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仮投下スレ

1146ロシアンルーレット・マイライフ:2011/09/15(木) 11:23:12 ID:8hW82z.c0
――ゾッドは闘いに飢えていた。
  ガッツと趙公明との戦闘はメインディッシュとして後へとっておいた。
  キンブリーはまだ一応手を出さないでおく。
  腹は満たされ、武器も調達した今、やることは決まっている。
  音を支配し、見慣れぬ鉄の車と鉛の飛び道具を操り反撃してくる。
  闘うに値する興味深い相手が見つかった幸運を嬉しく思っていた――





いくら通路が広いとはいえ、車が往来できるように設計されているはずがない。
アクセルと、教わったばかりのブレーキを何とか操る。
側面が早くもボコボコになった車が工場を駆け抜ける。
パラパラと、工場が崩壊の予兆を見せ始めた。

今まで通路は直線だったが、リンは一瞬ハンドルから片手を放し左を指差した。

「あそこ曲がりたいんダ!」

ミッドバレイが見たのは、車が直角にでも曲がらなければ通れないT字の通路だった。
ただでさえ通るのがギリギリな通路で左に曲がりたいと無茶苦茶を言う子供に、
そして追ってくる化物に、ミッドバレイは心底恨みの念を募らせた。

白濁の剣はすぐ後部まで近づいている。

……今日はどれだけ他人に妥協と迎合をしてきたのだろう。
現状はその選択の余地すら許さない。

「……限界までアクセルを踏んでから、すぐにブレーキを共に踏め」
「壊れんじゃなかったのカ!?」

答えないミッドバレイに、リンは自分の言った無茶がどれだけ大事なのかを知る。

角の手前でリンはシートベルトを今更締める。
アクセルを踏みつける。
そして高い所から飛び降りたように、両足でペダルをダンッと押し付けた。



   バルルルルルルルルッ!!



とんでもない吹かし音が出てきた。

アクセルとブレーキを同時に踏むと、安全面の問題でブレーキが優先される。
しかし急に止まる訳ではない。

助手席を抱えフロントガラスとの衝突を避けながら、ミッドバレイはギアをバックに入れる。
次の瞬間、リンの手をはたき落とし、ハンドルを目一杯左へ回した。
タイヤが甲高い悲鳴を上げる。
更にサイドブレーキを引く。
車は一気に横を向き、トランクルームが今まで通っていた通路の右壁にぶつかる。
即座にサイドブレーキを降ろす。

後部はぐしゃぐしゃになったが、ボンネットはリンが指した通路へ突っ込んでいた。
運転席側の壁には右前輪が三十センチぐらい乗り上げている。
素早くギアをドライブへ叩き入れ、

「アクセルを踏め!」

リンはその通りに思いっきりアクセルを踏みつけた。
ミッドバレイはハンドルを右に切る。
ガリガリとホイールキャップが削れていく。
さっきサイドミラーが取れなければ、引っ掛かって進めなかった。
それほどギリギリの運転をかましたのだ。
バウンドして車は水平に戻った。


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