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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第111話☆
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魔法少女、続いてます。
ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。
『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
・オリキャラ
・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)
『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。
【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
読み手側には読む自由・読まない自由があります。
読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。
前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第110話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1302424750/
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ジェイソンさーん? ジェイソンさん?
ジェイソンさん、どうしましたかーーー!?
……?
中継が切れてしまったようですね。
はーい、どうやらまだ現場は混乱しているようですねェ。
この件につきましては、また情報が入り次第改めてお伝えしたいと思います。
それでは次のニュースです――
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投下終わりです。それではノシ
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投下乙です
あれ?おかしいな
陵辱もののはずなのに、なんで俺は腹を抱えてわらってるんだ?w
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GJGJ
まったくスバルさんはエゲツナイ性欲やでー
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ひどいオチがついたぞオイィィ!?www
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こいつは最高だなwww
鬼火さんのSSは毎回素晴らしい、そしてひどい、エロい、笑える!
ジェイソンとかフレディとかやらないかとかネタぶち込みすぎでカオスなのもいつもの事、かwww
まったくGJだ!
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6番手行ってみます〜
5分後ぐらいからじわりと投下します。
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6番手行ってみます〜
5分後ぐらいからじわりと投下します。
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彼女は眼前の、ただ巨大で厳めしく圧倒的な瓦礫の山を茫然と見上げていた。
どこを見渡しても、あるのは捻くれた鉄骨と砕けたガラスと蜘蛛の巣状に罅が入った壁ばかり。
360度、視界の全てが瓦礫に塞がれた中で、自分一人がようやく立てるだけの空間を残すばかり。
スクラップ置き場かと見紛うばかりのこの場所は、信じがたいことに数分前までは美しく機能的な工場施設だったのだ。
広大な施設は、奇禍によって一瞬にて瓦礫の山に成り果てたように見えた。
だがしかし、この建物は未だ箱としての体裁を辛うじて保っている。
何人の侵入をも拒み、何人も逃がさぬ巨大なラビリンスへの変貌を遂げて。
迷宮に取り残された人々を救助する為、即座に救助チームが編成された。
一刻を争う中で、最も適任とされた救助の先遣隊員はスバル・ナカジマ。歳若くも極めて優秀な救助隊の新星だ。
だが、この災害現場の惨状は、その彼女をして途方に暮れさせしむ尋常ならざる事態だった。
彼女の、悪夢のような一日が幕を開ける。
ジェンガ
さて、事の発端はどこから話せばいいものだろう。
マリアージュ事件以降、以前にも増して熱心に職務に取り組むスバルの仕事量は、周囲の人間も舌を巻く程だった。
職務熱心は結構なことだが、己を壊しかねないスバルのオーバーワークは頂けない。
スバルの身を案じた上司のヴォルツは、酷使が激しいデバイスのメンテナンスを命じると共に、普段とは一風違った職務をスバルに申しつけた。
とある辺境世界で行われるシンポジウムへの参加である。
管理局の庇護が未だ十分では無い土地に於ける、救護活動の在り方とはなんらかんたら。
現場での働きは目覚ましいが、書類の扱いを始めとする事務方の仕事がてんで苦手なスバルへの課題という意味もあったが。
ヴォルツの真意は、スバルへの慰安であった。
――静かな土地で、魔導師としての自分を手放してゆっくり過ごしてこい。
猪突猛進気味で、一途で、誰よりも仕事熱心な部下に対する、彼なりの最大限の労いだったのだ。
そして。
デバイスをシャリオに預けたスバルは辺境の地へ飛び立ち、シンポジウムの参加がてらに、長閑な地方土地の景観を楽しんで英気を養い、名物の菓子折りでも土産に買って揚々と帰路に着きました、めでたしめでたし。
――とは行かないのが物語の常である。
長らく沈黙を保っていたテログループの突然の活動再開、インフラを中心に狙った突然の同時多発襲撃事件、付け足しのような犯行声明。
管理局からの有事専門の派遣職員はごく少なく、現場で対応するのはマニュアルに従った現地職員というお土地柄である。
突然のことに右往左往するばかりの現場で、スバルは救助活動の一助となるべく、颯爽と対策本部に駆け込んだ。
「もしもの時のため」に旅行鞄に忍ばせた、リボルバーナックルと自作ローラーを携えて。
猫の手も借りたい程の状況である、本局の優秀な陸戦魔導師であるスバルは喜んで受け入れられた。
しかし、混乱を極めていた現地対策本部は、ポンと投げ込まれた優秀な駒を使いあぐねた。
結果。
スバルは、被害地の中でも、最も不可解な状況に陥っている現場に派遣されることになった。
破壊され、突入困難となった巨大な工場施設。
内部には生存者が取り残されていることが確認されているものの、使用していた薬剤が流出して有毒なガスが発生し、安易に救助に向かえない状況に陥っている極めつけに危険な現場である。
そこへ、彼女は先遣隊員として突入し、状況の把握と可能な限りの生存者の確保を行うという任を与えられた。
機動力を生かした救助活動を得意とするスバルには、明らかに不向きな現場。
混乱する指揮系統が発した痛恨の判断ミスか。
否。現地本部は、優秀な、しかし扱いにくい『ヨソ者』の彼女に、相応な危険で代替の効かない任務を与えたのだ。
一言で表すなら、鉱山のカナリアである。
……そんな、会議室の思惑などは彼女の知る処ではない。
スバルは何時も通りに背筋を伸ばし、毅然とした面持ちで、真っ直ぐな瞳で、現場へと急行した。
そこに、彼女の助けを待つ人々がいる。それだけが、彼女にとっての全てだった。
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装備は、通信用の簡易デバイスに、各種のツールとライト。
そして、対ガス用の防護マスクで顔面を覆う。
瓦礫の山の中を土竜のように掘り進むのには、彼女の柔肌を晒す普段のバリアジャケットはあまりに不向きだったので、一般の隊員と同じ厚手の防護服を着込むことにした。
建物の周囲は歪み潰れており、突入ポイントも決めかねる状態だった。
モニタリングによって生命反応の確認できる場所は、施設の奥深くに固まっている。
なんとか、瓦礫の挟間に人一人やっと潜りこめるような隙間を確認し、そこからの突入を試みることになった。
先鋒となったスバルは、異臭の立ち込める暗き穴の中を覗き込むや、何の躊躇もなくその中に身を躍らせた。
豹を思わせるしなやかで軽快な動きで、細身の体がすいすいと穴の中に飲み込まれていく様子を見て、周囲の隊員は言葉を失った。
スバルの危なげない様子をみて、救護隊の二人目が続いて穴に身を潜らせる。
――しかし、彼は緩慢な動きで上体から腰までを穴に潜らせ、そこで動きを止めた。
冗談じゃない。
狭い穴の内部は歪で不安定で、まともな足場さえ確保できない。その上、各所の尖った瓦礫の破片や折れた鉄骨が頭を覗かせている。
いったいどんな精妙な運動神経を持っていれば、こんな中に潜っていけるのだろうか。
強引に隙間を広げて侵入することは出来なかった。
施設は既にいつ崩落してもおかしくない状態で、無理矢理力を加えれば、どんな悪影響があるか計算できない。
部隊長は、内部の状況確認と、可能な限りの生存者の確保をスバル一人に任せるという苦渋の判断を行った。
この部隊長は典型的な地方の管理職であり、彼にとって余所者の小娘一人に全てを任せるという決断は、屈辱以外の何物でもないように見えたかもしれない。
だがこの時、部隊長の胸中にあったのは、祈りだった。
現在どうしようもない閉塞した状況を、この子なら打破してくれるかもしれないという祈り。
いの一番に駆け付けた彼女の力強い眼差しと、眼前で見せつけられた実力には、プライドなど瑣末なものと切り捨てるだけの輝きがあった。
――そして、彼女は途方もなく巨大な困難の前に立った。
機動六課や港湾警備隊での数々の経験を思えば、足場を確保し、穴を潜りぬけるのはそう難しい作業では無かった。
しかし、眼前に立ちはだかるのは巨大な不可能の山。
狂った芸術家がその狂気に任せて増築を繰り返した迷宮の如き瓦礫の山。
この中から、生存者を発見して確保しなければならない。
スバルが立っているのは、運よく瓦礫の山に塞がれずに済んだ空間だ。
広さで言うならば、7畳程度か。足元からは清潔なタイルが覗き、この施設が機能的な工場だった頃を偲ばせた。
だがそれも、砂上の楼閣も同然である。
僅かでも周囲のバランスが崩れれば、周囲の瓦礫が押し寄せこの中洲を埋め尽くすだろう。
現に、周囲からの絶え間ない瓦礫の軋む不快な金切り声が耳を刺す。
スバルは、唾を飲み込んで胸に手を当て、大きく深呼吸をした。
彼女がまず最初に行ったのは、リボルバーナックルと自作ローラーを解除することだった。
態々旅行鞄に詰め込んで持ち込んだ己のデバイスの使用を、彼女は早々にきっぱりと諦めた。
狭く凹凸が激しいこの環境では、ローラーブーツに利点はない。
激しい震動を周囲に与えかねないリボルバーナックルもまた同様だった。
彼女は己の五体と、僅かな魔法のみを使って、この困難な任務に挑むことを決意したのだ。
一人目の要救護者に辿り着くのも、一苦労だった。
ウイングロードを細く展開して、建築現場の仮設の足場のように使用し、三次元的に空間を移動して、状況を把握できるのが彼女の強みである。
その彼女をしても、この惨状はあまりにも複雑怪奇で手に余る状況であった。
進入経路を作るために、一本の鉄骨を引き抜いた。
――瞬間、ずるりと足元の瓦礫が大きく滑り、連鎖的な滑落が始まった。
最大級の危機感と悪寒が背筋を駆け上がり、半ば反射的に手を伸ばす。
スバルは済んでの所を、バインドで固定することで崩壊を食い止めた。
改めて思い知らされる。
きっと、この施設のどこをとっても、こんな状況に違いない。
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……ごく幼い頃、将棋盤を前に詰め将棋の本を睨んでいた父に、遊び方を教えて欲しいとねだったことがある。
それが、なのは達の出身世界発祥のゲームであることも、自分があまり好まない知能ゲームの類であることも、幼い自分はよく知らずにただ父にねだった。
勿論、幼い自分が将棋のルールを理解できるはずもない。
父は、将棋の駒を盤上に積み上げて、一番簡単な遊び方を教えてくれた。
――将棋崩し。山を崩れさせたら負けだ。
まさか、それを数百トンの瓦礫の中で、多くの人々と自分の命を懸けてやる羽目になろうとは、夢にも思わなかった。
失敗できない、というプレッシャーがスバルを襲う。
これを動かしたら崩れるだろうか。それとも、こちらだろうか。不安が横切った胸中に、暗い疑心暗鬼が溢れだす。
プレッシャーと緊張が全身に泥のようにへばりつき、手足の動きを鈍らせていく。
大丈夫だ。きっと大丈夫。
山を支える『要』と思わしき瓦礫の交点を、バインドで縛りながら、丁寧に、一つずつ瓦礫を退かしていく。
何度も山はぐらりと傾ぎ、耳障りな軋みを上げて連鎖的な崩落を始めそうになる。
それを、バインドで括りながら次へ、次へと進む。
少しずつ要領を掴んでいくと、どんな角度で繋がっていれば、瓦礫や鉄骨にどんな風に力が加わるのかが予想できるようになってきた。
が。それは、スバルにとって、何の安心要素にも成らなかった。
不規則に積み上げられてある瓦礫の山はバランスや重量の影響を相互に及ぼし、到底計算しきれぬ状況であることを再確認させられただけだったのである。
不意に、彼女の頭上に巨大なコンクリートの破片が滑り落ちた。
完全に意識の範囲外。スバルが与えた力の影響ではなく、元々罅割れていたものが遂に落下したのである。
それを、スバルは腰を落として肩で受け止めた。
戦闘機人モード。滅多な事では使用しない禁じられた力を用いて、静かに、彼女の小さな体に対して巨大すぎるコンクリート片を受け止めた。
