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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第111話☆

1名無しさん@魔法少女:2011/08/18(木) 16:34:39 ID:tcLNLZv.
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。


『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第110話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1302424750/

415スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:16:23 ID:n.8G9q7M

 あたし、スバル・ナカジマは人には言えない秘密がある。
 もちろん、戦闘機人であることは言うまでもないのだが、それ以外にも、とてもじゃないが人に言えない秘密があるのだ。
 パートナーであるティアにさえ、バレてしまうまでは自分の口からは言わなかったくらいなのだから。
 そんな秘密がいま、あたしの目の前に危機として迫っている。この問題は非常に危険だ。なんとかしなければならない。
 なぜならあたしは……。

-
--
---

 スバルの憧れの人、高町なのはの教導によって溢れるほどにかいた汗を心地よいシャワーで流し、火照った身体を冷ますために下着姿のままでい
たスバルは、自分以外誰もいなくなったシャワー室で、傍らに置かれた機械へゆっくりと近づいていく。
 ごくりと生唾を飲み込み、スバルは意を決してその機械へ足を乗せる。機械の上部にある液晶は数字を目まぐるしく変化させながら、やがてある
数字を示してその変動を停止させた。

「はぁ……」

 その機械――まぎれもなく体重計――がディスプレイに表示する数字は、平均的な女性のそれを大きく上回った数を示していた。
 そう、彼女の身体は普通の人とは違う造りをしている。機械と生体が融合した戦闘機人。鋼の骨格と人工筋肉によって生み出される、人間を超え
た身体能力。
 分かっている。普通の人間とは違うのだから、あらゆる感覚も普通の人間を大きく上回っているし、筋力だって見た目からは想像も出来ないほど
の力を生み出す事が出来る。それに伴って、その力に耐えうるボディを作るためにどうしても堅く、そして重い素材を使ってしまうのである。
 その結果が目の前にある、現実という名の彼女自身の体重である。分かっている、分かっているのだが……。

「うーん、でもやっぱりあたしも人並みの体重で過ごしてみたいなぁ……」

 驚異的な身体の機構により、その一般女性からは逸脱した体重であっても問題なく日常生活は勿論のこと、この機動六課に着任してからの日々の
教導も問題なく……、大きな問題は無く過ごす事が出来ている。
 それでも、やはり思ってしまうのだ。
 今のこの現実から逃げれば、それはすなわち戦闘機人である自分自身からの逃避にもなり得る。それは彼女自身のアンデンティティの喪失に繋が
ることになる。だからこそ、目の前のこの現実から逃げる事は敵わない。
 しかし、だ。そんな事は分かっているのだが、それでも彼女はふと先ほどのようなことを考えてしまうのだ。
 何故なら彼女はまだ15歳、まだまだ思春期の少女であり、これから輝き出す乙女なのだから。

 この頃辺りからだろうか。どうしても、何かにつけて体重に関係する話題に過敏に反応してしまうようになったのは。
 一度気になりだすと止まらないのは人間誰しも経験があるのではないだろうか。現在のスバルはまさにその状態であり、普段の会話の中でも、体
重に関するワードが出るたびに反応してしまうようになってしまった。他人よりも聴覚が優れているために余計に気になってしまうのである。
 スバルは頭を抱えて悩んだ。

416スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:19:02 ID:n.8G9q7M

 それからある日の事。
 この日はなのはの教導が休みであり、デスクワークを延々とこなす一日であった。優秀なティアナはともかく、未だ慣れていないエリオとキャロ、
そして苦手なスバルは余計に時間が掛かってしまう。
 そして更に仕事を遅くさせる原因がスバルにはあった。

 それはある意味では幸せな夢であった。
 夢に出てきたのは今の何気無い日常。教導官である上司のなのはの教導を受け、その他の仕事をこなし、休みの日にはパートナーと街へ繰り出す夢。
そんな何気無い、いつも通りというべき日常。そしてその夢の最後に現れたのはやはりというべきか、体重計であった。
 その夢でも何気なく体重を計っている自分。夢に出てくるまで自分は体重を気にしているという事実に、スバルは半ば衝撃を受けながらもその夢
は続いていく。
 しかしこれは現実ではなくて夢。つまり、それは現実ではありえないことが起こる可能性がある訳で。
 体重計が示していた数値は、現実の、いつもの数値とは大きくかけ離れたものであった。
 なんとその体重計は一般女性に近い数値を示していたのである。

 それから驚きとその他様々な感情が渦巻いたまま目が覚めたスバルは朝練を終えた後、嬉々としてシャワー室に向かい、汗を流した後に体重を量った。
 しかしそこに示された数値はいつもと変わらぬもの。夢とはいえ、変な希望を持った自分が悪いということは分かっているのだが、一縷の希望を
砕かれたのは余りにも大きい。これは今日一日はテンションはあまり上げられないのもしょうがない。

 そんな訳で、今日の彼女の仕事は遅かったのである。
 しかしそのまま遅いまま終わらないのでは社会人として失格だ。気持ちを切り替え、スバルは残りの仕事をこなしていく。
 もともとデスクワークが出来ない訳ではない。ただ作業が遅いだけなので、気合を入れ直せば直に終わるだろう。
 残りの項目を軽く確認し、一つ深呼吸をしてからスバルは再び作業に取り掛かるのだった。

417スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:19:32 ID:n.8G9q7M

 そしてそれから間もなく、デスクワークも終わり、大体の仕事が終わったところでスバルは荷物の運搬を頼まれた。そのうちのいくつかをはやて
の部隊長室へと運び込み、室内で作業をしていたはやてと少し話をしていた。
 しかしスバルはそこで異変に気がついた。

「あの……どうかしましたか?」

 普段は元気に胸を揉みに来るはやての様子がなんだかおかしい。椅子に座って部下の前でため息を隠すことなく何度もしている。別にそういうの
を気にする性分ではないが、何かあったのであればそれはやはり気になる。
 このまま下がるのも悪いと思い、スバルはつい、そう聞いてしまったのである。
 数分後に後悔する事になるとは知らずに。

「いやな、別に何でもないんやけど」

「でも八神部隊長、元気ありませんよ。何かあったんですか?」

「んー……。まぁそうやなぁ、別に仕事に関係ない事やし、めっちゃ個人的な事なんやけどな」

 そうしてはやてが繰り出した話題に、スバルは口を一瞬ではあるがつい口を引きつらせてしまった。

「まぁこの機動六課も稼動して数ヶ月、ようやく皆仕事がスムーズにこなせるようになって来てる。これはええ事やし、部隊長としても安心できる
ことやから、部隊運用に関しては特に問題はないんやけど……」

「他に何か問題が……?」

「こうやって部隊長してるとな、前と違って簡単に前線に出る事が出来ひんねんな。デスクワークばっかりで、少しくらいやったら動く事はあるけど、
車で移動して屋内を歩くだけやったりして、少なくとも去年よりかは格段に運動量が減ってんねん」

 ここら辺りまで聞いた時点でスバルは嫌な予感が本能を刺激しているのを感じ取っていた。これは自分には良くない話題であると、聞くのは間違
いであったと。
 しかしここで今更逃げ出す事は出来ない。こうしてスバルは自分の首を自ら絞めに行っていたことにようやく気づいたのである。

「大体予想できてると思うけどな、最近体重が増えてるような気がしてん。んで昨日量ってみたらちょっとショックな数字やってん……。心なしか
お腹周りにもお肉がついてきたような気するし。……私もなのはちゃんの教導受けてシェイプアップとかした方がええんかなぁ」

 はぁ、と再びため息をついたはやてを、若干引きつった苦笑いで見ることしか出来なかった。
 愛想笑いも出来ない。今日のスバルにそんな余裕はないのである。唯でさえ朝から自分自身からの精神攻撃を受けているのだから、それに関連す
る話題はNGにも程があった。

「ま、そやからこれはただの愚痴やな。…あー、部下に愚痴を言うって駄目な上司の典型やん。ごめんな、もう戻ってええで」

 自己嫌悪に陥っているはやてに一礼し、スバルは部隊長室から退室する。
 ちなみにこの時、当たり前ではあるが自分以外にも体重で悩む人がいる事に、ちょっとだけ安心していたのはスバルだけの秘密であった。

418スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:21:38 ID:n.8G9q7M

--

「よし……!」

 ダイエットしてみよう。
 スバルは心の中でそう決めた。確かに自分の体重が重いのは戦闘機人ゆえの体内の機械に因るところが大きい。というかぶっちゃける事も無くそれが原因だ。
さすがにその部分を減らす事は出来ない。軽量化なんてしようものならば、恐らく大掛かりな手術などが必要になるだろう。
 ならば他の部分を削ればいい訳で。それは勿論、生体部分であり、つまりは血や肉というべき部分である。

 ダイエットをするといえども、運動に関しては既に十分すぎるくらい動いているので問題ない。
 むしろこれ以上動けば、いつあるか分からない実戦の際に思い通りに動けなくなる可能性がある。
 では他に何をすればいいだろうか。やはり真っ先に上がるのは食事だろう。スバルは自分は他の人と比べて、少し多く食べている事は自覚している。
元々良く食べる上になのはの教導があればそりゃあもうお腹もすごく減ってしまって更に沢山食べてしまうというものだ。

 ならばここは削れる要素があるのではないだろうか。しかしここでも極端にやってしまっては仕事に支障が出てしまう。腹が減ってはなんとやら
とも聞くし、とスバルは頭の中で自分を正当化し、ほんの少し、ちょっとだけ食事の量を減らす事にした。

「あとは……んー、何があるだろう」

 ダイエットの定番といえば、運動・食事・規則正しい生活あたりが一番よく言われていることであったとスバルは頭の中で巡らせる。運動・食事
は既に考えた後であり、残りは生活時間といったところか。しかしこれも大きくは問題ない。朝は早朝訓練の為に早くに起き、夜は疲労の為に夜更
かしする余裕もない。夜勤・当直にいたっては新人であることと、前線部隊所属であることで免除されている。

 他には薬などを使ったダイエットもあるようだが、これは怪しすぎるので除外した。もし検査の際に引っかかってしまっては困るからだ。
 というわけで、スバルは食事を減らす事によるダイエットを実行する事にした。
 普段例えば10杯食べているものを9杯、8杯ほどに減らし、そうやってほんの少しではあるが食事量を減らしていくのだ。勿論、減らしすぎる
のは肉体的・精神的によくないので減らす量は程々にしている。

 食事の量が普段よりも減っている事に気づいたティアナがそのことを指摘してくるが、なんとかのらりくらりと回避する事に成功した。一瞬スバ
ルは冷や汗をかいたが、それよりもティアナがそんな細かい部分まで自分を気に掛けていたことを嬉しく思い、にへらとしていたのだった。勿論、
いきなり顔がゆるんだので引かれたのは言うまでも無いのだが……。


