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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第111話☆

1名無しさん@魔法少女:2011/08/18(木) 16:34:39 ID:tcLNLZv.
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。


『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第110話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1302424750/

702名無しさん@魔法少女:2011/10/31(月) 05:17:54 ID:jXN1zpEI
正直微妙だった
無理やり鬱シチュ詰め込めばいいってもんじゃなかろうに

703名無しさん@魔法少女:2011/10/31(月) 11:52:40 ID:gV5JkdKI
ああ、いいなあ救いがなくて

704名無しさん@魔法少女:2011/10/31(月) 12:34:40 ID:AdJ3rYgQ
厨二病に罹ったヴィヴィオを犯したい

705シガー ◆PyXaJaL4hQ:2011/10/31(月) 23:08:00 ID:7iCubCJ.
んよし、良作二連続投下の後でなかなか緊張するが、自分もいっちょ逝くぜ。

ユーノメインのお話。
欝ってか酷い話というか後味よくない系? です。
あと短編。

706Horsehair worm:2011/10/31(月) 23:08:59 ID:7iCubCJ.
Horsehair worm


 手に取ればずしりと重い、分厚い本。
 頁を捲れば、埃を微かに舞い上げて黴た紙の臭いがした。
 古い、随分と年季の入った書物である。
 本を手に持った青年は頁の一枚、文字の一つまで逃さぬよう、じっくり検分するように読み進める。
 書き綴られた文字は現代世界に普及したそれとはまったく異質であり、内容を把握するには専門的な知識と相応の知性が必要だった。
 が、彼には相応の能力がある。
 無限書庫司書長ユーノ・スクライア、その肩書きは伊達ではなかった。
 
「ふぅ……」

 半分までそれを読んだ時、ユーノは書物を机の上に置いた。
 場所は無限書庫司書長室。
 通常では重力をカットされた書庫と違い、ここでは通常空間と変わらない。
 今彼が行っているのは、書庫や管理局の遺失物管理科が発見した古文書の翻訳と検分だった。
 文化的な価値もさる事ながら、中には危険な古代禁呪の術式や、書それ自体がロストロギアである可能性もある。
 高位の結界魔導師であり、学術的知識の豊富なユーノにとってそれは日課と化した必要事務であった。
 が、決して退屈や不快感とは程遠いのが救いだ。
 もとより本が好きであったし、複雑な魔法術式を行使するよりは遥かに安易で、なおかついにしえの書物を読み漁るのは良い無聊の慰めにもなる。
 今彼が読んでいるのは、古代ベルカ文明関連の書籍であった。
 タイトルはベルカ王庁生物秘記。
 太古の歴史に関する記述、今では消え去った魔法生物の詳細な記録は知的好奇心を刺激されて止まなかった。
 気付けば、既にたっぷり三時間近くは読みふけっていた。
 厚手の表紙を慈しむように触れながら、彼は眼鏡を取って目元を揉みほぐす。
 さて、何とするか。
 もう暫くこの書物に耽りたいところだが、いささか疲労も溜まってきた。
 このまま読むか、もうここで止めるか。
 思案の時間はそう長くはなかった。

「もう少しだけ」

 そう呟き、表紙を捲って再び読み進めようとした。
 その時だった。
 
「ん?」

 気付いたのは、厚手の表紙の端に見つけた異変。
 よく見れば、幾重にも重なっていた紙が剥がれ、中に輝く金属の光沢があった。
 ただの経年劣化ではない。
 そう判断した彼の指先は迷わなかった。
 慎重に端を掴むと、ゆっくり上下に開く。
 予想を裏切らず、本の表紙は二重の隠し構造になっていた。
 読む前に一通り危険がないかチェックしていたのだか、爆発物などである可能性はない。
 トラップ系の魔法でもなかろう。
 では、一体何が秘されていたのだろうか。
 二重の表紙を開いて見つけ出したのは、小さな円筒形の金属カプセルだった。
 全長二センチ程度のそれを、ユーノは訝しげに持ち上げる。
 
「なんだろう、これ」

 指先に発生する緑色の小さな円環。
 内部を検査するための魔法陣が描かれる。
 脳裏に送り込まれる術式からの組成は……有機物だ。
 毒性反応などは、ない。
 危険がないと分かると、湧き上がるのは好奇心だ。
 きちんとした施設で開封するのが常なのだが、疲労感からか、彼は欲望に対する耐久値が下がっていた。
 自然と指は円筒形の筒の先、蓋になっている部分を開いていた。
 きゅぽん、と小気味良い音を立て、蓋はあっけなく外れた。
 中には何が……。
 次の瞬間カプセルの中から飛び出した【ナニか】が目の前に迫った時、彼には後悔する暇すらなかった。



「なのは、愛してるんだ。結婚しよう」

 唐突に浴びせられた言葉に、なのはは呆然とした。

「あ、え……?」

 ユーノと二人で買い物に出かけた帰り際の、正に不意打ちにような告白。
 なのはとユーノの交際は、至極健全な、男女の間柄ではなかった。
 十年来の友達、友人としてのそれである。
 が、今放たれた言葉は、その歳月を破壊しうるものだった。

「え、えっとその……待って、私そんな……いきなり言われても」

 突然の言葉に動転し、なのははしどろもどろになる。

707Horsehair worm:2011/10/31(月) 23:10:03 ID:7iCubCJ.
 もちろん嫌だからではない、彼女の内心を掻き乱していたのは喜びだった。
 十年来の付き合いの仲、なのはは密かにユーノの優しさに惹かれていた。
 しかし今現在の交際が友人止まりである事から分かるように、彼女にはまだ恋人という仲に進む事への恥じらいがあった。
 その臆病さ故に頬を赤く染めるなのは。
 だが彼女の初心な乙女心に、ユーノは強引に踏み込んでいく。

「君じゃないとダメなんだ! 頼むなのは、僕と一緒になってくれ!」

 肩を掴んで顔を寄せ、間近から熱烈な言葉を浴びせる。
 普段の、今まで知っていた彼からは想像も出来ない様だった。
 それ程までに自分の事を好きなのだろうか。
 そう思えば、胸が高鳴り、少女の心がときめきを覚える。
 傾きかけていた胸中の天秤は、ユーノの勢いに押し流されるように、あっという間に傾いた。

「う、うん。いいよ……ユーノくんなら」

 こくんと小さく頷いたなのはに、ユーノはにっこりと笑った。



「痛い! 痛いよ、ユーノくん!」

 ベッドスプリングの軋む音に混じり、絹を裂くような乙女の悲鳴が迸る。

(あれ……?)

 それを、ユーノはどこかブラウン管越しのテレビでも見ているような心境で、湧き上がる疑問符の意味さえ分からなかった。

「や、め……お願いだから、優しく……ひぅ!!」

 か細く漏れる、助けを求めた声音。
 自分が組み敷き、そして犯している少女の、なのはが発している声だった。
 ベッドの上でもがき苦しむその故は、彼女が処女であるが為に、初めての性交で痛みを感じているのだろう。
 本来ならば相手を労わっていようものを、ユーノはそんな事など考える暇もなくひたすら腰を振って射精を求めていた。
 さながら発情期の獣が如く。
 さらに言うならば、今夜は告白してよりまだ一日とて空いてはいないのだ。 
 受け入れられるや否やホテルへ連れ込み、こうして犯しているという次第である。
 その事を、誰より信じられなかったのはユーノだった。

(僕、どうしてなのはにこんな事を……)

 ユーノは性欲が希薄なわけではないが、決して旺盛すぎるというわけでもなかった。
 女をそれほど欲していない自分が、どうしてなのはの身体をこれほど求めているのか。
 考えようとするが、頭に霞がかかって上手く考えられない。
 とにかく身体だけは曖昧と化した思考とは関係ないように、女を求めた。
 何度も何度も、力の限りに腰を動かして狭い膣穴を抉った。
 泡を立てて溢れる朱交じりの愛液。
 それを掻き乱す肉の竿。
 目尻に涙を溜めてこちらを見つめるなのはの顔もまた、恍惚をそそり立てる。
 肉棒から伝わる快感、初めて味わう女陰の心地が良い。
 陰茎に絡みつく破瓜の鮮血も気にせず、我を忘れて青年は蜜壷を抉り込む。
 そして快楽のボルテージが昂ぶりきった時、腰の震えと共に彼は呟いた。

「なのは、もう……出る」

「ま、まって、そんな……ああぁ!!」

 彼女の制止など聞かず、次の瞬間膣の中に脈動する熱が注がれた。
 ごぽごぽと逆流してくる精液の泡。
 痙攣する肉棒、震えるなのは。
 だがいまだ萎えない男そのものを、ユーノは抜こうとせず。
 むしろすぐさま動き出した。

「ごめん、なのは……もうちょっと、もうちょっとだけさせて……」

 答えは聞かず、彼はまたそうやって少女を蹂躙し始めた。
 何度も、何度も。



 ユーノはぼんやりとした面持ちで携帯を取り出した。
 受信したメールの文面は、なのはからの別れの言葉だった。
 これ以上自分とは付き合えない、と。

708Horsehair worm:2011/10/31(月) 23:11:06 ID:7iCubCJ.
 当たり前だな、とは思った。
 なにせあの日からほとんど毎日肉体関係を求め続けたのだから。
 身体目当てと思われて仕方あるまい。
 だが不思議なのは自分の心境だった。
 それを見ても、何も感情的なものが動かないのだ。
 ただぼんやりと、漫然と事実を受け流すばかり。
 ここ最近、どこか思考がおぼつかず、気付けば視線は女性ばかり向いていた。

「あの、司書長……大丈夫ですか?」

「ん?」

 ふと振り向くと、書庫の司書、それも女が自分に声を掛けてきた。
 その瞬間、彼の中で情動が劇的に働く。
 顔立ちは十人並みであり、それほど意識した相手ではない筈なのだが、とても魅力的に見える。
 何故自分はこんな女性が近くにいて何も感じなかったのだろう。
 すぐにその顔に爽やかな笑顔を浮かべて、ユーノは問い返す。

「ぼくが何か?」

「いえ、その……最近どこか様子が変でしたし、高町教導官との噂もありましたから……」

 なるほど、自分となのはとの仲はそれなりに噂になっていたのか。
 そう思いつつ、だが彼の意中になのはとの関係などもはや忘却すべき過去の事象として風化しつつあった。
 そんな事よりも、今はこの目の前の女性が優先だ。

「うん、そうだね。ところで今夜時間あるかな?」



 ―ベルカ王庁生物秘記―

 本書の最後に記しておくのは、ホースヘア・ワ−ム、という魔法生物に関してだ。
 名前の通り学術名ホースヘアワームス、俗にハリガネムシと呼称される虫の学名と同じであるのはその生体に由来する。
 極めて小型の線虫様の身体を持ち、まず近くの人間に寄生。
 その後脳へと至ったこの生物は、宿主を殺さず、徐々に意識を乗っ取っていく。
 ハリガネムシが水を求めて寄生したカマキリなどの行動を操るのと同じであり、これこそが名前を同じくした故である。
 が、宿主をコントロールする能力と、周囲に及ぼす影響に関しては一線を画す。
 凌駕していると言っても良い。
 ホースヘア・ワームは宿主の知性を微塵も殺さず、だが理性や情緒を鈍化させて自身の目的に合わせて変質させる。
 そして性欲や異性への好奇心、興味を煽るようにホルモンを分泌。
 宿主は知らぬうちに異性にアプローチを行い、普段からは想像も出来ないような性欲に駆られて行為に及ぶ。
 だがこの性交渉で彼ら人間の子供は産まれない。
 その段階で生殖器官の構造は作り変えられ、排出される精子と卵子はホースヘア・ワームの子種だ。
 一度性行為を持てば最後、女性は確実に妊娠する。
 十ヵ月後に出産されるのは、人間の子供ではなく数万のホースヘア・ワームの幼生。
 出産した母体は直後に全身を食い破られて死亡し、母体を食らって栄養分を得た幼生は近くの人間に手当たり次第に寄生していくだろう。
 事前に胎児の異常を察知するのは、今ある科学技術・魔法技術の両方を以ってしても不可能。
 対象が一人であったとしても、一都市に発生する犠牲者の数は最低十万人以上と予想である。
 このホースヘア・ワームは我々ベルカ王庁直属の魔法生物開発機関の開発した生体兵器だ。
 対敵国用に作り上げた、静かに浸透していく生きた毒薬。
 実際に投入されればその効果を発揮して狂い咲くだろう。
 だが、オリヴィエ陛下の鶴の一声により開発は中断、試験体も全て破棄された。
 曰く、余りにも非人道的である、との事だ。
 私は悲しい、この自信作を、最高傑作を世に放たず屠ってしまうのが。
 せっかく私が作り上げたというのに……。
 そこで私は、本書の表紙にたった一つだけ残したサンプルを隠しておくことにした。
 この幼生は私の生涯を掛けた研究の貴重な証拠なのだ。
 消し去ってしまうには、あまりに惜しい。
 さらに詳細なデータは後述しておく、もし本書を読んだ後世の識者よ、この素晴らしい人造生物を生かす道を見出してくれ。



終幕

709シガー ◆PyXaJaL4hQ:2011/10/31(月) 23:15:35 ID:7iCubCJ.
はい投下終了。

今回はちょっとデビッド・クローネンバーグの映画へのオマージュ的なものを意識しました。
ラビッドやシーバース、セックス関連で人に移っていく不条理な災害というか厄災というか。
プラス、テレビだかネットで見たハリガネムシのきもい生態見て構想。

ただ、色々と急いでいて駆け足で書いてしまったのが悔やまれます・・・

710名無しさん@魔法少女:2011/10/31(月) 23:19:01 ID:s50IwHPY
乙。
数ヶ月後のミッドチルダの阿鼻叫喚地獄絵図が……

711名無しさん@魔法少女:2011/10/31(月) 23:25:21 ID:Ijelhh.U
GJ!
ユーノうらやま・・・と思ったらとんでもない代物じゃったw

712名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 00:06:13 ID:RaaAVWx2
GJGJ
こんなことにならないように
無限書庫にはレベル4閲覧室が設置されるにちがいない
古代ベルカ語の殺人ジョークの前には無意味だが

713名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 00:41:57 ID:c6JMO0K6
>>GJ! 虫グロ大好きな俺歓喜のSSでした!

714名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:14:20 ID:VgOVwjbQ
鬱すぎる……だが、それもまたよし。
もちろんこの後ユーノ君がいろんな人に逆レイプされてどんどん増えていくんですよね!

GJでした!

715テルス・サーギ:2011/11/01(火) 22:21:22 ID:zjbUOg.c
エロパロの大エースシガーさんに続いて欝祭投稿しまーす。
・欝?でーす
・なのはxユーノ→ヴィヴィオでーす。

716ん、何かありました?:2011/11/01(火) 22:23:07 ID:zjbUOg.c

憧れ。
感謝。
羨望。
崇拝。
高町なのはに向けられる眼差しは今までこんなものばかりだった。だが、次元世界が
魔法主義から質量兵器も導入され始めると、悲劇は起こった。
一転した眼差し。
それは他人も友人達も見知らぬ人も。全て同じになっていた。
憐み。
そう憐みだ。
向けられるものは憐みの眼差し。
可哀想に。
まだ大丈夫だよ。
まだいける。
そんな安っぽい言葉と共に。
なのはに向けられる眼差しは憐みのみ。
魔導と質量兵器が折り混ざった闘いで、彼女は四肢を失った。

腕は二の腕いささか下より、足は太もも半ばより。
赤い輝きを散らしながら、自分も落ちた。
切断面はウォーターカッターで切られたように酷く美しかった。
傷は治るだろう。

命は残った。
だが、エースオブエース高町なのはは死んだ。
障害者高町なのはは五体不満足。

心電図の音が、部屋にない時計の代わりに刻まれ続けている。
心配の言葉と見舞いが来たのは最初だけだった。
チューブに繋がれながら、虚ろな眼差しのなのはは思った。
もう、憐みの目で見られるのは厭だった。
スバル
ティアナ
フェイト
ヴィータ
シグナム
キャロ
元六課の面子。
特務六課の面子。
教導隊の同僚。
他にも多くの知り合いが来た。
そして誰からも達から憐みの眼差しを向けられ晒される。
傷の痛みよりも、ベッドで横になりながら「かわいそうに」という眼差しに晒されるほうが
よっぽど苦痛だった。
涙が出てくる。
精神的苦痛も、肉体的苦痛も大きい。

一人の時は絶えぬ傷の痛みが現実を意識させてくれる。
腕がない。長年使ってきた手が。レイジングハートを握っていた手が。
足がない。もう大地を踏みしめて歩く事もできない。
両手両足、切断面の傷口は命の鼓動のように痛覚を刺激してくる。

腕と足の感覚があっても、もう現実ではないのだ。
痛みは現実を忘れさせないでくれる。
そしてみんなの眼差しを思い出す。
ループだった。
もう
モルモットか標本になった蟲の気分。
でも、標本は泣かないし
糞尿も出さない。
お腹も減らない。
生きてもいない。

相棒であったレイジングハートも木端微塵に破壊され一人になった。
エースオブエース高町なのはが障害者高町なのは。
笑える話だ。世間ではエースオブエースの死と大々的に報道されたらしい。
まだ魔法も使える。
でも世間は認めないだろう。
どんなに笑顔を作っても。
どんなに素晴らしい想いを伝えても。
皆が褒め称えてくれるエースオブエースはもういない。
認めてくれるのは、誰もが痛い目でみる四肢のない障害者だ。

他の誰かが広告塔となるだろう。
フェイトかもしれない。
それとももっと他の誰かかもしれない。
もしかすればスバルかもしれない。

まだ生きていたしリンカ―コアが損傷した訳ではない。
闘おうと思えば闘える。でも、仮に大空を再び舞ったとしても、一般人の評価は下がるだろう。
何故?
簡単だ。

気持ち悪くて広告にならないからだ。

「嫌だよ」

きっと皆高町なのはを忘れてしまう。ちやほやされる時間は終った。
価値のないものに、誰も見向きもしない。ならばAV女優にでもなるか?
一時は注目されるだろう。だが、世間からは冷たい眼差しを向けられるだろう。
第97管理外世界の家族には、知らせていない。

もうこれ以上、憐みの目に晒されるのは耐えられなかった。
そしてなにより、介護という言葉が出てくれば、なのはは自殺を本意とするだろう。

「もういやだよ……」

717ん、何かありました?:2011/11/01(火) 22:25:24 ID:zjbUOg.c
なのはの苦しみはみんなの苦しみではない。
他人事の苦しみは、自分の苦しみでもない。
向けられるのは、フェイトに至っても哀れが含まれていて声をあげて泣き叫びたかった。
親友が、親友が。

みんなは笑ってる。ほら笑ってる!
新しい格好いいエースオブエースだ!
あはは!
高町なのは? いたねそんな人も。
今どうしてるの?
死んだんじゃね?
四肢なくなったしね。
そうなっちゃうとちょっとね。
気持ち悪いよね。

『大変だね』

『頑張ってね』

『また見舞いにくるから』

『頑張ってください』

『応援してます』

『私達がついてますから』

『負けないで』

何に?
誰が
何に?
何を?

