したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

仮投下スレ

1 ◆ME3hstri..:2009/04/05(日) 21:43:33 ID:5UembPjM0
何らかの事情で本スレ投下が出来なかったり、本スレ投下の前に作品を仮投下するためのスレです。

2 ◆/mnV9HOTlc:2009/04/12(日) 14:23:45 ID:QeyRIrMg0
さるうざいよ。 さる。
というわけで続きはこちらで。

3 ◆/mnV9HOTlc:2009/04/12(日) 14:23:58 ID:QeyRIrMg0
「油断した…。」

サンジはデイパックを持つと、旅館の出口へと向かった。
彼女はきっと外へと逃げているに違いないと思ったからだ。

「やはり殺し合いに乗っていなかったようだった。 しかし、あのままにしておくと、いつか溺れて死ぬかもしれない。 その前に俺が注意しなければ…! 」

旅館の戸を開け、外へと出ると、彼女はそこにいた。

ナギは運動神経がまったくよくなく、50m走っただけでも疲れる人であった。
そんな彼女がここまで走ってこれたのはまさに奇跡であった。
だが、やはり疲れきっていたようだった。

「大丈夫かよ?」
サンジが彼女に話す。

「もう来たのか!」
ナギは最後の力を振り絞り、逃げようとする。
だが、サンジが彼女の手を押さえる。

「触るな・・・! 今すぐ私を逃がしてくれ!」
「だから俺は殺し合いに乗ってないし…」
「嘘をつけ!」
「本当だ。」

ナギが彼を見ると、彼は真剣な表情で見ていた。
それを見る限り、決して悪そうな人ではなさそうだった。

「守ってくれるんだな?」

4 ◆/mnV9HOTlc:2009/04/12(日) 14:24:22 ID:QeyRIrMg0
「…え?」
「私を守ってくれるんだな?」
「ああ。 どんな怪物がきても守ってやるよ。」
「それなら…一緒に行動してもいいぞ。」

誤解が解けて、新たなペアが結成された瞬間であった。

【G-8/旅館付近/1日目 深夜】
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ノートパソコン@現実
[思考・備考]
1:ハヤテ達を探す。
2:しょうがないので目の前の人と行動することにする。

【サンジ@ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・備考]
1:ナミなどの仲間を探し、守る。
2:目の前の人と行動する。
3;どうしてスケスケの実があったんだ…?

【スケスケの実@ONE PIECE】
自分の体、およびその体に触れた物を透明にする。
なお、触れたものだけなど一部だけを透明にする事も可能。
ただし、透明になる時間は限られている。
原作ではアブサロムがその能力者。

【ノートパソコン@現実】
バトロワではお馴染みのアイテム。
中には参加者のデータとかが入っているかも…?

5 ◆/mnV9HOTlc:2009/04/12(日) 14:27:15 ID:QeyRIrMg0
不安はありまくりですが、一応投下終了です!
半角なのに、全角で打ってたのでああいう鳥になってしまったんですね。

タイトルは「ハヤテ…改め ナギのごとく!」です。

6 ◆AO7VTfSi26:2009/04/12(日) 20:42:26 ID:z9PHLzQY0
規制されましたので、こちらで続き投下いたします

7 ◆AO7VTfSi26:2009/04/12(日) 20:43:04 ID:z9PHLzQY0
(……キリコも、必要な道具は確実に奪われている。
だとすれば、何処か医療設備のある施設かで出会える可能性は高いな……)

キリコも恐らくは、治療と安楽死に必要な道具を調達に走るだろう。
ならばこのまま病院を目指していれば、そこで出会える可能性がある。
彼に安楽死をさせるわけにはいかない。
ブラック・ジャックは、この事をガッツへ告げようとして振り向く……しかし。

「……ガッツ……?」

ガッツの様子がおかしい。
彼は目を大きく見開き、驚愕の表情で名簿を覗き込んでいる。
それは、キリコの名を見たブラック・ジャックよりも更に酷い反応であった。
余程の人物が名簿に載っていない限り、起こりえない反応。


――――――そう、余程の人物が載っていたのだ。


「……おい……どういうことだよ、こいつは……ッ!!」

やがてその表情は、憤怒が入り混じったものへと変質する。

―――彼にとって、誰よりも憎むべき名がそこにはあった。

―――彼にとって、誰よりも倒すべき名がそこにはあった。

―――彼にとって、全ての発端と言える人物の名がそこにはあった。

8二人の黒い疵男 ◆AO7VTfSi26:2009/04/12(日) 20:43:31 ID:z9PHLzQY0
「何でテメェがいやがんだ……グリフィスッッッッッッ!!!!」


――――――ガッツの最大の宿敵、グリフィスの名がそこにはあった。


【B-5/競技場内/深夜】
【ガッツ@ベルセルク】
 [状態]:健康
 [装備]:キリバチ@ワンピース
 [道具]:基本支給品一式、不明支給品1個(未確認)
 [思考]
 基本:殺し合いの主催者を叩き潰し、仲間の下へ帰る
  1:グリフィス……!?
  2:ブラック・ジャックと共に病院を目指す
 [備考]
  ※原作32巻、ゾッドと共にガニシュカを撃退した後からの参戦です。
  ※左手の義手に仕込まれた火砲と矢、身に着けていた狂戦士の甲冑は没収されています。

【キリバチ@ワンピース】
魚人海賊団の団長アーロンが扱っていた、巨大なノコギリ刀。
その全長はアーロンの身の丈程ある(恐らくは2メートル程度)。


【ブラック・ジャック@ブラック・ジャック】
 [状態]:健康
 [装備]:ヒューズの投げナイフ(10/10)@鋼の錬金術師
 [道具]:基本支給品一式
 [思考]
 基本:主催者を止め、会場から脱出する。
  1:ガッツの驚き様に戸惑っている
  2:ガッツと共に病院を目指し、医療器具を入手する。
  3:キリコと合流し、彼が安楽死をせぬ様に見張る。  
 [備考]
  ※コートに仕込んでいるメス等の手術道具は、全て没収されています。

【ヒューズの投げナイフ@鋼の錬金術師】
マース・ヒューズ中佐が愛用していた投げナイフ。
掌に収まるほどの小さなサイズだが、刃には十分な鋭さがある。

9二人の黒い疵男 ◆AO7VTfSi26:2009/04/12(日) 20:45:08 ID:z9PHLzQY0
以上、投下終了です。
ガッツの性格が丸く感じられるかもしれませんが、イシドロ達と出会った後ということで、この様になりました。

10目指す者、守る者、殺す者 ◆1ZVBRFqxEM:2009/04/12(日) 23:22:05 ID:wlBo6G0M0
「(つまり……超常現象というわけか)」
ゴルゴ13は片手に持った、握りこぶしより小さめの石を見つめた。
血のように赤い、宝石とも異なる鉱物……鉱物かすら怪しいソレは。
「賢者の石……」

大エリクシル、第五実体、哲学者の石。多くの呼び名と形状を持つ等価交換の原則を無視する奇跡の結晶。
ウィンリィの話に出た、賢者の石そのものだった。
「(可能性はある、か)」
ウィンリィの話をすべて鵜呑みにはしていない。
だが、ゴルゴ13とて、地球上の全てを知るわけではない。

実際ルフィは人間ではありえないゴムの体を持っていた。
そして、超能力者、自我を持つプログラムなど、常識外の存在と対峙したこともある。
もちろん、中にタネのある呪術師などもいたので、錬金術師なるものがどちらに当てはまるのかはわからない。
実際に会い、真偽を確かめることは無駄ではないと彼は判断を下した。
この首輪を外せる可能性を一つでも多くするために、ゴルゴ13は行動を開始する。

だがしかし、なぜゴルゴ13はゲームに乗らなかったのか。
ゴルゴ13は、超A級のスナイパーである。
彼に消された命は数知れないが、その多くが依頼によるものだった。
ゲーム感覚で人の命を奪うことはしない。
もちろん、彼を狙った瞬間にそのルールは対象外となるのだが。
そして何より、自身の命を見世物感覚で奪おうとする輩を、ゴルゴ13は許さない。

「(この見世物の目的が何であれ……あいつは俺の心に火を灯した。
久しぶりに……俺の全てをかけるとしよう……この見世物に対する報復に……)」
先ほど貰ったジャスタウェイを一つ、宙に放る。
地面にジャスタウェイが落ちた瞬間、光、爆音、土煙が起こる。

11目指す者、守る者、殺す者 ◆1ZVBRFqxEM:2009/04/12(日) 23:22:46 ID:wlBo6G0M0
「威力は上々……だが扱いには危険が伴う、か」
火薬の匂いから、それが爆弾だと理解したゴルゴ13。
メスとジャスタウェイは、武器を支給されなかったゴルゴ13にとって大いに助けとなる。

いつもの癖で背後の相手に殴りかかってしまったが、無駄な敵を作らずに済んだのは僥倖だった。
「(あのコートは、重量から防弾繊維が使われていたようだが……動きの邪魔となる)」
爆弾の性能を把握したゴルゴ13は、他者が爆発音に近寄ってくる前にその場を離れる。

地球上最強の狙撃手、ゴルゴ13。
だが、彼の想像を超える怪物が多く存在するこの殺し合い。
彼は、報復の対象……ムルムルと再び合間見えることができるのだろうか。


【D-9/協会付近/1日目 深夜】
【ゴルゴ13@ゴルゴ13】
[状態]:健康
[装備]:ブラックジャックのメス(10/20)@ブラックジャック、ジャスタウェイ(4/5)@銀魂
[道具]:支給品一式、賢者の石@鋼の錬金術師、不明支給品0~1(武器ではない)
[思考・備考]
1:ムルムルに報復する。
2:首輪を外すため、錬金術師に接触する。
3:襲撃者や邪魔者以外は殺すつもりは無い。

※ウィンリィ、ルフィと情報交換をしました。
彼らの仲間や世界の情報について一部把握しました。
※奇妙な能力を持つ人間について実在すると認識しました。


【賢者の石@鋼の錬金術師】
様々な呼び名を持つ錬金術法増幅器。
錬成陣無し及びノーモーションで、「等価交換」の法則を無視した練成が可能となる。
莫大な人間の魂を材料としており、この石も大きさからかなりの人数を使用している。
それでも不完全な賢者の石であり、大規模練成の連続使用で壊れる可能性がある。
制限があるため、首輪を外すことができるかは不明。

【ジャスタウェイ@銀魂】
円柱に2本の棒の手、上部の半球型の突起物に目・口が描かれただけというシンプルな外見。
その実体は接触式の高性能爆弾。
ジャスタウェイの組み立てに関して銀時は高い技能を持っている。

12 ◆1ZVBRFqxEM:2009/04/12(日) 23:23:42 ID:wlBo6G0M0
投下終了です。
残念ながら規制を食らってしまいました。
どなたか代理投下お願いします。

13Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:14:13 ID:RW1ozSEI0
やるのか?

脳内でそう反芻する。できるのか?
見た目こそ普通の人間だが、彼はどちらかと言えば今までの自分とは異なる世界に生きてきた人間だ。
殺し屋より―――具体的に名を出すなら、あの『蝉』よりの人間と言っていい。
しかし。
―――もう俺だって、足を突っ込んだんだ。
既に、潤也の心にためらいは、なかった。
日常を捨て、危険に足を踏み入れる覚悟は、人を殺す覚悟は、既に、した。
本当なら、蝉も自分が殺しているはずだったんだから。

「……なあ、聞きたいことがあるんだ」
少年の頭に向けて、銃口を突きつけながら。
「……まったく最近のガキはしつけがなってなくて困るぜい、人に質問するときはまず名乗ってからってお袋さんに教わらなかったのかい?」
少年は、全く動揺する気配を見せない。
むしろどこか哀れむように、潤也の顔を見て苦笑う。
むっときたが、ここで感情的になるべきではないと考える。
こいつが兄の情報を持っているかもしれない、まだ、まだ殺すべきではない。
「……安藤潤也だ」
「ふうん……立派な名前をお持ちのこって。せっかくだし、俺も名乗っておきますかねい」
少年はやはりペースを崩さず、にやりと笑って口を開く。
それは、潤也にとってわずかに聞き覚えのある名前だった。
「俺は土方十四郎」
土方、歴史にそんな名字の人物が存在していた気がする。
しかし、さほど成績がいい訳ではない潤也には、『聞いたことがある』程度に過ぎない。
更に言うなら、あまつさえ潤也がその歴史的に聞いたことのある人物の名字を聞いて、彼を江戸時代の人間だ、などと判断できるはずもない。
よって、珍しい名字だな、程度の思考でそれは終わった。
「……土方さん、でいいか?……名乗ったしいいだろ。一つ質問させてくれ」
もう面倒なことは早く終わらせたい、と言わんばかりにグリップを握り直す潤也。
少年もそれを見ていたが、やはり、微動だにしない。
やはり彼も、蝉と同類、殺しに慣れた人間に違いないと潤也は確信した。
「……言ってみろい」
拒まれるかとも思ったが、意外にも男はあっさりと質問を承諾してくれた。
もし拒まれたら恒例のじゃんけん勝負にでも持ち込もうと思っていたのでやや拍子抜けしたが、許可が出たならありがたい。
おとなしくその権利を使わせて貰おう。
「……お前は、俺の兄貴について知ってるか?どんなことでもいい、何か知っていたら教えて欲しい」
緊張が高まる。
自然と、心音が高まるのを感じた。
もし、彼が兄のことを知っていたら。
いやそれどころか―――この少年が兄を殺した人物だったら?
そううまくは行かないだろうと分かってはいるが、それでも期待せずにはいられない性。
そして、少年の口から言葉が紡がれる。
「……何か知っていたら、どうするんでい?」
立て板に水を流したが如き、さらりとした回答だった。
「―――っ、し、知っているのか!?それなら教えてくれ!どうして兄貴は死んだ!?お前は兄貴と知り合いなのか!?それとも―――」
思わず声が高くなる。落ち着けと何度も言われていたが、冷静でいられるはずもない。
それが簡単な挑発だということにも潤也に気づかせない。
「おっと、質問に答えろよ。俺は『どうするんだ』、そう聞いたんだ」
土方は潤也を横目で見て嘲笑い(にしか潤也には見えなかった)、再び問いかける。
「どうする……?」
首をかしげる潤也に、土方は意地悪く笑う。

14Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:15:01 ID:RW1ozSEI0
「日本語が分からないとは言わせねえ。つまり、―――俺を殺す気なのかどうか、ってことだ」
土方の性格の悪そうな口角をつり上げての笑みに、潤也は黙る。
「……」
土方は潤也の顔を探るように見、そしてため息をついた。
「……言えねえってことは、殺すつもりがあるってことかい?悪いが、そんなに見え見えな態度じゃ人殺しなんてでき―――」

刹那。
沖田の頬を、銃弾がかすめた。
「……」
もちろんそれは、潤也の撃ったもの。
「……あんたは……」
「ああ、そうだ」
自分の『覚悟』を見せつける。
それが、潤也の選んだ方法だった。
今ので相手が死ぬなんて思っていなかった。外すつもり、威嚇のつもりだった。
自分が舐められている、というのは薄々感じ取っていたからこその行動。
本気で自分が彼を殺すこともある、そう示すためにやったことだ。
『まだ』死んでもらっては困る。少なくとも、兄のことを聞き出すまでは。
しかしまだ銃など数回しか使っていないため、手元がぶれて沖田の頬をかすめてしまったのだ。
しかし、潤也はそれにも動じず、口を開く。
どこか穏やかな気持ちになって、自然と口元が緩んだ。
「……答えによっては、死んで貰うさ」
目の前の土方の表情が、変わる。
その顔は、発砲した潤也に対する怯え―――などは全くなく、獰猛な獣を思わせるものだった。
舌舐めずりでもしそうな調子で、土方は潤也の言葉に一言、返す。
「……へえ、やってみろよ。ただし、やるからには、覚悟が、理由があるんだろうなあ?」

「ああ―――俺は兄貴を殺した仇を取りたい。だから、何か情報を持っていたら教えてくれ。……お願いだ、頼む!」
今度は、先ほどより冷静に頭を下げることができた。
土方の腹だたしい態度が原因に違いない。なんとも皮肉な話だが、潤也に気に留めている余裕などない。
―――本当に、こいつが兄貴のことを知っているなら―――
一縷の望みをかけて、土方の顔をちらりと見る。
土方は、つまらなさそうな顔をしていた。
そして、潤也の視線と土方の視線が交差し、そして―――
「兄?馬鹿じゃねえの?たかが兄貴のために人を殺すなんざ―――馬鹿のすることだぜい」
土方は、言葉を吐きだした。
何の躊躇いもなく、さも当たり前のように。
今の潤也に対する、最高且つ最悪な侮辱の言葉を。

「……たかが、だって!?」
だから、潤也が、その言葉に反射的に反応してしまっても無理はないのかもしれない。
いくら多少『平凡』とは外れているとはいえ、彼のスペックは平均的な高校生男子以外の何者でもないのだから。
挑発されれば頭に血が上っても、彼を責めることはできないのだ。
「ああ、そうだ。くだらねえ、何でたかが血繋がってるだけでムキになってんでい。
死んだんだかなんだか知らないが、死んだらそこまでだ。それ以上何もねえよ。運がなかっただけだ、諦めな」
土方の言葉に、潤也はふつふつと怒りがわき上がるのを感じた。
土方は、確実に潤也の中の何かの熱を上げていく。

15Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:16:23 ID:RW1ozSEI0
たかが、だって?運がなかった、だって?
自分はずっと、ずっと兄と共に暮らしてきた。他に家族なんておらず、家のことは兄に頼りっきりだった。
兄が大変なことに首を突っ込んでいる気はうすうすとしていた。なのに。
自分は最後まで、兄貴が死ぬまで、それに気づいてやれなかった。
結果として兄は理由も分からないまま、無惨な姿で死体として帰ってきた。
もちろん、大切な人は他にもいる。学校に行けば沢山の友人がいるし、可愛くて少し抜けているけど心優しい彼女もいる。
しかし、家族は兄一人しかいないのだ。
潤也にとって安藤は―――唯一の大切な家族だった、のに。
それを否定するこの少年に、冷静に反論できるほど、潤也は大人ではなかった。
「……れ」
「あんた何でい?ブラコンかい?兄貴がいないと生きられないのかい?……気持ちわりい」
瞬間。
「……黙れっ!」
潤也はついに、激昂した。
他人に、自分と兄のことが分かるはずがない。
優しくて、優しすぎて、自分を危険に巻き込むまいとし続けて死んでしまった兄のことなど。
だから自分は、兄の敵を討ちたい。そして、兄の無念を晴らしたい。
「お前に何が分かる!俺が……兄貴は、兄貴はっ!」

だから潤也は、気づかない。
潤也が怒りで視界から土方しか見えなくなったその瞬間、彼の姿が視界から消失した事実に。
「……っ!?」
「遅えんだよ」
しゅん、と風を切る音。
同時にみしり、という嫌な不協和音がはっきりと潤也の耳に届いた。
「……ぐうっ!?」
続いて襲う痛み。しかし潤也は未だ自分の状況が把握できていない。
どういうことだ。何が起こった?
しびれるような痛みが右手首から走る。
「子どもが武器持ち歩くんじゃねえよ。仕方ない、責任もって俺が預かっておくとしやしょう」
そして、ようやく認識した光景は。
土方が、木刀を握ったまま自らの武器である銃をその手に握り、くるくると楽しそうに回し弄んでいる様子だった。
「ふ、ふざけ、っ!?」
潤也は理解した。
先ほどの鈍い痛みは、木刀が潤也の銃を握る右手首に直撃したからのものなのだと。
がむしゃらに打ってきたわけではなく、それが銃を弾き飛ばしたのだと。
危険を感じるより早く、怒りと本能が潤也を突き動かす。
気づいた潤也はすぐさま土方から銃を取り返そうと動く、が全てが遅すぎた。
「やっぱり、遅え」
そして―――
「っ!?」
普通の高校生と、常日頃から修羅場を潜る荒くれもの集団の隊長。
どちらの動きがより早いかは、一目瞭然で。
土方が、潤也の目の前にいつの間にか現れ―――
「ガキは、大人しくおねんねしてな」
潤也の腹に、木刀の柄が高速で突っ込んできた。

そして、潤也の意識は―――闇に消えた。

16Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:17:14 ID:RW1ozSEI0


「……っ、う……」
視界が、ぼやける。
どうやら意識を失ってしまっていたらしい。
……情けない。こんなことでいいのか。
俺は、兄貴の仇を討たなきゃいけないのに。
こんなんじゃ、駄目じゃないか―――
「気が付いたかい。……ちっ、とどめさしてやろうと思ったのに」
土方の聞き捨てならない言葉に、潤也はむっとして顔をわずかに持ち上げる。
そこには、腹立たしいくらい爽やかな土方の笑顔があった。
「……てめえっ……!」
気に入らない。
自分の兄との関係を、今までの絆を、死を否定したこの土方という少年を許したくない。潤也はその顔を一発殴ってやろうと、体を起こすため右手に力を込め―――

「……っがあああああ!?」
叫んだ。
理由は、実に単純明快。
起き上がろうと力を入れた右の手から、激痛が走ったからである。
「…………な、っ……な……」
嫌な予感がした。瞳に涙さえ滲む。高校生にもなってかっこ悪い、と自嘲している余裕もない。
この痛みは何なのだ。潤也は、そっと右手を持ち上げ首を傾ける。
『じゃらり』、と金属音がその後を付いてきた。
なんだこれは、と口にするまでもなく、潤也はすぐにそれを『触って』理解した。
「な……なんじゃこりゃああ!?」
それは、平和な日本でごく普通の学校生活を送ってきた潤也にとって、にわかに信じられない事態だった。
自分の首には、確か銀色の首輪が初めからはまっていたはずだ。
しかし、今は―――その上に、何か別の金属が重ねられている!
もしかしたら、一つ目よりずっと頑丈そうな代物が。
首輪、だ。二つ目の。
しかも―――
「……俺はこう見えても警察のはしくれでねい、悪人はしょっぴく権利があるんでい、悪く思うなよガキ」
今度の首輪は、一つ目とは一味違う。
首輪につながれた、長い鎖。
その先を握っているのは、目の前の憎たらしい笑顔を向ける土方だった。
鏡で見てこそいないが、すぐに分かった。
さながら今の自分の姿は―――飼い主に拘束された狂犬、と言ったところか。
何だ、この悪趣味な展開は。
友人が貸してくれたビデオにあったそういうプレイみたいじゃないか。相手が可愛い女の子でなく男で、しかも腹立たしい相手だなんて、罰ゲーム以外の何者でもないが。

「が、ガキガキ言うな!これはどういうことだ、説明し、」
「俺より年下ならガキに決まってんだろ。それにどういうことも何もねえよ。ただ、お前さんを捕獲させてもらった。それだけだ」
捕獲、だって?
まるで潤也のことを家畜のように言う土方に腹が立って仕方無い。そのへらへらした笑顔をぶん殴ってやりたい衝動に襲われる。
しかし、右手がいかれている以上、それもかなわない。銃まで取られてしまった。
持ちあげるだけで激しく悲鳴をあげる右手を下ろさざるを得ない。
間違いなく、骨が折れている。きっと気絶している間に腕を捻ったのだろう。
悪夢にうなされていたのはこういうことだったのか。
「……冗談じゃねえ!お前に何の権利があって―――」
ごきり、と地面に置いた右手を踏みつけられた。
「……っ、が……あ……」
「言っただろ?俺は警察なんだ。人殺ししようとしている奴を黙って見過ごすわけにはいかねえなあ。大人しくしときゃ命は勘弁してやらあ」
邪悪な笑顔を浮かべながらそういう姿は、どう考えても警察というよりチンピラにしか見えなかった。
嘘吐け、と内心毒吐きながらも、潤也は口をつぐむ。
首輪で身体を拘束され、利き腕をへし折られた今、自分に勝ち目はない。
「ほら、行くぜい、家畜」
ぐ、と首輪を引っ張られ、潤也は土方に見られないように舌打ちすることしかできなかった。

17Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:18:24 ID:RW1ozSEI0


(ったく、何で俺がこんなことしてるんでしょうねい、近藤さん……)
沖田は後ろでわめいている潤也を無視して、虚空に視線を向ける。
思い浮かべたのは、底抜けにお人好しでどうしようもなく愛すべき馬鹿である自らの長のこと。
どうやら、自分も近藤のすっかり汚い褌色に染まってしまったようだ。
殺せばいい。それは言われずとも分かっている。

これはきっとすぐに諦めるタマではない。武器は取り上げたとはいえ、油断していると殺されるかもしれない。
潤也は間違いなく、『やばい』。
どこがどうやばいのか、はうまく言葉にできないが、強いて言うなら野生の獣のような危険さだ。
土方や自分のような人種というより、こちらに笑顔で引き金を引いてきた際のあれは―――どちらかといえばテロリスト・高杉晋助のような香りさえ感じさせた。
決して頭が回るタイプではない。容易に挑発に乗り、感情を爆発させると周りが見えなくなる、典型的な子ども。
しかし、少年の態度は決してそれだけではない、何か闇のようなものを感じさせる。
いくら自分が多少油断していたとはいえ、自分の居場所を初めから特定していたかのような出会いといい。
躊躇うどころか笑顔さえ浮かべて、自分に銃を向け、撃ってきたことといい。
殺し合いに積極的なことも含めて、活かしておいても沖田に利は全くない。

それを分かっていながら、沖田は今のところこの少年を殺す気になれなかった。
もし、時期が違えば。
もし、これが姉を看取った直後でなければ、迷わなかったかもしれない。
とはいっても、既に鬼の真選組に所属して人斬りは何度もしている。タイミングさえあれば、殺人など造作もない。
しかし、今の沖田には、爪の先ほどに小さいものながら、普段とは違う感情が芽生えているのもまた事実だった。
もしかしたらそれは、感情を爆発させた少年の身の上に、何か感じるところがあったからかもしれない。
少年への挑発は、うまくいった。
それはほぼ当然で、何故ならそれは自分が言われても怒るであろうことを並べたからだった。
本当に兄弟思いの人間ならば―――その兄と、姉と自分の生きざまを否定されて、黙っていられるはずがない。
しかし、何故自分はあんなことを言ったのか?
考えても良い答えは出てこない。
たった間違いないのは、自分はすっかり近藤の思い通りらしいということだけだ。
ひりひりと、近藤に殴られた頬がまだ疼いた。

18Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:20:04 ID:RW1ozSEI0

(土方さんの名前を使わせてもらいやしたが、別に問題ないでしょう。あいつがそんな簡単に死ぬとは思えねえ)
沖田が自らの名前を偽り、土方の名を騙ったのには理由がある。
一つは、仮に自分が誰か(潤也のように)に恨まれた場合、土方も被害を被るように。
沖田が少しでも動き回りやすくするためだ。仲間なんだから苦労を分かち合うのは当然ですよねえ、が沖田の持論もとい主張である。かなり無理矢理な。
どうせ自分があれだけ殺しても死なない男だ、どれだけ悪評がついても死ぬまい。むしろ死なれては困る。殺すのは自分なのだから。
姉が愛した男が、自分以外の人間に殺されていいわけがない。
そして、もう一つの理由。
これは沖田が聞けば、間違いなく認めない理由だろうが。
沖田は、姉の願いを叶えると、姉の期待を裏切らないと約束した。
だからこそ彼は―――姉の愛した男の名前を使ったのだ。
屈辱的でも認識しなければいけない一つの事実――-姉を幸せにできるのはあの男だと。
だから、自分もあの男になりたいと思った。
姉を幸せにできる、立派な男に。
それは、沖田自身も全く気づくはずもないことなのだが。

何にせよ、一つ確かなことは。
(まあ、何はともかく、ここで一発で死ぬより、足掻いて抵抗する姿を見ている方が楽しいですからねい。まさか俺に私物が支給されるとは思いやせんでしたが……まあいいぜ、せいぜい足掻いてくれよ、潤也くうん?)
……沖田総悟は、自他共に認めるドSだということだけであった。

ここで、沖田が気づいていない事実が存在する。
後ろですっかりおとなしくなった少年が、不思議な能力を持ち合わせているということに。
それは刃を振るう力でも、炎を操る力でも、精霊を召還する力でもない故に、弱くて一見役立たずに思えるが―――
「10分の1を1にする」という、使い方次第ではあらゆる刃ともなる、狂気に満ちたものだということを。
それに気付かないことが、沖田にとって吉と出るか凶と出るか、それはまだ分からない。

19Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:20:41 ID:RW1ozSEI0


(くそ、くそ、くそ……こんなとこで足止めなんてふざけるなよ!俺は……)
一方。
沖田に引きずり回される潤也は、心の中で恨み言を繰り返す。
骨をへし折られた右手首は激しく痛む。放っておいても強烈な痛みなのに、たまに沖田にわざと足をひっかけられると更に軋む。抵抗すると首輪――-余談だが、鎖付き首輪を付けられた後だと、はじめに付けられた爆弾入り首輪が可愛いものに思えてくるから不思議だ―――を引っ張られる。どうしろというのだ。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
―――油断した。
間違いなく、自分の失敗だ。
一番の間違いは、土方に対する態度を、蝉のときのそれと同じようにしてしまったこと。
蝉に銃を渡されたときは、蝉は逃げなかったし抵抗もしなかった。反撃もしてこなかった。それは潤也の行動を試すためだったのだから当然だろう。
それ故にどこか失念していた。……実力者ならば、銃弾を避け抵抗するに違いないと。
(まともに渡り合っちゃだめだ、蝉さんみたいな人と俺じゃ実力が違いすぎる……俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだから)
二重にはめられた首輪の位置を忌々しげに見つめながら、潤也は兄を思う。
(でも……分かった。分かったよ、兄貴……慎重にやらなきゃだめだって。少し遅くなるけど、このままじゃだめだ)
このままでは、兄の二の舞だ。それだけは避けたい。
仇を取るためには、自分が死んでは何の意味もないからだ。
自分はまだ生きている。自由こそ拘束されているが、土方は自分を殺さなかった。
それならば、まだうまくやれるはずだ。

情報を得るためには、他の連中と合流する必要がある。
しかし、彼らと出会い、話を聞いて、兄の仇がその場にいて、自らが銃を向けたらどうなるか。
それで相手を殺せたら構わない。大成功だ。
しかし、敵が土方のようにとんでもなく強かったら?
相手を殺すどころか、自分が返り討ちにあって終わりだ。兄が倒せなかった相手に、自分が真っ向で勝てるだろうか?
まず、無理だ。
自分の特殊な力は、戦闘には全く役に立ちはしない。
(それなら、機会を伺うんだ。殺せそうな時に、そいつを殺す)
そもそも、この場に兄の仇がいるかどうかも分からないのだ。
いないならば、自分はさっさと本来の家に帰り、兄の仇を捜し出す必要がある。
そのためには、人を殺して回ることが手っ取り早い。悠長なことを言っているうちに、情報は逃げていってしまう。
だからうまく殺していくしかない。
いきなり銃を向けてはだめだ。初めは殺しなどするつもりのない人間として振る舞えばいい。
そして情報を可能な限り絞り取り、兄貴のことやマスター、犬養の情報を握っていないと分かったらタイミングを見計らって殺す。
本当は他の人間が罪を被るようにしたいか、そううまく思いつくかどうか。
やっかいなのは目の前の土方だが―――武器を取り上げられている以上迂闊に動けない。殺すなんてもっての他だ。
今のところは大人しく従うべきだろう。いずれ、始末してやる。この屈辱を晴らさないと気がすまない。
兄の仇を討つため、自分の知らない世界に首を突っ込む準備は―――人を殺すための覚悟は―――とうにできていた。
あとは、実行に移すだけ。
いざという時には、この能力もあるのだから。

ここに、潤也が気づいていない事実が存在する。
この殺し合いに、『死んだはずの』兄が参加しているということを。
主催者は、何でも願いを叶える、という形で死者の蘇生も可能である、という可能性もたしかにほのめかしてはいた。
しかし、潤也は信じてなどいない。だから考えようともしない。死人が生き返るなど。
ましてや、兄がこの場にいるなどと、気付くはずもない。
そんなことは、この現実ではありえないことだったから。
そんなことが可能なら、自分は兄と二人暮らしなどしていなかっただろうから。
気づかないが故に、潤也は沖田に従いつつ、虎視眈眈と模索する。
兄ほどの頭脳は持ち合わせていない故に、兄よりも本能的で、且つ兄よりも残酷な手段を。

(兄貴、待っててくれ。俺が必ず、兄貴のできなかったことをやり遂げてやる!)

20Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:22:44 ID:RW1ozSEI0
【G-2/中・高等学校裏】
【沖田総悟@銀魂】
【状態】健康、わずかな悲しみ
【装備】なし(首輪の片方を握っている)
【所持品】支給品一式  木刀正宗@ハヤテのごとく! 首輪@銀魂 
【思考】
基本:さっさと江戸に帰る。無駄な殺しはしないが、殺し合いに乗る者は―――
1:この場にいるなら近藤や銀時達知り合いと合流したい。土方?知らねえよ
2:しばらくは潤也を虐めて楽しむ
3:……姉さん、俺は―――

※沖田ミツバ死亡直後から参戦

【首輪@銀魂】
沖田と土方が地愚蔵に閉じ込められた際 (実際は沖田の策略だったが)、二人をつないでいた首輪。鎖部分がやや長め。人間をペットにしたい、ドSな貴方にお勧めです。

【木刀正宗@ハヤテのごとく!】
伊澄の家に伝わる名刀。
デザインが少し凝っている以外、見た目は普通の木刀。
持ち手の身体能力を極限まであげる力を持つが、同時に感情が高ぶりやすくなる。

【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
【状態】右手首骨折、首輪で繋がれている
【装備】なし
【所持品】支給品一式  イングラムM10@現実 未確認支給品1〜2(本人確認済み、武器はない)
【思考】
基本:兄の仇を討つ。そのためには手段も選ばない。
1:兄の仇がこの場にいれば、あらゆる方法を使って殺す。いなければ、できるだけ早急にここから脱出する。
2:初めは殺すつもりがないようにふるまう……?
3:土方に対する激しい怒り
4:兄貴……

※参戦時期は少なくとも7巻以降(蝉と対面以降)。自分の能力をどこまで把握しているかは次にお任せします。
※沖田の名前を土方と理解しました。

21Little Brothers! ◆H4jd5a/JUc:2009/04/13(月) 00:25:37 ID:RW1ozSEI0
投下終了です。
潤也の能力に関してはどうしようか(知る前か、知った後か)迷ったのでぼかしてみました。
指摘ありましたらお願いします。

22 ◆Fy3pQ9dH66:2009/04/13(月) 16:44:43 ID:BMr8xaZ20
すいません、本スレさるさん食らったので続きをこちらに落とします

23 ◆Fy3pQ9dH66:2009/04/13(月) 16:45:01 ID:BMr8xaZ20
「さて……と」
思わぬところで時間を食ってしまったが現状やることは変わらない。
子分達を見つけてこの島から抜け出すのだ。
そう言えば、ここに飛ばされる前に見た影の中に麦藁帽子のような形の頭をした人影を思い出す。
もしもあれが自分の思っている人間だったとしたら、彼らも一緒に捕まってしまったのかもしれない。
そうだとしたら協力出来ないかとも考えていた。
あくまで居ればの話だったが。

