

「これでちゃんとメイクが出来たら良かったんだけどなぁ、あー、写真撮りたぁい!」

 ドレスの裾を持って頬を緩める清美に、タキは返した。

「無粋なことを申すな」
「えー、なんでなんで?」
「着飾ったおぬしを目にするのは、儂一人で良い」
「…うぅ」

 そこまで言うか。清美は先程以上に赤面し、唸った。

「どれ、儂に見せよ」

 タキが手招いたので、清美はタキに近寄って裾を持ち上げた。

「どう? 似合う?」
「無論だ。儂の見立てだからな」
「えへへへへ」
「儂のおらぬ間、何もなかったか」
「うん。山も川も普通だし、他の神様達も何もしなかったよ」
「そうではない、おぬし自身のことだ」

 タキの分厚い瞼が狭まり、目が細められたが、どことなく意地の悪い表情だった。

「…え?」

 清美が答えに迷っていると、タキは太い指を白い太股に這わせた。

「どれ、確かめてくれる」
「ひあぁっ」

 太股をなぞる冷たい指先の感触に、清美はぞくぞくした。彼は、一体何を確かめると言うのだろう。
いや、解っている。解っているから、逆らう気は起きず、清美は下着に滑り込んできた指先を感じた。
水よりも温いが人間よりは冷ややかな指の腹が、柔らかく陰部をなぞり、清美は唇を噛み締めた。
程なくして、じわりと体の奥から溢れ出してきたものが下着と指に絡み、粘ついた異音を立て始めた。

「相も変わらず、良く滴るものよ」
「だ、だってぇ…」

 清美はタキの肩に縋って立っていたが、膝が折れるのは時間の問題だった。

「ふむ」

 清美の下着の中から指を引き抜いたタキは、自身の水気とは異なる水分を眺め回した。

「手慰みはしておらぬようだな」
「なんで解るの、そんなこと?」
「儂は水神だ。おぬしから溢れるものとはいえ、これも水の内よ。解らぬことなどない」
「解っても言わないでよぉ…」
「何故に」
「だって、恥ずかしいから」
「先日は、おぬしの方から儂に跨ってきたではないか」
「あ、あの時は、なんかこう我慢出来なかったからで、それとこれとは違うっていうか…」

 清美がタキの甲羅に額を当てて呟いていると、タキの指が再び下着に押し入ってきた。

「ん、あ、ぁっ」

 充分に潤った陰部に太い指がぬるりと吸い込まれ、ぐじゅぐじゅと掻き回された。

「あ、あぁ、くぁああっ」

 タキの指は陰部をほぐすように緩く動かされ、その度に膝から力が抜け、頭に血が上ってくるようだ。
たったの一週間離れていただけなのに、寂しくて切なくてたまらなかったが、何もしないで我慢していた。
退屈すぎて息苦しくなる夜もあったが、それでも堪えて、こうして彼に慰められる時を待っていたのだ。
当然、自分でするよりも余程良いからだ。陰部に詰め込まれた指が二本に増えると、とうとう膝が折れた。
だが、どれほど陰部を乱そうとも、肉芽には触れてこない。意地悪なのか、焦らしているだけなのか。
けれど、事を始めるにはドレスを脱がなければ。だから、堪えられるだけ堪えよう、と清美は強く思った。

64河童と村娘 番外編4 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:46:38 ID:QbIv7UDA
「どれ」

 タキは清美の胸元を覆う布地を下げると、触れられもしないのに尖った乳首をさすってきた。

「あぁあっ!」

 だが、少しも持たなかった。清美が崩れ落ちそうになると、すかさず腰を支えられた。

「して、何を求めるか」

 タキの低い声に囁かれ、清美は薄く汗を浮かべながら喘いだ。

「お願い、触ってぇ…」
「具体的に申せ」
「そんなの、とっくに解ってるくせにぃ…」
「さて、どうだかな」

 タキはにやりと目を細め、じゅぐ、と陰部から白濁した愛液にまみれた指を抜きかけた。

「あ、やだやだぁっ!」

 清美はタキの腕を掴むが、タキは指を引き抜いてしまった。

「おぬしが申さぬから、儂には解らぬのだ」
「うぅ…」

 清美は火照った体を持て余し、喘ぐうちに垂れた涎を拭った。

「いつもはそんなこと言わないのに、なんで急に…」
「整いすぎておると、乱してやりたくなるものでな」
「それが本音?」

 清美がむくれると、タキは汚れていない左手で清美の頬を包んできた。

「気に障ったか」
「ちょっとは。せっかく綺麗なドレスなのに、汚すこと前提で来られちゃ私だって困るよ」
「汚れたとしても、儂の力を与えた水で清めれば元通りになる」
「型崩れしちゃったりしない?」
「その服自体にも神通力が込められておるからな。滅多なことでは破れもせん」
「そう、かもしれないけど…」

 清美は少々困りながら、ドレスの裾を抓んだ。汚れても水洗いで元通りになるのなら、もっとやるべきか。
だが、やはりドレスはドレスなのだ。清美が迷っていると、タキは清美を持ち上げて膝の上に座らせた。

「これは下げぬ方が良かろう」

 タキは大きく広がって膨らんだスカートの下から手を差し込み、潤いが染みた下着を横にずらした。

「そのまま入れちゃうの?」

 清美が期待と躊躇いを交えて漏らすと、タキは充血した肉芽を抉ってきた。

「その前にこちらではないのか?」
「ふぐぅ、あぁっ!」

 高ぶっていた箇所に訪れた強烈な快感に、清美は掠れた声を発した。

「どれ、もっと鳴いてみせよ」
「んぐぁ、あ、あああっ!」

 肉芽を潰されたまま陰部にも指が押し込まれ、清美はタキの腰に絡めた足に力を込めた。

「も、もおダメぇ、それ以上はぁ」
「ならば、儂を求めるか」
「入れて、お願いだからタキの入れて、でないと収まらないぃ…」
「その前に、成さねばならぬことがあるのではないのか?」

65河童と村娘 番外編5 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:49:43 ID:QbIv7UDA
 タキは清美の胎内から指を抜き、膝の上からも下ろした。

「おぬしを貫こうにも、儂のものが現れなければ出来ぬというものよ」
「あー…」

 タキの股間を見、清美は心底落胆した。彼の胎内に没している男根が、先端すらも出ていなかった。
いつもならとっくに出ているのに、これは妙だ。タキを見上げると、目元は意地の悪い表情のままだった。
となると、先程のことも意地悪なのか。少し腹が立ったが、このままでは収まりが付かないのは本当だ。
 清美はヴェールと一緒に髪を掻き上げ、タキの股間に顔を埋め、男根が没している箇所に口付けた。
端から見れば、実に卑猥な光景だ。神とはいえ、爬虫類の親戚のような異形に花嫁が奉仕しているのだ。
しかも、その中身は女子中学生と来ている。我ながら恥ずかしくなってきたが、清美は愛撫を続けた。
 薄い唇で厚い皮を挟み、体内に潜むものを吸い出すつもりで吸うと、赤黒い逸物が現れてそそり立った。
体液でてらてらと光る亀頭を含み、男根全体を飲み込もうとするが、清美の口では全て受け止められない。
中程まで銜えるのが精一杯で、根元ははみ出してしまうので、残った部分は両手で丁寧に撫でさすった。
しばらく続けていると、男根全体が硬さを増した。もう少しで出そうだ、と察した清美は、根元をきつく握った。

「…ぐ」

 すると、喘ぎなど一度も漏らしたことのないタキが小さく呻いた。

「出しちゃダメ。出すんだったら、私の中で出してよぉ」

 清美は甘ったれた声を出し、タキの男根の根元を握ったまま跨ると、腰を落として陰部に飲み込んだ。

「ふぁ、あああ…」

 だが、手は緩めない。清美が腰を揺すり始めると、タキは目を上げた。

「清美」
「ん、なぁに」

 清美がにんまりすると、タキはクチバシを開いた。

「その手を外してくれぬか」
「だぁめ。だって、タキだって私に意地悪してきたじゃない。おあいこだよ」
「だが…」

 タキが言葉を濁すと、清美は手を緩めぬまま、タキに迫った。

「ね、なんで着物じゃなくてドレスにしたの? 教えてよ」
「大した理由はない」
「嘘だぁ。こんなに短いスカートのドレスなんて、普通は頼まないよ。着物じゃないってことからして引っ掛かるもん。
私にドレスを着せてしたかったんでしょ? ねえ、そうでしょ?」
「儂はそのつもりではなかったのだが」
「じゃあ、どんなつもりでミニスカのドレスなんて頼んだの? ねえ、タキ?」

 清美がくすくす笑うと、タキは苦々しげに答えた。

「ただ、おぬしを喜ばせるようと思うてその服を作らせたのだが、おぬしを見ているうちに妙な気がもたげてな」
「つまり、綺麗な格好をした私にムラムラ来ちゃったってこと?」
「…うむ」
「ふふふふふ、なんか可愛いー」

 清美が肩を震わせると、タキは目元を歪めた。

「何故に」
「だって、タキがそんなこと思うなんて思わなかったんだもん」

 清美は男根の根元を握っていた手を外すと、タキの首に腕を回した。

「もういいよ、一杯出していいからね」
「申されずとも」

 タキは清美の腰を抱き締めると、一息に奥まで貫いた。

「あぁんっ!」

 清美が甲高い声を上げると、タキは清美を組み伏せ、足を大きく広げさせた。

「どれ、乱れてみせよ。儂の嫁よ」
「もう、充分そうなってるってばぁ!」

 荒々しく突かれながら清美が喚くと、タキは言った。

「まだ足りぬ」

 その言葉に、清美は身震いしそうになった。短い一言だが、あらゆる感情が込められていたからだ。
一週間山を空けていたことに対する詫びや、清美に対する並々ならぬ思いといった生々しい感情だ。
普段は表情だけでなく、言葉でも感情を表そうとしない彼だからこそ、やたらと嬉しくなってしまった。
だが、清美にはその気持ちを言葉に出来るような余裕はなく、ドレスに生温い染みが付くほど乱れた。
 夫が愛おしいからだ。

66河童と村娘 番外編6 859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:52:44 ID:QbIv7UDA
 水で清められたドレスが、風を受けてはためいていた。
 青く茂った木々の中に混じる純白のドレスは、山の光景には不釣り合いどころか物凄く異様だった。
だが、洞窟の中は湿気が多くて乾きが悪いので、風通しの良いに干さなければ元通りにならないだろう。
スカートの内側がひどく汚れて型崩れしかけていたが、タキの言葉通り、普通に洗ったら綺麗に落ちた。
それはタキ自身の力なのか、機織りの神の力なのかは解らないが、どちらにせよ神通力とは万能だ。
いつもの制服姿の清美は、手近な木の枝に腰掛けてドレスを眺めながら、意味もなく足を揺らしていた。

「ねーぇ、タキー」
「何用か」

 清美が声を掛けると、眼下に流れる川で泳いでいたタキが立ち上がった。

「今度、私も外に連れていってよ。山の中で留守番しているだけじゃつまんないんだもん」
「おぬしは外に出ずとも良い。必要とあらば、望むものを手に入れてやるが」
「あー、だからドレスなんてプレゼントしてくれたんだぁ。私のご機嫌取りするために?」
「それだけではないのだが…」

 タキは少々ばつが悪そうに語尾を弱めたので、清美は畳み掛けた。

「そりゃ、ドレスは嬉しかったし、ぶっちゃけ毎日退屈だけど、タキがいてくれないと意味がないよ」
「ふむ」

 タキは清美を見上げていたが、クチバシを開いた。

「だが、おぬしを連れられる場所は限られておる。それでも良いか」
「うん。言い付けはちゃーんと守るから」
「ならば、手始めに山神の元を訪れねばならんな」
「え…」

 清美が若干身を引くと、タキは平坦に述べた。

「山神は近隣の山地を統べ、儂らも統べておる神だ。訪ねるのが道理というものよ」
「でも、山神様ってあれでしょ、ヒス持ちで女嫌いなんでしょ? 大丈夫かなぁ…」
「それはおぬしが現世の者であったからだ。常世の者となったのだから、以前ほど嫌われてはおるまい」
「だと、いいんだけど」

 清美が不安げに眉を下げたので、タキは目を細めた。

「何、恐るることはない。おぬしは儂の嫁なのだからな」
「うん、そうだよね。そうだもんね」

 清美は笑みを取り戻すと、ぽんと枝を蹴って飛び降り、タキの泳ぎの波紋が残る水面に身を投じた。
高く水柱が上がったが、清美の体には水面と衝突した際の衝撃は訪れず、水は柔らかく迎えてくれた。
水中に没した清美はプリーツスカートと長い髪を漂わせながら、タキにしがみつき、クチバシに口付けた。
タキは清美の唇を塞ぎ返す代わりに抱き寄せると、水に弄ばれている髪を太い指で優しく梳いてくれた。
 清美は幼すぎて妻の役割を果たせているとは思えないし、水神の妻の身の振り方など知るわけもない。
ドレスの件も、結果として清美の我が侭でタキを振り回してしまったし、これからもそんなことがあるだろう。
そのままタキに甘えて生き続けるのは楽かもしれないが、そんなことではタキの妻になった意味がない。
常世のことや神々については何一つ解らないが、時間は余るほどあるのだから、ゆっくり知っていけばいい。
 そして、愛し合えばいい。

67859 ◆93FwBoL6s.:2009/06/23(火) 17:58:34 ID:QbIv7UDA
以上。通し番号ミスってしまった。
迷惑を被ったのは、タキに無茶振りをされた機織りの神。

68変態紳士:2009/06/23(火) 19:10:37 ID:BqAN82OM
GJ!番外編キタ━━(゚∀゚)━━!!

69変態紳士:2009/06/24(水) 04:21:29 ID:zmruqjJ.
GJ!!! タキの良夫ぶりがいい!!