食事も排泄も看護師の手で行われる毎日。
オムツをはき芋虫のように、なのはは生きる。
まだ傷も完治していないから這うことも動く事もできない。もしかすれば芋虫よりも低レベルかもしれない。
赤子か。
もしやそれ以下か。

鬱陶しさ故に。

静かに這い
頬を伝う涙。
あれだけ称えられたエースオブエースも落ちれば落ちるものだ。
皮肉のあまりなのはの口許は笑った。
自殺をしようにも、首を釣るロープの準備もできない。
舌も噛みきれない。あんなの中途半端に苦しむだけだ。
そして自殺防止の為、病院にはAMFがかけられる始末。
涙を拭きたい。
両手で
掌で
指で
指先で
強く
強く

醜いのぅ

醜いのぅ

醜いのぅ

余りの悲しさに笑ってしまった。

「もうやだ……」

嗚咽に浸りながらそう思った。
生き場も、行き場もなかった。
求めるのは死に場のみ。
かつての栄光にすがるあたり、なのはのまた人間であった。
97管理外世界に戻るという選択肢もない。
家族に迷惑がかかる。何より、近所の目が痛かった。
日本という閉ざされた儒じみたご家庭ネットワークはこの病院以上の苦痛だろう。
ここにいたほうがよっぽど幸せだが……

「死にたいよぉ……」

「お願い、誰か殺してよ……」

重圧に耐えきれずそんな願いを出した所でなんの意味もない。
騒げば精神科医がやってきて注射を打たれる始末。フェイトに連れてこられたヴィヴィオからも
いやな目で見られた。あの子は、フェイトが引き取るらしい。

「うううう………」

大丈夫。
自分は大丈夫。
精神科医にそう説明したところで、酔っ払いの酔ってないと思われて然程意味もない。
泣いていると他人事のように尿意が込みあげてくる。なのは用に置かれた特殊なナースコールを押そうと頑張るが、ボタンはベッドの下に落ちてしまう。

「あっ」

718ん、何かありました?:2011/11/01(火) 22:26:32 ID:zjbUOg.c
乾いた音が連続して聞こえるだけ。それで終る。
妙な静けさが恨めしい残された状況は、腹部に溜まる尿意だけだ。
まだ、傷も完治しきっていなくて満足には動けない。
呼ぶか?

大声で呼ぶか?

看護師さんおしっこがしたいんですけどーーーー!

などと大声で呼ぶか? かつてエースオブエースと呼ばれた女が。
侮蔑はなくとも、病院内に知れ渡るだろう。
それが人だ。
これが今のなのはだった。

吐息を挟む間もなく、考えるのもいやになったがそのまま放尿してしまうのも
嫌な気分だった。一瞬の快楽と暖かさが股間を満たすだろう。でも、直ぐに臭くなってアンモニア臭に満たされるに違いない。
押すも引くも地獄。受け入れがたい現状だが、ボタンはコードに繋がれていて、落ちたボタンのコードは垂れ下がっている。
それを口で引っ張り上げようと体を動かした。

同時に激痛に体は蝕まれる。

「あぐ……ッ!」

とても、コードをひっぱれるような状態ではない。
それでも、教導隊にいた程の女なのだ。耐えしのび、がんばろうと決する。
さらに体を動かし、宙にぶらさがるコードを咥えようと体が動く。

後少し。
後少し。

そして、咥えたと思った刹那。体はベッドから落ちる。
声を上げる間もなく、ぼとりと落ちる。さらなる痛みが来訪し、床の上でなのはは苦悶に打ちひしがれた。
こうなれば人も蟲も変わらない。
人も、弱ければ蟲以下だ。
踏みつぶされる存在が今のなのはなのだ。


「なのは!?」

苦しみ、床に転がっていると驚きの声が耳に届いた。
目を向ければ、そこにはユーノがいた。声と同じく驚きの表情をしている。

「平気?」

尋ねられるが、なのはは応えずに無言だった。
体はユーノの手で抱え上げられ、いとも簡単にベッドに戻される。
俗にいうお姫様だっこだが。
嬉しくも
何ともなかった。

抱えあげられる蟲だった。

「気をつけて。痛い所はない?」

親切丁寧な言葉にも無言だった。それでも、ユーノが嫌な表情を一つも見せる事はない。

「あのね、今日は……」

手荷物をガサガサ音立てながら、何か話始める。
目をそむけたまま、なのははは聞く意思を見せない。
それでも、ユーノは健気だった。

結局、なのははユーノの前で漏らした。
下腹部が暖かくなる。
やはりおむつからはみ出たらしい。ユーノが慌てるのを他人事のように眺めていた。
婆捨て山が欲しい、となのはは思った。
涙はでなかった。
人が故か。

故に人か。








傷が治り始めて、季節が変わり始めた頃。退院の話しが出て、なのはは施設に入る話を医者にされる。
私生活で一人で暮らしていくのは無理だし、そういった場所が妥当と判断されたのだろう。そして、
なのはもまたそれを拒みはしなかった。

蟲は生きて、死ぬ。
人のような感情は持たない。
それだけだった。

見舞いはある人物を除いて誰も来なくなり、価値も無い応援のメールだけは来る。見るのは億劫になり、なのはは
日がな一日、外を見て過ごす事多くなった。たまにフェイトも来るが、向けられる眼差しに耐えられないので帰ってもらった。
見舞いの人間に苦痛を齎される見舞いなど意味がない。どんだけ、となのはは思った。後はユーノだけだった。確かに、彼も当初は憐みの
目をしていたが、いつの間にやらそういうものは無い。ある意味、ささやかな救いだった。

「あのね、この前……」

719ん、何かありました?:2011/11/01(火) 22:27:23 ID:zjbUOg.c
ユーノは病室に来ると、色んな話をする。
旅の事、なのはが知らない管理内世界の事。管理外世界の事。世界情勢。食べ物や人の話。なんでもした。
聞くのも嫌だったなのはだが、誰も来なくなり毎日来るユーノをむげにはしなかった。もとより友人だ。
何度か癇癪はおこしたものの、彼は丁寧に対応をして無難にやり過ごした。

「それでね、今日はね」

「ん……」

窓の外を一見ながら話を聞いていた時の事。

「僕と結婚をしてほしいんだ。なのは」

窓の外では木枯らしが吹き、裸になった木についていた最後の一枚の葉がはらりと落ちていく。
飛んでも無い言葉の聞き間違いか、なのははユーノを見た。

「は?」

ユーノは真剣なまなざしをしていた。
逃げない真っすぐの瞳でなのはを見ている。
胸が疼いた。でも、なのはは逃げた。

「何を言っているの、ユーノくん。
おかしいよ」

目を反らす。胸の中は驚きに満ちていたが、同時に喜びも芽生えていた。
蟲が結婚なんて浅ましい。
卑屈な心は否定する。

でも首を横に振られる。

「おかしくない。
僕はなのが好きで、結婚したいんだ。
憐みや虚栄心で結婚しようと思うんじゃない
一生隣に居て欲しい。一生、僕は傍にいたい。
一緒に生きてほしい」

締め切られた窓の外から、乾いた風の音が聞こえた。
窓の外を一瞥し続ける。

「ありがとう。凄く嬉しい。でも、ごめん」

「……」

俯く。心の中はさめざめと泣いていた。
友人への申し訳なさと嬉しさと、自分の体と憎しみをこめて。

「そっか、それじゃまた明日頑張る」

「(……は?)」

「それじゃ今日は諦めるよ」

飄々とユーノは言ってのけた。一瞬、この男頭大丈夫かとなのはは疑いたかったが、
ユーノはユーノのままだった。彼にこの体で求婚もとい求愛されるのには驚いたが、
驚くのはこのこの日だけではなかった。

「なのは、結婚しよう」

「やだ」

毎日毎日、ユーノはプロポーズしてくる。昔馴染み故か、なのはの感情の塩梅もうまい。
嫌がらせにならぬよう笑いを齎す求婚はいつまでも続いた。そして、なのはも気づけば笑っていた。
でもなのははイエスとは言わなかった。

「(嬉しいけど……)」

やはり、自分の体が原因らしい。そう考えると、如何ともしがたかった。
でもユーノの求婚は続いた。あまりにも毎日毎日続くので、本気か尋ねると
ユーノはいたって真面目に答えた。本気だと。子宮が疼いた。

男に愛される事を思えば濡れそうになる。こんな体になって子供など望めないとばかり思っていたのは
当然か。ある日の夜。なのははユーノに抱かれる夢をみた。ユーノはひどく優しかった。癒えた四肢を舐め
愛撫し抱きしめて交合してくれる男の姿に、夢ながら惚れてしまった。

でも、どうしても夢は夢だ。
気遅れするなのはだが、ある日ユーノは大胆な行動に出る。
病室で交わったのだ。なのはも驚いたし25にして初めての性交は痛みを伴ったが、夢の通りユーノは優しかった。
求婚はいつでもされる。だから、なのはは言った。結婚しよう。と。嫌になったらいつでも別れてくれて構わないとも。

ユーノも喜びから首を横にふった。
ずっと一緒にいよう。と。
久しぶりに、なのはから喜びの涙がこぼれ落ちた。

720ん、何かありました?:2011/11/01(火) 22:28:19 ID:zjbUOg.c

やはりネガティヴに生きるよりもポジティヴに生きる方が、人生にはいい薬となる。
なのはは自分を障害者として認め、四肢のない自分と向かい合いながら他でもない自分自身と闘った。
隣には、いつも頼れる旦那がいる。

やはり空気が大事らしい。フェイト達の目も、次第に憐みから応援の目に変わり、
一時は距離をおいていたのも少しずつ戻るようになっていた。いいことだ。
全てが順調だった。少々の憐みは気にしない事にしたなのはだった。やはり、強い女だった。

なのはは退院するとユーノと結婚しミッド内の住まいで暮らし始めある日の連休、ヴィヴィオが泊りに
きたい、という要望をだしたとかでフェイト宅からやってきた。そして、将来はなのはを介護すべく
介護士になりたいという夢を語ってくれた。今も娘と呼んでよいのか迷ったが、健気なヴィヴィオになのは嬉しかった。
もう、泣いてばかりの幼い娘はいない。それが寂しくもあり嬉しかった。

久しぶりにヴィヴィオと、そしてユーノとも川の字で眠った。満足だった。
それからというものの、月1のペースでヴィヴィオは泊りにくるようになった。
そんな連続してくるわけでもないし、もとよりなのはは拒まなかった。

無論ユーノも
歓迎した。

落ち着いた感情。
波も無く喜びの満ち引きに静かに揺れている。
目を閉じれば静かな微笑みが称えられる。
ゆりかごで揺られるように、人の愛しみという歌に乗せて。

「………………………」

冬。ヴィヴィオが泊りにきていたある日の夜。体の気だるさに気付き、なのはは目覚めた。
ベッドの中の暖かさとは裏腹に、空気は張り詰め酷く冷たい。

「(トイレトイレ……)」

ベッドから抜け出すと、弾むように体を動かして移動する。
当初はユーノに解除してもらっていたが今は一人でもできる。
前向きさの賜物だ。だが、部屋を出てリビングに出た時違和感に気付いた。
ベッドには一緒に眠るユーノも
ヴィヴィオもいなかった。

「(あれ? そういえば……)」

尿意に気を取られて失念していた。どうしたんだろうと思った時。
リビングに人の気配を感じた。泥棒? という疑問と恐怖が現れるがそれは直ぐに打ち消される。
ただの
まぐわいだった。
ユーノと、そしてヴィヴィオの。

「(え……?)」

明かりもつけずそして暖房も無い廊下で、同じく暗いリビングで交わる二人に目を疑った。
まだ闇に慣れていなかったが、それでもじっと目を凝らす。

「(え? え?)」

信じたくないが故か。なのはは戸惑った。もとい、戸惑い続けた。
目を見開きじっと凝視する。ヴィヴィオの喘ぎ声が漏れて聞こえていた。
ユーノの楽しそうに女と交わる声も聞こえてきた。
あれ


あれ?


あれ……

「………………………」

なのはは、凝視し続けた。

721ん、何かありました?:2011/11/01(火) 22:29:26 ID:zjbUOg.c

「ああ、いいよヴィヴィオ。なのはと結婚してよかった。やっぱり幼女だよ。幼女。
ババァは駄目だよ。ヴィヴィオ、ヴィヴィオ、ヴィヴィオいいよヴィヴィオ!」

名前を呼びながら
腰を振る雄がいた。
唇が渇くのをなのはは感じていた。
でも、舌は拭わなかった。
こぼれ落ちそうで落ちない涙に、落ちろと自ら念じた。
でも落ちそうで落ちてくれない。

ヴィヴィオも拒絶の気はなさそうだった。
楽しそうに揺れる足も覗く。
これは裏切りか。
それとも異なるものなのか。

なにを憎めばいいのか。なのははよく解らなかった。
同時に、胸に穿たれた痛みを堪えるのが辛かった。
娘に旦那を寝取られたのか。
はたまた旦那は娘と性交したいが為に自分と結婚したのか。
涙がなのはの頬に伝った。

それは悲しみか、それとも怒りか。何なのか。
二人の性交をなのはは凝視し続けた。
そこには、怒りを持たぬ静かな鬼がいた。
夜叉となった一人の女が我が家へと涙を注ぐ。

こぼれ落ちる無情。

響くことのない喜びの声。
これからの愛は偽りだろう。
悪鬼羅刹になろうてか。
二人を殺す事。
二人を許す事。
多様な考えが浮かんでは消えていく。

それが生の証明か。

どちらかに、どちらかの生首を送ろうかとなのはは考えた。
優しさと切なさの擦れ違い。娘への嫉妬は、濡れる股間に比例していた。
ポジティヴか?
ネガティブやろか?
どちらで、生きよか?


なのはは二人のまぐわいを注視し続けた。
ユーノがヴィヴィオの膣内射精し、一息つき口づけを始める間際まで。
それから、トイレには行かずにベッドに戻った。
尿意は消え去り、変わりに在るのは穿たれた感情だった。

そこで初めて悲しみが去来しなのはは涙した。
枕を濡らす夜だった。



翌朝、ユーノは普通にふるまっていた。
なのはも気づかれないようにふるまった。
だが、どうしても心が痛かった。

「おはよう、なのは」

「お、おはようユーノ君……」

ババァは駄目だ、といった昨日の言葉を思い出し尻込みしてしまう気がした。
それを隠そうと努力するが

「おっはよー、なのはママ♪」

ヴィヴィオも元気だった。

「おはようーヴィヴィオー」

「ユーノくんもおはようー」

そこで、なのはの感情は反転した。

「(何?)」

そこで初めて、ある感情が生まれた。
ヴィヴィオに対して放たれる痛烈な感情。
嫉妬だ。

ユーノを奪われて醜い感情が生まれたのだ。

「(………………)」

心が冷えていくのを感じた。今し方までびくびくしてのたが嘘のよう。
それでも目の前は二人は笑顔だ。よく笑いとても楽しそうにしている。
もとい、ユーノもヴィヴィオと結ばれる為に結婚した。とでも言っていたではないか。

そう思うとなのはの顔から笑みが消え失せた。
愛してもいない男とその愛人。
騙してくれた男と血のつながらない元義娘。

嫉妬は憎しみを呼びに憎しみを引き摺った。
どうしようもこうもない。反逆の力が滾々と湧き出てくる。

なのはは、ただ、どちらの首を引きちぎろうか考えた。
五体、不満足。
恋愛、不満足。
人生、不満足。
殺人、満足。

首を引きちぎろうと思った。
でも手はない。


「ん、何かありました?」
完。

722テルス・サーギ:2011/11/01(火) 22:30:28 ID:zjbUOg.c
以上です。ちょっと投稿量見誤ってしまいました。
すみません……。

723名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:36:21 ID:RaaAVWx2
なんか、サイコスリラーが始まりそうな…

724名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:37:33 ID:5YKK4uI6
心臓がぎゅってなった。

725名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:42:24 ID:.mOgJXTs
がんばれなのはさん。

っ 戦闘機人

726名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:48:05 ID:3.teH9zs
俺も戦闘機人なのはさんが始まるかと、思ってた

727名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:56:50 ID:RaaAVWx2
左腕に魔道ガン

728名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 22:59:16 ID:uDw2aCBY
戦闘機人ジェラシーなのは、はじまります

729名無しさん@魔法少女:2011/11/01(火) 23:18:51 ID:2I/qsjR6
面白いんだが、「流石に義肢使えば?」と思わざるを得ない

730名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 00:25:40 ID:k1jBGHBI
クローン技術があるんだし、再生医療も確立してそうだよなあ
まあそれいったら、ヴァイスの妹の失明も治せそうなもんだが

731名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 00:39:06 ID:wNoEDabU
とはいえ、クローンの製造は違法。戦闘機人への改造も人権擁護の観点から本来は違法であるし。
再生治療と言っても、欠損部位がうねうね生えてくるような魔法もないだろう。
仮にやるとしても、オーバーSランクの実力がなければ無理なのでは。

ここはあえて600万ドルかけて義手と義足を開発してみるとか。

732名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 07:25:56 ID:pwA9EZ8M
無粋だが、これ魔法を失わなきゃ成立しないネタだろう

素で飛べる人が寝たきりに甘んじるとかないような
バインドとかも使えるから物の保持とかも困らないし
一人でも余裕で日常生活送れそう

733名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 08:37:30 ID:WiRVOiEg
江戸川乱歩の芋虫とダース・ベイダーを思い出した、ミッドチルダならダース・ベイダーのような自由な義肢が造れそうだが…

734黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:05:48 ID:CjqBwGS6
黒天です。欝祭りの最中で恐縮ですが投稿します。

「ほう、相当、攻め抜ぬかれた様ですな。騎士カリム、シスター・ディード・・・如何ですかな、我々の持て成しは、お気に召して頂けましたかな?」

「き、気に入る訳が・・・んぐ、むっ!?・・・ちゅる・・・ああ、ひ、あん・・・お尻を突かないでぇ・・・はあ、感じて、ああん・・・許して、」
「・・・騎士カリム、ひぅ!?・・・あ、嫌ぁ・・・胸を揉まないで・・・い、痛い・・・先を摘まないで・・・お願いです、もう・・・やめてください」