 それから数日が経ったある日の事。
 午後の教練が終わり、他の隊員よりも一足早めに上がり、そのまま六課隊員寮内のバスルームへと足を運ぶ。キャロとティアナとの三人で湯船に
浸かり、今日の訓練についてを話したり、いつものように何気ない世間話で盛り上がる。
 のぼせない程度に温まった後に湯船から上がり、三人は脱衣所へと戻っていく。身体を拭きながら笑顔で談笑している姿からは、とても恐ろしい
訓練量をこなす優秀な局員には見えず、どこにでもいるような、ただの少女たちにしか見えない。

「……? どうしたのよ?」

 そんな中でスバルの様子がおかしいことに気づいたティアナが、彼女へと話しかける。当のスバルは脱衣所の一点をちらちらと気にするように、
しかしそれを悟られないようにさり気なくそれを行っているようにも見える。
 そんな不審な行動を見かけたティアナはその行動を行っている当の本人へと話しかけたのだが、

「な、なんでもないよー」

 スバルは一瞬ビクリと震えた後に、笑顔で何でも無いかのように答える。……怪しい。ティアナは自身のパートナーが何かを隠していることにぼ
んやりとではあるが気づいた。しかしここで食い下がっても恐らくは答えてくれないだろう。そう感じたティアナは追求をやめ、再びドライヤーで
髪を乾かし始めた。
 スバルはそれを見てほっと一安心する。少し露骨に動きすぎたかな、と反省し、これからは出来るだけ悟られないようにしようと決めたのだった。
 ちなみにスバルの視線の先にあったのは……やはり、体重計であった。

419スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:24:30 ID:n.8G9q7M

 風呂から上がりさっぱりしたところで、先に上がって待っていたエリオと合流し、4人で食堂へと向かい晩御飯を食べ始める。フォワード四人組のうち、
約二名が恐ろしいほどよく食べるので、机の傍には食べ終わった皿が山のように積まれているが、これも彼女らにとってはいつもの事。

 そんないつもの光景のはずの中で、やはりティアナは自分のパートナーの様子が普段とは異なることに気づいていた。
 パッと見ただけでは特に大きく変わって点は見当たらない。食べる量自体もそんなに普段と変わらないように思える。数日前に指摘した時と同じく、
以前よりも減った気がするのは確かだが、今日はそれに加えて更に不審な行動が見られた。

 普段ならば、まだ食べれるのならば遠慮なくお替わりを食べていたのにも関わらず、控えめなのである。そしてまだ食べるか、それとももうここで止めるか……。
いつもとは違う、そんなパートナーの行動に違和感を覚えた。外見だけではあまりそうは見えないが、目線と微妙に落ち着いていないその雰囲気がティアナの目についてしまったのである。
 気にはなったのだが、以前聞いた時にははぐらかされたこともあって、ティアナはその場での追求を諦めることにした。
 他の二人……年少組は恐らく気づいていないのだろう。
 二人とも普段と何も変わらずにスバルやあたしと接している。……まぁ今のスバルが普通じゃないのに気づけるのはあたしくらいだけだと思うけど。
 そんな事を考えながら、ティアナは残りのご飯をかきこむのであった。
 そして食堂での出来事やその他ここ最近の違和感についてスバルから聞き出すために、部屋へと戻ったティアナは椅子に座り、口を開いた。

「あんた、最近おかしいわよ。ご飯だっていつもに比べると少ないし、時々別のこと考えてるようにも見えるし」

 ベッドの上でくつろいでいるスバルへと向き直り、スバルの顔を見る。
 聞かれた当の相手はきょとんとした表情を一瞬見せたあとに、まるであちゃー、といわんばかりの表情へと変わった。

「やっぱり何か隠してたのね。何隠してるのよ、ほら正直に言っちゃいなさい」

「うーん、やっぱり……バレちゃってた?」

 当たり前じゃないの。
 ティアナはつんとした声で言い切った。一体何年一緒に居ると思っているのか。日常のほんの何気無い癖でさえ気づくほどだ。
そんな彼女が、ここ最近のこれほどのパートナーの不審な行動に違和感を覚えないはずがない。
 スバルはまだ何とか逃げれないか、逃げ道を探しているようだったがやがて観念し、ティアナへと顔を向けた。

「……実はね、ダイエット、してた」

 恥ずかしさからかそれとも別の何かか、小さな声でスバルはそう言ったのだった。
 それを聞いて今度はティアナがきょとんとした表情へと変わった。
 え、ダイエット? ダイエットって、あの体重を減らして身体を痩せるようにする……。そんな事をぶつぶつとスバルに聞こえないほど小さな声で口の中で呟く。
やがて納得がいったのか、スバルの方へと顔を上げ、口を開いた。

「最近様子がおかしいと思ったら……そういうことだったのね」

 ティアナはため息をつきながら、ベッドの上で枕を抱えるスバルを見る。

420スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:27:03 ID:n.8G9q7M


「うぅ……」

 ティアナに見られているスバルはバレた恥ずかしさからか、更に顔を枕にうずめて、ティアナの顔を見ないようにしている。
まるで悪いことをして見つかってしまった子どもと、その事を知った親のようだとティアナは一瞬思った。
 とはいえどもスバルは何ら悪い事はしていないし、このような事を隠していたことに関してもティアナには咎めるつもりは一切無いのだが。
 それよりも、どうしてそのような事をしていたのかがティアナは気になった。
思い起こしても、少なくとも自分の知っている範囲では自分はダイエットをさせるような事は言ってないし、他の人にも言われていないはずだ。
 だからこそ分からないのだ。どうしてこのような事をしているのかが。ある程度慣れ、余裕が出てきたとはいえ、そのような事をしていれば直に変調をきたすのはスバルだって分かっているはず。
 理由を問うてみると、スバルはしばらく考える仕草を見せたあと、おもむろに口を開いた。

「うーん、何ていえばいいのかな……」

 スバルは自分の中にあるものを言葉にするように、ゆっくりと、選ぶようにしながら口を開いた。

「やっぱり普通の女の子に、憧れみたいなのはあるかな」

 目を閉じて、何かを考えるかのようにじっと動かない。そしてやがてゆっくりと目を開き、困ったようにティアナへと笑いかけた。
 それを見てティアナは何を感じたのか、ため息をつきながら

「馬鹿ね、そんなの気にし出したらキリが無いじゃない」

「それはそうなんだけど……」

 スバルはうーん、と唸るように声を漏らしながら、やはり困ったような笑みを浮かべていた。
 彼女自身もこれが一時的なものであるのは自覚しているのだろう。もうしばらくもすればまたいつもの彼女に戻るのは、本人もパートナーであるティアナも薄々は感じ取っている。

「大体、あたしだって平均と比べたら軽いってことは言えないわよ。筋肉だってずいぶん付いたし」

 と、ティアナは自分の腕をスバルに見せ付けるように揉みながらため息をつく。
 こんな事は言っても慰めにならないのはティアナ本人が分かっている。
 しかしそれでもこうやって悩むスバルを放っておく訳には行かない。彼女とは短い付き合いではないし、パートナーとしてこのまま放っておくのは間違っている。
 それに、パートナーであるティアナは分かるのだ。いくらきっかけがあったのだろうとはいえ、彼女の心の中で何らかの変化があったに違いない。
それが何であろうと、大きな問題は無いが、やはりパートナーとして、同じ部隊員として、出来うるサポートはしなければならない。

 ……とは言うものの、一体どうすればいいのだろうか。
 短くない期間を共に過ごした二人ではあるが、スバルの身体のこと……戦闘機人に関する話題はあまり表立って話す事は無かった。タブー視して
いる訳ではないし、今更気にする事でもないのだが、それでもそのことについて話し合う事はめったにない。
 もっと話を聞いておけば、こんな事を考えさせる事も無かったのかなと少し思いながらも、ティアナは彼女にかける言葉を考えた。

 そして悩んだ末、ティアナは言葉少なく、しかし正直な思いをそのまま口にすることにした。

421スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:27:53 ID:n.8G9q7M

「……上手くいえないけど、あんたはあんたのままでいいのよ」

 顔をうつむけながら、ティアナは小さな声で言う。心なしか、顔も赤くなっているようにも見える。

「えっと、その……。別に何でもないけど。あたしは今のままのあんたが、その……好きだから……」

 最後のほうはほとんど聞こえないくらいの小さな声であったが、知覚が優れているスバルはその声がしっかりと聞こえていた。
 ティアナのその言葉に、特に表情を変えることなく聞いていたスバルだが、その言葉がしっかりと頭に染みこみ、その意味を理解した時、にへらと顔をゆるませながら口を開いた。

「えへへ、ありがと、ティア」

「うっさい、変な心配かけんじゃないわよ」

 一方はデレて、もう一方は照れて。二人の間では時折、しかし何気なく起こりえる日常の1シーン。
 そんな二人だからこそ、ずっとその関係が続き、そして互いを信用することが出来ている。生涯を通じて付き合っていけるそんなパートナーに出会えた事に、スバルは今再び心が満たされるような感覚を覚えた。
 その幸せをかみ締めながらスバルは床に就き、目を閉じてそして誰に祈る訳でも無く、口にする。
 願わくば、この幸せがずっと続きますようにと。

---
--
-

 あたし、スバル・ナカジマは人には言えない秘密がある。
 もちろん、戦闘機人であることは言うまでもないのだが、それ以外にも、とてもじゃないが人に言えない秘密があるのだ。
 パートナーであるティアにさえ、バレてしまうまでは自分の口からは言わなかったくらいなのだから。
 それはあたしの体重が…重いこと。
 きっかけはなんてこと無い、日常の1シーン。恐らくあの時がきっかけだったのだろう。その時からあたしは自分の体重をやけに気にするようになっていた。
 幸い強迫観念にとらわれる程気にする事はなかったのだけれども、それでもパートナーのティアには随分と心配を掛けてしまった。
 だけどもう大丈夫。あたしはあたし、今のままが一番だと言ってくれたパートナーのお陰でもう気にする事は無くなった。
 なぜならあたしは幸せだから!

422スバルのひみつ!:2011/10/07(金) 00:29:09 ID:n.8G9q7M
終わりです。

スバル可愛いです。

423名無しさん@魔法少女:2011/10/07(金) 00:39:26 ID:tlam1VQ.
GJでした
スバルみたいな女の子してない子がコンプレックス持っちゃうのが好きです
事情は違うけどね!