70植物SHOCK 0:2009/07/05(日) 16:30:40 ID:LNbr9U4c
投下。
姪と叔母さんが植物に巻きつかれる話で、残念ながらあまりエロくないです。
人外アパートを出しましたが、世界観壊したかもしれません。
このレス除いて5レス。NGは「植物SHOCK」でよろしく。

71植物SHOCK 1:2009/07/05(日) 16:31:16 ID:LNbr9U4c
若いのに気難しく、親戚一同と疎遠になっている叔母さんが、派遣切りに遭って引っ越したそうだ。
人づてにそれを聞いた父さんは、叔母さんに連絡をとってうちへ来ることを薦めたらしいが、
断られたのだという。
「まったく素直じゃない妹なんだから……。香織さんとは大違いだね」
「まあっ、典彦さんったら……」
父さんの言葉に母さんが頬を赤らめてぽかぽか叩く。えっと、いつまでこの調子なんだこの二人は。
長年このやりとりを見せられてきた私ですら時々居づらくなる。
「叔母さんが来たがらないのも分かるなぁ……」
「「何か言った? 典香ちゃん」」
二人が微笑んでこっちを見た。
「いや、別に……」

そんなわけで、私は叔母さんの様子を確認しにアパートへやってきた。
「ちょっとボロいなー……」
まぁネカフェ難民とかになるよりはマシなのかもしれないけど。
今は昼間だからただボロいだけだけど、夜になるとお化けでも出そうな……。

ヒュードロドロドロ……

「へっ?」
幽霊が出てきそうな効果音が響いた。慌てて辺りを見渡すと……、
UFOがすぐ近くまで降りてきていた。
「なんと!」
私はあんぐりと口を開けて立ち尽くした。と、後ろから声をかけられた。
「通行の邪魔です、立ち止まらないでください」
「すみません!って叔母さん!?私です典香でーす、お久しぶりで……、じゃなくてそれより
叔母さんUFO!あれUFO!」
「典香……ああ、兄さんの娘ですか」
叔母さんはあくまで無表情に言った。いやそんなことよりUFOが!
「あれ見て叔母さん、UFO!」
「騒がしいですよ、典香」
叔母さんが制すので私は黙り込む。うーむ、この辺りではUFOとか珍しくもなんともないのかも知れない。
しかし、叔母さんは呆れたように私を諭す。
「UFOだなんてサイエンス・フィクションの存在ですよ」
「じゃ、じゃああれは何?」
私は再び空に舞い上がろうとしている銀色の半球を指差した。
「なんですか、もう……」
気だるげに叔母さんも半球の飛んでいく方向に視線を移す。
「あれは飛行機です」
至って真面目に叔母さんは言った。えー……。

72植物SHOCK 2:2009/07/05(日) 16:31:53 ID:LNbr9U4c
叔母さんのアパートには、他にも不思議な現象がたくさんあるようだ。叔母さんの部屋に行く途中も
妙な住民と何度もすれ違った。
「ロボットがなんか喋ってるよ!」
「最近のおもちゃはよく出来ていますね」
おもちゃが、あんな気さくに挨拶してくるかなぁ?

「犬が服着て歩いてる!」
「飼い主の悪趣味だと思います」
すっごく自然に二足歩行してるんだけど……。

「あの人羽生えてる!」
「仮装でしょう。確かコスチューム・プレイというのでしたっけ?」
こんなとこでコスプレする意味は!?

「でっかい虫がいるー!」
「え?」
ここで叔母さんは眉をひそめた。
「バルサンを炊かなくてはいけませんね」
「いやいやいや!」
バルサンが敵いそうなでかさではない。
……なんだこのアパート。
しかし叔母さんは、どんな変なことが起きても現実的な捉え方をするなぁ。その頭の固さに尊敬だ。

部屋に着き、小さなちゃぶ台の前に腰を下ろす。普通に部屋に入れてもらえたことを考えると、
私はそこまで邪険にされてはいないらしい。叔母さんはノートパソコンを立ち上げた。
「叔母さん、今仕事は?」
「アルバイトをしながら新しい仕事を探しています。兄さんにもそう言ったはずなのですが」
「そ、そう……」
淡々と叔母さんは答えた。画面を覗くと、早速職探しをしているらしい。
この熱心さがあればすぐに就職出来そうなもんなのにな……。
父さんによると生真面目過ぎて要領が悪い人なのだという。
「な、何か家事とか手伝うことはない?」
「ありません」
「……」
キーボードの音だけが聞こえてくる。私は窓の外のベランダを見た。ツタみたいな植物が目に入った。
「あ、叔母さん、なんか育ててるの?」
「いいえ。何も」
「じゃあ外のあの草は雑草か何か?」
「隣のお宅のが、こちらまで伸びてきたのでしょう」
視線を画面から外さずに叔母さんは言う。
「お隣ってどんな人?」
「あまり面識はありませんが植物学の博士と、外国人の奥さんが住んでいます」
「ふーん……」
私は立ち上がって、何気なく窓を開けた。

73植物SHOCK 3:2009/07/05(日) 16:32:27 ID:LNbr9U4c

ひゅるるるるる!

「ギャー!」
ツタ動いた! 巻きついた!
ビビった私は植物の絡まった足をバタバタさせた。
「ちょっと叔母さんッ!なんかこれ変!動く!」
「食虫植物だったら、触れたら閉じるのではありませんか」
「そういえばそうだね!」
そっかこれ食虫植物かぁ! って、人間襲う食虫植物ってかなり危険じゃない?
食虫っていうかこいつ触手みたいだし……。
とか考えているうちに、両足両腕に茎が巻きついていて、なんかヤバい状態になっていた。
体が浮かび上がり、ベランダに出された。
「うわああああああ!」
「騒がしいですよ。……え?」
叔母さんがようやく顔を上げた。目をぱちくりとさせている。ようやく驚いた。
そのうちに新しい茎が窓から侵入し、叔母さんも巻き上げられてしまった。
「大丈夫っ?」
「だだだいろうぶでふ!」
相当動揺してるな。あの動じない叔母さんがぶるぶると震えている。これは助けを呼ばなくては。
「誰かー! 助けぐふっ」
大声をあげようとした私の口に、茎の先が突っ込まれた。
「むー! むー!」
むー……諦めるか。
叔母さんに巻きついている方の茎は、叔母さんの胸にふわりと絡みついた。
しっかりアイロンが掛かっているシャツに深い皺が寄る。
「ぁ……」
叔母さんが小さく声を漏らす。そして、その自分自身の声にはっとしたように、
必死で手足を動かして抵抗を始めた。
「い、いけませんお嫁に行けなくなってしまいます……あん……っ」
お嫁に行くこと考えてたんだ、意外。茎は叔母さんの大きな胸を揉みしだくように、いやらしくうごめいている。
「あふぅ……んああッ……!」
私はというと、そんな色っぽい声を出す叔母さんに見とれてしまっていた。
叔母さんはいつもきっちりした服を着ていて、人並み以上にある胸は威圧的で固そうに見えた。
でも、植物の茎が食い込み、されるがままになっている叔母さんの巨乳は、とても柔らかそうなのだ……。
ぼんやりと叔母さんの様子を見ていると、私の口内からずるりと茎の先が抜かれた。
そして、茎の先はそろそろと私の胸に向かってくる。
あ、私も叔母さんと同じ目に?! 私はごくりと唾を飲み込んだ。しかし、

すかっ

茎は私の胸をかすった。
一瞬の停止の後、再び胸に茎が当たるが、軽く服の上を撫でただけに終わった。
ちょっと萎れたみたいだった。
私は悲しくなってきた。いくら私が掴み所のない胸をしてるからって!Aカップブラが余るぐらいだからって!
切なさのあまり私は暴れた。
茎はびくっと震えたが、今度はふっと縛りを緩めた。
「に、逃がひてくれる、の……?」
その考えは甘かった。
うねうね。茎が一斉に波立つ。

「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃー!」
私は爆笑した。いや、させられた。体中をやわらかい茎が這い回るのだ。
特に、足の裏と脇の下は繊細な動きでくすぐられている。
「うひーひーひーひー……」
我ながらキモい笑い声だ。鼻水噴いたかもしんない。叔母さんとは別の意味で嫁に行けない。

74植物SHOCK 4:2009/07/05(日) 16:33:01 ID:LNbr9U4c
再び叔母さんの方に目を向けると、叔母さんはぐったりとして目を閉じていた。気絶したのかな、心配だ。
その時、ガラガラと窓の開く音が聞こえ、
「ショクロー! ヤメナサイ!」
片言の女の人の声がした。その声に植物はひるむようにしゅるりと先を丸めた。
犬が尻尾を丸めるみたいだと思ったけど、そう呑気に思ってる場合ではなかったっけ。
「助けてくださーい! あ、HELP! HELP!!」
隣のベランダに出てきた、ほっそりとした人影に向かって助けを求めた。
おそらく外国人の奥さんだろう。
「申シ訳アリマセン、ウチノショクローガゴ迷惑ヲ……」
ひたすら謝るその人は、なんと薄緑の肌に、花びらのような髪をしていた。
と、言っても"外国人"だと聞かされていた人が実は植物人だったなんて、もはや大した驚きじゃないよね。
植物は逃げるように高く高く茎を伸ばし……って、私の体も高々と持ち上げられて怖い!
「降リテキナサイ!」
奥さんは植物を掴んで引っ張り出した。……茎がブチッといっちゃいそうでそれはそれで怖いなー。
はらはらしながら見守っていると、
「ただいまー」
間延びした男の人の声が聞こえた。
「アナタ! ショクローガ!」
「んー、どうしたどうしたー」
呼ばれて出てきたその人は、中年くらいの男の人だった。眼鏡、白衣、ボサボサ髪なところを見ると
博士に間違いない!
「おおー、ついにお外出て遊ぶようになったか、わが息子よ」
博士は絡まれている私達をシカトして目を細めた。つーか、息子って言った?
「ア、アナタ、ソンナ事ヨリオ隣サン達ガ!」
「あ、どうもこんばんはー」
博士は私と叔母さんに向かって会釈したが、それより早く助けてよ。私は足をじたばたさせた。
「おーいショクロー、ミネラルウォーター買って来たぞー」
博士がそう言った途端、私の体が急速に下がっていった。植物が隣のベランダへ戻っていくようだ。
ベランダに着くと私はすぐに解放され、気絶している叔母さんは奥さんがベンチに寝かした。
「ごめんねー、うちの子まだ生まれたばっかだからさー」
博士はそう言いながら、植物の生えた大きな鉢にたっぷりミネラルウォーターをかけた。
「うちの子って……」
「うん、ボクと妻の子。ショクロー」
「……そう見えないんですけど」
人間の形してないじゃん。
「まー今はそうだろうね。ショクローはまだ、普通の植物でいうと子葉の状態だから」
「しよう?」
「朝顔とか昔育てなかった? 芽が出て一番最初は、本来の葉っぱとは違う形の双葉が出てくるでしょ。
それと似た感じだね」
ショクローは二本の茎を揺らした。
「へー……ってことは成長したら……」
「しばらくたったら、多分うちの妻似の美形になるだろうね」
そう言って、博士は奥さんの肩を叩いた。奥さんは緑の頬をピンクに染めて博士の背中を叩き返した。
「モー、アナタッタラ……」
あ、この二人うちの両親と同じ匂いがする。
「あのー、元の部屋に戻りたいんですけどー……」
私がおずおずと申し出ると、博士は、
「あー、そうだった。ショクロー、今晩の肥料調合しとくから、そのうちにお隣さん達を部屋に送っといてくれー」
とショクローに声をかけた。
正直あんまり送られたくなかったけど、今度は丁重に扱ってくれたので良かった。

75植物SHOCK 5(最後):2009/07/05(日) 16:33:38 ID:LNbr9U4c
「んん〜、んー……っ!」
「大丈夫かなぁ……」
私はうなされている叔母さんを見下ろした。
植物人(と人間のハーフ)の子に胸揉まれるとか尋常の経験じゃないからな……。
相当怖がってたし、トラウマになってるかもしれない。
「はっ」
一声あげて叔母さんが起き上がった。
「あ、気付いた?」
「……やはり、夢でしたか」
「えっ?」
「あのような獰猛で野蛮な植物がこの世に、しかも隣のお宅なんかに存在するはずがありません!
悪い夢を見ていました」
いやいや夢オチじゃないよ。
「夢じゃなくてさ、さっきまで私達……」
言いかけて私は口をつぐんだ。夢だって信じたいなら信じさせておけばいいだろう。
っていうかこの叔母さんに説明して納得させるのが難しい。

私はさっき、お隣の夫婦からお詫びとして貰った謎のフルーツを切り分けて持ってきた。
水色にオレンジの斑点というありえない色をしていたので、食べるのにはちょっと勇気が必要だった。
「おいしいですね、典香」
「……うん、意外と普通だ」
スイカっぽい食感のオレンジ味だな……。
私は狭い部屋をぐるりと見回した。すっかり暗くなった窓の外を、流れ星かUFOが横切っていく。
叔母さんの引っ越し先は、なんだか色々と変なアパートだった。
でも、時々様子を覗きに来るくらいなら、楽しい所なのかもしれないな、と私は思った。  (終)

76変態紳士:2009/07/06(月) 02:51:35 ID:kXYAswkQ
GJ!!
巨乳好きの赤ちゃんか、叔母さんのキャラもよい。

77変態紳士:2009/07/06(月) 17:46:30 ID:rjsvy7l2
GJ。
堅い叔母さんの、ある意味徹底ポジティブさに噴いた。
子葉レベルでおっぱいを見分けるとはw 萎えるとはw 将来大物になるな。

78桜嫌い:2009/07/11(土) 01:56:38 ID:vdHuvjRQ
前半が長いうえに非エロなのでこちらに投下します。

・触手型宇宙人×OL
・二人とも二十代前半
・前編は非エロ、エロは後編から
・純愛モノ

NGは「桜嫌い」でお願いします。

79桜嫌い (前編) 1:2009/07/11(土) 02:01:15 ID:vdHuvjRQ
「…そう、こっちに来たの。遊ぼうって、今はね〜桜が咲いているでしょ。
私、桜が嫌いだから、この時期、外に出るのはちょっと嫌なのよね。
そんなこと言って彼とデートじゃないかって?
違うよ、篤とはこの前別れたの。うん、まあ一年の付き合いで遠距離恋愛になっちゃったってのが
無理だったんじゃない?やっぱり会えないってのは大きいよ。
ん?無理してないかって、ううん、私もなんとなく離れたときからこうなる予感はあったし。
なら、余計にどこか出掛けようって?でもなぁ〜。
昔は桜が好きじゃなかったかって?アイツを連れて蕾のころから散る頃まであちらこちらで
花見してたじゃないかって…まあね、でも今は桜餅すら見るの嫌いなんだよね。
アイツ?ああ、アイツなら二年前に自分の星に帰ったよ。うん、それから音沙汰無し。
薄情モンだよね。小学校に中学、高校、大学までいっしょに過ごして世話焼いてやったのに。
うん、ああ、そうなんだ。あさってまでいるんだ。
それなら明日、超大作立体映画の録画キューブ持って来てやるって?
じゃあ、こっちはお菓子とおつまみとビールを山ほど用意しておく。
うん、まあ失恋の愚痴でも聞いてよ。待ってるから、駅に着いたら連絡して迎えに行く。
うん、じゃあね、ありがとう。明日は宜しく。」

ピッと一人きりの静かな部屋に通信カードの通話を切る短い電子音が響く。
私は窓に歩み寄ると薄いレースのカーテンを少し開けた。指先で窓に触れ、偏光ガラスのスイッチを切る。
防犯という意味もあるがこの時期はいつもカーテンを閉め、偏光ガラスを曇の状態にしている。
それはこんなよく晴れた休みの土曜日でもそうだ。
ふわりと春風が舞い、部屋に入り込む。キラキラと明るい日差しに細波を煌かせる大きな川の向こうには、
淡い紅色の花を零れんばかりにつけた桜の木が並んでいる。
私は下唇と小さく噛むとカーテンを引いた。
さっきの大学時代の友人との電話どおり昔は…そう大学四年生の春までは私は桜が大好きだった。
アイツと蕾の頃から満開、散り零れる頃まで桜の名所と呼ばれるところを次々とハシゴし、
花見を始まりから終わりまで思いっきり楽しんだものだ。
そう…あの春までは…。