枢機卿は2人の懇願の言葉になど、全く耳を貸さず、手を打ち鳴らして、彼女達を思うがままに嬲っていた男達に次なる指示を下した。
「それでは・・・そろそろ次の段階に行きましょう。お2人をあの魔方陣の中心に連れて行きなさい」
「承知しましたぜ、へへ・・・そろそろ普通に嬲るのも飽きてきた所だ」
「ほら、こっちに来いよ、お二人さん」

部屋の一角に病的に紅い――まるで鮮血の様に――色で彩られた巨大な
2つの魔方陣があった。その魔方陣の中心部分にそれぞれカリムとディードは無造作に、まるで人形の様に放り出された。
そして、次の瞬間、魔方陣の周辺から、おぞましい粘液に塗れた、数十本にも及ぶ触手の群れが出現し、陵辱され続けて完全に抵抗する気力を失っている彼女達の身体を絡め取った。


「・・・ひ、嫌ああぁぁぁっ!!・・・こ、これは一体、何ですか、嫌・・・止めて、体の彼方此方を這い回って・・・気持ち悪い・・・」
触手達は手始めにカリムの方を獲物に選んだらしい。
身動きの取れない彼女の身体をぬめった触手が音を立てて這いずっていく。
首筋を這い回る触手の感触のおぞましさにカリムは嫌悪感を露にして、必死に身をよじるが、無駄な抵抗に過ぎなかった。触手はカリムの豊かな双丘に絡みつき、男達の精液が溢れ出す前後の穴にも向っていく。
それに反応してカリムの喉から引きつった声が漏れた。
「・・・いや、いやぁ・・・止めてぇ・・・気持ち悪くて・・・ひぐっ・・・」
触手の先端から分泌される粘液によって、瞬く間にカリムの全身はドロドロに汚されていく。カリムの胸には触手はグネグネと蠢きながら、いやらしく絡みつき、豊満な双丘が不自然な形に歪み、荒々しくこね回されていく。



「・・・ひ、ぐっ・・・い、痛い・・・そんな胸を弄り回しては・・・駄目ぇ・・・」
余りにも激しい刺激に晒され、カリムの口唇からは苦痛に満ちた喘ぎ声が
漏れた。その一方で股間に回された触手は、カリムを焦らす様にゆっくりと、這いずり回っていた。秘裂に当てられた長い触手が一気にズルズルと動き、桁違いの快感をカリムに送り込む。
「んあ、ああ・・・こんな事おかしいのに・・・なのに・・・ああん・・・」
触手に絡み取られた両足はヒクヒクと震え、カリムの口からは艶めいた嬌声が漏れ始めた。執拗に責め立てられる乳房は微かに赤みを増し、その桜色の先端は触手で捏ねられて、傍目にも解るほどに硬くしこっていた。

735黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:08:02 ID:CjqBwGS6
「・・・は、あ・・・駄目なのに・・・気持ちが良くなって・・・ああっ、ああ――!」
異形に嬲られ、理性を揺れ動かされながらも成熟した女の体は、絶え間ない快感に抗えなくなっていく。更に触手はブルブルと震えながら、一斉にカリムの口唇、そして前後の穴に殺到した。
「・・・・おぐ、んぐううぅぅぅぅ―――!!」
体中の穴という穴を貫かれ、カリムは全身を波打たせた。
息が出来ないほどに咥内を埋め尽くす触手を吐き出すが、間髪いれずに別の触手が入り込む。涙をにじませながらも、それが苦痛を和らげる手段とでも言う様にカリムは咥内の触手に舌を絡めていく。
「・・・んむ、ちゅ・・・じゅる・・・はむ・・・」
カリムは触手を舐めながら、半ば無意識の内に喉を鳴らして、触手から分泌される粘液を飲み干していた。それに満足したように触手達は粘液を大量に出しながら、カリムの前後に凄まじい刺激を与えていく。
2つの穴に触手が激しく出入りし、カリムの下腹部は何か別の生物が住んでいるかのように蠢く。そして触手達はカリムの穴を責め立てる一方で、全身の性感帯を刺激した。その余りの快感にカリムは身体をくねらせて、その口からは涎と粘液が交じり合って垂れ落ちた。

やがて粘液に含まれた催淫物質がカリムの身体に本格的に回り始めた。
最早、快感に溺れきったカリムは、はしたなく尻を振っておねだりしながら、無我夢中で触手にむしゃぶりつく。
「・・・んぐっ・・・前と後ろ、お口にまで・・・んぐ、む、ちゅる・・・はあん・・・お尻をもっと苛めてぇ・・・んむ、はあっ・・・んむ、ちゅる・・・」
リクエストに応えるかのように触手も尻穴に入り込み、容赦なく攻め立てる。身体を火照らせたカリムは肉付きのいい美尻を振り立て、送り込まれてくる快感を全身で貪っている。


「・・・ん、ああ・・・もう、もう・・・駄目ぇ・・・ああっ!」
息も絶え絶えと言った様子のカリムが身体を震わせそうになった瞬間、触手の動きが弱まった。絶頂の一歩手前で刺激を中断されたカリムが切なそうに身をよじらせると、触手は焦らす様に刺激を加えて行く。
「・・・ふ、んあ・・・はあっ・・・き、きそう、ああ・・・イってしま・・・う・・・んん・・・」
だがカリムが豊満な肢体を引きつらせて達しようとする度に、触手は動きを中断させてしまう。絶頂の手前で愛撫を止められ、おまけに快感の度合いを引き上げられて、カリムは悲鳴交じりの嬌声を上げる。

「・・・も、もうお願い・・・こ、これ以上は狂ってしまう・・・ああ、耐えられない・・・いかせて下さい・・・んぐ、む、ちゅる・・・」
喘ぎ混じりでカリムは声を絞り出し、まるで懇願するかの様に目の前の触手を咥え込み、ネットリと舐め上げた。その痴態に気をよくしたか、触手はまるで人間が先走りを迸らせるかのように大量の粘液を吐き出した。
そして触手も耐えかねていたかのように自らを大きく震わせ、カリムの穴という穴を一気に突き上げる。
「・・・んあああぁぁぁ――――!!」
カリムの身体が激しく震え、絶叫が当たりに響き渡る。同時に何かが弾ける様な音がして、全ての触手の先端から白濁した粘液が迸った。
絶頂の余り大きく開かれたカリムの口にも、まるで狙い済ました様に幾本もの触手が白濁液を放出する。
「・・・んぐっ・・・む、はぐ、ごくっ・・・はあ、ん・・・」
快感と苦痛の入り混じった涙を流しながら、カリムは咥内を埋め尽くす粘液を従順に喉を鳴らして飲み込んでいく。

736黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:10:07 ID:CjqBwGS6

とりあえず満足したのか触手はカリムを解放する。
ようやく解放されたカリムだが、これだけでは終わらない。
カリムの痴態に興奮した男達は血走った目をしながら彼女を取り囲む。
「・・・はあはあ、いやらし過ぎるぜ、収まりがつかねえ・・・責任とってくれよ」
「ディードちゃんも悪くないが、俺はやっぱりアンタの方がいいな・・・」
「変態聖女様・・直ぐにお尻に俺のコレを突っ込んでやるからな」

「ひ・・・い、嫌ぁ・・・こ、来ないで・・・はあっ・・・こ、これ以上は駄目、止めてぇ・・・ああ・・・この匂い、身体が疼いて・・・」
消え入りそうな声で呟くカリムを尻目に男達は、もう我慢が出来ない様子でその豊満な女体に四方八方から手を伸ばし始めた。
「そら、ぶっといチンポをくれてやる!! 存分に味わえ!」
「よし、俺は尻を頂くか。お尻を犯されて喜ぶ物凄い変態聖女様、ほーら・・・入っていくぞ、しっかりと面倒見てくれよ」
四つん這いに組み敷かれたカリムは大した抵抗も出来ずにあっさりと二本の剛棒で前後の穴を塞がれてしまった。
「へへ、お尻が美味しそうにくわえ込んで来るぞ・・・相当の好き者だな。清楚な顔をしている癖になんて女だ・・・」
「まあ、いいじゃねえか・・・こんなにいい身体してるんだ。存分に楽しませて貰おうじゃないか。前の方の締め付けも悪くないぜ」

前後の穴を犯す男がそれぞれ動きを合わせて突き上げてくる。
休み無く襲い掛かってくる快楽の波に翻弄されるカリム。
既に彼女の頭の中は快感で真っ白になり、流麗な金髪を振り乱す。
そんな彼女の正面に陣取った男がカリムの頭を掴み、硬く滾った肉棒をその柔らかい唇に押し付ける。肉棒の先端で唇をなぞられている内にカリムは口を開いてしまい、根元まですんなりと肉棒を迎えいれてしまう。
「貴女の痴態を見ていて、こうなってしまったんですよ・・・責任を持って、処理してください・・・」
「・・・はい・・・んぐ、む・・・ちゅ、んむ・・・はあっ・・・ちゅ・・・」
熱く滾る肉棒を口一杯に頬張り、余分な唾液を垂れ流しながらカリムは目を瞑って舌を動かし続ける。その間も男達は容赦なく腰を動かし、その動きに身体を揺さぶられながらも、カリムの意識は快感を求め始めていた。

咥内の肉棒の隅々まで舌を這わせ、先走りを余さず舐め取っていく。
一方で前後の穴をグイグイと締め付けて肉棒を攻め立てる。
「・・・ああんっ・・・もっと激しく・・・気持ちよくしてぇ・・・お尻をもっと苛めて・・・クロノ提督、私はこんなに淫乱になって・・・しまいました・・・」


「ち、お尻を犯されて悦ぶ上、妻帯者に横恋慕か・・・ミッドが一夫多妻制OKだからって、これでは聖職者失格だな・・・くくく・・・」
「ああ、全くだ。こんな淫乱がトップじゃ、聖王教会の行く末が心配だぜ」
男達の嘲笑の言葉も耳に入らず、尻穴を剛棒で蹂躙されながらカリムは
激しい快感に溺れている。
最早、その姿は聖女ではなく、快感を貪る淫蕩な雌猫に過ぎなかった。

737黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:11:55 ID:CjqBwGS6
一方、触手は第二の獲物であるディードを本格的に嬲り始めた。
穴という穴に触手が突きこまれ、容赦なく貪り、カリム以上に豊潤な肢体が下賎な触手の粘液でドロドロに穢されて行く。
その光景に周りを取り囲む男達は生唾を飲み込んだ。

「ああ、い、いや・・・も、もう止めて・・・ひあ、ひぐっ・・・ああ、胸を弄り回されて・・・・んん、恥ずかしい・・・酷い、ああ・・・むぐ、んぐ・・・ひあっ・・・」
懇願の言葉を口にしても直ぐに触手で塞がれてしまう。
周りで見ている男達はディードの痴態に興奮して、荒い息を付くだけだ。
絶望的な気分になりながらディードは涙を流して触手の嫌悪感を振り払おうと頭を左右に振った。そんな事をしても現状に変化は無い。

やがて触手はディードの身体に纏わり付き、淫らな粘液をすり込んでいく。
焼ける様な熱さに身体の芯に感じて、ディードは熱く溜息混じりに喘いだ。
「・・・んん、ひ、あん・・・段々、気持ちよくなってくる・・・ああ、こんな嫌なのに・・・絡み付いて・・・熱い、身体が熱いの・・・むぐ、ちゅる・・・」
ディードは戦闘機人である。快感への耐性は人一倍ある筈だった。
だが、この触手はディードの身体構造がある程度、常人と違う事を察知し、
カリムに対して使った時よりも、更に数段強力な催淫物質をディードの身体の隅々までたっぷりと塗り込んだ。
それによってカリムの痴態を目の当たりにして、無意識に身体を火照らせていたディードの身体は、いとも簡単に快楽の無間地獄に転げ落ちていく。
それでも必死に抗おうと、ディードは意識をしっかりさせようと身体を揺するが、かえって身体の火照りを加速させてしまうだけだった。

「ひ、あん・・・大勢の人に見られて恥ずかしいのに・・・ああ、私は気持ちよくなってる・・・はあ・・・んあ・・・」
大勢の男達に視姦されながら、触手が全身を無遠慮に這いずり回る感触にディードの身体は敏感に反応し、何ともいやらしい。

「・・・んぐ、むぅ・・・喉の奥にまで・・・あぐ、はぁ・・・んん、ちゅる・・・」
喉を貫かんばかりに触手が咥内を犯され、ディードの口の端からは泡だった液体が溢れかえる。同時に前後の淫穴からは、触手が出し入れされる度に卑猥な音が鳴り響く。
「ぐへへ・・・とんでもなくいやらしいな」
「ああ、淑やかな外見に似合わない、エロボディで人気者だった聖王教会の修道女ディードちゃん、もう最高だぜ」
「ほら、もっとよがって、俺達を楽しませてくれよ」

男達の言葉に答えたのかは解らないが、 触手は更にディードを激しく嬲り始めた。全身に粘液をたっぷりと擦り付けられ、身体の中も外も触手で徹底的に蹂躙されている。最早、ディードの頭の中は羞恥と快感、絶望で満たされ、強制的に発情させられた身体も色っぽく紅潮していた。

738黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:12:58 ID:CjqBwGS6
中でも触手が力を入れて嬲っているのが、ディードの豊満な乳房だった。
絶妙な張りと柔らかさを持つ、2つの白い果実に数本の触手が絡みつき、
男達の欲望を代弁するかの様に緩急を付けて締め付けながら、先端の突起を執拗に擦り上げる。
「・・・んむ、ひぐっ・・・ちゅる・・・んぐっ・・・はあ、んはあっ・・・」
咥内を蹂躙する触手の先端からも大量の催淫物質が吐き出され、ディードは無抵抗にそれを飲み込まされてしまう。底知れぬ快楽の渦に飲み込まれていくディードの瞳から徐々に理性と意思の光が消えていく。

「ああん・・・もう、駄目ぇ・・・お口も胸もお尻もオマンコも・・凄く気持ちいいの・・・は、あん・・・私のいやらしい姿、見られてる・・・ああ・・・はん・・・」
理性が弾け飛んだディードは天を仰ぎ、その拍子に触手が外れてしまうが
再び、触手が突き込まれる。その触手に熱心に舌を絡ませながら、ディードは美味しそうに粘液を啜り上げる。
「・・んむ、ちゅる・・・美味しい、こんな駄目なのに、止まらない・・・ユーノさん、私、このままじゃおかしくなって・・・助けてぇ・・・あむ・・・んむ、はあ・・・」
無意識の内に想い人へ助けを求めるディード。その間も数え切れない程の触手がディードの身体中を這い回り、穴という穴を激しく陵辱している。
尻穴も極太の触手で無理矢理開発され、前の穴を犯す触手とは違うリズムで蠢き、実に卑猥な水音がクチュクチュと響く。

「はぐっ・・・んん、はあっ・・・んぐ・・・うう、い、あん・・・ちゅ、はあん・・・」
息も絶え絶えになって来たディードは辺りに響き渡るような絶叫を上げ、全身を痙攣させて、絶頂に達する。激しく執拗なまでの容赦ない触手の攻めに、ディードは負けてしまったかのように悶え狂う。


絶頂の余韻に浸る暇も与えずに、触手は飽きる事もなく蠢き続ける。
絶頂に達した事でディードの秘所からは大量の淫らな蜜が溢れ出し、それを潤滑油代わりに触手がより激しくピストン運動を行う。
ディードのあらゆる穴を犯す触手達が次第に目にも留まらぬ速さで、抽送を繰り返し始める。触手は活発に蠢き、それによってディードの肢体はガクガクとまるで玩具の様に揺さぶられる。
「・・・も、もう止め・・・て、下さい・・・あ、はあ・・・あぁぁ―――!!」
粘膜が擦れまくる音が鳴り響き、それすらもかき消す様な大絶叫を挙げて、ディードは何度も絶頂に達してしまう。

そしてようやく触手の先端からもおびただしい量の白濁液が噴出した。
口、前後の穴からも大量の白濁液を流し込まれて、ディードは苦悶の表情を浮かべるが、触手は更に奥深くまで侵入する。
中からだけでなく外からも、その全身にめがけて無数の触手がスコールにも匹敵する白濁の雨を降らせていく。
「ひっ・・・あ、ああ・・・嫌ぁ・・・身体中にかけられて・・・中にまで入ってきて・・・汚されて・・・誰か、オットー、ユーノさん、助けて・・・」
触手は満足したのかディードを解放した。
身体の内外まで蹂躙され、白濁塗れになったディードは声にならない悲鳴を挙げた。助けを求めても救いの手は差し伸べられず、代わりに男達の屈強な手が彼女の身体を無理矢理に抱き起こす。

739黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:14:50 ID:CjqBwGS6

「・・・も、もう許して・・・せめて少し休ませて・・・」
「駄目だな、相方を見てみろよ、あんた以上に滅茶苦茶にされても、気持ち良さそうによがってるじゃないか」
男の言葉を受けて、絶頂の余韻から立ち直り、理性を取り戻したディードは指差された方に視線を向けた。


その視線の先には――

「ああ、むぐ、じゅぷる・・・もっと、滅茶苦茶に、突いてぇ・・・ちゅる・・・」
魔方陣の中心で完全に爛れた快楽に溺れ、肉欲の虜となったカリムの姿があった。仰向けにさせられ、その下に男が寝そべり、膣穴を硬い肉棒が貫き、尻穴と口も同様に性欲処理の道具にされている。更にその周りを残った男達がグルリと取り囲み、一心不乱に肉棒をしごきたてている。


「くく、よく締まる尻だな、おら、こうすると気持ちいいんだろ!!」
「うう、たまらんぜ、肉襞が絡みついて・・・締め上げてくる・・・」
「舌も吸い付いてくるぞ、くくく、美味しいですか、聖女様?」

すっかり上気したカリムの肌には、粘っこい白濁が張り付いている。
それだけではなく、神秘的な輝きを放っていた流麗な金色の髪にも白濁が、べったりとこびり付いていた。
「あむ・・・はい、美味しいです・・・熱い精液、たくさん注いでください・・・はむ、ちゅる・・・私は淫乱な・・・お尻を犯されて悦ぶ雌猫です・・・はあ、ちゅる・・・」
むせ返る様な雄の香りにうっとりしながら、カリムは貪欲に、熱く滾る肉の棒を舐め上げた。同時にいやらしく下半身をくねらせ、前後の穴に捕えた肉棒を攻め立て、卑猥な水音を漏らす。


「ほら、もう完全に淫乱になっちまってるだろう? 心配しなくてもアンタも直ぐにああなるんだぜ?」
「そうそう、さっきまでアレだけ気持ち良さそうによがってただろう?」
「ぐへへ、ディードちゃん、たっぷりと可愛がって気持ちよくしてやるよ」



