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仮投下スレ

1143ロシアンルーレット・マイライフ:2011/09/15(木) 11:20:07 ID:8hW82z.c0


――逃げよう。



その結論に至った。
ナイブズはいない。
足手纏いの小娘もいない。
レガートもいない。
敵対するような人の気配もない。
ナイブズから、深夜の宴から逃れられる好機は今しかない。

全ての物事には好機があり、十分か不十分かを判断して乗るかを決める。
ミッドバレイが生きていられたのは、見せかけの好機に結果的に乗らなかったのが大きかった。

今目の前を通り過ぎようとしているのは、見せかけでもデコイでもない、正真正銘好機(チャンス)の神だった。
自分自身のためにフューネラルマーチを演奏せずに済む、これ一度きりの機会。
死の恐怖から逃れられる。



趙公明に突き付けられた招待状など、犬にでも食わせて無視を決め込みたかった。
GUNG-HO-GUNSも人外甚だしい集団だが、あれは雷電らどころの騒ぎではない。
とんだバーサーカーな上、戦闘を楽しめるのならば手段を選ばないタイプだ。
その趙公明に、別の参加者に快楽を取られないようにナイブズ共々唾をつけられた。

競技場には恐らく、空中で戦闘をしていた、拳銃でも音を支配しても殺す一手にすら届かない獣も来る。
小娘を人質にとったようにまだ餌を拾っていたのなら、ガサイ・ユノと再会する可能性も捨てきれない。
そもそも既に残り人数が二割程度にまで減っているのだ。
生き残りは相当な猛者だ。
少年探偵や小娘のように保護下に置かれている者、命果報の強運の持ち主が若干名いそうだが、それは数に入れない。

強者同士が相討ちになって欲しい願いはある。
だがそれこそが、自分ではもう口に出せない、出してはいけない二文字。
『希望』だ。
絶望は毒、希望はもっと毒だ。
死線へ飛び込んだらその結末は、自分が死ぬか、すがりついたなけなしの希望をぶち壊されるかのどちらかである。


それでも、少しでも長く生きることに、死を先伸ばしすることに執着がある。
……執着して何が悪いのだ。
行けば確実な死、戻ってもどのみち死。
どちらかのデッドエンドを選ばざるを得ないのならば、好機に乗ってみるのも抵抗として良いものなのかもしれない。

葉巻を噛みすぎ、先端にくっきりと歯形がついた。
地面に落として火を揉み消す。その足は震えていた。

わかっている。これは完全なる一人相撲なのだ。


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