『美幸、こいつがさ、美幸のこと好きみたいなんだ。付き合ってみたらどうかな?』

そう言って、アイツが別れた彼を引き合わせ、『後はお二人でどうぞ。』と背を向けて
夕日に光る桜並木の下を去って行くまでは…。
その後、空っぽの心のままで夜桜見物をしたあの日までは。
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴って私はこの時期はどうしても思い出してしまう
あの夕日の桜の下の背中を頭から慌てて消し去るとドアに向かった。

「誰だろう…。」

来客の予定は無い。宅配だろうか、ここしばらくはネットで通販はしていない。
両親が何か送ってきたのか、それともこの前に出したサイトの懸賞が当たったのか、首を捻りながら
玄関のドアに近づくとチェーンを掛けたまま、慎重にドアカメラのパネルを操作し
モニターに外の様子を映し出した。

『…美幸、居る?』

ドア越しに人の近づいた気配を悟ったのか、私の脳にダイレクトに男の…懐かしい男の声が響く。
ドアホーンを使わず、いや使えず、直接頭に話し掛けてくる男などアイツしかいない。
モニターの向こうにはひらひらと灰色の細い紐のようなものが揺れていた。

「まさか…。」

そうだとしたら二年ぶり、いや三年ぶりだ。あの夕日の桜から私はアイツを意識的に避けていたから。
大学を出ての春、故郷の星に帰るときも出発の宙港のロビーから通信カードに

『長い間、本当にありがとう。美幸と会えて良かったよ。僕は今から星に帰ります、さようなら。』

とメールが届いただけだった。
見送りも出来なかった、させて貰えなかったアイツがなぜ、今…。
息を飲むと震える手でドアを開ける。

『美幸、久しぶりだね。』

春の風が吹き込んでくる。頭に優しく響く穏やかな声と共にそこにいたのは
私を桜嫌いにさせたエイリアンの幼馴染だった。

80桜嫌い (前編) 2:2009/07/11(土) 02:05:05 ID:vdHuvjRQ
『ごめん。連絡も無く急に来ちゃって。』
「ううん、どうせ暇だったから。本当に久しぶりだね、ドラム。」

三年ぶりの幼馴染をリビングに上げた後、私は逃げるようにコーヒーを淹れにキッチンに入った。
思ってもみなかった、しかもまだ心のしこりを抱えたままの対面にどう接すればいいのか
頭が混乱している。
ワザと時間の掛かる旧式のコーヒーメーカーを出し、震える手で粉をフィルターに入れる。
コンロでお湯を沸かし、それを注いでフィルターの粉を蒸らしながら、私は大きく息をついた。

どうして…。

生まれ故郷の星に帰ったドラムが今更、なぜ目の前に現れたのだろう。
しかもあの時付き合うように引き合わされた篤と一週間前に別れた、絶妙のタイミングで。
そっとリビングを覗き込むとドラムは小さなテーブルの前で身体の正面についたモノアイを
キョロキョロさせて部屋を見回していた。

『…美幸ってこんなに綺麗好きだっけ?いつも部屋を散らかしっ放しにしてたから、
てっきり一人暮らしでもバタバタにしてると思ったよ。』

頭に響く陽気な声に「馬鹿…。」と小さく呟きつつ、返事を返す。

「一人暮らしして二年だからね。それなりにしっかりするようにもなるよ。」

確かにこの二年の実家を離れての一人暮らしで家事もきちんとするようになった。
実家の母も「しっかりしてきたものね。」と驚いている。
だが、ここ一週間は酷かった。篤の最後の電話を受けた晩から、罪悪感とそして少しの安堵感、
それに対する更なる罪悪感でまるで家のことなどする気も起きなかった。
ただ、職場と家のベッドを往復するだけの日々。家では食事すら取って無い。
今朝、さすがにこれでは駄目だと思い直し、新規一心を計るつもりもあって
リビングからキッチン、風呂場にトイレ、ベランダまで全部掃除したのだ。
その大掃除で見つけた棚の隅に二年間どうしても捨てられずの置いてあったマグカップを取り出す。
軽い強化プラスチックのカップに黄色い蓋、長い透明なキューブ状のストローがついているそれは、
よく実家に遊びに来て入り浸っていたドラムが使っていたものだ。
二年前、このアパートに引っ越すとき持っていく食器の荷造りをしていたときに、
星に帰ったドラムのカップを母が「これ、どうしようかしら?」と困ったように出してきたのを見て、
思わず貰ってきてしまった。
出来たコーヒーを自分のカップとドラムのカップに注ぐ。冷蔵庫からミルクポーションを一つ出して、
彼のカップにだけ入れてスプーンでかき混ぜる。無意識に冷凍庫から氷を三つ出して
それをカップに入れ溶かしながら、コーヒーをドラムの飲める好みの温度にしている
自分に気がついて苦笑を浮かべた。
そう、小学生の頃から遊びに来る度に、こうしてホットミルクを作ったり、
コーヒーを淹れたりしてきたので身体が彼の好みを覚えてしまっている。
かき混ぜるスプーンを上げ、先から落ちる雫に小さく息をつくとストローを差した蓋を被せて、
私は二つのカップをトレイに乗せて重い足取りでリビングに戻った。

81桜嫌い (前編) 3:2009/07/11(土) 02:14:26 ID:vdHuvjRQ
『そのカップ、持っていてくれたんだ。』

懐かしそうな声を私の頭に響かせて、ドラムは灰色の触指を伸ばすとカップの取っ手を握った。
ライトグリーンのモノアイの瞳が嬉しそうに輝く。
どうしてこんな三流SF映画のヤラレ役に出てきそうなエイリアンが未だに忘れられないのだろう。
私は自分のカップを持って、それを啜りながら懐かしい幼馴染を眺めた。
ドラムは異星人。正確にはM77銀河アリアス星系の第三惑星エアロ星人。
その形状から触手型宇宙人と他の異星人と一纏めで呼ばれることもある。
見た目はまるで歩く小型のドラム缶。灰色の太い胴体に脇から支えるように四本の短い足がついている。
ドラムの名前もそこからきている。本当の名前は地球人では発音出来ないので、
私がつけたあだ名を彼の父がそのまま彼の地球名にしてしまったのだ。
上から四分の一の位置にライトグリーンの瞳の光る単眼がついていて、その少し下、
三分の一の位置から今は二本の触腕が生えている。
自分が地球人の一部に生理的に嫌悪感を覚えさせる容姿をしていることを良く知っている為、
普段は地球人に合わせて調度腕に当たる位置の触腕しか出さないのだ。
しかし、本当はその他に前面、横後方、後面と八本の触腕を持っていることを知っている。
前面四本は先が五本の触指に別れ、それが地球人の手や指の働きをすることも、
後ろの四本は筋肉の束で一本一本が地球人の大人の男一人を容易に吊り上げられることも、
左腕当たる触腕の一番端の触指がどうにも動きが鈍くて困っていることも、
それでいて困ったときや照れたときにモノアイの下を掻くのがその触指だということも。
透明なチューブを頭頂にある口腔に入れて、ミルク入りのコーヒーをドラムが啜る。

『ちゃんと温くしてくれたんだ。』

頭に響く嬉しそうな声に頷き返す。ドラムは声帯を持たないので会話はテレパシーだ。
最も頭に声が響くからといっても人の思念を読み取ったりは出来ない。
口はイソギンチャクと同じように体の天辺にあり、中は歯舌がぐるりと周囲に生えていて、
それで食べ物を噛み潰す。筒のような口だから熱いものは食べられない。
実家によく泊まりに来ていっしょに食事をしたときはドラムに合わせて、
母が彼の分の御飯を冷ましていたものだ。

「どうして地球に?星に帰ってあっちで就職したんじゃないの?」

途切れがちになる会話の沈黙が重くて訊ねると、ドラムはライトグリーンの瞳を
何故かきょときょとと回した。

『今度、うちの会社がこっちに地球支社を出すことになって、
それで地球でずっと暮らしてきた僕が支社の社員に派遣されたんだ。』
「そう…じゃあ、これからはまた地球暮らしなんだ。」
『うん、もう美幸の実家の隣の家は売っちゃったから、今は一駅先の町のおんぼろアパートに住んでいる。
ぼろいけど僕みたいな異星人や亜人が多くて、家賃も安いから住み易いんだ。』
「そう…。」

私はコーヒーを一口飲んだ。いつも以上に苦い味がする。
ドラムの会ったのは小学三年生の頃、異星人街の近くにあった実家の隣に父親の転勤で
家族で越してきたのがきっかけだ。
お隣同士ということもあり、向こうの両親に地球に慣れない息子と仲良くしてやってくれと
頼まれたこともあり、異星人の友達という物珍しさもあって、いっしょに遊んでいるうちに
気が合っていたのか、いつの間にか一番の友達になっていた。
学校の放課後は毎日、日が暮れるまで二人で遊んだし、夏休みもお互いの家でずっといっしょに過した。
花火見物に夏祭り、夏休みの最後、山のように残った宿題を手伝ってくれたのも彼だ。
そのまま同じ校区の中学に上がり、いっしょに受験勉強しながら同じ高校に入った。
学校での友人付き合いの悩みも、勉強の悩みも一番に話せて、一番良く聞いてくれたのも彼、
そして大学は星間貿易の仕事に就きたいと希望していたドラムを追って同じ大学の星間経済学部に入った。

『美幸、こいつがさ、美幸のこと好きみたいなんだ。付き合ってみたらどうかな?』

あの日、毎年の恒例の二人の花見の約束にドラムが同じゼミの篤を連れてきて言った言葉が蘇る。
ぎゅっと手を握り、私は頭の中をこだまする忘れたくても忘れられない言葉を打ち消した。

82桜嫌い (前編) 4:2009/07/11(土) 02:18:41 ID:vdHuvjRQ
「ドラムは向こうに帰ってどうしたの?彼女でも出来た?」

そんな過去にしがみ付いたままの自分が嫌でわざと明るい口調で聞く。
肯定の答えなら…やっと諦められる。別れた篤には悪いけどやっと区切りがつける。

『ううん、仕事が忙しくてさ、出来なかった。相変わらずの寂しい一人身だよ。』

ドラムの困ったような声に思わず安堵が胸を満たす。
それと同時に自分が三年前とちっとも変わってない思いをまだドラムに抱いていることに驚いた。

馬鹿みたい…どこまで私、馬鹿なんだろう…。

苦い、苦いコーヒーを飲み干す。

『美幸は?篤とうまくいってる?』

ドラムのどこか探るような声に私は素直に答えた。

「ううん、一週間前に別れたの。篤、就職して直ぐに支店に転勤になっちゃって。
ダメよね、一年そこそこの付き合いで遠距離恋愛なんてね。
結局、連絡が途絶えちゃって、向こうで新しい彼女が出来たんだって。」

一週間前の後悔と罪悪感が蘇る中、務めて明るく答える。

『そうなんだ…。』

何故かドラムの声が篭ったように響く。コーヒーのカップを置くと彼は小さく左端の触指を震わせた。


『悪い、美幸。こっちで彼女が出来たんだ。別れてくれ。』

篤が電話を掛けて来たのはちょうど一週間前の土曜日、彼が私の家に泊まりに来る日の夜だった。
その日は離れてから尚更感じるようになった彼と会う前の重い気持ちを振り払うように、
朝から掃除をして、買い物に行き、二人分の夕食を作って篤を待っていた。
中々到着の連絡をしてこない篤にこっちから電話を掛けようか迷っていたときに
通話カードの篤用の着信音のメロディーが流れたのだ。
別れの言葉はそれだけだった。多分、それが篤の優しさだったのだろう。
そして彼がわざと私が彼に会う用意を終えたころに電話を掛けたのは
彼の精一杯の私への仕返しに違いない。
心の中でいつまでも他の男のことを考えている私へ、いつも彼をその男と比べている女への。

『そう、そうなんだ。解った。新しい彼女を大事にね。』

『ごめんなさい。』と謝り出してしまわないうちに、私はそう答えて直ぐに通話を切った。
それは篤に余りに失礼だし、彼の男としてのプライドをとことんまで傷つけてしまう。
忘れられない相手が、比べていた相手がエイリアンだなんて。
通話を切って一番最初に胸を満たしたのは安堵だった。
もう無理をして恋人のふりをしなくて済む。本当は好きでもないのに篤の求めるままに抱かれなくて済む。
その後、襲ったのはそう感じる自分へのひどい罪悪感だった。
でも、全く失望は感じなかった。夕日の桜並木の向こうの彼の背中を見送った時のような
胸が空っぽになる思いは微塵も感じなかった。
…そう、無理して付き合っていたのだ。彼が『付き合ってみたらどうかな?』って言ったから、
彼が進めてくれた相手だったから。彼を…友人にしかなれないと知った彼を諦める為に。
でも、篤は彼の代わりにはならなかった。
花火見物のとき浴衣を着て不慣れなゲタで歩く私の横で篤はさっさとスニーカーで歩いていった。
彼はゆっくりと歩調を合わせて、『きばっておしゃれしなくても良いのに。』と笑いながらも
時々立ち止まって休ませてくれたのに。
人込みの中でも、ただグイグイと手を引くだけの篤と違って、彼は私が人に押されて転んだり
倒れたりしないように側にぴたりとついて伸ばした触腕を腰に回してしっかりと守ってくれていた。
具合が悪いときも、落ち込んでいるときも彼は、黙っていれもすぐに察して優しく声を掛けてくれた。
篤との付き合いで知ったのは皮肉にも彼以上に私を見ていて、気に掛けてくれている男が他にいないことと、
そんな彼へいつの間にか抱いていた自分のどうしょうもない思いだけだった。
触手型宇宙人にとって私は恋愛どころか異性としての対象にすらならない。
彼にとっては私を好きな男を紹介出来る幼馴染の友人でしかないというのに。

83桜嫌い (前編) 5:2009/07/11(土) 02:22:42 ID:vdHuvjRQ
「今日はどうしてここに来たの?」

私の問いにドラムは焦ったように触指をそわつかせた。

『久しぶりに地球に来たら、美幸の顔が見たくなってさ。
おばさんに聞いたら意外と近くに住んでいたものだから、
それなら久しぶりに良い天気だし、いっしょに花見にでも行こうかと思ったんだ。』
「ごめん、私、桜が嫌いなんだ。」

精一杯の彼への抵抗で言ってみる。ドラムはライトグリーンの瞳をまん丸にして私を見た。

『嘘…小さい頃からずっと桜が大好きだったじゃないか。二人で毎年いろんなところへ
花見に出掛けたのに…。』
「でも、今は桜餅すら嫌いなの。」

私はぴしゃりと言い切った。

『そんな…。』

ドラムがおどおどと瞳を動かす。左の触腕の一番端の触指がモノアイの下を掻く。
私はそんな彼から視線を逸らした。
だって、だって、ドラムが桜の下であんなことを言うから、恋人でなくても良い、
異性に見られなくても良い、ただいっしょに居るだけで良かった私にあんなことを言うから、
どうあがいても伝わらない思いだということをあの時はっきりと示したから…!!
息苦しさともどかしさに立ち上がる。