絶対に、無秩序な落下を許してはならなかった。それをトリガーに、どんな崩壊が起きるか分らない。
シールドやバリアで弾くより、最も信用の置ける自らの手で受け止めることを、ダメージ覚悟で決心したのだ。
骨格フレームの耐久重量を超えるものを受け止めた反動で、全身から紫電が迸る。
スバルは砕けそうな程、奥歯を噛みしめて、静かに破片を地面に下ろし、一番頑丈と見立てたポイントにそっと立て掛けた。
急がないと。
周囲に充満しているガスは、即死するような危険なものではないが、要救護者の意識を奪っていることは間違いないとのことである。
それは、ある意味幸いなことでもあった。単身で出口を探して瓦礫の下で動き回れば、それだけで致命的な壊滅に繋がりかねない状況だからだ。
苦心の末――スバルは、やっと、一人目の救護者に辿り着いた。
良かった、生きてる――ああ、まだ生きてる。
肩の力が少しだけ抜け、口元が僅かに綻んだ。
だが、肝心なのはこれからだ。救護者の口を簡易呼吸器で覆い、瓦礫の間に挟まれた体を抜き出す。
細心の注意を払いながら。
どこかで、大きな崩落が起きた音が聞こえた。
首を振って無理矢理意識から追い出す。今はこの目の前の一つの命が優先だ。
ようやく瓦礫から抜き出し、先ほどの空き地に運ぶ。
――そういえば、先ほどの音は何だったのだろう? 大きな崩壊が起きてなければいいんだが。
案じながら振り向くと――スバルが突入した穴が潰れて、完全に塞がっていた。
簡易デバイスを使用して、外の対策本部との通信を試みる。
……だが、それも繋がらない。何かのジャミングか、それともこの工場施設で魔力炉を使用していた影響か。
スバルは、完全に孤立無援でこの任務を完遂するという、覚悟を決めた。
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数時間が過ぎた。
スバルの足元には、数人の救護者が並んでいた。
当の彼女は、顔面を覆う防護マスクの中で、表情を歪めて息を荒げていた。
苦しい。幾度バインドを使用したか分らない。本来魔力使用量の少ない術式の一種であるが、これだけの重量を支えるものを連続で使い続ければ、その消耗は馬鹿にならない。
苦しい。顔面を覆う防護マスクが鬱陶しい。いっそ剥ぎとって大きく息を吸い込みたい。
苦しい。閉所の中を動きまわりすぎて、全身に負担がかかっている。暗く、息苦しく、気が変になりそうだ。
苦しい。そもそも、こんな作業は彼女の本領ではないのだ。こんな閉所で細かな作業をするのは彼女の最も苦手とする部類の物事だ。
走りたい。広々とした空の下を、相棒のマッハキャリバーと共に真っ直ぐに翔けたい。
思いっきり手足を伸ばしたい。リボルバーナックルの重みを感じながら、シューティングアーツの練習がしたい。
今まで、一人で戦ったことも幾度もあった。だが、厳密に一人だったことは一度もない。
いつも、相棒――マッハキャリバーが傍にいてくれたのだから。
今は本当に、ただ独りだ。
心が鑢で削られていくような感覚に歯を食いしばりながら、砕けそうな意思を使命感で束ねながら、懸命にスバルは耐えていた。
まだ、助けるべき人々は残っている。
更に数時間が過ぎた。
スバルが救護した人々は更に数を増やしていた。
当のスバルは、少しだけ力を失った瞳で、ティアなら、ティアならと小さく呟きながら、黙々と瓦礫を動かしていた。
元々、スバルは難しく物事を考えるのが得意では無かった。
障害があるのなら、考えるよりも先に思いっきり殴って退かして先に進む――それが、彼女のスタイルだった。
緻密に動きを予測しながら、瓦礫の撤去を行うなど、全く彼女の好む所ではない。
こんな頭脳労働は、彼女の友人のティアナこそ得意な分野だったのだ。
ふと、思いつく。
自分が、セインなら。物体を透過できる、あのディープダイバーを使用することが出来れば、こんな苦労もせずに救助できたのに。
何故自分は、セインではないのだろう。
ふと、思いつく。
自分がザラフィーラなら、あの協力な広域防御能力と鋼の軛があれば、こんな瓦礫なんて簡単に縛りあげることができたのに。
何故自分は、ザフィーラではないのだろう。
何故自分は、
何故自分は、
何故自分は、
何故自分は――こんなにも無力なのだろう。
一旦意識してしまうと、もう止められなかった。
心の奥底から膿のように負の感情が溢れ出て、スバルの内面を黒く染めていく。
ボロボロと心が欠け落ちていく感触に、スバルは懸命に抗った。
まだだ、まだ自分にはやるべき事がある。助けなければならない人々がいる。
眼前の使命のみを縁に、スバルは懸命に歩を進める。
――ぐにゃり、と足元が柔らかい何かを踏んだ。
足元を見下ろす。
それは、とうに潰されて息絶えた、無残な犠牲者の遺体だった。
全身が震え、瞳から涙が零れた。
「無理だ、よぉ、あたしなんかじゃ、助けられないよぉ」
ついに、口から弱音が零れ、既に力を失っていた膝から崩れ落ちた。
その遺体は、渡された生存者のマーカーには記されていなかった場所にあった。
即ち、スバルの突入時点で既に死亡していたのは間違いなく、彼の死についてスバルには何の非もない。
だが、疲れきり、弱りきったスバルの心に留めを刺すには十分だった。
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「無理だよ……」
今にも崩れかねない瓦礫の下で、小さく息を吐く。
彼女の精神はもう、擦り切れて限界だった。
それでも――彼女の瞳は、手に握り締めた、生存者の座標マーカーから離れなかった。
「無理だよ……」
口では弱音を吐きながらも、スバルは再び立ち上がり、のろのろと瓦礫を退かし始めた。
心は、とうに折れていた。
立ち上がる体力など無かった。歩くための気力など、まるで残ってはいなかった。
それでも、スバルは動いた。
光の戻らない瞳で、虚ろに前を見ながら、緩慢に、だが確実に前に進んだ。
まだ、残っているから。自分の助けが必要な人々が、残っているから。
助けを求める声を聞いたわけでもなければ、SOSの旗を見た訳でもない。
マップの上の小さな光点。
――それだけの事実が、動けぬ筈の彼女を突き動かしていた。
かくして、彼女はやり遂げた。
全ての要救護者を瓦礫の挟間から救い出し、応急処置を施し、簡易呼吸器を設置した。
誰にも褒められることはなく、救護者から礼を言われることすらない、孤独なゴール。
それでも、スバルは満足げに微笑んだ。
これでいい。後は、管理局から本隊が到着すれば万事問題なく進めてくれるだろう。
最後に残された問題が一つ。
もう、酸素が足りなかった。
外部との通信、交通が完全に隔絶したのは完全に予想外の事態だった。
手持ちの呼吸器ユニットでは、この人数の酸素が賄えなかったのだ。
スバルは、全体の残量を確認し、その事態を確認すると。
何の躊躇もなく、自分のマスクから酸素供給ユニットを外した。
スバルのユニットには、長期の作業に対応できるよう、多くの酸素が残されていたのだ。
これで、もう少しだけ大丈夫。
そう呟いて、無用の長物となったマスクを面から剥ぎ取った。
やっと少しだけ解放されたという、爽快感。
異臭と共に、ガスがスバルの肺に流れ込む。
意識が、朦朧と掠れ始める。
息が詰まりそうな瓦礫の山の中、スバルはぼんやりと崩れて天井を眺めた。
視界が少しずつぼやけていく。ライトはとうに破損していて、光源は自分の魔力光のみだったのだ。
淡い輝きが消え、視界の全てが闇に閉ざされていく。まるで、曇天の夜空。
――星が見たいな。
もう胡乱な思考で、ぼんやりとそんなことを思う。
瞬間。
黄金の光の輝きが、スバルの頭上の一切合切を吹き飛ばした。
巨大な流れ星の奔流が地上に突き刺さったような眩しさ、なんという爽快感。
これは?
これは幾度も見たことがある。この黄金の流れ星は――……。
……。
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「馬鹿じゃないの!? あんた、またこんな無茶して!!」
新鮮な空気が肺に流れ込み、思考が輪郭を成すと、スバルはようやく自分の頬を叩きながら泣きじゃくる親友の姿に気づいた。
「ティア……来てくれたんだ」
「来てくれたんだ、じゃないわよ! 馬鹿! あんた、もう少しで死ぬところだったんだからね!」
「……そうだっけ?」
ティアナは、呆れたように唇を歪ませ、そっとスバルの頬を撫でた。
「でも、よくやったわ、あんた。救護者を一か所に集めといてくれたから、一気に穴を通せた」
「穴……」
あれ程絶望的に思われた瓦礫の山の上部が、見事に削ぎ取られ、ぽっかりと穴を開けていた。
ティアナの左手には彼女のデバイス、クロスミラージュが握られている。
先の一撃、見事だった。まるでなのはを思わせるようなスターライト。
スバルは胸中で親友に称賛を送った。
「ほら、立ちなよ」
手を引くティアナの腕を、スバルは逆にぐいと引き返した。
「もう少し、このままでいい。
ほら、ティアも寝っ転がってごらんよ。
気付かなかった――今日は、すごくいい天気」
スバルは、爪も剥げてボロボロになった手をゆるりと持ち上げ、眩しそうに青空にかざした。
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投下終了です〜
お目汚し失礼致しました。
何だか最近妙な話ばかり書いてる気がする……
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投下乙!
わくわく
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読んでる最中どうなってしまうのかかなりドキドキした
鬱エンドかと思ったら爽快な終わり方でよかった。GJっした!
将棋崩しは子供の頃よくやったなぁ・・それにしてもあれを等身大でするのは大変そうだ・・
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GJ
今回はティアナが駆けつけてくれたけど、
そのうち次元世界中からやってきたりして
スバルは人徳あるから
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>>403
キン肉マンのコピペ思い出した
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スバル祭に相応しい良SSが大量投下されている所恐縮ですが
>>252の電波を形にする事に成功したので投下させて下さい
・エリオ×ティアナ エロ
・陰鬱かつ背徳的ムード
・完堕ちエンド
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栓を捻り勢いよく噴き出してくるシャワーに身を晒す。一糸纏わぬ裸体が湯気の中に浮かび上がる。
シャワーから噴き出すお湯は少し熱い位だが、夜風に吹かれた身体には心地良い。
叩きつけられる水を弾く肌。自分の身体を見下ろしながらティアナはふぅ、と一つ息を吐き出す。
様々な点で「規格外のあの3人」には勝てないとしても我ながら容姿は悪くないと思うし、均整のとれたプロポーションは自慢でもある。
そんな自分の身体を流れ落ちていくシャワーが執務官の激務で溜まった身体の疲れまで流してくれる気がした。
ともすれば女性にとって至福の時の一つでもあるはずの入浴中であるのに、ティアナの表情は憂いに満ちて曇りきっている。
不意に背後の浴室のドアが開かれる。
侵入者は一人、もちろんティアナはその存在に気付いているが後ろを見ようともせず降り注ぐシャワーに身を委ね続ける。
とうとうその裸体に男の手が伸ばされる。熱いシャワーに清められていた身体が強引に引き寄せられる。
無遠慮な男の行為にも、ティアナは鬱陶しげに軽く身を揺すって不快の意を表すだけ。
それに構わず男はティアナを抱き寄せる腕の力を強めるが、彼女はされるがままで抵抗もしない。
二人が既に「そういう関係」であることが容易に想像できた。
細くくびれた腰に腕を回され、大きさも形も申し分のないバストを鷲掴みにされる。
ヒップの谷間に押し付けられる熱く硬い肉の塊…。もうすぐこれに刺し貫かれる、自らの運命にブルリと身を震わせる。
怯えと期待が混ざった心境を悟られないように、意識してそっけなくティアナは背後の男を牽制する。
「気、早過ぎ。がっつき過ぎよ……エリオ」
全ての元凶は数年前、見習い魔導師のチームとして日々訓練に明け暮れ、死線をくぐり抜けてきた頃のこと。
六課が、チームが解散する数週間前に二人は一線を越えてしまった。
お互いのルームメイトが解散後の配属手続きで留守だった空白の一日に起こった事だった。
「お願いします!僕、どうしてもティアさんとシたいんですっ!!」
6歳年下の少年に土下座され、拝み倒された。
そんなやり口どこで覚えた…そう突っ込みたかったがロクな答えが返ってきそうもないのでやめた。
問題はそんな古典的な迫り方を拒否しきれずにエリオの童貞をもらいうける事になったことだ。
自身も初体験だったが無我夢中でティアナにしがみつき腰を振るエリオの手前、破瓜の痛みを訴える事も出来ず
必死にエリオを受け入れ、耐えざるを得なかった。年長者として割を食った散々な処女喪失だった。
その後、六課は当初の予定通り解散し、それぞれが別々の道へと歩き出しあの日の事も一夜限りの過ちとして終わるはずだった。
再会は数カ月後。密漁者が使用している武装に対抗するために自然保護隊が本局に援軍を要請。
(双方の強い希望もあり)着任したフェイトに補佐官として随行し、元六課のチームワークで任務を遂行した。
その折、パトロールのシフトで二人きりになった時にティアナはエリオに押し倒された。
あの日の事を忘れていた訳ではないが、エリオが再び自分を求めてくるとは思ってもいなかった。