424名無しさん@魔法少女:2011/10/07(金) 00:44:04 ID:QzjxKGZg
>>422
GJ
公式ではバカ食いしてるスバルが体重を気にする普通の乙女回路もってるってのは新鮮でいいな

425名無しさん@魔法少女:2011/10/07(金) 18:34:19 ID:Cn1f7P/A
GJ、やっぱスバルかわゆい・・・

426しずひと ◆XCJ6U.apcs:2011/10/07(金) 23:32:06 ID:a0Yeyv9U
こんばんは。
ご無沙汰しています。
スバル祭りSS投下しにきましたよ。

・ショートショート
タイトル きもちいいこと

427しずひと ◆XCJ6U.apcs:2011/10/07(金) 23:33:08 ID:a0Yeyv9U
「ティア、ここがいいんでしょ?」

「くぅ・・・・・・っ」

ティアナは思わず上げそうになったあえぎを噛み殺した。
スバルの発動させたIS≪振動破砕≫の起こす微弱な振動がティアナの体を走り抜けていた。
スバルはにやにやしながらティアナの肌に指を這わせていった。ほのかに赤みの差した白い肌をスバルは何かを探すようになでてゆく。
ある場所をなでた時、ティアナの唇からため息が漏れた。

「こっちが気持ちいいの?」

「あっ、あ・・・・・・っ!」

スバルはティアナがもっとも敏感に反応する場所を集中的に責め始めた。
力強い振動がティアナを解きほぐしてゆく。

「そう、そこ・・・・・・っ。そこがいいの!」

「オーケイ、ティア。もうちょっと強くしちゃうよ」

「うん、気持ちいい・・・・・・っ!」

振動はさらに力を増し、ティアナの体を駆け巡る。
その上に、スバルの指がティアナの柔肉をもみほぐし始めた。

「あ、あ、ああ・・・・・・」

ティアナは肌は火照りじっとりと汗ばんでゆく。

「さあ、これでフィニッシュ!」

スバルの指にぐっと力が込められた。

「ああっ!!」

ひときわ高くティアナが嬌声を上げ―――






「はい、マッサージ終了」

スバルによる肩もみは終わった。

「いつも思うんだけど、ティアの声、ちょっとエッチだね」

「うるさい!!」

428しずひと ◆XCJ6U.apcs:2011/10/07(金) 23:34:12 ID:a0Yeyv9U
以上です。

ちょっとクスッとしてもらえるとうれしいです。

お粗末さまでした。

429名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 00:00:28 ID:xoYZ8f.k
冒頭で展開が読めたがそれを裏切って振動破砕で何か破壊するかと思ったらそんなことなかったぜ!
ティアナかわいいよティアナ

430名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 05:12:35 ID:Je0AqPj6
身長は確かに公式で出てるけど体重は出てなかったなあ
スバルの年齢なら40〜50ってとこかな
スバルは・・・7,80キロありそうだwww
おや?こんな時間に誰だろう

431名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 08:14:24 ID:ZVvQRuo2
スバルの身長で4、50ってのはおかしい
少なくとも50後半無いと異常。加えて中身に機器とか入ってるんだから・・・

432名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 08:47:40 ID:rHHaM30s
海底を歩ける程度の重さだよ

433名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 10:26:32 ID:qh8juw2E
戦闘機人は体の何割くらいが機械なんだろう
脳も弄られてるっぽいしほとんど機械なのかな

434名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 11:08:10 ID:0KBQnOZY
StSで怪我をしたスバルの皮膚の下が、すぐさまわかる程度には機械が入っていたので、相当な部位が機械化されているのでしょうね。
ただ攻殻機動隊の全身義体なんてのはないと思いますが……

435名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 11:54:25 ID:yOXoo16o
>スバルの体重
内部機器の材質の比重とかも出てるわけじゃないしな……
意外と質量コントロールとか出来たりするのかも知れないし

436名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 13:04:44 ID:nWyM/Ob.
とりあえず、食った分だけは重くなってるはずだ。

437名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 15:27:38 ID:0s6EvOD.
しかし、最大の謎はスバルもギンガも『成長』しているんだよね。
天馬博士ですら無理だったあの技術が、二人には搭載されている事に…。

438名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 16:08:27 ID:SDiTEpqI
もちろん、クイントに保護された直後のつるぺた生えてない状態から、現在のボイーン生えてる状態まで…
カバー範囲の広さには定評があるスバルさんだ

439名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 16:10:09 ID:nWyM/Ob.
ふたスバルと聞いて

440名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 18:05:14 ID:JTSVMzc6
鉄腕アトムのエピソードで、ロボットをボディの入れ替えて成長を再現していた例があった。
つまりアレだ。ナカジマ家の地下には交換されたボディがゴロゴロしている訳だ。

441名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 18:12:01 ID:h3t2HIUI
身長を伸ばす手術、と言う物があるそうです。
骨を切り、隙間があくように固定し、その状態で治癒させる。これを繰り返す事で骨を長くするとか。
戦闘機人のフレームは少しずつ変化していて、それが内側から戦いやすい体に無理やり成長させていたのではないかと。
……ただし骨に相当する部分のない胸部の死亡については個々人の資質によるとか。

442名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 18:15:18 ID:rHHaM30s
自己増殖、自己再生、自己進化の三大理論

443名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 18:16:03 ID:j3lx8kmA
胸部の死亡、つまりオッパイ的に死んだも同然のチン姉のことで・・・ぎゃぁ! なんだどこからかナイフが飛んで(爆散

444名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 19:58:01 ID:XUHkmYt2
ナンバーズは成長機能をキャンセルすることで、
軽量化と低燃費を達成しているんだろう

とすると、ギンガとスバルの設計した技術者って、
成長する機械身体(とおっぱい)を可能としたってことだから、
どんだけ天才なんだろ、イオリアか

445名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 20:15:17 ID:aLJ9bSUo
そういや確かに、スバルたちは成長してるのにナンバーズは成長してないね
成長する身体に対応できない機械の部分は交換とかしてるのかな…
どっちにしろスバルのおっぱいは素晴らしいということか……

446野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:39:17 ID:eKDoWdIY
ども、今日のスバル祭りは自分の番ですよ。

タイトル「精神破壊者」

447野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:39:57 ID:eKDoWdIY
 ――眠い
 ――ただひたすらに眠い
 今日はまともに眠れるのだろうか。
 殴られて意識を失うか、犯され続けて意識を失うか、それとも薬を飲まされるか。
 どれも嫌だ。
 だから、薄汚れ擦り切れた毛布を抱きしめ、暗がりへと移動する。
 誰にも見つからないように。誰も刺激しないように。注意を向けられないように。

「ちょっと待て」

 肩を掴まれた。
 これで今夜の安眠はなくなった、と落胆しながら振り向く。
 あとはただ、殴られる数を一発でも減らすだけ、身体を貪りにくる男を一人でも減らすだけ。

「何こそこそしてる……ああ? お前、女か」

 まともな睡眠を取ったのはいつのことだったろうか。

「アタシにだって名前くらいは……」

「知るか」

 衝撃は、いきなり顔面に来た。拳を振るった男の得意そうな顔。自分より弱いモノをいたぶって愉しむ男特有の目。
 足下の覚束ないアタシを背後から抱きすくめる別の男。

「おい、殴られて気絶するのと、突っ込まれて気絶するのとどっちがいいよ?」

「なにそれ」

 アタシはまだ口がきける。好きなことが言える。

「殴られて気絶したことはあるけれど、突っ込まれて気絶した事なんてないね。あれは退屈で寝ちまうだけさ」

「そうかい」

 二度目の衝撃は腹に。
 アタシは吐き気を堪える。タダでさえ少ないメシを吐き捨てる真似なんて出来るわけがない。

「だったら、どっちがましか、比べてみようじゃねえか」

448野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:40:35 ID:eKDoWdIY
 
 いつの間にか壁が見えなくなっている。
 アタシの周囲には男達。肉の壁で囲まれている。見えるのは男達の汚れた身体。饐えた匂いに囲まれたアタシ。
 床に押し付けられ、殴られる。殴られるのは上半身だけ。下半身は男連中の慰み者。無理矢理に開かれ、貫かれる。
 
「どっちだ? どっちなんだ?」

 アタシは答えない。
 何も言わず、心を殺す。
 痛みなんてない。屈辱なんてない。
 アタシには、何もない。
 ただの、出来損ない。

 やがて、意識は飛んだ。

 次に気付いたときには、男達の姿はなかった。
 いつの間にか気絶していたらしい。

「起きろ。お呼びだ」

 食事もしていない。なにより、起き抜けだ。最悪のコンディションだ。

「知るか。起床の時間もメシの時間も決まってんだ。守れなかったてめえが悪い」

 違う、守らせなかったんだ。
 まともに寝かせないが、起きる時間は変わらない。まともに食わせないが、与えられる労役は変わらない。それがこの世界。
 文句を言ったところでアタシの待遇は変わらない。
 アタシは、男達の前に立たされる。
 タコ部屋にいた男達とは違う、白衣を着てニヤけた男達。
 ああ、そうか。今日はこいつらのボーナス日か。
 こいつらにも、犯されるんだ……
 こいつらは殴らない。そのかわり、おかしな道具でアタシを傷つける。削ったり、摘んだり、刺したり。
 どうでもいいや。
 今日は、まともにご飯が食べられるのかな。ちゃんと眠れるのかな。

449野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:41:06 ID:eKDoWdIY
 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……


 スバルは、映話の向こうの顔見知りに尋ねた。

「暗殺者、ですか?」

「物的証拠はないんやけど、まず間違いないやろね」

 映話の向こうではやてが言うと、送られてきたデータが別の画面に映し出される。

「被害者が皆同じ症状……」

「そや。送ったデータを見た方が早いと思うけれど、全員、身体には傷一つ無いんや」

 精神破壊のレアスキルである。被害者は悉く、廃人と化して入院している。回復の見込みはない。

「これまでの傾向からして、元六課も充分対象になってると考えられるらしいんや」

「それじゃあ、あた……私も?」

「可能性はある」

 そこで、とはやては続けた。

「可能性のある者に関して、通達が出てる。勤務中は二人組が基本。非番の時でも出来るだけ複数でいるようにと」

「それじゃあ、あたしも……」

「スバルは、実家に戻った方がええんとちゃうかな」

 なるほど、とスバルは納得する。
 実家ならばギン姉、チンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディがいる。暗殺者どころか、ちょっとした部隊相手なら軽く勝てるメンバーだ。
 勿論、スバルに否はない。数時間後、スバルは小さな手荷物一つで実家に戻っていた。