「ごめん、用事思い出したの。帰ってくれる?」

私の突然の言葉にドラムがオロオロと触腕を振る。

『暇だって言っていたのに?』
「明日、友達が来るの。その仕度に買い物に行かなくちゃいけないの。」
『だったら、そこまでいっしょに行こう。駅まで見送りくらいしてくれないかな?』
「ごめん、まだ掃除も残っているし。」
『手伝うよ。僕、暇だし。』
「いいから帰って!!」

私はドラムに背を向けてリビングを出て廊下を玄関のドアに向けて歩き出した。
後をドラムが短い四本の足を器用にちょこまかと動かしてついてくる。

『美幸、何を怒っているんだい?』
「怒ってなんかない。」

私は玄関のノブに手を掛けた。
諦めよう、どうあがいても無駄なのはあの時知った。
今日、ドラムに会ったのはきっとこれで諦めなさいということ。
明日は友達と立体映画見て、愚痴って、ビール飲んで、そしてこれからはきれいさっぱり彼を忘れて、
ちゃんと私を異性と見てくれる男と付き合おう。
ノブを回そうとした瞬間、私の体にドラムの触腕が絡みついた。
後方の触腕、重いものでも軽々と持ち上げられる筋肉の束の腕だ。
そのまま、あっという間に廊下へと戻される。とんと背中にドラムの厚い皮膚に覆われた
胸が当たった。シュルシュルと今度は前方の四本の触腕が私の身体に纏わりつく。
細い触指が私の手に重なった。

「ドラム!?」

驚いた私の声に答えるように触腕がギュッと私の身体を抱き締める。

『美幸…。』

聞いたことの無いドラムの熱っぽい声が私の頭に響いた。


(続)

84桜嫌い (前編):2009/07/11(土) 02:24:45 ID:vdHuvjRQ
以上です。

後編は近いうちに投下します。

失礼しました。

85変態紳士:2009/07/11(土) 21:54:37 ID:y/qdLELQ
gj
萌えた。やっぱ過程もいいやなぁ。

86桜嫌い (後編):2009/07/18(土) 15:33:02 ID:n7uOkRAg
後編を投下します。

・触手型宇宙人×OL
・二人とも二十代前半
・エロは4レスあたりから
・純愛モノ

NGは「桜嫌い」でお願いします。

87桜嫌い (後編) 1:2009/07/18(土) 15:35:33 ID:n7uOkRAg
『美幸…。』

頭に響くドラムの声はあるはずもない吐息が感じられるほど熱い。

「ドラム…どうしたの?」

息が詰まりそうな沈黙に問い返すとドラムはギュッと更に触腕に力を込めた。
ドクドクと背中越しに彼の心臓の音が聞こえてきそうだ。

「ドラム、苦しい…。」

いくら手代わりの触腕と言えども、四本の巻きつかれて締められるとさすがに辛い。
小さく身じろぎをしてそう告げるとドラムは『ごめん!!』と触腕を引いた。
慌てて目の下の二本を体の中にしまう。何を焦っているのかグルグルと四本の触腕から別れた触指が絡む。
…自分の腕を絡ます触手型宇宙人って初めて見た気がする。
振り返って廊下に座ったまま唖然としている私の前でなんとか触腕を仕舞うと
ドラムは『あ〜、え〜とぉ〜。』と困ったように、いつもの左側の端の触指で目の下を掻く。
…もしかして…。彼の熱い声と触腕の強さに微かに感じた希望に私は賭けた。

「もしかして、本当は私の顔を見る以外にも何か用があって来たの?」

ビクリとライトグリーンのモノアイが震える。
彼の目の下で動いている不器用な触指をそっと掴んで引き寄せるとドラムは観念したように
瞬きして、私の首から頬に右の触指を這わせた。

『美幸にどうしても会いたくて来たんだ。』

柔らかな触指の感触が懐かしい。

『美幸にどうしてももう一度会いたくて、上司に頼んで地球支社の社員にして貰ったんだ。』
「ドラム…。」

ピクリと手の中で触指が震える。

『篤とうまくいっているんなら、もう黙っていようと思った。でも…さっき別れたって聞いて、
そうしたら我慢出来なくなって、もう一度あの三年前の花見をやり直したくなって…。』

ドラムの触腕が背中に伸びる。そのまま私の身体を彼は自分の身体に引き寄せた。
ドラムの灰色の胸が暖かい。今度は力を込め過ぎないように優しく触腕を絡ませると
ドラムの真剣な声が頭に響いた。

『こんなこと言っても美幸には迷惑なだけかもしれない。でも…。』

希望が少しずつ確信に変わる。私は小さく息を飲んだ。

『美幸、僕、美幸のことが好きだ。』

88桜嫌い (後編) 2:2009/07/18(土) 15:39:41 ID:n7uOkRAg
『ごめん。こんなこと言って。』

頭の中に苦しげなドラムの声が響く。彼は私の身体から触腕を引くと、
ただ目を見張ることしか出来ない私を見詰めた。

「…それって、昔のように幼馴染の友達として…?」

震える声で恐る恐る確認する私にドラムがモノアイの下の瞼を引くつかせる。
これは彼の緊張したときの癖だ。私の声同様震える声が頭の中に響いた。

『違う。異性として、女性としてだ。』

思っても見なかった、でも欲しくてたまらなかった言葉に息が詰まってしまう。
そんな私の強張った顔を嫌悪と取ったのだろう。ドラムは目を逸らして『ごめん。』ともう一度謝った。

『気持ち悪いだけだろ。触手型宇宙人にこんなこと言われても。
ずっと、すっと好きだったんだ。でも僕は地球人にとっては気味が悪いだけの存在だから。』

ライトグリーンの瞳が震える。幼馴染だからこそ、いつもいっしょにいたからこそ知っている
彼に浴びせられた地球人の偏見を思い出して胸が痛む。

『友達で良いって、そばに居られれば良いって思ってたんだ。
美幸は可愛いから他の地球人の男にモテたしね。』
「嘘…。」

そんな記憶は微塵も無い。ふるふると首を振って見せるとクスリと小さな笑い声が頭に響く。

『美幸は余り男性に興味無かったからね。でも本当にモテたんだよ。
その度に美幸を遠慮なく好きになれる男達が羨ましくて仕方が無かった。』

そうか…たぶんそれは私がドラムしか見てなかったからだ。
他の男なんて地球人だろうと宇宙人だろうと見えてなかったからだ。…ずっと彼が好きだったから。

『特に篤は美幸に夢中だった。アイツなら美幸を幸せに出来るって思ったんだ。
だから、美幸を諦めるためにもアイツを美幸に紹介した。』
「だから、あの時、私に篤の恋人になれって言ったの?」

…『美幸、こいつがさ、美幸のこと好きみたいなんだ。付き合ってみたらどうかな?』…

夕方の桜の下のドラムの背中がよみがえる。
小さくドラムが頷く代わりに瞳を上下させる。

『でも、諦めきれなくて、どうしても諦めきれなくて、星に帰って同じ種族の女の人を好きになろうと
頑張ったけど、それも出来なくて…美幸にもう一度だけ会いたくてとうとう戻って来てしまったんだ。』

ドラムがまた私の身体に優しく触腕を這わす。私の唇を触指がそっと撫でる。

『ごめん、美幸。本当にこんな気持ち悪い話をしてごめん。
…でも嫌がらずにちゃんと聞いてくれてありがとう。』

言いたいことを言って気持ちが落ち着いたのか、ドラムは穏やかに瞳で微笑む。

『さようなら。』

ポツリと一言頭の中に呟いて、ゆっくりと短い足を動かして私の横を通り過ぎる。
私は手にまだ残ったドラムの一番不器用な、でも一番彼の感情を素直に表す触指を引っ張った。

『美幸?』

ドラムが振り返る。

「私の返事を聞かなくて良いの?」

私の声に手の中の触指が震える。

『良いよ。解かっているから。大丈夫、もう美幸の前には現れないからさ。』

彼はおどけた声で、しかし微かに語尾を震わせながら告げると背中を向けた。
あの夕日の桜の背中が重なる。私はすがりつくように、それに腕を回した。
あの時、本当はしたかった、でも出来なかったことが今なら出来る。

『美幸!?』

驚いた声が頭に響く。私はそっと触指を離すとそのまま膝を廊下について立ち上がり
彼の頭頂の唇に自分のそれを重ねた。

89桜嫌い (後編) 3:2009/07/18(土) 15:44:19 ID:n7uOkRAg
『美幸…。』
「私もドラムのことが好きだよ。男として。」

私の返事にドラムの身体がビクリと震える。触腕が伸びて、包み込むように私の身体に絡まってくる。

『本当に?』
「馬鹿ドラム。」

優しい触腕に抱かれて、私はわざとおどけたようにドラムのモノアイの下に唇を付けた。

「私がこんなこと冗談でも言わないのはドラムが一番良く知っているでしょ。」
『…うん。』
「ずっと好きだったんだよ。あの時、ちゃんと告白してくれれば篤と無理して付き合わずに済んだのに。」
『…楽しそうに見えたけど…無理してたんだ。』
「だから、桜が嫌いになったんだもの。」
『そうか…本当にごめん。』

謝るドラムの身体にもう一度唇を押し付ける。ドラムがそっと触指で私の手を持ち上げた。

『僕達は愛情表現に地球人のキスの代わりにこうするんだ。』

そっと左の触指が左手に絡まる。最後の一番端の触指が手の端でピクピク動くのを見て
私は小さく笑うと右指で摘んで小指に絡めた。

『美幸、愛してる。』
「私もドラムのこと愛してる。」

暖かな触指が手を包む。代わりに私はドラムの身体に唇を何度も押し付けた。

ドラムの触指がゆっくりと私の身体をなぞるように這っている。
時々ためらう様に胸や足に触っては引いていく様子に私は思わず笑い出した。

「したい?」
『え…?』

目を瞬かせてドラムが聞き返す。

「セックス。」

そう言うとドラムは慌てたように触指を振った。

『でも…!!』
「したいんでしょ。」

重ねて訊くと困ったように左端の触指が目の下を掻く。

『…うん。』
「私もしたい。」

私は灰色の筒のような身体に抱きついた。地球人の男とは全く違う形の身体、でも温かい肌に指を這わす。

「ちゃんと男と女として愛し合えるか確かめたい。」
『僕も。』

私は立ち上がった。そのままドラムの触腕を引いて寝室のドアを開ける。
中に入って窓に歩み寄り、曇の状態の偏光ガラスにカーテンを引く。
薄暗くなった部屋で私はキョトキョトと挙動不審に瞳を動かすドラムを見下ろした。
触腕が部屋の床をソワソワと這っている。
小さく笑うと思い切ってスカートのホックを外した。ストンと床に輪を描いて布が落ちる。
ベッドに腰掛けて靴下を脱ぐとブラウスのボタンに手を掛ける。
さすがに見られながらは恥ずかしいのでドラムに背を向けて全部外して脱ぎ、
軽く畳んでスカートの上に置く。
ちょっとためらった後、ブラの後ろのホックも外した。
私の露になった胸にドラムが目を見張るのが解かる。

「この身体で出来る?」

立ち上がって彼の側に座り、不安に思って訊くとドラムはモノアイの縁を赤くして答える。

『美幸を意識し始めてから、地球人の女の人の身体の方に興奮するようになっちゃったから、
エアロ星人としては変人だけどね。』
「良かった。」

ブラをブラウスの上に置くとドラムに向き直る。

『綺麗だよ。美幸。』

ドラムが瞳を微笑ます。

「ごめん、初めては篤にあげてしまったけど…。」
『良いんだ。意気地の無かった僕が悪かったんだから。』

だからこそ、思いが通じた今、彼に抱かれたい。ずっと内心嫌々ながら篤に抱かれていたから、
大好きなドラムに思いっきり抱いて欲しい。
ドラムが八本の全て触腕を身体から出す。優しく私の身体にそれを這わすとそのまま抱き上げて、
私を自分の元に引き寄せた。

90桜嫌い (後編) 4:2009/07/18(土) 15:49:51 ID:n7uOkRAg
ドラムが私の身体を宙に持ち上げる。力のある後方の四本の触腕が両足のふくらはぎと
お尻を持ち上げて、私は空中でちょうど膝立ちの状態にされた。

「ドラム、愛してるわ。」
『僕もだよ。美幸。』

もう一度言い交わすと彼の頭頂の口へ口付ける。初めは触れる程度に、次に何度も吸い付く。
チュパ、チュパと小さな音が寝室に響く。
私は唇を開いた。舌を出して口の周りを舐めるとドラムがいつもはしっかりと閉じている口腔を開く。
その中に舌を伸ばして入れる。ザラザラと歯舌の生えた中を舌で嘗め回すと
お返しのようにドラムが口腔を広げたり縮めたりしてくる。
と同時に私の裸の上半身を彼の前四本から別れた二十本の触指が撫で始めた。

「…ふっ…ん…。」

深い口付けを続けながら、思わず鼻から甘い息が漏れる。
柔らかな触指が裸の上半身をくまなく撫で回す。胸を触指が這い、こねるように揉まれる。
頂に触れられると思わず彼の口から唇を離して甘い声を上げてしまう。

『ここが良く感じるんだね。』

ドラムが私の胸の頂に触指を絡めて揉み始める。
キュッキュッとリズミカルにこねる様に揉まれると甘い刺激に身体が震える。
篤と遠距離恋愛になって二年。ここ半年は誰にも肌を触れられていない。
自分で慰めたことはあるが、それに物足りない身体がいつも以上に敏感に貪欲になっているようだ。

『ここも弱いみたいだ。』

触指が背中を這う。背骨をなぞるように撫でられると思わず身体が仰け反る。
触指で脇腹を覆われ、私は高い声を上げた。

「…あふっ…ド…ドラム…。」
『気持ち良い?』
「…うん…あっ、ああんっ…。」

恥ずかしいくらい甘い声が出てくる。篤のときは半分演技だったのに、
ドラムだと自然に身体が反応して抑えることが出来ない。
大好きな人にようやく触れられて抱かれている。そのことにひどく興奮している。
上半身をくまなく撫でられて、下半身が、あそこが熱くなってくる。
もどかしさに太ももをすり合わせるとドラムのからかうような声が頭に響いた。

