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鹿島直哉の場合
1
:
よんよん
:2009/05/27(水) 23:32:55 ID:???
鹿島直哉は目を覚ました。目を覚ましたといっても、目覚まし時計がなったとか、朝日が目に入ったとか、そういう日常的な状況で覚ましたのではなかった。
『・・・ん・・?』
体が締め付けられるような感覚と、ガサゴソと聞こえる物音・・それが直哉が目を覚ました原因であった。
「あ、起きちゃったのね?あまりにぐっすり寝てるものだから、ちょっとイタズラしちゃったわよ♪」
目を覚ましたばかりの直哉の耳に、唐突に聞きなれた女性の声がこだました。
『・・え?』
寝耳に水というのか、直哉はキョロキョロと周りを見渡した。窓の外側を見る限りはまだ日は昇ってはいない。つまり、まだ深夜といったところだろう。
自分のいる場所は、直哉である自分の部屋。その部屋の中央に、母親である鹿島秋子が机の上に座っていた。母親といっても実父の再婚相手である。年齢も二十代とあって、母というより姉に近い感覚でもある。
『か、母さん・・!?』
なぜ自分の部屋に母親がいるのか。
『こ、これはいったい・・』
そしてなぜ、自分は椅子に縛り付けられているのか。そう、先ほどから縛り付けられるような感覚があるのは、直哉自身が椅子に座らされたうえにロープのようなもので縛られているからであった。
「言ったじゃない。イタズラしたくなったって。・・ほら、さっきまで写真を撮っていたのよ」
『写真・・いったいなんで?』
母親の奇行に直哉は戸惑いを隠せないでいた。そもそも母親はこんなことをするような人間ではないはずだ。
「あまりに寝顔が可愛かったからよ。ほら、写真を見てみる?」
可愛いといわれても、直哉は男であるのだから別にうれしいものではない。しかしそんな直哉の思いに気づかないのか、秋子は嬉しそうに椅子に縛られて動けない直哉に写真を見せつけた。
「どう、可愛らしいでしょ?」
『・・え?』
写真を見て直哉は驚いた。そこに写っていたのは・・・
2
:
よんよん
:2009/05/28(木) 22:47:03 ID:???
写真に写し出されていたのは、椅子にロープで縛られたまま眠っている鹿島秋子であった。
『か、母さん!?』
驚いて直哉は、秋子の方に振り向いた。秋子はそんな直哉を面白おかしくニヤニヤと笑っている。
『なんで母さんが・・?』
再度写真を眺めても、やはり写っているのは鹿島秋子である。だが、直哉はすぐに写真に違和感を感じ取った。
『この写真に写ってる母さん・・なんで俺の服を着ているんだ?それよりも母さんはどうやって自分の写真を撮ったんだ』
この写真は目の前の秋子が直哉に渡したものである。だから直哉は目の前の秋子が自身を椅子に縛りつけて、それを写真に撮ったものだと思ってしまった。
しかしそもそも椅子に縛られた状態で、どうやって写真を写したのか、そしてなぜ写真に写る秋子は、直哉の衣服を身に纏っているのか・・直哉はその意味を理解しかねていた。
「クス、おかしな事を言うわね」
首をひねる直哉に、秋子は答えた。
「あなた、さっきから母さん、母さんって言ってるけど、鹿島秋子はあなたじゃない。さっきも言ったけど、私が撮ったのはあなたのことよ。ほら、鏡を見てみなさいよ」
そういって秋子は、あらかじめ用意していたのか、机の横に置かれていた大き目の姿見を直哉の目の前に移動させた。
「ほら、写真とおんなじでしょ?」
直哉が鏡を見ると、そこに映っていた者・・それは椅子に縛られ身動きが取れない鹿島秋子であった。衣服は写真と同じく、直哉の男物の衣服を纏っている。
『え・・・・・?』
直哉は鏡を見て呆然とした。そこには自分の姿が映っていない・・代わりに母である鹿島秋子が映っているのだから、呆然とするのも仕方がないのだが。
『な、なんで母さんが・・え・・?』
鏡に映る秋子と、机の上に座る秋子。衣服は違えど、その姿には寸分の違いもなかった。
3
:
よんよん
:2009/06/09(火) 22:32:20 ID:???
『なんで鏡に母さんが・・』
「まだ分からないの?それがあなたの姿なのよ?」
秋子が秋子をなだめる様に諭す。傍から見るとそのような光景であった。
『これが・・俺・・?』
秋子が『俺』などという一人称で話す様は、秋子を知る人物からすれば違和感を感じるに違いないだろう。しかし今の直哉に、そのような事を思いつくはずもなかった。
『まさか、これは・・この前と同じ状況・・!?あれは夢・・じゃなかったのか』
直哉は何度も鏡を覗き見た。そこに写るのはもちろん秋子の顔であるが、椅子に縛り付けられている直哉には、自分の顔を触り、それを確認することができない。だが先ほどとは違い、驚きよりも確認という意味合いが強かった。
「クク・・思い出しましたか?ナオ君?」
そんな様子に、机に座る秋子は軽く微笑んだ。だがその声色は先ほどとは違う。
『その声・・恵梨の声じゃないか!』
恵梨というのは直哉の恋人の名前であった。その恵梨の声が目の前の秋子の口から聞こえたのだ。
「クス、さすがに恵梨の声はわかっちゃうかな。ナオ君♪といってもこの顔じゃ、おかしいかな」
そういって机に座る秋子はいきなり自分の首の皮膚を掴み、いきなりグイグイと引っ張り始めた。すると首の皮が引っ張られるにつれ、首や顔などに皺が浮き始めゆがみ始めていく。
『・・っ!』
秋子の顔はみるみるうちに歪み、さながら昆虫の脱皮のように皮膚が捲れあがっていく。だがそれも数秒にも満たないうちに、さっと顔の皮膚がすべてめくれてしまった。
「これでどうかな?ナオ君」
『・・恵梨・・・いや、お前が怪盗だな!』
秋子の顔の下にあったもの・・それは岡崎恵梨の素顔であった。だがそんな恵梨に直哉は睨み付けた。
「そうですよ。クク・・気がつくのが遅いですね。この家の人ってみんな鈍感なのかなぁ?」
直哉はつい先日のことを思い出した。怪盗がこの家に入り込み、恵梨やその友人・・また家族やその知人など幾人にも化けたのである。その際、直哉自身もその変装を直に味わうこととなったのだが・・
『クソ・・俺に何のようだ!』
「何のようって、本当はあなたに用はないよ。ただナオ君に私の変装を見せ付けておこうかなって思っただけ。でもナオ君も私になれたりして、結構気分は良かったんじゃないかなぁ?あ、今は秋子さんの変装をしてるんだっけ」
先ほどまでは秋子と秋子の会話であったが、今は恵梨と秋子の会話となっている。もちろん二人とも本物の恵梨と秋子ではない。
「そうそう、もうそろそろ私も出かけなきゃいけないし・・クク・・」
そう言って恵梨はニヤっと笑いを浮かべて、直哉に背を向けた。そしてそのまま、部屋を出て行こうとする。
『ちょっと待てよ、俺をこのままにする気か!?』
秋子の顔のまま椅子に縛られては、当然直哉には具合が悪い。直哉は怪盗を呼び止めようとした。
「ああ、そうだったね。ナオ君は縄抜けなんてできないんだった。それにナオ君は私の変装も満足にとけないだろうから・・ちょっとだけ手伝ってあげるね」
『え・・』
そう言うと恵梨は・・・いや怪盗は直哉のそばに不気味に近づくのであった。
4
:
よんよん
:2009/07/14(火) 22:13:03 ID:???
『くそ、なんだってんだよ・・』
直哉は何度も独り言を呟いていた。怒りの矛先である怪盗はすでにいない。
『・・・っ』
怪盗は直哉の戒めを解いたと同時に被せていた秋子のマスクも抜き取り、そのままこの家から出て行ってしまったのだ。
一人残された直哉は、仕方なく鏡を覗いていた。そこにはいつもと変わりない直哉の顔が写っている。
『元に戻れたのはいいが・・。いったいあいつの目的はなんだっていうんだ?』
謎に包まれた存在である怪盗の行動を理解するには、直哉の持つ情報だけでは全く持って足りるはずもなかった。
『・・・とにかくこれでゆっくり休めるか』
邪魔者がきえ、ようやくベッドで眠れると思い、直哉はベッドの上にゴロンと寝転がった。だが、妙な違和感がまだ直哉の体に残っていた。
『ん??』
妙な違和感というのは、体を締め付けられるような感覚である。それは椅子に縛られていたような局部的な締め付けではない、体全体が締め付けられるような感覚であった。
『・・なんか変だな』
怪盗はもういないし、自分の顔も元に戻っている。なにも問題ないはずだ、そう直哉は考えるものの、一度感じてしまった違和感はそう簡単に消えるものではなかった。
『なにか着せられているような感覚だな。・・・服の下に何か着せられてるのか?』
直哉はベッドから立ち上がった。とはいえ、ここで服を脱ぐのではなく、まずはトイレに向かうのであった。用を足すついでにでも調べようと考えたのであろう。
『・・・はぁ。もう朝の5時か6時くらいか?』
日はそろそろ昇りはじめようとしているのか、外はうっすらと明るくなっていた。
直哉はズボンのチャックをおろし、立ったまま便座に向かって排泄行為を行おうとしていた。
『え?・・あれ?』
直哉はチャックの中に手を入れた。そこには生まれてこの方いつもずっとあるはずの直哉のモノが存在するはずである。
だが直哉の手には何もつかむものがない。それどころか股間には男性にあるべきモノはなく、代わりに前バリで隠された女性の秘部がついている・・平べったい股の感触を感じるだけであった。
5
:
よんよん
:2009/07/14(火) 22:13:36 ID:???