450野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:41:49 ID:eKDoWdIY
 
「ただいま」

「おう、話は八神の嬢ちゃんから聞いた。ま、休暇だと思ってゆっくりしろ」

「部屋はそのままよ」

「随分久しぶりだな、仕事が忙しいのか?」

「なんだ、帰ってきたのか。ティアナの所にでも転がり込んでると思ったのに」

「早く上がって、お茶でも煎れるよ」

「スバル、ライディングボード、今度こそ使ってみるッスか?」

 次から次に顔を出す、今や近所でも名物となったナカジマ家六姉妹。

「んー、ノーヴェが冷たいよ」

 不満げなスバルに笑うゲンヤ。

「あいつはあんなもんだろ、とにかく早くあがれ。すぐにメシだ。それから、ノーヴェの奴が徳用アイスたっぷり買ってきてたぞ」

「え、本当!?」

「あー、あいつに直接礼言わずに、うまいことやれよ。あいつが照れると結構厄介だ」

「うんっ!」

 そして、当然のようにスバルは大量の食事を摂るわけで、

「……やっぱり、まだそこからデザートが入るんスね」

「もぉウェンディ、あたしの食べる量知ってる癖に」

「頭で理解してても、目で見るたびに驚くよね。ギンガ姉さんもそうだけど」

「だよな、絶対こいつらのISは『大食い』だ。振動破砕はアレだ、魔力かなんかだ」

 ノーヴェがひきつった笑みでディエチに頷く。

451野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:42:19 ID:eKDoWdIY
 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……


「うあああああああっ!!!」

 潰された視界に向けて、闇雲に拳を振るう。
 鈍い感触が二つ。
 ラッキーヒットに続けて、身体ごと回転して向き直る。そこには、仰け反る男がいた。
 運動量を保ったまま、足の骨を折りに行く角度のローキック。
 確実に折った感触。
 男は悲鳴を上げ、崩れ落ちる。
 倒れたところへ真上からのパンチ。さらに馬乗りになり、顔面へ拳を振るう。
 顔面を防ごうとして無防備になった喉へ一撃。
 嫌な音がして、男は赤い泡を吹いた。
 普段の半分ほどしかない視野の向こうで、男は微動だにせずに目を見開き、舌を出していた。

 周囲の怒声と歓声が半々に聞こえる。
 この狭いタコ部屋の中、喧嘩沙汰にという範疇を超えた殺し合いは日常茶飯事。
 アタシ達が殺し合っても誰も止めない。
 それは、データになるからだ。
 男達は殺し合いに興奮し、叫んでいる。
 馬鹿だ。いや、それはアタシも同じ。
 皆等しく、愚かなのだ。

「いいねいいね、愉しもうぜ」

 男の手が私に触れようとする。
 それはアタシを殺そうとする暴力ではない。アタシをモノにしようとする別の意味の暴力だ。
 アタシは聞こえないふりをして立ち上がる。
 こんな、殴られて顔の半分を膨らませた女でも犯したいのか、連中は。
 ああ、そうか。連中は生身の女なんて見たことないんだ。連中だってアタシと同じ、この世界の外はほとんど知らないんだから。

「貴方は、知ってる?」

 赤い泡を吹く男は何も答えない。
 アタシはとりあえず男の喉をもう一度殴りつけた。
 骨の折れる、愉快な音がした。
 怒号が聞こえる。
 首の骨が折れた男は叫ばない。
 アタシに向かって駆けてくるのは、武装した管理局員たち。
 あれ?
 ここって管理局の施設じゃなかったの?
 だって、アタシを作ったのは……
 ああ、そっか。これは……

452野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:43:08 ID:eKDoWdIY
 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……

 
 夜更けに目が覚めて、喉の渇きを覚えたスバルは台所にいた。
 目が覚めた理由は夢だ。
 嫌な夢だ。とスバルは思う。
 無抵抗の相手を殴りつけた感触が拳に残っているようで、スバルは洗面所で手を洗う。
 管理局の裏は知っている。詳しいという意味ではない。存在することを自分は知っている。
 そもそも、それがなければ自分は生まれていない。
 戦闘機人スバルと戦闘機人ギンガの生まれには、当時の管理局の裏が関わっている。
 母に救われていなければ、自分はあんな生活を送っていたのかも知れない。
 それとも、完成した戦闘機人として使われていたのだろうか。
 考えているうちに、冷蔵庫から取りだした牛乳の冷たさが喉を通っていく。
 時計を見ると、二度寝には中途半端な、起きているには長すぎる時間帯だ。

「どうした?」

 振り向くと、隻眼の姉がいる。

「珍しいこともあるもんだな、スバルがこんな時間に」

「夢を、見たんだ」

 自分でも冥いと思える口調だった。

「あたしが、戦闘機人の失敗作として飼い殺されている夢」

 チンクは何も言わず、スバルに続きを促すようにキッチンの椅子に座る。

「多分、母さんに助けられなかったら、本当にそうなっていた……そんな風に思える夢だった」

 失敗作同士で殺し合い、技術者達の気まぐれでいたぶられる。そんな日々。それが、夢の中の日々。
 リアリティという言葉を躊躇うほどに圧倒的な現実感。夢から覚めた瞬間こそが、新たな夢への誘いだと錯覚してしまうような感覚。

「もしかしたら、今が夢なのかも知れない。あたしは、どこかで飼われている戦闘機人なのかも知れない」

 チンクが小さく笑った。

「ふむ。それは困る」

「え?」

「スバルが六課にいなければ、私たちが勝っていたかも知れない」

「それって、やっぱり困る?」

453野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:43:42 ID:eKDoWdIY
 
「そうなると、ディエチが彼氏に出会えなかったことになるからな」

「え。なにそれ、ディエ姉いつの間に」

「人のことは言えんが、うかうかしていると追い越されるぞ」

「チンク姉、それもうちょっと詳しく」

「名前は確か、ヨーク・ホワイトとか言ってたな。まあ、慌てるな。例のごたごたが片づき次第、セインが調べてくれるそうだ」

「そっかあ、セインなら……」

「潜入にはうってつけだからな」

 だから今日の所は寝ろ、とチンクは続ける。
 続けるというか、実際の所は会話が繋がっていない。
 ぷっとスバルは小さく吹き出した。

「無理矢理過ぎるよ、チンク姉」

「無理矢理にでも寝かしつけたい顔をしているからだ」

「……そんなに、ひどいかな?」

「かなり、な」

「わかった。部屋に戻るよ」

「なあ、スバル」

「ん?」

「おまえと姉上は、私たちのある意味憧れなんだ。私たち戦闘機人も、そんな風に家族を持って生きられるって事の」

 静かに、スバルは立ち止まる。

「ありがとう。おやすみ、チンク姉」

「おやすみ、スバル」


 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……

454野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:44:14 ID:eKDoWdIY
 
 身体が動かない。
 アタシにあるのは、ただの痛み。
 途切れ途切れに聞こえてくる言葉。

「……どう……様子……」

「……間違いな……例の……機人……」

「スカリ……じゃな……か」

 アタシは管理局に保護されたんじゃなかったのか。
 そうだ。最初はそう思った。
 アタシを連れ出した局員もそう答えていた。

「……真似……技術……無茶も良……二年……命……」

「……限定……一ヶ月……充分……進歩……」

 違った。
 別の場所へ移されただけだった。
 局外の違法施設から局内の違法施設へ。
 ただの引っ越しだ。
 何処にあっても、何と呼ばれようとも、地獄は地獄。何も変わらない。

「……エッティ……寿命知らず……普通……生きて……」

「……技術格差……レベル……」

「……訳あり……まともな死に方……奴だろ……」

 痛みは少しずつ増していく。
 なんだろう、これは。
 身体は動かない。拘束されている気配はない。
 生命維持に必要でない可動部を全て停止させられている。だから動けないのだ。
 視覚も奪われ、喉も封じられ声も上げられず、残っているのは聴覚のみ。
 その中で、痛みだけが、増していく。 

「苦痛軽減処置……」

「与えてい……レベル8……脳で……ベル6……低減率25パー……」

「……あと二つあげ……」

455野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:44:50 ID:eKDoWdIY
 
 動かない身体、叫びすら上げられない。
 さらに増していく痛み。
 叫べるものなら叫んでいただろう。
 それは四肢を全て切断されミキサーで掻き回されるような痛み。
 だが、そこに他の感覚は一切ない。単純な痛み。
 痛覚だけを執拗に刺激する、いっそ美しいほどに純粋なそれは渦を巻くようにアタシを貫き、五体をバラバラに引きちぎる。
 それでも痛みは確実に中心から外れない。いつまでも打ち込まれ、アタシの中に孔を穿つ。
 声のない叫びをあげ、動かない四肢を振り回す。消えない痛みがアタシの全身を包み込む。一体化する。痛みとアタシが一つになる。
 壊れる。
 死ぬとは思わず、壊れると思った。
 壊れれば、救われると思った。
 この痛みから逃れるのならば、死すら安息だと思った。甘いと知っていても、それを信じなければ壊れると思った。

 唐突に消える痛み。
 クリアになる聴覚。
 声が聞こえる。
 最初の二人にくわえて第三の声も。
 
「関係者以外立ち入り禁止だったのかい? すまねえな、外道鬼畜のルールには疎くてよ」

「は? お前、なんだ?」

「さぁ?」

 争う音がした。
 アタシにはわかる。
 殴打で骨を砕いた音。蹴撃で骨を砕いた音。

「急げ。長居はできねえ」

「わかってるって」

 第四の声は女性のようだった。
 第三の声の主が、アタシを担ぎ上げたようだった。

「待ってろ、すぐに医者に連れて行ってやるからな」

 ……ありがとう

 ……父さん

 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……

456野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:45:30 ID:eKDoWdIY
 
 寝過ごして部屋から出てきたスバルが、食後の茶を飲んでいるゲンヤをじっと見ている。

「なんでぇ、スバル。俺の顔になんか付いてるか?」

「ん……」

 ディエチがスバルの前にコーヒーを置いた。

「はい、スバル。目が覚めるよ」

「ありがと、ディエ姉」

 コーヒーを手に取り、しばし悩むように黒い水面を見つめる。
 そして一口。

「父さん」

「ん?」

「私を救い出してくれたのは母さんだけじゃなかったの?」

「何の話だ?」

「夢を見たんだ。とても痛くて、苦しくて……だけど、父さんと母さんが助けてくれた」

 戦闘機人としてのスバルを施設から救い出したのはクイントだ。
 そして、少なくともその時のスバルは肉体的な虐待は受けていない。

「おいおい、スバル。母さんがお前らを救ったときのことは前に話しただろう? それに、お前らだって少しは覚えているって……」

「うん。そうなんだけど……」

「夢とごっちゃになったのか」

「夢……なのかな……」

「お前達を助けたのは母さんだ。もしかすると、母さんの同僚はいたかも知れない。だが、それは俺じゃない」

 茶飲みを持ち上げてお代わりを催促しようとするゲンヤは、ディエチの姿が消えていることに気付く。
 どうやら、気を遣って席を外したらしい。
 ゲンヤにしてみれば、ディエチ達に隠すような話だとは思っていないのだが。