『そこも触って欲しい?』
「…うん。」

小さく頷くとドラムの触指が布越しにそこを襲う。何本もの触指に一度に這われ、腰が跳ねる。

「…あああっ!!」

容赦無い刺激に思わず腰が引ける。だが、がっちりと足に絡みついた触腕がそれを許さない。
お尻を支えていた触腕が腰に絡みつき、逃げる身体を押さえつける。

「やぁ!…あっ、ああっ!!…ダメ…スゴすぎるっ!!」

布越しなのに頭がクラクラするほどの快感が襲う。私は目の前のドラムの身体にしがみ付いた。
身体がこの刺激に喜んで蜜をたっぷりと溢れ出させてくる。

『スゴイ、美幸。こんなに濡れてきてる。』

湿ったショーツにドラムの嬉しそうな声が頭に響くが答えられない。
喘ぐしかない私に小さく感情を抑えたような声が聞こえた。

『篤のときもこんなだった?』
「…違うっ!!」

思わず大声で答える。

「ドラムだからすごく気持ち良いの!」
『そうなんだ。』

嬉しそうな満足したような声が頭に響き、ショーツの布と肌の間からドラムの触指が入ってくる。
ヌルヌルと濡れた私のあそこを何本もの触指が蜜をまとって這い回る。

「…あああああっ!!!」

肉芽も花弁もいっしょくたに撫で回される。甲高い声で鳴く私の胸を更にドラムの触指が揉む。

「やあっ!!だめっ!!」

頂きを触指が絡み付く。あそこでは隅々までくまなく触指が這い回る。
肉芽が一番感じると知ったドラムがそこを重点的に責め始めた。

「…やあっ!!あっああああ!!!やめ、ドラムやめて!!!」

91桜嫌い (後編) 5:2009/07/18(土) 15:53:42 ID:n7uOkRAg
敏感な三点を同時に責められて頭が真っ白になる。
無意識に激しい愛撫から逃れようとする腕を突っぱねるとドラムの触腕が押さえ込む。

『ここがこうかな?』

探るようにドラムの触指が肉芽を何度も何度も擦り上げる。
『それとも…。』声が響くと根元を触指が這いキュッと締め上げられる。

「あっ!あああっ!!おかしくなる!!もうおかしくなっちゃう!!」

必死に叫ぶがそれが返ってドラムを興奮させてしまうようだ。
鳴く私を思う存分楽しむようにドラムはグチュグチュと水音を鳴らし、胸を揉む。

「ドラム!!ドラムぅ!!」

強過ぎる刺激が全身を駆け巡る。ガクガクと震える足に更に動きは激しくなる。
息も出来なくなるくらいの快楽の中私は必死にドラムにしがみ付いた。

「も、もうダメっ!!イクっ!!イッちゃう!!」

私の声に胸の頂、肉芽に触指が何本も絡みつき同時にギュッと締め上げ押し潰された。
ぐっと大きく身体が仰け反る。喉から自分でも聞いたことのないような声が上がる。
今までに無い高い絶頂の瞬間、自分の身体が大量の蜜を吐き出したのを私は感じた。


『スゴイな、美幸。もうベトベトだ。』

荒い息を繰り返すしか出来ない私の足からぐっしょりと蜜が染み込んだショーツを外しながら
ドラムが嬉しそうな声を響かせる。

『そんなに気持ち良かった?』

ぼぉっとした頭で小さく頷く。ドサ…と恥ずかしい音を立てて服の上に脱がされたショーツが落ちた。

『よく見せて。』

ぐっと腰が持ち上がる。腰とお尻を支えたまま大きく足を開かされる。所謂M字開脚というヤツだろう。
空中で私は足を開かされ、あそこをドラムの前に晒された。

「ひっ!!」

ドラムの触指がイったばかりの敏感な所を探る。割れ目を大きく開かされ、
蜜まみれのそこをじっくりと隅々まで見られる。

『綺麗な色をしている。篤とはそんなに寝てなかったんだ。』

コクリと頷く。ようやく息を整えた私は全てを晒された恥ずかしい格好のままドラムに尋ねた。

「ドラムのは?どうなってるの?」
『それは…。』

ドラムの短い足の間、前二本の間から棒のようなモノが付いた触肢が出てくる。
地球人の男性器によく似たモノに太い紐がついたようなものだ。

「これがドラムの?」

そう訊くとドラムは目の縁を赤くした。

『そう僕の生殖肢。』

私はそれに手を伸ばした。『美幸!?』と驚く声を聞き流して口に含む。

『みゆ…!?』

舌をチロチロと頭に這わす。思いっきり奥までほうばって口内を締める。
ほうばり切れなかった部分を指でなでながら私はドラムのさっきのお返しとばかりに
ドラムのモノに愛撫を始めた。

『み…美幸…ん…。』

苦しげな声が頭に響く。形状同様感じるところも地球人の男と変わらないようだ。
頭の割れ目に舌を出し入れしながら、全体を指でなぞる。

『う…うん…っ…。』

私を支えるドラムの触腕がブルブルと震え始める。

「気持ち良い?」

口からドラムのそれを外して、指で愛撫しながら訊くとドラムは瞳を上下させた。

『…でも、どこでそんなにうまくなったんだい?』

少し怒ったような声に「ごめん。」とただ謝るとドラムは小さく笑った。

92桜嫌い (後編) 6:2009/07/18(土) 15:59:45 ID:n7uOkRAg
『これからは僕だけだよ。』
「もちろん、…最初はあげられなかったけど、ドラムで最後にするから。」
『じゃあ、ここももう僕だけのものだ。』

ヌルリと胎内に触指が入る。「ああっ…。」久しぶりに身体の中に何かが入ってくる感触に
ビクリと全身が震えた。
ヌルヌルと触指が胎内で蠢く。『気持ち悪くないかい?』ドラムの声に私は頷いた。

「すごく、良い…。」

蠢く触手が胎内をくまなく探る。普通の地球人の女性なら嫌悪感を伴う感覚だろうと思う。
でも、身も心もドラムにゆだねきった私の身体は普通では味わえない快楽を素直に受け入れる。
力が抜けた上半身を腰を抑えていた触腕がそっと斜めに支えてくれる。

『美幸は良い子だね。ご褒美あげなきゃ。』

ズルリと更に二本、触指が入ってくる。

「…ああ、あああ…。」

増えた触指に素直に甘い息を吐き出すとグチュリ、グチュリと音を響かせて
それは私の胎内を確かめるように動き回った。
奥に響く愛撫に身体が答えドラムの触指をぎゅっと締め付けるのが解かる。

「…はあ…あっ…あああ…。」

空中に身体を横たえ、M字に足を開かれ、そこに三本も触指入れられて喘いでいる私は
きっとAV女優にも劣らない淫らな姿を晒しているに違いない。

「…気持ち良い、ドラム…気持ち良いの…お願い…もっと…。」

なのに口から出るのはおねだりの言葉だ。ドラムがクスリとからかうような笑い声を響かせる。

『僕への御奉仕は?』

言われるままに手を休めて胸の上の乗せていたそれを口に含む。しゃぶるように舐め回すと、
ドラムの呻き声が響いた。
グチャリ、グチャ…私の上と下で湿った音が鳴る。それに混じって篭った呻き声が響く。
ドラムのモノから塩辛い液が溢れてくる。それを私は喜んで啜り、嘗め回した。

『ちょっ…美幸…待って…。』

制止の声が頭に響くがそれを無視して私はドラムのソレに吸い付く。

『うわぁ!!ちょ、ちょっと出る、出るって!!』

ドラムが慌てた声を上げて、私の中をグイッと抉る。

「ああっ!!!」

それがちょうど中の感じる場所で私は口を大きく開けて声を上げた。
慌ててドラムが私の口から自分のモノを引く。

『危なかった…。』

安堵の声に私はジンジンとうずく胎内に喘ぎながら答えた。

「飲んでも良かったのに…。」
『ダメ。これから嫌というほど飲ませてあげるから、今日はこっちで飲んで。』

ドラムのソレが私の割れ目当てられ上下する。ヌチャリと響く音に私は甘い息を吐くと頷いた。

93桜嫌い (後編) 7:2009/07/18(土) 16:01:36 ID:n7uOkRAg
ドラムの触腕が動き、私の身体を支え直して、もう一度空中で膝立ちの状態にされる。
今度は思いっきり足を開かされた状態だ。
濡れたあそこを固くなったドラムの生殖肢の先が水音を立てて撫で回している。
快楽とこれからの行為への期待に喘ぎながらドラムの円筒形の身体にしがみ付いた私に彼の声が響く。

『美幸、もう一度キスしてくれないかな?』
「…うん。」

もう一度、ドラムの頭頂の口に唇を重ねる。細く開いた口腔に舌を差し入れる。
夢中でドラムの口の中を嘗め回す私の頭にドラムのうっとりとした声が響いた。

『挿れるよ、美幸。』

ぐっと固いものが私の中に侵入する。「あああっ!!!」半年振りの男に仰け反る私の頭を
ぐっとドラムの触指が押さえ付ける。
そのまま、押さえられたまま彼の口の中への愛撫を続けさせられる。
グイグイと入ってくるドラムに腰が揺れる。

「…はっ、んんんっ!!」
『…すごい、美幸の中、僕をどんどん飲み込んでいくみたいだ…。』
「んんっ、ふ…んんん!」

まるで飢えているように私の胎内がドラムを締め付ける。

『…美幸、すごいよ、美幸。やっと美幸を僕のモノに出来る…。』

嬉しそうな声が聞こえる。その声に私はドラムの口腔を貪り、腰を揺らしながら答えた。

「ん!!んんんっ!!!」

ドラムに深い口付けしたまま、私は叫び声を上げた。
彼のモノが奥に、奥の奥に突き進んでいる。
触指のときとは全く違う、太くて固いモノで奥を押し広げられる感覚に足が震える。

『…!!…どこまで…入ればいいのかな…!?』

グイっと奥を抉られ、腰が跳ねると押さえ付けるドラムの触指から逃れようと必死に頭を振る。
だが、彼も今は私を気遣う余裕は無いようだ。『……さっきの感じ…だと…。』
喘ぐ声が聞こえ、更に奥に突き進む。

「んん!!んんんっ!!!」

くぐもった声で叫ぶ私の奥を彼は開いていく。何かが最奥に当たる。

「んんんっ!!!」
『…ここが…美幸の…一番深いところだね…。』

ギュッと触腕が私を抱き締めた。

94桜嫌い (後編) 8:2009/07/18(土) 16:05:39 ID:n7uOkRAg
『…僕はどう?美幸。』

ドラムの少し不安げな声が頭に響く。

「…良い…すごく良いよ…奥までしっかり入っている…。」

ようやくディープキスから開放されて、そう答えるとドラムの安堵した息が頭に響く。
自信の無い子供のような彼に私は思わず笑ってしまった。

『動くよ。』

少し拗ねたような声と共に動き出したドラムに水音が鳴り響き、甘い声が部屋にこだまする。
私の頭の中にはドラムの荒い声が響いてくる。

『ここ…ここ、だよね…美幸の弱いところ…。』
「うっ、うん…ああっ!!」

さっき触指で探り当てられた一番感じるところをドラムのソレが擦り上げる。

「ああ…熱い…あっ、もっと…もっと、ドラムぅ…。」

私は大きく腰を振った。先程からの篤では知らなかった深い快感に貪欲に身体が動き始める。

「…気持ち良い…気持ち良いの…ドラムのが…ドラムが…良いの…。」

うっとりと彼にしがみ付き、腰を動かす私にドラムの笑い声が響いた。

『もう…僕じゃないと…美幸はダメだね。』
「だって…だって…ドラム…良過ぎるもの…。」

この一回でもう私の身体は地球人の男では到底満足出来なくなってしまっただろうと思う。

『美幸…もっと…もっと気持ち良くしてあげる…。』
「…えっ!?あっああああああ!!!」

触指がまた全身を這い始める。胸をあそこを這う。肉芽に絡まれて頭の中に火花が散った。

「無理!!無理、ドラム!!ああっあああ!!」

必死に彼にしがみ付く。重なる刺激に達してしまい胎内がドラムを締め上げる。
なのに止まらない。私の頭が再び真っ白になる。

『美幸、もう僕も限界…イクよ…。』

こっちはとっくに限界を越えている。ドラムの動きがそれまでの愛撫から自分が射精するものに変わる。
ぐんぐんと奥を突かれて、私は仰け反った。
もう、何も解からない。身体は更に高みを登り始める。
口から自分とは思えない声と唾液が零れ、頭が空っぽになり、夢中で腰を振る。

「ああっ!!またイクぅ!!ああっドラム!!ドラムぅ!!!」

辿り着いたことのない遥かに高いところに持ち上げられ、叫び声を上げ、私は宙を仰いだ。

『僕も…美幸っ。』

絶頂の波に飲まれ意識が飛ぶ。その時ドラムの熱いものが私の胎内にほとばしったのを感じた。

95桜嫌い (後編) 9:2009/07/18(土) 16:08:48 ID:n7uOkRAg
気がつくと私は裸のままベッドに寝かされていた。すぐ目の前にドラムが灰色の瞼を閉じて眠っている。
彼から伸びた触腕が身体に何本も絡み付いている。
疲れて寝てしまったんだ…。気だるい全身に思わず苦笑する。
あの後、意識が飛んだ私をドラムが風呂場に連れて行ってくれた。
勝手が解からない彼が私を洗おうとして冷水のシャワーを捻ってしまい、それで意識が戻った後、
二人で子供の頃のように洗い合ったのだが…まあ…その…つい、また身体を交えてしまった。
二度目で完全に私がダウンしてしまい、その後、ドラムがベッドまで運んでくれて
ついでに自分も寝てしまったらしい。

『ずっと、よく眠れなかったんだよ。』

身体を洗っているときにドラムが恥ずかしそうに白状した。
地球に来てから私に会おうか、会うまいか、散々悩んで夜中に部屋を歩き回るので、
アパートの人達にうるさいと怒られていたらしい。
そんな彼を起こさないようにそっと身体から触腕を外す。
閉じたままピクピクとひくついている瞼に軽く口付けて私はベッドから出た。
タンスから音を立てないように服を取り出すとそれを身につけ私は部屋を出た。
リビングに行き、カーテンを開けて偏光ガラスを透明に変える。
ガラリと窓を開けると春風と共に夕方の日差しに映える桜並木が目の前に広がった。

「綺麗…。」

思わず感嘆の声が出る。窓の側に座って私は今まで見ることを避けていた夕陽の桜を眺めた。
金色の光に川の水面が光る。薄紅色の桜が川面に腕を差し伸べんばかりに枝を伸ばし、
ぼんぼりのような花を咲かせている。
ちらちらと散る桜の花びらさえ見えそうな光景にうっとりと私は見入った。

『美幸。』

優しい声が頭に響く。ペタペタとフローリングを歩く足音が背後から近づくと
隣に灰色の円筒形のエイリアンが座る。柔らかな触腕が肩を抱いた。

「ごめん。起こしちゃった?」
『…目が覚めたら美幸が居ないからさ。不安になっちゃって…。』

グイと引き寄せられる。『また夢かと思った。』ドラムの情け無い声に笑い出す。

「あんなに気持ち良いことをたくさんしたのに?」

笑いながらライトグリーンの瞳を覗くと目の縁が真っ赤に染まった。
左の一番端の触指がモノアイの下を掻く。

『夢じゃないよね。』
「夢じゃないよ。」

夢のような幸せな時間だったけど夢じゃない。これからもずっと続くのだから。
私はドラムの身体に寄り掛かった。

『綺麗だね。…桜嫌い治った?』

いっしょに桜を眺めるドラムの声が頭に響く。

「うん。」

頷いて腰に回った触腕を握る。

「ドラム、今夜は泊まっていってよ。私、もう少ししたら夕飯作るから、
それを食べたらいっしょに夜桜を見にいかない?」
『良いね。三年ぶりに二人で花見に行こう。』

そう、あの日の花見をやり直そう。今度は本物の恋人になった二人で。
ドラムの触指が左手に絡む。やっぱり端の触指がうまく絡めず手の甲を撫でる。
それを摘んで小指に絡めてあげる。小さく微笑むとドラムも瞳で笑みを返してくる。
彼の身体に腕を回すと優しく触腕が私の身体を抱える。
長い思いが叶った恋人の側で幸せに胸が満たされるのを感じながら、
三年ぶりに大好きに戻った夕陽の桜を私は存分に眺め続けた。


(了)

96桜嫌い (後編):2009/07/18(土) 16:09:27 ID:n7uOkRAg
以上です。

失礼しました。

97変態紳士:2009/07/19(日) 23:06:09 ID:w0f0lZJg
GJ!すれ違いのちラブラブは王道
焦って自分の腕を絡ます触手型宇宙人萌えw

98変態紳士:2009/07/26(日) 20:20:55 ID:GewvX79.
本スレで書いて欲しい作品だなあ、GJ!
エロシーンもそれ以外のシーンも丁寧で色々萌えた。
純愛イイネイイネ!