『こ、これは一体・・?!』
直哉は慌ててズボンを下ろし、さらにトランクスも脱ぎおろした。そこにはやはり男性根はついていない。白い肌に包まれた女性の下半身があるだけであった。
『まさか・・いや、胸はない。下半身だけ・・か?』
上半身は顔を含めて直哉のものである。だが腰から下は綺麗に女性の体であった。
『怪盗の仕業か。まったく・・下だけまだこんなものをきせていたのかよ』
下半身だけのスキンスーツならすぐに脱げるだろうと考え、直哉は上半身と下半身の境目に指をいれようとした。
『ん・・?指が入らないぞ』
直哉はスキンスーツを脱ごうと、腰から下の境目に指をいれようとした。だがスーツは伸びるものの、一向に自分の皮膚から離れようとしない。それどころか自分の皮膚まで伸びる始末である。
『ど、どうなってるんだ・・?』
簡単に脱げると思っていた下半身だけの変装スーツ。しかしスーツに不慣れな直哉にとっては、それはなかなか大変な作業であった。
またそれに加えて、直哉はおおきな勘違いをしていた。
『・・くそ、どうなってるんだよ』
やけくそに力任せで下半身を脱ごうとする。もちろん下には何も着ていない状態であるため、モデルとなった女性の体は丸見えである。
ただ前バリが張ってあるため、必要以上のものまでは見ることはなかった。
『はぁはぁ。これが脱げなかったらどうすんだよ・・』
怪盗はまたこの家に戻ってくるのか、それまでこのままずっと下半身は女のままか・・直哉は冷や汗をかきそうになった。
『クッ・・!これでどうだ・・!』
直哉は力任せに皮膚を引っ張ると、ズリ・・と皮が捲れるような音がした。
『ん!?』
捲れたほうの皮膚をみて、直哉は目を疑った。なにせ今捲ったのは、下半身の変装スーツではない。上半身の自分の体であったからだ。その上半身の体が綺麗に上側に捲れたのである。
『え、あ・・なんだこれは・・』
捲れた皮を上に引っ張っていくと面白いほどに簡単にめくれていく。それはつまり、”下半身の女性スーツを直哉が着ていた”のではなく、”女性スーツの上に上半身の直哉スーツを着せていた”からであった。
『まさか・・これは・・』
ずるずると上半身の直哉に模した変装スーツをめくっていくと、二プレスを張った女性の胸や白く細い腕、女性の細く長い髪の毛、顔立ちが、直哉の体から現れたのであった。
6
:
よんよん
:2009/07/15(水) 00:36:54 ID:???
直哉は”自分の皮膚だと思っていた”スキンスーツをゆっくりと上に捲くっていく。まるで体に吸い付いたシャツを脱がしていくような感触である。
それほどスキンスーツは体にぴったりとくっついていたのだが、不思議なことに直哉のスキンスーツを捲れば捲るほど、内側から女性の体が現れていき、直哉の体型もまた変化していくのであった。
そして腕や顔・・すべてが脱げ終えたとき、そこには全く別人の女性がたたずんでいるのであった。
『いったいどうなってるんだ・・?俺の体だと思っていたものは偽の体だってことか・・ん!?こ、声まで女になってる!』
直哉は慌てて口を手で押さえた。自分の声がいつのまにか女性のものに変わっているからだ。顔まで女性になってしまった今、もはやどこにも直哉である要素は見当たらなくなってしまったのである。
『く、クソ!だったら、これも脱いでしまえばいいんだ・・!』
直哉はとりあえず自分の肩のあたりを掴み、引っ張ってみた。幸い、今の女性の体にはニプレスが張られており、乳首などは隠れて見えない。それに加えて、この女性の体はそこまでふくよかな体ではないようである。
グーっと肩を引っ張ると、やはりゴムのように伸びていく。だが、どれほど力まかせに引っ張っても多少の限界があるのか、10センチほど伸びたところでそれ以上は伸びることも剥げることもなかった。
『チッ、簡単には脱げないってことか・・』
直哉はさらに力任せにスキンスーツを脱ごうとしていた。
「ただいま〜って、あれ〜〜?クス、直哉クン、部屋にいないじゃない」
怪盗はスッと直哉の家に誰にも気付かれないように忍び込んだ。独り言を話すのも誰にも聞こえない程度の小さな声である。
「直哉君は無事、元に戻れたのかしら?まあ、私の予想だと今頃亜衣ちゃんになって驚いているころかな?クク・・」
怪盗の予想はズバリ当たっていた。直哉の姿は今、女子高校生の河原亜衣という女の子になっているのだ。直哉にとって亜衣という女性に出会ったこともないし、名前すら知らないだろう。
怪盗にとって、そんな見知らぬ女性に成り果てた直哉の驚きっぷりを見るため、こうしてこの家に戻っていたのである。
「ククク・・トイレのあたりから物音が聞こえるな」
今の体に似合わない男の口調で話す女性。鹿島秋子に変装した怪盗はゆっくりとトイレに向かった。
「あら、やっぱり。必死になって亜衣のスーツを脱ごうとしているわ。クク・・素人には結構難しいんだけどなぁ」
直哉が必死に課せられた変装を脱ごうとする様に怪盗はあやうく笑い声を漏らすところであった。そして少しの間、傍観していると・・
「ん・・?偶然かしら。あの裂け目を見つけちゃったわね。あ〜あ、大和といい、亜衣の変装ってすぐ脱げるのかしら・・?あとでちょっと調べておかないと」
直哉の様子を見ていた怪盗はがっくりとうなだれた。なんと直哉は自力で亜衣の変装スーツの裂け目を見つけ、そこから脱ごうとし始めたからだ。
『よ、よし・・これでようやく・・』
怪盗の期待とは逆に上手く変装が脱げそうな直哉はいまだ亜衣のマスクを被りながら、安心した表情を浮かべていた。
7
:
よんよん
:2009/07/16(木) 00:28:44 ID:???
ベリベリ・・と直哉は慣れない手つきで亜衣の変装を脱いでいく。それに伴い、スーツの内側からはまた別の肉体が現れていく。
だが亜衣の肉体に隠されていたものは直哉の予定していたものとは全く異なったものであった。
亜衣の細く美しく伸びた足からは、同じように細く白い足が現れ、小ぶりだった胸は綺麗に盛り上がった乳房へと、そして亜衣のマスクを脱ぎさると同時に長い髪の毛がその乳房へとかかった。
『これで・・・ん・!?え、ま、まさかまた!?』
亜衣のスーツの下にはてっきり自分の肉体がでてくるものだと思っていた直哉は、すぐにその異変に気がついた。
『クソ、被せてあった変装はあれだけじゃなかったのか!?』
直哉の口から漏れる男口調の声は、やはり女性のものである。亜衣とはまた違った高い声・・男言葉で話せば、やはり周りからは違和感に捉えられるだろう。
『今度はいったい誰になったんだ・・?いや、そんなことより早くこれも脱がないと』
亜衣の変装も解けたのだから、この変装もすぐに解けるのではないか・・そうふんで直哉は同じように自分の着せられているスーツを伸ばそうとした。
するとすぐに、近くから物音が聞こえてきたのであった。
「だれ、そこにいるのは・・!?」
直哉の耳に入ってきたのは母である秋子の声であった。
『え、あっ!?母さん・・』
「あなた、いったい・・そこで何をしてるの?」
秋子からしてみれば、目の前にいるのは見知らぬ裸の女性が突っ立っているようにしか見えない。不審者どころの話ではないだろう。
だが実のところ、この秋子は怪盗であり、不審者というのはどちらかといえば秋子に変装した怪盗なのだが、直哉にそこまでの状況を理解するだけの情報は持ち合わせてはいなかった。
『あ、えっと・・これはその・・』
立場的に、今自分は誰になっているかも分からない直哉にとって秋子に対して何て接すればいいのか分からない。むしろ逃げ出したい気持ちでいっぱいである。
「・・そんなところで裸になって、いったい何をしていたのかしら?でも一つだけわかったことがあるわ」
『・・・?』
「さっきそこに落ちていた衣服はあなたのものだったわけね。服を脱いでいったい何をしようとしたのかしら」
そういって秋子は手に持っていた布地の衣類をぽいっと直哉に渡した。
「生徒手帳まで落ちていたから勝手に見せてもらったけど、桜山高校の平塚未久さん・・大和君の友達にしては学校も違うし、いったい何のようでここにいるのかしら?」
平塚未久・・桜山高校2年の女生徒・・それが今の直哉の姿であった。
8
:
よんよん
:2009/07/20(月) 14:05:49 ID:???