六課フォワード陣でスバルのフロントアタッカーに次ぐ前衛ポジションであるガードウイングを務めていたその腕力に太刀打ちできず、
小動物や鳥達の鳴き声だけが響く深い森の中、ティアナはエリオに犯された。
…いや、本気で抵抗すれば多分エリオを振り払うことも出来ただろう。けれど出来なかった。抵抗を止め、エリオに身体を差し出していた。
あの初体験以来、数か月ぶりに男を、エリオを迎え入れたティアナの身体は僅かではあるが確実に女の悦びに目覚め始めていた。
こうなってしまったら転がり落ちていくのは早かった。
迫ってきたエリオを拒みきることが出来なかった、そんな負い目もありズルズルと流されるように逢い引きを繰り返してしまっている。
エリオにはキャロという恋人――少なくともティアナを含む周りの人間はそう認識している――がいる。
何より彼の保護者であるフェイトはティアナにとっても恩人で元上司で今でも頼りになる先輩なのだ。
今の自分がしていることは彼女達に対する重大な裏切り以外の何物でもない。
人目を避けて会って、肌を重ねて、その別れ際に何度「もうこんな関係は止めよう」と言っただろうか。
その度にエリオは昔と同じ様な無邪気な笑顔を浮かべて「わかりました、『また会いましょう』ティアさん」と言うのだ。
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「今日の夜7時、クラナガン中央駅の東口で待ってます」
この日も一方的に時間と待ち合わせ場所を指定された強引な誘い。
すっぽかす、というより相手にしなければ良いことだ。何度自分にそう言い聞かせてきたか覚えていない。
しかしこの日も指定通りに待ち合わせ場所に現れたティアナの肩を、エリオは周りに見せつけるように抱き寄せた。
「それじゃあティアさん、行きましょうか」
そのまま一直線にホテルに連れ込まれた。ムードもへったくれも無かったが、人目を避けたいティアナにはむしろ都合が良かった。
部屋に入るなりティアナをベッドに押し倒そうとしたエリオを制して、せめてシャワーを浴びさせて欲しい、と。
そして冒頭の一幕へと続いていく………。
いつの間にか秘所へと伸ばされていたエリオの右手、その中指がティアナの中に沈み込んで行く。
エリオによって女にされ、開発されてきたティアナの膣は侵入者を易々と受け入れ呑み込んでしまう。
「……んっ!」
鼻にかかった甘い呻き声を上げるティアナを愛おしげに愛撫しながら、その耳元に息を吹きかけながら囁く。
「相変わらず柔らかくて、なのにキツイくらい締めつけて…ティアさんのナカは最高です」
「下らないこと…言わないで………」
なんども関係を重ねるうちにエリオもティアナの弱点が判ってきた。彼女はこうして自分の身体を実況されるのに弱い。
艶めかしい唇を、桜色の乳首を、しなやかな足を、極上の名器を、好き放題に弄び、思うままに褒めちぎれば良い。
それだけでこのクールで理知的な才媛が羞恥に頬を染めて自分の腕の中で身悶える。
シャワーの湯とは明らかに違う、粘性を持った液体が膣内の指に絡みつき、身体が熱を帯び始める。
そろそろ頃合いか…挿しいれた中指の腹でGスポットを強めに擦ってやると、膝をガクガクと震わせてティアナが達した。
自力で立つことも出来ずにタイルの床にへたり込むティアナに、しかしエリオは休む暇を与えない。
「僕のも気持ち良くしてください、ティアさん」
その鼻先に勃起したイチモツを突き出し、押し付ける。
まだあどけなさを残す十代半ばの少年に似つかわしくないグロテスクな凶器。雄の臭いがティアナの嗅覚を占拠する。
荒い呼吸を整える事もせず亀頭へと顔を近づけ、ゆっくりと、しかし躊躇いなく口を開けてモノを根元まで咥え込んだ。
「あむ……ん…ちゅ……れろ…ちゅぱ………くちゅ、ちゅぷ…ちゅぱちゅぱ……れろん」
「ああ……気持ち良い…。素敵です、ティアさん」
エリオが上ずった声で言いながら、濡れて顔に貼りついた髪に指を通してモノを咥えている顔を露わにし、じっくりと鑑賞する。
伏し目がちな瞳の端に息苦しさからか涙が浮かぶ、カリに舌を絡ませると形の良い顎のラインが淫らに崩れる。なんて淫靡な光景だろう。
何よりもぷっくりと美味しそうなピンク色の唇に自分の性器を咥えさせているという興奮がエリオを昂らせる。
「もう…イきます!ティアさん………飲んでっ!!」
両手でしっかりと頭を押さえつけて、有無を言わせずの口内射精。
深く突き入れて喉奥に流し込むのではなく、少し引いて舌の上に、自らの精の味わわせる。
白い喉が上下に動いて吐き出した精が嚥下されていくのを見届けて、ようやくティアナの頭を解放する。
「……飲ませるだなんて、聞いてない」
跪いたまま、恨めし気にエリオを睨み上げ恨み事を放つティアナ。
しかしその顔は上気し、瞳は潤み、女としてのスイッチが入っていることを隠せていなかった。
-
バスルームで濃密な時間を過ごして、場所を変えてベッドルーム。
ベッドにティアナを押し倒したエリオは仰向けの彼女にのしかかり、ゆっくりとその身を彼女の中に沈めていく。
「ふうっ…くっ!あ……く…………あぁんっ!」
膣を押し広げ、入ってくるエリオの分身を受け入れ、最奥まで突き入れられてたまらず喘ぎ声が漏れる。
「動きますね?」
ティアナの返事を聞くことなく、エリオがピストン運動を開始する。
童貞を失ったころは無我夢中で単調な前後運動をするばかりだったエリオも、回数を重ねるごとに動きも巧みになっていた。
緩急をつけたり回転を加えたり深い突きと浅い突きを織り交ぜたり…。様々なテクニックを使い、ティアナの弱点を攻め立てる。
「あっ、あっ、あんっ、あひっ!?………あんあんあんっ!」
一突きごとに素直な反応を返してくれるティアナに、エリオも調子に乗ってモノを突き入れ彼女を喘がせる。
「ティアさんって会う度に敏感でエッチな身体になってますよね。もしかして僕以外の人ともセックスしてるんですか?」
行為の最中にデリカシーの欠片も無い、エリオらしくない…普段のティアナなら感付いていただろう不自然な質問。
「…当り前でしょ。執務官よ?エリートよ?良い男が向こうから寄ってきてよりどりみどりに決まってるでしょ」
嘘だ。執務官になったその日から毎日激務に追われて色恋沙汰に心を砕く時間なんてものは無くなってしまった。
元上司で今は先輩執務官であるあの人に未だに浮いた話の一つも無い理由が今の自分ならはっきりとわかる。
こう言えばエリオが自分に興味を無くすのではないか…。そんな一縷の希望に掛けた空しいハッタリだった。
「そうなんですか…。じゃあ他の男性方の事なんか忘れさせる位に頑張らないといけないなぁ」
しまった、罠……。気付いた時にはもう遅い。
がっしりと腰を掴まれて強烈な一突きを喰らった。子宮口がノックされる程の深さを突かれ、たまらず「あんっ!」と悲鳴が出る。
「う、嘘に決まってるじゃないそんなの!ちょっと見栄張ってみただけ!ね?」
慌てて先の強がりを取り消し、らしくもなく媚びた口調でエリオの機嫌を取ろうとする。それがさらに彼に付けいる隙を与えた。
「ふぅん、執務官が嘘をつくんですか…お仕置きが必要ですね。ティアさん、中に出します。覚悟してください」
ティアナが何かを言いかけたが、もはやエリオは聞く耳を持たなかった。
今までの動きが生温く思えるほどの苛烈な攻め。
それは自らの快楽を求めるためだけの、女の身体をオナホール代わりにした、射精を目的とした身勝手な動き。
「あっ、あっ、ああっ、あっ、あっ、あっ………あ、あんっ!」
そんな獣の行為にもティアナの身体は反応し、悦びを覚え、甘い喘ぎを部屋に響かせる。
「ティアさん行きます!覚悟して下さ……いっ!!」
「あっ、あっ………あ…あああああぁぁぁぁぁっ!!」
メスに自分の子供を孕ませる。そんなオスの欲望に従ったエリオの膣内射精をティアナは絶叫を上げて受け止めた。
膣内に熱い迸りを感じた瞬間、脳裏は真っ白になり何も考えられなくなる程の激しい絶頂。
ドピュ!ビュルルル……ビュク!……ドクッ、ドクッ…ドクン。
熱い男のエキスがこれでもかと体内に注ぎ込まれ、ゆっくりと身体の奥へと進んで行くのがわかる。
(あ……ダメ。子宮が悦んじゃってる………)
女の本能が膣がキュウッと収縮させ、モノから精液を絞り取ろうとするのをティアナは感じていた。
-
「ティアさん……」
エリオの掌が優しく頬に添えられ、整った顔がゆっくりと近づいてくる。何をする気なのか、瞬時に悟った。
(ダメ…キスは……。キスは許しちゃいけない………)
セックスが身体を許す行為ならばキスは心を許す行為。
それを許したら正真正銘、心が肉欲に屈服する事を認める事になる。
阻止しなければ…拒まなければ……なのに身体は意志に従わなかった。
「んんっ………んふぅ…ちゅ…ちゅぱ………」
無慈悲に唇は、心は奪われた。
だらしなく半開きだったままの唇に遠慮なく舌が入り込み互いの舌が絡み合い、唾液の交換をし始める。
膣内射精に絶頂。靄がかかったままの頭の中がピンク色に染まっていくかのようだった。
(こんな…こんなキスって……。エリオと一つになってるみたい……!)
子宮を満たすばかりに精液を注ぎ込んだエリオのモノは未だに硬さを失わずティアナの中に納まり続けている。
こっちはこっちで「繋がっている」のを感じるが、キスで感じる一体感はその比では無かった。
まるで互いの身体が蕩け、溶けきって一つに混ざり合ってしまったかのようで……
ヌチュリ…
粘っこい音を立てて、ゆっくりとエリオのモノが再びティアナの中を動き始めた。
中出しされた精液がモノの前後運動によって膣壁に擦りつけられ、染み込まされていく。
まるで身体の中をマーキングされているかのようだ。
きっとまたしばらくしたらエリオが逢い引きの誘いをしてくるだろう。
そして自分は言われるがままに秘密の逢瀬を繰り返し、今日みたいに彼に抱かれ続ける。
友人達を、恩人達を裏切って、年下の男に女の悦びを教え込まれて…まるっきり理性を持たないメスの獣である。
こんなのが法と秩序を守る執務官様だなんて…自嘲する気さえも起こらないほどの滑稽な話じゃないか。
(キャロ…スバル…フェイトさんになのはさん………みんな…ごめんなさい……)
脳裏に浮かぶ人々に対する罪悪感にかられながらも、背に回された彼女の腕はきつくエリオを抱きしめたままだった。
-
「もう…支度しないと……。延滞料金取られちゃうでしょ」
枕元に備え付けのデジタル時計が示す時刻を見ながら、冷めた口調でこの非日常に別れを告げる言葉を紡ぎ出す。
二人がチェックインしてからそろそろ2時間が過ぎる頃。「ご休憩」の終了を告げるフロントからの内線がかかってくる頃合いだろう。
しかしエリオはそんな言葉がまるで耳に入っていないかのように、気だるげに脱力したままのティアナの身体を強引に引き寄せた。
「それだったら大丈夫ですよ、宿泊料金で入室しましたから朝まで居られます。今夜は寝かせませんよ?」
美しい背中のラインを眺めながらヒップに手を添え、背後からティアナの中心にモノをあてがう。
「あ、朝までって…そんなことしたら大問題よ!?」
明日はオフで訓練も仕事もないとは言え、二人が朝帰りしたとなれば詰問されるのは目に見えている。
これでも執務官。尋問や拷問に対する訓練も受けてはいるが「あの」面々の追及から逃れる自信など、無い。
「バカな事考えないでよ!もしフェイトさんやキャロにこんな関係がバレたら……」
「二人とも喜んでくれるでしょうね」
「…………は?」
「最近フェイトさんとキャロがうるさいんです。早くティアさんを完全に堕としちゃえ、って」
「な…に……を………言っているの?」
「スバルさん達とも勝負してるんですよ。どちらがティアさんを家族に引き込めるか、って」
あれ?秘密の逢瀬を繰り返してるって考えてたのは私だけ?
フェイトさんにもキャロにもスバルにも、もしかしたら他の、はやて指令やなのはさん達にも……バレバレ?
つまり何?あたしって2号?愛人?肉奴隷?あれ、ミッドチルダって一夫多妻制だったっけ?
かつて執務官補佐試験を満点合格してみせた明晰な頭脳を暴走回転させて今の自分の置かれている立場を再認識しようと試みる。
「別になんだって構いませんよ。僕の物になってくれるのなら……ねっ!」
ベッドが軋む音を伴って再びティアナの体内にエリオの分身が打ち込まれる。
強烈な一撃に脳裏に火花が散り、頭の中が真っ白になる。
身を仰け反らせたティアナの口から悲鳴にも似た甲高い嬌声が飛び出した。
犬の様な格好で交わる二人の姿は、まるで一組の動物の「つがい」。
今の自分のその姿と、与え続けられる女の悦びがティアナの道徳心と羞恥心、そして自尊心をも破壊していく。
(あたしはエリオの……物。それでいい……んだ………)
若く美しい執務官が奏でる淫らな歌声はその夜一晩中途切れることなく響き続けるのだった。
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これにて投下終了。
やっぱりティアナは総受けのイメージ、異論は認める。
最後のレスを読まなければ後味の悪い締めになるのでそう言うのが好きな人にはオヌヌメ
以下何事も無かったかのようにスバル祭の続きをどうぞ
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おお、なんかアダルトで良い感じのエロだ・・・
頼み込まれて仕方なく処女散らすとか不憫っぽくていいなぁ、ティアナ。
ずるずると欲望に負けて肉体関係持つとか爛れっぷりがゾクゾクする。
しかしこの〆方は、この次スバルに襲わるフラグにも感じるのは自分だけかwww
ともあれGJでした、スバル祭の渦中にあってティアナとはなかなか乙なものだ。
あとティアナが受けっぽく見えるというのには同意。
やっぱツンデレ子は責められてこそ!
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>>411
ふぅ・・・
ティアナ総受けのイメージには異論はあるがそれでもGJと言わざるをえない!