99903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:49:38 ID:4zUkeVhg
再開

100アンダーグラウンド4  903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:53:22 ID:4zUkeVhg
 極秘開発プロジェクト『イシオス』。近接特化戦闘用バイオノイド、イシオスシリーズ100体は全て廃棄された。それは念入りに処理された。だから、現存しているはずがないし、勿論市井で平和に暮らしているはずがない。戦闘用バイオノイドの開発プロジェクトの中でも、イシオスプロジェクトだけは別格だ。コストがかかりすぎる。元々がプレ開発なのだ。後続機を作るための試作機で一応の完成を見たら、全てを廃棄、後続プロジェクト『バークル』に引き継がれる。徹底的に彼ら『イシオス』は廃棄された。最初から廃棄される為に生れ落ちたと言ってもいい。
 だから、何故ここで一体だけ残っているのか。『私』はそれが知りたい。おそらく、彼女もだろう。どこにも記載されていない、正真正銘最後の生き残り、そして、生き証人。彼の存在は、致命的な物証だ。非人道的極まるプロジェクトである事を開発者達は勿論承知していた。


 それでは、再開しよう。
 
パーシヴァルwrite

101アンダーグラウンド4  903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:54:06 ID:4zUkeVhg
 泣かせて、追い出して、そのままにしておけばいいのに余計な罪悪感とか、そんな
どうしようもないものに追い立てられて結局探しに行く自分が滑稽すぎて涙が出そうだ。
 ああもう、二次元の住人になりたい。多少のドタバタと結末の決まったぬるま湯の作品
で苦労せずモテモテになったり女の子に取り合いされたりパンツ見て怒られたり転んで胸を
もみし抱いたりしながら最後には本命の子とくっついて幸せに暮らしました的な
エンディングを迎える主人公になりたい。ごめん嘘をついた、特にはなりたくない。
ああいうのは外からそのぬるま湯具合を楽しむがいいのであって当事者になんてなりたくない。
 そうだ、俺は全然全く当事者にも主人公にもなりたくなんてないんだ。エンディングなんて
来ない。ゴールなんてない。人生は死ぬまでクソみたいなシナリオのまま延々と続いていく。
底辺に居ても底辺なりに何もかも続いていくのだ。だから俺は、何にもなりたくない。意味の
あるものになんて全く。


 俺の視界の中にリサが居た。仕事帰りに作業着のままで散々周辺の公園だの繁華街だのを
探し回って、最後にもしやと思って回ってみた例のゴミ処理場。遠くからでも集音マイクが
拾った悲鳴を聞きつけて走った。ああもうちくしょう、ヲタに運動させんな、余計なエネルギー
消費すんだろうがバカ野郎! ただでさえ燃費が悪いのだ。毒づいて、入口のフェンスを
くぐったその向こう、数人の同僚がノロノロとゴミ山を掘っていた。その目には何の光もなく、
意思もなく、ゾンビのようだった。そして、その奥にはぐったりと横たわった半裸のリサと、
その上に覆いかぶさろうとしていた黒ブルゾンのバイオノイド。どこかで見たことが
あるような、ないような。
 そいつは、俺のほうへゆっくりと顔を向けた。

「ん?お前も混じりにきたのか? 俺が全部の穴に突っ込んでからなら回してやってもいいぜ」
「うるせえ黙れ死ね」

 反射的に返して、足元にあったひん曲がったパイプを拾う。外見はそこらの作業用
バイオノイドと大差ない。だが、わかる。識別信号も認証コードも一切俺からは読めないが、
こいつは俺の、同類だ。軍用バイオノイド。周りのゾンビ化した同僚達。あれは多分強制
コードで徴兵されているのだろう。軍用、それも士官クラスになると、周囲の民間バイオノイド
を強制徴兵することができる。意思のない、忠実な兵隊として。だが様子を見る限り、
戦闘プログラムを叩き込まれた戦力としてではあるまい。

102アンダーグラウンド4  903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:54:52 ID:4zUkeVhg

「あんたさあ、アレだろ? アレ、ほら、廃棄された例のシリーズ。何で民間にいんの? 
一体残らず処分されたって聞いてたぜぇ?」

 ヘラヘラと黒ブルゾンが笑う。その下でリサは意識を失ったままだった。唇が切れて流血し、
頬が赤く腫れ上がり、腹も似たような状態だった。ひどく殴りつけられたのだろう。クソ、
女殴ってんじゃねえよ、どういう教育プログラム通ってきたんだコイツ。下手したら内臓破裂
して死ぬっての。俺がイライラとパイプを握り直したのと、周囲のゾンビ達が一斉に
襲い掛かってきたのは同時だった。それまでのノロノロした動きからは想像も出来ないような
素早さで飛び掛ってくる。

 ガキィン!!

 俺は手前の奴の足を払い、そいつの背を踏み台に横から来た奴の頭を蹴り飛ばして走り出した。

「へえ? 回路焼かれてねーの?」

 面白そうな声で醜悪な性器をおったてたまま、黒ブルゾンがリサの上から立ち上がる。
俺にも同じのついてんだけどな。あーちくしょう、イシオス系の後継機でビンゴだ。
考えてみてもくださいよ、同系機体があるとするじゃないですか。シリーズ最新機と
旧モデルプロトタイプで単純比較した場合スペック差がどんくらいあるかって話ですよ。
 スラックスのジッパーを上げる奴の首めがけて振り降ろしたパイプが途中で止まった。
黒ブルゾンが首を捻ったまま、肩口で受け止めたのだ。奴の両手は塞がっていたが、
そのまま余裕でジッパーを上げ、ベルトまで調えやがった。

「なーんだ、やっぱ制限されてんのかよダッセ。そんなんで俺をどうにかできんのか
センパイさん」
「るせェ、女置いて巣に帰れクサレガキ!!」

 我ながらDQNなセリフを吐いて俺は右膝で奴の腰を蹴り上げた。ジョイント部分をひっかける
ようにして蹴り飛ばすと「うぉ?!」と間抜けなセリフを吐いて黒ブルゾンが吹っ飛ぶ。
 いくらこいつが同じモーションや同じ格闘ソフト積んでたって、経験だけは埋めようがない。
それだけが俺の有利な点か。有難すぎて涙出るわボケ。
 格闘技の達人と同じモーションを入れたところで、一瞬で同じような達人になれるかと
いうと別な話だ。俺達は便利な入れ物ではあるが、自分の身体で体験していないことってのは
結局借り物でしかないのだ。その分技術を研鑽し、習得していくしかないってこった。
とはいえ戦闘プログラムに行動制限かけられた俺がどのぐらいやれるかっていったら可能性は
かなり低い。なんとかリサを抱えて逃げ切れたらミッションクリアってか。クソシナリオにも
程がある。シナリオライターのリコールを要求する。もしくはセーブポイント。
 俺はブルゾンが吹っ飛んだと同時にリサのところへかけよった。わずかに上下している
薄い胸が、彼女の生存を示していて、俺は安堵の余り息を吐いた。呼吸なんかしてないのにな。
 素早く彼女を肩に担ぐと、足元に影が落ちた。ゴミ山の一つが、こちらへ倒れこんできて
いた。三階建ての建物ほどもありそうな小山が、ガラクタの山がゆっくりと雪崩れ込んでくる
下を俺は喚きながら全力で駆け出した。サーフボードでもあればジャンク・ライドできる
かもな、試そうとは思わないが。

103アンダーグラウンド4  903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:55:27 ID:4zUkeVhg
 
「馬鹿野郎! 生身の人間がいるんだぞ巻き込むつもりか!!」

 俺の前に飛び出してきた同僚の頭に、足元に転がってきた小型炊飯器を叩き込む。ゴガッと
いい音がして転がるその身体を踏み台に、足元にスライディングしてきたもう一体の
タックルを避け、その背中を蹴りつけた。大変申し訳ない。申し訳ないのだが、俺には彼らの
徴兵用強制コマンドをキャンセルするのは無理だった。
 俺が両足と片手でやりあっている間にも、肩に担いだリサの身体は力なく揺れていて、
このままぐんにゃりと滑り落ちるんじゃないかとヒヤヒヤする。軽くて、冷たくて、本当に
生きてんのか不安になってきた。人間はモロくて死に易い。

「リサ! リサ起きろ、起きろってば!!」
「無理じゃね? そいつ、アバラとか多分バッキバキじゃね?」

 俺に掴みかかっていた一体が、表情の乏しいはずの顔を歪めて笑った。転がっていた何体かが
、痛めた関節を無視してガクガクと無理やり立ち上がってくる。全員、笑っていた。

「テメェ……まさか」

 ゾンビだった彼らは、一様に同じ表情で同時に喋りだした。黒ブルゾンと同じ、嫌らしい
喋り方で。

「同期に時間かかっちまったけど、もう完璧に掌握したぜコイツら」
「大人しくソレこっちに寄越すなら、アンタは見逃してやってもいいぜ?」
「なーんて嘘に決まってっけどな、クハハハハ!!」
「アンタの手足ブチ折って頭引っこ抜いて、目の前で女の腹パンパンになるまで出しまくって、
ぐっちゃぐちゃにぶち込んでやっからよ」
「その為の集団ボディ……ってこいつら作業用だったっけ。チンコなかったわ、まーそこらに
落ちてるモン適当に拾ってつっこんでみるってのも面白いかもな?」

 ゲラゲラと下卑た笑い声を立てて、同じ顔で笑っていたそいつらはもう同僚じゃなかった。
戦闘用ならともかく、一般作業用バイオノイドの人工脳はそこまで大容量じゃない。上から
黒ブルゾンのコピー人格を上書きされたのだろう。彼らの元の人格もメモリもぶっ飛んだ
はずだ。
 こいつは、なんなんだ? 戦時下でもないのに、街中で強制コマンドを発令する権限を
持ち、徴兵したバイオノイドの頭ぶっとばしてもどうとも思わない粗暴で攻撃的な人格持ちで。
とても軍属だとは思えない。倫理プログラムがこいつの頭の中に入ってるようにはとても見え
ない。
 イシオスの後続機? 冗談じゃない、『俺達』は、少なくともマトモだった。『俺達』は
『兵士』だった。『俺達』はーーーーーー……何だったんだろうな?

104903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:56:44 ID:4zUkeVhg
しばらくエロがない展開が続くので今後はこっちで投下していきます。
まったりお待ちください。

105903 ◆AN26.8FkH6:2009/10/21(水) 05:58:38 ID:4zUkeVhg
投下スペースは遅いと思うので、ここ使用予定の職人さんは気にせず投下してください。
中途半端に投下してすいません

106変態紳士:2009/10/21(水) 17:00:17 ID:kHeTIOmc
続きキテタ!
読みごたえのある作品は好きなので、まったり待ってます。

107変態紳士:2009/10/21(水) 19:50:35 ID:4BlVR2zY
投下乙です。続きが楽しみです。
いつまでも気長にお待ちしております。

108859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:24:03 ID:eIXSK2fg
本スレでまた規制を喰らっていたのでこっちに投下。
ケルベロス×魔法少女の和姦で、NGは冥府の番犬と魔法少女で。ぶっちゃけ獣姦です。

109859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:26:43 ID:eIXSK2fg
 冥王の前に、一人の少女が立ち尽くしていた。
 淡い金髪のツインテールにフリルがたっぷりと付いたパステルピンクの衣装を着ていて、足元にステッキも転がっている。
ツインテールの結び目にはハートの髪飾りが付き、体格の割に大きな胸元にも同じようなデザインのブローチが付いていた。
両耳には小さな星のイヤリングが下げられ、少女が些細な動作をするたびに揺れていた。彼女は、いわゆる魔法少女だった。
 魔法少女を見下ろしているのは、冥王だった。無数の亡霊が飛び交う玉座に身を委ねる冥王は、少女を眺め回していた。
人の姿をしているものの、天を突くほどの巨体だった。その周囲を固める近衛兵もまた、冥王を守るに相応しい巨体を持っていた。
当然ながら玉座の間もまた巨大であり、高層ビルなど楽に収まるほどの容積を持っていて、その中に立つ少女は一際小さく見えた。
冥王が身を委ねる玉座から伸びる血のように赤黒い敷布の脇には、亡者に鎧を被せて槍を持たせた兵士が規律正しく並んでいた。
 そして、ただ一人冥王の目前に立つ魔法少女は両手足を重たい鎖に拘束されているが、怯えるどころか唇を引き締めていた。
派手な衣装に負けないほどの美貌を備えている魔法少女は、冥王に視線を据えていて、冥府の者達と戦う意志を表していた。
魔法少女は太く重たい鎖が巻き付けられた両手を握り合わせてから、浅く息を吸い込み、小さな体を震わせて声を張り上げた。

「冥王さん!」

 魔法少女は更に息を吸ってから、上擦り気味の叫びを玉座の間に響かせた。

「けっ、ケルベロスさんとお付き合いさせて頂けないでしょおか!」
「…な」「ん」「で、俺?」

 冥王の御前であることを忘れ、当の本人であるケルベロスが唖然とすると、冥王は足元のケルベロスを見下ろした。

「いやにあっさり捕まってくれたと思ったら、そういうことだったか。せっかくだ、大事にしてやりなさい」
「俺の意志を」「無視しないで頂けませんか」「陛下!」

 ケルベロスが三つの頭を全て使って反論するが、冥王は笑うだけだった。

「いいじゃないか。人間界に侵攻するのは暇潰しだったし、これ以上冥府を人間界に近付けたら天界から本気で襲い掛かられる。
それに、戦いを始めたことで冥府の民も潤ったことだしな。お前達も、毎週のように慣れない人間界に行ったことで疲れただろう」
「ですが」「だからって」「この娘に俺を差し出すおつもりですか!」

