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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第101話☆

1名無しさん@魔法少女:2009/11/24(火) 05:30:44 ID:sxkgTGY6
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の5スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第100話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1249470848/

364名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 18:17:05 ID:Qq9BnuPc
スカちゃん頑張れ超頑張れスカちゃんw

365名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 18:29:11 ID:zbcKh4ww
wikiのリンクが未だに前スレのままな件

366名無しさん@魔法少女:2009/12/21(月) 21:15:03 ID:SPKSQyUc
ジェイルwwwww
ほんとうにこの組み合わせ好きやなあ。アンタ。

367名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 15:14:13 ID:zppW8NWk
「ユーノくんがキスしてくれたら検索魔法頑張る☆」
「しかたないなぁ」 チュッ

「「「確保ォォ!!」」」

368名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 17:22:13 ID:6DL0nW3Q
巣に帰れホモ野郎

369名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 17:32:27 ID:2Mbd8u6U
野良の司書じゃなくてヴィヴィオだろうに

370名無しさん@魔法少女:2009/12/22(火) 21:45:51 ID:O8WnJTSc
ヴィヴィオがユーノきゅんを逆レイプするってのはどうよ

371名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 07:59:56 ID:r3efYzPo
それは普通すぎて面白くない。

372名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 11:08:38 ID:32fC2m5c
じゃぁ一捻りして聖王モードでレイプしようとするけどチェーンバインドで捕まって言葉責め&
緊縛プレイだけでイッちゃって変身解除されたところをユーノに逆レイプされちゃうヴィヴィオ。
しかし、そこまでがヴィヴィオの計算のウチだったのだ…的な

373 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:25:06 ID:FXgPlWzE
二日しか経過してませんが、また書きます。

・ユノティア
・エロ
・キャラ崩壊上等(しばらく封印状態になってた性的に強いユーノ解禁とか)

374ティアナが飛んだ! 1 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:26:26 ID:FXgPlWzE
 ティアナは空を飛べない。それはもはや業界では衆知の事実。
しかし、ティアナ自身にとっては深刻な問題であり、飛べない事こそが
彼女が自分自身を過小評価してしまう大きな要因となっていた。

「やっぱり飛べない……やっぱり私はダメな魔導師なんだー!」
「ティアナまた病気が再発しちゃった…これは私が何とかしないと…。」

 また『凡人と自虐的になっちゃう病』を再発して頭抱えていたティアナを
物陰から心配そうに見つめるは、ティアナに魔法を教える立場にある高町なのは。
しかし、彼女とて神様では無いのだ。そもそも最初から飛行魔法の資質の無い
ティアナに飛行魔法を使える様に出来るわけが無い。

「そうだ。ティアナは空が飛べなくても立派に戦えるんだから
そこを褒め称えて飛べなくても大丈夫って思わせれば良いんだ!」

 あのJS事件の際にティアナが戦闘機人三人抜きをやったのは知られている。
それはティアナが空を飛べなくとも立派に魔導師として通用し得る証拠であり
なのははそこを使って早速ティアナを励ます事にした。

「大丈夫だよティアナ。空が飛べなくても大丈夫。」
「でもやっぱり飛べた方が良いじゃないですか。」
「そんな事は無いよ。例えばマジンガーZはマジンガー軍団と違って空飛べないけど
マジンガー軍団より強いでしょ? つまりティアナは陸戦にこそ映えるタイプなんだよ。」
「でもそのマジンガーZも結局は空飛ぶ機械獣に苦戦して、最初の頃は奇策で何とかしてても
通用しなくなってジェットスクランダーで飛んじゃったじゃないですか。」
「う……………。」

 これは痛い所を付かれた。こうなったら違う例え方をするまで。

「飛べなくても…だ…大丈夫だって…。ゴジラだって飛べないけど、キングギドラとか
空飛ぶ相手にも立派に通用したじゃない。」
「でもゴジラ対ヘドラで飛んだじゃありませんか。」
「う……………。」

 ああ言えばこう言う。今のティアナを励ますのは尋常では無い。もういっそこのまま
頭冷やしてやろうとも思ったが、そう言う力に任せた抑え方はスマートでは無い。
しかし、ここでなのはは良い事を思い付くのである。

「あ! そうだ! ティアナ! 私に良い当てがあるよ!」
「え!? 本当ですか!?」

 一体何を考えたのか分からないが、なのははティアナを連れてある場所へ向かった。

375ティアナが飛んだ! 2 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:27:17 ID:FXgPlWzE
「この人ならば今のティアナを何とか出来るはずだよ。」

 なのはがティアナに紹介した人物。それは無限書庫最強の生物ユーノ=スクライア〜〜〜〜〜〜!
その力は一世界の全図書館司書力に匹敵………したら良いな。

「やあ。今日は一体何の用かな?」
「実はユーノ君に協力して欲しい事があって…。」

 ティアナが緊張の面持ちで待つ中、なのはとユーノは何やら話をしていたのだが…

「え!? ええ!? それを僕がやると言うのかい!?」
「お願い! ティアナを助けると思って協力して! ほら、ティアナからも頼みなさい!」
「お願いします! 良く分かりませんけど…とにかく私を助けて下さい!」

 何か大変な事でもあるのか戸惑いの色を見せるユーノに対し、ティアナはなのはに
言われて慌てて頭を下げていた。それにはユーノも一息付いてから事を話し始めた。

「分かった。でも本当に良いのかい? これは一歩間違えれば大惨事になりかねない大変な事なんだよ。」
「はい! 覚悟は出来ています! どんな辛い特訓にも耐える覚悟です!」

 あの無限書庫最強の生物ユーノ=スクライアがここまで真剣な顔になるのは、ティアナが
空を飛べる様にする特訓は相当に過酷な物であると見てティアナも真剣な面持ちになっていた。


 そしてユーノはティアナを別室に案内した。その部屋には窓一つ無く、部屋の真ん中に
一台のベッドが置かれているのみ。

「ここで早速始めるよ。」
「始めるって…こんな狭い所をで何をするんですか?」

 屋外の訓練場では無く、こんな狭い部屋で何をするのだろうとティアナは不安になっていたのだが、
その後でユーノが言った。

「さあここで服を脱いでベッドに寝そべるんだ。」
「え!? ええ!?」

 今凄い事をあっさり言った。服を脱いで裸になりベッドに寝そべろと言うのである。
これにはティアナも思わず顔を赤くしてしまう。

「ふ…服を脱いで…一体何をするって言うんですか!?」
「何って、決まってるじゃない。ティアナはこれからユーノ君に枕営業するの。」
「なのはさん〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 今度はなのはがあっさりと凄い事を言った。ティアナにはこれからユーノに枕をやれと言うのである。
これが果たして空を飛ぶ事と何の関係があるのだろうか?

376ティアナが飛んだ! 3 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:28:02 ID:FXgPlWzE
「あ…あ…。」
「別に嫌なら良いんだよ。僕は強制はしない。」

 顔を赤くして服を脱ぐ事を躊躇うティアナに対しユーノは優しく接していたが、なのはの態度は正反対だった。

「あ〜あ〜! ティアナったらこんな所で怖気付くなんて、空を飛びたくないんだね?」
「そんな事言われても…私まだ処女で…。」
「それがどうしたと言うの? そんなの遅かれ早かれいずれは失われる物じゃない。
それにこういう仕事だから、時空犯罪者に捕まって時空犯罪者相手にレイプされて
処女奪われちゃう可能性だってあるんだよ。そんな事になる位なら無限書庫司書長の
ユーノ君に捧げちゃった方が格好良いと思うな〜私は。」
「なのは! 彼女に無理言っちゃ悪いよ!」
「う……………。」

 ユーノは無理強いするなのはを叱っていたが、ティアナは悩んでいた。
確かに管理局で働き、かつ執務官方面に進むのだから、時空犯罪者に捕まってしまう事も
恐らくはあるのかもしれない。そうすればレイプは必至であり、時空犯罪者に
処女を捧げてしまい、下手をすれば妊娠さえさせられてしまうと言う大きな心の傷を
負ってしまいかねない。それならば…無限書庫司書長・無限書庫最強の生物の肩書きを持つ
ユーノに処女を捧げた方が、無限書庫司書長・無限書庫最強の生物とSEXした女として伯が付く
とも考えていたが、それでもやっぱり処女を失うのは名残惜しい。しかし…ここである事を思い出していた。
 
 それはティアナが昔見た事のあったとある映画。その映画は魔導師に弟子入りする若者の奮闘を
描いた物なのだが、その若者の師となる魔導師は最初は魔法のまの字もやらず、水汲み等を
初めとした雑用しかさせなかった。しかし、それは全て魔法を覚える為の修行に耐える為の
忍耐力や基礎体力を付ける為の特訓の一環であり、その後の特訓等も一見魔法とは無関係に
見える物が、実は知らず知らずの内に技術を付ける修行だったと言う描写が幾つもあった。

 とするならば、今なのはがティアナにさせようとしている事も、ユーノに抱かれて
枕営業する中で、知らず知らずの内に飛行技術を付けさせる何かがあると見て間違いは無い。
そう考えれば、ティアナの決意は固まった。

「やります! 私にやらせて下さい!」
「え!? 本当にやるのかい!?」

 先程までの恥じらいが嘘の様に自分から服を脱ぎ、ユーノの目の前で下着をも堂々と剥ぎ取り
素っ裸になってのけるティアナにむしろユーノの方が戸惑ってしまうのであったが、
しかし、ティアナの気持ちを汲んでユーノも決意を固めた。

「よし分かった。じゃあとりあえずベッドの上に寝そべってごらん?」
「ハイ…。」

 こうしてなのはの見守る中、ティアナは全裸でベッドに寝そべり、試練が始まる。

377ティアナが飛んだ! 4 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:29:08 ID:FXgPlWzE
「それじゃあ行くよ。」
「はい…………ん!」

 ユーノはベッドに寝そべったティアナの乳房に手をかけ、優しく握った。そうするとティアナの乳房の膨らみに
ユーノの指が少しだけ沈み込んだ。そしてその感触によりティアナも思わず声を上げてしまった。
過去に朝起きたらスバルに乳揉みされてました事件等があったが、ユーノに揉まれるのはスバルのそれとは
全然違っていた。

「(あ…あ…これが男の人の手………スバルのとは…全然違う…。)」

 ユーノはティアナの乳房をただ揉むのみならず、前後左右に押しては引き、グルグルと回転させたりもした。
そしてティアナの乳房の肌から伝わるユーノの指は、ティアナに今まで感じた事の無い何かを感じさせていた。

「それじゃあ次は…。」
「あっ!」

 次にユーノが行ったのはティアナの乳房の先端に輝く乳首に吸い付く事だった。
未だ誰にも吸われた事の無い敏感なティアナの乳首に、ユーノの口が吸い付き、その舌で
乳首を嘗め回して行く。これでティアナが感じないはずが無い。

「ああっ! (くっ…くすぐったい…。)あああ!」

 ユーノはティアナの乳房を手で揉みながら、その左右の乳首を交互に吸って行く。
その初めての感覚はティアナの敏感な乳首には一溜まりも無く、部屋の中にはティアナの
喘ぎ声が響き渡り、何度もビクビクと痙攣させてしまう程だった。

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…。」

 ユーノが一時的に手を止めた時、ティアナの全身の綺麗な柔肌から汗が吹き出て来る程だった。
確かにティアナはなのはから毎日みっちりと訓練を受け、体力に自信はあった。
しかし、この無限書庫最強の生物ユーノ=スクライアの愛撫は、それらが
一切役に立たない程にまで…勝手の違う物だった。

「(こ…これが…これが男の人………女とは全然違う……凄い……凄すぎるよ…。)」

 ティアナの目には涙が浮かんでいた。ユーノはただティアナの乳だけを愛撫したと言うのに
ティアナは未だかつて無かった程にまで興奮していた。しかしこれがもしも、今の様に
ティアナに優しくしてくれるユーノでは無く、凶悪時空犯罪者に捕まって、乱暴を受け、
命の危機を感じながらレイプされると言う状況に陥った場合どうなってしまうのか?
そう考えるだけでティアナは怖くなって来た。

「あの…君……大丈夫かい? 何か青くなってる気がするんだけど…。」

 今のティアナの様子はユーノにも良く分かり、心配になっていたが、次の瞬間だった。
何とティアナが自分からユーノに対して脚を大きくM字に開いていたのである。

378ティアナが飛んだ! 5 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:30:34 ID:FXgPlWzE
「ユーノ先生! して下さい! 私…怖いんです! 凶悪時空犯罪者に犯されて
処女奪われるのが…怖いんです! だから…だから…私の処女…ユーノ先生にあげます!
時空犯罪者に犯されるかもしれないって恐れている自分自身を………忘れさせてください!」
「うわお! ティアナったら大胆!」

 自分からユーノに処女を差し出し始めたティアナの姿はなのはですら思わず赤くなってしまう程だった。
しかし、そのティアナの気持ちを悟ったユーノに戸惑いの色は無かった。

「分かった。ならば…君の処女は…僕がいただくよ。」

 意を決したユーノはティアナに対し、自分自信の男根……男性器を露とした。

「キャッ!」

 確かにティアナもその存在を知っていた。まだ幼かった頃に、今は亡き兄と共に風呂に
入った事も度々あり、その兄の股間にぶら下がるソレを見た事も当然あった。
しかし、既に勃起していたユーノの一物は…そんな彼女の想像を絶する程にまで
太く、長く、そして固かった。しかしこれこそが…これこそがこれからティアナの膣口に
潜り込み、処女を奪う一物なのである。

「さあ行くよティアナ。」
「は…ハイ…。」

 時空犯罪者に犯されてしまう位ならユーノに処女捧げた方がマシと考えていたティアナだが、
いざユーノの一物の先端部分が自分自身の処女膣口にキスをする所を目の当たりにした時、
やっぱ時空犯罪者に犯されてた方がマシなんじゃないかとすら考え直し始める程でもあったが、
そうこうしている内にユーノの固い一物はティアナの柔らかい膣口をこじ開けながら潜り込んで行き…

「痛!!」

 ティアナは激痛を感じた。そしてユーノの一物の潜り込んだ膣口から赤い血が流れていく。
そう、ユーノの一物が…ティアナの処女膜を…貫いたのである。
ユーノの巨大な一物がティアナの処女膣にねじれ込まれる様は、破瓜の痛みの他にも
強烈な圧迫感と、全身に電撃が走る様な感覚を彼女に与えていた。

 ティアナの処女はこうしてユーノによって奪われた。しかし、それもまだ序章に過ぎない。
これから本格的にユーノとのSEXが始まるのである。

379ティアナが飛んだ! 6 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:31:51 ID:FXgPlWzE
「あっ! くっ! うっ!」

 ユーノの巨大な一物がティアナの膣を何度も突き上げ、ティアナはただただそれに合わせて
腰を突き動かすしか無かった。破瓜の痛みも大分収まって来たが、逆にここまで来てしまうと、
苦しい様で気持ち良く、気持ち良い様で苦しいと言う何とも言えない感覚をティアナは感じていた。

「あっ! あんっ! くぁ!」

 ティアナは全身汗だくになりながらも、必死にユーノの突きに耐え腰を動かしていた。
ティアナは確かになのはに課せられる教導の中でかなりの力を付けて来たはずである。
そしてそれらはティアナに大きな自信を付けさせるに至っていたはずなのだが………
ユーノの愛撫の前には全てが無意味だったとしか思えなくなる程であった。しかし………

「そろそろ痛くなくなっちゃったんじゃないかな? これから本番を始めるよ。」
「え!?」

 笑顔でさらりと凄い事を言うユーノにティアナの目は大きく見開いた。
確かにユーノは今までも充分過ぎる程にまでティアナを激しく突き上げて来たはずだ。
しかし、ユーノはそのさらに上の領域を持っていたと言うのである。流石は無限書庫最強の生物!

「ハッ…………………………!!」

 ユーノのさらに強烈になった突きの前にティアナは喘ぎ声を上げる事すら出来なかった。
先程までのそれでもティアナは既に汗だくになる程疲れ切っていたと言うのに、
さらにそれ以上強くされてしまえば、肺が圧迫され、声を出す事さえままならなかった。

「(息……苦し……ダメ……気をしっかり持たなきゃ……我慢しなきゃ……。)」

 ティアナは問答無用で突き動かされる中で必死にそう考え、耐えた。

 しかし、不思議な事にティアナがユーノの突きを耐えようとすれば耐えようとする程、
ユーノの突きはそれ以上に激しくなって行く様な感覚を感じ、しかもどんどん気持ちよくなっていく。

380ティアナが飛んだ! 7 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:34:38 ID:FXgPlWzE
「(だっダメ……快感に負けちゃダメ……負けちゃダメだよ……でも……気持ち良いよぉ………。)」

 ティアナはもうこれ以上は耐えられない。ユーノの突きの前に屈し、どんどん何も考えられなくなる。
その時のティアナの顔はもはや…俗に言う所の『アヘ顔』と呼ばれる物になっていた。
そして、彼女の開かれた口から、この様な言葉が飛び出したのだ。

「とっ……飛んじゃ………飛んじゃ………飛んじゃうぅぅぅぅぅ!!」

 ティアナは快感の余り、意識が飛んでしまいそうな状況にまで追いやられていた。
世の中には苦痛と快感は表裏一体と言う物もいるが、まさにその通り。
ユーノのティアナに対する愛撫から来る凄まじいまでの快感はティアナの身体のみならず
その心さえも追い詰めてしまうレベルに達していた。

「飛んじゃ………飛んじゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「よし! 今だ! 飛んで行け!」

                   びゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 直後、ユーノはティアナの膣内に射精した。しかもただの射精では無い。
その射精の勢いによって、ティアナは股間から大量の潮を吹きながら
まるでペットボトルロケットの様に発射されたのだ!

 ユーノの下から大きく飛び上がったティアナはそのまま天井を突き破り、何処へと飛び去った。
そしてなのはは天井に開いた穴を見上げていた。

「わー凄い! ティアナが飛んだ!」

 こうして……ティアナは身も心も……飛んだ。

                     おしまい

381 ◆6BmcNJgox2:2009/12/23(水) 11:35:45 ID:FXgPlWzE
ティアナが飛べる様になるとするなら、こんな感じだろうな〜と思って作ったお話。

382名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 11:36:45 ID:e0.nACiM
ラストwwww

383名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 11:51:00 ID:cmXddjPE
ああ、こっちの飛ぶかぁ。とか思ったら最後wwwww
いや、素晴らしい

384名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 14:00:42 ID:P6BPhPZY
まったく貴方はwwwwwwww
っていうか先日のなのスカといい、既に様式美の域に達していると言わざるをえない



……………やっぱ最後吹いたwwwwwww
その発想はなかった。むしろしちゃいけなかった

385名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 15:05:04 ID:ZcC7Y7RU
空を自由に飛びたいな♪
ハイ、白い粉♪

くらいの格式美
GJでした

386名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 15:18:11 ID:OjFb4hfw
ラストwwねーよwww

387名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 17:36:02 ID:TJLoSlf2
初めてEPのSSで笑ったwwww
GJ!!

388名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 17:49:26 ID:QyQxupLo
笑いすぎて腹痛いwww

389名無しさん@魔法少女:2009/12/23(水) 22:16:07 ID:yPh0.FWM
アインハルト陛下のオナニーを見たい

390名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 13:11:31 ID:IidLFS4w
カンセル×ヴィータ希望

391名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 20:37:04 ID:8UknOGLc
・・・港湾特別救助隊のターセル主任の事を言ってるのだろうか?

392名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 21:11:28 ID:vpk20sMU
>>52
2期ラストとか漫画版でエイミイに散々茶化されてなかったっけ?本人も全く否定してなかったし

393名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 21:16:21 ID:vpk20sMU
>>392
ごめんなさい。思いっきり誤爆しました。携帯だと一度に全部見れないので、とんでもない所にレス付けました。大変申し訳ございません

394名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 21:59:38 ID:1yx4WAHU
どんまい!

395ザ・シガー:2009/12/24(木) 23:11:31 ID:oNTzfdZw
メぇぇぇ〜リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁースぅ!!

よう! エロパロの良い子エロい子の皆! 元気!?
俺! 俺だよ俺! ザ・シガー!
俺? 俺は超元気! もう死にたいほど元気!


で、エロパロのブラザーにプレゼント投下しにきたよ!
って訳で投下するよ!!


前々から書く書くと言ってたギン姉SS!
全部で三篇の第一回目、一応非エロ!
カプは本編で出番のほとんとないあの人!!

396ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:13:01 ID:oNTzfdZw
ギンガの恋路 (前編)



 さて、それは何年前の事だったか。
 少なくとも当時の彼女は、今の容姿からは想像できないくらいあどけなく、幼い少女だった。


「は、はじめまして。本日付けで入隊する事になりました、ギ、ギンガ・ナカジマ二等陸士です」


 声と共にぺこりと頭を下げ、ギンガはこれから自分の上司となる男に挨拶する。
 その頃の彼女の階級は今の陸曹ではなく二等陸士で、階級だけでなく顔も体もてんで子供だった。
 顔は14歳の少女の、年相応の童顔。
 身体も女性らしい凹凸なんて欠片もない、可愛らしいなだらかなラインを描いている。
 そんな少女に、上司であり先輩でもある男は笑顔で応えた。


「ああ、よろしくなギンガ君。俺はラッド・カルタス陸曹、今日から君の上司だ」


 鋭い眼差しを細め、カルタスは可愛らしい後輩に優しく笑った。
 それが二人の初めての出会い。
 ラッド・カルタスとギンガ・ナカジマの、初対面の思い出だった。





「ふう……」


 夕刻の茜の光が差し込む陸士108部隊のオフィスで、彼女の口から疲労を孕んだ息が漏れた。
 その日のデスクワークを終えた少女はオフィスチェアの上で、うん、と背を伸ばし、身をしならせる。
 背筋を伸ばした事で胸に実った二つの豊かな果実が強調され、その豊満なラインを見せ付けた。
 熟れたボディラインに、ふわりと揺れる蒼の長髪、そして麗しい美貌。
 108部隊に入隊してから3年を経て美しく成熟した、ギンガ・ナカジマという少女である。
 現在部隊が対応している捜査の事件資料を纏め、もはや後は家路に就くだけ。
 デスク上で人工光を放つディスプレイの電源を落とし、ギンガは周囲を見渡した。
 窓から差し込む光は既に陽光から月光に移りつつあり、同僚の姿はほとんど見当たらない。
 もう残っているのは自分だけだろうか。
 そう思った彼女の思慮は、だがすぐに裏切られた。


「あ……カルタスさん」


 名を呟いた先には、男がいた。
 ギンガの腰掛けた位置から数メートル先、他の席から少し距離を置いて鎮座する捜査主任の席に腰掛けた男。
 切れ長の瞳、ややこけた頬、僅かに白髪の混じった黒い髪をオールバックに整えた偉丈夫。
 陸士108部隊捜査主任と二等陸尉の肩書きを持つ男、ラッド・カルタスその人である。
 彼もまたギンガと同じく、捜査に関するデスクワークの残業をしていたのだろう。
 集中した面持ちで机上のディスプレイを見つめ、キーを叩いている。
 が、ギンガの呟きを聞いたのか、彼は視線を上げた。
 捜査官として何度も危地を潜り抜けた、奥に鋭さを内包した切れ長の瞳が少女を捉えた。
 一瞬胸の奥をざわめかせ、ギンガは背筋を伸ばす。
 それは緊張と、そしてそれ以上の甘酸っぱい感情からの反応だった。
 されど少女の胸の内など知らぬ男は、いつもの通りに冷静な言葉を紡ぐ。


「ギンガ、まだいたのか」
 
「あ、え……はい」


 カルタスの言葉に、ギンガはやや口ごもりつつ答える。
 差し込む夕の光の中でカルタスには分からなかったが、少女の顔はほんのりと朱色に上気していた。
 理由は、やはり彼の眼差しだろう。
 静かに、鋭く、人の心の奥底まで見透かしそうな辣腕捜査官の視線。
 何よりギンガにとっては、ことさら特別な視線だった。
 長時間のデスクワークで疲れた目を指でこすりながら、カルタスはオフィスチェアに身を預け、また言葉を連ねた。


「もう帰ると良い。随分遅くなったし、事件資料ももう随分纏まってるだろう?」

「え、ええ。そう、ですね」


 彼の問いに答えつつ、ギンガは手元でもじもじと指を遊ばせる。
 言葉を言い出そうとし、だが言い出せず。

397ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:13:42 ID:oNTzfdZw
 何度か口を意味もなく開き、少女はたどたどしく言の葉を紡いだ。


「あ、あの……良かったら一緒に帰りませんか? その……たまには一緒に夕食でも……」


 夕焼けの茜色に溶けそうなくらい頬を赤くし、告げたのは夕餉への誘いだった。
 込められたのは初々しく、そして甘い感情。
 淡い期待を孕んだ乙女の誘いを、だが男は冷たい響きで返した。


「すまん。悪いが俺はもう少し残って仕事を片付けるよ」


 鋭い容貌に眉尻を下げた苦笑を浮かべ、カルタスが告げたのは穏やかな拒絶。
 その言葉にギンガの表情が曇るが、しかし彼はすぐに視線をディスプレイに戻したので気付く事もない。
 豊かな胸の前で少女が手を固く握り、哀しげな色を瞳に溶かした事をカルタスは知らない。
 知る由もない。
 もはや目の前の画面しか見ぬ彼に、ギンガは何度か声を掛けようと口を開く。


「……」


 しかし、紡ごうとした声は出でる事無く。
 虚しく無音を刻み、乙女は今日もまた自分の想いを胸の内に仕舞いこみ、


「じゃあ……お先に失礼します」


 蚊の鳴くような声でそう告げてオフィスを後にした。
 




 茜色に燃え上がる夕焼けの光が沈み行き、紫色の残滓を残して夜へと移る空の下、ギンガは家路を歩いていた。
 その日の空が美しき情景を描こうと、頬を涼やかな風が撫ぜようと、乙女は物憂げな顔を俯かせている。
 理由はたった一つ。
 先ほどのカルタスとのやり取りである。
 彼女がああしてカルタスを誘ったのは、これが初めてではない。
 今まで何度も彼を誘っては二人の時間を作ろうと摸索してきた。
 結果は芳しくなく、成功した事はあまりない。
 その事を思い返し、少女は力ない溜息を吐いた。


「はぁ……やっぱり今日も駄目だったかぁ……カルタスさんったら、私の気持ちも知らないで……」


 と。
 ギンガは誰にでもなく、独り言を呟く。
 それは彼女が燻らせ続けている恋心のささやかな吐露。
 そう、ギンガ・ナカジマという少女は、ラッド・カルタスという男に恋をしていた。
 自分より一回り年上の、頼れる先輩であり上司でもある男に抱いていた尊敬の念が恋に変わったのは果たしていつ頃なのか。
 ギンガ自身にもそれは分からない。
 敢えて答えるならば、いつの間にか、だろうか。
 気付けば視線は彼を追い、胸の中には彼への想いが満ちていった。
 そして、少女が自分の中に芽生えた、甘く、淡く、切ない気持ちは恋だと気付いたのはつい最近。
 故にギンガはカルタスとの距離を縮めようと、今日のように彼を誘っていた。という按配である。
 しかし前述のように、彼女の誘いが成功した例は少ない。
 ラッド・カルタスという男は基本的に気さくで人当たりの悪い人間ではないが、どこか仕事をプライベートより優先する節がある。
 故に、先ほどのように仕事帰りの食事の誘いを断ることも少なくない。


「今度は休日に買い物でも誘ってみようかな……あ、でもいきなり二人でなんて……」


 顎先に指を当て、ギンガは歩みながら思慮を巡らせた。
 どうしたら彼と一緒の時間を作れるか、どうしたら彼に自分を意識させられるか、どうしたらこの想いを実らせられるか。
 今まで幾千幾万と繰り返してきて、そして今もまた幾千幾万とシミュレートする理想の仮想。
 されど成功した試しのない夢想。
 少し虚しいな、とは思う。
 だが、諦めよう、とは思えない。
 レールウェイの駅が近づき、ギンガは今度の休日にカルタスを誘う誘い文句を思案しながらバッグに手を入れた。
 サイフに入れたIDで駅の改札を通る為だ。

398ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:14:22 ID:oNTzfdZw
 が、しかしそこにはあるべき感触がなく、カバンに突っ込んだ彼女の指は虚しく空を掻いた。


「あ、あれ?」


 疑問符と共に何度もカバンの内を漁るが、目的の物は出てこない。
 カバンだけでなく服のポケットも探したが、結局サイフは見つからなかった。
 果たしてどこで無くしたのだろうか。
 少なくとも朝出勤する時は確かに持っていたし、使いもした。
 ギンガは記憶を遡り、そして思い出す。


「あ、そういえば……机の上に」


 オフィスで自分の机の上に置いたのを。
 
 



「あれ?」


 忘れ物を取りにオフィスに戻ったギンガが発したのは、疑問符の一声だった。
 理由は光。
 既に勤務時間を随分と過ぎた時分、誰もいない筈のオフィスは蛍光灯の白光が満ちていた。
 最後に残っていたのはカルタスだったが、彼が帰る際に消し忘れたのだろうか。
 自分のデスクの上にあったサイフをポケットに仕舞いながら、ギンガはそんな事を思う。
 が、その考えは次の瞬間、ギンガの視界に映ったものに否定された。
 オフィスの一角に鎮座するソファの上に、見覚えのある人間が寝そべっている。
 寝やすいように乱雑に制服のネクタイを緩め、上着をシーツ代わりに身体に掛けた男。
 ラッド・カルタスの姿だった。
 

「カルタスさん……」


 彼の名を呟き、ギンガはそっと近寄る。
 近くで見れば、カルタスは随分と酷い様だった。
 寝不足になる程仕事した為か目元には隈が浮かび、眉間には浅くシワまで刻まれている。
 服もずいぶんとよれよれで、もしかしたらこうやってオフィスで夜を過ごすのも初めてではないのかもしれない。
 彼の立てる寝息は静かだが、しかし深く連なる。
 仮眠のつもりがいつの間にか本気で寝入ったのだろうか、それとも最初からこうして夜を明かすつもりだったのか。
 それは分からないし、分かりようもない。
 ただ分かるのは、彼がこんな風に消耗している様を見て切なくなる自分の気持ちだけ。


「もう……こんな所で寝て、風邪でも引いたらどうするんですか?」


 その場で膝を突いてソファの上で眠る彼の顔を覗き込み、ギンガは問うた。
 もちろん答えを期待しての問いではなく、目の前の彼を見て自然と口から漏れた言葉だ。
 少女は手を伸ばし、眠るカルタスの髪をそっと撫でた。
 オールバックに整えられた髪には幾本か白いものが混じり、自分と出会ってからの月日を感じさせる。
 初めて会った頃は、確か全てが黒く染まっていた。
 いつしか全て白くなってしまうのだろうか、果たしてそれはいつか。
 そして、その時までに自分の想いは伝えられるだろうか。
 まったく無意味な妄想で、だがどうしても考えてしまう。
 彼の髪を無心に撫でながら、ギンガは堪らない切なさを感じた。


「まったく……人の気も知らないで……」


 自分が抱く恋心など知りもせず、仕事に明け暮れて疲れ果てた男へと乙女は呟く。
 そして、いつの間にかギンガは彼へと身を寄せていた。
 まるで寂しがり屋の子犬が主人に甘えるように、寒さの中で温もりを求めるように。
 窮屈そうに制服に包まれた膨らみを彼の胸板に重ね、吐息が掛かるほど顔を近づける。
 静かに脈打つ鼓動が、柔らかな乳肉を通してギンガに伝わり、しかし彼女の中では鼓動は逆に早まっていく。
 肌に伝わる彼の体温が、身体の芯まで響く彼の鼓動が、鼻腔に溶ける彼の匂いが。
 その全てがギンガの心を甘く蕩かせていく。
 もう、彼女はそれ以上自分の心を抑える事が出来なかった。
 カルタスの肩に手をやり、より一層と身を寄せていく。

399ギンガの恋路:2009/12/24(木) 23:14:53 ID:oNTzfdZw
 ゆっくりと、ゆっくりと。
 何度か理性が制動をかけるが、恋慕に脈打つ心がそれを砕き。
 そして、遂に身は重なる。
 

「んぅ……」


 少しかさついた男の唇に、艶やかに潤う乙女の唇が触れた。
 それは少女が初めて味わう口付けという名の愛撫。
 今までキスはおろか男性と付き合う経験もなかったギンガであるが、間近で感じた愛する男の鼓動と熱が普段の清楚さが嘘のように彼女を大胆にさせていた。
 夢や空想でしか交わさなかったファーストキスに、乙女は夢中で溺れた。
 唾液を貪る事も、情熱的に舌を絡ませる事もない、稚拙な愛撫ではある。
 されど、産まれて初めて味わう愛する男との口付けは甘美で、少女の心を甘く潤した。
 重ね、触れ合わせただけのキスは身じろぎする度に唇から淡い快感をもたらし、ギンガをどんどん蕩かせていく。
 最初は戸惑いを感じていた筈の心はいつの間にか、もっともっと、と彼を求めていた。
 求める心に身体は従順に応じ、身を重ねる。
 豊かで柔らかな乳房をより一層押し付け、唇を強く触れ合わせていく。
 抑圧され、秘され続けた感情の発露は容易に納まってはくれず。
 しばしの時、ギンガは我を忘れて、時を忘れて、口付けに没頭した。
 一体どれだけの時間を彼と繋がっていたのだろうか。
 唇を重ね続け、いつしか息苦しさを感じたギンガは、最初にした時と同じようにゆっくりと顔を離した。
 音もなく身を離し、少女は今まで瞑っていた瞳を静かに開く。
 そして、ギンガは見た。


「あッ……え?」


 しっかりと見開かれた、カルタスの切れ長の瞳がこちらを見据えるのを。



続く。

400ザ・シガー:2009/12/24(木) 23:18:29 ID:oNTzfdZw
はい投下終了!!

という訳で次回に続く! ギン姉の恋路や如何に!?
とりあえず年明けまでには全部投下したいね!!


てかもう、最近投下減ってごめんね!
一応書いてるよシコシコ!!
鉄拳最新話は40%、ヴィータメインのヤツは10%ってな具合で、投下できるクオリティと量に達しなくてな!

まあ書く書く詐欺にならないように頑張ります!
ちう訳でブラザー共よいクリスマスを!

メぇぇぇ〜リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁースぅ!!

401名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 23:20:23 ID:.nn774tg
プレゼントって寸止めですかぁー!

402名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 23:52:23 ID:D/vYQjHc
メリークリスマス!
独り身の聖夜にシガー兄貴のSSを読めてありがたや。
鉄拳続編も期待してるんで、がしがし書いてくれ!

403名無しさん@魔法少女:2009/12/24(木) 23:59:56 ID:77E8dqy.
年内ってあと一週間しかないじゃないですか!

でもGJ!

404Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/25(金) 00:03:32 ID:zlV808uk
メリークリスマス!!

>ザ・シガー氏
おおぅ、グッジョブ。続きを楽しみにしてますよ。

さて、早速投下したいんですが大丈夫ですかな?

405名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:07:06 ID:1wAGMS8A
おkおk

406ザ・シガー:2009/12/25(金) 00:07:31 ID:awuKqnTU
れっつごー!!!

407Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/25(金) 00:08:24 ID:zlV808uk
ではでは、行きますよ〜。

・非エロ
・ユーなの短編集シリーズ
・ヴィヴィオ大活躍

408バカップル看病日記 1/15:2009/12/25(金) 00:08:57 ID:zlV808uk
──笑っていてよ、僕だけの天使──

「お疲れ様でしたー」
「はい、お疲れ様」
日も早く落ちるようになった宵の口、なのはは新人達の教導を終えて、家路に着こうとしていた。
ロッカールームでフェイトと会い、世間話なぞをしている間に、それは起きた。
「くしゅっ」
「ん、なのは、風邪でも引いた?」
小さなくしゃみ。
その時は、ただそれだけだったが、これが後に大騒動を起こすことになろうとは、なのはは知る由もなかった。
「ううん、誰かが噂してるだけじゃない?」
「そう、それならいいんだけど」
フェイトの中に妙な違和感が生まれたが、それが何なのかは気付かなかった。
なのははもう一度だけくしゃみをすると、厚手のコートを羽織って管理局を後にした。

「ただいまーっ!」
もう完全に愛の巣と化したアパートに戻ると、ちょうどユーノとヴィヴィオが食事を作っているところだった。
開口一番ユーノに抱きつくと、なのはは暖かなその顔に頬擦りする。
「な、なのは、早く手を洗ってきなよ」
「うん〜、でもあなたの成分を取る方が先なの!」
横でヴィヴィオが鍋を掻き混ぜている。見えぬ聞かぬを決め込んでいるようだった。
なのはは、ユーノから一瞬でも離れたら露と消えてしまいそうな顔を作って、洗面所に向かった。
そういえば、ヴィヴィオは今日で学校がお休み。明日からは冬休みだ。
日本では明後日は旗日だが、ミッドチルダに天皇などいるはずもなく、単なる平日であり、クリスマスもまた然り。
週末はどう過ごそうかな、となのはは心を浮かせながら考えていた。

一方のヴィヴィオは剥き終ったジャガイモの皮ほども興味を示さず、料理の味付けを細かく作業に精を出していた。
というか、どこの誰だって半年以上隣でいちゃいちゃされたら誰だって無感動になる。
万年新婚バカップルは当事者だけなのだ。
手を洗って戻ってきたらしいなのはが、早速ユーノにひっついてキスの嵐を浴びせている。
まんざらでもないユーノを見ているのも、ベタベタしているなのはを見るのも、実は好きなのだけれど、
それを認めるのはなんだか何かに負ける気がした。何に負けるのかは別問題としても、ちょっと悔しい。
何が悔しいのやら、ヴィヴィオにはまだ分からないのだった。
学校の皆でワイワイと騒ぐ、二日後に迫ったクリスマスパーティーが何よりも楽しみだった。
なのは達が持ち込んだ風習が真っ先に根付いた学校は、ザンクトヒルデが最初かもしれない。

***

夜。
なのはがユーノとベッドに入り、しばらく経った頃。
二人は雨あられとキスを繰り返し、ユーノはなのはのシャツに手を掛けていた。
「あっ……あんっ、あなたぁ」
「なのはの恥ずかしいところ、もっと見せて」
「やぁっ、ふぁっ……ふぁ」
ユーノはなのはの肢体に夢中で、その顔がいつもより更に上気していることに気がつかなかった。
乳房を優しく掴み、手のひらで丸く転がしていると、なのははいつになく強い力でユーノを抱きしめてきた。
「ん、なのは、今日は積極的だね?」
「や、いや……」
腕を解くと、ユーノは全身をくまなく愛撫する。
首筋に、頬に、二の腕に、背中に、ヘソに、太ももに、キスの嵐を浴びせていく。
そして、いよいよと唇にキスしようとした時、なのはは妙な顔を作った。

409バカップル看病日記 2/15:2009/12/25(金) 00:09:29 ID:zlV808uk
「ふぁ」
「ふぁ?」
すっぽ抜けた声に、ユーノは一瞬動きを止める。
それがいかなかった。
「ふぁ、ふぁ、ふぁ……ふぁっくしょん!! ……あっ、あなた、ごめん……なさい?」
ユーノの顔は洟やら涎やらですっかりコーティングされていた。
別に構わないよ、とティッシュを取って顔を拭いたユーノだったが、そこで初めてなのはが何かおかしいことに気付いた。
視線が宙を浮いている。顔の紅みも尋常ではない。
ゆらり、ふらりとなのはは身体を揺らすと、ドッと倒れ込んだ。
「ふにゃ〜? あやや、ユーノ君が、三人? どういうこと〜……分身〜?」
ユーノは慌ててなのはに下着パジャマを着せると、大急ぎで部屋を飛び出した。
電話に向かう途中、トイレに行くヴィヴィオと鉢合わせしてしまい、「パパ、どうして裸なの?」と疑惑を植え付けられてしまった。

「ごほっ、ごほっ、くしゅっ、くしゅん!」
「ごっ、ごめん。なのはが体調悪いだなんて、全然気付かなかったから」
「ううん、いいの。わたし、風邪引くなんて凄く久しぶりだったから、全然分からなかった……」
熱は、8度7分。
医者を呼んで診て貰ったが、過労が重なって抵抗力が落ちたところに丁度誰かから貰ってしまったようだ。
診断は、単なる風邪。但し、原因が原因なだけに、二三日は絶対安静を命じられた。
薬は五日分を処方され、ユーノが支払いを済ませると、帰りがけ、医者は白衣をさっと翻らせた。
「余計なことは言わないけどね、ちゃんと奥さんのこと、見てやんないと。彼女はいつも無理するんだろう?
そうそう、もう一つ。君も数日休んだ方がいい。疲れているようだし、下手に看病していると感染るよ」
医者は帰った。後ろで成り行きを見守っていたヴィヴィオが、くいくいとユーノの裾を引っ張る。
振り向くと、ヴィヴィオは今にも泣き出しそうな顔で、鼻を赤くしていた。
「ね、ママ大丈夫だよね? パパも、寝込んじゃダメだよ? ヴィヴィオ、いっぱい頑張るから……」
ユーノの目頭が熱くなったのは、その健気な姿だけではないだろう。
微笑みを作って、ヴィヴィオの頭に手を置き、ぽんぽんと撫でた。
「大丈夫だよ。無敵のママが、風邪くらいで負けちゃう訳がないよ。でしょ?」
「……うんっ」
ヴィヴィオはごしごしと目を擦り、グッと気合を入れた。本当に強い子だと、改めて感じる。
なのはは早速薬を飲んで、もう寝ているだろう。ユーノはヴィヴィオの手を引いて、ベッドに戻った。
娘の身体を抱いていると、ヴィヴィオは頭をくいと逸らしてユーノの顔を見上げた。
「私、今日で学校終りなの。明日から冬休みだから、洗濯とか、料理とか、全部任せて!
パパも、ママも、明日からはゆっくりしてて」
街灯の薄明かりで見るヴィヴィオの表情からは、鋭い決意が宿っていた。
色違いの両目から発せられる光は、なのはとまったく同じだ。
何年も見続けていた、一度決めたらまっすぐにどこまでも突き進む少女は、いつしか母親になり、
娘にしっかりと受け継がれていた。
そして、こうなると、絶対に引かないということも、ユーノはよくよく熟知している。
「ありがとう、ヴィヴィオ。それじゃ、お願いしようかな」
「うん!」
自分の強い想いが通じたヴィヴィオは、すぐに目を閉じ、あっという間に寝息を立て始めた。
ユーノもごろりと寝返りを打つと、枕に頭を押し付けた。

翌朝、真っ先にユーノがしたことは、クロノに電話をかけることだった。
「おはよう、クロノ。元気にしてる?」
「ようやく航行から帰ってきた僕に、よくまあそんなセリフを吐けるな……」
不機嫌そうなクロノの声は、どこかに安堵が含まれている。
きっと、聞き慣れた声を久しぶりに耳にしたからだろう。
「で、今日は朝っぱらから何の用なんだい。僕は早くエイミィと子供たちの顔を見たいんだ」
「あー、うん、その前に一仕事して欲しいなあって」