457野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:46:13 ID:eKDoWdIY
 
「俺は救ってねえよ」

 そうだ。ゲンヤが戦闘機人に関わり始めたのは、クイントがスバルとギンガを連れてきてからのこと。それまでは、存在すら眉唾物だと思っていた。
 だから、戦闘機人に関わっていないと言えばウソになる。確かに、違法組織に囚われていた戦闘機人を救ったこともある。
 いや、厳密には救っていない。ゲンヤ達が押し入った頃には既に死んでいた者、あるいは侵入と同時に始末された者がほとんどなのだ。
 残りの者も、不完全な処置故にか、あっさりと死んでしまった。
 スバルとギンガ自体が、例外中の例外なのだ。
 その二人とて、完全な処置は受けられずに何度も技術部の厄介になっている。

「救えなかったんだ」

 気付かなかった闇の存在。その先に救える命があると知った。だから、手を伸ばそうとした。
 手は届いた。しかし届いた先にあったのは、幾多の屍。救えるはずもなかった、幾多の命。あらかじめ失われていた、幾多の無垢。
 責などない。救おうとした心に、責などあろうはずがない。

 そう思い切ることが出来れば、どれほど楽だったろう。
 そう思い切ることが出来る人間であれば、闇に手を伸ばさなかっただろう。
 
「違う」

「スバル?」

「父さんに救われた。あたしは、父さんに救われたんだよ!」

「スバル、おい、落ち着け」

「救われたんだって、あたしは。痛かったから、とても、痛かったから!」

「スバルッ!」

 チンクとディエチが駆けつける。
 それでも、スバルは叫んでいた。
 その目は、既にゲンヤを見ていない。

「助けてくれた! 助けてくれたんだよ!」


 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……

458野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:46:53 ID:eKDoWdIY
 
 アタシは生きている?
 どうして?
 でも、身体が動かない。
 違う。
 身体がない。
 ここはどこ?
 アタシは……
 アタシは……

 ……ねえ。

 ……スバルって誰?

 スバル……
 スバル・ナカジマ……
 誰?
 誰なの?
 アタシは、違うよ?
 アタシは……
 アタシは……
 ……
 どうしよう。
 アタシ、名前なんてない……
 どうしよう。
 考えろ。
 考えろ、アタシ……


 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……

459野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:47:24 ID:eKDoWdIY
 
 スバルの前には、白い壁。
 いや、白い天井。

(……あたし、寝てるんだ……)

 ゆっくりと身を起こすと、見覚えのある部屋だった。
 小さな頃、何度も調子の悪くなっていた自分たちが連れて行かれた部屋。
 戦闘機人としての自分を調整していた部屋だ。

「あたし……壊れてるのかな」

 声に出すとより虚ろに、現実を寒々しく感じる。

「起きたのね」

 モニターしていたのか、ギンガとノーヴェが部屋に入ってくる。

「調子はどうだ」

「うん。気持ちが悪いとかはないよ」

「そっか」

 スバルは二人を見た。
 自分と同じタイプの二人、というより、近接で自分を取り押さえることの出来る二人、と考えるべきか。
 チンクとは体格差があるうえに、チンクのISで非殺傷は難しい。ウェンディとディエチは近接向きではない。
 スバルの中の冷静な部分が、その処置も仕方がないと捉えている。
 タイプゼロ・セカンドを無傷で取り押さえるつもりなら、ナンバーズ・ノーヴェとタイプゼロ・ファーストは妥当な選択だろう。

「何があったか、覚えてるか?」

「あたしが取り乱した?」

「その理由は?」

460野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:48:33 ID:eKDoWdIY
 
「多分、記憶の混濁。どこから来たのかはわからないけれど、別の記憶と現状を混同したあたしがいた」

「そこまでわかってんなら、話は早い」

 ノーヴェが一枚のデイスクを取りだした。

「チンク姉が八神はやてに頼み込んで、ドクターの所に行ってきた」

「さすがに直接は会えなかったようだけど、フェイトさんが間に立ってくれたらしいわ」

「え、どうして……」

「今、戦闘機人に一番詳しいのはドクターだからな」

「……スカリエッティは私の中身を知っているから」

 その言葉に悲しげな目を向けるスバルに、ギンガは微笑んだ。

「私とスバルは同型だから、それなりのことはわかるはずだと思ってね」

「それじゃあ……」

 ノーヴェが頷く。

「よく聞け、スバル。お前達タイプゼロは、私たちナンバーズと大きな違いが一つあるらしい」

 それは補助脳の存在。
 ドクターがギンガの身体を調べたときに、明らかに後付と思われる補助脳を発見していたのだ。
 ドクターはその補助脳を外したため、今のギンガに補助脳はない。そして、必要もなくなるようにドクターによって再調整されている。
 だが、囚われなかったスバルは無論その調整を受けていない。
 もし、ギンガと同じならば、今のスバルには補助脳が存在しているはずなのだ。

「サイズ的にはかなり小さいし、戦闘機人として改造される際に脳の一部を切除されているはずだから、外見からそれとわかることはないらしい」

 そして、その補助脳は元から準備されたモノではない。

「少なくとも、私の中にあった補助脳は、別人の脳が使われていた、ということよ」

461野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:49:20 ID:eKDoWdIY
 
「別人って……」

「おそらく、私たちタイプゼロのさらにプロトタイプ、言い換えるなら未完成、あるいは不完全なためジャンクとされた戦闘機人」

 がくん、とスバルの肩が下がった。
 半分起きあがっていた身体が再びベットに沈み込む。

「そんな……」

 思い当たる節、どころではない。
 時折混ざる記憶は、確かにそのジャンク戦闘機人のモノだ。

「ドクターにスバルのデータを送った。とりあえずは、様子を見て、さらなる混濁が起こるようなら対処するべきだと言っている」

 先送りにしているわけでも、誤魔化しているわけでもない。
 さらに、スバルに対する処置を服役中のスカリエッティにさせるわけに行かないというのならば、元六課のエース達が黙ってはいない。
 必要とあれば、どんな許可でも取ろうとするだろう。
 だが、問題はそこではない。
 当時のギンガと今のスバルには大きな違いがある。ISの有無だ。
 IS完全発現後の戦闘機人の脳を弄ることは困難である。それがスカリエッティの答えだった。
 不可能ではない、だから、一か八かの勝負なら賭けてみることも出来る。しかし、悪化しない状態ならば危険を冒す意味はない。
 それが、技術者としての、ナンバーズが姉妹と認めたスバルへのスカリエッティの判断だった。
 
「もし、そんなことになったら、どんなことをしてでもドクターを連れてくるか、お前をドクターの所に連れて行くからな」

 止める奴がいれば、ナンバーズ総出でぶっ飛ばしてやる。と気炎を上げるノーヴェ。

「とにかく、無理ははせずにね。何かあったらどんな些細なことでも良いから言ってね」

「うん」

 それじゃあ、と一旦病室を出ようとする二人。
 入れ違いに、白衣を着た技術者が姿を見せる。

462野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:50:09 ID:eKDoWdIY
 
 簡単なチェックを行いたい。
 そう言いかけた技術者へ手を伸ばすノーヴェ。

「そんな殺気びんびんの技術者がいるかよっ!」

 次の瞬間、ノーヴェの手元には白衣だけが残る。
 咄嗟に地を蹴るギンガの前に弾ける閃光。
 暗殺者は手を伸ばしデバイスを起動する。
 レアスキル精神破壊の発動を極限まで早める、ただそれだけのためにチューンアップされたデバイスである。
 三人の対応よりも早く、レアスキルが発動する。

「精神破壊〈ガイストリーフェルン〉」

 スバルの上半身が仰け反る。

「てっめぇええええっ!」

 ノーヴェの拳が暗殺者を捉えた。
 その反動を利用するように、男は窓へ飛ぶ。
 だが、外から窓を貫いた弾丸が男を天井へと叩きつける。
 さらに破れた窓から躍り込むのはウェンディのライディングボードである。

「大丈夫ッスか、みんな!」

「ウェンディ!」

 階下より、イノーメスカノンを構えたままの体勢で叫ぶディエチ。

「スバル! スバル!」

 ギンガが、スバルを抱きかかえていた。

463野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:50:49 ID:eKDoWdIY
 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……


 ねえ、スバル。スバルってば。

 あれ、……貴女誰?

 アタシは、あたしだよ。
 
 え?

 貴女はいなくなっちゃうから。

 なに? 何言ってるの?

 ここは、あたしのモノだから。

 待って。わからない、わからないよ。

 わからないほうが、いいと思うよ。オヤスミ、スバル。


 ……
 …………
 ……………………
 …………
 ……

464野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:51:23 ID:eKDoWdIY
 
「落ち着いたのか? スバル」

「……あ、父さん」

「医者の話だと、もう大丈夫みてえだが」

「うん。大丈夫だよ。大事を取って、二三日は様子を見るって言われたけれど」

「そうか。まあ、今回はお手柄だったんだ。ゆっくり休め」
 
「それにしても、ビックリしたよ。てっきり精神破壊されたのかと」

 大量のリンゴを剥いているディエチとチンク。

「ああ、まったくだ」

「ううん。多分、破壊されたと思う」

「おい」

 焦るゲンヤに、スバルは笑う。

「大丈夫。あの子が助けてくれたんだよ」 

「あの子……か」

 スバルの夢の話は既に伝えられている。
 ゲンヤは可能性としてあり得ることを確認していた。自分の助けた子供が、スバルの補助脳とされている可能性を。

「父さんに、助けてくれてありがとうって言ってたよ」

「そうか」

「あの子が、アタシの代わりに壊れたんだ」

 ……さよなら、今までありがとうね。スバル

465野狗 ◆NOC.S1z/i2:2011/10/08(土) 22:51:57 ID:eKDoWdIY
以上、お粗末様でした。

466名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 22:54:56 ID:RvsXcDtI
>>465
おおお…脳のなかの「彼女」が身代わりになったのか…
GJ…実にGJ!

467名無しさん@魔法少女:2011/10/08(土) 23:27:58 ID:XUHkmYt2
GJGJ
なんかSFサイコスリラーアクションな感じで好き
ふたりはほとんど融合してて、
結局どっちが消えたかは本人もわからないEND
になるのかな、SF的に考えて

468名無しさん@魔法少女:2011/10/09(日) 20:36:39 ID:2weCdArg
消えたのはオリジナルかそれとも彼女か、それは読み手の解釈しだい・・・いや、八割くらいの確立で消えたのはスバル、なのかな。
良い話ともひどい欝とも取れる。

しかし野狗氏文才ありすぎだろ・・・GJとしかいえぬ。

469名無しさん@魔法少女:2011/10/09(日) 23:01:23 ID:HiW4VE0U
なるほど二回目読むと違うわけか、感想コメントで気づいたw
いい構成力だGJ!