地図を広げて地形や建物などを確認し子分たちが集まりそうなところを考えてみた。
「とりあえずはホテルかしらねえ……」
ホテルならバーがあるかもしれないし、そこで自分の気も知らず暢気に一杯やっているかもしれない。
一人ごちりながら地図を仕舞い込み、北へと向かって歩き始めた。



【 F-6中央街道 / 一日目深夜 】
【Mr.2ボンクレー@ONE PIECE】
 [状態]: 健康
 [服装]: アラバスタ編の服 森あいの眼鏡
 [装備]:
 [道具]: 支給品一式 / 不明支給武器(x1〜2)
 [思考]
  1: 待ってなさい、可愛い子分たち!
  2: とりあえずホテルに向かう
  3: 殺し合いなんてどうでも良いけど自分の邪魔する奴は許さない
 [備考]・アラバスタ脱出直後からの参戦
    ・グランドラインのどこかの島に連れて来られたと思っており、脱出しようと考えています
    ・マネマネの実の能力の制限に関しては現状未定
     (一応直接顔を触れた人物→西沢歩)

24 ◆Fy3pQ9dH66:2009/04/13(月) 16:46:41 ID:BMr8xaZ20
支援してくださった方ありがとうございました
タイトルは「西沢歩の受難 〜私と、変態と、変態と〜」でお願いします

25二人の黒い疵男(修正部分2) ◆AO7VTfSi26:2009/04/13(月) 23:02:56 ID:z9PHLzQY0
「そうか……それなら、すまないが少し私に付き合ってはもらえないか?
 向かいたい場所があるんだ」

ブラック・ジャックはデイパックから地図を取り出し、ある場所を指差した。
それは彼にとって、必要な物資を入手できる貴重な施設―――病院である。

「C-2にある、病院に向かいたい。
 ここならば恐らく、医療器具や薬は一通り揃っている筈だ」
「病院……?
 何だそりゃ?」
「ん、病院を知らないか……?
 そうだな、かなりでかい診療所と言えば分かるか?」
「ああ、成る程な……そう言われりゃピンと来るぜ」

病院が何なのか分からない。
普通に考えればおかしい発言なのだが、ブラック・ジャックは然して驚く様子も無く、いたって普通にガッツへと返答した。
と言うのも、彼にとって病院どころか診療所ですら知らぬ相手というのは、別に初めてではなかった。
未開のジャングルに住む原住民族、人語を話せぬ野生児、挙句の果てには宇宙人や幽霊が患者になった事すらあったのだ。
ならばこの程度、どうという事は無い。

「だとすりゃ、俺達以外の誰かが目指してくる可能性は十分にあるな」
「ああ、接触さえ出来れば何かしらの情報も収集できるだろう……引き受けてはもらえるか?」

目的は二つ、治療道具の入手並びに他の参加者との接触。
後者はこの殺し合いをどうにかする為。
そして前者は、治療行為をいつでも行えるようにする為だ。
この舞台では、誰がいつ致命的な傷を負うかは分からない。
一介の医師として、彼はそれを見逃す訳にはいかなかった。
言うなれば、これは医師としての使命感だろう。

26リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:27:11 ID:XZbewnBU0
さるさんに引っかかってしまったので、こちらに投下します。

27リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:27:53 ID:XZbewnBU0
「証拠は?」

王子が話し始めてから初めて、杜綱が言葉を口にした。
声色に感情はなく、背を向けたままの為に表情も読めない。

「証拠はあるのかよ?」

「そう、ですね……」

王子が口の端を僅かに上げて、ふ、一息を吐き出す。

「貴方が偽杜綱さんだから、でしょうか?」

同時。


「え?」


目の前に蛇の体がある。
風を斬りながら、風すら砕きながら、幾百の像を残してブレる。
俺の体を打ち据えた。
ごき、ぼりゅ、ぐちゅ、と肉と骨がひしゃげる音がした。

「が……!」


杜綱は、動いていない。
数十メートルも先にいながら、銃を向けてもいない。
こちらを向いてすらいない。

けれど、たったの一撃で俺を地面に這い蹲らせた。
動きへの備えなど全く無意味に、俺は捻じ伏せられていた。

そのままうねる蛇は止まらない。
俺を先に潰したのは、見たままに俺が戦闘に長けているから。
次に打ち据える対象は只一つ。

――しまった、とでも言いたげな顔で、あまりにも無力に立ち尽くす少年がいる。

「――王子!」


……体が軋む。
内臓がかき回されるような気持ち悪さと、コンクリート塊に上から潰されたような重さによる痛みが混ざり合う。
意識が切り刻まれ、理性が判断を歪ませる。

だが、それがどうした。

――俺は、決めたんだ。
あの人のように生きると。

28リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:28:51 ID:XZbewnBU0
……ニコ兄。
泣き虫リヴィオにだって、きっとやれるよな。

なあ、ラズロ。
お前に押し付けなくたって、俺はやっていけるさ。

どんな生き方だってできるって、それを二人に見せてやる。


「お、あああぁぁあぁああああぁぁああぁぁあああぁぁあぁあぁぁ……っ!」

意識や理性を超えたところにある闘争本能任せに、肉体を行使する。
そう、この肉体はミカエルの眼の極地。到達点。
いかなる傷も再生させ、いかなる攻撃も覚え凌ぐ。
そして、いかなる敵も粉砕する。

手に握るのは一見長いスーツケース。
だが、これはそんなものではない。
これこそ怨敵の使う悪魔の武装。
エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの杭打機に他ならない。

何故、こんなものが俺の元にあったのかは分からない。
俺の体を穿った武器を使う事に躊躇いもある。
……だけど。

頭上の感触を確かめる。大丈夫、ここに一撃も食らってはいない。
預かった大切な帽子の感触は確かにある。

――ここに来る直前、これを渡してくれた少年と、目の前の少年が重なった。

縦横無尽に跳ね回る蛇の姿を、初めて捉える。
……異常な長さの鞭が、まるで生きているかのように跳ね回っていた。
少年に迫る鞭を見据え、杭打つ先を狙い済ます。

守ろう。守りたい物を護っていこう。

撃った。
踊る鞭の先に杭が重なり、双方が弾き飛ばされる。


*************************


「逃げたか……」


――危なかった。もし偽杜綱がこれ以上交戦をするつもりだったら、僕が命を落としていた可能性もある。
あんな事を彼に言っておいてなんだけど、僕も少し慎重さを欠いていたかもしれない。

だが、あそこまで彼が攻撃的だとは想定外だった。
いや、攻撃的――というより、情緒不安定の印象を受ける。
それならばそれで説得次第で彼をこちらに引き込めるかもしれないと思ったのだけど、目論見が甘かったようだ。

29リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:29:49 ID:XZbewnBU0
……僕は、彼を慎重で理性的な人間と評した。
ならば、協力関係のメリットとデメリットを推し量り、互いに支障のない範囲で共闘を検討するくらいはすると考えたのだ。
現実にはそこまで話を持っていくことすらできなかったのだけれど、彼は基本的に理性的な人間なのは間違いない。
が、何らかの原因で狂気に取り憑かれているようだ。慎重さと行動のちぐはぐさはそれの表れだろう。
そこが人間の厄介な点であり、また魅力でもある。

……いや、それは今は関係ない。
彼のおかげで永らえたのだから、それに謝意を示さなければならない。

「リヴィオさん、大丈夫ですか?」
「……ああ、心配するな。もう動ける」
「……え?」

返答は予想外だった。
――何故、あんな攻撃を受けてもう動ける?

「俺の体は特別でね、再生速度が普通の人間とは比べ物にならないの、さ……。ぐ……」

成程、確かに傷の治りが早いみたいだ。
――非常識ばかりで驚かされるが、こんな状況でいちいち見入っていても仕方がない。
順応しないといけないな。
それに、

「完治している訳じゃないでしょう、無理はしない方がいいと思いますよ」
「……すまない。いつもより遥かに体の治りが遅いんだ、っ……」

『ただし少しでも公正さをきす為に細工をさせてもらっておる。
身体の動きが鈍いと感じているものはおらんか? 力が使えないと思っているものは?』

――そういう事か。

「何はともあれ、早めにここを離れよう。じっとしてる訳にもいかないだろ?」
「確かに、その通りですね」

今は早急にここを離れなければいけないだろう。
……杜綱と名乗っていた男が戻ってきたら、まず良い結果にはなるまい。
何故あの男が撤退したのか、その理由も分からない以上非常に不気味だ。
あの武器ならば僕達を殺すことなど造作もなかったろうに。
考えられるのは……

「使用に際して、何らかのリスクを追っている……?」
「ん? 何のことだ?」
「いえ……」

言葉を濁す。不確かなことを言っても仕方ない。
……だが、どうやらリヴィオさんには何を考えているのか通じたようだ。

「……そうだな、考えても仕方ないさ。
 おまえはむしろ考えすぎだぜ」
「これでも僕には世界的な探偵になるって夢があるんですよ」

苦笑交じりに答えれば、彼は人好きのする笑みを見せてゆっくり立ち上がった。

30リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:30:29 ID:XZbewnBU0
「王子……、お前って輝いてるぜ」
「それは本物の高坂君に言ってあげるべきですね、喜びますよきっと」

苦笑が続く。
ほんの少し呆けたリヴィオさんを再度、じっくりと見る。
……彼ならば信用に足るだろう。

「――偽名ですよ。偽杜綱さんと同じでね。
 生憎ながら、僕は出会ってすぐの人を信用できる性格ではないんです」
「偽名ね……。そう言えば、杜綱に対してさっき……」
「開始して6時間は、名簿を読めない。
 要するに、6時間は参加者が偽名を名乗っても参加者にその人物がいるか確認する術がないんですよ。
 ……慎重な彼の事ですからね、それに気付かないはずはないと思ってカマをかけたんです」
「……まあ、こんな殺し合いにいきなり連れて来られたら無理もないが……」

頷きつつ、しかし腑に落ちないように彼は僅かに口をもごもごと動かしている。

「それにしては……、いや……」
「――貴方を騙したことは謝罪します。
 ですが、僕は先ほどの貴方の行動で貴方が信用できる人間だと判断しました。
 あらためて自己紹介ですね」

……雪輝君以外の、僕の協力者。
戦闘にも長けるとなれば礼を尽くしておくに越した事はない。
心底丁寧に一語一句を発していく。

「――秋瀬或。探偵です」

考える事は山ほどある。
『神』についての事だけでなく、この会場や、参加者の人選。
あるいは殺し合いの意義や、もっと身近なところでは何故この明らかに外国人であるリヴィオと話ができるか、など。

だが、今すべきはそうではない。
彼と手を取り、探偵として、僕はこの殺し合いの謎に挑んでいこう。
その為に僕は手を差し出した。

「僕と共に、『神』とのゲームに臨んでいただけますか?」

手が取られ、互いにしっかりと握り合う。

「ああ、こちらこそ、だ。或」


【C-02南部/市街地/1日目 深夜】

31リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:31:16 ID:XZbewnBU0
【秋瀬或@未来日記】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、各種医療品、不明支給品×2
[思考]
基本:生存を優先。『神』について情報収集及び思索。(脱出か優勝狙いかは情報次第)
 1:雪輝の捜索及び合流。また、雪輝以外の日記所有者と接触。合流するかどうかは状況次第。
 2:探偵として、この殺し合いについて考える。
 3:リヴィオに同行しつつ、放送ごとに警察署へ向かう。
 4:偽杜綱を警戒。
 5:アユム、蒼月潮、とら、リヴィオの知人といった名前を聞いた面々に留意。
[備考]
 ※参戦時期は原作7巻終了時以降のどこかです。
 ※病院のロビーの掲示板に、『――放送の度、僕は4thの所へ向かう。秋瀬 或』というメモが張られています。
 ※リヴィオの関係者、蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。


【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]:左肋骨三本骨折(治癒中・完治まで約4時間)
[装備]:エレンディラの杭打機(29/30)@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:ウルフウッドの様に、誰かを護る。生き延びてナイヴズによるノーマンズランド滅亡を防ぐ。
 1:或と共に、知人の捜索及び合流。
 2:誰かを守る。
 3:偽杜綱を警戒。
[備考]
 ※参戦時期は原作11巻終了時直後です。
 ※現状ではヴァッシュやウルフウッド等の知人を認知していません。
 ※或の関係者、蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。

【エレンディラの杭打機@トライガン・マキシマム】
エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの使うスーツケース型の杭打機。
今回用意された杭の数は30本。

32リヴィオと偽名のテラー ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:31:53 ID:XZbewnBU0
*************************


「……くそ」

――ちくしょう、ドジったな。
まさかこんな鞭が、予想以上にオレの力を持っていきやがるとは、な。
たった一発でこんなに食うとは燃費悪ィにも程があらぁ……。

まあ、試し撃ちと思えばこんなもんだよなァ。
オレになら使いこなせるさ、そういうもんだからな。

……くそったれ。
あの帽子のヤツ、リヴィオっつったか。
まるで……、まるで、あいつのような顔しやがって……。

全く、何やってんだかなァ。
さっさとあいつらを殺してくればよかったのに、オレはよぉ……。
何でわざわざあいつらの前に出て行ったんだ?

…………。
ああ、そうか。
オレは裏切り者だからなァ、どこのどいつだろうと裏切るって事をうしおに見せ付けてやるのさ。
顔見知りになっておいて、後で思いっきり裏切ってやるつもりだったのによ。

いいさ。とりあえずは、ふんぞり返った連中を喜ばせてやらぁ……。
オレぁ、最低の裏切り者なんだからよ……。


――ああ。
風が、強くなってきやがった。


【D-03西部/森/1日目 深夜】

【秋葉流@うしおととら】
[状態]:疲労(小)、法力消費(小)
[装備]:禁鞭@封神演義
[道具]:支給品一式、不明支給品×1
[思考]
基本:満足する戦いが出来るまで、殺し続ける。潮に自分の汚い姿を見せ付ける。
 1:うしお及びとらの捜索。
 2:他人を裏切りながら厄介そうな相手の排除。手間取ったならすぐに逃走。
 3:6時間後までは杜綱悟を名乗る。
 4:高坂王子、リヴィオを警戒。
[備考]
 ※参戦時期は原作で白面の者の配下になった後、死亡以前のどこかです。
 ※蒼月潮の絶叫を確認しています。その他の知人については認知していません。
 ※或の名前を高坂王子だと思っています。
 ※或の関係者、リヴィオの関係者についての情報をある程度知りました。

【禁鞭@封神演義】
離れた敵を打ち据える事に特化した、聞仲の持つシンプルながら強力なスーパー宝貝。
本来ならば数km先の敵も打ち砕く代物だが、制限の為射程がおよそ100m程度になり、威力も低下している。
その分使用者への負担も減少している。

33 ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:33:31 ID:XZbewnBU0
以上で終了です。
ご支援くださった方々、ありがとうございました。
それと、本スレ>>541にミスがあったのに気づいたのでそこの差し替えだけ投下します。

34>>541差し替え ◆JvezCBil8U:2009/04/14(火) 10:34:24 ID:XZbewnBU0
*************************


――あの人のようになりたい。
……いや、違う。

あの人のようになろう。
そう決めた。

たとえ始まりがヤケクソで、外道の産物でしかない技と体だとしても。
血ヘドを吐いて、友であり兄弟であるあいつと共に練り上げてきた力は、きっと裏切ることはない。

この力で僕は何かを守りたい。
ああ、そうだとも。
あの人の所まで、僕は駆け上ろう。


*************************


風が、吹いていた。
いつも耳の奥で聞こえる、風の――音。

風が吹くのは、何でだろうなあ……。

まあ、分かりきったことだわな。
何でもできるからだ。
オレは何でも簡単にできる。周りの連中が努力して超える壁を、あっさりと。
だから本気を出しちゃあいけねぇ。
何もかも、何もかもがカンタンすぎて面白みもねぇ。

ああ……、ったく。
そんなつまんねー奴を信頼しきってよぉ、間抜けにも程があらァなあ。
見物だったよなァ、俺が裏切ったと知った時の顔はよォ。

……なあ、あんたらよぉ。オレをここに招いたフザけた野郎ども。
オレに何を望む?
……あの甘ちゃんのガキまで呼び寄せて、何をさせようってんだ?

……なんてな。
オレは何でもできるからな、分かっちまうのさ。
どう足掻いてもそれしかできないし、オレ自身がそうしたがってるってのはな。

悪人だよなァ、裏切り者だよなァ。
こんな外道が楽しくてしょうがねえ最ッ低の野郎だよなァ!
ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……!


ああくそ。
風が、冷てぇなあ……。


風が……。

35643>>差し替え ◆bUcoocG73Q:2009/04/15(水) 02:01:19 ID:/lWGc2Lg0
 灰がかった黒髪をツインテールに結った少女、竹内理緒は混乱していた。

 突如、己がこのような不可解な事態に巻き込まれたことが第一の疑問点だった。
 『最後の一人の生き残りを決めるための殺し合いゲーム』というこの状況。
 いや、まず何よりも己が選定された理由よりも、疑いを持つべきなのは有り得ない"力"について、だった。

 あの雷の力は何だ?
 ワープとは何だ?
 このまるで漫画やアニメのような超能力は一体?

