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仮投下スレ

1181 ◆L62I.UGyuw:2011/11/10(木) 19:35:07 ID:5OgotkG.0
銀時と伊万里はどこにも見当たらなかった。彼らの名を呼んでみても返事はない。
非常口から見える範囲をうろうろしながら、どうしたものか、迷う。
この場で銀時達を待つべきだろうか。
ピンポイントで合流しようと思ったら思い付くのはここくらいしかない。

しかし、もしもいくら待っても二人とも戻って来なかったら――。

「きっと大丈夫――だよね。私だって大丈夫だったんだし……うん」

大丈夫のはずだ。
自分に言い聞かせるように呟いて、非常口の方へ戻ろうとする。
不意に視界の端で何かが動き、沙英はぎくりと固まった。

「え? だっ――」

誰、と言おうとして、気付く。
そこには誰かがいる訳ではなく、壊れた大きめの水槽が一つあるだけだった。
ただ、右側半分はガラスが割れずに残っており、中が暗いためにガラスの表面に沙英の全身がはっきりと映り込んでいる。
自分を驚かせたものは自分自身の像だったという訳だ。
ほっとして警戒を解き、しかしすぐに今度は別の要因で固まる。
意識していなかったが――というより、そんな余裕はなかったのだが――今の格好は長袖のシャツに下はパンツのみというお世辞にもまともとはいえないものだ。
おまけにシャツは沙英の痩身にぴたりと貼り付いて透けている。
誰もいないと解っていても、思わず周囲を確認してしまう。とても他人に見せられる格好ではない。
銀時がいなくて良かった、と思う。

「いや、良い訳ないんだけど。う……それにしても――」

寒い。ずぶ濡れなのだから当然だ。ぶるりと全身に震えが走り、沙英は両腕で身体を抱える。
女性として、という点を抜きにしても、やはり現在の状態には問題がある。今の内に着替えておきたい。
事態がどう転んでも、濡鼠のまま行動する必要はあるまい。幸い着替えは十分な持ち合わせがある。

流石にこの場で着替えるのは躊躇われるので、適当な場所を探すことにする。
近くにあったトイレを覗いたところ、中は水浸しで滅茶苦茶に壊れていた。一階はどこも似たような状態だろう。
仕方なく二階に上がり、階段脇にあったトイレに入った。
ここもやはり壁や床は水に濡れているし、洗面台の鏡には罅が入っている。しかし一階に比べれば大分ましだ。
個室のドアが歪んでいたが、内側から無理矢理閉めて鍵を掛ける。

腹の底に響く轟音が建物を伝わってきた。


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