410バカップル看病日記 3/15:2009/12/25(金) 00:10:14 ID:zlV808uk
受話器の向こう側で、露骨に舌打ちをするのが聞こえた。
だが、これもまた旧友とよくやるやり取りの一つだ。ユーノだって、無限書庫で仕事を貰う時、同じことをする。
『で、何?』とぶっきらぼうに聞くクロノに、ユーノは言った。
「僕となのはの有休を取って欲しくてね。書庫で今日、大規模な搬入があるはずだから、
僕一人で申請してもどうにかなりそうにないんだ」
クロノは「ああ」と合点の行った様子を見せた。
どうやら、その搬入はクロノの仕事で発生したもののようだ。
「それ自体はこっちの人員を寄越すから構わないけど、一体全体どうして今日なんだ? なのはの誕生日だったか?」
「いや、なのはは3月でしょ……」
ユーノは掻い摘んで状況を説明した。
風邪で倒れたこと、ユーノ自身も休養が必要だと医者に警告されたこと。
そして何より、今日からヴィヴィオが冬休みに突入してしまったこと。
「管理局のエース・オブ・エースが風邪……ねえ。なのはもやっぱり人間だったってことか」
しみじみと、クロノが思い出す。十年も前に倒れてから、そういえば流行病や怪我で動けなくなったことはない。
それだけ体調管理がしっかりしていたのだから、今このタイミングで倒れたのはやはり不思議に思える出来事なのだろう。
「まあ、いいよ。僕が何とかしておく。でも、その前に申請を出しておけよ。
お前より先に書類出すなんて、筋が通ってないんだから」
「分かってるよ。それじゃ、お願い」
「いいさ。そっちも久しく家族で過ごしてないんだろう? 水入らずで過ごせよ」
「君もね」
受話器を置くと、味噌汁の香りが漂ってきた。
時計を見ると、大分長電話をしてしまっていたことに気付く。もう、ヴィヴィオは起きだして早速朝ごはんを作っているようだ。
「あ、パパ、おはよう。今日は玉子焼きだよ」
味噌汁の鍋を見ると、色とりどりの野菜が入っていた。
柔らかくなるまで弱火でじっくりやれば、なのはでも食べられるようになるだろう。
別の鍋には、コトコトと煮られるおかゆ。これまた、なのはのお腹には優しいだろう。
本当に気が利く。ユーノが料理を作っていたら、なのはは食べられなかったかもしれない。
「パパはテレビでも見てて。私が全部やるから」
キラキラと輝く瞳。誰かのために役に立てて、活気が沸いている。
ユーノは「ありがとう」と言って、居間に戻った。が、ふと思い立って、なのはの眠る寝室へと向かった。

なのはは疲れがよほど溜まっているのか、起きる気配がない。
顔はまだ赤く、息も浅く多い。
枕に触れると、随分と熱を持っていたので、氷枕を取ろうとキッチンに戻った。
ヴィヴィオが料理に夢中になっている隙を上手いこと突いて、氷枕とタオルを取りあげる。
寝室に戻ると、なのはは寝返りを打っていた。
こうして見ると、なのはは決して完全無敵の完璧超人ではなく、ただ一人の女性なのだと気付かされる。
なのはを起こさないよう、慎重に頭をどけると、枕の上に氷枕を敷いて、また元に戻した。
──と、ここでなのはが起きてしまった。ぱちぱちとまぶたをしばたき、ユーノの顔を見ると、ふにゃりと顔を綻ばせた。
「うわぁ、ユーノ君がいっぱいー……幸せー」
完全に夢現のようだ。目が虚ろで、本当にユーノをしっかり捉えているのか分からない。
というか、人が何人にも分裂しているのは、寝起きだからなのか、熱に浮かされているからなのか。
「なのは、なのは……大丈夫?」
こうなったら目をハッキリ覚まさせて、何か食べさせた方がいい。
肩を軽く揺すってやると、むっくりと起き上がって、左右をキョロキョロと見た。
そしてまた横になると、布団を被って寝た。
「ちょ、なのは! 起きて、起きてよ!」
ゆさゆさと、さっきよりも少しばかり強い力で揺すってやると、なのははようやく目を覚ましたようだった。
ユーノの姿をまじまじと見た後、ガバっと抱きついてきた。
でもそれは、いつもより弱々しくて、覇気が欠けていた。

411バカップル看病日記 4/15:2009/12/25(金) 00:10:54 ID:zlV808uk
「おはよう〜、あなた〜……待っててね、今ご飯作る……から」
鼻声になってしまい、やや聞き取りにくい。
早速ベッドから起き上がろうとするなのはを、ユーノは肩を押さえて差し戻した。
キョトンとしているなのはにユーノは優しく語りかける。
「いい、なのは、君は風邪を引いてるんだ。昨日医者にも言われたでしょ、『安静にしていなさい』って」
それでやっと昨夜のやり取りを思い出したのか、シュンと項垂れた。
でも、だって、あらゆる言い訳を考えて、何が何でもユーノのためにご飯を作る気だ。
とても嬉しいことなのだが、かといってそれを許す訳にはいかない。
ユーノはなのはをしっかり寝かしつけると、自分の鼻を指差した。
「なのは、何か匂いしない?」
「え? んー……鼻が詰まっててよく分からない」
ユーノがティッシュを差し出し、洟をかませると、なのはは台所から漂ってくる匂いに気付いたようだ。
ヴィヴィオが料理を作っているのだと説明すると、安心と不安が複雑に入り乱れた表情を作った。
「大丈夫、ヴィヴィオ? 包丁で指切ったりとか、してない?」
「心配性だね、なのは。たまにヴィヴィオは僕らのために料理を作ったりするじゃないか」
「それは、そうなんだけど」
風邪で、親バカまで加速してしまったのか。
昨日の夜と、今日の朝と、ユーノはヴィヴィオの強さを見た。
だから、安心して任せられる。よもや指を切っても、それくらいなら舐めておけば治るのだ。
熱で上気したなのはの髪をそっと掻き上げて、額にそっとキスをする。
「もうすぐ出来上がるみたいだから、なのはは待ってて。僕は管理局に休みの連絡を入れてくるよ」
ドアを閉めてユーノは部屋に戻り、端末を起動した。
有休申請をして、クロノに短いメールを打って、司書達に今日は出られないかもしれないと伝えて──
そこで、はたと不思議な感覚に襲われた。

なのはとの出会いは、傷つき、小動物の形にしかなれなかったユーノを、なのはが拾ってくれたからだった。
初めての頃はどうすることもできず、ひたすらなのはのサポートに回ることしかできなかった。
でも、いつしか、「サポートに回ること『しか』」できなかったのではなく、「サポートに回れる」自分に、誇りを持てるようになった。
管理局に入局して、それぞれが自分の目指す道を歩み始めた頃、なのはと一緒にいられる時間が減っていった。
その寂しさが、単なる幼馴染のものではないと気付いたのが、なのはが堕ちてリハビリを終えた、丁度同じ時期。
時間の流れは早いもので、六課ができて、解散して、一緒になって、プロポーズをして、結婚式を挙げて……
思い返すと、随分と沢山のことがあった。でも、なのはを好きになってから、こんなにも弱い姿を見るのは、初めてだった。
いつだって気丈に振舞って、弱さを誰にも見せないようにして、ユーノやヴィヴィオにさえも、
「良妻賢母」であろうと努め続けていた節がある。

遂に、恩返しをする日が来たようだ。
なのはが弱っている今こそ、あの時のように、なのはを助けるのだ。
ユーノには、それが使命であるかのような気さえした。
『新着メールです』
端末から聞こえてくる、そっけない人工音声。
それを開くと、簡潔な一文が記されていた。
「君の有休はだぶついている。一週間ほど休暇を取る事を命じる。
尚、なのは=高町=スクライアの有休も、同様の理由により休暇を命じる。以上」
ユーノは思わずガッツポーズを決めた。
こんなにもタイミングの良い出来事が、人生に何度あるだろうか。
これから一週間と言うと、面白いことにクリスマスを挟む。
なのはとはやてが持ち込んだ文化は、じっくりとではあるがミッドチルダの地にも根づき始めている。
その証拠に、一部の商店街には特別なイルミネーションを飾って、幻想的な街並みとなっていた。
雑誌にも特集が組まれたり、地球が管理外世界であることを、ふとした瞬間に忘れそうになってしまう。
ユーノは立ち上がって居間に戻ろうとすると、ちょうどドアを開けたヴィヴィオと鉢合わせた。

412バカップル看病日記 5/15:2009/12/25(金) 00:11:26 ID:zlV808uk
「パパ、ご飯できたよ。食べよ?」
娘の功労に頭を撫でてあげると、気持ちよさそうにヴィヴィオは笑った。
ヴィヴィオはユーノの腕を取ると、中性的なその手のひらを撫で返してきた。
「パパの手、大きくてあったかくて、大好き!」
精一杯に背伸びをして、頬に軽いキスをすると、愛娘は可愛らしく髪をなびかせた。
食器の準備から何から、全部やってくれるヴィヴィオ。
これ以上楽なことはないが、同時にやるせなさも感じる。
でも、せっかくの努力に水を差すこともない。
ユーノは「ありがとう」と言って、お盆におかゆや味噌汁を載せてなのはの寝室へと向かうヴィヴィオを見送った。

***

ヴィヴィオが食事をなのはの部屋に行くと、いつもとは全く違う様子の母親がそこにいた。
窓から見える雪景色をぼんやり眺めながら、人が部屋に入ってきたことに気付かないようだった。
「ママ、ご飯だよ」
びくっと反応し、振り返るなのは。
ヴィヴィオの姿だと知って安心すると、なのはは「おいでおいで」とヴィヴィオを手招きした。
ベッドの上に盆を置くと、ユーノにやって貰ったように、頭を撫でてくれる。
「えへへ」とはにかむと、なのははできるだけ穏やかな顔を作って言った。
「ありがとね、ヴィヴィオ。でも、感染っちゃダメだから、早くパパのところに戻ろうね」
こんな時でも、絶対に弱い顔を見せようとしないなのは。
笑顔に陰りがあるのは、決して熱だけではないはずだ──今日の仕事だとか、ヴィヴィオに家事をさせることだとか、
いっぱい心配事があるような笑顔だった。
「大丈夫だよ、ママ! 私、こう見えてもちゃんとお洗濯もお料理も、何でもできるんだから!」
とてとてと居間に戻ろうとして、ふと思い立ってなのはへと振り向いた。
こんな時、なのはがどんなことをするのか、まだ小さいヴィヴィオにも分かる。
「食べ終ったら、絶対に呼んでね! ママはベッドから出ちゃダメだよ!!」
しっかりと厳命して、部屋を後にする。
ドアを閉じる瞬間、なのはが小さく「ありがとう」と言っていたのを、ヴィヴィオは聞き逃さなかった。

ユーノとゆっくりした食事を取って、子供向けの番組を一緒に見ていた。
膝の間にちょこんと座るのが、ヴィヴィオの定位置。
画面の中で繰り広げられる、ぬいぐるみのキャラクター同士が織りなす軽妙な掛け合いに食い入って眺めていると、
寝室からなのはが「ヴィヴィオ、お願いー」と頼む声が届いてきた。
ばっちりの時間に番組が終ったので、ヴィヴィオはユーノの膝から離れると、なのはの寝室に向かった。
「ママ、ちゃんと食べられた?」
聞きながら、盆の上を見る。八割方、食べているようだ。
なのはは申し訳なさそうに「ごめんね、ヴィヴィオ」と謝ったが、とんでもない。
ヴィヴィオは「お粗末さまでした」と笑顔で言って、食事を下げた。
部屋を出ようとドアを開けた瞬間、後ろからなのはが呼んだ。
「どうしたの、ママ?」
ヴィヴィオは振り返り、なのはのところに戻る。続きを言おうとしたなのはは、ゴホゴホと咳を出した。
それでも、なのはは何かを言おうとして、痰の引っかかった喉で掠れ声を出した。
「あのね、ヴィヴィオ……お買い物、行ってきてくれないかな……もう、冷蔵庫空っぽでしょう?」
「それならお安い御用だよ! 栄養のつくもの、いっぱい買ってくるね!」
「お願いね、ヴィヴィオ……」

413バカップル看病日記 6/15:2009/12/25(金) 00:11:58 ID:zlV808uk
実のところ、朝食を作っている時点で、昼食以降の食材が絶望的であることに気付いていた。
それでも、なのはに、ママに頼られることがとてもとても嬉しくて、ヴィヴィオは胸をどんと叩いた。
「大丈夫、ヴィヴィオにお任せ!!」
こうして、ヴィヴィオは初めて一人でおつかいをすることになったのだった。

***

「いってきまーす!」
エコバッグに、小さなポシェット。相棒のセイクリッドハートも忘れない。
勢いよく飛び出していったヴィヴィオを、ユーノは玄関で見送った。
「車とかに気をつけるんだよ。あと、帰りが遅くなりそうだったらちゃんと連絡してね」
「あい!」
はじめてのおつかい。
どんな冒険が待っているのか、ヴィヴィオは道すがらずっとワクワクしていた。
訪れたのは、スーパー。冬休みに突入したミッドチルダでは、主婦層の他にも一人暮らしの学生なんかが買い物に来ていた。
が、ヴィヴィオのような子供が一人でいるのは、かなり珍しい光景。
カートを一人で押して、生鮮食品のコーナーへ行く。
「うーん、お魚……野菜……お肉……どれをメインにしようかなぁ」
全体的に安めなのだが、これといって魅力的な特売の商品はない。
それでいて、風邪っ引きに優しい料理。
思えば三人が家族になってから風邪を引いたのはヴィヴィオくらいなもので、
その時は平熱でくしゃみが止まらなかっただけだから、割と普通の食事だった。献立を考えるのは中々難しい。
「今日は何にする?」
その時、学生二人の声が後ろで聞こえた。きっと年上の人なら何か知っていると考え、聞き耳を立てる。
すると、結構使い物になるヒントを得ることができた。
「料理なんてものはね、フライパンか鍋にぶちこんで火を通せばいいのよ。
高級料亭ってんでもあるまいし、それで何とかなるってものよぅ」
「んー、それじゃ鍋モノにするか。今日の夜からクリスマスまでずっと雪だって予報で言ってたし」
「え、そうなの? それじゃ、そうしましょ。今夜はあったかくしないと……」
鍋! そうだ、その手があった。幸いにも、元六課のメンバーが何人か集まることの多いスクライア家では、
そこそこ大きな土鍋が置いてあるのだ。
思い立ったが吉日、ヴィヴィオは早速材料を買うために奔走した。
「えーっと、シュンギクでしょ、ニンジンに、白菜、キノコ……あ、豆腐も」
しかも、鍋となると皆面白いようにぱくぱく食べる。10人分買って5人で空けるなんていつものことなのだ。
それに、もし余ったとしても、次の日に残りを温めつつ、ご飯を投入すれば、あっという間に雑炊の出来上がり。
実に優れた料理ではないか。
野菜を一通りカゴの中に入れると、次は精肉のコーナーへと向かった。
体力の落ちている時は、スタミナの付くものに限る。
豚肉を買って、ヴィヴィオは更にカートを押し進めた。

そして、肝心要、スープの種だ。
今日び、○○スープの元、とかいう商品は山のようにある。
ざっと見ただけでも、寄せ鍋、トマト鍋、チーズ鍋、キムチ鍋、ちゃんこ鍋……ちゃんこ!?
「なに……これ? どういう意味?」
ラベルを良く見ると、管理局でも地球寄りの品目を取引している企業の名前が書いてあった。
いつか、はやて辺りが口に出していた気がする。
意味は分からず仕舞いだったか、パッケージの写真から推測するに、肉や魚など、タンパク質が沢山入っているようだ。
妙に惹かれるものがあったが、なのははそんなに沢山タンパク質ばかり摂取できる身体ではないので、別なものを選ぶ。
といっても、特徴がよく分からないので、一番沢山並んでいてポピュラーそうな、寄せ鍋の素を使うことにした。
さて、いよいよ会計──という時になって、ヴィヴィオははたと困った。

414バカップル看病日記 7/15:2009/12/25(金) 00:13:19 ID:zlV808uk
「こんなに沢山、持って帰れないよ……」
何も、今日の分だけではない。向こう三日分くらいは買い込んである。
普段でもこの量だが、それはヴィヴィオが軽い袋を抱え、
なのはとユーノがそれぞれ一つずつ重いのを持っているからこそ、家まで持って帰れたのだ。
ヴィヴィオ一人では、ちょっと無理。
どうしようかどうしようかと、レジを目の前にしてひたすら悩んでいると、レジ係のお姉さんが寄ってきた。
「どうしたの? パパとママは?」
しゃがんで、少女と同じ目線に来る。優しそうな顔に、ヴィヴィオは説明した。
ジェスチャーを交える度に、腰のポシェットがふさふさ揺れた。
「えっとね、ママが風邪引いちゃって、パパも家で『あんせー』にしてなきゃいけなくて……
だから、ヴィヴィオ、一人で買い物に来たの。でもね、いつもはパパとママが袋を持っててくれたから、
今日はヴィヴィオ一人だから、こんなに沢山、持って帰れないの」
話を聞き終ると、お姉さんは解決策を知っているようだった。
まずはレジに案内され、会計を済ますように言われる。
カゴを持ち上げて渡すと、お姉さんはテキパキとバーコードを読み取っていった。
告げられた値段に、ヴィヴィオはポシェットからサイフを取り出し、預かってきた紙幣を渡す。
お釣りを貰って、材料をエコバッグに詰めて、買い物カゴごとよたよたと持ち上げた時、その重さがフッとなくなった。
お姉さんが持ち上げてくれたのだ。
「こっちよ、ヴィヴィオちゃん」
一瞬、ヴィヴィオはどうしてお姉さんが自分の名前を知っているのか不思議に感じたが、
良く考えてみればさっき自分で一人称に使っていたのを思い出した。
カゴを持つお姉さんの後ろをとことこついて行くと、
電子レンジと似たような、買い物カゴくらいなら楽々入る大きさのものが目の前に現れた。
「これは、転送サービスと言いまして、ココからヴィヴィオちゃんの家までひとっ飛びに荷物を送ってくれるものなのよ」
ヴィヴィオは飛び上がらんばかりに喜んだ。これがあれば、どんな重い荷物でも簡単に運べる!
ただ、そのためには使用料が必要だと聞いた。
住所を聞かれ、たどたどしくもアパートの部屋番号まできっちりと答える。
お姉さんはそれを打ち込み、転送装置の扉を開けてカゴごとその中に押すと、しばらくして扉の右側に値段が表示された。
「ここに書いてあるだけのお金が必要なんだけど……ヴィヴィオちゃん、持ってる?」
「うんっ!」
お姉さんにまた紙幣を一枚渡すと、彼女はそれを投入口に入れ、そして出てきたお釣りをヴィヴィオに返した。
がたがた、ぴーぴーと如何にもな機械音が聞こえた後、また静かになった。
扉をもう一度開けると、カゴいっぱいに入っていたはずの材料が、一式全部なくなっていた。
「これでもう大丈夫よ。お買い物偉いね、ヴィヴィオちゃん」
本日三度目。頭を撫でられて、ヴィヴィオはふにゃふにゃになった。
でも、パパやママ──大切な人からの『なでなで』の方が、もっと気持いいかな、とも思ったりした。
「バイバーイ! お姉さん、ありがとー!!」
スーパーの出口でお姉さんに元気いっぱい手を振って、ヴィヴィオはスーパーを後にした。
家に帰って、昼ご飯を作って、それから洗濯をして、掃除もして──まだまだ、やることは沢山ある。
さっきまでよりも、もっと身軽になった気がした。
ヴィヴィオはスピードを上げて走り、両親の待つアパートへと急いだ。

「ただいまーっ!!」
帰り道、一歩ごとに力が湧いてくるようだった。
時は正午よりちょっと前。料理を作るにはぴったりの時間だ。
ユーノは書斎から出てきて「おかえり、ヴィヴィオ。買い物の荷物、全部届いてるよ」と、ヴィヴィオをキッチンに案内する。
そこには、さっき目の前から忽然と消えてなくなったはずの材料が、一つ残らず置いてあった。
「すごい、すごーい! あのねあのね、電子レンジみたいなのに入れて、お金を入れたらね、パッてなくなっちゃったの!!」
身振り手振りで示すと、ユーノは相槌を打ちながらその話をじっくりと聞いてくれた。
でも、ユーノはもう大人だから知っているのだろうと思い返したのは、ずっと後になってからだった。
ヴィヴィオはお気に入りのエプロンを身に纏い、子供用の台に上って、早速料理を始めた。

415バカップル看病日記 8/15:2009/12/25(金) 00:14:17 ID:zlV808uk
線切り、みじん切り、短冊切り。
包丁の使い方が上手いと、調理実習でも先生に褒められた。
もっと上手い人はいたけれど、何せ家に帰れば翠屋直伝の腕前があるのだ。
いつか、誰よりも上手になって、将来は料理を作る仕事に就いてみたい。
そして大好きな人達を招待して、美味しい料理をいっぱい食べて貰うのだ。
ルンルン気分で野菜炒めを作り、それに合わせて野菜スープ。
味付けを確かめるために軽く味見をする。
「うん、ばっちり!」
なのはの部屋に行くと、何だかもう早速動き出しそうな感じでうずうずとベッドの中で寝返りを打ち続けている。
熱を測ったら、8度0分。どうして積極的になれるのか、さっぱり分からない。
せめて今日くらい、医者の言うには明日明後日まで、じっとしていればいいのに。
「まま、ご飯できたよ。持ってくる? それとも、テーブルまで行く?」
もう、ダイニングくらいなら歩いていってもいいのだろうか。
流石にトイレくらいは歩かなければいけないし、何より本人がベッドから出たがっている。
なのははむっくりと起き上がって、ヴィヴィオの顔をまじまじと見てきた。
「ママ、そろそろ眠くなくなってきたんだけど……」
ケージから出してくれと動き回るハムスターそっくり。
ヴィヴィオは頷いて、手を差し出した。
「一緒に食べよ、ママ」
こうして、お昼は三人で食卓を囲むことになったのだった。