 ケルベロスが主に吠え立てるような勢いで喚くと、玉座の反対側に控えていた次男のオルトロスが二つの頭を上げた。

「いいじゃないの、兄さん」「独り身なんだし、そろそろ身を固めたらどう?」
「俺は」「人間なんか」「好みじゃない!」

 ケルベロスは三つの頭を振り回して否定するが、ケルベロスの背後に控えていた姉のキマイラが背を叩いてきた。

「気に入らなかったら喰っちゃえばいいだけでしょ、ケル」
「そうそう」「喰っちゃえ」「喰っちゃえ。性的な意味で」「だって俺達」「それが仕事だし」「ねえ兄ちゃん?」「いいなぁ嫁さん、俺も欲しいな」「嫁! 俺の嫁はどこ!」

 オルトロスの背後から百の頭を出したのは、三男のラードーンだった。茶色の肌を持つ、これまた巨体の竜である。

「死ねリア充」

 エキドナの背後からにょろりと巨体を引き摺り出した末弟のヒュドラは、九つの頭をぐねぐねと揺らしながら毒突いた。

「馬鹿」「言って」「んじゃねぇよどいつもこいつも!」

 ケルベロスは兄弟達に三つの頭を向け、それぞれに言い返した。

「大体な」「俺には冥府の門番という重要な仕事があって」「こんな人間の小娘に構っている暇などないんだ!」
「じゃ、休暇あげるよ。今後百年、門番はオルトロスに任せよう」

 冥王がさらりと言ってのけると、ケルベロスは呆れた。

「そんなんで」「よろしいのですか」「陛下…」
「冥府の住人だって、休息は必要さ。じゃ、余はこれで。オルトロス、引き継ぎをお願いね」
 
 冥王は気楽に手を振った後、玉座から巨体を消してしまった。オルトロスは景気良く吠え、尻尾を大きく振った。

「冥王陛下の」「御命令とあらば」
「んじゃ、私らも仕事あるから。後は若い二人だけで御自由に」

 キマイラも姿を消すと、ラードーンはずるずると敷布と兵士の後ろを這いずっていった。

110冥府の番犬と魔法少女 2 859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:28:09 ID:eIXSK2fg
「俺の嫁ー」「探しに行くか二次元にー」「いや三次元かもよー」「むしろ四次元」「いや五次元!」「六次元!」「七次元!」「それどこだよ!」「異次元に俺の嫁!」
「死ね兄貴」「死ねリア充」「死ね駄犬」「死ねよもう」「死ねなくても死ねよ」「死んでくれよウザいから」「死ねば」「死んでも死なないけど死ね」「とにかく死ね」

 ヒュドラは陰険に吐き捨ててから、ラードーンに続いて玉座の間を出ていった。

「おい」「おい」「おい…」

 冥府の住人らしからぬ気楽さに呆れたが、ケルベロスは皆を見送るしかなかった。兵士達も解散し、玉座の間を出ていった。
そして、最終的に玉座の間に残されたのはケルベロスと魔法少女の二人だけとなり、ケルベロスは一つの頭を彼女に向けた。
ケルベロスを始めとした冥府の住人と敵対していた魔法少女まじかるかれんは、気恥ずかしげに目線を左右に彷徨わせていた。
 事の起こりは数時間前に遡る。魔法少女まじかるかれんは、人間界と冥府を繋ぐ門を開こうと画策する冥獣達と交戦していた。
まじかるかれんは神族の下っ端によって魔法の力を与えられた存在であり、人間でありながら冥府の住人と戦う力を有していた。
魔法少女に相応しい衣装を生み出すアイテムや奇跡を起こす魔法を起こせるステッキを手に入れた、高校二年生の女の子なのだ。
冥王直属の部下であるケルベロスも何度も人間界に赴き、冥獣を使って人間達を陥れるが、その度にまじかるかれんに阻まれた。
毎週のように兄弟の誰かが冥獣を率いて出撃するが、どこで何をしようともまじかるかれんが現れて、徹底的に叩きのめされた。
そんな状態が一年近く続いたので、いい加減に人間界侵攻作戦にもまじかるかれんとの戦いも決着を付けようと一斉出撃した。
だが、まじかるかれんは、大量の冥獣を人間界に送り込むために作り出した冥府と人間界を繋ぐ門を呆気なく魔法で破壊した。
負けっ放しでは帰るに帰れない、ということで冥獣の一人がまじかるかれんを冥府に引き摺り込み、冥王の御前に差し出した。
 それまでは良かった。だが、まじかるかれんは何をとち狂ったのか、ケルベロスと付き合いたいと冥王に直談判してしまった。
ケルベロスにはその気はない。それどころか、生理的に嫌だ。ひんやりした死者達に比べ、生身の人間は生温くて気持ち悪い。

「あの…」

 まじかるかれんは頬を染め、十メートル以上はあろうかという巨体の冥獣、ケルベロスを見上げた。

「か」「え」「れ!」

 一息で言い放ったケルベロスは、壇上から下りてまじかるかれんに吠え立てた。

「俺の権限で門を開いてやるから」「人間界に帰れ!」「冗談じゃない!」
「でも、私、本気なの!」

 まじかるかれんは物怖じせず、ケルベロスに言い返した。

「本気だろうが」「なんだろうが」「俺はお前に興味がない!」

 だが、ケルベロスも言い返す。

「好きだから、ここまで追い掛けてきたのに…」

 まじかるかれんが俯くと、ケルベロスは三つの頭を全て背けた。

「俺は」「そんなこと」「頼んじゃいない!」
「じゃあ、何をすれば好きになってくれる?」

 まじかるかれんはケルベロスを探るように見上げてきたが、ケルベロスは彼女に背を向けて座り込んだ。

「だから言ってるじゃないか」「俺はお前には興味がない」「ていうか、生身の人間自体に興味がない」
「だったら、なんで人間界に侵攻してきたの?」
「冥王陛下の」「御命令だからだ」「それ以外の理由があるか」
「でも、その命令は冥王さんの暇潰しだったんだよね?」
「だからって」「俺が人間を」「嫌っていないってわけじゃない」
「じゃあ、一日だけ! それならいいでしょ?」

 まじかるかれんの縋るような目線を注いできたので、ケルベロスはしばらく迷ってから承諾した。

111冥府の番犬と魔法少女 3 859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:29:39 ID:eIXSK2fg
「一日だけか」「それだけなら付き合ってやる」「但し一日だけだぞ」
「ありがとう、ケルベロスさん!」

 まじかるかれんは破顔すると、鎖が絡まった両手を差し出した。

「じゃあ、これ、外して? 凄く重たいし、鎖が肌に擦れちゃって痛いの」
「外さない」「それとこれとは」「話が別だ」

 ケルベロスは四つ足を伸ばすと、長い尻尾を揺らしながら歩き出した。

「さっさと来い」「行くぞ」「置いていっちまうぞ」
「どこへ?」
「俺の部屋だ」「いつまでも御前にいるわけには」「いかねぇだろうが」

 ケルベロスは前足で扉を開けて回廊に出ると、まじかるかれんに出るように促すと、彼女もケルベロスの後に続いた。
だが、両足が鎖に拘束されているので上手く歩けず、正面から転んだ。痛みで呻く彼女に、ケルベロスは尻尾を伸ばした。
遅れられては面倒なので尻尾で持ち上げて背に乗せると、割り当てられている部屋を目指して石畳の回廊を歩き出した。
冥府の番犬に相応しい巨体を持つケルベロスの背は、まじかるかれんには小山のようで、深い毛並みに埋もれてしまった。
足を縛られているので上手く座れないらしく、時折滑り落ちそうになったので、その度にケルベロスは尻尾で支えてやった。
神族の加護を受けた魔法少女なので簡単には死なないが、ケガでもされて泣き喚かれたら鋭敏な聴覚が痛んでしまう。
 ただ、それだけの理由だった。



 一日、一緒に過ごしてしまうと、二日、三日、一週間と共に過ごすようになった。
 そして一ヶ月も過ぎてしまえば、ケルベロスはすっかりかれんに愛着が湧いていた。かれんもまた、冥府での暮らしに慣れた。
ホームシックになるかと思いきや、亡者や冥獣が溢れた重苦しい冥府に馴染んでしまい、ケルベロスの兄弟達とも親しくなった。
つい先日まで敵対していた相手とは思えないほどで、キマイラに至っては冥王城に女っ気がなかった反動からか可愛がっていた。
ケルベロスも、冥王から唐突に与えられた百年間の休暇の退屈凌ぎに丁度良いと思うようになり、かれんを構うようになった。
 地獄を巡る散歩を終えたケルベロスは、かれんでも食べられそうなものを掻き集めて首の一つにぶら下げ、冥王城に帰った。
かれんのことは冥王が公認しているので、冥王軍の兵士や使用人からは冷やかされはしないものの、奇異の目で見られていた。
それまでは冥府の門番に対して敬意と畏怖を込めた目を向けていた者達も、かれんの件を知ってからは変人を見る顔になった。
だが、ケルベロスも逆の立場だったのなら似たような反応をするだろうと思っていたので、城内の者達を咎めることもなかった。
 冥王城はひたすら巨大だ。冥府の主の権力を見せつけるために、亡者と冥獣を酷使して創り上げた、死と絶望の満ちた城だ。
亡者にもなれず、冥獣にもなれなかった者達の空虚な魂が分厚い石造りの壁を擦り抜け、凍えるほど冷たい回廊に流れていく。
冥王城を囲む岩山は鉄臭い異臭を漂わせ、遙か彼方の頂きからは溶岩がどろどろと溢れ、森を成す木々は全て腐敗している。
禍々しい獣が雷鳴の如く吠え、醜い鳥が女の悲鳴のような鳴き声を立て、ヘドロの湖と川から這い出したヘドロの固まりが呻く。
それでも、見た目ほど混迷していない世界だ。人間界のような混沌はなく、神族の世界のように絶対的な正義を必要としない。
冥府の住人には心休まる光景だが、人間にはあらゆる嫌悪感を催す光景だと教えられていたが、かれんはそうではないようだ。
 ケルベロスは自室に戻ると、見上げるほど背の高い両開きの扉の前に立つと、赤い錆の浮いたドアノブが独りでに回った。
部屋に入ると、最初に壁飾りの骨が出迎えた。次に天井から垂れ下がった赤いドレープ、その奥に天蓋付きのベッドがあった。
冥府故に日の差さない窓のカーテンが開けられていて、かれんは人間には大きすぎる出窓に腰掛け、外の景色を眺めていた。

「おい」「どうか」「したのか」

 ケルベロスが荷物を下ろしてから声を掛けると、かれんはケルベロスに振り返り、もじもじした。

「うん、なんでもないんだけどね」
「じゃあ」「なんだよ」「気にさせるな」

 ケルベロスは頭の一つをかれんの前に出して乗せると、かれんが自力では登れない高さのベッドに座らせた。

「なんでもないんだけど、なんでもないの」

 かれんは自身を一飲み出来るほど大きなケルベロスの頭に両腕を回し、冥府の空気が染み込んだ体毛に顔を埋めた。

112冥府の番犬と魔法少女 4 859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:30:45 ID:eIXSK2fg
「なんだ」「そりゃ」「面倒臭ぇな」

 ケルベロスはかれんが抱き付いた首をそのままに、残り二つの首を下げた。気持ち良いのか、かれんは甘えた声を零している。
日常生活を送っている時は当然ながら魔法少女の変身を解いているので、かれんは人間界から連れ去られた時の服装のままだ。
カトリック系私立高校の制服で、スカートも膝丈で清楚な雰囲気の服装だ。髪の色もまた、金髪から艶やかな黒髪に戻っていた。
 鼻先をくすぐる匂いは生温く、生易しい。牙を一刺ししてしまえば、骨も筋も皮も砕け散って鉄臭い血潮が飛び散ることだろう。
体毛越しに伝わる体も軟弱で、手応えというものがない。どこもかしこもふにゃふにゃで、体温があることも冥府には馴染まない。
ケルベロス自身も冥府の住人に相応しく、体温がかなり低い。だから、抱き付いたところで気持ち良いものではないように思えた。

「あのね」
「なんだ」「今度こそ」「ちゃんと言え」

 ケルベロスが急かすと、かれんは恥じらいながら呟いた。

「また、して?」
「お前ってやつは」「全く」「どうしようもないな」

 ケルベロスは尻尾を一振りしてから、体格を縮めて人間大に変化させると、軽く跳躍してかれんの前に降りた。

「だってぇ…」

 赤面したかれんはプリーツスカートの裾を上げようとしたので、ケルベロスはその裾を噛んだ。

「その前に」「やることが」「あるだろ」
「物好きなんだから」

 かれんは照れ笑いしてから、ハートのブローチを掲げて変身し、まじかるかれんに姿を変えた。

「これでいい?」
「ああ」「それで」「いい」

 ケルベロスはまじかるかれんのミニスカートの下に真ん中の頭を突っ込むと、薄い下着に覆われた陰部に鼻先を押し当てた。

「ひゃんっ」

 まじかるかれんはくすぐったがり、膝を緩めた。ケルベロスは左右の頭で太股を甘噛みし、生臭い唾液の滴る舌を這わせた。
前足を伸ばして華奢な体をベッドに押し付け、鼻先を更に埋める。ひらひらしたミニスカートの奥には、狭い陰部が隠れている。
下着に牙を立てて一息で引き裂くと、まじかるかれんは少し抵抗したが、両の太股を押さえ込まれているので動けなかった。

「もう、いちいち破らないでよぉ」
「邪魔」「だから」「だ」

 ケルベロスは真ん中の頭をスカートから出して破れた下着を捨てると、まじかるかれんの陰部に厚い舌をねじ込んでやった。
ケルベロスの唾液以外のものを帯びた舌は難なく奥まで滑り込み、筋肉も緩んでいて、押し戻されるようなことはなかった。

「あ…」

 舐める必要もないほど潤っていたことを知られ、まじかるかれんは恥じらった。

「物好きなのは」「どっち」「なんだよ」

 少女の体液を掻き出すように舌を前後させながら、ケルベロスは言った。最初に体を求めてきたのは、かれんの方だった。
その時はかれんは変身していない姿であり、ケルベロスも巨体のままだったので、満足するまで舐め尽くすだけで終わった。
ケルベロスは最初はその気ではなかったのだが、滴るほどの唾液にまみれたかれんの痴態がやたらと気に入ってしまった。
甘ったるい鳴き声を零すことも上擦った声で名を呼ばれるのも楽しく思えたので、それからは体の大きさを合わせるようになった。
かれんは魔法少女に変身しなくてもいいと言い張ったが、融通が利かない状態で体を重ねて傷付けてしまっては後が面倒だ。
それに、敵対していた相手を蹂躙出来るのは単純に面白い。刺激を受けて強張った肉芽を吸うと、まじかるかれんは仰け反った。

「ひぃんっ!」
「次は」「どうするか」「解るな?」
「うん…」

113冥府の番犬と魔法少女 5 859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:31:44 ID:eIXSK2fg
 まじかるかれんは薄く汗ばんだ太股を開き、体を反転させて四つん這いになると、肉の付いた尻を高く持ち上げた。

