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仮投下スレ

1182 ◆L62I.UGyuw:2011/11/10(木) 19:35:52 ID:5OgotkG.0
女は明らかに、獲物を甚振って愉しんでいた。

女の爪が腹に突き立てられ、ひよのは力なく呻いた。
既にひよのの胸に、腹に、脚に、長い切り傷がいくつも走っているが、どの傷も致命傷には程遠く、ひよのに苦痛を与える目的で付けられたものであることが見て取れる。
着ている水着はズタズタで、既に原型を留めていない。

しかしひよのはまだ諦めてはいなかった。
自らの血に塗れながらも、努めて冷静に状況を確認する。

少し前に少年の方は何故かどこかへ行ってしまった。
去り際の、近くにまだいるね、という台詞が気になったが、現状の危機の方が遥かに深刻なので取り敢えずその意味は考えないことにする。
敵が一人になったことで多少は生き延びる目も出てきた――と言いたいところだが、そうはいかない。
状況は変わらず絶望的だ。

デイパックの中には強力過ぎるほどの武器や、詳細は不明だが明らかなオーバーテクノロジーの産物と思われる道具もあった。
それらを使えれば勝つ目も出てくるだろう。
しかしデイパックは最初の背中への不意打ちで破壊され、中身は全てそこらに散らばり、手の届かない位置に落ちている。
そして徒手空拳では逆立ちしても――今まさに逆立ちしているのだが――勝てはしない。

それでもまだ諦めるには早い。ただ一つだけ、まだ可能性がある。
首輪だ。
『ゲーム』のルールを信じるなら、首輪を爆発させれば装着者は例外なく死ぬ。

記憶を探る。最初のあの場所。ムルムルの説明。
首輪を無理に外そうとすれば爆発すると、確かにそう言っていた。
隙を突いて女の首輪を思い切り引っ張ることが出来れば、もしかしたら首輪が起爆するかもしれない。
無論、引っ張った腕は無事では済まないだろうが――このまま嬲り殺しにされるよりはマシだ。

両腕全体に意識を回して状態を確かめる。痛みはあるものの、腕の痺れは大分取れてきた。
手に神経を集中し、女に悟られないよう慎重に指先を動かしてみる。右手、そして左手。
問題なく動く。腕の機能はほぼ回復しているようだ。

しかし、焦って行動してはならない。
成功する可能性があるとしたらそれは不意打ちの一撃しかあり得ず、二度目はない。失敗すれば完全に打つ手がなくなる。
隙が欲しい。一瞬でいい。隙があれば。

だが――自力でその隙を作る方法が思い付かない。

せめて何か一つ、『予想外の出来事』が起こらないとこのまま嬲り殺しにされる。
起こるかは判らない。いや、起こらない可能性の方が遥かに高いだろう。
しかしそれでも、その瞬間のために、神経を研ぎ澄ませておく。それが今唯一ひよのが出来ることだった。


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