「はい、なのは。あーん」
「あーん……」
──忘れてた!!
この夫婦、バカップルだった!!
去年、構って貰えなくて部屋に閉じこもっていたのがバカバカしい。
なのははここぞいう時にユーノに甘えまくっているし、ユーノもまた、それを楽しんでいるようだ。
袖が触れる距離の隣でいちゃいちゃしている横で、一人もくもくと箸を動かすヴィヴィオ。
いつものこととはいえ、何となく味気ない。
それでも、今日は寛大になれる。だって、大好きなママが、寝込んでしまっているのだから。
まだ顔の真っ赤ななのはに、
「んーっ、あなたにご飯食べさせて貰うと、百倍に美味しくなるよ! ありがとう、あなた」
「ううん、僕こそ、千倍一万倍にしてあげられなくてごめんね」
「ごめんだなんて、そんな……嬉しいよ、すっごく! とっても! ね、だから、もっと食べさせて」
「もう、甘えんぼさんだな、なのはは。はい、あーん」
「あーん」
終始、この調子である。こんな日常を見せつけられては、ヴィヴィオだって彼氏が欲しくなる。
だが困ったことに、リオもコロナも女の子である。確かに共学のはずなのに、何故か男っ気ゼロ。
一体どういうことなのか、神様がいたら聞きたいものだ。
「あ、ほら、なのは。口が汚れてるよ。動かないで」
「んっ……ありがとう、あなた。本当にあなたって、細かいところまで気が利くんだね。見直しちゃった」
「なのはだって、見れば見るほど可愛いよ。惚れ直しちゃったな」
「あんっ、もう」
何だろう、この、親一人子二人というか、むしろヴィヴィオだけが親で他二名が子供と表現した方がいいのか。
甘えっぱなしのなのはは、まるで子供のようで、ヴィヴィオよりもまだ甘えんぼさんなのだ。
ただ、今までのことを考えてみると、それも仕方無いのかもしれない。

416バカップル看病日記 9/15:2009/12/25(金) 00:16:04 ID:zlV808uk
だって、二人はずっと、子供の頃から仕事を頑張っていたのだ。
勉強して、遊んで、魔法の練習もして、なのは達がいた世界には魔法がなかったのだから、さぞかし苦労したことだろう。
ユーノとのことだって、そんな日常に追われていたら恋なんてとてもできない。
管理局に入って、何年も経って、ようやく落ち着いた頃にユーノと付き合い始めた。
その頃にはもう、ヴィヴィオは会話の輪に入っていたから、そこから先のことは容易に予想が付く。
『子供らしい』子供時代を過ごさず、『恋人らしい』恋をしていなかったのだから、
今になってあの頃を謳歌し、今になって大恋愛。
頭ではもちろん納得が行くが、かといって別に娘の眼前でやらなくてもいいだろうに。
「ヴィヴィオも、はい、あーん」
むすっとしていたのにようやく気付いてくれたらしく、ユーノがレンゲを差し出す。
いやいやちょっと待て、それは風邪っ引きが口を付けたレンゲだろう、感染させる気か。
バカップル同士なら移ったところで看病関係が逆転するだけだが、娘にまで火の粉を回さないで欲しい。
「同じ食器使うと、風邪って移るんだよ?」と、穏やかに言う。
既に、なのはの前から椀は消えている。全部ユーノに「あーん」をして貰う気満々だ。
別に構わない、構わないけれど、ものごとには限度というものがある。

……しまった。
『なのは・T・スクライア』に限度など初めから無かった。

「大丈夫です、私はちゃんと一人でご飯を食べられます!」
本当なら二人を放っておきたいところだが、アパートは狭い。
ダイニング以外で食事ができる場所は事実上ヴィヴィオの部屋しかないのだ。
流石にそれは、ただでさえ少ない味気をゼロにしてしまうだろう。
それよりは、このバカップルを見つめていた方がまだいい。
改めてよくよく考えてみると、これはこれで漫才を見ているようで面白い。
チラチラと横目で見ながら、二人の様子を見守る。
両親とも、ここ最近見たこともないほど幸せそうな顔をしていた。
だったら、それはそれでいい。風邪の日くらい、ゆっくり過ごす権利は誰にだってある。
納得と諦観が複雑に入り乱れて、ヴィヴィオは箸を動かした。
そういえば、もう随分と箸使いに慣れたな、と時の流れを感じた。

***

薬を飲んで、またなのはは寝室へ戻った。
ユーノは手持ち無沙汰なようで、本を読んだり、新聞に目を通したりしている。
ヴィヴィオはその間に洗濯を済ませ、小さなベランダいっぱいに服を干した。
太陽の光をいっぱいに浴びて、小春日和の暖かさはすぐに洗濯物を乾かしてしまうだろう。
キラリ。弱くも明るい光がヴィヴィオの目を打って、思わず手をかざした。
雲がゆっくりと西へ流れていく。明日はさて、晴れるのか。
家の中に戻ると、今度は隅々まで掃除だ。
部屋から持ってきたゴミ箱のゴミを全部分別して、しっかり捨てる。
ホコリをワイパーで拭き取った後、掃除機をかける。
そうすると細かいのが排気で舞い上がる前に取れるのだと、いつかフェイトが教えてくれた。
窓ガラスを拭いてピカピカにすると、それだけで部屋の中が明るくなったかのようだ。
いや、実際に光の透明度が違う。家中を綺麗にしようという気合は、ますます強くなった。
風呂場に行って、浴槽をゴシゴシと擦る。それだけではなく、鏡を磨き、あちこちの水垢を削る。
これで、お風呂も気持ちよく入れるようになった。
乱雑気味になっていた本棚を揃えて、ユーノにも本を整理するように言いつけると、ヴィヴィオははたと思い出した。
なのはの部屋に行くと、寝息を立てていたが、かなり苦しそうだ。
氷枕を触ると、やっぱり温くなっていた。

417バカップル看病日記 10/15:2009/12/25(金) 00:16:40 ID:zlV808uk
そっと抜き取ってキッチンに戻り、それを冷凍庫に放り込む。
最近の氷枕は、完全に氷ではなく不凍液を使っているから、完全に冷えて取り出した後も柔らかい液体の感触を保っている。
冷え切った方の枕を代りに引っ張り出すと、タオルで包んで持っていく。
風邪を引くと物凄い量の汗が出るのだ、こうしないと汚れてしまう。
昼食の前にシーツも替えておくべきだったな、と小さな反省をして、夕飯の前には絶対やっておこうと決めた。
「……あ、そっか」
ヴィヴィオの部屋にあるベッドは普通のシーツだが、なのはの部屋にあるのはダブルベッドだ。
ユーノの書斎にはベッドはなく、もっぱらなのはの部屋で寝るか、三人で寝るか、
さもなくばヴィヴィオと一緒に寝てくれるかのどれかだった。
よく考えれば全員分のシーツ、我が家の洗濯機には入らない。
どっち道、その量のはベランダに並ばない。やっぱり後回しで正解だった。
「よし、全部終り!」
シーツの洗濯は明日。真新しいシーツをピンと張ってベッドに身体を投げ出すと、お日様の匂いがした。
ころころ転がって、伸びをすると、眠くなってきた。
もう、仕事といえば夕飯作りくらいしかない。
家計簿はつけられないし、ベランダの花に水をやるのは洗濯物を干す時に済ませた。
まぶたが段々重くなってきて、いつしかヴィヴィオは眠った。

「ん……」
目覚めた時、周囲は薄暗かった。
どうして寝ていたのかしばらく訝しがり、ハッと我に帰ると、慌てて時計を見た。
6時。夕食を作るつもりが、朝食になってしまった!?
太陽はもう空低くにあった。が、朝日とは反対方向である。
午後の6時であることに安堵してホッと胸を撫で下ろすと、頭に手を当てた。
……ぼさぼさ。寝相の酷さは折り紙付きな上に、全然まとまってくれない。
少しでもまともになるのは湯船に髪を浮かべた時くらいなものだった。
ヴィヴィオは軽く髪を梳かすと、部屋を出た。
誰もいないリビング。誰もいないダイニング。誰もいないキッチン。
多分、ユーノも昼寝をしているのだろう。閑散とした家の中は少し冷たくて、耳が痛くなるほど静かだった。
「よしっ」
この家に、暖かさと明るさと、そして家庭の音を取り戻すのだ。
ヴィヴィオは早速、買ってきた鍋の材料を切り始めた。
トン、トン、トン。少しずつ早くなってきた手捌きだが、まだ足りない。
指を切らないように集中して、一つ一つ切っていく。
土鍋を取り出して、鍋の素と水を注ぐ。火の通り辛い白菜とニンジンを真っ先に入れ、火にかける。
続いて、四つ切りにしたシイタケと、千切ったマイタケ、シメジ。
出汁の出るものを入れておくと、凄く美味しくなる。味噌汁でも常套の手段だ。
椅子を持ってきてちょこんと座り、お気に入りの本を読みながら、一煮立ちするのを待つ。
湯気がふつふつと鍋から立ち上がる頃には、ユーノが起き出してきた。
「おはよう、ヴィヴィオ。ご飯、美味しそうだね」
「まだまだだよ、パパ。これから、もーっと美味しくなるんだから」
沸騰を始めたら蓋を開けて、シュンギクと豆腐、豚肉を入れる。
更に弱火でしばらく煮ていると、様々な匂いが絡み合って、思わずお腹が鳴るほどの芳香が家中に立ち込めた。
それがなのはを起こしたようで、まだ足取りは重くも、蜜に引かれた蝶のように、食事を待ち望んでいた。
でも、まだダメ。最後の一仕上げが待っているのだ。
手狭になってきた鍋の隙間に揚げ麸とシラタキを入れて、ほんのちょっとだけ火を通して、出来上がりだ。
早速、鍋敷きをテーブル置いて、鍋を載せる。口の中が唾でいっぱいだ、早く食べたい。
お椀を取って、一人ひとりによそっていく。
「いただきまーす!」
家族で手を合わせ、ようやく訪れた至福の時間を楽しむ。

418バカップル看病日記 11/15:2009/12/25(金) 00:17:14 ID:zlV808uk
キノコのお陰で良い出汁が出て、白菜も柔らかくなっている。
ニンジンの甘みとシュンギクの苦味が調度良いハーモニーを奏で、豆腐が口の中で砕ける感触がまた嬉しい。
豚肉は難すぎず、一口噛むごとに中から肉汁が溢れ出してきた。
よくよく汁が染み込んだ揚げ麸は重く、口の中でいっぱいに広がる。
シラタキのちゅるちゅるした食感。何もかも完璧だ。
ふと顔を上げると、ユーノがふーふーと白菜を冷ましながら、なのはに差し出していた。
本日の「あーん」は、これで何度目ななのか。
はぐはぐと熱さを逃がしながら食べていたなのはだったが、やがて電流が走ったように止まった。
「ヴィヴィオ。一つ、聞きたいんだけど」
信じられないという顔を作って、なのはが聞いた。
ヴィヴィオはその真剣な眼差しに、首を傾げる。もしかして、なのはの口には合わなかったのか?
「……わたしより料理、上手くなった?」

突然の一言に、ヴィヴィオは固まった。
だが、とても冗談とは思えない、なのはの口調と表情。
それは紛れもなく、ヴィヴィオがこの家で誰よりも料理が上手くなってしまった、証だった。
「早いね、ヴィヴィオ。もうわたしを超えちゃうなんて……これから翠屋の将来は安泰だね」
「僕はどっちも同じくらいだと思うんだけど、やっぱりどこか違うの?」
「うん、全然。なんていうか、元々の才能というか、根っこのところがわたしより上手い……」
向かいに座っていたなのははテーブルを立つと、ヴィヴィオのところまで来て、ぽんと頭に手を置いた。
そして、優しく撫でる。スッと手を下ろして、その長い髪を梳いた。
「ホントに……ホントに凄いよ、ヴィヴィオ。美味しいご飯を、ありがとう」
なのはを見上げると、ニコニコと笑っている。
ユーノの方を向いても、やっぱりニコニコしている。
ヴィヴィオはぼけっとしていたが、やがて満面の笑顔になった。
「どういたしまして!!」
その後、あっという間に鍋は殻になった。しかも、予想通り食べ足りない。
なのはも食欲が出てきたのか、「もっとパパに『あーん』して貰いたい!」と娘にのろけだした。
駄目だこのママ早く何とかしないと。
もちろん、ユーノに至っては大の男であり、きっとまだまだ食べられるだろう。
明日の食材を一足先に入れてしまおうかとも思ったが、ユーノは何か思うところがあるようだった。
炊飯器を開け──確か昼で食べ終ったから、もうない──、次に冷凍庫を開け、いいものを見つけたと戻ってきた。
「はい、冷凍うどん。これで締めにしよう」
「『しめ?』」
「そ。鍋を終らせる時に、残ったスープで食べるものだよ」
「あっ、なるほど。じゃあ、ヴィヴィオが『しめ』やる!」
鍋つかみが要らなくなった温度の土鍋を掴んで、コンロの上に載せる。
ユーノから貰ったうどんを入れて、もう一度火にかける。
スープはもう少なくなっていたから、焦げ付かないように掻き混ぜる。
そして出来上がったうどんは、コシがありつつも、さっきまでの鍋が程よく甘みを引き立てて、
ただ普通のうどんを作るより、何倍も美味しかった。
「ママ、温かくなった?」
食べ終って、食器を下げながらヴィヴィオは聞く。
なのはは微笑みながら頷き、元気を取り戻した調子で答えた。
「うん、とっても。これなら、明日にも治っちゃうかもね」
それでも、大事を取ってというか、医者の忠告に従ってというべきか、薬を飲んで、すぐに寝室に引っ込んだ。
洗い物をしていると、ユーノがやってきて、手伝おうとした。
「ダメ。パパは寝てるかテレビでも見てるかしてて」
一蹴すると、何かしょんぼりした姿でキッチンを後にした。
多分、ユーノは暇を持て余しているのだろう。

419バカップル看病日記 12/15:2009/12/25(金) 00:17:49 ID:zlV808uk
でも、家庭内労働は禁止なのだ。しばらくは、二人とも完全にお休み。
元気になったら、また一緒にご飯を作ったりしてもいいのだが。
その代り、ユーノと一緒に風呂に入って、互いに背中を流した。
二人で浴槽に入ると、豪快に湯がざばざばと溢れ出した。
縁まで湛えられた湯に肩まで浸かると、一日の疲れが全部吹き飛んでしまいそうだ。
「ねえ、パパ」
何とはなしに、聞いてみる。
ユーノは「どうしたの?」と瞳を覗きこんできた。
「パパ、ママのこと、好き?」
「大好きだよ。世界中の誰よりも、大事にしたい」
「ヴィヴィオのことは?」
「もちろん、大好きだよ。ヴィヴィオのためなら、僕はいくらでも頑張れる」
「じゃあ……」
ヴィヴィオは言葉を切って、イタズラっぽく微笑んだ。
小悪魔の笑みをユーノに向けて、意地悪な質問をする。
「じゃあ、ママと私と、どっちが好き?」
ユーノは思い切り考え込んだ。うーん、うーんと唸り込み、遂には喋らなくなってしまった。
顔をよく見ると、皺が刻まれ、考えすぎて今にも上せそうだった。
「す、ストップストップ!」
慌ててユーノを止め、ヴィヴィオはぺこりと頭を下げた。
突然遮られて、ユーノは目をぱちくりさせていた。
「ごめんなさい、変なこと聞いて……でも」
でも。
これだけは。
絶対、守って欲しいことがある。
「パパは、私よりママの方が好きでいて。娘からのお願いです、パパとママは、いつまでも愛し合っていて下さい」
ユーノはヴィヴィオの顔を見つめると、その手を頭に置いて、撫でた。
頭を「パパ」に撫でられるのが何よりも好きなヴィヴィオは、ふにゃふにゃに気持ちよくなった。
天にも昇る心地とはまさにこのこと。「もっと、もっと」とおねだりすると、ユーノはいつまででも撫でてくれた。
ヴィヴィオはほくほく顔になり、ユーノの頬に本日二度目のキスをした。
「でも、私は、パパとママ、どっちも同じくらい、大好き!!」
そう言って、ヴィヴィオはユーノに抱きついた。

翌日、体調が回復しかかっていたなのはは、ここぞとばかりにユーノに甘えまくっていた。
元々の体力が高いから、簡単に風邪の細菌を追っ払えているのだろう。
ただ、そのお陰ですぐ動きたがる。まだ7度5分もあるというのに。
いちゃいちゃ具合が加速して行く二人を横目で見るヴィヴィオの口から言えば、
バカップル以外に形容する方法があるとすれば、それは「親バカップル」しかなかった。
「ヴィヴィオはホントに偉いね、ママが病気とはいえ、ちゃんと一人でご飯も作れて、洗濯も、何もかも上手くて」
「うん、うん。ヴィヴィオは『ママ』の才能があるよ」
「なのはにもあるじゃないか。こんな可愛くて優しいママは宇宙のどこを探したっていないよ」
「まあ、あなたったら。でも、あなたより頼もしくて格好良いパパも、宇宙のどこにもいないんだよ?」
うるさいうるさいうるさい。頼むから他でやってくれ。気が散る。
スープの鍋を掻き混ぜながら、ヴィヴィオは頭を抱えたのだった。

***

寒気が流れ込んできた上に天気予報が外れ放射冷却が重なったせいで、
雪こそ降らなかったものの、クリスマスイブの朝は死ぬほど寒かった。
気温は氷点下を打ち、毛布に掛け布団を二枚重ね、更に湯たんぽまで抱いて寝たのに、
朝早くヴィヴィオが起きた理由は寒さでガタガタ震えたからだった。
時計を見ると、朝ご飯どころかもう一眠りしてもいいような時間帯だった。

420バカップル看病日記 13/15:2009/12/25(金) 00:18:22 ID:zlV808uk
取り敢えず、寒さが原因で催してきた。トイレで用を足し、もう一度ベッドに潜り込む。
だが、どうすることもできなかったので、押し入れを探して電気毛布を引っ張り出し、
掛け布団の間に挟んでスイッチを入れる。温度が上がってきた頃、再びまどろみが訪れてきたので、ヴィヴィオは眠った。
意識が落ちた瞬間、誰かが夢の中で語りかけてきた。
『ヴィヴィオ、ヴィヴィオ……』
ヴィヴィオは辺りを見回し、しかし声の主はどこにもいなかった。
果てしなく白い世界が広がるばかりで、何も見えない。
『私は、もうすぐあなたとまた会えるでしょう。早ければ、今日にでも』
「誰、誰なの!?」
どちらにいるのか分からない相手に向かって叫んでみたが、答えは帰ってこなかった。
一方的に話しかけられる電話のようで、相手の声だけが淡々と響く。
『楽しみにしています。でも、その時には、私は多分──』
「えっ、どうしたの、何があるの!?」
あらん限りの声を張り上げても、相手に届かないもどかしさ。
やがて、相手の声はフェードアウトを始めた。
『私は多分、私の大好きな人と、一緒にいるでしょう。でも、最初に会うのは、ヴィヴィオ、友達であるあなたの方が……』
声は途切れた。ヴィヴィオがどんなに呼びかけても、答えはない。
意味も意図も不明な、まるで独り言のような一方通行の科白。
でも、確かに相手は「ヴィヴィオ」と言った。何となれば、それはヴィヴィオに向けた手紙なのだ。
立ち尽くし、たった今投げかけられた言葉の意味を反芻していると、ハッと目が覚めた。
時計をもう一度見る。夢の中で時間感覚が狂ったのか、十分も経っていない気がするのに、もう二時間以上が経過していた。
そろそろ、朝ご飯を作らないといけない。
起き上がると、何故かいい匂い。キッチンに行くと、なんとユーノが包丁を振るっていた。
「まぁ、僕も一応料理の一つや二つくらいなら作れるからね。
もう二日も休んだんだし、そろそろ僕にもできることをさせて欲しいな?」
「……うん! パパと一緒に朝ご飯作る!」
出来上がった頃、まるで計ったかのように起きだしてきたなのはの体温を測ると、平熱!
病み上がりとはいえ、もう程々には動いても大丈夫そうだ。
「そういえば、今日はヴィヴィオは皆でパーティーをやるんだよね。何時からだっけ?」
ユーノが思い出して、聞く。
ヴィヴィオは記憶を手繰って、夜からだと答えた。
でも、その前にプレゼント交換のプレゼントを買いに行ったり、昏々と眠り続けているイクスヴェリアに挨拶に行ったり、
それに会場であるリオの家で料理の手伝いをしたりと、結構やることは沢山あるのだ。
買い出しの待ち合わせは、昼前。その後、教会に行かなければならない。
「だから、私は早く出るね」
トーストを頬張りながら、両親の「気をつけてね」という忠告にしっかり応えた。
朝食の後、準備を整えて、ヴィヴィオは家を出て行った。
「あ、もしかしたら遅くなるかもしれないから、その時は連絡するね!」

ヴィヴィオが出て行った後のスクライア家は、閑静とした空間に変わっていた。
なのははユーノに寄り添い、身体を預けて楽な姿勢を取る。
ユーノもまた、なのはの肩に手を回して、不安定な空を眺めていた。
放射冷却ですっかり冷え込んだところに、思い切り雲が流れ込んできて、粉雪を降らし始めた。
「管理局の白い風邪引きさん、感想は?」
「雪か……今日はホワイトクリスマスになりそうだね。自然が私達にプレゼントしてくれるなんて、素敵じゃない?」
「そうだね、なのは。澄んだ空だし、きっと雪化粧の街並みは綺麗だよ──なのはの次にね」
「ひゃわっ、またあなたってば」
正午を過ぎてからしばらく、雪は一旦止む。曇り空から青空へと、世界の色は変わっていった。
ヴィヴィオから息急き切って端末に映像電話が飛び込んできたのは、そんな昼下がりのひと時だった。
「マ、ママ! パパ!!」

421バカップル看病日記 14/15:2009/12/25(金) 00:18:57 ID:zlV808uk
一刻も早く何かを伝えたくて、帰って呂律が回っていないヴィヴィオの声。
取り敢えず落ち着くようになのはは言ったが、それでも全然落ち着くどころかもはや錯乱の域まで達しかけていた。
絶対に信じられない、でも目の前に確かにある。
そんな、失くして久しい宝物を見つけたような顔だった。
「ああ、起きたの、起きたの!!」
「誰が起きたの、ヴィヴィオ?」
寝ている人が起きたくらいで普通、全力で電話などしない。
とすれば、仮死状態にあったか、昏睡していた人が起きたとしか……
「イクスが……イクスが起きたの!! たった今、私の見てる前で!!」
止まった時間が流れ始めた。
マリアージュ事件をなのはもユーノも直接体験しておらず、だからこそ、
画面の端に小さく映る少女が、何でもない普通の女の子に見えたのだった。
「よかったね、ヴィヴィオ」
娘の笑顔とも泣き顔とも、或いは驚きとも取れる表情に、なのはもユーノも微笑んでみせた。
パァッと、ヴィヴィオの顔に季節外れのヒマワリが咲き、思い切り首を縦に振った。
「うんっ!!」
通話が切れた後、夫婦の間には得も言えぬ満足感が広がっていた。
娘の喜ぶ顔が見られるだけで、幸せいっぱいになれるのだ。
「さて、ヴィヴィオのクリスマスプレゼントを買ってこないとね」
ユーノが立ち上がると、なのはがその腕を掴んだ。
一緒に連れていけと、その瞳が訴えていた。
「……ちゃんと、あったかくするんだよ」
「あなたと一緒にいれば、どんな寒さも平気だよ」
ユーノは苦笑いを浮かべながら、なのはの分のコートを渡した。
夕方になるに連れ、再び分厚い雲が立ち込め始めた。
街はすっかり白く覆われていて、白銀の世界は、中世の城下町を思わせた。
はらり、はらりと白い羽が街を彩り、イルミネーションが雪の純白に映える。
二人は互いに温め合いながら、ヴィヴィオのプレゼントを探し求めた。

