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鹿島直哉の場合

33よんよん:2022/04/26(火) 01:03:50 ID:???
直哉は仕方なく、脱衣所に置いてあったシャツを手に取った。
サイズは今の直哉の姿にぴったりとあっていそうだ。
次に下着も取ってみると、可愛らしいプリントの入った上下の下着だ。
『これを着ろってことかよ・・・』
意を決して、再度直哉はマスクを脱いだ。先ほどの少女の顔が鏡に映っている。
小さく口から出るため息は、自分とは異なる少女の声となって出て行く。

慣れない手つきで下着を履き、ブラジャーを腕に通す。
『・・・ん』
触れる肌感覚は、少し敏感なほどだ。変装スーツを着せられているにもかかわらず、未だに触感が残ることに直哉は不安を感じた。
『こ、これでいいのか』
ストッキングと下着を着け、ストライプのシャツを頭から通し、サスペンダーをセットすると鏡にはあどけない少女の顔が不安そうな顔を映し出していた。
シャツはなぜか少し濡れているが、服はぴったりのサイズで、指先からつま先まで、何も違和感を感じさせなかった。

肩にかかった髪の毛が呼吸に合わせてかすかに上下している。
直哉は試しに髪の毛を引っ張ってみたが、やはり本物としか思えない出来である。
『服を着たのはいいけど、これからどうすればいいんだ?このままじゃ、また家から追い出されるぞ』
そう考えて、直哉は一度自分の部屋に戻ろうと考えた。
足音を殺し、慎重に廊下を進んでいると、突如目の前に人が現れた。
『あっ』
目の前にいたのは妹の碧だ。
碧の顔を見て、直哉は驚いた。そしてすぐにどうすべきか頭の中で考えたが、それよりも先に碧が声をあげた。
『加絵ちゃん、もう大丈夫?』
『え?』
碧が直哉の今の姿を見て、「加絵ちゃん」と呼んだ。
そこで直哉はすぐに、今の姿が碧の友人だと気づいた。
『えっと、その』
『やっぱり、まだ渇いてないよ』
そういって碧は、直哉が着ているシャツに指さした。そこには少し濡れた跡が残っている。
『もう少しドライヤーで乾かす?』
何を言っているか、話の流れがつかめないなか、直哉は首を横に振った。
『だ、大丈夫だから』
『そう?じゃあ、部屋に戻ろうか』
そう言って碧は、直哉の手を握って、そのまま進み始めた。

碧の部屋に入ると、もう一人の女性がいた。その顔を見て、直哉は一瞬顔をゆがめた。
栃野愛紗という碧の友人だ。直哉は過去に一度、彼女に変装させられたことがあった。
しかし、それよりも今の状況が未だにつかめていなかった。
テーブルの上には、ジュースの入ったコップと、濡れたぞうきんが置いてあった。
状況からすると、加絵は先ほどこのジュースをこぼして、シャツをぬらしたのだろう。
(これは・・・、つまり)
怪盗が加絵のふりをして碧に近づいて、この家に侵入し、加絵として先ほどまで居たようだ。
そして直哉に加絵の姿を変えて、今まさに入れ替わった形となったようだ。
その当の怪盗は、目の前にいる碧や愛紗に変装しているのか、それともここにはいないのか、直哉には分からなかった。
『はい、座って座って』
『あ、ああ・・・うん』
言葉遣いに気をつけながら、直哉は座布団の上に座った。
『じゃあ、加絵ちゃん。さっきの続きだけど』
『続き・・・?』


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