しかしスバルは職人に愛されてるなw
エロだけでも三
属性も同僚/恩人/雌犬/先輩/友人/乙女/家族と見事にバラバラだな

470名無しさん@魔法少女:2011/10/09(日) 23:31:16 ID:WIAyrHJQ
長い年月によりふたりはすでに互いの区別も付かないほど同一になっていた
外部からの干渉を受けることで再び別個に分かたれた
そして……

ということかな。解釈によりまた色々と違う面が出てくるなあ……GJ!>>465

471名無しさん@魔法少女:2011/10/09(日) 23:59:50 ID:r08EPgPU
>良い話ともひどい欝とも取れる。
俺も感想レスではじめて気づいたw
面白いね

472とりを勤めるには力不足な大根作家:2011/10/10(月) 00:19:28 ID:PL1tAFuw
スバル祭り行きます。
一応、自分ので最後になります。
タイトルは「巣立ち前夜」です。

473巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:20:38 ID:PL1tAFuw
機動六課。それは聖王教会騎士カリム・グラシアがもたらした不吉な予言に、昨今跋扈し始めた所属不明の自動機械、通称ガジェットドローンに対応するために、本局が一年

間という制限をつけてまで設立した部隊である。
傍から見ればかなり強引な手段を用いたこともあって、もし成果を挙げられずに解散となれば、成立にかかわった提督たちは責任の追及を逃れることは出来なかったであろう

が、提督たちの期待を一心に背負ったエースたち、そしてそのエースに選ばれた新人たちは見事にその役目を果たし、制限時間を大幅に残し、管理局の転覆をたくらんでいた

スカリエッティ一味を捕らえ、後に伝説の部隊とまで呼ばれる功績を残す。
この結果に、提督たちは胸をなでおろし、満足したが、役目を終えた機動六課はそのまま解散というわけにはいかなかった。
一年間という制限をつけて強引に設立したことが、逆に鎖となって彼女たちを縛りつけたのである。彼女たちは予言の阻止という大目的を果たしたあとも機動六課にとどまり

続けねばならなかったのであった。
とはいえ、管理局全体の5%にも満たないといわれているオーバーSランク、エースたちを役目を終えた部隊で無為に過ごさせていることなど出来るはずもない。本局の提督

たちはこれまた強引な手段を使い彼女たちを、応援、出向など、いろいろな形で飛び回らせた。エースに暇を持て余す時間はない、エースたちは週の半分以上を六課の外で過

ごしていた。
では、残された新人たちはどうであろうか?
チームとしての実力はともかく、個々の実力はまだまだエースたちには遠く及ばない。チームとして出向させるには、強引な手段を使っても難しく、個々で出向させてもそこ

まで成果を望めない。ゆえに、新人たちは機動六課にとどまり続けることと成ったのである。
仕事を与えられてはいない新人たちであるが、彼女たちの隊長のおかげで暇を持て余すことはなかった。教導官でもある、隊長は新人たちの将来を、六課から巣立った後のこ

とを考えて、心をこめた訓練メニューを彼女たちに残していってくれたのである。
まだ幼く、進路を絞りきれないエリオとキャロにはバランスよく成長できるようなメニューを、執務官を目指しているティアナにはスタンドアローンでも行動できるようにす

ると共に試験対策のために座学にも大きく時間を割いたメニュー。
そして、湾岸特別救助隊からスカウトを受けているスバルには――各人の訓練のサポートに回るようなメニューが残されていた。
隊長が個々のことを思い、睡眠時間を削ってまで作った心づくしのメニュー。それに対して忠実な教え子である新人たちが手を抜くことなどありえない。出動の可能性もなく

なったことで訓練に全力を尽くせることもあり、彼女たちの一日は機動六課が部隊として稼動していた頃よりハードだったのである。

474巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:21:14 ID:PL1tAFuw
「はああ、もうやめやめ!」
「え、どうしたのティア?」
スバルはあっけにとられていた。
射撃型であるティアナは格闘が苦手である。しかし前線型執務官としてやっていくならば、苦手な距離はあってはならない。その弱点を克服するために、スバルはティアナの

訓練に付き合っていたのだが、何度か型を繰り返しているうちに、ティアナが突然怒り出したのだ。
「ううぅぅ〜〜〜」
「え、え、私何かした?」
ティアナは犬のようにうなり声を上げながら、じっとスバルを睨みつけている。言いたいことがあるのに、何か我慢している。そんなふうにも受け取れた。
スバルとティアナは訓練校時代からの付き合いだ。親友と呼べる間柄である。それにもかかわらず、スバルはティアナが何で起こっているのか、何を言いたいのか検討もつか

なかった。ティアナは元来言いたいことは我慢しないで言う性格である。それがスバルに対してならなおさらだ。
「え、えと、私が何か悪いことしたのなら謝るけど……」
スバルはティアナに怒られるのは慣れてはいるが、今回のティアナの怒りは普段とは様子が違うし、理由もまったく分からないので、うなり声を上げながらじっと見つめてく

るティアナの視線に耐え続けることが出来なかった。
よく分からないが許しを請おう、そう言う気分になったとしても責められないだろう。
だが、その態度がさらにティアナの気分を害してしまったようだった。
「もういい! 今のスバルに何を言っても仕方がないから!」
「え、え?」
「……ちょっと早いけど、私は座学に入るから、スバルはエリオたちの訓練に付き合ってあげて」
ティアナは一際強い剣幕をあげるとくるりとスバルに背をむけて歩き去ってしまう。
残されたスバルとしてはその態度が気になって仕方がなかったが、今、いっても逆効果になるような気がして後を追いかけることは出来なかった。
「うーん、本当にティアどうしたんだろう……」
後ろ髪を引かれながら、スバルはエリオたちの下に向かう。
「うーん……」
真剣にやっているエリオたちに付き合うのだ。気分を切り替えなければ成らない。
「うーん……」
スバルはいつもは気持ちに切り替えが早い。だが、なぜか今はそれがうまく出来ないでいた。

475巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:21:54 ID:PL1tAFuw
「スバル!」
「あ、ティア」
医務室の扉が勢いよく開かれてツインテールの少女が駆け込んでくる。
「ごめんね、ティア。心配かけてちょっとミスしちゃった」
「……」
スバルが腰掛けているベッドのそばにまで歩み寄ってきたティアナは黙り込んでいる。
今のスバルにはティアナの表情はうかがえないが、雰囲気で怒っているのがわかった。
仕方がない、とスバルはティアナの叱責を待つ。理由が分からない先ほどのこととは違い、今回は怒られる理由が明白なのだ。
「あのティアナさん……すいません。僕が無理な訓練に付き合ってもらったから……」
横からエリオがとりなしてくれるが、今回はエリオは悪くないのだ。スバルが集中しきれていなかったことが原因なのだから。
新しく覚えた魔法を実践してみたいというエリオの願いに答え、模擬戦を行ったのだ。それ自体も、なのはが作った訓練メニューから外れるものであったが、普段どおりのス

バルであれば何の問題もなかったはずなのだ。
「……」
「あ、あのティアナさん?」
じっと、スバルを見つめたまま黙り込んでいるティアナの様子を心配になったのか、エリオが再び声をかけるが反応は返ってこない。
ティアナが放つ重苦しい空気は、部屋にいるキャロやシャマルをも巻き込んでいく。
「え、えとティア?」
「……いい。今回の件は。スバルが集中できていないのにエリオの訓練に付き合うように勧めたのは私だから」
「ティアナさん?」
「いい機会だから、スバルはしばらく休みなさい。なのはさんには私から伝えておくから」
「……え? ティア?」
ティアナは重い空気を吐き出すように、言葉を紡ぐと、シャマルに向き直りたずねる。
「シャマル先生。スバルの怪我はどんな様子なんでしょうか?」
突然話を振られたシャマルは少し慌てたようにしながら答える。
「あ、はい。えーと」
シャマルは白衣を正してから説明を始めた。
――運がいいんだか、悪いんだか。
スバルは説明を聞きながらそう感慨にふける。
非殺傷設定といえど完全ではない。ゆえに当たり所が悪ければ死ぬことすらありえるのだが、今回スバルはエリオが放った魔法が両の目に当たってしまったのだ。それも戦闘

機人の弱点である電撃に変換された魔法が。その結果、スバルの視神経をつかさどる回路が焼ききれてしまい、目の焦点の調整がうまく出来なくなったらしい。
「うーん、ようは近視になっちゃったっていうことですか?」
「うん、そうね。その表現が正しいかしら。それにそんなに心配しなくてもいいわ。私は専門家ではないからはっきりとは分からないけれど、戦闘機人がもつ自動修復機能が

働いているみたいだから数日で回復するはずだから」
「じゃあ、スバルさんの目は治るんですね!」
シャマルの説明を聞いてずっと不安そうに塞ぎこんでいたエリオが喜色の声をあげる。
「うんそうよ。それと」
エリオに微笑を向けたあと、シャマルは引き出しから、手のひらに乗るほどの大きさの黒い長方形の箱を取り出してスバルに渡す。
「そのままだと日常生活にも困ると思うから、これをつけておいてね」

476巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:22:58 ID:PL1tAFuw
「……ぷ」
「はははは、スバル似合ってるわよ!」
「……そうですね、いつものスバルさんとは違って見えて、なにか素敵です」
先ほどまでの不機嫌な様子はどこに行ったのか、ティアナは腹を抱えて笑い転げている。
その様子に何か納得がいかないものを感じたスバルはむすっとしながら答える。
「……キャロありがとう。お世辞でも嬉しいよ。エリオは我慢しなくていいから。あとティアは笑いすぎ」
シャマルから渡されたものは眼鏡であった。
まるで牛乳瓶の底のような分厚いレンズ、デザイン性より機能性、耐久性を重視した太く、黒いフレーム。それは大きな存在感を持ってスバルの顔に鎮座していた。
「はははは、本当よスバル! まるでガリ勉みたい!」
「……もういいよ」
笑い転げているティアナに、スバルは不機嫌そうに返すが、実際にはそんなに気分は悪くはなかった。笑いあっていられる間はいろんなことを忘れられるような気がしたから

だ。
だが、そんな時間も長くは続かない。
仲間と過ごす楽しい団欒の時間をけたたましい音が引き裂く。
それは人の注意を引くためだけに生まれた音、警報であった。

477巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:24:03 ID:PL1tAFuw
『ええか、敵はガジェットだけと言っても数が多い。油断したらあかんで』
『私たちも急いで戻るけど、遠すぎてたぶん間に合わないから……』
「はい、大丈夫です。任せてください。八神部隊長、なのはさん」
隊舎に鳴り響いた警報。それは六課に出動要請が入ったためであった。この事件の後にはっきりと判明することであるが、スカリエッティ一味が捕らえられても、スカリエッ