「い、嫌です!! わ、私は・・・屈したりは・・・ひぁん!!・・・ん、あぁ・・・」
未だに火照りが残る身体を男達の手によって弄られ、ディードは思わず嬌声を漏らしてしまう。特に男達の視線を釘付けにする豊満な乳房に加えられる攻めは苛烈だった。ある時は握りつぶさんばかりに、ある時は優しく触れる程度に、それがランダムに繰り返される。そして止めとばかりに硬くしこった先端を摘み上げられる。
「んん、はあっ・・・ああん・・・駄目ぇ・・・止めて・・・お願いです・・・」
「おやおや、こんなに可愛い声を挙げちゃって・・・ディードちゃんは、堪え性がないなあ。ここも硬くさせちゃって・・・」
「へへ、本当だなあ、大きな胸をしてるのに、先っぽの方は小さいピンク色で大人しい・・・ほら、吸ってやる・・・ちゅ、んむ・・・」
「耳にも息を吹き込んでやるぞ・・・どうだい? くすぐったいだろう?」
「ひ、ああ・・・す、吸わないでぇ・・・耳に息を吹き込まないでぇ・・・」

身体を男達の手でいいように弄ばれ、ディードは快感と屈辱に入り混じった、悩ましい喘ぎを漏らす。そんな中、祭壇――この建物は一応、聖堂の体裁は整えてあったのだ――にディードは何となく視線を向けた。

そこで彼女は信じられない「モノ」を見た。

740黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:16:15 ID:CjqBwGS6
第一印象は――せせら笑いを浮かべた下卑た蟇蛙だろうか――
しまりのない口元からは涎が絶えず流れ出ており、足は蹄で、腕の代わりに数本の触手が垂れ下がっている。

想像を絶するほどに不愉快で冒涜的な怪物が祭壇の方――正確には祭壇に置かれた黒い石碑。
その側で、男達に陵辱の限りを尽くされている自分とカリムを見下ろし、吐き気のする下卑た笑いを浮かべている。

アレは何だ。あの黒い石碑は何だ。
自分以外の者はアレの存在に気付いている様子は無い。
アレ―即ち、怪物の事だが――その姿は少し注意深く観察してみると、その姿越しに薄っすらと壁が透けてみえている。陽炎の様に実態が無いのだ。
ディードは生物としての本能から、あの怪物がこの世界に居てはいけない「異物」なのだと理解した、否、理解させられた。
見ているだけで気が狂いそうになる程におぞましい。
それこそ男達に陵辱されている、この現状の方がマシに思えてくるくらいに。

ディードは本能的な直感に突き動かされて怪物――その姿から≪蟇蛙≫と呼ぶ――から視線をそらした。肉体ではなく、精神を、魂そのものを嬲られている気がしたからだった。

≪蟇蛙≫に気を取られていたのは、一瞬の事だったらしい。
気がついたらディードを嬲っている男の1人が彼女の身体を持ち上げて騎乗位の体勢をとらせていた。そして硬く勃起した肉棒が、ディードの淫蜜を溢れさせている秘所に勢いよく突き込まれた。

「ああ、はあっ、お、奥にまで刺さって・・・い、嫌ぁ・・・中でグチュチュって・・・」
「くう、入り口は緩いのに、奥の方はきつく締め上げてきやがる・・・おまけに肉襞がザラザラしてたまらねえ・・・俺達に犯されている内に、このエロエロな身体が開発されちゃったのかなあ?」
「そ、んな馬鹿な事・・・んん、はあ、ひあぁっ!!」
頑なに否定しつつも火照りはディードの身体を確実に侵食し、催淫物質の働きも加わってあって、唇から甘い声が漏れる。
そんな彼女の前に1人の男が立ち、赤黒く勃起した肉棒を、その眼前に突きつける。その意味する所は1つだった。

「俺のコレを綺麗なお口で掃除してもらおうか・・・さあ、早くしろよ」
「はい・・・解りました・・・んむ、ちゅ、はむ・・・じゅる・・・ふちゅ・・・」
ディードは諦めた様に肉棒を咥え、舌を動かし始めた。
咥内の肉棒の放つ臭気に何度もむせ返りそうになりながらもディードは懸命に舌を使ってカリをしごく。その間にも後ろに陣取った男がディードの重量感に溢れる乳房を握り潰す様な勢いで揉みたてる。他の男達も見ているだけでは飽き足らず、ある者は乳房を揉むのに参加し、また、ある者は肉棒をこすり付ける。白い極上の2つの果実が穢されていく。
それがディードの性感を刺激し、彼女の内部で燻っていた、肉欲を狂おしく、激しく燃え上がらせていく。

741黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:17:49 ID:CjqBwGS6

「あっ・・・はあ、んん、ひぅ・・・はぁんっ・・・ああ・・・んん、ちゅる・・・じゅぷ・・・」
胸を弄り回されている内にディードの顔から急激に嫌悪の色が薄れていく。
快感に瞳を潤ませ、肉感的な肢体を扇情的に振るわせ、醜く穢れた肉棒にむしゃぶりつく。チュパチュパと卑猥な音を立てながら、美味しそうに粘っこい先走りを啜り上げる。
「はむ・・・ちゅる、んむ・・・じゅる・・・身体が火照って・・・止まらない・・・物凄く臭いのに・・・興奮してしまって・・・はあ、あむ・・・んん、ちゅ・・・」
「畜生・・・こいつ、胸を弄られて本格的にスイッチが入りやがった・・・しゃぶり方がねちっこくなったぞ」
「くぅ・・・腰の動きも凄いぞ、物凄い動きだ・・・中の襞も蠢きまくってチンポが食い尽くされそうだ!!」


快楽に溺れきったディードは、悩ましく身体をくねらせながら、腰を自分から忙しなく上下させ、淫壷に収めた肉棒をグイグイと締め上げる。
その一方で口に含んだ肉棒にも夢中になって舌を這わせ、肉竿を口の中に出し入れさせている。凄まじい異臭を放つ肉棒さえも今のディードにとっては、最高のご馳走に感じられるらしい。
唇の端から涎がダラダラと零れ落ちていっても、全く意に介さない。



「へへ、もう我慢できねえ・・・後ろの穴に入れてやるぜ」
そんな彼女の背後に忍び寄った男が、尻穴に狙いを定め、赤黒く勃起した肉の凶器を埋め込んでいく。それに反応してディードは苦悶の声を挙げるが、既に先の陵辱で肉棒を突き込まれ、更に触手に蹂躙されたおかげか、尻穴は割りとあっさりと肉棒を受け入れていた。

「・・・あ、はあっ・・・お、お尻に・・・あぁん・・・・駄目ぇ・・・は、あん・・・」
「へへ、お尻に入れられて感じてるのかなあ?」
「胸の方を弄くると、ますます感じるみたいだぜ」

ディードの尻穴を責めていた男が腰を激しく律動させながら、後ろから、乳房を鷲掴みにして乱暴にこね回す。
「・・・はっ・・・あぁああ――!! だ、駄目です・・・や、止めて・・・は、ああぁあ・・・う、はあっ・・・」

どうやら軽く絶頂に達してしまったらしい。思わず口から肉棒を離して荒い息を付くディードの眼前に再び屹立した肉槍が突きつけられる。
「おい、途中で離すなよ。ちゃんと最後まで頼むぜ」
「・・・はい・・・解りました・・・んむ、ちゅる・・・ちゅ、はあむ・・・んん、はあっ・・・じゅる・・・先の方から苦いお汁が・・・じゅる・・・」


咥内の肉棒に舌を這わせ、先走りを啜る。
その一方で前後の淫穴は肉棒をガッチリと咥えこんで離さず、腰の動きと相まって至上の快楽を生み出している。
ディードは快楽に溺れ切り、無意識の内に身体をくねらせて男達を誘う。

742黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:20:59 ID:CjqBwGS6
その痴態に誘われた周りの男達はディードの豊満な肢体に群がっていく。
仰向けに押し倒したディードの上に馬乗りになる格好で男の1人が肉棒を胸の谷間に埋没させる。そのまま前後に動かしていく。
他の男達も手や髪、太腿など、ディードの身体のあらゆる部分を性欲処理の道具にしながら夢中で快感を貪る。
男達の放つ凄まじい性臭を受けて、ディードの意識は快感の淵に堕ちる。

「・・・うむ・・・ちゅ、はむ・・・あん・・・この匂い、凄い・・・男の人の匂い・・・ああん・・・身体が火照って・・・んむ、ちゅ・・・気持ちいい・・・」
蕩けきったディードの嬌声が響き、男達の動きも激しさを増していく。
やがて限界が訪れ、彼等は一斉に白濁液を発射した。
下賎な欲望の穢れた液体がディードの身体に降りかかり、その肢体を淫靡にデコレーションする。

「もうたまらねえぜ・・・こんなにエロエロな姿になっちまうとはな・・・」
「・・・穢され尽くした姿が何とも色っぽいぜ、ディードちゃん」
実に好き勝手な事を言いながら、射精した男達はディードを見下ろしながら、ゲラゲラと下品に笑った。


「おい、今度は・・・二人一緒にサンドイッチにして犯してやろうぜ」
「それはいいな、おーい、変態聖女様をこっちに連れてきてくれ」

743黒の碑に捧げられし奴隷達『陵辱要素ありですので注意』:2011/11/02(水) 10:26:11 ID:CjqBwGS6
ここで一旦切るのです。
作中に出てきた蝦蟇みたいな化け物は、クトゥルフ神話に造詣が深い方は察しがつくかと。
多分、光の巨人と死闘を繰り広げたガタノ閣下に比べればマイナーでしょうが。

744名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 11:11:53 ID:YGgAbaqM
ハンガリーの山間部にある魔女の村で祀られてるやつか?

745名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 12:06:55 ID:Hvozax8g
>>743
GJ!作品を追うごとにどんどん内容が濃くなっていきますね
黒天さんはリインフォースやカリム、ギンガ、ディードと
ドストライクなキャラをよく書いてくれるので毎回楽しみにしています


そして続きを期待しつつ前に名前が挙がってたキャラではすずかだけがまだなので
すずか物も期待してますw

746名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 15:10:26 ID:xwLzE/Qc
>>732
エースオブエースと持て囃されてきた自分と両手両足を失い醜い見た目になった自分の差だから
ちょっと違うんじゃないかな?

747黒天:2011/11/02(水) 20:51:15 ID:xBDqeBKM
皆さん、感想ありがとうございます。

>ハンガリーの山間部にある魔女の村で祀られてるやつか?
イエスです。元ネタである黒の碑って結構、クトゥルフ神話では珍しくエロティックなんですよね。
性と暴力の陶酔の中で美しい女性を生贄に捧げたりとか。


>黒天さんはリインフォースやカリム、ギンガ、ディードと
ドストライクなキャラをよく書いてくれるので毎回楽しみにしています

うい、どうも私は微妙に本流から外れた(?)キャラが好みの様です。
逆になのは、フェイト、スバルとかは全然ネタが思い浮かばない。

とりあえず続きの方はしばらくお待ちを。多分、『黒の碑〜』の方が先に終わると思います。

748くしき:2011/11/02(水) 22:01:36 ID:AVSq1OR2

黒天さんも鬱祭りの方々もGJです

では、鬱祭りss投下させていただきます

・鬱度は低い。ジャンル的にはちょっと悲しい話
・非エロ
・題名「故人」

749故人:2011/11/02(水) 22:02:19 ID:AVSq1OR2
外から掛けられた鍵を斬り落として、分厚い木製の扉を開ける。
室内は、廊下の豪奢な調度や造りとは異なり、病室のような―――というよりも病室そのものの部屋だった。

消毒と薬品の臭い。
部屋の半分を占拠する大きな医療機器と、隣に設えられているベッド。
その上で眠る10歳に満たないであろう少女の体は、複数のチューブで医療機器と繋がれている。

「……どなたでしょうか?」

鍵の壊れた音で覚醒したらしい少女は、扉の方向に目を向けて囁くような細い声で話しかけた。
ただ、顔を向けても、その瞳は明確に人影へと焦点を結んでいない。
盲目でないにしても、少女がかなりの弱視であることが伺えた。

扉を開けたのは、見知らぬ人物。
それどころか、異民族風の外套で頭から足元までをすっぽりと覆った、この上なく怪異な風体だった。
顔にも包帯のような布が巻き付けられて目しか露出している部分がなく、外套のせいで体型も全くわからない。

「……」

侵入者は、終始無言。
ただ無造作に剣を取り出し、少女の居るベッドへと歩み寄る。
刃に付着する血糊と、消毒臭をかき消すように全身から発せられる血臭とが、ここまでの道程を雄弁に語っていた。

「ああ……あなた、ですか。お話には、聞いておりました」

視覚から情報を得られなくとも、血の臭いと雰囲気とで、少女は侵入者の見当を付けたようだった。
明確な殺意に晒されながらも取り乱さず、合点がいったという様子で、ただ、静かに頷く。

過去に何人か生み出された『自分と同じ存在』は、ことごとく外部からの干渉で殺害されている。
生来の病弱さから部屋の外にすら出たことのない少女だが、周囲の者がそう話しているのは耳にしていた。

自分にも、来るべき時がきた。
そう理解しながらも、少女は特に恐怖を感じた様子もなく、見舞い客を迎えるようにベッドに横たわったままだ。
年齢不相応の落ち着きといったものでなく、その姿はむしろ、死を受け入れる老人の諦念に似ていた。

「……この世に生を受けて、1年余り。
 造られた生命としての生まれを、卑下するわけでも、誇るわけでも、呪う訳でも、ありませんけれど」

独白とも語りかけともつかぬ言葉を聞き流して、少女の傍らにたどり着いた侵入者は、剣を振り上げる。
横たわる少女も、それを意に介さないように穏やかな口調で、細く話し続けた。

「機械に繋がれ生かされるだけの体で『聖王の再臨』という役割を背負うことは……私には少々、荷が、重く」

少女を見て目を引くのは、その『色』だ。

ほぼ白髪に近い茶色がかった髪と、不自然に白い肌、そして赤みがかった虹彩。
薄い色素ゆえにほとんど目立たないが、わずかに左右の瞳の色が異なる、虹彩異色。
いわゆる―――『聖王の印』。

「この時を……あなたが来られる日を待ち望んでいたことは、否定できません」

少女が繋がれている医療機器は、血中の老廃物の濾過、自発呼吸の補助、心臓のペースメーカー機能などを肩代わりするもの。
おそらくは、遺伝子的要因による先天的な多臓器不全―――製造技術と知識の未熟による、不完全で短命なクローン。

欠乏した色素。見えない目。生まれながらにして、すでに手の施しようもないほどに壊れている体。
少女は他者の都合で造られ、他人の思惑のままの偶像と成るべく、ただ生かされているのだ。

「ありがとう、ございます」

侵入者は、少女へと剣を振り下ろした。


※※※※※ ※※※※※

750故人:2011/11/02(水) 22:03:03 ID:AVSq1OR2


「了解。追跡任務を続行します」

ミッドチルダ市街地の上空。
武装局員としてターゲットを追う青年は、デバイスからの指示を復唱した。

追跡の対象は、事件現場から逃走中の犯罪者。
数時間前に、ミッド郊外にある聖王教会の保養施設の人間を皆殺しにした、大量殺人犯。

隔離された施設を狙い、居合わせた人間を皆殺しにして、データや設備も破壊する。
ここ1年余り、今回と同一犯とみられる殺人が、次元世界を跨いで複数起きている。
逃亡犯は、連続大量殺人で指名手配される次元犯罪者の可能性が、極めて高い。

捜査に当たる管理局は、今のところ公式には、襲われる側に明確な共通点を見出せていない。
ただ現場の噂では―――標的にされた側も相当にキナ臭く、違法研究への関与が疑われることが多いとも聞く。
犯人は何らかの理由で、そういった場所や関係者を潰しているのではないか、という話が囁かれていた。

噂を鵜呑みにするなら、今回標的となった保養施設を抱える聖王教会の内部でも、何らかの違法研究が行われていたのかもしれない。
それは教会全体の企てなのか、それとも一部の派閥の暴走の結果なのか。

<Target Capture>

青年の取り留めの無い思考は、デバイスからの報告で中断される。
同僚のバックアップによる広域サーチャーとの連携で、ついに逃走犯を捕捉したのだ。

いずれにせよ、今の役目は犯人を確保すること。
青年はデバイスの示すルートに従い、逃走犯を追う。


※※※※※ ※※※※※


すでに日は落ち、その残光がわずかに残る黄昏の時間。
不快に纏わりつく霧雨に沈む、入り組んだ薄暗い路地。

その一角に、ゆらゆらと。
不自然に灯っては消える、いくつもの、橙色の小さな灯り。

遠目に見えるそれは、夜の帳に備えた街灯の明かりではなく。
魔導師により生み出される―――戦いのための、魔力光。

両者の戦いは、苛烈だった。

片や、拳銃型デバイスから息を飲むほどの精密射撃を繰り出す、管理局の制服の青年。
先ほどからの橙色の灯りは、この青年の放つ魔力弾だ。

もう1人は、異民族じみた外套を纏い顔を布で覆う、左右一対の双剣デバイスを振るう剣士。
女性や子供のように矮躯で痩身だが、体格と武器による間合いの不利をものともしない速度でもって、青年と渡り合っている。


※※※※※ ※※※※※

751故人:2011/11/02(水) 22:03:50 ID:AVSq1OR2


<Frozen Barret>

戦いの最中、青年は空戦魔導師の利を生かしてふわりと宙を舞い、剣士の頭上から路地を制圧するように立て続けに魔力弾を撃ち放つ。

対する剣士は疾風の迅さで不規則に路地を駆け抜け、中空の青年に的を絞らせない。
飛来する橙色の魔力弾を斬り潰し、掻い潜って、青年への距離を詰める。

剣士を捉えられなかった魔力弾は次々とその背後の歩道に着弾し、分厚い石畳を割り砕く―――だけでなく。
魔力弾がかすめた剣士の外套や、砕いた石畳、そして斬り払った双剣の刀身が、パキパキと音を立てて白く凍りついた。

魔力変換資質『凍結』。
青年の魔力弾は、その暖色に反して氷結の力を宿している。

ゆえに剣士にとって、長期戦は不利だ。
凍結の魔力による温度変化そのものはバリアジャケットでは遮断しきれず、身を切る冷気が体力を蝕む。

さらに。

<Turn !>

着弾寸前の魔力弾が、環状魔方陣に包まれて停止し、くるりと方向転換。

<Fire !!>

デバイスによる、魔力弾の自動制御。
外れたはずの魔力弾が方向を変えて再加速し、駆け抜けた剣士の背後から襲い掛かる。

剣士は、青年が撃ち下ろす魔力弾に対処しながらも、その速度を維持したまま壁を蹴り上方へと跳ねて、背後から来る魔力弾を回避。
のみならず、さらに街灯を足場にして跳び上がり、頭上―――飛行する青年へと肉薄した。