「とにかく着替えなさい」
まるで不審者のように見る秋子に、直哉はもはや言い訳できる状況ではなかった。なにせ秋子からすれば、裸の見知らぬ女性がトイレの前にいるのだから、それも仕方がないことである。
『・・・』
どうみても状況は好転するようには思えない。だが、確かに裸のままでは分が悪いのも確かであった。直哉は仕方なしに秋子に渡された衣服を広げた。
『(こ、これは・・)』
直哉は渡された衣服を見て唖然とした。フリルのついた白のブラウスにリボンのついた黒のミニスカート、ハイソックスなど全てが女性のものである。だが一番目に引いたのは紅色のハイレグ競泳水着である。
「・・・」
だがそんな直哉に秋子は早く着替えなさいと目で訴えている。そんな状況では直哉はその衣装を身に纏うほかなかった。
『・・・くっ』
女性の衣服を着るのに慣れていない直哉にとって、水着や衣服を身に纏うのには時間がかかった。しかも秋子が目の前にいる状況では体感時間は相当に長く感じたであろう。
そしてさらに競泳水着は体のサイズにあっていないのか、平塚未久の体に吸い付くように締め付けるのである。
だがそれも仕方がないことであった。そもそもはこの水着は河原亜衣の体に合わせて作られた水着である。しかし直哉は自ら亜衣の変装を解いてしまったため、亜衣より胸が大きい平塚未久となってしまったのであった。
『(こんな衣装、家にあるはずがない・・怪盗の仕業か、クソ・・)』
目の前の秋子が怪盗だと気付いていない直哉にとって、この衣装は秋子に見つかりやすいような場所に置いていった物だと思い込んでしまった。
「さて・・」
『・・っ!』
直哉が着替えおわるのをみて、秋子はようやく思い口を開いた。
「状況を説明してもらえるわよね?」
『・・うう』
状況といっても、全ては怪盗が仕込んでいったものである。今の自分が直哉だと言っても到底信じてもらえるはずがなかった。
『それはその・・俺はその・・』
こんなときどうすればいいのか、直哉は懇願するように秋子を見るものの、秋子は腕を組んだまま直哉を睨んでいる。ふとそんなとき直哉の頭の中に恋人である岡崎恵梨の顔が浮かんだ。
『そ、そう。俺、いや・・私はナオ君に会いにきたんです。えっと、どうしても話さないといけないことがあって』
「直哉君に?・・こんな深夜になぜ?それにさっきの格好はなんなの?」
『それはその、言えない状況がありまして・・』
「・・・・・・・・・」
秋子は少し考えるそぶりを見せた。
「わかったわ。直哉君に聞けばいいのね。そこで待ってて、直哉君を呼んでくるから・・」
そういって秋子は直哉の部屋の方へと向かった。不審者である平塚未久を見て、一緒に連れて行こうとしないのは怪盗に考えがあってのことだが、直哉にとっては助かったと思う一心であった。
9
:
よんよん
:2009/07/22(水) 08:31:39 ID:???
「それじゃ、交代ね。恵梨ちゃん♪」
「はい、わかりました、秋子さん♪ナオ君に可愛い後輩の女の子がいただなんて、もう!ナオ君を怒らなきゃ」
「あら、妬いちゃってるの?」
一人の人間から、二人の声が聞こえてくる。それは言うまでもなく怪盗の一人芝居であった。
怪盗は一人芝居を終えたあと、サッと秋子のマスクを脱ぎ、恵梨の顔に変装しなおしたのだ。
「んー、ナオ君は全然気がついていなかったみたいだね。この体は秋子さんのじゃなくて、恵梨の体だってことに。あとは服を変えてっと」
「あら、恵梨ちゃん、また胸が大きくなった?」
「あ、わかります?・・・って、早くしないとナオ君、どっかいっちゃうね。まあ、どうせ女の子の水着を着てオナニーでもしてるんだろうけど」
「直哉君って、そんな性癖があったの?まあ、確かに水着を着るのに躊躇はしていなかったけど♪」
「ククク・・・」
一人芝居を続ける怪盗であるが、その巧みな着替えは常人を超えた速度で行われていた。
『ク・・早くここから出ないと母さんが戻ってくるな』
直哉にとって、今のこの姿は完全に部外者でしかない。その状況でまた母親の秋子に捕まるのだけは避けたかった。
とにかくここを出ようと考えた矢先に、直哉の目に小さい小物入れがあるのが目についた。
『・・・これは生徒手帳か。母さんがさっき持ってたやつだな。俺の今の姿の参考になるか・・』
小物入れには生徒手帳以外にもいくつか入っているようだが、その中を確認する暇もなく、直哉はすぐに玄関に向かった。
とはいえ、家の中でドタバタと走るわけにはいかないため、早歩きと忍び足を組み合わせたような移動であった。
『水着が食い込むなぁ・・早く着替えないと・・って、あ、しまった。俺の服を・・』
玄関まで着てから、直哉はトイレに置きっぱなしにしてあった自分の服装のことを忘れていたことに気がついた。
『ど、どうする・・?いや、今取りに戻るのは危険か・・?』
玄関からトイレまでの距離はそう遠くはないが、いつ秋子が戻ってくるか分からない。
『しかし服がないと、このままの格好というわけには・・』
玄関で数秒悩んだのち、やはり服を取りに戻ろうと玄関から家に戻ろうとしたとき・・
「ねえ、君・・?」
家の中から聞きなれた声が聞こえたのであった。その声の主を見て、直哉は戸惑いを隠せなかった。
『え、恵梨・・』
現れたのは岡崎恵梨。直哉の恋人であった。
10
:
よんよん
:2009/08/23(日) 23:30:27 ID:???
「なんで私の名前を・・知ってるの?」
恵梨は直哉の発した自分の名前に敏感に反応した。
『(しまった!今の俺の姿じゃ、恵梨の名前を出したって疑われるだけだ・・)』
心の中で舌打ちをし、直哉は恵梨の前にしてどうするか困惑していた。
「まさか・・・」
そんな直哉に対して、恵梨は眉を細め、疑うような視線を向ける。
「君、もしかして・・・怪盗?」
『・・へ?』
「その顔・・変に皺ができてるもの。ほら、右の頬に・・」
恵梨に言われて直哉はそっと右の頬に手を当てた。すると確かにマスクがゆがんでしまったのか、平塚未久のマスクに大きめの皺のようなふくらみがあった。
「やっぱりそれ、マスクだよね?てことは君が怪盗・・?」
『ち、違うんだ。俺だ、俺は直哉だよ!』
「へ、ナオ君?」
怪盗と疑われるくらいなら、恵梨には自分の正体を言った方がいい・・そう判断して直哉は恵梨の肩をがしっと掴んだ。
「い、いたいよ・・」
『あ、ご・・ごめん』
ほっそりとした恵梨の肩を強く掴んだことに後悔しつつ、直哉は一歩下がろうとした。だが恵梨は直哉を追いかけるように一歩踏み出した。
「・・えい!」
『え・・っ?』
直哉の目の前に恵梨が移動したかと思うと、恵梨は突然直哉が被っている平塚未久のマスクをベリベリ・・と引っ張ったのだ。
どうやら平塚未久のマスクはボディとは分離しているタイプで、未久の顔だけが綺麗に捲れあがってしまったのだ。
「やっぱり・・・君はナオ君じゃないよ」
『なにを・・、違う。俺は直哉で・・って声があれ・・?』
新しい顔になってしまったためか、直哉の声は未久の声からまた別の女性の声へと変わってしまっていた。
「だって、その顔・・私知ってるもの。赤石美緒でしょ、それ・・」
『赤石・・美緒?』
「うん、それにさっきからスカートの中もチラチラ見せてくれてるけど、水着なんて着てるし・・ナオ君だったら、いくらなんでもそんな格好はしないよ」
『いや、この格好には事情が・・』
「言い訳はきかないわ。早くここから出て行って!警察を呼ぶよ!」
直哉をすっかり怪盗と思い込んだ様子を見せる恵梨に、直哉はなんとかして恵梨を説得したかった。
だがそろそろ秋子も戻ってくるかもしれないし、この状態で騒がれては余計に自分の立場が苦しくなる・・そう考え直哉は逃げるように家をあとにした。
11
:
よんよん
:2009/10/27(火) 08:00:11 ID:???