 そして、この宿命に希望を示すことが出来る存在はただ一人――鳴海歩ただ一人。彼だけだったはずなのに。

 しかし、そのような疑問点を解決するためには、今、乗り越えなければならない障害があった。

「……」
「……」

(これは……まずいことになりましたね)

 静寂。
 最初の場所から一歩も動くことが出来ないまま理緒は相対する少女を見つめた。
 そして同様に彼女も理緒を見る。
 見つめ合う、二人。
 だが両者を結ぶ線は赤い糸でも運命の環でもなく、剣呑な視線の矢だった。
 行き場所をなくした瞳が彷徨い、そして全く同じタイミングで一つの箇所にてピタリ、と止まる。
 そして、またも全く同じタイミングで二人は自分達の置かれた状況を理解した。

(……悪趣味、ですね)

 どちらも表情には一切の変化はなかった。
 いや、二人が顔を合わせた瞬間に、相手へ声を掛けなかった時点で、両者が対峙へと緒至る構図は半ば決まっていたのかもしれない。
 理緒としても擬態を用い、彼女へ接触するという選択肢は十分にあったはずなのだ。
 だが、理緒は一瞬の直感でもってその必要ない、と判断した。いや、むしろソレは決定的な悪手であるという思考にさえ至ったのだ。

 ――つまり、それは完璧なまでに仕組まれた遭遇だった。

 由乃と理緒、彼女達は会場に送られた瞬間、支給品を確認する暇もない鉢合わせをする羽目になった。髪を結い、服装を正し、小さくため息を付く時間さえ彼女達には与えられなかった。
 だが――それは共に"普通"ではない理緒と由乃に関して言えば、些細な問題だったのかもしれない。
 熟考と即断。どちらの選択を行ったとしても、彼女達が取るべき行動は一切変わらなかったはずなのだから。

 そう、身につけた技術は、心に宿した妄執は、彼女達に多くを求めない。極めて最適解に等しい動作と思考を与えてくれる。
 全天候型の大型スタジアム。空は星、雲は揺らぎ、星が煌めく。
 この状況で、二人にとって何より問題であったのは、参加者に対して均等に支給されるはずのデイパックが――

 眼前にて、『二つ』、寄り添うように並べてあったということ。

36>>662>>664差し替え ◆L3YPXWAaWU:2009/04/15(水) 02:04:41 ID:/lWGc2Lg0
「…………ふぅ」

 理緒は長いため息を吐き出した。
 我妻由乃との戦闘を回避出来たのは大きい。
 何とか口八丁で彼女を煙に巻いたが、彼女は拳銃があれば完璧に勝利を収めることが出来るほど柔な相手ではなかった。
 単純な戦闘力ではブレードチルドレンの一人であるカノン・ヒルベルトに比肩するレベルかもしれない。
 まだまだ理緒が自分から積極的な行動を取るには情報が足りなさ過ぎる。
 夜は始まったばかりだ。慎重に事を運ばなければ。

「理緒ちゃん、どうしたのっ☆ 元気ないよっ☆」

 傍らの喜媚が理緒の顔を覗き込んだ。
 結局、二人はしばらくの間行動を共にする事にしたのである。

「あ、いいえ。何でもないです」
「ロリッ☆ だったら喜媚と一緒に妲己姉様を探しに行きッ☆」
「……姉様? 喜媚ちゃん、お姉さんもここにいるんですか?」

 姉、という事はその彼女も特殊な力を持っているのだろうか。

「うんっ☆ 妲己姉様ならぜーーんぶ、何とか出来っ☆」
「……なるほど」
 
 確かに喜媚が信用出来る相手なのかどうかは非常に疑わしい。
 だが自らを妖怪であると自称し、宝貝と呼ばれる不可思議な道具を自由自在に扱う彼女は極めて異端の存在だ。

 例えば、彼女が持っていた『如意羽衣』という宝貝を理緒も見せて貰ったが、手にするだけで身体中の力が抜けていくような危険な感覚を覚えるほどだった。
 おそらく理緒がこれを用い、自由自在に他の物体へ変化することはおそらく難しいだろう。
 技術を必要とする宝貝は道士や仙人ではない人間には扱いにくいと喜媚は言っていた。
 
 そんな彼女が本気になれば、理緒を殺害することなど容易いようにも思える。
 事実、あの時由乃と理緒は共にこの胡喜媚の動向にも細心の注意を払っていたのだ。

 が、そうしないという事は、彼女に人殺しをする意志がない裏付けであるように思えた。
 完全に気を許すことは出来ないが、一時の同行者としては問題ないように思える。
 彼女が何を考えているかは分からないが、互いが利用出来る内は協力関係は成立する。
 重要なのはその分岐点を見極める事だ。
 
 そう、ブレードチルドレンは殺戮の使者と成り得る呪われた子供であるが、あくまで人間に過ぎない。
 ――人間が、人外の存在に打ち勝つことが出来るのか。

(あたしが、ここでやるべき事は……何なのだろう) 
 
 神の作り出した絶対的な運命に囚われた存在、ブレードチルドレン。
 たとえ、決して有り得ない可能性だとしても神の掌の中から抜け出す事は適わない。
 
 それが――抗えぬ螺旋の創り出した宿命なのだから。


【B-2/競技場前/一日目 深夜】

【竹内理緒@スパイラル 〜推理の絆〜】
 [状態]:健康
 [服装]:月臣学園女子制服
 [装備]:ベレッタM92F(15/15)@ゴルゴ13
 [道具]:デイパック、基本支給品、ベレッタM92Fのマガジン(9mmパラベラム弾)x3
 [思考]
  基本方針:生存を第一に考え、仲間との合流を果たす。
  1:第一放送までは生存優先。殺し合いを行う意志は無し。
    名簿の確認後、スタンスの決定を再度行う。
  2:喜媚と行動を共にする。妲己という人を一緒に探す。
 [備考]
  ※原作7巻36話「闇よ落ちるなかれ」、対カノン戦開始直後。

【胡喜媚@封神演義】
 [状態]:健康
 [服装]:原作終盤の水色のケープ
 [装備]:如意羽衣@封神演義
 [道具]:デイパック、基本支給品
 [思考]
  基本方針:???
  1:妲己姉様とスープーちゃんを探しに行きっ☆
  2:皆と遊びっ☆
 [備考]
  ※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。

【如意羽衣@封神演義】
 ありとあらゆるものに変身出来るようになる宝貝(素粒子や風など、物や人物以外でも可。宝貝にも可能)

37 ◆9L.gxDzakI:2009/04/15(水) 15:42:11 ID:5A6vmjKY0
ギリギリ4KB余るはずだったのに一杯になっちまったァァァァ!orz

本スレに投下した「その口はあまたの灯」、あれで投下は以上です。申し訳ない

38名無しさん:2009/04/15(水) 15:45:07 ID:Jsl7CsGk0
乙w

39 ◆9L.gxDzakI:2009/04/15(水) 23:50:28 ID:JYtEa7LoO
拙作「その口はあまたの灯」における地の文を、一部以下のように修正します。

(第1巻>>723
 この馬鹿げた殺し合いを催した、あの主催者連中を叩き潰すこと。
 そしてこれ以上の犠牲を出すことなく、皆でここから脱出することだ。
 困難な道ではあるかもしれない。主催をも敵に回すということを考えると、圧倒的に不利な勝負。
   ↓
 この馬鹿げた殺し合いを催した、あの主催者連中を叩き潰すこと。
 そしてこれ以上の犠牲を出すことなく、皆でここから脱出することだ。
 困難な道ではあるかもしれない。主催をも敵に回すということを考えると、圧倒的に不利な勝負。
 そもそも現在地につく前に、どうやらここで戦闘があったらしいのだが、それにすらも間に合わなかった。
 鞭と大砲のような轟音は聞いている。それでも音の主達を見失ってしまった。のっけからミスを犯しているというわけだ。

40 ◆oUQ5ioqUes:2009/04/17(金) 01:23:31 ID:uuwVtYpE0
規制されたのでこちらに投下します。

41 ◆oUQ5ioqUes:2009/04/17(金) 01:24:22 ID:uuwVtYpE0
(何より……私はまだみんなと別れたくない!!)

そう思い、森は走り出した。
信じられる仲間を探すために。
絶対にいると信じながら。
森あいは暗闇の中をかけて行った。


     ◇


今同じ時、同じエリアで、同じことを思った少年少女がいた。

少年はいないかもしれない幼馴染と自分の兄、信頼できる知り合いを探すために。

少女は絶対いると思っているチームのメンバーを探すために。

もしこの二人が出会うことができれば、心強い味方が出来たかもしれない。

だが、運命とは時に残酷である。

彼らこの時出会うことはなかった。

ひょっとしたら、いずれ出会うことになるかもしれない。

ひょっとしたら、二度と出会うことはないかもしれない。

でもそんなことは、誰にも分からない。

それが例え……「神様」であっても……。

42 ◆oUQ5ioqUes:2009/04/17(金) 01:24:56 ID:uuwVtYpE0
【I-6 南西/市街地/1日目 深夜】
【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[状態]:健康 焦り(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み、武器ではない)
[思考・備考]
基本:兄や知り合いを探し、このゲームに立ち向かう。
1:ウィンリィを探す。
2:できれば「1st」も探してみる。
 ※ウィンリィを探しているが、いない可能性も考えています。


【I-6 北東/市街地/1日目 深夜】
【森あい@うえきの法則】
[状態]:健康 焦り(中)
[装備]:眼鏡(頭に乗っています)
[道具]:支給品一式、不明支給品0~2
[思考・備考]
基本:植木チームのみんなを探し、この戦いを止める。
 1:とりあえずみんなを探す。
 2:できれば「1st」も探してみる。
 3:能力を使わない(というより使えない)。
 4:なんで戦い終わってるんだろ……?
 ※第15巻、バロウチームに勝利した直後からの参戦です。その為、他の植木チームのみんなも一緒に来ていると思っています。
 ※この殺し合い=自分達の戦いと考えています。
 ※デウス=自分達の世界にいた神様の名前と思っています。

43 ◆oUQ5ioqUes:2009/04/17(金) 01:28:29 ID:uuwVtYpE0
投下終了です。
ずいぶんと時間がかかってしまったことをここでお詫びします。
ちなみに本スレでもタイトルは乗っていますが、ここでも一応書いておきます。

タイトルは「2つの想い……重ならず」です。

44 ◆zTb8tEnpHg:2009/04/17(金) 05:58:31 ID:TSjuqWlE0
仮投下します。
プロバイダの規制に巻き込まれているので誰か代理投下してもらえると嬉しいです。

45ぼっこぼこにしてやろう だからちょっと覚悟しやがれ ◆zTb8tEnpHg:2009/04/17(金) 05:59:25 ID:TSjuqWlE0


まだ夜も明けぬ空。
静かに揺れる海岸の前に一人の男が佇んでいた。

彼の名は金剛晄。彼はずっと海の向こうを見つめていた。
平然としているようにも見えたが、彼の心の中はあの薄暗い中で起きた陰惨な光景に対し、
怒りの炎をふつふつと燃え上がらせていた。

「これも親父と兄貴の計画の一つなのか……?いや、それは考えにくい」

晄は多くの番長たちが東京都23区を統一するまで戦いあう、バトルロワイアル
『23区計画』にこのゲームを重ねようとしたが、すぐに否定する。

周りには23区計画に参加していそうな屈強な人影を幾人か見かけたものの、
23区計画参加者の目印である刺青を彫っている人物を見つけることはできなかった。
それになにより、明らかに戦いには向いていないかよわい女性や子供までもがあそこに連れてこられていたからだ。

「だが、これだけは分かる。このゲーム……スジが通ってねぇのは明らかだ」

晄はあの部屋の中で犠牲になった少女と少年を思い出す。
彼らは何の罪があって殺されたというのだろうか。ただ、彼らは殺し合いに反対しただけだ。
それに、彼らは戦う術を持たないただの一般人だ。彼らとは違う力を持つ自分たちはまだしも
彼らを巻き込み、あまつさえ知り合いの目の前で虫けらのように殺してしまうような行為を目の当たりにして
怒りを抑えることは晄には到底不可能なことだった。


晄は砂浜からむき出している大きな岩を見る。
彼はそれに近づくと大玉サイズくらいの岩を両手でつかみ、ゆっくりと持ち上げる。


「ムルムル、申公豹……貴様らの殺し合いなぞ……」

46ぼっこぼこにしてやろう だからちょっと覚悟しやがれ ◆zTb8tEnpHg:2009/04/17(金) 05:59:49 ID:TSjuqWlE0







     「 知 っ た こ と か  ―――――――――――――  !  !  ! 」







晄は持ち上げた岩をそのまま海の方へ放り投げるかのように勢いよく投げる。
岩はまるで砲丸投げの鉄球のようにきれいな放物線を描き、飛んでいく。
そして、はるか向こうに着水し、大きな水柱が上がる。
それは彼なりの主催者達への宣戦布告だった。

だが、何故か晄の顔は釈然としなかった。
岩を投げたようと試みた時、自分の体に違和感を覚えたのだ。

「……いつもより力が入りにくくなっている。いつもならもっと遠くに飛んだはずだ」

晄は自分の首筋に巻かれている銀色に光る首輪をそっと触る。
あの少女の話によると、首輪に細工がしてあるらしい。

「全力が出せないのもこれが原因か……こいつもどこかではずす必要があるな」

晄が次に気にかけたのは仲間のことだった。
念仏番長や剛力番長のような仲間たちや、陽菜子や月美たちもここに巻き込まれているかもしれない。
もしも、彼らがこのゲームに巻き込まれているとしたら真っ先に合流する必要がある。と晄は考え、
彼はデイバッグから地図を取り出した。
今、自分がいる地点はH-2。海岸の砂浜のようだ。

「近くに学校があるな。誰かがあそこにいるのかもな……」

47ぼっこぼこにしてやろう だからちょっと覚悟しやがれ ◆zTb8tEnpHg:2009/04/17(金) 06:00:41 ID:TSjuqWlE0

小学校と中・高等学校のどちらかに行くか。
ひとまず、晄は北の学校の方に向かうことに決めた。
陽菜子や他の番長がここにいるのなら、ここを目指すだろうと推測したのだ。

「待ってろ、ムルムル、申公豹。このスジの通らねぇゲームは俺がブッ潰す。」

静かな怒りの炎を灯しながら金剛番長、金剛晄は
新たな戦いへと挑む決意を固めた。


【H-2/海岸/深夜】
【金剛晄(金剛番長)@金剛番長】
[状態]:健康
[服装]:学ラン
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合い?知ったことか!!
 1:ゲームを潰す
 2:施設をまわり、情報を集める。
 3:このゲームの参加者にスジを通させる
 4:陽菜子や他の番長たちはいるのか……?
[備考]
※自分の力が制限されている可能性を持ちました。

48 ◆zTb8tEnpHg:2009/04/17(金) 06:01:24 ID:TSjuqWlE0
投下終了です。
問題点・疑問点などありましたらレスお願いします

49 ◆JvezCBil8U:2009/04/18(土) 18:31:01 ID:wycRPsV60
規制に引っかかったので、残りをこちらに投下します。

50カタハネ -クロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/18(土) 18:31:46 ID:wycRPsV60
「わ、私は西沢歩っていうんだけど、あなたの名前は?」

口を開きかけ、そのまま閉じた。
後ろを振り向かず、そのままにただ、進み続ける。
名前など教える必要はない。

俺は、今もまだ俺の答えを捨てたくはないのだから。


――――ふと、いつかを思い出した。
青い青い夏の空。
汚物の壺を斬り開いた陽光の下の邂逅、出会い。
あの時も人間が、俺の背後に続いて歩いていた。

無為なことだ。やはり俺はどうかしている。
……いや。お前に狂わせられたようだ、ヴァッシュ。
人間の、それも死んだ男の事など思い返すとは。

なあ、どう思うんだろうな?
……お前の殺したあの男が、今の俺を見たのならば。

――既に亡き男の行動という、答えの出るはずのない問い。



【F-04研究所付近/森/1日目 深夜】

【チーム:12−3(トゥエルブスリー)】

【ミリオンズ・ナイブズ@トライガン・マキシマム】
[状態]:健康、黒髪化進行
[服装]:普段着にマント
[装備]:支給品一式、不明支給品×2
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:神を名乗る道化どもを嬲り殺す。その為に邪魔な者は排除。そうでない者は――?
0:――償う事など、何もない。
1:搾取されている同胞を解放する。
2:エンジェル・アームの使用を可能な限り抑えつつ、厄介な相手は殺す。
3:歩達がついてくるのを止めるつもりもないが、守るつもりもない。
4:レガートに対して――?
[備考]:
※原作の最終登場シーン直後の参戦です。
※会場内の何処かにいる、あるいは支給品扱いのプラントの存在を感じ取っています。
※黒髪化が進行している為、エンジェル・アームの使用はラスト・ラン(最後の大生産)を除き約5回が限界です。
 出力次第で回数は更に減少しますが、身体を再生させるアイテムや能力の効果、またはプラントとの融合で回数を増加させられる可能性があります。

51カタハネ -クロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/18(土) 18:32:36 ID:wycRPsV60
【西沢歩@ハヤテのごとく】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:五光石@封神演義
[道具]:支給品一式、大量の森あいの眼鏡@うえきの法則
[思考]
基本:死にたくない。ハヤテや知り合いに会いたい。
0:な、名前くらいは教えて欲しいんだけどな……。
1:……もう、レッドでいいや。
2:殺し合いって何?
3:ハヤテくんに会いたい。
4:とりあえず、平坂と二人きりは嫌。
[備考]:
※参戦時期は明確には決めていませんがハヤテに告白はしています。


【平坂黄泉@未来日記】
[状態]:健康
[服装]:烏避け用の風船の様なマスクと黒の全身タイツ、腰にはおもちゃの変身ベルト
[装備]:エレザールの鎌(量産品)@うしおととら
[道具]:支給品一式、正義日記@未来日記
[思考]
1:コノ怪シイ悪人ヲ監視スル!
2:悪ハ許サナイ!
3:弱キ物ヲ守ル!
4:シカシ、ドウシテ私ハ生キテイルノダロウ?
5:コレデメンバーガ三人揃ッタ!
[備考]:
※御目方教屋敷にて死亡直後からの参戦。

