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百面相の誘惑は止まらず

39PON:2014/03/20(木) 11:33:31 ID:.pJe0kPw
杏子と達明は、会場に向かう途中でも話を続けていた。
『タバコはお吸いになられるのですか?』
『いや、娘たちに反対されてからは止めてしまったな。かれこれ、3年は経つか・・・』
『クスッ、可愛い娘さんには嫌われたくないですものね』
美香と亜衣のことを知っているかのような口ぶりに、漸く何かを仕掛けるかと杏子を窺うも、これまでにあった胸元を浮かせたりマスクを歪ませるような行為に及んでは来なかった。
『ご存知かとは思いますが、うちの米田はかなりのチェーンスモーカーでして、仕える私どもも健康に影響が無いかと心配しているところなんです。もしよろしければ、河原様からも注意してくださいませんか?』
『まぁ、そうだな・・・タバコなど、百害あって一利なしと言うからな』
不審な行為は無いかと、振動音や服に浮かぶラインに神経を尖らせるものの、依然として何も起こらない。
『お酒の方も、毎日・・・』
『河原専務!』
突然、二人の会話に割り込んで来たのは、秘書の金森雛子だった。雛子は、達明を見つけるなり、パタパタと慌ただしく近付いてくる。
その剣幕に驚いたのは達明では無く、杏子の方だ。秘書らしからぬ行動と思ったようで、目を丸くして唖然としている。
『まだ、新任なものでな。あの若さが彼女の良さとも可愛いところとも言えるのだが・・・もし何か気になることがあったら、言ってやってくれると助かるな』
『左様、ですか・・・』
どうやら、この杏子は百面相の変装ではないと感じた。この反応は、やはり本物の秘書にしか滲みだせないものだと察したせいだ。
『専務!お願いですから、突然どこかに消えたりしないでください!』
『あ、あぁ・・・すまなかったな。このことは、海原君たちにも言わないでおくから』
『そういうことを言っているんじゃありません!もおっ・・・』
癇癪を起こしている雛子を見ても、達明は不快に思うことはなかった。百面相が姿を晦ませたのだから、この雛子が偽者と考えられなくもない。だが、このような一面もまた、彼女本人にしか滲みだせない物であると直感したからであり、まるで娘を見る親の気分だった。


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