『さて、どうしようか・・』
自分の声が女のものである事に違和感を感じつつも、自分が女であることを認識し、仕草などに注意しながら直哉は道を歩いていた。
早朝ということもあってか、人の歩きもまばらにある。だがあまり若い人もいないこともあってか、赤石美緒の顔をした直哉に注意を向けるものはあまりいなかった。むろん直哉もそれなりに顔を隠すように下をむいて歩いている。
『友人の家にいくにしても、この格好じゃ何を言われるか分からないし』
どうみても女でしかない直哉が男友達の家に行くわけにはいかない。といっても女友達は数少ないし、やはり見知らぬ姿の状態で上がりこむのは難しいだろう。
『となれば・・脱ぐしかないよなぁ』
河原亜衣のボディスーツは破る勢いで何とか脱げた。ならばこの今の格好だってそう脱ぐのは難しくないだろう。直哉はそう考え、人の少ない場所に移動しながら回りを見渡していた。
『あ、ここなら・・』
直哉が見つけたのは小さく人もまったくいないような公園にある公衆便所であった。
12
:
よんよん
:2009/10/27(火) 21:26:58 ID:???
誰にも見られないように公衆便所に直哉は隠れるように入った。だが入ったのは女子トイレの方へであった。なぜ女子トイレの方へ入ったかといえば、もちろん今の直哉が女性であるからだ。
『まったく、早く脱がないと』
女子トイレとはいえ、公衆トイレであるため、そこまで広くはないし衛生上きれいとはいえない。しかしそれだけに人の気配はまったくなかった。
『・・ん、これが今の・・俺の顔か。たしかに赤石美緒だが・・』
恵梨に平塚未久のマスクを取られたため、今の顔は平塚未久の下に隠されていた赤石美緒の顔である。当然これは直哉が着せられている赤石美緒のマスクなのだが、何も違和感を感じないほどの出来である。
『いったい俺にいくつ変装を重ねているんだ』
最初は秋子、次に自分の姿、その下が河原亜衣で、平塚未久・・赤石美緒という、いくつもの変装を重ねられていたのだから、まだ他にも変装を重ねられているのではないかと考えるのも当然である。
『とにかく、この変装も取らないとな。・・それに水着もきついし』
仕方のない状況であったとはいえ、今の直哉が着ている服装は女性物である。しかも体には合わない競泳水着もきており、何重にも重ねられている変装など全てが直哉の体を締め付けている。
まずは個室トイレの中にはいり、服と水着を脱がないと、変装を解くことすらできないのだ。
13
:
よんよん
:2009/10/27(火) 21:27:45 ID:???
『はぁはぁ・・クッ・・』
股間に熱いものを感じつつ、出来る限り声を上げないように直哉は吐息を抑えようとしていた。
だがそれはほとんど失敗に終わっているのか、個室トイレの外からでも女性の吐息の音が聞こえていた。
『・・ここは・・どうなってるんだ?』
ゆっくりと女性の性的な部分に触れ、その形や感触に直哉は酔いしれていた。
そう、直哉は変装を取るという大命を忘れ、平塚未久の体におぼれてしまっていたのだ。
変装を取ろうとしていた最初のころはまだ、できるかぎり体を見ないようにしながら背中にある変装スーツの裂け目を探していたのだが
つい目にはいってくる重量感のある乳房が直哉の目にとまったとき、その手は背中から自然に胸のほうへと移動していたのである。
そこから先、すぐに女性の乳房から股のほうへと手が動くのはそれほど時間がかかるものではなかった。
14
:
よんよん
:2009/10/27(火) 21:28:22 ID:???
直哉がトイレに篭ってから2時間以上経過していた。外は学生達の明るい声が遠ざかり、公園に設置されている高台の時計は9時が過ぎていた。
『・・・』
2時間以上も篭っていたトイレから、直哉はようやく出てきたのであった。
『もう学生の声も聞こえなくなってきたってことは・・そろそろ出ても大丈夫だろう』
直哉がつぶやく声は未だに女性の声であった。だがその声は赤石美緒ではなく、中川美菜という女子短大生の声であった。
『結局、脱げたのは2枚だけか』
平塚未久のボディと、赤石美緒の一体型の変装スーツを脱いだ直哉であったが、直哉の予想どおりその下もまた別の女性の姿であった。
その格好はこのトイレに入ってきたときと同じく、競泳水着とフリルのついた白のブラウスや黒のミニスカート姿である
。だがやや小柄な体に合わせて作られた服装であるためか、胸のあたりは張り裂けんばかりに前に突き出ている。
『変装が脱げるのはいいんだが・・脱いだ分余計苦しくなった感じだ・・』
この中川美菜の体は、平塚未久や赤石美緒よりさらにバストサイズが大きく、ここに着てきた競泳水着は相当に伸びてしまっている。その縛り付ける感覚が直哉にとって相当きついものとなっていた。
『そろそろこの場所を移動しないとな。だんだんトイレに人の出入りが多くなってきたし』
まわりに誰も人がいないことを確認し、直哉はトイレを出ようとした。
15
:
よんよん
:2009/10/27(火) 23:46:42 ID:???
中川美菜・・直哉はその人物の名前を知っていた。といっても弟の友人の姉という、かなり繋がりの薄いものであるが。
だが全く知らないよりは多少知っている姿のほうが場合によっては都合がつくのではないかと考え、この姿でトイレを出たわけなのだが・・
『これはこれで目立つよなぁ』
この魅惑的な美菜の肉体は一度みれば、なかなか忘れられないものである。それは繋がりの薄い美菜をしっかりと記憶していた直哉が一番理解しているからだ。
そしてこれほど胸が張り裂けんばかりに大きい体で窮屈な格好で出歩けば目立つのはさけられないだろう。だが平塚未久のボディスーツを再度着ることは選択肢として考えておらず、直哉はとりあえずこの姿でトイレを出ることにしたのだ。
『プルル・・』
するとどこからよく耳にする電子音が聞こえてきた。
『ん・・電話?』
すぐに直哉は手持ちのカバンを開けた。母である秋子に渡されたカバンであるが、これが怪盗の持ち物であることは明白であった。
それに直哉はトイレで変装を脱いでいる間に中身を確認しており、その中身の一つとして携帯電話が入っていたのは知っていた。
『・・・着信先は非通知か』
ただいくら怪盗の荷物だからといって、この携帯電話が怪盗が契約したものとは限らない。直哉は一瞬電話にでることに躊躇した。
『だけど盗難物の電話だとしたら、普通電話を止めておくよな。・・・それに非通知ってことは相手は怪盗か』
少し考えを改めなおし、直哉はゆっくりと電話をとった。もし怪盗でないとすれば適当に電話をきればいいだけの話である。
『もしもし・・』
「あ、もう遅いよ〜。えっと美菜お姉ちゃん?」
『その声はたしか・・大和の友達の・・』
「中川菜穂だよ。もう妹の声を忘れたの〜?」
電話の主は中川菜穂という弟の友人の名前であった。今の直哉の姿である中川美菜の妹である。
『・・・』
「お姉ちゃん?」
『この俺が電話をとってすぐ、そういうってことは・・やはり怪盗だよな?』
「怪盗ってなに?それにおねえちゃん、なんで『俺』なんていうの?それは男が言う言葉遣い・・だぜ?クク・・」
すると菜穂は徐々に声は菜穂のまま、口調を男らしく喋り始めた。それはすなわち自分が怪盗であることを明かしているのだ。
「菜穂の口調で男言葉だと違和感あるだろ?直哉もちょっとは女の子らしく喋らないとダメだよ〜?」
『それはお前が勝手に・・!』
「ほらほら言葉遣いが男のままだよ?そんな調子じゃ、変装だってばれちゃうんだから」
『そ・・そんなことより何のようだよ』
「クス、直哉さんがどんな様子かなって思ってね。どうやら家を追い出されたあと、ミクと美緒の変装は脱げたみたいね。・・クク、でもあれだけ時間がかかって2枚だけしか脱げてないって何かあったのかしらね?」
『う・・』
むろんトイレで女性の体を弄っていたなのとはいえず、直哉は言葉に詰まった。
「まあいいですよ。それよりそろそろ衣服がきつくないですか?その私が残した衣服は河原亜衣にあわせたものですから、水着なんかアソコにグイグイ喰いこんで割れ目の形が崩れてるんじゃないかって心配してるんですよ?」
『・・・』
「クス、黙ってるところをみるとまだ競泳水着をきてるんですね。まああれを着込んでいないと胸が大きすぎてブラウスなんて着れないでしょうけど・・そうそう、直哉さんに着せてる変装スーツですけど後何枚かわかります?」
『それは・・5枚だろ。倉田綾乃、北野知夏・・大野愛美、あとは・・樋口翔子に岡崎恵梨だ』
「あらよく分かりましたね。しかも順番まで」
『カバンの中に財布があった。その中に免許証や学生証なんかがあったが、その並びが母さんや俺、河原亜衣って子に、平塚、赤石、中川の順になっていた。つまり俺に着せている変装の順番ってことだろ。そのあとに知らない人物が続いていたから、それはまだ俺に着せられている変装だってくらい分かるさ』
「それじゃ、その財布にお金があったこともわかるよね?」
『・・・ああ。数十万の大金がな』
「では直哉さんにそのお金でちょっと買い物してもらいます」
『買い物・・?』
「もちろん拒否権はありません。もし拒否した場合は今の直哉さんのその姿が長引くだけですから。クス、別にそう難しくないですよ」
そういうと菜穂は電話でさらに続けた。その顔は電話越しであってもニヤリと笑っていることに直哉は気がついていた。
16
:
よんよん
:2009/10/28(水) 08:09:17 ID:???