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本日木曜日の担当は私です^o^
…ちょっとオーバーしちゃったけど、そろそろ投下します。
ようそ
・非エロ
・日常系
・みじかめ
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あたし、スバル・ナカジマは人には言えない秘密がある。
もちろん、戦闘機人であることは言うまでもないのだが、それ以外にも、とてもじゃないが人に言えない秘密があるのだ。
パートナーであるティアにさえ、バレてしまうまでは自分の口からは言わなかったくらいなのだから。
そんな秘密がいま、あたしの目の前に危機として迫っている。この問題は非常に危険だ。なんとかしなければならない。
なぜならあたしは……。
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スバルの憧れの人、高町なのはの教導によって溢れるほどにかいた汗を心地よいシャワーで流し、火照った身体を冷ますために下着姿のままでい
たスバルは、自分以外誰もいなくなったシャワー室で、傍らに置かれた機械へゆっくりと近づいていく。
ごくりと生唾を飲み込み、スバルは意を決してその機械へ足を乗せる。機械の上部にある液晶は数字を目まぐるしく変化させながら、やがてある
数字を示してその変動を停止させた。
「はぁ……」
その機械――まぎれもなく体重計――がディスプレイに表示する数字は、平均的な女性のそれを大きく上回った数を示していた。
そう、彼女の身体は普通の人とは違う造りをしている。機械と生体が融合した戦闘機人。鋼の骨格と人工筋肉によって生み出される、人間を超え
た身体能力。
分かっている。普通の人間とは違うのだから、あらゆる感覚も普通の人間を大きく上回っているし、筋力だって見た目からは想像も出来ないほど
の力を生み出す事が出来る。それに伴って、その力に耐えうるボディを作るためにどうしても堅く、そして重い素材を使ってしまうのである。
その結果が目の前にある、現実という名の彼女自身の体重である。分かっている、分かっているのだが……。
「うーん、でもやっぱりあたしも人並みの体重で過ごしてみたいなぁ……」
驚異的な身体の機構により、その一般女性からは逸脱した体重であっても問題なく日常生活は勿論のこと、この機動六課に着任してからの日々の
教導も問題なく……、大きな問題は無く過ごす事が出来ている。
それでも、やはり思ってしまうのだ。
今のこの現実から逃げれば、それはすなわち戦闘機人である自分自身からの逃避にもなり得る。それは彼女自身のアンデンティティの喪失に繋が
ることになる。だからこそ、目の前のこの現実から逃げる事は敵わない。
しかし、だ。そんな事は分かっているのだが、それでも彼女はふと先ほどのようなことを考えてしまうのだ。
何故なら彼女はまだ15歳、まだまだ思春期の少女であり、これから輝き出す乙女なのだから。
この頃辺りからだろうか。どうしても、何かにつけて体重に関係する話題に過敏に反応してしまうようになったのは。
一度気になりだすと止まらないのは人間誰しも経験があるのではないだろうか。現在のスバルはまさにその状態であり、普段の会話の中でも、体
重に関するワードが出るたびに反応してしまうようになってしまった。他人よりも聴覚が優れているために余計に気になってしまうのである。
スバルは頭を抱えて悩んだ。
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それからある日の事。
この日はなのはの教導が休みであり、デスクワークを延々とこなす一日であった。優秀なティアナはともかく、未だ慣れていないエリオとキャロ、
そして苦手なスバルは余計に時間が掛かってしまう。
そして更に仕事を遅くさせる原因がスバルにはあった。
それはある意味では幸せな夢であった。
夢に出てきたのは今の何気無い日常。教導官である上司のなのはの教導を受け、その他の仕事をこなし、休みの日にはパートナーと街へ繰り出す夢。
そんな何気無い、いつも通りというべき日常。そしてその夢の最後に現れたのはやはりというべきか、体重計であった。
その夢でも何気なく体重を計っている自分。夢に出てくるまで自分は体重を気にしているという事実に、スバルは半ば衝撃を受けながらもその夢
は続いていく。
しかしこれは現実ではなくて夢。つまり、それは現実ではありえないことが起こる可能性がある訳で。
体重計が示していた数値は、現実の、いつもの数値とは大きくかけ離れたものであった。
なんとその体重計は一般女性に近い数値を示していたのである。
それから驚きとその他様々な感情が渦巻いたまま目が覚めたスバルは朝練を終えた後、嬉々としてシャワー室に向かい、汗を流した後に体重を量った。
しかしそこに示された数値はいつもと変わらぬもの。夢とはいえ、変な希望を持った自分が悪いということは分かっているのだが、一縷の希望を
砕かれたのは余りにも大きい。これは今日一日はテンションはあまり上げられないのもしょうがない。
そんな訳で、今日の彼女の仕事は遅かったのである。
しかしそのまま遅いまま終わらないのでは社会人として失格だ。気持ちを切り替え、スバルは残りの仕事をこなしていく。
もともとデスクワークが出来ない訳ではない。ただ作業が遅いだけなので、気合を入れ直せば直に終わるだろう。
残りの項目を軽く確認し、一つ深呼吸をしてからスバルは再び作業に取り掛かるのだった。
-
そしてそれから間もなく、デスクワークも終わり、大体の仕事が終わったところでスバルは荷物の運搬を頼まれた。そのうちのいくつかをはやて
の部隊長室へと運び込み、室内で作業をしていたはやてと少し話をしていた。
しかしスバルはそこで異変に気がついた。
「あの……どうかしましたか?」
普段は元気に胸を揉みに来るはやての様子がなんだかおかしい。椅子に座って部下の前でため息を隠すことなく何度もしている。別にそういうの
を気にする性分ではないが、何かあったのであればそれはやはり気になる。
このまま下がるのも悪いと思い、スバルはつい、そう聞いてしまったのである。
数分後に後悔する事になるとは知らずに。
「いやな、別に何でもないんやけど」
「でも八神部隊長、元気ありませんよ。何かあったんですか?」
「んー……。まぁそうやなぁ、別に仕事に関係ない事やし、めっちゃ個人的な事なんやけどな」
そうしてはやてが繰り出した話題に、スバルは口を一瞬ではあるがつい口を引きつらせてしまった。
「まぁこの機動六課も稼動して数ヶ月、ようやく皆仕事がスムーズにこなせるようになって来てる。これはええ事やし、部隊長としても安心できる
ことやから、部隊運用に関しては特に問題はないんやけど……」
「他に何か問題が……?」
「こうやって部隊長してるとな、前と違って簡単に前線に出る事が出来ひんねんな。デスクワークばっかりで、少しくらいやったら動く事はあるけど、
車で移動して屋内を歩くだけやったりして、少なくとも去年よりかは格段に運動量が減ってんねん」
ここら辺りまで聞いた時点でスバルは嫌な予感が本能を刺激しているのを感じ取っていた。これは自分には良くない話題であると、聞くのは間違
いであったと。
しかしここで今更逃げ出す事は出来ない。こうしてスバルは自分の首を自ら絞めに行っていたことにようやく気づいたのである。
「大体予想できてると思うけどな、最近体重が増えてるような気がしてん。んで昨日量ってみたらちょっとショックな数字やってん……。心なしか
お腹周りにもお肉がついてきたような気するし。……私もなのはちゃんの教導受けてシェイプアップとかした方がええんかなぁ」
はぁ、と再びため息をついたはやてを、若干引きつった苦笑いで見ることしか出来なかった。
愛想笑いも出来ない。今日のスバルにそんな余裕はないのである。唯でさえ朝から自分自身からの精神攻撃を受けているのだから、それに関連す
る話題はNGにも程があった。
「ま、そやからこれはただの愚痴やな。…あー、部下に愚痴を言うって駄目な上司の典型やん。ごめんな、もう戻ってええで」
自己嫌悪に陥っているはやてに一礼し、スバルは部隊長室から退室する。
ちなみにこの時、当たり前ではあるが自分以外にも体重で悩む人がいる事に、ちょっとだけ安心していたのはスバルだけの秘密であった。
-
--
「よし……!」
ダイエットしてみよう。
スバルは心の中でそう決めた。確かに自分の体重が重いのは戦闘機人ゆえの体内の機械に因るところが大きい。というかぶっちゃける事も無くそれが原因だ。
さすがにその部分を減らす事は出来ない。軽量化なんてしようものならば、恐らく大掛かりな手術などが必要になるだろう。
ならば他の部分を削ればいい訳で。それは勿論、生体部分であり、つまりは血や肉というべき部分である。
ダイエットをするといえども、運動に関しては既に十分すぎるくらい動いているので問題ない。
むしろこれ以上動けば、いつあるか分からない実戦の際に思い通りに動けなくなる可能性がある。
では他に何をすればいいだろうか。やはり真っ先に上がるのは食事だろう。スバルは自分は他の人と比べて、少し多く食べている事は自覚している。
元々良く食べる上になのはの教導があればそりゃあもうお腹もすごく減ってしまって更に沢山食べてしまうというものだ。
ならばここは削れる要素があるのではないだろうか。しかしここでも極端にやってしまっては仕事に支障が出てしまう。腹が減ってはなんとやら
とも聞くし、とスバルは頭の中で自分を正当化し、ほんの少し、ちょっとだけ食事の量を減らす事にした。
「あとは……んー、何があるだろう」
ダイエットの定番といえば、運動・食事・規則正しい生活あたりが一番よく言われていることであったとスバルは頭の中で巡らせる。運動・食事
は既に考えた後であり、残りは生活時間といったところか。しかしこれも大きくは問題ない。朝は早朝訓練の為に早くに起き、夜は疲労の為に夜更
かしする余裕もない。夜勤・当直にいたっては新人であることと、前線部隊所属であることで免除されている。
他には薬などを使ったダイエットもあるようだが、これは怪しすぎるので除外した。もし検査の際に引っかかってしまっては困るからだ。
というわけで、スバルは食事を減らす事によるダイエットを実行する事にした。
普段例えば10杯食べているものを9杯、8杯ほどに減らし、そうやってほんの少しではあるが食事量を減らしていくのだ。勿論、減らしすぎる
のは肉体的・精神的によくないので減らす量は程々にしている。
食事の量が普段よりも減っている事に気づいたティアナがそのことを指摘してくるが、なんとかのらりくらりと回避する事に成功した。一瞬スバ
ルは冷や汗をかいたが、それよりもティアナがそんな細かい部分まで自分を気に掛けていたことを嬉しく思い、にへらとしていたのだった。勿論、
いきなり顔がゆるんだので引かれたのは言うまでも無いのだが……。
それから数日が経ったある日の事。
午後の教練が終わり、他の隊員よりも一足早めに上がり、そのまま六課隊員寮内のバスルームへと足を運ぶ。キャロとティアナとの三人で湯船に
浸かり、今日の訓練についてを話したり、いつものように何気ない世間話で盛り上がる。
のぼせない程度に温まった後に湯船から上がり、三人は脱衣所へと戻っていく。身体を拭きながら笑顔で談笑している姿からは、とても恐ろしい
訓練量をこなす優秀な局員には見えず、どこにでもいるような、ただの少女たちにしか見えない。
「……? どうしたのよ?」
そんな中でスバルの様子がおかしいことに気づいたティアナが、彼女へと話しかける。当のスバルは脱衣所の一点をちらちらと気にするように、
しかしそれを悟られないようにさり気なくそれを行っているようにも見える。
そんな不審な行動を見かけたティアナはその行動を行っている当の本人へと話しかけたのだが、
「な、なんでもないよー」
スバルは一瞬ビクリと震えた後に、笑顔で何でも無いかのように答える。……怪しい。ティアナは自身のパートナーが何かを隠していることにぼ
んやりとではあるが気づいた。しかしここで食い下がっても恐らくは答えてくれないだろう。そう感じたティアナは追求をやめ、再びドライヤーで
髪を乾かし始めた。
スバルはそれを見てほっと一安心する。少し露骨に動きすぎたかな、と反省し、これからは出来るだけ悟られないようにしようと決めたのだった。
ちなみにスバルの視線の先にあったのは……やはり、体重計であった。
-
風呂から上がりさっぱりしたところで、先に上がって待っていたエリオと合流し、4人で食堂へと向かい晩御飯を食べ始める。フォワード四人組のうち、
約二名が恐ろしいほどよく食べるので、机の傍には食べ終わった皿が山のように積まれているが、これも彼女らにとってはいつもの事。
そんないつもの光景のはずの中で、やはりティアナは自分のパートナーの様子が普段とは異なることに気づいていた。
パッと見ただけでは特に大きく変わって点は見当たらない。食べる量自体もそんなに普段と変わらないように思える。数日前に指摘した時と同じく、
以前よりも減った気がするのは確かだが、今日はそれに加えて更に不審な行動が見られた。
普段ならば、まだ食べれるのならば遠慮なくお替わりを食べていたのにも関わらず、控えめなのである。そしてまだ食べるか、それとももうここで止めるか……。
いつもとは違う、そんなパートナーの行動に違和感を覚えた。外見だけではあまりそうは見えないが、目線と微妙に落ち着いていないその雰囲気がティアナの目についてしまったのである。
気にはなったのだが、以前聞いた時にははぐらかされたこともあって、ティアナはその場での追求を諦めることにした。
他の二人……年少組は恐らく気づいていないのだろう。
二人とも普段と何も変わらずにスバルやあたしと接している。……まぁ今のスバルが普通じゃないのに気づけるのはあたしくらいだけだと思うけど。
