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仮投下スレ

1178 ◆L62I.UGyuw:2011/11/10(木) 19:32:36 ID:5OgotkG.0
聞き覚えのある声と共に、十字路の左側からひょこっと顔だけが現れた。

「おう、何だ伊万里じゃねーか。無事だったか」
「ええ、まあ、どうにか。そちらも無事で何よりです」
「……そんだけ?」
「……何がですか?」
「いや、まーいいや。で、何で壁に隠れてんの?」
「えーと」

言い淀んで、ひよのがゆっくりと全身を現した。うお、と銀時が小さく驚きの声を上げる。
彼女は水着姿だった。
そのこと自体はさして驚くべきことではなかったが、しかしその水着が数箇所大きく切り裂かれて肌が露出し、血が滲んでいることは見逃せない。

「おい、大丈夫か」
「怪我は大したことありません。ただまあ、ちょっと色々ありましてですね。
 何があったかは後で説明しますから、取り敢えず何でもいいので服を頂けませんか?
 荷物も失くしちゃって困ってるんですよ」

言われるままに、銀時はデイパックの中から適当に服一式を選んで手渡した。

「感謝します。それじゃ、ちゃっちゃと着替えますんで、ちょっと後ろ向いてて下さい」

へいへい、と言って銀時が後ろを向く。
白刃が閃いた。



まずひよのの爪が長く、鋭く、伸びた。無言で替えの服を背後に放った。
目を細めて軽く身を屈め、ひよのは小さな水音だけを残して床を蹴った。勢いを乗せて腕を振るった。
白い軌跡を引いて、ひよのの爪は銀時の背中の中央、心臓の位置に吸い込まれる。
硬い音が響いた。

ひよのの顔が歪んだ。
銀時の背を貫く直前で、爪は鞘から半分抜かれた刀に阻まれていた。

「ヘ〜イ、ちっとばかし爪伸び過ぎじゃねーか? 俺が切ってやんよ、ソレ」

首だけで振り向いて、銀時が意地の悪い笑みを浮かべる。
舌打ちをして、ひよのを騙る女は素早く後ろに跳んだ。
が、更に上をいく勢いで銀時が鋭く踏み込み、刀を一気に抜き放つ。
女の右脇腹に刀身がめり込んだ。肉の潰れる音。
細い喉からひしゃげた音を漏らし、女の体が宙で一回転して激しく水面に叩き付けられる。


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