『買い物か』
電話を終えた直哉はため息を漏らした。そして近くの自販機でジュースを買い、一気に飲み干し怪盗の言葉を思い出した。
『女物の服を買って、それを着てこい・・たしかに難しくはないが』
怪盗の出した買い物の依頼というのは、女性用の服を買ってそれを着こなし、怪盗とある待ち合わせ場所で落ち合うというものであった。
もちろん変なものを買ってきた場合は罰ゲームを与えるなどとも言っていたのである。
『まぁ、それはいいとして・・・問題は』
きょろきょろと周りを見渡しながら、直哉は自分の巨乳を腕組みで隠し、ある目的場所へと移動した
『その前提が別の変装姿ってのがやっかいだな。駅前のロッカーに変装スーツを置いてあるからそれを着ろっていうのがな・・』
目的場所・・駅前ということで人通りもおおいうえ、誰とも分からない変装スーツを着込むとなれば不安が付きまとうのも仕方がない。
だが怪盗に逆らえば自分だけではなく、恋人の恵梨にまで手を出すといわれては直哉も従うしかなかった。
17
:
よんよん
:2009/10/28(水) 23:48:21 ID:???
直哉は徒歩で目的地へと歩いていた。
『まずは隣地区にある図書館か。そこで別人に変装したあと、駅前のデパートで服を買い・・最後にレストランで怪盗に落ち合うか』
簡単に言えば怪盗の脅しともとれるお願いであったが、直哉はまずその言葉に従うことにした。
これだけの内容であれば、自分の身に危険がせまることもないだろうし、上手くいけばさっさと変装を解くことも可能なはずである。
『落ち合う約束の時間は12時ごろだから、まだ2時間以上はあるが・・』
だからといってゆっくりはしていられない。
そもそも今の姿はいくら見知った顔である中川美菜とはいえ、本人やその友人に出会うと厄介ではあるうえに、この魅惑的な肉体は直哉を悩ませることにも繋がっていた。
『ク・・歩くだけでこんなにも胸が揺れるなんて・・』
そもそも競泳水着を着ているだけで、それほど激しい動きは制限されるうえに、はち切れんばかりの乳房はその重量をしっかり感じ取れるほどに左右に揺れていた。
『女ってこんなにも大変なんだな。確かに肩がこりそうだが・・恵梨もこんなに大変なのか?』
恋人の恵梨のことを思い、直哉は苦笑いをした。さすがにこの中川美菜の体とでは、いくら恵梨がDカップほどの巨乳でも月とすっぽんのように差があるからだ。
『考えごとをしているうちに図書館に到着か』
そう言って直哉は図書館の中へとはいった。中には人はほとんどおらず、受付の年配の女性がこちらを見つめているくらいである。
『・・・えっと、さて。ここに怪盗の変装スーツを隠しているって話だったな。えっとトイレって言っていたな』
先ほどの公衆トイレと違い、今回は人目もある。直哉は気を引き締めて女子トイレのほうへと入った。
『ふう、誰もいないか。それで個室トイレの一番奥に・・床がはずれるからその下の側面側の・・』
怪盗が電話で伝えていた内容を思い出し、その場所をさぐると、意外にあっけなくやや大きめの箱を直哉は見つけた。
『この箱か』
鍵もかかっておらず、直哉はその箱をゆっくりと開けた。するとそこにあったのは一着の変装スーツと小さな小瓶、さらに衣類がいくつか入っていた。
『これが俺に着ろって言っていた変装スーツか。・・ん?この小瓶はなんだ?こんなのは聞いていなかったが』
小瓶に少し興味をもち一度手に持ってみるものの、小瓶の正体がわからない直哉はとりあえず箱の中にもどした。
『で、これが変装スーツで・・セットの服は・・まあ考えるまでもないよな。ていうかこれ、女子の制服だよな』
ぱっと服をひらけてみると、やはり女子のセーラー服であった。ただ若干サイズが小さいようにもみえる。今の中川美菜の体では着ることは難しいかもしれない。
『まぁ・・ちょっとは興味があるし・・な』
直哉が怪盗に簡単に指示に従う理由・・その一つには女の変装に興味が出てきたからであった。
18
:
よんよん
:2009/10/29(木) 21:36:28 ID:???
『この変装スーツはいったい誰なんだろうな』
美菜の声でつぶやきながら、スーツを広げて伸ばしてみた。
『・・少し小さくないか?高1・・いや中学生か?俺の妹くらいのサイズじゃないのか?』
べろんと中身のない顔の形をしたマスクは、原型を固めておらずいったい誰なのかがわからない。
『まあいいか。試しに着てみて、それで無理なら・・適当にごまかせば何とかなるだろう』
楽観的に先のことを考え、直哉はスルスル・・と着ている衣服を脱ぎ始めた。
『さすがにこの美菜って人の体はいいな。・・顔見知りだからあまり体をジロジロ見るのも気が引けるが』
競泳水着を脱ぎ終えると、窮屈そうに仕舞われていた巨乳はブラブラ〜と元気よく左右に揺れていた。
軽くその胸の触りごこちを確認したのち、直哉は謎の変装スーツに手を出した。もちろんそれを着るためである。
『さていったい誰なんだ?俺の知り合いの人間なのか、それともまったく知らない人か・・』
そして背中の切れ目を伸ばし、足や腕を慎重に変装スーツに通していくのであった。
19
:
よんよん
:2009/10/29(木) 21:37:00 ID:???
『く・・やはりきついな』
短大生でありまた爆乳といってもおかしくないほどの美菜の体から、一気に中学生の女性に変装するとなるとやはり体がなかなか合わないのか、直哉は変装するのに苦戦していた。
もし怪盗ならそれも簡単に変装するだろうが、変装に慣れていない直哉には怪盗の真似事など出来るはずもなく、力ずくで変装スーツに体をいれようとするのであった。
『胸が・・きつすぎる・・』
この変装スーツを着れば、見た目は完璧にその者になる。すなわち肉体が変装スーツに適応するという不可思議な代物である。
もちろんそれは直哉とて例外なく、今や体が女子中学生の肉体へと変わりつつあった。マスクまでしっかりと顔に合わせてしまえば中川美菜の痕跡は一切残らないはず・・・であった。
『なんとか着れたが、これは・・着方が悪かったのか・・?』
女子中学生に無理やり変装した直哉は、軽くその胸をポンポンとたたいた。するとその乳房はブラブラ〜と美菜のときのように左右に揺れるのであった。
『俺が着る前は・・こんなに胸は大きくなかったよな?』
美菜の体の上に着こんだ、この変装はたしかに女子中学生のものであり、体も華奢なものであった。だが美菜の魅惑的な乳房はその女子中学生の胸を内側から押し上げてしまったのだ。
美菜のときほどの巨乳ではないものの、中学生には似つかないほどの大きさになってしまっている。
『Fカップくらいあるんじゃないのか・・?とにかく服を着てみてからだな』
その声も中学生らしい可愛らしいものへと変わっていたが、男口調で話す様は滑稽にみえるだろう。
20
:
よんよん
:2009/10/29(木) 23:28:53 ID:???
『この顔は・・誰だ?』
制服のスカートを翻しながら、鏡を覗きこむ姿は一見普通の女子中学生にしか見えない。
『だけどこの制服、どこかで見たことがあるな。・・近くの中学か高校の制服か?』
腕組みをし、悩んだ仕草は男らしさがあるものの、今の姿では可愛らしさのが勝っていた。
『あ、なんかポケットにある。・・手帳?怪盗の置き土産か』
都合よくポケットに手帳があるのを見つけ、直哉はそれをザッと目を通した。
『やはり怪盗の置き土産だな。えっと手帳にいろいろ書いてあるぞ。橋本みずき・・?これがこの女の子の姿の名前か。森里中学・・やはり近くの中学だな』
名前や年齢、そして肉体の細部にいたるまで手帳には情報が書かれていた。あまりに生々しい情報もあるため、直哉はそのあたりで手帳をポケットに納めなおした。
『はぁ、しかしこれでいきなり女子中学生かよ。碧の隣に並んだら、まじで俺だとわからないな・・』
髪の毛を手でさっと書き分け、その顔をもう一度鏡でじっくりと見つめ、何もおかしなところを確認した。
そして視線はゆっくりと胸のあたりへと移った。
『やはり大きいな・・中学生とは思えないぞ。変装の着方が悪かったのか、美菜さんの乳房が押し上げてるみたいだ』
それでも今の制服を見る限りは、多少は胸のサイズも押さえられていた。その理由といえば、今着ている制服の下にいくつもの水着を重ね着しているからである。
もちろん重ね着を何着もしているため、直哉の体にはそれ相応に負担がかかっている。
『水着は透けてないのが幸いだけど、このストッキングはこう履いていていいのか?まあ、伝線させないように注意はしたが・・』
トイレで見つけた箱には水着のほかにストッキングやハイソックス、シャツや下着などいくつも入っていたが、どう着込めばいいのかよく分からなかった直哉はとりえあず全部を身につけてしまったのだ。
おかげで巨乳はぎゅっと押さえつけられ、中学生の制服が着込めたわけである。
『さて、次はなんだっけ。えっと・・・この格好で指定の服を買ってくるんだったな』
直哉がトイレを出ると、図書館のカウンターにいた年配の女性はギョッとした様子で直哉を見つめた。
その理由はトイレに入った人物と出てきた人物がまったくの別人になっていたからだが、何かの勘違いだろうと思ったのか直哉に問いかけることはなかった。
21
:
よんよん
:2009/10/31(土) 09:06:12 ID:???