そんな事を考えながら、ティアナは残りのご飯をかきこむのであった。
そして食堂での出来事やその他ここ最近の違和感についてスバルから聞き出すために、部屋へと戻ったティアナは椅子に座り、口を開いた。
「あんた、最近おかしいわよ。ご飯だっていつもに比べると少ないし、時々別のこと考えてるようにも見えるし」
ベッドの上でくつろいでいるスバルへと向き直り、スバルの顔を見る。
聞かれた当の相手はきょとんとした表情を一瞬見せたあとに、まるであちゃー、といわんばかりの表情へと変わった。
「やっぱり何か隠してたのね。何隠してるのよ、ほら正直に言っちゃいなさい」
「うーん、やっぱり……バレちゃってた?」
当たり前じゃないの。
ティアナはつんとした声で言い切った。一体何年一緒に居ると思っているのか。日常のほんの何気無い癖でさえ気づくほどだ。
そんな彼女が、ここ最近のこれほどのパートナーの不審な行動に違和感を覚えないはずがない。
スバルはまだ何とか逃げれないか、逃げ道を探しているようだったがやがて観念し、ティアナへと顔を向けた。
「……実はね、ダイエット、してた」
恥ずかしさからかそれとも別の何かか、小さな声でスバルはそう言ったのだった。
それを聞いて今度はティアナがきょとんとした表情へと変わった。
え、ダイエット? ダイエットって、あの体重を減らして身体を痩せるようにする……。そんな事をぶつぶつとスバルに聞こえないほど小さな声で口の中で呟く。
やがて納得がいったのか、スバルの方へと顔を上げ、口を開いた。
「最近様子がおかしいと思ったら……そういうことだったのね」
ティアナはため息をつきながら、ベッドの上で枕を抱えるスバルを見る。
-
「うぅ……」
ティアナに見られているスバルはバレた恥ずかしさからか、更に顔を枕にうずめて、ティアナの顔を見ないようにしている。
まるで悪いことをして見つかってしまった子どもと、その事を知った親のようだとティアナは一瞬思った。
とはいえどもスバルは何ら悪い事はしていないし、このような事を隠していたことに関してもティアナには咎めるつもりは一切無いのだが。
それよりも、どうしてそのような事をしていたのかがティアナは気になった。
思い起こしても、少なくとも自分の知っている範囲では自分はダイエットをさせるような事は言ってないし、他の人にも言われていないはずだ。
だからこそ分からないのだ。どうしてこのような事をしているのかが。ある程度慣れ、余裕が出てきたとはいえ、そのような事をしていれば直に変調をきたすのはスバルだって分かっているはず。
理由を問うてみると、スバルはしばらく考える仕草を見せたあと、おもむろに口を開いた。
「うーん、何ていえばいいのかな……」
スバルは自分の中にあるものを言葉にするように、ゆっくりと、選ぶようにしながら口を開いた。
「やっぱり普通の女の子に、憧れみたいなのはあるかな」
目を閉じて、何かを考えるかのようにじっと動かない。そしてやがてゆっくりと目を開き、困ったようにティアナへと笑いかけた。
それを見てティアナは何を感じたのか、ため息をつきながら
「馬鹿ね、そんなの気にし出したらキリが無いじゃない」
「それはそうなんだけど……」
スバルはうーん、と唸るように声を漏らしながら、やはり困ったような笑みを浮かべていた。
彼女自身もこれが一時的なものであるのは自覚しているのだろう。もうしばらくもすればまたいつもの彼女に戻るのは、本人もパートナーであるティアナも薄々は感じ取っている。
「大体、あたしだって平均と比べたら軽いってことは言えないわよ。筋肉だってずいぶん付いたし」
と、ティアナは自分の腕をスバルに見せ付けるように揉みながらため息をつく。
こんな事は言っても慰めにならないのはティアナ本人が分かっている。
しかしそれでもこうやって悩むスバルを放っておく訳には行かない。彼女とは短い付き合いではないし、パートナーとしてこのまま放っておくのは間違っている。
それに、パートナーであるティアナは分かるのだ。いくらきっかけがあったのだろうとはいえ、彼女の心の中で何らかの変化があったに違いない。
それが何であろうと、大きな問題は無いが、やはりパートナーとして、同じ部隊員として、出来うるサポートはしなければならない。
……とは言うものの、一体どうすればいいのだろうか。
短くない期間を共に過ごした二人ではあるが、スバルの身体のこと……戦闘機人に関する話題はあまり表立って話す事は無かった。タブー視して
いる訳ではないし、今更気にする事でもないのだが、それでもそのことについて話し合う事はめったにない。
もっと話を聞いておけば、こんな事を考えさせる事も無かったのかなと少し思いながらも、ティアナは彼女にかける言葉を考えた。
そして悩んだ末、ティアナは言葉少なく、しかし正直な思いをそのまま口にすることにした。
-
「……上手くいえないけど、あんたはあんたのままでいいのよ」
顔をうつむけながら、ティアナは小さな声で言う。心なしか、顔も赤くなっているようにも見える。
「えっと、その……。別に何でもないけど。あたしは今のままのあんたが、その……好きだから……」
最後のほうはほとんど聞こえないくらいの小さな声であったが、知覚が優れているスバルはその声がしっかりと聞こえていた。
ティアナのその言葉に、特に表情を変えることなく聞いていたスバルだが、その言葉がしっかりと頭に染みこみ、その意味を理解した時、にへらと顔をゆるませながら口を開いた。
「えへへ、ありがと、ティア」
「うっさい、変な心配かけんじゃないわよ」
一方はデレて、もう一方は照れて。二人の間では時折、しかし何気なく起こりえる日常の1シーン。
そんな二人だからこそ、ずっとその関係が続き、そして互いを信用することが出来ている。生涯を通じて付き合っていけるそんなパートナーに出会えた事に、スバルは今再び心が満たされるような感覚を覚えた。
その幸せをかみ締めながらスバルは床に就き、目を閉じてそして誰に祈る訳でも無く、口にする。
願わくば、この幸せがずっと続きますようにと。
---
--
-
あたし、スバル・ナカジマは人には言えない秘密がある。
もちろん、戦闘機人であることは言うまでもないのだが、それ以外にも、とてもじゃないが人に言えない秘密があるのだ。
パートナーであるティアにさえ、バレてしまうまでは自分の口からは言わなかったくらいなのだから。
それはあたしの体重が…重いこと。
きっかけはなんてこと無い、日常の1シーン。恐らくあの時がきっかけだったのだろう。その時からあたしは自分の体重をやけに気にするようになっていた。
幸い強迫観念にとらわれる程気にする事はなかったのだけれども、それでもパートナーのティアには随分と心配を掛けてしまった。
だけどもう大丈夫。あたしはあたし、今のままが一番だと言ってくれたパートナーのお陰でもう気にする事は無くなった。
なぜならあたしは幸せだから!
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終わりです。
スバル可愛いです。
-
GJでした
スバルみたいな女の子してない子がコンプレックス持っちゃうのが好きです
事情は違うけどね!
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>>422
GJ
公式ではバカ食いしてるスバルが体重を気にする普通の乙女回路もってるってのは新鮮でいいな
-
GJ、やっぱスバルかわゆい・・・
-
こんばんは。
ご無沙汰しています。
スバル祭りSS投下しにきましたよ。
・ショートショート
タイトル きもちいいこと
-
「ティア、ここがいいんでしょ?」
「くぅ・・・・・・っ」
ティアナは思わず上げそうになったあえぎを噛み殺した。
スバルの発動させたIS≪振動破砕≫の起こす微弱な振動がティアナの体を走り抜けていた。
スバルはにやにやしながらティアナの肌に指を這わせていった。ほのかに赤みの差した白い肌をスバルは何かを探すようになでてゆく。
ある場所をなでた時、ティアナの唇からため息が漏れた。
「こっちが気持ちいいの?」
「あっ、あ・・・・・・っ!」
スバルはティアナがもっとも敏感に反応する場所を集中的に責め始めた。
力強い振動がティアナを解きほぐしてゆく。
「そう、そこ・・・・・・っ。そこがいいの!」
「オーケイ、ティア。もうちょっと強くしちゃうよ」
「うん、気持ちいい・・・・・・っ!」
振動はさらに力を増し、ティアナの体を駆け巡る。
その上に、スバルの指がティアナの柔肉をもみほぐし始めた。
「あ、あ、ああ・・・・・・」
ティアナは肌は火照りじっとりと汗ばんでゆく。
「さあ、これでフィニッシュ!」
スバルの指にぐっと力が込められた。
「ああっ!!」
ひときわ高くティアナが嬌声を上げ―――
「はい、マッサージ終了」
スバルによる肩もみは終わった。
「いつも思うんだけど、ティアの声、ちょっとエッチだね」
「うるさい!!」
-
以上です。
ちょっとクスッとしてもらえるとうれしいです。
お粗末さまでした。
-
冒頭で展開が読めたがそれを裏切って振動破砕で何か破壊するかと思ったらそんなことなかったぜ!
ティアナかわいいよティアナ
-
身長は確かに公式で出てるけど体重は出てなかったなあ
スバルの年齢なら40〜50ってとこかな
スバルは・・・7,80キロありそうだwww
おや?こんな時間に誰だろう
-
スバルの身長で4、50ってのはおかしい
少なくとも50後半無いと異常。加えて中身に機器とか入ってるんだから・・・
-
海底を歩ける程度の重さだよ
-
戦闘機人は体の何割くらいが機械なんだろう
脳も弄られてるっぽいしほとんど機械なのかな
-
StSで怪我をしたスバルの皮膚の下が、すぐさまわかる程度には機械が入っていたので、相当な部位が機械化されているのでしょうね。
ただ攻殻機動隊の全身義体なんてのはないと思いますが……
-
>スバルの体重
内部機器の材質の比重とかも出てるわけじゃないしな……
意外と質量コントロールとか出来たりするのかも知れないし
-
とりあえず、食った分だけは重くなってるはずだ。
-
しかし、最大の謎はスバルもギンガも『成長』しているんだよね。
天馬博士ですら無理だったあの技術が、二人には搭載されている事に…。
-
もちろん、クイントに保護された直後のつるぺた生えてない状態から、現在のボイーン生えてる状態まで…
カバー範囲の広さには定評があるスバルさんだ
-
ふたスバルと聞いて
-
鉄腕アトムのエピソードで、ロボットをボディの入れ替えて成長を再現していた例があった。
つまりアレだ。ナカジマ家の地下には交換されたボディがゴロゴロしている訳だ。
-
身長を伸ばす手術、と言う物があるそうです。
骨を切り、隙間があくように固定し、その状態で治癒させる。これを繰り返す事で骨を長くするとか。
戦闘機人のフレームは少しずつ変化していて、それが内側から戦いやすい体に無理やり成長させていたのではないかと。
……ただし骨に相当する部分のない胸部の死亡については個々人の資質によるとか。
-
自己増殖、自己再生、自己進化の三大理論
-
胸部の死亡、つまりオッパイ的に死んだも同然のチン姉のことで・・・ぎゃぁ! なんだどこからかナイフが飛んで(爆散
-
ナンバーズは成長機能をキャンセルすることで、
軽量化と低燃費を達成しているんだろう
とすると、ギンガとスバルの設計した技術者って、
成長する機械身体(とおっぱい)を可能としたってことだから、
どんだけ天才なんだろ、イオリアか
-
そういや確かに、スバルたちは成長してるのにナンバーズは成長してないね
成長する身体に対応できない機械の部分は交換とかしてるのかな…
どっちにしろスバルのおっぱいは素晴らしいということか……
-
ども、今日のスバル祭りは自分の番ですよ。
タイトル「精神破壊者」
-
――眠い
――ただひたすらに眠い
今日はまともに眠れるのだろうか。
殴られて意識を失うか、犯され続けて意識を失うか、それとも薬を飲まされるか。
どれも嫌だ。
だから、薄汚れ擦り切れた毛布を抱きしめ、暗がりへと移動する。
誰にも見つからないように。誰も刺激しないように。注意を向けられないように。
「ちょっと待て」
肩を掴まれた。
これで今夜の安眠はなくなった、と落胆しながら振り向く。
あとはただ、殴られる数を一発でも減らすだけ、身体を貪りにくる男を一人でも減らすだけ。
「何こそこそしてる……ああ? お前、女か」
まともな睡眠を取ったのはいつのことだったろうか。
「アタシにだって名前くらいは……」
「知るか」
衝撃は、いきなり顔面に来た。拳を振るった男の得意そうな顔。自分より弱いモノをいたぶって愉しむ男特有の目。
足下の覚束ないアタシを背後から抱きすくめる別の男。
「おい、殴られて気絶するのと、突っ込まれて気絶するのとどっちがいいよ?」
「なにそれ」
アタシはまだ口がきける。好きなことが言える。
「殴られて気絶したことはあるけれど、突っ込まれて気絶した事なんてないね。あれは退屈で寝ちまうだけさ」
「そうかい」
二度目の衝撃は腹に。
アタシは吐き気を堪える。タダでさえ少ないメシを吐き捨てる真似なんて出来るわけがない。
「だったら、どっちがましか、比べてみようじゃねえか」
-
いつの間にか壁が見えなくなっている。
アタシの周囲には男達。肉の壁で囲まれている。見えるのは男達の汚れた身体。饐えた匂いに囲まれたアタシ。
床に押し付けられ、殴られる。殴られるのは上半身だけ。下半身は男連中の慰み者。無理矢理に開かれ、貫かれる。
「どっちだ? どっちなんだ?」
アタシは答えない。
何も言わず、心を殺す。
痛みなんてない。屈辱なんてない。
アタシには、何もない。
ただの、出来損ない。
やがて、意識は飛んだ。
次に気付いたときには、男達の姿はなかった。
いつの間にか気絶していたらしい。
「起きろ。お呼びだ」
食事もしていない。なにより、起き抜けだ。最悪のコンディションだ。
「知るか。起床の時間もメシの時間も決まってんだ。守れなかったてめえが悪い」
