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仮投下スレ
1169
:
人生は大車輪
:2011/09/15(木) 11:37:21 ID:8hW82z.c0
#####
「疎まれている以上、当面バックスとは疎遠になるね」
しばらくの間はバックスと直接戦うことはない。
目下のところ、バックスは観測者以上にタイトなスケジュールだ。
配下を持っているとはいえ、数が限られている。
清隆に心酔しているプライドとは違い、観測者は人質やモノ質を取られていない。
にも関わらず、殺されもしなければマインド・スナッチャーを取りつけられてもいない。
観測者を放置しておく理由がバックスにもあるはずだ。
「まったく、内ゲバだらけですわね、この組織は。
どこの学生運動ですか」
「内ゲバね。
きっとこれからどんどん加速していくよ。
皆にはそれぞれ別の目的があるだろうしね。
一回しかない人生をひとつの命をかけて歩いているんだ。これと決めた自分だけの目的ぐらいないと面白くない。
君だって……そうだろう、天王洲君?」
闘争を認めるような素振りで、取って付けたように犬養が笑う。
「ああ、天王洲君の推測は間違いではないけど、あの娘を運命の指針にしたのは事実だ。
それもひとつの目的だよ?
何も時間短縮だけにリスクをかける程僕らもバカじゃないさ」
「"アテネ"から継いだのは身体だけではないか……記憶の一部も移植されたな。
英霊、いや"ミネルヴァ"」
「さぁ、どうかしら。
この身体の主がどこまで知り得ているのかは定かではありませんわ」
人差し指を口に当て、秘密だと示す。
背景にゆらりと浮かぶのは、テロリストの頭蓋。女神の成れの果て。
犬養は詩の最後を唱えた。
大正生まれの夭逝詩人は最後にこう綴っている。
#####
ただわたくしはそれをいま言へないのだ
(わたくしは修羅をあるいてゐるのだから)
わたくしのかなしさうな眼をしてゐるのは
わたくしのふたつのこころをみつめてゐるためだ
ああそんなに
かなしく眼をそらしてはいけない
宮沢賢治『無声慟哭』
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