ティがレリック捜索のために放ったガジェットドローンは活動をやめていなかったのである。自律的思考を持ち、半永久的に駆動する動力を備え、次元跳躍すら可能とする自

動機械が次元世界中に散らばって潜伏している。その総数は不明。レリックに似た反応を察知すれば、無差別に破壊活動を開始するガジェットは後に災害として認定され、G

D災害対策部隊が設置されることになるが、今はAMFを持つガジェットを効率的に排除できる部隊は機動六課を持って他にはない。一部、なのはやヴィータに訓練を受けた

部隊があるが、それも少数であり、練度は六課に及ぶべくもない。ゆえに六課に出動要請がかかるのは当然といえた。
「私たちはもともとガジェットを相手するために訓練を受けてきたんですし、それに昔よりもずっと成長していますから」
ティアナは心配そうに通信を送ってきた隊長陣に自信満々で答える。
『うん、信頼はしているんだけど……』
「平気です。任せてください」
ティアナはいつも以上に強気だった。ティアナは熱くなりすぎることがあり、それが欠点として、なのはからよく指摘を受けていた。そのため、ティアナは常に冷静でいられ

るように心がけているはずなのだが、今日の様子はどう考えてもおかしかった。それに気のせいかもしれないが、隊長たちと話しながら、時折視線をスバルのほうに送ってい

るように感じられる。

478巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:24:37 ID:PL1tAFuw
『ティアナ……うんそうだね。任せるよ』
なのははしばらくティアナを見つめた後、何か悟ったように頷き、ティアナの考えを支持した。
『スバル……怪我したんだってね。大丈夫?』
なにか、ティアナと視線で会話をしていた、なのはが突然、スバルに話を振ってきた。
「はい、大丈夫です! ちょっと見えづらいですけど、これをつけていれば平気です。戦えます!」
『うん、良かった、元気そうだね。でも、今日は前に出るのはやめておこうか』
「え、でも……」
『駄目だよ。無理したら……ティアナ、よろしくね』
「はい」
『じゃあ、私らもこれから急いで戻るけど、無理せえへんようにな』
「はい、了解しました!」
はやてが敬礼すると同時に通信が切れる。
「さあ、エリオ! キャロ! 準備はいい? 行くわよ! ヴァイスさんヘリのほうよろしくお願いします!」
「「はい!」」
「あいよ!」
ティアナの指示により各々駆け出していく。
一人だけぽつんと残されたスバルは、すがりつくような視線をティアナに向ける。不安で仕方がないのだ。
「ティ、ティア……」
「いいから、あんたはここに残って私たちの戦いをしっかり見てなさい!」
「で、でも!」
最近は個人技のほうも学んではいるが、スバルたちフォワード陣は基本はチームで動くように訓練を受けている。要であるフロントアタッカーであるスバルが抜ければ、チー

ムとして動くことは難しい。
それは、ティアナにも、なのはにもよく分かっているはずなのに。
「た、確かに目は見えづらいけど、盾になることくらいは出来るから。私、昔よりずっと固くなったからガジェットの攻撃くらいならいくらでも……」
「いいから!」
なおもすがりつくスバルの言葉を、ティアナの大きな声が遮る。
「いいから見てなさい! なのはさんが気を使って、訓練の間に感じ取れるようにしてくれてたけれど、あんたは馬鹿だから気がつかないようだから、実戦で見せてあげるっ

て言ってるの!」
「ティア?」
「私たちだって成長してるんだから! だから、あんたに、スバルに守ってもらう必要なんてないの!」
「ティ、ティアぁ……」
ティアナの言葉は、スバルには明確な拒絶の言葉に聞こえた。ここまで拒絶されるようなことを自分は何かしたのだろうか? 気がつかないうちにティアナを傷つけていたの

だろうか? そう考えると思わず涙がこみ上げてきた。
「泣くな!」
「……」
「あああ、違う違う! 私が言いたいことはそう言うことじゃなくて……」
ティアナはスバルの涙を見ると慌てたように頭を抱える。
「……ああ、もう言いたいことがうまくまとまらない!」
「……」
「ああ、もう! スバル!」
ティアナが頭を抱えて悩んでいる姿を見ていたら、スバルの涙はいつの間にか引いていた。ティアナは不器用なところがあるが、いつもまっすぐだ。そしてティアナから向け

られた視線から、まっすぐにスバルのことを考えてくれるのが伝わってきたから。
「うまく言葉が見つからないし、そのまま口に出すのは恥ずかしいから……まずは証明して見せるから、しっかりと見てなさい! 私たちはもう一人でも平気なんだって、ス

バルの背中を押してあげることくらい出来るんだから!」
ティアナは一方的に言い放つと、赤面した顔をスバルから背けて、駆け出した。

479巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:25:28 ID:PL1tAFuw
「ティア……」
留守を命じられたスバルは司令室で戦況を映し出しているモニターをじっと見つめていた。今のティアナたちの実力からするとガジェットは負担がかかる相手ではない。だが

塵も積もれば山となるように、百近い数を彼女たちだけで対処するのは難しい。近隣の部隊も派遣されてきてはいるが慣れないAMF影響下の戦闘ではめぼしい戦果を挙げら

れずにいる。結局はほとんどのガジェットをティアナたちだけで排除しなければならないのだ。
「……」
スバルは悔しそうに唇をかみ締める。
何故、自分はここにいるのか。あそこで盾となって、皆を守らないといけないのに。
行きたい。駆けつけたい。皆の力になりたい。守りたい。
そう考えるがゆえに、血がにじむほど唇をかみ締める。
「……!」
自分がいれば、そう考えているスバルの気持ちを代弁するかのように戦況が変化する。
一人で前衛を勤めていたエリオの横を抜け多数のガジェットがティアナのもとに殺到した。ティアナも必死で応戦するが、半数ほど撃墜したところでカートリッジが切れ、そ

の隙をつき、残ったガジェットはティアナに猛攻を加えた。十をこえる火線が集中する。それはティアナの防御を突破するには充分すぎるものであった。
「ティア!」
思わずスバルの口から悲鳴が漏れた。
自分がいれば……スバルならばあの程度の攻撃で守りが突破されることはない。ガジェットの攻撃を一身に集めて、皆を守ることが出来る。そうすればティアナたちももっと

自由に動ける。そうすれば、そうすれば……
スバルはいても立ってもいられなかった。
――駆けつけないと。皆の下に行かないと。
スバルがそう思い司令室の扉に手をかけたそのときだった。
『ざけんじゃないわよ!』
咆哮が響き渡る。
それはモニター越しであるのにもかかわらず、まるでこの場にいるかのように、そして、まるでスバルに向けられたかのように、スバルの鼓膜を打つ。
「……ティア?」
モニターに再び映し出されたティアナは額から血を流しながらも、その手に持つデバイスを振るう。魔力刃が追撃を加えようと近づいてきたガジェットを切り裂く。
『……ずっと守ってもらってばかりじゃ駄目なのよ……いいところを見せて、大丈夫だって見せ付けて、背中を押してやんないといけないのよ!』
「ティア……」
半ば朦朧としているのかティアナは意味不明なことを呟いている。いや、スバル以外にはそう聞こえただろう。だが、スバルはティアナの呟きが間違いなく自分に向けられて

いることがわかった。
だから目をそらしては成らない。最後まで見続けなければならない。
そうスバルは考え扉にかけていた手を離しモニターに向き直る。
そうすることが自分とティアナのこれからに必要になると分かったから。

480巣立ち前夜:2011/10/10(月) 00:26:08 ID:PL1tAFuw
ティアナは見せた。スバルは悟った。
だから、後は最後の儀式。お互いの巣立ち。
この戦いの数日後の朝、ティアナはスバルに切り出した。




あんたはバカでドジで時々情けないけど、自分で思ってるよりずっと強い。
あんたの強さが!
優しいところが!
みんなを。あたしを。いつも守ってくれてた。

訓練校の時も、ず――――っと!

自分ががんばれば絶対みんなを守れるのにって
そんな風に思ってるから
あんたはあたしたちと離れるのが怖いのよ!

まったくバカにしてんだから。

あたしはさ!

あの戦いで絶対絶命って状況になった時、あんたのこと思い出したわけよ。

あんたがいっっつもバカみたいに繰り返してくれた励ましとか。
あんたといっしょに六課の教導に耐えてきた思い出とか!
そーゆーののおかげであたしは今生きてるし、
こーやってあんたにお節介もできるわけ!

わかる?

別々の場所に離れてもさ、
あんたはちゃんとあたしたちのことを守ってくれるの。
そんだけのことをしてきたの。
なのはさんの心配なんて相変わらず10年早いしね!

まぁ。だからさ。
なんにも心配いらないんだから堂々と胸張っていってらっしゃい。
あんたの助けを震えて待ってるどこかの誰かを助けるために。
あんたが夢見て憧れた――泣いてる命を助けられる仕事にさ!

481とりを勤めるには力不足な大根作家:2011/10/10(月) 00:27:11 ID:PL1tAFuw
以上になります。
おそまつさまでした。

482名無しさん@魔法少女:2011/10/10(月) 00:36:15 ID:kvlaWH9g
>>481
スバルが眼鏡っ娘にw いやスバルは意外と眼鏡似合いそうな気がするなw
最後はすべてティアナにかっさわれた感があるがGJだ!

483名無しさん@魔法少女:2011/10/10(月) 00:52:52 ID:09f.6bPo
改行がわからないくて申し訳ないが読みづらいが…
話自体は面白いな、GJだ

484名無しさん@魔法少女:2011/10/10(月) 15:46:47 ID:RdvUvxBU
なるほどなるほど、いい話だ。GJ!
地の文の改行はたしかにちょっと微妙かな。
俺の閲覧環境がちょっと狭い(横幅全角55文字)のもあるけど、半端なところで切れてる感がある

485名無しさん@魔法少女:2011/10/10(月) 16:38:57 ID:ngPS7Z0o
違うキャラ名出してゴメン、ドラえもんが未来に帰る映画のジャイアンとケンカしているのび太のセリフを思い出した。

486ザ・シガー:2011/10/11(火) 00:30:09 ID:jlUj4.YU
さて皆様、以上において、今回のスバル祭で予定されていた投下は終了となります。
今回も良作の数々が生まれ、歓喜の極み・・・・・・
もちろんこの熱に浮かされて書いたスバルSSはご存分に投下して結構、というより飛び入り全然おっけーですぞ。

そしてもう一言。


―告知―

きたる月末10/30にもまた祭の予定。
次回は『欝・ダークSS祭』を予定しております。
名前通り欝でダークなひどい話ばかりを投下しようぜ! というまったくイカれぽんちなお祭でございます。
IRC参加職人はもちろん飛び入り参加もおっけーなので皆様ふるってご参加を。

487名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 01:18:56 ID:uGUJYiC6
>>486
鬱祭とは素晴らしい
個人的にはなのはさんメインの鬱物を書いてくれる方がいることを願ってやまない
246氏とか好きだったんだけどもう来ないのかなぁ……

488名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 02:57:15 ID:rhZZXTTg
先生、凌辱は鬱に入りますか?