違う、守らせなかったんだ。
まともに寝かせないが、起きる時間は変わらない。まともに食わせないが、与えられる労役は変わらない。それがこの世界。
文句を言ったところでアタシの待遇は変わらない。
アタシは、男達の前に立たされる。
タコ部屋にいた男達とは違う、白衣を着てニヤけた男達。
ああ、そうか。今日はこいつらのボーナス日か。
こいつらにも、犯されるんだ……
こいつらは殴らない。そのかわり、おかしな道具でアタシを傷つける。削ったり、摘んだり、刺したり。
どうでもいいや。
今日は、まともにご飯が食べられるのかな。ちゃんと眠れるのかな。
-
……
…………
……………………
…………
……
スバルは、映話の向こうの顔見知りに尋ねた。
「暗殺者、ですか?」
「物的証拠はないんやけど、まず間違いないやろね」
映話の向こうではやてが言うと、送られてきたデータが別の画面に映し出される。
「被害者が皆同じ症状……」
「そや。送ったデータを見た方が早いと思うけれど、全員、身体には傷一つ無いんや」
精神破壊のレアスキルである。被害者は悉く、廃人と化して入院している。回復の見込みはない。
「これまでの傾向からして、元六課も充分対象になってると考えられるらしいんや」
「それじゃあ、あた……私も?」
「可能性はある」
そこで、とはやては続けた。
「可能性のある者に関して、通達が出てる。勤務中は二人組が基本。非番の時でも出来るだけ複数でいるようにと」
「それじゃあ、あたしも……」
「スバルは、実家に戻った方がええんとちゃうかな」
なるほど、とスバルは納得する。
実家ならばギン姉、チンク、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディがいる。暗殺者どころか、ちょっとした部隊相手なら軽く勝てるメンバーだ。
勿論、スバルに否はない。数時間後、スバルは小さな手荷物一つで実家に戻っていた。
-
「ただいま」
「おう、話は八神の嬢ちゃんから聞いた。ま、休暇だと思ってゆっくりしろ」
「部屋はそのままよ」
「随分久しぶりだな、仕事が忙しいのか?」
「なんだ、帰ってきたのか。ティアナの所にでも転がり込んでると思ったのに」
「早く上がって、お茶でも煎れるよ」
「スバル、ライディングボード、今度こそ使ってみるッスか?」
次から次に顔を出す、今や近所でも名物となったナカジマ家六姉妹。
「んー、ノーヴェが冷たいよ」
不満げなスバルに笑うゲンヤ。
「あいつはあんなもんだろ、とにかく早くあがれ。すぐにメシだ。それから、ノーヴェの奴が徳用アイスたっぷり買ってきてたぞ」
「え、本当!?」
「あー、あいつに直接礼言わずに、うまいことやれよ。あいつが照れると結構厄介だ」
「うんっ!」
そして、当然のようにスバルは大量の食事を摂るわけで、
「……やっぱり、まだそこからデザートが入るんスね」
「もぉウェンディ、あたしの食べる量知ってる癖に」
「頭で理解してても、目で見るたびに驚くよね。ギンガ姉さんもそうだけど」
「だよな、絶対こいつらのISは『大食い』だ。振動破砕はアレだ、魔力かなんかだ」
ノーヴェがひきつった笑みでディエチに頷く。
-
……
…………
……………………
…………
……
「うあああああああっ!!!」
潰された視界に向けて、闇雲に拳を振るう。
鈍い感触が二つ。
ラッキーヒットに続けて、身体ごと回転して向き直る。そこには、仰け反る男がいた。
運動量を保ったまま、足の骨を折りに行く角度のローキック。
確実に折った感触。
男は悲鳴を上げ、崩れ落ちる。
倒れたところへ真上からのパンチ。さらに馬乗りになり、顔面へ拳を振るう。
顔面を防ごうとして無防備になった喉へ一撃。
嫌な音がして、男は赤い泡を吹いた。
普段の半分ほどしかない視野の向こうで、男は微動だにせずに目を見開き、舌を出していた。
周囲の怒声と歓声が半々に聞こえる。
この狭いタコ部屋の中、喧嘩沙汰にという範疇を超えた殺し合いは日常茶飯事。
アタシ達が殺し合っても誰も止めない。
それは、データになるからだ。
男達は殺し合いに興奮し、叫んでいる。
馬鹿だ。いや、それはアタシも同じ。
皆等しく、愚かなのだ。
「いいねいいね、愉しもうぜ」
男の手が私に触れようとする。
それはアタシを殺そうとする暴力ではない。アタシをモノにしようとする別の意味の暴力だ。
アタシは聞こえないふりをして立ち上がる。
こんな、殴られて顔の半分を膨らませた女でも犯したいのか、連中は。
ああ、そうか。連中は生身の女なんて見たことないんだ。連中だってアタシと同じ、この世界の外はほとんど知らないんだから。
「貴方は、知ってる?」
赤い泡を吹く男は何も答えない。
アタシはとりあえず男の喉をもう一度殴りつけた。
骨の折れる、愉快な音がした。
怒号が聞こえる。
首の骨が折れた男は叫ばない。
アタシに向かって駆けてくるのは、武装した管理局員たち。
あれ?
ここって管理局の施設じゃなかったの?
だって、アタシを作ったのは……
ああ、そっか。これは……
-
……
…………
……………………
…………
……
夜更けに目が覚めて、喉の渇きを覚えたスバルは台所にいた。
目が覚めた理由は夢だ。
嫌な夢だ。とスバルは思う。
無抵抗の相手を殴りつけた感触が拳に残っているようで、スバルは洗面所で手を洗う。
管理局の裏は知っている。詳しいという意味ではない。存在することを自分は知っている。
そもそも、それがなければ自分は生まれていない。
戦闘機人スバルと戦闘機人ギンガの生まれには、当時の管理局の裏が関わっている。
母に救われていなければ、自分はあんな生活を送っていたのかも知れない。
それとも、完成した戦闘機人として使われていたのだろうか。
考えているうちに、冷蔵庫から取りだした牛乳の冷たさが喉を通っていく。
時計を見ると、二度寝には中途半端な、起きているには長すぎる時間帯だ。
「どうした?」
振り向くと、隻眼の姉がいる。
「珍しいこともあるもんだな、スバルがこんな時間に」
「夢を、見たんだ」
自分でも冥いと思える口調だった。
「あたしが、戦闘機人の失敗作として飼い殺されている夢」
チンクは何も言わず、スバルに続きを促すようにキッチンの椅子に座る。
「多分、母さんに助けられなかったら、本当にそうなっていた……そんな風に思える夢だった」
失敗作同士で殺し合い、技術者達の気まぐれでいたぶられる。そんな日々。それが、夢の中の日々。
リアリティという言葉を躊躇うほどに圧倒的な現実感。夢から覚めた瞬間こそが、新たな夢への誘いだと錯覚してしまうような感覚。
「もしかしたら、今が夢なのかも知れない。あたしは、どこかで飼われている戦闘機人なのかも知れない」
チンクが小さく笑った。
「ふむ。それは困る」
「え?」
「スバルが六課にいなければ、私たちが勝っていたかも知れない」
「それって、やっぱり困る?」
-
「そうなると、ディエチが彼氏に出会えなかったことになるからな」
「え。なにそれ、ディエ姉いつの間に」
「人のことは言えんが、うかうかしていると追い越されるぞ」
「チンク姉、それもうちょっと詳しく」
「名前は確か、ヨーク・ホワイトとか言ってたな。まあ、慌てるな。例のごたごたが片づき次第、セインが調べてくれるそうだ」
「そっかあ、セインなら……」
「潜入にはうってつけだからな」
だから今日の所は寝ろ、とチンクは続ける。
続けるというか、実際の所は会話が繋がっていない。
ぷっとスバルは小さく吹き出した。
「無理矢理過ぎるよ、チンク姉」
「無理矢理にでも寝かしつけたい顔をしているからだ」
「……そんなに、ひどいかな?」
「かなり、な」
「わかった。部屋に戻るよ」
「なあ、スバル」
「ん?」
「おまえと姉上は、私たちのある意味憧れなんだ。私たち戦闘機人も、そんな風に家族を持って生きられるって事の」
静かに、スバルは立ち止まる。
「ありがとう。おやすみ、チンク姉」
「おやすみ、スバル」
……
…………
……………………
…………
……
-
身体が動かない。
アタシにあるのは、ただの痛み。
途切れ途切れに聞こえてくる言葉。
「……どう……様子……」
「……間違いな……例の……機人……」
「スカリ……じゃな……か」
アタシは管理局に保護されたんじゃなかったのか。
そうだ。最初はそう思った。
アタシを連れ出した局員もそう答えていた。
「……真似……技術……無茶も良……二年……命……」
「……限定……一ヶ月……充分……進歩……」
違った。
別の場所へ移されただけだった。
局外の違法施設から局内の違法施設へ。
ただの引っ越しだ。
何処にあっても、何と呼ばれようとも、地獄は地獄。何も変わらない。
「……エッティ……寿命知らず……普通……生きて……」
「……技術格差……レベル……」
「……訳あり……まともな死に方……奴だろ……」
痛みは少しずつ増していく。
なんだろう、これは。
身体は動かない。拘束されている気配はない。
生命維持に必要でない可動部を全て停止させられている。だから動けないのだ。
視覚も奪われ、喉も封じられ声も上げられず、残っているのは聴覚のみ。
その中で、痛みだけが、増していく。
「苦痛軽減処置……」
「与えてい……レベル8……脳で……ベル6……低減率25パー……」
「……あと二つあげ……」
-
動かない身体、叫びすら上げられない。
さらに増していく痛み。
叫べるものなら叫んでいただろう。
それは四肢を全て切断されミキサーで掻き回されるような痛み。
だが、そこに他の感覚は一切ない。単純な痛み。
痛覚だけを執拗に刺激する、いっそ美しいほどに純粋なそれは渦を巻くようにアタシを貫き、五体をバラバラに引きちぎる。
それでも痛みは確実に中心から外れない。いつまでも打ち込まれ、アタシの中に孔を穿つ。
声のない叫びをあげ、動かない四肢を振り回す。消えない痛みがアタシの全身を包み込む。一体化する。痛みとアタシが一つになる。
壊れる。
死ぬとは思わず、壊れると思った。
壊れれば、救われると思った。
この痛みから逃れるのならば、死すら安息だと思った。甘いと知っていても、それを信じなければ壊れると思った。
唐突に消える痛み。
クリアになる聴覚。
声が聞こえる。
最初の二人にくわえて第三の声も。
「関係者以外立ち入り禁止だったのかい? すまねえな、外道鬼畜のルールには疎くてよ」
「は? お前、なんだ?」
「さぁ?」
争う音がした。
アタシにはわかる。
殴打で骨を砕いた音。蹴撃で骨を砕いた音。
「急げ。長居はできねえ」
「わかってるって」
第四の声は女性のようだった。
第三の声の主が、アタシを担ぎ上げたようだった。
「待ってろ、すぐに医者に連れて行ってやるからな」
……ありがとう
……父さん
……
…………
……………………
…………
……
-
寝過ごして部屋から出てきたスバルが、食後の茶を飲んでいるゲンヤをじっと見ている。
「なんでぇ、スバル。俺の顔になんか付いてるか?」
「ん……」
ディエチがスバルの前にコーヒーを置いた。
「はい、スバル。目が覚めるよ」
「ありがと、ディエ姉」
コーヒーを手に取り、しばし悩むように黒い水面を見つめる。
そして一口。
「父さん」
「ん?」
「私を救い出してくれたのは母さんだけじゃなかったの?」
「何の話だ?」
「夢を見たんだ。とても痛くて、苦しくて……だけど、父さんと母さんが助けてくれた」
戦闘機人としてのスバルを施設から救い出したのはクイントだ。
そして、少なくともその時のスバルは肉体的な虐待は受けていない。
「おいおい、スバル。母さんがお前らを救ったときのことは前に話しただろう? それに、お前らだって少しは覚えているって……」
「うん。そうなんだけど……」
「夢とごっちゃになったのか」
「夢……なのかな……」
「お前達を助けたのは母さんだ。もしかすると、母さんの同僚はいたかも知れない。だが、それは俺じゃない」
茶飲みを持ち上げてお代わりを催促しようとするゲンヤは、ディエチの姿が消えていることに気付く。
どうやら、気を遣って席を外したらしい。
ゲンヤにしてみれば、ディエチ達に隠すような話だとは思っていないのだが。
-
「俺は救ってねえよ」
そうだ。ゲンヤが戦闘機人に関わり始めたのは、クイントがスバルとギンガを連れてきてからのこと。それまでは、存在すら眉唾物だと思っていた。
だから、戦闘機人に関わっていないと言えばウソになる。確かに、違法組織に囚われていた戦闘機人を救ったこともある。
いや、厳密には救っていない。ゲンヤ達が押し入った頃には既に死んでいた者、あるいは侵入と同時に始末された者がほとんどなのだ。
残りの者も、不完全な処置故にか、あっさりと死んでしまった。
スバルとギンガ自体が、例外中の例外なのだ。
その二人とて、完全な処置は受けられずに何度も技術部の厄介になっている。
「救えなかったんだ」
気付かなかった闇の存在。その先に救える命があると知った。だから、手を伸ばそうとした。
手は届いた。しかし届いた先にあったのは、幾多の屍。救えるはずもなかった、幾多の命。あらかじめ失われていた、幾多の無垢。
責などない。救おうとした心に、責などあろうはずがない。
そう思い切ることが出来れば、どれほど楽だったろう。
そう思い切ることが出来る人間であれば、闇に手を伸ばさなかっただろう。
「違う」
「スバル?」
「父さんに救われた。あたしは、父さんに救われたんだよ!」
「スバル、おい、落ち着け」
「救われたんだって、あたしは。痛かったから、とても、痛かったから!」
「スバルッ!」
チンクとディエチが駆けつける。
それでも、スバルは叫んでいた。
その目は、既にゲンヤを見ていない。
「助けてくれた! 助けてくれたんだよ!」
……
…………
……………………
…………
……
-
アタシは生きている?
どうして?
でも、身体が動かない。
違う。
身体がない。
ここはどこ?
アタシは……
アタシは……
……ねえ。
……スバルって誰?
スバル……
スバル・ナカジマ……
誰?
誰なの?
アタシは、違うよ?