『さてと・・まだ時間はあるし、少しブラブラするか』
女の体に慣れたわけではないが、新鮮な感覚に直哉の心はハイな気分となっていた。
怪盗の指定した時間はまだあるし、服を買って来いという指定も難しい話ではない。
『ハハ・・なんだかジロジロ見られてる気分だな。これが女の子というものなのか?』
駅前までくるとさすがに人通りも多く、特に道行く男性がこちらを見つめている。とくにこの年齢不相応のバストに目が行っていることは間違いないだろう。
『俺もこんな巨乳中学生が歩いていたら見てしまうし、気持ちはわかるが・・しかし、結構重くて邪魔なんだな・・』
動くたびに乳房がゆれるが、ずっしりとした重量感に直哉はやや悦になっていた。
『恵梨もこんなに大変なんだろうな。俺の場合は変装といてしまえば、巨乳の辛さなんて無くなってしまうんだが』
直哉は恵梨のことを少し考え、次に会うときは何かしてあげようと考えていた。
『ん?あれは警察か・・やば、考えてみたらこの格好は不味いんじゃないか?』
道先にはパトロールなのか、パトカーが停車していたのである。直哉はすぐに自分の格好を思い起こした。
『平日の昼前に制服姿の女子中学生が歩いていたら、補導されるんじゃないのか・・?』
直哉にとって今の姿で補導されようとも実害はない。だが補導されれば当然、怪盗との待ち合わせには遅れるだろう。直哉はくるりと180度向きを変え、進んできた道を戻り始めた。
『仕方ない・・この道は諦めて別のルートに移動するか』
思いがけない迂回に時間がとられ、怪盗との待ち合わせに間に合うか直哉は少しずつ焦りはじめたのであった。
22
:
よんよん
:2009/11/02(月) 00:09:06 ID:???
だが直哉の杞憂はあっさりと徒労となってしまった。
すぐさま怪盗から電話が入ったからだ。
「もしもし〜?」
『か、怪盗か!?』
「あ、その声・・みずきちゃんね?クス、わざわざ自分から変装を重ねるなんて、そんなにも元に戻りたくないのかしら?」
『な・・!それはお前がこういったからだろ!?』
「あれ、そうだったかなぁ」
怪盗は惚けるような口調で直哉を挑発した。直哉の反応をみて楽しんでいるのだろう。
『それで・・何のようだよ』
「うん、ちょっと謝らないといけないことがあって。さっきレストランで落ち合うって話だったけど・・あれは無しで」
『え・・?』
「野暮用ができちゃったのよ。いい子がいっぱい手に入ってね」
『いい子が手に入るって・・まさか、また新しい変装を作っているのか・・?』
「正解ですよ。クス、そんなわけで直哉さんには悪いですが次に私から電話するまで適当に遊んでいてください」
『遊べって・・この格好でか?』
「あら、みずきちゃんの姿・・いやなんですか?わざわざ自分から着ておいて」
『違う・・!俺はそんなつもりじゃ・・』
「そんなつもり?クス・・何かしたんですか?あ、もしかしてオナニーでもしちゃった?」
『・・・・・』
「ふふ、図星みたいですね。直哉さんって結構エッチなんですね?グフフ・・まあそれなら心配無用みたいですし、ゆっくりとその姿で遊んでおいてください」
そういって怪盗は電話を切ってしまった。
『まったく・・だけどおかげで待ち合わせに遅れると言う必要はなくなって助かったな・・』
直哉はふーっとため息を漏らした。それと同時にFカップもある乳房は直哉の心と同じように小さく揺れていた。
23
:
よんよん
:2010/07/20(火) 23:29:39 ID:???
橋本みずきという中学生になった直哉は、当てもなく街中を歩いていた。
どこかで怪盗が接触してくるのではないか、そして淫乱な姿を見せつけた後、厄介な指示をしてくるのではないか
そんなことを危惧しつつ、直哉は周りに目で見張っていた。
しかし直哉の警戒は身を結ぶことはなかった。
あの電話から数時間が経過したというのに怪盗からの接触はおろか、電話での指示も止まってしまったのだ。
『・・・』
マスクであるみずきの顔には出ていないが、さすがの直哉も疲労感でいっぱいであった。
ベンチに腰をかけ、ため息をもらしていた。あたりはすっかり夕暮れとなっている。
『どうしろっていうんだよ・・』
怪盗から指示のあった服装は着てはいないが用意済みだ。
しかしその怪盗から接触がないとなれば、何の意味もない。
『怪盗の身に何かあったのか・・?まさか警察に捕まったとか?』
昼前に見た警察がもし怪盗を捕まえたとすれば・・・
『いや、あんなやつがそうそう捕まるとは思えないんだが・・しかし何かあったと考えた方がいいよな。まさか俺のこと忘れたってわけじゃないだろうし』
ベンチから立ち上がり、直哉はどこか人気の少ない場所を探しはじめた。
もしこのまま、怪盗が現れなかったら、夜を橋本みずきという女子中学生の格好で過ごさなければならなくなる。
そうなる前にスキンスーツを脱ごうと考えたからだ。
24
:
よんよん
:2010/07/22(木) 00:07:56 ID:???
直哉は人気のない道を歩いていた。どこかで変装を解くためである。
だが一人で今着ている変装を全て脱ぐことができるのか。そもそも今、どれだけ変装が重ねられているのか、考えれば考えるほど億劫になってくる。
そんなとき、ふと後ろから声をかけてくる女性がいた。
『ナオ君・・?』
おそるおそる自分の名前を尋ねてくる女性の声に、直哉はすぐに反応した。
『え、恵梨・・!?』
後ろから声をかけてきたのは岡崎恵梨であった。
しかし、声を発した瞬間にハッと直哉は自分の口を手でおさえた。まだ橋本みずきの変装は解いていないのだから、直哉から出てくる声は当然女性のままだ。
自分の声を聞き、まだ自分が橋本みずきに変装していることを思い知らされたのだが、
そんな直哉に対し、なぜ岡崎恵梨が自分の正体を言い当てれたのか、恵梨に対して疑念が浮かんだのである。
『よかったぁ。ナオ君じゃなかったらどうしようかと思っちゃった』
直哉が不審を抱いているのも知らず、恵梨は安心したように声をあげた。
『恵梨・・?なんで俺だとわかったんだ・・?』
『怪盗が教えてくれたの。ナオ君が中学生くらいの女の子になって街中を徘徊してるって情報に、詳細な姿と場所をつけてね。困ってるだろうから助けてやれって言ってたわ』
『・・・・』
そもそもこんな状況に追い込んだのは怪盗のほうである。
それをいまさら恵梨に助けさせるというのはいったいどういう意味なのか。ますます怪盗のことが分からなくなっていた。
『とにかく、ナオ君!はやく変装をとこう。怪盗がそれの脱ぎ方を教えてくれたからさ』
積極的な恵梨を見て直哉はすっかり緊張感がぬけてしまった。
恵梨にいろいろ聞きたいことがあるのだが、直哉もまず変装を解きたい気持ちでいっぱいであったため、素直に恵梨に変装を脱ぐ手伝いを申し出た。
25
:
よんよん
:2010/07/25(日) 01:34:39 ID:???
人気の無い倉庫に入り、恵梨は直哉から変装スーツを抜き出す準備に入った。
まさか恵梨に変装スーツを脱ぐのに手伝ってもらうことになるとは思っていなかったのか、直哉も複雑な思いである。
『ふーん、これが怪盗の変装スーツかぁ』
『・・ほんと、どうなってるんだか。これを着ただけで姿が完璧にその人本人になってるだろ』
『そうかなぁ。ちょっとおかしいところあるよ?』
完璧なはずの怪盗の変装スーツに、恵梨は違和感を感じたようだ。
『おかしなところ?』
『うん、今の直哉君って女子中学生だよね?』
女子中学生かと問われても、直哉はさすがに、YESとは答えるわけにはいかなかった。
『でも・・ここって何かおかしくない?』
恵梨はそう言って、直哉の胸を軽く触れた。そこには変装スーツが歪み、女子中学生にはありえないほどの巨乳があった。
『お、おい・・恵梨?』
胸を触れられても所詮は変装スーツでしかなく直哉には何も感じられないが、その重みは感じられる。
だが恵梨はなぜか不機嫌そうな顔をした。
『ねぇ、何も感じないの?・・やっぱ、粗悪品・・』
直哉はなぜ彼女が不機嫌そうな顔になっているのか、理解できなかった。
26
:
よんよん
:2010/07/29(木) 00:07:03 ID:???