目当てのものを手に入れ、家に帰ると、留守電が一つ。
「思ったより盛り上がっちゃって、ちょっと帰るのが遅くなりそうです。鍵は閉めてても大丈夫です。
気をつけて帰るので、安心して下さい ヴィヴィオより」
ヴィヴィオはあれで、スバルなどに教えられながら格闘にも興味を示している。
下手な不審者程度なら、軽くのせるだろう。
ほんの少し心配しながらも、けれどセイクリッドハートもいることだし、と二人は愛娘を信じることにした。
というか、むしろ。
「なのは、この前の続きなんだけどさ……」
「あん、もう、あなたのえっち」
双方、お預けを喰らっていたため、物凄く『溜まって』いた。
「性活を潤すには、やっぱりアッチからやな!」というタヌキの科白は、あながち間違っていない。
いや、今日ばかりは正しいということにしておこう。
首筋を舌でちろちろと舐められたなのはは、身体が奥から疼いてくるのを感じた。
ベッドまで行くのがもどかしく、なのははブラウスのボタンを開けながら、ユーノに熱く口づけた。

途中でヴィヴィオが帰ってきた気がしたが、止められるはずもなかった。
互いに激しく愛し合い、冬だというのに有り得ない程暑かった。
深々と降り続ける雪は、聖夜の総てを祝福しているかのようだった。
きっと今夜なら、神様だって何でも赦してくれるだろう。

422バカップル看病日記 15/15:2009/12/25(金) 00:19:39 ID:zlV808uk
後戯も終り、シャワーを浴びてパジャマを着ていたなのはは、窓の外をじっと見つめていた。
日付が変わり、クリスマス当日となった世界。風がまったく吹かない中で、真白い天使の羽が着々と積もっていく。
それがやがて少なくなり、雪は止んだ。あれほど降っていたのに、どういうことなのか。
答えは、すぐに分かることになる。
「あっ……あなた。見て、見て」
眠気に侵食されかけていたユーノを揺すり起こして、外の景色を指差す。
これが何でもない光景の一つだったら、そのまま寝かせてしまってもよかっただろう。
だが、そうではない。人生の中でそう何度も拝めない逸品が、目の前に広がっているのだ。
「どうしたの、なのは……わぁ」
ユーノも、一発で眠気が覚めてしまったようだ。
二人揃って、空を見上げる。幻想的な光景が、ミッドチルダの地にあった。
天使の梯子。あれだけ雪を降らせていた雲が切れて、その隙間から月明かりが差し込んでいる。
太陽ではたまに見かける瞬間だが、月の場合は満月でもなければまず見ることができない。
しかも、今日は一年で一番幸せな日だ。どんな魔法よりも素敵で、どんな科学でも再現できない景色。
更に、去年愛を誓い合った日でもある。
神様、こんなにも美しいものを見せてくれて、ありがとう。
「なのは……」
「あなた……」
世界で最も祝福されるべき二人は、口づけを交わした。
甘く蕩ける最高のキスを、互いに捧げあった。

***

クリスマスの朝。
パーティーを終え、前日遅くに家へ帰ってきたヴィヴィオは、眠くてふらふらとベッドに倒れ込んでしまった。
家の中で何か物音がしていたが、全然思い出せない。
途中までは、バカップルのバカっぷりや、イクスヴェリアの目覚めなどなどで食欲が沸かなかったが、
時間と共に飲めや歌えや──もちろん、ジュースだけれど──の大騒ぎになり、つい長居をしてしまった。
プレゼント交換ではぬいぐるみのコレクションが一つ増え、かなり嬉しかったのは公然の秘密である。
ふと、指先に何かが触れ、手元を見ると、そこにプレゼントが置いてあるのを見て大変に喜んだ。
寸分違わず、望んでいたものと同じだった。昨日に続き、大当たりの冬休みと言わざるを得ない。
出掛けに手紙を書いて置いて、大正解だ。昨日のことなんて、綺麗さっぱり一ミリだって忘れた。
ルンルン気分で朝食後、なのはのシーツを洗おうとしたが、そこではたと手が止まった。
「……ママのシーツ、なんでこんなに汚れてるの?」
今までにも何度かあったが、その理由を聞く度にはぐらかされ、今に至る。
汗とは違う、何か別の匂い。決して嫌なものではないが、疑問は呈したくなる。
絶対、秘密にしたいことに違いない。だが、余計な詮索はしない。
可哀想だし、何より話してくれるような状況が整ったら話してくれるだろう。

その後、なのはが「管理局の白い親バカ」に昇格した。
「白い聖母」に昇格するのは、果たしていつの日になるのか。

423Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/25(金) 00:23:29 ID:zlV808uk
これはこれで完結してますが、実は前編みたいなもの。
後編のスバル&ティア&イクスの泥沼三角関係ドロドロ3Pは後20時間くらい待ってくれよなっ!
……すみません遅れました('A`)

当方一人というより、所属サークル全員からのクリスマスプレゼント。
お読み頂いてありがとうございました。

424名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:28:08 ID:KJggnrZE
テラ糖度高ぇw
GJだゴルァ!

425名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:40:21 ID:5YcCiOBY
超GJ
いいもの見させてもらったぜ

426名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 00:56:39 ID:RKlVjsDk
GJ!
ニヤニヤが止まらないおw

427名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 05:34:57 ID:mrtlJFws
>>423
ウヒョー!Foolish氏久しぶりの激甘作品だー。超GJ。

>>スバル&ティア&イクスの泥沼三角関係ドロドロ3P
泥沼怖いけど期待してまふ!

428名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 07:30:22 ID:puC5Wn7Q
ヴィヴィオは良い子だなぁ……GJ!

429名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 10:38:29 ID:Xk8lUKEw
ヴィヴィオ可愛いよ、可愛いよヴィヴィオ

430名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 22:09:45 ID:SCLI5flE
アインハルト×ヴィヴィオで一つ

431名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 22:36:24 ID:So.qrlAk
>>430
アルト×ヴィヴィオに見えた俺は目が疲れてるんだろうな

432名無しさん@魔法少女:2009/12/25(金) 22:42:28 ID:gHZWOIPc
>>431
モルダー、あなた疲れてるのよ・・・・・・・

そのふたりだとだいぶ年離れてるし、接点もそれほどないだろ
いたいけな幼女を襲うアブナイお姉さんの図しか浮かんでこんw

433名無しさん@魔法少女:2009/12/26(土) 00:03:11 ID:edbsqqWk
>シガー氏
甘すぎまする。
カルタス→ギン姉はよく見るけど、
そういや逆はあんまり見ないなぁ。次回超期待してます。
そして、こんな所でヴァジュリーラを見るとは。
ひゃーーーはっはっはっはっはぁーーーーっ!!

>Foolish Form氏
GJです。ヴィヴィオは良い子だなぁ。
次回はいろいろな意味でティアナに期待させて貰います。
この期待は間違っていない筈。

434ザ・シガー:2009/12/26(土) 00:05:47 ID:ckqnh6MQ
うっし! >>400の続き投下するよ!

カルタス×ギンガで前中後の中篇です!


甘いよ! 結構甘いよ!!

435ギンガの恋路:2009/12/26(土) 00:09:36 ID:ckqnh6MQ
ギンガの恋路 (中篇)


 時間を少し遡る。
 時はカルタスが眠りに落ちる一時間前、彼がキーボードを叩いた最後の瞬間。


「ふう……」
 

 事件資料を纏め上げたカルタスは、疲労をたっぷりと溶かした溜息を吐いた。
 長時間のデスクワークで指も肩も、ついでに座り続けたお陰で尻も痛い。
 肩と首を回せば、凝った筋肉に疲労感が染み渡る。
 体重を背もたれにかければ、オフィスチェアが乾いた金属音と共に軋んだ。
 ふと視線を向けた先、窓の向こうには夜天に二つの月が輝いている。
 つい先ほどまで夕だと思っていた空はとっくに夜闇に染まっていた。
 時間を忘れるほど仕事にのめり込んでいたのがよく分かる。
 それを自覚すると、どっと疲れが押し寄せてきた。
 一体自分は何をしているのだろうか、と。


「俺はバカだな……せっかくの、あの子からの誘いを断るなんて」


 それは仕事への不満ではない、先ほど自分がギンガに取った態度についての後悔。
 別に、今纏めていた事件資料はそれほど早急に仕上げねばならないものではなかった。
 定められた期日までそれなりに余裕はある。
 だが、カルタスは残業してまでその仕事を片付けた。
 彼が生真面目な気質、というのもあるが、実を言えば理由はもう一つある。
 それは、ギンガ・ナカジマという少女の存在に他ならない。
 彼女の告げた夕食への誘いをできるだけ自然に断る為の方便だった。
 ラッド・カルタスという男は、そうやってあの少女と距離を置こうと、常に心がけている。
 理由は取るに足らないもの。
 彼の胸の内で静かに、されど熱く燃える感情が為にだ。
 カルタスの中で滾るその感情は――名を恋という。
 愛しく恋しい、恋慕の感情だった。
 自分より一回り年下の、可愛い後輩であり部下でもある少女に抱いていた庇護欲が恋心へと変わったのは果たしていつ頃か。
 カルタス自身にもそれは分からない。
 あどけない少女が少しずつ成熟した美女へと成長していく様を傍で見守る内に、いつの間にか視線は彼女を追っていた。
 胸の内に宿る熱い想いは心を切なく焦がし、狂おしい恋しさを滾らせる。
 だがカルタスはその想いを成就させようとは思わなかった。
 いや、思えなかった。
 二十台も半ばの自分と、まだ十代のギンガ。
 彼女から見れば自分はオジさんと呼ばれてもおかしくない。
 それに何より、ギンガはゲンヤの娘なのだ。
 ゲンヤ・ナカジマとラッド・カルタスの上司と部下としての関係は、もう既に十年近くを経ている。
 入局してからというもの、局員としての心得から捜査の手管の一つ一つまで、全ては彼の教えによるものだ。
 恩人であり尊敬すべき上司。
 その彼の娘に手を出すというのは、どこか後ろめたいものを感じる。
 故にカルタスはギンガへの想いを胸に仕舞いこみ、ただ燻らせるに任せていた。
 いつか彼女にも恋人が出来るだろう。
 自分よりずっと彼女に相応しい男が。
 それまで耐えれば良いのだと自分には言い聞かせ、カルタスはギンガと積極的にプライベートで関わらぬよう努めていた。
 だが、今日の誘いの言葉はどうだったのだろうか。
 ギンガの告げた言葉には、どこか好意というか、甘い響きが混じっていたようにも思う。


「いや……都合良く考えすぎだな……」


 だがカルタスは首を横に振ってその思慮を掻き消す。
 彼女と両思いであるなど、都合の良すぎる考えだ。
 こんな時はさっさと眠って意識を闇に落してしまうに限る。
 彼はそう断じ、椅子から立ち上がった。


「さて。じゃあ、今日はもうここで泊って行くか」
 

 誰にでもなく呟いた独り言と共に、カルタスは上着を脱いでオフィスに置かれた横長のソファへと歩んだ。
 疲れた時や明け方まで仕事する時、しばしの休息を与えてくれる革張りのそれに、彼は身体を預けた。
 ネクタイを緩め、上着を身体の上に掛ければ後はもう目を瞑るだけ。
 自身の心を惑わす愛しく恋しい少女の事を想い、彼は静かに眠りの世界へと落ちた。





 仕事を終えたカルタスが、家路に就くのを諦めて朝までオフィスで過ごすのは珍しい事ではなかった。
 どうせ家に帰っても寝るだけで、またここに足を運ぶのだ。
 ならば一日や二日を過ごしたとて何の問題があろうか。
 我が家の安ベッドとオフィスのソファなど、大した違いはない。
 そうして今宵もまた、彼は一人職場で夜を明かす――筈だった。

436ギンガの恋路:2009/12/26(土) 00:10:19 ID:ckqnh6MQ
 それを破ったのは触覚への刺激。
 唇と胸板に心地良く柔らかい感触があり、さらには鼻腔をくすぐる甘い香りが覚醒を促す。
 一体なんなのだろうか。
 夢うつつの思考回路を、彼は緩やかに目覚めへと移していく。
 ゆっくりと目を見開けば、そこには影があった。
 電灯の光を隠す、誰かの影。
 目を凝らせばそれは人で、自分に覆いかぶさっているという事が分かる。
 しかも、その相手は自分と口付けを交わしていた。
 あまりの事に一瞬思考は空白となって何も考えられなくなる。
 カルタスの思慮が真っ白に染まる中、彼の唇を味わっていた相手が唐突に離れた。
 天井に設けられた蛍光灯がもたらす逆光の眩しさに一瞬目を細めるが、しかし視覚はすぐに相手を認識する。
 目の前にいたのは、見知った少女の姿。
 甘く芳しい香りを放つ青い長髪。
 ブラウンの管理局制服に包まれた、男の理想を描いたような豊かなプロポーション。
 そして麗しいと形容して仔細ない美貌と、心を惹き込む程澄んだエメラルドグリーンの瞳。
 ギンガ・ナカジマという名の少女が、そこにはいた。


「あッ……え?」
 

 自分を見つめるカルタスの視線に気付き、ギンガは疑問符を零す。
 まるでカルタスが目を覚ました事が信じられないように、少女はただ唖然とする。
 しかしそれはカルタスだって同じだ。
 目を覚ましたら誰かに口付けされていて、それはなんとギンガだった。
 夢みたいな、いや、もしかしたら本当夢なのかもしれない。
 ギンガに募らせた恋しさ故に、彼女の唇や肢体を夢想した事がない訳ではない。
 寝起きで未だ霞の掛かった思考の中、カルタスはこれが夢幻ではないかと思い始めた。
 だがそんな彼の思慮など知らず、ギンガは頬を赤く染めて恥じらう。


「あ、あの……ち、違うんです。これは……その……」


 慌てて紡いだ言葉は上手く繋げられず、途切れ途切れになってしまう。
 寝込みを襲うような形で彼と口付けを交わしてしまった事が恥ずかしくて、しかしそれをどう言い繕って良いか分からなくて。
 乙女はただ頬を染め、上手く回らぬろれつで言葉を零すばかり。
 その様に、カルタスは思う。


(なんだ、これは……夢か?)


 ギンガが自分に口付けを求めるなど、あまりに現実離れした事象。
 そして自分が思い描いていた望みとあれば、それは夢なのかもしれない。
 ならば確かめてみよう。
 と、彼は判断した。
 

「あ、え? あの……カルタスさん?」


 ギンガのうなじと肩に手を回し、彼女の身をこちらに引き寄せ、
 

「な、なにを……んぅッ!?」


 そして一気に抱き寄せ、キスをした。





 先ほどのあれが夢なのか現実なのか、確かめる一番確実な方法。
 もう一度実行して試してみる。
 カルタスの考えた結論がそれだった。
 なんとも馬鹿げた考えではあるが、寝起きの思考回路に論理性を求めたところで詮無き事だ。
 そして当たり前の事であるが、唐突に口付けをされて腕の中のギンガは慌てる。


「んぅ……んぅぅ!?」


 塞がれた唇から疑問符を零し、いきなりの事に身をよじる。
 だが彼は離しはしない。
 むしろより一層と力を込めて抱き寄せた。
 素晴らしく実った乳房の果実が、身の動きに応じて柔らかく形を変えてカルタスの胸板に至高の感触を。
 うなじに回した指には滑らかな髪が心地良い肌触りを。
 そして、重ねた唇からはどこか甘い味を伝えてくる。
 まるで魂にまで陶酔をもたらすような甘美。
 カルタスは現実と非現実の検証という目的を忘れ、ひたすらにその味に酔った。

437ギンガの恋路:2009/12/26(土) 00:10:58 ID:ckqnh6MQ
 肩に回した手を腰に移し、そのくびれた無駄のないラインを愛で。
 髪にうなじに回した手を頭に移し、長く艶やかな髪を無心に撫で梳き。
 口付けで結ばれる唇には舌を挿し入れて、未だ驚愕の中で震えるギンガの口内を蹂躙。
 舌と舌を絡ませて歯茎から頬まで舌の届く範囲全てを愛撫し、唾液を貪り、そして流し込んでは無理矢理味わわせる。
 二人の唇の間からは舌を絡ませて唾液を交える水音が響き、空気を淫靡に染め上げていった。

 そうした時間がどれだけ過ぎただろうか。
 最初は身をよじって戸惑っていたギンガがその動きを止め、彼の愛撫の全てを従順に受け入れるようになった頃合、ようやくキスの時間は終わりを告げる。
 ギンガの柔らかな肢体に回されたカルタスの手が急に抱き寄せる力を失い、逆に彼女を押しのけるように離した。
 繋がっていた二人の唇は唾液が糸を引き、音もなく途切れる。
 初めて味わった深い口付けの余韻に瞳をとろんと蕩かせたギンガは、それをどこか名残惜しそうに見つめていた。
 対するカルタスは覚醒した意識の元で瞳を細め、静かに呟く。


「どうやら夢じゃない、みたいだな」


 覚醒した思考は、身に起きた事をようやく現実だと完全に認識した。
 胸板の上で形を変えた乳房の柔らかさ、鼻腔をくすぐる甘い髪の香り、そして何より口付けの甘い味。
 到底夢で味わえるものではない、正真正銘現実の感覚だった。


「さて。じゃあ……どうしたもんかな」


 彼は身を起こし、頭を掻きながら困ったように呟いた。
 今までの事が現実だとして、果たしてどうしたら良いものか。
 ギンガが寝ている自分に口付けし、そしてさらに自分がまた彼女の唇を奪った。
 これが意味する事とは、つまり……
 そう彼がそう考えた時だ。
 場に生まれた沈黙を破る音が生まれる。
 それは少女の紡ぐ声。
 今にも消え入りそうな小さな囁きが、瑞々しい唇から零れる。


「あ、あの……私は、その……」


 情熱的な口付けの余韻で上気した頬を、今度は羞恥心がほのかに朱へと染めていた。
 途切れ途切れの言葉を必死に濡れた唇から零し、潤んだ瞳で熱い眼差しをこちらに向けてくる。
 無垢で一途な乙女の姿は、どこまでも愛らしく美しい。
 その様に、カルタスは自然と鼓動が高鳴るのを感じた。
 そして、乙女は言の葉を連ねる。


「私は……私はカルタスさんの事が」


 もはやここまで来たら、彼女が自分に何を想い、何を告げようとしているかなど考えずとも分かる。
 それはまるで夢のような現実の話。
 ありえないと否定し続けた、恋しい想いの交錯だった。
 だが、それをカルタスは遮る。 
 言葉を紡ぎだそうとしたギンガの唇にそっと手を伸ばし、指を添えて制止した。


「……?」


 突然の事に少女は眼を見開いて、視線で疑問符を投げ掛けた。
 カルタスは何の意図があってこんな事をするのか、と。
 対する彼はギンガの言葉を遮ると、身を動かした。
 ソファの上から床に足を着け、その場で立ち上がる。
 同じくギンガにも立つように促し、二人は正面から向かい合う形になった。
 少女は上目遣いに、愛する男を見上げる。
 男はそんな少女に切れ長の瞳を細め、情の込められた視線で見下ろす。
 幾許の沈黙があり、そして破られた。


「ギンガ、それ以上は言うな」


 と。
 彼の告げた言葉の意味が一瞬理解できず、ギンガは硬直する。
 だが耳に響き、思考の奥底まで届いた残響は、確かにカルタスの言葉を認識した。
 それ以上言うな、と。
 彼は確かに自分にそう告げた。

438ギンガの恋路:2009/12/26(土) 00:11:41 ID:ckqnh6MQ
 その言葉の意味するところとは、果たして何か。
 普通に考えれば、結論は一つしかない。


「やっぱり……駄目、ですか?」


 拒絶、なのだろうか。
 問う言葉と共に、ギンガの澄んだエメラルドグリーンの瞳を涙が濡らす。
 やはり駄目なのか。
 やはり自分では彼に選ばれないのだろうか。
 悲しみが乙女の胸の内を、冷たく貫く。
 だが、その言葉をも次の瞬間は否定という名のカウンターが穿つ。


「いや、違う。違うんだギンガ。そうじゃない……」


 少し戸惑った、いつもは決して吐く事のない語調でカルタスが否定した。
 彼は幾度か言葉を飲み込み、咀嚼し、熟慮。
 覚悟を決めたように一度頷くと、そっとギンガの肩に手を置いて彼女の瞳をまっすぐに見据える。
 そして、告げた。


「まずは俺に言わせて欲しい」


 彼女の肩に置いた手に、僅かに力を込め。
 彼女を見つめる瞳に、熱い想いを込め。
 彼女に告げる言葉に、万感の想いを込め。


「俺は……君を愛してる。ずっと前から好きだった」


 静かに、だが深く心に刻み込むように、彼は愛を告げた。





 それはくだらないポリシー。
 年下の少女から言われるのではない、年上の男である自分から告げねばならないという意地だった。
 乙女の愛の言葉を遮った代償に彼は自分からの告白を得て、そしてしっかりと言葉を大気に刻んだ。
 好きだ、と、その言葉を受けたギンガはしばし硬直する。
 意味を把握するのに要した時間はきっかり十秒。
 