霧雨で濡れる路面と凍る足場を思わせない、非常識なまでの機動力。
剣士は、魔法で脚力とグリップ力を高めている。

中空でついにクロスレンジに捕えた青年へと振り抜かれる、刀身に対し直角に柄の付いた、異形の双剣。
刃圏の内側で獲物に回避を許すほど、剣士の技量は甘くない。
防御しても、すさまじい魔力を込めた双剣デバイスによる二重斬撃は、バリアやシールドごと青年を切り裂く。

万事休す。
勝負を決する左右の剣が青年へと切り込まれ―――そして。

「―――!」

そして双剣は何の抵抗もなく、青年を『すり抜けた』。
空しく宙を薙いだ双剣の斬撃の余波が、離れた建物の壁を巨獣の爪のように割り裂く。

フェイク・シルエット。
青年本人と寸分たがわぬ、幻術魔法。
剣士が魔力弾による前後挟撃を回避する瞬間、青年への注意が逸れた一瞬に作り出されたもの。

「……」

それまで無機質じみて無口だった剣士が、初めて焦燥めいた挙動で周囲を確認する。
それはシルエットを見抜けなかった驚きや怒り、ではなく。
青年の策で中空に『誘い出された』自分が、あまりにも致命的な状況に身を置いたと理解しているためだ。

752故人:2011/11/02(水) 22:04:26 ID:AVSq1OR2

自由落下を始める剣士の下方に、複数の光が生まれた。
橙色の魔力光―――足元から剣士へと連射される魔力弾。
青年はシルエット作成と同時に、薄闇と霧雨と魔力弾の攻撃に紛れて、地面へと移動していた。
シルエットを追って高く跳ねた剣士の、着地までの無防備な瞬間を狙い撃つために。

剣士は回避不能な落下中でありながら、それでも放たれた初弾を左剣で、次弾を右剣で弾くが、3射目を防ぎきれず被弾。
身を捻って直撃は避けたものの、背中側の外套が凍りついて大きく割れ裂け、収められていた赤く長い髪が露わになる。

次いで放たれる4射目を、剣士が回避することは不可能。
青年はトリガーを引き絞る。
しかし―――発射の瞬間に銃口はわずかに角度を変えて、中空の剣士ではなく至近の空間の『何か』を撃ち抜いた。

金属音。
石畳に落ちる、ひしゃげた金属片。

剣士が3射目を被弾したと同時に、青年の喉元を狙って投擲していた、魔力を込めた投げナイフ。
気付かなければ、4射目のトリガーを引くと同時に、青年は致命傷を負っていた。

ナイフを撃ち落した青年が再度照準に収める間も無く、豊かな赤髪を翻して剣士は着地。
少し遅れて、ナイフ投擲のために手放した左剣デバイスが、耳障りな音をたてて路上へと落下した。

今の攻防で、互いが、戦術を支えていた柱を失った。

剣士は、致命的な状況を避けるためとはいえ、左の剣を手放した。
拾う機会を見出せるほど、甘い相手ではない。
ここから先は、右のデバイスだけでの戦いを強いられることになる。

対して青年も、徹底して隠していた奥の手を晒してなお、剣士を仕留められなかった。
いままでの戦いはすべて、今の瞬間に勝負を決するための布石であったにもかかわらず、だ。

それでも、2人はさしたる感慨も見せずに戦闘を継続する。
互いに一言も発さず、停滞せず。
ただ少しでも早く相手を斃さねばならない義務でもあるように、熾烈にぶつかり合う。


※※※※※ ※※※※※

753故人:2011/11/02(水) 22:05:38 ID:AVSq1OR2


繰り返される攻防。
青年は時折空に舞いながら魔力弾で中距離を維持し、剣士はその間合いを切り崩すために高速移動で路地を駆け、跳ねる。

空戦魔導師の青年だが、彼には飛行で距離を離して絶対的な安全圏で戦うという選択はない。
いかな青年の技量があっても、それ以上の距離を置けば剣士の迅さを捉えられないという、単純な理由からだ。

しかし―――やがて、転機は訪れる。

それまでと変わらない、魔力弾と右剣による、間合いの削り合い。
踊るように間を詰めた剣士からの蹴りと斬撃のコンビネーション攻撃を、青年は後方に飛んで間合いを離し、回避した。

「―――!」

言葉にすれば、それだけのこと。
けれども、その状況を経た2人の間の空気が突然、変わる。

剣士の絶対領域だったクロスレンジでの攻撃を、青年がやり過ごした。
明らかに、剣士の動きが鈍っている。
凍結の魔力弾による冷気に晒された剣士の体力が、ついに戦闘に影響が出るレベルにまで低下したのだ。

「……」

「……」

『決着』の、直観。

積み上げた状況や蓄積したダメージが、互いにしか理解し得ない共通認識で、そう確信させる。
あるいは、ここで勝負を決しようという、無言の申し合いか。
いずれにせよこの瞬間は―――殺し合う相手でありながら、数多ある次元世界の誰よりも、互いが互いの一番の理解者だった。

「シュペルミラージュ、カートリッジロード!」

後方に飛んで間合いを仕切り直し、そのまま滞空した青年は、ついに勝負を切り出す。
ひときわ大きく展開される、ミッド式魔法陣。
今までの隙のない魔力弾による攻撃とは真逆の、大魔法のための術式だ。

<Load Cartridge>

デバイスに装填された、4発のカートリッジをすべてロード。
カートリッジは貴重品だ。
数年前に有効性が認められて首都航空隊にも正式採用されたとはいえ、未だ供給が需要に追いつかず、支給される数は少ない。
予備は無く、最初から装填されているこの4発が、正真正銘の虎の子だ。

<Cross Fire Shoot―――>

青年の周囲に一斉に励起する魔力の光玉、その数23。
しかしそれは、魔力弾ではなく―――魔力弾自体の連続的な発射台となる、魔力スフィア。
青年の切り札は、氷結の魔力を宿した魔力弾の、23基の魔力スフィアからの集中高速連射。

<―――Phalanx Shift !>

その攻撃特性と危険性を肌で察知した剣士は、魔力スフィアが励起した瞬間に、長い髪を翻して矮躯を前傾させ、駆け出していた。
それまでの、魔力弾を回避するための不規則な軌道ではなく、最短距離を結ぶ直線移動。
向かう先は無論、滞空する青年の下へ。
全身を霜に覆われつつも残る体力を振り絞り、瞬きの間に彼我の距離を一気に縮める。

青年の技量とカートリッジによる魔力の底上げで、チャージ時間はこの手の大魔法にしては驚異的に短い。
それに対し剣士の機動力は、やはり陰りを見せている。

それでも―――ぎりぎりで間に合う、と剣士は希望的憶測抜きに確信する。

射出シークエンス中の青年は、剣の届かない中空に留まっている。
左剣デバイスを手放した際の攻防にも似た状況。
今度は、幻術の可能性も無い。
剣士は頭上の青年に斬りかかるべく右剣を構え、跳躍のために脚部の魔力をブーストする。

754故人:2011/11/02(水) 22:06:34 ID:AVSq1OR2

<Freezing Bind>

「!」

しかしその寸前、がくん、と剣士の動きが止まる。
剣士の利き足―――左足首に巻きついた、橙色の魔力の鎖。

不可視の設置型バインド。

凍結の魔力を宿す鎖が、剣士の足元から腰を伝って胸元へと巻き付いて這い上がり、パキパキと氷結。
同時に足首から路面にも氷の根を張り巡らせ、脚を地面へと固定した。

魔力のバインドを核として空気中の水分を集め、対象を魔法的のみならず物理的にも拘束する、青年独特のバリエーション。
逃れるためにはコアである魔力のバイントを解呪するのみならず、体を固定する分厚い氷の触手を物理的に破壊する必要がある。

「ファランクスシフト―――ファイア!」

そこまで念入りに動きを封じられた剣士に向けて、ついに―――すべてのチャージを終えたスフィアが、魔力弾を一斉発射した。

23基の魔力スフィアから放たれる秒間9発、継続4秒、合計828発の、氷結の力を宿した魔力弾。
戦闘範囲そのものを制圧し、回避を許さず防御など無意味に噛み千切る、氷の猟犬の群れ。
それだけの大魔法を制御しきる青年の実力は、確実にストライカー級だ。

「逆巻け―――ヴィンデルシャフト!」

その圧倒的な魔力弾の『群れ』に飲み込まれる寸前。
氷と魔力で束縛された剣士は、右剣デバイスの握り部分に装填されていたカートリッジをロード。

初めて発せられるその声は―――技量や迫力とは似つかわしくない、年若い娘のものだった。

ただ、それでバインドを破壊できたとしても、すでに避けられるタイミングではない。
たとえ強力な防御手段を発動させたとしても、継続発射される秒間207発の魔力弾の集中砲火を凌ぐことは不可能だ。

「……」

案の定、というか。
剣士は何をするまでも無く、その直後に橙色の魔力弾の奔流の中に飲み込まれて―――消えた。

そして、現れた。
滞空する、青年の目の前に。

「―――!?」

驚愕というよりも、状況が理解ができずに目を見開く青年。

物質を通過する、空間跳躍魔法。
氷の物理拘束を透過し、魔力のバインドを引き千切って、中空にまで一瞬で『転移』したのだ。
剣士もまた、この土壇場まで切り札を隠していた。

ほぼ零距離、密着した状況で青年の目の前に現れた剣士は、すでに右剣デバイスで青年を斬り付けるモーションに入っている。
透過した氷の枷はともかく、魔力バインドの解呪は不十分なまま跳躍魔法を強行したため、魔力の鎖に切り刻まれて体中が血にまみれていた。

青年は、状況を把握しきれていない。
しかし、目の前の剣士に対して意識よりも先に体が反応し、即座に剣士の左側へと回り込むように回避行動をとっている。

剣士の左剣は失われており、剣を持つのは右手のみ。
左手側に動けば、右の剣では追えず―――この状況下でも、致命傷を受けずに切り抜けられる。
飛行手段を持たない剣士は、この一撃を外せばそのまま地面へと落下するしかないのだから。

「は……あぁぁぁぁぁ!!」

剣士が赤い髪を振り乱し、吼えた。
右剣で青年を捉えられないと判断した瞬間、その動作を強引にキャンセル。
代わりに剣を持たない左手にありったけの魔力を込め、五指を揃えて青年の顔面へと突き出した。

「!!」

魔力斬撃に等しい剣士の手刀は、青年の防御フィールドを突破。
左の中指と薬指は青年の右目に深く突き入れられ―――さらに剣士は中でその2本の指を折り曲げて、眼窩の裏側へと指を引っ掛ける。
直後、重力に従いその矮躯はがくんと落下を始めるが、剣士は密着した青年の体を少しズリ落ちただけで、地上に落下することはなかった。

剣士は、眼窩に突き入れた2本の指で、宙に舞う青年にしがみついたのだ。

「……! …… !……!!」

苦痛に仰け反る青年。

剣士の動作に遅滞はなく、左腕の力で自分の体を引き上げつつ、右の剣を振りかぶり―――青年の首筋へと、叩き込む。
残る左目でその一部始終を確認していた青年は、最期の意思力で銃口を剣士の頭部に向け―――トリガーを、引いた。


※※※※※ ※※※※※

755故人:2011/11/02(水) 22:07:22 ID:AVSq1OR2


妹さんが居られるのですか、と大ジョッキを空にした修道服の娘が問う。
11歳も離れているから娘みたいなものだ、と青年はグラスを傾けながら答えた。

たまたま知り合った呑み友達の2人は、よく夕食を共にしていた。
青年の同僚たちからは頻繁に冷やかされたが、青年も娘も、特に恋愛感情を抱いていた訳ではなかった。
居る場所も気の利いたバーではなく、騒がしい大衆酒場の一角である。

ただ食べて呑む合い間に、同僚には言えない仕事上の悩みを愚痴として吐き出し、時には取り留めの無い身の上話をする。
それだけの時間が、たまらなく楽しかった。

妹が自分に憧れて面映い反面、本気で困っている、と青年はよく冗談交じりに苦悩を漏らした。

兄を目標にして、彼と同じようなシューターになるべく魔法の訓練を始めた、10歳の妹。
しかし独自に研鑽した彼のスタイルは、裏を返せば基本からは外れた応用の極みであり、そこばかりを最初から真似ても仕方がない。

3年も経てば空か陸の訓練校を目指すだろう妹のために、基礎教程を教えておくべきか。
どうせなら、基礎教程の教導に長けた魔導師を探して、今から師事させておいたほうがいいかもしれない。
酒の勢いもあって、思春期の娘をもつ父親のような顔で、青年はあれこれと思索を始める。

最後には、隣で追加のジョッキを干している娘にまで、心当たりがないかと聞く始末だ。

この前、お酒の席で御一緒した航空武装隊のヴァイスさんはいかがですか? と、娘は18歳のエース狙撃手の名を挙げる。
娘にとっては知人の部下にあたり、その卓越した狙撃技量も話には聞いていたからだ。

あいつはダメだ、あんな女癖の悪そうなヤツに妹を預けられるか、と青年は即座に否定する。

普段は理知的な青年の暴走に、娘は赤く長い髪を揺らしてひとしきり笑った後、教会はベルカ式ばかりだから難しいですね、と答えた。
しかし落胆気味の青年を見て、次に会うときまでには私の方でも探しておきますよ、と付け加える。

つい、先日の会話である。

今、路上に立ちすくむ剣士と。
その足元に転がる、絶命した青年との。

青年が放った最期の射撃は、紙一重で剣士の頭部を捉えられず。
一方、剣士の右剣は、青年の頸部を斬り裂いて致命傷を与えた。

剣士の頭部をかすめた魔力弾は、顔を覆っていた細布とフードを引きちぎり、隠されていた素顔を露出させている。
赤い髪の、小柄な娘だった。

「……?」

先ほどまで翻っていた腰までの豊かな髪は無く―――首の後ろで不恰好に千切れ、ショートヘアのような髪型に変わっている。

その喪失感に気付いた娘は、剣を持たない左手で、自分の首筋を探る。
頭をかすめた最期の魔力弾に触れて凍り付き、そこから下の髪は砕け割れていたのだ。


※※※※※ ※※※※※

756故人:2011/11/02(水) 22:07:58 ID:AVSq1OR2


宵からの霧雨は、いつの間にか雨に変わっていた。

「……」

手足に触れる冷たいはずの雨が、生温く感じる。
先ほどの戦闘で、凍傷寸前にまで低下した体温のせいだろう。
失血もひどく、雨に晒された体は冷えるばかりだ。
即座に治療しなければ、四肢のいずれかを失いかねないほどの重症である。

剣士―――赤髪の娘は、路上に血の染みを広げ続ける青年の死体を見下ろしながら、これまでの事とこれからの事を考える。

聖王教会から聖骸布が盗まれ、聖王の遺伝子サンプルが裏社会へ無差別にばら撒かれるという不祥事から、4年。
サンプルを入手した各組織による、聖王クローンを作り出すという試みが形になり始めたのが、1年ほど前から。

禁忌であるがゆえに未成熟の技術で造り出される聖王クローンは、今のところ『成功』の域には達していない。
保養施設に隠蔽されていた少女のように、生命活動に支障をきたすレベルの欠陥を抱える、短命な個体ばかりだ。

しかし、どれほど不完全な存在であったとしても。
次元世界で最大規模の宗教組織たる聖王教の『聖王』その人の再臨となれば、社会に与える影響は計り知れない。

教会以外の勢力に、聖王という聖王教の『信仰の対象そのもの』を担がれれば、聖王教の権威が揺らぐ。
教会内部の、どこかの派閥が担いでも同様―――聖王を巡って教会は割れ、組織力も求心力も失うことになる。
最悪、複数の聖王クローンが擁立される可能性すらあるのだ。

客観的に見て、聖王教が次元世界の秩序の維持に、多大な貢献をしているのは事実。
その屋台骨がゆらげば、各地で要らぬ争いが起こる。
いずれそれらは、取り返しの付かない戦禍を生み出すかもしれない。

ゆえに聖王教会の主流派は、聖王の再臨など望まない。

次元世界の安定のためにも、自分たちの既得権利を守るためにも、今の世に聖王は不要。
聖王クローンの存在自体を認めず、表舞台に現れる前に、周囲の人間や研究施設ごと潰して闇に葬る。
それが教会上層部の決定であり、同時にそれは、彼女の主であるカリム・グラシアの意向にも合致した。

だから娘は―――シャッハ・ヌエラは、何人もの聖王クローンとその周辺人物を、葬ってきた。


※※※※※ ※※※※※

757故人:2011/11/02(水) 22:08:42 ID:AVSq1OR2


今回の事件は、以前からの教会上層部の懸案が形となったもの。
教会内部の非主流派が聖王クローンを生み出し、『聖王』を担ぐことで、主流派に取って代わろうとの画策だった。

聖王クローンの存在と、それに纏わる次元世界各地での破壊工作。
教会の内部抗争というスキャンダル。
地上本部の膝元での大量殺人と、追跡した局員の殺害。

隠蔽しなければならない事項は、多い。
特に、保養施設で違法研究が行われていたという事実を、管理局に突き止められてはまずい。
教会は表向き、連続大量殺人犯に保養施設を『偶然』狙われた、一方的な被害者でなければならない。

こちらで用意した『犯人』を管理局に確保させ、教会の思惑通りの自供をさせるだけでは、足りない。
管理局自身が捜査をおざなりで済ませて目先の結論に流れるよう、誘導する必要がある。

具体的には、2点。

世論に非難されてしかるべき、事件における管理局の失態―――の、捏造。
組織の常として、身内の恥は隠蔽される。
言い訳できないほどの失態があれば、管理局はこの事件の詳細を公にはせず、後になって掘り起こされることもない。

そしてもうひとつ。
上記にも絡むが、事件における、教会に対する管理局の失態―――の、捏造。
事件に際して管理局が対応を誤り、教会に不利益を与えてしまった、としておけば。
管理局は『借り』のある教会相手に強制的な捜査は行いにくくなり、結果、教会側の言い分が捜査報告に反映しやすくなる。

それは、状況から鑑みて―――

「……ティーダ」

シャッハは、昨日まで隣で笑っていた一番の友人の名を呼んだ。
今は、足元に転がり雨曝しにされる、単なる骸。

顔も体格も隠していたが、戦いの途中で相手がシャッハであることは気付いたはずだ。
それでも何も言わず、彼は管理局の武装局員として全力で、次元犯罪者を捕らえるべく愚直に任務へと殉じた。
シャッハが、教会と社会のために手を汚し続けてきたのと、同じように。