「こうしないと、入らないもんね」
「単純に」「俺が」「やりやすいからだ」

 ケルベロスはまじかるかれんの背に覆い被さり、腰の後ろに付いた大きなリボンを腹で潰しつつ、その陰部に男根を擦り付けた。
三つ首でさえなければ、美しいほど引き締まった筋肉を持つ体付きの猟犬が少女を貪らんとする様にも似ていて、背徳感が募る。
彼女の陰部を舐め回すだけでは、それほど滾らない。芯に骨が入っている逸物とはいえ、充血しないままでは突き立てられない。
まじかるかれんの奥から溢れ出す体液に擦り付けてやると、時折先端が肉芽に引っ掛かり、彼女は切なげな甘い声を零した。
その反応に気を良くしたケルベロスは往復する速度を上げると、引っ掛かる回数も増え、体の下でまじかるかれんは身を捩った。
だが、敢えて陰部には突き立てなかった。次第に腕の力を保てなくなってきたのか、まじかるかれんは肘を曲げて俯せになった。

「ちょっ、やぁん、焦らさないでぇ」
「俺は」「まだ」「出来上がっちゃいない」
「こんなに硬いのに、意地悪ぅ…」

 シーツに顔を埋め、まじかるかれんは喘いだ。ケルベロスは左の頭を下げ、まじかるかれんの首筋をべろりと舐め上げた。
右の頭では裸の肩と二の腕に甘く牙を立てながら、空いている真ん中の頭を下げると、まじかるかれんの耳元で低く囁いた。

「お前は何のために魔法少女になったんだ。俺とまぐわうためか? 違うだろう?」
「うん、違う、そんなんじゃなかった…」

 シーツに涎と涙を染み込ませながら、まじかるかれんは物欲しげに腰をくねらせた。

「でも、ねぇ、ケルが格好良かったからぁ、好きになっちゃってぇっ…」
「馬鹿な娘だ」
「だあってぇん…」

 まじかるかれんは首を曲げてケルベロスの真ん中の頭部と目を合わせると、熱を帯びた眼差しを上げた。

「あひぃっ!」

 前触れもなく男根を陰部に押し込むと、まじかるかれんは甲高い悲鳴を上げた。

「お前は何が好きなんだ。モフモフとかいうやつか、それとも俺の剣か、そうでなければ見た目か?」

 左右の頭で首筋と肩を噛みながらケルベロスが捲し立てると、まじかるかれんは律動に腰を揺さぶられながら答えた。

「それもあるけどっ、ああっ、やんっ、やっ、あっ、好きだから好きなのぉっ」
「理由になっていないな」
「ひゃっ…!」

 一際強く突き立てると、まじかるかれんは涙の滲んだ目をきつく閉じた。

「あ、あぁ…」

 熱い迸りが白い内股を伝い、シーツに染み込んだ。一度出てしまった小水は勢いが緩まず、浅い池が広がっていった。
まじかるかれんの熱い体液とケルベロスの冷たい体液が混じった黄金色の飛沫は、徐々に拡大して胸元の下にまで及んだ。
達した快感と羞恥心でがくがくと足を震わせるまじかるかれんに、ケルベロスは冥府の住人らしく禍々しい笑みを見せた。

「また漏らしたな。俺の部屋を何度汚す気だ」
「ごめんなさいぃ、後で洗濯するからぁ…」

 まじかるかれんはか細く謝るが、ケルベロスは容赦なくその胎内を責め立てた。

「当たり前だ」
「あっ、やぁああっ、また出ちゃう、やだぁあっ!」

 まじかるかれんはシーツを握り締めるが、ケルベロスはその髪を噛んで強引に顔を上げさせ、右の頭を出して言った。

「出せ。俺を悦ばせたいのならな」
「いやぁっ…」

 まじかるかれんは胸元を大きく開いた衣装から零れた乳房を震わせ、膀胱から押し出される飛沫の残滓に顔を歪めた。
スカートの前部分は小水の池に浸り、水気を吸い取って重たく垂れていた。そこに新たな雫が落とされ、小さな水音を立てた。
その音はぐちゅぐちゅと忙しなく擦り合わせる陰部の水音に紛れたが、まじかるかれんは愉悦と羞恥心で泣き声を上げ始めた。
 求められたら最後、倒れるまで責めてやる。魔法少女に変身している限りは、かれんはそう簡単なことでは死なないからだ。
人間大に体を縮めたとはいえ、ケルベロスの逸物は大きい。最後まで飲み込ませるためには、それなりに気を配る必要がある。
それ以上に、長い退屈が紛れるからだ。ケルベロスの逸物を包む陰部が収縮し、まじかるかれんはそれと同じように痙攣した。
頃合いを見計らって込み上がった精液を存分に注ぎ込むと、まじかるかれんの痙攣は一層激しくなり、上げる声も苦しげになった。
ケルベロスは一旦抜くと見せかけて、力強く最深部に突っ込むと、まじかるかれんは許しを請うようにケルベロスの名を呼んだ。
 その声に、ケルベロスは慢心の唸りを零した。

114冥府の番犬と魔法少女 6 859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:33:17 ID:eIXSK2fg


 腹部の体毛に埋もれる少女は、疲れ果てて眠っていた。
 こうなると、動くに動けない。元の大きさに戻ったケルベロスは、灰色の空から弱々しい日差しが注ぐ窓際で丸くなっていた。
その腹部には、制服から灰色のワンピースに着替えて下着も取り替えて素顔に戻ったかれんが寄り掛かり、眠り込んでいた。
責めて責めて責め抜いて気を失うまで責め立てると、少しは満ち足りる。体温のない体に、かれんの体温が優しく馴染んだ。
目尻に涙の名残があるかれんの寝顔を眺めつつ、ケルベロスは、なぜ気に入られてしまったのかを考えてみることにした。
 人間界でまじかるかれんと敵対している時、ケルベロスは人間界に寸法に合わせるために体格を人間大に変化させていた。
三つある頭部も一つにまとめていたが、それでも外見は獣人だった。かれんと初めて会った時もその格好だったように思う。
しかし、それだけなのだ。一体何がかれんの琴線に触れたのか、結局見出せなかったケルベロスは前足に三つの顎を載せた。

「ん」

 かれんが身動きしたのでケルベロスが目を向けると、かれんはケルベロスの右の頭に手を伸ばした。

「ケルぅ…」
「なんだ」「寝て」「なかったのか」
「寝て起きたの」

 かれんはケルベロスの右の頭の耳をなぞり、引き寄せると牙の並ぶ口元に唇を寄せた。

「ケル」
「だから」「なんだ」「ってんだよ」
「キス、して?」
「我が侭」「言う」「んじゃない」

 そうは言いつつも、ケルベロスは三つの頭を順番に伸ばし、かれんの頬と唇に口元を当てた。

「ふふふ」

 かれんは唾液がべったりと付いた唇を舐め、再び腹部の体毛に寄り掛かった。

「優しいね」

 ケルベロスはその言葉に返さず、六つの目を閉じた。気のない振りをしても、尻尾は正直に揺れていた。

「あのね」

 薄く目を開いたかれんは、互いの体液と熱い疼きが残る太股を擦り合わせ、頬を染めた。

「私、神様なんか信じないことにしたんだ。冥府の人達や冥獣と戦っても戦っても、毎日のように必ず誰かが死んでいっちゃうし、
魔法なんか使っても誰も幸せに出来ないから。その時はなんとかなったとしても、その場凌ぎの幸せなんてすぐに壊れちゃうの。
それに、神様が魔法の力を与えたのは私だけじゃなかったの。私が冥府と戦わなくたって、きっとすぐに他の女の子が戦いに来る。
そういうことを知っちゃったから、全部がどうでもよくなっちゃったの」
「それと」「俺を気に入った理由は」「関係があるのか」
「うん。大有り」
「だったら」「なんだ」「教えろ」
「いいよ。私と皆が戦い始めてすぐに、冥府の門が開きかけた時があったでしょ?」
「ああ」「あったな」「それがどうかしたのか」
「その時、ケルが言ってくれたことが忘れられないの。愚かな神に使役された無様な小娘が、って」
「それは」「ただの」「罵倒だ」
「でも、本当のことだよ。私に魔法の力をくれた天使も、神様も、私のことを持ち上げるだけで本当のことは言ってくれなかった。
何のために冥府と戦うのか、誰のために戦うのか、私が犠牲になることで誰が幸せになるのか、聞こうとしてもはぐらかされた。
だけど、ケルは違ったから。おかげでやっと解ったの、私は随分馬鹿なことをしているんだなぁって」

 かれんはケルベロスの体毛に指を差し込み、丁寧に梳いた。

「魔法少女なんて言っても、所詮は異世界の住人に擦り切れるまで利用された挙げ句、切り捨てられるだけだもん」
「それが解るだけ」「お前はまだ」「賢い部類だ」
「嬉しいな、褒めてもらえた」

 かれんは頬を緩めたので、ケルベロスは尻尾を伸ばしてかれんの小さな体に被せてやると、かれんはとろりと瞼を下げた。
程なくして寝息を立て始めた少女を眺め、ケルベロスは喉の奥で唸った。天界の神が冥府に手を出すのは、いつものことだ。
正と負の均衡を保つため、聖と魔の絶対量を崩さないため、互いの力関係を拮抗させ続けるための揺らぎとして戦いを起こす。
双方の世界に挟まれた人間界が戦いの影響を受けることも珍しくないが、割を食うのは決まって年若い少年少女達なのだ。
時代に応じて、勇者として、聖女として、聖騎士として、聖戦士として祭り上げられるが、最終的には両者の戦いの犠牲となる。
神と冥王にとっては人間一人の犠牲など些細なものであり、誰も疑問は抱いていないが、ケルベロスは初めて疑念を感じた。
かれんは冥府に身を投じたことで、その戦いからは解放されているので、疑念を感じるだけ無駄だったと思い直して払拭した。
板挟みの戦いから解放され、生きながら死んだのだ。その事実に訳もなく安堵しつつ、ケルベロスは緩やかな眠りに落ちた。
 百年間の休暇は、有意義に過ごせそうだ。

115859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/22(火) 21:35:42 ID:eIXSK2fg
以上。通し番号どころかタイトル自体もミスってしまった。
近頃寒いから、ツンデレでモフモフな人外が書きたかっただけかもしれない。

116変態紳士:2009/12/22(火) 21:48:50 ID:1htzwBQk
GJ

117859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/26(土) 17:42:20 ID:kV1pGc4o
引き続き規制中につき、こっちに投下。
少し早いけど大晦日ネタで、人外アパートです。
人間×リビングメイル、人間×インテリジェンスソード♀です。
NGはリビングメイルと魔剣と大晦日で。

118859 ◆93FwBoL6s.:2009/12/26(土) 17:44:28 ID:kV1pGc4o
 クリスマスを終えると、途端に年の瀬が押し寄せる。
 イルミネーションの色も白がメインになり、飾り付けが赤と緑から紅白に変わり、ツリーが消えて門松が姿を現してくる。
商店街に流れるBGMも軽快なクリスマスソングから、どことなく格調高い琴の音色になり、店頭に並ぶ商品も変わる。
新年は明日に迫った大晦日ということもあり、商店街に軒を連ねる店舗には買い物客が多く、いつにも増して賑やかだった。
 鎧坂祐介は商店街を通り、家路を急いでいた。大学は既に冬休みだったが、アルバイトは年内一杯シフトが入っていた。
例年通りならシフトを断って帰省していたのだろうが、今年は帰省しなかった。愛すべき恋人、アビゲイルがいるからだ。
リビングメイルである彼女は、抜けているところもあるが心優しい女性なので、祐介が帰省すると言えば止めないだろう。
だが、祐介の実家は現在の住まいからは遠方なので、移動には半日以上掛かり、短くても三日は留守にすることになる。
その間、アビゲイルを一人にするのは忍びない。彼女のことだから、聞き分けの良いことを言って寂しさを隠すに違いない。
その様を考えただけで申し訳なくなるので、祐介はその旨を実家に伝えたが、これといって文句を言われることはなかった。
元々、祐介は実家で重きを置かれていない。大学に進学した時も、入学金は払うが後は自力でなんとかしろ、と言われた。
だから、授業料や生活費などの諸経費を確保するために高校時代からアルバイトに精を出しながら、日々勉学に励んでいる。
おかげで、アビゲイルと一緒に暮らすようになるまでは精神的にも肉体的にも一杯一杯だったが、今では余裕が出てきた。
理由は他でもなく、アビゲイルが家事全般をしてくれるからだ。彼女が出迎えてくれることで、どれほど気が休まったことか。
 商店街を出て進んだ祐介が緑地公園に差し掛かると、その入り口に金色の全身鎧を従えた黒装束の少女が立っていた。
それは、アパートの隣室に住まう秋野茜のクラスメイト、若き魔女の綾繁真夜とその恋人である聖騎士アーサーだった。

「こんにちは、祐介さん」

 落ち着いた雰囲気のゴシック調の黒いワンピースを着た真夜が礼をすると、アーサーは右手を差し伸べてきた。

「御機嫌麗しゅう、祐介卿」
「どうも、真夜ちゃん、アーサー」

 祐介も手を伸ばし、アーサーの右手を取った。西洋式の挨拶が抜けない彼に合わせることに、すっかり慣れてしまった。
アーサーの手はアビゲイルと同じく金属で出来たガントレットだが、大きさが二回りも大きく、手自体もずしりと重たかった。

「これから旅行にでも行くのか?」

 祐介がアーサーが担いでいる大きなボストンバッグを差すと、真夜は笑った。

「旅行というより、お父さんとお母さんに会いに行くと言った方が正しいですね。今年はどうしても帰ってこられないからって、
私とアーサーの分の航空券が送られてきたんです。だから、今年の年越しは空の上ですね」
「真夜の御両親がおられるのはフランスでな。私の祖国は遠き昔に魔女の手で亡ぼされたが、祖国の領土を取り込んだ国だ。
だから、祖国の気配だけでも感じ取りたくてね。それに、今後のためにも真夜の御両親に挨拶しておかねばなるまい」

 アーサーが語気に笑みを含めると、真夜は白い頬に赤みを差した。

「そりゃ、うちの親もそのつもりだからアーサーを呼ぶんだろうけど、だからって何も祐介さんの前で…」
「いいじゃないか、公認の仲で。それで、俺に何か用事でも?」

 祐介は二人の仲の良さににやけながら話を切り出すと、真夜は小さく咳払いしてから言った。 

「はい。魔剣ストームブリンガーについてのお話です」
「ストームブリンガーの?」

 久々に耳にした魔剣の名に祐介は戸惑ったが、聞き返した。

「あれを、どうにか出来るのか?」
「いえ。私も両親に何度か相談してみましたが、あれほどの力を持つ魔剣を完全に封じるのは不可能です」

 真夜は体の前で組んだ手に力を込め、悔しさを滲ませた。

「我が聖剣、エクスカリバーとて万能とは言えぬ剣だ。ストームブリンガーの持つ混沌の力には敵わぬ。奴の刀身を砕けたのは、
祐介の愛情がアビゲイルの心を繋ぎ止めていたからに他ならない。刀身本体を放射性廃棄物と共に太陽に投棄したとはいえ、
奴の刀身と鞘は現存している。それはアビゲイルを生かすためではあるが、遠からず奴は力を取り戻すであろう」

 アーサーは腰から提げた聖剣の柄に手を掛け、首を横に振った。


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