【正義日記@未来日記】
未来日記所有者12th、平坂黄泉の持つボイスレコーダー型の未来日記。
全盲の彼は己の善行を事細かに声という形で残していたため、ボイスレコーダーが未来日記となった。
道のゴミ捨てや老人の荷物持ちからカルト宗教討伐まで『正義』の内容は幅広いが、報告されるのはあくまで彼自身の解釈上での『正義』である事に留意する必要がある。
本来は90日先までの未来が記録されているが、今ロワでは見通せる未来が制限されている模様(詳細は不明)
また未来日記の例に漏れず、このボイスレコーダーを破壊した時点で平坂黄泉は死亡する。

52 ◆JvezCBil8U:2009/04/18(土) 18:33:10 ID:wycRPsV60
以上で投下終了です。

53 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/19(日) 01:18:15 ID:kSdBChBo0
規制されたので続き投下します。

死と向き合う者たち ◆lDtTkFh3nc

「じゃあ、おじさんも気をつけてな!あ、さっきは殴ってゴメン!でも、あんな言い方、もうやめた方がいいぜ。」
「あぁ、せいぜい気をつけるよ。おまえさんたちも気をつけてな。
 あんまりカリカリしなさんなよ。クックック。」
「うるっさい、死ね!大っ嫌い!」

最後まで騒々しく、バラバラに、3人の男達は別れた。

1人きりになり、ドクター・キリコは夜空を見上げて思う。
人はだれもいつか死ぬものだ。それが自然の摂理であり、抵抗するのは人間だけ。
だからキリコは殺す。自然に逆らい、苦しんでまで生きるくらいなら、いっそのこと穏やかな死を与えることが幸せだと信じている。

だが、だからこそ、こんな殺し合いは認めない。

(こんな事が自然な「死」なもんかね…これでも医者の端くれだ、命が消えるより、助かる方がずっと良いさ。)


この殺し合いの場でも、彼らの生き方は変わらない。

誰かを守れるなら、立って戦う、立ち向かう。それがどんなに苦しく、悲しい道でも…
迷い、悩み、素直になれないけれど…死んだように生きないために、満を持す。
望むのなら、辛いのなら、死を与える。その根底に、命を尊ぶことを忘れることなく。


彼らは出会えるだろうか。
自分の生き方を変えた、定めた、共に歩んだ…半身とも言うべき存在に…


【F-5/神社/1日目 深夜】
 【蒼月潮@うしおととら】
 [状態]: 健康
 [服装]:
 [装備]:エドの練成した槍@鋼の錬金術師
 [道具]:支給品一式 不明支給品1つ
 [思考]
 基本: 誰も殺さず、殺させずに殺し合いをぶち壊し、主催を倒して麻子の仇を討つ。
  1: 蝉と一緒に病院に向かい、ブラックジャックと会う。
  2: 病院にブラックジャックがいなかったら一旦神社に戻る。
  3: 殺し合いを行う参加者がいたら、ぶん殴ってでも止める。
 [備考]
  ※ 参戦時期は27巻以降、白面によって関係者の記憶が奪われた後です。流が裏切った事やとらの過去を知っているかは後の方にお任せします。
  ※ ブラックジャックの簡単な情報を得ました。
  ※ 悲しみを怒りで抑え込んでいる傾向があります。

54死と向き合う者たち ◆lDtTkFh3nc:2009/04/19(日) 01:19:36 ID:kSdBChBo0

 【蝉@魔王 JUVENILE REMIX】
 [状態]: 健康
 [服装]:
 [装備]: バロンのナイフ@うえきの法則
 [道具]:支給品一式 不明支給品1つ
 [思考]
 基本: 自分の意思に従う。操り人形にはならない。
  1: これが仕事なのか判断がつくまで、とりあえずキリコの依頼を受ける。
  2: うしおと一緒に病院を目指す。
  3: 襲ってくる相手は撃退する。殺すかどうかは保留。
  4: 市長を見つけたらとりあえずそっちを優先で守る…つもり。岩西がいたら…?
 [備考]
  ※ 参戦時期は市長護衛中。鯨の攻撃を受ける前です。
  ※ ブラックジャックの簡単な情報を得ました。


 【ドクター・キリコ@ブラック・ジャック】
 [状態]: 健康 ほほに殴られた跡
 [服装]:
 [装備]:
 [道具]:支給品一式 不明支給品2つ
 [思考]
 基本: いつも通り、依頼してくる人間は安楽死させる。かつ、主催者に一泡吹かせる。
  1: ブラックジャック探しと医療道具探しの為、診療所に向かう。
  2: ブラックジャックと会えたらうしおの事を伝え、神社で合流させる。
  3: 助かる見込みもなく、苦しんでいる人間がいたら安楽死させる。
  4: ただし、自殺志願者や健康な人間は殺さない。重傷者も、ある程度までは治療の努力をする。
   [備考]
  ※ 参戦時期は少なくとも「99.9パーセントの水」と「弁があった!」の後。
  ※ 「治療の努力」の程度はわかりません。彼の感覚です。



【エドの練成した槍@鋼の錬金術師】
国家錬金術師の試験等でエドワード・エルリックが練成した槍。
割と頻繁に練成している。しかし、特に秀でた力はなく、登場のたびに壊されているような気も…
彼が練成したものにしては比較的センスがいいと思うのだが…

【バロンのナイフ@うえきの法則】
ごく普通の軍用ナイフ。バロンは能力の基点として使ったが、これ自体に特殊な力は無い。

55死と向き合う者たち ◆lDtTkFh3nc:2009/04/19(日) 01:20:49 ID:kSdBChBo0
以上で投下終了です。
問題点ありましたらお願いします。

56 ◆H4jd5a/JUc:2009/04/19(日) 02:12:44 ID:RW1ozSEI0
【F-7/森/一日目深夜】
【浅月香介@スパイラル〜推理の絆〜】
【状態】健康、精神的疲労(小)、頭痛
【装備】なし
【所持品】支給品一式  ハヤテの女装服@ハヤテのごとく! メイドリーナのフィギュア@魔王 JUVENILE REMIX
【思考】
基本:亮子を守る。歩と亮子以外に知り合いがいるなら合流したい。
1:しょうがないので少女(宮子)の面倒を見る。学校に向かう。
2:ひとまず殺し合いには乗らないが、殺人に容赦はない
3:亮子が死んだら―――
4:殺し合いには清隆が関与している……?
※参戦時期はカノン死亡後

【ハヤテの女装服@ハヤテのごとく!】
ハーマイオニーのあれ。
可愛いだけで特殊効果はありません。

【メイドリーナのフィギュア@魔王 JUVENILE REMIX】
安藤兄のクラスメイト・要が好きなキャラクターのフィギュア。金髪おかっぱ眼帯メイド服。
ただのフィギュアだが、どうにも不気味な印象を与える。
余談だが、このフィギュア、コミック表紙にまでなっている。

【柳生九兵衛@銀魂】
【状態】健康
【装備】
【所持品】支給品一式  不明支給品0〜1 改造トゲバット@金剛番長
【思考】
基本:殺し合いには乗らない。
0:マップの東側に向かい、知り合いを探す
1:とりあえず新八と合流したい。
2:卑怯な手を使う者は許さない
3:妙ちゃんもこの会場に……?
※参戦時期は柳生編以降。

【改造トゲバット@金剛番長】
唐鰤 三信が使う釘バット。
改造済みなので普通の釘バットより威力はあると思われる。

57 ◆H4jd5a/JUc:2009/04/19(日) 02:13:38 ID:RW1ozSEI0


ああ、夢か。
少女・宮子が出した結論はそれだった。
きっと夢なんだ。
また屋根の上で寝すぎちゃったのかなー。
うん、きっといつかゆのっちが起こしてくれるさ。
だから、きっと夢。
そうじゃなくっちゃおかしいってば。
だって、人が死ぬなんてありえない。
あんなサツマイモみたいな髪をした人が現実にいるわけないって。
優しい人みたいなのは分かったけど。

彼女は、どこまでもマイペースに思考する。
真に彼女はそう思っているのか、それともただの現実逃避なのか。
それは、おそらく彼女にしか分かるよしもない。

ああ、でも次に見るなら、もっといい夢が見たいよ。
ヒロさんと沙英さんとゆのっちと三人で、落書きする夢がいい。
そう願いながら。
宮子は再びの眠りについた。

その『夢』から、彼女はいつ目覚めるのだろうか?

【宮子@ひだまりスケッチ】
【状態】健康、ZZZ
【装備】なし
【所持品】支給品一式  不明支給品1〜2 
【思考】
基本: ???
1:ZZZ……お腹空いたあ……
2:これって夢の中だよね?

※現実をいまいち理解していません。目覚めた後に考え方が変わるかもしれません。

58 ◆H4jd5a/JUc:2009/04/19(日) 02:14:51 ID:RW1ozSEI0
投下終了です。
何か指摘ありましたらお願いします。

……さるったOTL

59 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:46:16 ID:9o5UxPTU0
「何故あやつらはこのようなことをする?」

太公望は、何故申公豹が殺し合いを開催したのか理解できなかった。
彼は道化師のような格好を悪く言う者を嫌う、一風変わった美学の持ち主である。
だが、彼の美学が無力な女子供に殺し合いをさせることになるのは、彼の性格上考えられない話である。
仮に殺し合いをさせることを美学としても、自分でわざわざ大掛かりなことをすることも考えられないのである。
封神計画のときもそうであった。彼は殷や周の双方に助言や忠告をする程度で、仙界大戦や牧野の戦いのような大規模の戦いのときも傍観者という立場にいた。
そのため、突然殺し合いを開催すること自体何か裏がない限り信じられないことである。
しかし、彼は常に傍観者の位置にいたため、彼との深い関わりが分からない。結局、結論が出ないままである。

「……とりあえず移動するかのう」

申公豹に対する考察を終了して移動しようと立ち上がった。だが、すぐに動こうとはせず、近くにある木のほうを振り向いた。

「おぬしがそこにいるのは最初から分かっておる。姿を現したらどうじゃ?」

60 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:47:40 ID:9o5UxPTU0

太公望は、自分の後ろにいる人物に語りかけた。
すると、木の陰から一人の少年がでてきた。少年は自分と同じくらいの背丈で、顔つきはどことなく女の子ともとれるような顔であった。

「よく分かりましたね、音は立てないようにしたんですけど」
「姿が見えずとも気配だけで感じていたぞ」
「そうですか。ところでその声、もしかして……」
「いかにも、わしの名は太公望。このようなふざけたことには乗っていないから安心していいぞ」
「僕の名前は綾崎ハヤテです。僕もこの殺し合いには乗っていません。よろしくお願いします」



情報交換を済ませた二人は、近くにある博物館を目指して歩いていた。
二人とも他の人に会うのが目的で、建物に人が集まると考えていたからである。
そのうえ、博物館はいろいろなものが展示されているため、有力な情報が手に入れやすいのである。

61 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:48:31 ID:9o5UxPTU0
(あの人、何か胡散臭いんだよな、そもそも二千年以上も前の人なんて……。でもこの状況だし、信じるしかないのかな。)
ハヤテは、中国の周という時代から来た道士である太公望の話が信じられなかった。
彼を疑っているわけではないが、古代の中国にも関わらず、現代技術を超越する技術のようなものが存在しているなどという話を信じることは出来なかった。
もしこのような状況でなかったら、彼は太公望のことを「頭のかわいそうな人」と思っていただろう。

(それにしても、最初に会った人があのピエロみたいな人の知り合いだなんて……。)
ハヤテは運命と戦う決意をした後、とりあえず他の人に会うため、一番近い建物である博物館を目指して歩いていた。その途中で太公望を見つけたのだ。
だが、その男が殺し合いに乗っていて襲い掛かってくる可能性も否定できなかった。そのため、近くにある木の陰に隠れていたのだ。すぐに見つかってしまったが。
まさか主催との関係者とは思ってもいなかった。情報交換の際にそのことも聞いてみたが、特に有力な情報はなかった。

(……とはいえ、武器が手に入ったのは良かったな。あのままじゃ、戦うこともできないし。)
ハヤテの手には一つの木刀が握られており、柄の部分に『洞爺湖』と書かれている。
その木刀は太公望に支給されたものであるが、武器を持っていないというと、その木刀を渡してくれたのだ。
その代わりに自分に支給された手配書の一枚を太公望に渡した。一人で捕まえるのは難しいので、協力してもらうためである。
また、600億という大金なので、半分に分けても問題ないだろうと判断したからでもある。

(でも大丈夫かな、あんな丸腰で。)
武器である木刀をハヤテに渡してしまったので、太公望の手にはボールのようなものしかない。それでも、太公望は「問題ないぞ」といって渡してくれた。
……気にする必要はないか。ハヤテはそう結論付けた。

62 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:49:17 ID:9o5UxPTU0


(……まさかわしにこのようなものが支給されるとは。)
太公望は、両手にあるボールのようなものを見つめながら歩いていた。だが、それは彼がよく知っている人物のものだった。
このボールのようなものは『太極符印』という元素を操る宝貝である。状態変化や化学反応、挙句の果てには核融合も可能とする、ある意味危険な宝貝でもある。
この宝貝の持ち主は崑崙十二仙の一人、普賢真人であり、太公望のことを「望ちゃん」と呼ぶほどの仲である。
だが、普賢真人はすでに死んでおり、『太極符印』もそのときに自爆したはずである。
最も多くの仙道が死亡した仙界大戦によって。

(そういえばあやつは話し合いで解決しようとしておったな。)
彼は戦いというものを嫌っており、話し合いによって解決策を出そうとしていた。
もし彼がこの状況に巻き込まれたら、同じようなことをしているのだろうか。そう考えると少し笑みがこみ上げてくる。

(だが、わしにはそのようなことは出来ぬ。わしはわしのやり方でやらせてもらうぞ、普賢。)
太公望は大した才能を持ち合わせていないありきたりの道士である。そんな彼が主な武器としているのが策略である。
これによりこれまでの妖怪仙人との戦いや殷郊との戦いを制してきたのだ。そして、この殺し合いでも策略で乗り越えるつもりでいる。
だが、彼は多くの仙道とは戦ってきたが、申公豹とは本格的に戦ったことはない。当然、勝つ確証などない。
そして、そこに至るまでに多くの犠牲があるのかもしれない。

(それでもわしがやらねばならぬ。覚悟しておれ、申公豹!)
これまで多くの犠牲を目の当たりにした道士、太公望。
彼の戦いが今、ここから始まった。

63 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:50:06 ID:9o5UxPTU0

【B-8/西部/1日目 深夜】

【太公望@封神演義】
[状態]:健康
[装備]:太極符印@封神演義
[道具]:支給品一式、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×1@トライガン・マキシマム
[思考]
基本:殺し合いを潰し、申公豹を倒す。
1:ハヤテと行動する。
 2:博物館へ向かい、有力な情報を探す。
[備考]
 ※殷王朝滅亡後からの参戦です。
 ※手配書は渡されただけで詳しく読んでいません。
※ハヤテと情報交換をしました。

【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]:健康
[服装]:トレーナーとジーンズ(第1話終了時の服装です)
[装備]:銀時の木刀@銀魂
[道具]:支給品一式、若の成長記録@銀魂、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×2@トライガン・マキシマム
[思考]
基本:運命と戦う、当面は殺し合いには乗らない
1:とりあえず太公望と行動する
 2:博物館へ向かい何か使えそうな道具を手に入れる
 3:西沢さんを含めた友人達が心配
 4:出来ればヴァッシュを捕まえて賞金を手に入れたい
 5:少年(火澄)の言っていた『歩』は西沢さんなのか、東城歩って人のことなのか、それとも他の歩という名前の人なのか……?
 6:金髪でツインテールの少女(ナギ)が心配
[備考]
 ※第1話直後からの参戦、つまりまだナギの執事となる前です。
 ※参戦時期からわかる通り、西沢・ナギ以外のハヤテキャラとの面識はありません。また、ナギも誘拐しようとした少女としか認識していません。
 ※太公望と情報交換をしました。また、その際に封神演義の世界についておおまかなことを聞きました。ただし、そのことについては半信半疑です。

【銀時の木刀@銀魂】
銀時がいつも通販で購入する愛用の木刀。柄の部分に『洞爺湖』と書かれている。

【太極符印@封神演義】
崑崙十二仙の一人、普賢真人の宝貝。元素を操ることが出来る。

64 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:50:41 ID:9o5UxPTU0
以上で、投下終了です。

65 ◆03vL3Sy93w:2009/04/19(日) 11:53:00 ID:9o5UxPTU0
失礼しました。タイトルを載せるのを忘れてしまいました。
タイトルは「序章の始まり」です。

66 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:02:02 ID:kSdBChBo0
由乃、鳴海歩、安藤兄を仮投下します。

67 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:02:42 ID:kSdBChBo0
ユッキー
ユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキー
ユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキー
ユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキー…




実に52回。B-6の道路を走る我妻由乃が一分間に頭の中で彼の名前を呼んだ回数である。
これは彼女が特別優れている訳ではなく、誰もが1人の人間を頭の中でひたすら呼び続ければこうなるだろう。
とはいえ、普通は1人の人間にここまで執着することが難しいのだが…
彼女の、ユッキーこと天野雪輝への愛はそんなことはものともしない。

そんな彼女が、今一生懸命に走っているのは、他でもないユッキーを見つけるためだ。
こんな殺し合いの場で、彼がいつまでも生きていられる保証は無い。
早く自分が見つけて、守ってあげなければ。そうだ、自分が守るんだ。
だってユッキーと私は恋人同士、うぅん、それ以上。家族、そう家族だもの。
守るんだ、ユッキーを、大好きなユッキー、いつでも優しいユッキー、側にいたい、ずっとずっといつまでも…
ユッキーを守れるのは私だけ、私が守るんだ、ユッキーを、大好きユッキー…
ユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキーユッキー…