似たもの同士だったのだろう。
だから気が合った。
だから―――たまらなく楽しかった。

「貴方の名は、教会の画策によって……私によって、意図的に貶められます」

管理局の失態を捏造するにあたり、汚れ役を被せる適任は―――彼を措いて居ない。

例えば。

功を焦った局員が無謀な追跡を行い、周囲の民間人への安全配慮を怠り、市街地に犯人を追い込んで、戦闘になった。
たまたまその場に居合わせた無関係な住人や教会の関係者を戦闘に巻き込み、死傷させた。
その上で犯人を捕らえる事も出来ずに、返り討ちにあった。

シナリオの粗筋は、そんなところだろうか。
これで『管理局自体の失態』『管理局による教会への失態』の双方を演出できる。

死者を徹底的に貶める手筈を、シャッハは黙々と思案する。
ディーダの名誉を、守る気はない。
情報工作に綻びが生じて真相が公になれば、それこそ、この手で殺した親友の死を無駄にすることになるから。

「この事件は、誰にとっても忌まわしいものとして、触れられず記憶の隅に追いやられなければいけない。
 勇敢な局員が次元犯罪者に立ち向かい殉職した美談や、幼い妹を残して逝った悲劇であってはならない。
 ただ功を焦り、民間人や教会の関係者を無為に死なせ、その上で無駄死にした、無能な局員として……」

人を殺して、貶めて、嫌悪感に苛まれた事は何度もある。
けれど―――声を上げて泣いたのは、後にも先にも、このときだけだった。

「……管理局の汚点として、語られず……忘れ、られて……ください、ティーダ……」


※※※※※ ※※※※※

758故人:2011/11/02(水) 22:09:25 ID:AVSq1OR2


そういえばシスターは、髪を伸ばさないんですか? 
けっこう、お似合いだと思うんですけど。

ちょっとしたきっかけで、そんな話題が持ち上がった。
模擬戦の後の何気ない、年頃の少女たちとの会話である。

戦いに邪魔だということもありますけれど、まあ気分の問題ですね。
この長さが、私には落ち着くのですよ。

そう、苦笑気味に答える。

無意識に左手を首の後ろに回してしまったのは、やはり面差しが似ているからだろうか。

6年前、親友が最期にむしり取って逝ったここから先の髪は―――手向けの花の代わりに、あげたから。
と、本当の理由を告げるわけにもいかず。

759くしき:2011/11/02(水) 22:11:14 ID:AVSq1OR2
以上でした

青年のほうは空戦AA+射撃型、剣士のほうは陸戦AA近接型、くらいを想定しています

では、失礼します

760名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 22:15:12 ID:XGWdM/J.
目に汗が・・・・・・

761名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 22:37:27 ID:tC0jjf96
凌辱はいい、心洗われる
だるまなのはさんが最高にキました
もっとお願いします

762名無しさん@魔法少女:2011/11/02(水) 22:46:40 ID:kOWC/sI6
>>759
これは・・・なんというかやりきれなさが残りますな
GJ

763名無しさん@魔法少女:2011/11/03(木) 01:55:30 ID:mfAHZSbY
GJ,GJすぎるぜみんな!!

764名無しさん@魔法少女:2011/11/03(木) 19:28:27 ID:DKs80Zcs
なんという投下ラッシュ・・・さすが祭や
感想を送るのが間に合わない。


>>722
凄かった、落として上げて最悪まで落すという地獄の三段コンボの破壊力たるや。
ダルマなのははトラウマレベル。

>>743
あなたがロングストレートヘア巨乳が大好きだということはよく分かったwww
これからもオッパイ星人として支援せざるをえない。

>>759
欝だけどダルマなのはのような地獄に堕ちるまでの欝でないのが救いだ!
切なくなる系の話も良いですね・・・

765存在感がありません:2011/11/03(木) 21:53:47 ID:rapCGMXw
鬱祭りSSいきます。
・短いです
・タイトルはネタばれのため、あとがきで

766鬱祭りSS:2011/11/03(木) 21:54:43 ID:rapCGMXw
――カツン
乾いた音が鳴り響いた。それは踏みしめる音。進んでしまった歩みを表す音。普段生活しているときには、聞き流してしまっているような小さな音。しかし、このとき、彼の耳にはその音がはっきりと聞こえた。
彼は、今、椅子に座っていた。緊張とじわじわと心を苛むある思いから身動きがとれずにいた。

そう、彼は歩いているわけではない。ただ、座っているだけ。それにもかかわらず、音は鳴り響く。

――カツン
時は刻一刻と迫ってくる。また一歩、いや一段、階段を上がってしまった。
十三段の階段。墓場――終焉へと続く一本道。見上げれば、それはもう一段しか残されていない。それを上がってしまえば、もはや逃れることが出来ない。
だが、いまさら彼に何が出来るというのか。
まるで死に装束のような白染めの衣装にがんじがらめに拘束された彼に出来るのはただ待つだけ。扉が開き、あちらの世界へと誘われるのをただ待つことしか出来ない。

「……」

緊張のあまり、冷たい汗が背筋を撫でる。汗はとめどなく流れ出ているというのに、唇はかさかさに乾きひび割れている。顔色はきっと衣装に負けないくらい白くなっているだろう。

……一体、僕が何をしたって言うんだ!
心の中であげた絶叫。
だが、その絶叫に反して、彼は己の罪――犯してしまったことを理解していた。その行為の意味を理解しているがゆえに、彼は逃げられない。責任感が強い彼は甘んじて裁きを受けるしかなかったのである。
いや、本当は、彼も足掻こうとしていた。己の人生がかかっているのだ。素直に受け入れろという方が難しいだろう。助けを求めた。親、知人、友人あらゆるものにすがりつこうとした。
それは過ちだったのだ、と。罠にはめられたのだ、と。甘美な囁きに、悪魔の誘いについ乗ってしまっただけなのだ、と訴えようとした。
彼が一方的に悪いわけではない。相手にも同様の責任がある。それにもかかわらず、何故、と。

767鬱祭りSS:2011/11/03(木) 21:55:48 ID:rapCGMXw
だが、助けの手は差し伸べられなかった。外堀は埋まっていたのだ。数年かけて用意周到に準備された罠は、彼に訴えを述べることすら許さなかった。親は悲しみのひとかけらも感じさせない表情を浮かべ、彼の運命を受け入れ、知人たちは異口同音に同じ言葉を口から紡ぐ。

そう、それは当たり前なのだ。親や知人たちは立場的に言えば、相手と同じなのだから、彼の擁護に回るはずがない。それどころか、彼を奈落に落とすための手助けさえしている始末であった。

ならば、と彼は最後の頼みの綱である友人に助けを求める。彼と同じ立ち位置の友人であるのならば、彼の気持ちを分かってくれるはず、と。
だが、その期待さえも裏切られる。友人は彼を見捨てたのだ。柔らかな笑みを浮かべ、知人たちと同じ言葉を口にする友人に、彼は一瞬すがりつこうとしたが、その動きは柔らかな笑みの奥に隠された意味に気がついたことにより、止まる。友人は微笑んでいたのではない、嘲笑っていたのだ。

――まぬけ。僕はそんなへまはしない。

確かにそうだろう。彼は下手を打った。罠が用意周到に張り巡らされていたことは気がついていた。あの状態で過ちを犯せば、どういう結果を招くかなんてことは分かりきっていた。
だが、どんなに気をつけていても、彼も男なのだ。過ちを犯してしまうこともある。それにそもそも、彼にはその過ちを犯してしまったときの記憶がない。その夜は深く酔っていたから仕方がないことであるが、記憶がないのだ。あるのは状況証拠と発動して彼を感じがらめにしばった罠――微笑だけ。

だから、と彼は錯乱しそうになる。記憶にないのだから、きっと過ちは犯していないのだ、と。そのそも初めての行為が記憶にないとかどういうことなのか、と。だから、こういうことはもっと時間をかけるべきだ、と。いや、もう充分時間はかけてきているいまさら、何を、と。

だからだからだから――

錯乱している彼をよそに、

――カツン
最後の階段は昇られる。

768鬱祭りSS:2011/11/03(木) 21:56:21 ID:rapCGMXw
開かれる扉。

「……」

迎えの使者が何かを呟き、彼を招く。
その招きに反応して彼はよろよろと立ち上がり、まるで誘蛾灯に誘われる虫のように歩みを進める。
そして、導かれた場所には、相手がいた。
彼と同じように、真っ白な装束に身を包んだ相手――彼を墓場に誘う死神は心なしか俯き加減に立っている。

「……」
「……」

彼も死神も、お互い無言で向かい合う。言葉が出ない。錯乱していた彼も先ほどまでの混乱や後悔が嘘のようにおとなしくなっていた。
緊張している。だが、それだけではない。目を奪われているのだ。

……ああ、なるほどな。
彼は納得する。これが罠の最後の締めくくり。これは逃げられない。腹をくくるしかない。
それに、

「……緊張するね、クロノ君」

こんな綺麗な死神に誘われるのならば、向かう先が墓場でも仕方がないだろう。

「……いこうか」
「……うん」

彼は、死神の手をとると赤い絨毯を一歩一歩しっかりと歩み始めた。
しっかり、しっかり、一歩一歩。

今までの人生より、墓場に入ってからのほうが長いのだから。

769鬱祭りSS:2011/11/03(木) 21:57:12 ID:rapCGMXw
あとがき
以上になります。
タイトルは「マリッジブルー」ですw
一応憂鬱ってことで。
箸休めとでも思ってください。

770名無しさん@魔法少女:2011/11/03(木) 22:21:41 ID:fsDRbMnY
GJ
結婚は人生の墓場かw

771名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 00:19:46 ID:F2Kd/VuE
>>769
GJでした。そうだよな、男性もマリッジブルーになるんだよなw
あと、
>友人に助けを求める
淫獣を登場させて、あまつさえ友人なんてポジションに収めた部分だけちょっと蛇足でした。

772名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 01:55:33 ID:kDLcgSSo
>>771
頭大丈夫?

773名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 02:43:50 ID:BhPffZNs
>>771
キャラを貶す一言を、それも蔑称でナチュラルに付け加えるのは止めてくれない
ノリで言ってるにしても寒いだけです

774名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 11:51:48 ID:Nqi.js7U
これは良いSSだ……
思い切り意表をつかれた
まさかこういうやり方もあったとは
面白かった

775名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 17:54:48 ID:H//ScYt2
リリなの漫画って売れてるんか…
その割にサンクリ後のとらのあな行ったら、東方とISの独壇場だったような…。
ISの棚にチンク姉のがあったけど(リアル話)

ところで下手でも何か書いてみようかと思ってるんだが、
SS投稿する場合はどう気をつければいい?

776名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 17:57:14 ID:ilaHwFqo
>ISの棚にチンク姉
クッソワロタwww

777名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 18:16:38 ID:A16iBJts
>>775
スレの冒頭を読んで、作品の前には注意書き(エロ・凌辱・鬱・その他読み手を選びそうなジャンル)はいる

778名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 18:30:24 ID:SL8GfG8c
>>775
基本的には>>1を守ってればおk
それ以外だと、直前の投下からはある程度(1、2時間くらいは)時間を置くほうが無難ってとこぐらいかね、気をつけるのは
不安なら、>>2の書き手さん向けマナーのページまで目を通しておけば大丈夫だろ

779名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 18:33:29 ID:aE1dJxnA
>>775
>>1のローカルルールを守ればだいたいOK。
作品は投下前にテキストエディタ(メモ帳)などにまとめてコピペで投下するのがおすすめ。
誤字脱字はチェックしておくとなお良し。

780名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 18:36:04 ID:0MAHBMPE
>775
ISとリリカルのW眼帯ロリが並んでいる光景なら結構見ますが。
あれは店員さんのギャグなのか本気なのか迷うところですが。

781名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 18:42:52 ID:qw7hYk5M
DOGDAYSとVIVIDが並んでいるのは、本気で区別が付かなかった。

782名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 20:34:42 ID:SwN5sdcQ
>>781
それはない
>>775
>>780
なんかの同人小説?でなのはとISの奴があったんだが、表紙がチンク姉とラウラだったwwww

783名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 20:57:14 ID:oJXnmDwo
つまり「トーマは姉の嫁!」と主張するチンク姉というわけだな

784名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 21:21:57 ID:mt536Fmk
>>769
GJ
これはいい、普通に騙されたわwww
ハードコアなのが続いていたから良い清涼剤になりました

785名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 21:26:16 ID:ilaHwFqo
>>782
>>781はコンプエースの漫画版の話じゃね

786名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 21:38:41 ID:9S7ZXBCE
>>769
エイミィさん策士過ぎワロタ

この手の話とは逆に独り身生活が続くメイン女性陣の日記ネタ…なんて物を考えてはいましたが
割とマジで洒落にならないものが出来上がりつつあったので封印したのは内緒だw

787名無しさん@魔法少女:2011/11/04(金) 22:02:18 ID:CNicYXqo
>>786
さあ、書き上げてさらすんだ

788名無しさん@魔法少女:2011/11/05(土) 01:23:02 ID:bsLENuHM
なのはとフェイトの友情青春系の話しが頭にあるのにいざ書くとどうしても百合方面にいってしまう

789アルカディア ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:30:57 ID:GKQJka4I
さて、随分遅くなりましたが、お次を行かせていただきます〜

790彼女達の独白 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:32:18 ID:GKQJka4I
 SIDE:A


 晴れ渡る青い空と眩しい木漏れ日。
 犬達と庭で遊ぶのに絶好のそんな天気の日は、いつもあたしの胸の奥が小さく疼く。
 勿論、身を引き裂くような、と大げさに形容されるような痛みではないし、そんな昼下がりは犬達にフリスビーでも投げて笑いながら過ごすのがあたしの常だ。
 しかし、拭いきれない憂鬱な思いが、あたしの胸の奥にはべったりとへばりついている。
 歯痛のように、意識から追い出すことのできない痛みが、ずっとあたしを苛み続けている。
 痛みは、いつもあたしに問いかける。「本当に、それで良かったのか」と。 
 まるで悪い毒にでも冒されたようだ。勿論、解毒剤は無い。
 あたしは、自ら進んでその毒に身を委ねたのだから。

 昼下がりのティータイム、高級な紅茶と舶来品の洋菓子がバルコニーのテーブルに並ぶ。
 犬達があたしの膝にじゃれつき、あたしはその美しく柔らかな毛並みにそっと手櫛を通した。
 天気予報は、明日も晴天を告げていた。高気圧の影響で、今後一週間は暖かく穏やかな日が続くでしょう。続くでしょう。
 そう、今日のような満ち足りた日が明日も続く。明日も、明後日も、その次も、その次も、その次の次の次も、ずっとずっと続いていくのだ。
 なんという幸福。なんという安寧。
 
 しかし、この満ち足りた安寧な日々こそが、このあたし、アリサ・バニングスを日々蝕む最悪の毒に他ならなかった。




        彼女たちの独白。



 
 自分が他人と違うことを理解したのは、一体いつだっただろう。
 小学校低学年の頃のあたしが全く無理解だったのは間違いない。
 今思えば、なのはやすずかと毎日やんちゃをしていたあの頃が、あたしの一番幸福だった時代だろう。
 小学校一年生の頃のあたしは、それはそれは典型的な我儘なお嬢様だった。増長して他人を見下し、何でも自分の思い通りになるものだと信じていた。
 幼いながらに、他人とは違うことを自覚はしていたが、本質的な理解はまるでなく、自分は他の子より偉いんだという、漫然とした全能感に身を任せていた。
 そして、すずかと――なのはとの出会い。初めてできた対等の友人。あたしも周囲の子達と何一つ変わらない人間なのだと、初めて実感した。
 ……そんな、道徳の教科書のようなあたしの改心は、結果としては間違いだったわけだけど。
 

 楽しかった。普通の子達と一緒になって日々を過ごすのは楽しかった。
 掛け値無しに楽しかった。今思い出すと、本当に、涙が出るくらい楽しかった。
 しかし、小学校三年生に進学した頃から、あたしの黄金の思い出は少しづつ色褪せ始める。
 あたし達の輪を外れ、独りで悩みを抱えるようになったなのは。
 魔法の世界なんて、常識外れのとんでもないものに関わっていた彼女の心情としては、当然のものだろう。
 だが、まだ幼いあたしにとっては、どうしようもない理不尽だった。
 それでも、あたしは信じていた。いつか、なのははあたし達に悩みを打ち明けてくれるだろうと。手を貸してくれと、言ってくれるだろうと。
 そんな、淡い期待を抱いていた。
 なのはの悩み事が解決したと聞いた時、あたしは安堵と共に、若干の落胆を覚えていた。結局、なのはは、独りで悩みを解決してしまったのかと。
 ……尤も、彼女は決して独りで悩みを解決した訳ではなく、そこにはあたし達の知り得ない出会いと友情があったのだが。
 これで、なのははまたあたし達の所に戻ってきてくれる。そんな風に素直にあたしは喜んだ。
 しかし、高町なのはという少女の生きる世界は、緩慢に、あたし達の生きる世界との乖離を続けていたのだ。

791彼女達の独白 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:33:59 ID:GKQJka4I
 少し、高町なのはについて語ろう。
 あたしの初めての友人と呼べる存在。そう呼ぶと、少々語弊があるかもしれない。
 なのはとすずか。その二人しか、あたしは友人と呼べる存在を作れなかったのだから。
 幼稚な優越感に浸ってすずかを苛めていたいたあの日、あたしの頬を叩いたのがなのはだった。
 あの日の痛みと衝撃は、今でもはっきりと覚えている。
 そしてもう一つ。小学一年生の朧げな思考ではあるが、明瞭に思ったのだ。
 あたしは、初めて、誰かに真正面から見つめて貰えた。
 当然のようにあたしを愛する両親や、屋敷の執事達とは違う。
 あたしと同じ齢の、あたしと同じ高さの視線が、正面からあたしの瞳を覗き込んでいた。
 そのことに、言葉にならない安堵と歓びを感じながらも、その頃のあたしはそれを表現する言葉を持たず、あたしの行動ルーチンは、親にも叩かれたことの無い頬の痛みに対する報復を選択した。
 端的に言えば、大喧嘩である。
 爪を立て、髪を引っ張り合った。それらの行為は加害者の立場で行ったことはあっても、相手がやり返してくることなど、全く初めてのことだった。
 教師に仲裁され、引き離される時まで、あたしは拳を振り上げて怒りを露にしていたという。
 でも、きっと――その時のあたしの口許は綻んでいたに違いない。あの日を思い出す度に、そんなことを取り留めなく思っている。

