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仮投下スレ

1183 ◆L62I.UGyuw:2011/11/10(木) 19:36:27 ID:5OgotkG.0
ひよのの身体に赤い線を刻んでいた女の爪が、右腿に差しかかったところで止まった。
傷を付けるのをやめ、おもむろに腿を手で掴む。
女が舌なめずりをしたのを、ひよのは見た。

「少しくらい、いいわよねぇん」

何が、という疑問が口に出る直前、ぶちりという音がして、焼き鏝を押し付けられたように腿が灼熱した。

「――っ!!」

喰われた。
肉体のほんの一部ではあるが、喰われた。
覚悟していなかった訳ではないが、それは途轍もなく恐ろしかった。
絶対的な捕食者に対する恐怖が心に滑り込んでくる。

「あらぁん、貴女、もう少し肥ってる方が魅力的よん♪」
「生憎、ダイエット中なもので」

強がりなのは明らかで、もしかすると声が震えていたかもしれない。
それでも何か言い返さないと勇気が萎んでしまいそうだった。限界が近かった。
女は血に染まった凄惨な笑みを浮かべ、再び容赦なく鋭い爪をひよのの身体に突き立てようとする。

突如、凄まじい爆音が空気を震わせた。
工場全体が大きく揺れる。そこら中から建材が捻れ、折れ、砕ける音が響いてくる。
壁に亀裂が入り、天井から瓦礫がばらばらと落下する。
その一つが女の頭目掛けて落ちてきた。女は上を向いて手で瓦礫を打ち払おうとする。

来た。千載一遇の好機。ひよのから注意が逸れたその刹那に、猛然と身体を持ち上げ腕を伸ばす。

光が奔った。
首輪まであと数センチメートルのところで腕に衝撃が走り、動きが止められた。
女が放った、電撃だ。

「残念だったわねぇん」

女の顔がこちらを向いた。
その表情を見て、理解する。
女は敢えて抵抗の余地を残していただけだ。獲物に決定的な恐怖と絶望を与えるために。
おそらくはこの揺れも、起こると知っていたのだ。
最初から全て、女の掌の上で弄ばれていただけだったのだ。

「その顔――悪くないわよぉん♪」


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