68 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:05:24 ID:kSdBChBo0

ふと、そこで足を止める。一刻も早く彼を見つけたいが、この広い会場で闇雲に走っても非効率的だ。
なんとしても彼を守る、その一心で彼女は脳内を冷やし、解決策を練る。
そうだ、私の手元には「日記」がある。
ユッキーの行動を逐一記録し続けた「雪輝日記」。彼への愛の結晶。二人を繋ぐ絆の証。
それも、ただの日記ではない。記している内容の未来が読める「未来日記」だ。これがあれば、ユッキーを探すのも容易い。
言ってしまえば、彼の未来はすべて自分の手の中にあるといっても過言ではないのである。
しかし、忌々しいことにこの日記も今はまだ読むことが出来ない。彼と再会するまで使用できないという制限が課されたのだ。
だが、制限されたのは「日記」の能力のみ。
そして、彼女や天野雪輝が持つ未来日記は、俗に言う「ケータイ」に記録されていた。


    ◇     ◇     ◇

場所は変わってD-9教会の中。主催者との対決を決意した二本の剣が、支給品の確認を済ませていた。

「さて、まず最優先で考察すべきは、これだろうな。」

もみあげが特徴的な少年、鳴海歩がそう言って掲げたのは、携帯電話だった。

「だろうな。」

向かいに座る安藤も異論は無いとうなずく。
勘違いしないで欲しい。彼らとて少々変わってはいるが現代を生きる男子高校生。携帯電話くらい知っているし、特に珍しくもない。
今は没収されているようだが、自分用の携帯電話だって持っている。
考察すべきは、そこに添えられていた説明書だった。


【無差別日記】
1st天野雪輝の未来日記。
彼が見たもの、聞いたこと、あらゆる周囲の出来事の未来が書き込まれる。
あくまで傍観者である為、天野雪輝自身の未来は記録されない。
使用するためには、一度本人の手元に渡る必要がある。


これがその全文だった。

69 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:06:11 ID:kSdBChBo0

「ほんと…かなぁ」
「一応それらしい機能があるんだが、ロックがかかってる。そこの注意書きと同じ文章が出てくるよ。」

そういって歩は『日記』を安藤に投げ渡した。

「…ほんとだ。となるとやっぱり本当だと判断すべきか…けどもし…」
「ストップ。現状でそれ以上考えても無駄だ。今は両方の可能性を踏まえて考察しよう。まず、本当だった場合だ。」

安藤の考察を遮り、歩が議論の方向性を戻す。安藤も一端そちらの考察を打ち切った。

「その場合、これは『天野雪輝』に渡すべきか否か。答えは『彼次第』、だな。」
「あぁ、もしこの殺し合いに乗っているんなら、絶対に渡しちゃいけない。逆に反撃するつもりなら、これを届ければ戦力になってもらえる。」

『天野雪輝』がどんな人物かわからない以上、この使い方次第では最強ともいえるアイテムの処遇は決められない。それが二人の結論だった。
情報、特に未来の情報というのは最強の武器であると主張する人間もいる。
それだけの価値が、この支給品にはある。

「この1stってのも気になるな。確か最初の説明の時に…」
「あぁ、呼ばれていた。かなり今回の殺し合いに深く絡んでいるのかも知れないな。コイツは。
 さて、次はこれが偽者の場合だが…」

ブルルッ

そこで『ケータイ』が着信を知らせる振動を起こす。
さすがに二人とも驚いて目を合わせる。どちらともなく頷きあうと、手に持っていた安藤が『ケータイ』に出る。

「も、もしもし…?」

70 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:06:42 ID:kSdBChBo0
    ◇     ◇     ◇

『も、もしもし…?』

ユッキーじゃ、無い。
もちろんこの可能性を考えていなかった訳じゃない。
自分の「日記」とて最初から自分に支給されていたかはわからないのだ。
彼の日記が本人に支給されている保証なんて無かったし、本人支給だったとしても、
危険人物に拘束され奪われていることも考えられる。
だから、電話の向こうの声が愛しい彼の声でなくても冷静に対処する…つもりだった。
だが無理だった。大好きな彼の大事な大事な「未来日記」を、見知らぬ人間が使っているというだけで耐え難い怒りが湧いてきた。

「だれ…あんた。どこにいるの?」
『え、あ、ここは、教会だけど…俺は安…』

そこで相手が電話をひったくられたらしく、会話の相手が変わった。

『失礼、俺はミズシロ・ヤイバ。さっきのヤツは安西。あんたは?』
「どうでもいいでしょ。あんたたちが何でユッキーのケータイを持ってるの?」

相手が変わったのでもしや、と思ってしまったことが、彼女の怒りに拍車をかける。

『すまない、これは俺たちのバッグの中に支給されていた。持ち主は今近くにいないと思う。信じてくれ。』

信じるもなにも、と由乃は思った。
電話の向こうから、彼の声は聞こえない。捕まっているとしても、なんらかの動きを示すだろう。
ユッキーの出す声や音を、自分が聞き逃すことはありえない。
実は、彼が電話の向こうですでに殺されている場合がありえるのだが、彼女にとってそのような未来は絶対にあってはならないこと。
そんな思考になることこそありえない。

71 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:07:21 ID:kSdBChBo0

『俺たちはこれを持ち主に届けたいと思っている。「とても大事なもの」だろうからな。
 少し情報交換をしないか?その感じだとあんたもまだ持ち主の「ユッキー」ってヤツとは会えてないんだろ?』
「…ユッキーはすぐ私が見つける。あんたらが探す必要なんてないから。」

痛いところをつかれ、更に苛立ちが増す。だが、今はそんなことで冷静さを欠いてる場合ではない。
必死で頭を冷やし、今時分がするべき行動を考える。だが、先手を打ってきたのは相手のほうだった。

『そうか。なら、提案がある。こいつは俺たちが責任もって預かる。
 変わりにあんたが「ユッキー」とやらを見つけたらこいつに連絡してくれ。そこで合流場所を決めて渡す。
 下手に合流優先で動き回ると手遅れになりかねない。あんたもそれは御免だろう?』

相手の提案に先をいかれたのはまずかったが、内容は悪くなかった。
話の感じからして、このミズシロという男は殺し合いにのっていないらしい。
少し考え、返答する。

「いいよ、それで。そのケータイ、失くさないでよ?」
『あぁ、わかってる。じゃあ電池ももったいないし、切るぞ。』

話しもまとまり、相手が電話をきろうとする。

72名無しさん:2009/04/24(金) 20:07:53 ID:kSdBChBo0
「待って。そっちも誰か探してる人間がいるなら、聞いておいてあげる。」
『…それはありがたいな。なら竹内理緒ってヤツに会ったら、俺が参加していること伝えてくれ。
 ついでに「落ち着いて、冷静に考えろ」と。』
「…そいつになら会った。競技場にいるから会いに行けば?」

嫌な名前を聞いた。こいつ、あの女の関係者なのか。

『…そうか。ありがとう。また会うようなことがあれば伝えてくれ。「安西」、お前は誰かに伝言はあるか?』

電話口の相手が黙る。同行者の伝言を聞いているのだろう。程なくして、答えが返ってきた。

『…それでいいんだな?じゃあ潤也、って名前の男に会ったら、伝えてくれ。
 「流されるな、考えろ」とな。』

その時、電話の向こうから何かの爆発音が聞こえた。

「なに、今の?」
『わからない。近くで爆発が起こったようだが…危険人物が近づいてるのかもしれない。
 移動するから切らせてもらうぞ。』
「わかった。じゃあね。」
『あぁ、そっちも…』

プツン

通話終了を継げている画面を見つめて、由乃は考察を開始する。
今の電話でわかったことは、ユッキーの未来日記が他人の手にあること。
そしてその機能を相手が一部理解しているらしいことだ。
ミズシロはユッキーのケータイを「とても大事なもの」と表現した。この命のかかった状況で、ただの電話ならこんな言い回しはしない。
自分の未来日記同様、制限や機能に関しての何らかの注意書きが添えられているのかもしれない。あるいは制限が無く既に使えるのか…
だが、相手は多分未来日記のもう1つの重要な秘密には気づいていない。

73 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:09:33 ID:kSdBChBo0
トリ忘れ失礼しました。改めて

「待って。そっちも誰か探してる人間がいるなら、聞いておいてあげる。」
『…それはありがたいな。なら竹内理緒ってヤツに会ったら、俺が参加していること伝えてくれ。
 ついでに「落ち着いて、冷静に考えろ」と。』
「…そいつになら会った。競技場にいるから会いに行けば?」

嫌な名前を聞いた。こいつ、あの女の関係者なのか。

『…そうか。ありがとう。また会うようなことがあれば伝えてくれ。「安西」、お前は誰かに伝言はあるか?』

電話口の相手が黙る。同行者の伝言を聞いているのだろう。程なくして、答えが返ってきた。

『…それでいいんだな?じゃあ潤也、って名前の男に会ったら、伝えてくれ。
 「流されるな、考えろ」とな。』

その時、電話の向こうから何かの爆発音が聞こえた。

「なに、今の?」
『わからない。近くで爆発が起こったようだが…危険人物が近づいてるのかもしれない。
 移動するから切らせてもらうぞ。』
「わかった。じゃあね。」
『あぁ、そっちも…』

プツン

通話終了を継げている画面を見つめて、由乃は考察を開始する。
今の電話でわかったことは、ユッキーの未来日記が他人の手にあること。
そしてその機能を相手が一部理解しているらしいことだ。
ミズシロはユッキーのケータイを「とても大事なもの」と表現した。この命のかかった状況で、ただの電話ならこんな言い回しはしない。
自分の未来日記同様、制限や機能に関しての何らかの注意書きが添えられているのかもしれない。あるいは制限が無く既に使えるのか…
だが、相手は多分未来日記のもう1つの重要な秘密には気づいていない。

74 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:09:51 ID:kSdBChBo0

未来日記が壊されると、その持ち主も死んでしまうということ。

これが由乃にとって最大の心配事だった。
いくら自分がユッキーを守ろうと、未来日記が壊されたら彼は死んでしまう。それだけは絶対にダメだ。
すぐに奴らのいるという教会に向かうことも考えたが、場所が少し遠い。間に合わないだろう。合流を持ちかけても、時間がかかるのは間違いない。
なにより、最優先はユッキーとの合流だ。
幸いなのは、おそらく奴らはこの事実には気がついていないことだ。
相手の話しぶりや、ケータイの受け渡しではなくユッキーの捜索を優先したこと。
それらを総合的に考えて未来日記の能力はまだ使えないし、破壊=死の法則も気がついていない。
だから、大事に扱うように誘導すればユッキーの身に危険が及ぶ可能性は少ない。彼らの探し人を聞いたのは、その為だ。
彼らが少しでもこちらとの連絡手段を失いたくないと思うことで、ユッキーの未来日記の、つまりは彼自身の命の安全に繋がる。
それでも彼ら自身の安否などの不安は尽きないが、やはりユッキーとの直接の合流が優先だ。
由乃自身の未来日記が使えるようになれば、ユッキーの未来日記に迫る危険も自然と察知できる。そうすれば対処もしやすい。

75 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:10:23 ID:kSdBChBo0

とにかく、今はユッキーを探すんだ。そう思い、再び走り出そうとする。
そこでふと、何かにひきつけられるように向く方向を変えた。
その方向をじっと見つめて、呟く。

「ユッキー…」

理由なんて、考える必要すらない。ただ、その言葉で十分だった。
この方角に、彼はいる。
なんの確証も無かったが、彼女は迷わず方向転換し、走り出した。
どこかの『少女』が見たら言うだろう。

『恋する乙女の直感ですね☆』


【B-4/道路/一日目 深夜】

【我妻由乃@未来日記】
 [状態]:健康
 [服装]:やまぶき高校女子制服@ひだまりスケッチ
 [装備]:雪輝日記@未来日記、降魔杵@封神演義
 [道具]:デイパック、基本支給品
 [思考]
  基本方針:天野雪輝をこの殺し合いの勝者にする。
  1:ユッキーを探す。強力な武器の入手。
  2:ユッキーを見つけたらユッキーの未来日記に連絡し、現在の持ち主と接触。なんとしても取り返す。
  3:ユッキーの生存だけを考える。役に立たない人間と馴れ合うつもりはない。
  4:邪魔な人間は機会を見て排除。『ユッキーを守れるのは自分だけ』という意識が根底にある。
  5:『まだ』積極的に他人と殺し合うつもりはないが、当然殺人に抵抗はない。
  6:ミズシロと安西の伝言相手に会ったら、状況によっては伝えてやってもよい。
 [備考]
  ※原作6巻26話「増殖倶楽部」終了後より参戦。
  ※制限により、由乃の「雪輝日記」が使用可能になるのは彼女が次に天野雪輝と再会して以降。
   また能力自体に他の制限が掛かっている可能性も有り。
  ※電話の相手として鳴海歩の声を「ミズシロ・ヤイバ」、安藤兄の声を「安西」として認識しています。
  ※彼女がどの方角に走り出したかはお任せします。

76 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:11:10 ID:kSdBChBo0

    ◇     ◇     ◇

「とまぁ、こんな感じだろう。」

謎の爆発音を警戒して教会から離れる道中で聞いた鳴海歩の考察に、安藤は感心していた。
よくもまぁ、あれだけの電話でそこまで考えられるものだ。
歩が話した内容はざっとこんな感じである。

・言動などから考えて、相手は殺し合いも辞さないような考えを持っている。
少なくともユッキーという人物(おそらく天野雪輝)に対して執着とも言える強い感情を抱いている。

・こちらでした爆発音が、電話の向こうでは聞こえなかったし、相手も聞いていない。電話相手の現在地はそれなりに遠い。

・ただの電話に使った「とても大事なもの」という表現に何の反応も示さなかった。おそらく電話相手は未来日記について何らかの情報を持っている。

・「1st」や天野雪輝「の」未来日記という表現から、未来日記という道具が複数ある可能性がある。
上記のことと合わせて、電話相手が別の未来日記の所持者である可能性もある。

・相手がこちらの探し人を訪ねてきたのは、おそらくこちらとの繋がりを絶たないようにするため。
この未来日記はメリット以上にどうしても失うわけにはいかない理由があるらしい。

加えて、携帯電話の登録情報から相手の名前が「ユノ」というらしいことだけわかった。
名簿が無い以上確認しようが無いが、女性であることも間違いなさそうなので、多少は判断の材料になるだろう。

77 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:11:49 ID:kSdBChBo0
「彼女が危険人物であることは間違いないだろうが、天野雪輝までそうと判断するにはまだ早い。
 彼との接触の為にも、この携帯は手放すわけにはいかないな。多少のリスクは背負うが、それくらいしないと戦えそうにない。」

安藤もそこに異論は無かった。今の話からするとこの未来日記の信憑性はかなり高まる。
だとすれば、味方にできればとてつもなく頼れる力だ。

「しかし、鳴海。本当によくそれだけのことがわかるな。」

安藤の感心の言葉に、歩は照れもせずに返した。

「わかったわけじゃない。穴だらけの推論さ。それにアンタも十分頭は回ってるじゃないか。
 探し人の情報を聞いたとき、フルネームでなく名前だけ伝えた。遠まわしに危険も伝えてある。」

歩自身も理緒に混乱を与えない為に死人の名前を語り、落ち着いて考えろというメッセージを添えた。
安藤もそれにすぐ気がついて彼女に自分や知り合いが危険になるような情報は洩らさなかった。

「あぁ、苗字を伏せたのはそうだけど、メッセージはその、本当に伝えたかったんだ。
 いるかはわからないし、いないでほしいけど、もし潤也がいるなら…状況や周りに流されておかしな行動をとって欲しくない。」

安藤が伝言を託したのは唯一の肉親である弟、安藤潤也だった。
彼は自分と違って楽観的で、前向きな男だ。とてもこんな殺し合いに乗るとは思えない。
だが、人間心理の恐ろしさなどは、自分もよく知っている。
一人の人間の言葉が、別の人間の生き方を180度変えてしまうこともある。
そんなことになっていないことを祈るばかりだ。

78 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:12:14 ID:kSdBChBo0

「さて、これからどうするかな。理緒を探しに競技場に行ってもいいが、アイツも一箇所に長々と留まっているとは思えない。
移動中にユノと遭遇する危険性もある。できるだけ別の場所がいいだろう。
となると、人の集まりそうな病院がデパート…あるいは警察署か。近いところだと工場かな。なにか案はあるか?」

歩の質問に、安藤は少し考え込むと、1つの提案をしてきた。

「神社…はどうかな。最初の説明の時、ヤツら神がどうこう言ってたろ?かなり核心に近そうな所で。しかも「もういない」とか、「別の神」とか…。
 表現からすると一神教の神だ。そこへもってきて、会場の中央に神社がある。何か妙だと思う…」

やや自信なさげな安藤だったが、歩は真剣に考察する。

「面白い考えだな。その発想は無かった。やっぱりアンタも十分すごいよ。」

歩が顔を上げ、夜空を見上げながら続ける。

「このゲーム、殺し合いに乗っている強者なら人の多い場所に行くのが当然。あるいは武器の入手が優先だろう。
生き残りを求める弱者も同じ。道具の確保と人との接触が最優先。
それをしないでなんの関係も無い施設に行くやつは、よほどの馬鹿か殺し合いからの脱出を考えている奴の可能性が高い。そういう意味でも、神社は悪くないな。」