 
 あたしたちの喧嘩は、保護者の呼び出される騒ぎとなった。
 両親同士の対面。あたしは興味津々に、高町なのはの家族というものを見つめていた。
 現れたのは、取り立てて変わった所も無いごく普通の男性。喫茶店「翠屋」のマスターを勤めているという、なのはのお父さん――高町士郎だった。
 彼は飄々とした仕草であたしの父から名刺を受取り、照れくさそうに頭を掻きながら、この度は娘がご迷惑をお掛けしましたと頭を下げた。
 今はその人柄を良く知っているが、その時の彼の対応は、今思えばとんでもないものだったのである。
 あたしの父は、デビット・バニングス――日米にいくつもの関連会社を持つ大会社の経営者である。
 それを知った大人達は、誰もが平身低頭して、青褪めた顔にへつらいの笑みを浮かべながら何度も頭を下げ、逃げるように早足で去るのが常だった。
 そんな様子を幾度も目にしていたことが、あたしの幼少期の増長の一因となっていたのは間違い無い。
 なのはの父は、それを知りながら、まるで旧友に接するような気さくな態度で、サッカーなどの話題で父との談笑に花を咲かせていた。
 それは、あたしに対するなのはの態度と同じものであった。
 その後あたし達はお決まりのように意気投合し、あたしとなのはとすずかの三人は親友となった。
 互いの家を行き来するようになり、高町家の人々と親しくなって、はっきりと解った。なのははあの大らかで暖かな家族の中で育まれたのだ。
 
 
 高町なのは。彼女は、全く普通のどこにでもいる少女だった。――少なくとも、あの日までは。
 すずかの父は、あたしの父には遠く及ばない規模ではあるものの、工業機器の開発を営む会社の社長である。
 あたしとすずかは社長令嬢。そして、なのはは、喫茶店の店長の娘。
 俗な秤に染まった今なら、あの仲良し三人組の中で、なのはだけが明らかに劣る家柄の娘であることが解る。
 無論、あの時から今に至るまで、あたし達はそんな詰らないことを気にした事など一度として無いのだけれど。
 尤も、小学生だったあたし達は意識すらしなかったが、あたし達の学校、私立聖祥大学付属小学校は小学校から大学まで一貫式のミッション系スクールだ。
 そこに通っていたいた時点で、あたし達はその他多くの平凡で普通の小学生達より、ハイソサエティに属していたことになる。

 ……本当に嫌になる。この数年間で、あたしは誰かに会うとまずその社会的地位を値踏みする癖がついてしまった。
 それは、状況に応じた立ち振る舞いを要求される社長令嬢として、当然身につけるべき嗜みであったが、あたしの価値観までがそれに侵食されていくようで、時折空恐ろしくなる。
 あたし達を束縛する数限りない軛。曰く、財力、家柄、地縁、血縁、地位、年齢――。
 息苦しくはあるが、誰もがそんな面倒事で構成された現代日本の世間という海の中を泳いで生きている。
 こうやって、プライベートビーチで遊んで一日を終えることができるあたしの人生は、他人から見れば限りない程のイージーモードだ。

792彼女達の独白3 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:35:12 ID:GKQJka4I

 しかし、なのはは誰もが逃れられない全ての軛を解いた。完全に脱却した。
 ごく普通の少女だった筈の彼女は、魔法少女という余りにも現実離れした存在となって、異世界へ旅立って行ってしまったのだ。
 社長令嬢がなんだ。日米に展開する大企業がどうした。
 それらは凡て、この世界という小さな「 」の中だけで成り立つ価値観。
 そんな既成概念の外に出たなのはこそ、真にノーブルな存在だ。
 



 
 午後になって、馴染みの来客が訪れた。あたしの親友、すずかだ。 
 なのはと違って、彼女とあたしの関係は、出会ってから大学を卒業した現在に至るまで全く変わっていない。
 否。16年間を同じ聖祥の学舎に通ったのだ。あたしとすずかは、幼馴染みや親友という言葉では言い表せない、ある意味家族以上に親密な関係を続けている。
 勝手知ったる様子で、バルコニーに訪れたすずかと視線を交え、小さく笑みを交わしてひらりと手を振る。
 今日の挨拶は、それだけで充分だった。
 青空の下での、暫しの談笑。彼女の為に用意した、上等の洋菓子と紅茶。
 誰にも邪魔されない、あたしとすずか、二人だけの時間だ。
 喋るのは他愛もない雑談。家の猫や犬の話、天気の話、新しく見つけた甘味屋の話。本当に、他愛もない雑談だ。
 だが、あたしにとってすずかとの時間は、他の何物にも掛替えの無いものだ。
 胸の奥にへばりつく鈍い痛み。昔と同じようにすずかと話している間だけ、その痛みが少しだけ薄れる。
 すずかと話すのは楽しい。本当に楽しい。
 ――例えなのはが居なくても、楽しいと錯覚しなければならない。
 
 ふと、話が途切れた。静かに青空の梢のざわめきを楽しみながら、静かにティーカップを傾ける。
 ……頃合いだろうか。
 あたしは静かに椅子を立ち、すずかに目配せをした。
 彼女はついと目を伏せ、頬を微かに染めながら肯いた。
 手を差し出すと、すずかは控えめに自分の掌を重ねる。
 あたしは、彼女の手を引いて長い廊下を歩いて自分の部屋へと向かった。
 オーク樫の重い扉が軋みを上げて閉じる。
 厚いカーテンを引いて照明を落すと、あたしの部屋は闇の帳に包まれた。


 暗闇の中でも仄白く浮かぶ美しい裸身に、そっと指を這わす。
 ぞくりと身を震わせるように、すずかの体が跳ねた。
 つい、と舌先をその肌に落し、緩慢に舐め上げる。今日の陽気のせいだろうか。微かに汗の味を感じる。
 むずかるように所在なく動く太腿に、自分の足を絡めて押さえつけた。

 一体、いつからだろう。こんなことを始めたのは。
 最初に誘ったのは、あたしからだった。
 何の変哲も無く、車輪の中の鼠のように繰り返される生活に対する、ささやかな反抗。
 とは言ったものの、今の環境にそう大きな不満があるわけではなく、むしろこんな安定した生活を与えてくれた父母には感謝をしている。
 勿論、家を出奔して非行に走る気などは更々無い。
 ただ少しだけ、ほんの少しだけ、この生活に背徳感のある刺激が欲しかったのだ。
 
 始まりは、あたしがすずかを抱きしめるだけの、幼く拙く、純情な行為だった。
 いつからだろう、すずかを抱きしめるあたしの指先に、淫らな熱が灯るようになったのは。
 すずかの背中を抱きしめていただけのあたしの指先は、虫が這うような緩慢な動きですずかの服の下に潜り、一枚、また一枚と彼女の衣服を剥いでいった。
 
 ……それは、一輪の薔薇の花を愛でていた時に湧き上がったのと同じ衝動だ。
 一枚、また一枚と美しい花弁を剝して散らし、その芯の部分に迫っていく、後ろ暗い興奮。
 すずかは、拒まなかった。

793彼女達の独白4 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:36:58 ID:GKQJka4I
 事が済み、隣で眠るすずかを置いてあたしはそっとベッドから抜け出した。
 体に残る熱を洗い流すような冷たいシャワーを頭から浴びながら、あたしは姿見に映る己の姿を見つめる。
 見知ったあたしの瞳が、あたしを覗きこんでいた。

 ――少し、あたしについても話をしよう。
 あたし、ことアリサ・バニングスは世間一般の基準に照らし合わせれば、類稀な美女である。
 勿論、人前でこんなことを言い切ってしまえる程、恥知らずでも傲慢でもないが、そのことは客観的事実として自覚している。
 長く均整のとれた肢体、砂時計型の腰から胸にかけてのプロポーション、そして西洋人の父譲りの金髪と、日本人離れした目鼻立ち。
 あたしは幼い頃から、己が他人からかけ離れて美しい外見の持ち主であることを自覚していた。
 自身の審美眼に照らし合わせても間違いは無かったし、周囲の人間のあたしを褒めたたえる言葉には、見飽きたあたしの地位に対するへつらいとは確実に違う、真実の響きがあった。
 あたしは、人並み外れた美を与えられて生を受けたのだ。
 しかし、薔薇の美しさを決めるのはその品種のみではない。薔薇が真実美しく開花する為には、庭師の手入れが欠かせない。
 そして、あたしを育んだバニングス家の資産は、あたしを理想の女性像とも言える姿へ見事仕立て上げた。
 そう。何の面白みもない、雑誌とモデルとなんら変わらない形通りの美女に。
 

 あたしは、幼い頃から己の人生に飽きていた。
 物心ついた頃には、あたしは他人の価値を不等号で量る習慣を身につけていた。
 その価値判断に照らせば、ハイソサエティーと言える私立聖祥大学付属小学校の中でも、周囲の有象無象の人間はあたしの顔色を覗くばかりの雑魚ばかり。
 大抵のクラスメイトは、幼いなりに己とあたしとの違いを肌で感じとり、距離を置くようになった。
 勉強も、運動も、立ち振る舞いも、常に正しく一番であるように。
 あたしはスクールカーストの頂点に立ち続けた。
 思えば、それは何て孤独な優越感だったのだろう。
 それを見事に壊してくれたのが――高町なのはだった。


 それから、なのはが魔法という非日常の世界に入り込むまでの三年間が、あたしにとっての至福の時間だったことは間違いない。
 あたしたちは、三人で足りていた。三人で完結していた。
 あの、ユーノ・スクライアが、そしてフェイト・テスタロッサと八神はやてがあたしたちの仲に入り込んで来るまでは。
 ……彼女たちと出会って、なのはは変わった。変わってしまった。
 
 あたし達と過ごす時間は少しづつ減り、そして、あたし達の手の届かない魔法の世界で過ごす時間が少しづつ増えていった。
 別段、あたしはフェイトやはやてを嫌っているわけではない。
 二人とも、とても好ましい人物だと思っているし、あたしにとっても交友を結んでいる数少ない輩だ。
 しかし、彼女達と出会ったことであたしの許からなのはが去っていってしまったという事実を思う度、云い様の無い彼女たちに対する怨恨がこみ上げてくるのである。
 わかっている。これはあたしの逆恨みに過ぎない。
 この感情の本質は嫉妬だ。今の尚なのはの隣に居るフェイト・テスタロッサが、あたしは羨ましくて堪らないのだ。

 あたしの友人と呼べる人間の大部分は、なのはに紹介された魔法世界の住人だ。
 クロノ、シグナム、スバル、ティアナ……。
 皆気持ちの良い人物ばかりであるし、あたしを詰らないこちらの世界の枠で量ってへつらうようなこともない。
 あたしにとっては有り難い友人と言える。
 だが、足りない。
 どこまで行っても、あたしが本当に親友と呼べるのは、なのはとすずかの只二人だけなのだ。

794彼女達の独白5 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:38:03 ID:GKQJka4I
 あたしとすずかが高校に進学する頃、なのははミッドチルダに移住した。完全に、あちらの、魔法の世界の住人となったのだ。
 そしてなのはを失ったあたしは、再び高校という荒野に投げ出された。
 聖祥大学付属高校では、エスカレーターだった小中と変わって、受験によって外部の人間が混じり、人間関係が一からリセットされる。
 その中で、あたしは明確な異邦人だった。
 高校に進学する頃には、あたしは女性としての美を完成させつつあった。
 加えて、家柄や学力といった下らないヒエラルキーを意識し始める年頃でもある。
 中途半端に顔がいいだけの女や、勉強ができるだけの女などは、総じていじめの対象などになり易い。
 しかし、あたしに手出ししようとする者など、居よう筈も無かった。
 どれだけ手を伸ばしても、指先さえ届かない相手の足を引っ張ろうとする愚者など居ない。
 あたしは、嫉妬の対象にも、羨望の対象にも、努力の目標にもされなかった。
 ただ、彼女たちはあたしを、自分とは無関係な世界の人間として放置するのみだった。
 あたしの傍に居てくれたのは、すずかだけだった。

 
 思い返せば、あたしならできた筈だ。彼女達と交友を結び、実りある高校生活を満喫することが。
 それだけの社交能力も経験も、あたしには備わっていたのに。
 だが、あたしも又彼女達を無視した。なのはとすずか以外の友人など、欲しくも無かった。
 自分の人間関係を拡張することを、あたしは完全に放棄していた。
 この社会の中で、人生の勝ち組と呼ばれるだけの条件を備えながら、あたしは自分の人生を何ら拓こうとしなかったのだ。
 ただ、過ぎたなのはとすずかの三人の思い出に繰り返し浸るだけだったのだ。
 

 ああ、もう認めよう。
 あたしは、なのはの事が好きだった。
 それも、唯の友人としてでは無く、性的な意味での好意をずっとなのはに抱いていたのだ。
 すずかを抱くのも、その代償行為だ。なんて醜いあたし。
 
 なのはの笑顔が、幾度も脳裏に浮かぶ。
 こんな詰らない世界の詰らない些事を文字通り飛び越えて、なのははあたしの手の届かない世界へ行ってしまった。
 ……もしかしたら、あたしもなのはと一緒に向こうの世界について行くという選択肢もあったのかも知れない。
 べつに、あちらの世界も魔法使い以外お断りという訳ではないらしいし、あたしの才能を生かせる場所など幾らでもあった筈だ。
 でも、行けなかった。
 なのはの隣に、フェイト・テスタロッサが居たからだ。
 なのはの親友。魔法使いとしてなのはを支えることが出来る、なのはと同格なパートナー。
 もしも、もしもあたしが向こうの世界に行って、なのはとフェイトが仲睦まじく戦う姿を眺めることしか出来なかったなら――。
 そんな事、想像するだに耐えられなった。
 ああ、何て妬ましいフェイト。なのはと同じ空を飛べる彼女達が羨ましくて堪らない。
 勿論、あたしがなのはの隣に居場所を見つける事も出来たかもしれない。何かの形で、なのはを支えることが出来たかもしれない。
 だが、臆病なあたしはその一歩を踏み出すことができなかたった。
 父母のこと、バニングスの一人娘であること、すずかのこと。
 自分への言い訳は、幾らでも容易く思いついた。

795彼女達の独白6 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:40:20 ID:GKQJka4I
 あたしには、勇気が足りなかった。素直になれなかった。
 天秤が反対側に傾くのを見たくなくて、天秤に乗ることさえ放棄した。
 結果。
 なのはの人生にあたしはもう居ない。
 勿論、交友はまだ続いている。なのはがこちらの世界に戻った時には久闊を叙す。
 それでも、あの幼い頃のような、濃厚で親密な時間はもう来ない。
 今なのはとそんな時間を過ごしているのは、フェイトや、スバルや、なのはの愛娘のヴィヴィオだ。
 あたしには唯、過ぎた時間を思い返すことしかできない。

 人生で一番楽しかった時間を問われ、小学校3年生という幼少期しか挙げられないあたしは、きっと病んでいる。
 普通なら、思春期の多感な時期や、甘酸っぱい恋を経験した経験や、社会への会談を登る青春期などを挙げる筈だ。
 だが、あたしには、もう、あの頃しか思い出せない。
 きっとこれから、あれ以上楽しい時間はもう来ないのだろう。
 ただ、静かで優しい安寧の日々にくるまれて、あたしはゆっくりとここで老いていく。

 ――今日もまた、あたしはすずかを抱く。
 なのは、なのは、なのは、なのは、なのは、なのは。
 なのはの面影を彼女の向こうに思い描きながら。
 きっとそのことは、すずかも解っているだろう。
 あたしは今、彼女にとても侮蔑的なことをしている。

 すずかが息を荒げながら、濡れた瞳であたしを見上げる。
 その細い唇が、震えるながら開いた。

 すずかは、掠れそうな声でこう言った。

 ――ごめんね、アリサちゃん……。

 その後、声無く唇が小さく動いた。
 でも、あたしはアリサが何を言おうとしたのかがはっきりと解った。
 
 ――なのはちゃんになれなくて。

 なんて優しいすずか。なんて最低なあたし。
 あたしは今日も、この安寧の毒に蝕まれながら、ゆっくりと老いていく。

796彼女達の独白7 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:41:47 ID:GKQJka4I
SIDE:S


 ……少し、わたしのお話をいたしましょう。
 何分、こういったお話をするのは初めてなので、少々冗長になるかもしれませんが、ご勘弁を。
 大したものはお出しできませんが、お茶とお菓子を用意いたしましたので、どうぞお寛ぎになってお聞き下さい。
 さて、何からお話したものでしょう。
 まずは、わたしの幼い頃の夢の話から――。

 
 あの日の夜、わたしはそっとベッドから抜け出しました。
 理由はよく覚えておりません。なにぶん、小学校に上がる前の幼い頃の事でしたので。
 その夜は両親が不在で、ひどく不安だった事は善く覚えています。
 きっと、わたしは不安で寝付けなかったのでしょう。
 それとも、夜中にお手洗いにでも行きたくなったのでしょうか?
 兎も角、わたしはこっそりとベッドを抜け出しました。
 あの頃のわたしにとって、その行為は大冒険と呼んで差し支えないものでした。
 堪え難い恐怖に抗いながら、わたしは奇妙な昂揚に体の奥がじんと熱くなるのを感じていました。
 
 夜闇に包まれた世界は、お昼の世界とはまるで別物でした。
 お屋敷の中は暗く、昼間は幾人ものメイドさんや猫達が歩き回っていたというのに、鼠一匹の気配すらせず、しん、と鎮まりかえっておりました。
 まるで知らないお屋敷に迷い込んだような心細さを覚え、わたしは窓際のカーテンを掴みながら、ゆっくりと歩きました。
 自分の足音が奇妙に反響し、まるで怪物の吼声のように聞こえてわたしは幾度も頭を抱えて蹲りました。
 
 そんな中、わたしは光の漏れている一枚の扉を見つけたのです。
 向こう側には、確かに人の気配がありました。
 その扉は、今までに開いたことのない扉の一つでした。
 まだ幼かったあの頃は、入ってはいけないと強く戒められていた部屋が沢山あったものです。
 そこも、そんな部屋の一つだったのでしょうか?
 ですが、わたしは躊躇なくその扉を開きました。
 孤独と恐怖は既に限界を迎えていたのです、その後に待ちうけているお説教のことなど、まるで頭にありませんでした。

 はたして、その扉の向こうは部屋ではありませんでした。
 階段、だったのです。
 長い長い階段が、地下に向かって伸びていました。
 その向こうに部屋があり、光はそこから漏れていたのです。

 こんな処に階段があるなんて、わたしは聞いたこともありませんでした。
 わたしは、恐る恐る階段を下り、その向こうの扉を開きました。
 ――自分がやっているのは悪いことだということは、とっくに解っていました。