「あ……え?」


 思わず疑問符を零し、少女は身を震わせた。
 彼の言った言葉が胸の奥まで染み入って、切なく、そして温かくさせていく。
 自分の抱いていた想いが一方通行でなく、彼もまた同じ想いを抱いていてくれたのだと。
 今まで燻らせてきた恋しさが成就したと。
 その事が、ただただ嬉しくて。
 乙女は瞳から涙を零し、しなやかなその身体を震わせた。
 何か言葉を告げようと唇を動かすが、しかし言葉は出てこない。
 驚きと喜びがギンガの心と身体を打ち抜き、自由を奪っているのだ。
 そんな少女を、カルタスはそっと抱き寄せた。
 彼の広い胸板はギンガをしっかりと抱き止め、もう逃さぬとばかりに捉え。
 そしてカルタスは、自身の胸に顔を埋める少女へと告げた。


「で、俺は君の事が好きなんだが。良かったら君がどう思ってるか教えてくれないか」


 どこか冗談めいた言葉で彼は問う。
 自分の想いを吐露し、何より相手の想いを察したからこその余裕だろう。
 カルタスのその言葉に、ギンガは彼の服をぎゅっと掴みながら、身を寄せながら答える。
 震える声で。
 今までの日々、胸の奥に、心の奥に仕舞いこんでいた言葉で。


「私も……私も好きです。ずっと……ずっと、好きでした」


 つぅ、と頬を伝った涙の雫がカルタスの服に染み込むのも構わず、ギンガは彼の胸板に顔を押し付ける。
 肌に感じる淡い冷たさも気にせず、カルタスは彼女の背に回した手に少しだけ力を込めて抱き寄せ、呟くように告げた。


「そうか。それは嬉しいな」


 万感の喜びと、だがどこか困ったような響きを孕んだ声。
 それは自嘲。
 秘し続けようと思った恋慕の心を容易く吐露してしまった己への嘲り。
 しかし、誰が彼を責められようか。
 愛し恋する少女が、自分が彼女に向けるのと同じかそれ以上の情熱を以って口付けし、愛の言葉を紡ごうとしたのだ。
 これを前に己を律し続けられる程、カルタスの心は硬くも冷たくもなかった。

439ギンガの恋路:2009/12/26(土) 00:12:18 ID:ckqnh6MQ
 理性という名の楔はもはや意味を成さず、胸の奥より出でた熱き思慕の滾りによって潰える。
 だからこそ、今彼は恋しい少女を抱き寄せて、ただ無心に彼女の青く滑らかな髪を撫で梳いた。
 ただただ、時を忘れるように。





 そうしてどれだけの時が過ぎたのか。
 数分にも思えるし、数時間にも思える。
 それ程までに初めて互いの想いを交わした時は甘美で、余韻が心をいつまでも捉えていた。
 カルタスはまるで飼い主に甘える子犬のように自分の胸板に擦り寄るギンガを撫でながら、ふと視線を壁掛け時計に移す。
 確認してみれば経過した時間は、自分が寝入ってより約一時間ばかり。
 長いようで短い時の流れに、彼は、ふぅ、と一息をつく。
 

「ギンガ、ちょっと良いか?」


 告げる声と共に、自分の胸に抱いた少女を浅く突き放す。
 それにギンガは名残惜しそうに寂しげな、男の庇護欲をくすぐる眼差しで彼を見上げた。
 彼女のその瞳に思わず愛おしさがぐっとこみ上げてくるが、しかしカルタスは静かに言葉を連ねた。


「もう遅いから、そろそろ帰らないと不味いだろ? ナカジマ三佐も心配する」


 告げたのは帰宅への促しだ。
 正直なところ、ずっとこのままギンガの温もりと柔らかな身体を抱きしめていたいのではあるが、しかし彼女は大恩あるゲンヤの娘だ。
 彼を心配させるような事は決してできる話ではない。
 故に彼はそう告げたのだ。
 しかし対する乙女はカルタスの言葉に、どこか寂しそうに顔を俯かせ。
 そして、口を開く。
 

「えと……今日はお父さん本局への用事で、いませんけど……」
 

 父はいない、と。
 彼女はそう告げた。
 言外に何を言わんとしているか、それが分からぬ程カルタスも鈍感ではない。
 遅い帰りを案ずる家族がいない、ならばこのまま一緒にいたい。
 彼女はそう請うているのだろう。
 甘美な誘惑だ。
 一晩を共にしたいと、心無垢にして女体を爛熟と咲き誇らせた乙女が求めている。
 あまりにも断り難い誘い。
 が、しかし、カルタスとて並の男ではない。
 今まで十年近い時を捜査官として、様々な修羅場を潜り抜けてきた男である。
 幾ら思慕の想いを交わしたといって、一日と間を置かずに同衾に至るなど鉄の理性が許しはしない。
 故に、口から零れたのは拒絶の言葉だ。
 

「いや、待ってくれギンガ。そういう問題じゃなく、できれば今日はこのまま帰って……」


 そう彼は言葉を連ねる。
 いや、連ねようとした。
 だが最後まで連ねる事はできなかった。
 遮りを為したのは、少女の指。
 白兵戦において鉄の拳を握るとは思えぬ、白く滑らかな指が一本そっと伸びてカルタスの唇に添えられる。
 まるで先ほど彼がギンガにしたように、そのお返しとばかりに言葉は塞き止められた。
 そして少女は、蕩ける程に甘い吐息と共に告げる。


「……このまま帰って、一人になったらって思うと……なんだか凄く淋しくて、切ないんです……」


 だから、と連ね、少女は言葉を続ける。
 耳の奥まで、思慮の奥まで響く甘い残響で。
 どこまでも男を魅入らせる、潤んだその碧眼で。
 柔らかな二つの膨らみを押し付けるよう擦り寄り、しかしその中に恥じらいを孕んで。


「だから、その……今夜は、一人にしないでください」


 絶対的なまでに抗い難い、力ない懇願をした。
 あまりにも男の獣欲と庇護欲と愛欲をそそる、天然自然の媚態がカルタスの心を穿つ。
 もはや鉄の理性など何の役に立とうか。
 少女の告げた請いに彼が応じたのは、言葉ではなく口付けだった。



続く。

440ザ・シガー:2009/12/26(土) 00:15:41 ID:ckqnh6MQ
はい投下終了!

次回、ギン姉の純潔マジカル穴にカルタスさんのギガドリルがドライブイグニッションッッ!!
とりあえず年内に書き上げるのを目指します!

餌(感想)とか恵んでくださると大変ヤル気が出るかもしれません。
ええ、もしかしたら。



しかしカルタスのキャラ付けを色々俺好みに遊んだので、これで良いのか激しく心配。
いや、こういう男キャラ好きなんですすいません。
あと髪の色はアニメでは緑っぽい、という意見もあるが、漫画ではどう見ても黒っぽいのでそっち準拠でお願いします!

441ギンガの恋路:2009/12/26(土) 00:48:25 ID:ckqnh6MQ
ああ、ささいな誤字を発見。

>>436
夢みたいな、いや、もしかしたら本当夢なのかもしれない。
    ↓
夢みたいな、いや、もしかしたら本当に夢なのかもしれない。



です。
保管庫に入れる際はこれでお願いします。

442Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/26(土) 03:17:20 ID:6cexf3r.
>ザ・シガー氏
甘い? いや、これは甘酸っぱいのだ!
そしてちょっぴりビター味。
畜生、砂糖か白濁をぶち込むことしか頭にない俺たち(=サークル)には無理な芸当だぜ……
前編と中編の心地よい対比が染みますなあ。
後編も楽しみに待ってるよー!

***

そんな訳で。
今日は平日だったんだな……テンション高すぎて気がつかなった。
朝から書くつもりだったのに会社に行くという悪夢。でも行かないともっと悪夢orz
20時間とか無理でしたごめんなさい。でもちゃんと完成したよ!
修羅場のち晴れ、らぶらぶドロドロなイクスバティア3Pの時間です。

・本短編は前後編に分かれています。司書の方にはお手数掛けますが分納を願います。
・前編は非エロ、後編はガチエロ。
・ティア、イクス×スバル。スバル総受けヒャッホーイ
・全員若干壊れてます(性的な意味で)
・ユーなの短篇集と連続しているのは前半だけ。とはいえ後編はぶっちゃけエロいだけなので気にしなくて良いかも
・ティッシュのご用意を

それじゃ、はっじまっるよー

443雪をもう一度 1/16:2009/12/26(土) 03:19:00 ID:6cexf3r.
──どこまでも続くこの道が、あなたの腕に触れる日まで……

数年ほど前、ミッドチルダの地にクリスマスが持ち込まれた。
地球風の店が軒を連ねる区域では、大小様々なイルミネーションがきらめき、
カップル御用達ゾーンと化して雑誌に載るなど、結構な賑わいを見せていた。
今日はクリスマスイブ……そこに、女が二人。
スバルが年末休暇のティアを引っ張ってあちこちショッピングを楽しんでいた。
「っていうか、ねえ、スバル。ここあたし達には不釣合な場所なんじゃないの、ねえ?」
「そんなことないよ、ティア可愛いよ?」
「違う、違う! 断じてそんなことじゃなく……ああもう!」

スバルも溜まった休みを消化させられていた。
家で過ごすには手持ち無沙汰で、誰かを誘おうにもエリオとキャロは既にラブラブで間に入っていけなかった。
なのははユーノとどこまでもバカップルをやってるし、フェイト辺りは一家団欒のようだ。
ヴァイスは妹と一緒にいるというし、ヴェロッサは八神家で世話になりつつ、
クロノと呑んだりはやてとよろしくやっているようだ。
聖王教会側は忙しくて敵わないらしい。
知己の全員がこうして過ごしている結果、消去法を取るまでもなくティアと一緒にいることになった。
というか、真っ先にティアに連絡したら、本人は暇で絶望していた。
「クリスマス? ああ、一人でホールケーキを食べる日でしょ」と、本気で信じていた。
少しだけ同情した。
「女二人でこんな……やんなっちゃうわ」
「えー、でも楽しいよ? あたし達が楽しめばそれでいいんじゃない」
「うんうん分かったからもう黙らっしゃい」
イブは明日。互いに渡すプレゼントを物色しようと、服屋や靴屋、ブランドショップに入って、めぼしいものを探す。
と、端末に着信が入ってきた。
ヴィヴィオからの通話で、スバルが端末を取り上げると、少女の甲高い声が耳に飛び込んできた。
「スバルさん、大変ですっ!!」
慌てた様子で、ただひたすら大変大変と連呼するヴィヴィオ。
一体なんなのかと、落ち着くようにスバルは言ったが、それでもさっぱり興奮が収まる気配はない。
「スバルさん、落ち着いて聞いて下さい」
「いや、まずヴィヴィオこそね……」
「いいですか、スバルさん──」

言葉の続きを聞いた瞬間、スバルは店を飛び出していった。
突然豹変した様子にティアは面食らい、慌ててその後を追った。
バカみたいなスピードで疾走するスバルの足にティアはまったくついていけず、後ろから叫んだ。
「ちょ、ちょっと……どこに行くのよ!?」
スバルの足は、賑やかで華やかな通りから、どんどん郊外の方向に進んでいく。
その先には、教会しかないはずなのだが。
スバルはようやく我に帰って、遥か後ろにいるティアへと声を上げた。
「イクスがね、目を覚ましたんだってー!!」
ティアも、弾かれたように足を止めた。

***

息急き切ってスバルが教会に駆け込むと、窓の向こう側に広がっている中庭に、何度となく夢に見た人物が立っていた。
雪が積もる場所で、久しぶりに見る青空を楽しそうに眺めている。
初めての感覚なのか、しゃがみこんで雪に触れては、その冷たさを噛み締めていた。

444雪をもう一度 2/16:2009/12/26(土) 03:20:02 ID:6cexf3r.
スバルはイタズラ心が湧いてきて、中庭に出ると、後ろからそっと近づいた。
長い髪の少女はスバルの存在に気づかないまま、雪遊びに興じている。
そっと手を上げると、スバルは少女の目を後ろから覆った。
「だーれだ?」
少女はビクリと飛び上がると、固まって動かなくなった。
もう一度「だーれだ?」と問いかけると、少女はおずおず答えた。
「……スバル?」
イクスヴェリアはスバルの腕に手をかけて、ゆっくりと振り向いた。
「正解ですよ、イクス」
スバルの顔をまじまじと見つめてきて、しばらくすると、イクスヴェリアの目からポロポロと涙が溢れ出した。
慌ててどこか痛いのかと聞いたら、イクスヴェリアは熱い雫をこぼしながら首を横に振った。
「違います、違うんです……スバルに会えたのが嬉しくて、嬉しくて……
こんなにも早く、スバルが生きているうちに、また同じ時を過ごせるなんて……ホントに、本当に嬉しくて……」
イクスヴェリアの言葉からは、喜びが満ち満ちていた。
その涙がスバルにも流れ込んできたようで、スバルはイクスヴェリアの身体をきつく抱きしめた。
暖かい体温。耳元の嗚咽。
全て、イクスヴェリアが生きている証拠で、互いの鼓動が感じられて、二人は長いことそのままでいた。
「やっと、追いついたわ……はぁ、はぁ、あのバカスバル、足速すぎるのよ」
息を切らしたティアが教会に着いた頃、入り口にはヴィヴィオがいた。
ティアの姿を見つけると、とてとてと寄ってきて、軽くお辞儀をしながら、そっとティアに耳打ちをしてきた。
「ティアさん、今、イクスとスバルさんがいい感じなので、邪魔しちゃダメですよ?」
「あ、ああ……そうなの?」
「ええ。私も本当は、友達とのパーティーに行く途中でちょっと寄るだけのつもりだったんですけど、
思いも掛けず目覚めたので、びっくりして……で、今スバルさんと会っていたので、そっとしてる──って訳です」
「そうなの。はぁ……」
ティアは脱力して崩れ、たまたま通りかかったセインに、水を一杯貰う羽目になった。
後になってティアは思い返す、「急がなくても良かった」

ようやく泣き止んだイクスヴェリアがスバルと一緒に二人の元へと戻ると、
並べられたお菓子と、熱く入れられたお茶で、女四人のお茶会が始まった。
「イクス、このクッキー食べますか? すごくおいしいですよ!」
「あ、それでは頂きますね。それにしても、スバルはよくいっぱい食べられますね。時々羨ましくなります」
「でも、イクス、いつか言ったでしょう? あたしは燃料駄々漏れなんですよ。何なら、あたしの体と交換してみますか?」
「うぅ、やっぱりずるいです、スバルは」
笑いながら、スバルは自分の皿からクッキーを一つ、イクスに差し出した。
「はい、あーん」
「やだ、もう、スバル……みんなが見てますよ」
顔を赤らめつつ、イクスヴェリアは大人しくスバルの指からクッキーを食べた。
が、そこでまさかの反撃が始まろうとは、流石のスバルも予想していなかった。
ちゅぷ、とスバルの指を銜えたまま、離そうとしないのだ。
それどころか、ちゅうちゅうと指先を吸って、可愛らしい歯であむあむと甘噛みしてくる。
くすぐったさがこみ上げてくる一方で、恥ずかしさがそれ以上にやってきた。
「顔、赤いですよ」
微笑みと共に、イクスヴェリアはいつまでもスバルの指をしゃぶっていた。

445雪をもう一度 3/16:2009/12/26(土) 03:21:00 ID:6cexf3r.
ヴィヴィオは「ふふふ、仲良しですね」とコメントを残す一方で、ティアは無言だった。
ようやく解放されたスバルは、次にヴィヴィオにクッキーを差し出す。
次に、またイクスヴェリア。負けじと、イクスヴェリアもスバルにクッキーを食べさせる。
以降、同じことの繰り返し。
スバルがイクスの口へとクッキーを持っていったり、その逆だったり。
傍から見れば、仲の良い友人と言うよりも、むしろイチャイチャカップルと表現した方が適切だった。
熱い紅茶を飲みながら、ヴィヴィオは「二人とも、もう何年もずっと友達だったみたいです」とニコニコ顔だが、
ティアの心中はそんなことを言って笑えるほど穏やかではなかった。
カタカタと、手に持つティーカップが震えている。スバルはヴィヴィオにまた「あーん」をを次にイクスヴェリアで、
その次はティアかと思いきや、またイクスヴェリア。
ティアは目の前に出された凝視したまま、スバルが取り上げてくれるのを今か今かと心待ちにしていた。
スッとスバルの手が伸びてきたとき、一瞬だけティアの顔は明るくなった。
けれど、
「ティア、食べないなら貰っちゃうよ?」
その手がスバル自信への口へと戻ってた時、その明るさはどこかへ飛んで行ってしまった。
ふつふつと怒りが沸き上がり、しかもその怒りは正体が分からないことに、ますますティアの心に苛立ちが募った。
どうしたらいいのか結論がつけられず、ティアはテーブルを叩きつけて、勢いよく立ち上がった。
「ど、どうしたの、ティア?」
スバルは驚いた目でティアを見上げたが、本当に、自分自身どうしてそんなことをしたのか、全く分からなかった。
何かが爆発し、刹那、ティアは腹の底からあらん限りの声で叫んだ。
「ス……スバルのバカー!!」
ティアは誰の静止も聞かず、教会を飛び出してどこへともなく走り出した。

ふと、我に帰った時、ティアは繁華街の真ん中にいた。
飲み屋や風呂屋が軒を並べていて、呼び込みが数十歩歩くごとに手招きをし、甘い言葉で語りかけてきた。
ティアはそれらのどれにも反応することすらなく、悪態を吐くキャッチの声を背中に受けながら、
ただ硬い地面を踏みしめて、とぼとぼと歩き続けた。
「どうして、あんなことしちゃったんだろう?」
バカなことをしたのは自分の方だと、認めない訳にはいかなかった。
でも、何故? どうして? イクスヴェリアが起きたという連絡を受けるまでは、
いや、お茶会が始まるまでは、もっとティアは楽しんでいたはずだった。
女同士で、なんて言いながら商店街を回っていた時も、その裏でスバルと一緒にいられる時間が嬉しかった。
なのに、なんで素直になれなかったのだろう。どうして、イクスヴェリアとスバルが一緒にいると、イライラするんだろう……
「あっ!!」
街外れの公園の前まで来た時、ティアは唐突に思い至った。
スバルに向けていた気持ち。イクスヴェリアに向けられていた気持ち。
それが渾然一体となって頭の中を駆け巡り、本当なのかどうか怪しくなり、やがて心が落ち着くと共に確信へと変わっていく。
嘘だ、嘘だと思いたくても、一旦気づいた激情は有り得ない速度で身体に渦を巻き、ティアを絡め取った。
「あたし……スバルのことが、好き……なの?」
腐れ縁が、果たして何年続いたのか。
異性に興味がなかったのかと自問すると、そうだと自答した。
いや、厳密には、同姓にも興味は沸かなかった。
淡い気持ちの対象がスバルにしか向いていなかったのだと、たった今気づかされた。
「ってことは、あたし、イクスに嫉妬してたってことなの……?」
心の答えは、やはりイエス。
どう足掻いても覆しようのない想いが、間違いなくそこにあった。

446雪をもう一度 4/16:2009/12/26(土) 03:21:56 ID:6cexf3r.
ティアはよろめく足取りで公園に入ると、ベンチにへたりこんだ。
「嘘、嘘よ、こんな……こんな、今更気づくだなんて、莫迦みたいじゃないのよ……いや、莫迦なのか。
間抜けすぎるわ、ティアナ・ランスター。バカ、バカ、バカ!!」
頭をポカポカと叩いて、一人沈む。
星空を見上げて、そこに月はもうなくて、がくりと目線を地面に戻す。
立ち上がって身体を思い切り逸らしてみたが、何も変わらなかった。
なんと遅いことだ。あまりにも、遅すぎる。
スバルが好きだと知っていたら、今日のショッピングはもっと楽しめただろうし、
嫉妬という感情に気づいて余計な癇癪を爆発させる必要もなかった。
どうして、スバルのために、もっと優しく振舞うことができなかったのだろう。
イクスヴェリアと一緒に過ごしている時間を、許してあげられなかったのだろう。
今更、戻ることなんてできない。悔やんでも悔やみきれない。
切なさと愛しさが胸を抉り、暗闇にただ一人佇む。
今から帰ったとして、スバルにどんな顔をすればいいのか。
そんなことさえ分からなくなって、ティアは何度も両頬をバチンと叩いた。
すると、電子音が公園に響いた。聞き慣れた音、端末に着信が入った音だ。
端末を懐から取り出すと、相手はスバルだった。
もう、スバルからの着信履歴が十件近くたまっていた。向こうが心配している証拠だ。
慌てて回線を開けると、すっかり走り疲れた様子のスバルが叫んだ。
「ティア! よく分からないけど、ごめんなさい! 今、どこ?」
あちこち探してたんだけど、とは意地でも言わない様子だった。
ティアは自分がどこにいるのか分からないと告げると、スバルにキョトンとされた。
周囲の特徴を聞かれ、ほとんど何もない、住宅地のど真ん中にあるような公園だと答える。
「でも、繁華街を通り抜けたことだけは覚えてるわ」
「その後、右にも左にも曲がってない?」
「ええ、多分」
スバルはそれで分かったらしい。公園に留まるように言われて、すぐ通話は途切れてしまった。
冷たい風が、一陣吹き抜けていった。その場に立ち尽くしたまま、ティアは心が空っぽのまま、夜空を眺め続けた。

十分ほど経ったか。
スバルが本日二度目の全力疾走で、公園に駆け込んできた。
体力に関しては誰よりもあるはずのスバルなのに、その息は完全に上がっていた。
ティアの姿を見かけると、安心したように手を膝に突いて、息をずっと整えていた。
その間ずっと、ティアは自責の念に駆られていた。
一番大事なことにいつまでも気づかないで、醜い嫉妬でスバルに八つ当たりして、
その上、疲れきるまで走り回らせて、心配させて……
「ごめんなさい、スバル」
ティアは、心の底からスバルに謝った。
もう、自分が嫌いで嫌いで仕方がなかった。
頭を下げたまま、そのままでいると、急にその身体が持ち上げられた。
そして、身体に感じるきつい力。スバルに抱き締められたのだと理解するまで、たっぷり一分はかかった。
「頭なんて、下げないでよ……ごめんなさいはあたしの方だよ、ティア。
イクスとまた会えて嬉しかったけど、それでティアを除け者みたいにしちゃって、ホントにごめん」
走り通しだったスバルの高い体温が、直に伝わってくる。