『それじゃ、変装をとくからまず服を脱いでもらうね』
『ああ・・』
直哉は恵梨の言葉を信じ、服を抜いだ。それに伴い、ぷるん・・と女子中学生には大きすぎる乳房が大きく揺れ動いた。
『くす、ナオ君ってば胸が大きくなっちゃったね』
『何を言ってるんだよ・・』
茶化すように恵梨は笑っていた。その恵梨に対し、抗議したいような顔をする直哉であるが、子供っぽさが抜け切らないみずきの姿や声では迫力にかけるものがある。
『怒らないでよー、えっとちょっと体触るね』
有無を言わせず、恵梨は直哉の胸のあたりを触った。変装スーツを着ている直哉にとっては、特に感じるものはないのだがそれでも不思議と変な気分になってしまうようだ。
『お、おい・・』
『えっと、これかな・・』
恵梨はみずきの乳首をぎゅっと押し込んだ。ゴムのような弾力のある乳房は一時的にへっこむのだが、その形はゆっくりと大きく変化しはじめた。
『う・・、なんだ・・?』
Fカップほどあると思われた乳房が、どんどん萎んでいくように小さくなっていった。そして数秒もたたずしてその乳房はBカップほどへと、今の姿にあった形へ変化してしまった。
突然体型が変わったせいか、直哉は胸のあたりが押さえつけられるような苦しさに襲われた。
おそらく体の内側に着てある中川美菜の体に対し、上から着ているみずきの変装姿が変わったため、内部に強烈な圧迫感を感じたのだろう。
『だ、大丈夫・・!?』
恵梨は心配そうな顔で直哉の背中をさすった。直哉もそんな心配そうにしている恵梨になんとか大丈夫であることを手を振ってアピールした。
だがそんな直哉に対し、恵梨はどこかあざ笑っているようにも感じられた。
27
:
よんよん
:2010/08/01(日) 17:53:51 ID:???
『それじゃ、変装とくよ〜。いくら変装だからって女の子の体なんだから、ちゃんと目を瞑っておいてね』
『わ、わかってるよ・・』
『クス・・ほんとかなぁ?』
目を閉じ、直哉は恵梨に全てを任せた。直哉の回答に笑う恵梨。だが、直哉は恵梨に一抹の不安を感じていた。
直哉の変装を解こうとしている割には、上から見下すようにどこか嘲笑っているように感じているのだ。
もしや、この恵梨は怪盗で今まさに、恵梨の変装をといて別の姿で直哉を見て笑っているのかもしれない。
しかし目を閉じろと言われて、一度閉じてしまったからには、直哉も今の恵梨を信じるほかなかった。
『それじゃ、背中あたりをさわるからね』
ピリ・・と背中あたりから、擦り切れる音が聞こえる。
恵梨の細い指が背中の切れ目をひろげ、みずきの背中を裂いているのだ。
もちろん変装であるため、生傷が出るわけではないが、見知らぬ人間がみれば、救急車でも呼ぶかもしれない。
『それじゃあ、腕とか足とかとおすから。あ、先に顔からいったほうがいいかなぁ』
『どっちでもいいよ・・やりやすいほうでいいから』
『それじゃ、顔からいくね』
ぺりぺりと、直哉の顔にはりついているみずきの顔が大きく歪んだ。そしてマスクはべろんと顔から抜け落ち、マスクの内側から伸びた髪の毛がサーっと背中へと落ちていく。
『へぇ、これがナオ君の今の顔なんだぁ』
『・・・中川美菜という女子大生の姿のはずだよ』
答える直哉の声はすでに美菜のものとなっている。
『あ、そうなんだ。ふーん』
そしてみずきの体は、恵梨の手により直哉から剥ぎ取られていった。
中学生から一気に女子大生へとその姿は大きく変わってしまった。弾力のある胸は、グラビアアイドルかと思わせるものである。
『うわぁ、すごいなぁー。こんな体型、あこがれちゃうよー』
嬉しそうに恵梨は美菜の乳房をぎゅっと手で掴んだ。
『お、おい・・』
目を瞑っていても、胸の揺れ動く感覚に直哉はどうすればいいかわからず焦っている。
『クス、でも形だけでその感覚は伝わらないんだね』
『へ・・?』
『あっちの怪盗さんなら、もっといい変装を味わえるんだけどなぁ?クク・・』
直哉の耳に恵梨の声が一瞬、低く聞こえた。
28
:
よんよん
:2011/01/29(土) 10:50:58 ID:???
恵梨に少しの不安を感じたものの、彼女の手先は想像以上に早く動いていた。
ものの数分足らずで直哉が着せられていた変装スーツを全て脱がしてしまったのだ。
『・・ぁ、え・・?』
あれだけ脱ぐのが大変だったものがこうも早く脱げるものなのか、直哉は一瞬だけ唖然とした。
しかし胸には、硬くて平たい胸板があり、股間には男のものが衣類ごしに感じる。
不完全ではない、本当に全ての変装スーツが脱げたことを実感できるのであった。
『ありがとう、恵梨』
直哉は恵梨に対して後ろを向いたまま、助けてくれたことに礼を伝えた。
『どう致しまして、鹿島君に喜んでもらえるなら私も脱がした甲斐があったわ』
直哉の声に返事を返す女性・・だが、その声は恵梨の声ではなかった
『・・え?』
直哉は驚き後ろを振り向いた。ここには岡崎恵梨しかいないはず・・、その答えは振り向きざまにすぐに理解した。
『なっ、松浦・・美波・・』
振り向いた先にいたのは岡崎恵梨ではなく、直哉の友人である松浦美波であった。
『よかったですね、鹿島クン♪少しの間だけ、男に戻れて』
そういうと美波はシュッっと直哉の顔面に向けて霧状のスプレーを浴びせた。
『うわっ・・!』
刺激臭と共に甘い匂いが部屋に立ち込める。
『お前、まさか・・怪盗・・・』
『クス、ようやく気がついたんですか?でもちょっと遅すぎましたね。男に戻れたタイミングですぐにこの部屋から逃げればよかったのに。あ、でもそれならわいせつ罪で捕まっちゃうかな。鹿島クン、今裸だし』
『く、くそ・・』
霧状のスプレーを浴びせられた直哉は強い睡魔に襲われた。
『せっかく、戻れたってのに・・』
『大丈夫ですよ、起きたときには鹿島クンにはちゃんとした服を着せておきますから』
直哉はゆっくりと地面に崩れていった
29
:
よんよん
:2013/07/24(水) 00:27:20 ID:???
直哉の部屋・・・やや殺風景ではあるものの若者らしくポスターや、電子家具などがいくつも置いてある。
その部屋の奥に1台のベッドがあり、その上で一人の男が眠っていた。
男は部屋の主である鹿島直哉である。
『・・・う?』
寝るには早すぎる時間ではあるものの、すでに日は暮れていた。
直哉は、すでに多くの睡眠時間をとっているものの、気分の優れない顔をしたまま目をあけた。
『・・ここは俺の部屋?』
天井に見える電球などから、自分の居場所を再確認しつつ、直哉はにぶくなっていた頭を急速に回転させた。
『か、怪盗は・・!?』
ささっと頭を左右にゆらし、周りの気配をさぐる。どうやら、この部屋には直哉一人しかいないようだ。
『いない?俺ひとりか』
ホッと息をつくものの、すぐにハッと息をのむ。
すぐに直哉は視線を下に向けた。
『えっと、俺の服か』
すぐに目についたのは自分の衣類。どうやら怪盗は最後に言った通り、服を着せてくれたのだろうか
『胸は・・ない?そういえば、声はもとに戻ってるな』
パッと見るかぎり、胸のあたりに不自然な膨らみは見当たらない。あの無駄に重い乳房は今、直哉の体にはついていないようだ。
『そういえば、窮屈な感じが全然しないな』
あの締め付けられる感覚もなく、直哉はベッドから立ち上がった。
そして普段使用している鏡に目をむけた。
鏡にうつるのは自分の顔。特に不自然な点はなさそうだ。
『顔は・・戻ったのか?』
自然と自分の顔をつまもうと直哉は手をのばした。もしかしたら、この今の自分は偽物なのではないか、そういった不安があったせいだろう。
『・・・ん?』
顔に手をあてようとしたところで、鏡にうつる自分に不自然な箇所が1点、直哉の目にとびこんだ。
『なんだよ、これ』
不自然だと感じたのは自分の着ている衣類であった。
いつも直哉がきている特別かわったものではない、やや安物の衣類である。
衣類自体には変化はない・・はずなのに、顔をつまもうとした手首が、ほとんど袖の中にはいっていた。
いや袖だけではない、よくみれば服のすそも、普段なら腰のあたりに位置するところが、お尻まで隠れている。
ズボンに至っては、ベルトがゆるくブカブカになっており、ズボンのすそも完全に足を隠していた。
『か、体が・・縮んでる!』
まさに直哉の叫んだ現象が鏡の前で起きていた。
『まさか・・!』
直哉はガバっと衣類をシャツの裾ごと持ち上げた。
そこにあったのは、痩せこけた体・・到底男のものとは思えぬほど華奢な体であった。
見れば、まだ成長途中なのだろうか胸も多少膨らんでいる。
そして次にゆるくなっているズボンもおろした。
『ああ・・・』
直哉は立ったまま情けない声をだした。トランクスごとズボンをおろした先に見えたのは、まだ毛もうっすらと生え平べったな股間に、縦筋のきれいなピンクのワレメがあった。
30
:
よんよん
:2013/07/25(木) 00:32:24 ID:???