 扉を薄く開くと、部屋の中には忍姉さんが立っていました。
 わたしの8つ年上の、優しく聡明な自慢の姉さんです。
 姉さんは、難しい顔をして大きな作業台に向かっていました。
 別段珍しいことではありません。機械いじりが趣味の姉さんは、善くこうしてラジオを分解したり、新しい道具を考えたりして遊んでいるのです。
 
 ですが、その日は違っていました。
 何が違っていたか、ですって?
 一目瞭然のお話でございます。

 だって。
 だって、姉さんが分解していたのは、ラジオでも炊飯器でもパソコンでもなく。
 メイドの、ノエルさんだったのです。
 姉さん付きのメイドのノエルさん。口数は少ないですが、とても優しく有能な我が月村家のメイド長さんです。
 その彼女が、姉さんの作業台の上に横たわり、人形のように分解されていたのです。
 頭蓋や胸郭の外されたノエルさんの中身は、螺子と歯車と発條と、その他のよく分らない沢山の部品でできていました。
 わたしは、恐ろしくて声も出せませんでした。
 あの優しいノエルさんがこんな姿になっていたことも恐ろしくて堪りませんでしたが、それ以上に。
 無表情で、まるで魚でも捌くようにノエルさんを分解する姉さんのことが怖くて堪らなかったのです。

 わたしは、恐怖に涙を流しながら、必至に口元を押さえました。
 見つかったら、わたしも姉さんにバラバラにされてしまうかもしれない、そんな茫漠とした悪寒がわたしを支配していました。
 ですが、所詮は子供のかくれんぼです。
 キイ、と扉が無慈悲にも鳴り響き、忍姉さんが物凄い勢いでわたしに振り向きました。

797彼女達の独白8 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:43:10 ID:GKQJka4I
 ……わたしの夢の話は、そこでお仕舞いです。
 気づけば、わたしはベッドの中で息を荒げていました。
 夢です。
 全部、夢だったのです。弱いわたしは、両親がいない恐怖に負けて、こんな恐ろしく不謹慎な夢を見てしまったのです。
 まったく、馬鹿げた話です。
 貴方もそうお思いでしょう?
 ですが、その時のわたしは、安堵のあまり涙を零しました。
 あの夢が夢で良かった。心の底からそう安堵して、こうしていつもと同じ朝を迎えることができたことに、歓喜の涙を流したのです。

 
 姉さんもノエルさんも、いつもと何も変わりませんでした。
 わたしが恐る恐る手を伸ばすと、ノエルさんは微笑んでわたしの手を優しく握り締めてくれました。
 当然のように歯車なんて欠片もない、血の通った柔らかく温かな掌でした。

 
 あんな失礼な夢をみたことに、わたしは酷く自分に恥じ入り、忍姉さんとノエルさんに罪悪感すら抱きました。
 ですが、それも長くは続かず、すぐにいつもと同じ毎日を繰り返すようになりました。
 当然の話です。


 ――え? 話はこれで終わりかって?
 ええ、夢の話はこれでお仕舞いです。でも、わたしという人間の話は、これからなのです。
  
 
 あの夢の話はこれでお仕舞いです。
 それから連日悪夢に悩まされて、といった話もございません。毎日快眠で平和な日々を過ごしております。
 ……ですが、あの夢は、わたしに小さな疵を残していったのです。
 ほんの小さな疵です。
 何と表現したらいいでしょう。
 わたしは、酷く臆病になってしまったのです。

 おばけや幽霊が苦手な女の子など、別段珍しくはないでしょう。
 ですが、わたしの恐怖と嫌悪は、ありきたりなそれらとは、明らかに違っていました。
 おばけや幽霊のような超常の存在が『許せない』のです。
 それらの出現が怖いのではなく、それらが在ること自体が、わたしの世界を犯すこと自体が許せないのです。
 わたしは、酷くリアリストに成長しました。
 
 女の同士の他愛無い会話で、恋占いのような話をすることも勿論ありました。
 表面上はにこにことそれらの会話に加わりながらも、胸中では占いや呪いといった概念に対して、唾棄したい思いが充満していました。
 わたしは、わたしの常識が届く範囲の世界で生きていたかったのです。

 学校でも、わたしは常識人といった評価を受けていました。
 友人たちの間でも、誰かの側に偏ることなく、みんなの調停役として動きました。
 普通であること。
 それが、わたしを安心させるのです。
 よく考えれば、幾人ものメイドを雇う広大なわたしのお屋敷は、既に普通の邸宅の範疇を超えている気もしますが、わたしの通っていた、私立聖祥大学付属小学校では別段驚かれる程の規模ではありません。
 わたしの親友のアリサちゃんのお家なんてもっと広いわけですし、そのくらいのアブノーマルは許容してもらえるでしょう。
 何より、わたしの望む普通は、世間の評価ではなく、瑕疵の無く変化ない日常だったのです。


 わたしは、ごく普通の、何の変哲もないどこにでもいる女の子です。
 ――少なくとも、自分ではそのつもりでした。
 いつからでしょう。わたしが、自分が他人とは違うことに気づいたのは。
 わたしは趣味は専ら読書です。幼い頃から独りで本を読むのは大好きでしたが、皆と一緒にお外で遊ぶことはあまり好きではありませんでした。
 それなのに、何故でしょう?
 わたしの運動の成績は、いつもクラスで一番でした。
 ほかの子供の達が球技などをして遊ぶのを見てじれったく感じる程に、わたしの運動神経は頭抜けていました。
 小学生の頃でさえ、なのはちゃんのお姉さんである、当時高校生だった美由希さんに互するまでの運動能力がわたしには備わっていたのです。
 何一つ、スポーツの経験のないわたしが、熱心に剣術の訓練をされていた美由希さんに並ぶというのは、どう考えてもおかしな話です。
 それは、個性や才能といった言葉で表せる範疇を明らかに超えていました。

 わたしの体の異常性は、それだけでは留まりませんでした。
 傷の治りが明らかに早いのです。小さな擦り傷や切り傷が、寝て起きたら消えていた、ということなどは何時ものことでした。
 便利なことだとお思いですか?
 客観的に利便性だけを見ればそうなのでしょう。
 ですが、それがおかしなことだと知った時のわたしの衝撃は大変なものでした。
 だって、そんなことはわたしにとって当たり前のことだったのですから。

798彼女達の独白9 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:45:12 ID:GKQJka4I

 ……でもまあ、わたしの運動神経や治癒力は、便利な個性という言葉で、なんとか片付けてしまうことができます。
 普段生活していく上で、深く考えなければ、意識の外に追い出してしまうことができる事柄です。
 逃避かもしれませんが、忘れてしまうことができる小さな事象に過ぎません。

 あの夢だったそうです。
 きっと、年が経って大人になれば、他愛もない少女時代の夢と一笑に臥せてしまえたものでしょう。
 でも、わたしは出会ってしまったのです。

 『本物』に。

 それは、なんて名状し難き光景だったのでしょう。
 夜空におぞましき触手を広げる異形の怪物。
 その奇形のフォルムは、わたしが想像力の限りを尽してイメージしたどんな怪物よりも冒涜的で、忌わしきものでした。
 わたしとアリサちゃんは、ただ怯えながらその姿を見上げることしかできませんでした。
 当然のことです。
 ただの小学生に過ぎないわたしたちは、ただこれが悪い夢であると信じ、早く醒めてくれないかと願うことしかできなかったのです。
 だというのに、その悪夢に立ち向かう存在がいたのです。
 まるで魔法のように――いえ、お伽噺の魔法そのものに空を舞い、眩い桜色の光で怪物を焼き払う少女。
 わたしたちの大親友、高町なのはがそこに居ました。
 いつも一緒に遊んで、一緒にお弁当を食べて、一緒に笑って……わたしたちの何ら変わらぬ対等の友達と信じていた相手は、その実、遠くかけ離れた非日常の存在だったのです。

 隣にいたアリサさんが、映画のヒーローでも見るようなうっとりとした視線で、なのはちゃんを見上げていたのを覚えています。
 その日を境に、アリサちゃんがなのはちゃんを見つめる視線が、今までにはないねっとりとした熱を帯びていくのをわたしは感じていました。
 アリサちゃんは、何度も繰り返しわたしに話してくれました。
 如何になのはちゃんが凄いかを。如何になのはちゃんがわたしたちとは違う存在なのかを。
 アリサちゃんがなのはちゃんに憧れていることは間違いありません。
 魔法使いであるなのはちゃんを、心の底から敬愛しているのです。

 ……ああ、わたしもそうあれたらどんなに良かったことでしょう。
 わたしにとって、その日見た怪物と戦うなのはちゃんの姿は、悪夢の一部でしか無かったのです。
 いいえ、なのはちゃんの存在によって、わたしの悪夢はより一層深まってしまったのです。
 あの日、ただ怪物を見ただけなら、悪い幻覚でも見たのだろうと、自分を誤魔化すことができたのかもしれません。

 それが、魔法使いのなのはちゃんという、あの悪夢の夜の証人が現れたことによって、確定してしまったのです。
 その日から、わたしの世界には亀裂が入り始めました。
 あるものはある、無いものはない。
 それがわたしの世界観でした。幽霊も呪いもUFOも、そんな非科学的なものは存在せず、当然あるべきものだけが存在する。
 それが、あるべき世界の形でしょう?
 魔法使いとしてのなのはちゃん存在は、それを歪めていきました。
 図書館で出会った友人である八神はやてちゃん、彼女も魔法使いの一人という事実が、それを助長しました。
 平穏で、ごく普通の生活を送っていたはずのわたしの日常は、一皮剥けば、この世ならざるもの達が跳梁跋扈する異界だったのです。


 最早わたしには、何を信じればいいのか、何を疑えばいいのか、それすらも分かりません。
 ただ茫漠とした不安に取り憑かれ、背筋を撫でる得体の知れない恐怖に怯えるばかりの毎日です。
 なのはちゃんへの思いを深めていくアリサちゃんとは対照的に、わたしはなのはちゃんへの不信を積らせていくばかりです。
 あの日何があったのか――。
 なのはちゃん達は、わたしたちに分かり易く説明してくれました。
 わたしたちが住む世界の外のある、次元世界のこと。魔法使いの存在のこと。
 しかし、それらの説明はわたしにとって受け入れられるものではありませんでした。
 理屈が通っているのはわかります。アリサちゃんのように受け入れてしまえば楽になれることも分かっています。
 それでも、わたしは、なのはちゃん達への本能的な恐怖と嫌悪を消すことができなくなってしまいました。

799彼女達の独白10 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:46:42 ID:GKQJka4I
 
 夢、怪物、魔法、なのはちゃん。恐ろしいものは沢山ありました。
 そんな中で、唯一絶対、これだけは安心と呼べるものが一つだけありました。
 それはわたし自身、です。
 どれだけ異様な狂気の世界に包まれようと、自分だけは正気の世界の住人でいること――それが最後の砦だとわたしは思っていました。
 愚かしくも。

 しかし、わたしは絶対に目を反らすことが出来ない、深刻な自分の異常性に直面することになったのです。
 最も忌むべき問題は、わたしの心の内側にありました。

 ――わたしが、自分の中にあるその衝動を自覚したのは一体何時頃からのことだったのでしょう?
 はっきりと自覚したのは、月の障りが安定するようになった頃でしたので、小学生時代の終わりでしょうか。
 なのはちゃん達に、わたしの世界を完膚無きまで叩き壊されてしまってからのことです。

 不意に、人が血を流しているのを見ると、口をつけて舐めたくなるのです。
 その流れる赤い雫に舌を這わせ、傷口に歯を突き立てて吸い上げたいという衝動が、わたしの体の奥底から湧き上がるようになったのです。
 他人の赤黒い血液を見つめ、その鉄錆のような香りを嗅ぐと、きゅん、と下腹が疼きました。
 大変はしたない話で申し訳ありませんが、性的な興奮を感じるようになってしまったのです。
 もっとも、それが自覚できるようになったのはもう少し分別がつくようになってからの話ですが、幼いわたしは自分でも名状し難き興奮に戸惑っていました。
 勿論、今はそれが何と呼ばれるものかぐらいは分かっています。
 変態的性欲、性的倒錯と呼ばれるものには間違いありません。
 血液性愛――ヘモフィリアと呼ぶのが一般的なのでしょうか。
 もしくは、変形した食人性愛――カニバリズムと呼んでもいいかもしれません。
 人の血の流れ出る所が好きというのは、単にサディズムの一言で片づけるには些か異常性に富んでいました。
 

 ――いいえ、違います、わたしはそんな汚らわしい変態などではありません!
 ごく普通の、どこにでもいる女の子だったはずです!
 病院なんて行きたくありません!
 わたしに病んだところなんて無い筈です! 
 魔法の世界のような異常事態に触れたことで、少し精神的に疲れているだけなのです!


 ……でも、もしかしたら、幼い頃に見たあの夢も、わたしの異常性の幼き発露だったのかもしれません。
 それとも、あの夢に悩まされて続けて、無自覚なノイローゼとなってこのような嗜好が表れたのでしょうか。
 本当のことは、もう、分かりません。


 それとも。
 それとも。
 ずっと夢だと思っているあの出来事でさえ、実は現実にあった出来事なのでしょうか。
 忍姉さんやノエルさん――わたしの家族でさえ、現実離れした狂気の世界の住人だったのでしょうか?
 もう、何もわかりません。
 わたしは、疑うことに疲れてしまいました。
 今出来ることは、闇夜の子供のように頭を抱えて震えるだけです。

800彼女達の独白11 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:47:42 ID:GKQJka4I

 ……いえ、あともう一つ。
 体が疼いてどうしようも無くなった時、わたしはアリサちゃんに慰めてもらいます。
 アリサちゃんはとても勘が鋭く、わたしの機微を汲み取って、言葉一つ交わすことなくわたしを抱いてくれます。
 彼女の指はわたしを蕩かし、この世界の恐ろしい全てや、わたしの中で渦巻く苦衷の全てから解き放ってくれます。
 アリサちゃんは魔法の世界に憧れていても、何の変哲もない普通の女の子です。
 わたしと同じ――いえ、わたし以上に普通のどこにでもいる女の子です。
 そんなこちら側の存在であるアリサちゃんに抱かれることが、わたしにとってどれだけの安心感を与えてくれることでしょう。
 わたしは、アリサちゃんを利用して、自分の正気を日々保っています。

 ――ごめんね、アリサちゃん……。
 
 ――いつもこんな汚いわたしに付き合わせて。
 わたしは、小さく呟きました。


 ……え、どうして貴方にお話したのか、ですって?
 ただ、耐えられなかったんです。
 もう、なのはちゃんもフェイトちゃんも怖れしか感じない相手だというのに。
 今まで通りの笑顔を作って友達を装い、関係だけは崩さないようにしている自分の汚さに。
 誰かに、全部吐き出したかっただけなんです。


 ――なあんて、ウソです、全部冗談でございます。
 魔法なんてお伽話、まさか本当に信じてしまわれたわけではございませんでしょう?
 最初の夢の話から、少しHな告白まで、全部纏めてわたしの創作です。
 でも、善い暇つぶしにはなりましたでしょう?
 紅茶、冷めてしまったので新しいのに淹れ換えましょうか。
 わたしとしたことが、少し長話が過ぎてしまったようです。
 どうぞお忘れになって下さい。
 ――別段、面白いお話でもなかったでしょう?

801彼女達の独白12 ◆vyCuygcBYc:2011/11/05(土) 02:49:14 ID:GKQJka4I
 SIDE:N

 
 わたしは、柔らかなベッドの中で目を覚ました。
 カーテンを開くと、眩しい朝日がわたしの眠気を吹き飛ばしてくれた。
 ヴィヴィオはまだ眠っている頃だろう。

 髪をサイドテールに結って、頬を叩き、気合を入れて立ち上がる。
 今日も忙しい一日の始まりだ。

 コーヒーメーカとトースターをセットし、フライパンに玉子を二つ落とす。
 フライパンの立てる香ばしいベーコンと焼き立てのトーストの匂いにつられて、ヴィヴィオが眼を覚ました。
 左手でウサギのぬいぐるみを抱きしめ、右手で眠たげに目元を擦りながら。
 おはよう、と声を掛けると、欠伸混じりにおはよう、という返事が返ってきた。
 わたしは苦笑をしながら、ずり落ちたヴィヴィオのパジャマの肩を整える。

 ヴィヴィオと二人の朝食。
 目を輝かせながら学校や友達のことを語るヴィヴィオに、思わず目を細める。
 
 色んなことがあったけど、これが、今のわたしの幸せ。
 
 
 ヴィヴィオを見送って、ダイニングのコルクボードに目を移す。
 幾葉もの、幾葉もの写真が、所狭しと貼り付けられたコルクボード。 

 海鳴時代からの大切な人達との思い出の数々。
 一番上は、この家に引っ越してきたばかりの時の、わたしと、フェイトちゃんと、ヴィヴィオの三人で撮った記念写真。
 その下が、機動六課解散の時の写真で、その横が訓練風景。
 どんどん下っていくと、相応にわたしの姿も幼くなっていく。
 訓練校時代、リインのお誕生祝い、はやてちゃんの全開祝い。
 アースラでのリンディさんとクロノくん、無限書庫でのユーノ君と司書さん達。

 一番下には――海鳴の家と翠屋の写真。
 今は随分と遠く離れた所に来てしまったけど、わたしの故郷と言える場所、わたしの原点は今でのあの暖かい海鳴の家なのだ。
 時間を見つけては、ヴィヴィオと里帰りをしているけど、最近また忙しくてその機会は頓に少ない。
 それでも。
 このミッドチルダの地に住んでいても、わたしはあの世界で生まれ育った、高町なのはなのだ。

 最後に、わたしは一葉の写真を手に取った。
 そこには、顔を泥だらけにした、仲良し三人組――わたしと、アリサちゃんとすずかちゃんが写っている。
 これは一体、いつの写真だっただろうか。
 わたしたちは屈託の無い満面の笑顔を浮かべ、楽しくて仕方ないというように大きく口を開けて笑っていた。
 みんな、どうしているだろうか。
 幼馴染の大親友たち。
 今はすっかり会うことも少なくなったけど、わたしの心の奥底には、いつだって二人がいる。
 二人のお陰で、今のわたしがいる。二人と出会ったお陰で、今のわたしになれたのだ。
 
 これだけは、わたしは断言できる。
 ――離れてしまっても、わたしたちの友情は永遠に変わらない。
 海鳴に帰れば、また幼い頃の三人に戻って、昔のように笑い合えるのだ。
 それは、何て素晴らしいんだろう!
 
 今のわたしを作ってくれたのは、わたしが今までに出会った沢山の人々。
 家族に、先生に、仲間に、友達に、――数々の人々に感謝しながら、私は今日を生きている。
 扉を開く。
 さあ、今日も楽しく忙しい日々の始まりだ。
 高町なのは、今日も全力全開で頑張ります!



 END




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