447雪をもう一度 6/16:2009/12/26(土) 03:23:14 ID:6cexf3r.
イクスヴェリアも同じだったのかな、とティアはしばらく前の過去を思い返した。
知らず、涙がぽろぽろと零れてくる。
自分の不甲斐なさに。スバルの優しさに。そして、スバルへの気持ちに。
「違う、違うの……あたしが、あたしがバカだったのよ……スバルは悪くない、何にも悪くないの……」
泣き崩れそうになる身体を、スバルはいつまでも支えてくれた。
近くのベンチに座って、心が落ち着くと、ティアは途切れ途切れに切り出した。
どうして怒ってしまったのか、イクスヴェリアとスバルの関係。
そして、一度言葉に詰まり、ティアは顔を真っ赤にしながら、深く息を吸うと、一息に言った。
「あたし、スバルのことが……好きみたい」
長い沈黙の幕が降りた。息が詰まりそうな重い空白が、二人の間に立ち込める。
永遠にも思える長い時が経った後、ティアとスバルは同時に声を出した。
「ねえ……!」
あまりにも絶妙なタイミングで互いの声が響きあったので、二人は笑い始めた。
それがまた、面白いように和音を作った。
「スバルからでいいわよ」
ティアが先を譲ると、スバルは「うん」と頷きながら、手元に目を落とした。
ごくりと、ティアは生唾を飲み込む。一体、何を話すのだろう。
開口一番、「ごめんなさい」だったら、どうしよう?
やがてスバルが口を開き、突いて出てきた言葉は、我が耳を疑った。
「あたしもね……ティアが好き」
ティアは、嬉しいとかいう感情よりも、口をぽかんと開けたまま、塞がらなかった。
一体、スバルは自分が何を言っているのか分かっているのか。
それとも、『好き』というのは単に友情の『好き』なのか。分からない、分からない。
「でもね」
スバルが続きを言った時、ティアは覚悟を決めた。
けれど、その覚悟はとんでもない方向へとすっぽ抜けてしまった。
「これが、あたしの気持ちが、ティアの『好き』と同じかどうか、よく分からないんだ……
あたし、ティアと同じくらい、イクスのことを大切に思ってて、大好きだから。
だから、今すぐティアの気持ちに答えてあげることは、できないかな」

『ハハッ、冗談よ、冗談!! あたしとアンタは腐れ縁、それ以上でもそれ以下でもないわ。
これからもよろしくね、スバル。友達として……』
──ティアはそう言おうと思っていたが、完全にタイミングを逸してしまった。
冗談で終らせておけば、この後が気まずくならずに済みそうだった。
けれど、スバルは真剣に考えてくれた。そしてその上で、回答をくれた。
痛いほどの優しさに、ティアの心へチクチクと切なさが刺さる。
いっそのこと、嫌ってくれたら良かったのに。友達の関係のまま、ずっと続いていてくれても良かったのに。
でも、スバルは、決められないと、言った。
だから、ティアには、どうすることも、できなかった。
では、どうすればいいか。答えはもう一つに決まったようなものだった。
「スバル……一つだけ、お願い」
「ん、何?」
明るい調子で、スバルが聞き返してくる。
ティアは無言で立ち上がると、スバルの手を引いて公園を出た。
「ど、どうしちゃったの? ティア、なんか顔が引きつってるよ?」
「うっ、うるさいうるさいうるさい!! いいから黙って着いてきなさい!
返事は今日中にして貰うの、このクリスマスに!
今からイクスのところに行って、どっちをスバルが選ぶのか、どっちがスバルを選ぶのか、決めるのよ!!」

448雪をもう一度 7/16:2009/12/26(土) 03:23:59 ID:6cexf3r.
この選択が間違っていなかったと、ティアは後々になって思い返す。
同時に、恐らく世界で一番過激な選択をしてしまったものだと、思い出す度に顔を真っ赤に染めてしまうのだった。

***

教会に戻ったとき、既に夜の帳は降り、早めの夕食が取られていた。
シスター達とイクスヴェリアが、静々黙々と食べている横で、ヴィヴィオだけが軽いスープだけだった。
「これから、友達とパーティーをやるので。それに、色々あってお腹減ってないんです」
それが、イクスヴェリアの目覚めだけに起因しているのではないということを、この場の誰も知らない。
二人は夕食の御相伴に預かったが、何となくこそばゆくて、スバルとティアの間に会話は無かった。
その様子を敏感に感じ取ったのか、イクスヴェリアもまた、言葉少なだった。
ただ一人、女同士の三角関係に入り込んでいないヴィヴィオだけが、訳が分からずぽかんとしていた。
食事を終えた後、ティアはヴィヴィオに言った。
「ごめんね、ヴィヴィオ。パパとママのところ──家に戻って貰えないかしら? それか、エリオとキャロのところとか……」
ピシッ、とティアは自分の発言に硬直した。
なのはとユーノが婚約したのは、去年のクリスマス。あの後、新人達から漏れ聞いた話では、確か二人は……結ばれたはず。
一方、エリオとキャロも、重大事件さえなければ休暇のはずで、
それはもう他人の闖入が許されない程愛し合っているに違いない。
後で確かめたところ、二人の端末とも終始ドライブモードで、連絡は一切付かなかった。
まさか緊急信号で確かめる訳にもいかず、ティアはこの件を棚上げにした。
ティアが固まったまま、どうしようかと考えていると、最高の名案を思いついた。
「そ、そうよ! ヴィヴィオ、そろそろお友達とパーティーがあるんじゃない!?」
時計を見ると、子供のパーティーならもう始まってもいいような時間だった。
それにヴィヴィオが気付くと、慌てて飛び出していった。どうやら時間をちょっとばかり勘違いしていたらしい。
その前にと、ヴィヴィオはイクスヴェリアを誘ったが、
「あ、イクスはどうするの? 今からでも一人くらいなら──」
「いえ、私はスバルと一緒にいます」
まったくの空振りに終った。
ティアはスバルに振り向き、またイクスヴェリアを見据えると、両方の手を引いた。
「済みませんが、あたし達、お先に失礼します」
ぐいぐいと引っ張っていくティア。連れて行かれるスバルとイクスヴェリア。
シスター達は、そんなに急いでどこへ行くのかと三人を見送った。

***

イクスヴェリアの部屋は、とても静かな場所だった。
こちらからコンタクトを取らない限り、誰も訪れないような、そんな離れの塔だった。
ベッドの上にスバルを正座させると、ティアは仁王立ちになってスバルに迫った。
「二股ってどういうこと?」
単刀直入、かつ強烈な一撃。ただこれは実際、スバル本人に向けた科白ではない。
その横で雷を打たれたように硬直した、イクスヴェリアに向けての言葉だったと言った方が適切かもしれない。
イクスヴェリアは必死に自分を奮い立たせ、ショックから立ち直ると、同じくスバルに迫った。

449雪をもう一度 8/16:2009/12/26(土) 03:25:32 ID:6cexf3r.
「スバル、この女とはどういう関係なんですか。どこまで行ってしまったんですか」
目が据わっている。そして肝も据わっている。流石は、ベルカの冥王陛下といったところか。
突然口調が変わった二人に、スバルは大混乱しているようだった。
「ティ、ティアとは腐れ縁と言うか、士官学校時代からずっと一緒で、ご飯食べたり、お風呂入ったり、買い物行ったり……」
「えっ、お風呂……?」
イクスヴェリアは無言になった。くるりとティアの方を振り向くと、そこでティアは勝利に満ち満ちた顔をした。
裸だって何度も見たんだぞ、と視線で自慢する。思い出せば、裸どころではなかった。
「もう、あたしはスバルに何もかも見られちゃったのよね。だからもう、スバル以外のお嫁には行けない身体なの」
「ちょっ、ティア、あたしそんなとこまで……!」
「あら、おっぱい魔人はどこのどなたでしたっけ」
「あぅ……」
「うっ、スバルは大きな胸の女性が好みだったんですね……」
完全にスバルは置いてきぼりである。女二人でバチバチと火花を散らす。
本人含め、うかつに口を挟もうものならば、その瞬間に死亡確定のスターライトブレイカー&マリアージュが炸裂することだろう。
いよいよ口論が行き着くところまで行ってしまい、膠着状態に陥った二人は、ずいっとスバルに詰め寄った。
「どっちが好きなのよ、スバル!?」
「どっちが好きなんですか、スバル!?」
喧嘩が一歩激化する度に、スバルは一歩後退っていたが、終に壁際に追い詰められてしまった。
二人の少女に同時に言い寄られ、額には脂汗が浮いていた。
極まったのか、スバルは悲鳴を上げて思考停止に陥った。
「あたしがスバルの彼女よ!」
「いいえ、私です」
最後の手段とばかり、どこぞの奉行ばりにスバルの両腕を互いに押さえ込み、全力で引っ張りあう。
こうなったら俄然ティアの方が有利だが、ところがどっこいイクスヴェリアも火事場の馬鹿力で全然ヘコたりない。
──最初に限界を訴えたのはスバルだった。
「……うわぁーん! どっちも好きなの! 決められないの!!」
泣き崩れるスバルに、ようやく我に帰ったらしいティアとイクスヴェリアが、同時にパッと手を離した。
気不味く、顔を合わせる二人。わんわんと泣きじゃくる姿が、罪悪感を誘う。
「お願い、ケンカしないでぇ……そんなの、いやだよぉ……
あたしは、どっちかなんて決められないの……どっちも、好きなんだよぉ」
スバルの『好き』は、友達以上恋人未満のそれなのだが、それに気付ける者は誰もいない。
ティアはいたたまれなくなってきた。二人はじっと、双方硬直したままでいたが、やがて無言のまま意思の疎通が始まった。
火花は少しずつ収まっていき、最後にはティアが一歩引いた。
無言の結論に、スバルが「え、え? え!?」と二人を交互に見ている。
イクスヴェリアはベッドに上がると、スバルにじりじり寄っていった。
「そういえば、スバルさんの先祖が住んでいた世界には、クリスマスなるイベントがあるそうですね。
先程、ヴィヴィオから聞きました」
「あ、ああ、うん。本格的にこっちで流行りだしたのはなのはさんのお陰だけど……」
「そうですか……」
イクスヴェリアはもじもじして、視線を逸らした。
そして、互いの吐息が感じられる距離まで顔を近づけると、イクスヴェリアはガバっと頭を下げた。

450雪をもう一度 9/16 (ここまで前半):2009/12/26(土) 03:26:21 ID:6cexf3r.
「プレゼント……クリスマスのプレゼントは、スバルさんを、くださいっ!!」
目玉焼きが作れそうな、真っ赤な顔。
一方、スバルは目を白黒させながら、イクスヴェリアの告白を聞いていた。

今度は、停滞する沈黙の帳が降りた。
頭を下げたまま、ぷるぷると震えているイクスヴェリアを見つめたまま、スバルは長い間一言も発せなかった。
助けを求めてティアの方を見ると、彼女はそっぽを向きながら、手をひらひらさせた。
念話で、言葉によらず突っぱねられる。
「あたしのことは気にしないで。『今は』、イクスにだけ構ってあげなさい」
その一言で、完全に止めを刺された。孤立無援、スバルは一人で全てを決断する時がやってきたのだった。
覚悟を決めると、ぽん、と両手をイクスヴェリアの肩に載せた。
「顔を上げて、イクス」
震えたまま一言も喋らなかったイクスヴェリアが、ゆっくりと顔を持ち上げる。
その目尻には、僅かに涙が浮いていた。
恥ずかしいのに必死に耐えていたのか、それとも悲しみへの覚悟なのか。
スバルは指先でそっと雫を拭ってやると、唾を飲み込んだ。
「本当に……あたしでいいの?」
イクスヴェリアはコクリと頷いて、きゅっとスバルの腰に手を回してきた。
小さくて温かな、柔らかい少女の身体は、どこまでも華奢で、どこまでも守ってあげたいと思える。
けれど、それ以上の関係になるというのは、どうも、倫理が許さないというか……
「古代のベルカに、こんな格言があります。『供された皿を空にしなければ戦が起きる』と。
俗説ですが、『真の愛に年齢も性別もない』というのもあります」
「つ、つまり……?」
「……プレゼント代は、私の身体でお支払いします」
少女の上目遣い。涙に潤み、煌めいた瞳は、スバルの心を強かに打った。
そしてそれは、もう二度と確認など取る必要がないのだと知った。
イクスヴェリアが、そっと目を閉じて、唇をちょこんと突き出す。
朱に染まった顔を見ているうちに、どくどくと鼓動が上昇していく。
『供された皿を空にしなければ戦が起きる』の意味が、ようやく理解できた。要するに、『据え膳食わぬは女の恥』ということか。
スバルは目を閉じて、イクスヴェリアの身体を抱き締める。
そして、その柔らかい唇に、そっと口づけた。

どれくらい、長いキスだったのか。
少女の髪から漂ってくる、心を蕩かす甘酸っぱい匂いを感じながら、時を忘れていた。
スバルが二度目を開けた時、イクスヴェリアは恋する乙女そのままの顔でうっとりとした表情を浮かべていた。
頭が茹だっているだろうその潤んだ瞳を見ていると、何度でもキスしたくなってくる。
自身も、どこまで理性が続くのか分からないくらい地が上っていた。
「……ダメぇーっ!!」
ティアが思い切りスバルを突き飛ばし、抱いていたイクスヴェリアごとひっくり返る。
もう我慢できないという血走った目のティアはイクスヴェリアを引っぺがし、スバルに濃厚なキスを見舞った。
イクスヴェリアとの純情なキスは露と消え、代りにティアの舌が割り込んできた。
口を、舌を、唇を舐められ、吸われ、愛撫されて、頭がぼーっと霞んでいく。
身体に入っていた力が抜け、くたりとベッドに横になる。完全に、今のスバルはまな板の上の鯉だった。
同時の告白。同時のキス。
一度に多くのことがありすぎて、スバルは幸せでいればいいのか、頭を抱えればいいのか、もう分からなくなった。

雪が深々と積もっていく。
天使たちは、今日ばかりは見逃してくれるらしい。
そう思えるほど、白い羽たちは余りにも静かに降っているのだ。
交互にキスを交わすスバルは、いつしか二人の胸に挟まれていた。
ティアの豊かな双房と、イクスヴェリアのぷにぷにした大平原。
イクスヴェリアに染み付く、まだ青い果実の匂い。ティアから漂ってくる、成熟した大人の匂い。
どちらも魅力があって、捨て難い……
一瞬で恋人に昇格してしまった、二人の少女を同時に抱きながら、スバルは遠い空を見上げた。
「あ、言っておくけどね、イクス。あんたが二号よ」
「その言葉、そのままお返しします」
二人の少女から同時に抱かれながら、スバルは空を遠い目で見上げた。

──そばにいて欲しい、そう、今夜だけは……

451雪をもう一度 10/16 (ここから後半):2009/12/26(土) 03:27:09 ID:6cexf3r.
「二人とも、ちょっと、落ち着いて……ひゃあっ!」
スバルをよそに、一人の女性を巡る闘いは熾烈さを増していた。
ティアのキスで再燃したらしい二人の火花は、いつしかスバルに向いていた。
上着を脱がし、ブラウスを剥いで、しかしぴたりとそこでティアは手を止めた。
「……半脱ぎの方が燃えるわね」
「違うでしょティアー!?」
くいくい、と服の裾が引っ張られる。イクスヴェリアを振り向くと、少女は親指を上に立てていた。
そしてその手は無言のまま差し出され、ティアと熱い握手が交わされた。
──何か、互いに認め合うモノが生まれたようだ。
「今までケンカしてたのにそんなところで意気投合しないでぇー!」
「騒がないで下さい、スバル。今夜は性夜ですよ」
「イクス、一体どこでそんな言葉……んむっ」
声を上げかけた口を、スバルは塞がれた。
イクスヴェリアは舌を強引気味に捻じ込んで、ティアの匂いを掻き出すように、舌を動かす。
「んむっ、ちゅっ、ちゅぷっ、ちゅぱっ、んちゅ……」
イクスヴェリアの激しいキスは、傍で見ているティアをぼけっと脱力させるのには十分だった。
一方のスバルは目をトロンとさせ、力が抜けていっているようだ。
性戯の技術に感心すればいいのか、それともスバルを寝取られることをを心配すればいいのか、頭が混乱してきた。
ただひたすら、小さな少女とスバルのキスを、眺めてばかりいるティア。
凄く羨ましい感情と、次こそはという情熱が、激しく渦巻いた。

キスだけでこんなに気持ちよくなれるだなんて、イクスヴェリアは考えもしていなかった。
スバルの唇は柔らかく、いつまででも触れ合っていたいくらいだ。
口の粘膜同士が濃厚に絡み合い、甘酸っぱいどころの騒ぎではなくなる。
トロトロに甘くて、イクスヴェリアの頭にも血が上ってきた。
刹那だってキスを止めることが不可能で、貪るようにスバルを求める。
何分間そうしていたのか、ようやく情熱的すぎるキスを終えた時、粘度の高い唾液が銀色の糸となって、
二人の間に架かった。しかもそれは、いつまでも切れることなく、ずっと二人の間に架かり続けた。
やがて重力が粘性を上回り始め、ゆっくりとバンジージャンプの紐みたいに長く伸びていき、しかし戻らずにぷつりと途切れた。
上気した顔を見つめ合っていると、後ろから肩をぽんと叩かれた。
ティアは、最高の思いつきをしたというニンマリ顔で、イクスヴェリアに提案をした。
「勝負しましょ。どっちが先にスバルをイかせられるか」
「……ええ、望むところです」
完全にスバルは置いてきぼりだが、女二人の激烈な感情がぶつかり合うところに、本人さえも入っていけない。
かくして、第二ステージの扉が開かれた。

ピンク色のブラジャーを脱がせると、程よく膨らんだ乳房が顕になった。
スバルは完全に身体を横たわらせていて、立ち上がるどころか指一本動かすのさえ難しそうだった。
ティアは下半身の方へと身体を潜り込ませ、スカートとショーツを一気に脱がせた。
だが、ショーツを膝まで持っていったところで、イクスヴェリアが釘を刺した。
「ちょっと待って下さい」
「な、何よ」
スバルの双房を掴みながら、ティアの顔と手元をまじまじと見る。
そして、溜息を吐きながら言った。

452雪をもう一度 11/16:2009/12/26(土) 03:28:07 ID:6cexf3r.
「下着は足首に引っ掛けるものです。あと、靴下もそのままです」
「……そうだったわね、あたしとしたことが全部脱がすところだったわ」
二度目の握手。
訳の分からないところで通じ合う二人に、スバルは完全に投げやりな気持ちになっていた。
スバルの大事なところが全て外気に晒されるようになって、両者の責めは本格化した。
まずは首筋。汗を舐め取るように、下から上へと舐め上げる。
イクスヴェリアは跡が付くほど強く吸ついたが、ティアの方はつつーっとじっくりなぞり上げていく。
痛感と性感が同時にやってきたスバルは、あられもない声を上げた。
続いて、背中。コロリと横に転がして、健康的な尻のラインと足を良く映えらせる。
触れるか触れないかという際どい距離で、背骨に沿って指を滑らせ、脇腹に抜けていく。
同じことを二、三回もやると、スバルの身体はビクリと痙攣を起こした。
まだまだ、これからだ。
続いて、イクスヴェリアはスバルの背中側に残り、その身体を立たせた。
後ろから手を回して、乳房を手の中に収める。丁度お椀型で、汗のお陰もあって手に吸い付くようだ。
下から持ち上げると、程よい重量。これくらいはせめて大きくなりたいものだ、と自分の貧乳を嘆く。
だが、成長期はまだ先なのだ。大丈夫。きっと。多分。
多分。
だが、貧乳はステータスであり、稀少価値なのである。
活かす手はあるのだ。そしてスバルを……イかせる!
ティアに負ける訳にはいかないのだ。情熱から心頭から立ち昇ってきて、気合を新たにした。
もちもちとした感触を手のひら全体で楽しんでいたが、どうにも物足りない。
そこで、胸から腹に向かうライン、逆に首に至るラインを愛撫していったが、何か違った。
ふとスバルの横顔からベッドへと目を落とすと、ティアがニヤニヤと笑っていた。
まるで、「そんなんじゃ無理よ」と鼻で笑っている気がした。
何をするのかと思いきや、ティアはスバルの谷間に顔を埋めた。

スバルの感度は既に極限まで高まっていた。もう、敏感なところを触られたら、それだけでどうにかなってしまいそうなほどに。
ティアは谷間に顔を埋めつつ、イクスヴェリアに支えられた胸をなぞってくる。
それなのに、乳輪付近ばかりさわさわと弄って、一番感じるポイントにまで辿り着いてくれない。
やっと触ってくれる──と思ったら、今度は遠ざかっていく。もどかしい限りだった。
「ティアぁ……イクスもぉ……許してぇ……」
「ダメよ」
「ダメです」
弱々しい声で懇願するが、二人の答えは同じだった。ぴったりとハモッて、それがますますスバルの焦燥感を底上げしていく。
後ろでイクスヴェリアが何か物足りなさそうに身体のあちこちを触っていたが、
今ティアが起こした行動でそれに気付いただろう。
もう、本当に止めてくれないと、おかしくなってしまう──
「ひゃぁっ!!」
「やっぱ許してあげるわ……イけないって辛いものね」
ちゅっ、と乳首に吸い付かれた。そのまま、何も出ないというのにちゅうちゅう吸われる。
赤子が乳を飲むかのごとく、とは言い難い。
すっかり固くなって膨らんだ蕾を、ティアは吸うだけに留まらず、舌先で弾いたり、軽く甘噛みしたりした。
そして『ココ』にまで跡を付けようというくらい、強烈に吸引した。
「いやあああぁっ……ティア、やめて、やめてぇ……」
「絶対に、止めない。ほら、イクスもこっち側空いてるわよ」