本来なら、弱者を救う為にそういった危険地帯に飛び込むべきなのかも知れない。一瞬そう考える。
歩も同じ事を考えたのだろう。

「生憎俺たちの手元には戦える武器も情報も無い。
本物なら唯一使えそうなこの『バラバラの実』ってのも、川や湖が点在して周囲を海に囲まれたこの会場で脱出を目指すなら、リスクが高すぎる。
なら、今は俺たちに出来ることをするのが一番だ。」

その言葉に安藤も頷き、方針が固まる。
今自分に出来ること…ちっぽけな自分になにが出来るかはわからないが、今はこの鳴海について行こう。
魔を断つ剣は、まだその役割に気がつくことなく刃を磨く。

79 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:12:36 ID:kSdBChBo0
【E-9/北部/1日目 深夜】

【安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:健康
[服装]:猫田東高校の制服(カッターシャツの上にベスト着用)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、バラバラの実@ONEPIECE 不明支給品×1(確認済み)
[思考]
基本:脱出の糸口を探す。主催者と戦うかはまだ保留
1:神社を目指す。そこで主催に関する情報と脱出を目指す人間を探す。
2:ユノから連絡があれば天野雪輝と接触し、危険人物でなければ日記を渡して協力する。
3:首輪を外す手段を探す。できれば竹内理緒と合流したい
 4:殺し合いに乗っていない仲間を集める
 5:殺し合いには乗りたくない。とにかく生き残りたい
 6:潤也が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※ 第12話にて、蝉との戦いで気絶した直後からの参戦です
※ 我妻由乃の声と下の名前を認識しました。警戒しています。
※ 無差別日記の効力を知りました。

【鳴海歩@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]:健康
[服装]:月臣学園の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、無差別日記@未来日記 不明支給品×1 (確認済み)
[思考]
基本:主催者と戦い、殺し合いを止める
 1:神社を目指す。そこで主催に関する情報と脱出を目指す人間を探す。
 2:ユノから連絡があれば天野雪輝と接触し、危険人物でなければ日記を渡して協力する。
 3:首輪を外す手段を探す。できれば竹内理緒と合流したい
 4:殺し合いに乗っていない仲間を集める
 5:何故主催者達は火澄を殺せたのか? 兄貴は何を企んでいるのか?
 6:「爆弾を解除できるかもしれない人間である竹内理緒が呼ばれている」という事実が、どうにも引っかかる
[備考]
 ※第66話終了後からの参戦です。自分が清隆のクローンであるという仮説に至っています
 ※オープニングで、理緒がここにいることには気付いていますが、カノンが生きていることには気付いていません
 ※主催者側に鳴海清隆がいるかもしれない、と思っていますが、可能性はそう高くないとも思っています
 ※我妻由乃の声と下の名前を認識しました。警戒しています
 ※無差別日記の効力を知りました。

【無差別日記@未来日記】
1st天野雪輝の未来日記。
彼が見たもの、聞いたこと、あらゆる周囲の出来事の未来が書き込まれる。
あくまで傍観者である為、天野雪輝自身の未来は記録されない。
制限の為、使用するためには、一度本人の手元に渡る必要がある。
また、開放された後も本来の機能を有しているか、破壊されると持ち主が死亡するかもまだ不明。
他の連絡先などが記録されているかも不明。

【バラバラの実@ONEPIECE】
食べると体をバラバラにし、足を中心とした一定範囲内で操ることができる悪魔の実。その為斬撃は無効。また、食べると一生カナヅチとなる。
ただし、移動範囲やどの程度バラバラになれるかなどは制限されている可能性がある。
本来ならぶつ切り程度までバラバラになれる。作中では道化のバギーがその能力者。

80 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:14:52 ID:kSdBChBo0
以上です。
本スレに投下しなかったのは、以前チラっと話題になった無差別日記を他人に支給するのがOKかどうかが第一です。
あと、携帯で通話しちゃうのもありかとか…もちろん他にも指摘があったらお願いします。

81 ◆lDtTkFh3nc:2009/04/24(金) 20:26:26 ID:kSdBChBo0
タイトル忘れてた。「電波は電波にのって」です。

82 ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:02:56 ID:kbP/GsaA0
仮投下お疲れ様です、この場を借りて感想を。

頭脳派コンビと由乃の歪みっぷりの対決、いやあ素晴らしいですw
雪輝は自分の命が見えないところで握られている事を知ったら気が気じゃないだろうなあ。
不幸中の幸いは無差別日記を手に入れたのがこの二人である事ですか。
しかし偽名は多分判断ミスだ、由乃は容赦がないぞー……w
ミズシロヤイバと安西が名簿にいないことを知ったときの反応がガクブルものですw


そして、自分も投下を。
アクセス規制に巻き込まれたのでこちらに投下します。
どなたか本スレに代理投下してくだされば幸いです。

83アン学アニメ化決定記念巻頭フルカラー大増200P号! ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:06:21 ID:kbP/GsaA0
みんな! 元気にしてるかい?
大変なことになってるけど、それでもオレは相変わらず元気だぜ!

「うっわあ、参ったぞ! まさか転校早々にバトルロワイアルに巻き込まれるなんて!」

オレの名前は夢小路サトル、ハプスブルグ家の血を引く生粋の江戸っ子(元仏貴族)さ!
ワールドカップを目指すどこにでもいる男子高校生だけど、たくさんのライバルに囲まれて非日常な毎日を送ってる!
やれやれ、アンニュイ学園は地獄だぜ、フゥハハ〜!

「目指せ甲子園のスローガンでようやく不良のバドミントン部の人たちと応援団になれたってのに、すぐにこんな事になるなんて困った事だなぁ!
 はやく帰らないとユミコが家の前で素振りを続けているはずだ!
 北海道名産の『パンチラ』がタダで鑑賞し放題になってしまったら、相馬くんが『パンチ』ド『ラ』ンカーになってしまうに違いないぞ!
 ん? あれはなんだ!?」

「ゾッフィー! ゾフィ、ゾフィ、ゾッフィー!(ゲボッ)」

鳥のようなひょろ長い生命体が口から謎の汁を吐いている!

「とても気持ちの悪い生物! そうだ、ボールは友達、何でも試してみるのさ」

くらえ、シングルスカイラブハリケーンッ!
ッ、がポイントのスーパードリブルさ!

「ゾッフィ〜〜〜〜〜〜!」

直撃!
ん!? 何故かこっちに向かってキリモミ回転んをぉおぉおおお!

「ゾッフィ〜〜〜〜〜〜!」

ごっちーん!

「いててててて、失敗したなあ」
「ゾッフィー?(ゲボッ)ゾフィゾフィゾフィ!!」
「やあごめんごめん! 君も参加者だったのか! よし、お詫びにチームを組もう!」
「ゾフィ!」

そうしてオレたちはチームを組んだのさ!

「ゾフィ? ゾフィ……、ゾフィゾッフィ!」
「やはりスープーくんもそう思うのかい!?」
「ゾフィ〜〜〜、ゾフィ」
「その通り! ピンクの象は青い鳥だってオレは信じてる!」
「ゾフィ!(ゲボッ)」

出会ってすぐに百年来の親友より深い絆を築くオレ達!
自分の出会い運が恐ろしいぜ!

84アン学アニメ化決定記念巻頭フルカラー大増200P号! ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:06:52 ID:kbP/GsaA0
「ゾ……ッフィ〜! ゾフィ!」
「ミックスベジタブルの豆がマズくて嫌いなのは分かった、だがオレは鯨カツの方が好きなんだ!」
「ゾフィ〜……!(ゲボッ)」 
「S県の煎餅の町も嫌い? オレは生協に組み込まれたくない!」
「うはー、もれには何言ってるかわかんねっす」
「ゾッフィー……」
「ドンマイさ!」

いつの間にか一人増えてるぞ、だがそれがいい!
友達たくさんで今日もハッピー×2ダンス!

「よし、みんなでオフサイドの練習だ!」
「ゾフィ!」
「よく分かんないけど、もれ神さまの為にがんばるっす!」
「結城くん結城くん結城くん結城くん結城くん……」

おっと、可愛い女の子もいつの間にか増えてるぞ!

「結城夏野くんはドコッ!? 教えてくれなきゃ血をひでぶっ!」

ぎゃあ! 女の子の頭が弾けたぞ!
驚いている間に声がしたのでそっちを向くと、銃を構えた優しそうなお兄さんが立っていた!

「危なかった、そいつは起き上がりなんだうわらば!」

ぎゃあ! お兄さんの頭が弾けたぞ!
驚いている間に声がしたのでそっちを向くと、銃を構えた不気味なお兄さんが立っていた!

「あ、危なかったね、そいつは起き上がちにゃ!」

ぎゃあ! お兄さんの頭が弾けたぞ!
驚いている間に声がしたのでそっちを向くと、銃を構えたダンディなお医者さんが立っていた!

「……危なかったな、そいつは起きばわ!」

ぎゃあ! お医者さんの頭が弾けたぞ!
驚いている間に声がしたのでそっちを向くと、銃を構えたお坊さんが立っていた!

「間違えました、そいつは起き上がりではない」


そして世界は核の炎につつまれた!!!!!


【夢小路サトル@国立アンニュイ学園 死亡】
【四不象@異説・封神演義 死亡】
【シオ@W?qw?q 死亡】
【清水恵@屍鬼 最初から死亡済】
【武藤徹@屍鬼 最初から死亡済】
【村迫正雄@屍鬼 最初から死亡済】
【尾崎敏夫@屍鬼 死亡】
【室井静信@屍鬼 死亡】

85アン学アニメ化決定記念巻頭フルカラー大増200P号! ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:07:39 ID:kbP/GsaA0
だが……人類は死滅していなかった!!

「NOォ――――――――ッ!」
「あぁ……っ、素晴らしい地獄絵図だわ大統領! さあテツ、貴方の灯火が輝く様を見せて頂戴……!」


【NO-13/上空・プラグマティズム艦橋/1日目 深夜】

【NO!と言える日本国大統領デューイ@サクラテツ対話篇】
[状態]:健康
[服装]:スーツ
[装備]:旗艦プラグマティズム@サクラテツ対話篇、大統領専用?ボタン
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:NO!
1:NO!
2:NO!
3:NO!
4:NO!
5:NO!
6:NO!
[備考]:
※会場全域に核爆撃が敢行されました。放射能汚染が深刻です。

【出井富良兎@サクラテツ対話篇】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服にスカーフと帽子
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品×2
[思考]
基本:桜テツを観察する
1:大統領をけしかけてテツをいぢめる
[備考]:
※特になし

86カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:08:42 ID:kbP/GsaA0
***************



「うわぁぁぁ―――――――――ッ!?」


叫び声とともに、一人の男ががばりと身体を起こす。
男の髪の色は、黒。
鴉の様な、宵闇の様な黒の束の中に、金の流星が幾筋も光を放っている。

残滓とも呼べる黄金の髪の煌きは、人工の真白い光源に照らされて確かにその存在を主張していた。

「はぁッ、はぁ、はぁ、はぁッ、はぁ、はぁッ……」

話を始めよう。
一人の男(ガンマン)の話を。
そして思い出せ、その男の名を。その男の伝説を。

「はぁ〜〜〜〜〜〜……っ」

ヴァッシュ。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード!

「な、なな、なんちゅう夢を見てるんだ僕は……」

――その首にかかった賞金額は『元』600億$$!
人類初の極地災害指定を受けて賞金こそ取り消されたものの、関わった事件は200を越え被害総額は20兆$$オーバー!
しかし、その正体を知る者はごく少ない。

彼は、彼こそは歴史の生き証人。
150年にも渡る長きにおいて、ただひたすらに愛と平和を謳い続けたヒトならざるヒト!

「……で、」

彼の人生は波乱に満ちている。
だが彼は決して信じる事を止めたりなどはしないのだ!
たった一人の兄と道を分かち、友を失い、それでもなお不殺を貫く柔らかな笑顔の青年は――――、」

「サッキカラドウシテ横デ人ノ事ペラペラ喋リマクッテルンデスカ、ソコノ人?」

「ハァーッ、ハハハハハハッ! ようやく目覚めたようだねヴァッシュくん!」

……ヴァッシュ・ザ・スタンピードは確信する。
倒れている自分のすぐ横で、こんな調子でずっと喚かれていたからこそあんな酷い夢見だったのだと。
よくよく見てみれば、自分の叫び声のすぐ直前からつい今しがたまでカギカッコで閉じられているではないか。
ラー、ラー、ラーと何処からともなく聞こえてくる豪華な音楽が嫌でも耳に入り込んでくるのは、もはや洗脳と言っても過言ではあるまい。

かつての自分の様な金の髪を持つ青年は、くどい顔を尚更くどく微笑ませて名乗りを上げる。

「僕の名は趙公明。麗しい名だろう? さあ、楽しく華やかに一時を過ごそうじゃあないかっ!」

87カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:09:31 ID:kbP/GsaA0
***************


――デパート2階、地上を臨むカッフェー。
ヴァッシュと趙公明はコーヒーを啜りながら、それぞれの現状を確認していく。
……いや、していきたいとヴァッシュが思っているだけという方が正しい。

「……で、趙公明。君はどうして僕の名前を知っていたのかな?」
「ノンノンノン、急ぐのは良くないな、ヴァッシュくん!
 もっとエレガントに、優美に話を進めていこうじゃないか」

こんな調子でかわされてばかりで、ずっと話が軌道に乗らないのだ。
はぐらかされているのだな、とヴァッシュは思うも敢えて口にはしない。
向こうから接触してきた以上何らかの目的があるはずだ。
少なくとも寝ている間に攻撃されなかったのは確かであり、敵意は無い、と信じたい。
警戒して相手のペースに呑まれない様にすることは怠らなかったが。

食えない男だ、とヴァッシュはひしひしと感じる。
今まで出会ったどんな人間とも異質な存在だ。
自身の兄やその狂信者レガート・ブルーサマーズと手足たるGUNG-HO-GUNS。
……命を散らしていった掛け替えのない戦友や、彼の遺した新たな仲間。
メリル・ストライフやミリィ・トンプソン、ブラドといったノーマンズランドのタフな住人達。
形こそ様々だが、彼らに感じていた何か――、敢えて近い言葉を捜すなら、必死さの様なものを何一つ感じない。

だからこそ、恐ろしい。

たくさんの出会いを思い出すに当たって、ヴァッシュの身体がほんの少しだけ震える。
本当なら今ここでこんな事をしている場合ではないのだ。
方舟――、いや、かつて方舟と呼ばれていたモノすら飲み込んだ、ミリオンズ・ナイブズがもうすぐ砂漠の星に残された最後の街にやってくるのだ。
自分の兄であり、自立種プラントであるナイブズが。
地球からの救いの船を人の目の前で滅ぼし、全てのプラントを吸い上げ去っていく為に。

止める、と、そう誓った。
だがその一方で、譲れない決意がある。

――今そこで人が死のうとしてる。僕にはその方が重い。

あの砂漠の星も、この殺し合いに巻き込まれた人々も。
そのどちらをも見捨てる事なんて出来はしない。
それが、ヴァッシュ・ザ・スタンピードなのだ。

だからこそ、彼はこの無惨な殺し合いを止めようと心に刻む。
刻み、その為に真剣という言葉すら陳腐に思わせる瞳で趙公明をじぃ、と見つめた。

「僕は――、」
「OK、OKヴァッシュくん! 皆まで言わずとも君のハートフルな想いはよぅく伝わってくるよ!
 非常に心残りだけど、二人きりのお茶会はここまでにして本題に入ろうか」

告げると、趙公明は懐に手を伸ばし、一つのものを取り出す。
鈍く光る黒金の塊、それは――、

88カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:10:19 ID:kbP/GsaA0
「……ッ、俺の、銃……ッ!」

「フフ……、君と出会う前に話した男から譲り受けたのさ」

手に慣れた銃とその弾丸が、趙公明の手の上で踊っている。

「……交換条件か? 何が望みなんだ」

ごくり、とヴァッシュは唾を飲み込む。
あれがあるなら、確かに非常に心強い。
……だが、果たしてそれを聞いていいものか。
真意も何も読めない男の言動に迷わされはしないのか。
どうする、の四文字が何度も何度も浮かんでは消え――――、

「はーッはははは! 心配はご無用さ、ヴァッシュくん!」
「……はい?」

ずっこけた。
何と、あろうことかあまりにも無造作に趙公明は銃と弾丸を机の上に放り出したのだ。

「……えーと」

引きつった顔でヴァッシュは趙孔明を見るも、胡散臭い笑いとともに彼は自分の方を見るのみだ。

「何か仕掛けてあるんじゃないかという顔だねヴァッシュくん!
 よろしい、煮るなり焼くなり好きにいじって確認してみたまえ!」
「は、はぁ……」

訳の分からない展開に頭がついていけないまま、それでもこそこそと店の奥にブツを運んで色々と確かめてみる。
――まったく問題ない、愛用の銃そのままだ。
暴発しかねない危険性も感じられない。

うん、と頷き、距離を保ったまま改めてヴァッシュは趙公明を見定める。

「……あらためて言おうか。何が目的だ」

確認の間のわずかな時間。
ほんのそれだけで、趙公明の身を包む空気が一変している。
ヴァッシュの直感が告げている。
今からここは、戦場となる。

「……フフ」

笑う。陰惨さも卑近さも何もなく、ただ華麗に壮麗に、変わらぬ口調で。
それ故に――、何より傲慢に。

「フフ、ハハハハ、ハハハハッ! ハァーッハハハハハハハハッ!」

趙公明は高笑う。
それが、彼なのだから。

89カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:10:51 ID:kbP/GsaA0
「トレビアーン……、素晴らしいよヴァッシュくん!
 カノンくんの時と同じ様式美で君を彩ろうと思ったのに、それすらさせてもらえないなんてね!
 いいだろう、最初からクライマックスでお相手しよう!
 君相手に手加減は――――、」

