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仮投下スレ
1148
:
ロシアンルーレット・マイライフ
:2011/09/15(木) 11:24:11 ID:8hW82z.c0
早く化物を車から引き離し、運転席の子供を殺処分して、より遠くへ逃げなければならない。
刃が大穴の空いた鉄製シャッターを、剃刀が紙でも切るように横一文字に寸断した。
「集中しろっ……」
移動する車での演奏など、ドップラー効果の影響をもろに受けるシチュエーションだ。
キャラバンの音楽隊でもやらない。
こんな悪条件、今後は御免蒙る。
風を、吸い込む。
――――ッ……
途絶える。
エンジン音、水音、銃声、破壊音、全てが消える。
どこまでも静寂である。
神経が倍磨り減ったとはいえ、五線譜にも載っていない音色は、通常と遜色ない働きで相殺していた。
二度目の無音に寸時反応した化物。
その一瞬に貴重な散弾銃を懸けて引き金を引く。
ッ!
ッッッッッ!
ッッッッッッッッ!!!!!
作用反作用で身体が振動する。
今――あの時勝てる見込みなどないと絶望させた化物に――弾をくれている。
歯の根が噛み合わないのを抑えなければ、微細な隙ができてしまう。
恐怖がマウスピースに伝わってしまった時が今際となる。
化物の、筋肉の鎧へ一斉に弾が向かう。
蠅を払うように、剣の面で一蹴される。
それでも散弾銃は散弾銃だ。
剣の軌道よりもずっと広く弾は拡散する。
皮膚に穴が空く。
血液が噴出する。
角は削れていく。
化物の追う勢いは止まらない。
ただ多少、本当に多少。
化物にもダメージを負わせられるのだと、銃器の殊能性に安堵する。
相変わらずリンは、車に運転をさせられているような、危なっかしい操縦をしていた。
突然音の消えた世界に白黒していたが、いかんせん前だけを向いていなければならない。
柱形の水槽を避けながら、広いフロアを突っ走っていた。
バックミラーと、音がせずとも皮膚にビリビリと伝わる銃撃の衝撃波で、男がどうにか武器で立ち回っているのがやっとわかった。
ミッドバレイは残り弾数半分のイガラッパを全弾撃ち尽くした。
迫る化物は、とても満身創痍には見えなかった。
必要のなくなったイガラッパをぶん投げる。
サイドミラーより大きなイガラッパも、剣で金属片の輪切りへと変貌した。
剣の餌食となれば、自分もこうなるのだ。
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