アタシは……
アタシは……
……
どうしよう。
アタシ、名前なんてない……
どうしよう。
考えろ。
考えろ、アタシ……
……
…………
……………………
…………
……
-
スバルの前には、白い壁。
いや、白い天井。
(……あたし、寝てるんだ……)
ゆっくりと身を起こすと、見覚えのある部屋だった。
小さな頃、何度も調子の悪くなっていた自分たちが連れて行かれた部屋。
戦闘機人としての自分を調整していた部屋だ。
「あたし……壊れてるのかな」
声に出すとより虚ろに、現実を寒々しく感じる。
「起きたのね」
モニターしていたのか、ギンガとノーヴェが部屋に入ってくる。
「調子はどうだ」
「うん。気持ちが悪いとかはないよ」
「そっか」
スバルは二人を見た。
自分と同じタイプの二人、というより、近接で自分を取り押さえることの出来る二人、と考えるべきか。
チンクとは体格差があるうえに、チンクのISで非殺傷は難しい。ウェンディとディエチは近接向きではない。
スバルの中の冷静な部分が、その処置も仕方がないと捉えている。
タイプゼロ・セカンドを無傷で取り押さえるつもりなら、ナンバーズ・ノーヴェとタイプゼロ・ファーストは妥当な選択だろう。
「何があったか、覚えてるか?」
「あたしが取り乱した?」
「その理由は?」
-
「多分、記憶の混濁。どこから来たのかはわからないけれど、別の記憶と現状を混同したあたしがいた」
「そこまでわかってんなら、話は早い」
ノーヴェが一枚のデイスクを取りだした。
「チンク姉が八神はやてに頼み込んで、ドクターの所に行ってきた」
「さすがに直接は会えなかったようだけど、フェイトさんが間に立ってくれたらしいわ」
「え、どうして……」
「今、戦闘機人に一番詳しいのはドクターだからな」
「……スカリエッティは私の中身を知っているから」
その言葉に悲しげな目を向けるスバルに、ギンガは微笑んだ。
「私とスバルは同型だから、それなりのことはわかるはずだと思ってね」
「それじゃあ……」
ノーヴェが頷く。
「よく聞け、スバル。お前達タイプゼロは、私たちナンバーズと大きな違いが一つあるらしい」
それは補助脳の存在。
ドクターがギンガの身体を調べたときに、明らかに後付と思われる補助脳を発見していたのだ。
ドクターはその補助脳を外したため、今のギンガに補助脳はない。そして、必要もなくなるようにドクターによって再調整されている。
だが、囚われなかったスバルは無論その調整を受けていない。
もし、ギンガと同じならば、今のスバルには補助脳が存在しているはずなのだ。
「サイズ的にはかなり小さいし、戦闘機人として改造される際に脳の一部を切除されているはずだから、外見からそれとわかることはないらしい」
そして、その補助脳は元から準備されたモノではない。
「少なくとも、私の中にあった補助脳は、別人の脳が使われていた、ということよ」
-
「別人って……」
「おそらく、私たちタイプゼロのさらにプロトタイプ、言い換えるなら未完成、あるいは不完全なためジャンクとされた戦闘機人」
がくん、とスバルの肩が下がった。
半分起きあがっていた身体が再びベットに沈み込む。
「そんな……」
思い当たる節、どころではない。
時折混ざる記憶は、確かにそのジャンク戦闘機人のモノだ。
「ドクターにスバルのデータを送った。とりあえずは、様子を見て、さらなる混濁が起こるようなら対処するべきだと言っている」
先送りにしているわけでも、誤魔化しているわけでもない。
さらに、スバルに対する処置を服役中のスカリエッティにさせるわけに行かないというのならば、元六課のエース達が黙ってはいない。
必要とあれば、どんな許可でも取ろうとするだろう。
だが、問題はそこではない。
当時のギンガと今のスバルには大きな違いがある。ISの有無だ。
IS完全発現後の戦闘機人の脳を弄ることは困難である。それがスカリエッティの答えだった。
不可能ではない、だから、一か八かの勝負なら賭けてみることも出来る。しかし、悪化しない状態ならば危険を冒す意味はない。
それが、技術者としての、ナンバーズが姉妹と認めたスバルへのスカリエッティの判断だった。
「もし、そんなことになったら、どんなことをしてでもドクターを連れてくるか、お前をドクターの所に連れて行くからな」
止める奴がいれば、ナンバーズ総出でぶっ飛ばしてやる。と気炎を上げるノーヴェ。
「とにかく、無理ははせずにね。何かあったらどんな些細なことでも良いから言ってね」
「うん」
それじゃあ、と一旦病室を出ようとする二人。
入れ違いに、白衣を着た技術者が姿を見せる。
-
簡単なチェックを行いたい。
そう言いかけた技術者へ手を伸ばすノーヴェ。
「そんな殺気びんびんの技術者がいるかよっ!」
次の瞬間、ノーヴェの手元には白衣だけが残る。
咄嗟に地を蹴るギンガの前に弾ける閃光。
暗殺者は手を伸ばしデバイスを起動する。
レアスキル精神破壊の発動を極限まで早める、ただそれだけのためにチューンアップされたデバイスである。
三人の対応よりも早く、レアスキルが発動する。
「精神破壊〈ガイストリーフェルン〉」
スバルの上半身が仰け反る。
「てっめぇええええっ!」
ノーヴェの拳が暗殺者を捉えた。
その反動を利用するように、男は窓へ飛ぶ。
だが、外から窓を貫いた弾丸が男を天井へと叩きつける。
さらに破れた窓から躍り込むのはウェンディのライディングボードである。
「大丈夫ッスか、みんな!」
「ウェンディ!」
階下より、イノーメスカノンを構えたままの体勢で叫ぶディエチ。
「スバル! スバル!」
ギンガが、スバルを抱きかかえていた。
-
……
…………
……………………
…………
……
ねえ、スバル。スバルってば。
あれ、……貴女誰?
アタシは、あたしだよ。
え?
貴女はいなくなっちゃうから。
なに? 何言ってるの?
ここは、あたしのモノだから。
待って。わからない、わからないよ。
わからないほうが、いいと思うよ。オヤスミ、スバル。
……
…………
……………………
…………
……
-
「落ち着いたのか? スバル」
「……あ、父さん」
「医者の話だと、もう大丈夫みてえだが」
「うん。大丈夫だよ。大事を取って、二三日は様子を見るって言われたけれど」
「そうか。まあ、今回はお手柄だったんだ。ゆっくり休め」
「それにしても、ビックリしたよ。てっきり精神破壊されたのかと」
大量のリンゴを剥いているディエチとチンク。
「ああ、まったくだ」
「ううん。多分、破壊されたと思う」
「おい」
焦るゲンヤに、スバルは笑う。
「大丈夫。あの子が助けてくれたんだよ」
「あの子……か」
スバルの夢の話は既に伝えられている。
ゲンヤは可能性としてあり得ることを確認していた。自分の助けた子供が、スバルの補助脳とされている可能性を。
「父さんに、助けてくれてありがとうって言ってたよ」
「そうか」
「あの子が、アタシの代わりに壊れたんだ」
……さよなら、今までありがとうね。スバル
-
以上、お粗末様でした。
-
>>465
おおお…脳のなかの「彼女」が身代わりになったのか…
GJ…実にGJ!
-
GJGJ
なんかSFサイコスリラーアクションな感じで好き
ふたりはほとんど融合してて、
結局どっちが消えたかは本人もわからないEND
になるのかな、SF的に考えて
-
消えたのはオリジナルかそれとも彼女か、それは読み手の解釈しだい・・・いや、八割くらいの確立で消えたのはスバル、なのかな。
良い話ともひどい欝とも取れる。
しかし野狗氏文才ありすぎだろ・・・GJとしかいえぬ。
-
なるほど二回目読むと違うわけか、感想コメントで気づいたw
いい構成力だGJ!
しかしスバルは職人に愛されてるなw
エロだけでも三
属性も同僚/恩人/雌犬/先輩/友人/乙女/家族と見事にバラバラだな
-
長い年月によりふたりはすでに互いの区別も付かないほど同一になっていた
外部からの干渉を受けることで再び別個に分かたれた
そして……
ということかな。解釈によりまた色々と違う面が出てくるなあ……GJ!>>465
-
>良い話ともひどい欝とも取れる。
俺も感想レスではじめて気づいたw
面白いね
-
スバル祭り行きます。
一応、自分ので最後になります。
タイトルは「巣立ち前夜」です。
-
機動六課。それは聖王教会騎士カリム・グラシアがもたらした不吉な予言に、昨今跋扈し始めた所属不明の自動機械、通称ガジェットドローンに対応するために、本局が一年
間という制限をつけてまで設立した部隊である。
傍から見ればかなり強引な手段を用いたこともあって、もし成果を挙げられずに解散となれば、成立にかかわった提督たちは責任の追及を逃れることは出来なかったであろう
が、提督たちの期待を一心に背負ったエースたち、そしてそのエースに選ばれた新人たちは見事にその役目を果たし、制限時間を大幅に残し、管理局の転覆をたくらんでいた
スカリエッティ一味を捕らえ、後に伝説の部隊とまで呼ばれる功績を残す。
この結果に、提督たちは胸をなでおろし、満足したが、役目を終えた機動六課はそのまま解散というわけにはいかなかった。
一年間という制限をつけて強引に設立したことが、逆に鎖となって彼女たちを縛りつけたのである。彼女たちは予言の阻止という大目的を果たしたあとも機動六課にとどまり
続けねばならなかったのであった。
とはいえ、管理局全体の5%にも満たないといわれているオーバーSランク、エースたちを役目を終えた部隊で無為に過ごさせていることなど出来るはずもない。本局の提督
たちはこれまた強引な手段を使い彼女たちを、応援、出向など、いろいろな形で飛び回らせた。エースに暇を持て余す時間はない、エースたちは週の半分以上を六課の外で過
ごしていた。
では、残された新人たちはどうであろうか?