489名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 04:09:23 ID:1O8XDYvM
>>488
鬱・ダークの定義は各人の解釈の解釈次第ってことで
これはどうだあれはどうだと聞いてたらキリがないし自由に解釈してもらった方が幅が広がっていいんじゃないか

490名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 07:59:36 ID:5m3Gleuw
つまり突如現れたダークなのはさんと本物のなのはさんの
ユーノをめぐってぬっちょりする話を期待してもいいというわけだな

491名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 08:34:47 ID:ucXAvOB2
>>490
それ、星光ことシュテルなんじゃ…?

492名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 09:57:07 ID:Mmi7d1hc
>>490
なのはさんがシュテル達にユーノ取られちゃうというお話ですな
あるいは3期でユーノがスカ博士側についてたら…とか。ユーノいなくたって勝てる!!とかその辺のご都合な主人公補正は無視して考えて

4期?知らんがな  じゃあの

493名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 17:52:05 ID:wYoslGzY
???「ダークなのはです」
???「ダークフェイトだよ」
???「ふはは、ダークはやて参上!」

フェイト「勇者仮面をつけた三人組!?」

???「ユーノは預かりました」
???「返してほしかればえっちな勝負だよ」
???「くくく、我が攻めに耐えきれるかな」

フェイト「卑怯な・・・」
はやて「わかってて乗ってるんか天然なのかわからんからツッコミずらいなあ・・・」

494ザ・シガー:2011/10/11(火) 18:08:27 ID:jlUj4.YU
>>488
何を以って欝とするか、何をしてダークと呼ぶか。
その判断は書く者それぞれの認識に委ねるものとする。
かつて246氏の書かれた名作『―Nameless―』では誰一人として死する事無く、読む者に壮絶な絶望感と虚無感を与えるような作品もあった。
その例を見るに、決して誰かが死ななければならない、といった厳格なルールがあるわけではないのだ。



まあ要するに。

こまけぇことはいいんだよ!!(AA略

495名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:09:06 ID:ucXAvOB2
>>493
フェイトは天然っぽいしなぁ……スバルとかも気付かないんだろうな。


「ふふ、ユーノ…なのはよりずっと良いでしょう?」

「僕のおっぱい、そんなに良いの? 甘えん坊だね〜」

「ほらほら、もっと腰を動かさぬか。その程度の攻めでは我には勝てんぞ、塵芥が」

496名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:18:57 ID:qhvoM5bw
細かいこと無しにダークな話か…
ピンク髪末っ子のキャロが草食系のエリオをハーレムの王にするために
金色のヤ…もといフェイトさんやツンデレ委員…もといティアナ達に策を仕掛けていく
これぞリリカルなのはダークネ……ごめんなさい石投げないでください

497名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:20:43 ID:4RehUaAs
>>495

「ユーノ君っ!」
「ユーノっ!」
「無事かっ? ユーノ君」
「遅いよ、みんな…」
「あれ? シュテルちゃん達…?」
「ナンバーズのみんなまで…」
「なんで、気絶しとるん…?」
「ちょっと本気出したら、みんなすぐにイッちゃってね…。物足りなくってさ…」
「え…え〜と、ユーノ君?」
「目が怖いんだけど…」
「お…落ち着いてな…」
「今度はみんなに相手してもらうよっ!」
「いきなりバインド…や、やあだこんな格好…」
「あひぃっ! ら…らめぇっ!」
「い…いきなり…む、無理やっ! そんな大きいのっ!」

498名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:36:53 ID:cyP/RShs
むー。もしかして、ガチな欝やダークは求められてないっぽい?

499名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:38:19 ID:YeyIBQxc
>>498
読みたがってる奴がここに一人いるぞノ

500名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:45:28 ID:5m3Gleuw
ダーク・鬱祭りなのにガチ鬱を自重してどうするよw
エロ祭りにガチエロ自重するようなもんだぞ
つまり全力でやれお願いします

501名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:49:17 ID:BCkI.Eg2
ほんのりからガチまで幅広くとすれば問題ない、と思う

502名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 19:59:32 ID:cyP/RShs
ありがとうありがとう。

リミッターを解除するよ。

503名無しさん@魔法少女:2011/10/11(火) 20:23:07 ID:Mmi7d1hc
誰も死なない…BYDO化みたいな感じで自意識あるのに自覚が無くて…みたいな感じも良いかもね
死ぬ事が出来る内はまだ鬱じゃないのかも知れん

ソン ナコ トヨ リオ ナカ ガス イタ ヨ

504名無しさん@魔法少女:2011/10/12(水) 00:54:18 ID:S3qnWk6s
スバル祭りお疲れさまでした
その最中に>>412からふと浮かんでしまったコピペ改変を投下します
思いついて勢いのままに作り上げたので雑の極みですが暇潰しにでもして頂けたら…

505SUBASING:2011/10/12(水) 00:55:04 ID:S3qnWk6s
〜某月某日 ナカジマ家

みんな あたしはティアが好きだ
みんな あたしはティアが好きだ
みんな あたしはティアが大好きだ

ツンデレが好きだ オレンジ髪が好きだ ツインテールが好きだ 下ろした髪が好きだ
世話焼きが好きだ 凡人が好きだ 執務官が好きだ ブラコンが好きだ 射撃型が好きだ
本局で 街中で 隊舎で 訓練で 自室で 六課で 食堂で 風呂で 戦場で ゆりかごで
このミッドチルダで行われる ありとあらゆるティアの言動が大好きだ
布陣をならべた クロスファイヤーのフルバーストが 轟音と共に敵陣を 吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられたガジェットが 魔力弾でばらばらになった時など 心がおどる
ティアの操る ヴァリアブルシュートが AMフィールドを無効化するのが好きだ
悲鳴を上げて 壊滅する敵陣から 逃げ出してきた敵兵を リボルバーナックルで殴り倒した時など 胸がすくような気持ちだった
挙動をそろえた 無数のフェイクシルエットが 敵の戦列を 混乱させるのが好きだ
恐慌状態のナンバーズが 既に幻術の消えた空間を 何度も何度も攻撃している様など 感動すら覚える
低血圧の ティアに対して朝一番に 胸を揉んでやる時などはもうたまらない
寝ぼけ眼のティアが 正常な意識の覚醒とともに 金切り声を上げると同時に
プンスカと怒り出すのも最高だ
哀れな犯罪者達が 雑多な魔力で 健気にも立ち上がってきたのを モード《ファントムストライク》のSLBが
作戦区域ごと木端微塵に粉砕した時など 絶頂すら覚える
なのはさんの教育指導に ズタボロにされるのが好きだ
連携を決めるはずだったティアが砲撃され 頭を冷やされていく様は とてもとても悲しいものだ
なのフェイ本の物量に押し潰されて 落胆するのが好きだ
ティアナ本を追い求めて 害虫の様にコミケ会場を這い回るのは 屈辱の極みだ

506SUBASING:2011/10/12(水) 00:55:56 ID:S3qnWk6s
みんな あたしはティアを 恋人の様なティアを望んでいる
みんな あたしと一緒に暮らすナカジマ家のみんな みんなは一体 何を望んでいる?
更なるティアを望むか? 温泉でセレンに悪戯された 騎乗位の様なサービスシーンを望むか?
クールな世話焼きの限りを尽くし 執務官補のウェンディを従える 姉キャラの様なティアを望むか?

ティアナ!! ティアナ!! ティアナ!!

よろしい ならば籠絡だ
あたし達は満身の力をこめて 今まさに萌え上がらんとする握り拳だ
だが この姉妹のみの家庭で 数年間もの間 堪え続けて来たあたし達に ただの百合ではもはや足りない!!

スバティアを!! 一心不乱の大スバティアを!!

あたし達はわずかに一世帯 十人に満たぬ一家族に過ぎない
だがみんなは 一騎当千の戦闘機人だと あたしは信仰している
ならばあたし達はみんなとあたしで 総兵力6千と1人(お父さん)の軍集団となる
スバティアをなのフェイの彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで 引きずり下ろし 眼を開けさせ 思い出させよう
連中にティアの魅力を 思い出させてやる
連中にあたし達の ティアへの想いを思い出させてやる
萌えと妄想とのはざまには 売れ筋のキャラでは思いもよらぬジャンルがある事を思い出させてやる
6人の戦闘機人の戦闘団で ティアを萌やし尽くしてやる



〜〜同日同時刻〜〜

「………………っ!?」
「ティアナ?どうしたの?」
「い、いえですねフェイトさん…今なんか寒気が…」

「……むっ!」
「どうしたのですかセイン?」
「何故か急に『ふたなりナカジマ姉妹によるティアナ全穴封鎖』という電波が」
「貴方という人は……」
「あらあら大変…冬のイベントまでに間に合うかしら?」
「き、騎士カリム………?」

507名無しさん@魔法少女:2011/10/12(水) 00:56:50 ID:S3qnWk6s
以上駄作コピペ改変でした。ゲンヤさんは不憫、だが反省はしない
年末の有明にはティアナ本が沢山出ると良いなぁ…

508名無しさん@魔法少女:2011/10/12(水) 19:47:20 ID:aj8TGxbA
スバル祭りお見事でした
まだ投下する職人さんもいるかもしれないが、とりあえずみんなGJだ!

そして鬱祭りか
無論紳士的には調教とか陵辱のガチエロを期待してもかまわんのだろう?

509名無しさん@魔法少女:2011/10/13(木) 20:56:55 ID:gCn4P/0E
鬱祭か……エロくない近親相姦というか虐待話しは鬱に入りますか?

510名無しさん@魔法少女:2011/10/13(木) 21:14:09 ID:uYC63FPo
いきおくれキャリアウーマンの手酌で一人酒は鬱に…
なんだ、急に冷え込んできたな

511名無しさん@魔法少女:2011/10/13(木) 21:22:11 ID:EEuiTqB6
>>510
なにやってんすか、オーリスさん

512名無しさん@魔法少女:2011/10/13(木) 21:50:14 ID:DuylVUmY
>>511
まんま3人娘の将来でもある

513名無しさん@魔法少女:2011/10/13(木) 22:03:13 ID:uYC63FPo
忘れてしまいたいことや

どうしようもない寂しさに

包まれたときはやては

乳を揉むのでしょう

514名無しさん@魔法少女:2011/10/14(金) 19:01:56 ID:t4uQ2NWA
周りは結婚して、予定は合わず休みはすべて一人遊び
一緒に遊んだ思い出浸りながら酒を飲む。

なんかフェイトさんしか思いつかない




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