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百面相の誘惑は止まらず

8PON:2014/01/21(火) 23:31:11 ID:1MLnti.g
『いやあ、河原さん。久しぶりですな』
『おぉ、米田さん。どうです、そちらの景気は』
『まぁ、おかげ様でといった所ですよ』
大企業の重役級や、財界人、著名人と、そうそうたる顔ぶれが一堂に会して重厚な雰囲気に、お抱えの秘書や、ホテル従業員、裾の短い浴衣ドレスに身を包んだバンケットなど、さらには女性芸能人までが集って花を添えている。
これほどの人数が参加するのだから、会場規模も相応の広さが必要というものだ。ともなれば、達明一人で百面相の出没を警戒するのは困難である。
秘書の金森雛子とて、まだ新人という立場から挨拶回りに励んでいるせいで、何度も達明の側を離れてしまっている。もはや、今自分の隣りで静々と佇んでいる雛子が本物なのかどうかも怪しい。
『こちら、新しい秘書の金森と言いますんで、よろしく頼みますよ』
『新しい秘書?前にお会いした女性は辞められたんですか?』
『いえ、河原の元に就く秘書は何人かおりますので、私もその中の一人とお考えください』
言葉遣いの甘さも見せず、しっかりとした対応を見せる。
これが、先輩秘書たちに指導を受けた成果なのか、それとも百面相が変装した雛子であるからなのか、簡単に判別がつけられるものではない。
もちろん、疑うべきは雛子だけではなく、相手の男性の横に佇む、若く美しい秘書とて同じだ。
『それならば、ウチも似たようなものだな。佐野君は、毎度就いてくれているわけではないのでね』
『佐野杏子と申します。今後ともよろしくお願いいたします』
“キョウコ”という名前の響きに、名刺を受け取った達明はハッと杏子のことを見る。
なにしろ、今日だけで百面相にはその名前の女性に何度も変装されたのだ。本田響子、高瀬今日子、深町恭子と来て今度は・・・と考えてしまうのも無理はない。
しかし、杏子の方はその反応にもキョトンとしているだけで、奇妙な素振りを見せては来なかった。それでも、見れば見るほどその美貌に加えて、スーツの上からでもわかる胸の大きさ、ベージュストッキングの脚線は、百面相が変装するにはもってこいの素晴らしさを誇っていると思えた。

『皆様、本日はお忙しい中お集まりくださり・・・』
達明の警戒心などお構いなしに、進行係の言葉が会場に響き渡った。ステージの下手にて声を発する女性もまた若くて美しく、スラッとしたスタイルも含めて文句は無い。
頭を抱えたい思いを表に出すことも叶わぬ達明は、雛子や杏子を側に置きつつ、ステージ方向に目を配った。


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