趙公明の周囲に、無数の黒球が浮かび上がる。

「失礼というものだ!」

ボコリボコリと泡立つような音を立てて、粘つくように黒球が互いに繋がりあっては離れていく。

「……それは!」

――ヴァッシュはその道具に覚えがある。何を隠そう、それがヴァッシュをしばらく眠らせた原因なのだ。
ヴァッシュが倒れていたのは此処に連れてこられた時の事が原因ではない。
支給されたこの黒い球に触れていたら、いつの間にか意識がトんでいたのが実情だった。
この道具の名前は、そう。

「――――盤古幡。僕の宿敵、元始天尊くんの持つスーパー宝貝さ!」

ビリビリと空間そのものが震える印象すら受ける。
掛け値無しに、ヤバいとヴァッシュは直感した。せざるを得ないほどに、危険な代物なのだ。

「ひ、卑怯だぞ……! 俺が眠ってる間に勝手に持ち出すなんて、それこそ優美とは程遠いんじゃないか!?」

虚勢を張り、言葉で相手の弱い所を突こうとするも、趙公明にそれは通じない。
最初から話を聞くつもりなどないといった方が正確だろう。

「フフフ、残念だったね! 僕は実は悪の貴公子、ブラック趙公明だったのさ!」
「な、なんだって――!」

バサリ、とマントを翻し、その一瞬で趙公明が黒に染まる。染まっただけではあるのだが。
いかんいかんと相手にペースを握られている事を自覚したヴァッシュは敢えてそれ以上ツッコまない。
少しだけ寂しそうな趙孔明を無視し、事態を見据える為に、ぎゅう、と愛銃を握る手に力を込める。
対する趙公明もまた、即座に笑みを取り戻し講釈を垂れ流す。

「本来僕は宝貝を持たない相手に宝貝を使う信条を持ち合わせてはいないのだけどね。
 今回みたいな催しにおいてはまた事情が別さ!
 ……何故ならヴァッシュくん、君のような、宝貝を使わずとも宝貝以上のチカラを持ち合わせる存在が闊歩しているのだから!
 そうした優れた存在に僕は敬意を払う! 敬意を払って、僕の全力をお見せしてあげよう。それが今の僕の役割でもある。
 もちろん特殊なチカラを持っていない存在に対しては話が別だけどね」
「……やだなあ、僕は普通の人間だよ?」
「嘘はいけないよ、ヴァッシュくん。さあ、美しい闘争をしようじゃないか!」

……やはり、と言うべきか。
この趙孔明は、『何故か』こちらの事についてよく知っている。知りすぎている。
もしや……、と何か嫌な予感が頭を掠めたが、今はそれどころではない。

趙公明は既に動き出している。
あまりにも重過ぎる絶望が振り被られた。

「出し惜しみ無しで行こう! 重力百倍、アン・ドゥー・トロワ!」

趙公明の覇の声が、周囲に響き渡る。

90カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:11:29 ID:kbP/GsaA0
だが、それだけだ。

張り詰めに張り詰めた威圧が、その瞬間消滅した。
沈黙が満ち満ちる。
何一つ、何一つとして変化はない。

「……何だって?」

――否。
たった一つ、たった一人だけ、動きを終えた者がいた。
真紅のコートに金と黒の髪。

いつの間にかヴァッシュ・ザ・スタンピードが銃を抜いていた。
趙公明にすらその瞬間が理解できない、神速を更に超えた速度。
銃口から既に立ち昇っている煙が示すのは知覚外の抜き撃ち。

ようやく、銃声が趙公明の耳に届く。

成程、数多の仙人、十天君さえ下す金鰲最強の一角であろうとも出し抜く銃の腕は認めよう。
慣れない武器の扱いに手間取った事も確かだ。

……だが。
ただの銃の一発で、スーパー宝貝が何故無力化される?

「……ハハ、ヴァッシュくん。一体……、キミは何をしたのかな?」

焦りとともにある問いに対し、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは不敵に笑う。
チッチッチ、と指を振り、銃口の煙に息を吹きかける。

「ひみつ。暴れるのやめたら教えてやるよ」

ゆらりと落ち着いた佇まいで、くるくると銃を廻しホルスターに収めた。
いつでもそれを抜ける体勢のまま、趙公明を睨みつける。

対する趙公明は苦笑を隠す事無く、それ以上の表情で顔を塗り潰した。
即ち――、歓喜。

「ハ、ハハッ! ハハハハハハハハッ!
 アーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

両腕を天に掲げ、静かに窓際へと歩いていく。
身体に盤古幡を纏わせたまま遠ざかる趙公明に、ヴァッシュは最早警戒を隠さない。

「……何をしたのかはわからないけど、どうやら僕が不利そうだってのは何となく分かる。
 だからとりあえず一旦撤退させてもらうとしよう!」
「……逃げられると思ってるのかい?」

じり、とヴァッシュは摺り足で間合いを詰める。
頭の中に警報が鳴っているのだ、この男を取り逃がしてはいけないと。
殺しはしないが、縄で縛るなり何なりしておかねば甚大な被害が出る、確実に。
それを許す事など出来はしない。

91カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:12:05 ID:kbP/GsaA0
聞いているのかいないのか。
趙公明は芝居がかった動きで頭を押さえ、もう片方の手でヴァッシュに向けて五指を突き出す。

「ストーップ、勘違いはよしてくれたまえヴァッシュくん。
 僕は逃げる訳じゃあないさ、キミの様な素晴らしき好敵手と巡り合えたのにそんな事をする筈がないだろう?
 ……キミは、期待を超えすぎていたんだよ。
 やはりメインディッシュは最後にとっておくべきだ!
 今ここでキミを殺してしまっては、せっかくの殺し合いなのに今後満足を得られなくなってしまうに違いない!
 キミと殺り合うのは――、そう! エクセレントなシチュエーション、物語のフィナーレこそが相応しい……!」

ああ、とヴァッシュは嘆息する。
話し合いの余地は、どうやら全く無さそうだ。

「オー・ルヴォワール、ヴァッシュくん! それでは僕は麗しく脱出させてもらおう!」

言葉と同時。
デパートの階下から爆発音が轟いた。
地面が揺れ、ほんの一瞬だけヴァッシュの姿勢が崩れる。

「!?」

焦げ臭さを認識すると同時、ヴァッシュはすぐに新たに趙公明のいた場所に注意を傾ける。
だが、それは既に意味がない。
一瞬、ほんの一瞬で十分だったのだ。

「ハーッ、ハハハハハハッ!」

何処からともなく、高笑いが響き渡る。
趙公明の姿は最早何処にもない。

ただ、漫画のように人の形に穴の開けた硝子窓がその痕跡を語るのみだ。

「…………」

ふう、と一息をつき、ヴァッシュはその場に座り込む。

「参ったな」

――どうにか、助かった。
もちろん趙公明を逃したくなどなかったが、何の準備もしていない状況ではどうにか一発を凌いでハッタリに頼るのが精一杯だった。
もしかしたら趙公明もそれを分かっていて、だからこそ今は退却したのかもしれない。
生粋の戦闘狂であるなら十分あり得る選択肢だ。

92カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:12:40 ID:kbP/GsaA0
「本当に、参ったな」

趙公明に渡された己の銃を確認するその時間。
その時に1発だけ、銃弾にエンジェル・アームの力を込めておかなければどうなっていた事か。
重力場の発生する出掛かりに対し、その領域が拡大する前にプラントの力で相殺する。
本来は対ナイブズの為に考えていた戦法だが、ぶっつけ本番で成功したのは何よりだ。

今すぐにでも趙公明を追いたい所だが、無闇に追っても何処に行ったか検討もつかない。
あの口調からして、後々自分を狙ってくるというのが分かっているのだけでも行幸だろう。

「……どうか、誰も死なないでくれよ……!」


――――応える声は、何処にもない。


【I-07/デパート2Fバルコニー/1日目 黎明】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン・マキシマム】
[状態]:健康、黒髪化3/4進行
[服装]:真紅のコートにサングラス
[装備]:ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(5/6うちAA弾0/5(予備弾24うちAA弾0/24))@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式、不明支給品×1
[思考]
基本:誰一人死なせない。
1:趙公明を追いたいが、手がかりがない。
2:参加者と出会ったならばできる限り平和裏に対応、保護したい。
3:先刻のデパート階下の爆発音が気になる。
[備考]:
※参戦時期はウルフウッド死亡後、エンジェル・アーム弾初使用前です。
※エンジェル・アームの制限は不明です。
 少なくともエンジェル・アーム弾は使用できますが、大出力の砲撃に関しては制限されている可能性があります。


***************


デパートからは東に当たる街道上。
丁度、地図上ではIの07〜08の境目に当たるその場所で。

趙公明は、ワクワクしていた。
ワクワクしながら夜空を見つめ、悦に浸っていた。

この歓びを誰かと分かち合いたい――その感情のままにゆっくりと振り向き、虚空の如き暗闇に向かって呼びかける。

「コングラチュレイション――、ヴァッシュくんは実にコングラチュレイションだ。
 そう思わないかな? キンブリーくん!」

その声に応え、まるで黒い水が染み出るようにゆらりと漆黒が形を持った。
……紅蓮の錬金術師、キンブリー。

「やれやれ、全く以って度し難い酔漢ですねぇ、貴方も」

まあ、私も人の事は言えませんがね、と続けてキンブリーは趙公明に並ぶ。
この男の趣味に付き合って、華麗な脱出とやらを演出してやったのだから。

93カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:13:26 ID:kbP/GsaA0
「……彼、私の存在に気付いてましたね。いやあ、素晴らしい人材(じっけんざいりょう)です。
 そして貴方のその道具を完全に相殺した謎の力――、あのまま殺さなくてよかったですよ。
 何より素晴らしいのが、決して人を殺そうとしないあの態度。
 この戦場の中、どんな風に動いてくれるのか実に楽しみです」

――盤古幡を手にして気を失ったヴァッシュ。
それを最初に見つけたのは、他でもないこのキンブリーだった。
デパートの探索を始めてまもなく、満ちに倒れ伏しているヴァッシュを発見したのだ。
どう扱うか逡巡する間にこの趙公明が声をかけてきたため、ひとまず彼にヴァッシュの処遇を一任する事にしたのだが。
……いずれにせよ拾った銃一つを失っただけの取引としては非常に上々だったろう。
何せ――、

「さて。これから貴方はどう動くおつもりですか?
 『この殺し合いを開いた“神”の手の一人』としては」

趙公明はただ朗らかに微笑を返す。

「ノンノンノン、もっと洒落た呼び名で呼んで欲しいのだけどね。
 そうだな。カードの鬼札にちなんで、ジョーカー、なんてどうだろう!」

このゲームを開いた者たちが、殺し合いを促進する為に仕込んだ触媒。
艶やかに咲き誇る食虫花こそがこの催しにおける趙公明の役割。

彼はそれを隠すつもりもなく、出会って早々にキンブリーはこの男に協力する事を心に決めた。

「やる事はシンプルさ、僕が楽しみながらこの殺し合いを掻き回す。
 いや、掻き回しながら僕が楽しむ、の方が正しいかな?
 別に僕は彼らの走狗になったつもりはないのだからね!」

――情報を聞き出そうとしたものの、趙公明はそれについては答えはしない。
何でも今話したら殺し合いが面白くなくなる、との事で、キンブリーもそれには同意せざるを得なかった。
まあ特に急ぐ事もないので今追及するのは止めておこう。
キンブリーは確信している。
この男は、必要になれば自ずからベラベラと“神”の陣営について話し出す事だろう。
その『必要』が趙公明の価値観に則ってのものであるのが多少厄介だが、この男は性質上自己顕示せざるを得ないに違いないのだから。
そう、情報を得るならただ待ってさえいればいいのだ。

「ハハハハハハッ、ハァーッハハハハハ!」

――おそらくはこの男のそんな悪癖を知っていて、それでも敢えて自らの手駒として使う。
姿も見えぬ『神』に僅かに身体を震わせて、それでもキンブリーの表情に陰りはない。
さて、色々楽しくなりそうだ。

ニィィ……、と、紅蓮の錬金術師の片頬が静かに歪む。
趙公明とは似ても似つかない笑みの形。
両者に共通するのは、月の光に禍々しく映える事だけ――――。

94カタハネ -シロハネ- ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:13:53 ID:kbP/GsaA0
【I-07〜08境目/街道/1日目 黎明】

【趙公明@封神演技】
[状態]:健康
[装備]:オームの剣@ワンピース
[道具]:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演技
[思考]
基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。
1:闘う相手を捜す。
2:太公望と闘いたい。
3:カノンと再戦する。
4:ヴァッシュに非常に強い興味。
5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。
6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。
7:自分の映像宝貝が欲しい。手に入れたらそれで人を集めて楽しく闘争する。
[備考]
※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。
※参加者などについてある程度の事前知識を持っているようです。

【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式*2、ヒロの首輪、不明支給品0〜2
[思考]
基本:優勝する。
1:趙公明に協力。
2:首輪を調べたい。
3:剛力番長を利用して参加者を減らす。
[備考]
※剛力番長に伝えた蘇生の情報はすべてデマカセです。
※剛力番長に伝えた人がバケモノに変えられる情報もデマカセです。
※制限により錬金術の性能が落ちています。


【盤古幡@封神演技】
元始天尊、竜吉公主、燃橙道人と次々に持ち主を変えたスーパー宝貝の一つ。
重力を操る機能を持ち、(封神台も起動させた状態の)元始天尊で1000倍、燃橙道人で1万倍まで重力を操作可能。
最大出力ならばブラックホールまで作り出すことを可能とするが、本ロワではその機能がどの程度まで制限されているかは不明。

95 ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 13:15:24 ID:kbP/GsaA0
以上、投下終了。やり過ぎた気もするけれど後悔はしていない。
富良兎はマジメにジャンプ漫画最高のヒロインだと思います。

96名無しさん:2009/04/25(土) 13:48:51 ID:5m6wNXVw0
さるさんなので誰か代わりに投稿願います

97名無しさん:2009/04/25(土) 13:59:01 ID:5m6wNXVw0
とりあえず感想を

最初の部分を見た時は荒らしのSSだと思ったが夢落ちかよw
そして人間台風が珍しく真価は見せた場面ですがロワで誰も死なないは無理なんだよな・・・・
ニコ兄死亡から来たのならニコ兄はいると知った時はどういう行動をするか
そして趙はお前ジョーカーかよと言いたくなったがこいつの性格ならさもありなんw
そしてキンブリーは悪趣味全開だな。確かにこいつならこうするだろうがキンブリーに魅入られるなんて災難だなw
一筋縄ではいかない展開で先が楽しみです

98 ◆JvezCBil8U:2009/04/25(土) 14:37:43 ID:kbP/GsaA0
この場を借りて。
仮投下及び感想、ありがとうございました。

◆lDtTkFh3nc氏の作品ですが、自分は問題ないと思うので移してかまわないに一票です。

99 ◆Fy3pQ9dH66:2009/04/25(土) 17:55:48 ID:uz5PWvZk0
あっさりとさるさん食らったのでこちらにorz

100 ◆Fy3pQ9dH66:2009/04/25(土) 17:56:14 ID:uz5PWvZk0
みるみるうちに弾丸の軌道がマシン番長へと近づいていた。

「……0.002秒」

マシン番長の足元を追うように土が瞬く間にえぐられていく。

「……0.17秒」

舞い上がる砂埃を気にも留めずにブツブツと呟きながら走り続けるマシン番長。

「さっきから何ブツブツ抜かしとるんじゃ!」
「体温……ヤヤ高メ、呼吸……大キク乱レアリ、カナリノ興奮状態ト推測」
「ああ? そりゃそうや! お前をぶっ壊したろうとアドレナリン出まくっとるからのう!」
「速度収集完了。視因可能ナ全データノ収集終了。現状ノ勝率100%……問題ナシ」

突如、横へと走る一方だったマシン番長が縦へ……すなわちウルフウッドへと急転換する。

「100%とは舐めた事言ってくれるやないけ!」

ウルフウッドも迎え撃つようにバニッシャーを構えなおす。
弾丸の雨を止ませると同時に大きく左へ地を蹴り、空中で再び引き金を絞った。
だがマシン番長も負けてはいない。
蛇行しながら一瞬で間合いをつめ、着地寸前のウルフウッドの背後へと回りこむ。
不快な異音と共にマシン番長の右腕が回転し始めた。

(あかん!)

本能的にウルフウッドは身体を捻っていた。
今までウルフウッドの身体が存在した空間をマシン番長の手刀が通り抜ける。
手に持ったバニッシャーをマシン番長へと叩き付けると、同時にマシン番長の左腕が空間を薙ぎ払う様にウルフウッド目掛けて回され激しくぶつかり合った。
両者の間に激しく火花が散り、反動でお互いの身体が大きくはじかれる。

ウルフウッドは宙を舞いながらもバニッシャーの引き金を絞り
マシン番長も飛ばされながら左腕で地面を掴み、大きく跳ねながら右腕を構える。
学ランを少し吹き飛ばされながらもウルフウッドへとめがけ再び放たれる右腕――ライトニング・フィスト。

「ちいっ!」

眼前に迫り来る拳。
バニッシャーを盾に防ごうと今度は金属音が響くことは無かった。
予想と反し寸前で拳が開かれバニッシャーの銃身を掴むマシン番長の右腕。

「奪い取りにきおったか!」

反射的にウルフウッドがバニッシャーを強く握り締めたその瞬間――ウルフウッドの全身に猛烈な痺れと痛みが襲いかかっていた。
マシン番長の掌から流れ出る200万Vの高圧電流がウルフウッドの全身を覆い尽くす。
間髪入れずに伸ばした腕を巻き取りながら加速するマシン番長。

「『クライシス・キャノン』」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板