ジャァァーーーっとシャワーの口から水が吹き出て排水溝へと流れていく
ここは風呂場。中には直哉が一人、佇んでいた。
改めて自分の体を見ても、小柄な少女の肉体。だがその顔には何とも不釣り合いな男性の顔・・直哉の頭部があった。
『くそ、怪盗のやつ・・まだ俺にこんな目をあわせるのかよ』
風呂場に入ったのは、自分の体を調べるためであるが、その直前に運悪く父と母が帰ってきたのだ。
結果的に逃げ込むように風呂場の中へ入り、シャワーを出して湯煙を出し、中の様子を隠すようにしたのが今の結果だ。
『しかし、誰の体なんだ・・?』
見たところは妹の碧と同じくらいの体つきだ。
『まさか妹の体・・なんてことはないだろうな』
直哉はバツの悪そうな顔をした。もはや作り物と割り切って、少女の裸を見てしまっているのだが妹の体だと思うと、複雑に思うところであった。
『しかしこれ、本当に作り物か?さっき着せられていたものと感覚が全然違うんだが』
昼間に着せられていた変装スーツは締め付けられる感覚が強く、まさに着ぐるみをきているような感覚であった、
それに対して今はまるで自分の生身のように肌が敏感に感じるのだ。
『まさか・・な』
試しに直哉は、少女の胸のあたりを触れてみた。男の自分にはない膨らみだ。作り物であるなら、さわり心地はあっても、触られる方の感覚はないはずである。
『・・・ん、んん!!?』
だが意図に反し、直哉は思ってもいなかった感触に、あやうく声をあげるところであった。
『な、なんだ?感覚が・・触られた感覚があるぞ!?』
あわててもう片方の乳房を今度はぎゅっと強く揉んでみた。Aカップの発育途中の胸だが、今度は強くつかんだためか、『ぎゃっ』と見っともない声をあげてしまった。
『ど、どうなって・・まさか、さっきの変装とは違うのか?』
考えてもわからないが、どうやら先ほど施された変装とは違うようだ。
だが、直哉にとって、この変装が何であろうと自分の体を大きく変えてしまっているモノであるものには代わりはない。
『わかんないが、もう脱ぐしかないな』
そもそも風呂場に入ったのは、この変装を脱ぐためである。直哉はすぐに継ぎ目であるはずの首を風呂場に設置されている鏡ごしに凝視した。
ちょうどそこは直哉の顔と女性の体の境がみえた。
『ここから脱げるのかな?・・いや、まておかしいぞ』
よく見ると、少女の体より直哉の顔のほうが一段と大きい・・のは男性の頭身であるからなのだが
そうではなく、境目の箇所が皮膚1枚、顔が浮いているのだ。
『まさか・・俺の顔、マスクか?』
嫌な予感をしながら、直哉は顔のほうを引っ張ってみた。するとググ・・っと鈍い音を立てて、顔が奇妙に歪んでいくのが見える。
『・・・』
どうやら少女の体に直哉のマスクを貼っていたのは、間違いないようだ。
(・・いったい誰の顔なんだ?)
このまま、自分の顔を取るべきか、それともそっと戻すべきか・・直哉はしばらくの間、手を動かすことができなかった。
31
:
よんよん
:2013/10/02(水) 13:35:00 ID:???
しばらく鏡を見つめながら、直哉を意を決してマスクを脱いだ。
するとそこには見たこともない少女の顔が現れた。
『誰だよ、これは・・』
声を出して直哉はハッとなった。マスクを変えたことで男の声から少女の声になったことと、風呂場の中で声が反響したせいである。
(・・見たことない顔だよな)
結局、マスクを脱いだところで事態は好転することもなく、直哉はマスクをかぶり直して風呂場をあとにした。
『結局進展なしか、これからどうすればいいんだ』
いくら直哉のマスクをきているとはいえ、中学生くらいの少女の体である。
直哉の背丈に比べると小柄すぎるため、いくら男の服装をしても違和感しかない。
『・・まったく』
そう呟きながら、直哉は脱衣所で脱いだ男物の衣類を着ようとした。しかし・・
『あれっ』
直哉の目にうつったのは、ストライプの小さなシャツに、サスペンダー。それと女性用下着にストッキングであった。
『なんだこれ・・俺の服はどこいったんだ?』
ちょうど直哉の服を置いていた場所が、女性の衣類へと置き換わっていた。
『碧か・・?いや、碧の服じゃないよな・・』
妹の衣服かと思ったものの、今まで彼女の着ていた衣類とは一つも合致しない。
となると直哉の頭にイヤなものがよぎった
『まさか・・怪盗の仕業か?俺にこれを着せようと服を入れ替えたのか』
このまま直哉の部屋まで移動すれば、代えの服はあるだろう。
ただそれまで裸で自分の部屋まで行くのは、さすがに危険を感じた。
なにせ近くには父と母が二人で談笑しているのである。
『どうしろっていうんだよ・・』
直哉は目の前にある服を見ながら、大きくため息をついた。
32
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<削除>
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33
:
よんよん
:2022/04/26(火) 01:03:50 ID:???
直哉は仕方なく、脱衣所に置いてあったシャツを手に取った。
サイズは今の直哉の姿にぴったりとあっていそうだ。
次に下着も取ってみると、可愛らしいプリントの入った上下の下着だ。
『これを着ろってことかよ・・・』
意を決して、再度直哉はマスクを脱いだ。先ほどの少女の顔が鏡に映っている。
小さく口から出るため息は、自分とは異なる少女の声となって出て行く。
慣れない手つきで下着を履き、ブラジャーを腕に通す。
『・・・ん』
触れる肌感覚は、少し敏感なほどだ。変装スーツを着せられているにもかかわらず、未だに触感が残ることに直哉は不安を感じた。
『こ、これでいいのか』
ストッキングと下着を着け、ストライプのシャツを頭から通し、サスペンダーをセットすると鏡にはあどけない少女の顔が不安そうな顔を映し出していた。
シャツはなぜか少し濡れているが、服はぴったりのサイズで、指先からつま先まで、何も違和感を感じさせなかった。
肩にかかった髪の毛が呼吸に合わせてかすかに上下している。
直哉は試しに髪の毛を引っ張ってみたが、やはり本物としか思えない出来である。
『服を着たのはいいけど、これからどうすればいいんだ?このままじゃ、また家から追い出されるぞ』
そう考えて、直哉は一度自分の部屋に戻ろうと考えた。
足音を殺し、慎重に廊下を進んでいると、突如目の前に人が現れた。
『あっ』
目の前にいたのは妹の碧だ。
碧の顔を見て、直哉は驚いた。そしてすぐにどうすべきか頭の中で考えたが、それよりも先に碧が声をあげた。
『加絵ちゃん、もう大丈夫?』
『え?』
碧が直哉の今の姿を見て、「加絵ちゃん」と呼んだ。
そこで直哉はすぐに、今の姿が碧の友人だと気づいた。
『えっと、その』
『やっぱり、まだ渇いてないよ』
そういって碧は、直哉が着ているシャツに指さした。そこには少し濡れた跡が残っている。
『もう少しドライヤーで乾かす?』
何を言っているか、話の流れがつかめないなか、直哉は首を横に振った。
『だ、大丈夫だから』
『そう?じゃあ、部屋に戻ろうか』
そう言って碧は、直哉の手を握って、そのまま進み始めた。
碧の部屋に入ると、もう一人の女性がいた。その顔を見て、直哉は一瞬顔をゆがめた。
栃野愛紗という碧の友人だ。直哉は過去に一度、彼女に変装させられたことがあった。
しかし、それよりも今の状況が未だにつかめていなかった。
テーブルの上には、ジュースの入ったコップと、濡れたぞうきんが置いてあった。
状況からすると、加絵は先ほどこのジュースをこぼして、シャツをぬらしたのだろう。
(これは・・・、つまり)
怪盗が加絵のふりをして碧に近づいて、この家に侵入し、加絵として先ほどまで居たようだ。
そして直哉に加絵の姿を変えて、今まさに入れ替わった形となったようだ。
その当の怪盗は、目の前にいる碧や愛紗に変装しているのか、それともここにはいないのか、直哉には分からなかった。
『はい、座って座って』
『あ、ああ・・・うん』
言葉遣いに気をつけながら、直哉は座布団の上に座った。
『じゃあ、加絵ちゃん。さっきの続きだけど』
『続き・・・?』
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