チームとしての実力はともかく、個々の実力はまだまだエースたちには遠く及ばない。チームとして出向させるには、強引な手段を使っても難しく、個々で出向させてもそこ
まで成果を望めない。ゆえに、新人たちは機動六課にとどまり続けることと成ったのである。
仕事を与えられてはいない新人たちであるが、彼女たちの隊長のおかげで暇を持て余すことはなかった。教導官でもある、隊長は新人たちの将来を、六課から巣立った後のこ
とを考えて、心をこめた訓練メニューを彼女たちに残していってくれたのである。
まだ幼く、進路を絞りきれないエリオとキャロにはバランスよく成長できるようなメニューを、執務官を目指しているティアナにはスタンドアローンでも行動できるようにす
ると共に試験対策のために座学にも大きく時間を割いたメニュー。
そして、湾岸特別救助隊からスカウトを受けているスバルには――各人の訓練のサポートに回るようなメニューが残されていた。
隊長が個々のことを思い、睡眠時間を削ってまで作った心づくしのメニュー。それに対して忠実な教え子である新人たちが手を抜くことなどありえない。出動の可能性もなく
なったことで訓練に全力を尽くせることもあり、彼女たちの一日は機動六課が部隊として稼動していた頃よりハードだったのである。
-
「はああ、もうやめやめ!」
「え、どうしたのティア?」
スバルはあっけにとられていた。
射撃型であるティアナは格闘が苦手である。しかし前線型執務官としてやっていくならば、苦手な距離はあってはならない。その弱点を克服するために、スバルはティアナの
訓練に付き合っていたのだが、何度か型を繰り返しているうちに、ティアナが突然怒り出したのだ。
「ううぅぅ〜〜〜」
「え、え、私何かした?」
ティアナは犬のようにうなり声を上げながら、じっとスバルを睨みつけている。言いたいことがあるのに、何か我慢している。そんなふうにも受け取れた。
スバルとティアナは訓練校時代からの付き合いだ。親友と呼べる間柄である。それにもかかわらず、スバルはティアナが何で起こっているのか、何を言いたいのか検討もつか
なかった。ティアナは元来言いたいことは我慢しないで言う性格である。それがスバルに対してならなおさらだ。
「え、えと、私が何か悪いことしたのなら謝るけど……」
スバルはティアナに怒られるのは慣れてはいるが、今回のティアナの怒りは普段とは様子が違うし、理由もまったく分からないので、うなり声を上げながらじっと見つめてく
るティアナの視線に耐え続けることが出来なかった。
よく分からないが許しを請おう、そう言う気分になったとしても責められないだろう。
だが、その態度がさらにティアナの気分を害してしまったようだった。
「もういい! 今のスバルに何を言っても仕方がないから!」
「え、え?」
「……ちょっと早いけど、私は座学に入るから、スバルはエリオたちの訓練に付き合ってあげて」
ティアナは一際強い剣幕をあげるとくるりとスバルに背をむけて歩き去ってしまう。
残されたスバルとしてはその態度が気になって仕方がなかったが、今、いっても逆効果になるような気がして後を追いかけることは出来なかった。
「うーん、本当にティアどうしたんだろう……」
後ろ髪を引かれながら、スバルはエリオたちの下に向かう。
「うーん……」
真剣にやっているエリオたちに付き合うのだ。気分を切り替えなければ成らない。
「うーん……」
スバルはいつもは気持ちに切り替えが早い。だが、なぜか今はそれがうまく出来ないでいた。
-
「スバル!」
「あ、ティア」
医務室の扉が勢いよく開かれてツインテールの少女が駆け込んでくる。
「ごめんね、ティア。心配かけてちょっとミスしちゃった」
「……」
スバルが腰掛けているベッドのそばにまで歩み寄ってきたティアナは黙り込んでいる。
今のスバルにはティアナの表情はうかがえないが、雰囲気で怒っているのがわかった。
仕方がない、とスバルはティアナの叱責を待つ。理由が分からない先ほどのこととは違い、今回は怒られる理由が明白なのだ。
「あのティアナさん……すいません。僕が無理な訓練に付き合ってもらったから……」
横からエリオがとりなしてくれるが、今回はエリオは悪くないのだ。スバルが集中しきれていなかったことが原因なのだから。
新しく覚えた魔法を実践してみたいというエリオの願いに答え、模擬戦を行ったのだ。それ自体も、なのはが作った訓練メニューから外れるものであったが、普段どおりのス
バルであれば何の問題もなかったはずなのだ。
「……」
「あ、あのティアナさん?」
じっと、スバルを見つめたまま黙り込んでいるティアナの様子を心配になったのか、エリオが再び声をかけるが反応は返ってこない。
ティアナが放つ重苦しい空気は、部屋にいるキャロやシャマルをも巻き込んでいく。
「え、えとティア?」
「……いい。今回の件は。スバルが集中できていないのにエリオの訓練に付き合うように勧めたのは私だから」
「ティアナさん?」
「いい機会だから、スバルはしばらく休みなさい。なのはさんには私から伝えておくから」
「……え? ティア?」
ティアナは重い空気を吐き出すように、言葉を紡ぐと、シャマルに向き直りたずねる。
「シャマル先生。スバルの怪我はどんな様子なんでしょうか?」
突然話を振られたシャマルは少し慌てたようにしながら答える。
「あ、はい。えーと」
シャマルは白衣を正してから説明を始めた。
――運がいいんだか、悪いんだか。
スバルは説明を聞きながらそう感慨にふける。
非殺傷設定といえど完全ではない。ゆえに当たり所が悪ければ死ぬことすらありえるのだが、今回スバルはエリオが放った魔法が両の目に当たってしまったのだ。それも戦闘
機人の弱点である電撃に変換された魔法が。その結果、スバルの視神経をつかさどる回路が焼ききれてしまい、目の焦点の調整がうまく出来なくなったらしい。
「うーん、ようは近視になっちゃったっていうことですか?」
「うん、そうね。その表現が正しいかしら。それにそんなに心配しなくてもいいわ。私は専門家ではないからはっきりとは分からないけれど、戦闘機人がもつ自動修復機能が
働いているみたいだから数日で回復するはずだから」
「じゃあ、スバルさんの目は治るんですね!」
シャマルの説明を聞いてずっと不安そうに塞ぎこんでいたエリオが喜色の声をあげる。
「うんそうよ。それと」
エリオに微笑を向けたあと、シャマルは引き出しから、手のひらに乗るほどの大きさの黒い長方形の箱を取り出してスバルに渡す。
「そのままだと日常生活にも困ると思うから、これをつけておいてね」
-
「……ぷ」
「はははは、スバル似合ってるわよ!」
「……そうですね、いつものスバルさんとは違って見えて、なにか素敵です」
先ほどまでの不機嫌な様子はどこに行ったのか、ティアナは腹を抱えて笑い転げている。
その様子に何か納得がいかないものを感じたスバルはむすっとしながら答える。
「……キャロありがとう。お世辞でも嬉しいよ。エリオは我慢しなくていいから。あとティアは笑いすぎ」
シャマルから渡されたものは眼鏡であった。
まるで牛乳瓶の底のような分厚いレンズ、デザイン性より機能性、耐久性を重視した太く、黒いフレーム。それは大きな存在感を持ってスバルの顔に鎮座していた。
「はははは、本当よスバル! まるでガリ勉みたい!」
「……もういいよ」
笑い転げているティアナに、スバルは不機嫌そうに返すが、実際にはそんなに気分は悪くはなかった。笑いあっていられる間はいろんなことを忘れられるような気がしたから
だ。
だが、そんな時間も長くは続かない。
仲間と過ごす楽しい団欒の時間をけたたましい音が引き裂く。
それは人の注意を引くためだけに生まれた音、警報であった。
-
『ええか、敵はガジェットだけと言っても数が多い。油断したらあかんで』
『私たちも急いで戻るけど、遠すぎてたぶん間に合わないから……』
「はい、大丈夫です。任せてください。八神部隊長、なのはさん」
隊舎に鳴り響いた警報。それは六課に出動要請が入ったためであった。この事件の後にはっきりと判明することであるが、スカリエッティ一味が捕らえられても、スカリエッ
ティがレリック捜索のために放ったガジェットドローンは活動をやめていなかったのである。自律的思考を持ち、半永久的に駆動する動力を備え、次元跳躍すら可能とする自
動機械が次元世界中に散らばって潜伏している。その総数は不明。レリックに似た反応を察知すれば、無差別に破壊活動を開始するガジェットは後に災害として認定され、G
D災害対策部隊が設置されることになるが、今はAMFを持つガジェットを効率的に排除できる部隊は機動六課を持って他にはない。一部、なのはやヴィータに訓練を受けた
部隊があるが、それも少数であり、練度は六課に及ぶべくもない。ゆえに六課に出動要請がかかるのは当然といえた。
「私たちはもともとガジェットを相手するために訓練を受けてきたんですし、それに昔よりもずっと成長していますから」
ティアナは心配そうに通信を送ってきた隊長陣に自信満々で答える。
『うん、信頼はしているんだけど……』
「平気です。任せてください」
ティアナはいつも以上に強気だった。ティアナは熱くなりすぎることがあり、それが欠点として、なのはからよく指摘を受けていた。そのため、ティアナは常に冷静でいられ
るように心がけているはずなのだが、今日の様子はどう考えてもおかしかった。それに気のせいかもしれないが、隊長たちと話しながら、時折視線をスバルのほうに送ってい
るように感じられる。
-
『ティアナ……うんそうだね。任せるよ』
なのははしばらくティアナを見つめた後、何か悟ったように頷き、ティアナの考えを支持した。
『スバル……怪我したんだってね。大丈夫?』
なにか、ティアナと視線で会話をしていた、なのはが突然、スバルに話を振ってきた。
「はい、大丈夫です! ちょっと見えづらいですけど、これをつけていれば平気です。戦えます!」
『うん、良かった、元気そうだね。でも、今日は前に出るのはやめておこうか』
「え、でも……」
『駄目だよ。無理したら……ティアナ、よろしくね』
「はい」
『じゃあ、私らもこれから急いで戻るけど、無理せえへんようにな』
「はい、了解しました!」
はやてが敬礼すると同時に通信が切れる。
「さあ、エリオ! キャロ! 準備はいい? 行くわよ! ヴァイスさんヘリのほうよろしくお願いします!」
「「はい!」」
「あいよ!」
ティアナの指示により各々駆け出していく。
一人だけぽつんと残されたスバルは、すがりつくような視線をティアナに向ける。不安で仕方がないのだ。
「ティ、ティア……」
「いいから、あんたはここに残って私たちの戦いをしっかり見てなさい!」
「で、でも!」
最近は個人技のほうも学んではいるが、スバルたちフォワード陣は基本はチームで動くように訓練を受けている。要であるフロントアタッカーであるスバルが抜ければ、チー
ムとして動くことは難しい。
それは、ティアナにも、なのはにもよく分かっているはずなのに。
「た、確かに目は見えづらいけど、盾になることくらいは出来るから。私、昔よりずっと固くなったからガジェットの攻撃くらいならいくらでも……」
「いいから!」
なおもすがりつくスバルの言葉を、ティアナの大きな声が遮る。
「いいから見てなさい! なのはさんが気を使って、訓練の間に感じ取れるようにしてくれてたけれど、あんたは馬鹿だから気がつかないようだから、実戦で見せてあげるっ
て言ってるの!」
「ティア?」
「私たちだって成長してるんだから! だから、あんたに、スバルに守ってもらう必要なんてないの!」
「ティ、ティアぁ……」
ティアナの言葉は、スバルには明確な拒絶の言葉に聞こえた。ここまで拒絶されるようなことを自分は何かしたのだろうか? 気がつかないうちにティアナを傷つけていたの
だろうか? そう考えると思わず涙がこみ上げてきた。
「泣くな!」
「……」
「あああ、違う違う! 私が言いたいことはそう言うことじゃなくて……」
ティアナはスバルの涙を見ると慌てたように頭を抱える。
「……ああ、もう言いたいことがうまくまとまらない!」
「……」
「ああ、もう! スバル!」
ティアナが頭を抱えて悩んでいる姿を見ていたら、スバルの涙はいつの間にか引いていた。ティアナは不器用なところがあるが、いつもまっすぐだ。そしてティアナから向け
られた視線から、まっすぐにスバルのことを考えてくれるのが伝わってきたから。
「うまく言葉が見つからないし、そのまま口に出すのは恥ずかしいから……まずは証明して見せるから、しっかりと見てなさい! 私たちはもう一人でも平気なんだって、ス
バルの背中を押してあげることくらい出来るんだから!」
ティアナは一方的に言い放つと、赤面した顔をスバルから背けて、駆け出した。
-
「ティア……」
留守を命じられたスバルは司令室で戦況を映し出しているモニターをじっと見つめていた。今のティアナたちの実力からするとガジェットは負担がかかる相手ではない。だが
塵も積もれば山となるように、百近い数を彼女たちだけで対処するのは難しい。近隣の部隊も派遣されてきてはいるが慣れないAMF影響下の戦闘ではめぼしい戦果を挙げら
れずにいる。結局はほとんどのガジェットをティアナたちだけで排除しなければならないのだ。
「……」
スバルは悔しそうに唇をかみ締める。
何故、自分はここにいるのか。あそこで盾となって、皆を守らないといけないのに。
行きたい。駆けつけたい。皆の力になりたい。守りたい。
そう考えるがゆえに、血がにじむほど唇をかみ締める。
「……!」
自分がいれば、そう考えているスバルの気持ちを代弁するかのように戦況が変化する。
一人で前衛を勤めていたエリオの横を抜け多数のガジェットがティアナのもとに殺到した。ティアナも必死で応戦するが、半数ほど撃墜したところでカートリッジが切れ、そ
の隙をつき、残ったガジェットはティアナに猛攻を加えた。十をこえる火線が集中する。それはティアナの防御を突破するには充分すぎるものであった。
「ティア!」
思わずスバルの口から悲鳴が漏れた。
自分がいれば……スバルならばあの程度の攻撃で守りが突破されることはない。ガジェットの攻撃を一身に集めて、皆を守ることが出来る。そうすればティアナたちももっと
自由に動ける。そうすれば、そうすれば……
スバルはいても立ってもいられなかった。
――駆けつけないと。皆の下に行かないと。
スバルがそう思い司令室の扉に手をかけたそのときだった。
『ざけんじゃないわよ!』
咆哮が響き渡る。
それはモニター越しであるのにもかかわらず、まるでこの場にいるかのように、そして、まるでスバルに向けられたかのように、スバルの鼓膜を打つ。
「……ティア?」
モニターに再び映し出されたティアナは額から血を流しながらも、その手に持つデバイスを振るう。魔力刃が追撃を加えようと近づいてきたガジェットを切り裂く。
『……ずっと守ってもらってばかりじゃ駄目なのよ……いいところを見せて、大丈夫だって見せ付けて、背中を押してやんないといけないのよ!』
「ティア……」
半ば朦朧としているのかティアナは意味不明なことを呟いている。いや、スバル以外にはそう聞こえただろう。だが、スバルはティアナの呟きが間違いなく自分に向けられて
いることがわかった。
だから目をそらしては成らない。最後まで見続けなければならない。
そうスバルは考え扉にかけていた手を離しモニターに向き直る。
そうすることが自分とティアナのこれからに必要になると分かったから。
-
ティアナは見せた。スバルは悟った。
だから、後は最後の儀式。お互いの巣立ち。
この戦いの数日後の朝、ティアナはスバルに切り出した。
あんたはバカでドジで時々情けないけど、自分で思ってるよりずっと強い。
あんたの強さが!
優しいところが!
みんなを。あたしを。いつも守ってくれてた。
訓練校の時も、ず――――っと!
自分ががんばれば絶対みんなを守れるのにって
そんな風に思ってるから
あんたはあたしたちと離れるのが怖いのよ!
まったくバカにしてんだから。
あたしはさ!
あの戦いで絶対絶命って状況になった時、あんたのこと思い出したわけよ。
あんたがいっっつもバカみたいに繰り返してくれた励ましとか。
あんたといっしょに六課の教導に耐えてきた思い出とか!
そーゆーののおかげであたしは今生きてるし、
こーやってあんたにお節介もできるわけ!
わかる?
別々の場所に離れてもさ、
あんたはちゃんとあたしたちのことを守ってくれるの。
そんだけのことをしてきたの。
なのはさんの心配なんて相変わらず10年早いしね!
まぁ。だからさ。
なんにも心配いらないんだから堂々と胸張っていってらっしゃい。
あんたの助けを震えて待ってるどこかの誰かを助けるために。
あんたが夢見て憧れた――泣いてる命を助けられる仕事にさ!
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以上になります。
おそまつさまでした。
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>>481
スバルが眼鏡っ娘にw いやスバルは意外と眼鏡似合いそうな気がするなw
最後はすべてティアナにかっさわれた感があるがGJだ!
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改行がわからないくて申し訳ないが読みづらいが…
話自体は面白いな、GJだ
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なるほどなるほど、いい話だ。GJ!
地の文の改行はたしかにちょっと微妙かな。
俺の閲覧環境がちょっと狭い(横幅全角55文字)のもあるけど、半端なところで切れてる感がある
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違うキャラ名出してゴメン、ドラえもんが未来に帰る映画のジャイアンとケンカしているのび太のセリフを思い出した。
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