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仮投下スレ

1175 ◆L62I.UGyuw:2011/11/10(木) 19:30:17 ID:5OgotkG.0
今のところ殺意は感じないが――というか、女がひよのを殺す気ならもう殺されているだろうが――危険な相手であることには変わりがない。
穏便に済ませることが出来ればそれが一番良いのだが。

「何か――私に御用ですか?」
「そうねぇん。用っていう訳じゃないんだけどぉん……折角出会ったのに挨拶しないのは悪いと思わないかしらん♪」
「はぁ」

ちらりと右方に視線を走らせる。暗くて距離感が掴み辛いが、階段まで二、三十メートルといったところだろう。
逃げられるかは微妙なところだ。

女が一歩前に出て、ひよのは一歩下がる。

「ここで何を」

女は白磁の指で下を指した。

「ここの下の方から、とってもとっても素敵な力を感じるんだけどぉん……貴女、何か知らないかしらぁん?」

ひよのの瞳が毛筋ほど揺らいだ。
下の方。思い当たるものはある。魔子宮――のようなもの――だ。
ここに来る前に博物館で解説文を確認してみたので、その概要は把握している。
曰く、人を人にあらざるものに変じさせる『転生器』であると。

教えてはいけない気がした。

「いえ、知りませんよ」
「そう……それなら、仕方ないわねぇん」

いきなり背に強烈な衝撃が加わった。
前のめりに転んで水に突っ込む。取り落としたランタンが水中に沈む。
急な暗闇。何も見えない。一体何が。
立とうとして、何者かの気配がすぐ横にあることに気付く。
次の瞬間、棒のような物がひよのの胸を狙って振り上げられた。
咄嗟に両腕を交差して胸を庇う。
巨大なハンマーでぶん殴られたような衝撃。体が大きく浮く。
殺し切れなかった力が、乳房を潰し、肋骨を軋ませ、肺の空気を絞り出して背中へ抜ける。
呻き声が漏れ、尻から水に落ちる。
立たなければと思った瞬間、右脚に強く引っ張る力を感じ、ぐるりと重力が逆転した。



要するに、もう一人いた。ただそれだけだ。
女のあまりに異質な存在感に気を取られて他への注意が疎かになっていた。
痛恨のミスだ。ひよのは逆さに吊られながら歯噛みする。


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