453雪をもう一度 12/16:2009/12/26(土) 03:28:57 ID:6cexf3r.
反対側の乳首を指差して、イクスヴェリアを促す。が、少女は後ろからではその蕾に唇を触れられない。
そこで、イクスヴェリアは手で探って乳首を捉え、きゅんと引っ張った。
「あぅっ、ひあぁっ……イクスも、やめてえ……そこ、弱いのにぃ……」
弱点を一つ、自分で喋ってしまい、慌ててスバルは口を閉ざした。
しかしもう遅い。それを聞きつけたティアも、口で蕾を吸いながら引っ張り、
またイクスヴェリアも、コリコリに尖った肉突起を捏ね回したり、きゅんきゅん力を込めたりした。
「あっ、あぁっ、ティア、やめ、て……イく、イっちゃう……はぁんっ、はぁっ、ああああああああぁぁぁぁっ……」
胸への愛撫だけで、軽くではあるがイかされてしまった。
ティアは顔をイクスヴェリアに向けて、勝ち誇った顔を作った。
「ティア、あなたの名前を叫んでいたということは、私の負けですね」
「どうやらそのようね」
二人は握手を交わし、イクスヴェリアが「では、私が二号ということで」と締め括ってしまった。
ティアは喜びを表すこともなく、イクスヴェリアの額に唇を寄せると、また良からぬ思いつきをした。
「じゃあ、これからは協力していきましょう」
「賛成です」
──まだまだ続くようだ。
スバルは諦めつつも、すぐさま来る二回戦の性戯に、果たして精神が耐えられるのか不安だった。

くてんと仰向けに寝かされて、今度は下半身を中心に責められる。
二人とも、一度スバルが絶頂を迎えて身体が敏感になっているだけに、もうまどろっこしい真似はしないつもりらしかった。
股を大きくM字に開脚されると、秘裂を指先でひたひたと触られる。
既に濡れていて、粘性の低い愛液が蜜壷から溢れ出ていた。
「ティアは膣中に指を。私のよりも長いですから。私はこちらを──」
イクスヴェリアは迷うことなく、スバルの淫裂に手を伸ばした。
しかも、割れ目の一番上、身体中で最も敏感な弱点に愛撫を加えてきた。
「ひあぁぁぁっ、イクス、ダメです、そんなとこ、そんなとこぉ……!!」
「そうやってスバルが気持ちよくなってくれるから、いいんです」
ぷにぷにと、全体的に柔らかい秘唇の中で、一箇所だけはまったく違っていた。
充血してカチカチに固くなり、勃起して刺激を求める秘芯を、イクスヴェリアは擦る。
スバルは頭の中にスパークが散り始めて、膝から先の神経が消えてなくなってしまったかのように、快感が頭を揺さぶった。
一点に集中する性感が、甘く蕩かす波となってスバルを襲い、頭をおかしくさせていく。
包皮の上からしばらく、揉み込むように撫でていると、淫核がますます膨らんできて、先端がぴょこんと飛び出してきた。
チャンスとばかりに、イクスヴェリアは最後の盾である包皮をも剥き、真っ赤な肉真珠を晒した。
外気に神経塊が触れて、スバルは小さく呻く。が、すぐにそれが熱に包まれることなど、一瞬前まで予想できなかった。
「うああぁぁぁっ、イクス、やめて下さい、そんな、そんなああああああああっ!!」
ちゅるんと、イクスヴェリアの可愛く小さな口に、淫核が飲み込まれていった。
さっき乳首でできなかったことをやろうとするように、イクスヴェリアは赤子に戻ってスバルのクリトリスを吸い始めた。
ビクビクと身体が痙攣し、痺れて動かない腕を叱咤激励して持ち上げ、イクスヴェリアの顔を引き離そうとしたが、
全然力が入らなくてそれは叶わなかった。
むしろ、中途半端にしか引き離せなかったせいで、却って淫核を強烈に押さえ込ませることになり、
スバルは悲鳴を上げて腕を離した。もう、完全に腰が砕けて何も動かせそうにない。
それだというのに、責めがそれだけで終ってくれなかった。
「あああああぁぁぁぁっ、ティアっ、ダメっ、そこだめえええええええぇぇぇぇぇっ!!」
ティアはぺろりと指を舐めると、スバルの膣へと指を挿れた。
最初は一本だけだったが、やがて二本に増える。
あまり奥まで行きすぎないように気をつけながら、じゅぷじゅぷと抽送を繰り返す。
透明でサラサラしていた愛液は段々と空気が混じって白濁していき、粘度はすくって余るほどドロドロになっていった。
膣壁は肌のどこよりも絡み付きが良い。スバルは、意に反してティアの指を受け入れ、その快楽に酔い痴れていた。
ただ、もう「本意」がどこにあるのか、スバル本人も分からなくなっていた。
本当に意に反していたのか、それとも心の何処かでは望んでいたのか……

454雪をもう一度 13/16:2009/12/26(土) 03:29:45 ID:6cexf3r.
イクスヴェリアに淫核を吸われ、ティアに蜜壷を掻き混ぜられ、もう何が何だか分からなくなってきた。
Gスポットを擦られながら、クリトリスを根元から扱かれた時は、死ぬんじゃないかと思うくらいの愉悦が訪れた。
身体が言うことを利かず、頭もぼーっとしてきた。
鋭い絶頂感だけが下腹部に生まれて、それが徐々に脳髄へとせり上がって来る感覚だけが、スバルの全てだった。
──が。
「ちょっと、イクス、スバル嫌がってるわよ」
「……本当ですね。そろそろ止めましょうか」
ティアが膣から指を引き抜き、イクスヴェリアもまた口を離した。
今度はスバルの淫液も混ざり、新たな銀糸を上の口と下の口の間に広げた。
「えっ……? えっ!?」
首だけが動くので、必死に二人の方を見る。そこでは、三度目の握手が取り交わされていた。
最初のケンカはどこへやら、完全に意気投合している。
靴下を履かされたままの足の裏を手慰みに撫でられ、二人は相談を始めた。
「どれくらい焦らそっか、イクス?」
「そうですね……スバルが自発的におねだりできるまで、というのはどうでしょうか」
「うん、完璧なアイディアね」
スバルは顔を蒼くした。既にイきかけていて苦しいのに、このまま昇らせてくれないなんて……
しかし、共謀してスバルを苛める気ならば、絶対に二人を止められない。
「まずはあたしからね。交互に行きましょ」
「はい、どうぞ」
ティアはスバルの前に座り込むと、おもむろに秘裂に指を滑らせ、全体に愛液を塗りつけた。
そのまま、膣内に指を挿れて、中の襞に擦りつける。
「んっ、スバル、愛液でベトベトよ。それに、凄くえっちな匂い……」
「いや、いやぁ、言わないでぇ」
「クリトリスもこんなに勃起させて、変態なんじゃないの?」
卑猥な単語を連発されて、スバルはイヤイヤと頭を振る。
けれど、完全にスイッチの入ったティアには、まったく効果がないどころか、逆に加虐心を煽ってしまったようだった。
「だらだら愛液垂れ流して。スバル、分かる? あんた、淫らしい汁がお尻から伝って、染み作ってるわよ」
「ウソだぁ、そんなこと……言わないでよぉ」
イクスヴェリアからも、追い打ちがかかる。
見下したような、失望してしまったような目で、上からスバルのことを見下ろしてきた。
「スバルはえっちだったんですね。もっと格好良くて、頼りになる人だと思ってたのに……そんなに淫乱だったなんて」
「ちがっ……あたし、淫乱なんかじゃ……ふにゃああああああっ」
すっかり出来上がった身体が今更何を言っても、二人には通じない。
捻るように淫核を摘み上げられ、スバルは嬌声を漏らした。
止め処なく流れ続ける淫液を、ティアは一匙すくいとると、ぺろりと舐めた。
「こんなにえっちな味なのに? スバル、嘘をいう娘はおしおきよ」
言うが早いか、ティアはスバルの秘裂にむしゃぶりついた。
わざわざ激しく音を立てて愛液を舐め取り、啜っていく。
「ふあぁっ、いやぁっ、ティア、やめてぇっ……」
「正直になりなさい。アンタは、本当は凄くえっちで、おまんこぐしょぐしょに濡らして、
こんなにクリトリスビンビンに立ててる淫らしい娘なのよ」
「いやだ、いやだぁ……あたし、そんな、えっちじゃないからぁ……んああああぁっ!!」
ティアに淫核を摘まれ、擦られ、舌は蜜壷に入れられて掻き回される。
頭が狂いそうな程の快感に踊らされて、スバルは悶えに悶えた。
「あぁっ、イくっ、イくぅっ……」
「──じゃ、おしまい」

455雪をもう一度 14/16:2009/12/26(土) 03:30:27 ID:6cexf3r.
電光石火の速度で、ティアはスバルの身体から離れた。
びくびくと脈打ち痙攣する身体をどうすることもできず、拘束されていないのに一歩たりとも動けないのがもどかしい。
「ティアぁ……助けてよぉ……イきたい、イかせてぇ……」
「ヤダ」
知り合った頃そのままの口調で、むべもなく突っぱねられた。
震える顔でイクスヴェリアの顔を見ると、凄く可哀想なものを見る目をしていた。
「あとはイクス、あなたに任せるわね」
「はい、分かりました」
イクスヴェリアはクスクスと、ベルカの王に相応しかったであろう妖艶な笑みを浮かべると、スバルの身体を跨いだ。
漂ってきた甘酸っぱい匂いは間違いなく幼い少女のものなのに、五感で感じ取れないオーラの方は完全に成熟していた。
一体ぜんたい、何が成し得た魔法なのか……
「スバルの身体は、本当に感じ易いですね。楽しいです」
剥き身の肉真珠を少女の指が摘み、上下に激しく扱く。
バチバチと頭に火花が飛び交うが、そこですぐイクスヴェリアは手を離す。
今度はさっきよりも激しくクリトリスを擦られ、悲鳴に近い絶叫を上げたが、また一番上に行く寸前で落とされる。
その間隔はどんどん短くなっていったが、アキレスが亀に永遠に追いつけないような、無限の焦らしを味わされた。
「いい加減、認めたらどうでしょうか? スバル、あなたは淫乱で、どうしようもないほどえっちなんですよ」
その証拠に、とイクスヴェリアはまた淫核に吸いついてきた。
今度は、口の中で空気を抜いて圧力を掛けつつ、舌先でチロチロと先端を舐める。
スバルの痙攣に合わせて軽く歯を立ててコリコリになった秘豆を噛み、
それに飽きると根元からベロベロ舐め上げ、そしてスバルがイきそうになると口を離した。
「その証拠に、スバルのココはこんなに大きくなっています。スバルはいつの間に男性になったんですか?」
「あ、あたし……男じゃ、ない……よぉ……」
「聞き分けがないですね。こんなに大きなお豆の女の子が、いる訳ないじゃないですか」
何度、同じことを繰り返されたのか分からない。
前後も上下も、何もかも分からなくなるまで、淫芯を吸われ、甘噛みされ、扱かれた。
息は荒く、目の焦点も合わない。自分の名前すら、下手すれば忘れそうな程に強烈な、快楽の奔流だった。
「うわぁ……イクス、あなた、見てくれに似合わず鬼畜ね」
「いえいえ、ティアに及ぶものでは」
はっ、はっ、とスバルは短い息を犬みたいに吐いている。
いや、むしろ、発情した牝犬同然だった。
「さあ、スバル。アンタそろそろ限界でしょう? おねだりしてみなさいよ」
「そうですよ、スバル。あまり頑張ると壊れてしまいますよ」
ティアとイクスヴェリアは何事かを耳打ちで相談し、それぞれが左右の耳に就いた。
そして、何が始まるのかと思えば、二人は同時に耳元で囁いた。
「言ってご覧なさい、『あたしは、クリトリスを淫らしく勃起させた淫乱です。この変態牝犬をイかせて下さい』、って……」
二人の言葉が、完璧なハーモニーを奏でた。
スバルは右を見る──ティアが、「言うまで絶対に許さない」という顔で笑っていた。
今度は左を見る──イクスヴェリアが、「スバルの変態」という憐憫と侮蔑を絶妙な割合で混ぜた顔を作っていた。
涙が溢れてきた。今日、泣くのは何度目だろう。
雫がぽろぽろと、頬を伝ってシーツに落ちていく。もう、シーツが何で濡れているのかなんて誰にも分からなかった。
「お願い、します……」
スバルは弱々しく懇願した。しかし、ティアもイクスヴェリアも非情だった。
わざとらしく聞き耳を立て、同時に聞いた。
「聞こえないわよ」
「聞こえません」
それで、スバルの心は崩壊した。性の愉悦を求めるためならば、もう何でも良くなった。
教会中に響き渡るような凄まじい大声で、スバルは哀願した。

456雪をもう一度 15/16:2009/12/26(土) 03:31:54 ID:6cexf3r.
「あたしは……あたしはっ、クリトリスを淫らしく勃起させた淫乱です!!
この変態牝犬を、イかせて下さい!! いっぱい気持ちよくして下さい!!
お願い、ティア、イクス、イかせてええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇっ!!」
鼓膜がビリビリ来た。もう少し声が大きかったら窓ガラスが割れたかもしれない。
文字通り、おあずけを貰っていた犬がようやく許可を貰えた時の顔を作って、スバルは心の底から喜んだ。
二人は顔を見合わせて、スバルに向かい、コクリと頷いた。
「ごめん、スバル。ちょっとやりすぎちゃったかしら?」
「私も、少し調子に乗りすぎてしまったようです」
「そんなこと、そんなこと何でも良いからぁっ……早く、早くあたしをイかせてよぉっ!
クリトリスでも、おまんこでも、どこでもいいから、お願い、イかせてぇっ!!」
完全に、スバルは牝犬同然になっていた。
ちゃんとエサ──絶頂をあげれば元通りになるのだろうが、
まさかここまで乱れるなんて、イクスヴェリア本人すら思っていなかった。
互いに頷くと、ティアと分担を決めた。
「あたしはスバルに舐めて貰うことにするわ。あなたは?」
「私は、スバルの一番感じる場所を感じていたいので……」
「じゃ、上下の口でケンカせずに済みそうね」
「そうですね。ステキです、ケンカをしなくてもいいというのは」
今までで最も固い握手を交わして、二人は別れた。
イクスヴェリアはスバルの股と自身のとを交差させて貝合わせを。
ティアは、スバルの顔に騎乗位で跨りながら、手を伸ばして胸を。
それぞれ、互いの快感を最も求められる方法で、しかも同時にスバルへ最高の快感を与えんとしていた。

「ふあぁぁぁぁっ、またイくっ、許してえぇぇぇぇ……」
連続五回目。
スバルは二人同時に敏感な突起を三箇所全て責められて、終りのない絶頂へ突入していた。
くちゅくちゅと、粘液のじゅぷじゅぷと泡立ち、掻き混ぜられる水音が、部屋中に響く。
イクスヴェリアはその秘貝をスバルの秘唇に押し付けながら、絶え間なく腰を動かしていた。
きっとスバルは、こんな小さな少女にずっと焦らされ、今度はイかされ、凄まじい被虐感を味わっていることだろう。
但し、それを本人に聞くことは叶わない。狂乱してイき続けている今のスバルには、何を言っても無駄だった。
淫核同士を擦り合わせた悦楽は、もちろんイクスヴェリアにも伝わり、耐え難い波が精神を攫っていった。
「スバル、私も、もう……あぁっ、あああああああぁぁっ!!」
「あたしもぉっ、またイく、イくっ……いやああああああああああああああぁぁぁぁーっ!!」
イクスヴェリアは焦らされて続けていた訳でもなく、一度きりの絶頂で満足し、ティアに続きを譲った。
スバルが落ち着きかけたのを見計らって、ティアは秘所を上からスバルの口に押し付けた。
「んむっ……!」
「アンタと違ってね、スバル……あたしは中派なの、よっ……。もっと、舌を入れて、ちょうだい」
「んん、んん、んーっ!」
ティアはスバルの乳首を捏ね、引っ張り、リズミカルに両方の突起を苛めた。
乳房全体を揉みしだいたり、絞るように蕾を抓ったり。
そうこうしているうちにスバルはティアの一番感じるポイントを見つけたらしく、そこを重点的に舌で舐め始めた。
「そうっ、そこよ、上手だわ、スバル……うあぁっ!」
思ったよりも、快楽が訪れるのが早い。スバルは今まで自分にされたことを、必死に模倣しているのだ。
愛しさよりも先に絶頂感がこみ上げてきて、ティアは膝を突いてスバルの腹に伏した。
乳首を強く捻り上げると、一層強く秘唇をスバルの口に押さえて、ティアもまた喘ぐ。
「あたしも、もうすぐ、イく、わよっ……スバル、一緒に……ふあああああああああああぁぁぁぁっ!!」
「んっ、んんっ、んんんんんんんんんんんんーっ!!」

457雪をもう一度 16/16:2009/12/26(土) 03:32:26 ID:6cexf3r.
こくりこくりと淫汁を飲み下されていく感覚は、そのまま後戯になる。
長く高く昇っていく子宮の愉悦が、ゆっくりと全身に広がっていった。

***

「イクス……いじわるです」
「えへへ、ごめんなさい」
「ティアも、そんなにドSだなんて知らなかったよ……」
「アンタがドMだった、っていう言い方の方が正しいんじゃない?」

一人分のベッドに、いくらなんでも三人は寝られない。
ベルを鳴らして、ドア越しに着替えとシーツを頼み、全員寝間着になると、三人並んでベッドの縁に座った。
「でも、あたしは、二人が仲直りしてくれたのが、一番嬉しいな」
スバルはティアとイクスヴェリアを交互に見て、ニッコリと微笑む。
思えば、二人とも、スバルが見せるこの優しさに惹かれたのではないか。
窓の向こうでは、相も変わらず雪が深々と降っていた。
降っていたことにも気付かないくらい、静かに積もっていったのだ。
深夜、日付が変わり、クリスマスとなってしばらく経つまで、ずっとその調子だった。
「……あら?」
変化が現れたのは、長針が半周した頃。
雪の量が減り、やがて止み、水を打ったように世界が静かになった。
誰もが、これから何か特別なことが起きるんじゃないかと期待していた。
そしてそれは、見事に実現した。
「ティア、イクス! あれ見て、あれ!!」
三人揃って、空を見上げる。幻想的な光景が、ベルカの地にあった。
天使の梯子。あれだけ雪を降らせていた雲が切れて、その隙間から月明かりが差し込んでいる。
太陽ではたまに見かける瞬間だが、月の場合は満月でもなければまず見ることができない。
しかも、今日は一年で一番幸せな日だ。どんな魔法よりも素敵で、どんな科学でも再現できない景色。
「空もクリスマスプレゼントをくれるのね……綺麗だわ」
「本当です。私の知らない光景を、また一つ観ることができました」
三人は、顔を見合わせて笑った。そして、互いに顔を寄せ合う。
スバルは両方の顔を見ながら、その唇へ順番にキスした。
「えっと、二人同時でいいなら、これからもよろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をすると、ティアもイクスヴェリアも「こちらこそ」と指を突いた。
ゆっくりと晴れ渡っていく寒空から、月の光が差し込んできた。

誰にとっても、最高のクリスマス。
友情と愛情で結ばれた三人は、いつまでも夜空を眺めていた。

458Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/26(土) 03:33:11 ID:6cexf3r.
同じことの繰り返しとは、要するに作者の怠慢であり、同時に様式美でもある。多分。
エロくなかったらごめんね。マンネリだったらごめんね。期待を裏切ったらごめんね。
でも、読んでくれたのならば、もうそれだけで嬉しいです。
そなたに百万の感謝を。(CV川澄)

そいじゃまた。少し遅めのォ……メリークリトリス!!(ぁ

459Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2009/12/26(土) 03:36:34 ID:6cexf3r.
追伸
同じ『こと』というか、同じ『シチュ』と言った方が適切かな。
念のために言うとザ・シガー氏の作品とは一切無関係です。

そして、氏の投下から時間も経っていないので、
そちらへのコメントも気軽にどうぞ。

460名無しさん@魔法少女:2009/12/26(土) 08:08:38 ID:pDXwVEVA
>ザ・シガー氏
ギン姉可愛い過ぎて生きるのが辛い…GJ!
続き全裸で待ってるから風邪引かないうちにお願いします!

>Foolish Form氏
ティアとイクスの握手に全力で賛同したいw
素晴らしい嗜好とエロスにGJ!

461名無しさん@魔法少女:2009/12/26(土) 21:02:56 ID:cCKLvJ9k
ところでなのはって無印1話で
両親を見て「仲良しさん」って言ってたよな

もしかして仲良しの基準があれなのか・・・?
※士郎パパンとデビット(アリサ父)をアッー!な関係と認識することになるのは不問としてください

462名無しさん@魔法少女:2009/12/26(土) 21:39:46 ID:fRly/clc
>>461
だろうよ
あんなの毎日見てたら感覚狂うわw

463名無しさん@魔法少女:2009/12/26(土) 21:51:04 ID:6bQXdFFw
>>461-462
子供の頃は、独りが多かった、っていうのと、
その後ラブラブしてる両親とか仲のいい兄&姉で「自分だけ浮いてる感じです」って言ってたね。
父と母は「とっても仲良しさんです」とも。

つまり、ユーノくんとかフェイトそんと置き換えてみる。

ユーノくんは、そんななのはのところに現われて、
・魔法のお師匠さんで、背中を預けられるパートナー
・境遇とか、似た者同士で、はじめて深く付き合える男の子の友達
…という立ち位置を確立。
10年以上経っても、ほとんど変化なく「仲良しさん」してますが、
それレベルが「心の旦那様」的なものに傾いてそうな感が……(苦笑)
これくらいにして、あとは割愛。

フェイトそんとは、兄&姉のスキンシップ多めなのをさらに1.5倍にした感じ。
あとは、彼女とのこともまぁ、色々ありますんで、割愛(笑)。

とにかく、基準はかなり高いっぽいね。
友達の次は、恋人とかすっ飛ばして、いきなり家族っぽいレベルに…(汗)

とりあえず、この3人、色々似てるとこ多い気がします。
フェイトも、一応ユーノくんの弟子でもありますし(魔法教わってるので)、師弟そろって似たもの同士ですな。
3人とも、そういう基準も似てるかもね




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